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田畑金光君 それではまあ簡単にこの法の
内容について御
説明いたしますが、これはけい肺という職業病、まあよろけと言われている職業病に対する
対策立法であります。金属鉱山とか或いは石炭炭鉱、或いはセメント工場或いは土石採取業、こういうようないわゆる遊離けい酸を含んだ粉塵作業場において働く労働者は宿命的に免れることのできない病気なんであります。勿論今日例えば鉱山等におきましては法に基きましてこの粉塵作業の
予防措置につきましては各種の
措置が講ぜられておるわけであります。例えば湿式さく岩機を使うとか、或いは防塵マスクを使
つて、できるだけその粉塵を肺に吸収しついような
予防措置が講ぜられているわけであります。併しその他の産業等におきましてはそのような法的な
措置もなければ、又
中小企業等におきましては
予防措置等について何らの
措置が施されていない、こういうような
状況にあるわけであります。今日この病気は今申上げますように罹つたら治らないという、不治の病であると言われている病気でありまして、帰するところはまあ科学の貧困と申しますか、科学がそこまで到達していない
状況にな
つているわけであります。こういうような環境に働く労働者が全国でどれくらいいるかと申しますと約四十万おるわけであります。で
労働省は
昭和二十三年以降毎年定期に旬間検診をや
つておりまするが、すでに七万名
程度一応検診しているわけであります。そのうち約一万名、一五%
程度がけい肺と認定されているような
状況にな
つているわけであります。
そこでこの職業病は今申上げますように飽くまでもそういう
企業に伴う病気でありまして、而も病気に罹ると治らないというこういうまあ悲惨な人道上の問題に
なつつているわけであります。そこで各国におきましては、例えばフランスとか或いはスペインとかイタリア南亜連邦、スイスというような諸国におきましては特別
立法によ
つてこういう病気の
予防或いは
診断、或いは
治療、こういう特別
措置が講じられているわけでありまするが、我が国の
立法においてはどういう
状況かと申しますると、御
承知のように
労働基準法或いは労働者災害
補償保険法、こういうような法律がありまして、一応けい肺等もこれらの法律によ
つて療養
措置が或いは
補償措置が講じられている。こういうような
状況にな
つているわけであります。
ところが
先ほど申上げますようにこの病気というものは罹りますと非常に長い期間を要するということにな
つておりまするが現在の日本の法律制度で以ては療養の期間というものは最長三年間にな
つているわけであります。ところがこの職業病に関しまして今までの臨床の経験を通じましてまあ
関係者の御
意見を承わりますと、最長のこの三年は五年間の療養期間に延長すべきであると、こういうような御
意見が出ているわけであります。で
先ほど申上げましたようにこの病気が職業病である。而もこれは労働者に何の
責任もない、
企業そのものの生んだ宿命的な病気である。而も又科学の今日の到達水準以前のものであると、或る意味における科学の貧困のためである。こういうようなわけでありまして、この
立法の必要性というものは全国の労働者は勿論、或いは又こういう職場を持
つておる
企業等におきましても非常な関心を持
つて今日まで参
つて来ておるわけであります。
一例を申しますと金属鉱山等におきましては、すでにその労働者のうち七割、七〇%は
労使の協定によりまして、労働協約等によりまして今の法の不備を補充しておるという
状況にな
つて来ているわけであります。
石炭鉱業等におきましても
労使の協定によ
つて、
労使協約によ
つて徐々に現在の法の不備を補充しておる、こういうような状態にな
つて参
つておるわけでございます。一方
政府におきましては、
労働省におきましては先般来
けい肺対策審議会を設けられまして、その
審議会の中に
予防診断或いは
更生対策等の特別
委員会を設けられまして、今これらの機関に諮問されているわけであります。
先ほど申上げましたように参議院におきましてすでに四たびの会期に跨
つてこの
法案が
議員立法として提案され
審議を進められておりまするが、この
国会に至りまして、この
審議も相当前進したわけであります。で我々といたしましては、この会期中にこの
法案を是非とも
立法化したいこう
考えて参つたわけでありまするが、ただ不幸にいたしまして、
自由党と
緑風会は、要するに
予算を伴う
議員立法というものはやらない方針だ、やりたくないのだと、こういうような強い方針を堅持されて今日に至
つておるわけであります。我々といたしましては、社会党両派といたしましては、或いは無所属の提案された各位といたしましては、こういうような法律まで
議員立法としてお互いに慎しむということは行き過ぎじやなかろうか。いわゆる
議員立法として今日世の指弾を受けておるのは利権
立法である。こういうような観点から
自由党や
緑風会の御
意見に若干食い違いはありますけれども、併し
法案の成立を期するためにはやはり各
会派の共同した
意見の
一致が必要である。こういう
工合に
考えて参りまして、
提案者でありまする側の
会派もできるだけ譲る点は譲
つて、各
会派一致の共同提案、
立法化を図ろう、こういう
態度で今日まで参つたわけであります。幸いにいたしましてこういうような
国会の情勢の動き、或いは又周囲の
関係産業等の客観的な情勢の発展に応じまして
労働省も今日次のような
態度にまで到達いたしております。
それは
けい肺対策審議会の答申を待
つて一応
立法化を図る
考え方であることは勿論であるが、仮にこの答申が遅れたような場合には
労働省自体といたしまして、
政府自体といたしまして
立法指置を図る意思である、こういうようにな
つて参つたのであります。さようにいたしまして
自由党の
政調会におきましても、
労働省、
政府のこの
考え方を支持する
段階にまでな
つて参つおるわけであります。
先ほど労働大臣からその
所信を承わりましたところが、今申上げましたことを明確に申されましたし、又
先ほど労働政務次官に質問いたしましたところが、具体的に申上げますると来年度、
昭和三十年度には
予算措置も図るし、同時に又
予算措置に伴う
立法については
政府提案として出す
意向であるということも明らかにされまして、私たちは今会期に至る四会期の
努力も漸く実を結ぼうとする
段階に至つたわけであります。
そこで論議が発展いたしまして問題となりましたことは、折角このような法律ができましても、この法律の中には給付の
負担といたしまして国が三分の一を
負担する。それからそのような
企業の事業主が三分の二を
負担する、こういうようにこの
立法はな
つておるのであります。従いまして国が三分の一を
負担すると、こういうことにな
つて参りますると、当然国の
予算措置、こういうことが問題にな
つて参るわけであります。
労働省といたしましては、恐らく来年度の
予算の折衝というものが本年の十月頃から始まると思いまするが、当然今年の十月以降の
予算折衝におきましてはけい肺のための
予算を要求することにな
つて参ろうと思うわけでありますが、
先ほど質問によ
つて明らかにされましたところによりますると、
政務次官も労働基準
局長も
予算折衝においては大蔵省に強くこれを要求すると、こういうようなことが明らかに
なつたわけであります。幾らくらいの
予算が、大体国の
予算としてどの
程度当面必要であるかと、こういうような点は、
先ほど論議がいろいろされましたが、当面五億前後の
予算が必要になるのではなかろうかと、かように
考えるわけであります。
一つそのようないきさつから
大蔵政務次官の御
出席をお願いしたわけでありまするが、現在の国の政治の
方向を
考え、或いは財政経済政策面から見ましたときに、このような新しい
立法に基く新しい
予算措置等については、とかく大蔵官僚等におきましては論議の余地もあるかと
考えまするが、併し今申上げましたような
諸般の情勢からこの法律が生れて、而も
予算措置を要求すると、こういうことにな
つて参ります場合に、大蔵当局といたしましては十分に今までの
経過を、議会の動き或いは議会外の
一般的な期待に対しまして十分に応えられるだけの
予算措置をや
つて頂けるかどうか、この点を伺いたいと存じます。