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1954-03-30 第19回国会 参議院 労働委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月三十日(火曜日)    午後二時三十一分開会   —————————————   委員の異動 三月二十三日委員堀眞琴君辞任につ き、その補欠として大山郁夫君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田村 文吉君            田畑 金光君    委員            榊原  亨君            阿具根 登君            吉田 法晴君            赤松 常子君            市川 房枝君   政府委員    外務省条約局長 下田 武三君    労働省労政局長 中西  実君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    労働大臣官房国    際労働課長   橘 善四郎君   —————————————   本日の会議に付した事件連合委員会開会の件 ○労働情勢一般に関する調査の件  (労働機関憲章に関する件)   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から会議を開きます。  先刻委員長及び理事打合会を開きまして、当委員会の運営について御協議を頂きました結果を御報告申上げます。  先ず他の委員会との連合委員会の件でございます。当委員会関係があると思われますところの重要法案は、厚生委員会に付託されておりまする厚生年金法案、更に文部委員会に付託されておりまする義務教育諸学校における教育政治的中立の確保に関する法律案及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案、以上三件でございます。当委員会といたしましては、それぞれ相手方の委員会連合審査申込をいたすべきであろう、こういうことに打合会では意見一致を見た次第でございます。さよう委員会として取扱うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 異議ないものと認めさよう決定いたします。厚生委員会並びに文部委員会に対して申込を直ちにいたすことにいたします。   —————————————
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 更に過日、けい肺法案取扱いにつきまして、委員会懇談会を以て御相談を申上げた件でございますが、これも委員長及び理事打合会におきまして懇談の結果、或るべく早い機会に各会派からおいでを頂きまして、取扱について御懇談を願うことにいたしたいと、こういうことに意見一致を見た次第でございます。委員長手許におきましてさように取計いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 異議ないものと認めてさようにいたします。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  6. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を起して下さい。本日の会議に付する事件は公報でお知らせいたしておきましたが、法律案の件は本日は保留をいたしまして、労働情勢一般に関する調査をいたしたいと存じます。  先ず労働機関憲章に関する件について調査をいたしたいと存じます。下田条約局長おいでを頂いております。それでこの問題の当委員会における経過を極く簡単に先ずお話を申上げます。  実は三月九日の委員会におきまして、寺本広作君から、国際労働機関憲章に関する件について政府側所信を質すべきであるという御発言があつたわけであります。で、その内容につきましては、ここに当日の速記録を持つておりまするので、若しまだ御覧を頂いていないならば、御覧一つ頂きたいと存じます。それで当日の寺本広作君の御意見では、外務委員会との連合委員会を開きまして、そこでこの問題を研究調査をする必要がある、こういう意味の御発言があつたと思うのでございますが、この委員会といたしましては、さよう調査をいたす前の段階といたしまして、当労働委員会として外務省並び労働省の責任ある方の出席を求めて一応調査をいたすべきでないか、こういうことで意見一致を見ておる次第でございます。以上のよう状況でございますので、一応お含みの上で御発言を頂きたいと存じます。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  7. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは速記を始めて、先ず下川条約局長から、寺本広作君の問題とせられました点について、外務省のほうの、政府のほうの所信を伺いたいと思います。
  8. 下田武三

    政府委員下田武三君) 寺本委員の御発言は、ILO憲章第十九条第五項の問題であるというように承わつております。実は政府といたしましては、この憲章規定に鑑みまして、新たなる決定をいたす段階に際会いたしたのであります。と申しますのは、御承知ように、戦前憲法下におきましては、条約締結大権の下に行政府限りで締結いたしております。従いまして労働条約批准いたします際にも、枢密院に諮約することを以て足りたわけでございます。ところが戦後枢密院すでになく、而もILO憲章第十九条の規定、つまり労働総会で採択された条約及び勧告は、権限のある機関提出することを約束するという義務を持つておりますので、先ずこの権限ある機関戦前においては枢密院でありましたものが、新憲法下においては何を以て権限のある機関と認めるかという大きな問題がございました。併しながらこの問題につきましては、各国の例を見まして、この「当該事項について権限のある機関」ということは、当該事項について立法をなす権限のある機関というようにとりまして、各国とも議会提出いたしておるのでございます。日本の場合におきましても、これは新憲法下におきましては立法府であられるのでありまするから、当然労働関係法についての立法、これは国会権限に属されるわけでありまするので、政府といたし聖しては何らの躊躇なく、このILO憲章第十九条の権限のある機関日本においては国会であるということに意見一致いたしまして、昨年の暮に、一昨年及び昨年の労働総会において採択されました条約及び勧告を御報告いたした次第でございます。  次の問題は、然らばこの権限のある機関にどういう文書提出するかという問題でございます。この問題になりますと、先ほどの権限のある機関をきめる問題よりも遥かに困難を感じました。と申しますのは各国のしきたりが非常にまちまちでございます。これは又止むを得ない次第でありまして、各国のこの立法手続についての法則が又非常にまちまちでありますために、各国足並みを揃えていないのであります。  そこで政府といたしましては、各国の先例を参酌し、且つ日本実情に適合した形式の文書を作成して、それをやはり日本実情に合つたような方法で提出しなければならないということで、関係者、特に労働省外務省と協議いたしました結果、昨年の暮にお手許に御配付いたしましたよう政府説明書を付しまして、条約のみならず勧告のテキストも印刷いたしまして、お手許提出いたしたような次第でございます。これは国によりましては、勧告政府で主としてやることであるからといいまして、勧告につきましては全然議会報告していない国もございます。併しながらこの十九条の戸的は、国会を通じて国民に、労働総会ではこういう文書が採択されたということを先ず御報告ようという趣旨でごぎといますので、日本におきましては、或る国の例のよう条約だけを提出するということをやめまして、およそ労働総会で採択されました条約のみならず、勧告も全文を御提出するということにいたしました次第でございます。  そこでその提出をいたします際に政府のその条約に対する或いは勧告に対する意向を付して御提出すべきかどうかという第三の問題があつたのでございます。これは戦前におきましては、枢密院がこれはやはり天皇条約大権行使期間の一部でございまして、天皇がただ諮詢される機関でありまして、政府部内でございますからこれは政府部内としての関係から政策的な意見を付して御報告すると、つまりこれは批准すべきである、これは批准すべきでないとかいう意見を付して御報告するということに、理窟の合つたことでありまするが、この国会に、行政府でない国会に御報告する際に、政府意見を付して御報告するかどうかという点につきましては、もともとこの第十九条の精神というのは、国民の代表である国会を通じて国民に御報告するわけでありますから、実は白紙でそのまま全部お目にかけるのが至当ではないかという考えに立ちましたのであります。これはベルギーでございますとかカナダでございますとか、イギリスでございまするが、これもありのままに白紙で、政府がただこういうものが採択されましたという簡単な報告を付けまして提出いたしておるのでありまして、日本といたしましても、十九条の趣旨に鑑みまして、白紙で何らの意見を付さず、こういうものができましたといつて報告いたすことにいたしたのであります。でございまするから国会自身の御意見は、国会を通じて国民意見で、この条約は結構た条約であるということで、速かにこれは批准すべしという御意見が出ましても、これは誠に結構なことだと思うのであり摂す。政府がこれはどうだ、これは批准すべきだというよう意見を付しませんで、取りあえずこういうものができたということを白紙で出すということが最も適当と認めまして、昨年の幕に御配付いたした報告書には何らの意見を付さなかつたわけであります。  ところで政府といたしましては、これは憲法七十三条によりまして、条約国会の御承認を経なければなりませんが、締結自体はこれは政府の仕事になつております。そこで政府行政府に与えられました独自の権能を行使いたしまして、政府の立場から見まして、この条約日本として批准すべきであるという意見はもとよりこれは立てるべきだと思います。そうしてそういう取捨選択をいたしまして、これこれの条約批准すべしと政府決定いたしましたならば、憲法七十三条の規定に従いまして国会の御承認を求めることになる。又国会自身、又は国会を通じて国民の側から、この条約一つ批准したら、どうかという御意見がありましたならば、これも又国会なり、或いは国民国会を通じて意見を請願その他の手続が許されておるのでありますから、国民側からもこういう意見が出ることもこれ又極めて結構なことでありましよう取りあえず報告段階におきましては政府白紙で臨むというのが、十九条の精神から至当と考えまして、昨年の暮にそういう措置とつたのでございます。  私の甚だおわかりにくい御説明を申上げまして恐縮でございまするが、要するに三つの点につきまして日本政府は新たに決定をいたしました。先ず十九条にいう「権限のある機関」とは、これは日本では国会であるという決定。これに国会に御提出する文書は何とするかという点に関しましては、或る国と違つて、これはすべての条約及び勧告をそのままお出しするという決定。第三に、この条約勧告という文書を御提出するに際しまして、政府白紙御覧に入れるという決定。その三つ決定をいたしまして、昨年の措置とつたわけでございまして、この点の御了承を頂きまして、なお言葉の足りませんことがございましたら、御質疑に応じてお答え申上げたいと思います。
  9. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今の局長お話の中で、報告そのものをどう取扱うかという件について、国会条約並びに勧告をそのまま全部提出をしたという理由の中に、日本事情考えてそういう工合にしたとおつしやつておりますが、日本事情というのはどういうような点をお考えなつた結果でしようか。
  10. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは終戦後連合軍司令部政策が非常に大きな原因であつたろうと思いますが、我が国労働運動というものは非常な発達をいたしまして、労働者労働組合自身のほうからこの労働法制について非常な関心を持つて来られる実情になつて参りました。その際に国際労働会議でどんな条約が採択された、或いはどういう勧告が行われたということは、これは政府が職つてつておるべきでなくて、やはり国民、特に労働者或いは組合当事者にも国会を通じて閲覧する機会を与えるということは、これは私は非常に大切なことであると思うのでございまするが、実はこの点は外務省が申上げますよりも、労働省労働政策からのお考えによることでございまするが、私どもの了承しておりますのは、或る国は条約報告しますが、勧告政府権限だからといつて政府が握つておる国もありまするが、そういうことをいたさないほうがいいという、これは労働省のお考えによつたものと私は承知をいたしております。
  11. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それから第二の点、第三の点は、この条約並びに勧告国会提出する場合に意見を付さないで出しておる。このことについて若し国会意見を付して条約を締結すべきである、或いは勧告を受諾すべきである、そういうようなことに国会意思決定をしたときには、この意思に勿論従つて政府は処置を行政府としてするという工合におつしやつたわけでありますが、そういたしますと、国会がさよう意思決定をする場合には、今のお言葉通りで、行政府としてはそれに何ら意見を述べられない。でそのまま従われる、こういう工合に了承してよろしうございますか。
  12. 下田武三

    政府委員下田武三君) 法律的に申しますと、国会立法権政府行政権は必ずしもこれは常にすべての事項について完全に合致するということは法律的には私は申されないと思うのでございまするが、政治的に見ますと、議会政治の下におきまして、国会における多数を基盤として時の政府が政局を担当するということになつておりまするから、国会で或る条約批准すべしという希望の御決議をなさいますると、国会の多数は時の政府の与党であられるわけでありますから、恐らく、その政府国会の多数党たる自分の政党の意見に従われて、国会意思を尊重されて、政府はその通りにおやりになるというのが、これは法律的の意味でなしに、政治的の意味で私は常道だろうと存ずるのでありますが、必ずしも国会決議通り政府はやらなきやいかんかどうかという点は、法律的には私はそういうことはないと存じております。
  13. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) いや、国会意思決定をしたときに、行政府のほうは、先ほど御説明のあつた通り意思決定をしていないわけなんですね。で国会白紙提出をして国会意思決定を待つ、こういう段階にある場合、ですから従つて現在の日本政府の構成のほうも、或いは特に国会との関係等はこの御指摘通りですけれども、その場合に、そういう状況に、なお且つ国会意思決定した、こういうときにはやはり行政府はこれに従われるということが前提のように私はお聞きしたわけですが、今のお話の後段ですと、ちよつと食い違いがあるようですが、その点をもう少し解明しておいて頂きたい。
  14. 下田武三

    政府委員下田武三君) 私の言葉が不十分でございましたが、勿論報告書を出しますのは、こういうものができましたとしても、どれを批准すべきかということについての国会意思決定をお待ちするという意味では実はないのでありまして、政府は勿論労働総合会で採択されました条約勧告検討いたしまして、これは我が国国情に鑑みまさに速かに批准すべきものと認める場合には速かにその措置政府側自身発意でとるだろうと思うのでございます。併しその場合に政府側とつ批准然るべしという意見と、国会御覧になつて、いやこんな進み過ぎた条約日本国情に合致せんといつて、時の国会がその政府側発意による批准を阻止なさることも、これも国会の自由だと思うのであります。それから政府側は、とてもこれは批准できませんという意見を申上げまして、国会のほうで逆に、いやそんなことはない、これは日本国情で十分実施し得るんだから、速かに批准すべしという意思表示をなさることもおありだろう思います。その場合には政府は改めて国会批准すべしという意思を尊重しまして、果して批准できるかどうかという点を政府部内で検討いたしまして、この国会の御意見に賛成でありましたならに直ちに批准措置をとる。要するに政府側政府側で自己の発意に基いて批准すべきものを決定し得る。又国会国会側で、必ずしも政府意思に束縛されないで、自由な御意見をお述べになつて、然るべきではないかと存ずるのであります。
  15. 吉田法晴

    吉田法晴君 条約局長一人で答弁しておられますが、労働省労働大臣も次官も来ておられませんが、これはどういう都合品がおありになるんですか。
  16. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 国際労働課長おいでになつております。ちよつと私もう一点、今のところわかつたような、わからないよう状況ですが、具体的にそれではお尋ねします。一九五二年、一九五三年の条約並びに勧告がですね、これについて白紙国会報告せられておるということは、只今段階では外務省労働省はこの条約並びに勧告をですね、採択すべきとものであると、こういう工合にはお考えになつていないと理解していいわけでございますか。
  17. 下田武三

    政府委員下田武三君) 昨年末御提出申上げた条約及び勧告につきましては、これは実は外務省よりも労働省で、日本国情に照らして批准すべきか、どうかという点を只今検討中でございまして、労働省から批准すべしという意見が出ましたら、外務省御旅談を受けまして、政府全体としての意見を定めまして、それから国会に出すということになるわけでありまして、白紙で出したということは、これについて批准……、どれにつきましても、批准或いは採択する意思なしという意味は毛頭ございません。目下只今そのため積極的な検討を進めておる過程にある次第でございます。
  18. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働省の方は如何ですか。
  19. 橘善四郎

    説明員橘善四郎君) お答え申上げます。労働省といたしましては、今の下田条約局長が御説明になりました通りでございまして、三十五回の関係、三十六回の勧告等につきましては、白紙で出したということは、必ずしも批准しないというよう意思決定をいたしてやつたものでないのでござい楽して、目下これらの条約等につきましては調査研究をいたしておる次第でございまして、研究調査の暁に、支障ないものにつきましては成るべく速かに国会承認を求める件といたしまして提出いたしたいと思つておる次第でございます。目下努力中でございます。
  20. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そこでちよつと食い違いが私出ていると思うのですが、それは憲章第十九条第五項ですか、ちよつと条文が建つておつたら御指摘願いたいと思いますが、これによりまして権限ある機関提出する義務があると、それは白紙でありましようとも、或いは意思行政府で付されてもかまわないと思うのですが、提出する義務があると、その義務に対して今度は国としてどうかと申しますと、権限ある機関とつ措置を今度は逆に報告しなければならないと報告規定があるわけです、そういたしますと、十八カ月という一応の期限内にこういうことをやろうと思いますと、ただ国会報告しただけでは工合が悪いので、国会とつ措置、これを向うへ報告しなければならない。どういう措置をとるべきかということは、今下田条約局長がおつしやつたよう意味合でなくて、やはり行政府というものが一つの案を開会へ示して、それによつて国会意思、どういう工合にきまつたかということによつて機関とつ措置というものを権威ずけてILOのほうへ報告されなければならん。こういう工合に我々は理解するわけです。がその点の事後処理を、時間的制限下において行政府なの国会なりが国際労働憲章に忠実にするために、事務的な処理を進める上について若干私まだ割切れない、了解できにくいものを持つわけですがその点を御質問申上げます。
  21. 下田武三

    政府委員下田武三君) 十九条五項の(C)の御指摘規定がございまして、この機関、つまり権限のある機関とつ措置事務局長に通知しなければならないという規定がございますが、これは報告書を出したした上で国会のほうから何らの意思表示措置もとられなかつた場合には、何も措置をとられなかつたという旨を報告いたします。又、国会のほうから或る条約につき、或いは載る勧告について何らかの意思表明或いは決議等がございましたら、国会はこういう意思を表示されたということを事務局長に通告いたすことになるわけでありますし、又政府が逆に、国会のほうに条約批准につきまして御承認を求めまして、そうして国会がこれを承認せられたという場合には、又承認されたという旨を通告するわけになるのであります。一に国会がおとりになる措置如何によりまして、政府といたしましては労働事務局報告いたす次第でございます。
  22. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の委員長の質問に関連して、その先を質疑をいたしたいと思うのですが、その前に御説明のありました点で明らかでない点がありますから、そこから先ず聞いて参りたいと思いますが、先ほど条約局長は、政府として決定をしたその決定三つつて権限のある機関というのは国会だという認定をした、それが一つ。それから条約だけでなしに勧告も全部出すということを決定した、それが第二。それから政府白紙の態度でこの条約勧告国会報告するということをきめた。この三件だつたと思うのですが、その決定をされたという決定はどこできめられたのか、それを伺いたいと思います。
  23. 下田武三

    政府委員下田武三君) これらの点をきめますのには、関係省の話合いに続きまして、閣議決定を仰ぎまして、これは昨年の十二月の初めでしたか、日附は覚えておりませんが、政府としての閣議決定を仰いである次第でございます。
  24. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうしますとその閣議決定の際には労働省意見取りまとめられたと存ぜられるのでありますが、例えば労働者において先ほどここに提出せられております、報告されております条約勧告については、批准をすべきものか或いはすべきではないかという点について決定はいたしておらんと、批准すべきものが労働省において検討をしておると、こういう労働省からのお話もございました。従つて条約或いは報告についての労働省意見取りまとめというのは、実質的には何らなしに、白紙報告すると、これだけの意見取りまとめと申しますか、そういうことであつたかと思うのですが、閣議決定をされましたときまでの労働省の審議と申しますか、或いは検討経過、それから内容一つ伺いたいと思います。
  25. 橘善四郎

    説明員橘善四郎君) お答え申上げます。三十五回、即ち昭和二十七年度の総会におきまして採決されました条約は、農業有給休暇に関する条約と、社会保障最低基準に関するものと、母性保護条約それから勧告三つあつたのでございます。なお又昨年開かれました三十六回の総会におきましては炭鉱の最低就業年令雇用場所の健康の保護というこの勧告が採択されたのでございます。  勧告のほうは別といたしまして、条約関係につきましては、目下農業有給休暇に関する条約、それから社会保障最低基準に関するものと母性保護という分につきましては、先ほども申上げましたよう内容検討を目下鋭意いたしておる次第でございます。特に社会保障最低基準に関する条約に対しましては、非常に重要性の高いものでございます。この研究に努めておるのでございますが、若干の解釈上の疑義を生じておるというようなこともございまして、目下この条約取扱つておりまするところの、例えば英国の制度、又フランスの制度、その他の国々の制度を採用しておる部門に対しましての疑義につきましては、目下それらの国に御照会しておるという次第であるのでございます。なお又社会保障関係につきましては、厚生省関係もあるのでございまして、厚生省のほうにおかれましては鋭意協力して研究調査を進めて頂いておるという次第であるのでございます。なお又もう一つ条約農業有給休暇に関するものす。母性保護条約におきましてもそに申上げましても、果してこれらの三階において批准できるだろうか否やということにつきまして、まだ明確にこの結論が出ていないという次第であるのでございます。成るべく努力いたしまして、速かにこの批准のできるものについては御承認を求めて、政府といたしましては批准手続をとりたいという決心であるのでございます。
  26. 吉田法晴

    吉田法晴君 研究しておつて、成るべく支障がないならば批准手続をとりたいという、そういう努力をしておるという。これは先ほどの答弁を今敷衍をされたのですが、お尋ねをしておるのは、国会報告をするという決定のそのときに、どういう労働省としては見解であつたのか或いは態度であつたのか、その意図を尋ねておるわけであります。
  27. 橘善四郎

    説明員橘善四郎君) 先ほども申上げました通りに、下田条約局長のほうから御説明をして頂きました通りに、この国会白紙で御報告して頂くということにつきましては、労働省といたし下しては何らこれに対して異論はないのでございまして、労働省もそういう工合に是非とも外務省において、日本政府においてして頂きたいということをお願い申上げたのでございます。というのは、その当時においてまだ研究調査の不足な点もたくさんありまするし、疑義も先ほど申上げておりまするようにありました関係で、未だ事務的にこの国会のほうに御承認を求めるという工合に出すことができないという次第であるのでございます。
  28. 吉田法晴

    吉田法晴君 白紙報告をするということに異議がなかつたと、こういう御答弁でございますが、そこでこれは労働大臣も財務次官もご出席の予定がないようでありますが、私は出席されることを要望して、その手続をとつて頂くことを要望し、話を続けたいと思うのですが、政府としては白紙、或いは労働省としても白紙国会がどうするかということについても政府としては白紙、こういう御答弁であつた。ところが憲章第十九条第五項、b(項)、それから同じ十九条の六項のb(項)、これが大体関係の条文だと思いますが、それにはこう書いてございます。「各加盟国は、立法又は他の措置のために、」云々と、期限もございますし、それから「当該事項について権限のある機関提出することを約束する」、この約束に基いてと申しますか、或いはその精神に従つで報告されたのだと思います。勧告の場合も同様であります。  なお、先ほどの委員長の質問に関連をいたしますが、「機関の同意を得たときは、条約の正式の批准を」、云々と(b)項に書いてあります。若しそれができなければ(e)項において、「立法、行政的措置、労働協約又はその他によつで条約規定のいずれがどの程度に実施されているか、又は実施されようとしているかが示され、且つ、条約批准を妨げ、又は遅延させる障害が述べられていなければならない。」と書いてあります。従つて或いは立法、行政的措置、或いは労働協約その他の、五項(e)項の前段に書いてあります措置がとられたり、その措置がとられなかつたり、或いはそれによつて条約批准が妨げられておるならばその障害を述べ報告することにしなければならない、こう書いてありますので、報告というよりも、それは単に今政府が出されておるような、どうなつてもかまわん、とにかく一応報告よう、こういうことではなくて、立法又は他の措置のために報告がされるのであります。これは条文の精神から当然そうなると思うのでありますが、その点についてはどういう工合にしたいとお考えになつておりますのか、先ずそれを聞きたい。
  29. 下田武三

    政府委員下田武三君) 成るほど「立法又は他の措置」にと書いてありまして、あたかも立法案として権限ある機関にかけなければならないと書いてございます。そこで第十九条の五項に限らず、第十九条の規定の実施ぶりが非常に各国で混乱を来たしておるのでありまして、この十九条というものは、実はいろいろの条約に比べまして非常に変態的な規定でございます。というのは、一体国際条約で以て或る文書をどこの機関にかけるとか、一年以内とか、何機関にどうしろとかいう内政干渉に類するようなことを条約できめるということは非常な例外でございます。国際労働憲章はこの例外、まさに例外であるわけです。なぜこの例外をきめたかという趣旨考えますと、先ほど申上げましたよう労働者の環境というものは、これは政府にだけに任せておいたんでは向上しないんだ、だから内政干渉のようであるけれども、こういう機関に報君させる。政府だけで握つていないで広く知らせる。そうして労働者なり国民のほうから、こういうものがあるから早くこれに参加すべきじやないか、早く批准すべきじやないかという意見を述べる機会を与えようというのが私はこの第十九条の大目的で、その大目的を貫徹するために、この内政干渉に類するよう規定をあえて設けたのだろうと思うのであります。そこでILO憲の理想は非常に結構だと思いますが、これが各国で非常に混乱を来たしております。或る国のごときは「立法又はその他の措置のために、」と書いてあるから、これは内閣の法制局みたいな法案を立案する機関にかければいいんだというようなことを言つておる国もございます。ところが日本の場合には、成るほど国会立法府でありまするが、条約については立法府でないのであります。条約の締結権は日本憲法政府権限だから、或いは内閣の法制局にかければいいんじやないかというような理窟にもなつて来るのであります。そこでいろいろな国の例を見まして、そうして先ほど申しました第十九条の根本精神から考えますると、「立法又はその他の措置のために」というのは、これは政府の当該機関というようにとらずに、漠然と国会立法府であるから、そして日本においても、成るほど条約の締結権は国会にないけれども、条約の締結についての承認開会に求めなきやならない憲法上の建前になつておるから、そこでやはり権限のある機関というのは国会にいたすべきだ。そして国会を通じて国民に見て頂くということが、最も第十九条の精神に適合したやり方であるというように認めたのでございます。そこで今御指摘ように「立法又はその他の措置」と申しますと、条約について一番それに近い措置批准、これは国によりましては批准法案として国会に出す国もございますが、日本の慣習は、批准のために別の法案は作りませんで、政府がただ批准するという決定をいたしまして、その決定をする前に国会に出すということになつておるのでありまするから、批准するという意思は、これは憲法に基く政府独自の見解として、これは別途とる際には、国会承認は求めるのでありますけれども、その政策決定或いは条約検討のために時間をかけて、それまで待つておつたんでは十九条の期間に合わなくなりますので、取りあえずできたものは所定の期間内に政府の態度決定を持たず、態度決定よりも早く、白紙のままで国会にお出しするのが適当である、そういう考えに基きまして、何らの政府の態度は記すことなく、ありのままの条約案及び勧告をお出ししたような次第でございます。
  30. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと只今のところで、根本精神関係することなんですが、十八カ月という期限を附して権限のある機関提出することを約束しているわけですね。このことは要するに十九条の精神が、権限のある機関提出する、その内容というものは、その機関の同意を得るか得ないか、そういう具体的なものを案件にして提出するわけです。要するに行政府として或る種の意思決定して、それに対して立法府に同意を求めるか同意を求めないか、そういう意味の提案をするという建前にこれはたつているわけです。従つて十八カ月という期限を付して、そしてその間に行政府側において十分にこれは検討するということで時間的な余裕を与えおる、こういう工合に理解していいだろうと思うのです。芳しそのことを御否定になるならば、現に五十二年度と五十三年度の条約並びに勧告にしましても、期限一ぱいに白紙で以て国会に出されておる。国会では検討の余地がない。こうなりますと、もつと早く勧告が来れば、もつと国会研究する余地が出て来る。従つて実際にこの十九条の国際的にきめた基本の精神というものと、運用の場合とはまるで違つた方向に行つているのじやないかという点が、この委員会でやはり問題になつているわけなのです。だから政府としては今、日本政府がやつておるような態度であるならば、これは当然具体的な行政府意思を定めて国会提出すべきじやないか、今のよう白紙で出すというならばもつと前に出すべきじやないか、そういう考え方になつている……。
  31. 下田武三

    政府委員下田武三君) 只今委員長の仰せになりましたようにこの規定を解釈いたしまして実行いたしておる国もあるのでございます。併し、その日本制度をきめます際に、そういう国の例に倣うことが至当であるかどうかという点につきましては、先ほど来申しております通り、必ずしもそれが実際的ではないと政府は認めたものでございます。先ほど「立法又はその他の措置のために」ということで、内閣の法制局みたいなところに出しておる国もあると申上げましたが、ここに「立法又は他の措置のために」と、だから政府措置をなすことを決定した、つまり政府批准することに決定した条約だけを議会に出して知らん顔をしている国もあります。だからそうなりますと、却つて政府批准すると選択した条約だけにしか国民は知る機会がないということになるのでありまして、これも十九条の先ほど申しました精神に反するのではないかというので、あらゆる点から考えまして、所定の期間内に白紙でお出しするのが最も適当である。かといつて批准を怠けるわけでは決してございません。批准すること自体は政府で独自の見地から条約検討いたしまして批准することにして、そうして国会に御承認を求めるということはこれは別個の問題としてなすべきでありますが、この十九条の実施ということは、取りあえず所定期間内に条約及び勧告のすべてを国会を通じて国民にお見せするということにあると政府は解したのでございます。  なお、委員長の御指摘になりましたように、昨年の幕に一昨年及び昨年の二つの総会の採択した条約勧告を出したのは遅いのではないかというお話でございましたが、これは誠にその通りでございまして、尤もこの十八カ月というのは、例外の場合に許される期間の延長でございまして、日本は何分十年間のギヤツプ、十年以上に亘りまする国際労働機関との関係の断絶という目に会いまして、いろいろ検討をいたしますにも時日を要し、のみならず先ほどの三つの点におきまして、政府としては相当重大な決定をいたします必要に迫られ、そうしてその決定をなしますについては各国の先例等も十分取り寄せまして調査いたすというような必要がございましたために、誠に止むを得ないことでございましたが、丁度一昨年の労働総会から数えまして十八カ月以内、その代り昨年の労働総会で採択せられましたものについては昨年中に御報告することができたのでありますが、遺憾ながら遅れましたことは、第一回の例外的な事情でございまして、今後は例外の十八カ月というように遅れることなく、一年以内、而も一年以内の成るべく早い機会国会に御提出するようにいたしたいと存じておる次第でございます。
  32. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) この国際労働憲章の問題は、先ほど吉田君からも、本日一応質疑をこの程度にとどめて更に掘下げて研究をしたいという意味の御発言がございましたが、さようにいたしてよろしうございますか……。  ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  33. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。  本日は本会議の都合がありますので、労働情勢の一般に関する調査のうち近江絹糸の基準法違反に関する件、その他労働省側から報告を一掃して願う件がございましたが、これは次回に譲ることにいたします。  なお先ほど委員長及び理事打合会の申合事項のうち御報告漏れがございまするので改めて御報告を申上げます。  それは国鉄の労使の紛争に関係をいたしまして従業員の解雇が行われたのでありますが、これにつきまして過日当局側並びに組合側のそれぞれの意見を参考人としておいでを願いまして聴取をいたしましたが、更に国鉄法並びに公共企業体等労働関係法等の関連におきまして、法律的に調査をする必要がありますので、近く学者を招致いたしまして、参考人としての御意見を伺いたい、こういうことに意見一致を見ました。  更に、参考人の人選につきましては委員長に一任するという御意見でございました。さように取計らつてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 御異議ないと認めましてさよう決定をいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十九分散会