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1954-12-04 第20回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十二月四日(土曜日)    午前十一時三十三分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 中曽根康弘君    理事 山本 勝市君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    植木庚子郎君       岡田 五郎君    尾崎 末吉君       尾関 義一君    小林 絹治君       迫水 久常君    關谷 勝利君       高橋圓三郎君    富田 健治君       中村  清君    灘尾 弘吉君       葉梨新五郎君    船越  弘君       本間 俊一君    松山 義雄君       八木 一郎君    山崎  巖君       宇都宮徳馬君    加藤常太郎君       川崎 秀二君    河野 金昇君       小枝 一雄君    高橋 禎一君       武知 勇記君    舘林三喜男君       中村 梅吉君    中村三之丞君       廣瀬 正雄君    福田 赳夫君       古井 喜實君    淡谷 悠藏君       伊藤 好道君    滝井 義高君       松原喜之次君    三鍋 義三君       山花 秀雄君    横路 節雄君       稲富 稜人君    川島 金次君       小林  進君    河野  密君       小平  忠君    西村 榮一君       黒田 寿男君    小山倉之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 小原  直君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  愛知 揆一君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 小澤佐重喜君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法制同次長   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 十二月三日  委員堤ツルヨ辞任につき、その補欠として小  林進君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員中村清君、原健三郎君、宇都宮徳馬君、古  井喜實君、足鹿覺君及び武藤運十郎辞任につ  き、その補欠として松山義雄君、關谷勝利君、  加藤常太郎君、廣瀬正雄君、三鍋義三君及び淡  谷悠藏君が議長指名委員に選任された。 同日  委員關谷勝利君及び松山義雄辞任につき、そ  の補欠として原健三郎君及び中村清君が議長の  指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十九年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十九年度特別会計予算補正(特第2号)  昭和二十九年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十九年度一般会計予算補正(第1号)、昭和二十九年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和二十九年度政府関係機関予算補正(機第1号)の三条を一括して議題といたします。  この際委員長より、一言申し上げます。昨日理事会において、本日吉田総理大臣出席させるとのお約束をいたしましたが、本朝来病気のため、にわかに出席できなくなりました。従つて本日はやむを得ず、緒方総理がかわつて出席することになりましたことは、まことに遺憾に存じます。  質疑を継続いたします。中曽根康弘君。
  3. 中曽根康弘

    中曽根委員 本日吉田総理大臣がお見えの予定でありましたが、急に御病気で出られないのはきわめて遺憾であります。きよう決算委員会が開会されておりまして、伝えるところによると、決算委員会に喚問されて出頭するのがいやであるから、また例の病気使つて予算委員会にも出ないのであろうということがいわれておりますが、私はこのようなことを信じたくありません。しかしともかくこのような疑いが持れているということは、私はきわめて遺憾に存ずるのであります。委員長は昨日来われわれに対して、必ずきよう総理大臣を出すと確約なさいました。それでわれわれはきようつてつたのであります。こういうように一国の予算委員会委員長ともあろう者が、総理大臣にそのようなことをやられて、恋々とその地位におられるということは、いさぎよしとしないと私は思うのであります。当然委員長は、総理大臣あるいは与党に対して辞表を提出して、その責任の所在を明らかにすべきであると思うのでありますが、まず委員長にその所信ありやいなや伺いたいと思います。
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 中曽根君にお答えいたします。先ほどの当委員会理事会において私が申し上げた通りでありまして、総理大臣が昨日までは出席約束しておられたのでありますが、病気のために出席できないということでありますので、先ほど申し上げました通り、私どももきわめて遺憾に存じます。  私は特に本日は大事な日であると存じましたので、今朝総理大臣の公邸に総理をおたずねいたしまして、委員会との約束がございますので、御出席を願おりということを確かめるために特に参つたのでありますが、ちようど医者が診断をされて帰りがけに会いました。本日ははなはだ無理であるという医者言葉がありましたので、お休みのところを押して面会を求めるのは無礼であると存じましたので、引下つて来たような次第であります。最後の重要な質疑のときに、総理大臣おいでにならないということは、当委員会としては遺憾の極であると存じますが、事が御病気であるということであるとやむを得ません。どうぞひとつ委員諸君は、副総理出席しておいでになるのでありますから、政府を代表しての御答弁と存じますので、御了承願いたいと存じます。
  5. 中曽根康弘

    中曽根委員 委員長の進退問題をこれ以上御質問申し上げませんが、あなたのことであるから必ずや善処すると私は思つております。吉田総理大臣病気は、実は医者や薬ではなおらない病気である。決算委員会がやむとか、田中決算委員長辞任するということであの病気はなおるだろうと私は思つておる。今あなたがお医者さんに会つたと言われるが、どんなお医者さんであるか私はきわめて疑わしいと思つております。しかし時間の都合上質問を進めます。  まず緒方さんに総理大臣の代理として御質問申し上げたいと思います。きよう総理大臣が出ると思つて総理大臣用質問を用意して来ましたので、ちよつと見当が違いますが、どうぞ総理大臣なつたつもりでその職務を正当に行使していただきたいと思います。吉田さんはどう思つているか知らないなどという御返答は、こういう重大な事態でありますから、どうぞ御返答にならないようにお願いいたしたいと思います。  吉田さんは今度国会へ出て参りまして、わが党の松村政調会長質問にもあるいは川崎代議士質問にも、非常にいたけだかになつてお答えになつておるようでありますが、実はわれわれも国民もちよつと予想外であつたのであります。ということは今度国会がいよいよ召集される前に、吉田さんが例の書簡総務会に出して、辞任される、総裁やめられるという予告をなさいました。そこで全国民及びわれわれは、いよいよ吉田さんも最後をきれいにするか、ああいう御老人がああいう態度に出て来られたならば、われわれも敬意を表さなくちやならぬ、今度の国会ぐらいはきれいに送つてやろう。この間の新聞によるというとイギリスのチャーチルを送るのに、労働党のアトリーが非常な讃辞を呈して、壁画まで贈つたということが出ておりましたが、われわれはそこまで行かなくても、せめて保守党の議員でティ・パーティぐらいやつて送別をしてやることが大事であろう、そういうことをわれわれは考えて上京して来た、現に社会党今澄君のきのうの質問を聞いても、そういう友情があふれておる言葉がありました。私のよう吉田さんに一番憎まれておる人間でも、そういう気持で出て来たのですから、ほかの代議士諸君がそういういたわる気持で上京したことは間違いないと思う。ところが吉田さんはどういうものでありますか、今日の事態が志と違つたのでありましようか、非常にいたけだかになつて来ておられる。まつたくこれはわれわれは予想外であります。吉田さんが今日出られないという理由も、われわれはある程度想像がつくのであつて吉田さんの非をこれ以上追究しようという気持はそうありません。吉田さんも国家のためには非常に努力された方であり、われわれも正直に申し上げれば、われわれと主義主張工は違うけれども、しかしあの人一流吉田式の愛国心を一徹に張つてつておられる。その努力はやわりわれわれは認めてやらなければならぬ。老人であるけれども、なかなかそういう点では内心は敬意を表しておつたのです。しかし吉田さんがああいういたけだかな態度になつて、今日ですら出て来られぬということは、まことに予想外でありまして、国民もおそらくそうであるだろう思います。吉田さんがわれわれのこういう考え方に対してどういうふうにお考えになるか、これは吉田さんの御自由でありますが、われわれがそういう気持を持つてつたということだけは、副総理大臣から吉田さんにもぜひ伝えておいてもらいたいと思います。わかりましたか。  そこで吉田総理大臣かわり緒方さんにお尋ねいたしますが、きのう川島議員質問に対して、政局安定ということは保存の勢力結集である、またそれに対して現在でも望みは捨てておらぬ、こういう御答弁をなさいましたが、やはりそのようにお考えでありましようか。そうしてどういうふうにこれを進めておやりになつたらいいと考えておられますか、まず御質問いたしたいと思います。
  6. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今日の政局を安定させるためには、その有力なる方法として保安勢力結集考えられます。これは昨年の総選挙の結果、現在の政府が十分な多数をとることができない、いわゆる比較多数の上に組織されましたことが、今日政局の不安定を来しました一つの原因であると考えております。今日なお保守結集ということが、政局の安定の一つの有力な方法であると考えております。
  7. 中曽根康弘

    中曽根委員 吉田さんは羽田をたつ前に、政局安定が非常に望ましいということを何回もステートメントで強調されており、また日本に帰つて来てからもそういうことを言つておられますが、今度吉田さんが自由党総裁をおやめになるという意思予告されたのは、やはり政局安定のために自分はそういうことをやつてもいい、そういうお考えから出ておるのでありますか、あるいは別のお考えでやつているのでありますか。
  8. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政局安定のために政界をしりぞくということが、主たる動機ではなかろうと考えます。今日保守勢力結集につきまして、反吉田とかいう言葉が相当に使われておりますけれども、今度の引退はその問題とは別に考うべきであると考えます。
  9. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうしますと、大体どういう御動機でああいう御書簡をお出しになつたのでありますか。世の中は、大体吉田さんは政局安定のために自分が障害になつているなら引いていい、そういう大局的考えからかよう態度をおとりになつたと考えておりますが、今のお話を承りますと、たいへん世の中の期待と違うよう考えられますが、どういう意味でありますか。単なる健康上の理由でございますか。
  10. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これは吉田内閣政権を持てることかなり久しく、第五次内閣まで組織されたわけでありますが、それで吉田総理個人心境として政局引退考えられたものであると考えます。
  11. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうすると、政局担当が長いから、人心がうんで来たから、自分はこの辺で交代する、そういう意味でありますか。
  12. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 総理大臣個人心境でございます。
  13. 中曽根康弘

    中曽根委員 総理大臣個人心境と言って、これから答弁をすべて逃げられるというと、何の答弁にもならないのでありまして、もう少し御親切にお答え願いたいと思います。そういうことが今日の政局安定に非常に重要な材料になつていると思います。また国民に対しても、政府指導者としては明らかにする必要があると思うのであります。どういう御理由でありますか。もう二回お尋ねいたしたいと思います。
  14. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは私は、相当老齢でもありますし、個人心境がここに至るということはあり得ることだと思います。たとえば外国の例を引合いに出すことはいかがかと思いますが、チヤーチル氏のごときも昨年以来個人心境として、後織者をつくり、そして政局を円満に引退する機会考えておられるやに伝えられておる。同様のことが言われるのではないかと思います。
  15. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうしますと、自由党の内部の問題として自分立場を善処するということであつて、ほかの保守勢力や、あるいはほかの党との関係において、自分自分の身を善処するという御意思ではない、単に自分個人的立場でそういう御態度をおとりになつた、こういうふうに解釈してさしつかえありませんか。
  16. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ほかの党との関係という御質問意味が、私よくわかりませんが……。
  17. 中曽根康弘

    中曽根委員 保守勢力結集というと、ほかの党との関係が必ず出て来るのであります。
  18. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 保守勢力結集に便にするという意味が主たる理由ではないと考えます。
  19. 中曽根康弘

    中曽根委員 またよくわかりませんが、時間がありませんから、次へ進みます。  一体吉田総理大臣議会の前に総裁をおやめになると言つた。そうすると大体常識では、総理大臣議会の最中におやめになるだろう、あるいは総辞職を適当のときになさるだろう、こういうことが常識で予想されます。ところが昨日の質問では、現在の状態では総辞職しないと言つておられる。そうすると、書簡を出されるときの心境と今日の心境とは、やや違うのではないかとも考えられるのであります。総理大臣はあのとき考えたお考えと、今日の状況とは、あるいはお考えがお違いになつたのでありますか、あるいは同じ考えでずつと一貫して来るのでありますか、お尋ねいたしたいのであります。
  20. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 総理のお考えは、適当な時期にということになつておりまして、初めあの書簡を出されましたときも、今日も、その考えは少しもかわつていないと考えます。
  21. 中曽根康弘

    中曽根委員 ああいう手紙を公式に出すと、当然世の中は、臨時議会において自分の進退を善処されると常識的に解釈しております。ところが臨時議会において総辞職しないということを言われると、あの手紙を出したときと今日の状態と、志が違つて来たから、またお考えがおわかりになつて、総辞職しないと言つて来たのではないかと誤解されます。現に世の中では、そういうことが明らかになつておらないから、あの手紙謀略的書簡である、吉田さんは外遊して帰つて来て、世界の情勢をよく見て来たから、吉田的平和攻勢をやつておるのだ、そういうことすら言つておるのであります。つまりああいうふうに自分の身を善処するということを言つて自分の党の崩壊を防ぎ、それから反対党不信任案をそれで殺し、そうしてずばりと奇襲的な解散をやる、そういう共産軍がよくやるよう平和攻勢をまねて出て来たのだろう、そういうふうに言つておる人もあります。私はそういうお考えではないと想像しておるのでありますが、一体どういうお考えでああいう手紙を出し、今日また辞職しないというふうにおつしやつておられるのでありますか、御解明願いたいと思います。
  22. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今お述べになりました最後の御想像通りでございまして、謀略的な考えは毛頭ないと思います。あの手紙は公衆に出されたものではなく、党の将来のことを考えられまして、あらかじめ後継準備をする、適当の時期に引退をするから、後継準備をする、それをどうすればいいか、最も民主的に党本位考えてくれということを常に諮問をされまして、党の三役その他首脳会議において、そういう答申をいたしました結果、ああいう態度に出られたと思います。
  23. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうすると、チャーチルがイーデンを自分後継として、しかもまだチャーチル辞職をしない。大体それと同じケースであつて、今度の議会辞職をして、あなたを総裁になさるとか、あるいは今度の議会直後にそういう態度をおとりになるのではない、大体そういう予告といいますか、予告篇を出した、そういうようなもので、かなり時間のかかるものであるというふうに解釈してさしつかえないわけでありますか。
  24. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 適当な時期ということは、非常に遠い将来を意味してはいないと思います。しかしながらそれには多少柔軟性があるのではないか。チャーチルの場合はいつという時期は私存じておりませんけれども、吉田総裁の場合には、適当な時期ということは、遠い将来のことを意味してはいないということを申し上げ得ると思います。
  25. 中曽根康弘

    中曽根委員 遠い将来と言いますと、それは無限になりますが、遠い将来でないというと、少くとも本年内とか、あるいは臨時議会中だとか、それが近い将来になりますが、一体どの見当になりましようか。臨時国会が終つたやめられる、大体その程度考えていいのでありますか、いかがでありましよう
  26. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは、私からはそう突き詰めたことを質問するわけには参りしませんので、言葉通り信じております。
  27. 中曽根康弘

    中曽根委員 私がこういうことを御質問申し上げるのは、実は緒方総理の名誉に関することがあると思うのです。と申し上げるのは、およそ解散があると考えなければならぬ、そうすれば総選挙になりますが、新しく総裁に予約された方が当然自分の一党を率いて、総裁として総選挙をやるのはあたりまえのことです。それを総理大臣を握つておりながら、しかも自分の副総理に予約しただけで来るべき選挙自分でやるということは、あとで譲つてやると言われた人にとつては相当な侮辱ではないかと私は思うのです。それは人の人格を傷つけることもはなはだしいと思うのです。およそ自分の副総裁総裁にする、いずれする、そう言つたならば、その次の選挙はその副総裁総理大臣になって、あるいは総裁になつて選挙をするのが世の政治常識です。そういうことをやらないで、吉田さんが総理大臣あるいは総裁として次の選挙までぶつということは、予約された方としてはこれは人格を無視された話でありまして、今まで一番忠実に、吉田さんに最後まで奉仕されておる緒方さんにとつて、非常に失礼な話だと私は思う。そういう点からも私はあなたに御同情申し上げて質問をしておるのでありますが、いかがでありましようか。
  28. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 そういう点について具体的に話をいたしたことはございません。かりに吉田総裁によつて選挙がありましても、私は別に人格侮辱というふうには考えておりません。
  29. 中曽根康弘

    中曽根委員 あなたはお考えにならないかもしれませんが、世の政治常識を持つている人は、あなたに非常に同情するだろうと私は思います。  そこで次にお伺いいたしますが、また署名がどんどんふえて来ておる、下野論が非常に旺盛になつて来ている。ここにおられる人も大分下野論を唱えて署名しておつたようでありますが、首相党員多数の意思には従う、こう言つておりますが、やはり署名がどんどんふえて党内の意思がそういうふうになつて来ましたら、今でも首相も副総理もその意思にお従いになるつもりでありますか。
  30. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今お述べになりました署名がどの程度に行われているか、私は直接には知つておりません。しかし昨日も申し上げましたように、その署名者の主張する意見も、民主主義的な政党の中にはいろいろな意見があるのは、これはむしろ自然でありまして、そういう意見が出ることは少しもふしぎはない、そういうことがあつて政党としてはかまわない。しかしながら政党として公党であります以上、党としての統制はどこまでも必要でありますので、そういういろいろな意見を参酌いたしまして、最後に党の首脳において判断を誤らないようにして参りたい、さよう考えております。
  31. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうしますと、党の多数の意思が、解散してはいかぬ、総辞職して下野すべきである、そういうふうになつた場合には、その意思にお従いになつて、今まで総辞職せぬと言つたことはおかわりになることもあり得るわけでありますか。
  32. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 署名者の数が非常に多数になりましても、さらに自由に討議を闘わす機会があると思います。その結果に結論を求めたいと考えます。
  33. 中曽根康弘

    中曽根委員 その結果、党の多数が下野すべきである、そう言つた場合には、やはり下野するということになりますか。
  34. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 すべてそれは仮定の問題でありますが、その場合には最後首脳部において判断を下します。それは公党として立つております以上、統制のとれた行動をとることが必要であるからであります。
  35. 中曽根康弘

    中曽根委員 きのうの御答弁では多数の意思に従うと言つておるし、また総理大臣党意に従うと言つておられますが、大体党意というものは多数の意思できまるので、多数の人が下野すべきである、そう言つたら、党の執行部首脳部は、党員多数の意思に従うべきものであると思うのでありますが、そういう御処置には出られないのでありますか。単純なことであります。
  36. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私昨日申しましたのは尊重すると申しましたのでありまして、その多数の意見を軽視する、あるいは無視する、あるいは押えるというようなことなしに、十分にその意見を聞いて、さらに首脳部としての意見も述べ、あるいは政局の将来に対する観測も交換をいたしまして、その上でみなの納得する判断結論に達することが自然であると考えます。
  37. 中曽根康弘

    中曽根委員 緒方さんに伺いますが、政局安定、政局安定と言いますが、政局安定ということは具体的にどういうことを意味するのでありますか、もう少し解明願いたいと思います。
  38. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 議会政治民主政治は、一面から申しますと数の政治でありますので、局に当つておる者がみずから多数を持つ、あるいは多数の協力を得るということが、政局の安定だと考えます。
  39. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうしますと、局に当つておられる自由党吉田さんあるいは緒方さんが、多数を持つということが政局安定という意味に解してよろしゆうございますか。
  40. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 多数を持ち、あるいは多数の共鳴を得るということであろうと考えます。
  41. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうしますと、今の政局安定というお考えは、緒方さんや吉田さんのお考えでは、やはり自由党政権が多数を持つ、そのために努力をする、そのために羽田でもああいうふうに声明をした、そういうことになりますが、さしつかえございませんですか。
  42. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 自由党内閣中心としては、そういうふうに考えます。
  43. 中曽根康弘

    中曽根委員 やはり自分中心考えが抜けておらぬので、自分中心の多数を構成する、そういうことになりますが、われわれはそういう考えに対しては了承できません。しかしまた一面最近自由党の一部の人が社会党左派に働きかけて、かりに総辞職するとすれば、社会党左派、右派が合同して、統一候補を出してくれ、そういうことがはつきりして社会党の共同の統一候補緒方さんあるいはその他の人が決選に残るということになれば総辞職する、こう言つておりますが、そういうよう社会党方面に働きかけてやることも、やはり政局安定の中に入るわけでありますか。
  44. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政局が非常に切迫しておることは御了承いただけると思いますが、そういう意味でも各党各派情政をつまびらかにしようと試みておることはありますけれども、今お述べになりましたようなことを直接試みてはおりません。
  45. 中曽根康弘

    中曽根委員 緒方さん御存じないかもしれませんが、社会党の左右両派に対して、自由党の一部から盛んに電話やら交渉があるようであります。われわれはこれを非常に不可解に思つております。しからば、各党各派の間にいろいろとお話があるようでありますが、このよう政局が詰まつて来ると、予算をどうするとか、あるいはいろいろな事態に対して、あらかじめ各党間でスケジュールをつくることが好ましいと思います。そのためにこれからの臨時国会のスケジュールについて、各党の幹事長が会合して、そういう軌道をつくつて参る、そういうことをすることは、与党を持つておられる緒方さんの方がおやりになるのが、一番適当だと思うのでありますが、そういうことをやり得る余地はございますですか。
  46. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 第二十国会は災害対策を主といたします補正予算のご審議を願う国会でありますので、政府といたしましてはもつぱら補正予算の通過に今努力を傾けておるのであります。その他国会中に起り得る問題につきましては、各派の国会対策委員長において終始相談をやつておると思います。さらにここに何か大きな政局の上の問題が起りましたときには、幹事長会談ということも当然にあり得ると考えます。
  47. 中曽根康弘

    中曽根委員 こういう事態になりますと、先例もそりありませんし、各党各派が知恵をしぼつて民主主義を擁護するという努力をすべきだと思います。それはやはり政府がリーダーシツプをとつてやるべきだと思います。そういう意味においていよいよ不信任の問題であるとか、あるいは参議院の緊急集会をどうするとか、いろいろな問題が出て参りますが、できるだけ混乱を少くして、いい先例を残すようにするために、与党の方においてそういうリーダーシツプをとるべき機会が来ると思うのでありますが、そういう場合に、そういう御意思がございますかどうか、伺いたいと思います。
  48. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政府がリーダーシツプをとることはないと思いますが、今後の事態によりまして、与党が第一党としてリーダーシツプをとる場合があるかもしれません。
  49. 中曽根康弘

    中曽根委員 前に吉田さんは政局安定及び時局の転換につきまして、大体三つのことを条件としておられたようです。一つは、新聞記者との会見で、悪い政治家に渡さぬということを言つておる。第二番目には、新党は政権争奪の徒輩が右往左往しておるのだと言つておられる。第三番目には、やみ取引で民主党には渡さぬ。この三つのことを言つておられましたが、今でもやはりそのように副総理大臣もお考えでございますか。
  50. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これはどういうときに吉田総理大臣が申したのか私は記憶しておりませんが、政権を渡す渡さぬということは、国会が首班指名の形においてきめることでありまして、あらかじめ一人の意見をもつて、予断すべきことではないと考えます。
  51. 中曽根康弘

    中曽根委員 新党を政権争奪の徒輩の集まりだということを言つておられましたが、緒方さんもやはりそういうふうにお考えでございますか。
  52. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私は、新党は同志の人が集まられたもので、政権争奪の徒輩の集まりであるとは考えておりません。
  53. 中曽根康弘

    中曽根委員 吉田総理大臣よりも緒方さんの認識が非常に良好なので、私は非常に喜ぶものであります。  私がここで特に申し上げたいと思うのは、吉田総理大臣が記者団会見その他においていつも言つていることは、自分の党から離脱しよりとする者を、常に政権争奪の徒輩とののしつておるのです。しかしここでよくお考え願いたいことは、今日の新しい憲法下における時局あ転換は、どう行われるかということです。今日の新しい憲法下では、国会の多数が政権を持つことになつておる。ところが内閣が、人心が離反しても辞職しない、あるいはことによつたら指揮権を発動しても辞職しない、あるいは閣僚を罷免しても辞職しない、そういうことになり得るのでありまして、そういう内閣辞職させよう、時局を転換せしめよう、これがいけない時局なんだからかえようという志を議員が持てば、当然その多数を少数にする以外にない。従つてそういう大きな志から時局転換を志して多数をくずそうというためには、脱党するとか、離党するとか、そういうこと以外にはないわけなのです。それは時局改造を志す者の当然やることなのです。従つて前に廣田氏が自由党を出られたとか、あるいは今度新党に自由党の方が出られたということは、新憲法下当然起り得ることであり、それ以外には方法がないのであります。忠言してもやめない、指揮権を発動してもやる、あるいは罷免権すら行使する、こういうことになれば、それ以外にないのでありますから、私はそれを政権争奪ときめつけることはいかがかと思うのであります。それはやはり自分中心考えなのです。吉田さんは自分中心で宇宙が動いておると考えておる。今日の新しい天動説だと私は思う。しかしそれは間違いなのです。現にここにおる山本勝一君は脱党するときに声明を出されましたが、どういう声明を出したかというと、吉田政治は悪い、この悪い政治を直すためには、吉田さんの多数の中に入つてつては直らない、これを少数にしなければだめだ、従つて少数にするために自分は脱党する、こういう声明を出された。私はこれがとうとい、正しい能度だと思う。今日の民主主義の憲法下では、それ以外に方法はないではありませんか。この意味で、政権争奪と言うのは間違いである。もしこれが政権争奪だと言うならば、わがかつての民主党から出て行つて自由党に行つた幣原さんは政権争奪の徒のたぐいであり、あるいはそこにおる小坂労働大臣も政権争奪の徒の一人であるということになる。どうか新しい憲法のあり方を考えて、そういう考えが間違いであるということを御認識願いたいと思います。こういう考えに対して緒方さんはどういうふうにお考えになりますか。
  54. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私は政治の転換は、民主主義のもとにおきましては、国民の審判によることが一番正しいと考えるのであります。いろいろな政治の結果が集積されて国民の批判を受けまして、国民が審判する。それに従うのが大原則であります。しかし憲法六十九条によりましても、不信任案が通過した後、総辞職の場合と解散の場合を認めております。従つてそれはそのときの政情いかんによるものでありまして、その場合々々によって違うと考えます。でありますが、今お述べになりました、政府を倒すために、言葉は忘れましたが、いわば切りくずしをやつて、少数に陥れてしまうということは、私はあまり賛成できない方法だと思います。
  55. 中曽根康弘

    中曽根委員 しかしその解散をやるためには、不信任案が通過しなければできません、政府が一方的にやるということは、多数を持つているうちはやらない、いわゆる良心のない政府は絶対やらない。そうすると不信任案を通すためには、やはり野党が多数にならなければならない。だから解散をして人心に問うためにも、やはり与党から離脱者が出るのが時局転換のきつかけになるわけです。そういう点について緒方さんは御認識がないようでありますから、どうか御研究を願いたいと思います。決してこれは政権争奪の徒ときめつけべきものでないと私は思うのであります。  緒方さんに伺いますが、そうしますと、吉田内閣は当分引続いて政局担当の御意思があるわけでありますか。
  56. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは今、国会の情勢がきわめて切迫しております。実はこの臨時国会最後にあたつて情勢がどう変化するか、私は的確な予想を持つておりません、従いまして永久に政局を担当することが事実あり得るかどうかということも私はわかりません。
  57. 中曽根康弘

    中曽根委員 永久にということを申したのではなく、当分政局担当意思があるか。当分という言葉を用いましたから、お答え願います。
  58. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 当分という言葉を具体的に何日ということに言われるか知りませんが、当分担当することはあります。
  59. 中曽根康弘

    中曽根委員 もう少しこまかく伺いますが、不信任案が通過したあとも、当分政局担当の御意思がありますか。
  60. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これはおとといでありますか、総理大臣総理大臣としての意見を述べておりますので、私はそれ以上のことは、副総理立場にあるものとして、お答えするわけに参りません。
  61. 中曽根康弘

    中曽根委員 あなたは副総理として総理大臣の代理で来ている。きよう吉田さんは病気で、約束したのすら出て来ぬというのでありますから、当然総理大臣かわりとしてその所信は述ぶべきであります。  福永官房長官がきのうの新聞記者団会見で、何か解散直後総裁をあなたにお譲りになる、そういうことが福永氏の話に出ておりますが、そうなると解散をすると、あなたが総裁になる、そういうふうに解されるのでありますが、そういうことになつておるのでありますか、いかがでありますか。
  62. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 同様の御質問は、昨日社会党川島君からもあつたのでありますが、そういうことをきめておるわけではございません。
  63. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば次にお尋ねいたしますが、憲法第六十九条によつて解散するときには、第七条の天皇の国事行為として解散するのでありますか。
  64. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 憲法第六十九条は内閣の進退を規定しておるのでありまして、解散の場合は第七条の規定により国事行為として、やります。
  65. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば伺いますが、そのときの内閣の助言と承認には、憲法第六十六条によつて閣僚全員の署名を必要とするものでありますかどうか。憲法第六十六条は「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ」と書いております。ここは非常に重要なところであります。
  66. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私は法律の専門家でありませんので、いずれ法制局長官から政府としての代表意見を申します。
  67. 中曽根康弘

    中曽根委員 それでは来るまで待ちましよう
  68. 倉石忠雄

    倉石委員長 このまま暫時休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ――――◇―――――    午後零時十六分開議
  69. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前引続いて会議を開きます。  政府委員が参りましたが、中曽根さんもう一度今の御質疑をお願いいたします。
  70. 中曽根康弘

    中曽根委員 それではもう一回質問いたします。憲法第六十九条により解散するときは、第七条の天皇の国事行為として解散する、そういうように今第七条を使うということを緒方総理はおつしやられましたが、この第七条による内閣の助言と承認には、憲法第六十六条により、つまり「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ」と書いてあります。これによつて閣僚全員の署名を必要とするかどうか、こういう質問であります。
  71. 林修三

    ○林(修)政府委員 お答えいたします。この第七条の国事行為については内閣が助言と承認をいたすわけであります。内閣の助言と承認については、もちろん閣議の決定によつて、その内閣の助言と承認の意思が決定されるものと存じますが、それを行為に現わすいわゆる解散の詔書の副署は、総理大臣内閣を代表して副署する、こういうことでいいのではないかと思います。
  72. 中曽根康弘

    中曽根委員 つまり閣議において全員の承認がなければできないはずである。従つてこの間の苫米地さんの訴訟においてもそういう意味の判決があつたと私は思つております。従つて詔書の副署は総理大臣が代表してやるけれども、その副署をやる下準備としては閣僚全員の一致が必要である、こう思いますが、いかがでありますか。
  73. 林修三

    ○林(修)政府委員 閣議の決定については、法律上の今まで議事規則はございませんけれども、慣習的にまた条理的に、閣議は全行員の一致ということで大体運用されて参つていると存じます。従いまして閣僚全部が異議がないということで行われるべきものだ、かように存じます。一々その署名があるかどうかはこれはまた別問題でございますが、全体の意思が一致しているということで行われるべきものだと思います。
  74. 中曽根康弘

    中曽根委員 緒方総理にお尋ねいたします。しからば一人でも閣僚で反対する者がいた場合には、これは総辞職しなければならぬということになりますが、そう解してさしつかえありませんか。
  75. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 閣僚に反対があつた場合に、閣僚をかえることもできますし、いろいろな場合があろうと思いますが、それは前の明治憲法時代と考え方がかわつているように思います。しかし今お述べになりました点につきましては、閣僚一致の意見をとつた上に政治的行動に出るのが当然だろうと思います。
  76. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうすると今の言葉を反対に解釈すれば、一人でも反対があれば、解散ができないから総辞職をする、これは政治条理の上から当然である、そう解してさしつかえありませんか。
  77. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 すぐ総辞職とは結びつかないと考えます。
  78. 中曽根康弘

    中曽根委員 しかし今あなたは全員一致を必要とする、こうおつしやつてつて、全員一致で解散ができないならば、総辞職という次の手しか、憲法には書いてないのでありますから、当然そうなると思います。これは法律論ではなくて政治条理の上の問題である。いかがでありますか。
  79. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは仮定の場合と申しますか、現在の場合だけでなく一般的の御議論としてはそういうことがあるかもしれませんが、現在としては閣僚の意見が一致しないということは想像し得ません。
  80. 中曽根康弘

    中曽根委員 閣僚のなかにはいろいろの意見があつて――ここに見えている連中は、みな吉田さんに頭ばかり下げているらしいが、木村保安庁長官とか大達文相とか、なかなか気骨のある人もおられる。そういう人の意見もまたいろいろあるだろうから、必ずしも副総理考えておるようには行かないと思う。そこでそういうこともあり得るのであつて、そういう場合には当然全員一致を必要とする、それができないならば解散はできないから、これは当然総辞職、こういう段階になると私は思う。いかがでございますか。
  81. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 問題の必要性の強弱によりましては、閣僚を罷免することもできます。
  82. 中曽根康弘

    中曽根委員 しかし「連帯して責任を負ふ」と書いてあるのであつて、そこで羅免権を全部発動したら連帯ということにはならぬじやないか。新しく連帯という関係をつくつて行くということになるのであれば、連帯ということは意味がなくなると思う。この点は法制局の次長に伺います。
  83. 林修三

    ○林(修)政府委員 連帯してという意味は、もちろんそのときの閣僚全体が連帯してという意味であろうと思います。従いまして、これは仮定の問題と思いますが、もしも閣内に不一致がある場合には、その不一致の閣僚を罷免することも、これは総理大臣の権限としてあるわけであります。従いまして、そういうことをした後においては一致した意見が成り立ち得るわけであります。
  84. 中曽根康弘

    中曽根委員 そういう意見は一応聞いておきます。  次に伺いますが、当分政局担当の用意ありという緒方さんのお話でございましたが、一体次の選挙吉田さんは立候補なさるのですかなさらぬのですか。池田幹事長はすでに準備せよという電報を選挙区に打つたと、同じ選挙区の代議士から報告が来ておる。吉田さんはまだしておらぬようであるが、いかがですか。
  85. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これは全然私関知いたしません。
  86. 中曽根康弘

    中曽根委員 関知いたしませんと言うけれども、吉田内閣というものがあつて、これが進退を旬日のうちにきめなければならぬというときには、総理はどうするかということが一番のキイポイントです。立候補しないというならばしないではつきりするし、やるというならばやるではつきりいたします。そういうことを表に出さないから、政局が混迷して人心が惑つておる。そういう内閣の意図をもうこの際はつきり表に出したらどうですか。これを表に出さないから、今いろいろ揣摩臆測が行われて、署名運動があつたりして無用の混乱を起している。もうここまで来たら内閣の意図を国民に示して、国民に対しても身構えをさせるし、用意もさせるということが、今日の政局担当者の当然の責任であると私は思う。従つて当然こういう政局の前途についてある程度所信を明らかにする、それが政治をおもちやにしてないということになる。今の状態では政権な持つている者は政治をおもちやにして、世の中の様子を見て楽しんでいるということすら言えるのである。この点もう少し明快にしていただきたいと思います。
  87. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ただいまのところは御審議を願つております補正予算の通過に全力を尽しておるつもりでございます、総理大臣が立候補するかしないか、あるいは選挙区に対してどういう態度をとつて行くかということは、各方面の情勢をつまびらかにいたしました後に、一時間できめ得るものと思います。
  88. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうすると、立候補するかしないかもまだ未定である、そういうふうに解します。  次に伺いますが、これは今まで本会議予算委員会等で、ずいぶん論議されたことであるけれども、緒方総理は今日の事態において、吉田内閣国会解散する資力があるとお思いになつておられますか、いかがでありますか。
  89. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 国会解散する資格がない内閣が存在することは、想像し得ないと思います。
  90. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうすると自由党の内部でいろいろ運動をしておられる方と、緒方総理意見は大分食い違うようであります。自由党の内部のあなたの与党の人たちの一部は、ともかく総理大臣総裁をおやめになるという意思を明らかにした、そういうことを明らかにした以上は、国民に対して今後の政治指導者として政権を担当するということで、解散をぶつということは道義上もできない、こういうことでずいぶん反対をなさつておるようでありまして、われわれもその議論には耳を傾けておる。あなたは依然として総理大臣と同じようなお考え方でありますが、私はその考えは間違いであると思う。すでに何回も言われた通り吉田内閣はすでに人心を離れております。総務会へあのよう手紙が来たときに、ずいぶん吉田さんの徳をほめて、りつぱな人だとか、偉大な指導者であるとか言われましたが、あれは葬式の弔辞のようなものでほめるにきまつておる。まさか吉田さんはそれを過信しているとは思われぬ。先般来の議会答弁を見ていると、各大臣の答弁はみなおざなりであつて、引続き政権を担当しようという気魄も何も見られません。現にあなたの下におる官僚はどうかというと、全部浮足立つて吉田内閣が存続すると考えて仕事をしている人は一人もない状態である。人心はどうかといえば御存じの通りである。こういう点から見れば、私は当然これはもう野党となつて下野すべきである、それが今の吉田さんの自由党態度であるだろうと思う。第一吉田さんが先に総裁やめるという意思表示をして総理大臣の問題に触れないということは、きわめてこれは政治の筋を乱した考え方であります。自分が党の総裁として適任であるかどうか党に聞く前に、政党よりも国家の方が大事なのであるから、公の総理大臣という地位をやめるかやめぬかということを国会に聞くのが先なのである。そういう意味においては、自由党総務会手紙を出す前に、国会の冒頭に信任案を出すベきである。信任案を出さないで総理大臣の地位だけは持つておる。しかし一面においては総裁やめる。こういう和戦両用の構えで来ているというととは、自分党本位考え方であつて、国家本位の考え方ではありません。そういう点からしても解散するということは、よこしまな道であると私は考えざるを得ないのであります。緒方さんは今まで吉田さんに殉ぜられて、最後まで吉田さんを守り抜こうというお考えを持つておられるようであります。これは個人としてはりつぱな態度である。われわれも美しいものとして敬意を表します。しかしそれには限度がある。壇浦まで行くことはありません。一ノ谷か屋島になつたら、悪いことは悪いと言うのが、副総理大臣の輔弼の責任であると思う。そういう点で緒方さんの決断を私はお願いしたいと思うのです。こういう間違つた解散を一回やると、戦前の林銑十郎、戦後の吉田茂、その副総理緒方竹虎であるということになる。これは永久に議員の言の端に上るのです。そういう点からしても、議会政治を擁護せられんとしてこれから日本の政界の指導者となられる緒方さんのとるべき態度ではないと思う。この点はもう一回党派を越えてお考え願いたいと思う。緒方さんの御心境をお伺いしたい。
  91. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 非常に親切な御忠言でありますので、私の心の中に入れるつもりでございます。
  92. 中曽根康弘

    中曽根委員 もつともつと吉田さんが来たらいろいろ言いたいことがあると思うのでありますが、緒方さんの今のお言葉を聞きまして、政局に対する問題は一応これでやめます。  次に外務大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、最近ジユネーヴ会議以後国際政局が徐々に変化しているように思います。かといつてわれわれは急に外交的態度をかえろと言うのではありません。私は最近の中共ブームというものをやや批判的に見ている人間であつて、やはりサンフランシスコ的な枢軸というものを乱すべきではありません。そのことはわれわれもあなたと同感であります。しかしここに考えなければならぬことは、私もソ連、中共を見て参りましたが、ソ連、中共の構えというものは、今までの人民戦線程度の浅いものでないと私は思う。平和攻勢といつて一概に片づけておりますが、あの今日の平和攻勢の実態は、かつての人民戦線よりもつと深い、そうして幅の厚い長期的なものだと私は直感いたしました。彼らはここ一年や二年で勝負をつけようとか、三年や五年で片づけようとは思つておらぬ。やはりマルキシズムというものを信じて、あるいは、五十年の歴史をかけて闘おうという不抜の寝わざ作戦に私は出ていると思う。それは李徳全が来たり、漁船を返したり、あるいは戦犯引揚げをやるとか、ああいう演出を見ても、これは明らかに看取される。そういうような根の深い、幅のあるやり方に対して、今までのような安易な考えを持つてつて外交が処置できるかどうか、日本側としてももつと幅のある、そしてどちらかといえば厚みのある柔軟な外交政策に出べき機会が来たと思うのでありますが、この点はいかが思いますか。
  93. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今のお話の共産陣営のやり方については、非常に大きな変化があることは私ども認めております。これについては幅があるとか厚みがあるということは、ちよつと私ども正確には把握できないのですが、要するにいろいろな点で変化ある、また共産陣営のやつていること自体は、いろいろの点でわれわれも十分注意して見なければならないことはたくさんあります。ただ一番問題としてわれわれが賛成できないのは、目的はそれは民主主義がいいか、共産主義がいいかは別としまして、その目的に到達する手段として民主的な方法によるか、目的さえよければ手段は選ばぬかという点に非常な問題があつて、私どもはその手段を選ばぬという方法については、共産陣営の考え方はまだかわつていないと思ます。従つて、警戒を要すると、いつも言うのはそこのところであつて、マルキシズムがいいのか悪いのかということは別問題として、そこに到達する手段について、私どもとは相いれないものがある、こう考えております。そこで今のお話になるのですが、これは幅があるというよう言葉でいいのかもしれませんが、われわれの表現をもつてすれば、これは一国心々の問題ではなくして、国際的に考えなければならぬ点が、前よりも非常に強くなつて来ておる。従いましてこの点では総理が外遊されたのはその目的のためではなかつたが、間接には非常に裨益するところが多かつたと思いますことは、各国の意見も全部ではありませんが、おもなる国の意見はほぼ知ることができた。また私も多方面に行つて参りましたが、そのときもやはりこういう問題についての意見を知ることができた。そこでこれは原爆、水爆の問題にも関連して来ますけれども、いろいろな点をもつと国際的な観点から処理する必要がある、それが結局あなたの言われるような幅の広い方向ということになるか、どうかわかりません。わかりませんが、私はそう考えておりまして、その意味では今までもある程度各国との意見の交換とかその他の方法で話合いはいたしておりましたけれども、これをもつと強く推進して十分なる理解と相互の協力によつて、こういう問題に対処すべきであるという点については、私どもは最近において特にその感を強くした、こう考えております。
  94. 中曽根康弘

    中曽根委員 そこでお尋ねいたしたいと思うのでありますが、ジユネーヴ会議以後、国際政局の気圧配置が徐々にかわりつつある、移動しつつある、そのようにわれわれは直感しておるのです。そういうような、どちらかといえば凍結した冬型の気圧配置から、春型の気圧配置に徐々にかわりつつある。その意図が何であるにせよ、ともかくかわりつつあることは事実であります。そういうような変化に対して、アメリカがやつているアジア政策というものは、ややもすれば昔のままで、気圧配置に対応する順応性が少い、どつちかといえば、ソ連が寝わざで来ているのに対して、依然として立わざで来ている。寝わざと立わざの勝負をやれば、寝わざに歩が出て来るのは当然であります。そういう意味において、たとえばSEATOというものをマニラでやつた、あのSEATOに参加しておるのはヨーロツパの国がたしか五箇国で、アジアの国は三箇国しかいない、アジアの国がなぜそこに引きつけられぬ理由があるのであるか、反省される必要がある。私はそういう意味で経済的な面で日本がカバーして行こうということをアメリカに要請していることは、非常にいい態度であろうと思う。古田さんが東南アジア経済協力機構と言つたことも非常にいいことである、われわれその線はぜひ推進しなくてはならぬと思うのでありますが、しかし依然として全般的な政策として、アメリカの政策というものがアジアでそういうことをやつていることは、実は危険なことになつている。われわれは一緒に便乗してやつていると、結果になるとえらいことになることがあるかもしれません。そういう意味でアメリカの外交にいたずらに追随するというやり方でなくて、アメリカのアジア政策というものを、日本の外務省がある程度リーダーシップをとつて積極的にやらせる、そういう主体性が今日確立されなければならぬ。われわれは太平洋の向う側におるのじやなくて、こちら側におるアジアの民族でありますから、非常に緊切な問題になつておる。そういうような対米関係の是正ということをおやりになる必要はありませんですか。
  95. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 対米関係の是正というのは、これは意見の相違になるかもしれませんが、前提としてアメリカの方針に常に追随しているということになります。しかし私は必ずしもそうは考えておりません。そこで今の御議論ですが、共産側のやり方の意図はどうあろうとも、方法はかわつて来ておる、これは事実です。ただこのやり方の程度は別として、終戦以来そういうふうに見えたことは三回ほどあります。たとえば終戦直後の米ソの非常な接近、それから今度はギリシャ、トルコに対する問題からいわゆるトルーマン・ドクトリンが来て今度戦争気構えという方向に来て、それからまた一旦非常に平和的なことになつて、それがベルリンから朝鮮事変になつて、大いにまた軍拡になつて来て、また今度こういう状況になつて来ておる。そこでそのたびに影響をこうむるのはいわゆる軍需産業であります。これは一九三五年ごろのスターリンの書いたものの中に、こうやつて平和攻勢をやり、戦争の脅威をやつて、だんだん資本主義社会の経済機構を混乱させるのだ、これで経済が自然に崩壊するところに行つたときに、クー・ド・グラースといいますか最後に打撃を与えてこれを倒すのだという公式論があります。しかし実際ではそういうふうに始終動いて来ておつて、これに対して事情の変化に対応してこちらも態度を改めることは、これはなるほど必要ですけれども、向うの変化に応じて始終こうやつていた日には、今度向うの術策に陥つて、自由陣営の経済が混乱したり、機構が乱れたりすることもあり得るのであつて、これは先方の出方を過去の長い年月ずつとながめて、一体ほんとうにこの方法で行くのか、また一年か二年たつて戦争の脅威というものが起る可能性はないか、こういう点も考えて、こちらの態勢はただ向うに順応する順応するということで行くのでなくて、こちらとしての方法考えるべきである、こう思っております。しかしたとえばSEATOにおきましても、侵略という問題の定義については、 アメリカ自体が、自分は東亜の国じやないのだから、東亜の中の自由主義国家の争いというものは、これはアメリカにとつては侵略行為にはならない、共産主義の脅威が出て来たときのみが侵略行為だといつて自分が東亜の一員でないということをはつきりして、従つて東亜の諸国とはおのずから地位を異にするということをダレス長官が明らかにしている。そういう意味でやはり東亜の問題は東亜自体でいろいろ構想を練り、相談をいたすべきが当然であろうと考えております。
  96. 中曽根康弘

    中曽根委員 そういう東亜の問題は東亜で構想を練ると言われますが、日本の外務省にはまだ全然見かけられぬ。ただ東南アジア経済協力機構ということが伝えられただけでありまして、そこが今日の岡崎外交の非常な欠陥であると私は言わざるを得ない。中共の建設の速度というものはやはりかなり出て来ておる、また大したことはないけれどもかなり出て来ておるこはと事実です。そうすると中共に電気がつくあるいは肥料ができる。だんだん時間がたつにつれてなつて行くその速度の度合いを、まわりのビルマとか仏印とか南鮮とか、そういうところの度合いが非常に違つて来て、まわりのものが中共に電気がついた。あるいは肥料も自給できた。そういうふうにどんどん伸びて行くのを見ると、自然にこれは浸潤して来るのは当然のことなのです。彼らはそういう意味の平和的な寝わざに出て来ておる。特にアジアにおいてはそういう浸潤作戦に出て来ておる。こういう行き方に対しては、国内の非民主主義対策協議会とか、あるいは保守合同とか、そんなもので対抗すべきでない。もつと大きな国の身構えというものが私は必要になつて来たと思うのであります。現にコロンボ諸国に対する中共の影響を見てみますと、かなりの影響がある。これは従つて一中共の問題ではなくなつて来ておる。あなたがおつしやつた通り国際的な問題になりつつあると思う。現に日本においても右社とか左社とか政党がありますが、これはやはり東南アジアというものに目を見張つておるから、ああいう政策が出て来るのであつて従つて東南アジアがああいう影響、ああいう動きでなければ、日本の右社も左社も政策がかわつて来るはずだ。日本にすでにそういう事態がここに出て来ておる。そういう全般的な根と大局をにらみながら日本の外交政策というものは自分の主体性を持つて、アメリカとの基本線を急にかえる必要はない。そう外交政策などはかえてはならぬものだと思います。しかしそういう順応性は持つて行かなくてはならぬ。そういう意味において非民主主義対策協議会とか保守合同とかいうばかの一つ覚えのようなことを言つておるのは、非常に縁遠い。また時局に必要な対策じやない。そういうよう政局全般として見た深い考慮からする題の構えというものを、ある程度打出して行く必要があるかないかを伺いたいと思ます。
  97. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは国の構えというと、非常にむずかしいことになりますが、しかしわれわれが今東南アジアとの経済協力という点を主眼に置いておるのは、これは過去の歴史を考えるとやむを得ないことだと考えておるからであつて、たとえば今経済協力という言葉すら昔の侵略行為の一部として、経済侵略であるというような非難もずいぶんされるような時代でありますからして、政治的の行動はもう少しこの誤解を避けた後であるか、あるいは他国からの働きかけによつてこれに呼応すべきであつて、われわれがことさらに乗り出すことはどうかと思つて、特に神経過敏になつて注意しておるようなわけであります。しかし私も東南アジア諸国を一応見てまわりましたが、中共と国交を回復し、友好的な関係にある国にありましても、その国内における共産主義者の策動に対して強くこれを取締つておる国、すなわち非合法として禁圧しておる国等もあるのでありまして、国としての交際と、自分の国内で自分判断によつて国内政治を行うことは、これはおのずから異なるのでありまして、必要があればそういう手段もとることは、これは国として当然なことだと考えております。
  98. 中曽根康弘

    中曽根委員 その点が非常に重要な点で、そのことを実は御質問したいと思つておるのです。国内政策としての共産主義対策と、外交政策としての善隣関係というものは別ものに考えなければならぬ。現にインドのネールなんかは、共産主義者をずいぶん逮捕し、監禁して、牢屋に入れておる。しかし中共に対しては非常に弾力性のある外交政策をとつておる。そういう考慮が今の内閣にあまりないのじやないか。国内政策そのものを外交政策そのものであると考えておる。あるいは国内政策そのものを外交政策としてやることが、アメリカに受けがいいからそれをそのまま履行しておる。そういうようなあり方であつて、日本政府自分考えをちやんと持つて、国内政策は共産党に対してはこうやる、しかし外交政策は善隣友好でこうやる、そういうけじめが全然見受けられぬように思うのであります。これが今日の岡崎外交の非常な欠陥だと思うのであります。あなたはある程度御意識しておられると思うが、政策に出て来ていない。どういう政策をおやりになるか伺いたい。
  99. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お話でありますが、これは率直に申しますと、ソ連と中共では今の現状から言いますと、政府立場はおのずから異ならざるを得ないのでありまして、ソ連に対しては何らのひつかかりもありませんからして、問題はサンフランシスコ平和条約の体系で話がでるかどうかという問題であります。しかし中共の問題になりますと、中華民国国民政府を承認しておるという現政府立場から行きまして、これは非常に複雑な問題になります。しかし原則として私どもは国内と対外政策とは、当然区別さるべき部分があるという建前のもとに、種々考慮をいたしております。
  100. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば伺いますが、吉田総理大臣は一昨年のクリスマスの日にダレスに対して、中共とは二箇国間の条約を結びません、そういう手紙を出して約束をしておる。これは事実であるかどうか、伺いたい。
  101. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その手紙についてちよつとあとで調べてみないと、記憶が間違うといけませんからそれは留保しますが、中華民国国民政府つまり台湾の国民政府を承認してこれと条約を結んだということは、中共政府を承認しないという建前のもとにやつておるのであります。
  102. 中曽根康弘

    中曽根委員 これは正式の承認という大げさな問題でなくて、いろいろな個々の協定、あるいはもつとそれより以上のものになるかもしれぬが、たよえば政府間の通商協定、あるいは貿易代表の常駐を認めるとか、ともかく事実上の関係を累積して行くための国と国との約束、そういう協定というものを結ばない、そういうふうにわれわれは伝えられておるのでありますが、そういう事実はないのでありますか。
  103. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 少くとも私の記憶しておる限りは、そういう事実はありません。
  104. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうすると正式に承認はしない、そういう約束はした。しかしそれじや貿易協定を結ぶとか決済協定を結ぶとか、そういうことは今後も可能である、こう考えてさしつかえありませんか。
  105. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは過去の国際慣例を見ますと、そういうことはしばしばあるのであつて、ソ連に対しても承認前に通商協定等を結んだ例は幾多もあります。従つて法理上は一向さしつかえない、また際国慣習上もさしつかえない。あとはその当面政局に当つておる、政府が、そういうことをやるつもりであるかないかという政府判断だけによります。
  106. 中曽根康弘

    中曽根委員 吉田総理大臣が大西洋上でイギリスと会見したあとで、今後の外交は米英の中間で行く、こう発表なすつたが、あなたはお帰りになつて吉田さんと会つて、その対ソ連圏あるいは共産圏との外交について、米英の中間を行くというよう考えで政策をお立てになつたことがありますか。また今後どういうお考えを持つておられますか、伺いたい。
  107. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは少し表現が単純で、私の確かめたところではそういう意味ではないのでありまして、むしろアメリカの政策とイギリスの政策がは中共に対して異なつておる。これをできるだけ早く調整して同様の歩調に向うようにしたい、こういう意味と了解しております。
  108. 中曽根康弘

    中曽根委員 同様の歩調というのは、イギリス側に近づけるという意味ですか、アメリカ側に近づけるという意味ですか、どちらでございますか。
  109. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはよその国のことですから、どつちをどうするということを、いくら総理大臣ども言えないと思います。要するにどちらによけい近づくかは別として、これを調整して同じ歩調に向わせたいという希望を述べておるものと考えております。
  110. 中曽根康弘

    中曽根委員 もう少しいろいろ質問したいと思いますが、時間がありませんから申しません。ただ一つ最後に申し上げたいのは、私はソ連、中共から日本に対して、これこれの条件をやれば戦争終結宣言をやつていい、あるいはその程度のことまで出て来ると思う。あるいはもつと出て来るかもしれぬ。そういうよう事態は、戦争終結宣言を申し出るということは、非常に好ましいと思うのだが、問題は条件によりけりだと思う。しかし戦争終結宣言を急ぐということは、非常に重要だと思う。そういう点でこれは隣国同士の問題として、そういうことを前進させるような外交施策は打出してはならぬのでありますか。あるいはあなたの御政策はどうでありますか。
  111. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれもそういう点につては、十分の注意を払つて研究しております。
  112. 中曽根康弘

    中曽根委員 注意を払つて研究しておるという意味でなくて、あなたの意思をお話願いたい。そういう意思があるのかないのかといの問題です。それからまた先方はそういうことに応ずるかどうかという問題です。見通しと意思です。
  113. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれはまづその相手の情報を十分注意してからでないと、こちらからだけ先に飛び出してこういう意思があるとか、ああいう意思があるとかいうことは、国として得策できないと考えておりますから。十分注意して実情を確かめたいと考えております。
  114. 中曽根康弘

    中曽根委員 そこが岡崎さんの外交の一つのテイミードな点であつて、われわれと意見が違うところです。私はこういう状況になつたら、日本は二枚の招待状を同時に出したらどうかと思う。米英自由世界に対しては、集団保障の招待状を出し、それから中共、ソ連に対しては、善隣友好の招待状を出したらどうか。招待状の性質は違うけれども、それを出したらどうか、そうして伺うが、ある意図を持つているにせよ、盛んに接近して来ている。戦犯の問題でも、引揚げの問題でも、歯舞でも、漁業問題でも、相当えさを投げて来ている。しかし不用意にこれに行くと、射程距離に入ると、ばさつとやられるでしよう。しかし用意を持つて行けば、ある程度妥結ができる。そこに平和の基礎が築かれ、戦争防止の基礎が築かれると思う。そういう意味において、自由世界との紐帯を結ぶことが第一義であり。また自由世界の力をバランスとして利用するこということも第二に重要なことである。しかし今のようにそれだけではいかぬ。それだけでなくして、それをある程度持ちながらも、片一方に招待状を出して行く、それはややもすれば米英から離れるような印象を米英に与えるかもしれないけれども、しかし日本のアジアにおける立場から考えれば、ある程度のところまで当然出べきである。そうして片一方にばかり張りついているなら、外務大臣はいりはせぬ。尋常一年生でもできるのです。間に入つてむずかしいことを自分で積極的にやつて行くというのが、外務大臣の任務である。それがあなたに全然ない。ドイツのアデナウアーなんか、ある程度つておる。彼はマンデス・フランスやチャーチル、ダレス、モロトフの間に入つてかけまわつている。ドイツの環境は日本より悪いけれども、彼はかけまわりながらドイツの値を自分で上げて行く努力をしておる。マンデス・フランスなんか追いつくのにはあはあしている。日本の外務大臣や総理大臣は、自分の値を自分で上げる努力をしておらぬ。米英にぴつたりくついているのも一つ方法であつて、それもある時期においてはよかつたもしれぬ、しかし今度吉田さんがアメリカに行つて、どういうみじめな待遇を受けたか。これで限界がわかつておる。従つ日本が独立の外交の自主的な意思を持つて来れば、米英の誤解を受けない関係においてそういうことがある程度できて来ると思う。そこにあなたの外交の重大な欠陥があると思うのですが、意識しておりませんか。どうでありますか。
  115. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一にお断りしておかなければなりませんことは、吉田総理はアメリカでみじめな待遇をちつとも受けていない。   〔発言する者あり〕
  116. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  117. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 非常にいい待遇を受けておると確信をいたしております。   〔発言する者あり〕
  118. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  119. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そこで今の話ですが、いろいろ小手先の方法はたくさんありましようけれども、根本方針にまず外交というものははつきりした太い筋で行かなけばならなぬのであなて、いわゆる遠交近攻とか、そういういろいろ昔から言葉がありますが、そういう点はその交渉の先の方ではともかくとして、大筋においてはとらないのであります。しかし私といえども、あなたのおつしやるような点は研究してはおります。大体存じておるつもりであります。しかしながら筋は大きい筋を向い見て今の方法で行きたいと考えおりますが、これは中曽根外務大臣になられたときはやられたらいい思います。
  120. 中曽根康弘

    中曽根委員 私の申し上げたことは岡崎さんには無理だと思うのでありまして、後藤新平とか、小村寿太郎ならやるかもしれませんが、これ以上申し上げません。  最後に通産大臣に伺いますが、原子力の問題を答え願いたいと思います、私の質問は原子力で終ります。  今年二億三千五百万円の原子力予算を国会で通過いたしましたが、あの原子力予算を今どういうふうに運用しているか、機構が今どういうふうになつている、またその機構を運用することについて学者の方からいろいろ話がありましたが、どういう基本原則を立てて今やつているか、予算の消化の状況、今年使い切るかどうか、あるいは不足しているか、そういう問題を答え願いたいと思います。
  121. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 昭和二十九年度予算の原子力の平和的利用研究補助金は、御承知の通り総額二億二千三百二十五万円、この予算の使途につきましては、申すまでもございませんが、原子力問題は非常に新しい問題でございます。特にわが国といたしましては従来十分の研究もなかつた問題でございますから、特にこの使途につきましても慎重を期したわけであります。まず内閣に原子力の調査準備会というものを便宜設けましたが、これと相照応いたしまして、通産省に原子力関係の予算打合会といつたものをつくりまして、関係各省はもちろんでありますが、学界その他の有力な専門家の方々に参加してもらいまして、いろいろと討議をいたしたわけでございますで、大体を申します、原子炉の構造関係に約四千八百万円、炉材、すなわち重水及び石墨関係に約一億三千六百万円、ウラン鉱の選鉱、製錬関係に約二千三百万円、調査関係に約一千六百万円、このうち海外調査の関係が約一千四百万円大体こういう方向をきめたわけでございます。それから二十九年度中には、ただいま申しましたようにできるだけ急いで研究はいたしたのでありますが、海外の調査の関係その他の結果を待ちたいものがありますので、予算のうちある程度のものは三十年度に繰越さざるを得ないという状況に相なつております。
  122. 中曽根康弘

    中曽根委員 伝え聞くところによると、大蔵省方面で、海外調査団が行くからすぐ出さぬでもよい、来年度に繰越せばよいじやないかという話があるそうでありますが、大体研究しなければならぬ方向と対象は、海外へ行こうが行くまいが、わかつていると思う。それはスタートが早ければ早いだけ研究は進むと思う。それを大蔵省かある程度諦めていて、なかなか慎重にやつてつて、特に今年は予算をなるたけ節約して、解除しない、そういう基本方針を立てているために、当然常識的にもやらなければならぬものを締めているという話である。そういう事実があると思いますが、大蔵大臣はこれに対していかになさいますか。  それから来年度の原子力の予算についてどの程度あなた方は見込んでおられるか、ここでお答え願いたい。
  123. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 ただいま通産大臣からお答えがございましたような計画を私どもも承知いたしているわけでございしまして、その執行の時期につきまして、日本の今の研究段階でただちに着手できてるものにつきましては、予算をただちに使用することにつきまして、私どもの方といたしましても異存がないわけでございまして、その点につきましては、通産省と打合せの上すでに手続をとつているわけであります。ただせつかく海外に研究に行かれるわけでありますので、その海外における研究の結果のいかんによつては、研究の方向に異動が生ずる可能性のあるようなものにつきましては、できるだけ慎重な態度をとつて臨みたいというよう考え方から、二億三千四百万円を本年度内に全部使い切つてしまうことはちよつとむずかしいのではないか。そこで今回の補正に際しまして繰越し明許をいただくことにいたしまして、今回の補正予算でそれをお願いをいたしている、さよう考え方をいたしているわけでありまして、ただがむしやらにこれを押えるというような観点ではございませんので、その点は御了承いただきたいと思います。  来年の予算につきましては、目下まだ編成の途中でございまして、まだここで金額を申し上げる段階に至つておりません。
  124. 中曽根康弘

    中曽根委員 今年より縮小するのか、あるいは拡充発展するのか、方針を伺いたい。方針はできていると思う。
  125. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 予算の編成については、ただいま主計局長から来年度の予算についてはまだ編成中とお答えした通りなのですが、本件について担当いたしております私の立場から申しますと、本年度に計上せられましたものよりは、相当多額に要求いたしたいと思つております。ただそのうち、今お話いたしました二十九年度から繰越される分がございますから、それと合せて、来年度におきましては相当本格的な段階に乗り出したいと思つております。
  126. 中曽根康弘

    中曽根委員 副総理に伺いますが、これはあなたの所管のことなのですが、実は日本学術会議の茅博士がアメリカに行きまして、原子力委員長のストローズに会つて、そのときに原子力関係のアメリカが持つている資料を渡そう、そういう話があつて、日本の外務省から在来大使館を通して文書を出した。たまたま愛知さんが向うへ行つてつて、原子力委員会に呼ばれて、渡そういうことになつて、約一トンばかりの資料が来たはずです。ところがこの貴重な資料を、伝え聞くところによると、通産省の工業技術院の方に納めよう、そういう話があるらしいのです。私はこれは筋が違つていると思うのです。なぜかというと、そういう原子力関係の資料というものは、なるたけ公開しなければならない。これは前から学者が言つていることです。それからもう一つ国会図書館が、われわれも非常に努力して、過去三千万円出して原子力の資料を入手しているのです。そしてそこへ原子力関係一つの部屋をつくつて、これが一般の工業にも、あるいは医学にも、あるいは通産省その他の官庁にも見せられるように整備しておる。そこでロックフェラーあたりも優秀な、千五百万円くらいの機械をよこして、それを複写し得るような設備にまで国会図書館がしておる。そういうふうに国会図書館が中心になつてこれを整備して、人員もそろつておるのに、これが工業技術院の官庁の箱に入つてしまうと、外の人が利用できない。これは趣旨からいえば国会図書館がやつて、ちようどイギリスのブリティッシュ、ミュージアムのサイエンス、ライブラリーというのが専門にやつておるが、そういう方向に育成して行くべきだとわれわれは考えている。そこでこの約一トンばかりの原子力の資料を、あなたの権限において工業技術院あたりにしまい込まないように、一般に公開できるように、国会図書館の方へこれを返すべきだと思うのでありますが、いかがでございますか。これは緒方総理質問したい。
  127. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私がその経過を一番よく知つておりますから私から申し上げて、それで足りなければ副総理から御答弁申し上げることにいたしたいと思います。  まずこの際御報告をいたしますが、去る十一月の十二日にアメリカの原子力委員会から、ただいまお話がありましたような厖大な資料の寄贈を受けることにいたしました。その内容は米国原子力委員会の発行にかかります基礎及び応用研究の報告書が約一万部でございます。それから第二はアメリカとしての原子力政策についての資料が約二十八巻でございます。それから第三に、米国で収集いたしました米国及び外国の技術関係の文献、約五万件ありますが、その五万件の抄録が五巻の書類に整理されております。大体以上三つの大わけにいたしました資料の寄贈を受けることになつたわけであります。しかしこれはたまたま私が米国出張中でありましたから、私が受取ることにいたしました。その際これは米国の原子力委員会の方にもはつきりいたしておいたのでありますが、これは私が通産大臣の責任において受取るものではなので、たまたま出張中でございますから、日本側にかわりまして寄贈を受けて来たわけであります。それから現にこれらの目録その他について相当手続がかかりますので、原子力委員会の方でも鋭意この作成に当つてくれておりますが、まだ詳細な、全部についての目録等もこちらに届いておりませんので、今後非常に厖大なものでございますから、運送その他にも多少の時日がかかるかと思います。その間日本側といたしましては、この寄贈を受けましたものの中には、ただいま指摘のありました、すでに国会図書館において購入せられたものと重複しておるものもあるのであります。それから今お話のような経過もございますので、政府側といたしましては、御承知のスタツクが中心になつて、どこでこれを処理した方が一番よかろうかという方法論について研究をいたしておるわけでございます。それからなお、申すまでもございませんが、これらの資料は全部公開いたしまして、なるべく広く日本としての平和的利用に貢献をするように使いたい、こういうふうに考えておりますから、私といたしましても、通産大臣という立場にとらわれずに、広く将来のためを思って政府として最善の措置をとりたいと考えております。
  128. 中曽根康弘

    中曽根委員 国会としてはやはり国会図書館を充実するという立場があり、かつ一般に公開して、学者やあるいは工業家にも広く見せるというよう国会が当るべきものだと思う。そうしてサイエンス・ライブラリーのようなものをだんだん育成して行くべきであるという希望を持つております。その点政府の方でよくお考え願いたいと思います。  最後に愛知さんに伺いたいと思いますが、今年の予算を組み、来年の予算を組むというのには、原子炉の建設に関する年次計画というものがある程度なくてはならない。大体三年でできるとか、五年でできるとか、炉の設計はどうするとか、あるいは自動遠隔装置、自動制御装置あるいは遠隔操縦装置、こういうものはどうするとか、あるいはグラツアイトの研究は年次的にどうやつて行くか、年次計画で大体どのくらいかかり、そこで今年は幾ら、そういうものがなくてはならぬと思うのでありますが、どの程度の原子炉をつくつて、どういうふうな計画で年次的に進めて行くか、計画の概要を御説明願いたい。
  129. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま的確に詳細にまだ自信を持つて御説明できるだけのものは用意いたしておりません。これは私見でございますが、私見といたしましては、急ぐことも非常に急ぎますが、あまり無理を生じたり、あるいはむだになることも避けなければならないと思いますので、現在のところ大体五年間ぐらいの間には、少くとも実験用の小型原子炉だけはとにかくつくるということで、進みたいと思いますが、これはまだ私見であります。
  130. 中曽根康弘

    中曽根委員 その炉をつくるのにどのくらいの予算が必要であると計算していますか。
  131. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま申しましたように、詳細の点につきましては私としても自信を持ってまだお答えするまでに至つておりません。
  132. 中曽根康弘

    中曽根委員 それでは、これでやめます。
  133. 倉石忠雄

    倉石委員長 午後一時五十分まで休憩いたします。    午後一時七分休憩      ――――◇―――――    午後二時二十八分開議
  134. 西村直己

    西村(直)委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  昭和二十九年度一般会計予算補正(第1号)、昭和二十九年度特別会計予算補正(特第2号)、昭和二十九年度政府関係機関予算補正(機第1号)の三案を一括議題といたします。  質疑を継続いたします。佐藤觀次郎
  135. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 本日は吉田首相出席されるはずになつておりまして、昨日も理事会ではつきり明言されたわけでございますが、急に決算委員会が一諸になりまして、例の病気が出まして、御出席になりませんので、せつかく、最後機会でございましたし、特に六年間も政権をとつておられた吉田首相に対して、われわれもいろいろな考えを持つておりましたが、変更になりましたので、やむなく緒方総理にお尋ねするわけでございます。政局が微妙になつて参りまして、われわれも、社会党立場といたしまして、いろいろお尋ねもしなければならぬことがありますので、ぜひ、虚心坦懐に、私たちの納得の行くまで御答弁を願いたいと思います。  実は、御承知のように、吉田さんが引退よう書簡を出されまして、そうして、自分の一身は党の幹部の諸君に一任をするという書面が出まして、これは緒方さん御承知だと思うのでございますが、一体この政界引退の御意見は外遊前にあつたのかどうかということをまずお尋ねしたいと思うのでございます。
  136. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えします。外遊前にも、総理心境としては多少あつたのではないかと考えます。と申しますのは、外遊後におきまして、特に総理に関連いたしまして、総理の環境に変化はなかつたのでありますので、これは想像でありますけれども、外遊前からそういう考えは多少あつたのではないかという気がいたします。
  137. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そこで緒方さんを中心としていろいろ御相談があつたそうでございますが、自由党の幹部諸君吉田書簡をどういうように御解釈になつて結論をだされたのでございますか、お尋ねしたいと思います。
  138. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これは吉田総理個人心境で、今申し上げたよう心境から民主主義的に考えて、自分が進退する場合にはどうすればよいかということを、党の首脳部に話しかけらえたのだと思うのであります。またそういう考えであのいわゆる吉田書簡なるものの処理に当つたのであります。
  139. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 その後自由党の幹部の方からいろいろ結論が出まして、私もラジオで聞いたのでございますが、緒方さんが総裁として将来就任なさるという、そういうことがございまして、実は議員総会でも緒方さんのごあいさつがあつたと思うのでありますが、いつ後任の総裁になられるのか、その点のお考え緒方さんの判断でけつこうでございますから、お知らせを願いたいと思います。
  140. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これは別にいつということはきまつておりませんが、ただ党の方から総裁に回答いたした中に、適当な時期ということがありますので、適当な時期ということは、あまり久しい将来のことを意味してはいないと思います。
  141. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 その後の情勢を考えてみますと、どうも吉田さんはやめないのじやないか、緒方さんには失礼でございますけれども、ただ緒方さんに総裁にするということを言つただけで、もしそのまま総選挙に臨んだ場合に、第一党になつたならばまた政権をとつて行かれるのではないかというような感じがするのでありますけれども、そういうことについてはどういうお考えを持つておられますか、緒方さんの御意見を承りたいと思います。
  142. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 あの吉田書簡の出た後に何回か総理と会つておりますが、あの吉田書簡を出された後に心境がかわつたという想像は少しも出て参りません。
  143. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いずれ私たちは不信任案を出すことになつておりまして、きようのところでは七日の午後出すことになつておりますが、こういうような場合に吉田さんのもとで解散があるのかどうかということについての御判断を、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  144. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 不信任案か出ました場合に解散するかどうかということとは、そのときの情勢によるということを総理から申しておりますので、それに私がつけ加えて申し上げることはないのでありますが、もしかりに解散なするということになれば、総理大臣解散をするということになります。
  145. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それでは吉田首相のもとで、解散になるというふうに解釈をしてもよろしゆうございますか。
  146. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 仮定のこととしては、そういうふうにお考えくだすつてさしつかえございません。
  147. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ政局が混迷をいたして参りまして、この三日間から同僚議員からたびたび混迷の責任が吉田首相にあるということを言われており、われわれもそう存じますが、しかし私たちがお尋ねしたいのは、今までずつと吉田さんは引退をするというような解釈でわれわれは考えておりましたが、この二、三日予算委員会でわれわれが吉田さんと対しておりますと、引退どころか、もつとどこまでもやつて行こうというような非常に強い熱意が感ぜられるわけでございます。こういうような場合に、緒方さんはただ総裁として名前だけもらつて、そのまま行き詰まりになるのではないかというような懸念もいたすわけでございますが、そういうところはどういうようになつておりますか、お尋ねしたいと思います。
  148. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 御質問意味がよくわかりませんが、私がかりに総裁になつて総裁だけでいつまでも行くということは想像ができませんが――どういう御趣旨だつたのでしようか、私がとり違えておるかもしれません。
  149. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点緒方総理にお尋ねいたします。実はきよう同僚議員中曽根君から、自由党からわれわれの党の社会党へいろいろ運動があるというような誤解のあるようなことでありましたが、きよう私が調べたところによりますと、私たちの方では自由党とは全然そういう関係は持つてないという幹部の話がありました。その点われわれの党の名誉のために、ここでひとつはつきりと確認していただきたいと思います。
  150. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私の承知しておる限りにおきましては、何もございません。
  151. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 われわれは解散を予定しておるわけでございますが、もし解散がされない場合に、吉田内閣辞職をして緒方内閣が万が一できた場合においては、緒方さんはどういうような――すぐ解散をやられますか、そういう点について、これは仮定のことでございますけれども、ひとつこの際御意見を承りたいと思います。
  152. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それはあまりに仮定の度が強うございますので、私から御返答ができません。
  153. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 あまりデリケートなことになりますから、これ以上追究いたしませんけれども、私がただ一点緒方さんに申し上げたいのは、今日の吉田内閣への不信というものは、前々からあつたのでございますけれども、何と申しましても指揮権の発動というのが一番大きな原因をなしておると思うのでございます。そういう点について緒方さんも共同の責任者でございますが、なぜあのときに政府は指揮権を発動しないで総辞職をしなかつたか。こかはむしろ私は吉田首相に聞きたいのでございますが、将来の日本の政局の正しい意味においての解釈といたしまして、この点について緒方さんの御意見を私は承りたいと思います。
  154. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 指揮権の発動は、当時の犬養法務大臣がその信念と判断によつてつたのでありまして、その犬養法務大臣の信念と判断のよつて、基くところは、当時われわれの重要法案としてありましたものを、ぜひとも国会通過をはかりたい、そういう考えからしばらく逮捕延期をする意味において指揮権発動した、かよう想像いたしております。
  155. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 しかるにあの当時その衝に当られた犬養法務大臣は、着任をとつてやめられておるわけでございます。ところがあとの閣僚はやめられないで、そのままほおかむりをされたのでございますが、この点についての解釈はどうしたらよろしゆうございますか、ひとつ御判断を願いたいと思います。
  156. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは犬養法務大臣が法務大臣としての信念と判断によつて指揮権発動をしたのでありまして、その意味において犬養法務大臣のみが辞職をいたしたのでありますが、何ゆえに辞職したかについては、当時の法務大臣の口から私詳しいことを承つておりません。希望して辞職をいたしたものと思います。
  157. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは緒方総理を責めるのは酷だと思うのでございますけれども、しかしいやしくも吉田首相自分で任命した法務大臣であり、しかもそれが社会的にあれほど大きな影響を与えたために、良心のある法務大臣は辞職したと思うのでございますが、そういう点について、昨日吉田首相はここで指揮権の発動のことについてのいいか悪いかは、総選挙できまるのだ。これを国民がいいというか悪いというかということは、今度の選挙できまるということを吉田総理はここではつきり言われたのでありますが、緒方総理はその点については首相と同じ意見であるかどうか、ひとつ御答弁願いたいと思います。
  158. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 あの指揮権発動につきまして、それから起つて参りますいかなる批判も政府としては避けませんし、またいかなる批判も甘んじて受けます。その意味においてその批判の結果が総選挙に現われて来ることは、当然であろうと考えております。
  159. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私たちが指揮権の発動について非常に大きな不満を持つておりますのは、おそらく日本の全国民は、時の権力を打つた者やあるいは高位、高官の者だけは、どんな悪いことをしても罪にならぬ。御承知のごとく、山本内閣のシーメンス事件は、わずか二十万円の金を、時の海軍省の経理局長がとつたということで総辞職をしておるわけでございます。ところが今度の汚職事件はそういうようなことでなく、相当自由党の幹部諸君や官庁の重要職の方が、こういう事件の嫌疑を受けておられるわけであります。そういう点についての責任を考えなければ、いつまでたつて内閣は倒れぬのではないかというように、われわれ責任ある立場から考えますが、その点は緒方総理はどのようにお考えになつておりますか、お聞かせを願いたいと思います。
  160. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 シーメンス事件の起りましたときの山本内閣は、いわゆる汚職で倒れたのではありませんで、貴族院において予算が成立しなかつたために総辞職をするに至つたのであります。その予算を不成立に導いた原因の一つとしては、シーメンス事件の影響があつたかとも考えられるのでありますけれども、直接の原因は予算の不成立であります。
  161. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは解釈の相違でございまして、私たちと緒方さんとは考えが違うのはやむを得ませんけれども、しかし緒方さんとしてはああいうような事件を起しても、指揮権を発動しても、自分たちは責任を感じないでやつて行こうというよう判断をされておられますかどうか、ひとつ伺いたいと思います。
  162. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 責任は十分に感じております。ただその責任を感ずることによつて内閣が総辞職するということは考えなかったのであります。先ほど申し上げましたように、この指揮権発動というものに対する批判が、やがて総選挙の結果の上に現われて来るであろう、その結果に対しては十分甘んじてそれを受けるつもりでおります。
  163. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 幸か不幸か、自由党内から民主党へ走られた人がありまして、実は与党が絶対多数でないので政局が転換するようなチヤンスを迎えたわけでありますが、もしこういうようなことがなかつたならば、四年間もそういうようなことが続いて行く。そして一年か二年になれば大体忘れられて行くというような結果になつても、そういうことは政治道徳上何ら考えないというふうにお考えでありましようか、お聞かせを願いたいと思います。
  164. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今の政治組織においてそれはやむを得ないのじやないかと考えます。議員に任期がありますのは、いつまでも無限にその責任を放擬しない、四年の任期の終りにおいてすべての責任を選挙の形においてはつきりするということになつておるのだと考えます。
  165. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そのことに関連しまして、きよう中曽根委員から吉田内閣は独裁的なことをやつておるというような解釈がありまして、悪いことをしても最後に指揮権を発動していつまでもやめないということになれば、当然党内に正義の人たちが出て来て、そしてよそに党をつくるということはやむを得ないというようなお話がございました。これはわれわれと多少考え方を違えております。私たちは少くとも自由党を出て来た人たちが、やはりその任期の続くまでこういうようなことを主張するということが、今までの政治道徳だと考えております。そういう点について将来万一解散にならないような場合には、また多数派工作ということが行われるわけであります。そういう点についてこれはどういうよう方法でやつても、切取りをやつてもいいというよう結論になるわけでありますが、そういう点について緒方さんのはつきりしたお考えを伺いたいと思います。
  166. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政局がかなり切迫しておりますが、今お述べになりましたように、もし解散がない、選挙がないという場合には、それは現議員の任期末における総選挙の際に、その責任を明らかにするという以外に、道がない仕組みになっていると考えます。
  167. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いつまでやつてもいろいろ話が尽きませんから、ちよつとほかの話に転換いたしますが、実は先国会の終りのころに、吉田首相は外遊することがきまつておりました。ところが国会においてどんなに予算委員会質問しましても、仮定の事実だからそんなことはわからないということで、最後までわれわれにひた隠しにして行かれました。ところが臨時議会を急に開くことになつておりましても開かずに、九月の初めに吉田首相は出かけられたのであります。そこで私たちの言いたいことは、一体個人の旅行ならいいが、少くとも総理大臣が五十三日も外国へ行くような場合に、しかもその金が国民の血と汗の結晶の税金の、国の金で外国へ行かれるような場合、政治家としてこういうようなことが平気で行われてもいいものであるかどうか。これは私たちは吉田首相に聞きたいわけでありますが、純方さんはどういうふうな解釈をしておられますかどうか、その点お聞かせ願いたいと思います。
  168. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは政府が重要だと信ずる国事に関係することであります以上、国会の閉会中に海外旅行することはさしつかえないと思います。
  169. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そうすれば国会なんかどうでもいい、自分たちは政権を握つておれば、どんなことをやつてもいいという解釈をしてもよろしゆうございますか。
  170. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私が申し上げましたのは国会の開会中でなく、国会の閉会中であるから、その期間を利用して重要な国務遂行のために海外旅行するということでありまして、国会をどうなつてもいいというようなことは少しも申し上げておりません。
  171. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 しからば先に自粛国会を開くということが四党できまつたわでございます。当然早く臨時国会を開いてやるという話になつておりましたが、それを開かずにおいでになつたのはどういう理由でございますか。
  172. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは当時いわゆる自粛三法がまだ容易に成案を得るに至らない様子でありましたので、その間を利用したような次第であります。
  173. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 自粛三法というのはなるべくつくらずにおいておられたのでありまして、これはあなたの方で逃げればいくらも逃げられる道はございますけれども、これは私たちとしてはどうしても納得できない点でございます。  それからちよう吉田さんかヨーロツパ、アメリカにおいでになるときの途中に、御承知のように日本は暴風雨でございまして、洞爺丸のような世界第二の大きな事件が起きました。これはちよう吉田首相が向うに行かれた間に起きたのであります。私たちの国民的感情としては、いやしくもこの事件が一民間会社の事件でなく、国の管理している国鉄でこういうような大きな事件が起きまして、われわれは実に悲しい状況だつたと思うのでありますが、私は一国の総理大臣が国の代表であれば、むしろアメリカ行きの途中を延ばしても国へ帰つてこれらの処置をすべきでないか。またもしそういうことができなかつたならば、少くとも緒方総理は国の特使として現地におもむいて、こういうような被害を受けた人に陳謝するなり、あるいは国の代表として何か処置するようなことがあつてしかるべきと考えておりますが、そういう点について、どういうふうにお考えでありますか、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  174. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 洞爺丸の遭難事件は、まことに類例の少い大きな海難でありまして、その死亡者の点から申しましても残念なことでありますが、しかしそれによつて総理大臣がかねて計画しておりました海外旅行を打切つて帰ることはどうであろうかと考えます。なお当時事件発生の際には、私は参りませんでしたが、運輸大臣と北海道開発庁の政務次官とが、時を移さず現地に視察かたがたお見舞に参つたことは御承知だろうと思います。
  175. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そういう点になりますとイギリスなどは違つておとまして、イギリスの女王がやはりそういうようなところに行つておるのでございます。今は日本は、御承知のよう総理大臣が一番重要な権力を持つておりますので、私たちはそのくらいの考慮があつてしかるべきだと考えております。しかしそのくらいでいいというようにお考えならばしかたがありませんけれども、私たちはさよう考えておるのであります。  それからもう一つ吉田首相にお尋ねしたいのでございますが、吉田首相はこの長い間の政権担当の間に大臣をたびたびおかえになりました。しかも短かいのは三十日くらいで首をとりかえておられます。六十何人の大臣が更迭されたわけでございますが、今の憲法上何のことはございませんけれども、しかし少くとも大臣を選定する場合において、将来の見通しくらいはつけてやられないと、きよう中曽根委員からいろいろ議論も出ておりましたが、各官庁におきましては、閣僚、上司をほとんど問題にしない。どうせこの大臣は一箇月か三箇月で首になるというような、そういう上を軽んずるよう状態があるわけでございます。こういう点について緒方総理はどのようにお考えになつておるか。総理大臣は、法律があるから、かつてにどんなに首を切つてやめさせてもかまわないというようにお考えになつておられますか。ひとつ緒方総理の見解をお尋ねしたいと思います。
  176. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 吉田総理大臣も、各国務大臣をかつてに首を切つていいというふうな軽い意味考えておるとは思いません。ただそのときの情勢によりまして、さらに新進気鋭を用いる方が国務の遂行上いいと考えた場合に、更迭が行われておったのであろうと思います。
  177. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それはあとの緒方さんの判断でございまして、私たちはそういうように解釈しておりません。少くともかつてない専制政治、平清盛以上のことをおやりになつたと思いますが、そういうことから、今日わが日本の国の政治に対して不信を抱き、また吉田首相のやり方についての非難が全国にたなびいておると思うのでございます。こういう点について、この次内閣をとられるかどうか知りませんけれども、緒方総理は、将来のことでございますけれども、そういうような場合に吉田さんと同じようなやり口をやられるのか、この際承つておきたいと思います。
  178. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 まだ私が内閣を組織するかどうか全然予定もつかぬときに、そういう出過ぎたお答えはいかがかと思います。
  179. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 緒方さんにいろいろ聞きたいことがありますけれども、時間の都合がありますから、あとは大蔵大臣に質問いたします。  大蔵大臣はかねがね一兆円予算を組まれまして、先日の本会議において高らかに現代の日本の経済の安泰を誇り、また一兆円予算、デフレ予算が非常に成功したというようなことを強く唱えておられました。これは一兆円予算をやつた御本尊でございますから、私は一面ごもつともと思うのでございますが、実は外貨が黒字になつたというような問題は、これは数字の上でございまして、その陰におきましては多数の泣いておる者がある。今年も三、四月、五、六月におきまして中小企業者の倒産、あるいは今日の社会情勢を見てもらえばわかりますけれども、いかにそのために多くの人々が困つておるかというようなことについて、どういうふうに判断されておるのか。私は数字の羅列を望んでおるわけではございません。そういうような一般の中小企業以下の大衆が、どんな考えを持つてこの黒字をながめておるかということについての大蔵大臣の率直な御意見を承りたいと思います。
  180. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 財政の緊縮その他一連のいわゆる経済健全化政策が相当効果を収めておることは、皆さんも御承知の通りであります。但しその間に手形の不渡りが増加し、あるいは倒産のうき目にあわれた方、その他のしわ寄せを受けられて困つておる方々のあることは事実でありまして、このことには私もたいへん心を苦しめているわけでございます、従いましてこういう政策を行うときには、若干の摩擦等は免れませんので、二十九年度の当初予算を組みます場合、失業者その他のものについては五分よけいに見込んで、社会保障費等は、ほかの費目は減額したにもかかわらず、増額しておいたことは佐藤議員も御承知の通りであります。しかしながらなおそれでは十分でないものがあるので、今回の補正予算を組んだ次第でございますが、そういつたしわ寄せなり、中小企業者の倒産のうき目を見る者をできるだけ少くしなければならぬことは、われわれの努力すべき点であると思つております、  しかし大筋から申しますと、何と言つてもこの過程を経なければ、日本のほんとうの国際収支を改善することはできないので、この過程中に起つて来る事柄について、できるだけ緩和して行くことにいたしたいということで、われわれいろいろと苦慮しておる次第であり、それがために予算も計上して、できるだけ最善を尽しておる、こういう次第であります。私どもは、こういうことをやればこういうものが避けられるという面があれば、それに対してはできるだけ耳を傾けたい所存でありますが、しかし大きい筋をどうしても貫いて参りますと、若干の相剋摩擦が出て来ることは避けがたいので、それらに対する程度をできるだけ緩和するように、またこれらに対する社会保障的な措置をできるだけとるようにというので、それに努めておるというのが実情でございます。
  181. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大蔵大臣は、国際収支は今年度は大体一億数千万ドルの黒字が見込まれるということを言われました。しかしこの好転は何も一兆円予算のためばかりではない。むしろ輸出増加の大きな原因をなくしているものは、飢餓輸出のたまものである、多くの犠牲者がそこにあるということを私は考えております。そこで私は、輸出増加、輸出増加と言つておられますけれども、輸出のコストが一体国際物価にうまくさや寄せされることになつておるかどうか、こういうことをひとつ大蔵大臣にお伺いしたい。今年度の輸出は伸びたということは聞いておりますけれども、しかしこの中にはインドネシアの賠償に充てられるようなものもある。それから国際収支の関係では黒字になつておるならば、そんなよう状態で輸出がうまく行つておるならば、もう少し国内の景気がよくなつよさそうなものである。少くともわれわれが街頭に見る状態では、この数年来今日ほど不景気な状態はないよう考えておりますが、この点大蔵大臣はどんなふうにお考えになつておりますか。ひとつ的確なる御判断を願いたいと思います。
  182. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 輸出が増加いたしておりますことは、年初大体輸出十二億七千十万ドルくらい見込んだものが、今日は十五億ドル以上を越すと見込まれる状況になつておることでも、よくおわかりのことと思います、しかしこの輸出増加の裏には、この前の私の演説の中でも率直に申し上げております通り、むろん採算がとれて現在引合つておるものも相当ありますけれども、金融のための輸出をしたり、コスト引下げから来るものでないものがありますので、私はこういう点を三十年度の予算で、あるいはその他一連の施策を続けてやることによつて――すなわち今のこの状況が続けばいいのであるが、これをどうして続けさすか、これが地固めの年として、特に来年度はさらに生産性の高揚をはかり、できるだけコストの低下をはかつて参る、こういうことを考えておるゆえんでありまして、今仰せになつたような、たとえばインドネシアについても去年より若干ふえております。また韓国についてもふえておりますが、これは数字としてはそう大きいものではありません。現在両方合せてかれこれ二億ドル見当になると思いますが、これは昨年来そうなつておるので、今年一時にこれがふえたというわけでなありません、しかしかようなものもあります。従つて私どもが今のままで、たとえば政策を少しでも緩和するということは いけない。今いいからといつてすぐに政策をかえるというようなことはいけない。つまりこの政策をもつと続けて滲透させて、そしてこれがコストが引合つて、日本の貿易が正常貿易だけで十分自立ができるところへ持つて参らなければならぬのであるから、今の政策を引続き強めてこれを実行して参らなければならぬ、こういうことを申しておるのはその点からであります。
  183. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 今の大蔵大臣は御存じのように実業家の出身の人でありまして、いろいろ社会的にはそういう仕事をやつておられますのでおわかりになると思いますが、この長い間の吉田内閣のいわゆる官僚政治と申しますか、官僚経済と申しますか、とにかく机の上だけでやるような経済が今日非常に日本の不景気を来しておる。私たちは昨年ドイツへ来きまして、ドイツはほんとうに今輸出が伸びておりますが、こういう点についての実際のあり方が非常に違つておるわけでありまして、日本では石灰の問題とかあるいは鋼鉄の問題などを取上げてみましても、非常に思いつきでやつておる、昨年は重油を使えといつておりながら、ことしは石炭が余つたから重油を規制せよといような――これは経済審議庁長官の領分になりますが、少くともそういうような無計画ないわゆるその日暮しの経済では、何年こんなことを続けても日本の経済は立ち直らない、私はこういうよう考えております。これは意見が違いますけれども、しかしわれわれはやはり計画的に事業をやつて行かなければ、日本の経済の再建はできないというよう考えを持つておりまして、長年続きました吉田自由経済政策は今や破綻に来ている。いくら大蔵大臣が表向きの数字を羅列されましても、日本経済の実態は日に日に苦しくなつて来るという状態を憂えておるわけでありますが、その点についての御見解はいかがでございますか、お伺いしたいと思います。
  184. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 西ドイツ等が真剣に経済復興に努力しておることは、学ぶべき点が多々あることは私どもまつたく同感でございます。ただ日本といたしましては、独立後一年――あの間長い間敗戦あるいは占領等の名に苦しめられておつて、多少ゆるみが出て、御承知のごとく二十八年度予算が相当大きなものになつた。こういうことも長い間の占領後、独立して初めてのときであつたので無理もないと思つたのでありますが、しかしよく見渡してみると、あの間に非常に世界の情勢に遅れて来ておつた、それがひいて二十八年度三億一千三百万ドルという赤字をもたらしたのであるから、そこで政策の一変をはかつて、今日のいわゆる健全化政策を昨年秋以来とつておる次第であります。これが漸次効果を生んで来ておるのでありまして、その間たとえば西ドイツ等がどんなにいろいろなことをやつておるか、またたとえばイギリス等にいたしましても、その間非常な努力をしておることは、あなたがよく御承知の通りであります。ただこれは日本といたしましてはまだわれわれの努力が足りない、また真剣さも非常に足りないのでありまして、この点については今後一層国民運動等を展開するとこによつて、私どもは現にことし行つておるような情勢をもつと続けて行つて、今の値段ならもう国際競争力がついたものは相当多いのです。これがコストが引合つて出せるようになる――原因はわかつておる、これならもう貿易が出るものだということがよくわかつたのでありますから、いわば病源か明らかになつて来たのであるから、対症療法はおのずからここに立つわけで、従つて三十年度はあくまでも私たちが新しい地固めの年としてこの経済政策を一貫して行いたい、かよう考えておる次第であります。
  185. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 蔵相は非常に楽観論を、言つておられますが、しかし私たちが東京の状態だけ考えてみましても、ちまたに非常な大きなビルデイングがたくさん建つておる、料飲店やあるいは待合などは戦争前より実にきれいになつている。しかるに実際庶民住宅はどうであるか、いなかの地方の道路はどうであるかといいますと、まつたくみじめな状態であります。イタリアにおいて何が行われているかといいますと、イタリアのような国ですら庶民住宅は至るところ建つておりまして、日本では三百万戸も足らぬといつておりますが、そういうようなことは絶対ない。ましてドイツなどは御承知のように工場などは非常にりつぱになつておりますけれども、非生産的なものには絶対に金を出していない。こういりよう状態考えますと、これはおれはやつていないから知らぬと言われるかもしれませんが、日本の状態の大銀行や大ビルデイングやあるいは娯楽的なあるいは娯楽的なあるいは歓楽街のようなところばかり非常によくなるという政策は、これはやはり自由党の政策ではないか、こういうふうにわれわれは考えて非常に憂えているわけでございますが、そういう点についての御解釈はどういうふうになされておりますか、お尋ねいたします。
  186. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これは根本的に佐藤さんと違つていることは、あなたの方は何もで統制をして行こう、こういう考え方であり、国営、官営で物をやつて行こうという考え方であり、われわれは戦時中また戦後における各種の統制に懲り懲りしておるから、できるだけ統制その他はやりたくない。しかし一定の計画はすべて持つてつておるのでありまして、たとえば石炭についても、石炭合理化計画を立てて、それがためにいろいろな資金を注入していることは御承知の通り、電力についてもその通り、すべて一定の計画は持つておりますけれども、あなた方のおつしやるよう統制的なことはやつていない。根本的な考え方として申し上げますと、私どもは物的統制を広くやるという考えは持つておりません。しかしでき得るだけその間に創意くふうの十分発揮できるような方向に持つて参りたい、かよう考えているので、今行つている政策は、広く物的統制を行わないでどういう政策を行うかということになれば、これはあなたもよく御承知のごとくに、一番大きな原因をなした財政の上から財政資金の緊縮をやつて行く、また一般金融の方から金融の引締めをやつて行く、輸出の方から国際収支を目標として輸出入の操作を行つて行く、また租税その他の面から輸出の奨励、輸入の抑制をやつて行くといりようなことで事業の振興政策をやつて参る。社会政策としてはできるだけ予算の配分をその方面に多くして社会保障的なものをやつて行く、これは佐藤さん御存じだが、戦前に比べると今の社会保障的な費用は、予算で約二十倍に達しております。しかも年々これは増額しております。予算の配分を少くしているときでも増額しているのでございまして、大体どなたもねらつていることは国民生活の向上なのであるから、国民生活の向上のために、乏しい予算をどう配分するかということについての配分の仕方については多少の差がありましようが、ねらつているところは同じだと考えております。
  187. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 統制経済が社会党の責任のように言われますが、戦争前に社会党が天下をとつたことはございません、統制経済はあなた方の亜流の軍閥やなんかがやつてつた考え方でありまして、私たちの考えている統制経済はそんなよう考えでないことを一応お認め願いたいと思います。私はそういう議論をここでしようとは思つておりませんが、少くとも大蔵大臣の予算委員会においての声明、あるいは本会議における高らかな声の中には、何か非常に楽天的なものがあるとわれわれに聞えた。しかも実際の町の声は、中小企業者の悲しい倒産――私はことしあなた方の党の小峯さんと一緒に九州に行つて参りました。これは九州で小林博士がわれわれの意向を聞いてお書きになつたものですが、どこを見ても不景気である。私は小峯さんと一緒に聞いておりましたが、小峯君が気の毒でわれわれがそばで見ておられないほど、苦しい中小炭鉱業者が小峯君に食つてかかつておりました。今の日本の経済状態がいかにもよくなつたということをあなたは盛んに言つておられますが、国内におきましては、あなたの言と反対に、小小企業者はますます困つている。このことをお認めになりますかどうか。私は少くともその点についてはあなたのような楽観論はできないというふうに考えておりますが、蔵相はどういうふうにお考えになつておりますか、お伺いいたします。
  188. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 中小企業者が非常にお困りになつている事情は私はよく知つております。但し日本が置かれている経済の現状というものをよくごらんいただきますと、昨年のごとくかりに三億一千三百万ドルというような赤字を引続き国際的に続けて行くとしたらどうなるでしよう。これでは日本の必要な食糧も買えなくなり、必要な原材料も買えなくなつて、自然に日本が経済破滅に導かれるのは当然なのです。そこで、日本は原材料も外国から買わなければならない、食糧も買わなければならない、こういう日本が置かれておる立場をよくお考えくださいますれば、どうしてもここに国際収支の均衡をはかることが第一の問題になつて来る。国際収安の均衡をはかることを第一にしますと、日本の膨脹しきつたものをある程度縮小するほかはないので、それで私が当時申したのは、二十九年と三十年、この二箇年を縮小均衡でやつてつて、日本のすべての商品に国際競争力をつけて行く、国際競争力がついて来れば、三十一年度からは拡大均衡でやつて参る。輸入したものを国内で製造する、それで輸出する能力を持つて来る、競争力を持つからできるのである。従つてこの二箇年間はちようどしやくとり虫が伸びるために縮むように今は縮んでいただくほかはない。従つてそこに起つて来るいろいろな問題については、国として最善の措置をとりたい、こう申しておるわけであります。
  189. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 国際収支の問題はたびたび伺つておりますからわれわれも了解しておりますが、しかし政府は国内の中小企業者に対して中小企業金庫をやつてやるとか、あるいは国民公庫をやつてやるとか、まことにお題目はたくさんあります。けれども昨年できました中小企業金庫で実際にどれくらい国民が救われておるか。これはほんの一部でございまして、われわれはそういう点についての下への浸透がないと思う。あなたは官僚出でないからそういう事情も御存じだと思うのでごさいますけれども、実際今の中小企業者の悲惨な状態は、これは、百貨店などの問題もありまして、愛知さんの経済審議庁の御関係になりますけれども、少くとも私たちは現在の事情では日本の中小企業は窒息する。おそらく今年の暮れにおきましては、もつと悲惨な状態が出て来るのではないかということを憂えるわけでございます。こういうものを一体政府はどういう方法で助けて行くか、この点についてのいわゆる涙ある解釈を承りたいと思うのでございます。
  190. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 御承知のごとくに中小企業につきましては、前にもいわゆる商工中金があり、あるいは国民金融公庫等がありましたけれども、それでは非常に不十分なので、特に昨年中小企業金融公庫をつくつて、比較的長期の資金をも出し得ることとした、その結果として、今は二百数十億円はそれから出て、現在の貸出高はさように相なつておる。もちろんこれをもつて何ら足れりとしておりません。何といつても中小商工業に対する資金源の大きい元は、政府関係を離れて――政府関係はどちらかと言えば、一部分でありまして、一番大きいのは、市中銀行及び地方銀行の普通銀行の貸出しなのです。これが従来におきましては大体地方銀では三割程度、大都会の銀行においては一割足らずくらいになつておる。それが漸次減る傾向にあつたので、特にこの点についていろいろ話をいたしまして、昨日もちよつとここで申したかと思いますが、十一月の十三日付でありましたか、銀行協会が自発的に各中小企業者に対する中小金融に対して特別な配意をして貸出に努めるよう申し合せて協会の通牒と相なつておる次第でございます。  そのほか、年末の金融につきましては、昨日申しましたから繰返して申しませんが、できるだけこれらの措置をとりたいと存じまして、資金の増加方について努めておるという次第でございます。
  191. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点税金問題について少しお尋ねしたいと思うのでございますが、今日わが国の税金が過重であるということは、私がいろいろ申す必要はありませんが、特に源泉所得の税率が高く、地方税と重なりまして実に塗炭の苦しみをしております。われわれはシヤウプ勧告による地方税のことにつきましては根本的な改革を考えておりますが、少くとも現状におきましては、実に悲惨な状態が出て来ておる。地方を一々ごらんになるとわかりますけれども、村でも労働者であつてその村の一番大きな金持以上の村民税を払つておる例がたくさんあるわけでございます。こういう点について、源泉所得税は御承知のように徴税費がかかりませんので、何とか軽減をする必要はないか。年末にわずか一万円か一万五千円のボーナスもらつても高い税金がかかるということでありまして、まことにお気の毒だと思うのでありますが、大蔵大臣はこういう点について税法の改正をおやりになる意思があるかどうか、何らかこれについての対策をお考えになつておるか、お聞きしたいと思います。
  192. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私は、特に小額所得者の税金は重いと思つております。従いまして、私どもが予算を取扱うようになつて以来も、二回にわたつて小額所得者の減税を行つたことは、佐藤さんもよく御承知の通りでございます。しからば本年どうだということになりますと、実際を言えば、月に二万円、年収二十四万円程度までは減税を行うべきだと思いますが、今は事情が許しません。財源がこれを許しませんので、現在の情勢ではそういう一般的減税をやることはむずかしい、かよう考えております。しかし日本の税金は戦前に比べますと非常に重くなつておるのでありまして、これはでき得るだけ、特に小額所得者には軽減すべきであると考えております。なお俸給生活者は源泉課税できちつと全部が全部とられておりますので、これについては、従来とも少くとも事業所得者に比べればよほどかげんはしてございます。これは数学的におわかりの通りでありますが、しかし今後とも、今申し上げたように、できれば二十四万円程度までは持つて参るように努めたいと思いますが、今の日本の財政の状況ではさように参りかねることをまことに遺憾といたしております。低いところの者の税金をできるだけ少くするということは、今後とも努めなければならぬと存じております。
  193. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大蔵大臣にいろいろ注文してもなかなか簡単にはできないと思いますけれども、しかし少くとも重税であるということだけは認識を願つておると思うのでございます。御承知のように、昨日も今澄委員からちよつとお話が出ましたが、ことしの七、八月ころ銀行の金融恐慌が起るのじやないか、あるいはデフレ予算のしわ寄せによつて相当の銀行の犠牲が出るのじやないかという声を聞いておりました。商社などは三、四月ころに相当犠牲が出ましたが、銀行などについてはどうにか今日まで保つて参りました。しかし今の財界の事情を考えますと、われわれは国民として非常に不安を感じておるわけでありますが、大蔵大臣のお考えでは、年末などにそういう不安はない――少くとも私たちは現在の日本の事情から考えていろいろ心配しておりますが、そういうような不安定な銀行があるのじやないかということについて、大蔵大臣の御見解をひとつ承りたいと思います。
  194. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 銀行については何の御懸念を要しない。これははつきりと申し上げておきます。但し御承知のごとくに、商社その他の手形の不渡り等がありまして、銀行におきましても内部的に蓄積を急がなければならぬ、内部の充実をはからなければならぬことは、申し上げるまでもございませんが、銀行の営業状態、金融取引等については何らの御懸念に及ばぬと存じております。これは一つの例ですが、たとえばオーバー・ローンが、佐藤さん御承知のように最高時四千二百億円くらいありました。このごろはまず三千億、一時三千億をちよつと割つて二千九百億台になつたことがありますが、おそらく今も大体三千億見当じやないかと思います。それだけやはり銀行の改善が行われたとも言えるのでありまして、この点はどうぞ御懸念のないようにお願いいたします。
  195. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大蔵大臣が安心していられなければたいへんなことになりますから、それ以上追究しませんが、今度のデフレ予算によりまして、地方におきまして橋梁の関係とか、あるいはこのデフレの予算のためにせつかくやつてつた事業が途中でやめられるよう状態が出て参りました。こういう点についてのいろいろなことは建設大臣に聞けばわかりますが、地方におきまして途中で仕事が流れてしまつたような事件がたくさんあるわけでございます。ガソリン税を目的税にして地方では多少道路もよくなつておりますが、こういう点についての実際の支障はなかつたかどうか。もうそろそろ年度末になつて参りますので、そういう点についての大蔵大臣の見解をひとつ承りたいと思います。
  196. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 昨年二十八年度災害につきましては、非常に災害が多くて、しかも予算の配分の困難な事情等で、あの二十八年度内にやられた工事がどちらかといえば二割五分程度ようやく満ちたというぐあいでございまして、仰せのごとき遺憾な点があると存じております。従つて各地方によつては、特に佐藤さんの愛知県の方などは相当仕越し工事をやつております。これらに対しても相当な金融措置はとつたのでありますが、今後もこれらの実情に即するようには持つて参りたいと考えております。しかし何分災害が相次いでおりまして、これはお手元へ出たかと思いますが、実は二十二年以来国がやらなければならぬ事業量が平均千億二百円くらいに達しておる、今その予算措置がなかなかとれませんので、本年あたりも本年度内での仕事の量は二割五分程度やれるということにいたしておる次第でございまして、この点はどうしても重点的にものをやつて行かなければならぬ。この点ははなはだ遺憾に思うのであります。しかし政府としましてはできるだけのことはします。  なお昨日もここでお尋ねのありました地方庁その他の年末金融について若干出すということをちよつと言いましたが、若干と言いましたのは実は四十億出すことにきまりましたから、どうか御了承をお願いいたします。  それからなおちよつと佐藤さんに一言税のことで申し上げておきますが、このごろ中小企業者の方に多少違つて来ておるのは、手形などがはつきり金が入らぬような分については、それに対する措置をとつております。それからはつきりとこういうふうに支払われるというものに対して、無利子で延納を認めております。これが最近の例ですけれども、利息をとらずに延納されてよいことにいたしております。もつともあまりそういうことを言つて、それではどんどん延納すると言われると困るのですが、実ははつきり支払い計画が立つておる分についてはさような措置を講じて、実情に合うようにいたしたいと考えております。
  197. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大分時間が過ぎましたから、二、三の点を外務大臣からちよつとお伺いしたいと思います。  外務大臣は先日中南米へおいでになりました。実は日本の問題で一番大きな問題は水爆の問題でございます。あの犠牲者の問題につきまして、われわれは吉田首相がワシントンに行かれたならば何らかの解決をされるだろうというよう考えを持つておりました。ところがいまだにこの水爆の犠牲者についての結末がないのでございますが、外務大臣はこの問題について一体どういうように処置をされるか、また水爆の演習に協力すると言つておられますから、そんなものはもつとやれとお考えになつておるのか、この問題について岡崎外務大臣の見解を承りたいと思います。
  198. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 補償の力の問題は、初め私がアメリカへ行く前には大体百万ドルの補償ということで話をしておりましたが、なかなかその話もつかなかつたのであります。その後久保山氏の事件その他がありましたものですから、さらにアメリカで話をしておりまして、大体百五十万ドル程度のことは話合いがつく見込みになつております。けれどもどうも十分でないと考えまして、さらに引続き話をいたしております。年末も近づきまして、早くこちらでも解決して、被害者等に金が渡るようにしたいと思いますが、そうかといつて、あまり低いところではどうも困るものですから、勢い長引いているわけであります。  原水爆実験の問題については、これは一言に原爆協力なんと言われて、はなはだ私は迷惑しておる。あれはよく速記録を読んでからおつしやつていただきたいと思います。私の常に言つておることは、第一にはどうしてもこの原水爆といいますか、こういう大量殺人兵器の国際管理、つまりこれを廃止する、そうして平和利用に持つて行く、これでなければならぬわけでありまして、こんなことは当然のことであります。ただこれは日本だけが力んでもしかたがないことで、国際的な観点から解決しなければならぬ。そこで先般もユネスコの総会には理学博士の茅君に特に出席してもらいまして、この問題について十分な発言を依頼したわけであります。また澤田国連大使等にもこの点で訓令を出しております。ただそれができない場合にどうすべきかという点で、はなはだ残念ながらただいまのところは武装平和といいますか、力の均衡による平和が保たれておつて、この力の均衡が破れるとむしろかえつて原爆等が落ちて来るという危険もありますから、この力の均衡を今のところは、はなはだ残念ではあるが守つて行かなければならぬ。そのために先方が原爆の実験を――先方というのは共産陣営でありますが、実験をやるならばこちらもやらざるを得ないではないか、そこでその場所はどこにするかということになりますと、これは日本から言えば日本から一番遠いところでやつてもらいたいというのがあたりまえの話であつて、ただこれが今の場合、世界的な戦争回避の唯一の手段であるとするならば、日本だけの都合ばかりも言つているわけに行かぬ場合もあるのじやないか。これが私の考えであります。
  199. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 岡崎さんは日本だけが言つてもしかたがないと言つておられますが、日本だけが一番たくさん被害を受けておるわけであります。大体モルモットになつているのは日本人でありまして、この点は、アメリカの外務大臣ではないのでございまして、日本の外務大臣でございますから、きよう中曽根君からも言われましたが、もつと積極的に――犠牲者が出ておるのは日本が一番多い、世界で原爆の犠牲者が出たのは日本が最初でありまして、私は世界に向つてこの主張は大きくできると思う。この点について私はもう少し積極的な外務大臣の御活躍を願いたいと思います。  もう一つは賠償の問題でございますが、先日も本会議の席上でいろいろ御説明がございました。私たちはいろいろ国の財政の問題もございまして、賠償問題についてはなかなかむずかしい問題があるかと存じます。しかし少くともフィリピンで失敗したり、あるいはインドネシアの問題も先ほど大蔵大臣から出ましたが、私たちは早く近い国と講和を、いわゆる善隣外交をするよう意味からも、できるだけ早く賠償問題を片づけてもらいたいというよう考えを打つておりますが、遺憾ながら岡崎外務大臣のなやり方では、どうも積極的でないよう考えられてしかたがないのでございます。そういう点について国民にもう少し岡崎外務大臣ならばやつて行けるというような信頼を持たせるよう方法はないものか、少くともわれわれはそういうよう考えておりまして、今の原水爆の問題でも、私たちは遺憾ながら岡崎外交に信頼を置けないというよう考えを持つており、おそらく国民もそう思つておりますが、そういう点についてはどういうようにお考えになつておりますか、お尋ねしたいと思うのでございます。
  200. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 原爆の被害をこうむつたのは日本であるという点については、これはもうおつしやるまでもなく私も承知しておるつもりであります。そこでわれわれも声を大にして言つておるのであるけれども、しかし私の言うのは日本一国でこれは解決できるものではないので、たとえば声を大にして言つたところで、どうしてもソ連までひつぱつて来るのには、国際的な会議等を利用せざるを得ないのであります。外交でありますから宣伝や広告ではないのでありまして、まじめに一歩一歩進む以外には方法がないと思います。私の力でなければ解決できぬように広告したいのはやまやまでありますが、広告するよりも、実際の解決をはかるのが肝要であると思つております。しかし今に記録でもはつきりしますれば、実際の状況はわかるだろうと期待をいたしております。
  201. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 外務大臣にちんどん屋になれというわけではございません。しかし少くともわれわれはもう少し積極的に日本の行き場所を政府の当事者である外務大臣は考えていただきたいということを考えておるわけであります。  最後に外務大臣にお尋ねするのでございますが、われわれは、社会党として前々からアジア貿易、中共貿易を唱えております。最近は自由党、改進党の方々も中共においでになりまして、大体中共の実態もごらんになつたと思うのでございますが、大分そういう道が開かれて参りました。当然日本としてはどうしても貿易をやる場合には、中共とかあるいは東南アジアの方面に伸びる以外には方法がないと思うのであります。そういう点について、ややもすると岡崎外交は向米一辺倒で、アメリカのごきげんばかり伺つてつて、どうも貿易の進展をはからぬというような非難があるわけでございます。そういう点についてこれを吉田総理大臣にお尋ねいたしたいと思うのでございますが、岡崎さんに吉田総理にかわつて、この見通しがこうである、われわれこういうようにやるつもりだというような、確信のある答弁をひとつ最後に承りたいと思います。
  202. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 御趣旨はよくわかりました。最近中共のやり方も大分今までとはかわつて来ておるようであります。従つてわれわれの方でもその範囲においては多少の融通性を持たせておるつもりであります。しかしながら根本的には、先ほど午前中にも中曽根君にお答えしましたように、暴力をもつて共産革命を世界的に行うのだという方針がはつきり改められない限りは、中共とおつしやるような全面的な話合いということは、なかなか困難じやないかと私は思つております。今までのやり方がいかぬとおつしやるのかもしれませんが、この八千七百万の国民の経済を受持つて、向米一辺倒というのはおかしな話ですが、しかしアメリカにも別に世話にならずに、中共貿易を開拓すれば十分国民経済は養つて行けるのだという御成算があるなら、むしろ承りたいくらいでありまして、現状といたしましては、もちろん中共貿易もさしつかえない範囲では行つて行くのは当然であります。またそのほかの方面にも、共産圏といえども決して貿易の上で毛ぎらいすることはない。むしろ積極的にやるべきものはやつてけつこうでありますし、またやるつもりでありますが、しかしそれだけでは足りないと私は思つております。現状におきましては、遺憾ながら今の程度――アメリカの余剰農産物とか、その他の物資も入れるよう方法も講じ、その他各般の措置を講じて、辛うじて現状のような国際収支を保つておるものであると私は確信いたしております。
  203. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私たちも中共貿易だけが日本の八十七百万の人間を養うということを言つているわけではございません。少くとも中共貿易についてはいろいろなわくもございますし、アメリカとの関係もございますから、むろんそういうことについて考えには入れておりますが、今までの岡崎外交はあまりにもアメリカのきげんばかりとつてつたんじやないかというようなきらいがありはしないかということを言つたのでありまして、そういう点についての御解釈はかつてでございますが、少くともそういうふうな道が開けるよう努力していただきたいということをつけ加えて申し上げたいと思うのであります。それから最後に加藤国務大臣に伺います。実は今度の予算の中に災害の補償がない。これは自由党の中からもこの災害問題について強い質問がございました。私どもは今度の臨時国会において、これは部分的に九州と北海道その他の地域がございますが、現地といたしましては相当の損害があるということをわれわれは同僚議員から聞いているわけです。そういう点についてなぜもつと早く臨時国会を開いてこういう問題な討議しなかつたか。補正予算に間に合わなかつたということでなく、なぜそういうことをやらなかつたかということについて、この責任者である加藤国務大臣からこの実際のあり方をここで御説明願いたいと思います。
  204. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 今年の災害は、全体から見ますれば、昨年よりはずつと少いのであります。しかし局部々々について見れば甚大なところもあるのであります。そこでただいま、昨年は国会を早く開いたが、今年はほつておいたでないかというような御指摘でありますが、昨年の災害も大体において九月の最後に起きたのでございます。そこで十月のしまいあたりに開いたのでありまして、一月の間隔つてつた。今年は九月の末に災害がありまして、十一月の三十日に国会を開きましたから、三十日、つまり一月だけ今年は遅れたということであるのでありますが、しかし災害の程度が今申したように昨年よりは低うございますし、かつまた打つ手は打つたのであります。ことに昨年におきましては初めてでありましたが、今年は災害にもだんだんなれて、実際の査定につきましては現に二箇月も三箇月もかかるのでありますがゆえに、その一月遅れただけで、冷淡にしておつたという意味では毛頭ないのでありまして、その間打つべき手は相当打つたつもりでございます。
  205. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 なかなか答弁がうまいので感心しましたが、実は最近われわれが国会におりましても、災害地における陳情というものはものすごく来ております。おそらく加藤国務大臣のところには行かないかと思うのでございますが、相当な被害があるということは事実でございまして、すでにきよう最後予算委員会でございますから、十分なあれはありませんけれども、しかし手を打つたから安心だという保証ができるかどうか。あとでいろいろな問題があつて、あなたの党の中からでもそういう非難が起きているけれども、あなたはそれでも手を打つたから安心できる、こういうふうな確言が得られますかどうか、最後にお尋ねしたいと思います。
  206. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 打つべき手は打つたと申しますが、それが被害地に満足を与えたとは申しません。政府としてはきるだけの手は打つた。すなわち私も現地を見て参りまして、この間本会議で申し上げた通り。担当の大臣であるところの農林大臣それから建設大臣も、親しく災害地を見て参りました。私も大体のところは見て参つたつもりでございます。災害につきまして一番必要な手は、まつ先にその災害復旧に着手することでございまして、それは政府といたしましても予備金を多く出しているのであります。実に三十四億余り予備金も出しておりますし、つなぎ資金も約三十億出しているのでございます。その他いろいろ営農資金などにつきましても、それぞれの手は打つたつもりでございまして、これで満足であるとは申しませんが、できるだけの措置はとりまして、それで今度の国会に補正予算を提出いたした次第でございまして、満足とは申しませんが、相当の手は打つたつもりでございます。
  207. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 答弁としては非常にけつこうでございますけれども、少くとも党内から不平が起きないくらいの態度でひとつおやり願いたいことをお願いいたしまして私の質問を終ります。
  208. 西村直己

    西村(直)委員長代理 小平忠君。
  209. 小平忠

    ○小平(忠)委員 本年の春以来政局は混迷の一途をたどつてつたのでありますが、過般日本民主党の結党によりまして、俄然自由、民主両党の政権争いと申し上げてよいのか、率直に申し上げて私は、今日の情勢は保守党主流争いというような感じがいたすのであります。このような混迷の一途をたどつておりまする政局拾収の道は、本委員会におきましても前委員がるる質問を通じて、明らかにいたしましたように、私は吉田内閣がすみやかに総辞職をいたしまして、五箇年にわたつてつてつた吉田内閣の数限りない暴政、失政に対して、いざよく国民に陳謝をして下野するというのが、私は今日の政党政治の真の姿でなかろうかと思うのであります。   〔西村(直)委員長代理退席、西村(久)委員長代理着席〕  本日は吉田総理が必ず出席をする、昨日も理事会倉石委員長なり与党の理事諸君が責任をもつて明日は総理を出すから、本日は第三陣を繰り上げてやつてもらいたいという、この言をわれわれは純真に信頼いたしまして、実は三陣を繰り上げてやつたのでありますが、案の定本日は病気と称して総理出席しない、私は総理大臣病気そのものの形態が、これは常識をもつてして、あるいは国民のすべてが真に病気出席できないんだと、だれが一体納得するでありましよう。私は国会の権威を保持するためにも、本予算委員会の権威を保持するためにも、まことに遺憾であります。  そこで本日はわれわれこの事態収拾のためにも、いたずらに審議の遷延は許されない。従いましてすみやかに予算案の審議を続行しようということから、総理が欠席をしてもやろうじやないかという、われわれ各派委員の申合せによりまして実は審議に入つたわけでありますが、総理にかわつて緒方総理が見えておりますから、私は総理にかわるべき副総理の忌憚のない所見を承りたいと思うのであります。緒方総理とこの席上で相まみえるのは、おそらくこれが最後になりはしないか。緒方さんは総理大臣として楓爽としてこの答弁台に立たれることがあるかもしらぬと予想されておる方がずいぶんあるようでありますが、あるいはわれわれが念願しているように、いさぎよく下野される、いずれにしましても副総理という形においては、おそらくこれが最後でなかろうかと思うのであります。  そこでまず最初に副総理に承りたいのであります。これは総理に直接承つた方が適切かと思いますが、お見えになりませんので、責任ある御答弁をひとつ承りたいと思います。一体吉田総理の外遊なるものは、過日の本会議の施政方針の演説あるいは本委員会においても触れたのでありますけれども、その核心に触れていない。と申しますのは、吉田総理の外遊の目的は一体単なる儀礼的な外遊であつたのか、あるいは現下の国交調整、打開のために外遊したのか、外遊の真の目的を私はひとつ副総理から承つておきたいのであります。
  210. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 吉田総理大臣の過般来の海外出張は、たびたび申し上げましたように、占領以来の、列国から日本に対して、示されました好意あるいは援助等に、国民気持を代表して謝意を表したい、いわゆる親善旅行ということが主たる目的であつたことは、表裏ともにないわけでございますが、しかしながら総理の外遊ということは、かつて今までなかつたのであります。特にこの際に総理大臣が外国に参りましたのは、太平洋戦争以後日本に対して多少の誤解もあり、また日本の事情が戦争を境にしていろいろ異なつておりますし、その間意思の疏通を欠くものも少くないので、今日は交通の便利も非常に戦前と異なつておりますので、総理が親しく出かけて、そうして各国の指導者との間にひざを交えて話をし合う、それによつて世界の平和あるいは人類の幸福、また近くはアジアの問題等につきまして、また日本独自の問題等につきまして意見を交換する、その間に今後通商あるいはその他のいろいろな現実の問題につきまして処理して参る上の親善な空気を醸成したいという気持から、目的は親善旅行でありますけれども、その間に幾多の期待を持つてつたことは、先般来たびたび申し上げた通りであります。各国におきましても、総理の外遊に対しまして相当の好意を示されまして、私が今申し上げました意味の目的を達成するということにつきましては、多大の成果が得られたというふうに考えております。
  211. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういたしますと、総理の外遊は単なる儀礼とか、親善というのではなくて、重要たる国務遂行のため、国交調整のためというように解釈いたしてもいいことになると思うのでありますが、その際吉田総理が訪問先の外国において、いろいろ国交論整上の話も出たでありましよう、いろいろ外電を通じて報ぜられております。そうして各国が寄せられた好意あるいは話し合つたことの内容、結論において、吉田さんは外遊中においても国内の政局についてはいろいろ耳にしておるが、その間において吉田さんは引続き政権を担当してやるのだという考えに立つて話をされたのであるか、あるいは場合によつてやめるかもしれぬ、引退するかもしれぬというよう考え方をもつて話をされて来たのか、これは緒方総理に聞くことは無理かと思いますけれども、しかし先ほど佐藤君の質問に答えて、吉田総理は外遊前に引退考えが多少あつたのじやなかろうかということを緒方さんが直接御答弁された筋もありますので、この点についてどのように解釈されますか、御意見を承りたいと思います。
  212. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 吉田総理が各国の指導者と会談をされる間に、将来進退をどうするということとかかわりなく、日本の将来ということを対象として、いろいろの問題について話をされたことは想像できるのでありまして、その際に自分の将来についてどういう考えを持つておられたかということは、その問題の折衝については関係はないと思います。
  213. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま御答弁によりますと、私はきわめて遺憾の意を表せざるを得ないと思うのであります。なぜならば先ほどの答弁によりまして、吉田さんは外遊前に引退考え方が多少あつたのではないか、ところがもちろん外遊中には場合によつて引退するなどは、これはごうも触れなかつたでありましよう吉田さんと話し合つた各国の考え方は、やはり引続き政権を担当してやつてもらうというよう考え方のもとに、いろいろ約束されたこともありましよう。それが私はちようど、総理がきよう出席する、しないの問題でペテンにかけたのではないかというような議論も、実は先ほどの予算委員会理事会で出たのでありますが、ちようど今日の吉田さんの態度というものは、帰つて来るなり引退を声明するということは、外遊中いろいろ話合いをして来たことに対しては、国際信義上いろいろ遺憾の点があるのではなかろうか。この責任はやめたことによつて一体とられるのか。現職総理としての外遊は、いまだかつてないのである。そのような類例のない外遊を、貴重な国費を使つてしたということから見て、私は大いにこの問題は国際信義の上からも責任を感じなければならない問題であろうと思いますが、副総理はどのようでお考えになりますか。
  214. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私の考えでは、国際信義の問題に関係するということはないと思います。戦後の日本は国土のほとんど五割を失い、人口は八千万、また天然の資源にはむしろ乏しい。しかもドイツなどと違い国の周囲の消費力はきわめて乏しい。この日本の将来の政策につきましては、これは保守党と祉会党とは多少立場を異にする点があるかもしれませんが、考え方にそう開きはない。従いまして日本の将来、日本の経済自立、日本の国民生活の充実ということにつきましては、それは総理の進退が、かりに総理心境の中にありましても、対象が日本の将来である以上、少しもそれは考え方の違いはないのでございまして、その点につきまして各国の指導者の間でどういう話をされようとも、責任云々という問題は起つて参らない、総理の希望としては、自分意見自分の政策を継ぐ政府の出現を希望されることは当然でありましようが、しかしそれが国際信義云々の問題ということにはならないと私は信じます。
  215. 小平忠

    ○小平(忠)委員 次にお伺いいたしたいことは、副総理に直接関係のある問題でありますから、責任ある御答弁をいただけると思いますが、政局の収拾に関しまして、一昨日来自由党内部においては、すみやかに総辞職をせよという、すなわち総辞職に対する署名がなされつつある。これに対しまして私はまさに総辞職という言葉は当然であろうと思う。しかし現在の吉田内閣の内容を、また自由党の内部をわれわれ外部から観察するのに、政党政治の本筋の行き方をとらずして、必ず解散の暴挙に出るだろうと考えるのであります。吉川さんの腰は、おそらく、きようは特にそういう考え方をさらに一歩一歩深めつつあるのではなかろうか。その理由は、私は私なりに批判するのに、まず第一に、かりに総辞職をして鳩山内閣政権をゆだねるとなれば、これは絶対多数政党でないから長続きはしない。近いうちに必ず解散が行われる。その解散の際には、先般六月三日の乱闘国会、われわれが無効国会と称しておるあの国会で通した警察法の改正、新警察法、自由党がでつち上げたこの警察法を今度は鳩山内閣にすつかり握られて、解散にあたつては、徹底的な選挙干渉が行われるであろう。これによつてまず自由党選挙に際して相当数が減るであろう。その次はまず政権を鳩山内閣にゆだねることによつて吉田さんがやめたのだから、そこで保守合同でやろうというようなことから民主党からの引抜き戦が始まる。従つてこれについてはまさに自由党がなくなるのではなかろうか。その次はまず吉田引退によつて困ることは、側近というものが即日冷飯を食うことになる。こういうよう理由から断じて解散の暴挙に出るという感をわれわれは深くする。ところがこの問題について、私は率直に申し上げて、こういう事態の収拾については、吉田総理をとりまくところの側近派なり、あるいは吉田内閣亜流派といいますか、そういう連中によつていろいろ両策されておるが、賢明なる緒方さんは、そんなでたらめなことはやらないのではないか。私はやはり憲法の正道というか、政治の常道というか、筋を通した行き方をするであろうという見方をするのでありますが、すなわち……(「すなわも何だ」と呼び、その他発言するものあり)聞きなさい。
  216. 西村久之

    西村(久)委員長代理 静粛に願います。どうぞ続行を願います。
  217. 小平忠

    ○小平(忠)委員 この総辞職考え方については、いろいろ臆測がありますけれども、やはりそういうことは断固として排撃して、解散をするという吉田さんの行き方を押えるのは副総理であろう。やはり総辞職を行うという考え方に立つてこそ、緒方総理の真の考え方であろうと私は考えるのですが、この総辞職をなさるという考え方について、緒方総理の所見を承つておきたいと思います。
  218. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 不信任案が提出されるという情報がありますが、不信任案がかりに通過いたしました場合、政府がいかなる進退をとるかということにつきましては、先般来総理大臣が申し上げておりますように、そのときの情勢によつて正しい判断をしたいと考えております。
  219. 小平忠

    ○小平(忠)委員 総理大臣の言明ではなくて、私は緒方総理あなたの御所見を承つておるのであります。解散というそういう情勢に際しまして、もちろん野党は予定通り不信任案を出します。この不信任案に対して、それがどうなるかわからない。それはわからないでしよう。しかし解散をした方がいいのか、あるいは総辞職をした方がいいのか、そのどつちかであります。この問題について、あなたはどうお考えになりますか、承つておきたいと思います。
  220. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 その点につきましては、先ほど来どなたかの御質問に対して繰返して、申しておりますよりに、総理意見の違いようはないのであつて総理が昨日来お答えしておる通りであるとお答えしたいと思います。
  221. 小平忠

    ○小平(忠)委員 この問題はこれ以上質問しても無理だと思いますので申し上げません。次に進みます。  私は今朝の総理の欠席によつて質問の内容も急に変更しなければならないことになつたのですが、今回の臨時国会の召集の意義、現在の当院におけるこの国会での中心課題は、とりもなおさず補正予算、自粛立法あるいは災害立法、これらに集約されると思いますが、時に私は本年度の災害関係中心に、緒方総理中心といたしまして関係閣僚にお伺いをいたしたいと思います。  まず最初に本年度の災害でありますが、加藤国務相に本年度の災害はどのような結果になつておるか、被害の総額、これに対して内閣に設置された災害連絡本部長としてどのような措置をされたが、御所見を承りたいと思います。
  222. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 被害の報告は十一月のものでありますが、総額として二千三百億円、そのうち公共事業関係が九百十八億余万円、それから農作物被害が五百六十一億余万円であるのであります。これは十一月五、六日の被害報告であるのであります。それで政府といたしましては、先刻も申し上げましたごとく十五号台風等災害連絡本部と申しますか、名が少し違うかも知れませんが、それを設けまして、各省の責任者を集めまして査定及び調整均衡をはかつてつたのでございます。その結果ただいま申し上げましたごとく、とりあえず各方面に金がいりますから、予備費から支出いたしまして、先刻申し上げました額だけきようまで支出いたしております。それからつなぎ資金といたしまして、いろいろな施設に対しまして相当つなぎ資金を出したのでございますし、また一面救農資金と申しますか、漁業資金と申しますか、そういう方面におきまして融資の道を講じまして、それも約三十億円ただいま立法措置をいたしまして、今回の国会に提出いたしておりますが、これらに対しまして、政府は損失補償、利子補給をするということをもつておつせんいたしまして、関係の金融機関を通じまして約百三十億円のわくを設定いたしましてそれを融通いたしたい、こう思つておるような次第でございます。  それからそういう立法措置、すなわち利子補給、損失補償の立法措置を講じなければなりませんがゆえに、法律は今回農林省関係において三つでありまして、すなわち昭和二十九年の台風及び冷害の被害農林業者に対する資金の融通に関する特別措置法案、それともう一つ漁業に関する同様な措置法案、それから北海道における国有林の払下げを被害町村に対して払い下げるという、これも立法措置を講ぜなければなりませんがゆえに、これも一つ。それから建設省方面においても出しておりますが、通産省方面において小企業の災害に対する資金融通に関する法律が出ております。それからもう一つ、中小企業信用保険法の特例に関する法律というものが出ておりまして、こういう法律によりまして利子補給、損失補償をいたすのでございます。  詳細は農林大臣、通産大臣がおられますがゆえに、そちらからお聞き願いたいと思います。
  223. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大蔵大臣にお伺いします。ただいま加藤国務相からのお話の数字と、この予算書に表われております数字が若干違うように思うです。この予算の説明書の三ページに、府県の申請額七百六十四億、各省査定見込額五百四十八億、こうあるのであります。ただいま加藤国務相は十一月五日ごろ現在で、総額が二千二百億余万円となつておる、そのうち農作物災害は五百六十一億、非公共災害が七百十三億、公共施設災害が九百二十一億でございますが、そうしますと、今度の災害復旧費といたしまして支出いたします政府計算の基礎となるべきこの基礎数字が違うように思いますが、いかがですか。
  224. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 予算の説明にも触れますので私からお答え申し上げます。七百六十億余りのことでございますが、これは被害報告と言いますより各県あるいは各省からの事業費としての補助金等について申請がありました数字でございまして、被害の報告額そのものはなでいわけであります。これは最近までの実績によりまして各省がお集めになりました数字をここに予算の上に掲げたわけであります。この七百六十億を各省の一応の査定で五百四十八億、私どもの今回の予算の積算に際しまして査定いたしましたところは五百十一億ということになつております。これはもちろん公共事業だけでございます。予算の編成のときに利用し得る限りの新しい数字をとつておるつもりでございます。
  225. 小平忠

    ○小平(忠)委員 問題は毎年この被害報告額、各県の申請額、これに対する大蔵省の査定の度合い等が非常に問題になるのでありますが、今年も対策本部が集計された数字あるいは大蔵省が査定した額これがそもそも私は問題であろうと思います。これらの数字的な論争は別といたしましても、本年の災害に対しまして政府は本予算補正に災害復旧事業費として六十九億、さらに予備費の支出見込みを約十八億程度考えておるのでありますが、この程度の災害の対策をもつて、本年は全体的に見て昨年より少かつたとはいうものの、局部的には実に深刻な被害を受けているこの災害に対して、政府はこの現状を打破できると一体お考えであるかないか。私はあえて具体的な問題を申し上げるわけではありませんけれども、北海道のごとき、被害は農作物について約四百億、その他の被害が四百四、五十億で、北海道全体の被害は八百億を突破するという、この総額について考えて見ますのに、おそらく北海道開道以来の大被害を受けておるのであります。一県において八百億ということは他県にも例のないことであります。この八百億の被害額総は、北海道全道民の総所得の三分の一以上に匹敵するというものでありますかう、いよいよ冬将軍を迎えた北海道の道民は食べるに食べ物がない、さらに家が倒れ、焼かれた者は着るものがない、深刻な様相を呈しておるのが現状であります。特に凶作農民の現状については、現に国会の裏に遂に昨日からすわり込みを始めております。緒方総理なり特に全国農民の父としてこれを真剣に考えなければならぬ農林大臣はあの姿をごらんになりましたか。農林大臣は先般北海道の災害地の現状をつぶさに視察されました。そして各地方にわれわれは超党派的に各党の代表をあげて農林大臣に随行したが、各地において農林大臣、あなたは何とおつしやつたか。決して見殺しにはしない、政府としてできるだけのことはしてやる。それに着たいを持つて来たけれども、依然としてすずめの涙ほどの予算案であつて政府はこれに対して何ら具体的な処置を講じない。遂にたまりかねてすわり込みを始めた。あのすわり込んでおる農民の代表は、決して思想的に過激な連中でもなければ何でもない。あの中には過去の選挙において自由党に協力をして来た人たちも中に入つておる。それほど問題は深刻であります。本予算案もいよいよ最終段階――本日はこれを審議して通過せしめるという段階に来ておるのであります。これに対して、もちろん現政局の情勢から見て、吉田内閣がもう風前のともし火で責任はないということについて、いろいろ議論がありましようけれども、私はやはり最後最後まで責任ある政治を行うことが、民主政治の真のあり方ではなかろうかと思うのであります。これに対して私は、緒方総理並びに所管大臣である農林大臣の所見を承つておきたいと思います。
  226. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 先刻私がここで二千二百億と言いましたのは、各地からの被害の報告でありまして、実際査定いたしますと、ただいま主計局長答弁した通りであります。それで北海道の惨状につきましては、私も親しく見て参りまして、御同情を申し上げるほかはないのであります。しかし、ここでわずか六十九億云々というお話がございましたけれども、これは本年度の予算でありまして、北海道のごときは公共の被害が少なうございます。これで北海道の方が必ずしも悪いというようなわけ合いにお思いになる必要はなかろうと思います。ことに冷害地における方面につきましては、農林大臣より詳細な御答弁があると思いますが、それぞれ資金の融通の道を講じてあるのであります。これも当然満足ということには参りませんが、ただいま申しましたごとく、それぞれ漁村及び農村に対しまして、金が必要でございますがゆえに、国有林の払下げのごときもこういう方法をとつたのでございまして、これが今回百三十億――もとより北海道だけではございませんが、国会を通過いたしますれば百三十億の資金の融通もできる道もあるのでございまして、決して冷酷無慈悲に見ておるということは断じてございませんで、これで満足は行きますまいが、相当な措置はとられることになると信ずるのでございます。
  227. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、加藤国務相は現閣僚の中でもきわめて良心的な方と思つてあえて追究しなかつたのですが、私が要求を申し上げないにもかかわらず答弁されたので、私はこの際承つておきますが、あなたは北海道にわざわざおいでなつた。そしてあの広汎な被害地域を四日間、そして帰つて来られたときに、われわれ各派の代表があなたのところへ伺つて、さらにすみやかにこの対策について処置をしてもらいたいということを申し上げたのに対して、あなたは、承知いたしました、しかし本年の災害は北海道が重点であり、北海道は非常に深刻であつた、しかし宮崎、愛媛、山口等、いわゆる九州、四国、中国地方にも被害があるから、その被害を見た上で処置したいと言つて、すぐ翌日立たれたのであります。立つときに、すぐ帰つて来て処置をすると言われた、ところがあなたは、向うの方に一体何日行つておられたのです。われわれは、深刻な問題であるので、あなたの帰りを待つて一日も早く処置をしてもらいたい、つなぎ融資の措置も講じてもらいたいと言つてつたのに、あなたは一体何日間行つておられたのでありますか、これに対して、その後つなぎ融資の問題につきましても何ら具体的に進まない。今雪が降りつつある北海道にあなたが再び行かれたら、ほんとうにびつくりするのではないかと私は思います。その点について、あえて追究はいたしませんが、どうぞひとつ大臣は最後まで、本年度の災害対策のための本部長として右終の美を収めていただきたいと思うのであります。
  228. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 私は北海道を六日間見て参りましたが、北海道を去るにあたりまして、道庁において大綱を発表いたして参つてそれを実行するということを申し上げました。もちろん立法措置は国会を開かねばできぬことでございますが、融資の問題などは、できるだけ大蔵省からそれぞれ関係の金融機関を通じて、こういう立法措置をするつもりである、おそらくこれは政府が提出すれば通過するものであるというので便宜をはかつてもらつたつもりでありまして、その後放任しておりません。北海道を去るときに、私の回答は十項目でありましたが、すでに大綱だけ発表してその実現に努力したのでございます。
  229. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 北海道の災害がありました後に、私は北海道に行く機会を打ちませんでしたけれども、私は一面北海道開発庁の長官を兼ねております関係もありまして、この災害の対策につきましては非常に深い関心を持つておるつもりであります。災害と同時に、第十五号台風災害対策本部というものを政府に設けまして、加藤国務大臣にその本部長になつてもらい、それ以来加藤国務大臣は非常な活動をしまして、その結果先ほど来お答えをしておるような一応の対策を仕上げたわけであります。もちろんこの補正予算では完全とは申せませんけれども、その点につきましては今後十分の努力をいたしたいと考えております。
  230. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は農林大臣に責任ある御答弁を願いたいと思います。と申しますのは、ひとつ真剣に聞いてもらいたいと思います。あそこにすわり込んでおる純真な農民代表を一体どうして納得せしめて帰すことができるかということをわれわれは真剣に考えておる、あなたは現に被害地を見て来られたのでありますから、これに対してどのようにお考えになつておるのか、その御決意のほどを私は承つておきたい。
  231. 保利茂

    ○保利国務大臣 今年の台風五号以来相次いでの数次の台風、並びに北海道、東北の冷害によりまして、農作物に相当の被害――ことに北海道、東北の一部におきましては激甚な冷害で被害を生じております。大体台風被害によりまして、水稲の損害は三百万石前後に達するのではないか。冷害による減収損害は約百五十万石内外に達するであろう。もつとも、昨年のあれだけの凶作で政府が支払いました農業共済の再保険金を調べますと、約二百億近くに達しておるわけでございますが、本年はその約半分程度で済むのではないか。これは全体として申し上げていいかと思います。それが農作物の大体の収穫状況を把握していただける数ではないかと存じております。北海道の、特に冷害によりまして農家の方々が非常な困難をきわめられておるという実情につきましては、小平君同様に私も拝見をいたしております。私どもとしましては、何といいましてもその日の生活をつないで行くということが第一である、これはもう食べることを保障するということが第一であると思う。従いまして、今日の衆議院の本会議でも御議決を願いました飯米の述べ払い並びに生産者価格で払い下げるぐらいのところで、政府所有の米麦を農家の方々に貸付するという措置、これは食べることの保障であります。さらにいかにして営農を維持し、次の生産を確保して参ろかということにつきましては、八十五億の限度をもつて利子補給、損失補償の融資措置を講ずることにいたしております。もとより大部分北海道にこれが振り向けられるということも当然のことでございます。さらに、まさに冬季を迎えて収入の道をはばまれる――二毛作地帯と違つて、単作地帯で雪をかぶつておる。米麦だけの保障をしても日々の生活を維持することはできない、従つて何らかの方途をもつてできるだけ現金収入の道を開かなければならぬ。それがいわゆる救農事業の考え方でございますが、もちろんこれには御不満があるかも存じません。しかしこの補正予算並びに予備費で計画をいたしております救農事業費の総額は二二億五千九百万円、このうち十九億四千八百万円は北海道に予定をいたして、内地は三億一千百万円という状態でございます。もちろん内地におきましても青森、岩手の一部あるいは開拓地帯、あるいは昨日もお話がございました宮崎県等の激甚な災害地帯もございますけれども、他に現金収入の方途のある地帯とそうでない地帯とあるわけでございますから、この主力として北海道に向けて、できるだけひとつ現金収入の道をはかつて行きたいということで、この計画を立てておるわけでございます。さらに北海道につきましては、昨日も申し上げましたように風倒木の処理と申しますか、国有林の保全を全ういたして参りますために、おびただしい風倒木をどうしても片づけなければならぬ。これは北海道特有のもので、燃料であるまきをつくることに役立つて行くのではないか、これは予算上も法律上も何ら措置はいたしておりませんけれども、行政上の措置としまして、その付近の町村には大きく寄与し得るのではないか、また寄与するように処置いたして行きたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  232. 西村久之

    西村(久)委員長代理 この際政府の方にも質疑者の方にも御注意申し上げておきます、時間に限度がありますから、要点について簡潔に御答弁を願いますように……。
  233. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大蔵大臣にお伺いをいたしますが、国家予算の処理物件費、施設費というものの中には、事業費というようなものが入るというお考えでありましようか。公共事業費は施設費というものと全然であるか、これはどのように扱つておられるのでありますか。
  234. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 公共事業費のうち物件費、施設費等わけていろいろ区別しておるものもございます。従いまして、公共事業費は大体一割と見たのが原則でありますけれども、大体物件費、施設費は、私ども価格その他の関係から見て一割くらい下つているものが相当あるように思いますので、あれで事業量そのものに何ら関係がない、こういうふうに見ておるのでありますが、仕事の量にさしつかえるものにつきましては、幾分元へいわゆる復帰を認めておるものもございます。
  235. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私はそこまでお伺いしたのではないけれども、大蔵大臣は私がこれから伺いしようと思ったところまで言われたからお尋ねいたします。実はこの説明書にもございますように、政府は本年六月一日の閣議で、物件費、施設費等について一律に予算額の一〇%を節約しようということにきめて、大蔵省が作業をいたしております。それは作業いたすだけでなく、一割天引でこの事業費を渡さない――緒方総理にお伺いいたしますが、政府国会というものをほんとうに尊重しているのかどうか、国会を通過した予算を行政府たる政府がかつてに削つて、これだけしか使つちやいかぬというような権限があるのですか。
  236. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは予算の執行に伴いまして、大蔵省の見通しとして、物価の値下り等で事業量を減さずに約一割の節約ができるということで、一兆予算を厳守いたします上から、事業量にさしつかえのない分をできるだけ節約いたしまして――毎年の例として、あるおそれのあることを予想し、災害に備えて、先般実行予算の際に一割の節約をしたのであります。
  237. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 国会できめられた予算につきましてはもちろん厳守しなければなりませんが、しかし政府の方では予算の限度内でそれを全部使わなければならぬということになつて、予算を若干収縮することは何らさしつかえないことであります。すなわち、物価が下つて来たらいろいろなことにその予算を最も効率的に使うことは行政者に課せられた使命でありまして、物価が下つて来ておるにもかかわらず、そのままの高い値段で買わなければならぬということはさらにないのであつて、そういうことは内閣として努めてやらなければならぬことであります。しかしこれは予算を変更したのではなくて、政府が支出についてそういつたことをやつたのであります。従つて、予算面は何ら変更しておりません。それら繰越しているものは合せて今度の歳出に充てることにいたしましたから、そこで今回国会に提出して、皆様の御審議をお願いしているわけであります。そういう次第ですから何ら国会の権限に触れるものでないことは、これは小平さんよくおわかり願えることと思います。
  238. 小平忠

    ○小平(忠)委員 わかりません、それは。それはあなたの詭弁です。物価が下つて現に結果として予算が余つたというのならばいざ知らず、六月一日は予算が両院を通過して実施した直後であります。まだ予算の完全なる配分もしていない六月一日にすでに削減するという、これは国権の最高機関たる立法府を行政府が軽視していることだと私は思う。これは断じて許されないことであると思う。同時に問題は、公共事業費、さらに食糧増産費についても一律に一割の削減を行つていることである。特に食糧増産はわが国自立経済達成の上からも、国民生活安定の上からも党派を越えて本気になつて取組んでいる問題であります。昨年の十二月十五日本院において、各党派の党派を越えた食糧増産並びに主食改善に関する決議案が、佐藤榮作以下各党の委員を並べて提案された。この食糧増産並びに主食改善に関する決議案は全会一致をもつて衆議院を通過いたしました。その際緒方総理は特に発言を求められて、政府を代表してあなたは何と答弁されましたか。速記録に出ております。ただいま可決された決議案は、まことに現下のわが国の食糧問題解決の上からもきわめて時宜を得た決議案であります。政府はその決議案の趣旨にのつとつて、明三十年度の予算編成にあたつては、この食糧増産費の獲得のために、さらに粉食奨励の見地からも、昨年に倍するところの予算を獲得いたしたいと、あなたは切々答弁された。ところが二十九年度の予算の第一次の大蔵省の査定を見ると、この食糧増産費は前年度よりも減らされているではないか。国会審議を通じて若干の予算が増額された。ところがまたそれを削るという。私は吉田内閣の食糧増産に対する考え方は、常に国会を通じあるいは選挙を通じて言つていることと行つていることとは逆行していると思う。特に今度は一割削減を指令をいたしておいて、さあ今度は冷害で、災害だ、その財源をどこに求めるかということになつて、結局農林大臣の答弁をされた救農土木事業費についても、その一割削減から復活した分を、今度救農土木事業費にまわすのだという。私はこの考え方は、依然としてこの食糧問題解決のかぎを握るところの土地改良、開拓の問題、これらと真剣に取組んでいるとは考えられない。今大蔵大臣が、国会を軽視しないのだ、物価の値下りによつて――必ずしも予算は全部使つてしまうとは限つたものではない。これはわかりますけれども、六月一日といえば第十九国会の会期中であります。会期中閣議がこういうことをきめて予算を削るなんということは、これはもう国会の自主性というものを根本的に行政府が踏みにじるものだと私は思う。これはどうですか、もちろんこういう案を上程されたのは大蔵大臣として大きな責任があると思うが、大蔵大臣の責任ある御答弁を願います。
  239. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 予算を変更したならばこれは国会の承認が必要です。しかしこれは予算の変更ではないので、こうやつて政府が一連の政策をやる結果、物価その他が下つて行くのであるから、そこでこういう費用を効率的にやるためにやつているのであつて、予算を変更したものではない。予算の変更なら必ず国会の同意がいるのでありますから、国会の同意を得ずして変更するものではありません。そこで今回予算の変更を要するから国会の御審議を願つている次第でありまして、繰返して申しますが、予算の歳出権を得たからといつて内閣としてその金額を全部使わなければならないことはございませんので、どれだけこれを内輪にするかということは、そのときどきの状況によつて何らさしつかえない。また過去においてもすべてこれはやつて来たことであります、しかし予算を変更するとしますれば、それは皆さんの御協賛がいるので、今度はこの予算の変更が必要になつて参りましたから御審議をお願いしておるわけです。
  240. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大蔵大臣はいかに答弁されようとも、あなたは結果的に物価が下つて予算が余つたというのならば、これはそういう見通しがつき、今回のごとき災害やその他のために予算補正をするという際に、それをするのはあたりまえだけれども、私の申し上げているのは、すでに三月三十一日に前年度が終つて新年度が四月一日から始まり、それから二月経過した六月一日に、まだ新年度の予算を全部配分を終つていないその段階において、政府がかつてにもう一割は使つてはいかぬぞといつて配分をしないという行き方は、これはいかぬと私は言つている。これはいかぬ。これはもう従来大蔵省の非常に悪い癖です。そういう前例を残すからいけない。かつてにもう天引をやつてしまつて、そうして各省には予算の一割削減のために大きな作業を行わせ、このために及ぼすところの能率のむだ、これはかりしれないものがあろうと思うのであります。こんな問答をしておると時間がなくなりますから私はやめますが、あくまでも私はこういうことは断じて許されないと思う。特にこの問題については、食糧増産のためにあれほどしのぎを削つて増額したものを、今度さらにそれを減らすということは、緒方総理も、昨年の十二年十五日あなたが本院の本会議答弁された心境から考えてみると、ほんとうに責任をお感じになつておられると思います。
  241. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ちよつと小平さん。誤解があつてはいけないから一言つけ加えておきます、あれは御承知のごとくに、この予算を編成するのは去年の九月か十月ごろの物価で編成するのであります。その物価、賃金がその後値下りして来ておる。閣議できめたのは、六月一日の三党共同修正があつて変更せざるを得ない事情が起つてつたので、たしか六月二十八日、九日ごろの閣議と記憶しておりますが、六月末の閣議で初めて決定したのであります。従つてその時分には、物価がもり相当値下りを見ておるのと、また請負価格その他で、小平さんもお調べになればよくわかるが、現実に物価が下つて来ているから、従つて何らそういうことではなく、さつきから繰返して申すようですが、予算の変更ではない。だからどうしてもやれないものについては解除しておるのです。そういう次第だから、これは押問答をあえていたしませんが、私は何ら違反するものにあらずということをかたく申し上げておく。また従来もすべてそういうしきたりであります。
  242. 小平忠

    ○小平(忠)委員 違います。大蔵大臣がいかようにそういう詭弁を弄されても、昨年のいわゆる予算の編成期に、一年前の物価によつてつたのだから、値下りがあつたから変更するというのは、六月の段階でやるべき作業じやないのです。そういうことを見越して、物価が下ればなおそれだけ事業量を多くして使えというのが私が真のあり方だと思いますが、この論争はやめます。  私は最後緒方北海道開発庁長官にお伺いをいたしたいと思いますが、緒方さんは副総理というきわめて要職にありながら、日本の経済自立達成の上からも大きな役割を持つ北海道の開発庁長という要職を兼ねておられる。特にこの問題については、最近あなたが、北海道の開発庁は現在予算の編成にやるけれども、実施については何らの権限も持つていない、だから予算の編成を、したものを今度実施するについては、各省にこれを移しがえをして各省大臣がばらばらな実施をするようじやいかぬから、どうしても北海道のあの眠れる資源を開発して、何とか日本の経済自立達成のためにも大きな役割を果してもらわなければならぬというよう意味合いにおいて、北海道開発庁の実施官庁化について、あなたが非常に御努力をされたことを私は承つております。このことについて私は、十月の末ごろ、十一月の初旬には閣議の決定をしてこれを実施する、その準備に近くかかるということを承つてつたのでありますが、最近依然としてそのことが具体的に現われていない。これについていかようなことになつておるのか、その経過を今後の本件に対する考え方について、あなたの御所信を承つておきい。
  243. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 国土の大半を失い人口は年に百二十万も増殖するという戦後の日本の状態にかんがみまして、北海道の開発というのは、食糧増産の上からもあるいは人口問題の処理からも、非常な重要性を加えて来たことは御承知の通りであります。そこで政府は十九国会の初めにあたりまして、総理大臣の施政方針演説中にも、北海道開発というもに対して、もつともつと国の関心を注がなければならというこを宣明したのであります。爾来北海道に対しましては政府としても特別の関心を持ち続けて参つたのであります。その際今御指摘になりました北海道開発庁というものが、現在の法制上の機構ではどうもおもしろくない。現在の法制上の建前といたしましては、開発庁は、開発計画の策定はいたしますけれども、現地機関の監督指導ということはやる権限を持つていない。これは明らかに変則でありますので、これを一つの実施機関にしたいということで、先般来関係各省との間に折衝を続けております。事務折衝はすでに終つたのでありますが、なお調整を要する問題がありまして、その際に、臨時国会等があつて少し遅れておりますけれども、最初の計画通りに進めたい気持でおります。
  244. 小平忠

    ○小平(忠)委員 この問題に関してまして、あなたの御努力については実は敬意を表します。しかしこれは少くともあなたが副総理という立場からも北海道開発庁長官を兼任されておつて、この実施官庁にせねば北海道の開発はだめだと深い確信を持たれて、先般われわれ北海道の各派の議員にもあなたはそのことを言明され、北海道開審議会の席上においてもあなたはそれを言明された。決心されて立ち上ったわけであります。立ち上つたからには、関係各省の了解は、それぞれの立場から当然了解を得られて、これをすみやかに実現してもらうということが適切であろうと私は思う。ところがこれに対してどうも各省の事次務官以下の事務当局が反対をするから――私はいつまでも各省がこのセクト主義をとつておるようなことであるならば、決して北海道の開発はできないと思う。これはやはり五年なり十年、少くとも大規模な北海道の開発事業というものは、一応一人の大臣が責任を持つて総合的に実施をするというのでなければ、予算の編成にあたつても、さあ北海道だ、内地だといつて予算のぶんどり合いが始まつて、あの広大な地域にほんとうにわずかな予算をつけたつて、それはむだが多くて、とうてい意のごとく進まないと思う。ですから、あなたは、結局今野党各派が不信任案を出す日がもう二両日後に迫つておる、こういう段階において近くとると言つても、あなたはとれなくなるかもしれぬ、これだけはおれの責任においてやるとあなたはおつしやつたのだから、ほんとうは私たちは実はあなたに期待しておつたわけです。ところが、このことはおそらく、私ははつきり申し上げてもう時間切れで、あなたの手によつてはなかなか困難ではなかろうかと思うけれども、このことをほんとうに真剣に考えて、吉田内閣がこの北海道開発に対するところの最後の有終の美を収めていただけるならば、われわれは党派とかそういうことを超越いたしまして期待申し上げるわけであります。  時間が参りましたから、私の質問はこれで終りますが、どうぞこの補正予算の編成に当つた政府関係閣僚が、特に大蔵大臣が、私は遺憾に思いますことは、この予算案について真剣に内容を検討するのに、現在の非常に行き詰まつた深刻な災害に対するこの対策も、あるいは年末を控えて全国的に低賃金と低米価に悩むところの労働者、農民の現状を何ら考慮していない。年末手当の問題も、あるいは公務員のいわゆるベース・アップの問題も、あるいは失業対策についても、これらの問題がこの予算に何ら加味されていない。こんな予算でもって、吉田内閣が大きな顔をして選挙戦にまみえたつて、断じて国民の審判を受けます。私は一言警告を発しまして、私の質問を終ります。
  245. 西村久之

    西村(久)委員長代理 黒田寿男君。
  246. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は本日は吉田総理大臣最後質問をしたいと思つておりました。そうして今回の質問は、おわかれの質問になるのでありますから、特に吉田総理敬意を表し、質問事項につきましても、吉田総理の専門とされております外交問題を選んで、私どもの考え方を明らかにしながら、外交政策の転換の必要ということを中心テーマとして質問を展開したいと思つておりました。しかしながら吉田総理はさよう出席にならないので、はなはだ遺憾に存じます。やむを得ないので、緒方総理中心として質問をいたしたいと思います。しかしながら、吉田総理の代理という意味での緒方総理への質問ではありません。緒方総理それ御自身に対して質問をいたします。質問のテーマも、従つて急に変更したのであります。現内閣の将来に向つての存続期間は、総辞職によるにせよ、不信任案通過後解散という過程をとるにせよ、いずれにいたしましても、最近のうちに一応終了するのでありますから、この際国政の基本問題について質問することは、時期として妥当でないと考えます。これに反し、当面の政局に関する現内閣の出処進退いかんという問題になりますと、これは民主主義に大きな影響を持つ問題でありまして、私どもも当面最大の関心を持つておる問題であります。そこで質問時間がきわめて限定されているということをも考慮に入れまして、今日は私の質問の範囲をこの問題に限定して、民主主義擁護という見地から若干の質問をしてみたいと思います。  私はきようは何人にも争う余地のないような事実を立論の基礎として質問したいと思います。吉田内閣政治が悪かつたとか、汚職事件がどうであるとか、指揮権の発動がどうとかというような問題は、きようは私は取上げません。このことにつきましては、先日来各党各派諸君が痛烈な議論を展開されましたから、これを繰返す必要はないと思いますし、また政治のよしあしというような問題になりますと、階級的基盤の相違や、倫理感党のずれや、その他の主観的な要素が価値判断の中にまじつて参りまして、結局見解の相違というようなところで、けんかわかれになつてしまう、吉田総理は人気がないからやめよと言いますと、総理は、いや、まだやつてくれと激励する者があるというようなわけで、こういうことになつては問題の帰結がつかないのであります。私は、このようなところに議論が落ちて行くことを避けたいと思います。きようは、従つて吉田内閣の功罪というようなものを立論の基礎にすることをやめまして、何人も認めないわけには行かない客観的な事実から私の議論を出発させてみたいと思います。  今日政局を混迷に導いております原因は一、二にとどまりませんが、その最大なるものは何であるか。こう考えてみますと、吉田首相自由党総裁の地位を引退し、緒方総理を後任に推薦しながら、問題をここまで発展させて来たまでで、ここでストップさせておる。いつ引退するかについては具体的にはつきりさせていないということがその一つであると思います。それからいま一つは、政党総裁の地位をしりぞく決意を公表しながら、これと一体の関係において終始さるべき総理大臣の地位からの引退ということにつきましては、何らの意思表示もしていないということ、このはつきりしない態度政局を混迷に導いておる大きな原因であると私は思います。この点について緒方総理はどういうような御感想を持つておいでになりますか、ちよつとこれを聞いておきたい。
  247. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 吉田総理総裁を適当な時期に引退をする、吉田総裁後継者として私を推薦したということは、私は何らさしつかえないことでありまして、これは政党の内事であると考えます。政党の生命が永久であります以上次の総裁をあらかじめきめておくということは、たとえば内閣が将来に備えましてシヤドウ・キヤビネツトをつくると同じよう意味におきまして一向さしつかえない。これはしかも総裁自分指名したのではなく、党の総意を問うて、党議によつてそういう推薦が行われたということは、私は政党の中の行事といたしましては少しもさしつかえないことだと考えております。
  248. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつとついでにお尋ねいたしますが、吉田総裁から緒方総裁への総裁の譲渡の意思表示の関係は、しかしたとえばイギリスのチヤーチルがイーデン外務大臣をあとめにする、こういうよう意思を表明しておる関係とは私は違うと思う。どこが違うかと申しますと、交代の時期の到来が比較的に早いか、おそいかという点が違う。こういう違いがある。吉田緒方さんの関係にはチヤーチル、イーデンとの関係とこういう違いがあるのではないか、これは問題であると思います。この点をお聞きします。
  249. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは私は見方だと思いますが、チヤーチルがイーデンを自分後継とするというその選定の仕方が、どういう過程を経たか私は十分承知しておりません。しかしながらこれも将来ある機会にチヤーチルが政界を引退する。あるいは保守党のリーダーシツプを手放すという予想に基きまして、イーデンを自分後継者にしたのでありまして、その点は考え方によりますが、私の考えるところでは違つていないと思います。
  250. 黒田寿男

    ○黒田委員 意見の相違になりますからこの点についてはこれで打切つて質問を進めます。私は今私の申しましたことが大きな混迷の原因になつておると思う。  すなわち、吉田首相の心の中で考えおいでになるところを、それがまだ総理の心の中に隠されている間に、それを外からあれこれと推論する、それ以上にはその正体をつかむことができない、そのようなつかみどころのない部分までを多くの人が判断の材料の中に加えて、そのようなやり方で政局に対する一定の結論を出そうとしておりますから、私は万人に納得の行くような議論がなかなか出て来ないのだと思います。材料それ自身がこんとんとしているのでありますから結論がはつきりと出て来るわけはない。私はこういう方法は避けたいと思います。吉田総理大臣の心の中にあるもののうち、現在までに外部にはつきりと現われたものだけをとらえて、これに基いて議論を進めて行けば確実な議論ができると思いますし、また私はそれだけの材料で政局に関する民主主義的結論を出すに十分であると考えております。それでは、一体はつきりおるものは何か、こう考えてみなければなりません。  第一に、吉田首相自由党総裁の地位を近い将来引退して後任総裁として緒方総理を推薦され、自由党はこれを正式に認めたということ、これは、私は、争う余地のない既成事実であると思います。  第二に、このことから確実に推論できますことは、次回の内閣総理大臣指名における自由党の首班候補者はもはや吉田茂氏ではない、緒方竹虎氏であるということ、これも私は何人も認めなければならぬというところであると考えます。  それから第三に、吉田内閣が総辞職するか、または不信任案を受けた後、衆議院を解散するか、いずれにいたしましてもその時期はきわめて近い将来に迫つているということ、これも常識上何人も疑わないところであります。このことは何を意味するかと申しますと、吉田総理の在任の期間がきわめて近い将来に終る、こういうことを意味しておると思います。  そこで以上の三つの事実に基きまして、どういう変化が政界において起つておるかということを私は考えてみた。それは吉田総理大臣総理大臣としての存在価値に大きな変化が起つておる、こういうことであります。総理大臣としての存在価値が今や積極的意義を失つておる。吉田総理の存在価値に大きな変化が起つておるということであります。もう少し詳しく申しますと、吉田総理大臣総理大臣としの現在における価値は、将来も国政を担当するという積極的な任務を持つということから生ずる存在価値ではありません。こういうことができると思います。なぜならば吉田総理は将来再び首班指名選挙には立候補をしない人であるということがすでに確定的であるからであります。この吉田総理の存在価値の変化、これは緒方総理は、お認めになりますかどうですか。私どもは客観的に見て、もはやこれだけの価値の変化が生じておる、こう思いますが、念のためにお伺いしておきます。
  251. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 存在価値に対する価値の評価につきましては、これはいろいろお考えがあろうと思います。現在総理大臣として国務の全責任に当つておるということは私は少しも違いはないと思います。
  252. 黒田寿男

    ○黒田委員 これも認識の相違であります。議論を進めて行きたいと思いますが、私は客観的に見て、吉田総理大臣の存在価値がかわつて来た、こう思います。それでは、吉田総理の存在価値はもはや失われてしまておるかといえば、そこまではまだ行つていないと思います。総裁総理大臣とは一体でなければならない。これが私は民主主義の原則であると思います。従つて両者の価値も均衡を保つておるべきであると私どもは考える。今日吉田氏は自由党総裁を近く引退することが明らかになりまして、その総裁の位置はやがて引退する総裁という段階にまで下つております。それによつて総裁としての価値も下つておる、こう私は思う。他方、総理大臣としての地位はどうであるか。総理大臣としての地位の重さ、その価値の標準も、総裁の地位の水準が下つたことと均衡を保ちながらその価値が下つておる、私はこういうふうに考える。これは総裁総理二者一体、両者均衡の原則からの当然の帰結であると思います。すなわち総理大臣の地位がやがてやめ総理大臣という地位に下つたので、それだけ総理大臣の存在価値も下つたのである。私はこういうよう考える。しかしまだやめてしまつたのではありませんから、さきに指摘いたしましたような、積極的意義を内容とする価値こそ失つてはおりますけれども、まだ今日でも多少の存在価値がある。しかしここに私は問題があると思う。しからばその存在価値の内容は何か、これが私は問題となると思います。少し自由党諸君に対して遠慮のないことを申させていただきたいと思います。自由党は現在の政情のもとで解散権を自己に有利に利用するためには、自分の党の出身者たる総理大臣を持つていることが都合がよい、こう考えておられるでしよう自由党としては一応そう考えてもふしぎはないと私は思う。総理大臣解散権持つておりますから、総理大臣の持つているこの解散権を自党に有利なように利用するために、吉田氏を今まで通り総理大臣の地位にとどめておく、ここに吉田の利用価値がある。吉田総理が現職にとどまつていることの価値はこれでありますが、またこれだけのことであると私は思います。どうでありますか。冷静に、客観的に見て、私は吉田総理の価値は、自由党から見ましてもこのようなものに落ちぶれておると思います。これについてどうお考えになるか質問してもよろしいけれども、時間もございませんし、またお答えの内容は大体想像がつきますから、お答え願わないことにいたします。私は、今、吉田総理の存在価値と言いましたが、これは吉田氏の場合についてだけ、言えることではありません。もし緒方氏が現在の吉田氏のような地位にあつて吉田氏のよう不明朗な、中途半端な、いわゆる謀略的態度をとれば、緒方氏の総理としての価値についても同様なことが起ると思うのであります、これは緒方氏でなくて、Aという人物であつてもよろしい。Bという人物であつても、Cという人物であつても同様なことが私は言えると思う。すなわちだれが総裁であり、総理大臣であつても、現在吉田総理吉田総裁のとつておりますような不明朗な態度をとれば、私の今申しましたような価値変化が起る、私はこういうふうに考えます。これを前提といたしまして、私は次の質問に移りたいと思います。  第一に、総選挙後の首班指名には立候補しない人物――私は吉田総理はそだと思います。これは私は確定的に言えると思う。総選挙後の首班指名には立候補しない人物が自分の手で解散を行うということは、民主主義に反する暴挙ではないかと私は思う。このようなことをすることが民主主義政治のもとで許されていいものであろうかどうか、私は許されないと思う。この点を私は質問したいと思うのですが、お答えをいただく前にちよつと私見の意見を申し上げておきます。なぜ私はこれを言うか。民主主義は責任政治であります。内閣不信任を受けました後に内閣が衆議院を解散するのは、自分政治考え方と反対党考え方とが衝突いたしましたときに、そのいずれが正しいかということを国民判断に問うためであります。しかるに、自分政治のやり方についての批判を国民に問うておきながら、選挙が済んだときには、自分はもはや責任の地位にはない、総理に立候補しない、首班候補に立候補しないということはこのことである。自分は責任の地位にない、こういう無責任きわまることはないと私は思う。吉田総理についてこれが起ろうとしておるのであります。民主主義政治は責任を重んずる政治でありますから、責任を重んじないやり方は、すなわち民主主義に反するといわなければならぬ。吉田総理の手で衆議院を解散するということは、私はこの場合に該当すると思う。これは民主主義擁護、議会政治の擁護という立場からは断じて許さるべき行為ではないと思います。緒方総理はこれに対してどういうようにお考えになりますか、ちよつとお伺いしてみたい。
  253. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政局が緊迫しておることは認めますが、不信任案が通過した場合に衆議院を解散するかどうかということにつきましては、まだ何もきめておりません。それは一昨日来総理大臣がここでお答えをした通りであります。かりに解散をいたすといたしまして、それが憲法上の非常な暴挙であるというお説でありますが、これは現在総理大臣の職にある限り、しかしてそれが政党の首領であり、政党意見を代表した総理大臣である限り、その責任をとつて解散するということは私は何らさしつかえないことと考えます。
  254. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいまの緒方総理の御議論は、吉田総理が引続いて総裁の地位についておられ、そしてまた総理大臣の地位についておられて解散を断行される場合のことです。そうであれば、事態ははつきりしておりますので、私はこういう疑問を起さないのであります。けれども、先ほど申しましたよう吉田総理総裁及び総理としての地位に変化が生じておりまして、選挙があつたあとに責任の地位に立つというその条件がないのに、吉田総理の手によつて解散するということは、私は民主主義の冒涜であるということを申し上げておるのであります。緒方総理は将来のことについてはおつしやらないで、現在のことだけについておつしやいました。私は副総理の御議論には承服することはできない。しかしもう一度御答弁を求めることはやめましよう。  いま一つ念のためにお尋ねしてみたいと思います。こういうよう解散権を利用するために総理大臣の地位を利用する。私は吉田さんが今度解散すれば、どうもそれよりほかには考えられない。そうなれば、総理大臣の地位の悪用であり、濫用でありまして、これは私は民主主義政治のもとで断じて容認することのできないところであると考えます。どうでありましようか。私の申しました吉田総理大臣の地位の変化ということを頭に置いて御判断願えれば、ただいまの御回答では私は不満足である。もう一度御回答願いたいと思います。
  255. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ちよつと今の質問の初めのところを聞き落しましたが、もう一ぺん……。
  256. 黒田寿男

    ○黒田委員 解散権を利用するために総理大臣を利用する。今吉田総理不信任案を受けて立つて解散すれば、私は客観的に見てこうなると思う。こういうことをすることは、総理大臣の地位の濫用であり、悪用である。法律上はできるかもわかりませんけれども、政治的に見て、私は総理大臣の地位の濫用であり、悪用であると思う。憲法は総理大臣の権限をこういうところまで拡張してはいないと思います。これは民主主義のもとで断じて容認できぬところであると思いますが、いかがでありますか。
  257. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 解散権を利用するために今度のよう態度をとつておるというのは、これはあなたの御想像でありまして、そういう形で総裁後継をきめたわけじやございません。
  258. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうも御答弁は私の質問に対する御答弁となつていないと思います。これはおそらくお答えできないのではないかと私は思います。私は間違つた議論をしておるとは思わない。しかし時間もございませんので、次にいま一つ問題を提起してみたいと思います。総理大臣の地位が悪用されはすまいかと考えられることがいま一つあると私は思います。吉田総理が党の総裁引退されるということを意思表示されたことは、先ほど申しましたように、将来総理大臣指名選挙に立候補することを断念したということを意味するのであります。そういたしますと、吉田総理大臣の御性格から判断いたしまして、かつまた相当な老齢でおありになるというようなことをあわせて考えてみまして、ここで吉田氏が政党総裁をもやめ、また将来も一度総理大臣になることも断念するというようなことになつて、なおかつ政界の現役にとどまるかどうかという疑問が私どもには起つて来る。もしただそれだけのことを推論するだけなら、よけいな心配かもわかりません。しかし、解散でもありましたときに、あるいは総辞職でもされました機会に、政界の現役を引退するのではないかということは、これは自由党の幹部諸君の折々のお話の中にも出ておるように私ども思う。こういうことを聞かなければ問題はないのでありますけれども、聞かされておりますから疑問が起る。たとえば大野伴睦氏が、吉田総理は元老ないし元老的地位につく、こう言われておる。このごろ元老などということを言われるのは、はなはだ時代錯誤であると思いますが、そのことを私はここで論じようとは思いません。ただこのことは、吉田総理が現役を引くという意味を少くとも含んでおると私は思います。それからまた現役を引くということだけでありますならば、これも他人のことでありますから、私ども何ら干渉したり問題にする必要はないと思いますが、しかしもしも総理大臣の地位を利用して解散しておいて、自分は政界を引退する目的で立候補しない、万一こういうことが起つたらどうするかという問題があるのであります。しかしこれは仮定論でありまして、このようなことを論ずるのは早いとおつしやるかもわかりませんが、しかし総理大臣の気性、気質からして私どもはこのよう事態の発生の可能性なしとしないから、一応ここで問題としてみたいと思う。そしてまたこの問題は、その性質といたしまして、それが実際に起つてから論じたのでは時期がおそいのでありますから、今あらかじめ論じておきたいと思うのであります。そういう意味において、私は仮定論ではありますけれどもこのことについて御質問申し上げてみます。これは少し法律論になりますので、佐藤法制局長官に御答弁つてもけつこうであります。  私はまず第一に、もしこのようなことが起るとすれば、吉田総理大臣総理大臣の地位を失格するのではないかと思うのであります。辞職を待たずして法律上当然に総理大臣を失格するという事態が起るのではないかと思う。元来総理大臣国会議員の中から指名するということになつております。これは私が申すまでもなく、国会議員たることが総理大臣たるの不可欠の要件であります。ただそれが総理大臣に就任するときの要件だけで、在任の要件ではないのか、それとも在任の要件でもあるかどうかということにつきましては、学者の間に必ずしも議論がないことはないと思いますけれども、私は現在の日本国憲法において定められておる内閣制度、すなわち議院内閣制の精神にかんがみまして、国会議員であるということは総理大臣の在任中の要件でもあると思つております。ただ衆議院が解散されますと、私どものような平議員も、吉田さんのよう総理大臣である国会議員も、ともに国会議員たる身分を喪失するのであります。しかしこの場合は、憲法の他の規定によりまして、内閣は総選挙後も国会の召集のあるときまでは存続するという意味のことが定められておりますから、解散によつて国会議員たる身分を失つたからという理由だけでは、私は総理大臣の地位は失われないと思います。しかしながら総選挙に万一立候補されなかつたらどうなるか、あるいは立候補しても落選したような場合にはどうなるかということは、これはまた別個に考えなければならぬ問題であると思います。立候補した場合は、今こそ解散によつて衆議院議員たる身分を失つておりますけれども、将来国会議員たる身分を回復する可能性がある。そこで解散によつて国会議員たる身分を失つても、それは絶対的な国会議員の身分の喪失ではない、相対的な喪失とでも申しますか、あるいは潜在的国会議員とでも言つてよろしいと私は思います。しかしながら立候補しなかつたというような場合には、立候補しても落選したという場合と同様に、絶対的に国会議員の身分を喪失します。これによつて過去の国会議員であつたその人物と、国会との将来の関係は確定的に断絶させられてしまうのでありますから、こういう事態が生じたときには、私は辞職するということによつてはなくして、法律の規定の上から当然に総理大臣の地位を失うことになると思います。こういうことは吉田さんというような人物が日本にいなければ、考えてみなければならぬようなことは起らないと思いますけれども、どうも吉田さんはいろいろ難問を提起されて、普通ならば考えてみなくてもいいようなす問題を考えてみなければならぬようなことになる。私は今回の場合もその一つだと思うのでありますが、佐藤法制局長官、どういうようにお考えになりましようか。
  259. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 どうも私のお答えすべきところの大部分を教えていただいたような形でございますが、私の考えで筋をたどつて参りますと、先ほどのお言葉にもございましたけれどもも、大体解散によつて衆議院議員は全部その地位を失つてしまう。そうすると内閣総理大臣といえども衆議院議員ではなくなる。衆議院議員でない総理大臣というものが認められるかどうかというところから始まるわけでございますが、これは先ほどお言葉にもありました通りに、ほとんどすべての学者が、これは憲法の七十一条もあるし、かたがた許されておる事柄である、すなわち議員でなくても総理大臣の地位にあり得るものである。これはもう問題ないことと思います。そこでそういう点から申しますと、先ほど潜在的とかあるいは絶対的とかいうお言葉がございましたけれども、法律の頭から申しますと、実はこれは絶対的なことなのでありまして、その人が立候補するかしないかというようなことは先の問題になるわけでありますから、要するに新しい国会が召集されるまでの間の総理大臣の地位というものは、立候補しようがしまいが法律的には絶対的にその地位が認められておるということになると存じます。  それからもう一つ、先ほど来のお言葉で、ちよつと私ふに落ちませんのは、解散というものを吉田というある総理大臣がやるというようなことを前提にしてお考えをいただきますと、先ほどのような議論がいろいろ出て来ると思いますけれども、私どもの頭から申しますと、解散というものは申すまでもなく内閣の助言と承認によつて天皇が行われることでありまして、表に出て来るのはあくまでも内閣でございますから、吉田個人総理大臣であつたその内閣――その吉田さんが解散をするとかしないとかいうことは、法律の表からは実は出て来ない問題ではないかと思うのであります。
  260. 黒田寿男

    ○黒田委員 むろん佐藤さんのお言葉最後の部分についてはその通りであると思います。ただ普通一般に吉田解散すると言つておりますから私もその言葉を使うただけです。しかしそれはそれとして、佐藤さんは私の質問に対してお答えをまだしてくださつてはいないのではないかと思うのであります。内閣解散する。それでよろしい。むろん法制上はそうでありましよう。しかしその意思決定の中心になるのはやはり吉田さんだと思うのであります。吉田さんが総理大臣であるその内閣が、助言いたしまして、形式上は天皇の名で解散するといたしましても、常識上は吉田内閣解散をした、吉田解散をしたと言うことになるのですが、そういう事態が起りましたときに、吉田総理大臣がそういう解散状態を発生させておきながら、なおかつ自分は立候補しなかつたというときには、辞職によつてではなくて、立候補しなかつたというそのことから、かりに吉田さんが立候補して落選した場合と同じように――そのときも私は同じだと思いますが、そのことから総理大臣の地位は法律上当然に失われるということになる、こういう事態が起りはしないか、こういう私の見方に対しての御見解を承りたいと思う。これに対するお答えがなかつたと思います。
  261. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 実はその先の問題は、法律屋のなわ張りからはちよつと政治的にはずれた問題ではないかと思いますけれども、百歩譲りまして――恐縮でございますけれども、私の立場から議つて考えますと、まだそこに吉田それがしが出て来るのは早いので、もう一つこの内閣というものの裏ににそんでおりますところ、基盤になつている自由党なら自由党、その党がそこの裏づけなつて出ておる。解散の結果国民の輿論を問うと申しますが、それは吉田さんがいいか悪いかという問題でなしに、今の内閣のやつている政策がいいか悪いか、ひいてはその裏になつている自由党の政策がいいか悪いかということによつて、おそらく自由党議員さんがよけい出て来る、他の政党の方々がよけい出て来るという問題になるのでありまして、どうも吉田さんがすぐ出て来るというお話が私どもの頭にはぴつたり参りません。
  262. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうも佐藤法制局長官は私の質問意味を正確にとらえておいでにならないのではないかと思います。しかし頭のいい佐藤さんがとらえていないということはないと思いますが、どうも誤解されておられるように思う。吉田総理が出て来るということは、私は少しも言つていないのです。出て来ないから問題がある、解散しておいて自分は立候補はしない。立候補して当選するという将来の問題、私はそのよう事態を前提として質問してはおりません。私は立候補しなかつた場合にどうなるかと言うのでありますから、今のあなたのお答えと私の質問とはピントが違つているのではないかと思います。
  263. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ちよつと弁明させていただきますが、私が申します趣旨は、たまたま今の総理大臣たる地位にある吉田さんというようなことをたびたびおつしやるものでございますから、この問題について総理大臣解散の実権を握るとか、あるいはその次の内閣の問題として、総理大臣吉田さんというその人が中心の問題になつて出て来るという性質のものではなくて、今の内閣そのもののやつていることのよしあしが国民の批判の対象となる、あるいは自由党なら自由党という党が問題になるのであつて総理大臣であるところの吉田さんということが問題の表に出て来るような性質のものではございますまい。そういう性質で申し上げたのであります。
  264. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうも私は焦点をはずされていると思います。時間が非常に制限されておりますので、この問題についてあまり時間はとりたくありませんが、しつこいようでありますが、こういうよう言つてみたらどうでしようか。佐藤さんが内閣総理大臣でおありになつて、この総理大臣をいただく内閣が天皇に助言を行つて解散が行われる、そのときに佐藤総理大臣が立候補されなかつたときには、佐藤総理大臣は法律の規定に従つて当然に総理大臣を失格するものと見るべきではないか。具体的に申しますと、そういうよう意味であります。私はそうわかりにくいことを言つておるわけではないと思いますが、いかがでしよう。あまり繰返したくないと思いますけれど、もう一度念のために……。
  265. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私誤解しているはずはないと思いますけれども、要するに佐藤総理大臣であるところの内閣解散の決定をしたということは、すなわち内閣そのものが解散の決定をしたのでございまして、佐藤総理大臣がやつたということにはならないわけでございます。そうしてその解散政治的効果としてはこの内閣つたことがいいか悪いか、ひいてはその内閣を支持している自由党なら自由党というもののやつたことがいいか悪いか、将来またそういう人たちに政権をあずけていいかどうかというようなことが選挙の対象となつて、そしてその結果が現われて自由党が勝つなりあるいは他の党派が勝つなりということになつて、次の国会で首班指名がやはり多数のおもむくところに従つて行われるというだけでございまして、最初に申し上げましたように、解散後次の国会までの間の総理大臣の地位は、議員たる資格はなくなつても何らそれには変更はない。これはまた別系統の問題である。その二つのことを申し上げれば、もうそれ以上むずかしい問題はどうも出て来ないように私は考えます。
  266. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はこの点は佐藤さんとは意見が違うと思います。しかし私のように解釈する学者もあると思うのです。まあしかしこの問題についてはここでとどめておきましよう。  時間が過ぎましたので最後ちよつといま一つ緒方総理にお尋ね申し上げておきます。これは新聞に出た記事でありますから正確かどうか――と言つては新聞社の方にははなはだ失礼でありますが、新聞に出ているところによりますと、昨日もどなたか問題とされましたが、緒方総理は、社会党が鳩山に首班指名で投票するようなことがあれば国会解散する、しかし社会党が棄権すれば総辞職するというようなことを武知勇記議員に言われた、こういうことが新聞に出ておりました。それからまた他の新聞によりますと、自由党の役員会の席上である人が、政府党として総選挙に臨む方が有利だから、吉田内閣辞職せず解散して、吉田内閣のもとに選挙を行うべきであるという意見を述べて、総辞職論に反対した、というような記事の出ておつたのも私どもは見た。しかしこれは正確な記事かどうかわかりませんが、しかし問題はここにもあるわけです。こういうことは、よくいわれております。ここに問題があると思いますので、私はこれを取上げて、ひとつ質問してみたいと思います。  大体衆議院が内閣不信任の決議案を議決いたしましたときに、総辞職をしないで衆議院を解散するという基準は一体どこにあるか。これはむずかしい問題でありますが、抽象的に申しますれば、不信任案の可決が国民の多数の意思を正確に反映していないというよう判断が客観的にされるような場合には、衆議院を解散することも許される。その反対に、もし衆議院における反対態度が正しい、明白に理由の存在する内閣不信任案であるというような場合に、なおかつ自己を擁護するために、あるいは自己の政党に、先ほどの例で申しましたような有利な総選挙を行うという条件を保持しておくために、こういう党利己心から出た政策的な根拠から解散するというようなことであれば、私は断じて許すべからざるものであると思います。従つて万一緒方総理の新聞に出ました談話、あるいは自由党議員の先ほど申しましたよう意見があるとすれば、私はこれは非常に民主主義のルールに反していると思います。この点一応御意見を承りたい。
  267. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私の新聞に出た話をお取上げになりましたが、私はそういう意味のお話をした記憶がございません。それから二つ目にお述べになりましたのは多分私の意見ではないと思います。もし私の話になつていればそれも私は申した覚えはございません。よく民主主義のルールといわれますけれども、私はこの総選挙によつて得られた数というものは、これは任期のある限り国民が信頼を持つているということに解する以外に解し方はないと思います。ただ今日の場合は政府は過半数を持つておりません。のみならず、過般日本民主党ができましたことによりまして、政界の分野が新たになつた。これは何ら選挙区との関係なしにできたことでありまして、従つて私はこの新しい分野を国民の審判にまつということは、一応の道理があると考えます。しかしながら不信任案が通過をいたしました場合に、現実にどういう態度をとるかということは、昨日来総理大臣が申し上げましたように、またその時の情勢によつて判断をすべきものだと考ております。
  268. 黒田寿男

    ○黒田委員 時間か過ぎましたので、最後に一言だけ申し上げまして私の質問を終ります。  私はただいままで申し上げました私の考え方を通じまして明らかにいたしましたように、吉田総理大臣のもとにある内閣が、不信任案の通過を受けて、衆議院を解散するということは、民主主義の蹂躪、議会主義の蹂躪になると思います。自由党は、不信任案が通過した場合には、いさぎよく下野されるのが、民主主義のルールであると思います。しかし、このことがわからないで、鳩山が憎いというような感情や、同じ保守党内の小さな階級的な利害関係の対立や争いから、ここで解散する。そういうことになりますれば、どうなるか。民主主義のルールには反しますけれども、実は私ども革新勢力にとつては、思うつぼにはまつて来ることになるのであります。政府は十分に熟慮されたいと思います。私はこれをもつて質問を終わります。
  269. 西村久之

    西村(久)委員長代理 これにて質疑は終結いたしました。  それでは午後六時より再開することしと、暫時休憩いたします。    午後五時三十分休憩      ――――◇―――――    午後六時二十七分開議
  270. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  昭和二十九年度一般会計予算補正(第1号)、昭和二十九年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和二十九年度政府関係機関予算補正(機第1号)の三案を一括して議題といたします。  この際、中曽根康弘君より発言を求められております。これを許します。中曽根康弘君。
  271. 中曽根康弘

    中曽根委員 私はこの際野党三派を代表いたしまして、吉田内閣総理大臣問責決議案を提出いたします。まず本文を朗読いたします。    吉田内閣総理大臣問責決議(案)   吉田内閣総理大臣は、従来も履々国会を軽視して国政の審議に遅滞を生ぜしめたが、今回も亦、本日の本委員会出席することを確約して置きながら、今朝に至り突如病気と称して出席しない。吉田総理の従来の遺口や、昨日の健康状態等より考えて、われわれは総理の所謂病気なるものが、かねて本日に予定されていた決算委員会の喚問を回避するための仮病と疑わざるを得ない。昨日の委員会における不真面目な答弁に加えて、本日の予算採決の段階におけるかかる不謹慎な態度につき、衆議院予算委員会は、ここに国民の名に於て吉田総理大臣を問責する。   右決議する。  趣旨を弁明いたします。吉田総理大臣が従来しばしば国会を軽視して欠席しておつたということは周知の事実であります。今回吉田総理大臣は外遊から帰られまして、ようやくこの臨事国会を開会し、出席したのでありますが、外遊後の吉田総理大臣は思いのほかに若返つて、ほおも紅潮して非常に元気に見えたのであります。われわれは反対党でありますが、総理大臣のこのような元気な姿を喜んでおつたのであります。特に今回の予算委員会は、おそらく総理大臣にとつて最後予算委員会だろうと思いまして、各党の議員は、でき得べくんば吉田総理大臣には有終の美を収めてもらいたいという思いやりから、各議員とも礼儀をきわめて懇切丁寧に質問したのであります。しかるに、吉田総理大臣答弁は、そのような各議員の思いやりにもかかわらず、ふまじめなる答弁をもつて依然として一貫しておりました。特に昨日の今澄議員質問に対しては、あたかも馬耳東風のごとく、まつたく無視するがごとき態度に出られたのはきわめて遺憾であります。総理大臣は、この国会のしないということが名答弁であると考えられているらしい。しかし、予算委員会というものは、この委員会を通じて国民政府の政策や意思を表明すべき性格であるのであります。言いかえれば、この委員会を通じて国民の代表に話すことよつて国民との対話をやるべき性格を持つておるのであります。そういう本質を間違えて、みずからの意思を表明しないというところにのみ汲々としているということは、国会の本質を全然わきまえない態度であると、弾劾せざるを得ないのであります。特に昨日は、吉田総理大臣は所用があるというので、われわれは吉田総理大臣に自由な時間をお許し申し上げたのでありましたけれども、その際には必ず本日は出席すると確約いたしました。予算委員長も確約いたしました。ところが今朝になつてにわかにまた病気と称して出席して参りません。これは重大なる信義違反であります。その理由病気であるとはいつておりますが、従来のやり口から見て、決算委員会に喚問されて証人として出頭するのを拒否するための仮病であると疑わざるを得ないのであります。これは吉田総理大臣の従来の態度から見て、全国民がそのよう考えておるとこにであると思うのであります。(拍手)法律できめたことを、総理大臣自分に不利だからといつて守らない。このことは民主主義を総理大臣がみずから破壊する行為であつて、このようなことを断じて国会として黙視することはできないのであります。巷間では、吉田総理大臣はきつと解散するであろうといつおる。なぜかといえば、決算委員会に出るのがいやだから、解散すれば決算委員会に出なくてもいいから、解散するであろうということすらいわれておるのでありまして、われわれは一国の総理大臣がかかる誤解を受けておるということは、きわめて遺憾に存ずるのであります。今日の日本の事態は、経済的にも窮し、中小企業は年末の金融に因り、農民は低米価その他で現金収入が窮迫し、勤労者はこの冬をどうして越そうかということで心を痛めておるという時期であります。このときに国会がその負担に沿わないような軽々しい行動をとつたならば、われわれは何とも申訳ないと思うのであります。吉田総理大臣がこのような重大な時局に国会にも出席せず、特に本日は予算がこの委員会及び本会議において採決されるという重大な段階であります。従来、特に本会議において予算が採決されるという場合に総理大臣出席しなかつたという例は一度もありません。しかるに本日に、そのようなまつたく前例のないことを、この重大な時局に吉田総理大臣はなさろうとしておるのであります。このようなことは、断じて予算委員会において見のがすことはできないのでありまして、全国民の名前において吉田総理大臣を問責する次第であります。  以上が提案の趣旨でありまして、本委員会全員の御賛成をお願いいたす次第であります。(拍手)
  272. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまの動議を採決いたします。本動議に賛成の諸君の御起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  273. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立多数であります。よつて動議のごとく決しました。     ―――――――――――――
  274. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際日本社会党両派及び労農党の共同提案として佐藤觀次郎君外十五名より昭和二十九年度一般会計予算補正(第1号)、昭和二十九年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和二十九年度政府関係機関予算補正(機第1号)の編成替を求める動議が提出されております。その趣旨弁明を許します。松原喜之次君。
  275. 松原喜之次

    ○松原委員 私はこれより両派社会党並びに労農党を代表いたしまして、三党共同提出にかかる昭和二十九年度一般会計、特別会計及び政府関係機関の補正予算に対する組みかえ動議に関し、その提案説明をいたさんとするものであります。  まずその動議の内容は次のごとくであります。   昭和二十九年度一般会計予算補正(第1号)、昭和二十九年度特別会計予算補正(特第2号)、昭和二十九年度政府関係機関予算補正(機第1号)の編成替を求めるの動議   昭和二十九年度一般会計予算補正(第1号)、昭和二十九年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和二十九年政府関係機関予算補正(機第1号)については、政府は撤回し、左記要綱により速やに組替えをなし、再提出することを要求する。   右の動議を提出する。     記  一、歳出補正については左記の通りとする。   1 災害復旧事業費(救農事業費、災害対策用種子確保補助金などを含む。)については、失業対策事業をかねて復旧事業総体のおおねむ三割を実施することを目途として、百六億円を計上して、政府案より三十七億円増額する。   2 地方交付税交付金については、赤字補てんのため、十億円を新規増額する。   3 公務員並びに地方公務員および公共企業体職員の一部に対する年末手当については、〇・二五ケ月分を増額するため、七十八億円を新規計上する。   4 中小企業に対する緊急融資のため、一般会計投融資として二十億円を新規計上する。  二、歳入補正については左記の通りとする。   1 保安庁費のうち艦艇貸与延期分を含む不用額六十億円を減額する。   2 防衛分担金の内同項目の過年度くりこし分に相当する額より八十五億円を減額する。   3 本年度年末手当のうち、二万円以下所得に対しては減免税措置を講ずる。これによる勤労所得税減収は、酒税、砂糖消費税、ガソリン消費税、揮発油税の自然増収によつて補う。  次に各項目につきましてきわめて簡単にその理由等を申し述べたいと存じます。  第一に、災害復旧事業費につきましては、救農事業費、災害対策用種子確保補助金などを含めまして、三十七億円の新規増額補正を要求いたします。災害復旧及び農業関係政府補正では、当年災の災害復旧旅行率が二五%となつておるが、これは昨年度の約束通り、やはり三〇%に引上げてもらいたいのであります。本年度の災害は、その損害総額においては比較的大なりとは申せませんが、局部的には非常に深刻甚大な被害があつたのでありまして、昨日も本委員会において苫米地委員、相川委員などよりも指摘された通りでございます。ことに北海道では、昭和二十七年の十勝沖大震災に引続く昨年の冷害凶作、それに加えて本年は有名なる大正二年にもまさる大飢饉とさえいわれる大凶作の上に、例の十五号台風に見舞われまして実にさんたんたるものがあるのであります。かかる状態にかんがみまして、すでに農林委員会におきましては、総額二百九十億八十万円に上るところの農林関係災害復旧費を必要なりと認められたのでありますが、補正予算という性格と、その他の費目とのつり合いをも勘案いたしまして、われわれといたしましては、当年災についておおむね三〇%の復旧率を維持するための三十七億円の増額補正を求むるにとどめたのでございます。  第二に、地方財政赤字補填のため、地方交付税交付金十億円の増額を要求しておるわけであります。いまさら申し上げるまでもなく、現在地方公共団体の赤字は巨額に達し、その財政は崩壊の危機に瀕しておることは御承知の通りであります。昭和二十七年度の赤字総額は三百億円であつたものが、昭和二十八年度には四百六十億となり、逐年増加の一途をたどつており、本年度は知事会推計によりますと、五百三十億の赤字を予想されておるのであります。この事実を前にして、自治庁みずからが二十九年度補正要求といたしまして、百四十五億の財政措置を大蔵省に要求されたのであります。従つて、補正予算原案ごとき数字では、あまりにもこの地方財政の実情を無視したものでありますから、ここに当面とりあえず十億円の地方交付金の増額を求めるとともに、さらに起債のわくを拡大いたしまして、四十億円の増額を要求するものであります。  第三に、国家公務員並びに公共企業体職員及び地方公務員に対する年末手当でありますが、ただいまこれらの職員は、御承知のように、三千円のベース・アップを要求いたすと同時に、生活危機突破資金といたしまして、年末手当二箇月分を要求し、現に闘争に入つておるのであります。従来、物価値上りの過程におきましては、賃金の値上げがこれに追いつくことができず、従つて今日物価横ばいとなつたといたしましても、生活の困窮は依然として免れない実情にあるのであります。従いまして、これらの要求はきわめて当然のしかも最小限のものであるとわれわれは考えるのでありますが、とりあえず年末手当に関しまして、大蔵委員会でただいま論議に上つております二万円以下の年末手当に対する所得税減免措置と相まつて、〇・二五箇月分の増額ということで、七十八億円の増額補正を要求いたすものであります。  最後に、中小企業者に対しまして、年末の危機を救い、その崩壊を防ぐ一助といたしまして、最低限度の応急資源を三十億円一般会計投融資額に計上補正することを求めるものであります。御存じのように、中小企業はわが国産業構造上きわめて重要なる地位を占めておるにもかかわらず、昨年末における全国銀行の中小企業向き貸出しは三七%四でありまして、本年七月末にはそれが三三%八に低下して、金額におきましては六百九十億円の減少と相なつております。かくて中小企業に対する貸出しは漸次なお減少の一途をたどりつつあるのでありまして、一般に年末金融が楽観されております今日、中小企業に関しましては非常な困難に逢着いたしておる実情にあるのであります。ゆえにその救済の一助といたしまして、中小企業金融公庫の一箇月分の貸出願に相当いたします二十億円を緊急融資のため一般会計に計上いたすことを要求するものでございます。  以上合計百四十五億円の要求に充当すべきところの財源といたいしましては、われわれは次の諸経費の削減に求めるものであります。すなわち保安庁費中艦艇貸与協定によつて艦艇が貸与された場合に乗り込むべき人員その他の経費のうち、艦艇貸与が現実に遅れたために、あるいは遅れるために、本年度はその必要のないという経費部分その他の部分を合計いたしまして、不急不用額六十億円を削減するのであります。  次に防衛分担金のうち、二十八年度より繰越された経費及び同じく今年度分のうちから八十五億円を削減する。  第三には、酒税、砂糖消費税、ガソリン消費税、揮発油税の自然増収をもつてこれに充てる。われわれといたしましては再軍備費を削つて、そうして生活安定、経済建設等にまわすというその本来の趣旨から見ますれば、当然さらに多くの削減がなし得るのであります。たとえば十二月二十日の参議院大蔵委員会に提出されました政府資料によりましても、二十九年度初めに前年度より繰越しましたところの防衛関係費の額は、安全保障費二百七十二億円、保安庁費二百五十二億円、防衛分担金四十三億円、これだけでも合計五百六十七億円となるのであります。従つてもつと余裕財源が隠されて存在しておることは明らかな事実であります。従いましてわれわれの組みかえ要求は、その財源において余裕があり、その結果において何らインフレなどを引起すような心配もなく、きわめて消極的な案であることを了承していただきたいのであります。すなわちわれわれといたしましては、もはや会計年度の四分の三を過ぎた時期における補正予算であるという点にもかんがみまして、本来の主張をほとんどまつたく譲歩いたしまして、きわめてわずかの現実的な要求をいたしておるのであります。  ここに各位の御賛同をお願いいたしまして、提案趣旨の説明といたします。(拍手)
  276. 倉石忠雄

    倉石委員長 これにて編成替を求めるの動議の趣旨説明は終りました。  これより右の編成替を求めるの動議並びに補正予算の各原案を一括して討論に付します。船越弘君。
  277. 船越弘

    ○船越委員 私はただいま議題となりました補正予算三案に対し、自由党を代表し政府原案に賛成し、社会党左右両派、労農党の組みかえ動議に断固反対するものであります。以下その理由を簡単に申し述べます。  今回提出されました補正予算案は、失業対策費、災害復旧費及び地方財政赤字補填費等に大別されます。その規模は三百八億余万円となつております。すれに対し財源としては、実行予算による歳出節減額約百五十三億余万円、輸入食糧価格調整補給金不用額面五十一億余万円、合計三百五億円をもつてまかなうことにし、その差額三億余万円が二十九年度当初予算総額九千九百九十五億余万円に加わり、新規総額ば九千九百九十八億余万円となり、一兆円の範囲内に食いとめられた次第であります。  次に法律案の不成立に伴う繊維品消費税の歳入減八十五億円、ピース等の売れ行き不振に伴う日本専売公社納付金の減五十二億余万円、入場税の税率引下げ等による地方譲与税譲与金の不足補填十九億余万円等の不足総額百五十六億余万円に対しては、法人税の自然増百五十億円及び日銀納付金増等九億余万円により穴埋めをすることになつております。  以上は一般会計及び特別会計補正予算の大要でありますが、政府関係機関の補正のおもなるものは、日本国有鉄道の災害復旧費二十五億円、新線建設費七億円、合計三十二億円を資金運用部資金から借り入れて実施することになつております。  今回の補正予算は緊縮財政実施に伴い生じた摩擦面を緩和し、三党共同修正及び予算関係法律案の不成立並びに修正に伴う予算面のでこぼこを是正すると同時に、霜冷害、台風被害に対する復旧費を同じ予算の総わく内においてやりくりをしたものでありまして、政策的というよりはむしろ事務的修正と申すべきでありますから、野党側におかせられましても異存はあまりないはずだと思うのであります。ことに失業対策を初めとし、社会保障関係費が特に留意されておりますのは、わが党政策の一環でもありますが、社会党においてもさぞかし御満悦のことと実は信じておるような次第であります。(拍手)  政府の緊縮政策実施以来着々その効果が現われつつあることは、野党のとかくの批判はありましても、これは厳然たる事実でございまして、物価は漸次下落の方向をたどり、当初赤字が予想されました国際収支も、年度末には一億七千万ドル以上の黒字が想定さるるに至りましたことは、野党の諸君とともに御同慶にたえない次第でおります。  飜つて現下の諸情勢を検討いたしますと、都市方面の消費購買力はやや低下いたしつつありますが、地方におきましては、災害地を除いては購買力は依然として衰えてはおりません。産業界はその過剰在庫に苦しんでおりましたが、操短その他合理化などによりまして、その苦悩はよほど緩和され、正常化されつつあります。労働界は公労協等の常識外の年末闘争は見受けられますが、民間におきましては、給与ペース引上げ運動が最近では首切り反対、賃金遅払い反対運動にかわつて来ております。オーバ・ローンに悩んだ金融界も預貯金の増加を招来しつつあります。  以上のごとくわが国の経済界は政府の緊縮政策と相まつて、民間の自立に対する熟慮により、ようやくその実を結ばんとしつつある現状にかんがみまして、今回は災害激甚地へは重点的な行政措置を講ずることとして、特別立法による災害復旧費の激増等は現段階においては見合せるべきであり、なおまた社会党、労農党の公式論たる防衛費の削減により公務員年末手当の増額、災害復旧費の増額、失業対策費の増額要求等を含む編成替動議には断固反対をいたします。なぜかなれば、国家財政の破綻、自衛力の壊滅によつて、経済の自立、祖国の再建はあり得ないからであります、かかる意味にお、いて、私は政府原案に賛成し、社会党、労農党三派の組みかえ動議に反対をいたす次第であります。   〔発言する者あり〕
  278. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  279. 船越弘

    ○船越委員 なお、私はこの際補正予算三案に対する次のごとき附帯決議を自由党提案として提議するものであります。その案文を朗読いたします。    予算案に対する附帯決議案  一、政府は累年災害を受ける被害地域を救済する目的をもつて、必ず通常国会において適切なる立法化を行うべきである。  二、政府は中小企業の年末金融につき、早急に遺憾なき措置を講ずべきである。  三、政府は地方公共団体の年末融資につきすみやかに適切なる措置を講ずべきである。  なおその趣旨を簡単に説明いたします。第一につきましては、本委員会において政府の方針も承りましたが、来る通常国会においては必ず大蔵大臣の言明通り、累年災害を受けて悲惨なる境遇にあるところの地域に対しましては、その立法措置をぜひとも講ぜられたいのであります。  第一、第三につきましては、緊縮政策の余波を受け、特に中小企業と地方公共団体とはその金融に非常な苦境に焔つております。政府は時期を失しないようにその融資に適切なる措置を講ぜられたいのであります。  以上の通りでありますが、本付帯決議案に御賛同あらんことを切に望みまして、私の討論を終ります。(拍手)
  280. 倉石忠雄

  281. 中村三之丞

    中村(三)委員 私は日本民主党を代表いたしまして、補正予算に対する態度を明白にいたしたいと存じます。  このたびの予算委員会は前例のないほど吉田首相の進退問題に関して政局の問題が論議せられたのであります。われわれは救国と民主政治擁護の立場におきまして、既定の方針に従い、数日のうちに吉田内閣と対決するに至るでありましよう。  政党内閣の予算は、その政党の政策と公約とが織り込まれているものであることは申すまでもありません。われわれは十九国会におきまして、二十九年度本予算案は政策によつて修正して通過せしめたのであります。今回の補正予算は、あるいは災害対策に対する必要欠くべるらざる経資、社会保障資、地方財政を整備する経資、義務資、こういうものが内容になつておるのでありますから、われわれは吉田内閣に対する態度は別といたしまして、これに承認をするものであります。  同時に次のような附帯決議を付したいと存じます。これを朗読いたします。  一、政府は、災害予算の配分及び工事実施につき、従来の運営に省み努めて厳正かつ重点的に行使し、もつて実効を期すべきである。  二、政府は、累年災害を受くる地域の被害復旧に対し、通常国会において適切なる立法化を行うべきである。特に、本年度災害激甚地の救農事業を徹底して民生を安定し、農業再生産の確保に遺憾なきことを併せ期すべきである。  三、政府は、中小企業の年末金融につき、速かに適切なる措置を講ずべきである。  四、政府は、地方公共団体の年末融資につき、速かに適切なる措置を講ずると共に、既往赤字の克服と、将来の健全財政確立に資する抜本的施策を講ずべきである。  何とぞこの附帯決議に対して賛成を要望するとともに、社会党両派、労農党の組みかえ案に対しましては、遺憾ながら賛成することはできないのであります。  大蔵大臣は財政演説において、物価が何パーセント下り、国際貸借が好転し、日本経済は全体としてかなりの改善を見たものであるというふうに言うておられますが、これは自家製のどぶろくを飲んで酔いつぶれておるのと同じようなかつこうであると申さなければなりません。一体吉田内閣の急激にして無分別無計画なるデフレーション政策は、財界を沈滞せしめ、ことに多数の中小企業者、零細業者を倒産、倒産に陥れ、ちまたに失業者を出しておることは現前の事実であります。すなわち吉田内閣の経済政策は多数国民の企業と生活を犠牲にし、破壊せしめたものでありまして、その責任はわれわれたださなければならないのであります。今日不当なる異常なる膨脹が、これがインフレーションであり、あるいは不当なるまた異常なる収縮がデフレーションであるといたしますならば、ともにこれは避けなければなりません。われわれは、経済政策の要諦は経済財政の基本がつり合いがとれておるということにあると思うのであります。吉田政府の自由政策が行き詰まり、吉田総理大臣さえ貿易と生産の拡大のために総合的、計画的に進めなければならないと言うておられるのであります。これは政策の転換にあらずして、政策の行き詰まりであると私どもは深く信じておるのであります。  以上の理由をもちまして、われわれは補正予算に限界を置いて賛成の意を表するものであります。(拍手)
  282. 倉石忠雄

    倉石委員長 小林進君。
  283. 小林進

    小林(進)委員 私は両派社会党を代表いたしまして、政府提出の補正予算案に反対をし、ただいま同志松原委員が説明をいたしました両派社会党提出の補正予算組みかえ案に賛成をするものであります。  討論に先だつて、特に政府に警告を発しておきたいことは、本年度予算提出の当初、わが党委員質問に答え、大蔵大臣は、本年度は断じて補正予算を編成しないと大言壮語せられたのであります。もちろん災害復旧費のごとき、予想せざる自然の変異に基く予算の追加をさすのではございません。政府のデフレ政策失敗のために、今回補正の必要性を生じて来た社会保障関係のごとき地方財政関係のごとき、これらはいずれも本年度当初予算審議の際、両派社会党の予算組かえ案の中に盛り込んで、強く政府にこれを要望したところであります。その際政府はわれわれの案を無視して、その必要なきを言明した。その必要なしと言つた費用を今日麗々しく組み入れておる。その偽りの態度、われわれを通じて常に国民を欺瞞しているその無節操なる態度に対し、一体いかなる責任をとられるというのか。せめて大蔵大臣にもなつたら、かりにでくのぼうであろうとも、半年や七箇月の間に化けの皮がはげるような、あげ足をとられるような下手なたんかは切られないよう、特に警告を発しておきたいのであります。  さて本年度一兆円予算の内容は、あらためて申し上げるまでもなく、金融面においては、血も涙もない苛酷な金融引締めを続行して、中小企業を倒産、失業に追い込み、相対的に大企業の温存をはかつたものであり、他面財政面では、産業投融資を大幅に削減して、石炭、鉄鋼、造船等の基幹産業に莫大な失業者を生み出しているのであります。かくして本年度デフレ予算に基く犠牲が、中小商工業者と労働者に大きくしわ寄せをせられたのであります。かくのごとく大きな犠牲を生んだその予算が、しからば一体一兆円の線にとどまつているかというと、事実はこれに反し、本年度分一兆円に加うるに、過年度の繰越し予算一千二百七億円を合せ、実に一兆一千二百有余億円が予算支出規模になつているのであります。このような財政支出が本年初めより開始せられた結果、第一・四半期から第三・四半期の現在に至るまで、財政の対民間収支は散超を続けている有様であり、明年一月から三月までの第四・四半期に苛酷なる税金の取立やら政府資金の金融機関よりの吹い上げ等の措置を講じても、年度末には一千億円を越える散超に終らざるを得ぬことは、これは必然の傾向であることを私は断言しておきたいのであります。すなわち政府の言う一兆円予算とデフレ政策は、弱い者を金融の面から締め出して、ただ失業者と生活困窮者をどしどし製造するための政策であり、倒産と不渡り手形の数を増加するための財政金融政策であつて、財政散超によつて、本来のねらいとするデフレの効果は相殺されている事実を指摘しなければならぬのであります。しかして政府はこの欺瞞的政策によつてつくり出した未曾有の経済不況、これによる犠牲者の救済に対しては、一兆円のわくを堅持するという名のもとに、予算増額補正を渋つているのであります。  そもそも今回の歳出補正の面における最大の欠陥は、災害復旧、社会保障、地方財政補助等の重要なる項目にわたつて、出すべき金を出さない、ほんの形ばかりの金額を増額して、これを大蔵官僚一流の手練手管で体裁よくごまかしているにすぎぬという点にあるのであります。災害復旧について言えば、政府は何ゆえに予備費や融資等に八十九億円余りの金額を分散させたのか。昨年の災害復旧の例に見れば、政府の災害復旧特別融資にして実現されたものはわずか四十億円にすぎず、残りはすべてから約束に終り、いたずらに農民をだましたという結果に終つておるのであります。本年こそはわれわれの主張する通り、災害復旧事業費、救済事業費、災害対策用権子確保補助加味して、災害復旧費総額の三割、最低百六億円を復旧初年度たる今年予算において確保し、しかもこれを確実に実施するということは、例年に照しても絶対必要なる措置であるということをわれわれは叫んでやまないのであります。  地方財政関係においても政府案はきわめて不徹底であり、あいまいであります。これでは地方自治体があげて憤激するのももつともといわなければならぬのであります。おそらく政府としては、そのねらうところ知事官選案と同じく、地方財政力を弱め、中央集権化をもつて、地方自治体をも自己の支配下に置かんとする反動的、権力的意図が隠されていることをうかがい知ることができるのでありまして、かくのごとき企図のもとに出されたこの原案を、われわれは認めるわけには行かぬので、あります。  特にわれわれが最も不可解とするところは、公務員の給与に関する点及び年末手当に関する政府の冷淡なあり方であります。ベース・アップについては遂に黙殺をしてしまつた。手当については補正の処置なしと言う。汚職と収賄に終始し、働く者にあすの希望一つ与える信頼感のない今の政府が、デフレ経という経文を読んで、公務員諸君にのみ低賃金のくぎづけと耐乏生活を説いたところで、一体何人がこれに納得することができましようや。名はデフレにして、事実は散超に基くインフレ的要因の中に労働者は苦しみつつ、この苦しみの中から生れたこの要求を出しておるのでありまして、この要求にこたえて、たといそれが最低限度のものであろうと、その増額を認めることが絶対必要であることをわれわれは確信するのであります。現在のままの補正案において、なおかつ年末手当の増額が可能である事実に照し、年末手当の増額については特に政府において再考慮せられんことを要求してやまないのであります。  なお加えて、政府原案の恐るべき欠陥は、一般会計予算以外の予算における補正に関する点であります。第一は、中小企業に対する緊急金融処置に関する点がそれであり、第二は、政策金融にして、目下海外から注文の殺到しておる外航船建造の発注を受入れるために必要な金融処置として、輸出入銀行の融資を積極的に増額するという点であります。年末から明春にかけて中小企業の金融はさらに苦しくなる。これをそのまま放任しておく政府の無情をわれわれは責めざるを得ぬとともに、他方造船輸出を振興する絶好の機会をもまたいたずらに見過して、不景気打開、外貨獲得の意欲を補正予算上に見出し得ぬのは、最も不可解とするところであります。いかに崩壊寸前にある現政府のやり方とはいえ、国家将来を思わざるその投げやりの態度、われわれは断じてこれを了承することができぬのであります。  次に、私どもの最も了承し得ざる面は、歳入の点であります。政府原案に隠されている思想は、依然として吉田首相特有の秘密外交の理念と、その軌を一にしておるのであります。すなわち歳入の実際についてはまつたくヴエールをおろして、一切を秘密の中に包んでおります。歳出補正の財源としてあげておる経費の節約並びに不用額は、政府が補正予算案に示した財源以外は一体どうなつておるのか。また政府は新たなる財源として法人税百五十億円をあげておるが、一体これはこれだけにとどまるのか。また他の税金についても法人税同様、当然自然増収があると見なければならぬが、これが一体あるのかないのか、国民の前に少しも明らかにしておらぬのであります。今年当初予算提出の際、大蔵大臣小笠原三九郎さんは、本年は租税の自然増収どころか、減収のおそれさえありますと、おどかし文句をあなたは述べたはずであります。しかるにここに奇術のように百五十億円の法人税が生み出されて来たのであります。ほかに何が隠されているのか。真に恥も外聞もない政府のこのからくり仕事に、われわれ国民はただあきれざる得ないのでありまして、国会の予算審議はまさに政府から与えられた一握りの資料だけに決定されようとしているのであります。これこそ国会運営の上からも断じてわれわれの黙視し得ぬところであります。われわれの歳出補正組みかえ百四十五億円の増額は、その財源を保安庁費並びに防衛分担金のうちより、合法的に確保せんとすることは、すでに提案者の説明した通りであります。われわれはすでに述べた通り、防衛関係費予算を中心とする過年度繰越分一千二百七億円の存在こそが、日本経済をインフレに転化する導火線となることを恐れているのでありまして、日本経済を立て直すためには、ぜひとも明年度予算編成に際しては、昭和二十七年度、八年度というインフレ財政に組まれた防衛関係予算の繰延額に相当する額は、これを削減をして、取除いてしまつて、財政の健全化をはからなければならぬことを深く考慮いたしておるのであります。  さらに一言加えたいことは、公務員年末手当のうち、二万円以下の所得に対し減免税を行うべきであるということでありまして、これによつて実質賃金向上策となし、他方これによる勤労所得税の減収分は、酒税その他の大衆課税の自然増収によつて十分補うことができ、政府の心配する一兆円のわくを越えることは絶対にないことを申し上げておきたいのであります。  われわれは以上申し述べたところによつても明らかなるごとく、政府の原案には全面的に反対をするとともに、われわれの組みかえ案についても、これにまつたく満足するものではないのであります。幾多の不完全を認めながらも、しかもこれを単純に、かつ金額の総計もこれを少くして、できるだけ可能な面だけにとどめた修正案提出の理由は一体どこにあるかといえば、われわれはいたずらに補正予算の審議に没頭して、かんじんの臨時国会の目的を見失うことを恐れたからにほかならぬのであります。この臨時国会の最も重大なる使命は、多年悪政を積み重ねた吉田内閣に今や快心の一撃を加え、もつてその息の根を絶つ不信任案を上程し、かつこれを通過せしめるにあるのであります。従つてわれわれの補正予算組みかえの趣旨は、吉田内閣最後の悪政を可能なる範囲に修正したいというにとどまるのであつて解散選挙、新しい政府の誕生、その新しい政府こそは、われわれ両派社会党の樹立する政府たることを確信するものでございまして、(拍手)その際には堂々第二の補正予算を作成いたし、働く大衆の利益を断じて守り抜く具体策を打出すことを約束いたしまして、政府原案に反対、組みかえ案賛成の討論にかえておく次第であります。(拍手)
  284. 倉石忠雄

    倉石委員長 黒田寿男君。
  285. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は労農党を代表いたしまして政府原案に反対し、社会党、労農党提出の編成がえの動議に賛成をいたします。  その理由を申し述べたいとい思ます。まず政府原案について申し上げます。  この予算補正の性格は、私どもが反対いたしました二十九年度予算の性格を受継いだものでありまして、再軍備予算の一部であると言えます。その上この補正予算案の内容を検討いたしますと、部分的に拾い上げてみましただけでも、次のような多くの問題点を含んでおるのであります。  たとえば歳出について申し上げますと、第一に災害復旧及び農業関係の部分でありますが、当年災の災害復旧施行率は三〇%であるにかかわらず、これを二五%にしております。被害額につきまして府県の申請は七百六十四億円、各省査定はこれよりも下りまして五百四十八億円、これに対し大蔵省査定はさらに減少いたしまして、五百十二億円でありまして、被害実額は段階ごとに縮小をしております。実際には当年災総額は二千億円にも達するというようにいわれておるのであります。農業保険費につきましても、これにも問題はあると思いますが、省略いたします。救農土木事業の農林省当初要求額二十八億に対しましても、わずかに十八億円という計上にすぎません。農林漁業金融公庫の問題につきましても、やはり問題がありますし、農林省の冷害及び災害対策費要求の総額百四十六億円も、ほとんど無視されてしまつておるのであります。  それから社会保障関係でありますが、生活保護の問題を取上げてみますと、保護対象が増加されておりません。医療扶助の単価の値上げにつきましてもやはり問題点があると思います。  それから失業対策についてでありますが、御承知のように官庁統計を見ましても、完全失業者七十一万、潜在失業者一千万といわれておりますのにかかからず、事業対象を二万二千人増としたにすぎません。失業保険の一般保険金受給人員も四十九万四千人と計上されてありますけれども、現在の失業状態の実情より見て、はなはだしい過小見積りであると考えられます。保険金支給期間を一箇年間という労働者の要求も無視されております。これは一部を拾い上げたにすぎません。  さらに地方財政関係を見ましても、地方交付税の定率引上げが考慮されておりません。本年六月警察法の改正に際しましては、警察費の低減をその理由としながら、四十億円を計上しております。右について自治庁は所要額として五十三億円を要求しておりますが、差額十三億円が地方財政にしわ寄せされるということになる。その他本年度赤字五百三十億円、これは知事会の推計でありますが、その解消は放任されております。起債のわく拡大についても、何らの処置がされておりません。  給与の問題でありますが、官公労の年末手当二箇月、給与ベース三千七百円引上げという要求は、完全に無視されておりまして、露骨な賃金ストツプの態度が示されております。地方公務員諸君は、自治体財政窮乏により、すでに予算化されておる手当さえもらえぬ状態で、自治労組はこのために二百八十億円の緊急融資を要求しておりますが、これも完全に無視されております。  中小企業金融につきましても予算措置がありません。いろいろな問題点が含まれておると思います。  その他住宅、結核、健康保険、文教等はまつたく無視されておると言えます。  それから歳入、財源の点についてでありますが、これもごく一部を指摘してみますと、予算各款項目のかつてな操作、流用措置が行われておりまして、これは非常に大きな問題点であろうと思います。私は財政法、憲法違反が行われておると思います。一兆円のわくを維持するために、歳入の過小見積りを行い、年度末約二百億円の黒字を当て込んでおります。国民所得当初五兆九千八百億円でありましたのを、最近六兆一千億円というように水増しをいたしまして、それは租税の増徴がこれによつて企図されておるというように私ども考えることができると思います。専売益金減少の過大見積りにも問題があると思います。直接軍事費の十一月末未使用額は七百四十三億円であります。その内訳を申し上げますと、保安庁費六百七億、防衛支出金百三十三億、安全保障諸費三億、こういう内容になるのでありまして、その年度末残は四百ないし五百億円と推定されます。これらの計画的な財政蓄積が明年度軍事費に動員せられるという意図が含まれていると思います。食糧管理特別会計にも含み資産があるということも指摘できると思います。このようにこの補正予算案の根本的性格に問題がありますとともに、ただいまごく一部を列挙いたしましただけでも以上のような問題点を内包しておるのであります。私どもはとうていこれに賛成することができないのであります。  次に、社会党、労農党の提出した編成替を求めるの動議について意見を申し述べます。この編成替の動議につきましては、わが党も参加しておるのでありまして、むろん賛成であります。この編成がえの内容には、もとより問題点がないとは言えません。たとえば生活保護、給与ベース引上げ、住宅、結核等社会保障費関係について問題がある。その他計上されております項目につきましても国民の今日の要求を十分に反映したものとわれわれは言い切ることはできないのであります。従つて理想をいえば、改善したい点がなくはありませんけれども、わが党は当面吉田内閣打倒のために院内外を通ずる革新三党の統一行動を強力に推し進めて行くために、三党で話合いが成立いたしました本案に賛成するものであります。  以上をもつて討論を終了いたします。(拍手)
  286. 倉石忠雄

  287. 小山倉之助

    ○小山委員 私は新党同志会を代表いたしまして、ここに上程に相なりました昭和二十九年度純正予算の中の三案に対して賛成の意を表するものであります。  本補正予算案は本予算編成の後に生じた諸般の事情の変化に順応して、財政上のつじつまを合せ、調整せんとする趣旨で編成されたものであり、かつまた短期間の臨時国会において組みかえも困難でありますから、私は政府の原案に賛成いたします。またここに自由党と民主党の附帯決議案が出ておりますが、その内容は大体大同小異であります。従つて私は民主党の附帯決議に賛成をいたします。従つて両派社会党並びに労農党の組みかえ案には遺憾ながら反対をいたします。(拍手)
  288. 倉石忠雄

    倉石委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず日本社会党両派及び労農党共同提案として佐藤觀次郎君外十五名より提出されました、昭和二十九年度一般会計予算補正(第1号)、昭和二十九年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和二十九年度政府関係機関予算補正(機第1号)の編成替を求めるの動議を採決いたします。右の動議に賛成の諸君の御起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  289. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立少数であります。よつて佐藤觀次郎君外十五名より提出されました補正予算三案の編成替を求めるの動議は否決されました。  次に昭和二十九年度一般会計予算補正(第1号)、昭和二十九年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和二十九年度政府関係機関予算補正(機第1号)の各原案を採決いたします。右の原案に賛成の諸君の御起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  290. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立多数であります。よって昭和二十九年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和二十九年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和二十九年度政府関係機関予算補正(機第1号)はいずれも原案の通り可決いたしました。(拍手)  次に船越弘君より自由党提案として提議されました補正予算三案に対する附帯決議を採決いたします。これに賛成の諸君の御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  291. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立多数であります。よつて船越弘君提議の附帯決議は決定いたしました。  次に中村三之丞君より提議されました日本民主党提案の補正予算三案に対する附帯決議を採決いたします。これに賛成の諸君の御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  292. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立多数であります。よつて本附帯決議は決定いたしました。  この際政府より発言を求められております。これを許します。大蔵大臣小笠原三九郎君。
  293. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 予算案に対する附帯決議に対しましては、御趣旨に沿うよう政府といたしましてもでき得るだけの努力をする所存でございます。(拍手)
  294. 倉石忠雄

    倉石委員長 委員会の報告書の作成は、前例によりまして委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  295. 倉石忠雄

    倉石委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決定いたします。  これにて補正予算案に対する議事は終了いたしました。御協力ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十四分散会      ――――◇―――――