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説明員(中西実君) 先ず日本製鋼所室蘭の争議その後の
状況について申上げます。実は表面発表にはならなか
つたのでありますけれ
ども、内々争議が非常に長引いて参りましたので、中労委の中山会長に労使からの斡旋方の
依頼もありまして、新聞にも最近では出ておりますが、中労委の労働側
委員北川氏と、日鋼の会社側会長の石塚氏と三
者会談で事を運んでおられるようでございます。問題は非常に原則論について双方の
意見の対立がございまして、—応中労委の仲介によ
つてものことを
解決したいということにつきましては一致しておるようでございますが、更に原則論において若干の三
者会談におきまする話合いは一致いたしておりません。今日の中労委の総会でこれを正式に取上げるかどうかということもきまるように聞いております。いずれにしましても、やはり中山中労委会長を中心とした斡旋によ
つて解決されるようなことになるのじやなかろうかというふうに考えております。
それから次は、近江絹糸の問題は、一応九月十六日の中労委斡旋案で労使ともこれを受諾いたしまして、妥結したのでございますが、その後細部に亘りましての団体交渉が
相当円滑を欠いておりまして、そのために労使間にいろいろとトラブルが起りつつございますが併し、懸案でございました近江絹糸の労働管理のスタツフ、即ち労務担当重役或いは
労務部長というような人の人選もきまりまして、これら新陣常を擁した会社側と組合との話合いということがいよいよこれから始まるということになりました。
従つて漸次細部の問題も
解決をして行くのではなかろうかというふうに考えております。
それから東京証券取引所の争議でございますが、これは御承知のように都労委の斡旋によりまして、今月の五日都労委の斡旋案、現行ベース一万二千三百九十九円を二七%アップする、但し十月の昇給分一〇%を含む、なお或る
程度の例外規定を設けて、ユニオン・シヨツプ制を認めろという内合の調停案、これを双方が受諾いたしまして一応問題は
解決をしたのでございます。ただこの争議の最中におきまして、十月二十六日二十四時間ストに入りました際に、そのストが限度を越えたということで、これに対して
使用者側からの要請もあり、実力を以てピケの入口を開きまして、中へ立会人等が入
つた。で、その間に七名の検束者を出した。目下検察当局において調査が行われつつございます。
次に山梨
中央銀行の争議、これは銀行の争議が主として
中央銀行を中心に全国的に次々と発生したのでございますが、山梨
中央銀行につきましては、今年の二月二十二日から、
給与体系の合理化と賃上げ、更に
退職金増額要求を掲げて団体交渉が重ねられて来たのでございますが、他の銀行が次々と
解決しましたのに、これが最後に残りまして、遂に十月の二十三日から二十四時間スト、二十四日からは四十八時間スト、二十六日から無期限ストというふうに実力行使に入る事態になりました。その間、地労委が一度斡旋を行な
つて斡旋案を出したのでありますが、銀行側は呑みましたが、
組合側がユニオン・シヨツブ制の即時締結ということを斡旋案において認めてないということが不満で、今申したような実力行使に入
つたようなわけであります。このユニオン・シヨツプにつきましては、実はそれより先、十月十三日に執行部反対派が第二組合をつくりまして、山梨
中央銀行
職員組合約七百名弱のところへ二百五十名の第二組合ができたわけであります。
従つて第一組合と第二組合との争いがこの争儀を更に
解決困難なものにしたのでございます。このストに対しまして、銀行側は十月二十三日に占有解除の仮処分の申請を行な
つております。二十六日に仮処分の
決定がなされまして執行されたのでありますけれ
ども、併しながら山梨
中央銀行
職員組合の第一組合と全銀連だけが対象のように仮処分に書かれておりましたので、他の外郭団体がこれは処分
決定の対象外であるとしてピケを続けるということで、
相当我々から見ましてもき過ぎの争議の事態があ
つたわけでございますが、更に地労委が両斡旋に入りまして、十月三十一日山梨地労委が斡旋案を出しました。これは大雑把に申しまして、賃上げにつきましては、九月三十日までは月額七十万円、十月一日以降は九十万円増額するということで、賃上げの問題はそういうことで
解決するように
なつた。更にシヨツプ制につきましては、銀行と組合は直ちに次のような労働協約を結べ、但しその効力の発生は十一月二十日として、その間に組合は山梨
中央銀行
職員との統一に
努力するというわけであります。「次のように」と申しますのは、「銀行の従業員は銀行、組合間で認めたものを除いてすべて組合の組合員でなければならない。銀行或いは組合から脱退又は除名された者を直ちに
解雇しなければならない。」現在聞くところによりますと、第一組合と第二組合が三百六十対三百四十でございますか、殆ど半々の
事情にございまして、今月の二十日までにこれが一緒にな
つてそうして会社とユニオン・シヨツプ制を結ぶという
内容にな
つておるわけでございますが、すでに二十日も間近いのでございますけれ
ども、今のところその両者が円満に統一しそうもないような
事情に見ております。
従つてその点が若干、一応の会社との間の争儀が済んだようなものでございますが、組合間のそうい
つた不一致のために会社との協約を締結する運びに至らないのじやないかということを
心配いたしております。なおそのほかに
退職金の問題或いは厚生資金の問題等についても斡旋案が触れておりますが、これは若干細かい点になりますので省略いたします。
次は港湾労働の紛議でございます。これは問題は昨年六月から全港湾
労働組合が、ベースアツプ要求をして来たのであります。ところがその相手方の港湾運送業者というのが全国で約二千ばかりあるのでありますが、この港湾荷役につきましては、船内荷役それから艀、それに沿岸と、それぞれの荷役につきまして地方によ
つて違いますけれ
ども、一トン当り幾らという公示価格があるのでございます。ところが今申しましたように業者の数が非常に多いというようなことで、競争激甚でありまして、この公示価が守られていない。ところによ
つて違いますけれ
ども、大体公示価格の平均二割くらい値引して運送業者が運送を引受ける。そのために運送業者の経理が非常に悪い。
従つて従業員が賃上げ要求しても実現できない。そこで
労働組合としましては、それは先ず根本である運送業者の競争というものを或る
程度規制して、そうして公示価格が守られるようにしなければいけない。これが第一だということで、その点について業者に迫
つてお
つたのであります。ところがなかなか埓があきませんので、組合としましては、つい最近に重点的に輸入食糧の輸送部門について
一つストをやろう、こういうことに
なつたのであります。港湾従業員全国で八万でありますが、全港湾に属しておるのが一万五千くらいございます。而もそれは艀荷役が多いというので、そのストの効果が全体でどの
程度ひびくかは詳細にはわかりませんが、併し輸入食糧だけを重点的にやるということになりますと
相当な被害が出る。そこで
労働省としまして或いは若干出過ぎるかも知れませんけれ
ども、輸入食糧を所管しております農林省の食糧庁と、それから港湾行政をや
つております運輸省の港湾局、この
方面からも
事情をよく聞いたわけであります。輸入食糧は、これは米の値段のほかに、運賃、保険料、それからその港湾荷役の費用、これを公示価格そのままをなかへ織り込んでちやんときめてしま
つておりまして、そうして一定の倉庫に納ま
つたものを食糧庁が買取る、こういうことにな
つておるわけであります。そこで結局は輸入商社が公示価格を下廻
つた港湾荷役を要求して、そうして結局港湾運送業者がそれを辛抱しておるという恰好にな
つておるわけであります。そこで一応我々としまして、公示価格がある限りは、やはりこれは守られなければならない、それが守られないで、そのしわ寄せが
関係労働者に来ておるということは、これは我々としましても遺憾と存じますので、そこで近く労使、つまり
労働組合と運送業者、それに食糧庁、それから運輸省の港湾局、それに米を輸入する貿易商社、この五者を寄せまして我々オブーザーバーで、
一つよくその間の話合いをして、そうい
つた不合理と言いますか、労働側にしわ寄せされておるような
状況は排除できないものだろうか、十分話合いをして事を
解決したいというので、実は労政局で斡旋役を買
つて出ましてや
つておると、こういう
事情にございます。
大体最近の主なる
紛争につきまして以上のようでございます。