○小林亦治君
只今議題となりました
昭和二十七
年度の
一般会計及び
特別会計並びに
政府関係機関決算報告書につきまして、
決算委員会における審議の経過及び結果の概要を御
報告いたします。
本決算は本年二月十一日第十九
国会に提出され、今回審査を終えたものであります。
先ず
一般会計についてでありますが、歳入
歳出決算額は一兆七百八十八億余万円で、歳入
予算額に比較しますると千四百六十二億余万円を増加しております。
歳出は
予算額が九千三百二十五億余万円で、これに前
年度からの繰越額七百三十一億余万円を加えますと一兆五十七億余万円となり、このうち支出済額が八千七百三十九億余万円、翌
年度への繰越額が千百八十九億余万円で、これらを差引きますと百二十七億余万円の不用額を生じております。次に、
特別会計の数は三十五でありますが、各
特別会計の決算額の合計は、歳入一兆三千四百九十九億余万円、
歳出一兆二千百三十六億余万円であります。
又、
政府関係機関の数は九つでありまして、各機関の決算額の合計は、收入五千六百九十四億余万円、支出四千百五十一億余万円であります。
以上が決算の概要でありますが、これらに関する詳細は決算書類について御覧を願います。
次に本決算審査の結果といたしましては、会計検査院の指摘しておる不当事項につきましては、検査院の意見はすべて当委員会とその
見解を同じうしておるものと認めます。これらの不当事項を除くその他の決算事項につきましては特に申上げることはございません。審査の結果、内閣に対して警告又は要望する事項につきましては、ここに提出いたしました審査
報告書に要点を記載いたしました。
我々が決算の審査をいたしまするのは、過去の事績を取上げてその不当を追及するばかりでなく、それによ
つて、過誤を改め、法令、制度及び機構の
改善すべきものは速かに
改善させ、将来に向
つて再び過誤を起させない、更に一歩を進んで、
財政收入の大半は
国民の血税であることに鑑みまして、これを有効に使用することの措置を見守り、以て
国民の信託に応うるのが主要な使命であります。然るに、従来、年々の決算審査の結果、当委員会が内閣に対して警告を発しましても、例えば
責任者に対するところの処分の励行の問題のように、それに対応する措置をとらないものもあり、又例えば補助金の問題、外国食糧輸入の問題などのように、ごうごうたる世論を巻き起した今日に
至つて、ようやく
改善の第一歩を踏み出すような緩慢振りでございまして、その間に巨額の国損がみすみす重ねられて行くことは遺憾至極でございます。これらの事態に鑑みまして当委員会といたしましても決算の審査を早期に行い、古い事案としてばかりではなく、直ちに今日の事態にも即応する事柄を審査し、その
改善を早急に行わせる方向に進んで参
つておる次第であります。
二十七
年度決算を審査いたしまして特に痛感いたしましたことは、やはり国費の無駄、即ち、調査の不徹底、無思慮、無計画、杓子定規的な処理などによる冗慢な支出の例が跡を絶たないことであります。
災害復旧事業などに対する補助金の問題については、前回の
報告において詳細に申述べた
通りでありますが、この補助金に関する数々の不正不当が起るのは、
地方財政の窮乏によるものもありますが、地方団体は補助金の争奪に狂奔し、国にはこれが使用の水膨れを摘発するの機構が充実せられていない上に、肝心の
責任感と能力が欠けているためと思うのであります。一方、
財政の現状を見ますれば、租税の賦課はもはや飽和点に達しており、これ以上の増徴は望み得ないのであります。すでに、たばこの専売益金においても、高級品の売行不振のために
予算を下廻る状況であります。従いまして
財政收支の均衡を期するには、これを国費の節約に求むべきは勿論であるが、何よりも有効な使用の面にこれを求めなければならないのは当然の理であると
考えるのであります。然るに現実はどうであるかと申しますれば、例えば運輸省所管の計画造船に対する
財政投資におきましては必要以上の金額が融資されそれがいわゆるリベート問題として世上を騒がして、又農林省所管におきましては、主食にならないような粗悪な米や麦を多量に輸入し、数十億円の損害を来たしており、その一部がかの黄変米問題として、これ又世論の的とな
つております。そのほか建設省所管において、無計画に土木建設用の高価な機械を購入して、使用しないまま空しく雨ざらしにし、遂に廃棄するに至
つたものとか、保安庁において部内の連絡が悪いために不急の備品を多量に調達したような、不用不急、過大な物品購入の事例は、各官庁の部内から企業会計、公共企業体にまで及んでおるのであります。
右に述べましたように、国費の無駄については、少くとも会計検査院がこれを指摘した場合には、
政府当局においては、改めて
国会が警告を発するまでもなく、速かに
改善の方途を講ずべきであるのに、これが対策の樹立に真剣味を欠いておるのは、諸外国のごとく、ここには大臣はおりませんが、(「一人いる」と呼ぶ者あり、笑声)失礼。大臣及び長官に民事上の賠償
責任がないためもありましようが、官僚の
国民に対する
責任感の腐敗にあらずんば、その薄弱さを暴露しておるものと私は
考えます。内閣は、
財政の現状と睨み合せ、一層敬虔な
態度を以て事態の
改善に努力されんことを要望してやまないのであります。
殊に、農林省所管における外国食糧輸入の件につきましては、ビルマ、イラク、パキスタンなどから輸入した米及び麦が、主食として配給できないような品質粗悪なものであ
つたため、原材料用として非常に安い価格で売渡し、その結果、巨額の損害をこうむ
つたものがありますので、その実情を聞いてみますると、ビルマ米については六十一億円、イラク大麦については三十四億円、パキスタン米については四十二億円とい
つた巨額なものを購入するのに、驚くべきことには、農林省としては現地に全く人を派遣しておらない、輸入事務の一切を
日本の貿易商社に委託しておるのでありますが、この貿易商社は、これ又単に事務を取扱うだけで何らの
責任を負担しておりません。農林省としては、極端に申せば輸出国のなすがままにこれを受入れているという、全く唖然たるものがあります。その結果生じた莫大な損害はすべて
国民の
財政負担となることに鑑みますれば、これを単なる粗漏であるとか、見込み違いであるとかで了解さるべきものではないのであります。なおその上に、これらの事態はすでに二十六
年度にも発生しており、やはり相当巨額の損害を受けておるのに、更に二十七
年度において漫然これを繰返しておる事実は、我々の最も重視するところでありまして、農林省が会計検査院の指摘なり、
国会の警告なりを軽視し、世論の騒がしく
なつた今日、漸く乗り出していろいろ措置を講ずるというような傾向に見えることは誠に遺憾であり、強くその
責任を追及せざるを得ないのであります。
次に、
責任者に対する行政処分についてでありますが、これについては、本年四月、特にその励行を要請する決議を以てしましたのでありまするが、これに対しては、内閣においてもその励行を確約せられましたので、我々としては必ずその成果が挙るものと期待しておるのであります。この決議の趣旨は申すまでもなく、どこまでも折目は正しくしたい、いやしくも処分を要する場合は、厳重注意などということでお茶をにごすことなく、正式な行政処分を励行されたいというのでありますが、もとより苛酷な処分を要求するものではありません。(「苛酷でいいよ」と呼ぶ者あり)ただ、甚だしいのは、再度に互
つて同じような事件を起しているのに成規の処分をしていない。又或る者は不当事件のあ
つた後に、その不当事件を惹起したところの当の御本人があべこべに昇進をしたり、甚だしきは栄転さえしておる。こういう事例がたくさんあるのです。かくのごときは
綱紀の頽廃の甚だしきものと指弾せられなければなりません。このようなことは官庁
内部では軽く看過されているかも知れませんが、これを
国民の立場からするならば、誠に納得の行かない、独善的な、而も不都合な
やり方と言わざるを得ないのであります。内閣はこの点に深く思いをいたし、従来の陋習を破
つて、どこまでも
国民の納得の行く行政処分を行われんことをこの際特に強く要望しておきます。
更に、これと同時に我々は会計検査院の機構の拡大強化を叫んで久しい。御
承知の
通り、会計検査院は
政府に独立した存在であ
つて、国家
財政の監督、会計検査の最高機関であります。
財政総額二兆円にも及ぶ広汎な收入支出を審査しなければならんであります。併しながら、その広汎なる事務を独立に担当しておるところの会計検査院は、院長である検査官以下と全職員の総数が驚くなかれ僅かに千百名台、その
予算額は四億円に充たないところの三億九千万円、これでは如何に格段の努力を払い、如何に会計検査院が敢闘努力しようにも、国全体に対する機関が、監督せられる側であるところの
政府部内の監察機構にも遥かに劣る及ばない貧弱さであ
つては、如何に努力を求めましても無理な相談、あたかもナイフを持たして大木を切れと言うに等しい無理な相談でありまして、実際に検査するものは全体の僅か七%、或いは八%、ほんの氷山の一角しかつかむことができないのであります。而も不当経理として摘発せらるる件数は、
昭和二十五
年度が千百十三件、二十六
年度は千百九十八件、それが何と二十七
年度に相成
つては千八百十三件、かように年々累増の一途を辿
つておる。将来は一体どれだけ増加するか、国損も又巨額に上るのではないかと我々は憂慮しておるのであります。
行政機構の縮小は健全
財政の見地からも当然これが企てられることではありましようが、会計検査院を拡充強化することは、これによ
つて未然に防止せらるるところの国費の無駄、浮び上るところの国費の節約が相当巨大な数額に上るであろうことに思いをいたせば、検査院の拡張に要する経費のごときは全く微々たるものであり、その半面に健全
財政に寄与することはけだし莫大なるものがあろうと信ずるのであります。
自由党、民主党、緑風会、左右の社会党、無所属クラブから成るところの三十名の決算委員
諸君は、その抱懐するところの
政治感覚は、皆それぞれに異な
つており、従
つて主張しておるところの政策も各派各様、それぞれこれ又相異な
つておりますが、にもかかわらず、会計検査院を拡充強化することについてのみは、皆異口同音にいづれも真剣なる叫びを以てこれを主張しておること、
国民の
輿論、ジヤーナリズムの所論、どこを見ても、いずこを見ても、これが要望巷に満てる今日、
政府は今こそ
昭和三十
年度の
予算編成に当り、会計検査院と機構の拡充強化、その
予算額を増加するために必要なる措置をとると共に、これが実施に格別の配慮を寄せらるるよう要望するものであります。
更に、最後に
政府部内の
責任感につきまして毎年の例とな
つてしまいましたが、ここに再度繰返し強調する次第であります。
決算委員会は慎重審議の結果、全く超党派的に全会一致を以て、以上の
通り議決いたしました。なお討論に当
つて各委員から、それぞれ次のような御意見が述べられましたので、この
機会にその大要を御紹介申上げておきます。
先ず
日本社会党第四控室の岡三郎委員から、「二十六
年度決算の際には、我我は不承認の
態度をと
つたのであるが、今回も
予算の使用は依然として乱脈を極めており、懲戒処分も十分に励行せられていない、併し
政府においてはこれを
改善する誠意のほどが僅かながらも見られるので、今後熱意を持
つて改善に努力することを条件としてこの審査
報告に賛成する、なお会計検査院は機構を拡充して
国民の期待に則りの気魄を以て努力せられたい。」との発言がありました。次に
自由党を
代表する青柳秀夫委員からは、「賛成に当
つて次の点を要望したい、即ち
政府各当局は
予算の獲得については狂奔するが、その適正な執行については熱意が足らない。検査
報告によれば無駄な面が多数見受けられる。今後十分にその効率的使用に意を用いられたい。上級当路者はたとえみずから引起さないところの事項でも、不当処理全般について
責任を感じ、又処罰は上下一体として厳重に励行されたい」との発言がございました。次に緑風会を
代表せられた島村軍次委員は、「次の
希望を付して賛成する、
予算の効率的使用を図るために、事前検査の適正な励行及び検査機構の整備についてなお一層の努力を望む。又懲戒処分を厳正ならしめるために制度の改正が必要と思うが、現行制度の下においてもこれを十分に励行し、その実績を挙げられることを望む」との発言がございました。次に
日本社会党第二控室を
代表せられる山田節男委員から、「次の意見を付して賛成する、即ち
予算の使用が乱脈を極めておる。その原因は官僚主義による繁文褥礼、
責任の所在の不明確にあると見られるが、特に補助金
関係、食管
特別会計、国鉄等にその顕著なる例がたくさんある。この対策としては検査院の機能の発揮、処罰の法的規制が必要である」との発言がなされました。
次に無所属クラブを
代表せらるる平林太一委員から、「この審査
報告を
決定する委員会の席に、
委員長から要求があ
つたにもかかわらず、
政府の最高
責任者が出席しておらないのは甚だ遺憾であり、且つけしからん。これも
政府そのものがすでに決算を等閑にしておるところの証左であり、現在
綱紀の紊乱、官紀の廃頽は目に余るものがある官僚、国を亡ぼすの憂い、今日にしてこれを矯めなければならない」という、
政府当局に対し、深い自粛自戒を求めたいという声涙下る発言がなされ、更に八木幸吉委員からは、「次の警告を付して賛成する。この席に
国務大臣の出席がないのは、
政府の決算に対する
考えを、そのことによ
つて如実に示すもの、甚だ遺憾に堪えない。内閣上層部の専横な
態度が、
政府部内の官紀弛緩の原因であるが、
政府当局者は常に
責任感を持
つて事に当られたい。農林省において病変米検査のための会社を新設するとの風評を聞くが、外郭団体ではすでにこりておる。国鉄
関係においても問題が起
つておる際に十分なる自戒を望む。なお検査院の機構拡充、機能発揮は緊急の要務と認れる」との発言があ
つたことを御
報告いたします。
なお黄病変米に関する件、国鉄のいわゆる民衆駅に関する諸問題は、調査案件といたしまして、厳重なる審査を今後に加えることに相成
つておりますので、これも加えて御
報告申上げます。
以上、御
報告申上げます(
拍手)