○
井出一太郎君 私は、ただいま
松村議員の
質疑のあとを受けまして、
日本民主党の
立場から、
吉田総理大臣並びに
関係閣僚に
質疑を行わんとするものでございます。(
拍手)
吉田総理が長い間の宿願でありました
外遊のことも無事に果たされまして、昨日はその御
報告をもあわせ拝聽いたしました。今や内外に吹きすさぶ木枯しは
吉田首相の身辺にことさらに寒く、
総理の胸中を去来する一抹の
寂蓼感はまさにおおいがたいものがあろうと思うのであります。(
拍手)
総理の帰朝を迎えた祖国の
政界は、あなたの意図に反して、雲行きすこぶる穏やかならざる様でございます。
総理が今回の
旅行において特に強調せられた点は
反共の点でございます。
イタリアでも西独でも
アメリカでもこの点を力説せられたことが外電によ
つて打返されて来ております。なるほど、一方においては、中ソの間に
日本を対象とした宣言もあり、いわゆる
平和攻勢ともいうべきものが展開されておることは事実でございましよう。しかし、今日戦争の危機は遠のいたと見るのが常識である。進んで
二つの
世界が共存する
可能性も強く提唱せられておる時代でございます。
日本がソ連、
中共の二大国に一衣帯水をも
つて境を接しておる今日、
総理がことさらに刺激的な言葉を用いて
共産主義の脅威を説かれる
ゆえんのものは一体何でありましよう。人あるいはこれこそ米国に対する媚態であると言い、
ダレス氏に対する迎合であるとも評しております。(
拍手)
自由主義世界のリーダーである
アメリカの
外交はすこぶる
弾力性に欠けており、
マツカーシー旋風の跳梁するにまかせておる感が深いのであります。
ジュネーヴ会議の敗北もこの辺に基因するのであ
つて、若きマンデス・フランスをして名をなさしめたのを思うにつけまして、
日本の
立場はもう少し
柔軟性を持つべきかと思うのであります。
二つの
世界の共存の
可能性について
総理の
見解を伺いたいのであります。(
拍手)
総理の
アメリカ滞在中、くしくも十一月二日の
中間選挙に遭遇されました。しこうして、この結果は、予想にたがおず、
上下両院、
州知事ともに
民主党の勝利に帰したわけであります。これこそ、
ダレスや、
ノーランドや、しこうしてマッカーシーに不安を感じ出した
アメリカ輿論の反映と思うのであります。
民主党のカラーである健全なる
進歩主義に凱歌が
上つたのであります。このことは、
アメリカの対
共産圏外交が
融和政策からコンテインメント、ロール・バツクと転じたことく、何らかの変化があるものと予想せられたのであります。
現地を見て来られた
総理の御
見解を承りたいのであります。
昨日の
外遊報告において、東南アジア開発問題を初めとして、
もろもろの
おみやげらしきものが発表せられました。これらは必ずしも
総理の
旅行カバンをふくらますに足るほどのものではございませんでした。私の伺いたいのは、二十億ドル以上に上るであろう対
日援助資金についてであります。か
つて、われわれは、これらが、ガリオア、
イロア等の
資金については
アメリカの好意による贈与であると
考え、本議場においても
幾たびか
感謝決議をいたしたのであります。
政府はその後これを債務と心得るという答弁のもとに今日に至
つておりまするが、しからば、
イタリアの例に見るごとく、思い切
つて切り下げてもらうという
交渉をなされたかどうか、またその見
通りについて承りたいのであります。
国民は、今回の
おみやげの必ずしも多いことを望んではおらない。むしろ、それよりも、
舌切りすずめの物語にある重いつづらを背負
つて帰るといことを極力警戒してお
つたと思うのであります。すなわち、
日本再軍備の強化を要請せられ、あるいは
保安隊の倍増を約束せられるというような線が出ることをおそれたのであります。よもや
秘密協定のごときものはなかろうと思うのでありますが、少くとも今日以上その増強はあり得ない、こういう点をこの席で御確言願われますかどうか、これを承りたいのであります。
アジア外交の
重要性について、きのうも触れられましたが、私は現
政府が従来きわめてこの問題に不熱心であ
つたことを遺憾とするものであります。
総理が滞米中なされた
演説の中で、
中共貿易に関する
認識のきわめて貧困であ
つたことを指摘いたしたい。
首相は戦前の対支
貿易が全
貿易の中で占める割合をわずか六%であるという言明を
アメリカにおいてなされた。さような数字は全然誤りであ
つて、
政府の発表しておる
貿易白書を見ましても、旧
支那本土に対して二割、満州、朝鮮その他に対して二割ということに相な
つてお
つて、
中共圏がマーケットとしてのウエートのきおめて重大であるということを
政府発表の文書が示しております。このような程度の
認識の上に立
つてアジア経済外交をやられたのでは、たま
つたものではございません。(
拍手)しかも、
国際の舞台において、この御発言は、ま
つたくひどいものである。
愛知通産大臣は、そのときかたわらにおられたと思いますが、なぜもつとあなたは手ほどきをしてあげなか
つたか。それとも、例によ
つて、
総理は、これを新聞の記事として、その
責任を負わないと言われまするかどうか。この機会に御訂正を願いたいのであります。
首相の留守中に対
ビルマ賠償交渉が成立いたしました。この点は私も御同慶に存じます。ただ、しかし、その
内容でありまするが、
資本財でも
つて二億ドル、投融資で五千万ドルを十年間に皆済いたすわけでありますが、ここで注意しなければならないのは、
サンフランシスコ平和条約第十四条によるところの
役務賠償という
原則を放棄しているという点でございます。この
原則をなぜ貫くことができなか
つたか。しこうして、これがひな型とな
つて、今後
フィリピンに対し、あるいは
インドネシアに臨むことに相なると思うのでございますが、この点、
岡崎外務大臣はどのように御説明なさるか。ざらにまた、本
条約の
承認はこの
国会において求めようとされるのでありましようかどうか。その御用意なしとするならば、
政変気構えの今日、
責任ある
行政主体たる
吉田内閣がなくな
つたとき、しかもそれはきわめて近いと思われるのでございますが、その
責任ははたしてだれが負うのであるかを明らかにせられたい。
フィリピンの問題が出たついでにお尋ねをいたしますが、去る四月
フィリピンとの
交渉が遂に決裂いたしましたことはまことに遺憾であり、
大野・
ガルシア会談でほぼ
協定ができました上に、
日本側の正式り
全権団まで
現地に送
つて、しかもこの不始末と相な
つたことは、ま
つたく醜態であります。本来ならば、この一
事件だけでも
内閣はすでに総辞職に値するものでございます。
大野公使一人を辞職せしめただけであ
つて、それではたして
責任が果せるか、
総理並びに
岡崎外務大臣の
見解を問わんとするものでございます。(
拍手)
ついでに伺
つておきたいことは、
インドネシアに対して焦げつき債権が一億二千五百万ドルに上
つている点でございます。
国際収支の改善、
外貨保有の必要が今日ほど喫緊なときはないにかかわらず、これらのことを放置しておくことは一体何たることでございましようか。この金額は一体回収されるものであるかどうか、
先方側との
賠償の際に差引かれると
考えるべきかどうか、この点を明らかにせられたい。
昨日の
大蔵大臣の
演説後半は、
政府の
施策よろしきを得て、
物価は
低落し、
輸出は増大し、
経済の
拡大均衡はまさに実現するかのごとき、きわめて楽観的な口吻に終始いたしたのであります。私は、この自画自讃はむしろ
解散近しと見ての
選挙対策ではなかろうかと
思つた次第であります。
物価ははたして下
つておるでありましようか。私の手元にある資料からいたしますならば、本年一月と九月とを比べて、
総理府卸売物価は五彩だけこれは下
つておる。しかし、
日銀小売物価は逆に
二形騰貴をしておるのでございます。一時的な投売りによるところの問屋の段階における
物価低落はあるいはあるでしようが、これをも
つて気休めとされてはたまらないのでございます。労働省の発表しております八月現在での
失業者数は七十二万と出ておる。
有沢東大教授のごときは、
潜在失業はこれの六倍に上るということを申しておる。
輸出の増大を誇
つてはおられますけれども、その多くは
出血輸出であ
つて、
下請中小企業のごときは、それがために歳末を前にしてさんたんたる不況のうちにあえいでおります。これら
もろもろの
経済現象は、決して蔵相の言うがごとき
楽観論は許されません。
MSA体制のもとにおける
日本の
経済は、七、八億ドルに上るところの特需ないしは
駐留軍の消費によ
つてささえられていることは申すまでもございません。この厖大な消費は、
日本経済の再
生産過程の中には入
つて行けない旺盛な需要として、
経済外的に消耗せられておるのでございます。かかる
経済構造のもとに、
日本の
生産過程におけるコストの切下げというものは、これはなかなか容易ならないものであ
つて、
従つて物価の
低落は望めないとするのが、むしろ今日の大方の識者の意見であります。
大蔵大臣並びに
審議庁長官はこの点に関していかなる所見を持
つて嘉られるかをただしたいと存じます。
大蔵省は、二十九年度
予算において、一〇%の節約を
予算執行途上に発表いたした。そうして、
各省の上に君臨して、その
独善的施策を強制いたしたのでございます。
物価が
低落した、または
低落するであろうと称して、一方的に強行をいたしたのでございますが、「体このような権能がだれによ
つて許されておるのでございましようか。
物価は、前述いたしましたように、必ずしも
低落はいたしておりません。
従つて、
各省は
事業量の縮小をするのほかなく、当初計画を変更してこれに対応するの余儀なきに至りました。これが財政法の違反でなくて何でありましようか。しかも、今回の補正
予算においては、その財源の中で百五十億を節約もどしによ
つて充当いたしておるのでございます。かかるほし」ままが許されるとするならば
国会はいりません。大蔵省は国権の最高機関であるところの
国会の
予算審議権を干犯したものであると私は断じてはばからない。(
拍手)小笠原
大蔵大臣の
責任ある答弁を求めんとするものであります。
今次補正
予算の特徴を災害
予算と称することによ
つて被災地の民衆を籠絡しておりますが、これほど羊頭狗肉の
予算はございません。予備金支出のほかにわずかに六十九億円というのでは、おそらく
政府与党の諸君といえども何をも
つて罹災地の選挙民にまみえることができましようか。昨年の救農
国会においては、同じ
吉田政府のもとにおいて、なおかつ総額五百億円に上る災害
予算が計上せられました。幸いにして本年の被災総額は昨年に比しては少いとはいうものの、局地的には深刻の度合いはきわめて強い地帯がございます。私も北は北海道から南は九州のはてに至るまで見てまわりましたが、惨状まさに眼をおおわしめるものがございます。去年の北九州に比して、ことしの南九州が同じ程度の被害でありながら、国の配慮において厚薄があるということは、
政治の不均衡でございます。みぞれが降
つておる北海道において、二年続いた冷害のためにこの冬をいかに生き抜くかという嘆き、これを
大蔵大臣あるいは加藤災害連絡本部長はよく
認識せられて、
責任のある答弁をお願いしたいのでございます。(
拍手)
昨日の
総理の
演説の最後には、「生産と
貿易の拡大を総合的、計画的に進め」云々というくさりを承るに至りました。この草稿は下僚に準備せしめたものであるとはいえ、
総理としての
責任のある御発言でございます。本年一月、この議場において、わが党三木代議士の質問に答えて、計画的な
経済は
共産主義国家のやることであると放言して失笑を買
つたことは、われわれの記憶に新たなるところでございます。(
拍手)一年を経た今日、
首相の発言はま
つたく百八十度の変化である。
首相退陣近くしてその言やよしとでも申し上げるべきでございましよう。(
拍手、笑声)この際
首相のお
考えをもう少し詳しく承りたいのであります。
この点に関連をいたして、私は通産大臣に承りたい。目下外貨割当をめぐ
つて日本経済が撹乱をされておる
状態でございます。たとえば、砂糖のごとき生活必需物資が、あるいは
輸出リンク等の関係もあ
つて、暴落、暴騰常ならないのはいかなる次第でございましよう。現在量とにらみ合せつつ円滑な原糖輸入をはか
つたならば、市価のフラクチユエーシヨンをもつと調整できるはずである。糖業界における過剰投資、過剰設備をもつと規正できたはずでございます。あるいはまた、石油の輸入を野放しにいたしたまま国内企業の動力施設をオイル・バーナーに切りかえる指導をしておきながら、最近ではこれを引締めて、また再び石炭をたかしめるというようなことは、無定見もまたはなはだしきものでございます。(
拍手)国内貯炭が山積するということはすでに予想せられてお
つた。
従つて、エネルギー資源の総合的な
施策勘案に欠けてお
つたことがこの結果を来したものであ
つて、まことに遺憾千万でございます。あなたはこの点をいかにお
考えになるか。
われわれの知るところでは、
経済審議庁において総合開発の構想というものがございます。昭和四十年における
日本経済の姿をかなり克明に描写しておるところの資料がある。しかしながら、審議庁の役人諸氏は、明哲保身の術を心得ておりますか、Y項パージなどという前例もございますので、これが発表を躊躇しておる状況でございます。
経済審議庁長官は、この際その輪郭をお示し願いたい。それによると、昭和四十年における労働人口の推定——今日から約七百万増加をするということに相な
つております。この七百万が新たに雇用の機会を求めて登場するのでございます。これと関連せしめて、
日本の
経済構造というものは、昭和二十七年よりも五六%向上しなければこの労働人口をささえきるわけには参りません。そういたしますと、現在のような無軌道な自由
経済ではとうてい購え得るところでない。しかも、資本主義のわく内でこれを解決する道あわとするならば、
経済審議庁長官の御
見解を承りたい。
また労働大臣にあわせお尋ねをしたいのでありますが、これと対応するところの方策をあなたはお持ちにな
つているかどうか。これはこの間の次官通達などをはるかに越えた大問題でございます。
ついでに小坂労相にもう一点お尋ねをしておきたいのは、本年における新規雇用の問題でございます。そのうちでも大学出身者の身の振り方をどらすべきか、これに対する対策をお示し願いたい。われわれはこれら知識階級の失業こそ真に恐るべきものだと
考えるからでございます。
私は、この際、農林大臣に御登場を願いまして、一、二お尋ねをいたしたいと存じます。一億ドルの余剰農産物買付
交渉の妥結いたしましたことは、
日本農業にと
つていかなる影響をうえるでありましようか。ドル
貿易に片寄
つている
日本の輸入がその跛行性をますます深めることと相なり、ポンド圏ないしはオープン勘定地域への
輸出を妨げる点は第一に指摘されなければなりますまい。
日本国内で使用できる円
資金は約二百十四億であるといわれておりますが、これが大部分国内の農業増産に投資されるならば、まだわれわれはがまんをいたしましよう。この際農業方面への投資が幾ばくに相なるかを明らかにせられたい。もしその大部分が農業以外に流れるといたしまするならば、生産農民は容易に承服しないでございましよう。余剰農産物の
内容は、綿花であり、大小麦であり、ないしは米をも含むと聞いておりますが、この中に乳製品等を含んでおらないか。酪農危機の叫ばれる今日、この点を軽々にわれわれは見過すわけには参りません。問題は
日本の麦作に対する圧迫であり、今日といえども外麦値段は内地小麦をはるかに下まわ
つております。それ
ゆえに、輸入食糧から食管会計の黒字が出て参
つて、今回の補正
予算には百五十億円に上る財源をこれに求めておるのであります。
日本の気候風土は必ずしも麦の生産には適しておらない。
従つて、戦前以来麦に対して特殊な保護
政策がとられて参
つて来ております。ところが、本年の麦価決定に際してとられたところの方策は一体何であ
つたか。昨年、一昨年と、大麦を対小麦比価において有利に決定をいたし、も
つて大麦増産
政策をと
つて参
つたのでございますが、去る六月、小麦だけはパリティ
通り引上げ、大・裸麦を逆に引下げるとい矛盾をあえて犯したのでございます。パリティを貫くにもあらず、前年度価格をすえ置くにもあらず、ま
つたく無
原則な麦価決定をいたしたことは、
自由党農政の無定見を暴露いたしたものでございます。(
拍手)保利農林大臣が述懐したことく、
自由党は農民をだまして大麦の作付をふやせた、こういうことに相な
つておる。
アメリカ余剰農産物の氾濫は、やがて
日本の麦作を危機に陥れるに違いございません。(
拍手)
政府は今後いかなる価格
政策をとらんとするのであるか、輸入大・小麦との関連においてお答えを願いたいと思うのであります。
今年度平均米価もまた石当り九千七百二十円というところにおちついて、昨年の一万四百六十円に比べまするならば七百円の値下りである。米価体系は今やま
つたく崩壊し去
つたともいうべく、パリティ計算方式はプラス・アルフアがついた瞬間に
自己否定をしたと同様であります。早場米奨励金であるとか、完遂奨励金であるとか、超過供出奨励金であるとか、豊凶係数加算であるとかいうような、このややつこしい米価の維持はもはやできない段階に来ておる。
政府は米価算定にあた
つていかなる対策を持
つておられるか、この際食糧管理法の規定するがごとき、再生産を保障するに足るところの生産費を基礎としたところの米価を採用するお
考えはないものであろうか。この点、農林大臣のみならず、
大蔵大臣の御
見解を伺
つておきたいのであります。
農産
物価格は行き詰ま
つておるのみでなく、
予算面から来るところの食糧増産対策費は大幅に削減されておる。今や農政自体はま
つたく行き詰ま
つたと言おなければなりません。それにもかかわらず、農家が購入するところの生産資材、たとえば肥料に例をと
つて申すならば、ついこの間電力料金の値上げを
理由といたしまして硫安一かます三円六十銭の値上げが決定したのは、諸君御承知の
通りであります。この農政の行き詰まりに対して、農林大臣は微力にしてと陳弁をせられておりますが、この際、
保守合同の幕合いなどに出没されることはやめて、農
政府開に勇猛心を振われんことを希望するのであります。(
拍手)
次に、食糧管理制度に関して一言いたしておきたい。今日主食としての米のみが唯一の残された統制品でございます。本年は大体平年作と予定せられておるにもかかわらず、義務供出量は千八百三十万石、超過供出を合せて二千二百四十九万石という集荷量しか確保されない
状態でございます。昨年の大凶作においてさえも二千万石は確保できたのであります。それよりも八百万石もよけいとれておる現状下に、右のごとき数字でも
つて知事
会議を押し切られてしま
つたということは、今日の
政府の無力を物語る有力な証左である。これでは
国民食糧はた
つた八日分しか配給ができないのであります。
国民の半数であるところの非農家に対して月わずか八日分の内地米を確保するために、あの厖大な機構と経費を要する食糧庁の存在がはたして必要であるかという世論の痛烈な批判も出て参
つております。しからば、米の統制は撤廃すべきか。これまた、米の絶対量の不足と、
日本人の米に対する特殊な執着からいたしまするときに、米はたちまち投機の対象となり、
国民食生活の上から危険であるという有力な議論もございます。少くとも
政府が本年の供米確保に無力であり、失敗をいたしたことは、まずとがめらるべきであ
つて、食糧管理制度をどこへ持
つて行かんとするか、これを承
つておきたいのでございます。
最後に私は一言
吉田総理に申し上げたい。それは、ただいまの
松村さんに対する
総理の御答弁を伺
つてお
つて、私どもははなはだ遺憾にたえません。今や
政治に対する絶望感が都郡を問わずみなぎ
つており、何かしらやりきれないという感情に満たされておる。水が滞ると腐るのたとえの
通り、同一
政権があまりにも長く権力の座にいすわるときには、必然的にかような現象が起
つて来るのでございましよう。占領
政治を切りかえることなくして、その惰性のままに今日に及んで来ておるところに病根の原因があろうかと思う。私どもは、
吉田総理は折目、筋目を正しく通す方だということを従来聞いて参
つた。ところが、最近の実情はま
つたくこれと相反しまして、
政治倫理は今や地を払
つておる。昨日の
演説においては、目前の
政局については何ら触れるところがございませんでしたが、
国民の聞かんとするところは、日米共同
声明のむし返しでなくして、当直
総理が
進退をいかにされるかというところに集中してお
つたと思うのであります。(
拍手)
日本民主党は、去る十一月二十四日結党、生誕いたしました。これは
首相にと
つてはあるいは好ましからぬことであ
つたかもしれない。しかし、これはあくまで冷厳なる事実であります。しこらして、事ここに至りましたのは、やはり長きにわたる
吉田政治の反動であります。新党は
吉田的なるもののアンチ・テーゼとして生れるべき必然性を持
つてお
つた。(
拍手)
首相は、新党を目して悪者の集まりである、
政権争奪の徒党であるかのごとく語
つておられまするが、
自己に都合の悪い
立場を認めようとしないのは、これはまさに独裁
政治にほかならない。われわれが
吉田政治と称するものは一体何であるか。これは
吉田的な側近権力
政治であり、岡崎的な退嬰独善
外交であり、池田的な自由放任
経済でございます。これらのものを総括して、われわれは
吉田政治と呼ぶのである。新党はこれと対決するところに使命があるのであ
つて、この際
吉田総理は新党に対する誹謗の言辞を取消そうとされないのか。あなたの
政局に対する心構えを最後に伺いまして、私の質問を終ることといたします。(
拍手)
[
国務大臣吉田茂君
登壇〕