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1954-12-03 第20回国会 衆議院 通商産業委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十二月三日(金曜日)    午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君    理事 柳原 三郎君 理事 山手 滿男君    理事 永井勝次郎君 理事 加藤 鐐造君       小川 平二君    土倉 宗明君       南  好雄君    笹本 一雄君       田中 龍夫君    加藤 清二君       齋木 重一君    伊藤卯四郎君       中崎  敏君    岡田 春夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  愛知 揆一君  出席政府委員         通商産業政務次         官       加藤 宗平君         通商産業事務官 岩武 照彦君         (大臣官房長)         中小企業庁長官 記内 角一君  委員外出席者         通商産業専務  永山 時雄君         官         (繊維局長)  馬郡  巌君         通商産業事務         官         (中小企業庁金         融課長)    谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 九月十一日  委員田渕光一辞任につき、その補欠として坪  川信三君が議長指名委員選任された。 同十四日  委員斎木重一辞任につき、その補欠として井  手以誠君が議員の指名委員選任された。 同月十七日  委員小川平二君及び福田一辞任につき、その  補欠として玉置信一君及び北れい吉君が議長の指  名で委員選任された。 同日  委員北れい吉辞任につき、その補欠として福田  一君が議長指名委員選任された。 同二十八日  委員天野公義辞任につき、その補欠として渡  邊良夫君が議長指名委員選任された。 十月六日  委員池信辞任につき、その補欠として高田  弥市君が議長指名委員選任された。 同月七日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として齋  木重一君が議長指名委員選任された。 同月八日  委員長谷川四郎辞任につき、その補欠として  舘林三喜男君が議長指名委員選任された。 同月十五日  委員高田弥市君、福井勇君及び舘林三喜男君辞  任につき、その補欠として田中龍夫君、始関伊  平君及び長谷川四郎君が議長指名委員に選  任された。 同月二十二日  委員長谷川四郎辞任につき、その補欠として  舘林三喜男君が議長指名委員選任された。 同月二十六日  委員舘林三喜男君及び伊藤卯四郎辞任につき、  その補欠として長谷川四郎君及び辻文雄君が議  長の指名委員選任された。 同月二十七日  委員辻文雄辞任につき、その補欠として伊藤  卯四郎君が議長指名委員選任された。 同月二十九日  委員渡邊良夫辞任につき、その補欠として小  平久雄君が議長指名委員選任された。 十一月十一日  委員長谷川四郎辞任につき、その補欠として  舘林三喜男君が議長指名委員選任された。 同月二十日  委員舘林三喜男辞任につき、その補欠として  長谷川四郎君が議長指名委員選任された。 同月二十七日  委員吉武惠市君辞任につき、その補欠として佐  藤栄作君が議長指名委員選任された。 同日  委員佐藤榮作辞任につき、その補欠として吉  武惠市君が議長指名委員選任された。 同月二十九日  委員永井勝次郎辞任につき、その補欠として  井谷正吉君が議長指名委員選任された。 十二月一日  委員小金義照君、首藤新八君、井谷正吉君及び川  上貫一辞任につき、その補欠として南好雄君、  齎藤憲三君、永井勝次郎君及び岡田春夫君が  議長指名委員選任された。 同月三日  委員齋藤憲三君、玉置信一君及び岡田春夫君  辞任につき、その補欠として首藤新八君、小川  平二君及び風見章君が議長指名委員選任  された。 同日  理事小川平二君及び首藤新八君の補欠として小  平久雄君及び柳原三郎君が理事に当選した。 同日  福田一君及び永井勝次郎君が理事補欠当選し  た。     ――――――――――――― 十一月三十日  中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案  (山手滿男君外十一名提出、第十六回国会衆法  第一七号) 十二月二日  昭和二十九年八月及び九月の風水害による被害  小企業者に対する資金融通に関する特別措置  法案内閣提出第一〇号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  国政調査承認要求に関する件  参考人招致に関する件  小委員及び小委員長選任  昭和二十九年八月及び九月の風水害による被害  小企業者に対する資金融通に関する特別措置  法案内閣提出第一〇号)  通省産業行政に関する件  中小企業に関する小委員長より報告聴取  中小企業年末金融に関する件     ―――――――――――――
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任につきお諮りいたします。まず最初に、理事小川平二君が去る九月十七日委員辞任につき、小平久雄君を理事補欠選任すること、次に理事福田一君去る九月十七日委員辞任ぜられ、同日再び委員選任せられましたので、同君を再び理事補欠選任すること、次に理事永井勝次郎君去る十一月二十九日委員辞任せられ、十二月一日委員選任せられましたので、同君を再び理事補欠選任すること、次に日本民主党が新たに結成せられ、同党の理事の割当が二名となりましたので、同党より山手滿男君、柳原三郎君を理事とすること、以上決定するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大西禎夫

    大西委員長 それではさよう決定いたします。  なお去る一日の理事会において各派の理事各位に御協議を願い、議席は現在の通り決定いたしましたので御了承を願っておきます。     ―――――――――――――
  4. 大西禎夫

    大西委員長 次に国政調査承認要求の件についてお諮りいたします。本件につきましては、第十九回国会調査事項と同様として、議長にその承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大西禎夫

    大西委員長 それではさよう決定いたします。     ―――――――――――――
  6. 大西禎夫

    大西委員長 次に小委員会の設置並びに小委員及び小委員会選任につきお諮りいたします。これにつきましてNは小委員会及び小委員長については第十九回国会通りとし、小委員選任につきましては、所属党その他の変更がありますので、これを委員長に御一任願いたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 大西禎夫

    大西委員長 それではさよう決定いたします。     ―――――――――――――
  8. 大西禎夫

    大西委員長 次に去る一日の理事会理事各位の御決定を願ったのでありまするが、来る6日午後一時より小委員を開き、石油関税に関する問題について参考人を招致し、その意見を聴取いたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。  〔「御異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 大西禎夫

    大西委員長 それではさよう決定いたします。  なお参考人の人権につきましては委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 大西禎夫

    大西委員長 それではさよう決定いたします。
  11. 大西禎夫

    大西委員長 次に去る二日本委員会に付託せられました昭和二十九年八月及び九月の風水害による被害小企業者に対する資金融通に関する特別措置法案を議題とし、その提案理由説明を求めます。加藤政務次官
  12. 加藤宗平

    加藤政府委員 昭和二十九年八月及び九月の風水害による被害小企業者に対する資金融通に関する特別措置法案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  わが国経済の健全な発達をはかるためには、その基盤をなす中小企業の振興をはかることが緊急時であることにかんがみまして、政府としましてもこれが育成に万般の措置を講じつつあるのでありますが、特に最近の経済及び財政金融情勢下におきましては、中小企業に対する金融円滑化、その経営安定化は刻下の急務となって参っておるのでございます。しかるところ、本年八月及び九月における台風によって、中小企業者の被った損害は、商工業関係におきまして約百二十億円の巨額に上り、これに対する資金融通については、特段の配慮を必要とすると考えられるのでございます。政府としましては、これに対処いたしまするため中小企業金融公庫国民金融公庫等を通ずる政府資金特別融資措置を講じて来たのでありますが、さらにこれに加えまして、昭和二十八年における風水害に際してとられたと同様に、一般金融機関よりの被害小企業者に対する融資について特に積極的な優遇策を講ずることといたしまして、従来ともすれば金融の恩典を受けることの少なかったこれら小企業者に対する災害復旧資金融通を一段と強化し、もってその期待にこたえたい所在でございます  次にこの法案概要を御説明申し上げます。この法案におきましては、金融機関被害小企業者に対し、災害復旧に必要なる事業資金として二十万円以内の貸付を行った場合においてその都道府県がこれにつき年五分の利子補給を行ったときに、政府といたしましては、その利子補給額の半額をその都道府県に支給することといたしております。従いまして実際の支給は、金融機関に対してなされることとなるのでありますが、これによって、被害を受けた小企業者は通常の場合よりも年五分だけ低い利子資金調達ができることとなりまして、その災害復旧の促進と経営の安定に資することができると考えられるのであります。なお予算上の措置といたしましては、さしあたり本年度補正予算案におきまして二百万円を計上いたしておる次第でございます。  以上がこの法律案提案理由とその概要でございます。どうぞ慎重御審議の上、可決せられますよう御願い申し上げる次第でございます。
  13. 大西禎夫

    大西委員長 以上で提案理由説明は終りました。本案の審議は昨日にこれを行いたいと存じます。     ―――――――――――――
  14. 大西禎夫

    大西委員長 次に年末金融の問題に関して質疑を許します。永井君。
  15. 永井勝次郎

    永井委員 この際中小企業庁官から年末金融に対して当面措置している計画を簡単にご説明願いたいと思います。
  16. 記内角一

    記内政府委員 年末金融対策について御説明申し上げます。  まず第一に、かねて問題になっておりました政府指定預託金引揚げ延期の問題でございますが、十月分につきましては、災害地帯を除きまする都道府県におきまする信用金庫相互銀行に対する預託金約四億五千万円は引揚げられましたが、その残り十一億円はそのまますえ置かれるということに相なります。十一月分につきましては、全額十六億円の預託金のすえ置きを決定を見たわけでございます。十二月分の引揚げ予定の十六億につきましても、われわれ当然この年末を控えての際でございますので、これはすえ置くものというふうに考えて措置いたしておるような次第でございます。  次に政府機関の問題でございますが、国民金融公庫におきましては、昨年は大体百十九億の第三・四半期融資実績でございましたが、今年度におきましてはこれを百二十九億まで増加して参るということに決定を見まして、逐次その貸出しを行っておる次第でございます。  中小企業金融公庫につきましては、御承知通り上期百億、下期百億という予定でございましたが、今期におきましては、これは長期資金でございまして、やはり年末金融の一助にもなると考えますので、当初の予定は六十億でございましたが、これを八十億くらいまで増加して参りたいということでその手配を終っております。もし万一、予定金融がこれをオーバーするということになりますれば、第四・四半期に、予定されるものを引揚げて参ってもいいのじゃないかというふうな考え方をとって進んで参っております。  商工組合中央金庫につきましては、昨年度は大体九十億程度融資増ということになっておりますが、今年度も大体九十億前後の融資増を見込んでおりまして、その資金的な手配は大体見通しがついております。ただこれが国民金融公庫と同じように、回収金を含めての融資ということになりますと、商工中金におきましては、従来毎月百億くらいの資金を回収して百十億くらい貸し付けておるという状態でございましたが、この三箇月間におきましては、四百九十四億、大体五百億近い資金を貸し付けて、結果におきましては約九十億くらいの貸出し増ということに相なるわけでございます。その資金源といたしましては、先ほど申しました政府預託金引揚げ延期というふうなこと、あるいは日本銀行からの二次高率による借入れというふうなことによって十分調達がつくというふうに考えておる次第でございます。なお御承知通り商工中金信用組合と取引をいたしておりまして、いわば信用組合の親銀行のような形で、信用組合を通じまして零細な金融をいたしておるわけでございます。現在約九億近い金が出ておるわけでございますが、年末に際しまして、特別に便宜をはかるようにということで、大体八、九億の金が信用組合を通じてさらに融通されるように今手配をいたしておる次第でございます。  以上政府機関としての金融措置でございますが、さらに御承知通り、最近一般支払いが遅延いたしまして、手形がに長期化するという傾向もございます。そこで商工中金に勧奨いたしまして、従来九十日を原則とし、例外的には百二十日くらいまでの手形を割引くというふうな仕事をやって参っておりましたが、最近の手形長期化傾向にかんがみまして、これを三十日くらい延期いたしまして、百二十日くらいまでは原則としてやれる。場合によりましては百五十日でも貸付ができるというふうな措置もとらせたいと思って、今その手配を終っておる次第でございます。なおこういうふうな支払いの遅延あるいは手形長期化傾向にかんがみまして、特に金融機関に対しましては、大蔵省あるいは日本銀行にお願いいたしまして、金融機関からのいわゆる親企業に対する支払いの際におきまして、下請企業にできるだけよけいに払うようにということを勧奨してもらっております。また年末になりますと、政府支払いも大体進歩はいたすのでございますが、特に先般次官会議決定をもちまして、政府支払いを促進するようにという点、また政府支払いに際しまして、下請け業者支払いを促進するようにという勧奨をしてもらうという二点につきまして、次官会議決定を見たわけであります。それに応じまして、関係官庁の担当の課長に、その点を特に集まりを願ってお願い申し上げ、さらにまた地方庁等に対しましても、たとえば土木事業ヘの支払いというふうな面を通じまして、できるだけ年末の金融中小企業の面にまで及ぶようにという手配をいたしておる次第であります。
  17. 大西禎夫

    大西委員長 それではこの際中小企業に関する小委員会より発言を求められておりますので、これを許します。永井勝次郎君。
  18. 永井勝次郎

    永井委員 中小企業対策小委員会は、十月の二十六、七、八、三日間開会いたしまして、百貨店に関する問題、年末金融に関する問題、その他について三日間審議をいたしたのでありますが、この会議の結果、中小企業年末融資に関する決議を行いましたので、本委員会にこれを報告いたしまして、皆様の満場一致の御賛同を賜わりたいと思うのであります。  この委員会においては、金融関係のそれぞれの機関責任者を招致いたしまして、いろいろ調査をいたしました審議過程におきましては、民主党笹本君、首藤君両君より、銀行機関関係に対して、定期預金強制歩積み過程である点を痛烈に究き、しかも金融機関が非常な暴利をむさぼって利益を上げておる。この利益を隠すために、各地各都市のほとんど目抜きの場所に銀行の鉄筋コンクリートの建物が建ち、相当利益を上げて、それが金を借りる関係にしわ寄せされておるということについて、痛烈な質問がありました。年末金融に関する決議をここに読み上げまして、皆様の御賛成をいただきたいと思うのであります。    中小企業年末融資に関する決議    案   デフレ経済を枢軸とした本年度予  算財政の実施の結果は、全産業分野  に顕現せられ、なかんずくこれが影  響は、中小企業分野において顕著  に現れ、明年度予算財政規模の先  行を考慮に入れるならば、本年末の  様相はいよいよ予断を許さないもの  がある。    ことに金融面における逼迫、中小  企業専門金融機関への投融資の削  減、一般銀行中小企業金融に対す  る情熱の欠如と相まって、不況にあ  えぐ中小企業の前途をまったく暗澹  たらしめているといわなければなら  ない。   よって本小委員会は  一、商工組合中央金庫国民金融公   庫、中小企業金融公庫、地方銀   行、相互銀行信用金庫等におけ   る政府指定預金引揚げを明年三   月まで延期すること。  二、相互銀行信用金庫等に対して   は、資金運用部資金導入をなし   得るよう措置すること。  三、中小企業金融公庫資金源につ   いては、少くとも月間三十億程度   の貸付を行い得るようにするこ   と。  四、商工組合中央金庫に対する中小   企業金融公庫貸付二十億円は、   商工組合中央金庫に対する政府出   資に振りかえ、公庫に対する政府   出資二十億は別途計上すること。  五、商工組合中央金庫金融債引受   については、少なくとも五十億程度   とすること。  六、金融機関、なかんずく市中銀行   の中小企業貸出金利は大幅に引   下げること。  七、金融機関中小企業貸付に際   しての歩積預金並びに定期預金の   強制は厳重に取締ること。  右決議する。  以上であります。
  19. 大西禎夫

    大西委員長 それでは午前はこの程度にいたしまして、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時二十一分休憩      ――――◇―――――    午後二時四十三分開議
  20. 大西禎夫

    大西委員長 休憩前に引続き会議を開きます。まず通商産業行政一般について政府当局より説明を聴取いたします。まず愛知通商産業大臣より渡米報告をかねて現下の通産行政につき御説明をお願いいたします。
  21. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず私の先般の渡米関係いたしまして若干の御報告を申し上げ、あわせて最近のわが国経済情勢の概観を申し上げたいと思います。  私は去る十月十七日に出発いたしまして 米国滞在中の前半は主として吉田総理訪米のための下準備をいたしましたが、後半におきましては、吉田総理大臣を補佐いたしまして、行動をともにいたしまして、十一月の十七日に帰国いたしたのであります。吉田総理渡米につきましては、すでに総理大臣より御報告申し上げた通りでありますので、御承知通りであります。従って私の前半吉田総理大臣訪米準備と申しましても、ひつきよう日米相互理解を深め、相互協力をより緊密にするための話合いに終始いたしたわけであります。しかしてその話合いも終始非公式会談の形式をとりまして、日米両国相互関係のある諸問題について率直な意見の交換をいたし、もって相互理解を深めるために努力いたして参つたような次第であります。全般的にこの訪米の結果については総理大臣から御報告をいたしました通りでありますから、私からつけ加えることはございません。ただ私は通産大臣並びに経済審議庁長官としての立場上、経済問題を主として取扱い、この面における相互理解協力を深めるために特に力を注ぎました関係上、経済面について主として御報告をつけ加えて申し上げたいと思います。  まず第一に申し上げたいことは、米国側が過去一年間の日本経済政策並びに諸般経済問題の推移につきまして、正確な評価をしておるような印象を受けたわけでございます。そのある部分につきましては、相当敬意を払っておると言っても言い過ぎではないと思うのであります。すなわち国際収支均衡回復のためにとっております諸般政策、あるいは自主的なる防衛力漸増努力、及び国民の真剣な努力政府施策に対する国民協力に関しまして、敬意を表しておると思うのであります。去る十月の十日に発表せられました日米共同声明の中にも、特に今日日本経済上の困難な諸問題を解決するために払っておる努力米国がよく認識しておる旨を述べておるのもこの現われと考えるのであります。申すまでもなく、自由諸国がそれぞれ健全にして強力な経済を通じて互いに手を携えて、自由と繁栄の維持増進協力して参りますことは、きわめて望ましいことと存ずるのであります。さればこそ共同声明にも、日本自民経済的な福祉自由世界全般にとっても重要な事項であるとうたっておるのであります。  第二に、東本アジア経済協力日についてでございます。日米両国アジア自由諸国、砕いて申せば、南及び東南アジア自由諸国経済発展に互いに協力する旨の了解一般的にできたわけでございます。吉田総理大臣は特にこの面において日本が寄与する決意を確認し、当該地域経済発展につきまして日本としてもあろう限りの協力を行うことを希望する旨を強調いたしたわけでございます。この東南アジア経済協力経済発展根本方針は、具体的にはたとえば余剰農産物処理による見返り円資金の一部が、当該地域との経済共同発展のために使用せられる旨の日米両国了解、及び米国政府東南アジア経済協力をあらためて考慮せんとするところの動きともなって現われて来ておるものと思うのであります。  第三は、日米通商関係改善の問題でございます。私はわが国ドル地域との貿易の不均衡が著しく、貿易面の不足を特需によって補っております状況にかんがみまして、またその特需減少傾向にあることに顧みまして、ドル地域に対する輸出伸張日本正常貿易発展のために最も必要である点を米国当局に十分説明いたし、米国側もこの点に関する理解を深めたものと確信いたしております。すなわち米国に対するわが国主要輸出品であります生糸、水産物、カン詰あるいは各種雑貨類等につきまして、米国側としても関税その他の点において、これら商品の輸入に格別の考慮を払われるよう要請いたした次第であります。さらにこの正常な輸出伸張によりまして、ドル収支改善が行われるまでの間、特需によるドル収入の確保が日本経済にとってきわめて重要な意義を持っていることの認識をより深めるような話合いもいたして参ったのであります。しかして米国政府日本貿易伸張し、もつて日本国民福祉をさらに増進いたしますため、米国としてとり得る各種施策については、今後とも好意をもつて検討する方針を声明いたしております。特に十月十三日には、米国務省は、日本通商面の機会を拡大する目的をもって、関税引下げの対日交渉を行う旨の発表をいたしておるような次第でございます。かくして私どもは、今後の日本米国及びその他諸国との貿易拡大期待を持つものであります。  第四は、余剰農産物処理の問題であります。この問題につきましては、一億ドルに上る農産物処理計画につきまして、両国政府了解に到達し、市場価格八千五百万ドル相当物資日本円貨で売却され、またコスト千五百万ドル相当物資は現物で日本に譲与され、学童給食並びに被服計画のため使用されることになったのであります。八千五百万ドル相当円貨のうち、七割に相当する部分日本円貨借款として供与せられる。わが国はこれを農業開発を含む国内経済改善及び地域的な経済発展に使用せんとするものであります。これによりまして、内は経済開発並びに改善、外は東南アジアとの経済交流及び発展に資するところ大なるものがあることを確信するものであります。  第五はガット加入の問題、外資導入の問題、生産性向上計画の問題へその他諸般経済問題の検討であります。特にガット加入問題については、米国の好意を謝するとともに、外資導入につきましても双方率直な意見の交換をいたしまして、この問題に関する理解を深めたつもりでございます。なお外資導入に関連いたしまして、世界銀行の借款につきましても、世界銀行当局と話合う機会を得たのでありますが、農業調査団による報告もすでに銀行側においては完了し、水力電気、鉱工業関係も順調に調査が進んでおるようでございますので、きわめて明るい見通しを持ち得るに至ったのであります。なお生産性向上計画の実施につきましても、基本的な了解に達したのでございます。  最後に米国政府が原子力委員会を通じ、原子力の平和的利用について厖大なる文献を日本政府に寄贈されたことを報告申し上げます。  以上経済問題について若干の御報告をいたしましたのでありますが、経済の面のみを考えてみましても、両国の理解協力を深める上に多大の成果を収めたものと信ずるのでございます。さらに申し上げたいことは、以上申し述べました種々の経済上の諸方策が、すべて日本経済改善及び生活水準の向上を促進するために資するところの大なるものがあることにつきまして意見の一致を見たことでございます。最近わが国経済は正常化の一途をたどり、国際収支も六月以来黒字を記録しておるようなわけでございますが、今後ただいま御報告申し上げましたような諸方策が、日本経済改善及び国民生活水準の向上を促進する方向に実現されるように一段と努力をいたしたいと考えまするし、またこれによりましてわが国経済の前途に希望を持たしめるようにいたしたいものと存ずる次第であります。  次にごく簡単に最近の経済情勢を概観いたしたいと存ずるのであります。ただいま申しましたように、われわれの政策の中心である経済正常化政策、特にその最大の目標でありました国際収支は六月より黒字に転じ、爾後毎月相当額の黒字を続けて参りました。この結果本年度上半期の国際収支の実績は約八千万ドルの黒字となりました。また危惧されておりました外貨の保有量も、六月初めに比しますとすでに一億ドル以上の増加を来しておるのであります。従いましてこの状態で進みますれば、本年度国際収支相当の黒字を予想し得ると考えるのであります。一方国内物価はここ半箇年間に一割近く低落するとともに、日本銀行券の発行高もほぼ昨年度並に推移いたし、わが国経済の正常化は順調に進んで来ておるのであります。このことはわが国経済政策の中心目標であります経済自立の達成に一歩ずつ堅実に近づいておることを意味するものでありまして、まことに御同慶にたえないところと存じます。私は本年初頭第十九国会におきまして、昭和二十八年の日本経済を回顧し、経済自立の基盤を達成いたしまするために、当時のインフレ基調を転換是正して通貨価値の安定をはかり、経済の健全化を推進することをもってあらゆる政策の中核といたしたのでありますが、わが国経済がただいま申しましたごとく改善されて参りましたのは、とりもなおさず昨年末以来わが国経済の正常化、健全化を目途として参りました諸政策国民各位が心から協力され、政府と一体となつて経済自立のための努力を惜しまれなかった結果にほかならないと考えるものであります。  この機会に過去一箇年間における経済正常化政策の大体の足取りをごく概略申し述べたいと存じます。卸売物価は一昨年以来漸騰を続けて参ったのでありますが、本年の二月を境といたしまして逐月下落を続け、最近におきましてはピークのときに比べて約七%の低落を示しております。また一昨年以来騰貴を続けておりました小売物価も本年四月ころより横ばい、ないし下押し傾向を示して参りました。一方海外諸国経済情勢は幾分好転して参りましたが、日英協定等の効果とも相まちまして、わが国輸出は三月以来毎月好調を続け、十月までのところ前年同期に比して二割七分の増加を示しております。次に輸入は、国内における輸入金融の引締め、不要不急品輸入の抑止及び輸入の差控えを反映いたしまして、三月以来漸減し、これを前年同期に比較いたしますと七%の減少に当るのであります。その結果わが国国際収支は、いわゆる特需収入が昨年よりも減少したにもかかわらず。先ほど来申し上げておりますように六月以来黒字に伝じまして、年間を通じ相当額の黒字になるものと予想されるに至りました。もとよりここ一箇年来、政府国民協力して推進して参りました一連の経済正常化政策の顕著な成果の陰には、政策の進展に伴います摩擦的な現象も看過いたしがたいことはもちろんでございます。鉱工業生産指数は三月以来下降に転じ、雇用も低下し、具体的な失業、倒産の事例も見られるのでありまして、政府といたしましては、この対策につきましても、今後ともあとう限りの措置を講じなければならないと考えておるのであります。しかしながら世上一部において現在政府のとつております政策の緩和を望む向きも見られるのでありますが、諸般の事情の好転にもかかわらず、なおわが国経済の前途には楽観を許さぬものが多々あるのであります。昨年来の米国における景気後退の現象は、本年半ばをもってほぼ終息したものと見られるのでありますが、英国、西ドイツ、その他西ヨーロッパ諸国におきましては、自国の経済体制の整備を完了し、通貨の交換制の回復、貿易の自由化等に向って着実な歩みを続けておるのでありまして、今後の海外市場における競争はますます激烈になるものと覚悟いたさなければならないと存じます。またわが国国際収支は著しく好転して参ったとはいうものの、産業の合理化、コストの引下げ、特需の減小に対応する正常輸出伸張、実質的外貨収支の改善には、なお幾多の努力を要するものがあると存じます。このため政府といたしましては、わが国の産業、特に基礎的産業につきましては、近代化、合理化を引続き強力に推進することによりまして生産性の向上をはかり、製品コストの大幅な低下を実現し、もってわが国産業の国際競争力を増強しなければならないと考えるのであります。従いまして、石炭鉱業の合理化につきましては、コストの引下げと価格の安定とをはかりますために、相当強力な施策を実施し、また鉄鋼業その他につきましても随時適切なる合理化対策を講じて参らなければならないと考えるのであります。  次に、わが国経済発展が一に輸出伸張いかんにかかっておる事実に顧みまして輸出力の増加のためには、今後とも国内消費の増加を抑制することによりまして、国内物価の国際水準へのさや寄せをはかるため、いろいろの措置を構ずべきことは申すまでもございませんが、さらにこれと並行して、輸出計画的かつ総合的な伸張をはかりますため、先般最高輸出会議を設立いたしまして、さらにそのもとにおいて商品別に輸出会議を設置し、その基体的な方策を考究、実施して参りたいと考えておるような次第でございます。  なおそのほかに、今後においても市場開拓を目途として、いわゆる経済外交を推進することはもちろんでありますが、対外信用の確保に努め、輸出商社を強化し、国際競争力を培養して参らなければならないと考えます。また先般ビルマとの間の賠償並びに経済協力に関する協定の締結を見ております際でもありますので、今後これが適実なる実行に誠意をもって当りたいと考えますが、さらに東南アジア諸国との貿易につきましても、最近プラント類の輸出も漸次増加する趨勢にあるのでありますが、今後とも同地域との貿易の拡大をはかって参らなければならぬと考えております。また中共、ソ連の貿易につきましては、国際協力の線を守りつつ、あとう限りこれを伸張せしめるように努力をいたさなければならぬと考えております。  中小企業につきましては、これがわが国産業に占める地位の重要性にかんがみまして、今後とも引続き金融面その他においてその振興対策を促進いたしますほか、一層協同組合の結成等その組織化を推進し、輸出適格業種の中小企業につきましては、これを輸出面に直結して育成して参りたいと考えておるような次第でございます。  以上、私どもの大体の情勢判断並びに希望を申し述べたわけでございますが、かような考え方のもとに、今後たとえば昭和三十年度予算の編成その他具体的の施策について、これを適切に措置いたし、また計画化いたしたいと考えておるような次第でございます。  以上、出張中の報告とあわせまして、最近のわが国経済情勢の概観を御説明申し上げた次第でございます。
  22. 大西禎夫

    大西委員長 以上で説明は終了いたしました。これについて発言の通告がありますので、これを許します。加藤清二君。
  23. 加藤清二

    加藤(清)委員 ただいま大臣からまことにけっこうな御高説を承りまして、ありがたく思っているわけでございますが、ただいまおっしゃいました輸出振興、中小企業等の指導育成とはおよそ逆な結果を招来するような現象がただいま起きつつありますので、その点についてお尋ねしてみたいと存じます。時間がないそうでございますので、私も簡単にお尋ねいたしますから要領をつかんでお答え願いたいと存じます。  まず第一に、政府の行ったところの措置が、そのために被害をこうむる業界とか地区がある場合に、大臣はこれを救済する最高責任があると思いますが、一体大臣はこれに対していかようにお考えになっているか。またこれから行われようとすることがプラスの面が少くしてマイナスの面が非常に多いとすでに予見され得る場合に、これをあえて行うことは賢者のとらざるところだと思いますが、こういう問題がもしあったとしたならば、それについてどのような措置をとられようとなさいますか、私の質問の要点はそれだけでございます。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 非常に抽象的なお尋ねでございますので、私のお答えが当るかどうかわかりませんが、最近、たとえばイギリスの大蔵大臣のバトラー氏が、やはり同じようにいわゆるデフレーション政策の進行についていろいろと苦慮しておられるようでありますが、そのある席上における発言の中に、いわゆる経済正常化政策、いわばデフレーションに傾くような政策をとる場合には、特にディープ・ヒューマン・コンシダレーションが必要であるということを自分は痛感すると言っておるようであります。すなわちこういう政策をとります場合には、人間的なできるだけ深い考慮とでも申しますか、こういうことが政治家として考慮に入れなければならない要素であるということを言っておられるようでありまして、私はこの言葉に非常に感動をいたしました。ひとり中小企業の問題のみならず、大きな政策の進行の途上において、ある階層あるいはある土地あるいはある産業等にしわ寄るような場合に、それに対してできるだけあたたかい心配りが必要である。これは実際、大きな目的のために行うべき政策について、どれもこれもいいことは私はできないと思いますが少くともあたたかい心配りが絶対に必要である、こういうような気持で今後とも参りたいと思います。
  25. 加藤清二

    加藤(清)委員 抽象的でおわかりにくいというお話がございますので、時間を拝借いたしまして、少し詳細に申し上げたいと存じます。ただいま、ほかでもございませんが、大臣のるす中に、中小企業安定法の二十九条が綿、スフ、絹、人絹に発動されたわけでございまするけれども、業界を助けようと思って発動されましたその結果、機械をつくっている業界に非常に大きな悪影響を及ぼしたことは政府当局もすでに御存じの点でございまするが、かりに簡単に数字をあげてみまするならば、機械メーカーは月に二千台から二千五百台程度の機械を生産しておったわけでございまするけれども、この発動のおかけで設備の更新は許されるといたしましても、増設が禁止になりました。その結果当然ここに千数百台の機械が売れなくなる、こういう結果をもたらしたわけでございます。その結果まず大手筋三社に例をとりましてもそうでございまするが、この法が発動されるという声が響いただけでもって、すでに千数百人の首切りが行われております。賃下げが行われております。かてて加えて一週間五日制をとろうではないかということまで言われております。それのみか紡機や機場の産業構造は大胆がよく御存じの通りでございまするが、この機械は大きな組立て工場だけでなくて、下請に仕事の約半数はまかされるわけでございまするが、これらの下請企業はほとんど転換のやむなきに至っておるわけでございます。この問題に対しまして一体大臣は、どのような救済策、先ほどおっしゃいましたあたたかい心、あたたかい考慮をしていらっしゃいますか、具体的にお答え願いたいと存じます。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 本件につきましては加藤議員の方が私よりこの経緯等については非常にお詳しいと存じますし、また問題の焦点並びにそれに対する当局側の苦心も十分御承知通りと思うのでありまするが、本件の重要性にかんがみまして、御案内のごとく主として老朽織機のとりかえ等を中心とする業界の合理化を計画的に促進するという考え方で、現在通産省を初めといたしまして、関係通産局ごとに都道府県調整組合、それから織機の製造の業界金融機関、これらの関係各層をもつて織物設備合理化促進協議会を設けたわけでございまして、各地の実情に即した具体的な合理化案を、各地の実情と御希望にできるだけ沿うような具体案をこの協議会から打出していただいて、当局がこれを推進する、こういうふうに考えて施策を講じておるわけであります。
  27. 加藤清二

    加藤(清)委員 その協議会の発足の折にすでに政府側からもお話がありましたし、またこの問題が取上げられました折に、この委員会で担当局長からも答弁があったわけでございまするが、設備更新に必要なところの融資、あるいは転廃業に対するところの減税措置輸出振興等々によってこれを救済するという答弁がなされておりまするけれども、抽象的なお答えでは商売になりません。そこでぜひひとつ具体的にどのような措置を講じているかをお示し願いたいのでございます。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この金融の問題につきましては、すでに私の留守中にも繊維局長から御説明いたしたそうでありますが、通産省といたしましては、特にこのために、これも御承知と思いまするが、中小企業金融公庫商工組合中央金庫にかねがね手配をいたしまして、具体的な協議会からの成案が出るに従って、これについて格段の考慮と援助をいたすように手配をいたしておるような次第であります。
  29. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは政府としては現在融資にはどの程度、減税についてはどういう場合には減税するとか、あるいは輸出振興についてはどのような措置をとるという具体策はお持ちにならない、こういうことでございますか。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私が今申し上げましたのは、たとえば加藤会社に何億円、愛知会社に何億円というふうな意味の具体的な融資のわくというものまでを決定するとか準備するとかいう意味ではございませんから、その関係においては具体的でないと仰せらるるかもしれませんが、計画としてこれら関係金融機関に対して十分に連絡をとり、指示をいたし、そうしてそれに対してケース・バイ・ケースの処置をしようこういう、構えで行っておるわけでございます。
  31. 加藤清二

    加藤(清)委員 政府が今の協議会から出て来た答申案をそのまま額面通り実行に移すということならば、これはさしつかえございませんけれども、なかなかそうは参らないだろうと思います。そこで政府としては先般すでにこの協議会で設備更新のためには大体二十五億のひもつき貸しをしてもらいたい。なぜかならば、かりに中小企業金融公庫からこれを出すことにいたしましても、政府の親心は窓口で踏みつぶされてしまう傾向が過去に多々あるのでございます。そこで協議会の方ではすでにこのことをあの席上でも発表されておるはずでございまするが、もう具体策ができてよろしいころではないかと思います。すでにぶっ倒れてしまってからでは困るので、現在すでに倒れつつあり、首切りが行われつつあるやさきにおいて、まだ具体策がないということでは、少しおそきに失しやしないかと思いますが、いかがなものでございましょう。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その御懸念はまことにごもっともだと思うのでありますが、すでにこの協議会の発足を積極的に慫慂し、また積極的にこれによって救済策を講じようとしておる今回のわれわれの立場でございまするから、窓口でまったく同情なく追い帰されるというようなことは絶対に起さないようにいたしたいと思います。ただこれは問題の性質上、ただいまお示しがございましたが、二十五億とかあるいは三十五億とかいうようなことで大きくわくをかけるべきものでないのではなかろうか。やはりできるだけ積み上げて参りまして、ケース・バイ・ケースにその土地々々の事情も十分勘考して処理をいたすべきものと考えるわけであります。
  33. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは今後協議会から出て参りましたところの答申は、政府が先ほど大臣のおっしゃいましたように、あたたかい心をもつて額面通り実行に移していただけるものでしょうか、それはできないとおっしゃるのですか。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 十分好意的に考慮するように指導いたす方針でございます。
  35. 加藤清二

    加藤(清)委員 融資に引続きまして、転廃業の者に対するあたたかい心やりが一体どのように行われるかを承りたい。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは繊維局長からお答えいたします。
  37. 永山時雄

    ○永山説明員 織機のメーカーの転廃業の問題でございますが、これは二十九条の発動の前後におきましても再々申し上げ、またただいま大臣から答弁申し上げたように、われわれの方としては合理化の促進をするということで、すでに地方におきましても各地において合理化促進の打合会をいたしまして、着々その進行を見ておるのでございます。しかして現状においては十二月末までに過渡的に機械の製作を認めておるのでありまして、むしろ目下はその過渡的な機械の製作に相当忙がしいという状況のようでありまして、おっかけてさらに合理化の機械がだんだんと軌道に乗ってそれぞれの工場に活用されて来るということになりますので、従ってこの二十九条の発動によって、これが原因で転廃業の問題が生じし来るというような事態はわれわれとしては考えておりません。
  38. 加藤清二

    加藤(清)委員 考えておられないとなりまするとこれはたいへんなことでございまするが、それは御承知通り下請の企業、特に鋳物屋さんあたりは専業者もございまするし、混合業者もございますけれども、下請はほとんど専業でございます。この専業が五〇%も仕事ができなくなるということになれば、勢い転廃業せざるを得ないわけでございます。ところが転廃業しようと思いましても、ほかが仕事がふんだんにあるような社会情勢の場合は、野放しにしておいてもとりつく島もあるでございましょうけれども、今日のようにいずれの業界を見ましても、金詰まり、設備過剰、こういう折に行方も定めずに首を折られてしまい、仕事を奪われてしまった人を、もし野放しに政府が、今大臣のおっしゃったあたたかい心やりなしに放任されるということになりますと、これは先ほどの大臣のお言葉と少し違うじゃないかと思われるわけでございます。この点いかがなものでございましょう。
  39. 永山時雄

    ○永山説明員 私の申し上げるのは、合理化の促進をいたしまして、できるだけ発注の台数が減らないように、現にわれわれの方でただいま受けておりますいろいろな調査の進行、そういうものを見ましても、年間ならして台数を見ますれば、一十九条発動前とそれほど大きな変化を来すということはないと思っております。あるいはむしろ合理化計画というものが当初の希望通りに進行して参りますれば、多少ずつでもむしろ発注の機械はふえ得るのじゃないかということにすら考えておるのであります。しこうして先ほど申し上げましたように、現状におきましては過渡的な状態で非常に発注が一時的に殺到をしたというような状態でありますので、あるいはその直後には若干の波があるかもしれません。また御承知のように線、スフ業界あるいは絹、人絹の業界にいたしましても地域も業態も広くて多いわけでございますので、従ってこの合理化機械の発注が全般的に軌道に乗って来るのには若干のタイミングがいるだろうと思いますので、その間の問題は多少はあろうかと思いますが、お話のような転廃業というような問題は一般のデフレの影響でそうした事態になるということはあるいはあり得るかもしれませんが、直接この二十九条の問題が原因で転廃業問題が出て来るということは私どもとしては考えていないということを申し上げたいと思います。
  40. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣のお座敷がかかったそうでございますので、私大臣に集中してあとほんの少々お尋ねいたします。局長さんにはそのあとゆっくりと御説明を承ります。ただいま発注の問題が出て、それはさまで減らない、こういうようなお答えでございました。それが事実であるとするならばこんなけっこうなことはございませんが、発注の減ったところを具体的に申し上げてみたいと存じます。それはほかでもございませんが、政府もすでにこの点は御存じの通り輸出でございます。先ほど一億ドルの黒字だ、こういうお話でございました。これはまことにけっこうなことでございまするけれども、これは結局政府努力もさることながら、国民の汗とあぶらの結晶であり、血と涙の輸出の結果からこういうことができたではないかと思われるわけでございます。特に機械輸出については、繊維機械が王座を占めておりまして、今年あたりはこの一-九だけでもって百三億の輸出高でございます。しかもこれが汽車や造船のように政府の援助なくして一人立ちでこれだけのことをやったのでございます。これは政府の今日の方針から行けば当然一層指導育成しなければならない立場にあるではないかと思われておりまするところに、この二十九条の発動がうわさされるや、これが国際的に聞えて行きまして、とたんに九月になりましたらこの輸出の認証高は八月の半分に減っております。その後の契約、その後の輸出は皆無に近いほどでございます。そういたしますると、月々この織機だけでもって千二百台から千三百台の輸出がございましたのでございまするが、これが皆無となりましたあかつきには、一体どういうことが起きて来るのか、およそ政府輸出振興とか、あるいは外貨獲得とはまるきりいすかのはしの食違いの結果を生じて来ると存じまするが、この点につきまして大臣としてはどのように輸出対策を考えられますか。先ほどの施設方針演説の中にもあったことでございまするから、ぜひひとつ具体的方策を、ここだというところをお示し願いたいと存じます。
  41. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一つでここだというところは不幸にしてございませんが、先ほどお話がございましたように、輸出が伸びたことは、ほんとうにこの関係業者の異常なる努力によるものと私どもは大いに感謝しておるわけであります。それからもう一つは、海外の市場、海外からの受注の状況等にこれは大いによるものでもあると思うのでありまして、その反響と輸出意欲の増進ということによって非常にうまく調子が出たのではなかろうかと私は考えております。  それからただいま御指摘の具体的な数字について皆無になるというお話がございましたが、話はその点については加藤さんのような正確な数字を今手元に持っておりませんので抽象的なお答えにならざるを得ませんが、これはそのときどきの状況によりまして輸出が伸びたり縮んたりすることはあらゆる物資についてやむを得ないことと思います。ただ全般的に申しますれば、最近の信用状の状況などから見ましても、ここ当分の間、全体を通じて見れば輸出が劣えるということはないように考えております。
  42. 加藤清二

    加藤(清)委員 これも具体的なここぞというお答えをいただいておりませんが、時間の関係上この具体策は、今の大臣のおっしゃったお言葉がほんとうに具体的に行われるような方策を各局長にあとから承りたいと存じます。  次にこれに対する労働対策でございまするが、先日の参議院の本会議における答弁か、あるいは予算委員会の答弁にも大臣はお答えになっていらっしやるようでございますが、補正予算で三万七千人の救済を目標としておるとお答えになっているようでございます。ところがこの二十九条発動にからみまして、これの従業員は大体十万人と押えておりまするけれども、すでに五千人有余職を失っております。このままの状態で行けば、当然最低に見積って二万人、輸出振興対策なりあるいは設備更新の融資の額ないしはその方法のいかんによっては、これがまず三万人程度は首切りが行われることと存じます。あるいは首切りでなくても、職を失う人が出て来るはずでございます。これに対して、はたして補正予算の二万七千人だけで救済することができるかできないか、こういう問題と、もう一つぜひお尋ねしなければならぬことは、御承知でごさいましようけれども、この織機は、熟練工によってのみ性能度のいい機械が生れて来るのでございます。ほかの職場でございますれば、半年や一年で完成された機械ができるという場合もあり得ましょうけれども、この熟練工をも切らなければならないという状況に追い込まれておりまする今日、この問題は世界で最高水準を行っているという紡機及び織機の性能度にも影響して来る。とかく日本輸出品は粗悪品であるということが定評になっておりまするうちに、この機械だけは世界いずれの国に伍しても負けない。だからこそ、世界一の繊維王国でありますイギリスにおいても、日本の機械のパテントをわざわざ買い取って行っているという現状でございます。ここに大き影響を及ぼすと存じまするが、これに対して先ほどの局長のお話ですと、二、三箇月のブランクがあるかもしれないということでございましたけれども、事中小企業に関しましては、二、三箇月さえも待ち切れないという実態を、大臣はよく御存じのはずでございます。資本の蓄積が、どんどん行われておる大紡績ならばいざ知らず、そうでない中小企業は、年の瀬が越せないという今日、二、三箇月のブランクの間にみんな飢え死してしまわなければならない。転廃業をしなければならない。そういう方々に、注文ができるようになったからもう一度帰って来いといっても、これは覆水盆に返らずでございます。そこでこの点について、大臣としてははたして先日の答弁だけで事足れりとしていらっしゃいますか、あるいはこの問題については、政府みずからがまいた種だから、それについては特別に刈り取る用意があるとお考えでございますか、その点をお尋ねしたい。
  43. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私が、万人あるいは三万七千人と申しましたのは、二十九年度の後半におきまして、予算上の節約の解除、予備費の使用あるいは今回の御審議を願っております補正予算で研究いたしておりますさしあたり吸収を要する失業者の数ということで申し上げたわけでございまして、これらの人数の算定その他につきましては、労働省を中心といたしまして関係各省が十分に検討いたしまして、さしあたり吸収を必要とするこの新たなる失業者に対して、とりあえず二十九年度中の緊急措置を講じたものであります。  第二に、ただいまの問題でございまするが、傾向としては確かにただいまご指摘のようなことがございますが、その数量や時期等につきましては、実はそれほどまでに私どもは考えていないのでありまして。たとえば織機にいたしましても、仕掛品も相当あるようでございます。従って熟練工を急激に大量に馘首するということは、実際問題としても私はあり得ないと思うのであります。若干の臨時工その他において馘首修理されるものもある程度ございましょう。これは否定するわけに参りませんが、これらの点も考慮いたしまして、政府としては補正予算を編成いたしたわけでございます。  なお三十年度予算等につきましては、別途にこれらの状況をさらに深刻に検討して対策費を計上しなければならぬと思っております。
  44. 加藤清二

    加藤(清)委員 綿糸布、絹、人絹だけでもこれだけ大きな影響があります。その影響を甘く見るか辛く見るかによって見解の相違は生れて来るでありましようが、私はうそを言うでおるのではございません。具体的事実を一人一人つかんでおりまするけれども、悲しいことにその実証をあげる時間がないの遺憾とするものでございます。この点政府側も向う岸の家事と思わずに、機場だけを助けてそれで事足れりとせずに、それを助けるために被害を受けた側もとくと御考慮に入れて、ひとつ御計画を立てていただきたいものだと思います。ほのかに承るところによりますると、毛織業界にも同様な措置がとられるというお話でございまするし、また毛織業界の一部の人の、機械屋はどうなってもやむを得ないんだというような声も聞いておるこのやさきに、政府としてはやはり機械屋は死んでもやむを得ない、機場さえ助かればそれでいいんだ、こういうお考えでございましょうか。毛織業界に対する発動についての大臣の覚悟を承りたい。
  45. 愛知揆一

    愛知国務大臣 毛織物についてはまだ私どもはそういう方針をきめておりません。なお機場さえ助かれば機械業者は死んでもいいなどということは絶対に考えておりません、念のために申し上げておきます。
  46. 大西禎夫

    大西委員長 加藤君に申し上げますが、通産大臣が来なければ審議できないと言っておるそうですから、もう一点ぐらいにお願いいたします。
  47. 加藤清二

    加藤(清)委員 これではしり切れとんぼの形でございますけれども、もう一点だけ……。一番最初にお願いしました将来予見し得る問題でございます。二十九条の発動にからみまして、計画がえをしなければならない工場があちらにもこちらにも出て来ておるわけでございますけれども、政府は化学繊維の五箇年計画からこの点を奨励していらっしゃることと存じます。もしその工場が人畜に大きな被害を及ぼすと予見され得る場所にその工場施設をしようという計画があった場合において――具体的に進められております。それは政府としては一体どういう態度でこれに臨まれますか。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 原則的なお尋ねでございますが、それはお話のように問題の点がありますが、これは具体的な会社並びにその土地の事情等によりまして、ひとつ行政的にできるだけの配意をいたしたいと存じます。
  49. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、これも抽象的でおわかりにくいと存じますから具体的に申し上げますが、名古屋は木曾川から水道が通っております。この上水道の取入口の上に工場が今できようとしております。すでに工事が進められておるのであります。厚生省も文部省もこの点はよく知っているところでございますし、通産省でも知らないのは大臣だけで、あとの次官以下はほとんど御存じでございます。これを通産省としてはどうなさろうとお考えでございましょうか。この点を承りたい。
  50. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことに恐縮でございますが、今あなたの御指摘の通りで、私は存じませんでしたので至急検討いたします。
  51. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではまだ研究ができておらなければやむを得ないのでございますけれども、要は二十九条の発動からして、もうここに機場はつくらない、こういうことでございますね。これは言えますね、新設に対してでもこの二十九条ははっきりと適用される、こういうことでございますか。
  52. 永山時雄

    ○永山説明員 私からかわってお答えをいたします。この新しく織機がふえるという分は、御承知のように二十九条で抑え得るのでありますが、従来あるものを廃止をして、そのかわりに台数として入れかえになるという形で新設をするということになりますれば、それは二十九条の対象にはならないのでございます。
  53. 加藤清二

    加藤(清)委員 設備の更新の方は私らもお願いをしておる方でございますから、それをお尋ねしているわけではございません。ただ問題はこの二十九条発動の折にも話が出ましたが、大資本の方々が小資本の不景気をにらんで、ほとんどとまっていた機屋あるいはスクラップとして倉庫にほうり込まれていたところの機等を集めて参りまして、これを新しく設備をする。そうしてこれを更新して行くのだということについてはいろいろ問題があるかと思うのでございます。これは審議会にも協議会にも話合いに出たことでありますが、綿工連の安藤梅吉さんは、さようなことはございません、従って大きいものだけが得をして、小さいものだけが損をするということはございませんと答えていらっしゃるが、今申し上げたように木曾川の上にそういうことがすでに行われておるわけです。それは通産省ではないが、ほかの省へ具体的に言って来ておられる。そういうことについてあそこではっきりと契約をしたことをほごにして来るそのものについてもお許しになりますか、なりませんか。
  54. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほども申しましたように、ひとつ具体的な計画について十分検討させていただきたいと思います。
  55. 永山時雄

    ○永山説明員 ただいま加藤委員のお尋ねの問題は、おそらく他の設備登録をされた権利を買ってそこに新設をするか、あるいは他の古い設備を買収してそれを更新するという形で、新しい設備をつくるというケースではないかと思うのですが、御承知のように二十九条は、織機台数全般についてこれ以上はふやさせないということを言っておるのでありまして、従ってくどいようですが、入れかえの場合はむろんいいわけでして、あるいはまた他の登録済みの織機を譲り受けをいたしまして、それを更新するという形で設備の新設をするということも、二十九条では別段押えてはいないのでございます。
  56. 大西禎夫

    大西委員長 それでは、この際中小企業の年末対策に関する件についてお諮りいたします。本件につきましては午前中の委員会において中小企業に関する小委員長より報告がありましたが、お手元に配付いたしてあります決議案を当委員会の意思として決定いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なしと認め、それではさよう決定いたします。  本日はこの程度とし、次会は明日午前十時より開会し、付託法案審議を進めます。これにて散会いたします。    午後三時四十七分散会      ――――◇―――――