○佐藤(洋)
委員 ただいま
議題となりました
水稲健苗育成施設普及促進法案につきまして、
提案の理由を御
説明申し上げます。
米の生産を増加いたしますことは、わが国における国内食糧自給度の向上及び国際収支の改善等経済自立上、喫緊の要件でありますとともに、
農家経済の安定上からもきわめて重要な施策であることはいまさら申し上げるまでもないところであります。
わが国における米の主要生産
地帯であります
北海道、東北等寒高冷
地域の稲作は、その生育期間の気温が低く、かつまた、積雪多量などのため、稲の生育期間が短かい上に、夏期の低温及び冷水灌漑等により、受精障害並びに生育遅延による登熱の障害を起しやすく、
冷害を受ける危険が多分にあり、水田の生産力は不安定でありますとともに、またはなはだ低位であります。また、これらの気象的条件により、水田の利用率は低く、経済的にもはなはだ立ち遅れの
状況を来しているのであります。これらの
地域の水稲作を安定し、その増産をはかりますための耕種法改善策としては、第一に早播、速い早植により健苗の育成をはかることがきわめて必要であることは周知の通りであります。幸い健苗の育成につきましては、
農家のたゆまざる努力とこれに対する農業
技術者の協力によりまして、温床苗しろ、保温折衷苗しろの、ごとき画期的な育苗方法の研究完成を見、これに対する数年間の熱心な奨励と国の助成とにより、著しい普及を見るに至つたのであります。特に
昭和二十八、二十九
年度冷害に際し、この苗しろによつたものはその効果を一段と発揮し、米の生産増加と減産防止に著しい効果を収めて参つた次第であります。
しかしながらこれが普及
状況をしさいに
検討いたしますと、水稲の健苗育成
施設の実施を最も必要とする寒高冷
地域に対する普及度はいまだ不十分であり、かつこの
地域の
農家の経済力は一般に低位にありまするので、この
地域に対しましては、今後重点的かつ計画的に、一層の普及の
促進をはかりますことが刻下の急務であると
考えられるのであります。
かような事情にかんがみ、今後一貫した計画のもとに、これらの適応
地域に対し、健苗育成
施設の普及
促進をはからんとするのが本
法律案を
提出するに至つた理由でございます。
以下、この
法律案の
内容について概略御
説明申し上げます。
第一は、水稲健苗育成
施設の普及を必要とする
地域及び地区の指定でありまして農林大臣は、積雪はなはだしくまたは水稲の生育期間における気温もしくは水温が著しく低いために、その区域内の水稲作が不安定または低位である都県道府の区域の全部または一部を寒高冷
地域として指定し、この指定に基き、都道府県知事は管内
市町村の区域の全部または一部を寒高冷地区として指定することにより、水稲健苗育成
施設の普及を重点的かつ計画的に実施し、
事業を効果的に遂行しようとするものであります。
第二は、水稲健苗育成
施設普及計画の樹立であります。寒高冷地区の指定を受けた
市町村長は、農業
委員会の意見を聞いて水稲健苗育成
施設の普及計画を定め、都道府県知事に
提出しますとともに、都道府県知事は
市町村の普及計画を参酌して都道府県の普及計画を樹立し、農林大臣に
提出し、農林大臣は都道府県知事の計画を参酌して国の計画を定めることとしようとするものであります。しかして、水稲健苗育成
施設の普及
促進は、この計画に準拠して行われることになるのであります。
第三は、国の普及計画実施のため必要な経費の予算への計上と、補助金の交付奨励
措置または指導監督の助成でありまして、
政府をして、都道府県に対し
市町村が水稲健苗育成
施設の普及計画を実施する
農家の資材購入に対して補助するのに要する経費の全部または一部を都道府県が
市町村に対し補助するための経費並びに都道府県が当該都道府県の普及計画を実施するために必要な経費に対し補助金を交付せしめますとともに、普及計画を実施するために必要な
資金のあつせん等、
事業施行に必要な諸般の
措置を講ぜしめようとするものあります。
なお、
本法の有効期限は一応これを
昭和、三十五年三月三十一日までといたしております。
以上が本
法律案の
内容の大要であります。何とぞ慎重御
審議の上すみやかに御賛成を得られますよう切望する次第であります。