○
小林(進)
委員 私は両派
社会党を代表いたしまして、
政府提出の補正予算案に反対をし、ただいま同志松原
委員が説明をいたしました両派
社会党提出の補正予算組みかえ案に賛成をするものであります。
討論に先だ
つて、特に
政府に警告を発しておきたいことは、本年度予算提出の当初、わが党
委員の
質問に答え、大蔵大臣は、本年度は断じて補正予算を編成しないと大言壮語せられたのであります。もちろん災害復旧費のごとき、予想せざる自然の変異に基く予算の追加をさすのではございません。
政府のデフレ政策失敗のために、今回補正の必要性を生じて来た社会保障
関係のごとき地方財政
関係のごとき、これらはいずれも本年度当初予算審議の際、両派
社会党の予算組かえ案の中に盛り込んで、強く
政府にこれを要望したところであります。その際
政府はわれわれの案を無視して、その必要なきを言明した。その必要なしと
言つた費用を今日麗々しく組み入れておる。その偽りの
態度、われわれを通じて常に
国民を欺瞞しているその無節操なる
態度に対し、一体いかなる責任をとられるというのか。せめて大蔵大臣にも
なつたら、かりにでくのぼうであろうとも、半年や七箇月の間に化けの皮がはげる
ような、あげ足をとられる
ような下手なたんかは切られない
よう、特に警告を発しておきたいのであります。
さて本年度一兆円予算の内容は、あらためて申し上げるまでもなく、金融面においては、血も涙もない苛酷な金融引締めを続行して、中小企業を倒産、失業に追い込み、相対的に大企業の温存をはか
つたものであり、他面財政面では、産業投融資を大幅に削減して、石炭、鉄鋼、造船等の基幹産業に莫大な失業者を生み出しているのであります。かくして本年度デフレ予算に基く犠牲が、中小商工業者と労働者に大きくしわ寄せをせられたのであります。かくのごとく大きな犠牲を生んだその予算が、しからば一体一兆円の線にとどま
つているかというと、事実はこれに反し、本年度分一兆円に加うるに、過年度の繰越し予算一千二百七億円を合せ、実に一兆一千二百有余億円が予算支出規模にな
つているのであります。この
ような財政支出が本年初めより開始せられた結果、第一・四半期から第三・四半期の現在に至るまで、財政の対民間収支は散超を続けている有様であり、明年一月から三月までの第四・四半期に苛酷なる税金の取立やら
政府資金の金融機関よりの吹い上げ等の措置を講じても、年度末には一千億円を越える散超に終らざるを得ぬことは、これは必然の傾向であることを私は断言しておきたいのであります。すなわち
政府の言う一兆円予算とデフレ政策は、弱い者を金融の面から締め出して、ただ失業者と生活困窮者をどしどし製造するための政策であり、倒産と不渡り手形の数を増加するための財政金融政策であ
つて、財政散超によ
つて、本来のねらいとするデフレの効果は相殺されている事実を指摘しなければならぬのであります。しかして
政府はこの欺瞞的政策によ
つてつくり出した未曾有の経済不況、これによる犠牲者の救済に対しては、一兆円のわくを堅持するという名のもとに、予算増額補正を渋
つているのであります。
そもそも今回の歳出補正の面における最大の欠陥は、災害復旧、社会保障、地方財政補助等の重要なる項目にわた
つて、出すべき金を出さない、ほんの形ばかりの金額を増額して、これを大蔵官僚一流の手練手管で体裁よくごまかしているにすぎぬという点にあるのであります。災害復旧について言えば、
政府は何ゆえに予備費や融資等に八十九億円余りの金額を分散させたのか。昨年の災害復旧の例に見れば、
政府の災害復旧特別融資にして実現されたものはわずか四十億円にすぎず、残りはすべてから
約束に終り、いたずらに農民をだましたという結果に終
つておるのであります。本年こそはわれわれの主張する
通り、災害復旧事業費、救済事業費、災害対策用権子確保補助加味して、災害復旧費総額の三割、最低百六億円を復旧初年度たる今年予算において確保し、しかもこれを確実に実施するということは、例年に照しても絶対必要なる措置であるということをわれわれは叫んでやまないのであります。
地方財政
関係においても
政府案はきわめて不徹底であり、あいまいであります。これでは地方自治体があげて憤激するのももつともといわなければならぬのであります。おそらく
政府としては、そのねらうところ知事官選案と同じく、地方財政力を弱め、中央集権化をも
つて、地方自治体をも自己の支配下に置かんとする反動的、権力的意図が隠されていることをうかがい知ることができるのでありまして、かくのごとき企図のもとに出されたこの原案を、われわれは認めるわけには行かぬので、あります。
特にわれわれが最も不可解とするところは、公務員の給与に関する点及び年末手当に関する
政府の冷淡なあり方であります。ベース・アップについては遂に黙殺をしてしま
つた。手当については補正の処置なしと言う。汚職と収賄に終始し、働く者にあすの希望
一つ与える信頼感のない今の
政府が、デフレ経という経文を読んで、公務員
諸君にのみ低賃金のくぎづけと耐乏生活を説いたところで、一体何人がこれに納得することができまし
ようや。名はデフレにして、事実は散超に基くインフレ的要因の中に労働者は苦しみつつ、この苦しみの中から生れたこの要求を出しておるのでありまして、この要求にこたえて、たといそれが最低限度のものであろうと、その増額を認めることが絶対必要であることをわれわれは確信するのであります。現在のままの補正案において、なおかつ年末手当の増額が可能である事実に照し、年末手当の増額については特に
政府において再考慮せられんことを要求してやまないのであります。
なお加えて、
政府原案の恐るべき欠陥は、一般会計予算以外の予算における補正に関する点であります。第一は、中小企業に対する緊急金融処置に関する点がそれであり、第二は、政策金融にして、目下海外から注文の殺到しておる外航船建造の発注を受入れるために必要な金融処置として、輸出入銀行の融資を積極的に増額するという点であります。年末から明春にかけて中小企業の金融はさらに苦しくなる。これをそのまま放任しておく
政府の無情をわれわれは責めざるを得ぬとともに、他方造船輸出を振興する絶好の
機会をもまたいたずらに見過して、不景気打開、外貨獲得の意欲を補正予算上に見出し得ぬのは、最も不可解とするところであります。いかに崩壊寸前にある現
政府のやり方とはいえ、国家将来を思わざるその投げやりの
態度、われわれは断じてこれを了承することができぬのであります。
次に、私どもの最も了承し得ざる面は、歳入の点であります。
政府原案に隠されている思想は、依然として
吉田首相特有の秘密外交の理念と、その軌を一にしておるのであります。すなわち歳入の実際についてはま
つたくヴエールをおろして、一切を秘密の中に包んでおります。歳出補正の財源としてあげておる経費の節約並びに不用額は、
政府が補正予算案に示した財源以外は一体どうな
つておるのか。また
政府は新たなる財源として法人税百五十億円をあげておるが、一体これはこれだけにとどまるのか。また他の税金についても法人税同様、当然自然増収があると見なければならぬが、これが一体あるのかないのか、
国民の前に少しも明らかにしておらぬのであります。今年当初予算提出の際、大蔵大臣小笠原三九郎さんは、本年は租税の自然増収どころか、減収のおそれさえありますと、おどかし文句をあなたは述べたはずであります。しかるにここに奇術の
ように百五十億円の法人税が生み出されて来たのであります。ほかに何が隠されているのか。真に恥も外聞もない
政府のこのからくり仕事に、われわれ
国民はただあきれざる得ないのでありまして、
国会の予算審議はまさに
政府から与えられた一握りの資料だけに決定され
ようとしているのであります。これこそ
国会運営の上からも断じてわれわれの黙視し得ぬところであります。われわれの歳出補正組みかえ百四十五億円の増額は、その財源を保安庁費並びに防衛分担金のう
ちより、合法的に確保せんとすることは、すでに提案者の説明した
通りであります。われわれはすでに述べた
通り、防衛
関係費予算を
中心とする過年度繰越分一千二百七億円の存在こそが、日本経済をインフレに転化する導火線となることを恐れているのでありまして、日本経済を立て直すためには、ぜひとも明年度予算編成に際しては、
昭和二十七年度、八年度というインフレ財政に組まれた防衛
関係予算の繰延額に相当する額は、これを削減をして、取除いてしま
つて、財政の健全化をはからなければならぬことを深く考慮いたしておるのであります。
さらに一言加えたいことは、公務員年末手当のうち、二万円以下の所得に対し減免税を行うべきであるということでありまして、これによ
つて実質賃金向上策となし、他方これによる勤労所得税の減収分は、酒税その他の大衆課税の自然増収によ
つて十分補うことができ、
政府の心配する一兆円のわくを越えることは絶対にないことを申し上げておきたいのであります。
われわれは以上申し述べたところによ
つても明らかなるごとく、
政府の原案には全面的に反対をするとともに、われわれの組みかえ案についても、これにま
つたく満足するものではないのであります。幾多の不完全を認めながらも、しかもこれを単純に、かつ金額の総計もこれを少くして、できるだけ可能な面だけにとどめた修正案提出の
理由は一体どこにあるかといえば、われわれはいたずらに補正予算の審議に没頭して、かんじんの
臨時国会の目的を見失うことを恐れたからにほかならぬのであります。この
臨時国会の最も重大なる使命は、多年悪政を積み重ねた
吉田内閣に今や快心の一撃を加え、も
つてその息の根を絶つ
不信任案を上程し、かつこれを通過せしめるにあるのであります。
従つてわれわれの補正予算組みかえの趣旨は、
吉田内閣最後の悪政を可能なる範囲に修正したいというにとどまるのであ
つて、
解散、
選挙、新しい
政府の誕生、その新しい
政府こそは、われわれ両派
社会党の樹立する
政府たることを確信するものでございまして、(拍手)その際には堂々第二の補正予算を作成いたし、働く大衆の利益を断じて守り抜く具体策を打出すことを
約束いたしまして、
政府原案に反対、組みかえ案賛成の討論にかえておく次第であります。(拍手)