○
青野委員 私が御
質問する要点は、強大な力を持
つておる
アメリカの
政府と、一
日本の
漁船が
アメリカの軍用船によ
つて横書を受けて、
日本の
乗組員が
追突を受けたために三名も死亡している。一年以上経過して一銭の
弔慰金も出す意思がないことが大体明瞭にな
つている。人道の国、民主主義の国
アメリカが、平気で
やみから
やみにそういう問題を処理して行くということが往往にして行われて、それがあたりまえであるという
考え方なんです。国会の問題に
なつたビキニ環礁の原水爆の実験によ
つて、二十三名の第五福竜丸の諸君が放射能の灰をかぶ
つて、そうして当時一番元気であ
つたはずの久保山さんがなく
なつた。こういう点については私はたまたま世界一周をして国会の
調査報告に参りましたときに、五月三日、
アメリカの国務省において、経済調整
局長官ボールドウインという人にダレスの代理として、私は正式に一時間面会して抗議を申し込んだ。そうすると大体その当時の
考え方は、
アメリカ政府としては五十万か百万か余分にやれば、
日本国民は何も言わないのじやないか。できるだけ
弔慰金を余分に出しますから、ひとつそれでごかんべんを願いたいというようなことを言
つておりましたから、私は
アメリカの国務省の代表者に対して
日本の国民を代表して、幸い
アメリカにや
つて来たから私は注文をつけたい。とにかく水爆実験をやめてくれ。
日本にものすごい風が吹いておるときに、雨雲の中に放射能をつつ込んで、名古屋とか静岡とか、あるいは雪の降
つておる新潟県あたりでは、小さい子供には直接生命に影響するような放射能、特にストロンチウムとい
つたような物質を降らして、その被害によ
つて、不幸にして
日本人が死んだ場合には、十万か五十万か百万か余分にや
つたらそれで片づくとい
つたような
考え方は、
日本国民を犬かねこのように
考えておる証拠である。だから原水爆実験をやるなら、サンフランシスコの沖合いかニューヨークの郊外でや
つたらどうだ。被害を
アメリカ人にかぶせることは
日本人は
関係はないけれ
ども、
日本人に前後三回も原爆を落し、水爆の実験をや
つて迷惑をかけておる。そういこうとを国際連合の管理をしておるところの太平洋のまん中へ出て来てやることが、すでに間違いである。同時に中共貿易を制限をしておる。小笠原と沖縄をか
つてにポツダム宣言の精神を蹂躪して、軍事基地にと
つて行
つて、軍政のもとに
日本人に非常な苦しみを与えておるとい
つたようなことは、これは
アメリカのとるべき
方針ではないはずだ。こういうことを強く主張して、私は一時間にまたが
つて国務省の代表者と論戦をして帰
つた。そのため二週間にわた
つてスパイ網につきまとわれて、はしの上げおろしから、朝目がさめて晩寝るまで、ずいぶんと不自由をさせられたのでありますが、こういう問題を私がもど
つて来て知
つて、
やみから
やみに葬られておる問題は
相当にある。終戦後九年間、軍用トラックで、あるいは埼玉県金子村のようなところで、ちぎ
つて投げるような綿雪の降
つているときに、十三名の
乗組員が全滅いたしました。高圧線にひつかか
つて、B29が五十トンの爆弾と十トンの重量のものを積んで朝鮮に爆撃に行く途中で、ああいう事故が起り、三十数軒の家が焼かれておる。そして
日本人が三名ガソリンと一緒に焼き殺されておる。ところが十数年前、茶わん一個は当時何ぼで買
つたとか、この牛小屋は何ぼで建てておる。二十年前に建てた値段をつけさせておいて、
日本政府はそういう要求をしておる。私は
現地に行
つて、そういうばかなことはない、今の物価で今の標準で牛小屋を建てたら何ぼ、茶わん一個は何ぼという計算をして堂々と出せ。すべて
アメリカのやり方というものは、
日本を
占領してからいまだに、
日本の国民は権力で押えつけたらそれで言うことを聞くのだという
考え方を持
つておる。しかも標式燈をつけて、航海燈をつけて、
漁船が数多く仕事をしておる、漁獲をや
つておる最中であるから、三千トン四千トンの船はそういうところは通
つてはなりませんという外務省から
アメリカの国務省に向
つて公文の通牒が行
つておるのに、三千八百トンの軍用船が、標識燈、航海燈をつけて、だれが見てもわかる。それをうしろからつつかけて人間を殺して、三百数十万円の船の
修繕賃の二五%を支払おう。二十八年度一年間それがための打激を受けたのが数千万円、そういうものをまるつきり払わぬのじやありませんけれ
ども、それを向うさんがか
つてに迷惑をかけておいて、二割五分でよかろう、あるいはそういう物件の流れたことは認めない、そうい
つたようにここにその写しがあります。そうい
つたことが平気で行われて、
日本の
政府、あるいは
水産庁や
調達庁は指をくわえて、
日本国民が不利益をこうむ
つているのを黙
つて見ておるのか。そういう点については、どこの官庁かが中心にな
つて、漁民諸君の利益を代表して、そうして
政府と
政府、外務省と国務省とで交渉した結果、
損害を受けた金額だけは当然
アメリカ政府に支払わせるべきだと私は思う。こういうものが常に国会で国
会議員の口を通じて問題にされなければ、
アメリカが反省をしないということは、私はあたりまえのことではないと思う。われわれがやかましく言えば、そのときは幾らかでも出す。ここにも書いてあります。これを取
扱つておりますのは、横浜の米船運航株式
会社、責任者は海務部長の新井哲夫、社長は井上という人であります。この人が被害を受けた共和水産株式
会社から依頼を受けておる小林という弁護人にあてて、こういうことを書いておる。これは念のために聞いておいてください。
昭和二十九年十一月五日、ごく最近なんです。この米船巡航株式
会社が米国の意向を代表して、こういう文書をや
つております。「第二十
七海幸丸損害賠償の件について。右
解決方については貴方よりしばしば御催促あり、弊方もMSTSに対し促進するよう要望し、MSTSもまたワシントンに連絡して
解決促進に努めておりましたところ、このほど米国
政府の本件に対する最終的
意見が、MSTSを通じ弊方に通達せらるるとともに、貴方の回答を求めるよう指示されました。米国
政府の最終的
意見の要旨は左記の通りであります。」これが大事なんです。共和水産株式
会社に対する賠償金、修理費が二百三十八万五千八百六十円、滞船料が六十一万六千百円、
弔慰金が十三万五千円、合計三百十三万六千九百六十八円でありますが、その合計した金額の二八%の七十八万円は出してもいい。その他
弔慰金でも、三名死んでおるが十三万円、一人十万円にもならぬ。ビキニ環礁で死んだ第五福竜丸の船員は四百万円とか五百万円とか言
つている。もく星号で死んだ諸君は葬式料と香典、それと遭難費を入れて百三十万円であ
つた。
日本の
漁船に乗り組んでおる諸君は三人で十三万円であたりまえだという、これが総額なんです。ところがその滞船料と
弔慰金と修理費の合計したものの二前五分しか出さないとい
つている。
ちよいと気のきいたシエパードをたたき殺してみななさい。あやま
つて殺した
つて十万円くらいふつかけられる。少くとも
日本の漁民が三人死んでいる。こういうことが公文書として当然なるかのごとく、米船運航株式
会社の手を通じてやられておる。そうして力のない小さい水産
会社は、指をくわえて泣寝入りしなければならない。もう
一つあります。この責任者の和田栄太郎に対する賠償金が、けがをした治療費として四千五円、それから船の器共で、あつちこつちいろいろなもので流れたものが四万四千七百六十五円、そのうち三万三千九百十五十円、いわゆる流れて消失をした船具の七〇%は弁償しよう、
あとの一三〇%はお前たちがか
つてにしろ。
自分たちがうしろから四千トンくらいの船でつつかけて
日本の
漁船に迷惑をかけて、そうして総額の二五%しか払わない。流れた船具その他いろいろな器具は七〇%、七割しか払わない、こういうことがあたりまえと思いますか。うしろからつつかけているのですよ。前から衝突したのなら
理由もありましよう。
日本の
漁船があるいは悪か
つたという
理由もありましようが、うしろからつつかけている。航海燈をつけ、標識燈をつけているのに、何のためにうしろからつつかけるのです。気違いでもなか
つたら、あたりままえの船長ならつつかけるはずもない。そうしてあやまちを犯して
日本人に迷惑をかけておいて、二割五分しか払わない。流れた物品は七〇%しか払わない。こういうことを指をくわえて見ておるから、軍用トラックでひかれた者は何万とあ
つたけれ
ども、一銭も金をもら
つていない。B29が墜落して、そうして一番最初厚生省の規定によると六万五千しか金をもら
つていない。もく星号で死んだ諸君は百三十万円、そういうふうに黙
つて国民が何も言わずにしんぼうしている間は、いつもこの手で総司令部のあるときはみなやられておる。だからこれが国会の問題にならざるを得なくな
つて来る。
アメリカ国務
当局の反省を促すために、
日本の漁民の利益をあくまで守
つてやるために、こういう点についてあなた方は
政府を代表してこういう気の毒な人たちのために、どういうような具体的な方法をお立てにな
つて解決をしようとお
考えにな
つておるか、それをお尋ねするのが私の
質問の大体の骨子にな
つております。
なお今申し上げましたものの最後に、こういうことが書いてある。「以上米国
政府の
意見に貴方が同意せらるるならば本件の示談
解決は成立いたしますが、その場合でも御回答が本件発生後満二箇年に当る十二月十一日」
ちようど二十七年の十二月十二日に
事件が起
つたのですから、満二箇年に当る今年の「十二月十一日までにワシントンに到着することが必要である旨申し添えられました。なおキヤツチクレームについては、請求額を立証すべき
書類が不備であるとの
理由で取上げられぬとのことであります。右の次第でありますので、早期
解決のにめにワシントンの最終的
意見に御同意なされるかどうか、とりあえず右御通知申し上げるとともに貴意をお
伺い申し上げます。」こう書いてある。
自分たちが人に迷惑をかけておいて、一年以上もひつぱりまわ
つて、そうして満二箇年に当る今年の十二月十一日限り、ワシントンに
書類が到着しなければ相手にしないぞ、こう書いてある。こういう
書類をワシントン
政府から米船運航株式
会社にあてて、そうしてその交渉をしておる。十二月十一日を経過したらもう相手にしないのだ、こういう一方的なことがいつも行われておるのです。いかなる犠牲を払
つても
日本漁民の諸君のために、韓国との問題はもとより、中国との問題はもとより、外国と
日本の
漁船間に起る問題は常に国会で取上げて、国会が責任をも
つて政府を督励して、有効適切にこれら漁民諸君の利益を守
つてやらなければ、一体だれが守
つてやるのだ。いつも泣寝入をしなければならない。私
自身も終戦後九年間に
相当数のそういう実例にぶつか
つておりますので、御決意のほどを私は承りたい。私はこの
事件に
関係する弁護士には会
つたことはありませんが、
会社が私の住居の約一里ばかりのところにありまするので、私が直接調べに行
つてこの
内容を知
つたわけでございます。そういうことでこの点についてはかなり興味をも
つて解決のために努力してやりたいと思いますが、こういうような打撃を受けたために、今のところでは従業員に給料を払うことも非常に困難を感じて、もう今年の年の瀬が越せるか越せぬかわからぬという。そういう弱点をねら
つて、手取りで百五、六十万円、
損害額総計は常識的に
考えて三千五百万円、それを百六十万円で
解決するなら、年末にお前も金がいろうからやるのだ、しかも十二月の十一日までにワシントンに
書類が到着するような交渉をしなければ、もう相手にしないのだぞとい
つたような、まるで斬られ与三郎がけつをまく
つて弱い諸君を脅迫するようなやり方が平然と行われている。これに対してあなた方はどうお
考えになるか、私は御所信のほどを承
つておきたいと思います。