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説明員(
大坪藤市君)
只今御
指摘の
通り、現在の
牧野法は極めて微温的でありまして、大した効力はないと申しますか、その点におきまして非常に不十分な点は御
指摘の
通りであります。ただ今までの
牧野は、
只今も
お話がありました
通りに、主として馬の
放牧地、馬の足も馴らす
意味の
放牧地というのが多か
つたのであります。
従つて牧野地域内の草の質並びに量の改善というよりも、
面積を相当広くとりまして馬をそこで走らせ、そして足を強健にして
軍馬資源にするというような
考え方が主になりまして、現在の
牧野というものができているように私
どもは見受けておるのであります。併しながら、これが
酪農を
中心といたしました
牧野ということにな
つてしまいますというと、その
面積の広さということよりも、その
牧野の中におきまする草の質と量の問題が決定的な
要素を添えて来るのであります。ただ現在までは頭数から申しましても馬は百万頭を超えておりまするが、
乳牛はまだ三十四、五万頭というような
程度であるのでありまして、
各地方々々を見まする場合には、馬を飼育している
比率と
乳牛を飼育している
比率が、
地方によりまして非常に馬のほうの
ウエートが、相当比重が重いというような
状態にな
つておるのであります。従いまして、
当該牧野につきましての、いわゆるそれを
利用する
利用者側の
利害関係というものが必ずしも一致しない。馬を主として飼育している
農家は、いわゆる馬をただ単に何と申しますか、飼育して行きさえすればそれで事足りるのでありまして、その
程度でありまするというと従来の草によ
つて大体賄
つて行ける。ところが
乳牛を飼育して参りまする場合には、乳を出す目的でやるのでありまするから、草の質というものが決定的なその
ウエートを占めて来るのであります。従いまして、その間
相当牧野等につきましての認識と申しますか、欲求の度合が違うのでありまして、そういう
状態の下にありまする
牧野につきまして、いわゆる
土地改良法的な
収益権と申しまするか、そこまで行くのは如何かと、かように
考えておるのであります。先般そういうような
意味がありまして、いわゆる
集約酪農地域に指定いたしました
地域につきましては、私
どもの大体の
考え方といたしましては、各
農家個々がもう殆んどおしなべて
乳牛を飼うと、こういうような構想を持
つておりまするので、若しその
地域内の各
農家が等しく
乳牛を飼うというようなことになりまするというと
利害関係が殆んど共通して来るのであります。従いまして、そういう
地域につきましては、現在の
牧野法は不十分でありますので、いわゆる
土地改良法的な徴収権を持ちました
法律も一応
考えてみたのでありまするが、そこまでいきなり行くのは如何かと思いまして、先般御審議を願いました
酪農振興法の中に一応
集約酪農地域内についての、勿論
只今御
指摘がありましたように不十分でありまして、
所有者が最後まで頑張
つた場合には何ともならないというようなことにな
つておりますが、それまでにいろいろ市町村長についての斡旋とか、いろいろそういうような規定を設けまして、そうして
牧野法で不十分でありまする点を
集約酪農地域内においては或る
程度改善をして参
つたよう
なつもりでおるのであります。ただもう少し進展いたしまして、本当に各
農家こぞ
つて酪農をや
つて行く。而もその
地域に相当
牧野があるという場合におきましては、今後検討いたしまして、
土地改良法的な、
収益権を持
つたような
牧野法の改正ということは当然議題として私
どもといたしまして
研究をいたして行かなければならん問題じやないかと、かように
考えております。