○三輪貞治君 私は
日本社会党第四控室を代表いたしまして、只今上程されておりまする
予算案全部に対しまして、反対の意見を申述べたいと存じます。
討論に先立ちまして、
予算案並びに
予算審議に対する
政府の
態度が極めて遺憾であ
つたことについて、一言申したいと思います。我が党は第十九通常
国会の終りました
あとにおきまして、友党同士諸君と計らいまして、早期の臨時
国会の開会を要求して参りましたが、
政府は徒らにこれを遷延いたして参りまして全く申訳的に、この押し
迫つた時期において第二十臨時
国会を開会いたしまして、誠にその
内容も、形式に似て、お座なりのものであるということでございます。なお第二十臨時
国会が始まりまするや、
政府におきましては、
総理大臣並びに各大臣の
予算委員会に対する
態度は、極めて怠慢の一語に尽きるのでございまして、
総理大臣は、本日もそれぞれ各
委員から問責の
質問がありましたように、一度もこの
委員会に
出席をしないという、誠に最近例を見られないところの不祥なる
状態を惹起いたしたのであります。更に昨日の
予算委員会におきましても、当然
出席を要求されておる大臣が、党の仕事等と混同いたしまして、時間を遅らせ、非常な
審議上の支障を来たしたことは、各
委員がすでに御承知のところであります。もう私
たちはすでに
吉田内閣は、昨今の
政局の
状態から見まして、
政権を担当する熱意をすでに失
つておるものと断言せざるを得ないのであります。
次に、
予算の
内容について、順次その反対の意見を申し述べたいと思います。
先ず第一番に、食糧増産対策に対する施策が当を得ていないということでございます。これは我々が今までたびたびこの
委員会並びに本
会議で検討して参りましたように、MSA協定に基きまする再軍備は必然的に、これはアメリカの過剰農産物の買付けの義務を負わされるという結果に相成
つて参つたのでございまして、
政府はそれに依存いたしまして、食糧増産に対する積極的な意欲を漸次減退をして参
つたことを指摘したいのであります。現在のアメリカにおける農産物過剰は極めて深刻なるものがあるのでありまして、先般行われましたアメリカの中間選挙におきましてアイゼンハワーの
政府は敗北を喫しましたが、この問題の大きな
原因が、農産物の過剰生産が景気後退に拍車をかけ、或いは恐慌招来の
原因ともなりかねないことが、その一因であ
つたように思われるのであります。
従つてアメリカが武器援助を餌にいたしまして過剰農産物を売りつけんとしておることは、明々白々たる事実でございまして、この自明な理を、なぜ
吉田内閣はアメリカ
政府のと
つている自国の農民保護政策に追随いたしまして国内の自給方針から食糧輸入主義、アメリカ小麦依存主義に変更したか、我々は了解に苦しむところでございます。さような根本的な
原因によりまして、本
予算におきましても、更に臨時
予算におきましても、積極的な食糧増産への熱意が少しも見られないのでありまして、最も我々の遺憾とするところでございます。
次に、災害復旧費について申述べて見たいと思うのでございます。今度の臨時
国会の主なる目的は、この災害対策が根幹にな
つておるようにも存じておるのでございます。戦後九年間、農業は毎年のように自然の猛威に傷めつけられて参りまして、その被害は年を逐うて漸増いたして参
つておることは、御承知の
通りでございます。特に本年は、五月から九月にかけまして、台風、冷害、その他多くの災害を伴
つて参
つておりまするが、これらの災害は必ずしも不可抗力のもののみとは言えないものがあると思うのでございます。天候不順も、多量の降雨も、台風も、技術的観点からすれば、その被害を最小限度に食いとめることも不可能ではないのでございまするが、その技術的に可能な問題を、
政府の施策よろしきを得ないために、その被害が予想以上に甚大に
なつたということは、すでに本
会議における
質問等でも指摘をされておるところでございます。これは
東隆君がたしか指摘をいたしておりましたが、科学的な機関を無視した行政が行われておるところに一因が存することは、明らかにな
つて来ておるのであります。又本年度当初
予算における公共事業費の削減は、こういう意味におきましても、全く根本的な施策を誤
つておると申さねばならんのであります。特に又河川行政をめぐりまする建設或いは農林両省の繩張り争い等も、覆うべからざる事実でございまして、災害復旧工事に、或いは防災事業に、それをめぐる官庁のセクシヨナリズム、高級官吏と大土建資本、
政治権力との結託は、無視できない、利益を独占をしておる事実があるように見受けられます。又地方権力の地方土建資本との結託による厖大な国費の濫費は、すでに全国的な常識とな
つておるほどのものであります。併しこのために、実際に災害を受け、早急に復旧をしなければならないまじめな地方公共団体、或いは農民、
中小企業者等の多くの諸君が、必要以上の
予算の削減を受けておる現状におきましては、我々は、断じて黙視することができないのであります。今回の
予算は、本年度二割五分とな
つておるのでありまするが、これは当然三割に引き上げなければならないのでありまして、昨年の水害の例を見ても明らかであるのであります。
次に、地方自治体の財政の窮乏に対して十分なる考慮が払われておらないということでございます。地方財政の危機はすでに数年前から叫ばれて参りましたが、二十八年に至りまして財政的
事情は急激に悪化をいたして参りまして、MSA
デフレ政策の
影響は今年に入
つて、地方自治体そのものを崩潰させるほどの深刻さを現わして来ておるのであります。従来は赤字と申しましても、単独事業の打切りとか翌年度
予算の繰上げ充当とかで、何とかやりくりいたして参りましたが、今年はもう職員の給与にまで手をつけざるを得ない
事情に追い込まれておるのでありまして、法律で決めた定期昇給の期間を延長したり、又全くこれをストップの止むなきに至り、遂には職員の給料遅配が始ま
つておるというのが、地方自治団体の実情でございます。
昭和二十六年度の赤字は百一億、二十七年度は三百億、二十八年度は、四百六十億の巨額に達しておりまするが、この赤字は従来共に
政府の施策の欠陥によるものでありまして、とりわけ二十九年度は、市町村自治体警察の廃止に伴う都道府県警察費の増大が、非常に大きなそのフアクターにな
つております。今回
政府が地方交付税交付金について四十億の追加をいたして、都道府県警察費の増額に当
つておりまするが、これでは全く地方財政の現状から見て過小に過ぎると思われるのであります。
次に、公務員の年末手当についてでありまするが、
政府は昨年八月人事院よりの給与改訂につきまして勧告を受けましたけれ
ども、八月実施を本年一月に延期し、昨年の十二月末に地域給をそれぞれ五%ずつ減じまして一月一日より実施をして来たのであります。
従つてそれのみを
考えてみましても、実質賃金は五%の減額である、年間を通じて大幅な削減と
なつたことは明らかであります。このマイナス分を補填する、すなわち生活補給の意味におきましても、十分なる年末手当の支給が必要であるにもかかわらず、相も変らず冷淡な
態度で以て対処されておるということでございます。
更に、中小企業につきましての考慮が払われていることが非常に薄いという点を、指摘いたしたいと存ずるのであります。再軍備
予算の平和産業、とりわけて中小企業へのしわ寄せは、労働省調査による不完全な統計の一つ、企業整備状況によ
つて見ましても、本年一月から八月まで全国の六十余の事業所から、十八万余の労働者が解雇されておる
事情でございます。これは昨年の同期に比べまして、二倍近い増加と相成
つておるのでありまして、その中には製造業者が六四%を占めておるのであります。又
政府統計によりますと、完全
失業者は一月以来増加を続けまして、八月には十七万、失業保険受給者も昨年より三割以上殖え、六月には四十六万という記録であります。而も見逃すことのできないのは、完全失業の増大と並びまして、潜在失業の増大も又最近の目立
つた現象であります。多くの産業、企業に一般化しつつある生産縮小、操短態勢、或いは休日増加、就業規則などによる実質収入の大幅な減少、更に賃金不払の驚くべき激化によりまして、ますます多くの業種に労働者が潜在失業の
状態に置かれておるのであります。
かように、我々が当初
予算の
審議において指摘いたしましたように、
政府の強行いたさんとする一兆億デフレ財政、金融引締め等は必ず、社会の弱い部面である中小企業、労働者、農民、これらにしわ寄せをされることが必然であり、
従つてかような政策を強行する場合には、それと並行して社会保障政策の完備が必要であることをば絶叫して参りましたが、今日の
補正予算におきましても、何ら
デフレ政策の犠性に対する社会保障の万全なる
措置を見ることができないことを、誠に遺憾とするものであります。
かような不完全なる
予算に対しまして、我々第二控室と共同いたしまして、歳入、歳出につきまして補正の組替えの要求をする準備を整えておりましたが、いろいろな
事情によりましてこれができなくな
つたのであります。この
内容について申上げたいと思
つておりましたが、時間がございませんので、これを割愛いたします。
以上を以ちまして、非常に少い時間で誠に舌足らずの
状態でございますけれ
ども、我々のこの
予算に対しまする見解の一端を申述べまして、反対の討論といたす次第でございます。(拍手)