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参考人(
瀬谷英行君)
瀬谷であります。私は
国鉄労働組合東京
地方本部の
書記長をや
つております。許された時間の範囲内で諸先生方に概括的な話を理解して頂くために要訳をして申上げたいと思
つております。
先ず最初に、
国鉄労働組合東京
地方本部の
立場、どういう地位にあるかということ、次に公企労法の目的或いは精神に対して私
どもはどういうふうに考えてお
つたかということ、特に年末以来の
闘争によ
つて私
どもの執行
委員長歌崎氏が
解雇通知を受けましたが、歌崎氏と共に
東京地方本部管内において新橋支部の
闘争委員並びに
東京地方本部における一
闘争委員が同様な
処分を受けております。で、この
処分に対しては非常な不満を持
つておりますが、その
処分の
理由に対する私
どもの反論、並びに考え方についてかいつまんで申上げたいと思
つております。
東京地方本部は
国鉄労働組合の
下部機関でありまして、私
どもは
組合本部の
指令を実践をするところの
責任と義務を当然持
つております。私
どもは
本部の運動方針に従いましてその
指令を忠実に実行するように努めて参りました。この
指令を実行するに当
つて我々がどういうふうに考えたか、
仲裁裁定をめぐる賃金問題に対する私
どもの考え方については
矢上中央闘争委員から
説明がございましたので、私からはあえて重複して申上げることを避けたいと思います。併しながら我々は全
組合員が一致協力をして
団結を守り、上部
機関の統制に
従つて行動をして参
つたつもりでございます。特に昨年末以来の
行動は、全
組合員の総意に裏付けられた
行動であると考えまして、自信を持
つて私
どもはその任に当
つて来たわけでございます。公企労法の目的から申上げるならば、企業の正常な
運営を最大限に確保して、
公共の
福祉を増進、擁護することが目的であり、且つそのために経済的な
紛争をできるだけ防止をして、主張の不一致を友好的に調整するための最大限の努力を尽すことにな
つております。我々は友好的に主張の不一致を調整するための最大限の努力をして来たと今以て確信をしております。特に
裁定問題がいよいよ
国会に上程される前におきまして、
国会の諸先生方にも条理尽していろいろと
お願いもして参りました。又不測の
事態を惹起をしないようなあらゆる努力をして参
つたつもりでございます。併しながらいよいよ筆鋒をいたしまして、
本部から秘密
闘争指令が我々に下りて参りましたので、私
どもはこれを実行することが当面の問題を解決するためには最大の問題であり、最も効果のあることと考えまして、
本部指令に基いてあえて
行動に突入をしたわけであります。その結果本年に入りまして
解雇問題が発生をしたわけでありますが、その
解雇の
理由を見てみますと、二つの問題にほぼ集約をされるかと思います。
その
一つは、今まですでに
吾孫子局長並びに東鉄局長からも
お話がありましたが、
遵法闘争をや
つて来た、これがいけないということ、それから昨年十二月
賜暇闘争を
行なつた、これもいけない。こういうことをや
つて一般大衆に迷惑をかけたではないかということが主たる
理由にな
つておるかと考えられます。そこで私
どもはこの二つの問題を考えました場合に、果して我々がや
つたことがいけないのか、
当局の
処分が行き過ぎであるかということを俎上に上げて検討をしてみますと、私
どもは明らかに
当局の
行なつた
処分のほうが行き過ぎであり不当であるというふうに確信をいたしております。
遵法闘争或いは
賜暇戦術等について事細かに申上げますと非常に専門的にもなりますし、又法廷において争う問題もたくさんありますので、それらのことを逐一申上げることは今回省略いたしまして、極く代表的な問題をわかりやすく申述べてみたいと考えております。
衆議院におきましても、先頃
大阪において
調査をしたということを聞いておりますが、
遵法闘争について
一つ申上げますならば、
大阪における月光号の
事件がございます。この件についてもすでに
調査の結果、明らかに
当局側の報君が誇大であり、不当であ
つたということが言われておりますが、この
内容は、結局根本的な考え方としては、規程
通りに仕事をや
つていたのでは仕事がさばけない。
当局が当然
措置をすべきことをやらない。それは
職員のサービス労働によ
つて補
つていた、こういうような
事情があ
つたわけであります。そこでそのサービス労働というものを一時中断をする、そういう考え方が
遵法闘争の根幹争になろうかと思います。その具体例として月光号の問題が挙が
つたのでありますが、これはわかりやすく申上げますならば、
荷物を正規に積載をするということだけであります。
荷物を粗末に扱わず、
荷物を正規に積載をし、車の安全を確保すると同時に、
荷物を輸送するに際しても不安のないようにしよう、そういうことであります。それが今まで行われて来たかどうかということでありますが、これは
職員側の故意によるものではなくて、輸送
事情の逼迫により、輸送力の不足によ
つて、
荷物車に非常に多くの何物を無理矢理に積込むというふうな状況にありました。特に
大阪の場合においても、天井につかえるほど
荷物を積込んでお
つたということが伝えられております。そのことは
東京においても具体的に指摘できることでありまして、例えば上野から出ますところの急行列車、北陸号或いは鳥海号或いは北斗号とい
つたような急行列車の小
荷物車を覗いて頂けばわかるのでありますが、全く
荷物をすし詰めにしている。載せられるだけ載せて、そうして運んでいる。そのために中に働いている荷扱い手は足の踏み場もない、
荷物の上を踏んで歩かなければならない、天井につかえるようなところを這
つて歩かなければならない、こういう極端な状況にありました。それだけの過重な労働に
従つてお
つたわけであります。それを私
どもは積載の高さもほぼ標準
通りに行う、又
荷物をふんつけて歩かなくてもよろしいように、中央に通路を設け、ほぼ常識的な状態において
荷物を積載した車を出そう、こういうことをやるというのが
遵法闘争の
一つの具体的な方法であります。これを常日頃
行なつてお
つたらどうなるかといいますと、滞貨が山積いたしまして、どうにも仕事がさばけないような状態にな
つてしまう。で、止むを得ず無理をして
荷物を積載して来た、止むを得ずオーバー・ワークを覚悟して
職員が忍んで来たというのが今までの現況であり、且つ今日においてもその状況は改められておりません。そういうことを
遵法闘争として一時的に我々が
行なつたということであります。このことは
当局に対しまして今後の輸送力増強等についての反省を求めるというようなことも併せて行われているわけであります。
次に
賜暇戦術でありますが、この
賜暇戦術に当
つても私
どもは細心の注意を払いまして、運転事故或いは障害事故等を起してはならないということと、できる限り旅客の足を確保しなければならない、こういう考え方に立
つたわけであります。若し私
どもが十七条
違反というふうに指摘されておりますように、ストライキをやるという考え方でありましたならば、こういうような
賜暇戦術を行い細心の注意を払う必要はないわけであります。ストライキをやるという考え方に立つならば、これは列車も電車も電車も全部とめてしまえば、これはストライキにな
つてしまうわけであります。併しそういうことを私
どもは考えたわけではありません。重要列車を確保し、通勤者の足を奪わない、このことは当時
賜暇戦術を
実施するに当
つて歌崎
委員長の談話として新聞紙にも発表したことでありますが、多少の不便をおかけをしたということもあるかも知れませんが、併しながら原則的にはそういう方針を貫いたつもりであります。少くとも
東京駅から出る、
東京機関区の問題でありますが、列車について実害を利用者に与えないという考え方に立
つて、飽くまでもこの三割
休暇闘争を
実施をしたというふうに今以て確信をしております。併しながら、それが誇大に報道をされた、例えばつばめが三十何分遅延をしたということがでかでかと新聞には報道されました。そういうことが
一般的に与える影響としては非常に大きか
つたのでありますが、これは私
どもの推察するところによりますと、こういうような誇大な報道をするということが一体どこに
理由があるのかということについても若干疑念を持たざるを得なか
つたわけであります。又当時の状況としては、
組合側が
当局側の提案に対して或る
程度の歩み寄りの態勢をも示しておりました。で最後的には八日に
妥結をしたのでありますが、若し八日に
妥結をしたような
内容がもつと早く
当局側から発表されておりましたならば、あえてこの
休暇闘争に突入する必要もなか
つたのではないかというふうに考えられております。それを殊更に誘発をするような態度を見せた。而もそれを大きく報道をしたということは、後に若干発表をされましたが、運賃値上げの口実を
組合側に転嫁をしようとするところの意図があ
つたのではないか。当然これは運賃値上げの
実施は
当局側が行うことでありますが、あたかも運賃値上げは、こうい
つたような騒ぎを起したから止むを得なか
つたのだというような
印象を天下に与えようとするような下心があ
つたのではないかというふうにすら推察をされるわけであります。
そういうようなことを考えますと、そういう諸般の問題に基いて行われた
処分に対する
不当性、忿懣というものは、今日に至
つてもまだ我々には消えないわけであります。要するにこれらの
遵法闘争にいたしましても、
賜暇戦術にいたしましても、私
どもの考えております根本的な問題は、単に当面の
労使間の
紛争を解決をするための手段であるというだけではないわけであります。考え方としては少い定員で、足りない人間で過重労働をさせないための反省を
当局に求めるということと、輸送力が不足なままずるずると無理な輸送をや
つてお
つたという、こういう実情を少しでも匡正をさせるというところにも狙いがあ
つたわけであります。
従つて我々のと
つた行動がいろいろと御批判もあ
つたかとは存じますが、これをかいつまんで申上げるならば、要するにこれは道路をよくするための道普請と同様なのが昨年以来の私
どもの
行動である、このように確信をしております。
道路をよくするための道普請を行
つて、そのために多少の廻り道をしなければならんという
事態はあ
つたかも知れない。併し私
どもの考え方としては、
公共企業体等労働関係法の第一条にある目的を完全に行うことと、鉄道が
国民のための
国鉄としての正しいあり方を示すためには、こういうようなこともあえて行わなければならないという考え方に立
つて実施をして来たことであり、これについて我々はやましい気持を何ら差挾んではおらないわけであります。
そういうような点を十分に御理解あらんことを重ねてこの席を借りて
お願いをする次第でございます。