○中田吉雄君
只今議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審査の経過の概要並びに結果を御
報告いたします。
本案は
衆議院提出にかかるものであります。その提案理由としては、今次の国会自粛立法の一環として選挙界の浄化を図るため、連座制等を強化して、選挙の公正を確保し、選挙運動の適正化、運動費用の合理化、政党等の政治活動の規制等を行うと共に、選挙管理事務に関する
規定を整備せんとするものであるのでございます。
次に法案の内容の概要を申上げます。先ず選挙の公正確保に関するものとして、公務員等がその
地位を利用して行う事前運動を
禁止し、選挙運動の法定制限額を、衆議院議員については現行約四十万円より七十万円に引上げ、参議院議員については現在政令で定められている基準額を法定し、その額を衆議院議員の場合とほぼ同一割合を以て引上げ、その制限額超過の場合には、出納
責任者を処罰し、更に選挙運動に従事する者に対する実費弁償額並びに選挙運動のために使用する労務者に対する報酬及び実費弁償の額を実情に副うごとく引上げ、その基準を法定することとし、寄附の制限に関しては、新たに
規定を設けて、立候補の意思のある者は、当該選挙に関し当該選挙区内の者に対しては寄附を
禁止し、更に立候補の前後を問わず、候補者が役員である会社、その他の団体が行う寄附で、候補者の名前が表示されたり、類推されたりするものは
禁止することにいたしております。
連座制に関しては、出納
責任者の買収犯等にも新たに連座制を選用すると共に、総括主宰者、出納
責任者の買収犯等の場合及び出納
責任者の法定費用超過支出罪の場合には、従来の免責
規定をやめ、新たにおとり罪を創設して、このとおり犯の場合に限り免責を認めると共に、とおり防止のために、おとり犯につき厳罰
規定を設けたのであります。なお選挙
犯罪により選挙権、被選挙権を停止された者は、その期間中選挙運動ができないこととし、罪の時効については、形式犯については六カ月、その他の
犯罪については一年、但しおとり罪については二年間とし、犯人が逃亡した場合は、その時効期間をそれぞれ二倍に延長することにいたしております。
選挙運動一般に関しましては、先ず選挙事務所法定数厳守のため一定の標札を掲げなければならないものとし、飲食物の提供については選挙運動従事者及び労務者に対する弁当は一定の範囲内においてその提供を認めるが、これは選挙事務所で食事し、又は携行する場合に限るものであります。更に現行法では湯茶の提供に限られているのを茶菓の提供に改めたのであります。自動車、拡声機及び船舶の使用については、選挙運動用自動車は乗車用又は小型トラック一台に限ることとし、大型トラックは積雪、泥濘等の悪路その他止むを得ない事情により乗用自動車車及び小型トラツクの運行不可能の場合でなければこれを認めないこととし、連呼行為は車上、徒歩すべて
禁止し、自動車上の選挙運動は停止した車上においてする演説のみを認め、自動車、船舶に乗車、乗船する者は、運転手、船員を除き一台、一隻につき候補者、運動員、労務者合せて四人以内に制限し、拡声機は一揃いに限ることとし、但し個人演説会場においては会場ごとに更に一揃いの使用を認めることといたしております。
文書図画に関しては、自動車及び船舶への掲示は一切
禁止し、選挙事務所、演説会に用いるポスターの規格を制限し、録音盤は立会演説会においてはその使用を
禁止し、個人演説会、街頭演説会においてはこれを認めることとし、立会演説会開催当日の他の演説会等の制限を立会演説会の開催前二時間から終了後二時間の間に緩和いたしております。なお個人演説会告知用ポスターは、現在千二百枚を交付されることにな
つておりますが、今回これを衆議院議員については五千枚、参議院地方選出議員については三千枚に増加すると共に、告知用ポスターはその掲示個所を移動し、他の演説会の告知用に再び使用し、又は一般の選挙運動用に転用できないものといたしました。この場合衆参両院議員の間でポスター枚数が
違つておりますのは。参議院議員については、別にいわゆる五号ポスター、即ち一般の選挙運動用のポスター二千枚が認められているためであるとの説明であります。なお政党その他の政治団体の選挙における政治活動の規制及び政党等の機関新聞紙及び機関雑誌に関する制限は、参議院議員の選挙にも及ぼすことにいたしております。
以上が改正案の主要な点でありますが、その他はおおむね選挙管理事務の整備及び現行法の整備であります。
地方行政委員会におきましては、本月四日、衆議院議員森三樹二君より提案理由の説明を聞いたのち、数回に亘り衆議院側及び
政府委員との間に質疑応答を重ね、慎重熱心なる審査を行いましたが、その詳細については
会議録に譲ることをお許し頂きたいと存じます。
本六日討論に入り、自由党の伊能委員は、「本法案はおおむね妥当と認めるが、ポスターの枚数のごとく、今後衆参両院の間に調整を要する点があるので、これらの点については将来これが是正を考慮することとして本案に
賛成」の旨を述べられました。緑風会の小林委員は、「本法案の内容において基本的、実質的な要点に触れるところの少いのを遺憾とする、殊に選挙区制の問題が取上げられなかつたのは不満足であるが、今後選挙界粛正のため、小選挙区制を推進したい意思を持
つていることをここに明らかにし、本法案に
賛成する」旨を述べられました。社会党第四控室の若木委員は、「本法案の内容をつぶさに検討すると、言論の自由を尊重する上に配慮が十分でない点が見られるのは遺憾であるが、今後の是正を期待して本法案に
賛成する」旨述べられました。
日本民主党の寺本委員は、「個々の点については不満足な点もあるが、本法案が連座制を強化して
国民の期待に応えた点は極めて適当であるから、本法案に
賛成する」旨を述べられました。
かくて討論を終り、採決の結果、本法案は、
全会一致を以て
衆議院送付案の
通り可決すべきものと決定いたしました。以上、御
報告申上げます。
次に、
只今議題になりました国
会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審議の経過並びに結果について御
報告をいたします。
本法案は、今次の公職選挙法の一部改正に伴い、国
会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正せんとするものであります。改正の内容を申上げますと、第一点は、衆議院議員及び参議院地方選出議員の候補者の選挙公報の字数、現行千五百字を二千字に増加し、新たに候補者の写真を掲載することとなり、又参議院
全国選出議員の候補者の選挙公報の字数、現行五百字を六百字に増加することになりましたのに伴いまして、用紙代、印刷代等を増額し、選挙公報発行費の基準額を改定しようとするものであります。第二点は、公営施設使用の個人演説会場において拡声機の設備があるものについては、その拡声機の使用料を加算する
規定を新たに設けようとするものであります。第三点は、衆議院議員の候補者の個人演説会告知用ポスターの枚数、現行千二百枚を五千枚に、参議院地方選出議員の候補者については現行千二百枚を三千枚に枚数が増加されることになりましたのに伴いまして、それぞれポスターの経費の額を改定しようとするものであります。第四点は、交通不便な島で特別に傭船を必要とする場合における経費の加算額の
規定を新たに設けようとするものであります。第五点は、国の
予算節減の方針に則り、当分の間基準額で算出した額の五%の節減を行うため、特に
規定を設けようとするものであります。
地方行政委員会におきましては、本月四日、
政府当局より提案理由の説明を聞いた後、格別の質疑もなく、本六日採決の結果、本法案は
全会一致を以て、
衆議院送付案の
通り可決すべきものと決定いたしました。以上、御
報告申上げます。
次に、
只今議題になりました
昭和二十九年度の地方交付税の総額等の特例に関する法律案の地方行政委員会における審議の経過並びに結果について御
報告申上げます。
本法案は、
政府において
警察制度の改正に伴う都道府県分
警察費所要額の算定につきまして、五十六億円の過小算定があることが明らかになりましたので、
警察費の算定替えを行うこととし、補正
予算において要措置額四十億を地方交付税の総額に追加することに
なつたことに対応いたしまして、本年度の地方交付税について地方交付税法に所要の改正を行おうとするものであります。
その内容の要点は、第一に、所得税及び法人税の収入額の百分の十九・八七四(現行十九・六六)、並びに酒税の収入額の百分の二十を以て本年度の地方交付税とすることであります。第二に、本年度分として交付すべき地方交付税の総額は所得税及び法人税の収入見込額の百分の十九・八七四(現行十九・六六)並びに酒税の収入見込額の百分の二十に相当する額の合算額とすることであります。第三に、すでに決定した本年度の普通交付税の額を変更することによる混乱を防止するため、本年度分の地方交付税について増加して四十億円は特に特別交付税の総額に算入するものとすることであります。
本委員会におきましては、十二月三日、塚田
国務大臣から提案理由の説明を聴取し、本六日、
警察費の不足額の内容、交付税の率、法人税の自然増収等を見込んで率を定めた理由等について質疑が行われましたが、詳細は
会議録により御
承知を願いたいと存じます。
討論において加瀬委員は社会党第四控室を代表して、交付税の
性質、地方財政の窮乏等の見地に立
つて反対、伊能委員は、本年度限りの止むを得ない緊急措置として
賛成、小林委員は、便宜的に交付税の率を変えるのは不可であるが、止むを得ぬものとして
賛成の意見が述べられました。次いで採決の結果、本法案は、多数を以て原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
御
報告申上げます。
次に
議題になりました
昭和二十九年七月の大雨、同年八月及び九月の台風並びに同年八月の冷害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律案につきまして、地方行政委員会における審議の経過と結果を御
報告申上げます。
本法案は、本年七月の大雨、八月、九月の台風及び八月の冷害により被害を受けた地方公共団体に対し、地方財政法第五条の
規定にかかわらず、地方税等の減免により生じた財政収入の不足を補う場合及び風水害等に係る災害救助
対策、伝染病予防
対策、病害虫駆除
対策、農機具
対策等の財源とする場合におきましては、起債を財源とすることを認めると共に、この地方債については、資金運用部資金、簡易生命保険及び郵便年金特別会計の積立金を融資することとし、その利息の定率及び償還
方法は政令で定めること等を内容とするものでありまして、
衆議院提出に係るものであります。
本委員会におきましては、本日六日、衆議院議員加藤精三君より提案理由の説明の後、本法案に対する
政府の意見について質疑があり、これに対し
政府委員から、「昨年の類似の法律より弾力性がある故、止むを得ない。ただ七月の大雨にまで及ぼすのは範囲を拡げ過ぎる。当大蔵当局も本法案は了解している」旨の答弁がありました。
次いで討論において伊能委員から、七月の大雨を含めることは、他の同種類の特例法との均衡上不適当であるから、これは削除すべきであるとして、修正案が提出されました。次いで採決の結果、伊能委員の修正案は、多数を以て可決され、修正部分を除いた
衆議院送付案は、
全会一致を以て可決されました。かくて本法案は、多数を以て修正可決すべきものと決定いたした次第でございます。
以上、御
報告申上げます。(
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