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福田昌子君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
政府の主として
アジア外交に関しまする
所信をたださんとするものであります。
鳩山総理は、組閣当初、
新聞記者団の
質問に答えまして、
日本民主党は
国民の
信頼にこたえた
選挙の結果できたものでもないし、しかも
少数党内閣である、
従つて、
長期に
政権の座にすわることは僭越であるので、なるべく早く解散してあらためてその信任を
国民に問いたい。まことに当然のことを正直に語られましたのでございます。私どもは、この一言で、さすがに
鳩山総理だと一応うなずいたのであります。ところが、その後、この
内閣におきましては、三十年度の予算を編成して
国会に
提出するとか、あるいはまた、最近におきましては、さらに、いかにも
長期にわた
つて政権を担当する
内閣ででもあるかのごとき錯覚を起させまするところの
政府の
声明、政見を次々に
発表いたしまして、ことに、去る十三日におきましては、非常に
長期にわたる
方針を定めた
外交政策を
発表されたのであります。
私は、本日ここにこれらの
外交政策を批判いたしまする前に、まず一言申し上げておきたいことは、一体この
鳩山選挙管理内閣におきましてこのような
長期政策の
発表をする資格があるかどうかということでございます。(
拍手)
国民の
信頼を受けていない
選挙管理内閣としての
少数党の
鳩山内閣がこのような
政権の
発表をすることそれ
目体が、そもそも皮肉にも
鳩山総裁が最も警戒されておりましたところの僭越きわまる
行為ではないでございましようか。(
拍手)かりにこの際百歩あるいは二百歩を譲りまして、もし万一これからの
選挙の結果生れるかもしれないところの第二次
鳩山内閣のための
政策としてこれを好意的に
考えてみましても、その
内容を検討いたしてみますと、この
内閣の
政策は、
憲法改正、再
軍備促進以外の点におきましては、何ら前
吉田内閣の
政策と根本的に大差は認め得ないのであります。(
拍手)しいて差を探しますれば、たとえば大臣公邸の廃止とか役人の麻雀を禁止するといつたような、一応大衆から見ますれば歓迎されそうな、しかもいかにも人気取り
選挙対策ばかりであるのでございます。
また、首相は、いかにも庶民生活の理解者であり、社会保障制度にも前進させ得るような
政策を持
つておるというようなことを宣伝されますが、つい一両日前に、勤労大衆のための末期手当の減税措置に対しましては、
日本民主党は、いち早く野党たる自由党と組しまして、この減税措置法案に極力反対いたしたのであります。このために、勤労大衆のための期末手当の減税措置は破れてしまいました。このことは、この
内閣の本質をもうすでに暴露したものと言わざるを得ないのでありす。(
拍手)
このような
内閣によ
つて発表されますところの
政策は、新しいものといたしましては主として
選挙目当ての宣伝用の
政策であるのでありまして、これによりましてかえ
つて国民を誤まらせるものと言わなければならないのでございます。もはや、今日に至りましては、最初のころ
総理が披瀝せられましたような謙虚さというものはみじんもこの
内閣には認め得ないのでございます。このゆえに、最近におきましては、世人も
鳩山内閣はもつぱら
選挙宣伝
内閣ではないかということを申しておるのでございます。(
拍手)まつたく、
国民生活の安定どころか、から手形ばかりを盛んに発行いたしまして、善良なる
国民をかどわかし混乱させる無
責任きわまるところの
内閣と言わなければならないのであります。(
拍手)これでは
吉田ワンマン
内閣よりももつと悪質な反動的な
内閣と言われてもしかたございません。(
拍手)この点に関し、
鳩山総理の
責任ある御
答弁を承りたいのでございます。
次に、重ねて
総理にお伺いいたしたいことは、
総理は、去る十五日のラジオにおきまして、
中共も国府もともに
独立国であるということを言明されました。私は、一国の
総理ともあろう方がまことに軽率な言を吐くものだと一応思
つたのでありまするが、この
二つとも
独立国とは一体どういう意味であるか、この際お伺い申し上げておきたいのであります。しかし、また一方、正直な
鳩山総理のことでございまするから、やはり本心をうつかりして吐露されたものとも
考えたのでございます。してみますれば、
鳩山総理の心境は、ちつぽけな亡命
政権たる
台湾政府を
承認して
中共を
承認しなかつたということは誤りであつた、無理であつたというお
考えがあ
つてのことではないかと思われるのでございます。さらに申し上げますれば、
アメリカの圧力に屈しまして、
中国政府の代表
政権といたしましてあえて
台湾をとり、三年前
吉田総理は
吉田・アチソン書簡に制約されまして
日華平和条約を
締結いたしましたことはまことに軽率であつた、間違
つておつたと
考えておられるのではないかと思うのでございます。この際、この点につきまして、
総理の率直なる御
意見を承らせていただきたいと存ずる次第でございます。(
拍手)
事実、この日華
条約を
締結いたしましたことによりまして、
日本は五億の人口を有する
中共とは
国交調整もはばまれ、
貿易も大いに制限されて、わが国といたしましては大なる損失を招いておるのでございます。ところで、
総理は進んで
中共を
承認するような積極的な
外交政策の転換を考慮しておられるかどうか、この点もこの際あらためて承
つておきたいのでございます。
この点に関し、昨日
外務委員会で、
重光外相は、
日本がすでに国府を
承認している以上、
中共を
国家とみなし得ないということを言明されたのであります。これらの点からいたしまして、はからずもすでに
鳩山内閣は閣内にこのような不統一があるということが露呈されたのであります。(
拍手)
自由主義諸国家群におきましても、英国、インド、ビルマあるいはまたスカンジナヴィア半島の諸国はすでに
中共政府を
承認いたしておるのでございます。しかも、これらの諸国は、その以前におきましては国府を
承認しておつた国もあるのであります。従いまして、
政府は
中共政府を
承認しようという勇気さえありますならば、この
承認は技術的にはさまで困難ではないと
考えられるのであります。
総理にこの英断が今日あるかどうか、これまた重ねて承
つておきたいのであります。
次に、この
中共に対しますところの閣内の不統一に対しましてはいかに対処されるおつもりであるか、この点も重ねて承らせていただきます。
また、
中共貿易の促進は、今日では
国民の総意であります。これをいつまでも民間に放置しておき得べきものではございません。このためには、進んで
中共に通商代表部を相互的に設置いたし、あるいはまた
政府が主体となりまして
貿易協定などを結ぶ必要があるのでございます。また、
ソ連につきましても、今日の新聞にもありますように、
鳩山・
重光声明に対しまして、
日本との
国交調整に対する用意があるというモロトフの回答がございました。これらに対しまして、
日本政府として、さらにどのように積極的にこの
国交回復、対ソ
貿易に努力されるおつもりであるかどうか、この点も承
つておきたいのであります。それとも、前
吉田内閣同様、それは
ソ連の
平和攻勢であるから警戒する必要があるとお
考えになられまして、一挙にこれを排撃する御意思であるかどうか、これもお漏らし願いたいのでございます。
また、東南
アジアの友好善隣
関係はまず
賠償問題の解決にあると
考えられますが、
政府はこれに対しましていかなる積極的な具体策をとろうとしておられるか。
さらに、平和の問題についてでありますが、平和に
二つはございません。
アジアの平和愛好国は順次周・ネールの平和五
原則に替意を表しております。この周・ネールの平和五
原則に対しまして、首相はいかなる
見解をおとりになろうとしておられるか、またネールの
外交政策に対してはどのような
見解を持
つておられるか、この点も重ねて承
つておきたいのであります。
私どもは、
選挙管理内閣である現
鳩山内閣の
外交政策につきまして、具体的の一々の問題につきましてお尋ねする必要を認めませんが、
重光外相に対して一、二点お尋ねをいたしておきたいと思うのであります。
重光外交の基調をなすものは、自由党のそれと同じく、力のバランスの上に立つ
外交であると
考えられます。事実、
外相も、
外交の絶対条件であるごとくそのことを説いておられるのでございますが、そうなりますと、
国家が主権国として国際舞台に立ちます場合には、まず何よりも軍備がものを言う。言いかえますれば、
外交は相かわらず軍備のうしろだてが必要であるということになります。軍備を主体とした国策
外交がいかに危険みものであるかは、すでに古今の世界の
外交史が物語
つておるところでございます。すでに、
日本自身は、か
つてこの誤れる国策のもとに、今日の敗戦のうき運命をたど
つておるのでございます。ことに、
外相個人におかれましては、さらに十分このことにつきまして反省されたはずだと思うのであります。この際、力による
外交の勝利、力による平和というものは、再び同じく力によ
つて敗北し力によ
つて破壊されることがあることを私どもは
考えねばなりません。しかしながら、
外相は、相かわらず力のバランスの上に立つ
外交を今後も推し進めるだけでなく、さらに、そのために
憲法を改正して、
吉田内閣時代よりももつと積極的に軍備の強化をしようとさえいたしておられるのであります。これでは、
説明をいかに巧妙になされましても、その精神におきまして戦前の
日本の
外交と少しもかわりなく、何らの反省もないかのごとくにしか
考えられないのであります。戦前もまた
日本外交の
責任者であつた
外相とされましてかかる無反省にひとしい
外交政策を今日もなおとろうとしておられる
外相の
外交政策に対しまして、私どもはまことに
了解に苦しむのでございます。
そこでお尋ね申し上げたいのでございますが、
外相は、十分考慮されました上で、なおかつ戦前の
日本の
外交方針も決して誤まりでなかつたと
考えておられるかどうかというこの点でございます。
吉田・
岡崎外交は
国民からまことにはなはだしく
非難され、きらわれましたが、その失敗いたしました島大の理由は、両者が世界の歯車の動きを無視いたしまして、世界情勢の判断を誤まつたことでございます。つまり、
アメリカの軍備に依存いたしまして、反共を唯一の看板として、世界の動向たる自由
国家群と
共産主義諸国の共存を理解しようとしなかつた、この点にあるのでございます。そして、今日の
アメリカの
外交政策の世界的失墜の原因の
一つにもなりました、あまりにも気違いじみたマッカーシーに代表さるような
反共政策の
アメリカ外交に追随したことでもあります。かかる従来の
吉田外交におきましては、米。ソの対立が激化いたし、戦争にでも粗なりました場合におきましては、それは、民主主義陣営を
防衛するという口実のもとにおきまして
アメリカの世界
政策の一環としての
日本が前線基地となり、また国連軍の名におきまして
日本の青年の生命が奪われるであろうことは明らかでございます。ところで、
重光外交もこれと同じ方向を踏襲されるのであるかどうか、この点も承
つておきたいのであります。
重光外相が
共産圏諸国との友好善隣の回復を希望されておりますことは、
米国の圧力に屈しまして親米一辺倒、
秘密独善外交に終始いたしました前岡崎
外相が、かたくなに
中共貿易の熱意を示さず、やる意思がないというきゆうくつな
態度をと
つておりました点から見ますれば、まことに一歩前進であり、私どもも大いに期待をいたしている点でございます。しかし、かかる傾向は今日の世界の動向でございまして、決して
重光外相が積極的、進歩的であるからではないのでございます。
まさにこれは
日本としても当然とらなければならない
政策であるのでございます。ところで、このために今後さらにいかなる積極的
政策をも
つて臨まれるか、この点を詳細に承
つておきたいのであります。先ほど、自由党から、この
外交政策に対しまして非常たる御批判がございましたが、この御批判におびえて、当然のこの
外交政策も引込めることがないかどうか、この点も重ねてお伺いをしておきます。(
拍手)