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1954-11-26 第19回国会 参議院 労働委員会 閉会後第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月二十六日(金曜 日)    午前十時五十五分開会   —————————————   委員の異動 十一月十九日委員藤田進辞任につ き、その補欠として阿具根登君を議長 において指名した。 十一月二十五日委員具根登辞任に つき、その補欠として藤田進君を議長 において指名した。 本日委員赤松常子辞任につき、その 補欠として相馬助治君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田村 文吉君            田畑 金光君    委員            早川 愼一君            藤田  進君            吉田 法晴君            相馬 助治君            石川 清一君            大山 郁夫君            市川 房枝君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    警察庁長官   斎藤  昇君    通商産業省石炭    局長      斎藤 正年君    労働省労政局長 中西  実君    労働省労政局労    働法規課長   石黒 拓爾君   —————————————   本日の会議に付した事件労働情勢一般に関する調査の件  (石炭鉱業における不況対策及び失  業対策に関する件)  (労働政策に関する件)   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会開会いたします。  本日の会議に付しまする事件は、労働情勢一般に関する調査でございまして、先ず石炭鉱業における不況対策及び失業対策に関する件を議題にいたしたいと思います。  なおこの議題を終りましてから、引続きまして、労働政策に関する件を議題にいたしたいと考えております。午後は労働大臣斎藤警察庁長官等出席を求めております。速記とめて。    午前十時五十六分速記中止    ——————————    午前十一時二十七分速記開始
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。只今斎藤石炭局長が来られました。斎藤石炭局長ちよつとお伺いいたしますが、当委員会が本日午前中石炭問題について通産大臣出席を求めて、もう随分前から委員会案件になつておりましたものを延ばしておりましたが、今日はこの問題についてけりをつけるように予定をしておつたことを御存じですか。
  4. 斎藤正年

    説明員斎藤正年君) 大変申訳ございませんが、部内連絡手違いで、実は私存じておりませんでした。大臣政務次官の話を存じておりませんでしたので、大変遅れまして申訳ございませんでした。
  5. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 存じていないということでありますと、当委員会としては、非常に私は問題が重要だと思うし、委員長としても大変に遺憾に思いますが、その間の事情はどうなつたのか、どうしてこういう工合に遅れたのか、而も石炭問題についてはもう一日も忽せにできない状態に来ているのに通産大臣出席をしない、政務次官出席をしない、今官房長を呼んだところが出席しない。通産省石炭行政に対して熱意がないと、断定してよろしうございますか。特に石炭局長は少くとも石炭不況対策については熱心に努力をしておられると思いますが、当委員会大臣出席を求めたゆえんのものは、石炭局のほかにある通産省内の各局協力を得なければこの問題は解決はしないし、この各局協力を得るためには、通産省責任者である大臣なり或いは次官なりの所信をやはり聞かなければ問題の発展はないわけです。特に通産大臣はもうしばしば石炭行政の問題については当委員会において約束をせられておるのであります。その約束についての実行の問題が表明されないので、いつの委員会でも閉会石炭問題というのは議題に取上げておるのであります。従つてこの際は通産省として、当委員会で、石炭行政に対する熱意がないということを私は決定して差支えないということならばよろしいけれども、若しそうでなければ、今斎藤局長が言われたように、省内の手続で一時間も出席が遅れた。当委員会はもう十時半からすでに委員会開会を宣しておつたわけです。そういう状態で聞き逃しにすることは私はできないと思います。
  6. 斎藤正年

    説明員斎藤正年君) 我々事務当局といたしましても石炭問題の解決に努力している点は、我々としては最大限度に努力しておるつもりでございますが、併し今度の問題は全く事務的な連絡不十分であつたわけでありまして、大臣委員会の仕事についてどうこうというようなことでは全くないと、私はそう思つておる次第でございます。大変どうも連絡手違いでこういうことに遅刻いたしまして、大変申訳ないと思つております。大臣も私全然まだお会いしておりませんので、連絡でき次第できるだけ早く出席して頂くように手配いたしたいと思います。
  7. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 通産大臣は今日出席できないというのです。ですからこちらでは通産大臣か、或いはでなければ政務次官が出てもらいたいという工合事務当局から連絡がとつてあるわけです。ところが大臣も出ない、政務次官も出ない。勿論事務次官も何か工合が悪くて出られない。オールいかんでは、これは当委員会としてもそのまま了承するわけに行かない。特に前々から予定しておるのです……。こうういう押し問答しておつても止むを程ませんから、石炭局長から今努力しておる、こうおつしやるから、その努力しておる内容を御披露願うことにして、こういう事態なつたことについては早速通産省連絡をとられて、その経過一つここに明らかにしてもらいたい。そうしてその結果によつて通産省の態度については又委員会としては意見がありましようからその意見を述べる、こういうことにいたしたいと思います。そういう工合にして今日一日委員会をやります。  実はもう少し詳しいことを申上げますと、通産大臣は今日午前中に出席願えればそれでよろしい。出席願えなければ明日又一日委員会を開いて石炭問題だけを専門にやるから約束を願いたい、こう申上げたところが今日も工合が悪い、明日も工合が悪い、こういう御返事なんです。従つて通産大臣石炭行政にどれほど熱意を持つておられるかということは我々大体付度しております。そういう状態なんです。それならそれでよろしいが、やはり参議院の委員会政府出席を求めた以上は、大臣工合が悪ければ政務次官出席させる、政務次官工合悪ければ事務次官をして事務的な税明くらいはさせる、それくらいの熱意があつて然るべきだと思います。今までは成るほど当委員会においては案件にしておきましても、ほかの案件が立て込んでおつたために、御出席を願いながら御発言を願う機会がなかつたことは我々も遺憾に思つておりますけれども、そういうことがあればこそ、今日は特にほかの案件を整理いたしまして、石炭問題だけをやる、こういう工合予定して委員の皆さんにもお集りを願つておるわけです。それですからどうか一つ直ぐ通産省のほうの部内の問題についてはどうしてこういうことになつたのか、この点は一つ官房長もおられるでしようから、その経過を当委員会に後刻でよろしうございますけれども調べて頂きたい。  それでは石炭鉱業における不況対策及び失業対策に関する件に関しまして、先ず通産省斎藤石炭局長から説明を求めたいと思います。……問題の所在点はもうおわかりだと思いますがね。この前から、乱闘国会閉会あたりからずつと懸案になつておる問題です。石炭価格の問題とか、重油節減規制の問題とか、そういう恒久策の問題、それから当面の緊急政策の問題……。
  8. 斎藤正年

    説明員斎藤正年君) 私の御説明がどの程度まで申上げていいかわかりませんが、差当り先ず不況対策と申しますか、当面の処置について概略御説明いたします。  現在石炭不況の面が二つございまして、一つは数量的に非常に需要減つて参つた。そのために生産は各社が自社の販売予定と睨み合せまして或る程度生産を抑制しておるところが多いにもかかわらず、なお且つ四百万トン以上もの貯炭が減らないという数量的な面が一つ、もう一つは、その結果でありますが、価格の面にそれが現われて参りまして、一部の方面につきましては非常なコスト割れ価格で売買が行われておるという二つの問題があるわけでございます。  そのうちで需要増加の面につきましては、これは差当り国内市場を確保するという意味で重油輸入炭の問題があるわけでございますが、この点は前にも御説明いたしたかと思いますが、輸入炭につきましては一応事務的に見まして削減のなし得るものは大体計画的には削減をしたと我々は考えておるわけです。昨年の、二十八年度輸入炭輸入実績は四百万トンをちよつと越した程度でございますが、本年度計画も当初の予定では約三百七十万トン程度輸入でありましたが、それを本年度の今のところ最終的にきまつております外貨の割当の基準は二百七十万トンということになつておりまして、約百万トン程度当初の予定から減つております。従つて先ず事務的に考えますと、輸入炭としてはこの程度最大限度ではないかと我々も考えております。  それから重油の問題でございますが、これも前々から御師明いたしましたように五百三十七万キロという線で年間を予定しておりまして、下期につきましてはそのうち更に十万キロを使用割当から保留いたしまして、特別の事情がない限りそれを使わせないということにいたしております。なおその上に現在の状況からいたしましてもう少し節減の余地がないかどうか、事務的に更にこの問題を検討中でございます。併しいずれにいたしましても今後重油として取り得る量にはおのずと制限がございますので、結局需要の敬量的な面では現在の状況からそう大巾に改善することは殆んど物理的に困難だと申上げるほうが適当な程度じやないかと我々は考えております。そう申しましても重油消費節減を更に強化して行くということについては今後とも通産省として努力して行くつもりでございます。  従つて当面の不況対策といたしましては、主として価格面に対する対策と、それから同時に或る程度供給側制限をするという以外にないわけでございます。で、それが結局両方を併せて考えますと成る程度生産の抑制をする以外に当面の対策はない。これも新聞紙上等で御承知のことと思いますが、生産業者のほうも本年度需要見通しに鑑みまして、それぞれまあ自分の販売の見込みを考えまして、更に生産制限と申しますか、減産をすることになりました。この数量もどのくらいになりますか、現在のところ最終的に正確な数字は判明いたしませんが、大体十二月以降平均一割程度減産になることと思います。そういたしますと百三十万トン程度減産に……、現在三百六十万トンくらいの生産でございますから、百三、四十万トン程度減産になるわけでございます。ただこれは毎年度間としてでございます。ただ十二月あたりは例年でございますと相当増産になりますので、現在のベースに比べてはここまでの減産にはならないことになるわけでありますが、それでも上期と申しますか、現在程度生産がずつと平均に続くというふうに考えますと、ベースにいたしましても大体百万トン程度減産になるものと我々考えております。従つてあと生産制限が現実に石炭販売面効果を現わして来るまでの間濫売と申しますか、投売りを抑制するという措置が必要になつて来るわけでありまして、その措置としては差当り金融的な方法以外にないわけでございます。従つてその金融をつける方法として、まあいろいろ考えて参つて来たわけでありますが、今回電力会社に来年度分の上期に必要とする石炭を繰上げて購入してもらいたいという話をしまして九電力会社話合つた結果、約三十七万トン程度、これも実は価格とそれから資金量によつて少し動いて来ると思いますが、大体三十七万トン程度石炭と申しますか、或いは石炭代金を繰上げて支払つてもらうということにいたしました。これでかなり差当り金繰りについては緩和されて来るのじやないかというふうに我々考えております。  なおこれだけではまだ十分とは申上げかねますので、更に金融の問題につきましてはもう少し手を打つて行きたいと考えておりますが、差当りこの三十七万トンの電力会社の繰上げ購入によつてどの程度効果が現われますか、それを見ました上で次の措置に移りたいと思いますが、やはり足りない分は、個々の生産会社金繰りの実情によりまして金融的な手を打つて行くという以外にないように私は今のところ考えておる次第であります。当面の市況の対策としては大体その程度でございます。  それから失業対策といたしましては、鉱害復旧工事の繰上げ問題につきましては前に御報告いたしたと思うのでありますが、今度補正予算でこれは失業対策事業につきまして若干増額が認められまして、全国で約一万人程度の就業の増加が可能なように聞いております。これは労働省のほうの関係でございます。それから建設省の関係失業対策ということを主要な目的一つといたしまして、河川関係改良工事をいたすことに決定いたしました。現在まだどの地区にどの程度工事をいたしますか、最終的には決定いたしておりませんが、我々としては失業情勢の一番集中しておる北九州の遠賀川地区と、それから鉱害工事のございません常磐地区あたり相当工事をやつてもらうように期待しております。失業対策の面につきましては、差当り今申上げましたような状況でございます。
  9. 田村文吉

    田村文吉君 ちよつと退席いたしますので先に一つ質問をお許し願いたいと思います。  今非常に石炭値段の引合わないために、各炭鉱休鉱をなさるかたもあり、貯炭増加して行くというような状況下にあるのでありますが、この石炭値段自体がどうしてこんなふうにほかの物価割合に高くなり過ぎたために、国際物価に比べて高くなつたかというようなことにつきましては、先般来しばしば私はお伺いもいたしましたので、今日はこの問題に触れぬのでありまするが、いずれにいたしましても現在の状況下においては、需給の調節がとれないということが非常に炭価というものを安定させない、こういうわけでありますから、先ず需給の安定をどうしてとるかということについて御苦心になつておると思うのであります。外炭の二百二十万トンというお話でありますが、これは果して原料炭で止むを得ずどうしても取らなければならない石炭なので、あるかどうかということをお伺いしたいのでありまするし、重油の四百何十万とおつしやつたようなそれにつきましても、いろいろ諸般の事情で大体この辺のところよりちよつと削減すべきじやないかと思うと、こういうようなお話でありまするが、石炭にしても重油にしても、今の国際収支について非常に皆が心配しておる事態でありますから、もつと思い切つた大鉈を振つて一つこれを削減するという勇気がなければならんのではないかと、こういうことを考えまして先般の委員会でも申上げたのであります。先ずそれが第一、然る後なお国内の炭が余るというならば、今お話のありましたように繰上げて買入れをするとか、或いは資金の融通をするとか、いろいろ方法もありましようが、まあそういうようなことは一時的にちよつと効くようでありますけれども、結局それは余り効をなさない。要は余つているのではいつまでたつても余るものは要らないというように、これはたとえわきへ封印してみたつて駄目だ。ですから結局は生産制限するよりしようがない。ところが今伺いますと百三十万トンという四十万トンに対して極めて微量な数字になるので、私は思い切つてこの際五千万トン出るなら四千万トンに減らすということ、この問題の実行方法が非常に困難である、独禁法関係もあつて、そういうことにして市価を吊上げることが困難であるというようなことが問題になつているのじやないかというようなこと。もう一つは大炭鉱と小炭鉱ですね、大炭鉱はどんどん生産制限をするけれども小炭砿はしないということになると、これは不公平であるから、結局大炭鉱が応じないというような問題が起るのじやないか。従つて今のようななまぬるい生産制限になつているのでは炭価の回復というものは困難である。これは私は炭鉱業者に頼まれて言うのでもなんでもありません。ありませんが、このように社会に非常に失業者が殖えて来て不安な情勢にあるときには、この際はもう少し踏みこんだ政策で、思い切つて五千万トン程度のものは四千万トン程度に減らすというくらいの対策をお立てなされるように、政府がむしろ命令的になさるべきじやないか、こう思うのであります。こういう点について石炭局長さんはどうお考えになつておりますか。私は徒らに生産制限によつて炭価が上ることを希望しているわけじやないのだが、今のような非常に失業者の殖えている場合には何とか方法を立てなければならん。窮迫した当面の問題になつているのだから、この問題に対しては特に石炭局長としてお考えを頂かなければならない。こういうふうに思うのですが、先ず一体二百七十万トンの石炭性質はどういう性質のものであるか、重油の四百何十万キロというのはどういう性質のものであるか、それから国内で操短をやるために独禁法というようなものの障害があるのかどうか、大炭鉱と小炭鉱との調整をとる方洪がないのかどうか、こういう点についてお伺いいたします。
  10. 斎藤正年

    説明員斎藤正年君) 先ず一番最初の輸入炭の問題からお答えいたします。輸入炭の今私は申上げました二百七十万トンの中で、二百万トン強は製鉄用の強粘結炭でございます。これは昭和二十八年度実績では、国内製鉄用コークスを作るための原料炭につきましては、岡内炭が五〇%、輸入炭が五〇%という比率操業をして参つたわけであります。それを石炭大分不況になつて原料炭が余つて来るよな見通しになりましたので、本年度の上期におきましては、国内炭を五五%、輸入炭を四五%という比率操業をすることにいたしました。その成績を見たわけでありますが、非常に全体で成績も上つておりますので、更に下半期につきましては輸入炭を四〇%、国内炭を六〇%というところまで上げて参つたわけであります。結局昨年度実績に比べまして、半期ごとに五%ずつ国内炭使用比率増加して来たわけであります。その点につきましては、やはり事務的に見ますならば、或る程度この六十、四十の配合比率コークス使用状況はどうなるのか、その実績を見ました上で、削減するとすれば更に削減をすべきではなかろうかというのが我々の考え方であります。実は今度の六十、四十にいたすにつきましても相当製鉄業者のほうからは反対がございましたけれども、我々としましては上期に五%削減しましてれその結果が、コストの問題は別といたしまして、石炭使用総量からすれば決して増加しなかつた関係がございますので、なお更に又五%程度国内炭使用を引上げてもらいたいということでやつたわけであります。これが技術的にどの程度まで国内炭使用割合を殖やし得るかという点は非常に問題でございます。まあこれは結局コークス使用量を急激に増加させないで、どの程度まで国内炭使用割合増加し得るかというふうに考えるべきなんでありまして、戦争中に、或いは終戦直後のように外国炭輸入が不可能であるならば、或いは非常に困難でありました場合にはまあ七三と申しますか、国内炭七割ぐらいまで使つたことも全然ないわけではございませんが、ただその当時と現在と比べますと、コークス使用量は格段に減つております。そういう即ち原単位が当時に比べまして格段に町上をしているわけでございまして、又現在鉄鋼相当不況でありますので、そういつた経済的な採算というものを考えまして、輸入炭使用量を我々としてもきめざるを得ない。その点では結局逐次国内炭使用量増加いたしまして、その成績によつて更に規制考えるというふうにやつて行きたいと考えている次第でございます。石炭輸入の問題につきましては石炭局として権限を持つておりますので、これはむしろ我々としては現在のところどうもこれ以上に大巾に削減することは困難なようにまあ今のところ考えている次第であります。  それから製鉄用原料炭以外の、あとの七十万トン弱程度のものは大体が無煙炭とそれから原料炭に分れておりまして、そのあとの残りの原料炭はこれを主としてカーバイト向けコークス用原料炭でございます。これは御存じのようにカーバイトを作る原料としてコークスを使いますが、これは灰分含有量歩どまりが非常に大きく関係して来るそうでありまして、国内炭だけで作りましたコークスではどうしても灰分が多過ぎて困る、というのがカーバイト業者側意見でございます。従来は、従来と申しますか、昨年はカーバイト用コークス原料炭につきましては百パーセント外国結炭及び仏印炭でやつて参りまして、オイル・コークス使用しておりました。これも全部輸入でございますので、結局カーバイト炭素材といたしましては百パーセント輸入で参つたわけであります。これを本年度の上期には先ず一〇%だけ一つ国内炭を入れてやつてもらいたいということでやりまして、まあそれほど原単位が悪くなつたというほどの実績も現われておりません。但しこれはガス会社コークスを作りますときに、外国炭の全体の供給量からは今申しましたように一〇%で押えてございますが、そのときに作りますコークスは必ずしも平均一〇%正確に使つたコークスでございませんので、余りまだ絶対的なデータは出ておりませんが、併しそう非常に悪化したというふうには我々考えておりませんので、実はこの下期にはもう少し強化するつもりでありましたのでございますが、これとてもやはりさつきの製鉄関係と同じように急激に増産されたのではどうも操業の自信が持てないというような業界側意見でございますので、上期の一〇%を今度は二〇%で国内炭にしようということで計画はできております。そのほかは製糸用鋳物用の極く上質のコークスを作りますために若干の仏印炭が入つております。それから煉炭用増熱用にこれもほんの僅かの無煙炭が入つておるという程度であります。  それから重油の問題でございますが、これは私の担当ではございませんので、正確に申上げることは困難でございますが、併し大体のことを申上げますと、五百二十七万キロという重油の総消費量のうちで、鉱工業用の分が約三百二十万キロくらいであります。従つて石炭需要喚起という目的から重油考えます場合には、三百二十万キロについてどの程度までの削減が可能かということが先ず問題となつて来ると思うのであります。そのうちで正確な数字は今持つて来ておりませんが、約百三十万キロくらいが鉄鋼とそれからガラス工業用でございまして従来発生炉炭使用しておりました分野から転換した需要でございます。この発生炉炭使用しておりました分野からの転換につきましては、先ず第一に重油から石炭に転換するといたしますと、ガス発生炉を整備してかからなければならないというまあ技術的な問題がございます。それを別にいたしましても、発生炉炭と申しますものは御承知のように非常にカロリーの高い、灰につきましても特殊の灰の成分を要するものでございます。融点が高いとか、いわゆるさえものと申しまして固まらないとか、いろいろ条件がございます。そういう条件がありますために、発生炉炭は従来比較的値段が高かつた。むしろ同じカロリー原料炭よりも若干高いくらいのものでございまして、従つて重油との価格の比較でいたします場合にも、一般炭に比べてかなり不利な条件にございます。その上にガス発生炉というものを通してガスにする関係から、どうしてもそこにカロリーの損失がございまして、その両方を併せて考慮いたしますと、現状では重油を使うのに比べまして先ず三割、消費地で使うという前提で考えますと三割以上の差があるように考えられます。従つて現在のようなまあ鉄鋼関係不況の場合にこれを強行するということは、我々石炭局の立場としては希望しないわけではございませんが、なかなか困難ではないかと考えております。  それからそのほかの分は若干、まあほかの細かいものもございますが、そのほかの需要は大半がボイラー用でございます。これは一番簡単に石炭に転換し得るはずでございますが、そのボイラーにつきましても品質管理、その他の面から非常に特殊なボイラーで石炭が使えないというようなものが相当あるようでございまして、そういうふうなものを除きまして純粋に、技術的な問題を抜きにして石炭に転換し得るボイラー用の需要はどのくらいかと申しますと、少し辛く査定いたしまして百万キロぐらい。それから甘くと申しますか、相当の、今申しました技術的な、或いは品質管理的なそういう方面の関係相当無理をして石炭に転換するというふうに考えますと、それが要するに一杯に見ました場合には百五十万キロ程度が実に議論の対象になる分でございます。それを、これはできる限り石炭に転換して行くという方針で我々通産省としては進んでいるわけでございますが、それをどの程度の時期に、どの程度のスピードで転換するかということが当面問題になります。差当りはそのうちの約三分の一程度のものがこれは技術的にも余り困難な点がございませんので、その三分の一程度、五十万キロ程度のものを対象にいたしまして規制を強化して行くという方針でありまして、そこでその分につきましてはこの下期の計画では大体所要量の半分程度しか割当をしないという方針でやつて来ているわけでございます。  そういうふうに分析して考えますと、結局特殊ボイラーでございますとか、或いは特殊の炉、ガス発生炉、その他の特殊炉というふうな技術的並びにコスト的にも相当問題のある需要を除いて考えますと、あとつた需要につきましてこの第四四半期として削減し得る量というものはそう大きな数量は期待できないのじやないかというのが我々の考え方でありますが、先ほど申しましたように、もつと規制を強化するという方針につきましては、通産省としても決してそれを欠いているわけではないのでありまして、まあ現在のところ更に重油規制を強化するという線でどういうことをやつたらいいかということを研究している段階でありますが、必要があれば規制のための法律を出してもやろうという考え方で、現在そういう法律を、どういう法律を出すか、それについて研究を進めているような段階でございます。  それから生産制限が非常に手ぬるいんじやないかという御質問でありますが、これは端的に申しまして私自身もまあそう考えております。今の見通しで参りますと、この減産をやりましても、九月末四百二十二万トンの生産業者貯炭が、生産業者見通しによりますと三百九十五万トン、来年三月末に三百九十五万トンになる、こういう見通しであります。我々は需要見通しをそれほど悲観的には考えておりませんので、我々の見通しによりますと三百三、四十万トンという程度貯炭になるのじやないかというふうに我々は考えているわけであります。併しノーマルな貯炭と申しますか、普通の、平常の場合におきまして、貯炭がどのくらいが適当かということは、まあ問題でございまして、まあ時期によりまして相当つて来ると思いますが、平均しまして出炭の二十日分くらいが適当だというふうに我々考えております。そうしますと三百六十万トンペースで出炭いたしております場合には、二百四、五十万トンというところが平常貯炭、本年の三月末の貯炭は二百六十万トン、先ずそのくらいまで圧縮すべきではないかと我々も思つているのでございますが、この減産につきましては、田村委員からお話がありましたように、大手と中小の問に非常に利害の対立がありましてその減産問題は今年の春からいろいろとまあ計画されておりましたにもかかわらず、やつと半年たちました今日になりまして、我々並びにまあ識者の目から見れば不満と申しますか、不十分だと思われる協定に達するまでも半年もの問いろいろ経緯があつたわけでございまして、そういう点から考えますと、まあ現状としては止むを得ないんじやないかというふうに我々としては考えておる次第でございます。ただこれは飽くまで本年度の三月末までの問題として考えておるわけでございまして、その減産によりまする炭況の模様によりましては、来年度以降に引続いて或る程度そういう問題を継続して行くということは当然まあ問題になることじやないかと思つております。差し当り今から減産をいたしまするにしましても、十二月以降四カ月間でございますので、そういう期間の問題も併せ考えれば、この程度でなにをすることはいたし方ないというふうに考えておる次第でございます。
  11. 田村文吉

    田村文吉君 今の減産の問題ですね。これはたしか通産省のほうで懲悪し、或いはやられる場合に、別に独禁法には触れないで不況カルテルとして認めて行かれるのですか。ただやはり表面的には自主的におのおのがやつておるんだ、こういう形になつているのですか。どういうことなんですか。
  12. 斎藤正年

    説明員斎藤正年君) これは不況カルテルということになりますれば、御存じのように公正取引委員会に認可の申請をしなければならないことでございます。我々のほうとしてはこれは不況カルテルではないんだというふうに、私たちはかように考えております。業者が需給見通しを立てて、それに合う程度に各自に出炭を抑制するということだけで、必ずしも独禁法のいわゆる不況カルテルに相当するというふうには考えておらないわけでございます。
  13. 田村文吉

    田村文吉君 その点をもう一歩突つ込んで通産省が、こういう社会不安を招くまでの失業者を出したり、経済界に非常な不安を与えているような場合は、先の重油の問題にしましてももうちよつと突つ込んだ規制があつてもいいんだ。例えばこれは戦争中の話でありますけれども、国内の制鉄業には外国炭でなければならんという話がありましたときに、これには藤原軍需大臣が北海道の石炭でどうしても間に合せようというのでやつたこともあります。こういうようなことは、非常な場合ではありますが、今日といえどもこういう失業者が多く出ているような場合に対する認識はもつと非常的に考えてよろしいんじやないか、こういう点を考えますと同時、今の不況カルテルの場合でももつと通産省がはつきりとこの辺はこうせねば世道人心のためにいかないと、思い切つて一つ強制的にもはつきり打ち出すということまでおやりになつてよろしいんじやないか。併しそこまでなぜ通産省としてはやれないか。これは私は今の独禁法自体の欠陥もありますから、そういうものは全然独禁法がなくなればこれは問題はないのですけれども、あつても国の大きな問題に対してはもう少しそういうところを融通のつくような方法が打てないかということを非常にはがゆく思うのですが、どうですか。
  14. 斎藤正年

    説明員斎藤正年君) 重油規制につきましては先ほど申しましたように技術的にも又経済的にも非常に困難があります。特に重油規制につきまてしは、いわば規制の被害者は油を使つておる需要者全部に及ぶ国内相当広い層が、別に自分の責任ということでなしにまあ規制の被害を受けるような関係もございまして、その辺は私たちの範囲ではございませんが、なかなか思い切つた措置がとりがたい。非常に思い切つた措置をとるとすれば法的な権限と同時に或る程度の財政的な措置というふうなことまで考えなければならないような問題があるのではないかと思われるわけであります。  それから独禁法の問題でございますが、これは今答弁申上げましたように我々としては不況カルテルとして届出をする必要がないように考えております。ただ公正取引委員会というものは一般の行政官庁と全然独立した官庁で、全然独自の解釈をしますので、どう結論を出しますか、私たちから何も申上げるあれがないわけであります。が併し今のところこれによつて独禁法によつて審判にかけられるというようなことはないものと私たちは信じます。
  15. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 伺つておりますと重油の問題は自分の所管ではないと、それからいろいろ苦心をしておられる実情も知つておりますが、只今の答弁では、従来の対策以上に殆んど出ておらないと、重油の問題にいたしましても大した進展がなくて、大変に残念に思います。  座り込みをいたしましたのは中小企業の代表でありましたけれども、全国の中小炭鉱で労働者なり家族がどういう状態にあるかは御存じのはずである。いわば全国の中小炭鉱の従業員なりその家族等は餓死寸前にあつて全国で座り込みをしておると申しますか、或いは餓死を免れている実情であります。政府の施策が遅いから、或いは東京都内でも渋谷婦人会などから救援物資を炭労に持込み、或いは私どものところでも保育所の家族が援救物資を持込んだという実態のようなことはこれは御承知です。そういう実態に対して石炭行政をあずかつておられる石炭局長も、或いは通産省が、この餓死寸前の状態を自分の責任として急速な手を伸べておられぬということについて大変遺憾の意を表したいのであります。  来年の三月まで本年度中の緊急対策について一応述べられましたけれども、併し例えば先の鉄道の繰上げ買上げにいたしましても、金利の負担までも中小炭鉱が、倒れようとする中小炭鉱が持たなければならないというので十分の実績が挙らなかつたこともこれは御承知である。電力会社に買上げを従濾する、その金融をつけてやる、或いは重油削減についてこれから先はなお研究中であるといつたようなことで、或いは金融につきましても、これは年末が迫つて参りましたが、再建計画が立つところはしてやる、一般貯炭融資としてはできないと、失業対策についても鉱害復旧或いは公共事業の枠の拡大、或いは特別失業対策云々ということでありますが、それも鉱害復旧などは幾らか早いのでありますが、実際に炭鉱に、職なくして或いはつぶれて、栄養失調に陥れている家族をその仕事に吸収するまでには行つておらない。公共事業の枠の拡大なり或いは特別失業対策のことはなお更、まだこれからの話であつて、何十万の従業員とその家族とが年末を控えて、或いは都内にいたしましても、全国の国民の何と申しますか、非常な同情を、何とかしてやらなければならないという状態を、どうも政府の施策としては届いて、その施策が生きて行くというところまで行つておらんことは、これはもう御承知のところだと思います。  そこで緊急対策、それから恒久対策二つに分けて聞くのでありますが、先ず、先般愛知通産大臣が帰られる直前に、小坂臨時通産大臣に、MSA石炭輸入するという心配があるかどうか、こういうお尋ねをいたしましたが、斎藤局長もおられたと思いますが、その心配はないだろう、まあ愛知通産大臣が帰らんからわからんのだけれどもというお話でありました。新聞での通産大臣の談話は伺いましたが、もう一度はつきりMSA石炭輸入する計画はない、或いは話合わなかつた、そういう点確答をして頂きたいと思います。  それから恒久対策と申しますか、これらについては、今は年内一割の生産抑制という点を承わりましたが、先ほど田村委員からも御質問がございましたが、五千万トンの生産能力を持つておる。ところがその需要がない。四千万トン或いは四千百万トンとか、或いは四千三百万トンとか言われておりますけれども、大体四千万トンに現在では近い需要しかないということは大体私は言い得ると思います。その差額の一千万トン近いものをどういう工合にしようとされるのか。生産制限の点については本年度内の一割抑制、或いは通産委員会等で鉱区の買上げ、その他の構想も述べられたというお話でありますが、それらの点については先ほど御答弁がございませんでしたが、大体生産制限で行こう、こういうお話のように承わるのでありますが、慨久対策としてどうするのか、その点をはつきり承わりたいと思うのであります。  それから需要増加については多少これは緊急対策にも関連がありますが、発生炉を除いて、ボイラー炭等について、特殊なものを除いては切替えたい、こういう非常に小さいお話がございました。発生炉のごときもこれはもう手が触れられないのだ、こういう点に大変私ども残念な石炭局長の意向を承わるのでありますが、これも私は方法は全くないわけではないと思いますし、それから例えばこれは指摘をされてあとで訂正をされたようでありますけれども、進駐軍なら進駐軍が暖厨房用のボイラー炭を重油に切替えようというのを、むしろ全駐労あたりから指摘をされて、そしてそれを県なり或いは通産省に持寄つてつたのでありますが、それで申入れをして、やつとこれからの切替えを食いとめる。こういう調子で需要増の方策について研究が足りない、或いは努力が足らない、或いは政策の見るべきものがないと私は思うのでありますが、これはまあ基本的に自由経済か計画経済かということもございましよう。或いは自由党の政府の下においてはそういうことがなかなか困難だという点もあるかも知らん。或いは画軍備促進予算の中ではそうした需要増を図るということが困難だというあれもあるかも知れませんけれども、少くとも石炭行政をあずかつておる石炭局長としては或いは通産大臣としては、当面のこの石炭の窮境或いは石炭労働者の窮境を救うためには、この程度のことはしなければならん或いは方向としてはこうしなければならん点が当然私はなければならんと思う。これは経済研究所あたりにしても石炭問題についてはもう自由経済では駄目だというようなことを学者は言つておりますけれども、これは当然だと思います。お役人であろうとも、役人であればあるほど石炭は自由経済ではもう駄目なんだ、成る程度計画性を持つてこういう工合にしなければならん、こうあるのが私は当然だと思うのでありますが、そういうものがございませんが、これらの点についてまだ省議或いは閣議決定をしておらんとしても、どういうことを考えておられるのか、これは率直に斎藤局長の責任ある意見一つ承わりたいのであります。  それから生産を一割抑制する。これは来年度も模様によつては引続ぐかも知れない、こういう話であります。そうすると人員はどうなるか。いつも企業の合理化、或いは労働大臣なんかはユストの引下げ、こういうことを言いながら、その責任が労働者に転嫁され、或いは労働条件が低下され、或いは首が切られ、その首が切られるまでは放つておいて自由にやらせておいて、そしてその後の問題についてはこれは失業保険或いは失業対策考えればいい、こういうことなのでありますが、石炭行政をあずかつておる或いは生産政策をあずかつておられる通産省としては五千万トンの需要を維持するのにどうするか。需要は急速に進行できないとするならばその差額はどうするか、それを担当しておる人員はどうするか、これは当然お考えにならなければならんと思うし、これは先ほど田村さんのようないわば議員のかたにして民間事業をやつておられる人にしても、今の炭鉱労働者の三十万の人員は維持しなければならん、こういうお話が出ておりましたが、これは当然石炭行政をやつておる石炭局として或いは通産省としてもお考えなければならないと思うのでありますが、その点はどういう工合にお考えになつておるのか、一つ承わりたいと思います。  それから緊急対策については具体的には挙げませんが、緊急対策と言われるならば、年末も迫つております今日、今のような方向で参りますならば、これはもう今月も終りであります。あと十二月の一ヵ月ばかりです。半ばまでには施策が末端に届かなければこれはどうにもならない。或いは失業対策と言われ、或いは厚生対策と言われ、或いは私が曾つて炭鉱の日雇い労務者の実際の窮状を母の手紙を引いてここで申上げましたが、それは民生委員に言つたらよかろうと労働次官は言いましたが、或いは生活保護のごとき、或いは学校問題についてはこの間文部委員会も取上げてやつておりましたが、それらの問題を含んでやつても、来月の十五日ぐらいまでに末端に施策が届かなければ、これは緊急対策の効を挙げるわけには参りませんが、このテンポを考えてどういう工合になさろうとしておるのか。施策の点については触れられる項目は少なかつたが、それらの点は時間がありませんので申上げませんが、あなたのほうで一つ御答弁願いたいと思います。
  16. 斎藤正年

    説明員斎藤正年君) 最初にMSAで米国余剰石炭を買う問題についてはつきりした返事をせよという御質問でございますが、これは私が大臣から伺つたところでも全然その話は先方からもなく、こちらからも勿論一切そういう話はしません。従つてMSA石炭問題については全然御心配が要らないというふうにお答えしていいのではないかと思います。  それから恒久対策として需要生産との一千万トン程度の不均衡をどうするかという御質問のように伺いましたが、これはこの委員会でもお答えしたと思つておりますが、我々は数年先には従来の四千八百万トンという需要を回復することはそう困難ではない。我々の石炭の合理化政策の目標も数年後の四千八百万トンというものを一応目標にして進んでおります。それがまあ四千八百万トンか四千七百万トンくらいになるか、そのくらいの差は別といたしまして、大体四千八百万トン程度というものは数年後にはそこまで持つて行くという考え方でございます。それにはやはり全体の燃料と申しますか、エネルギーと申しますか、そういつたものの総合的な需給見通しというものを立てることが必要でありましてそれができまして初めて重油の問題も根本的と申しますか、最終的にきまるわけでありますが、併し繰返して申上げておりますように、重油の消費規制については通産省としては今後相当強化して行くという考え方でございますので、その面からも相当需要増加が期待できる。若し、百万キロ節約ができますれば、石炭として二百万トンくらいになるわけであります。  それから今年の今年の見通しは大体四千二百万トン前後じやないかというふうに我々考えておるのでありますが、そういうふうになりました原因の一つは、これももう従来申上げておりますが、上期の異常豊水によりまして、電力用炭が百五十万トン程度消費が減つたということが大きな原因の一つでございます。御存じのように電源開発計画が進行しておりまして、それに併せましてその計画の中には火力の増強も相当つております。従いましてこれが二、三年後には大体現在八百万トン程度需要が一千万トン程度になるというふうに考えておりまして、その面でも、今の豊水問題は別にいたしましても、なお二百万トン程度需要増加を期待し得る。  それからもう一つ現在の需要の減退の一番大きな原因と申しますか、それは御存じのようにデフレということでございますが、デフレ政策というものは、結局それを通じて産業の合理化を行なつて、それによつて輸出の増加をする、それによつて国民総生産を殖やして行くという考え方であります。今の政策が軌道に乗りますれば、当然一般的な生産活動の増加という線を通じて需要増加も期待できるのではないかというふうに考えております。そういうふうに考えますれば四千八百万トソという計画はそう無理じやないというふうに我々考えておるわけでございます。  それから需要増加、特に重油規制をもつと強くやれというお話でございますが、先ほど私が発生炉用炭等につきまして申上げましたが、それは発生炉に使用しておりました石炭需要に代替する重油使用というものは今後恒久的に認めて行くということに方針がきまつたということを申上げたわけではないわけでございます。ただ重油の消費の中には発生炉炭代替需要というふうな、経済的に見ましても或いは技術的に見ましても相当転換の困難なものがある。従つてこういうものを転換いたしますには相当の研究と準備期間とが要るのだ、又石炭側といたしましても合理化をやりまして、相当値段を引下げて、重油を使うのに比べまして経済的に余り大きな差がないということになりませんと、消費者に犠牲を払つてもらうということも困難になるのじやないか、そういう面からこういうふうなものは現在すぐ規制に着手するということが困難だということを申上げただけであります。  それから石炭産業というものの特質から計画的な生産体制が必要ではないかというお話でございますが、計画的な生産体制というものの是非というふうな問題はちよつと私のお答えするような問題ではございませんが、併し需要見通しというものを基礎にして生産をやらなければならぬということは、これは申すまでもないことでございまして、本年度につきましては、我々のところで当初立てました需要予想が大変狂いまして、申訳なかつたわけでございますが、我々としても需要の予想というものを正確に出しまして、そういうた過剰問題が起らないように注意して来ておるつもりでございますが、今後もそういう点については十分努力して行きたい。我々の考えております長期の合理化計画もやはりそういつた生産需要見通しということが基礎にならなければならんわけでありまして、そういうふうな調整をとる措置につきましても、長期の問題としては何かもう少し正確にできるような方法考えることが必要じやないかというふうに考えております。  それから生産制限をやる場合に人員がどうなるかというお話でございますが、御存じのように現在の能率は戦前、九十一年程度のものを基準、その辺をベースにいたしますと、三分の二くらいの生産能率で、戦後は大抵の産業が戦前以上の生産能率を上げておるような状態でありまして、石炭産業としましても当然産業全体の生産能率の向上というテンポに合わして行かない限り重油需要を食われたというような問題が今後もますます起つて来る。石炭産業自体としても現状のままではむしろ需要を食われまして、だんだん生産を圧縮して行くより仕方がないという方向になるわけでありまして、そういう面からでは今どうしても合理化をやり、生産能率を上げて行かなければならない。そうしてコストを引下げ、延いて炭価も引下げて行かなければならんというのが石炭産業の根本的な行き方だろうと思うわけであります。それは同時にやはり国際貿易を基礎とする日本の自立経済のやはり根本的な要請じやないかと思うわけでありまして、憂い目で見れば、やはりその線はどうしても堅持して行かなければならんだろうと我々は考えておるわけであります。ただ具体的な当面の問題になりますれば、経営者としては現在の一般的な情勢なり或いはその年々の社会情勢というものを全然無視して又他に合理化の余地がありますのに、その犠牲を首切りということだけに逃れ道を求めるというような態度をもうとる者はないと我々は信じておりますし、今までの経営者の態度でも、一、二の者に例外はあつたかも知れませんが、大体においてそういう態度をとつて来ておると信じております。  それから緊急対策が年末に間に合わないじやないかというお話つたと思いますが、これは私が申上げました緊急対策につきましては、年末に十分間に合うように是非やりたいと思つて今努力しておるのであります。  それから鉱害復旧工事も今月末早いものは着工できるような段階に来ております。これは先月最終的に予備金使用が認められましてから二月足らずくらいでございますが、こういうふうな仕事といたしましては異例に早くできたんじやないか、関係者も非常な……、ほがの関係省、労働省その他の関係省、それから現地の府県或いは自治体当局の異常な御努力で漕ぎ付けられたと思つて非常に我々感謝しておりますが、少くとも今月末ぐらいから早いものは着手しまして、来月の上旬くらいには大体手が付くようになるものと思つております。今度閣議できまりました補正予算失業対策関係の分もできるだけ早く着手してもらいますように、今後我々としても努力するつもりであります。
  17. 田畑金光

    ○田畑金光君 具体的にお尋ねしたいと思いますが、十六国会の節に、愛知通産大臣、佐久石炭局長からお聞きしました石炭対策と、本日お聞きしまする対策との間には、何一つ目新らしいものも見出すことができないんです。冬場に入れば石炭の市場も石炭の業界もよくなるかと思つておりますると、ますます悪くなつて行くばかりであります。一体政府石炭施策というものがどういうようになつておるかということは、この現実の面がはつきり証明しておるのであつて、何をこの大事な時機におやりになつて来たか、我々は誠に寒心に堪えません。  先ず第一にお尋ねいたしたいことは、先ほど来重油輸入制限、こういうことも言つておられますが、例えば大臣がいつか約束された煖厨房、浴場等の消費規制について行政措置等の断行もやられたことを聞いていないわけであります。これは一体どういうことになつておるのか。更に外国炭輸入についてお話がありましたが、二十六年度以降外国炭は毎年百万トンくらい殖えて来て、昨二十八年度は四百五十万トンに上つておるのであります。先ほどの御説明によりますると、本年はこれを二百七十万トンにこれを削減する、その点については了解できるわけでありますが、ところが我が国の燃料の消費を見ますると、二十六年度が四千八百万トン、二十七年度が四千八百九十万トン、二十八年度が五千四百三十万トンとだんだん伸びて行つております。国内炭の消費は逆に二十六年度が四千六百五十万トン、二十七年度が四千三百七十万トン、二十八年度は四千三百五十万トン、昭和二十九年度見通しは、先ほどの御説明によると四千二百万トン、これ又日本の燃料消費全体がずつと上廻つておるけれども、国内石炭の消費はますます年々減つておるという状況であります。現在のデフレ財政の結果、生産規模が一体どの程度縮小しておるのか、こう見ますると、例えば鉱工業の生産指数を見ましても、昨年の月平均が基準年次に対しまして生産指数が一五五・一%、本年の例えば七月、八月の状況を見ますと、七月が一五九・五%、八月が一四五・八%、生産指抜そのものは昨年とそれほど開きがあるわけじやないわけでありますが、然るに本年度石炭の消費の状況お話によると四千二百万トン、或いはそれすらも危ぶまれて四千万トン前後じやないか、こう言われておるわけであります。こういうことを考えてみますときに、政府石炭需給関係のバランス維持のために、或いは国内の市場拡大のために、具体的に本年になつてどのようなことをやつて来られたか、それを私は具体的に示してもらいたいと思います。これが第一。  第二にお尋ねしたいことは、只今の吉田君の質問に対しましてお答えがありましたが、臨時的な措置として、年末までに貯炭融資については必ず実現して見せる、こういうような力強いお話があつたわけであります。これは先ほどの御説明によりますると、電力会社に対して来年の四月以降消費予定石炭を三十八万トン本年繰上げて購入してもらうということだと思つております。その三十八万トンに対する購入費として十三億の貯炭融資を今政府は斡旋しておるようであります。ところが本日の新聞によりますると、日銀はこれに対してどういう態度をとつておるのか、こう見ますると、貯炭融資というものは、現在政府が特に一般的に差しとめておる滞貨金融というものになつて来るから、今の方針に相反する。又貯炭融資をやつたからといつて現在の業界が立ち直るかというと、そういうような予測もできない、消極的であります、日銀の態度は。でありますので、日銀としては個々の炭鉱状況を見て判断する以外はないのだ、こういうようなことを申しておるわけであります。この貯炭融資については今日に始まつたことではなく、政府としてはかねがね発表されておることだし、例えば十一月十一日付の朝日新聞でありましたか、これによりますると、貯炭融資として四十億乃至五十億を考えておる、こういうような発表があつたのであります。お尋ねしたいことは、こういう貯炭融資について政府が日銀或いは市中銀行との話合いにおいて、年末までに確信を持つて間に合うという段階に来ておるのかどうか、或いは日銀当局、大蔵当局の方針に又相反するというので流れる心配はないのかどうか。尤もこれは電力会社を通じて融資を受けるようになつておるそうですが、この点について、デスク・プランでなく、現実に炭鉱にこの融資が流れるという自信をお持ちであるのかどうか、この点を第二点としてお尋ねいたします。  第三にお尋ねしたいことは、先般来政府のほうでしばしば立案され、又次期の国会に提案すると伝えられておりまする臨時石炭合理化促進法案、これは今度の国会に提案されるように熟しておるのかどうか、政府部内意見も統一されておるのかどうか、殊に合理化促進法案の中で今関心を持たれておりますのは、例えば非能率炭鉱を閉鎖する、不良坑口を閉鎖する、こうして能率のいい石炭生産を集中化して行こうとする構想があるようでありますが、そういうような非能率炭鉱、不良坑口を、閉鎖するという、買つぶしと申しますか、こういうような構想があるのかどうか、若しあるとすれば、当然それは相当額の財政資金というものが考えられるのであるが、これも又デスク・プランなのかどうか、実際おやりになろうとする肚がまえができて、政府部内の、少くとも通産省においては意見の統一を見ておるのかどうか、この点についてお尋ねしておきたいと思います。  第四点といたしましてお尋ねしておきたいのは、先ほど来石炭合理化についての御意見が述べられたわけでありますが、石炭合理化をする或いは炭鉱の若返りを図る、いつも竪坑開発ということが出ております。ところが財政の投融資面を見ますと何ら期待ができませんが、石炭産業の根本的な施策としては企業の合理化、炭価の引下げ、これをやらねばならないと思うわけでありまするが、石炭合理化について投融資の面からどの程度政府としては熱意を持つてやろうとするのか、これ又来年度も机上案で終ろうとするのかどうか。先ほどのお話によりますと、少くとも来年三月までは今の措置をとるとおつしやつておりますが、あたかも来年四月以降になれば石炭需要が拡大する見通しのように承わつたわけであります。併し今のデフレ経済の基調というものは恐らく来年一ぱい維持するのだというのが現在の政府の方針であるし、又我々も内閣が変ろうとしましてもデフレの基調は崩すわけには行かないではないか、そういうことを考えましたときに、来年の三月までの施策だなどといつておられること自体が我々は理解に苦しむわけでありますが、こういうことを考えたときに、石炭企業合理化について政府熱意並びに現在までの仕上げられた構想について承わつておきたいと思います。  最後にお尋ねしておきたいことは、十一月十二日大手筋並びに中小炭鉱が漸く話合いをして石炭生産制限をやるという話がまとまつたことを聞いております。先ほどのお話にもありましたが、そういうお話によりますと、これは正式な不況カルテルでなくして、いわゆる地下カルテルという形でやつて行こう、こういうような話でありまするが、今の問題といたしまして、石炭産業の現在当面の問題といたしましては、どうしても生産制限を断行する以外にはないと思います。ところが大手筋と中小の利害の衝突、或いはそれぞれの内部においてもなかなかこれは申合せだけでは実現できないことではなかろうかと考えておりますが、行政当局として、政府筋としてはこの生産制限に対する申合せ或いは業者の自主的な規制措置に対してどのような強力な指導方針を以て臨まれようとされるのか、これはどうしても又日銀その他市中銀行の融資とも関連いたしますが、このような面に関しまして政府はどの程度熱意を以て指導されようとなさるのか、この点についても承わつておきたいと思います。
  18. 斎藤正年

    説明員斎藤正年君) 煖厨房用の重油の抑制措置はどういうようになつたかというお話でございますが、これは御承知のように媛厨房用につきましては需要を抑制するという方針をきめまして、若し必要があるのでありますれば、法律を出してもよかろうということできめたわけでございますが、現在までのところは五百三十七万キロという消費ベースにほぼ実際の見渡しが合致しておりますので法的措置まで必要だというようには今のところ考えておらないのが通産省の態度でございます。  その他輸入炭或いは重油につきましてもう少し強く節減すべきではないかというふうな御質問のように伺いましたが、この点はすでにお答えいたしたわけであります。なお需要の喚起につきましては、輸入炭でありますとか或いは重油でありますとか、そういつた他の競争燃料は抑制しまして、而もそれを強権によつて抑制をして石炭需要分野の拡大を図るということも現在の石炭産業、ひいてはそれの及ぼす社会的な影響ということを考えれば或る程度はいたさなければならないことは申すまでもないところでございまして、その考え方から重油使用抑制もいたしますし、輸入炭の抑制もいたしますが、それと同時に新らしい需要の開拓ということに相当力を尽さなければならないのじやないかというふうに考えております。むしろ長期の石炭需要の改善という点からすればこの面に大いに我々としては力を入れて行きたい、差当り現在炭鉱側として考えておりますのは、製塩事業と火力発電の事業でありますが、これがいずれも現在商品炭としてとられていない炭、ぼたとして捨てられているのを有効に活用してやりたいという考え方で計画が漸次まとまりつつあるような段階でございます。ほかにガス化の問題その他いろいろございまして、これは石炭鉱業の合理化という見地からいたしましても、竪坑の開発と並んで非常に垂要な方策だと思つております。最近まで石炭鉱業が好況にありましたために、余り石炭鉱業自体としては決して需要の開拓という点に力が及ばなかつたような点がございまして、非常に遺憾でございますが、やはり需要の開拓というのは販売者がみずから努力すべき問題でございまして、我々としてもこの方面に一つ大いに努力して行きたい。こういう面から従来の電源開発計画が余りに水力偏重と申しますか、水力重点が過ぎるのじやないか、もう少し火力の増強ということも考えていいのじやないかというふうな考え方で、公益事業局のほうでも従来の五カ年計画について再検討しようという段階でございます。  それから二番目に貯炭融資につきまして日銀の態度から見ると相当困難ではないかという御質問でございましたが、これは貯炭融資というふうに考えますと、いわゆる布庫金融というふうなまあ範疇の中に入るようにも考えられ勝ちなんでございますが、今度の電力用炭につきましては、これは一応来年度の上期に使う分をいわば先買しただけである、もう少しくおして言えば、貯炭を少し殖やすというだけのことでございまして、一般のストック金融というふうな面から一般的に今議論をしなくてもいい、そういうふうに考えることができるのじやないかというふうに我々は考えておるわけでございます。又、たとえストック金融ということの範疇に入るといたしましても、それは要するにその具体的な品物とその程度におりまして金融というものは具体的に考えて行くべきではなかろうかと、我々としてはそういうふうに願つているのであります。日銀の態度につきましては、私から申上げるのは大変妙なことでございますが、絶対にこの問題について反対だということではないように我々としては承知をいたしております。又、問題が、これは電力会社が買うのでありまして、電力会社としては相当多額の資金を動かしておりますので、具体的にこの三十八万トンの石炭を買います場合にその代金が十三億要るといたしまして、十三億を全部そのまま借りますという形にしなければならないかどうかというような金融上の技術的な問題になりますと、なお相当検討を要する点があるのではないかと思いますが、この買入自体につきましては、従つて石炭業者に対する関係としましては飽くまで当初の予定のように実現するように努力いたしますし、又そのように我々としては確信をしておる次第でございます。  それから三番目は合理化促進法の内容に不用坑口の整理という問題が取上げられておるようだが、それに対する政府部内意見がまとまつておるかどうかというふうの御質問を伺いましたが、合理化促進法につきましては、これは通産省内部でまだ検討をしておる段階でございます。それにどの程度のものを織込むかということも最終的にはきまつておりませんが、我々といたしましては不用坑口と申しますか、要するに採算に合わない、又如何に努力しても今後合理化した後の石炭価格ベースを基礎にして考えれば、如何に努力しても企業として成立しないというふうなところは、まあいずれにしても整理を人為的にやらなくても整理される運命にあるわけでありますが、それを却つて整理を円滑にするような措置を講ずることは必要だというふうに考えておるわけであります。その方法として、そういつた炭鉱につきまして鉱区を買上げるというふうなことをやつたらどうかということで現在研究しておるわけでありますが、ただその資金が全部財政資金に依存するというふうなことは、これはちよつとほかの産業とのバランスから考えましても期待はできないことでございまして、従来までこういつた個々の企業の整理についてその整理の資金を全額政府がと申しますか、国が負相したというような例はございません。当然或る部分は業界自体が負担すべきものであろうと我々は思つております。ただ、こうやりまして整理をいたしますことが同時に石炭鉱業の合理化にもなり、炭価の引下げの効果も上り、それが自立経済の達成の重要な基盤をなすという意味で、政府としても当然或る程度の助成は考えてもらつてもいいんじやないかというふうに我々としては考えておるわけであります。で、その点につきましてはどの程度まで政府が援助するか、又どういう形でするかという問題はまだ最終的にきまつておりませんので、まだ大蔵省にも公式にその費用を要求するという段階には至つておりませんような状態でございます。  それから石炭鉱業の合理化のために必要な資金を確保できるかどうかという御質問であります。これはお話の通りに、本年度につきましては、財政資金について言えば、引揚げられる資金の半分ぐらいしか新しい融資が得られないという状況でございまして、こういう状況では到底石炭の合理化を強力に推進するということが困難な状況でございます。そういう見地から、我々といたしましても合理化を国策として強力に推進する以上、その資金については十分一つ面倒を見てもらいたいという考え方でございまして、我々の希望としては、大体平均して一年間に八十億くらいのものを出してもらいたいというふうに考えております。まあ来年度の投融資計画がどういうふうになりますか、まだ全然内容が固まつておりませんので、その一部であります我々の石炭関係につきましても全然権討ができておらないようでございますが、通産省といたしましては、石炭の合理化というものはほかの産業の合理化、或いは電源開発というふうな他の緊急な用途と比べましても最優先の計画一つとして推進するということは、通産省の幹部としても意見が決定しております。従来に比べて相当資金を確保できるものと我々は確信しておる次第であります。  それから生産制限の問題につきまして、この生産制限が確実に実行できるように政府はどんなことをするつもりかというお話のように伺いました。先ほど申しましたように、生産制限につきましては、生産制限と申しますか、生産抑制につきましては、非常に長い開議論をしまして、何遍も従来企てて、現実にできる点につきましては従来でも或る程度生産の抑制をやつて来ておつたわけでございます。併し、まあ中小炭鉱側の十分な協調が得られませんで十分な効果が上らなかつたという状態でございます。それがこれだけ長い時間をかけまして最終的に今回は中小炭鉱側も十分納得をしてやることになりましたので、これは政府が特別な措置を講じなくても、先ず大体において守られることと我々は確信をしておる次第でございます。なお、これは生産制限をやりまして初めて貯炭の減少も得られる、各会社はそれぞれ自分の販売分野を持つておるわけであります。生産を抑制しただけそれだけ自分のところの貯炭が整理ができる、こういう関係になるわけであります。で、貯炭の整理について十分な見通しがつかない限り、これはまあ金融機関として金を貸す場合にはいつどんな形でその金が返つて来るかということが第一の条件、それの確定しておることが一番根本的な条件でございますから、金融を得るためにはどうしても生産の抑制というものを図らざるを得ないようなことになるわけでありますので、そういう面を考えましても十分生産制限は守られるものと我々は確信をしておる次第でございます。
  19. 田畑金光

    ○田畑金光君 局長の御答弁を承わりましたが、今のお話の全般を承わりまして感ずることは、当面の石炭産業の危機を乗り切る具体的な対策といものは殆んど見受けることができないということであります。ただ、今問題となつておる貯炭融資十三億が年末までに間に合うかどうか、仮に問に合えば、この程度がせいぜい本年度政府のとられた具体的な政策であるとしか見受けられません。この点は別に局長以下の能力とか誠意の問題じやなくして、もう少し高い深い国の政策に基因することもこれは見落すわけではありません。ただ併しお話を承わりますと、臨時石炭合理化の促進法案についても、或いは又石炭企業の合理化に対する具体的な対策についても、単に今作業をやつておるという程度お話であつて、これでは一般の石炭産業の労使関係に、或いは業界に対して淡い希望を持たしておるけれども、いつもそれは夢に終らしておる、こういう結果になろうと思います。そこで私これは根本的な問題ですが、このように石炭産業が非常に危機にぶつかつて来ると、とても今のようなやり方では解決できん。生産の面でも、需給のバランス維持の問題でも、或いは融資の問題でも、結局解決するのはこの石炭産業というものを社会化することがどうしても必要ではなかろうかと、こう考えるわけです。今のような自由経済では基礎産業としての石炭産業はとても生存できない、こういうような感じを持つわけであります。これはどうしても社会化或いは石炭の国家管理、こういうようなことが日本のような特殊条件の下においては必要ではないかと、こういうように私は受けるのでありますが、この点について実際担当して仕事をやつておられる石炭局長といたしましてどういうふうにお考えになつておられるか、その点だけを承わつておきたいと思います。
  20. 斎藤正年

    説明員斎藤正年君) 私が最前お答えいたしましたように、石炭産業につきましては、或る程度需給見通し需給の調整と申しますか、適合ということを頭に置いて政策もやり、経営者も経営をやつて行かなければならん性質のものだというふうに我々も考えておりますが、ただ、今お話の社会化或いは国家管理というふうな問題につきましては、私のお答えするような性質の問題ではないように考えますので、ここでお答えすることを控えさして頂きたいと思います。
  21. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 実はそういう重要な問題へ入つて行くので大臣出席を求めておつたのです。今日も実は十時から始めまして、一時まで三時間くらいの予定をしておつたわけですが、全然それができない、誠に残念だと私は思います。従つて今日石炭問題の調査はこれで一応打切りますが、先ほど冒頭に私が局長に申しましたことは、局長に申上げる言葉としては非常に御迷惑であつたと私は思います。別に局長さん御存じないのにそういうことを申上げましたのは御迷惑だつたと思いますが、併し我々はやはり通産省ということを考えておるわけです。従つて一つ次官なり大臣等によくお伝え頂きまして、その経過一つこちらへ即刻責任ある人から御報告を願うと共に、本日の委員会でも十分に当委員会がかねて考えておりましたことを質すことができなかつたと私は思います。従つて、この問題は日本産業の一番根底をなす重要な問題でありますから、更に調査を続行すると思いますが、通産省としてはもう少しまじめに熱意を持つて委員会において答えられるように、一つ要請をしておきたいと思います。  二時まで休憩をいたします。    午後一時十四分休憩    ——————————    午後二時三十三分開会
  22. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 委員会を再開いたします。  ちよつと速記をとめて。    午後二時三十四分速記中止    ——————————    午後二時五十二分速記開始
  23. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。  事件は、労働政策に関する件でございまして、特にこの際は、過日措置せられました小坂労働大臣談話及び労働次官通牒を以て明らかにせられた。ピケ・ラインの正当性の限界につきまして、労働大臣及び斎藤警察庁長官に対して質疑を行いたいと存じます。順次御発言を願います。
  24. 藤田進

    藤田進君 私はこの際、只今議題になつておりまする労働関係における不法な実力の行使の防止についてと題する労働事務次官の依命通牒並びに十月二十六日の労働大臣談話に関連して質疑を行いたいと思います。  先ず最初に労働大臣にお伺いいたしたいのでありますが、この示すところを精査いたしますと、いろいろな意味を持つているように思うのであります。そこで具体的に只今からお答えを求めるわけでありまするから、簡潔にお答えを頂きたいのでございます。  この依命通牒はもとより労働大臣の命によつて出されていると思うのでありますが、二十九年十一月六日労働事務次官が発しました知事宛、これはどの範囲に配付送達されているかという点であります。即ち都府県知事のほかに、政府とせられて或いは治安当局その他種々なる方面に配付せられているやに思うのでありますが、この点お伺いいたします。
  25. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 御質問の点にお答え申上げますが、この次官通牒は「知事殿」としてございますように、都道府県知事宛に出しております。なお参考資料といたしましては関係方面にそれぞれ配付をいたしております。
  26. 藤田進

    藤田進君 関係方面と申されるのはどこどこであるかお伺いいたしたいと思います。
  27. 中西実

    説明員(中西実君) こういつた通牒の写しは、欲しいと言われる方面には用意のあります限りは出す慣例になつております。従つて労働委員会方面にも出ておりますし、それから更には法務省、警察庁その他労使関係でも入用だという方面にはお渡しいたしております。
  28. 藤田進

    藤田進君 これは揚げ足を取るようでありますが、私の了解いたします限りでは、ここに例示せられました労働委員会並びに治安関係当局という方面にはすでに従来の行政府慣行としても、欲しいという前に、例えばスト規制法のこれが行政解釈としての次官通牒、遡れば労調法或いは基準法等々、すべて治安に関係するものは治安当局宛配付せられるのが慣例になつていると思うのでありますが、今回は欲しいというところに限つて出されたのか、或いは従来の庁内の慣行通り先んじて配付せられたのか、確かめておきたいと思います。
  29. 中西実

    説明員(中西実君) 通達が、正式のものが事前に宛名以外のところに出されるということは、これは官庁の慣習としてございません。内容につきまして関係方面と連絡をして意見を聞くということはこれはやりますけれども、その意味におきましてこの通達を作ります前に関係ある法務省その他と連絡したことはございますが、通達として出しますときに事前に出したということはございません。これは正式には知事宛にだけしか出しておりません。
  30. 藤田進

    藤田進君 私が質しておりますのは事前に治安当局その他に出したと、そういつたことを質しているのではなく、知事宛にお出しになると同時に、或いは若干遅れてでも欲する、つまり要求があつてというのではなくて、従来の慣行通り知事宛、その面後、只今例示された方面には発送されたと、これは重要な意味を持ちますので、私は重ねてお伺いいたしたいのであります。
  31. 中西実

    説明員(中西実君) 正式にこの通達をこういうふうに出したからという連絡はいたしませんでした。事前に連絡しました際にできたら正文の写しをくれるようと言われた先に先ほど申しましたように配付いたしました。
  32. 藤田進

    藤田進君 斎藤長官に関連してお伺いしたいのでありますが、この次官通達は従来とは異つて、長官のほうから要求せられて初めて入取せられたのか、今ほど御答弁あるように。それともそう言う前に送られて来たのか、お伺いいたしたいと思います。
  33. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 只今労政局長がお答えいたしておりまするように、この通牒をお作りになる際に我々のほうの意見もいろいろ求められ、その際にできたら、できたらというのは通牒ができたらこちらにも写しをもらいたいということを言つてつたものだと思います。従つてこういうものを出しましたといつて連絡を受けた、かように私は承知をいたしております。
  34. 藤田進

    藤田進君 それはこの内容を仕上げる過程において、口答でできたらということであつたのか、後日文書を以て労働省宛に要求せられたのか、その間明らかにして頂きたいと思います。
  35. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) この通牒を作られるについていろいろ相談をしております過程において、できたら頂きたいということを話しておつたのであります。で通牒が出されたということを新聞で見ましたから、出されたそうだが早くよこしてもらいたいということを口頭で連絡をいたしたのであります。
  36. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと労働省にお伺いいたしますが、警察当局におかれては意見を聴取、よりより協議なすつたその過程と、それから更に重ねて新聞等で見たところ出たということであるから要求したと、こういうことなんですが、従来私は直接労働省について、或いは検察庁その他治要当局について当つて来た限りにおきましては、それぞれ関係官省に対しては行政解釈を連絡する、又頂いているということであるにかかわらず、今回は特に要求した先だけ出した、それは形式は文書なり口頭がございましよう。というふうに異例な措置をとられたゆえんはどういうことなのか。例えば曾つて労調法或いは労組法、これらの行政解釈或いはスト規制法の行政解釈等については、私は斎藤長官について直接確かめた際、関係方面には役所の慣例として出しているのだということであつたわけですが、今回に限りそれぞれ要求に基いてという措置をせられた事情をお尋ねしたいと思います。
  37. 中西実

    説明員(中西実君) 労働法規の解釈はこれは労働省の任務でございます。そこで従来からも特に労働関係の法律の解釈につきましては、特に中労委とは非常にまあ関係もあり、場合によつてはその基準、いろいろの解釈の基準によつて実務は却つて労働委員会でなされるというものにつきしましては事前に労働参員会、殊に中央では中労委と相談いたしまして連絡の上作るということをいたしております。併しながら一般におきましては、大体において労働省においてこの労働省独自の見解を以て足るわけでございます。従つて勿論法制局とか法務省関係の向きに意見は聞きますけれども、この労働関係の法律の解釈につきましては、これは労働省が当然独自の立場で解釈していいのじやないか、そこで今までもそういふうに法令上他の官庁と関連のあるのは別でございますけれども、そうでないものにつきましては労働省が独自で出しておる、これが慣例でございます。
  38. 藤田進

    藤田進君 そういう慣例のあるに加えてこの通牒は関係各省に写しを添えてかかる依命通牒を出したということの処理をされているのです。されていなければこれは又事情が違いますが、今回に限りこの次官通牒に限り要求があるところに出し、そうでないところには出さなかつた。通牒にはつきり依命通牒と書いてある。最後に「命により通牒する。」と、そういう特殊な扱いをなされた事情が聞きたいのですが、慣行の講じやないのです。
  39. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 事務処理の点でございますので、私から御説明申上げますが、労政局の通牒につきましては例えば具体的に例を申上げますと、公益事業の範囲に関する通牒ならば中労委にあらかじめ御相談申上げた上で、中労委にかかる通牒を出したからというこういう通知をいたしております。港湾労働については港湾局長の御参考までに出します場合があります。併しそれ以外につきましては、私のほうといたしましては特に関係省に必ず配るというような慣行はございません。恐らく例えば基準法の解釈でございますれば、これはもう必ず検察の問題とからんで来ますから法務省に必ず送るというふうな慣例はあつたかと、私よく存じませんが、そういうことは想像できるかと思いますが、労政につきましては関係省に必ず写しを言われない先から送るというような慣行は、ございません。
  40. 藤田進

    藤田進君 それは非常に意外なことを聞くわけで、次官通牒を公式な文書として出されている。而もこういう影響があるというものが、要求されなければ出さないということについては、それ自体に私は何らか間違いがあるように思うわけです。例えば労働委員会についても、法務省についても、果して要求せられたからお出しになつておるのか、こういうものを出したからという事務処理をせられているかについては、私は後者のほうだと思つております。斎藤長官は要求したとおつしやつているので、これは改めてお伺いしたい点がございますけれども、私は今回特に従来の慣行がないと言われるけれども、いやしくも事務次官依命通牒について関係各省にお出しになつていることはこれはもう否定のできない事実だと思うのであります。併しこれは否定されるということになれば私は機会を改めてお伺いしたいと思います。  そこで斎藤長官に関連してお伺いいたしますが、斎藤長官とされてはこれをどういう意味で要求せられたのか、労働省がこういうものを出したと言つてつて来たのではなく、まあ是非欲しいということでこれを公式にお求めになるその理由は、警察行政の参考としてこれをお求めになつたのか、何かそこらの事情をお聞かせ頂きたいのであります。
  41. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 我々のほうといたしましては、労働争議に伴う不法行為の取締という問題がございまするので、かねがね法的な解釈については大分打合せておつたわけであります。従いましてこのたびの労働次官の通牒は果して新聞に出ている通りかどうか、又今まで我々と打合せておつた範囲内であるか違うかということは、我我の警察行政の見地からも十分知つておく必要がある、かような意味から通牒を早くもらいたいという連絡をいたした次第であります。
  42. 藤田進

    藤田進君 今後警察行政に当つて只今取寄せられ、且つこの作案過程において参画された当局としてこの次官通牒が警察行政の基準になるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  43. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) この通牒のうちで警察の取締に触れるという部分におきましては、警察の従来の解釈とも変更はございませんし、従いまして警察取締の対象になつて来るという面におきましては労働省と見解を同じうしておるということを確認いたした次第であります。
  44. 藤田進

    藤田進君 よくわかりましたが、そこで労働大臣にお伺いいたしますが、この通牒はさように更に警察行政の基準になるということについては只今御答弁になつた通りであります。この内容を見ますると一々問題になる点があるので、これについては一応後刻お伺いいたすといたしまして、私はこの通牒を出されたその動機と事情について触れてみたいと思うのであります。  先ずこの動機を私どもが見ますると、いろいろ参考人等を呼んで調査いたしますると、それぞれの御議論がございました中でも、現下労働紛争議に関して使用者側に加担する立場において出されているという意見もかなりあつたのであります。そこで端なくも警察行政の基準になるということも明確になつておりまするが、この際そういうものを出すについては法務当局、警察当局等の意見を聞きながら仕上げられたことも伺つたのでありますが、中央労働委員会については只今中西労政局長からも言及されましたように、従来独立してその所掌事務を行なつておりまする労働委員会、なかんずく中央労働委員会意見を聞いた上で行政解釈は下すということになつていたのでありまして、歴史的にこれを見ましても末弘博士の会長当時はおおむねこの中労委との緊密な連絡の上に行政解釈が出されていたことは事実であります。その後中山博士が会長になつて若干中労委との連絡が保たれないままに行政解釈が下された事実があつて、これが中労委の問題となつて、自後は中労委と緊密な連繋の上で行政解釈は出してもらいたい、承知いたしましたということで意見が一致いたしておりました。これについては当時中西中労委事務局長であつたかのように、私は、これは記録がございますから示してもよろしうございますが、おぼろげに中西中労委事務局長のときにそういう問題が起り、両者間の意見の一致を見ていたと思うのであります。従つて今回この行政解釈が出されるに当つては、中労委方面の意見も適切な方法でお聞きになつたかとも思うわけですが、併し一方において中労委側の意見を徴しますと、何ら無関係に出ているというふうに言われております。果して中労委とは連繋なしにお出しになつたとすれば、これ又従来のおやりになつておりまする慣行或いは中労委との約束に離れているし、芳しそうでなくて実際に連繋を保つて、その意見の一致の上でお出しになつたとすれば、その経緯をお尋ねいたしたいのであります。労働大臣に御答弁願いたいと思います。
  45. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) お名前も出ておりましたから、中西労政局長から……、その間の事実経緯でございますから。
  46. 中西実

    説明員(中西実君) 曾つていろいろの法解釈を労働委員会連絡してということは確かにございました。それは例えば先ほど法規課長もちつと言いました労調法の八条の公益事業の指定、これは現行法では例挙以外のものにつきまして、一年の期間を限つて公益事業に指定することができる。それは内閣総理大臣ができることになつておりますが、前の規定におきましてはこれが中労委だつたわけでございまして、そこでそういつた関係もありまして、この公益事業の解釈等につきましては特に中央労働委員会そのものの意見を聞くというような必要が法理的にもあつたわけでございます。併しながらこの法解釈全体につきまして常に労働委員会意見を聞くということはなくて、特に関係の深いところ、殊に不当労働行為の関係等につきましての解釈例規等につきましては事務局、まあ大体会長の耳に入れるという程度連絡ということで従来からも来ております。今度のこの通牒につきまして、勿論この通牒は知事宛であり、それは具体的には知事の下にある労働主管部、労政課、更にはその下の労政事務所というところが直接の対象にして出されておりますけれども、併し関係労働委員会に非常に深いというので、実はできれば労働委員会自体の御意見も聞いてもよいとは思つてつたのであります。併しながら従来の慣例から労働委員会そのものに御連絡するという必要は、これは法規上にあればともかく、そうでなければ特に必要ではないという関係もありまして、更にこの内容から考えまして、労働委員会はこれは申すまでもなく三者構成であります。従つてこういつた通牒につきましてはこの三者構成の委員会では恐らく委員会としての結論というものはこれは求めにくい。これは長らく中労委委員をやられた藤田さん一番よく御存じだと思うのであります。そこでそれでも一応こういつた通牒を出すにつきましては何らかの意味で連絡はしたい、こう思いまして、実は公益委員会議が開かれておりました際に、その席をお借りしまして、公益委員のかたがたに事前にお示しをいたしました。若し御意見があればお聞きしたいがということで御連絡をしたわけでございます。で三者構成の委員会の性格から考えて、而も現下の労使間その他の状況から考えまして、連絡するとしますればそういう方法しかとり得なかつた。まあ大体我々としましても労働委員会にはできるだけのものは御了解を得たいと思いましたが、事の性格上そういつた連絡方法で満足をせざるを得なかつたという経緯でございます。
  47. 藤田進

    藤田進君 いや、前後どうもあいまいなので、公益事業指定に関する条項であるならば、これは労働委員会との関係が深いから、法律上明定されてもいるしということが言われておるように思う。それ以外は事務局長あたりにささやく程度だ、そうすると事務局長意見を聞くというようなふうにもとれるわけで、併し今回これは公益委員会議というのがあります。これが中労委規則によつてその運用が定められております通り、公式な今日では判定機能を持つておるむしろ会議だと思います。ここに事情を勘案せられてこの際は連絡をした、こうおつしやつているので、そこのところどれかに確定して頂きたいと思うのですが、本件に関する限りどれを採用されたのか、一つここからお伺いして私は質問を続けたいと思います。
  48. 中西実

    説明員(中西実君) 従来中労委に、特に委員会というものに対して御意見を聞いたというのは労調法第八条の関係、つまり公益事業の関係、それからこれはたしか削除になりましたが、前の三十七条でしたか、つまり公務員の現業、非現業の区分の関係、それとこの改正後の、これは藤田さんおられるときだつたかと思いますが、公益事業につきましては争議をする場合に十日前に予告をする、その予告の先は労働委員会労働大臣、又は都道府県知事となつております。これは労働委員会に明らかに関係がございます。この点についての手続についてははつきりと労働委員会との連絡の上で通牒が出されました。それ以外の点につきましては先ほど言いましたように、できるだけ関係の深いところは事務的に連絡するという程度で今までも済まして来たわけであります。今回もこれは結局は不当労働行為、労働組合の正当性を欠いた不当な実力の行使の防止に関する解釈でございます。勿論労働委員会の執務上関係ありとは考えますけれども、特に委員会としての御意見を伺う必要はないんじやないかというので、できるだけ委員会の御意見を伺いたい、併しながら伺うについては先ほど申しましたように、この通牒の内容から考えて、又労働委員会の性格から考えて、先ず公益委員たちのかたがたに御連絡する、それから事務当局連絡する、この程度でいいんじやなかろうかということで、従つて究極には労働省労働大臣独自の見解で出すという態度をとつております。
  49. 藤田進

    藤田進君 お尋ねしておりますのは、法律上労働委員会に適法に連絡し、その意見を求めなければならんというのは一体何々かということを聞いているんじやないんです。それは法にありますからお尋ねするまでもなくて、もつと絞つて、本件どのようなお扱いになつたかということに関して非常に前後あいまいでありますから……、そこでお説によると三者構成で実態がこうだから公益委員だけとおつしやれば、これは労働委員会の三者構成を否定した考え方なんです。労働委員会ということが実定法にあつても、その労働委員会とは三者構成なんですね、実態は。だから三者構成をみんな否定してしまつた考え方で、私はそれにはこの際時間がございませんから触れません、ちよつと触れただけで、追及しようとは思いませんが、先ず労働委員会を是認しております現行法によるとやはり三者構成なんです。併しまあそれはともかくとしてこの正当性の限界と言えば、言い換えればこれについては過去もう労組法第一条第二項の阻却の問題に関連してつとに正当なる限界ということについては論議され、そうして労働委員会との緊密な連絡においてやらなければならんということが議論済みなんです。そうして労働省労働委員会は一致点に達して、今後一つ協議し合つて労働省は行政解釈を出しましようということになつていたので、聞きますとその線に従つて公益委員会議の席上にこれを持込んでその意見を徴したと、こうおつしやつたわけですが、それに間違いございませんか。
  50. 中西実

    説明員(中西実君) 手続はそういうことでございます。労働委員会を否定するわけじやないので、あの存在意義というものは極めて赫々たる今までの業績から見てもはつきりしております。ただ事の性質上、こういつた当然労働省でなさるべき法の解釈を下すというのにつきまして、あの委員会という全体の御意見を聞くということは、これは結論を得るということはむずかしい、不適当じやなかろうかと考えたわけであります。それからなお公益委員会議に連絡したのじやなくて、公益委員会議を開いておられる席上を借りてこの案を公益委員のかたがたに示した。(「どういうことだ」と呼ぶ者あり、笑声)これはなぜかと言えば、公益委員会議にはそのようなものに対して意見を述べるような権限はございません。それでは中山会長も御迷惑のことで、従つてその席上はつきりと中山さんも、これは公益委員会議で承わつたのじやなく、まあたまたまこの席で我々は連絡を受けた、こういうことでございます。(「誰から」と呼ぶ者あり)先ほど言われますように、できるだけ労働委員会の執務と関連のある事項の解釈につきましては連絡して出すのが適当とは思います。併しながら本来はこれは労働省独自で相談せずに出してもいいものなんでございます。従つてどの程度連絡するか、これは結局はあとあと事務を円滑にやるのにどうすればいいかというそのあとあとの運営を考慮しての問題なんで、従つてこの通牒につきましては、先ほど申しましたぐらいの連絡で止むを得なかつたし、又それでいいんじやなかろうかというふうに考えるわけであります。
  51. 藤田進

    藤田進君 そうしますと、どうも私自身が聞いていて、労働委員会の公益委員会議には権限がないから、個々には権限があるので個々に聞いたというふうにも取れるわけですね。併し御承知のように労働委員会は三者構成自体でも、過去においては建議、要望という形で建議権すら与えられ、今日その権利がなくなつたというふうには考えられていない。よつて全国の労委会議も今年の十月、この間でしたね、開かれて、諸般の労働大臣に対する要求があり、この席上には労働大臣もお見えになつたと思うのですね。そういう実態の中で私ども考えてみて、公益委員会議がたまたま開かれていて、その会議が散会した面後に個々の意見を聞いたのか、そこらはどうか知りませんが、何だかどうもあいまいで、(「あいまい模糊だよ」と呼ぶ者あり)私が聞かんとするのは、労働委員会のほうでは非常に不満があるように聞いております、この解釈なり手続について。委員会意見は聞いていない。委員会意見をお聞きになれば、中山会長がみずから意見をお出しになつて委員会の事後承認を求められる方法もあるでしよう。或いは公益委員会議で一つ意見を皆さんどうだとおつしやる場合もあるでしよう。あげてこれは労働委員会の内部処理の問題だと思うのです。労働委員会に御連絡なつたとすれば、会長が今度それを御処理になるでしよう、ルールに従つて。でありますからそれに先んじて労働省側で、いわば私が聞かんとしておるのは、労働委員会意見を聞いたのか聞かないのかということについては、労働委員会意見を聞かなかつたということになりますか、なりませんかというのです。
  52. 中西実

    説明員(中西実君) 労働委員会という機関の意見を聞いたことにはなつておりません。(「何の意見を聞いた」と呼ぶ者あり)従つてこの構成員には連絡を事前にしたという程度でございます。本来、先ほども言いましたように、別に全然意見を聞かずに出していい性質のものだと存じております。併しながらあとあとの運営を更に円滑にするために一応構成員の人たちには連給したという関係でございます。
  53. 藤田進

    藤田進君 時間がなくて非常に残念ですが、私は依然としてわかりませんね、事情は。だとするならば、これは独立した権限で労使間の安定を図る委員会ですね。而も関係の深い不当労働行為、或いは正当性の限界というような労働紛争議を処理する場合に非常に役割の重要な労働委員会意見は聞かないで、それは労働委員会と銘打つておりますが、それは方法はいろいろありましよう。会長みずからの意見としての方法もありましよう。これは内部処理の問題だと思います。それは聞かないで、警察や法務省ですか、斎藤さんのお話を聞くと、このほうと一緒に作るというその趣旨が私にはなお更わからないのでありまして若しそういう会議の上にこれが組み立てられたとするならば、労働委員会意見は、それがたまたま会長であるか、代表として事務局長を派遣したかどうか、会長はそのときに恐らく処理されたでしよう。決定する権能を持つておるわけですから。最終の採決までできるように委員会はなつておるのでございますから処理はできる。その労働委員会はノー・タッチ。労働省独自の立場とおつしやつておる一方、警察関係の参加を求めてここにできたということは、世上やかましく言われている、この通牒が取締の対象基準を作つて労働者の出処進退についてあげて警察権力でこれに対抗して行こうという、いわば警察行政の分野であるこの通牒の動機なり内容なりですね、こういうそしりを受けている。その動機そのものなり方法手段が警察と一緒になつてこれを作り、労使関係解決について主任務である、その主役を演じている労働委員会がノー・タッチということの説明はどういうわけなのか。ここらあたりは一般労働行政の問題でございまするから、労働大臣の明確なお答えを頂きたいのでございます。
  54. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) この通牒をよく読んで頂きますと御理解頂けると思うのでありまするが、これは要するに労働関係におきまするところの違法な実力の行使の防止についてでありまして、行政解釈、法解釈としてかくかくいう問題は不当である、正当でないということの基準を明らかにしたのであります。従いましてそれをどう扱うかという労働委員会の問題は勿論ございましようけれども、事柄の性格上私は法解釈として行政官庁として労働省が下す権限と任務を持つておるものと心得ております。而も同一の内閣でございます。法の解釈によつて取締をされる部面においてもそうした解釈によつてもう少しその範囲を拡げましようとか、或いはそれじや広過ぎるとかいう御意見も或いはないではないかと思いまするので、この間の連絡をとるということはこれ又当然のことと心得ております。
  55. 藤田進

    藤田進君 取締に関して幅を狭めよう、広めようという取引もあるのでというふうに言い換えれば聞えるわけですが、なぜ、労働委員会のほうの意見は片手落ですね、伺わなかつたか。而も従来行政解釈、この種問題に関する行政解釈については労働委員会と緊密な連繋の上で通牒を出すということが特に論議されて、中労委、労働省の間に一致点に達しているわけですね。それが労働委員会連絡協議というものがなされなかつた。警察関係、治安当局だけの意見だという点が今の説明との関連で私にはわからないのであります。大臣はどういう意味で労働委員会との連繋はこの際保たなかつたのか、この点でございます。
  56. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 政府といたしましていわゆる直接の官庁としての考え方に相互に齟齬があつてはならないのであります。従いましてそうした関係部局が集りまして会議するのはこれは当然と心得ております。先ほど申上げた通りであります。なお労働委員会は御承知のように三者構成でございまして、この意見を主体として問題を議するということには、この事柄の性格上、現実において労働組合側の代表者の方はこれに対して相当意見はあろうと思う。又今御折柄の通り全労委会議でもそういう御意見は聞いたのであります。併しそれに対しまして私どもはそれは事前に聞いて、そうして行政解釈の基本にするということまでは十分御意見を承わりますが、それほどまでにはせんでよろしいかと思うのであります。このことにつきましては労政局長からお話しいたしましたように、いわゆる労働委員会のうちの公益側の立場に立つ方々に対してはこのことを連絡いたしまして、而して発表した、こういう段階でございます。労使それぞれそのうしろに背景を持つている。中立な行政官庁の解釈というものは、これは別個にやつてよろしいと思つております。
  57. 藤田進

    藤田進君 そうなりますと、直接の関係である、つまり取締の直接の関係である法務、警察の意見は入れたとおつしやるが、労働行政に関してはむしろ中労委こそ労働大臣の所管であります。これほど直接的なものはない。而も労働大臣の労働行政に代つて或る意味では労使間の紛争を解決せしめ、労使の安定というものをもたらしつつある重大な役割を持つておる。これに対して直接の関係である。これに対して過去の慣例を又申合せを破つて、こういう解釈を下したという点については、私は了解できないと同時に、より御答弁を頂きたいのは、この公益委員意見は徴したということでなく、連絡はしたという点ですね。これを一つ具体的にどういうことであつたのか。それによつて私どもは労働委員会を代表する意見は徴されているかいないかということを考えたいと思います。公益委員の皆さんの意見を別途に我々が伺つてみますると、どうもそういう意見を徴されたという形跡が見当りません。それどころか公式に、御承知のように中山会長初め、意見がこれとは別途に出されておる状態であります。こういう点で労働委員会意見は徴さなかつたと解さざるを得ませんが、連絡をしたという内容について伺つた上で判断いたしたいと思います。
  58. 中西実

    説明員(中西実君) 先ほども申しましたように、公益委員会議に連絡をしたということでもなし、又労働委員に特に御意見を附くという程度にも至つていないのであります。これはあとあとの公益委員の方々のいろいろ意見発表ででもわかるように、公益委員の方々としても、これを正式に意見を聞かれることは非常に御迷惑じやなかろうか。この通牒は労働関係法、殊に労働組合法の中にある正当という言葉の限界を規定したものである、而もそれは大体従来からの判例等を一応集約したものだということでございます。労働委員会としましては個々の事案についてそれを判定する。あらかじめこういつた基準について、これはこうだというようなことを委員会の御意見としてきめるということは、これは非常に不可能じやなかろうか。公益委員会議でもこれは却つて御迷惑じやなかろうか。公益委員個々人にとつても御迷惑じやなかろうか、こういう趣旨から、実は当然の我々としましては内容のことであり、而も大体裁判所の判例によつても、はや成る程度解釈がきまつて来ておる、それをここにずつとまとめた、こういう考えでございますので、従つて我々として特に新規な限界をきめたというようなふうには考えておりません。只今述べましたような連絡にとどまつたというふうに御理解頂きたいと思います。
  59. 藤田進

    藤田進君 いろいろ広汎なお答えを頂いたのですが、連絡をしたということと、意見を徴したということとは非常に違うと思うのですね、そこのところがどういうことなのか。事実問題についてどういうふうにやつたか、ざつくばらんにお尋ねして、この性格を、皆さんがおつしやるように、労働大臣がおつしやるように、教育的な機能のために非常に美しい動機なり心情でこれをお出しになつたかどうかについて、今まででは、お尋ねするほど、これが斡旋、調停という役割を演じている労働委員会というものよりも、法務、警察という取締当局が一緒になつて参画して、これができ上つたということから徴しますと、まあ教育機能よりも、いわゆる取締りのために一つの基準を作つた。あたかも四囲の状況から考えて、容易にそのことが今の御発言からわかるわけです。公益委員の諸氏の意見をこれを徴したのか、単なる連絡ということなのかということについては、私非常な疑問を持ちますので、端的に連絡という意味合いがどういう実態を備えていたのか、ここだけでいいんです。
  60. 中西実

    説明員(中西実君) 先ほど言いましたように、この通牒の内容が殊更新たなものを内容としておるものじやございません。従つて、本来ならば、労働省独自で出しても差支えないものである。ただ併しながら、やはり一応従来の判例等から見てまとめたという意味において労働委員会にも関係はある。そこであとあとの事務の円満を期する上におきましても、一応事前にこういうものを出しますよということは、これはやはり同じ労働省の傘下にあります官庁同士でございますので、礼儀上もそうかと思います。従つてそういつた意味におきまして、一応事前にまあ会長、公益委員のかた、事務の者というものに、これを出しますよという連絡をした、それ以外には全然他意はございません。
  61. 藤田進

    藤田進君 これを出しますよということであつて、御意見如何ですかということではなかつたのですか。
  62. 中西実

    説明員(中西実君) 勿論出すについては相当まだ日にちがあるので、御意見があれば一つお述べ頂きたいと、これはもう我々としては積極的に希望したわけでございますけれども、御意見はございませんでした。
  63. 藤田進

    藤田進君 これは通常の場合、殊にこういう事例のもので労働委員会に諮問せられたと解することが適切なのか、出すよという前触れということになるのか、その点は私非常にあいまいですからわかりません。諮問せられた形式であるならば、曾つて労働委員会がそのまま握り潰した事例はないと思いまし、さような労働委員会では今日ないと思います。殊に中山会長以下実に几帳面なかたであることは私存じておりますから、諮問せられたが何も回答もしないで握り潰すということはないので、むしろ今の言葉の端から窺いますと、どうも納得が行かないのですが、具体的にどなたがいつどういうふうに……(笑声)何か一つ、それを聞かしてもらつたらわかるのですがね。
  64. 相馬助治

    相馬助治君 これは議事進行でちよつと発言したいのですが、質問がまずいのか答弁がまずいのか知りませんが、全然同じことを今議論されておる。中西局長の答弁を聞くと、公益委員の諸君はこういう諮問を受けては迷惑であろうと思うと、こういうことを言つているかと思うと、次には意見あれば聞きたいというので言つたんだと、こういうことを言つておる。まあどちらがまずいのかわからないのですけれども、私のはつきりわかるところでは、どうも局長の答弁は何かあいまいだと思うのです。一つ我々も質問があるのだから、これなん時までやるのか知らんけれども(笑声)委員長においてああいうあいまいな答弁に対しては適当に処置されて、明確に返答されるように取計らつて下さい。
  65. 中西実

    説明員(中西実君) 日にちは忘れましたけれども、私が中労委で公益委員会議が開かれておりました際参りまして、その席上でこの案をお示ししたわけでございます。そのときに中山会長、それからまあほかの委員も恐らくおつしやつたと記憶しておりますが、こういうところで聞かれるのは迷惑だという、まあ話があつたので、私が先ほどそう申したのであります。私どものほうの希望といたしましては、できれば御意見を承わりたいと、こういうふうに申したのであります。それをごつちやに聞かれて……。
  66. 相馬助治

    相馬助治君 そう言えばわかる。
  67. 中西実

    説明員(中西実君) そこで、官庁同士の連絡にはいろいろニユアンスがございまして、公文ではつきりと意見を聞くということもございますし、或いは又機関によつては諮問するというようにはつきりと公文でやることもございます。併し、一応口頭で意見を交し合うということもあるし、場合によつては電話で連絡することもございます。いろいるな連絡方法があるわけでございます。従つて、この際は、中労委では極く軽い意味で事前の連絡をして、私は最初はもつと更に労働委員会側で受けて頂けるなら相当突つ込んだ御意見を伺いたかつたのです。併しその席上これは公益委員会議というものに聞かれたといつたのでは困る、更に又公益委員全部に意見を聞くというようなことでも困るので、従つて一応こういうのを聞きおくということにしてもらいたいという却つて向うからの希望だつたもので、それ以上にするのは却つて御迷惑かと思いましたので、若し御意見があれば、まだ日にちがありますのでお聞かせ頂きたい、こういうので帰つて来たわけなんです。で、いよいよ出すという段階になりまして連絡しましたが、御意見はなしに、我々のほうの最終案を出したと、こういうことでございます。
  68. 藤田進

    藤田進君 労働委員会方面の意見は入つていないし、その方法については私ども疑義を持つておりますが、併し或る程度事態が明白になりました。  そこで今後の本件に関連して取締治安当局の態度ですが、従来最高検においても、国警においても、労働事案については、労働省と、具体的には労働大臣なりそれぞれ担当ございましようが、労働省と緊密な連絡の上で治安当局も動いていました。これは私どもそれぞれ直接に、曾つては大橋法務大臣或いは鈴木義男氏等以下代々法務当局はそうでございましたし、最高検についてみても単独に行動はしないで、又地検なり地域的にこの行動はとらないで、すべて治安閣僚懇談会に持ち込み、或いはその他の方法を以て労働行政当局である労働省とは緊密な連繋の上に措置されていたのでありますが、最近そういう方法がとられているのかいないのか、又将来についてもどのようになつておりまするのか、斎藤長官からお伺いをし、又最近の事例については労働大臣から何ら……、東京証券その他いろいろ問題がありましたが、こういうことについて労働大臣は何ら事前に連絡もなし、関知しなかつたのかどうか、過去のこれ又行政府の内部の慣行から見ますると、私ども方針が変つたのではないだろうかという疑点を持ちますので、この点労働案件について単独に国警は国警でおやりになるのかですね、或いは関係労働省とも連繋の上で遺漏なきを期せられているのか、この点を先ず斎藤長官のほうからお伺いしたい。
  69. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 取締に関係をいたしまして、法的解釈の統一を図らなければならないというような場合におきましては、従前からありました通り労働省、最高検、警察がいつも緊密な連絡をとつております。これは従来も今日でも変りはございません。政治的にと申しますか、争議をどういうように収めて行くかというような、その労働政策自身につきましては、私のほうは直接には今までも関係しておりませんし、今後も関係いたすつもりはございません。
  70. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 斎藤長官が答えられた通りでございまして、私ども労働政策上の問題を担当いたしておりますから、争議それ自身に対する取締ということは何ら関知いたしておりません。これは取締当局の御自身の問題であつて判断されるということは従来もそうであるように聞いております。
  71. 藤田進

    藤田進君 従来もということであるならばこれ又証拠を以てお尋ねしなければなりませんが、私ども労働紛争議に関連して警察権の発動という場合には、出先が単独に行うということでなく、且つ所管省である労働省と無関係にこれを取締るというそういう方針ではない。あくまでも連絡をとつた上で、これが措置を決定するということが過去に言われて来ておりますし、そのことは私ども聞いてもおりまするし、でありまするが、先ほど斎藤長官のお話では、緊密な連繋の上で処置をするということが言われたように思うわけですが、その点は如何でしようか。労働大臣のほうでは、おれのほうは無関係だとおつしやつているし、若干食い違うような気がいたします。
  72. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私が余り簡単過ぎたので誤解をお招きしになつたかと思いますが、例えば争議が相当大規模に今度起りそうだ、これは大体こういう形態でこういうやり方になるらしい、そうすると、こういうような違反自案が起る恐れがある。これは何によつて取締るか。これが法律違反になるかならないかというようなことを事前に研究をしておく必要があるのでありまして、さような場合に最高検は当然のこと、労働省の解釈に関係をする場合には労働省のかたにも出て頂いて十分打合せた上で遺漏のないように、労働省側から見られても、これは違法だ、最高検、警察のほうから見ても、これは違法だという場合に、こういうような事態がこういう形態で起れば、これはこれに違反するから取締りをする必要がある。こういう事態で、この場合にはどうも正当な争議とは思えないけれども、併し取締りとしてはタツチすべきでない。こういうようにまあきめるわけです。で、具体的にその争議が起つてつたという場合に、その法的解釈に従つて治安当局は治安当局の見る眼で取締つて行くわけでありましてその際にこの争議をどういうように収めて行くかという労働政策と関連して警察或いは検察が動くということはないということは労働大臣のおつしやる通りであります。
  73. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、事例を一つ挙げますと、室蘭の製鋼の場合、或いは地元の東京証券の場合、こういつたような場合には、事前にぴたりとあのケースの中に該当されていなければいかんと思いますが、ああいう事態の場合には、これは違法であるから当無警察権の発動ということが然るべきであるということが、労働大臣意見として、その了解に立つていると見ていいわけですか。
  74. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 東京証券の場合には、これはかねがね労働省等と打合せておりました通り、ああいうピケは違法であるということは警察当局も十分承知をしておりましたし、今更改めてあれが違法かどうかということを研究する必野はなかつた従つて警察はかねがねの解釈通り独自の判断でやつた。又室蘭製鋼の場合にも同様でありまして特に事前に研究をするとか、或いは取締りに当つて研究をしなければならないようなむずかしい法的な問題は出ておりませんでしたから、三者集まつて取締りの対象になるかならないかという研究をしたことはないと、私は了解いたしております。
  75. 田畑金光

    ○田畑金光君 只今藤田君の質問で明らかになりましたことは、今回の次官通牒を出すに当つて労働省当局は警察、検察庁とは密に連絡をとつて出したのであるけれども、労働委員会等その他の労働機関に対してはせいぜい連絡程度で終つているということが明らかになつたわけであります。そういたしますと、この通牒というものは、帰するところは、警察或いは検察機関の取締りの基準を与えたものと言わなければならんと考えております。我々といたしまして、この通牒は先般来労働省の話を聞いておりますと、健全な労使の慣行を確立するための基準を示したものである、こういうお話でありましたが、今までの経過によりますると、国家権力機関の取締りの基準を示したものに過ぎないということになつて来るわけでありまするが、この点に関しまして労働大臣はそれでよろしいかどうか、御目解を承わります。
  76. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 只今労働大臣に対するお尋ねでございますから、労働大臣からお答えがあると存じますが、この通牒は取締りの基準を示したものではないか、又さように見られるという御意見でございまするが、我々といたしましてはこれは新らしい取締りの基準とは考えておりません。さように解釈をされますことは私どもも極めて迷惑でありまするし、又全国の警察も誤つた感じを持つと、かように考えまするので、私から御指摘はありませんでしたが、特に意見を申上げたいと存じます。  これは労働省が労働教育と申しまするか、そういつた意味において、今までの争議のずつと状態等を眺めて、正しい労働争議のあり方というものを十分徹底さしたいという気持でお始めになつたのであります。そうしてその内容は成るほど取締りに該当しておる点もありまするが、これらは過去の、先ほど申しました検察庁や労働省と打合せて、個々の場合に、これが違法だと、ここまで行けばいけないとか、ここまで行けば正当性を欠くとかいうような、個々の事例をここに集積をされた、それを我々のほうと打合せをされた、と申しまするのは、今まで我々が取締りに当つてつた点と違つた点が出て来たのでは困る、或いは法務省の今までの考え方とは著しく変つておるという点があつてはいけないという意味で連絡をされたのでありまして、私どもの見まするところでは、今までの個々の取締りの場合に考えておりました法的解釈というものから逸脱をしておるという面は一つもないのでありますから、その点は御了解を頂きまして、ここに新らしい基準を示されたというものではないということは御了解を頂きたいと思います。取締りの基準でありまするならば、もう少し何といいますか、取締りにふさわしいような書き方をしなければなりませんので、警察官としましては、これを以ては取締りの警察官の手引にはちよつとなりませんので、かように御了解願います。
  77. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は労働大臣に御質問いたしたわけでありまするが、斎藤警察庁長官御親切に労働大臣の言わんとすることまで御説明つたようで、誠にこれは労働大臣としては恐縮に考えておると思います。(笑声)私たちは少くとも警察庁長官というものは、警察権力というものはときの政党の警察ではないと、こう考えておりまするし、ときの政治権力の手先でもないと、こう考えておるわけであります。飽くまでも中正でなければならん、公平でなければならんと、こう考えております。今斎藤長官の御説明によりますると、取締りの基準ではとてもこういうようなものは役立たん、もう少し取締りの基準であるならば警察官に示す具体的な内容というものが整うであろう、こういうような趣旨を説明なつたわけであります。たまたまこの次官通牒は十一月の六日附を以て先ほどの御説明のように、全国の都道府県知事その他関係個所に送付れております。ところがこの次官通牒の出されたと同じ十一月の六日付で斎藤警察庁長官の名において極東米軍テンプル少将に対して次のような文書が送られております。「駐留軍労働者のストに伴うピケツトに対する警察措置について」、この通牒の内容を見ますると「ピケツトの限界及びピケツトに対する警察措置」、こう書いて第一に「駐留軍々人、軍属及びその家族」に対する場合。第二に「外交官その他の政府職員」に対する場合。第三に「緊急要員」に対する場合。第四に「第三者」に対する場合。第五にストライキ中の組合の組合員以外の労務者」に対する場合。第六は「ストライキ中の組合の組合員」に対する場合。六項目に亙つて通牒が出されております。この通牒の内容は先般の次官通牒の内容を集約したものであります。更に言葉を換えて申しますると、対象が駐留軍の労務者関係になつておりますので、次官通牒よりもむしろより強い性格を帯びておるわけであります。そう見て参りますると、事実においても地続きである、通牒の底を流れる。ピヶに対する考え方等においても全く同一である。こういうことを見たとき、一体次官の通牒というものと国警長官の極東米軍のチンプル少将に宛てた通牒というものと、どこがどう違つておるかということであります。恐らく見方によつては、警察庁長官の極東米軍宛の通牒は次官通牒に基いて書いたとも見られるし、又次官通牒そのものは警察庁の意見を聞いて書かれたと見られるわけであります。こういうことを考えたときに、私は今般のこの次官通牒というものは警察権力に対する取締りの基準を与えるに適ぎない、こう見るわけであり穫するが、どこに教育的な内容があるのか、この点を労働大臣に質問すると共に、同時に先ほどの御親切な警察庁長官の答弁に関連いたしまして、一体この極東米軍宛の通牒は何だ、これを御説明願いたいと思います。
  78. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 労働争議の名において暴力が正当化されることはないので、争議であつても暴力はいかんのでありますが、その暴力がいかんということを、具体的にピケに関連いたしまして、こういうことは暴力に亙るからよろしくない、こういうことを書いてあるのが、この通牒であることは先般来申上げた通りであります。これは飽くまでこの前にも申上げたように、従来の慣例或いは判決例の集積であつて新たに行政解釈として、こういうものを出したという点はないのであります。こういうことを知らないでやられるということがあつては、又知らないでやられた結果が、現存警察の取締りの対象になるということであつては、非常に私どもとしても不本意でありますから、こういうことを周知徹底されるほうが親切である、こういうことで書いたのがこの通牒であります。
  79. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私がテンプル少将に出しました通達につきまして関連いたしまして御説明を申上げますが、これはたまたま労働次官通牒と目を同じくいたしておりますが、実は労働次官通牒が私らもいつ出たか存じません。新聞を見て初めて知つた。私のほうもこれを出しまして労働省にも即刻知らしておらなかつたので、労働省御存じがなかつたというわけであります。ただ内容は非常に一致しておるじやないかとおつしやいますが、それは先ほどから申しておりまするように、我々の今までの取締りの方針というものの集積も労働次官通牒の中にはあるわけであります。テンプル少将に出しましたこれも、別に事新しくきめたというのではなくて、今までの見解をここにまとめたわけであります。で、このテンプル少将宛の通達の事の起りは、全駐労が争議をいたしまする場合には、必ず駐留軍関係と好ましからざるトラブルが起つております。殊に十月十日朝霞で起りました事件のごときは御承知の通りでありまして、これは駐留軍関係におきましても、一体この日本の労働争議において、例えばピケはどこまで許されているか、どこまでが正当であるかということも十分認識されない、そのために自分で取締るというようなことにもなつてみたり、そこで駐留軍と労働者の間に喧嘩が起るというような事態もありまして、こういうことは我々非常に困る。日本の労働争議に関する法的な解釈なり慣行というものを十分尊重してもらいたいということをかねがね申入れておりまして、駐留軍といたしましては、我々少くとも、例えば軍人、軍属というようなものが、争議があつたからといつて、あそこで通行を止められて、そうして我々の仕事を妨げられるということはどうしても解せない、これを一体どうしてくれるのか、一体然らばそのストの限界というのはどういうものか、これをはつきりしてもらいたい、駐留軍軍人、軍属に対してはどうなんだ、又我々の中へ入る商人等に対してはどうなんだ、実はこの間外国の外交官がやつて来た、これがピケによつて妨げられて、そうして入れずに帰つてしまつた、非常な損を来した、こういうようなことでは、我々軍の仕事もできない、そこまで一体ピケで阻止する権限があるのかというようないろんな質問がありまして、これはどうだ、あれはどうだということです。それについてはかくかくでござる、これについてはかくかくでござる、今後警察側としては駐留軍の労組に対しても行き過ぎのないように望むとともに、又、駐留軍自体とされても、正当な争議を誤解して、おせつかいをされないように、警察としては取締るべき点は取締る、そうして軍の正当な業務を行うについては支障のないように、又、労働争議として正当な権限を行使されるのにも、それを保障するために我々としてはかようにいたすから、軍とされても我々に、協力をされて、朝霞事件の二の舞を起すとか、今までたびたびあつたようなことのないようにということを文書にまとめたのでありまして、この話合いはもう大分前からずつとありましたのです。最後にまとめて、通牒の形にしたのがたまたま十一月六日になつたというだけなのでありますから、その点は御了解を頂きたいと思います。
  80. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 十一月六日のテンプル少将宛の警察庁長官の文書は、これは何というのか知りませんが、いろいろ質問も受けたので、軍の要請に応えて、軍が正当な業務をなし得るように、労働争議が正当に行われるように、警察としはかようにいたすからと、こういうまあ趣旨で出したのだという今の御答弁であります。それを駐留軍は御親切に教育資料として労働者にこういう取締り方針だから間違いのないようにということで、駐留軍労務者に配つた、こういうお話であります。駐留軍から駐留軍労務者に配れば、これは教育資料でございましよう。労働省は各都道府県の警察や労働部長を通じて、教育資料として通牒を出された、その中には法に関する解釈が入つておる、ここまでは許されるんだ、これより以上は不当だ。法律の限界ということが示されておりますだけに、取締りというものと関連があるではないかということを、先ほど来同僚議員が申しておるわけであります。取締方針にしても、駐留軍から労働者に配るときには、それは教育資料でありましよう。併しその内容が警察行動の根拠になる、或いは取締方針の基準になる、こういう点が問題に今なつておるのでありますが、それは他の委員も質問されておるし、具体的にあとで私ども聞いて参りたいと思いますが、今関連して伺いたいことは、テンプル少将宛のこれは書簡だろうと思うのでありますが、その前文にこういうことが書いてございます。「かねて駐留軍労務者のストに伴う警察取締について、貴方より要望もあり、『ピケツトに対する警察措置』について検討を加えた結果、別添の通りの警察措置をとることを決定した。警察庁ではこれに伴い、駐留軍労務者のストに関するピケツトの取締りの徹底を期するため、全国都道府県警察、及五大市警察に対し、早急に右決定方針に基ずく取締り方を指示することとしているので、貴方においても甘木警察の取締りについて協力をお願いしたい」、こういう文句が書いてございます。そこでお尋ねをするのは、全国都道府県警察及び五大市警察に出されました文書の内容は、別添の取締方針と同じであるかどうか、これを一つ承わりたいと思います。  それからもう一つ先ほど来、藤田、田畑両委員が聞いておりましたが、この通牒といいますか、書簡と、それから労相談話、労働次官通牒、それから各地で行われております警察のいわゆる実力行使、そういうものとの関連について伺いたいのであります。十月二十六日、毎日新聞夕刊でございますが、小原法相の談話として報ぜられておりますところは、「近江絹糸、日鋼室蘭スト以来労働争議に伴う。ピケが行過ぎとみられるフシもあつたのでどこまでが合法かの基準について法務、検察、警察の各当局で研究してきたが、東証ストでも。ピケに微妙な問題があるようだから急ぎ取締方針を明らかにしたい。このため労働省とも連絡して基準を明かにするため検討を急ぐよう命じた。この基準が決まれば今後不法な。ピケについては取締りを強化したい」云々と小原法相談話が報ぜられております。そうしますと、東証スト、或いは東証のピケに関連して、具体的な協議がなされたかどうか、それから東証ストも一例でありますが、ピケ一般について法務、検察、警察の各当局で研究がなされた、これは従来やつて来たという話でありますが、東証ストに関連をして小原法相は研究を命じた、こういうことでありますから、研究された、或いは法務、検察、警察の各当局の関係者が寄つて研究をされた、これだけは間違いがないと思いますが、その結果が労相談話になり、それから労相談話を多少敷衍したものが次官通牒、これは文章を見ればわかります。文句に至るまで殆んど労相談話の大部分が次官通牒の中にそのままの文句で入つておりますから、これは労相談話と次官通牒とが同じものであるということに間違いがありません。それと、それからテンプル少将宛て出された警察庁長官の書簡、それから今お尋ねをした都道府県警察及び五大市警察に対して取締方を指示されたその内等、言葉は或いは一点二点違うかも知れませんけれども、内容の大綱については同じであろうと考えられますが、その辺の連関を一つ承わりたいと思います。
  81. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) テンプル少将に宛てました書簡と、都道府県或いは五大市の警察に通達をいたしました内容とは、大綱においては違いはございません。文章の内容、内容といいますか、書き方は若干警察にわかり易く、又取締に当る立場から書いておりますが、大綱は変りはございません。
  82. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 他の部分について、後段の部分について、労働大臣とそれから警察庁長官から一つ説明願いたい、御答弁願います。
  83. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 私の出しました談話と次官通牒は同じ考えに基きまして書かれたものでございます。従つて根本的な相違は無論あるはずもございません。
  84. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それはわかつているのです。これは文章を見ればわかります。それは私も文章を見れば同じものだということは、次官通牒が少し長くなつて敷衍されている部分はありますが、そうじやなくて、先ほど小原法相談話というものを引合いにして、その協議したものと、それから労相談話、次官通牒と、それから警察のほうで出された通牒或いは書簡、それからその他の連関が、その研究の結果に基いて出されたものではないか、こういう点をお尋ねをしたのです。
  85. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 先ほど藤田委員の御質問にもありましたが、要するに労働法の解釈というものにつきましては、これはやはり労働紛議に関するものでも、ありまするし、従来その紛議に関して取締当局のとつた措置或いはそのことに関連いたしましての判例或いは判決例もあるのでございます。その間に連絡をとつて協議をしておることはその通りであります。従つてこのいわゆる不法な実力の行使の防止についてという次官通達或いは私の談話というものも、そういうものの研究に基いてなされたものであります。
  86. 相馬助治

    相馬助治君 それに関連してお尋ねしておきたいのですが、このピケの合法性の限界を中心として労使の実力行使の限界を知事に通牒した、それから又斎藤長官がテンプルに書簡を送つた、これはまあ政府筋に言わせれば必要であるから送つた、こういうことで法の解釈を決定したので、何らそれ以上のものでない、こういうふうにまあ述べられております。これは議論があると思いますけれども、併しその効果からいうと、結局単なるその事議行為のルールを常識的に示しただけなんだという政府の見解ではありまするけれども、影響するところは、まるでピケ禁止法というような効果を持つて来ていると思うのです。そこで私は労働大臣に尋ねたいのですが、かような重要な法解釈を、政府の義務と権限において決定して通達したというこのことは、一つの法律を作るぐらい重要な内容を持つているという点に鑑みますと、国会が開かれていないから、取りあえずこういう次官通牒を出して円満な労働行政のために資したい、議論はありますけれども、こういうふうな考え方で、次期国会等にはこれらの次官通達を成文化して、法律として政府提案を以て国会に出すような別意があるのかどうか。私はこれがあるというならば、政府の態度がはつきりわかるから、余り議論をしたくないのですが、そういうことではないんだというならば、いささか議論もあるのですが、その辺一つ政府の見解、又、次期国会に対する心構え、これを聞かしておいて干さい。
  87. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) この通達に対しましては、従来申上げておりまするように、従来行われておつた判例、判決例の集積をごこに系統的にしたものでありまして、当然にこの正当な争議行為としてのピケの限界というものの行政解釈を明らかにしたものでございますが、これを法律にするというような、別に新たなる問題を提起するものではありませんから、その内容がそういうことではございませんから、現在考えておりません。従つて次期国会に提案するというようなことも考えておりません。
  88. 田畑金光

    ○田畑金光君 質問を継続したいと思いますが、先ほどの私の質問に対して、労働大臣は、単に教育を目的とするものである、こういうような御答弁があつたわけであります。教育を目的とするものであるとするならば、少くとも労働省の納得の行く手続、順序、或いは規定の内容等を必要とすると考えます。然るにこの内容というものは、結論から申しますと、先ほどから指摘されましたように、警察庁長官のテンプル少将に対する書簡と次官通牒とは、全く内容が同一である、若し取締のための基準でなくして、労働関係の健全な慣行を守るために、或いは紛争議の円満な調整解決を促進するため、こういう目的であるとするならば、当然にその前に中央労働委員会或いは労働問題協議会等の意見を聞くべきだと思います。労働省目的は、一体何のためにあるかということは、今更申上げる必要もない。労働省設置法に見ましても、労働省というものは、「労働者の福祉と職業の確保とを図り、もつて経済の興隆と国民生活の安定」を図る、ここにあろうと考えます。けい肺法というものは年来労働省が希望しておる、早く単独立法をしてもらいたいという希望を掲げておる。これを速かに立法化し、予算化することが労働省のサービス機関としての使命だと、こう見ます。ところがこういうサービス問題については、けい肺対策審議会その他諮問機関を通じてなかなかまとめるのにも年数がかかるにかかわらず、労働者の、或いは労働組合の教育のための通牒となつて来ると、中労委等には、単に意見を聞くというどころか、連絡をしたというが、申訳的な連絡です。こういうことで一体教育になるのかどうか、労働省の任務というものは納得の行くサービス行政でなければならんと、こう考えているわけであるが、この点について労働大臣はどうお考えになるか、労働省の任務というものはどういうようにお考えになつておられるか、この点を先ず第一に承わつておきたいと思います。
  89. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 先ず前段のお話にありました次官通達の内容と警察庁長官がテンプル少将に宛てた書簡と同じだということでございまするが、先ほどからも言つておりますように、この通達は別に新らしい基準を拡大したものではないのでありまして、従来やつていることをそのままに系統立てたものでございまするから、これは当然にその内容は同じになると思うのであります。  なお、労働省の任務というものは、勿論労働者諸君の経済的な地位の向上を図る、生活の向上を図るということでありまするが、同時に教育的の意味を大きく持つているのでありまして、従つて不法な実力の行使はいけないということを申しますることは、当然労働省の任務であると考えているのでありますが、只今けい肺法さえ出せばいいというお話がありましたが、まあけい肺の問題は御承知のように医学的の見地から種々問題があるのでありまするし、又国家財政の上から見ても予算関係でいろいろ折衝しなければならんのでありまして、労働省が一存で以て直ちにどうこうという通達によつて、けい肺法を作るわけには参りませんからして私どもといたしましては、事柄の性格上、行政解釈をなし得るというものにつきましては、従来の問題から別に私ども飛躍してものを考えているのじやなくして、従来積み上げられたところの良識というものを系統立てて、それが教育になるならば、私どもとしてはそれをする義務と責任があると、かように考えているのであります。この通達につきまして、或いは大臣談話につきまして、労働問題協議会にもお諮りいたしたのでありまするが、この程度は世界的な常識であろうという御意見が多かつたということをこの際付け加えておきます。
  90. 田畑金光

    ○田畑金光君 私はけい肺法の問題を例に出しましたのは、こういうような労働省の性格から見て、当然にサービス省としてのあり方から立法化すべきような問題についてすらも、それぞれの諮問機関を経て慎重を期しておられるにもかかわらず、今回のようなこの通牒は、これはのちほど内容に触れて参りますけれども、労組法の一条二項の問題そのものが立法の経過から見ても非常に重要な内容を持つている。判例の傾向に持とうとしてとられている、この内容が、突如のとして労働次官の通牒によつてこうだという断定を受けている。而もそれを政府は教育のためであると言つているけれども、この通牒全般は明らかに労働組合運動に対する圧迫である、この性格を否定することはできんわけであります。そういうことを考えたとき、若し教育のためであるとするならば、なぜもう少し順序を経て例えば一例を申上げますと、中央労働委員会等の意見を聞いてやらなかつたのかどうかということであります。殊に争議行為の際の実力行使についてこの通牒は規定しておりまするが、争議行為があつたとするならば、争議行為がなぜ起きて来たかというその原因を探求して、その健全な労使関係を確立するという基盤を作るために、どうして労働省はもう少し熱意を持たなかつたのか、この点を私は尋ねたいと思つております。少くとも深刻な争議が起きて来る、それはその企業において、労使の関係において、やはり深刻な面があるだろうと思う。或いは不当労働行為が日常茶飯事に繰返されている、労働基準法があつてもそれが守られていない。こういうような不健全な労使関係があるからして、そういうようなところにおいては、より一層争議というものが深刻化すると考えております。例えば政治というものは国民の幸福を図ることである。ところがその政治家が泥棒の集団であつた大臣が泥棒であつた、(笑声)総理大臣も泥棒であつた、併したまたまその泥棒はこそ泥ではないけれども、容易につかめない大泥棒であつた、こういうような一つの政治的な条件が今あるという仮定に立ちます。例えばそういうような泥棒は、国民の税金を政治家は幾らでももらつているけれども、権力というものによつて常にそれは法をのり越えて、そうして犯罪に問われない。廻り廻つた国民の税金である。労働者に、その職場を通じて、労使関係において、労働条件において、当然に労働者に廻つてくべき金というものが、例えばそういうような政治家があつて、会社の経営者を通じ、社長を通じ大泥棒をやつた、こういうような一つの社会的な条件、経済的な条件があるならば、たまたまそういう職場における労働組合というものは、労使関係においても正常な関係はあり得ないと思います。私たちは問題のその根本の原因というものを探求して、労使関係というものを堅実に軌道に乗せるという、その点を重点として考えることが労働行政のあり方ではないか、こう考えております。争議行為をなくするということ、その根本にメスを加えることが労働行政のあり方ではないか、こう考えております。ところがどうも今の労働省のやつておられることを考えますと常に逆立ちをしているような感じがいたします。これは中西労政局長が二十二日に大阪の商工会議所で開いた関西経営者協会主催の銀行関係者との懇談会において述べられた言葉が新聞に出ております。例えば銀行の労使関係は一般のそれと法律上差異はないが、全銀連は総評の中でも最左翼的である、こういうようなことを述べられたり、或いは又これに対し経営者側の労務管理は非常に軟弱である、第一に人事、労務に関しては各行とも秘密主護で、他の銀行の事情がわからず、関心も薄く、問題が起つてから慌てても手遅れになつている、こういうようなことが述べられておるわけであります。私はこういうような中西労政局長の談話等もだんだんだんだんつきつめてみますと、労働大臣の談話となり、次官通牒となつて出て来るわけであります。こういうようなことを、私は労働関係においては順序が逆ではないかと考えておりますが、根本問題について如何にして労使関係を安定するかということに着眼することが労働問題の中心だと思いますが、この点について労働大臣の見解を承つておきたいと思います。
  91. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 只今お話は非常に不適当な例を挙げられましたが、それは仮定でありますから、問わんことにいたしまして、労使全体といたしまして、原因があれば如何なることをしてもいいという御議論のように挿聴いたすのでありますが、私は目的は手段を正当化するという議論は非常に危険な議論あつて、特定のものが一部に適応する目的を掲げ、そのためにあらゆる手段が正当であるという議論はフアツシヨに通ずると存じます。そういうことがございませんように、原因の如何を問わず、法治国である以上、その結果が法律に触れるということはいけないのである。こういうことは労働教育として言うことは、そういう御議論があればあるほど必要である、かように思います。又争議につきましても、今年は先般御報告申上げたように、いわゆる経済地固め政策の影響もありまして、全般に消極争議が多くなつて来ておりますけれども、いずれにいたしましても、争議に参加する人員、争議による労働損失日数、これはいずれも前年上半期に比べまして、六割かたに下つております次第で、私どもできるだけ無駄な争議はやめて、労使協力して日本の再建に励んで貰いたい、かように思つております。
  92. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 田畑君に申上げますが、時間がだんだん迫つておりますから、簡潔に質問をお願いいたします。
  93. 田畑金光

    ○田畑金光君 それでは続けますが、私はこう考えるわけですが、今の労働行政というものは、根本に対して措置することが大事である。例えば具体的に申しますと、ピケが張られておる。それはピケが張られるということ自体は、要するに全体としてスト破りがおるということであります。スト破りがあるという不安があるからして、要するに。ピケ・ラインが張られる、こういうことになつて来ようと思うわけであります。そこで労働組合の組織というものが強化されて来る、或いは又その国の制度において、スト破り、こういうようなもの等が法的にも禁止される、或いはそのような不安がないような措置が図られる、こういうことになつて参りますならば、当然に労働者の今心配しておられるような、ピケに伴う深刻な争議というものも我々は防止できると考えているわけであります。そういうことを考えましたときに、現在多くの争議というものが、経営者の不当労働行為から招来されておるということであります。労働関係における使用者側の不当な行為というものが、常に大きな原因をなしているということであります。近江絹糸の争議等の場合におきまして、或いはピケについていろいろな批判がありましようとも、それは近江絹糸における経営者側の目に余る不当労働行為というものが、ああいう深刻な争議の形となつて現われておるわけであります。然るに不当労働行為制度を見ますならば、最近政府においては、むしろこれを改めようという傾向に来ておる。現在の線よりもなおこれを緩和しようというような考え方でいるわけであります。そういうようなことが正常な労働関係の確立というものを期することができない。むしろ逆行せしめるというように考えるわけでありますが、この点に関しまして、政府はどういうお考えを持つておられるか、この点承わつておきたいと思います。
  94. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) スト破りを防止するためにピケを張られるのでありますが、その範囲は飽くまで穏和な説得、平和的な説得の範囲内に止まるべきものであるということを申しておるのがこの通牒の趣旨であります。なお、不当労働行為に関しての御質問でありますが、不当労働行為制度というものは、御承知のように日本とアメリカにある制度であります。この不出労働行為制度そのものに対しまして種々我々といたしましても検討いたしておることはございまするが、今それをとかく申上げる段階ではございません。
  95. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 中西労政局長に、今田畑君の御質問に関連して、一点御質問申上げます。あなたが十一日二十二日午前十一時大阪商工会議所で、関西経営者協会主催の銀行関係者との懇談会に出席して、一席述べられた意見というものは、日本経済新聞によると、注目される見解として明らかにしたというので、大分大きく出ておりますが、これを全部読上げるのは時間がありませんし、又皆さんがよく新聞お読みになつておることでありますから御承知だと思いますが、この思想というものは、労働省が民間の企業について労働組合の組織のあり方、或いは会社側の労働組合に対する考え方というものについて、自主的に解決すべきものを労働省がとやかく干渉がましい意見を述べられたものと私は率直に受取るわけであります。そういうわけであるからこそ、注目される見解として会社側に非常に便宜な意見を述べられたために、日本経済新聞は述べておると思うのですが、こういうことを労政局長として軽々に言を吐かれるということは、私は慎しむべきことではないかと思いますが、これは対する労政局長の御自身の意見を承りたい。それから小坂労働大臣はこういう労政局長がおられるわけでありますが、どういう工合考えますか。
  96. 中西実

    説明員(中西実君) たまたま大阪の労働大学講座の終講式がございましたので参つた際に、関西経協でこのピケの通牒の一応の説明が欲しいということで会がございました。その前に銀行関係の人たちが出られまして、十人余りであつたと思いましたが、まあ懇談会があつたわけであります。これは全くの懇談会でございまして、その内容が、これは非常に間違つたものが出ておるんでございますけれども、それはともかくとしてその内容が新聞に出ましたことは、私として非常に迷惑に考えておるのであります。どこからどういうルートで出ましたか、それは存じませんけれども、こういうことになるということがわかれば、今後とも相当注意を要すると思つております。そしてその内容でございますけれども、お読みになつてもわかりますように、例えば全銀連が総評に入つていたと書いてあつたり、或いは今度の争議で一三%の賃上げを獲得したというようなこと、これは要求が一三%で、獲得は本当はこれではございません。私がそういうことを、そういう間違つたことを言つたはずがないのでございまして、従つて相当内容的には間違つたことが書いてございます。  なお、懇談会でございますんで、労働組合の現在のあり方、それに対して経営者側の労働管理のあり方、これについていろいろと意見も出、話もしたわけであります。要は結局今年は、日経連の総会でも話が出ておりましたように、盲点ストといいますか、いろいろと労働管理のまあ前時代的なところにストが起つておる。そういう意味で銀行の労務管理が非常に遅れておる。殊に銀行というものの組合はホワイトカラーの組合である。これに対する労務管理は若干注意すればああいつた不祥なことにまで行かなくて済むんじやないかということが実はまあ話の中心だつたわけであります。で、まあ懇談会の話の内容をここで申すこともどうかと思いますけれども、特に誤解があるようでございますんで、今申したようなことを申すんでありますけれども、話した内容は一に労務管理のあり方、これは結局は、殊に銀行という特殊な産業における労使間の平和をどうすれば持ち来たせるかということが議題なつたんであります。その中の極めてまあ都合のいいと申しますか、而も相当間違つてそういう記事が出た、私は非常にそういうことが出たことについて遺憾だと思います。
  97. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) その遺憾を今ここで初めて表明されてあなたの御意思と大分違つていることが初めてわかりましたが、併し別に新聞社に対してその内容の訂正の要求をせられたことも聞いていないし、又懇談会だからかまわないとおつしやいますけれども、少くとも現職の務政局長の立場でありますから、それがどこで述べられようと、私は責任を発言についてはお持ちにならなければならないと思う。で、労働大臣は、こういうことを方々で言われるということは、只今のあなたの談は、次官通牒をもつてしても大分労働組合に刺戟を与えておる、刺戟を与えているときに、更にその刺戟を与えるようなことを直接の責任者がおつしやるということは、私は慎まなければならんと思うのでありますが、この点についてはどういう工合にお考えですか。
  98. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 只今中西局長から話がありましたように、いわゆる盲点ストというものに対して、経営者自身も十分にそういうことを言われる事柄についても反省せねばならんし、始終労働教育の面で労使双方に話をするということそれ自身については、別にとやかく言うことじやないと思います。なお、新聞に書いてあることが誤りであるということは、今も話がありましたように、例えば全銀連が総評に入つているということを専門家の中西君が言うはずもないし、内容がそのまま伝えられているわけでもないと思います。だから別に私としても問題にすることはないと思いますし、中西局長自身につきましては、非常に精励恪勤でありますし、人柄もまじめでありますし、私の非常に信頼する局長であります。
  99. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それからちよつとお諮りいたしますが、斎藤警察庁長官はビルマ、ラングーンの警視総監を招待しておられるそうでありますので、四時四十五分頃には退席をしたい、こういう申出がありますから、警察庁長富に御質問の向きは早く質問して頂きたいと思います。
  100. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 議事進行についてちよつと相談いたしますが、四時四十五分というと、あと……。
  101. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) もうその頃ですから……。
  102. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 まあ大体五時頃までと考えていいのですか。
  103. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そういう意味でなくて成るべく簡潔に、御期待に副うように、一つ御質問を終つて頂きたいと思います。
  104. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 田畑君もまだ質問がおありのようですが、内容につきましては、労働次官通牒或いは警察庁長官の通牒と同じものであると言われるピケツトの限界及びピケツトに関する警察措置、これは両者揃つて頂かんと質疑ができませんので、途中で田畑君に失礼でありますけれども、質疑をお許し願いたいと思います。  先ずその質疑に入ります前に、今読上げられました中西談話の中にも出て参ります山梨中央銀行の争議の際に、これは十月二十五日甲府警察署長から警告書が、宛名ははつきりいたしまけんが、山梨中央銀行労働組合或いは全銀連等に警告書が出ている。読上げることを省略いたしますが、他にも警告書が四通ほど出ている。これは警察庁長官の書簡の中にありますように、ピケを通してくれと、こういうことを言いなさい、通さなければ実力行使をいたします、こういう警察庁長官の趣旨に従つてなされたものと思うわけでありますが、読んでいると長くなりますから読上げませんが、この甲府警察署長の警告文は警察庁長官の書簡の中に、或いは通牒の中に現われている精神と大体同じ、多少事項は細かくなつておりますが、「座り込み、スクラムに依り或は押返す等威嚇的乃至暴力的方法によつて出入を阻止する行為は業務妨害罪又は暴行罪が成立するものと認める」、「認める」と書いてある。「従つて左記の行為等については警察力を行使してその阻止を排除し状況によつて検挙の措置を講ずる」、そして具体的に銀行に出入りするのを阻止したり、或いは階下、階段等でピケを張つて阻止妨害をする行為、或いは食糧、衣料その他の物品の搬入を制限阻止する行為、或いは面会に際してその所持品を検査し、携行品の内容を制限する等の行為、或いは営業室内に侵入し、歌等を合唱又はスピーカー、その他音響を発して業務を妨害する行為は業務妨害罪を構成するので、状況に応じて警察力を行使して、その行為を排除し又は検挙する。こういう内容であります。大体読んでしまつたわけでありますが、こういうものにつきまして警察庁長官がそういう指示を事前になすつたのかどうか。私どもが聞くところによりますと、九月の十三日、十四日と全国労政課長会議労働省が招集をしてそこで極秘文書、極秘と判を押した文書を渡した、労働次官通牒と同じようなものを渡した、その際の警察への連絡でございますか、或いはその当時の警察庁長官の解釈というものがここに現われておると、かようにも考えますが、これについてどういう指示をなされたか、どういう責任を負われるのか、その点を一つ第一にお尋ねしたいと思います。
  105. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 甲府の署長が警告文を発したと、私今初めて全文を伺つたのでありますが、伺いましてその方針は別にこと新しいわけではありませんので、争議に関係のないものが食糧を運ぶというような場合、或いは第三者が銀行に入るという場合、これを阻止をするということは場合によつては業務妨害になるという、そういう解釈をする、これは当然のことでありまして殊更山梨銀行の争議に際してこういう警告をあらかじめ出せということを指示をいたしたようなことは私は承知をしておりません。部下のほうでもそういう指示はしていない、しなかつたと私は思います。併しその警告文は妥当だと思つております。労政局で会議云々と、この点については私は存じませんので、労政局長からお話いたします。
  106. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 警告書は全く同感だというお話でありますが、従来ストをやります場合、或いはピケが張られた場合に、警察は余り出なかつた。或いはピケが非常に強力で何日にも亙つて業務が阻止されたと、こういつた場合に出たりいたしましたが、山梨中央銀行の争議の場合にこれはピケを張つた、二十四時間ストに入つたその日であります。従来に比べまして警察の出動というものが非常に早かつた、或いは山梨中央銀行、或いは東証或いはちよつと前に室蘭の日鋼争議等でありますが、警察が出て来てピケを破つて、そしていろいろな人を、第三者なり何なりを通すと、こういう方針になりましたのはいつからか、これに或いは通牒その他に関係があるか、こういうことをお尋ねをしておるわけでございます。それが一点。  それからもう一つは山梨の場合に一般的にこういう警告書は大体賛成だと、こういうお話でありますが、山梨の場合に、二十四時間ストに入つてそうして午前中に、方向はよくわかりませんが、通用門から食糧を搬入しようとして、警備課長というのですか、警察のもと特高出身の、特高の経験のある警部でありますが、立会つて食糧を入れた。そうして又例えばにぎりめしほか食わんとかいうのでなくて、パンも或いはハムも相当の量が食われておつたという事実は、これは私ども見ました写真その他で窺うことができるのでありますが、とにかく同日の午前中に、食糧が相当警察官立会いの上で事実上入つておる。そのあとで正門に張つておるピケに、第二組合員、それからそのあとに銘々会というのですか暴力団、これは甲府の警察署長も認められた。暴力団があとからついて、人参とかかぶを一抱ずつ持つて正門から入ろうとした。それについて食糧、衣料その他の物品の搬入を制限し又は阻止する行為は違法だ、こういうことで警察力を行使されている。ところがこれは客観的に見ますと、午前中食糧が入つている。それから正面の門の入口のところに、外でありますが、ピケを張つているところに人参を持つてつて来た。明らかにこれは暴力団による食糧搬入を口実にしたピケ破りだと考えられますが、それについても、なおそういう具体的な事例を考えた上で、この警告文は妥当であると考えられるか。或いはこれは次官通牒の場合にも、そうした第三者の出入に対して云々ということがございますが、第三者の中にスト破りがあり得るということは、或いは殆んどピケ破りについては、そういう第三者の暴力的な、或いは介入をしているということを私どもが申上げておるわけでありますが、その具体的な事例でありますが、そういうことについて、労働大臣はどういう工合考えられるか。斎藤長官に二点、それから最後の一点について労働大臣の所見を伺いたい。
  107. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 全般的にはこの秋頃、秋十月初句であつたと思いまするが、警察関係者の会合の際に、労働争議がだんだん激化をして不法行為が多くなりつつあるという様子である。従つて警察といたしましては、労働争議自体に介入することは厳に値しまなければならないけれども、不法行為に対して防止をすることは、治安上憂慮すべき状態が見受けられれば、不法行為に対しては取締りを怠らないようにということは、指示と申しますか、話をいたしたのであります。  それから今の具体的の例でございまするが、私は具体的に後に報告を受けましたが、あの際に人参その他のものを搬入しようとして参りましたのは、これは暴力団がピケ破りの目的で入つたもの、かようには認められない。真実に食糧を搬入するために、搬入業者が食糧を持つて入ろうとした、かように考えます。
  108. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それは午前中のやつだよ。
  109. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 事実問題については警察庁長官がお答えになりましたので、私からはお答えする筋ではございません。まあ要するにスト破りということであるならば、暴力団が入つても大体要員にはならんわけです。そういう問題は暴力団を使うということ自体はよくないことであると考えております。
  110. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 山梨中央銀行の午前中の場合には、第三者或いは八百屋さんでありましたか、食糧を持つて入ろうとした。これは間違いありません。併し私が言つているのは、午後の警察の実力行使をされたときには、第二組合員が菜つぱを持つたり、それから暴力団が大根を持つたり、こういう恰好だから、それは食糧搬入というのは口実であつてピケ破り、スト破りではないか、こういうことを申上げておるのです。なお、その点について暴力団が中に入つてつたのでありますが、これは今労働大臣の言われるように、代替業務、銀行の業務をやるという能力はないでしよう。それから又ピケの場合に大根、人参を持つてつて来たとしても、それは暴力団がそこに現われたということについては、署長は非違を認められた、かように実は考えておる。そういう或いは食糧の搬入なり、或いは業務だと言つても、それがピケ破り或いはスト破り、而も暴力的な、或いは不当労働行為の介入の関連をするのが大部分である。その場合にピケがこれを阻止するために説得をする、或いはピケを強化するという、こういうことも、これは認められない。警察庁長官の書簡なり、或いは労働次官通牒の中には多少の違いはありますが、こういう点について如何ように考えられるか伺いたい。と申しますのは、時間がありませんから読上げますが、次官通牒をいわば対照し得るように表にしてあれしますというと、小林直人氏の意見について出された書類を見ましても、就業を阻止すべく説得することが可能である、こういうことがその六頁に書いてございます。これは争議中に組合を脱退した従業員に対する説得の許された態様として述べられた点にも関連をするのであります。ところが警察庁長官の書簡によりますと、スト中の組合の組合員に対しても、入場を希望する労働者の意に反して説得を継続し、個々に説得するという名目によつて、不当に説得を遅らせてはならない。説得にもかかわらず、なお入場を希望する場合には、ピケはその入場を阻止することは許されない。これに対して警察官がピケに対して警告を発し、或いは入場を援助するために、実力行使をすることができる、かように考えられておりまして、この点は次官通牒とそれから警察庁長官の書簡、これがそのまま通牒になつておると先ほど言われるのでありますが、その通牒の中には食い違いがございますが、これについて具体例は先ほど挙げたわけでありますが、警察庁、長官なり、或いは労働省はどういう工合考えられますか、伺いたい。
  111. 田畑金光

    ○田畑金光君 関連。小林直人参考人の名前が出ましたので、この際申上げたいと思うのですが、去る十七日の日でありましたが、小林直人参考人の公述意見に対しまして、先ほど労働省から、小林参考人の質問の形で出された見解に対し、一つこれに対する労働省考え方、回答と言つては言い過ぎですが、労働省の見解が発表になつておるわけであります。この点はいずれも重要な内容でありますので、一応これを読み上げることも大変でありまするから、速記録に挿入するということだけ一つこの際取計らつておいてもらいたいと考えます。
  112. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今田畑君から御発言がございましたが、当然この小林直人参考人の公述に対して労働委員会として労働省意見を求めたわけですから、本来ならばこれを全部読み上げて頂く性質のものだと思いますが、時間がありませんので、一応この問題についてはそのまま速記録にとどめたいと、こう考えますがよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ではさように決定をいたします。  それから斎藤長官が非常にお急ぎのようですが、まだありますか。
  114. 田畑金光

    ○田畑金光君 斎藤長官に一言だけお尋ねしておきたいのですが、長官としては労働争議というものは何か頭から犯罪或いはまあ不道徳な行為であるように考えておられはせんかということを憂えるわけであります。ピケツテイングというものはストライキと不可分一体の関係だと考えます。ところがどうも先ほどのテンプル少将宛の通牒を見ますると、ピケツテイング自体が何かすべて暴力行為であるかのごとく、違法であるかのごとく判断せられるわけであります。この書簡の第七項の警察指揮所、その中の例えば六項目、七項目、八項目の内容を見ましても、或いは又大きな八の例えば「暴行又は脅迫を以つて警察官に抵抗する者は公務執行妨害として逮補する。また就労を希望し、職場に入場しつつある者に対して、暴行を加える者は直ちに逮捕する」、こういうような内容を見ますると、ただこれだけの基準では警察官というものは立ちどころに逮捕だ、職務執行だ、こういうことで以て正当な争議行為、或いは正当なピケツテイングというものを常に破壊されるような危険があると見ております。こういう点に対しまして警察庁長官としてはどういう警察官の内部指導をやつておられるか、この点を承わりたいと思います。
  115. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ちよつと委員長、時間がないようですから答弁を一括してやつて下さい。
  116. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) どうぞ。
  117. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 小さいところで、例えばこの警察庁長官の一、二、三等で身分証明書を持つて、それで警察官だ、これはそのピケツトに対してはどういうことを要求するのか、法律に基かずに、身分的な取扱い、差別的な取扱いをさせるという点は、これは問題だと思うのですが、それはどう考えられるかという点もございますが、例えば二の最後の頁の「自動車の運転手は国籍の如何に拘らず」、言い換えると、日本の労働者であろうと、「同様ピケラインでその通過を妨害されないものとする」、こういうことは、これは従来なかつた点であります。組合員であろうとも、それから国籍の如何を問わずに自動車の運転手は通過を妨害されない。妨害しようとするならば、それは違法だ、業務妨害だ、こういう考え方は、これは今までなかつた。ついでに申上げますが、横浜の駐留軍関係のストの場合にピケに対して、これは内側から出て来る自動車でありますが、内側から出て来る自動車についてたしか寝たということがあつたと思うのですが、ピケを布いた。それについて裁判所は一応とめて説得をするためにやる行為は、これはピケ権として認められておる。こういう判例もあることは御承知だと思う。そういう判例と、それからこういうピケの機会を全然与えない、説得の機会をも与えない、こういう考え方はこれは判例とも確かに違う。この点はどう考えられるか。  それから緊急要員というのは、まあ次官通牒を読むと保安要員と同じような考え方でありますが、小林直人氏の質問に答えた労働省意見の中では、或いはこの代替要員雇入禁止条項、違反等ががあつた場合には、争議参加要員の引揚げをも行うことができる云々ということでございますが、緊急要務ということであれば、全部これをピケ或いは争議の対象にはしないのだ、それをも一応とめて、ピケ説得をしようとするならば、それも業務妨害だ、こういう考え方はこれは判例なり、或いは従来の考え方について全く違つた方針だと思うのですが、それをどう考えるか。それから第三者の中にもそういうものがあり得るという点は省略いたしまして……。
  118. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 吉田君、社会党の大会に出て来たビルマの警視総監ですから余り遅れるとまずいと思うのです、国際的に。
  119. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 五の(1)(2)(3)(4)(5)とあげられたところ、それから六と七について、これは全面的に問題があるし、それから少くとも判例なりなんなりの考え方からするならば、これは大変不当だと、こういう見解は間違つておると考えるし、それから警察指揮所を捕えて、そうしてピケを常に監視をする、そういう言葉を使つておる。或いは組合活動の行過ぎを監視するためにパトロールをする、或いは警察指揮所を作る、こういうことは警察のピケ或いは争議についての不当な介入弾圧ではないかと考えられますが、そういう点についてどう考えられるか。時間を与えられませんので、或いは文書で回答を願うなり、或いはここで簡単にでも御回答を願えれば幸いだと思います。
  120. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 先ず田畑委員にお答えを申上げますが、私は労働争議というものは罪悪とは決して考えておりません。これは労働者の正当な事柄であつて当然のことと考えておるのであります。従いまして警察官に対しましても労働争議については、決してその内容に立入つてはいけない、警察がどちらかに味方をするような感じを与えてはいけないということはこれは労働争議の場合に取締りの根本要件として絶えずやかましく申しておるのであります。現実に争議の取締りに当ります際にも、そういう事柄を十分よく呑み込んだものが現場で指揮をするようにということを言つております。そうしてその方針を末端の警察官にも徹底させるように、現場にいる指揮官がそういう考えを十分徹底しておりませんと、我々の意図と反した取締りになりますので、さようなことがないように十分留意をいたしておる次第でございます。  それから吉田委員にお答え申上げますが、暴力団が要務もないのに或いは経営者側に何らか加担するというような意味で、明らかに暴力団と認められるものがピケを通行しようというような場合には、むしろそういつた暴力団を阻止するのが警察の勤めであるというふうに考えております。さように指導をいたしております。  それからこの書簡の一、二、三の場合の身分証明書の点についてお答えを申上げますが、この緊急要員とありますのは、これは法律或いは協約で認められました保安要員のことでございます。  それから二の後段の自動車の運転手云々と言いまするのも、これは駐留軍施設に出入りする外交官とか、国連軍司令部職員、それらの職員を乗せる自動車の運転手でありまするから、これは全駐労に加盟しているような、そういう労働者ではありませんので、外交官或いは国連軍司令部職員を阻止をするということは、これは穏当ではありませんので、従つてこれを運転しておりまするものがどんなものでありましようとも、これはもう遅滞なく通過をさせるということが、私は米軍との紛争を避ける上で適当であろう、かように考えておるのであります。これを争議のためにピケによつて阻止をするということは正当ではない、かように考えております。  それからこの警察指揮所というものを、名称は適当であるかどうかわかりませんが、こういうものを置きまして、労働関係の事柄について十分理解をしたものがここにおりまして、そして駐留軍との間の無用な紛争を避けまするために適切な措置をするということが、今までの経験からどうしても必要であると、かように痛感をいたしましたので、かような措置を講じたわけでありまして、民間の如何なる争議においてもこういうものを設けるという考えは持つておりません。駐留軍との間にいろいろトラブルが生じまするので、従つてそのトラブルを避けますために、ここで適当なコントロールをするというのが我々の考えでありまして、警察がこの趣旨を実行いたしますにつきましては、只今仰せになりましたような点、又私の述べましたような点を十分留意をいたしまして、従来よりも特に苛酷な取締りをして争議目的を達成せしめないと、さような意図は全然持つておりませんし、さような結果にならないようには留意いたしたいと、かように考えております。
  121. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 長官と労働大臣とおいでになるときに、ただ一分間だけお聞きを願いたいと思うのです。それは御答弁頂かなくてもいいわけです。  過日当委員会は問題の重要性に鑑みまして、十七、十八の両日参考人を呼びまして意見を聞きました。衆議院の労働委員会も十七日に同じことを行つたのであります。その結果は全部速記録に載つておりますが、その結論を申上げますと、労働組合の代表はこの通牒、談話については徹底的に反対でありました。それから資本家の代表はこの通牒について全面的な賛成論であつた、まだ行き足りないという意見を述べたかたもありました。それからいわゆる学者といたしましては、労働法学者はこぞつて意見については相当法理論的に反対論を述べられた。それから同じ学者でも、これは自由党から御推薦になつた弁護十三人でありますが、これは全面的に賛成をされました。その点はよろしいわけでありますが、更に学者としての資格でお呼びをいたしました労働問題の、労働委員会に席のあるかた或いは且つてつたようなかた、今もあるわけでありますが、そういうかたは自由党のほうから御推薦になつたかたも慎重論を述べられたかたがございます。要するに不法な実力行使、労働争議における不法な実力行使というものについては、これは誰も肯定する人はない。全部排除しなければならんということについては意見が一致した。ところが今この労働省が出された通牒をそのまま実行いたしますというと、不法な実力行使の内容が不明確であるために、財産権と結団権との均衡を得なければならんものが、逆に財産権のほうが優位に尊重せられて、その結果、国家権力があの通牒によつて発動するということになれば、労働組合運動を萎縮せしめる虞がある。要するに権力の濫用になる虞があるというような意味の警告的な発言もあつたわけであります。全文は速記録に載つておりますから、一旦通牒は出されたものでありますけれども、その運用についてはやはり参議院或いは衆議院の労働委員会における権威ある参考人の多数の意見というものを尊重せられて、そうして逮用において徒らに労働組合運動を萎縮させるようなことのないように一つ善処を願いたい、こういう工合に、要望申上げておぎます。
  122. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 実はまだ今まで質疑をいたしました中に答弁がない点もございますし、それから警察とそれから労働省との意見の食い違いといいますか、通牒と警察庁長官の誓簡の食い違いもございますが、時間がなくて、皆さんお急ぎのようでございますから、ここで皆さんに御相談を申上げたいのであります。  動議を提出をいたしたいと思います。この次官通牒は、私どもがその後警察庁長官の書簡或いは通牒に現われますように、或いは具体的に東証或いは六のスト中の組合の組合員のピケに現われておりますように、警察行動が行われ、こういう事案に鑑みまして、談話及び次官通牒を撤回すべき委員会の申合わせをいたしたいという動議を提出いたします。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  123. 田畑金光

    ○田畑金光君 只今吉田君から動議が出されましたが、先ほど来労働大臣、中西労政局長斎藤長官の御答弁を承つて感じましたことは、この通牒は明らかに警察権力、検察庁等の国家権力の行動基準を示したものに外ならんということが明らかになつてつたわけであります。この通牒を通じて教育的な目的或いは健全な労使関係の確立等ということは望むべくして到底期待できない問題であります。従いましてこういう通牒は却つて今後の労使関係のあり方というものに混乱を巻き起す以外の何ものでもないと、こう考えますので、本日の質疑を通じて明らかにされましたその趣旨に鑑みまして撤回の動議に私は賛成いたします。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  124. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 動議は成立いたしました。
  125. 井上清一

    ○井上清一君 定足数のない委員会で動議が成立したというような筈はない。これはおかしいですよ。
  126. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 懇談いたします。    午後五時十九分懇談会に移る    ——————————    午後、五時三十六分懇談会を終る
  127. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。  それではしばらく休憩します。    午後五時三十七分休憩    〔休憩後開会にいたらなかつた