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須賀説明員 それではお
手元に差上げてあります「最近における
経済動向」によりまして、ごく簡単に最近の模様を御
説明申し上げたいと思います。
この
資料は、大体十月を
中心にいたしましておもな
経済の
動きをとりまとめたものでございますが、大体の
基調といたしましては、この
刷り物の
最後のところ、パラグラフの八でございますが、ここに簡単に要約いたしてございますように、
デフレの
進行は御承知のように今年の三月ごろからいずれの
経済事象を見ましても大体順調に
進行して参
つたのでございますが、ここ数箇月、大体九月、十月ごろからやや
一服と申しますか、若干その
進行の
度合いが
緩和したというような
傾向も見られるわけでございます。これは私
どもの見ておりますところでは、主として
財政関係の散超が
一つ大きく作用しておる。それからもう
一つ大きな
要因といたしまして、
あとでも簡単に御
説明申し上げたいと思うのでございますが、
輸出が意外に順調に伸びまして、この
輸出が好調に進んでおりますことが、
経済全体に
相当の
影響を及ぼしているように
考えるわけであります。
個々の項目について簡単に御
説明申し上げますと、最近の
財政資金の
動きでございますが、これは十月につきましても六百八十四億円の散超にな
つておるわけでございます。前年同期に比較いたしましても
相当大幅の散超にな
つておるわけであります。特に今年は
供米の金などが昨年に比較いたしましてかなり大きく支払われておりますのと、旧
軍人恩給、
遺族国債の元利払いというような
消費的な支出が目立
つておるわけであります。これらの金がかなり大幅に流れまして散超にな
つておりますことが、
あとでも申し上げますように
銀行の
手元をかなり潤おしておるわけでございまして、市中の
金融状況等も比較的楽にな
つておるように見られるわけでございます。なお貸出しの面から見ましても、最近は
資金需要が、これは若干季節的な
関係もあると思うのでございますが、若干
減退をいたしております。また一面
銀行の側といたしましても、
融資厳選の態度をかなり強く出しておるわけでございます。それから
在庫の調整が一巡をしたというような面がございまして、若干
資金需要がゆるんだというような
関係もございまして、最近貸出しの増勢を若干ゆるめまして、十月につきましては預金の増加は下まわりまして、二百二十二億円ぐらいにとどまるわけでございます。そういうような
経済全体の不調を反映いたしまして、
日銀信用の方も
相当収縮をいたしております。十月では四百四十九億円の
収縮とな
つております。先ほど申し上げましたように、
供米代金の
支払い等を
中心といたしまして
財政がかなり散超になり、そういう形において金が流れておりますにかかわらず、
日銀券も
収縮をいたしておるわけでございまして、十月における増発もわずか百四十五億円
程度にとどま
つておるわけでございます。こういう
傾向は
消費者の
買控えあるいは
末端市場の不さえというようなことを反映したいわゆる
現金需要が低調であるということを反映しておるものと見られるわけでございまして、月末
発行残高また月中
平均の発行高等も、ともに前年同期の
水準を下まわ
つておるというような
傾向にな
つておるわけであります。
次に
物価の
動きでございまするが、これはことしの九月ごろまでは、特に
卸売物価につきましては、きわめて順調に
低落をして参りました。ことしの三月上旬の一番高かつた時期に比較いたしますると、約一〇%近くも
低落をいたしたのでございますが、九月ごろからこの
低落の
度合いがかなり鈍化をいたしまして、十月、十一月につきましては、ほぼ
横ばいのような
傾向にかわ
つて参つたわけでございます。中には、
生産財の一部等につきまして若干持ち直して参るようなものも出て参つた次第でありまして、
物価の面につきましては、
デフレ一服の
様相がかなり
はつきりと出て参
つております。特に最近の
輸出の好調あるいは一部における
在庫の
減少等の
関係を反映いたしまして、中には若干
反騰を示すようなものも出て参
つておるような次第であります。
なお
小売物価、
消費者物価につきましては、ことしの
年初から今日までを通じまして、きわめてその
動きが緩漫でありまして、
卸売物価の
動きほど
はつきりとした
下落の
傾向も見せておらないのでございます。
小売物価の方は大体八月ごろを峠といたしまして、若干下向いておる
傾向にはあるのでございますが、その
程度はごくわずかでございまして、月によ
つて若干の
反騰もしたりいたしまして、そう
はつきりとした
下落の
度合いは示しておらないわけでございます。これはもちろん
卸売物価との間のずれの
関係もありますし、いろいろ
要因があると
考えられるのでありますが、やはり
基調といたしまして、
末端消費はそれほど大きく
低落をいたしておらなかつた、
末端購買力の
動きにそれほど大きなあれが見られなかつたということが、
一つの
動向として見られるのではないかと
考えておるわけでございます。
次に
生産の
関係でありますが、
鉱工業生産は、ことしの三月ごろがピークでありまして、
戦前水準に比較いたしまして一七〇ぐらいのところまで
上つたわけでございますが、その後
各月低下をいたしまして、いわゆる
生産の
縮小の
傾向が見られたわけであります。ただこれもごく最近の一、三箇月につきましては、若干もどしておるような
傾向もあるのでございますが、これも先ほば来申し上げておりますように、非常に
輸出の
伸びておりまするような面もありますし、また物によりましては、若干
生産の持直しというような面もありまして、最近の
生産動向は、一時に比較いたしまして若干持ち直しておるようであります。特に十月につきましても、九月から多少持ち直したというような
傾向にな
つております。
それから
在庫の
動きでございます。ことしの
年初あたりから
在庫が急激に増加して参
つたのでありますけれ
ども、その後、先ほど申しましたように
生産指数がある
程度低落をいたしましたのと、また一面
輸出の
増大等を反映いたしまして、前月に比較いたしますと、最近は若干
在庫が
減少をして来るような
傾向にな
つております。しかし
在庫の
水準そのものはまだ
相当高いところにございまして、最近月におきましてもなお前年同月の四割くらい高いところにあるわけでございます。これらはいずれも
デフレの
進行を現わしておりまするいわゆる
経済の引締めという面から見まして、それぞれ
経済市場に出て参
つておりまする
一つの
はつきりした姿でございまするが、これらに伴いまして、やはり
デフレに当然随伴いたしまする企業の
倒産でありますとか、
不渡りでありますとか、あるいは
雇用の面の
動きでありますとか、いわゆるそういうふうな面の
動向があるわけでございます。最近の
傾向といたしましては、
不渡り、
商社の
倒産等は大体八月ごろまでで
一つの山を越しまして、それ以後はその以前に比較いたしましてやや小康を得ておるような
状態でございます。なお
雇用の面につきましては、最近月に至りまするまでわずかながら
雇用水準の
低下が見られるわけであります。その反面
失業者の
増大等もここ数箇月かなり顕著に目立
つて参
つております。九月には、労働省の統計によりますると、
完全失業者の数が七十一万にまで上りまして、戦後の新しい記録的な
数字をつくつたわけでありますが、こういう面ではやはり
デフレの
進行の暗い面の
様相が
はつきり出ておるわけでございます。なお
あとの方の
数字の表の中にもございますが、最近の
労働事情の
求職、
求人の
状況等もかなり悪くな
つております。
求人数に対しまして、
求職の比率が最近においては三割くらいにな
つておるわけであります。
かなり労働事情の悪化を物語
つておるものと見られるわけでございます。
次に
一般の
消費の
動向でございますが、これは私
ども家計調査の
資料によりまして、
消費水準指数を計算をいたしまして、それで推計をいたしておるわけでございますが、最近の
動きといたしましては、概して
横ばいの
状況に見られます。昨
年度に見られましたような
逐月消費水準が急激に上昇して参るというような形は、今年の六、七月ごろからその
傾向をとめておるわけでございます。大体
消費の
動向としては、
一般的には
横ばいと見てさしつかえないのではなかろうか。特に東京のような特別な
消費地を除きまして、全国の
一般都市の
傾向といたしましては、その
傾向が特に顕著に出ているように見ておるわけでございます。
それから
最後に特に申し上げておきたいと思いますことは、最近
外国為替収支が非常に好調を持続いたしておることでございまして、これは内容的には
輸出が非常に順調に伸びているということと、
輸入が
相当程度に
縮小をしておるという両面から来ておるわけでございまするが、
輸出が
一つは
世界貿易の好転という環境に
影響されておりますことと、
日本の
デフレの
進行によりまして、
内需が落ちました反面、
輸出の方へ売り向
つて行くという努力が
相当強く続けられたというような
両方の面が作用いたしまして、
相当輸出が順調に伸びておるわけでございます。お
手元の
資料にもございますが、ここ数箇月で見ますと、
外国為替の
収支の面から見まして大体一億二千万ドル台をずつと維持しておるわけでございます。特に十月につきましては戦後最高の記録といたしまして一億四千六百万ドルの
数字を記録いたしたような結果にな
つております。一面
輸入の方は、
相当縮小した規模を続けておりまして、最近数箇月では大体一億三千六、七百万ドル
程度のべースでございます。去年の
平均一億七千五百万ドル等に比較いたしましてかなり
縮小しておるわけであります。その結果、六月以降
国際収支の
各月バランスも
黒字に転じまして、毎月
相当な
黒字を記録しておるわけではございますが、特に十月につきましては五千万ドル以上の
黒字を記録したわけでございます。この累計をいたしますと、一億数千万ドルの
黒字にな
つておるわけでございます。ただ現在の
状態が将来まで今後引続きましてこのまま推移いたしますかどうか、その辺につきましては、
輸出の面につきましても
輸入の面につきましてもそれぞれしかるべき問題をはらんでおるわけでございます。今後の
動きには十分注意いたして行かなければならないと
考えておるわけでございます。簡単でございますが、ごく最近の
経済動向を
中心にして御
説明申し上げました。