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1954-04-23 第19回国会 参議院 労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十三日(金曜日)    午後一時五分開会   ―――――――――――――   委員の異動 四月二十一日委員榊原亨君辞任につ き、その補欠として中山壽彦君を議長 において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田畑 金光君    委員            河井 彌八君            阿具根 登君            寺本 広作君            大山 郁夫君            市川 房枝君   委員外議員            吉田 法晴君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   参考人    一ツ橋大学教授 吾妻 光俊君    東京都立大学教    授       沼田稲次郎君    東京大学助教授 山本 桂一君    慶応義塾大学教    授       峯村 光郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件労働情勢一般に関する調査の件  (日本国有鉄道における労働問題に  関する件) ○小委員選任の件 ○連合委員会開会の件   ―――――――――――――
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から会議を開きます。  本日の会議に付しまする事件労働情勢一般に関する調査でございます。  その前にちよつと御承認を得ておきたい事項がございます。前回の委員会におきまして、本委員会に付託されておりまする請願、陳情に関する問題を審査いたしまするために小委員会を構成することに御決定になりました。各会派から委員選出をお願い申上げておりましたところ、出揃いましたので、ここで正式にお願いをいたしておきたい、こう考えるわけであります。小委員として御選出を頂きましたのは井上君、田村君、阿具根君、田畑君、寺本君、市川君、大山君の方々でございます。いずれ近日中に小委員会が開かれるそうでございますから、小委員長はこの委員のかたで互選を願いまして、そうしてお取運びを願いたい、こう存じます。   ―――――――――――――
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 次に教育二法案に関しまして当委員会文部委員会との連合委員会を開催せられたいという中入れ委員会決定を以て、文部委員会にいたしておりました。文部委員長と折衝の結果、四月二十七日、火曜日午後一時から連合委員会を持つことに決定をいたしました。各委員は御出席をお願いいたしたい。こう存じます。   ―――――――――――――
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 本日は労働情勢一般に関する調査のうち、日本国有鉄道関係いたしまして、昨年度の国鉄労働組合国鉄当局との労使の紛争に関しまして職員の馘首の問題が起きておりました。この問題につきましては、本日は各大学先生がたをお出で願いまして御意見を伺うことになつたわけであります。本日お出でになりました先生は、一ツ橋大学教授吾妻光俊君、東京都立大学教授沼田稲次郎君、東京大学助教授山本桂一君、慶応義塾大学教授峯村光郎君の四君でございます。  ちよつと速記を止めて。    〔速記中止
  5. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。  各先生がたに一言御挨拶申上げます。非常に御多忙のところお出で頂きましてありがとうございました。実は国会のほうも御承知のような事情で議事が予定の通り進んでおりませんために、いろいろと御迷惑をおかけいたしましたが、何とぞ御了承を願いたいと存ずる次第でございます。  それでは最初吾妻先生から御意見を伺いたいと存じます。
  6. 吾妻光俊

    参考人吾妻光俊君) 時間の関係がありますので、私が紋切型に最初意見を申しますより、いろいろな点について質問して頂きまして、それにお答えしたほうが或いは適当じやないかと思いますが如何でございますか。
  7. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) よろしうございますか。前に何か伺つてそれから質問いたしますか。
  8. 寺本廣作

    寺本広作君 この前問題になつた点を委員長から取りまとめて伺われたら。解雇問題です。本部の指揮に従つた支部職員解雇したのはどうだとか、それから公労法上のあの規定に、解雇した場合にその恩給の問題とか、いろいろそんな問題があるのですから、この前問題になつた点を取りまとめて伺つて頂いたら如何ですか。
  9. 吾妻光俊

    参考人吾妻光俊君) 問題点をとり上げて頂ければ、それに従つてお答えしたいと思います。
  10. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは只今お話がありましたようでございますので、大体問題点を申上げてみたいと思います。  実はこの委員会におきまして、只今申上げました事件について、国鉄当局側並び労働組合側方々においでを願いまして、それぞれ意見を伺つたんでありますが、その中で更に問題になつておる点がありますので、諸先生方の御意見を伺おう、こういうことになつたわけであります。只今お手許へ差上げまするけれども、これ、或いはこれに関係いたしますいろいろな点について更にお聞かせ願えれば幸いでございます。  大体この前問題になつてそのままになつておる点を一応ずつと整理してみたんですが……。
  11. 吾妻光俊

    参考人吾妻光俊君) それでは大体これに一応よりまして私の意見を申しますから、なお、追加してお尋ねの点がありましたら……。  第一の欄から参ります。昨年の遵法闘争休暇戦術ピケ等行為公労法十七条に掲げる行為該当するかどうかという点でありますが、この点につきましては遵法闘争とか休暇戦術等等の形式を用いましても、その行為の結果が十七条に規定いたしますように「業務の正常な運営を阻害する」という実質的意義を持つ場合には、やはりこれは公労法十七条に一応該当するというふうに考えなければならないのではないか、一説によりますと、特に遵法闘争等につきましては、法律の許す範囲内における行動、その結果が業務の正常な運営をたとえ阻害するとしても、これを禁止された行為とみるべきではないという考え方がございますが、我々の争議或いはこれに準ずる十七条に定められるような行為判断するについては、実質的にノーマルに行われておる業務が阻害さ才たかどうかということを以て判断基準とすべきではないか、そういう意味から申しましてこの十八条に定める責任の追及の問題については、これは別といたしまして、一応十七条の規定には該当するというふうに解さざるを得ないというのが私の考え方であります、  それから二番目の「解雇されるものとする」という十八条の規定と関連して十七条に該当する場合に、この十八条に言う「解雇されるものとする」という意味をどう考えるか、こういう問題であろうかと思います。ここでも余り事件の具体的な内容について詳細には存じておりませんので、そういつた面からの判断は、これは結局私としては裁判所実態を調べてのちに決定される問題であろうと考えますので、そういう具体的な事実関係と離れて、公労法十八条の規定について申しますと、この「解雇されるものとする」という非常に何と言いますか、非常にあつさりした表現の仕方を使つておりますが、もとより第十七条の違反行為というも  のは、組合幹部についても或いは組合末端従業員についても職員についても、いろいろな角度から十七条違反行動というものが形式的には判定されるという場合があり得るわけでありますが、その場合に「解雇されるものとする」ということは常識的に考えましても、その中で特にその争議行為或いはこれに準ずる行動について、相当程度責任者と申しますか、それを実質的に煽つたとか或いは唆かした或いはみずから中心に立つて企画したという、そういう実質的な責任者についてのみ「解雇されるものとする」という問題が生ずるのであろう。但しこの「解雇されるものとする」という言葉には、何の条件も付いておりませんので、法律論といたしましては十七条の該当者については、一応解雇ということができるという結論に到達せざるを得ないわけであります。但し情状如何によつては、その解雇が結局、殊にあとのほうで問題になつておりますが、組合機関決定に基いて、それを単に実施に移したというような程度のものについて、どの程度この「解雇されるものとする」という規定によつて、これを処断すべきかは、これはその情状如何によつて判断される問題である。その意味合において、その情状において極めて軽い者について、十八条の規定適用するということが、いわば何と申しますか、解雇権濫用とでも申しますか、そういう意味合該当する場合は十分にあり得るというふうに、私は考えているわけであります。  なお、先ほどこの「解雇されるものとする」という言葉と関連してこの解雇性質如何についての問題があつたということをちよつと伺つたわけでありますが、私としては十八条による解雇というものは、これはいわば独得の公労法上の解雇という概念であつて、これが当然に他の例えば十七条違反行動があつた場合に、当然これが一種懲戒解雇的なものに該当するというような意味を、十八条は表現したものではないというふうに考えております。つまり十七条違反効果は唯一十八条によるところのその情状に応じて解雇するというこれに尽きる。而も十八条は公労法上の権利を奪われるということと解雇されるということの二つをただ掲げておるだけでありまして、それが懲戒解雇該当するかどうかということについては、これは全く別の基準から判断さるべきものであります。従つて公労法第十七条違反が、当然に懲戒解雇該当すべき、何と申しますか、違法な行動と申しますか、そういう意味を含むものではないというふうに考えます。そういう意味から申しますと恩給等の問題について、この十七条違反理由として直ちにこれを、これは国鉄の場合何でございましたか、国鉄業務規程か何かによつて首切られたと思うのでございますが、果してその建前が適当であるかどうか、区若し仮にその有効、無効ということは別問題としまして、その結果、当然に懲戒解雇的な恩給権の剥奪というような効果を生ずるものではない、まあこれは別に争議行為に際して特段行動があつて、暴行といつたような特段行動があつた場合には、これは別といたしまして、十七条該当ということだけで、そういう結果は出て来ないのではなかろうかというふうに私は考えております。  それから第三の問題でありますが、これはまあ私自身としては、年来の主張として公労法という法律は必ずしも適当な法規ではないというふうに考えておりますが、まあ憲法違反であるというような判断をするということについては、直ちにこれは憲法違反であるかどうかというような判断については、私は必ずしも積極的ではなくて、むしろ妥当でない、憲法精神からみてこの公労法規定というものは、或る範囲において妥当でない、従つて改正を必要とするという考え方を持つておりますが、それによつて当然に例えば憲法違反として無効であるとか、その違憲な条規によつて行われた解雇処分が当然に無効となるといつたような判断はとつておらないわけであります。  第四が、先ほどちよつと触れましたが、上部機関意思決定による指令に基いて行われた場合、これはまあ私非常に常識的な結論を申すのでありますが、一般に若し形式的に十七条に該当したということだけで、この条規に触れたものをすべてを解雇するということになりますと、殆んど大多数の従業員解雇されなきやならんという地位に追込まれることになるであろう。そういう意味から申しますと、解雇の際の判断という問題にもなりますが、要するにその指令に当つた幹部が仮に処断される、十八条の適用を受けるによつて解雇されるという場合にも、一般的にはその他の従業員については、何らか特段理由があるという場合にのみ解雇権を発動するというのが至当ではなかろうか。なおこの四というところには、組合責任ということと職員責任ということについて公労法の十八条が職員だけを処分対象としている、組合についてはこれを不問に付しておる、而もその機関である職員処分されるという点についての問題が提起せられておるようであります。十八条は併し解雇という特別の何と申しますか、制裁をもつて制裁という言葉が悪ければ、解雇という特別の手段をもつて十七条違反を阻止する、或いはそれに対応するという意味を持つておるのでありますから、従つて当然に組合責任というようなことは、その意味においては問題になり得ない。別に条規を設けるとすれば、仮に罰金刑とか何とかいう、そういう形のものが別に設けられれば、これはあれでございますが、十八条の場合には解雇だけを特に取上げて規定しておる結果、当然に組合が問題にならなかつたというだけでありまして、従つて十八条が職員だけが処分されるという形をとつたことは、十七条違反に報ゆるに解雇をもつてするというこの基本原則からは、当然の結論ということにならざるを得ないのではないか。なお、実際の解雇に当つて例えば幹部責任又その指令下に実際に行動した組合員職員責任というものの解雇該当するかどうかという判断バランスの問題につきましては、これはどうも私としては実際に今次の解雇には幹部級のみならず、又同じ幹部の中でもその場所によつて扱いの違いがあるということも認められますし、又いわゆる一般職員についての責任を追及したという事例も見られるわけでありますが、これは私先ほど申しましたように、その具体的事案について我々が十分な材料を持ち合わしていないということのために、これは到底私としては判断できないと申上げるほかないわけであります。ただ一般原則を申しますと、先ほど申しましたように、一般組合員については、特段にその争議をあおつたとか助勢したとかいうような情状がある場合にのみ、十七条違反の問題が起る。但し何と申しますか、すでに実行することが決まり、その実行がされつつあるときにピケツテイングの程度が重いとか軽いとか、こういう問題は、実はそれが暴行したとか強迫とかいつたような、特に刑事犯的な色彩を伴つて行われたという場合は、これは別でありますけれども、そうでない限り、特に強力にピケを推進したといつたような一般的な理由だけでは、これは特にその職員幹部並にと申しますかに扱つて解雇すべきものではなかろうと、こういうふうに考えるわけであります。ただ繰返して申しますけれども、十八条の「解雇されるものとする」という言葉は、これはごく一般的に書かれておるために、その解雇法律違反として判断されるという場合は、先ほど申しましたそれが一種解雇権濫用と申しますか、そういう事由に該当する場合に限ると考えるべきではないか。併しこの「解雇されるものとする」というこの問題は、実は私前々から主張しておるのでありますが、むしろそういつた法律的な合法性といいますか、解雇合法性ということよりも前に、実はその解雇が、つまりその問題とは別に解雇が果してあの争議実態において妥当なものであつたかどうか、あの争議実態において果して――まあこういう言葉を使うのも適当かどうかはわかりませんが、政治的に妥当であつたかどうかという判断はこれは別問題であつて、而も十八条の解雇すべきものとするというのは、結局公社側でまあ解雇自由裁量と申していいかどうかわかりませんが、その解雇判断する責任という問題については、そういつた政治的な而というものも同時にこの中に考慮されるということが、政治的な意味においては至当ではなかろうかと、こういうふうに考えますけれども、併しこれはこの問題の法律的な結論というものに当然に影響するものではなくして、むしろその問題は、法律的な面はこれが解雇権濫用として、殊に非常に軽度のものを解雇したとか、或いは重いものを放置して、それとのバランスのとれない形で軽度のものを解雇しておるといつたような、そういう実態が若しあるとすると、その点から裁判所の審査を受ける可能性があると、こういうふうに私は考えております。   五は、この解雇に値する行動をやつた職員であるということの判断は誰がするか、こういう問題でございますね。この点については、まあ公労法においては仲裁という制度もありますけれども、一般には人事関係については、特に公に規定違反行動というものの有無判断する機関というものは存在していないのが現在の公労法建前であろうかと思います。勿論苦情処理手続にかかるかどうかというような問題もございますが、法律規定によつてこれこれこういつた案件に該当したものは解雇されるものとするという規定がある以上、その最終的判断はどうしたつてこれは裁判所に任せるほかないのではなかろうか。勿論これも実情において苦情処理手続を利用するとか或いは仲裁機構というようなものを考えるという問題はありましようけれども、まあ十八条の判断から出て来る結論といたしましては、最終的には経営者解雇を中渡し、公社側解雇を中渡して、つまりその合法、非合法、十七条に該当有無、十八条の裁量の適否ということを裁判所判断するということのほかにはなかろうではないかと、まあこういうふうに考えております。  六番目の問題は、さつき私多少触れた問題と関係を持つております。組合行動とみなされる、つまり集団的な行動とみなされる行為について個々の職員解雇するという規定が非合理的であるか、労調法とは反しないか、労働法規において職員服務懲戒規定があると解すべきか、このA、C、は先ほどこの見解は否定したわけであります。つまり服務懲戒規定というふうには理解されない。むしろ労働法上この種の争議行為というものが国家全般、或いは一般公衆に与える影響というものの角度から、特段の制限を設けたにとどまつておるので、一般的に懲戒といつたような意味を持つものでないということは、Cの点は先ほど否定したわけであります。A、まあ非合理的というほうは甚だお答えに困難なのでありますが、私は公労法全体が解雇を以て争議権の行使に報いるという態度は合理的でないと考えておる立場のものですから、少くとも立法論としてはその合理性を疑うということを申上げることができるかと思います。労調法とは反しないかということは、どういう意味かわかりませんが、これはあとで若し意味を明かにして頂きましたらお答えしたいと思います。  第七、これは六の点とも関連がありますが、とつさのお答で甚だ恐縮ですが、十八条による解雇一種特別の意味を持つ解雇であるというふうに理解する私の立場から申しますと、懲戒による解職における手続を受ける権利を失うと考えるよりほかない。むしろ手続を受ける権利を持つという考え方は、十八条の解雇、これがいわゆる一種懲戒処分であるという考え方を前提としてのみ認められるわけでありますが、少くともそれを結果において正当祝するという考え方に通ずることになると思います。これは私としてはそういう意味で一切一般懲戒解雇の場合の、解職の場合の少くとも類推によるという可能性はあるかと思いますけども、少くとも正面からこれが適用れを受けるということは言えないのではないかと考えます。  八はさつきちよつと申しましたが、これは権利があるという考え方を私としては取つております。  最後は恐らく仲裁裁定仲裁手続の尊重といつたような問題とからんで、十七条が、果して十六条の行為が必ずしも尊重されてないというような事態において十七条の発動があり得るかという問題に帰着するのであろうと思います。私といたしましては、十六条の運用自体の問題と、十七条の責任問題とは、これはいわば何と申しますか、解雇するかどうかということの情状の酌量の問題に帰着するので、それ自体としては、十七条、十八条という規定は、十六条の運用如何によつて、これを発動し得ないというふうに法律的に考える余地はなかろうかと思います。ただ私この点では、先ほど申したことをもう一遍繰返すことになりますが、十八条の解雇というものは、そういつた法律的な合法性とは別に、むしろ政治的な考慮というものを十分そこに入れ得る余地が……解雇されるものとするというのは、絶対に解雇しなければならないという規定とは私は理解しておりませんので、そういう意味から言いますと、十七条、十八条の運用についても、そういつた政治的考慮と申しますか、というものを払うという余地、これを十分その中に盛込んで行くのでなければ、結局公労法全体の建前というものは、仮に現行の公労法を一応支持するとしても、その建前全体がここから崩れて来るという危険性も十分あるのじやないか、そういうふうに、私一応極く簡単ですが、意見を申上げました。
  12. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) お急ぎのようでございますから、先ほど第六項のところで、労調法と相反していないかという問題でございますが、この問題でちよつと私からお尋ねを申上げます。これは実は公労法というものが労働組合運動を規制するものであるかどうかということが、これが問題になろうかと思います。労働組合運動を規制するということになりますれば、労調法の三十八条によつては、特定の条件の下においては労働争議をなすことはできないと、こういう工合になつております。そのできない争議行為をあえて行なつた場合には、第四十条によりまして団体が刑罰を受ける、こういうことになつておりまして、従いまして先ほど先生がおつしやつたのは、公労法においてもやはり十八条を発動するためには個人対象になるので、団体対象にならない、こういうことをおつしやつたのですけれども、公労法そのもの労働組合運動を規制するものである、こういう工合労調法精神ですね、それを私は少くとも考えておりますが、その点如何でございますか。
  13. 吾妻光俊

    参考人吾妻光俊君) 労働運動を規制すると言いましても、二つのいろいろの形があると思うわけです。つまり個人解雇するといつたような形で、労働運動という集団運動に対処するのは不適当じやないか、こういうお考えじやないかと思うのでありますけれども、それに私どもとしても解雇を以て報ゆるという規定合理性と言いますか、合理性については非常な疑問を持つており、むしろ反対の立場をずつと採用いたして来ておるわけであります。それは十七条とも関連しますので、十七、十八条と一連の法規建前というものに私は賛成しない、こういうわけであります。仮に十七条の規定をもうすでにパスさしてしまうという段階になりますと、そこから労働運動全体に対して、如何にこれを公労法の、定める線に副うて、十七条の線に副つて抑制して行くかという手段に対しては、これは組合全体に今罰金を課すという方法もありましようし、又集団行動の中で強力にそれを推進したものについて、これを解雇するという手段二つ論理的に考えられるんじやないか、そういうふうな意味では、労調法と反するのではないかというふうに言えないんじやないかと考えます。つまり公労法全体の精神労調法精神に矛属するかということは、問題は大いにあると思います。十七条だけを取上げて、解雇のところだけ取上げて、そういうことをやるということには賛成できないわけです。
  14. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 第二点はここにも指摘してありますが、要するに労働組合運動として或る一つ対抗手段を計画し、指令をする、その指令者というものは公労法にもはつきり明記されておるように理解されている人が多いんですけれども、その計画され、指令を受けたものを、義務として実施した末端機関でございますね、みずからそういうことを決定する力を持つていない、ただ服従だけの権利しか与えられていない末端機関或いは機関の下にある組合、こういう人を公労法で拘束し得るかどうかという問題が一つ、これが大きな疑問の点になつているわけです。この如何ですか。
  15. 吾妻光俊

    参考人吾妻光俊君) その点は私さつきもちよつと触れたのですけれども、つまり一般職員としては上部機関決定で、殊に全体の組合としての決定で、そういう争議行為が行われるということになつた場合に、一応それに従わざるを得ないという立場にあるから、仮にそれが十七条の規定から言えば、この規定該当する行為個人立場においても行なつたと仮定しましても、いわばそれは原則的には集団的行動というものの中に吸収されると申しますか、そういう関係で少くとも十八条の解雇を発動するのは妥当でない、こういう考え方をとつておる。従つてさつき言いましたピケツチングの問題をちよつと例に引きましたけれども、組合の方針として或る一定のピケツチングというものを張るといつたような態勢ができ上つている場合に、たまたまそれに参加した個々の組合員が参加したということだけで、特にその者を情状重しとして解雇するという理由にはならないのじやないか。但し条件がつくわけで、一般職員といえども、極めて例外的な場合にそのストライキを起すということについて、非常に積極的にそれを煽る、幹部にも増して煽るというような行動があつた場合とか、或いはビケツチングに対して、いわば上部指令というようなものを乗越えて、或いはその合理的な範囲を乗越えて特段行動をしたというような場合になりますと、これは十八条の規定適用を受ける、こういう可能性が例外的には生まれて来るのではなかろうか、こういうふうに私としては考えておるわけであります。
  16. 栗山良夫

    ○鶴員長(栗山良夫君) 大体それはほかの労働組合、これはストライキ権を持つておる組合の場合でございますが、この場合でも或る裁判所のやはり判例なんかによりますと、上部団体から下ろされた指令の枠を越えて、下部機関争議を強行した、こういう場合に、やはり裁判所責任を追及された例を私は知つておりますが、それと同じように大体理解してよろしゆうございますか。
  17. 吾妻光俊

    参考人吾妻光俊君) 大体二つの場合、その場合と枠を超えた場合、その指令の具体的内容が適当かどうかという問題がありますから、非常な違法な指令を出した場合には、如何にそれに従つてもいけないという場合も例外的には出て来ると思います。ただ一般にストライキをやつちやいけないということだけなので、その行動の内容に特に違法な行動が含まれるというような性質のものでないとしますれば、これはやはり今の一般理論で片付けてよかろうと思います。
  18. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 先生のお帰りの時間が迫りましたからよろしゆうございますか、御質問がなければ……。どうも有難うございました。  それから山本先生大変失礼ですけれども、峯村先生がお急ぎのようでございますからお許しを願いたいと思います。それじや峯村先生にお願いいたします。
  19. 峯村光郎

    参考人峯村光郎君) 実は私も一両日中に外遊するので、今日午後二時にイギリスの領事館に約束をしてありますので、恐入りますが、山本さん、御迷惑でも先にさして頂きます。  只今吾妻教授からすべての点について御意見があつたので、かなりの点は重複する点があるかと思いますが、御提示の一点から九点まで簡単に私の考えを申上げます。  第一点の公労法十七条における業務の正常な運営を阻害する行為というのは、公共企業体の業務が社会的な機能として正常に運営され得ない場合のことだけではなくて、企業内部において職制による命令が実現されないような場合も、これに該当すると考えます。ですから、たとえ労働基準法第三十九条の有給休暇の請求というような形をとつたとしても、組合の統一的な団体行動として行われる一斉賜暇或いは遵法闘争などについては、その個々の場合について具体的に判断されなければならない問題でもありますが、組合の統一ある、統制ある統一的行動としてなされる限り、実質的には争議行為といつて差支ないと考えます。  第二点は、十八条で「解雇されるものとす」いうことですが、この問題については少し私は考え方が非常にむずかしいと思うのです。条規の単なる解釈とすれば、一応国鉄、公共企業体等の自由裁量に委されておるのみならず、一旦違反事実を認める以上は、解雇された職員は不当労働行為の救済手続に参加する権利、その他解雇から救済される一切の権利が否定されている旨を規定している規定であります。但し昨年末の公労協の休暇闘争のような仲裁々定の実施を狙つてなつ争議行為は、十七条で禁止された争議行為ではないと私は解釈いたします。従つてこれを理由に十八条で解雇するということは、いわゆる十八条本来の解雇できるという意味対象になる争議行為の範疇に入らない以上、国鉄融合役員の解雇国鉄側の解雇権濫用と解するほかはない、こう考えるのであります。と申しますのは、三十五条が仲裁々定が当事者双方とも最終的決定としてこれを服従しなければならない、これがいわばスト権剥奪の法的代償として認められているわけでありますから、その裁定が実施されない場合に、その裁定実施を狙つた実質的な争議行為としての一斉賜暇というふうなものは、いわば法的にはスト権剥奪の前提が失われてしまつた場合ですから。なお、民事、刑事の免責を受ける実力行使をなし得る余地があり得ると思うのです。これはまさに公労法の盲点ではなくて、公労法を法的に有効に存続せしめる唯一の空気孔でなければならないと思います。  第三点は公労法が独立と同時に早急に廃止さるべきものであつたかどうか、これもなかなか断定しにくいのですが、ここで立法論をしてもどうかと思いますが、ですから政令二百一号以前の労働法から考えれば、立法論としては廃止さるべきであつた、こう言えるのでありますが、およそ法的制度のようなものが一旦実施されると、なかなか簡単に引つ込みがつかない。而も公労法が直ちに憲法違反だということの断定できない点は、三十五条が仲裁々定が当事者双方に対する最終的決定として、これに服従義務を課している点において、僅かに存在理由を持つ以上、政策的には廃止さるべきであつたとしても、直ちに公労法の存在を違憲だというふうに断定することは困難かと思います。  第四点は組合指令に従つた職員責任追及の問題でありますが、これも公労法建前として国鉄職員でなければ国鉄組合員になることができないとい建前をとつている点からも、或いは職員及びその組合争議行為を禁止し、それの違反に対する職員責任追及という形で、組合に対する責任追及をも或いは併せている点においては、必ずしも法的に妥当なものであつたとは考えませんが、これも公労法建前として、こういう形をとつたのではないか、こういうふうに考えます。この点も先はどの吾妻教授と大体似ているわけであります。  それから第五点でございますが、十八条は争議行為の禁止に違反した職員解雇するしないかは、全く公共企業体としての国鉄自由裁量に委されているという点は、先ほど申述べた通りでございます。なお、権利を失うという点は、解雇から救済される一切の権利が否定される、即ち不当労働行為の救済手続に参画する権利その他一切の解雇から救済される権利が否定されているという意味であります。勿論この「解雇されるものとす」というのは、解雇することができる、こういう意味ですから国鉄当局側がその裁量に当つて解雇してもよければしなくてもいいという意味だと解釈します。ですから同一の行為に関しても、一は解雇され、他は不問に付されることがあつたとしても、具体的事実を明確に認識しないと、問題は、直ちに結論を急ぐことは困難かと思いますが、そういうことはあり得る。例えば同一行動をしている、或る人間は解雇し、或る人間は余人を以て代え難い公共企業体であるから、これを解雇しないことがあり得るという意味に解釈します。  第六点は、これは、今回の解雇の問題は、私は十八条で解雇し得る、十七条の争議行為の中には入らない、こういう解釈をしておりますので、若し昨年末の一斉賜暇その他の問題をとり上げるとすれば、或いは国鉄法三十一条の問題として処理さるべきであつて、十八条の解雇の問題ではない、こういうふうに解釈いたしております。ですからこの非合理的であるかどうかという点、これも先ほどのように公労法建前としては、今回の問題は真正面から処理できないケースである。むしろ国鉄法三十一条の問題として処理さるべきではなかつたかと思います。但し三十一条の懲戒による解雇における手続を受ける権利を失うかどうか、同じように解釈するかどうかという問題は、これも吾妻教授と全くその点は同様でございまして、今回の解雇懲戒解雇というふうに扱うこと自体が問題だと思うのですが、勿論問題が十八条の解雇懲戒解雇という態度をとつておりませんので、而も今回の問題は十八条で解雇すべき問題ではない。そうすると、結局三十一条の問題に関連して、もう一遍考え直すべきである。而も三十一条の問題として考え直す場合にも、仲裁裁定が政府当局によつて歪曲されている、それを組合側からむしろ公労法建前を守るという点においてなされた実質的な争議行為ですから、先ほど吾妻教授が政治的な考慮が必要であるとおつしやられた。同じ意味において政治的考慮を十分して、三十一条の問題として処理さるべきではなかつたか。従つて只今八の問題は問題になり得ないのであつて、今回恩給法五十一条の、或いは恩給退職金の権利を奪われるというふうには解釈すべきではないと思います。  第九は、御質問に大体私は賛成でありまして、むしろ昨年末の賃上げ及び年末手当をめぐつての問題については、正に当事者が裁定に最終的決定として服従すべきであるにもかかわらず、政府が公労法建前を守らなかつたということに対する一つのプロテストとして出されたものですから、これを直ちに十七条の禁止された争議行為の範疇に当てはめて、そうして十八条で解雇するというふうには考えられない。これを当てはめれば、まさにこれは国鉄側の解雇権濫用と解するほかはないというふうに考えます。  急ぎましたので極くざつと各点について私の考えを簡単に申上げました。
  20. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 先生ちよつと質問申上げたい点がありますけれども、時間が非常にお急ぎとのようでございますから、若しどうしても御質問したい点がありましたら、一、二点に限りたいと思います。
  21. 寺本廣作

    寺本広作君 結構です。
  22. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) よろしうございますか。要するに先生の御所論は、今度の解雇を、若し仮に問題にしても、十七条そのものが問題があるので、十八条で解雇するということは穏当でない、こういうことは非常に明確におつしやつたと思いますので、さように了解してよろしうございますか。
  23. 峯村光郎

    参考人峯村光郎君) 十七条の争議行為理由にして、十八条で職員解雇できるという建前でございますが、その十八条で解雇を以て臨み得る十七条の争議行為の範疇には、今回の実力行使は含まれない、こういう考え方でございます。
  24. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうでございますね。  じや、どうも大変有難うございました。ちよつと速記やめて下さい。    〔速記中止
  25. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記始めて。  それでは続きまして山本先生にお願いいたします。
  26. 山本桂一

    参考人山本桂一君) それでは只今頂きましたこの問題点につきまして、私の考えを述べさして頂くことにいたしますが、非常に多数の点で、今までの吾妻先生、それから峯村先生考え方と重複した部分があるかと存じまするので、同一の部分は成るべく省略をいたしまして、私の特に気のついた点、それも必ずしも斬新なものとは申上げられないとは思いまするが、そういつた点につきまして、極く簡単に申上げたいと思うのであります。  先ず第一点でありますが、第一の問題が公労法第十七条にいわゆる「業務の正常な運営を阻害する一切の行為」という言葉考え方になつて来ると存ずるのでありますが、昨年度の、いわゆる年末闘争に行われました遵法闘争、それから休暇戦術等の形で行われましたものは、これは「業務の正常な運営を阻害する」という結果を生じたものであるといたしますれば、遺憾ながら事件の具体的な内容を私ども余り詳らかにいたしませんために、こういう結果が非常に明白に発生したかどうかということにつきましては、はつきりと申上げられないことを遺憾に存ずる次第でありますが、「正常な運営を阻害する」結果、そういう実際的な結果が起つたとすれば、それは当然に該当すると考えられるわけであります。と申しますのは、公労法十七条の「同盟罷業、怠業、」と書いてあります場合に、これは行為を形式的にと申しますか、集団的な行動というような形式的な面からその活動を抑えているものである、これに対しまして「その他」以下のものは、その実質と申しますか、実際的に発生した結果、いわば実害というようなものを考えまして、そういつたものが発生した場合に、必ずしもそれは罷業とも怠業とも言うことができない、併し禁止しなければならないという考え方から制定せられた法律であると考えまするので、現実に行われました遵法闘争乃至それ以外の行為が、列車の遅延でありまするとか、或いは休止というような結果が起りまして、国民生活と申しますか、そういつたものに多くの不都合を生じたというこになりますれば、それはこれに該当すると言わざるを得ないかと存ずるのであります。この「業務の正常な運営」というものはどういうものかということが聞かれてあるようでありますが、これは「正常」とは「通常」と同一であるという解釈が行われているようでありまして、「正常」というのは何か、「通常」というのは何かと言いますと、非常に具体的な考え方をしなければならないということになるのでありましようが、それはいわば正常な我々の考え方によりまして、おのずからきまつて來るところと存ずるのでありまして、抽象的にこれを註釈しても、仕方がない問題になるわけでありまして、ノーマルな運営というようなことは、具体的に考えて行かなければならないというふうに考えております。  それから第二番目の問題でありますが、公労法第十八条の「解雇されるものとする」と、こう書いてある言葉の解釈になるわけでありますが、一般的に公務員とか、これに準ずベき職員争議行為をやつた、こういう争議行為に対する結果といたしまして、外国等でもどういう効果を与えるかと申しますると、先ず考えられますのは、罰則というもので、これをしばる、それからその次の考え方は、身分を失わせるという行き方があるようです。それからその次は、身分保障を失わせるという考え方もあるようです。更に進みまして、身分に伴う若干の権利を失わせる、こういういろいろな立法の仕方があるようでありますが、公労法におきましては、「解雇されるものとする」というのでありますからして、これは身分を先ず第一に失わせるものである、それからこれに伴いましてのちに懲戒の問題が出て参りますが、必ずしも懲戒手続によらせないで身分を失わせることができるという意味におきまして、いわば身分保障をも失わせているというふうに解釈してよろしいかと思うのであります。  それから「解雇されるものとす」と書いてございますが、これは勿論当然に身分がなくなるというのではなくて、勿論身分を失わせる行為を必要とするわけでありまして、解雇する行為がそこに介在をして来る。而もその行為は、果して義務か権利かという問題になつて来るわけでありますが、解雇しなければならないと考えましても、一体誰に対する義務であるか、甚だ不明瞭でありますので、これはやはり解雇することができると読まなければならないのではないか。その以後にできましたいわゆる地公労法と呼ばれております地方公営企業労働関係法、これには「解雇することができる」と書いてあつたように記憶いたしますが、この法律でも同じように解釈することができると思うのであります。解雇されることができるというのでありますからして、勿論使用者の側において馘首するかどうかということは、まあ自由ということもありませんけれども、情状重きものを解雇する。然らざるものを放置するということは当然であると思うのでありまして、従つて遵法闘争程度で首を切るのは適当かという問題になつて参りますと、これも先ほど第一の点で申上げましたように、その具体的に発生した結果が非常に大きかつたか小さかつたかということによつて判定せざるを得ない問題に帰着するのではないかと考える次第であります。  それから第三番目の問題でありますが、公労法がマ書簡によつて制定されたかどうかという点は遺憾ながら私この点をつまびらかにいたさないのでありますが、現在までもこれがとにかく廃止せられておらない、現行法として国会も多分認めておられるのではないかと思うのでありまして、法律として一応は成立している。然らばこれが憲法違反であるかという非常にむずかしい問題が起つて来るのでありますが、この点につきましては、勿論いろいろな意見がありまするようでありますが、私は必ずしも違憲にはならないと考えております。非常に問題はありますが、当然に違憲であると、従つて憲法九十八条最高法規規定によつて無効になるとは考えておりません次第であります。  それから第四番目の点でありますが、この点は先ほどから申せられておりまするところと若干異なりまして、第四点は、非常に多くの問題が掲げられておりまするが、極く原則だけを申上げますと、指令法律違反した場合は法律が勝つという考え方をすべきではないか。組合員は上級機関の違法は指令に従うということは、やはりその行為を違法ならしめるというふうに考えております。併し具体的に違法な指令であるかどうかということは、極めて認定が困難でありまするが故に、現実に違法でないと信じて行動したという組合員行為に対しましては、勿論大きな範囲で免責と申しまするか、不問に付するということが考えられなければならんことは当然のことでありまして、極めて重大且つ明白な法律違反指令、こういつたものに従えばやはり組合員責任を生ずる、かように考うべきではないかと思つております。  それから第五点の先ずA、これは一方的認定によつて決定すると解すべきであるかという問題でありますが、これは先ず最初解雇を行うかどうかという場合は、これは使用者の一方的認定といわざるを得ません。解雇することができるかどうかということは、最終的にはその濫用になるかどうかという問題と絡んで、法律的な判断がそこで決定されるということになるわけでありますからして、最初解雇を行う場合は、それは使用者の一方的な認定で行われるかも知れない。併しそのあとでその適、不適乃至は違法か合法かということが決定されるということになりまして、必ずしも一方的に認定できるというふうにはいえないといわざるを得ないのではないか、このように考えております。  それからB点でありますが、「この法律によつて有する一切の権利」、これは非常にむずかしい解釈問題でありまして、しばしば私どももこの点につきましていろいろ考慮いたしましたのでありまするが、考えれば考えるほどいろいろな問題を生じて参りまして、よくわからんと申上げたほうがよいかと思うのであります。ただこの法律によつて得られる利益、権利、調定委員会仲裁委員会に対して保護を仰ぐということができなくなるということは一応のこととして申されると思うのでありますが、それ以外に如何なる権利があるかという点になりますと、いま少し研究いたしたいと存じておるのであります。  それからこれと関連いたしまして、ここにも出ておりまするが、非常にむずかしい問題は、一方では十七条違反だ、一方では十七条違反でない、こういう場合に、一体全部放置してしまうのか、或いはその限りでは認めていいのではないか、こういう問題があるのでありますが、これは余り理論的な見解、理論的な言い方でないので御不満にお感じになるかも知れませんが、ほかの場合、訴訟事件のような場合でもあり得るのではないかと思われるのでありまして、例えば、これはストライキをやつたからという理由が付いておるから、委員会なりその他で退けざるを得ないのだけれども、ほかの理由で若しも受付けざるを得ないという場合があり得るということから考えまして、常に門前払いを喰わされるという場合だけではなく、一応とり上げてみて、その結果十八条違反つたから駄目だと言われる結果になるのではないか。そこで初めから全然駄目だと言えないわけでありまして、とり上げてみたら結局十八条違反つたから駄目だという結論が出て来る場合はありまするけれども、全然規定適用がないと言い切れるかどうか疑問であると考えております。  それからC点でありまするが、「解雇されるものとす」というのは先ほど申上げたところで尽きておるかと存じまするが、その二項に「同一の行為関係しても一は解雇し他は不問に」するということは、これは差支えないかという聞き方でありまするが、法律的には勿論一方を解雇する、ほかは不問に付するということは可能でありまするけれども、甚だしくこれは不適当な場合が生じ得るということは言い得るかと存じます。具体的な事例は先ほど峯村先生から御指摘がありましたから申上げる必要はないと存じますが、一方は情状が、例えば軽いとか或いは余人を以て代え難いという例がたしか挙げられたかと思いますが、そういう場合があるかと存じます。  それから六番目でありまするがこれは先ほど委員長から御指摘がありましたように、片方と申しますか、公労法は労働関係法規である組合活動に重点を置いておるのではないかということでありましたが、組合活動というものを捉える場合、団体としての組合を捉えるということと、それから組合を構成しておる個人組合員を捉える。そうして異つた資格で法律的な解釈を附着せしめるということは可能ではないかと思うのでありまして、そこで公労法組合に関する法律というふうに大まかにいうことはできまするけれども、個々の職員について効果を定めるということも全然不合理とは考えられないのではないか、このように考えております。  それからB点は、先ほど吾妻先生がお答えになつたのでありまして、今私も申しました通り、必ずしも相反しておるとも言えないのではないかというふうに考えております。考え方の基調は若干問題はあるかも知れませんが、反するとは言えないのではないかと存ずる次第であります。  それからC点は、これはその次の解職乃至は懲戒と一緒にしてお答えいたしたいと思いまするが、第七点の「解職される」ということ、解雇されるということ、それと国鉄法のいわゆる懲戒処分との関係でありますが、これは私も全然別個のものであるというふうに考えております。と申しますのは先に第二点で申しましたように、この規定懲戒によらないで身分を失わすことができるというところに一つ意味を持つているのではないかと考えられまするが故に、懲戒とこの十七条に基く十八条の処分は違う。その結果、恩給法に関連いたしまして恩給法は懲戒とだけ記してありまするから本条違反、即ち公労法違反によつて解雇されましても恩給権を失うということはないと考えております。実質的にこれらを懲戒とみるという見解もあるようでありますが、それはおかしいと考えております。  それから第九点でありますが、これは非常にむずかしい根本に触れる問題でありまして、一言でお答えしにくいのでありますが、先ほどからお話がありましたように、仲裁裁定というものがなされた、これをどう考えるかという非常に困難な事態に当つて争議が行われましたために、そこで当然その情状というと少し言い方が悪いのでありますが、具体的な行動として十分許容すべきものがあつたのではないか、これに対して措置をするに当つて解雇という処分をするに当つて十分に考慮すべきではないかというふうには考えられると存ずるのでありまするが、仲裁というものと常に結付けて考えなければならないというふうには考えられませんのでありまして、この規定が存しまする以上は、一応十八条を発動させて法律的には構わない。併しながら具体的な発動の形体、発動の態様に当つては慎重に考慮しなければならない。その意味で第九でいうような御趣旨には私も賛成でございます。  以上簡単でございますが、私の感じたところはそのくらいであります。
  27. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 有難うございました。  それでは引続きまして沼田先生にお願いをいたしまして、最後に御質疑をお願いいたします。
  28. 沼田稲次郎

    参考人沼田稲次郎君) この質問条項、問題として挙げられておりますのを只今拝見いたしましたのですが、最初の問題からすでにこの十七条の考え方自体を吟味してみないとはつきり捉えにくいのじやないかと思われますので、少しこの問題点から離れて、併し結局問題点に触れさして頂くような形でお答えさして頂きたいと思います。  大体この公労法の十七条、十八条というものの解釈がやや混乱しておるのは、これは大体政府が同条についてなかなか押付けがましい解釈をやられるからじやないかと思う。というのは、労働大臣の談話というものをみると、十七条に違反してしまつた場合には、もうその争議行為を構成する個々の争議行為に至るまですべて違法になつてしまう。つまりピースフル・パースウエイジヨンまで違法になつてしまう。つまり違法一色に塗りつぶす考えであります。即ち十七条の違反行為というものは一切合財違法である、いわば違法一元論とでも言うべき考え方であります。そういう考えで行くと、これは十七条というものは憲法違反になつて来るのじやないか。というのはこの争議行為というのは、労働者が社会的な地位からいわば自己の要求を主張するために可能な唯一の手段なんでありまして、これをそのような労働者の社会的地位から生ずる基本的な行動形態ということを承認したのが憲法二十八条なんであります。従つてそれをやつたということによつて何かすべて違法一色に塗りつぶしてしまうという考え方で行くと、これはやはり基本権を奪つたということにならざるを得ない。だからそういう考え方をすれば、たとえ仲裁裁定制度が設けられておつたにしても、その代償ぐらいでは到底補い切れないくらいのいわば基本権の奪い方になりますので、憲法違反というほかはないのじやないか。で、少くもあらゆる形での遵法闘争というふうなものまでをも、これを十七条に含めることは全く不可能であるというように考えざるを得ないのであります。従つて遵法闘争をやつたということの理由として、この十八条を発動するということは、政府のような十七条違反に対する解釈をとる限りにおいては全く理由が成り立たない。而もいわば仲裁裁定が一方において無視されておるということを考えますると、これはむしろ正当な組合活動を理由とする解雇になつて、不当労働行為になるのじやないかというふうにさえ考えておるのです。  そこでそれでは十七条というものを憲法違反しないように解釈するというのはどうすればいいかというふうに考えてみますと、つまり憲法に合した、憲法の根本的な労働基本権の精神に合したふうに十七条十八条というものを考える、合理的に考えて行こう。その場合に私は少くも三つの条件が必要だと思うのであります。一つは十七条違反があつたからといつて、それは十八条の限度においてだけ法が反作用を加えるというものだというふうに考えなければいけない。つまり違法というものは多元的に考えるべきである。だから具体的に個々の行動を見て、それが違法かどうかということを判定すべきであつて、十七条に違反したストライキが行われたといえば、一切合財違法になるのだというような考え方であつてはならない。だからピイスフル・パースウエイジヨンまでが違法になりかねない解釈というものは成立たない。だからそうでなくして、ただ単に十八条の限度において法が反作用を認めておるというふうに考えられるべきだと思うのであります。だから本来は公共企業体でもあるから、解雇というものはできない建前ですが、それをむしろこの十七条を犯したということで一応解雇はできるという一般的状態を作り上げるという意味のものであろうと思います。それから第二の条件は、十七条にいう争議行為及び正常な業務運営を阻害する行為というふうなものは、これはいわば伝統的な、市民法的な考え方で行けば債務不履行なり不法行為なりに当るような行為を含むのであつて、今度国鉄がおやりになつた安全衛生規律の遵守闘争だとか、荷物の愛護運動だとか、運転保安規整闘争ですか、或いは白票挿入運動というようないろいろの形で行われたいわゆる安全闘争というようなものはもとよりのことでありますが、本来保護法上の権利を利用するに過ぎない賜暇闘争までも、この場合は十七条外に置くというふうに考えて行くべきではなかろうかというふうに思うのであります。ただ十割賜暇ということについてはいささか問題がある。併しながらこれまで国鉄のおやりになつた十割賜暇というものは、実は三十三カ所かに区切つて行われたわけで、いわば部分的な十割賜暇、全部の闘争から見ればいわゆる一部分ストでしかない、こういう性質のものであろうと思うのであります。それから第三の条件としては、やはりストライキ権をとにかく制限をしておるのでありますから、それについてはやはり一種の代償というものが認められなければ生存権要求とは調和しがたいということを考えますと、やはり生存権保障が存すると客観的に認め得るような仲裁裁定というものが実施されなければいけないのじやないか。仲裁裁定というものが無視されたということになれば、実はスト権というものは確保されるのじやないかというふうに考えられる。つまりストをやつても非難し得ないのではないかというふうに考えられます。そこで今度の闘争では問題点というふうなものは余りないというのは、今言つたように、大体十七条違反と考えるのはいけないのじやなかろうかというふうに考えられるのでありますが、十割賜暇というふうな問題が多少問題になると思います。併し一日行われた十割賜暇というものも、先ほど言つたように全体から見れば完全なゼネストというふうなものじやない。やはり部分ストの性質を持つているに過ぎない。而もそこまで追い込んで行く過程というものを、この日本国有鉄道職員局から出されている経過概要というものを拝見いたしますと、余り誠意ある態度で問題を解決しようとされるお気持が当局側から余り出ておられないように受取られる。それは事実の問題で、私よくわかりませんが、ここで受取つた感じでは、十割賜暇指令が出て、やつと〇・一カ月出そうかという切出し方をしている。もつとなぜ早く出さないか。そのことを早く出せば、もう少し円滑に話が進むんじやないかというふうに思われるような状態であります。たとえいろいろの非難が十割賜暇に対して持つて来られたとしても、仲裁裁定が行われておらないという事情を考えて行くと、やはり衡平の原則から照しても、十七条違反として非難するというのは無理じやなかろうかというふうに考えられます。それで十七条については教唆とか共謀とか扇動とかいうものが出ておるのでありますが、これは組合活動を承認する限りは、組合活動というものを原則として、これを認めて行こうとする限りは、組合がいろいろの戦術、防禦を図るものは当り前でありまして、法を越えて行くような戦術を立てるということもいろいろ出て来るのは当然であります。そうした中に行動として出て来たところに制限を加えるか否かというところに問題があり、組合活動を認めた限りにおいては、教唆、扇動の類は、私は全くこの規定意味をなさない、無効であるというふうに考えております。憲法違反と言つてもよろしいと思います。  そこで十七条違反という争議が行われた、ストライキが行われてしまつたという場合に、十八条は如何なる法理に従つて適用になるかということがこの問題点として掲げられておる。ずつと四、五、六、七なんというようなところは、そういうつまり十七条違反ということを前提として、その場合に十八条は如何なる法理によつて運営されるのかという考え方に当ると思うのでございます。条文を見てもわかりますように、十八条の行為は別に組合を罰する意味はない。だから行為者が解雇される、こういうことなんです。ところが行為者全部を解雇するということは、これはロツクアウトと同じことなんですね。全面的にロツクアウトをやつたと同じ結論になつて来るわけです。となると、実際はできない相談です。一定の範囲のものに限定して首切るほかないということは、差別待遇するほかないということになるわけです。差別待遇の基準をどこにおくか、情状斟酌ということを言われておるようでありますが、結局のところ、これは組合の団結活動に最も忠誠であつた人たち、つまり団結忠誠の強いメンバーを組合から追出す結果になるわけです。単に経営から追出すのではなくて、四条で逆締付け規定を持つておりますから、解雇という問題は同時に組合の中から追い出すことになるわけです。この公労法規定によると、そうしますと、民間の場合においてさえ解雇というものは非常に重要な問題になつて来る。これは必ずしも組合から追い出すという法的な結果が出て来るわけじやない。事実上は首を切られれば組合から追出されることになるけれども、法的にはそういうことになるはずはない。ところが公労法の場合には、解雇されたら組合から追出される。最も組合に忠誠な活動を行なつた人間が組合から追出されることになる。これは団結権を保障する精神から言えば、決して望ましいことではない。そのように運営されてなるものじやない。この条文を見ても「解雇されるものとする」と書いてある。そうすると、この条文そのものを受取れば結局解雇される、それはそのまま受取つては実現できないというようなものはその法は大体死んでおると見てもいいんじやないか、勿論十七条は組合にもストライキを禁止しております。ところが十八条は組合をどうしようということを規定しておるわけではない。ということは、組合については一種の道義的な規定をしたというふうに考える以外にはなかろうかと思います。若し責任者を首切るという気持で首切つたものだとすれば、その点はこの参議院労働委員会会議録を見ますと、当局側の答えの中にはしばしば出でおる、責任者を処罰するという考え方でございますが、ところがこの責任者は一体彼の行為に基く責任ではなくて、組合のポストに基く責任を負うということになる。そうすると、組合は本来罰せられない。組合に対しては何ら法が反作用を加えないという行為から行けば、その組合のポストにおるという意味において特に差別的に解雇するということが出て来ることは、これはおかしい。若し又はかのところにも、よく当局側の意見で出ておるように、積極的な分子を切つたということが出ておる。積極的な分子を切るというのはこれはますますおかしいので、指令に非常に忠実、積極的な履行者が罰せられるという形になるので、やはり一つの団結への介入となる。十七条違反があつたからといつて組合に対して団結への介入を認めておる趣旨は十八条の中にはない。団結への介入を生ずるような形においてしか、実際やれないような規定ならば、その規定は死んでおるのじやないか。だから私は十八条の「解雇されるものとする」という規定は、実際は解雇はできないということじやないかと思つておるのです。つまり一せいに解雇ができないならば全然解雇もできない。その際にこの法律により実際の権利を失うということですが、これはまあ仲裁委員会とか調停委員会とかその他のそういういわば公労法によつてサービスをしておる、そのようなサービスを受け得ないということです。そうすると、たとえ団結権の支配介入があつて不当労働行為になつても、この法律による一切の権利を失うから、この法律に基く不当労働行為による救済は求め難い。併しながら憲法二十八条に基く限りにおいては、その解雇は無効であるということは言えるのじやなかろうかと思います。  今度会議録をずつと拝見いたしまして、今日の問題点にも触れて来るところが相当あるわけですが、一つ業務の正常な運営という問題であります。業務の正常な運営を害するか否かということについて組合と当局とは完全に見解が対立しておるわけですが、遵法闘争いわゆる安全規程を守る遵法闘争までを、これを業務の正常な運営を紊すものであるというふうに当局がおつしやるのは、これは無理だろうと思います。保安規程、安全規程というふうなものは、その本来の性格から見て、公共の福祉に最も必要な規程なんです。最も必要な規程というよりも、公共の生命にも関する規程でありまして、この規程を守ることが武器になるような状態であるとすれば、これは誰が反省しなければならないかと言えば、まさに法自体が反省しなければならない。これを以て法条のむしろ義務を守るような行動を非難し得る法秩序はあり得ない。私はその意味でこの遵法闘争は正常な運営を害するとは到底考えられない。だから正常な運営ということがいつも行われておる運営という意味ではないので、やはり真に公共の福祉に合致するごとく行われておる運営状態にほかならないのであります。ところでこれも会議録を見ておりますと、当局が何か正常な運営を阻害するということを一方的にきめて、非合法行為ということを非常に呼ぱわつておるわけです。非合法行為と断定して十八条を無条件的に適用されておる。そこから解雇権濫用があるかどうかという問題になるので、やはり解雇権濫用だというよりはかなかろうと思うのであります。第一、十七条違反であるかどうかが非常に議論の分れるところであり、而も違反であつても、それが非合法行為と断定できるかどうかということは、極めて重要な問題であり、むずかしい問題である。但し立法解釈上の技術上の問題であるよりも、いわば法哲学的な問題であります。恐らく法哲学者であられる最高裁長官が最も苦心される問題であろうと私は思つておるのであります。その問題を当局にも法律の専門家がいらつしやると思うけれども、当局がこれを非合法ときめて、そうして組合に非合法だと押し付けるという態度は、これはやや挑発に似た感がある。決して適当だとは思えない。併しそれをおつしやることは直ちに言論による支配介入であるかどうかということは、私は必ずしも断定しませんけれども、併し不適当であることは間違いなかろうと思うのであります。だからこういうむずかしいこの問題をはらんでおる場合には、これは少くも団体交渉をやるか或いは両者の間で解釈の統一を図るような努力をしてから、それからこの解雇するにしても問題を起すべきなんで、勝手にいわば非合法行為だときめ込んで十八条を無条件的に適用して、この適用の仕方だつていろいろ議論のあるところを一方的にきめて直ちに解雇通告をするという場合は、どう見ても適当でないものがあると思われます。で、この解雇のやり方を見ますと、確かにこの組合の主張されておるように狙い打ち的な解雇の性格が強い。その点でやはり差別待遇、或いは更に組合に対する差別待遇を通じて、組合に対する支配介入というふうなにおいが非常に強い解雇の仕方であります。  それから十八条の解雇がこれが懲戒解雇ではないということは当局もおつしやつておりますが、全くそうであります。これは別にあえて実質的に懲戒解雇だというふうな考え方をとるべきじやない。それからピケツトで就業を阻止したことが問題になつておるように思いますが、会議録を見ますと……。ところがそのピケツトというのも大体ストライキ破りは外から来て、これに対してピケを張るという形よりも、大体組合内部の脱落者防止のためのデモンストレーシヨンというにおいが強いことは、実態に即して見れば非常に明らかである。これはいわば組合に対する団結強制の表現なのであつて、いわゆる第三者のストライキ破りに対するピケツトと同じように考えていいかどうかということは、それはちよつと無理だろう。いわんや列車の前に坐り込む行為でありますが、いわんやというのはなぜかというと、車掌を乗せないで汽車を発車させようとした、これを抑えるということが新潟かどこかで起つたように会議録では現われておりますが、成るほど一般的に汽車の前に坐り込む行為というのは、これは公労法上は当然十七条違反であるというふうに考えられましようが、ところが一つの安全闘争という意味を持つて来るのじやないか。つまり車掌を乗せないという状態というのは、よくよくの場合にやれる。そのよくよくの場合がこれだということは、そのよくよくの場合を作り出しておる労働組合側としては到底承認しがたい、承服しがたい事態にあるので、これをいわばとめたからと言つて、そのほかの行為を果して期待し得るか、これもやはりその点は責任を追求すべき事柄ではないように思います。  大体以上のようなところで私の見解を一応述べさせて頂きました。大抵ここに出された問題点に触れておることだろうと考えております。
  29. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  30. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。  御質問をお願いいたします。先ほどお手許へ差上げましたプリントの中で九番のところのおしまいから三行目の上のほうでありますが、ちよつとミスプリントがありますので申上げておきますが、四行目のところに国会に対し「協定又は裁定の承認を求める」というふうになつておりますが、そこを、「求めないで議決を求める」とそれだけ字が落ちておりますので御訂正を願います。もう一度申上げます。「裁定の承認を求めないで議決を求めるという違法の処置を行うことによつて」こういう工合でございます。今日の御意見を寄せられました点は、いずれ速記録を整理いたしまして更に研究をいたしたいと思いますが、大体問題点だけはそれぞれの先生から相当明確に御指摘願つたと思つております。それで特にこの第九の項目については、大体四先生ともこの部分の要旨について、軽重の度合はありまするけれども、大体趣旨としては賛意を表せられておるように私は伺つたのですが、この点も一つ問題点であろうと思います。  それから先ほど八の恩給関係の問題もこれもそうでございます。それから非常に先ほど面白い意見対立があつて而も結果において同じようになつたのは十七条を前提にして適用できない、若し適用するならば国鉄法第三十一条でやるのが正しいというのが峯村先生からの御意見つたと思います。これに対しまして吾妻先生のほうは、懲戒として扱うべき問題ではない、こういうことを言われたわけですね。全然別なものとしてこれは考えなくちやいけない、こういうお話です。ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  31. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。
  32. 沼田稲次郎

    参考人沼田稲次郎君) 項目別に御整理願うようでしたら、ちよとつけ加えさして頂きます。懲戒という意味を十八条は持ちませんから、八番目のこの恩給に関しては勿論恩給権はございます。  それからこの問題は、恐らくは寺本さんから質問があると思つてつたことなんですが、指令法律との矛盾の際は、法律が勝つかどうかという問題、これは指令の性質によつて違う。つまり人殺しをしろとか、火をつけろとかいうものと、それと違法な争議指令とは性質が違う。争議指令というような性格を持つたものは、本来労働者としては自己を主張する唯一の手段でありますから、それを制限している法自体がむしろ労働者から見れば弾圧として受取られておる性質です。人殺しをやるなと言つたら、全く賛成しておるのです。そういう労働者を制限するような、弾圧するようなものに対しては、組合員としては団結権を保障している態勢においてはむしろそつちに従うべきだ。少くとも法はそれに関与しないという建前をとるべきたと思つております。これは労働運動史をよく御存じの寺本さんが、前の会議録で盛んに御質問せられておるところで、私興味を持つて見たのでありますが、労働運動史を見ますと、この問題についてはもはや解決は出ておる。ただ、成るほど法形式論だけから行けば、確かにこれは法に勝たないということにならざるを得ない、ところがむしろ法がそこに引込む、その領域までは踏み込まない、こう理解すべきではないかと思います。従つて私は除名もできる、除名は無効じやない、ただこれはユニオン・シヨツプ条項と結付くときに、初めてユニオン・シヨツプ条項が、その場合に有効な規定になるかならないかということについては、むしろ否定的に解さなければならんと思いますけれども、むしろ除名そのものが有効かということについては、当然有効だというふうに考えておりますので、つけ加えさして頂きます。
  33. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今の点は、質問になりますが、実は公労法というのは労働組合の規制法である。組合のその最高幹部が闘争を計画し、それを実行に移す場合の指令を行う場合、その指令合法であるか、非合法であろかという問題ですね。これは純法律的な問題は別としまして、一般に炭労かり或いは昔の電産なり、日通なり、私鉄等が争議を行います場合に、これらはどんな争議行為を行なつても非合法というものはないわけです。それにもかかわらず、従来しばしばあつたように、これは非常に危険な、いわゆる非合法の疑いがある行為である、こういうような意味で警告を与えるのは、最高検が大体いつでも与えておつた、実力行使に入る前に与えておつた、こういうのがやはり組合指令というものについて、これは国民に対しても、使用者に対しても、組合に対しても、それぞれの言い分はあるにしても、一応国の機関というものが或る一つ考え方を発表しておる。ところが今度の国鉄の場合は、そういう動きは全然ないわけです。誰も遵法闘争が非合法であるなど考えないでやつた。やつてしまつたあとで、国鉄側が一方的に自由裁量によつて十七条によつて十八条を発動した、こういうことになつておるのです。この点大いに私は議論のあるところだと思います。先ほどの議論の中で違法指令というものは、これは問題にならないという御議論でありましたけれども、その指令が違法であつたかなかつたかということにつきましては、これは大いに私は弁明できるのではないか、こういうふうに考えますが、如何でしようか。
  34. 沼田稲次郎

    参考人沼田稲次郎君) おつしやる通りでございます。私先ほど説明いたしましたのは、違法としても、という前提であります。一番初めに私は、これは違法でもないし、十七条違反だから、非合法呼ばわりすべきではないと思つております。十七条違反は直ちに非合法じやない。政府の考えでは非合法で行きたいのですが、これは従来の形式的な違法論の立場でしか考えておらないと思います。だから私はこれを非合法ときめつけるわけに行かない。それを今度の争議の過程を見ますと、当局が盛んに非合法、非合法ということをやつておる。法律に真向からくらいつく、反対するという表現を使われておるのであります。非常に大胆な表現だと思いますけれども、下手をしますと、これは組合内部に対する言論による支配、介入と言わなければならないと思つております。
  35. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) その点が明白になりますと、あと峯村先生が先ほどおつしやつたのですが、合法行為である場合には、末端機関に対しては、その軽重の度合いで責任を追及すべきではないと、具体的な事例で投げられたのですが、末端機関については、大体免責だと、仮にそういうことがありましても、そういう意味がありましたので、この点もやはり今後非常に重要な点ではないか、そういう工合に感じを深くしております。  ちよつと速記とめて。    〔速記中止
  36. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。  参考人のかたに一言御挨拶申上げます。長時間に亘つて貴重な御意見をお寄せ下さいましてありがとうございました。委員会を代表して御礼を申上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四分散会