○
政府委員(
福島愼太郎君)
労務基本契約は
只今交渉しております。これを新
労務基本契約と申上げたいと思いますが、新
労務基本契約の
交渉の
経過並びに
見通しということでございますが、もともと
安保条約に基いて
日本国に駐留する
アメリカ合衆国軍隊のために
労務を提供することを
内容とする
日米両国政府間の
労務基本協定を改めるという問題につきましては、一日も早くこれの実現を図ることが必要でございまして、あらゆる
努力を払
つて参りました次第であります。新
契約につきましては、その主文でございますところの、
基本協定と、そのほかに当初計画されました
附属書が
四つ、
労働政策指令等が七つほどございまして、それらから成り立
つてお
つたわけでございますが、
基本協定のほうは、財務に関します
条項と申しますか、
アメリカ側より支払を受ける、
償還を受くべき
労務管理費に関します
規定の
内容、又
償還の
方法、時期とい
つた点一、二が当時妥結に達しません。それを除きましては、
基本協定につきましてはすべて
合意に達しまして、十月九日に
調達庁と
米軍との間に調印を了したわけであります。
その後
基本協定中の残りました
部分、それから
附属書その他について
折衝を重ねて参
つたわけでございまして、
基本協定中保留とな
つておりました
条項も殆んど全部
日米政府間においては
合意点に大体達しております。
目下は従いまして
附属書と
労働政策指令について
交渉を集中しておるような次第でありますが、
両者間の
意見はだんだん調整せられておるわけでございます。
只今のところ
附属書四つにつきましては、大体相当の進捗を見まして、
附属書四つと申しますのは、
アメリカ側の案そのままの形で
四つと申しておるのでありまして、
付属書一、二で、
給与規定に関する制度を設ける。
附属書の三におきまして、雇用の
管理手続を定める。
附属書の四におきまして
船員関係の
手続を定める。こういうことにな
つておるわけでありますが、
附属書の三につきましては、大体
両者間の
意見が最終的な調整のところまで参
つております。
附属書の四、
船員関係の問題につきましては、事務的な処置が一番遅れてお
つたのでありますが、最近
アメリカ側の第二次案と申しますか、
先方から最初に提出いたしました案に、
日本側の案を提示して、これを
先方に返しまして、更に
アメリカ側がこれに対して
意見を整えるという
段階にまあ至
つておるわけでございます。結局
附属書四つでございます。中の一、二が給与に関する制度ということになりまして、最も重要な点になるわけでありまして、恐らくこの
基本契約関係の全部の
交渉中で、場合によりましては主文と申しますか、すでにでき上りました
基本協定以上にこの
附属書一、二をどう扱うかということが重大問題になるわけでございます。
基本協定のほうには、主義、原則の問題といたしまして、
労働三法を尊重するとか或いは保安解雇についての
規定を設けるとか、そういう主義、原則上の点は確かにすでにでき上りましたところの
基本協定にあるわけでありまして、これにつきましては日本
政府の主張、
労働組合の主張が多分に盛り入れられたことになります。
基本協定に関する
交渉に関します限り今回の
交渉というものは相当に成功したということが言えるわけでございまして組合
方面でもこの点には満足しておるということでございます。ただ
基本協定がさようにでき上
つても、現実に給与に関連する
附属書において苛酷な条件が定められるならば、これは何もならないということになりまするし、又組合の幹部の諸君はともかくとして、十八万に達します全
労務者にとりましては、人によりましては、主義、原則の問題よりも、給与
関係のきめ方がどうなるかというほうが切実なる問題になる。こういうことでありますが、この
附属書の扱い
方法は極めて重要なことになるわけであります。
従来の給与
関係を律しましたのは、我々のほうでは、まあスケジユールAと申します
給与規定を設けてあるわけでありますが、従来の
契約にありました
給与規定に代りますのに、
アメリカ側では昨年新らしい
附属書一、二の形で、
駐留軍労務者の給与というものが非常に統一が取れていないから、これを理論的に統一のある形にするというわけで、職務職階表を
提案して参
つたわけであります。これは新らしい
アメリカ側の
提案というものは、理論的には誠に整然としたものにな
つておるわけでありますが、従来の、現在施行しております給与規則に比べて整然たるものにはなりまするけれ
ども、さりとて整然となるということによ
つて、現在の給与が下るという犠牲を払いたくないという自然の要求があるわけでありまして、理論的に整然たる職階にはめる、従来の規則がその都度その都度附け足しをして参
つた、職種が殖えるたびに附け足しをして参
つたということで、或いは実情に合
つているかも知れませんが、整然としておらない。それに対しまして
アメリカ側の
意見というものは、この際職階職務の
規定を整然たるものにする。従来の枠から見て余分に取
つてお
つた人には、その間新らしい規則に
従つて給与が減るのに対して
補償規定を設けて、従来との差額は
補償する。制度は首尾一貫したものを活かそう。本人には損失のないようにしよう。こういうことを
提案してお
つたわけでありまするけれ
ども、必ずしも実際問題としては
補償ということに安心が持てないという面な
どもございまするし、
アメリカ側の
提案いたしました職階表その他に基きまして、これは一番深刻なる議論が重ねられて参
つたのであります。組合側からも相当な
修正意見もございましたし、私
どもはそれに対しまして、これは
米軍の最高首脳部にまで直接
交渉いたしました結果、端緒が開けて参
つたのでありますが、主文その他についてすでに
交渉が済んでおる。
附属書について残るところはこの給与
関係の
附属書一、二である。併しながらこれを完全なる
交渉をこれについて済ませるということになれば相当時間もかかるし、又問題も細かくもなり、且つむずかしくもなるのであります。そこで
附属書の一、二に関する限りアメリカ案は撤回しないかということを強行に主張いたしまして、最近に至りまして
付属書の一、二に関する限りアメリカ案を撤回しようということに漸く同意するに至
つたわけなんであります。そこでそういたしますると、自然現行の
給与規定そのままが出て来るということにまあなりまするので、これは考えようによれば、
アメリカ側としては現実の職務職階、その他の金銭に関する
部分で伺い主張する程度で、主文に関して字句上の面について
日本側に相当譲
つたと考えられる。それが済みましてから
日本側が開き直
つて、給与
関係のアメリカ案の撤回を要求するということでは相当そろばんも違
つたのではないかと思われる節もありまするので、とにもかくにも遂に撤回することになりまして、ただその撤回に伴いまして現行の
給与規定そのままでいいかどうか、多少相当不揃いな点があるので、新らしい
提案にまでな
つたいきさつもありますので、多少現行の給与、附け足しで少しずつ積み上げてできましたところの現行の給与制度というものを少しは調整しようというような考え方もありまするので、
アメリカ側がアメリカ案の
附属書一、二を撤回するのに伴いまして、現行の
規定を若干手直しをする、どの程度までやるか、
アメリカ側としては若干の手直しという話を持
つて参
つたわけでありまするが、我々のほうとしてもかねて主張しております給与の不均衡を是正するという話もありますので、
アメリカ側のその話に乗りましても必ずしも不利益ではないと考えまして、その話に応じまして、現行の給与制度の手直しという話に最近な
つて参りました。これができ上りますると、この話が終りますると、大体両管理軒側、日本
政府、アメリカ
政府との間の
意見の統一が大体できまするので、その上は組合側にも参加して頂きまして、いわゆる三者の会談ということで最終的な妥結まで打
つて行きたい、こういうふうに考えておる次第でありますので、私
ども、当面の目安といたしましては、六月一ぱいを以て諸事完結としたいというふうに考えておる次第であります。
なお申し加えますと、新
基本契約は、全部ができ上りましてから
基本協定はできておるのでありますが、
附属書類その他が全部ができ上り出してから、三十日の
期間を以て効力を
発生するということにな
つております。従いまして効力の
発生ということは、六月一ぱいに
交渉を仕上げることができまして、七月早々にでも調印することができますれば八月一日から効力を
発生するということになるわけであります。
更に附加えて申上げますと、さような効力の
発生ということは相当に遅れることもありますので、若干でも
日本側に有利にきまりました
基本協定が効力の
発生を待たれるという
関係もございますので、
基本契約のうち、最も従来の或いは現行の
契約と形の変りました保安解雇につきましては、
アメリカ側の制限を加えるという
条項につきましては、これは
部分的に現行
契約の追加といたしまして、本年の初めに別に調印をいたしまして、これはすでに効力は
発生しておるということになるわけでございます。
部分的に効力を
発生させたことがあるわけであります。いろいろな面で私が
交渉に当りましてから十カ月近くになります。それ以前には二カ年近く行われてお
つたような非常に、長い
交渉経過でありまするけれ
ども、漸く最終的の
段階に到達したというふうに考えておる次第であります。
取りあえずこれだけ御
報告いたします。