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1954-12-18 第21回国会 衆議院 農林委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十二月十八日(土曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 綱島 正興君    理事 福田 喜東君 理事 安藤  覺君    理事 吉川 久衛君 理事 川俣 清音君       松野 頼三君    井出一太郎君       伊東 岩男君    本名  武君       足鹿  覺君    井手 以誠君       稲富 稜人君    中村 時雄君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局金         融課長)    松岡  亮君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  野田哲五郎君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 十二月十七日  委員松野頼三君辞任につき、その補欠として降  旗徳弥君が議長指名委員に選任された。 同日  委員降旗徳弥辞任につき、その補欠として松  野頼三君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  食糧農業団体砂糖等農政問題に関する件  農業災害補償制度改正に関する件     —————————————
  2. 綱島正興

    綱島委員長 これより会議を開きます。  農林大臣が御出席でありますので、これより農林大臣に対する質疑を行います。農林大臣は先般本委員会におけるごあいさつで、新たなる政策の問題はいずれ新たなる政治情勢の上に立つて実行に移す考えであるが、なお当面処理を要すべき問題については適宜処理するとのことでありました。本委員会といたしましては、その後本年の農林冷災害善後措置の問題、農村金融の問題、本年産米の作況に基く米の供出問題、米価の問題等について事務当局農林中金等質疑を行つて参りましたが、本日はこれらの諸問題並びに明年度農林予算の編成に関する問題、その他当面の諸問題についてこれより質疑を開始することにいたします。  質疑の申出がありますので、これを許します。委員松野頼三君。
  3. 松野頼三

    松野委員 今民主党で一番農政通といわれる河野さんが農林大臣になられましたことに対し、まず第一に私たちも敬意を表します。もちろんこの前の委員会でごあいさつのように、あえて特別短命内閣だから、大きな治績をただちに期待することができないというお話も拝承いたしました。しかし昨日は鳩山総理大臣から、とにかく内閣を担当した以上、今日の問題、差迫つた問題もたくさんあるから、十分政局を担当するという力強い御発言があり、また昨日、厚生大臣は私の質問に対しても、相当大きな抱負経論を述べられて、来年の予算にまで言及されております。そうなりますと、勢い日本産業として一番多数の人口を擁する農林行政についても、当然御所信がおありになるだろうと思いますから、河野農政で前の農政と特にかわつたようなところ、また自分の所信としてかわるべきところという点を、あらためてひとつこの委員会を通じて全国民に御発表を願いたい。報道関係におきましても相当問題点は御発表になつておられますから、本日あらためてこの委員会を通じて御発表願いたい。これは報道の話ですから、この内容はどうか私も存じませんが、少くともこの中においての大きな問題としては、米の問題を第一に御発表になつていらつしやる。この米の問題については、党の政策から申しますと、自由党相当以前から発表いたしております。ことにこの前の新党協議会当時の政策が、このたびできました民主党政策になつておるところを考えますと——実は新党準備会のときの農政というものには、かく言う私も政策委の一員として参与し、筆を入れております。また現在農林委員長綱島君も農林政策には筆を入れておるので、文句の上では相当われわれ自由党に似たところはございますが、しかし要するに政治というものは文面ばかりじやなしに、どういう精神政治をやるかということが大事なことです。従つて私は、米の自由販売と申しますか、あるいは統制撤廃と申しますか、どちらか知りませんけれども、河野大臣所信は、米の問題に関しては自由主義的な方向に進むんだというふうに文面で現われておりますか、どういう意味でこれをおやりになるのか。長所、短所及びその一・二の例を御発表願いまして、全国民の関心の一番多い点だけをこの委員会を通じて明確に——どういう意味で米の統制を撤廃し、どこにねらいを置き、どういうところに長所があるのかということを、簡単でけつこうでありますからお伺いしておきたい。同じような文面が出ておりますので、われわれはまず第一にその根本精神だけをお伺いしたいと思います。
  4. 河野一郎

    河野国務大臣 委員長からお話のありました通り、本日は時間もあまりありませんので、私もあまり長々とおしやベりをするのはどうかと思いますが、今松野委員からのお尋ねでありますから、この際所信を明確に披瀝いたしたいと思うのであります。  先だちまして御了解を得ておきたいと思いますことは、先般の委員会に私が出席いたしました際には、私の気持としては、選挙管理内閣であり、短命内閣であるから、ここでは一切何もやらないという精神ではないのであつて、ただ具体的にやるべきものではない、選挙の結果によつて社会党内閣を担当することになるか、自由党内閣を担当することになるか、またわれわれが引続き内閣を担当することになるかがきまるのであるから、考え考えとして皆様にも申し上げ、もしくは皆様の御批判も受けますが、これを実行に移すことは、選挙を通じて国民批判を得た上で実行に移したい、こういう考えであるということを申し述べたいわけであります。従つて皆様方からも十分御意見の御開陳を拝承することはけつこうであります。そういう意味でありますから、私は当面処理を迫られておる問題は処理をいたします。この処理にあたつては、皆様方の十分な御理解と御協力によつて処理をして参りますということを申し上げたのでありますから、その点については誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  そこで私の考えまする現在のわが国の農政につきましての根本的の考えといたしましては、増産は絶対に各農業部面においてこれをはからなければなりませぬけれども、この増産手段方法として第一に考えることは、できました農産物流通過程に十分な改善を加えまして、そうして結論として農家手取りを多くする、農家収入をふやす、農家収入をふやすことによつて増産意欲を高揚するという方向に行きたいと考えております。でございますから、すべての農政におきまして従来とかく増産いちずに参つておりましたものを、面接の増産施策を講ずるよりも、農家収入をふやすということによつて増産意欲を高揚して行く、それに農林行政は協力して参るという方向に行きたい、これは決してかわつたことではないと思います。もちろん歴代そういう方向でおやりになつてつたと思いますが、私の考えはそれを強く行きたいということでありまして、しいて申せば国家国民に協力する意味においては、米の増産をするのだというイデオロギーをかえまして、そうでない、農家収入を増すというところに重点を置いて、それは米をつくればそういうふうになる、その他の農産物をつくればそういうふうになるというふうに行きたいということが根本考えであります。  そこで今の米の問題に入りますが、米の現在の管理をどういうふうに改善して参つたらよろしいかという考えとして、私は今申し上げました精神に立ちまして、現在のように生産者から離れる価格と、消費者が入手するときの価格との間に、いわゆるやみ価格と申しますか、これの中間ロスが非常に多いのであります。公正に生産者消費者の間に分配をするということは、絶対に一刻も早くやらなければならぬことではなかろうかという精神に立つて、私は今の考えを持つておるわけでございます。でございますから、できれば一日も早くやりたい。しかしそれには時期と手段準備がいります。これは万全を期してやるべきである。第一に申せば、消費者方面安心感を与えるということが絶対必要である。その安心感をどういうふうにするかということ等に相当準備もしくは用意がいるのではないか、こう考えております。  なおどうせ引続き御質問でしようから、そちらのお尋ねによつてだんだんお答え申し上げて行きたいと考えます。
  5. 松野頼三

    松野委員 要するにただいまのお話で一番明瞭になつたことは、河野農政というのはもうかる農業をやるのだという一言に尽きるだろうと思います。あえて批判は後ほどにいたしますが、第二の問題としては、ただいまお話の、それでは現在中間経費として何が一番大きなウエートを占めておるか、農林大臣はもちろん御研究になつておるだろうと思いますが、どこが一番大きな中間経費になつておるか、その中にはもちろん数万人の食糧管理人件費でありますか、食糧庁における人件費というものも四十億程度つておるだろうと思います。この大きなロスというものを考えて、そのロスをなくすならば現段階のものでもよいのかということになつて来る。従つてそのロスをなくすという意味自由販売にするのだということになれば、そのロスを別な面で埋めるならば現在の段階でよいのじやないかという疑問を持ちますので、その点をもう一度進んでお尋ねいたします。
  6. 河野一郎

    河野国務大臣 申し上げます。もちろん今の事務費等も簡略がよろしい。全体の国民負担になりますから、それはなくする方がよい。私の申し上げましたのは、今のやみ米の運搬、やみ米中間利益等をなくて、そうして自由に入手できる方法にすることの方がよいのじやないか、こういうことを考えております。  なおお言葉でありましたから申し上げますが、もうかる農業ということにのみ私はこだわつておりません。ただお互いの言葉の間に、私の申し上げた言葉の中にも誤解があるかもしれませんが、松野委員のただいまのお話にも少々誤解がある。これは全国の農民に影響するところが多いと思いますので、私も注意いたしますから、あなたも誤解を起させないようにお願いします。
  7. 松野頼三

    松野委員 今のお話で、もう一つ話が進みました。それは中間ロスをなくするということになりますと、おそらく現在は二割程度のマージンがとられておる。戦前あるいは自由市場の場合には五%あつた、三%あつた、いろいろ計算がございましようが、今はまるで大きなウエイトを占めておるということは、いわゆるこれは役人繰作である、国家費用であるというところに大きなウエイトがあるのだ。これは私は別な面で、食糧上すべての人件費を国で見るならば、ロス相当減るだろうと思う。生産者消費者との差額における値ざやは挾まるのではないかと私は考える。それならば河野農政で、もし中間ロスが減るならばどちらでもいいということになると、また別な案件も出て来ると思います。その点今の言葉では不明確でしたからお尋ねいたします。
  8. 河野一郎

    河野国務大臣 国家が見るといいましても、負担国民がするのでありますから、なるべくそういうことは避けた方がいいんじやないか、こう思います。国家負担にせい、直接消費者負担にせい、いずれにしてもこれはそういうことをやらぬで行くならば行つた方がいい、こう考えます。
  9. 川俣清音

    川俣委員 関連して……。河野農林大臣松野委員に対する御答弁中に、中間経費がかかり過ぎておる、こういうことでございますが、中間経費のうちで何が一番大きいウエイトを持つておるかということは御存じだと思いますが、事務費だというふうにお考えのようにも聞えたのですが、これはおそらく河野農林大臣は、まだ就任日が浅くて検討されてないんじやないかと思いますが、交錯輸送といいますか、結局日本の米の生産地と申しますか、供出というものが片寄つてつて消費地との間に開きがあり過ぎるというところから来る交錯輸送が、大きなウエイトを占めておるんじやないか。おそらくそうお考えになつておるはずだと思うのですが、この点どうなんですか。
  10. 河野一郎

    河野国務大臣 もちろん川俣委員の仰せられることも、その通りと思います。決して私は松野委員との間にそういうふうなことだけで申しておるのではないのでありまして、たまたま一例を松野委員人件費にとられたというだけであつて、決して今のようなことを今までお話合いをしておつたんじやないのでありますから、その点は誤解のないように願いたいと思います。なお中間経費々々々々と申します。が、私は今のやみ米等についても考えておるということでございますから、その点も御了承願いたいと思うのであります。
  11. 川俣清音

    川俣委員 事務費という場合と、交錯輸送による輸送費の割高だという場合とは、中間経費に占める率が、交錯輸送だという場合は非常に意味が違うと思うのです。これは全体的に適正な配給をするというところから起つて来る必然の結果なんです。この必然的結果というものを見落しては、また食糧対策の欠陥を生ずることになりはしないか。この憂いがあるために私尋ねたのです。  それからまだいろいろ中間経費の中を、食糧対策を論じられる場合に、せつかく農林大臣につかれたのであるからして、今まで食糧庁外郭団体に対するずいぶんいろいろなむだな経費がある。まず第一に、これくらいなことを先にやつて根本問題はもつと検討された方がいいのじやないか。私の時間になりましたら言いますが、少くともむだな点がずいぶんあるのです。それはあなたが野党時代に十分知つておられるはずだ。まずこれくらいから手をつけるという考え方が先でなければならぬと思うが、この点についてひとつ……。
  12. 河野一郎

    河野国務大臣 御説ごもつともでございまして、お答えは前後するかもしれませんが、外郭団体の整理はさつそくいたすように、私から指示いたしてあります。少くとも、川俣委員の御期待に沿い得るかどうか知りませんが、この点につきましてはまたいずれ御意見等も十分に伺つて、参考にして私もやりたいと思います。御協力いただければたいへんけつこうだと思います。  なお今お示しのように交錯輸送の点であるとか、それらすべての点においてなるべく私は——川俣委員の御出席前に私が申し上げたのは、生産者手取りを多くし、消費者負担を軽くするという、全面的にその点において改善をして行くように米穀政策考えて行きたい、食糧政策考えて行きたい、こう申し上げてありますから、どうぞひとつ御了解願います。
  13. 松野頼三

    松野委員 生産者の方のただいまの自由販売に対する意見と、車の両輪である消費者の場合は、配給機構というものを存置されるのか、あるいは改正されるのか、全廃されるのかという点については、はなはだこれは疑問でございますので、今度は消費者の面の場合もひとつあわせて御答弁願いたい。
  14. 河野一郎

    河野国務大臣 お答え申し上げます。私は元来食糧政策農業政策との間に、画然とはもちろん行かぬでございましようけれども、目的をかえて行くべきもんだ。これが必ずしも一致しない場合があるんだ。食糧政策はどこまでも八千万国民全体の問題であつて、その中に占める農家だけの問題じやないんだ。であるから、全国民的視野に立つてこれは考えることなんだ。ところが農業政策はどこまでもその中の四千万の農民を対象にして考えることなんだというふうに考えなければならない。この利害が相反するという、利害という考え方でなしに、国家行政の面においては、食糧政策という考え方でこれを全面的に批判検討して、そうしてその中に占める面といたしましては全産業の問題が入つて来る、労働賃金の問題が入つて来るというようなことで、さらに進めば社会政策的に、非常にお困りの方に対しては米をどういう価格にしなければならぬという問題も起つて来るというようなこと等を勘案いたしまして、やつて行くべきもんだ。これと一方において生産者手取りもしくは生産者収入の面は、農政の上から批判して行くべきもんだというふうに割切つて考えまして、その帰一するところを行政の面でどこに持つて行くかということにして参るべきだと考えております。そこで、しからばそういうふうにすればどうなるかと申しますと、ただいま松野委員の仰せられましたように、配給機構等についてはどうするんだというお尋ねでございますが、これはどこまでも私の考えとしては、なるべくならば一日もすみやかに自由販売にすべきもんだ、自由に売買できるようにすべきもんであつて配給ということは考えたくない。しかしこれには先ほど申し上げます。ように、段階もございます。しからば自由にして価格はどういうことになるか、価格も自由かつてにしておいていいかどうか。これは絶対に許さるべきことではありません。それはただいま申し上げますように、食糧政策として全国民がこれに関係して、どういうふうになるかということは、この米の値が上れば、そこで労働賃金も上つて参る、さらにお困りの方が非常に生活が困難であるというような問題がありますから、そういう視野に立つてこの価格操作をする必要が起つて来る、こういうふうに考えております。
  15. 松野頼三

    松野委員 ただいまの河野大臣お話で、相当実はこれは今までの日本農政上において満期的な構想が発表されたわけです。と申しますのは、食糧問題というのは、社会政策的に行わるべきもんだ。今までの……
  16. 河野一郎

    河野国務大臣 ちよつと中間でございますが、私の申し上げたことの一つだけとられると誤解が起るといけませんから——今のは社会政策だけではないのであつて、三段階にわけて申し上げておりますから、その点ひとつ御了承願いたいと思います。
  17. 松野頼三

    松野委員 三段階にわけての御説明のようでありますが、少くとも食糧問題というのは社会政策的なものも含まれておるんだというふうに解釈すれば、一番妥当のように思いますが、少くとも農林大臣がその言葉を使われたことは、相当私は大胆な言葉だろうと思います。いずれにしまごとく食糧というものは、農林大臣が所管し発達育成して行くというのが、各省設置法の中にも書いてございます。各省設置法の中の農林省の任務という中に、農山漁村生産改良発達、あわせて農山漁村の福祉というものが、農林大臣の使命であるわけでありますが、ここにあらためて社会政策的なものが入つて来たことは、相当注目すべきものだと思います。ただいまの話をもう少し具体的に砕いて私が解釈いたしますならば、米というものは、これができたときには社会政策的なものであつて、なるべく国民経済上安い価格に安定させるべきだ、そして労働賃金にも悪影響を及ぼさないようにするのだ、こういうお言葉を平たく申しますならば、これは、後ほどもきつとお言葉があると存じますが、現在御承知のごとく、世界の米の相場というものはだんだん下つて参りました。おそらくシフ価格におきましても百六十、百五十とだんだん下つて参ります。しかしながら日本の本年の産米を計算して参りますと、百七十ドル以下ということはございません。そうすると必然的に日本の米を生産するよりも、逆に言うならば、社会政策的に安い米を国民に食わせるという意味からすれば、外米に依存する方が、ずつと安定した価格が得られるという裏の言葉にもなるので、全部が全部ということは申しませんが、一部のものはそういうふうに考えられるのです。そうなると、日本はもし外米が安いならば、外国から米を買つて日本国民は食べる、そのかわり生糸がもうかるならば生糸日本農業でつくる、あるいはタバコがもうかるならタバコをつくる、あるいは海外に輸出するような農産物ができるようならばそれにする方がいいのではないか。先ほどのお話にはございませんが、もうかる主義というと言葉は妥当じやないかもしれませんけれども、必然的にそういう方向に行く危険を私たちは非常に感ずるのです。日本社会政策的という考えから言いますならば、外米買つた方が、消費者の面から言えば安くなる、品質は別にして安くなる。そうすると日本農業は、数千年来の農業に改革を河野農政においていただかざるを得ないという不安もあります。ことにこの中には——これは新聞ですからほんとうかどうかしりませんが、たまたま食糧農林大臣がやつておるために、農村の問題にウエイトを強く置き過ぎているという言葉も出ております。とにかく米は高くなつてはいけないのだという言葉が、非常に各所において出て参つております。私はこれを考えて参りますと、河野農政の一番大きな問題は、社会政策的というか、この言葉がいずれ論議になりましようが、社会政策的な米ということを念願に農林大臣がお考えになると、日本米作農民というものの方向も百八十度あるいは三百六十度転換しないと、われわれは河野農政について行けないのじやないかという心配もありますので、これは極端な例かもしれませんが、方向はそういう感じを抱くのです。その点農林大臣から十分な御答弁があると思いますが、ひとつこういうことについてもう少し詳しく、また間違わずにはつきり言つていただく方が、ずつと国民は迷わないのでなかろうか、こう思います。
  18. 河野一郎

    河野国務大臣 私がお答え申し上げたうちで、一番最初に使いました、一般産業一環として考えなければいけないということに、相当重点を置いてお考えいただきたいと思うのです。私が申し上げました通りに、労働賃金が上るということは、日本自立経済達成の上に非常に悪影響を来すということで、日本自立経済達成一環として農業も一役買わなければならぬということは、私が申し上げるまでもないことだと思うのであります。そこで米の増産は絶対にしなければなりませんけれども、その増産方向として生産費引下げに全力をあげなければいかぬ。さらにもう少し申せば、農政の上において農家現金支出をもつと減すように、国家はあらゆる面において施策をしなければならぬ。たとえば肥料問題のごときももう少し大きく取上げて、そうしてこの方面において農家現金支出を減すように、米の生産費を極力下げるようにして行かなければならぬ。何と申しましても自由経済下において、世界農業一環として日本農業は立たなければならぬ、これは戦前日本農業と違う点だと私は思うのであります。戦前軍国主義の裏づけとしておつた日本農業と、今日世界自由貿易下における日本農業のあり方というものとでは、どうしても世界農業のへ圧迫をひしひしと身近に考えなければならぬということを考えますときに、なるべく早くこの一環として日本農業があり得るという立場に指導して参ることが必要じやなかろうか。決して私は生産費を割つてかまわないというような考え方は持つておりません。なるべく早く日本米作農民世界米作農民と自由に競争できる立場に置くように保護政策をとつて行かなければならないのではなかろうか、こう考えておるわけであります。
  19. 松野頼三

    松野委員 他の産業も同様でありますが、さしあたり一番大きな問題として、現在日本銑鉄を輸入し、鉄鋼一貫作業鋼鉄生産しておりますが、これを経済的に申しますならば、鋼鉄を入れて製品にして輸出する方が原価は安くなるのです。しかし日本産業育成のために、あくまで銑鉄を入れて加工して鋼鉄にして行くわけです。こういう、ふうにほかの産業でも同様に、合理化能率化あるいはコストの低下ということだけを目標にして、日本国内全体の完全雇用なり産業育成を忘れてはいけないと思います。それと同様に、日本の米が高いから、外国の米を入れればいいというわけには参らぬと思います。ある程度値ざやはあるにいたしましても、当分の間私たち日本農民の完全な生活を助けるために、いかに社会政策的とは言いながら、日本の米が現在外米よりも高くても、日本農業育成発地というものを継続して行かなければ、日本は立つて行かないと思うのであります。日本生産費を安くすることはけつこうであります。しかし日本の米が外国の米よりも安くなければ日本農家は健全でない、あくまでも外米よりも安い日本の米をつくるのだという目標を置く必要はないと思う。ある程度高くてもちつともさしつかえない。もちろん法外に不必要に高いならば別でございましようが、現在の生産費計算からいつて妥当な値段ならば、外米の値段がいくら下ろうが、日本の米の値段はある程度高いところに置いても、一つも外国に輸出競争する米ではないのですから、あえてさしつかえなかろう。もう一つ賃金の問題にも触れますが、なるほど米の値段は賃金の値段に相当影響はいたします。しかし日本の内地米だけが賃金に影響するわけではない。魚あるいはその他の副食物、すべてのものが生活に影響するのであつて、米が七%上つたから賃金が七%上つたということは、過去の自由主義経済時代にもございません。米は御承知の、ごとく生活費の何パーセントなんです。従つて米の値段ばかりで賃金を安定させようという河野農林大臣考え方では、妥当な結論は得られない。その例はこの五、六年間の例をずつとおとりになるとわかるように、米の値段が上つたたびに賃金は値上げをいたしておりますが、米が七%上つたからといつて賃金は七%上つておりません。むしろ賃金がうんと上つたときに、米の値段は一銭も上らなかつた例もある。米と賃金は一対一ではない。従つて米というものは総体的に考えて、総合食糧の中でその一部を占めるものでありますから、米すなわち賃金という考えは、私はどうしても妥当に考えられません。従つて今後社会政策的に米の問題ばか参りあるいは農家ばかりこれを圧迫する言う考え方は、妥当ではなかろう。その他のすべての生活費のわずかの何パーセントですから、農林大臣がここで大きく言われるように、米によつて社会政策の基礎をつくるのだというならば、日本社会政策の重荷を農村だけが負うことになる。これは日本農村の現状からいつて、妥当でない。肥料を下げるのもけつこう、電気料金を下げるのもけつこうです。しかしながら農村から考えるならば、あくまでも大きな農業価格の安定あるいは将来の見通しというものにゆるぎを抱きますならば、せつかくの河野農政の第一歩において農民の支持を失うのではなかろうかという心配になる言葉が、断片的ですが、多々ございます。この点はよくつなぎ合せて御説明いただかないと、わからない点がたくさん出て参ります。そのほかにも、安い農村労働賃金を一般労働賃金まで引上げる、これはどつちかと申しますと、相当米の値段が高くなつて来る。先ほどのお言葉では、安くて安定させる、最後の方に参りますと、労働賃金と言われる。これは何の労働賃金か知りません。農村の雇用賃金なのか、あるいは副業の労働賃金なのか、何の労働賃金なのかわかりませんが、少くともこういうことを考えて参りますと、前後して非常に疑問を抱く。私は日本の米の値段を外米と匹敵するように安くしなければ日本農政が失敗だとは思いません。日本の米は妥当な値段で外米がどう上ろうが下ろうが、日本農業は独自に保護された一つの国内産業として立つて行くべきものであつて、国際産業の中に農業を入れるという考えは非常に危険ではなかろうか、またそういうことは日本農業においてはあまりにかけ隔てた条件ではなかろうかと考えます。御答弁をいただければけつこうであります。
  20. 河野一郎

    河野国務大臣 私は外米よりも内地米の価格を下げろというようなことは考えておりません。内地米と外米との間に差のあることは当然であります。商品として優秀な内地米が外米よりも安く売買される必要はない、これは当然であります。しかし生産費をなるべく下げて、そして高く売れるものをつくれば、農家収入はふえるということで、なるべく生産費を下げるように各自の施策においてやらなければならぬというふうに考えておるということに御訂正を願いたいと思います。そんなばかなことはできぬとおつしやつても、それはやることを目途として行かなければならぬ、こういうことであります。米の値を下げておいて労働賃金が云々、農村の労働力の価値が云々ということでございましたが、これは全然話は別だと思います。すべての手取り収入がふえればそれぞれの農家の労銀が上るということになるのでございますから、そういうふうに持つて行かなければいけないのだ。今のように植木屋さんでも石屋さんでも大工さんでも、何に比べても農家の賃金は安いのじやないか、手間賃が安いのじやないか、そういうふうに安いことが当然だというような産業にしておくことが間違いなんだ、生産費の計算を安くすればあたりまえだというようなことではいかぬのであつて、これは是正して参る方向へ持つて行きたい、こういうことでございます。  もう一つ加えておきますと、米が労銀の中で占めるウエートは大したものじやないという考えは、これは、議論になりますけれども、私は非常に大きいというふうに考えております。でございますから、日本自立経済達成の上において、決して私は、他の産業が私と同じ歩調がそろわないのに農業だけ行こうということは許されません。これは松野さんと同じであります。日本農業だけが世界農業一環として行くのだ、他の産業は御自由だというような考え方は間違つております。しかし少くとも現在の日本の置かれております地位におきまして自立経済の達成をするのだという以上は、その中に占める日本農業は、戦前軍国主義下における農業とは違つたものを持たなければならぬ。戦前日本農業もしくは占領下における日本農業というものは、何といつて軍国主義下における農業政策であつたということは、私は争うべからざる事実だと思うのであります。そうして米の自給自足は絶対に確保しなければいかぬという考え、いやしくも一朝有事の際に食糧がなければいかぬからという考え方、さらに農村の子弟を対象にして強力なる国軍の建設をするのだという、その一環として考えられた日本農政というものは、根底から是正しなければいかぬものだという考えを私は持つております。  あまり申し上げますと議論になりますから差控えますが、それを今日の自由主義下において、自由主義国の一環に立たされた日本農政というものは、何といつてもひしひしと身近に、外国の特に食料農産物の下降線をたどつておりますものが絶対に影響なしというわけに参らぬ。たとえば外国の労働者の食べるパンの値段と日本の労働者の食べる食糧との価格にあまり開きが出て参りまして、これを日本の労働者の負担において、外国産業の上において競争して参るということでは、絶対に日本の労働問題は解決しない。日本の労働者諸君にそういうことは許されぬことだというふうに考えまして、それはわれわれ農政の面においてその一翼をになつて、そうして農産物価格の引下げに全力をあげて行かなければいかぬ。それが農村の圧迫にならぬように、われわれは早くそれに着手して、生産費の引下げに重点を置いて行かなければならぬというふうに考えておるのでございますから、その点はひとつ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  21. 松野頼三

    松野委員 いろいろ見解の相違もございますが、お互いにその見解の相違をただす必要もないと存じます。ただ先ほどの自立経済という言葉はわが党のかねてからの主張でございますし、この点において一致しておりますが、その中におきまして、日本の輸入の中で一番大きなウエートは何かといいえば、綿とか石油とか鉄、こういうもの以上に実は食糧なんです。従つて自立経済という言葉は、相対的に考えるならば日本の自立なんですから、ガソリンを掘ろうがあるいは日本で綿をとろうが、これも自立経済の一環ですが、一番大きなしかも長い伝統を持ち、世界に冠たる日本農業技術を活かすことは、自立経済の一番大きな柱ではなかろうか。その意味においてわが国は、まず米の値段の操作よりも、自立経済という意味から日本食糧増産に数年間衷心から努力したわけであります。それを今度の農政で一番疑問に思いますことは、ここにもありますし、先ほどもたびたび繰返されましたように、食糧問題は社会政策的に行うべきもので、八千万国民の問題にすべきである、農政の中に入れるべきものではない、この点が一番大きな疑問なんです。自立経済という言葉けつこうでありますが、そのことをなすにおいて、あるいは観点において、登り口が違うようにわれわれは自立経済の観点からこの農政を達成して行きたいと思つておりますが、しかし河野さんの御意見社会政策的に考え、その一つとして日本農業があるというのでありますが、そこに問題があると思う。私たち日本農業がまず第一番だと考えるが、あなたのお考えは、農業もその一部だというのであつて、その一部だというところにわれわれは農村に対するウエートの置き方が非常に違うのではないかと考える。これはあえて議論をするよりもそこに非常に大きな難点があると思つております。ことにこの新聞記事がどうか知りません、あるいは新聞記事に責任を負わないとおつしやるかもしれません、しかしこの記事からわれわれが知り得る範囲におきましては、社会政策的に行うべきものであつて日本農政の中に入れるべきものではない。この考え方日本農政を誤るものではないか。この一点だけあえてお伺いしておきます。あとの議論はあとで別個にしていただいてけつこうです。
  22. 河野一郎

    河野国務大臣 私は先ほど申し上げましたように、食糧問題は何と申しましても八千万国民の問題であつて農政は四千万農民の問題であります。これを一つにして考えることは間違いだと思います。これは全国国民の問題として考えることの方が私は正しいと思います。しこうして農家手取り値段を幾らにするか、ということになりますと、これは農業政策であります。でありますから、この内地米の問題と、外米、外麦その他全部くるめた食糧政策が、農政の中で大きなウエートを占めるということ、これは争うべからざる事実であります。しかしこれは全体的に考えるべき問題であることの方でいいのではないか、こう思うのであります。しかも米価は幾らぐらいがいいかということを考える場合に、これは先ほども申し上げましたように、労働賃金がどういうことになるか、労働賃金の中で食糧の占める部分はどのくらいになるか、その占める部分がどのくらいになれば、一体米価というものは、どのくらいの地位に安定さすべきものかというようなことと関連して考えるべきものである。そうすれば内地米の価格をどの程度におくのがいいか、外米価格をどの程度においたらいいか、外麦の価格をどの程度においたらいいか、この点は議論になるかもしれませんが、今後私の担当いたします限り、食糧問題は数量調整よりも価格調整の方になるべく重点を置いて参りたい、こう考えております。従つてこれを農政の面について考えますれば、先ほど来御意見もありました通り、現在の農家は、全国的に考えますと、やみ値で一体どれくらいの数量が幾らで売れるかということが、農家の手取に相当大きな影響を与えておりますが、これらについても相当深く関心を持つて考えて行かなければなりません。またこれは一方消費者の方から言いましても、八日分のところもあるようでありますし、十五日分のところもあるようでございますが、これらを総じてみまして、相当の数量をやみ米に依存しておりまする点から考えますと、これらを全部通算して、消費者は一体どれくらいの金をこれに払つておるか、それから生産者の方の手取りはどういうふうになつておるかということを相対的に計算いたしまして、この点を双方の面に改善を加えて行くというところに、食糧問題の解決点を求めなければならぬのではなかろうか、こう思うわけであります。なおあとの点はお答えはいらぬということでありましたが、一言言わせていただきますれば、自立経済達成は、必ずしも買うものをなるべく少くして行くということのみ考える必要はない。外国へ輸出できるものはどんどん盛んに輸出できれば、買う方の面も、何も今よりも外米をよけい買つて来て、内地米が減つてよろしいということは申しません。増産はどこまでも増産を期するように、前段申しましたように農家収入を多くして、この方面から刺激を与えて、増産意欲を向上して参るようにして行きたいということ等を、双方から勘案して行きたい、こういうふうに御了解いただきたいと思います。
  23. 松野頼三

    松野委員 御承知のように、価格操作日本農政をやつて行くというと、必然的に、値段をきめるからこれについて来いという農政になりがちだ、放任主義になりがちだ。ここに私は疑問を抱く。あえてそうではないと言うが、私たちが疑問を持つのは、この一点になつて来る。これは両面から行かなければならない。価格ももちろん操作をやるだろうが、逆に言うならば、生産の最低限度を維持してやるという両面で、初めて日本農村が立つて行くのだという考えを持つております。片方だけで、価格操作だけで日本農政が自由主義的な完全な農政をやつて行けないと同様に、原価主義的なものも最低保障してやるという両面で、初めて日本農政が成り立つのではなかろうかと考えます。  それからもう一つは、ただいまのお話のように、社会政策的に八千万国民のためだ、あるいは輸入を減らさないでも輸出をふやせばいい、これも一つの議論かもしれません。しかしながら、これは相当な問題点があります。私たちは、あくまで人口の過半数を有する日本農業は、ひいては八千万国民に対する最大の産業だという観点から、日本農政日本産業を支配するもの百であつて国民の一部だというほかの産業とは別個だという誇りを、私たち日本農業に対して持つている。この観点から、私と河野さんと見解の相違が出て来るかもしれません。河野さんは産業の一部だと言われるが、私は日本の貿易、日本の人口、日本の歴史、日本の将来、日本農政から考えて、日本の人口の半数以上を占めるのだという観点から、これは日本の国としてなくてはならない、一つの大きな問題だと思う。一部という考えよりも、半数だ、こういうところにウエイトの置き方が違うように感じ取れます。  もう一つは、ただいまのお話のように、価格操作だけでは非常に危険なことです。あくまで生産費計策あるいはある程度の補償制度を設けなければ、価格制度だけで日本農政が立つて行くわけに参りません。外米が安くなれば、必然的にこれに影響されて、ただちに外米と同様ということはありませんが、品質の差があるからといつても、品質の差だけで日本の米が外国の米と太刀打ちすることはできないと思う。従つてどうしてもその面においては、外米が安くなれば、価格操作は必然的に外米に影響されて安くなる。ここに非常に疑問があると思う。日本農業は、当然国内産業としての保護育成という立場から、外米に影響のない値段もある程度出て、日本の自立経済には何ら害はないという観点を持つております。その点はウエイトの置き方が違うように考えられます。それから先を進めていただいて……。
  24. 河野一郎

    河野国務大臣 ちよつと、誤解が起るといけませんから……。私は今の価格操作は、全農政に対して申したのではありません。今食糧お話がございましたから、これから食糧政策を遂行するには、数量調整よりも価格調整に重点を置いて考えて行くつもりだ、こうお答え申し上げたのであります。これを全農産物にというようなことは考えておりません。なお、生産費を補償するということが大事じやないかと言われますが、価格操作をする面において、生産費を無視して価格操作をするということは考えておりません。価格操作ということは、生産者消費者との中間にあつて、適当な価格を操作して行くことが重点でありますから、価格操作という言葉の中には、そういうことが含まれておると御了解いただきたいのであります。なお、外米の値が下れば、ほうつておいて、内地米の値が下つてもよいといこうとは考えておりません。これらは価格操作の中にすべて取入れて勘案して参ることだ、こういうことであります。また誤解を生むといけませんから申し上げておきますが、その価格操作の基礎はだれがきめるか、これは民主的にきめるべきであつて、政府がかつてにきめるべきではない。生産者消費者、関係各層の代表によつて、こういうところを理想にして価格操作をして参るべきだということを申し上げたのであります。私はどこまでも自立経済達成の上において、労働者の協力を得ることは絶対必要だという面から参りまして、労働賃金の中で食糧の占めるウエイト相当大きいということを考えますれば、食糧問題はそういう面から相当考えなければならぬ、農政だけで考えて参るわけにはいかないということを申し上、げたのであります。従つて米の価格が下れば、下つただけに生産者手取りを多くし、もしくは現金支出を減す面において、別に農政の上においてはその点に重点を置いて、たとえば今まで肥料屋が横暴で、なかなか下げにくかつた肥料についても特別な処置を講じ、勘案をして肥料の価格を下げることに一段の努力をしなければならぬ、もしくは税制の面においても勘案しなければならない、あらゆる面において農村に対してそれらの点を十分考慮いたしまして、生産費の引上げに万全を期して、世界農業一環として十分に競争し得るように農政は持つて行かなければならぬものだ、こう申し上げておるのでありますから、その点はひとつ御理解いただきたいと思います。
  25. 松野頼三

    松野委員 ただいまの河野さんのそこまでの言葉はいいのです。しかしそれを一歩進めて参りますと、危険なことが出て来るのです。社会政策的に米価をきめられる、しかし農村にも社会政策を及ぼしてくれという。なぜならば、農村の失業対策事業あるいは生活保護関係はきわめて零細なものである。農村において、ある程度は混淆しておるかもしれません。社会政策的な米価をきめたという非難を受けるかもしれません。しかしながらわれわれは生産費プラス・アルフア——そのアルフアはあるいは河野さんのお気に沿わないかもしれませんが、われわれが米価決定で考えて参りましたのは、あくまで農村の自立ということを考えて米価を決定して来たわけなのです。逆に言えば社会政策的なことはあとから出て来た問題であつて、主として農村を主体に日本の米価を私たち考えるべきものだという考えです。なぜならば、社会政策的に八千万国民の中に農村はその下積みになれという考えでなしに、まず日本農村は、先ほど申しましたようにウエイトにおいても、人口においても、伝統においても非常に強いのだから、やはり農家の自立を考えて、その上にある程度社会政策的なものを考えるという逆な立場に立つ。そこにどうしても根本的に私の考え河野さんの考え方は、何べん言つても食い違う。これはあえて私の頭を直せと申しても無理だし、お宅の方を直せといつても無理だから、私はあくまで日本農政はそういう考えでやつて行くべきだという考えだけ申しておきます。いろんな誤解があるならば、あえて言葉じりをとる必要もありませんから、いつ御訂正をいただいても、言葉が足らなかつたことを補正していただいてもけつこうです。  もう一つ、ここに問題が出て参りましたのは、農業団体の官選はだめだ、下から盛り上るものがいい、けつこうな話です。それでは現在の農業団体は下から盛り上つておらぬのかという疑問を抱く。いかにも農業団体を改組するのだというような考え方である。そうしますと現在の既存のものはまだだめなんだ、新しいものをおつくりになるという考えかという心配があるのですが、現在の農業団体を、下から盛り上るものをおつくりになるお考えですか、それとも現在のものを是正して認めて行かれるおつもりですか。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 この機会にお許しを願つて……。私も農林大臣を拝命しておりますから、農村の方はひとつもかまわないようにするじやないかというような誤解を受けます松野さんにひとつお考えをいただきたい。生産費プラス・アルフアは当然のことであります。どの産業においても当然と考えられる。むしろ私が最初に申しましたように、もつと農家収入をふやすようにかることが基本でありますから、生産費だけを償えればいいんだということは毛頭考えておりません。この点はひとつ御了解いただきたいと思うのであります。食糧問題につきましても、農家のつくる米、農家の手を離れた米、これが配給機構にかわつたときは、今申し上げるように、消費者の方に移つて行くのだ。たとえば肥料で申せば、これが生産は通産、消費の面においては農林というようにわかれております。そういうように考えを立てて行くべきである。従つてこの点について紛淆のあるようなことは絶対にいたしたくない。それをどこに規律を求めるかというところに、配給機構の面において現在の段階においては中間にいろいろなものがかかり過ぎるじやないか、たとえばやみ屋さんの運搬の過程において、いろいろなものがとられ過ぎておるじやないか、東北方面もしくは北陸方面農家の手を離れるときの価格と、都会の消費者の手に渡るときの価格との間に開きがあり過ぎるじやないか、もしくは国家負担においても、現在の食糧管理制度はいろいろ金がかかり過ぎるじやないかということ等々を考慮いたしまして、どうすればこれらのものの流通過程が円滑になるかということに食糧政策をかえて参りたい、こう申し上げておるのでありまして、これも私がそう考えておるから、勇敢にただちに実行すると申しておるのではありません。これはいやしくも食糧の問題でありまして非常に重大な問題でありますから、これを軽々に取扱つてよろしいものじやありませんから、十分皆様の御意見を承つて、また私の申し上げることにつきましても、是正すべき点については十分是正をして参りたいと思つておりますから、御了承いただきたいと思うのであります。  次に農業団体の問題であります。現在の農業団体全部がいかぬということは考えておりません。しかし少くとも農業団体を整備強化して育成し、そして農民生産意欲の向上をするには、農民の意思を政治の上にも反映できるようにして参りたいというのが私の念願であります。そして農林行政の面におきましても、現在のようにお役人さんが何でもかんでもやるのだというようなことはいけない、そうでなくて、各部門におきましてそれぞれの団体があつて、その団体が中心になつて増産、改良等の直接の衝に当つて行くようにありたいものだというふうに考えます。さらに経済行為を行うものにつきましては、現在の協同組合のようなものは非常にけつこうだと思つております。だから今の団体が全部いかぬというようなことは考えておりません。しかし少くとも現在の団体には改善もしくは統合もしくは強化しなければならぬものが多々あるということは私は考えております。どうかひとつ御了承願いたいと思います。
  27. 松野頼三

    松野委員 農業協同組合は悪くないという言葉が出ますと、もう一つの団体で大きなものは農業委員会がある。農業委員会はそれではいけないというふうに——これは質問するわけじやありませんが、そういうふうに聞えるのです。あなたの言う現在あまり妥当でないという団体はどの団体ですか。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 私はこれから十分研究いたしまして、私の思想といたしましては、農業団体といたしましては、経済行為を行う団体、それにもう一つは農業の団結によつて各希望を達成する意思表示のできる団体、こういう二様に持つて行きたい、こういうふうに考えております。あえて私は今の農業委員会というようなものが悪いとは申しませんが、これは改憲の余地があるのではなかろうか、こう考えております。
  29. 松野頼三

    松野委員 いずれそれは団体法のときにお話しますが、農業委員会も御承知のごとく下から盛り上る組織でできておる団体です。何も官選でもなく、御承知のように選挙で下から積み上げてつくる団体です。また農業協同組合も同様な組織です。この両団体は御承知のごとく経済団体であり、片一方はある程度指導及び農民の意思を発表する団体なんです。片一方がいい、片一方が悪いと言われるけれども、私は組織そのものにおいては何ら相違はないと思う。ちようどあなたの構想の団体があるにもかかわらず、これをあらためて取上げて改革するという真意がわからないのです。完全でなくてもいいのですが、何か具体的なお気づきになつた点を御発表いただくことが両団体とも不安がないのではないか、法案の提案趣旨と違うから簡単でけつこうです。こういうところが気に食わぬ、こういうところが民意に沿わぬということでもけつこうです。その方がもつと話が簡単に片づくのではないか、こういうふうに考えます。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 今の両団体を指摘されましたことは、必ずしも両団体だけについて申しておるのじやありません。その他蚕糸、山林、畜産、水産各層の団体について考えておるのでございまして、これらについて今の協同組合法一本で行くことがいいか悪いかというようなこと等についても、全面的に占領政治時代のものを考えたいというふうに考えておるのであります。これにつきましては、もちろん私一個の考えでこれを推し進めるというようなことは考えておらぬのでありまして、これは十分経験者、識者の意見を取入れて行きたい、こういうふうに考えております。
  31. 松野頼三

    松野委員 先ほどの補足説明の中で一つ私がお尋ねするのを忘れまして、それを思い出しましたが、先ほど流通機構の問題が出まして、その際に生産までは農林省でやるべきである、その他は流通機構だから一般食糧あるいは一般商品と同じで、一般商品と同じにやつて少しもさしつかえない、こういうふうな御答弁のように聞きました。そうすると生産までは農林省でやる——先ほど肥料の例をおとりになりましたが、米も生産までは農林省でやる、米として商品価値が出る白米になつた場合には商品としてやつて何らさしつかえない、こうなりますと、これは当然商取引として、かりにたとえて申しますれば、通産省にこれをまかしてもいいというふうにも考える。通産省とは規定しておりませんがいわゆる農林行政から離して商品として取扱うという御発表があつたようであります。そういう点は私の聞き違えでありませんか、もう一ぺん念を押しておきます。
  32. 河野一郎

    河野国務大臣 私はたとえば外国にありますように食糧大臣というものができますならば、食糧大臣がこれを扱つてよろしい、こう考えます。もしくは農林省と共管でやることも適当でありましよう。しかし日本行政機構は農林大臣の所管になつておりますから、そういう感覚で農林大臣がこれを扱うのだ、こういうふうに私は考えております。また今のようにしからば一般農産物についてこれが市場に来たときにはどうするのだ、商品になつたときにはどうするのだということでございますが、これは農林大臣の所管でございますから農林大臣として扱う。要するに農家手取りが多くなるということに重点を置いて、たとえば魚の場合でも同様でございますが、魚の取引所、今の市場等につきましては十分な関心を持つて行きたい、こう考えております。
  33. 松野頼三

    松野委員 では米が自由販売になつたときには、ちようど魚と同じようにお取扱いになるようでございますが、そうでございますか、答弁に間違いございませんか。かりに米が自由販売になつたときには、ちようど魚も御承知のように商品になつたときには別なものになつているのだから、別にそういうことはこだわらないという考えでございますか。
  34. 河野一郎

    河野国務大臣 その点は先ほど来たびたび申し上げますように、米につきましてはいろいろな要素がある。たとえば一般産業の中で考えて、米価の決定はそういう点も考えなければならぬでございましようし、社会政策的にも考えなければならぬでございましようし、さらに経済的に恵まれない人のためにはどういう価格できめておかなければならぬかということも考えなければならぬでございましようし、そういう点等々についてあらゆる施策を講じまして、そしてその範囲内において考えて行くべきものだ。ただ今そうだと申し上げれば、それでは魚のように自由にするのか、そうすれば貧乏人は麦を食え、金持は米を食えとあなたの方の人がおつしやつたように、そういう結果になつてしまうじやないかということになりますが、そういう点は決してそういうふうに放任をしようとは考えておりません。お困りの方にはお困りのように施策を講じて、その範囲内においてそれらの条件を整えて行くべきだ、こういうふうに考えております。ただ私が申し上げたいことが言葉が足りませんと、足りない面についてはそれではこうだろうとおつしやつてもいかぬのでございまして、これはあなた方の御注意を十分承つて、各層に各面において十分な納得の行くように、手落ちのないように食糧問題はして行かなければならぬと考えておりまして、決して私の考えが足らぬ点につきましては、それでやるというのではないのでございますから、十分御注意をいただきまして、その御注意を取入れて行きたい、こう考えておりますから、御了解願いたいと思います。
  35. 松野頼三

    松野委員 私の方が麦を食えと言つた話を今さら出すのもおかしな話で、その当時の仲間はお宅の方にも入つているから、どつちがどつちとも言えません。このようなことはあえて失言訂正する必要はございません。お宅の方にたくさん入つているのですから、五分々々行けばいいと思います。  その話はおきまして、次にもう一つの問題は砂糖の問題です。砂糖の問題はいろいろございますが、端的に申しまして、砂糖の専売問題を現在の食管法でおやりになるのかならないのか、そのお考えを聞きたい。
  36. 河野一郎

    河野国務大臣 これは先般も社会党の代表の方がお見えになりまして、新聞にこういうことが出ておるがこれについてはこういう申出がある、こういうことで申出を承りました。その際に私はたまたま農林省の記者クラブにおりましたので、当時私が新聞記者諸君にお話をいたしました際にどういうことをお話したかということを御了解いただいた方がよかろうというので、その席で私は、決してその新聞に出ておるようなことは申しません、その当時そこにおられた新聞記者諸君もそうだつたということでございますから、その点は御理解いただきたい、しからば専売についてはどういうふうな考えがあるかと申し上げますと、今のようなやり方は感心しない、たとえば百二十万トン入り用だというときに八十万トンの為替をきめた、きめたらすぐにその砂糖が上つた、上つてもうけた者は一部の業者がもうけた、そういうようなことを放任しておくことはよろしくない。だからこれについて万全を期して、そうしてあらゆる施策を講じてそういうことのないようにしなければならぬのではなかろうか、一つの案としては、専売というようなことも考えられるのじやないかということで、これはたとえば話をしたのでございまして、今の食糧法の中で専売ができるかできぬかというようなところまで話は発展しておるのではないのでありまして、どうかそういうふうに御理解願いたい、しかもそれは新聞記者諸君が書かれることでございまして、私は決して新聞の記事に責任は持たぬというようなことは申しません。これは話をしたことは、川俣さんもそのときに代表でおいでになつて、新聞記者の前でお立会いになつたのですから、私の申し上げることに間違いない、そういうふうに御理解いただきたいと申し上げておきたいと思います。
  37. 中村時雄

    ○中村(時)委員 関連して。実は私は新農林大臣——これは選挙管理内閣としてでき上つた一連のものであろうという見方をしておるわけなんですが、それにしても専売制度にするということが新聞に出たので、ある意味においては非常に敬意を表し、またその斬新的な考え方に非常に期待をかけておつたのです。しかし今の御答弁を聞きましていささかがつかりとしておるわけなんです。そこで、たとえば先般のこの委員会の際にも、こういう糖価の値上りに対して、私は専売制度を行うのがいいのじやないかという考え方を持つたのですが、当時の自由党においてはそういうことは認められない。但し糖価は何とかせなければならぬだろうという意味で幾構を改革するという決議案を出した。その結果がどういうところに出て来るかというと二つの方向しかない。一つはその超過利潤を政府はどのように取上げるか、それに基いた一つの施策をどう打出すか、こういう問題に帰結されるだろうと思う。それに関して農林大臣はどういうお考えを持つていらつしやるか、私たちは何も追究するのではなくて、できれば日本農業の一つの安定という意味において御協力をするということでお尋ねをしておきたい、こういうふうに思つております。
  38. 河野一郎

    河野国務大臣 私もたとえば話をしたのでございまして、これは皆さんからいろいろ御意見を拝聴いたしまして——今申し上げるように、現状のままでよろしいとは私も考えておりません。たとえば——これもたとえばということでお聞きをいただきたい。私の方が絶対多数をとればそのときにはつきり党の方針に従つてここで意見を申し上げます。しかし現状では何を申しましても——あえて選挙管理内閣という自覚は持ちませんけれども、選挙で必ず多数をとりまして、自分の申し上げることを具現して参るという心構えでありますから、その点は御理解いただきたいのであります。それで今申し上げますことは、私は、私の食糧政策が幸いにして多数国民の共鳴を得まして、われわれどもがそれこそ多数の与党を持つて政府を再びつくることができますれば、砂糖と外米の輸入と麦とこれらを一貫して価格操作をやりまして、国民全体に食糧としての負担をかけることは減して行きたいというようなことを考えたらどうかというふうに考えております。
  39. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今新大臣もおつしやつたように、たとえば話ということになりますと、実はそういうこと自身が非常に大きな問題になつて来るわけです。というのは今度の内閣は、選挙管理内閣だというようなことは法的にはないかもしれませんけれども、政治道徳としては当然そういうことが既定的な事実として現われておる。そういたしますと、たとえ話をされますと、かえつてほんとうに選挙管理内閣が宣伝内閣のようなかつこうになる。(「選挙運動内閣だ」と呼ぶ者あり。)だから運動という観点に立つてそういうふうに見られやすいという立場にあられるわけです。だからそういうことはほんとうに自重をされて、一応現実にこの三箇月間でどのような方式でどういうふうにやつて行くか、——もちろん予算の編成だつて何だつてそれは権利はありますよ。権利はありますけれども、より以上に重大なのは政治良識の問題だろうと思うのです。そういう意味において、今言つたようなたとえ話なんかは以後は注意される方がいいのじやないか、このように思うのです。
  40. 河野一郎

    河野国務大臣 私はあなたのおつしやることに賛成はできない。なぜできませんかと申しますと、私ははつきり割切つております。自分たちは、選挙の済むまでの間は直接に決裁を迫られておる問題以外はいたしません、こう私ははつきり割切つておる。しかしそれから先はお互いに党人として国民に訴えることは当然だと思います。あなた方も選挙で自由に自分たち内閣をとればこうやるのだということを演説されるだろう。私も農林大臣であります。けれども、民主党の一員であります。一員である以上は、民主党はこういうふうに考えておるのだということを申し上げることは、これは許していただきませんと、私が農林大臣をしておるから言つちやいかぬ、一切言うてはならぬということでは困る。これは私が農林大臣をしておろうとおるまいと、われわれが選挙で負ければそういうことはできないのですから、これは国民の裁定にまつということなんであります。でありますから、国民が共鳴をしていただけばわれわれは実行をする。政府が負ければできない、これはきまつたことなんであります。従つてそういうことになると、私が地方へ遊説に参りまして、農林大臣はこんな演説をした、あんな演説をした、農林大臣をしておる以上、そんなことを言つちやいかぬと言われては困るのでありまして、今申し上げるようにこれは委員会でありますから、たとえば話を申し上げたのであります。しかしわれわれが政務調査会とか、もしくは何らかの党の機関においてそういう決定をすることに私は努力をして行くつもりでございます。そこで遠慮して私はたとえば話を申し上げたのでございますから、その点は御理解をいただきたいのであります。  なおこの機会に委員長にお願いいたしますが。最初に申し上げたように、私一時から労働委員会の人と会う時間の約束がしてありますから、まことにかつてでございますが、ここで失礼をさせていただきたいと思います。
  41. 松野頼三

    松野委員 私はこれで終ります。今のお話はたとえば話に過ぎましたが、まあ正直に申し上げてやはり、ただいまの応答を聞いておりまして、河野さんたちも非常に考えの違う方におつきになられた苦労はわかるのであります。そうすると新聞の報道は専売ということですが、あなたの考えは逆にそういうことはしないんだという考え方が強いように聞き取られました。ただやはりうしろで投票をいだいたものですからその立場の手前両方のお考えのようです。河野さんが続いてやられるならば、専売はまずやらないのか、やるのか、少くともその中間のようです。これはいずれ過半数をおとりになれば幸いでありますが、幸いに自由党が過半数をとつたときは、今度は私がその立場農政を担当するかもしれません。が、たとえば私はこういう専売等はやりません。また食管法を改正せずにあの砂糖の問題を、あのまま政令で食管法の中に入れるということはできないのだというような観点で、実は先ほど質問したのです。現行の食管法の改正をやるのかやらないのかということが現在の問題点だ。食管法を改正するならばこの委員会で審議されますから各党十分審議できる。この点非常に先のことですが、最も争点である食管法を改正せずに、政令で食糧の中に砂糖を入れるのか入れないのかということが問題である。そういうことでないようですから私の質問に一応打切りますが、またこの次に社会党の方の質問もあるようですから、そう際関連しまして私は第一の質問者としてあらためて御質問いたします。     —————————————
  42. 綱島正興

    綱島委員長 次に、第十九回国会において農林委員会は、農業災害補償制度改正の基本方針を決定し、これを政府に参考送付いたし、農林省は、これに基いて農業災害補償制度協議会を設けて、これが細目について検討中であることは、御承知の通りでありますが、この際足鹿君より、この間の経過を参考のため説明いたしたいとの申出があります。これを許します。足鹿覺君。
  43. 足鹿覺

    足鹿委員 農業災害補償制度に関する小委員会委員長としまして、この御報告を申し上げておきたいと思います。農業災害補償制度に関する小委員会委員長としまして、本制度改正に関する最近までの審議の経過に関して中間的な御報告を申し上げたいと思うのであります。  すでに委員各位におかせられては、十分御承知のごとく、農業災害補償制度改正の問題につきましては、わが国における農業政策の重要な一環として、本委員会におきましても、しばしば取上げられ、討議せられて参つたのでありますが、第十六国会において、農業災害補償法の一部改正に際して、両院協議会で行われた申合せに基き、本制度抜本改正の目的をもつて委員会が設置せられ、私がその小委員長に就任しまして以来、委員各位とともに数十回にわたる委員会、小委員会、公聴会、現地調査を行いまして、非常な努力を払いまして、衆議院としての農業災害補償制度改正案を作成し、二十九年四月二十七日に本委員会の御承認を得まして、これを農林省に送付いたしたのであります。  参議院側におきましても、やや遅れて、委員会の意向をとりまとめられ、政府側に伝達せられましたので、政府は両院の決定に基いて、農林省に農業災害補償制度協議会を設置し、衆議院議員七名、参議院議員五名、学識経験者八名を委嘱し、農林漁業金融公庫総裁山添利作君を議長として、去る七月より本格的な審議に入つたのであります。爾来今日まで七回にわたつて会議を開きました。  なお、衆議院側よりは、私、安藤覺君、足立篤郎君、助川良平君、秋山利恭君、金子與重郎君、伊瀬幸太郎君が委員として参加し、専門員岩隈博君が補佐の任に当つたのでありますが、この際特に申添えておきたいことは、終始会議をリードし、積極的に審議に当られました金子與重郎君が、中途にして倒れ、幽明を異にせられましたことは、会議の進行にとりまして、非常なる痛手となり、返す返すも残念であつたことであります。爾来、金子氏にかわり、吉川久衛君に御苦労を願つている次第であります。  私ども協議委員は、審議にあたりましては、常に熱心に会議の中心となり、衆議院側の意見の説明に当り、協議会として公正妥当な改正案の策定せられることに全力をあげて協力して参つたのであります。  協議会において、本日まで討議して参りました事項は、まず、衆議院農林委員会において熱心に議論せられました農業共済制度の基本的な組み立て方であります。次に、農作物共済の引受の単位、共済金額及び共済掛金率の形式方式、損害評価の方式であります。次に共済団体の区域、共済責任、公的色彩の附与、共済掛金の徴収。次に中央団体の設立の可否の問題。次に蚕繭共済及び家畜共済の取扱いをいかにするかという問題。次に任意共済の建物、菜種、大豆の取扱いをどうするかの問題。次に共済団体の行う防除。次に連合会の不足金処理。次に無事もどしの制度。次に備荒貯蓄制度等の諸問題であります。  しこうして、ただいま申し上げました諸問題中、農作物共済の引受単位、共済金額及び共済掛金率の形成方式、損害評価の方式、共済団体の区域、共済責任、公的色彩の付与、共済掛金の徴収、連合会の不足金処理の件につきましては、ほぼ協議会としての結論が得られたのであります。  すなわちこの際、ごく簡単に御説明いたせば、第一の問題は、農作物共済についてでありますが、農作物共済につきましては、被害の補償の充実を期するとともに、本制度を極力災害の態様と農業経済の実態に即応せしめるため、可及的に制度の画一性を是正し、あわせて損害評価の適正化等を行い、事業運営に弾力性を付与し、その合理化をはかることを基本方針としまして、引受は、一筆ごとの石建とする。但し、農業単位の可否については、なほ検討を要する点が残つておりますので、現在実験中の農家単位共済の実験は、継続するものとする。  次に、共済金額は、石当りに定め、共済に付する額は、農家ごとに共済金額の一定割合、一〇、七、五、三を選択することとする。  次は、損害の填補は、実損害の七割に達し得るよう共済金額及び補填の対象となる被害程度を決定する。  次に、基準共済掛金率は、危険階級ごとに減収率に基いて算定する。  次に、危険階級の設定は、必らずしも市町村の区域にとらわれず都道府県の区域内における危険程度の異なる地域ごとに細分化を行うものとする。  次に損害評価は、農林省統計調査部の行う収穫高調査を、被害調査を農作物共済の損害評価上利用し得るよう郡市別統計の作成を目途として整備する。  なお、常習災害地の実体及びその取扱いにつき、すみやかに調査検討を進めることにいたします。  次に第二の問題としましては、共済団体についてでありますが、共済団体については、その経営の合理化、事業の性質に伴う団体性格の明確化の見地から左の措置を講ずることにしたのであります。  まず、農業共済組合の区域は、一定の基準に基き、合併後の市町村の区域等を勘案して、道府県知事が定める  次に共済責任の全額を保険に付することとし、組合の一割の共済責任は、これをとりやめることにしました。  次に農業共済団体に公的色彩を付与するため、役員の責任の明確化、行政庁の監督の強化、その他公的機関たるの性格を明確ならしめるよう措置する。  次に職員の身分の安定、給与の適正化を行い、職員の本事業の推進に対する熱意を喚起する体制を整備する。  次に、前記組合の区域及び職員の身分安定の事項の確立のため、共済事業に対する政府及び地方公共団体の援助の充実をはかるものとする。  次に、共済掛金の徴収は、市町村に委任することができることとする。  次に第三の問題は、農業共済組合連合会の不足金処理の問題でありますが、二十九年度末までにおいて、連合会に約五十二億円の赤字が生ずる見込みと相なつております。この点につきましては、農業共済基金の設立にかかわらず、連合会の累積不足金が事業運営を圧迫している現状にかんがみ、政府は、昭和二十六年度末までの不足金累積額に相当する額を一般会計から農業共済基金に貸しつけ、あわせてこの不足金解消の根本処理をすみやかに検討することといたしたのであります。  以上申し上げました第一、第二及び第三の問題のほか、中央団体の設立、蚕繭共済及び家畜共済の取扱い、任意共済の建物、菜種、大豆の取扱い、共済団体の行う防除、備荒貯蓄制度及び無事もどし制度等の問題が残されておるのであります。しかし政局の推移は各位の御存知の通りでありまして、また明三十年度の予算編成期も切迫しておりまするので、制度の全体について最終結論の出ますまでの間においても、政府をして着手できる部分から改正に着手せしめるという方針をきめたのであります。従いましてさきに述べた第一の問題、すなわち農作物の共済の引受け単位、共済金額、掛金率、損害評価等については三十年産水稲から実施し、共済団体及び不足金処理の問題については三十年度中に実施することとし、政府は予算上並びに法律上の必要措置を講ずることを、この際議長より政府に申し入れることをいたしました。  しこうして残余の問題については、次期国会の会期中に審議を完了し、決定事項中実施に移し得るものは三十年中に実施し、その他の事項については三十一年度にすべてを実施するものとし、とにかく三十一年度中には、本制度の改正は一応すべて完結したいという方針を打出したのであります。  以上は、昨日話合いのできました協議会小委員会の案に基いて御報告申し上げたのでありますが、来る本月の二十一日に再度全体協議会を開いて、本案を申合せ事項として確認し、議長より農林大臣に申し上れることとしておりますので、この点は特に御了承を願いたいと存ずる次第であります。  たいへん取急ぎ御報告申し上げまして説明を省略のためにおわかりにくい点もあつたことと思いますが、案文をお手元に配付いたさせまするので、それについてごらんを願いたいと思います。  以上をもちまして報告を終りたいと存じます。(拍手)
  44. 綱島正興

    綱島委員長 午前中はこれにて会議を終りまして、午後は二時より再開をいたします。    午後零時十六分      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた