○稲富稜人君 私は、両
社会党並びに労農党を代表して、
政府提出の
昭和二十九
年度予算補正案に反対し、ここに新たに
政府案に対する組みかえを要求するの
動議を
提出いたしまして、その
理由の御説明を申し上げたいと存ずる次第であります。(
拍手)
まず、私は、両派
社会党が勤労国民大衆の熱望にこたえて作成いたしました組みかえ要求の
内容をここに明らかにいたしたいと存ずる次第であります。
一、歳出補正については左記の
通りとする。
1
災害復旧事業費(救農事業費、
災害対策用種子確保補助金などを含む。)については、失業
対策事業をかねて
復旧事業総体のおおむね三割を
実施することを目途として、百六億円を計上して、
政府案より三十七億円増額する。
2
地方交付税交付金については、赤字補てんのため、十億円を新規増額する。
3 公務員並びに
地方公務員および公共企業体職員の一部に対する年末手当については、〇・二五ケ月分を増額するため、七十八億円を新規計上する。
4 中小企業に対する緊急
融資のため、
一般会計投
融資として二十億円を新規計上する。
二、歳入補正については左記の
通りとする。
1 保安庁費のうち艦艇貸与延期分を含む不用額六十億円を減額する。
2 防衛分担金の内同項目の過
年度くりこし分に相当する額より八十五億円を減額する。
3 本
年度年末手当のうち、二万円以下所得に対しては減免税
措置を講ずる。これによる勤労
所得税減収は、酒税、砂糖消費税、ガソリン消費税、揮発油税の自然増収によ
つて補う。
私たちは、何ゆえに
政府原案に反対し、ただいま朗読いたしました
動議を
提出しなければならなかつたか。その
理由の第一点は、
政府の
予算補正の方針なるものがあまりにも不誠実であるからであるのであります。(
拍手)すなわち、吉田総理並びに小笠原大蔵大臣はしきりに
予算補正にあた
つては一兆円のわくを堅持したことを力説しておられるのでありますが、本
年度における
一般会計の歳出規模は、防衛
関係費五百六十八億円を中心とする過
年度繰越し
予算一千二百七億円と本
年度九千九百九十六億円とを合計して、実に一兆一千二百億円を越えておることは、すでに御
承知の
通りであるのであります。(
拍手)本
年度第一、第二・四半期は、過
年度分財政支出があまりにも莫大であつたため、財政の対民間収支が
政府の予想に反して財政の散超となり、
政府が今年当初以来強行して来た苛烈きわまりなき殺人的金融引締めのデフレ効果を相殺してしまつたことも、すでに御
承知の
通りであるのであります。(
拍手)このように、デフレ政策は、莫大なる
被害を国民に与えただけで、何らの成果をあげていないにもかかわらず、この
予算補正に際しても、
政府が相かわらず一兆円堅持というお題目を振りまわしているゆえんは、吉田
政府自身の責任で引起してしまつた現在の経済不況の跡始末を、
補正予算において良心的にこれを支出して処理するだけの誠意を何ら持ち合せていないという証拠であると言わなければならないのであります。(
拍手)
さらに、
政府原案に反対する
理由の第二点は、補正の
内容があまりにもずさんであり、かつ独善的であ
つて、民主的な
国会運営に対する否定的な要素を多分に含んでおるからであるのであります。すなわち、
政府は、歳出増加の財源として、
予算の節約領と不用額並びに
法人税の自然増収額を国民に示しておるのでありまするが、何ゆえにこれだけ節約ができたのか、また何ゆえにこれだけの不用額が生じたのか、さらに
法人税以外に自然増収がもつとあるのではないかと国民が最も関心を持
つておる点、すなわち、現在あまりの重税に苦しんで、少しでも租税の軽減されんことを渇望しておる国民の質問には何ら回答を与えでいないのであります。かくして、
補正予算はまつたく官僚独善と与党独裁の合作で行われたのであると言
つても過言ではないのであります。(
拍手)
また、歳出面を見ますと、
災害復旧については何ゆえに初
年度に二割五分
程度の経費しか計上しなか
つたのか、何ゆえに国民の要望しておる
総額の三割
程度の経費の計上をしなかつたか、さらに、社会保障
関係では、一見するところ相当な経費を計上していると見せかけておりながら、その
内容を検討するならば、実は既往の赤字補填経費の計上がおもであ
つて、ますます不景気が深刻となり、失業もふえ、生活窮乏者も増加して来ると予想される明年一月—三月、すなわち第四・四半期に当然予想される惨状に対しては、何ゆえに十分なる救済
予算を計上しなか
つたのか、さらに
地方財政
関係についてこれを見まするならば、
地方財政の赤字についての根本問題はさておき、今回の補正におけるがごとき二階から目薬にも足らないような少額の支出では、
地方財政の
運営はどうにもならないというような現状であるのであります。(
拍手)
また、
政府は、公務員諸君が給与のベースアップ並びに年末手当の増額を求めておる血の叫びを、単に労働攻勢なる一言でこれをしりぞけ、これに対して何らの
予算措置もとらないばかりか、このような公務員諸君の叫びに代表される勤労国民全体の生活窮乏の声を黙殺せんとしておるのであります。
さらにまた、
一般会計以外の
予算についての補正についても、当面最も緊急であるべき中小企業金融についての財政
措置を何ゆえにはつきりととらないのか。また輸出造船に対する海外からの発注が殺到しておるにもかかわらず、何ゆえ輸出入銀行に対する財政投
融資を増額して輸出振興の道を切り開かないのか。かくのごとく、これを列挙いたしまするならば、実に今回の
政府の補正
内容たるものは、まことにずさんきわまりなしと言わざるを得ないのであります。(
拍手)
そこで、われわれ両
社会党並びに労農党は、私が前に申し上げましたような
政府原案に対する共同組みかえ要求の
動議を
提出せざるを得なか
つたのであります。私たちが組みかえ要求をしておりまする支出増額は、わずかに百四十五億円にすぎないのであります。
支出増額の第一点は、
災害復旧事業費並びに救農事業費、
災害対策用種子確保補給金を合せて、
政府査定の
災害復旧経費
総額の三割を確保したいという、きおめてささやかな希望であるのであります。昨
年度災害復旧に際しては特別
融資のから約束でだまされた罹災国民は、今回こそは
一般会計において確実に三割相当額が
予算面に明らかに計上されることを望んでおるのであります。
増額の第二点は、この
災害復旧費が
政府原案より三十七億円上まわることによ
つて生ずる
地方財政の負担増加分について、約十億円ほど
政府がめんどうを見てやる必要があると認めた点であるのであります。
第三点は、公務員諸君に対して、わずか〇・二五箇月分ではありますが、年末手当を増額して、年間を通じての低い給与べースに対する補いとしたいのであります。ここに
国会が公務員諸君に対して苦しい国家財政の中からあえてこのような手当増額をせんとするゆえんのものは、公務員以外の全勤労者諸君に対しても資本家諸君が誠意を持
つて年末手当について十分善処すべきであることを示したい念願にほかならないのであります。(
拍手)
第四点は、中小企業に対する緊急
融資二十億円であります。現在中小企業金融公庫の月平均
融資ベースは十七億円
程度でありますから、この二十億円とはわずかに一箇月分の
融資わくを増額するにすぎないのであります。われわれは、このように最僅少限度必要な金額を最小限度必要な項目についてのみ増額したのであります。その財源としては、保安庁費の中から、米国よりの艦艇貸与が延期にな
つたので明らかに不用となつた相当領も存在するはずでありますので、六十億円を削減し、防衛分担金から同経費の過
年度繰越金の範囲で八十五億円だけを削減することにいたしたのでありますから、当面の支出には何ら支障は来さないのであります。
なお、約七十八億円を計上いたしました公務員年末手当に対しては、特に二万円以下の所得に対して勤労
所得税の減免税
措置を講じて、いわゆる年末調整という大幅な税金天引きよりまぬがれしめ、手当を実質的に増額する一方、この七十八億円の財源としては、
政府がいまだに隠しておりまする酒税その他大衆課税とされている間接税の自然増収額をも
つて優に償い得るのであります。
これらの組みかえによる補正
修正はわれわれとしても非常に不満足なのでありまするが、現
政府のごとき不誠意きわまる内閣にこれ以上の多額の増額補正を要求して、いたずらに時間を浪費することは、現在の私たちとしては忍び得ないことであるのであります。われわれは、ここ二、三日のうちに、もつと重大なる案件をぜひ通過せしめなければならないのであります。
従つて、われわれは、そのくらいの組みかえでがまんしたのであります。よ
つて、すみやかにこの
動議に御同意されんことを要望いたすのであります。
最後に、私は、ここ数日のうちに運命のきまらんとする吉田内閣に対して、あえて
補正予算の使途について警告を発したいと存ずる次第であります。(
拍手)
政府は、昨
年度災害復旧予算の補正にあた
つて、保守三派の要望にこたえて百七十五億円の特別
融資を行うことを公約されたのであります。しかるに、私たち両
社会党は、これがあまりにも欺瞞的であることを見破
つて反対いたしたのでありまするが、保守三派は多数をも
つてこれを通過いたされたのでありました。しかるに、その結果はどうであるか。
政府は、この公約を破棄しまして、そのうちわずか四十億円を支出されているのにすぎないのであります。しかも、この四十億円は、大蔵大臣と地元でありまする愛知県に十億円と三重県に十億円が出され、残り二十億円が数府県に散布されているというような現状であるのであります。
政府は、かくのごときから公約をも
つて地方罹災者に対しては
政府の責任において
復旧のすみやかならんことを督励し、しかるに、その後においてこの公約を破棄して、罹災者及び
地方公共団体を失望させておるというのが現在の実情であるのであります。かくして、
地方の負担は
被害以上に大きくなり、国民は
政府にだまされたと恨んでおるのであります。このような結果は、今回もまた
政府にだまされるのではないかという、これが国民の
政府に対する偽らざる疑惑であると存ずる次第であります。(
拍手)
顧みまするに、吉田内閣は数年間悪政の限りを尽して来られたのであります。わが国の憲政史上、これほど国民にきらわれ、これほど国民に飽かれた内閣もまた数多くないかと存ずる次第であります。(
拍手)しかるに、今度私たちのこの要望に応ぜられることは、吉田内閣といたしましては、唯一にしてしかも最後の善政を行い得る機会であると存ずる次第であります。(
拍手)この意味におきまして、どうかこの
動議に
賛成されんことを切望いたしまして、私の
動議提出の
趣旨弁明といたす次第であります。(
拍手)