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1954-10-26 第19回国会 参議院 労働委員会 閉会後第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月二十六日(火曜日)    午前十一時十七分開会   —————————————   委員の異動 十月十二日委員吉田法晴辞任につ き、その補欠として大和与一君を議長 において指名した。十月十五日委員石 川清一辞任につき、その補欠として 菊田七平君を議長において指名した。 十月二十三日委員菊田七平君辞任につ き、その補欠として石川清一君を議長 において指名した。十月二十五日委員 大和与一辞任につき、その補欠とし て吉田法晴君を議長において指名し た。本日委員赤松常子辞任につき、 その補欠として相馬助治君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田村 文吉君            田畑 金光君    委員            吉野 信次君            阿具根 登君            吉田 法晴君            相馬 助治君            大山 郁夫君            市川 房枝君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    調達庁次長   山内 隆一君    労働省労政局労    働法規課長   石黒 拓爾君   —————————————   本日の会議に付した事件労働情勢一般に関する調査の件(駐  留軍労務者労働問題に関する件)  (新経済政策労働政策に関する  件)   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。  本日会議に付しまする事件につきましては、公報でお知らせをいたした通りであります。  先ず順序を変更いたしまして、駐留軍労務者労働問題に関する件を議題にいたしたいと思います。本日は調達庁から山内次長海老塚労務部長等においでを頂いております。  本件につきましては、私ども労働委員会は、問題が発生いたしまして以来ずつと関心を持つて眺めておりましたし、特に前回の委員会におきましては、この点について、労働委員会としての政府善処を要望する決議も行なつた次第であります。従いましてこの決議に従いまして政府側においても善処をして頂いておることと存じますが、我々の今日まで承知しておりますところでは、事態はまだ好転をしていないように考えております。従いましてその後の経過につきまして調達庁側から先ず経過の御報告を願いたい、こう考えます。
  3. 山内隆一

    説明員山内隆一君) 今日は私のほうの長官参つて説明すべきところでありますが、あいにく先週の土曜から少し腹痛がいたしまして、今病院に入つておるような状態でありまして、私代つて今までの極く概略を御説明申上げます。  委員長のお言葉がありましたので、一応九月十日までの情勢は御報告申上げたかと思つております。その後の極く概略経過を申上げて、そして最近の直面しておる問題の要点についてお話申上げてみたいと思います。  九月十日に調達庁としては軍に対して、軍の退職手当増額拒否書簡に対する反駁雷を提出いたしたわけであります。それからまあ組合側の八割増には応じがたいが、解決に努力するということは組合側のほうに申上げてあつたわけですが、組合としてはとにかく三者会談を開いてくれという市川委員長からの要求があり、長官から司令部のほうにそれを提出して、それから以後は三者会談開催について折衝を続けたわけであります。で三者会談折衝をいたしましたが、軍としては三者会談を初めは開く意思がない、開いても殆んど意味をなさんじやないかという考え方で絶えず蹴つておりましたが、その後三者会談を開くことの原則は認める、併し今開いても効果がないから、その前に二者会談を開こう。二者会談についてはこちらも事務的の準備を要するから、いずれいつ開くかということはお知らせするということになつておりまして、十月の十五日になつてからテンプル少将から二者会談は来週決定する、而も来週月曜あたりに何とか返事をしたい、こういう電話がありましたが、その後組合のほうから是非早く三者会談を開いてくれ、どうしても三者会談がすぐ開けないならば二者会談でもいいからすぐ開くように、而も一十三日、期限をつけて、それまでに明確にしなければ我々としては自由行動をとるというような強い意見の開陳がありまして、それからなお私どもとしても組合意向に副うべくいろいろの手をとつたわけでありますが、漸く二十三日、土曜日でありますが、午前九時から二者会談を開く、出て来い、こういうような通知を受けたわけでございます。  この会談の問題はそういうわけでなかなか三者会談を開くところまで行つておりませんが、その前提である二者会談を二十三百に開き、又今後折衝を続けなければならん問題が残つておるわけであります。ところが内容的に申しますというと、内容そのものじやなくして、やはり一つ経過の問題になりますが、軍はどこまでも八〇%増というようなものは初めから問題にしていないようでありましたが、調達庁の案に対してもなかなか耳をかさない。調達庁としてはいろいろの理由から調達庁の案の必要なることを主張しておりますが、軍のほうから先ほど申しました九月十日に、もうすでにその時分調達庁案を受入れる意思がないことがわかりまして、それに対するいろいろ向う理由が出て来ておりましたから、それに対する反駁書を提出し、それから後も何回かに且つて、多少そのときによつて問題の取扱いの重点が違いますけれども、大体同じようなことを繰り返して、軍は軍の主張をする、調達庁はその軍の主張に対して結局同じような意味反駁書を出すというようなことを数回に且つて重ねておりましたが、三十三日の会談のときに、私どもとしては今まで出した書面の中の極く要点を強く説明して理解をしてもらおうという考え方で、強くその三者会談開催要求したわけでありまして、従つて開かれた以上はこちらの言い分を十分聞いてくれる、こういう期待を以てその会談に臨んだところが、先方としては自分の従来の主張した意見を更にまとめて軍の意向として、これより一歩も退くことはできん。従つてもうこれで以て全部組合その他にも伝達するようにというような言い分がありましたが、私どもとしてはそんなことで蹴られてはたまりませんので、どんなことをしても一つひつ掛りをつけて主張したいと思つて、漸く二十三日は蹴られそうな恰好になつたのですけれども、遂に私どもの言いたいこともかなり言う機会ができ、そうして又それがもとで今後のなお折衝の余地が残つたわけであります。長い間いろいろ折衝いたしておりますが、今のような状態で、まだ本当に数字的の折衝に入るところまで参りませんで、その前提であるいわば理論的の問題についていろいろ意見交換をしておる。而もその意見交換がなかなか妥協がつきかねるような状態になつております。  以上が極くかいつまんでの経過でありますが、然らば二十三日の会合で、これは過去の長い間の文書のやり取りを全部総合したことになりますが、どういう点が今問題になつているかと申しますと、三つの点が問題になつて、なかなか両方お互い主張を譲らないというような状態であります。その前にもう一つ、結局この問題は、私どもとしては今の制度からいうと、駐留軍労務者の現在の規則計算した退職手当の額というものは国家公務員に比べて劣つている、従つてこれはどうしても前からの沿革国家公務員並にすべて取扱つて来ているのだから、国家公務員がその後退職手当が漸次改書されて来ているから、当然駐留軍労務者に対しても同じような意味の改訳は少くともやらなければならん、こういう主張をしております。従つてこの金額は今の制度では国家公務員より低いのだから、むしろ若干上廻るところできめなければならん。こういう考えを持つているのに対して、軍としては、いや、今の制度計算しても国家公務員よりも却つて駐留軍労務者が多くなつている。だからこれは変える必要はない。これがまあ結論なんですが、どうして同じ規則によつて計算するものが、一方は、日本側としては駐留軍労務者のほうが国家公務員より低いとなり、軍の計算ではむしろ駐留軍労務者のほうが高い、おかしいじやないかとまあ御不審が起るわけで、なぜそう違うかというところの基礎になる一つ方針といいますか、理論といいますか、そういうところの違い、問題が三つあるわけであります。一つ失業保険法に基く保険金というものは、軍の主張によれば退職手当と同じだ、まあこう言うのです。従つて失業保険法による保険金もみな退職手当の中に加算して取らるべきものである、これが第一点。それから第二点は、駐留軍労務者については解雇予告手当制度が、一カ月前に予告して、それからあと一カ月の賃金を支払うんじやないか、これも計算に入れるべきだということ。それから給与基本ベース駐留軍労務者のほうが非常に高いのだ。だから元が高いところへ持つて来て更にそれに或る率を増額するなんということになるとますます高くなる、そういうことをする必要はない、まあこういうような考え方向うはどこまでも手取りが幾らか、それを比べてみれば、駐留軍労務者のほうがいいじやないかという言い分ですから、ベース違いもみな今の比較の中に入つてしまう。こういう三つの点が議論の焦点になつておるのであります。  そのうち特に失業保険の問題が一番大きな問題と思われますので、そのときの私ども主張ちよつと御紹介申しますならば、その違いを五つ挙げて説明をしたわけでありますが、失業保険は、退職失業して公共職業安定所就職斡旋の申込をした場合にのみ給付される。然るに退職手当退職すれば失業の有無にかかわらず支給されるのじやないか、これが第一点の違い。第二点は、退職失業中の生活保障失業保険は主としておる、従つて勤務年限には関係なく支給される。ところが退職手当は在職中の勤務に対する褒賞の性質を多分に持つておるから、勤務年限の長い者ほど有利な支給条件になつておる、これが第二の違い。第三は、失業保険については退職しても失業するかどうか不明確である、失業しても就職までの期間はおのおの人によつて違う。従つて給付額は不確定である。退職手当のほうは退職時に給付額は確定しておる、これが第三の違い。第四点としては、失業保険は国、事業主労務者の三者が負担する社会保障制度一つである。退職手当事業主の一方的の負担となつているものであつて社会保障制度ではない。それから第五番としては、日本においては失業保険退職手当制度沿革的にも実際的にも違つた観念の下に取扱われておる。退職手当というのは非常に古くから行われておるが、失業保険は極く最近の制度である。そして会社等においても失業保険が実施されても退職手当制度はなくしてない。まあそういうことを挙げて、これが違うのだ、だから退職手当計算失業保険保険金を入れるべきものでないんじやないかということを強く主張しているわけであります。今の解雇予告手当のごときは殆んど問題にならん。ただ予告するだけで、結局労働に対する対価であるのに変つていないわけだ。何ももらうような恩恵的なものじやない。それから給与ベース違いというのも、昭和二十三年四月当時、国家公務員駐留軍労務者ののいろいろの状態を比べて、成る程度駐留軍労務者のほうが上廻つておることが正しいのだという前提できめて、そしてその後いろいろの期末手当についても、或いは石炭手当とか、まあ各種の手当等につきましても、絶えず或る比率の違いというものは保たれて今日まで支給せられて来ておる。退職手当だけ全然別の観念でここで新規播き直しでやらなければならんという理由はないじやないかというような主張をしておるわけでありますが、そんなわけで私どもはまあ日本側主張が正しいと思つておるのでありますけれども先方の納得するに至つていないというのが今日の状態であります。
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それから駐留軍組合のほうの動きを御説明に附加えて頂きたいと思います。
  5. 山内隆一

    説明員山内隆一君) 組合側要求にかかる点は、これは最初現在の駐留軍労務者退職手当の規定による計算に対して八割増をしてくれということが組合の大部分の、これはまあ全部ではありませんが、持つておる全駐労の主張でありまして、長い間組合としてはその主張を続けて来たわけであります。調達庁のほうの案はもう御承知かと思いますが、余り全面的に亘つて今変えることは却つて必要もない。徒らに時間がかかるから、国家公務員並みにする意味で、勤務年数少い者に対して公務員の場合と同じように最低保障制度を取入れてやるべきだ、そういう主張で軍に迫つてつたわけでありますが、最近非常に軍のこの問題に対する強硬な反対意向等が反映してか、或いは早く解決すべきだという主張のためか、すでに必ずしもその八〇%増を主張するものではないのだというような考えで、非常に弾力ある考え方になつて来ておるのであります。それから調達庁は勿論まだ軍に対して調達庁の案もこれを控えめにするような言い分はいたしておりませんが、組合との間には、私ども案自体も決してこれはこれ以上の非常にいい案はないのだというような考え方を持つているわけじやなく、当時の事情から取急いで先ず先ず手取り早く解決するためにこういう案がいいじやないかという考でおつたわけで、より以上のいい案があれば必ずしも固執はしないと、私どもも或る程度の弾力を持たしておるわけでありまして、従つて政治的の折衝はよほど今度話しやすいじやないかと思いますが、ただ遺憾なことは、軍との交渉が先決問題で、軍が先ず二者会談で或る程度調整をしなければ組合と三者会談をやつて意味をなさないじやないかというようなことを言つておるような状態で、まあ三者会談に入つたのでありますが、なかなか入つてみますと、そういう金額の多寡を打合せておるような状態ではありませんので、全くその根本の問題について非常に考え方が開いておるというのが今の実情であります。
  6. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 実は駐留軍の争議について米軍との間に若干行き違いのあつた点も新聞等承知しておりますが、組合の運動のほうの今後の見通しをどういう工合にキヤツチしておられるか、これがわかりましたらちよつと……。ストライキをやつておりますね。そういうような動きについて若しですね、問題が解決しないということで、このままだんだんと遷延して行きまして、第三、第三のこの間のような米軍との間の混乱が起きるということは大変いろいろな点で工合が悪いと思います。そういうふうな点は今後どういうふうになるか。
  7. 山内隆一

    説明員山内隆一君) 今委員長からのお尋ねの問題でありますが、これは非常にまあ重大なむずかしい問題でありまして、御返事に困るわけでありますが、組合としては、これはもう当然組合主張を通すための一つ方法として、法律上認められておる手段でありますので、ストをやるということはこれは当然あり得ることであります。過去においてもたびたびあつたわけであります。で今年この問題を解決するための方法としても、すでに御承知のように四十八時間ストもやられたわけであります。今後も組合意向としてはいつまでもはつきりせんようなことであるならば自由行動をとるということは、恐らくストもやるという意思と見て差支えないと思います。私ども大体ストをやる意思があるものなりと、かように考えておりますが、軍とのいろいろ書面やり取り、殊に直接会つて感じ等からいいますと、なかなか軍の退職手当増額の問題に対して反対意向が強いことは先ほども申しましたのですが、その強さ加減と申しますか、そういう点から言つてストというものは、どうも民間の会社工場等における場合はストというのはかなり効果を挙げているようでありますが、単に対する問題としてはどうもこのストは余り効果がないんじやないか、むしろ逆に、ストをやることは軍に迷惑というか、或いは日米の条約の関係から来る防衛の責任という点から言つて非常に支障があるというようなことから、却つてどうもストをやることがますますこの折衝に不利じやないかというような感じを私どもは持つわけであります。殊に単の面子から言つても、ストをやるから仕方がない、若干でも上げるということは、恐らく仮に財源的に多少のやり繰りはできて出そうという気持が仮に起つたといたしましても、ストをやることによつて却つて軍面子で出さんというようなことになる慮れがありはせんかということを私どもとしては憂慮いたしておりますので、今後この問題に関係する問題の取扱いをどうするかというようなことはなかなかむずかしい問題として絶えず注意をいたしておりますが、そんな感じを持つておる次第であります。
  8. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 一応報告を頂きましたから御質疑がありますればお願いします。
  9. 田畑金光

    田畑金光君 只今説明の中で二、三ちよつとお尋ねしておきたいと思うのですが、軍の主張は、只今次長説明にもありましたように、日本側立場から見ますと非常に不合理な感じを持つわけです。これはアメリカの場合にはそういう労働慣行というか、これは法律上、制度上、失業保険退職手当関係については軍側主張というものが労務慣行として確立されておるのかどうか、この点について一つお伺いしたい。
  10. 山内隆一

    説明員山内隆一君) 先ほど一審大きな問題についてちよつと私ども考え方、軍の考え方を申上げたのですが、どうもそうわかり切つた点について非常にまだ意見違いが現われておるということは、向う法律慣習等日本事情と非常に違うことがよほど又理解をにぶらせているのじやないかというふうに考えております。なぜかと言いますと、私向う制度をよく存じませんが、失業保険は無論広く行われておりますが、退職手当というものは、どうも向うのほうでは余りないと言われております。そんなことは向う法律慣習の問題もあるが、そのほかに一般生活状態が非常にゆとりがあるために、自然そういう退職手当といつたようなものはなしで、法令の上の失業保険法で或いは賄いがつくというふうになつておるのじやないかと思います。それからもう一つ日本法律の上から言つてちよつと向う主張するのに幾分か手懸りになるような条文は、失業保険法の第七条で……、国家公務員に対する保険適用の問題は、六条では原則は認めるようになつておりますけれども、七条でこれは排除しておるというようなことが……、だから退職手当制度があるから失業保険適用をせんのじやないかと、逆に言えば失業保険というものももう退職手当の手に皆入つておる一つのものではないかというような変な説き廻しをしておるようなところから見ますと、向うのほうのすべての法律慣習等から見て、これはもう別物じやないという強い考えを持つておるところへ持つて来て、ちよつとしたそういう条文があるから非常に主張しておるのではないかと思つております。
  11. 井上清一

    井上清一君 只今調達庁次長さんの御説明によりますと、進駐軍労務者待遇国家公務員より劣つておる。国家公務員待遇については非常にまあ改善を見ておる。だが、駐留軍労務者改善がそれに伴つて一緒には行つていない。従つて退職金については十分この際考えなければならんという基本的な考え方軍当局との折衝になつておるというようなお話なんですが、私はどうも国家公務員駐留軍労務者と、何と言うか、同じような考え方をして行くということについては、私はどうかという考え方を持つておるのですが、失業保険金の問題につきましても、解雇予告制度の問題にしても、又貸金ベースが高いということについていろいろ軍当局調達長主張に対して反駁を加えておる。私は軍の主張についても或る程度筋通つた議論じやないかと、こう思うのです。そこでできるだけ駐留軍労務者退職金の問題について考えなければならんということについては私もわかるのですが、もう少し国家公務員と同じように考えなければならんというような基本的な考え方で御折衝なさるということは、私は折衝根本において若干違つておるじやないかという感じがするのです。この点についてどういうふうにお考えになつておるか。又こういうふうに失業保険金の問題、予告制度の問題、或いは又賃金ベース国家公務員とは違つて高いのだということについて、私はどうもそれを覆すだけの根拠は乏しいのじやないかという感じがするのです。ですから退職金の問題を取上げて軍と御折衝になる場合に、もつと違つた角度からやらなければならんのじやないかというふうに思いますが、これについて一つ意見を承わりたい。
  12. 山内隆一

    説明員山内隆一君) 今のお尋ねは、なかなかこれも比較の仕方によつていろいろ意見がたつのじやないかと思います。国家公務員に対していろいろの恩給あり退職手当もあり、又最近は待命制度というようなものもありますので、それらを考えれば、なかなか公務員に対する広い意味給与制度というものは相当改善されて来ているということが言えるわけです。従つて駐留軍労務者についても、まさか今公務員じやない者に恩給とかいうことは問題になりませんけれども、大体過去の沿革から見て、駐留軍労務者という者は以前は国家公務員の時代がありましたが、その後でも国家公務員に準じた、大体同じような待遇をするということで方針がきまつているところから見ますと、退職手当についても国家公務員のほうは、二十三年の同じに出発したその時分から大分改善されて来ているが、今の駐留軍労務者退職手当については、給与はこれは国家公務員が直るたびに駐留軍労務者についても直して来ておりますけれども退職手当だけ全然手を著けておりませんわけで、そういう形式の点から言つて、それは直す必要があるのじやないか、かように思つておるわけであります。根本の問題になつて来ての比較で、失業保険手当というようなものは退職手当と見るべきものだというようなことにして、それまでも入れますと、国家公務員にはそれはないし、駐留軍労務者については失業保険適用しておりますものですから、金額計算をしますと、失業保険を入れますれば却つて額駐留軍労務者のほうが高くなるということになることは間違いないわけであります。ただ非常に失業保険手当というものは何としても失業して、整理を受けましてももらえるかどうか、又もらえるにしても一カ月なり二カ月のものであり、或いは最高の六カ月のものもあつて、具体的の人をつかまえたとき、この人は何カ月手当をもらうのだということははつきりしませんものですから、従つてこの平均的の計算をして比較する場合にも失業保険を入れるということについてはどうして入れるか、その辺にも事務的な問題がありまして、なかなか話がつかないわけであります。
  13. 相馬助治

    相馬助治君 私は労働委員として新らしいので、前後の事情をつぶさに知つていないので、或いは感違いがあるかも知れませんけれども、今の調達庁の御説明を聞いた範囲内において極めて明確であることは調達庁アメリカ軍当局交渉は行き誌つている。いわばこのまま両方議論を繰返しても見解の相異である、こういうふうにならざるを得ないのじやないかと思うのです。ところが現実に駐留軍労務者給与の面においても、それから法律上から来る身分の安定の面からしても、国家公務員に比べてむしろ悪い立場に置かれているということは今日常識だと思うのです。にもかかわらず、軍当局がそういうことを言うのは、退職金の問題、それから今の失業保険の問題、これらまで加算して、駐留軍関係労務者給与というものは国家公務員を上廻つているのだというようなことを強弁するに至つては、これは調達庁軍当局との話合いでは絶対に解決できないとこう思うのです。そこで調達庁は、これを抜本的に解決するためにどういうことを考えているのですか、それを尋ねたいものであります。  具体的に何を尋ねたいかと言えば、私文部委員関係しておりますが、大阪の市立大学の接収解除の問題について軍当局交渉した場合は全然これは将があかなかつたことは、調達庁で御存じだと思うのです。これが一旦国会の問題となり、そして我々がアメリカの大使館に意のあるところを伝え、日米親善の意味合いからもアメリカ軍の軍当局がとつている態度というものは好ましくないというようなことが問題になりますというと、そういう輿論の裏付けを以てして問題が急速に解決の方向に向つているということは、次長さんもよく御存じだと思うのです。私はこの段階に来れば、調達庁向う軍当局と話合いをするのでなくて、吉田内閣の一つの責任として、国際協調の面からもこの駐留軍労務者の問題を単なる小さな問題としてでなくて、アメリカ政府に向つてこの問題を一つの問題として提起して、少くとも給与の問題というものは見解の相異もへつたくれもないのであつて、もらう者の身になつてみれば、いいか悪いかはつきりしているのでありますから、そういうふうに問題を新たな角度から見面して、これに対して何というか、抜本的な解決の方向に向うように努力される用意があるかどうか。あるとすればその具体的な方向を承わりたいと、こういうふうに思います。先ほど申しました通り、そういういい話が労働委員会でいつかあなたのほうから出ておれば速記録でも読みますから、いついつかにこういう答弁をしたということをおつしやつて下されば結構です。
  14. 山内隆一

    説明員山内隆一君) お答えいたします。この問題は非常に大きな問題で、むずかしい問題でありまして、法律の上から言えば調達庁長官が責任者になつておりますけれども、併し決して法律の上から調達庁長官が責任者であるというような、そういう事務的な考え方で到底解決のできる問題ではありませんので、お言葉のように大きな政府の問題として、最近はそういう意味で取扱つておりまして、調達庁としても無論事務的の責任者であるから手を挙げるというような、そういう弱音は吐きません。むしろ強い考えでやつておりますけれども、一方緒方副総理、今は外務大臣を兼ねておりますけれども、外務大臣、それから調達庁担当であり労働大臣である小坂大臣、そういう密接な関係のある大臣がたには十分お話をし、そうしてそれが解決方についての指示を受けております。それぞれ大臣としてもいろいろその所管において御心配になつて、いろいろな角度で折衝もいたしてもらつているわけであります。現に最近、二十三日に二者会談を開くという問題だけでなく、外務省も動いて、そうして軍だけでなしに大使館にもお話し、大使館のほうからも応援をして、それから緒方副総理も非常に心配されて、困つている情勢も話もし、緒方さんからも一つ向うの責任者に話してもらいたいというようなこともお願いしたような状態であります。小坂大臣とは、担当大臣であるだけ絶えず連絡をとつております。今朝も大臣の意向として秘書官を通じて私のほうにも電話がありまして、そういう意味で大きな問題として取扱つて解決に努力しているということだけを先ず申上げておきたいと思います。  それからもう行詰りの状態である、見方によれば、或いは先ほど私が申しました大きな個々の二つ三つの問題について如何に話合つてもまだ何ら歩み寄りができていないという点から申しますと、又一種の行詰りということにお取りになつたことも無理からんと思いますが、先ほども申しましたが、向うの責任者であるテンプル少将の話によりますと、根本の理論として我々は譲るつもりはないけれども国家公務員駐留軍労務者の同じ職種であり同じ経験、同じような勤労状態にある者を具体的に取上げて、そうして数字を算出して比較したデータを出してくれ、それで駐留軍労務者のほうが国家公務員より少いということが現われたときには、そのときには向うも大いに一つ相談に乗ろう、又考慮も払おう、それが今後の折衝を続ける唯一の問題だ、こういうことを言われておりまして、私ども根本の理論をそつちのけにされては困るけれども、それで争つておりましてはいつまでたつても進展がないので、そういう数字を作つて出しますからそれに基いて十分検討を願いたい、よろしいということになつて、ただ向う考えている枠の中でだけ計算してくれというようなことを言つておりますけれども、それでは私どもとしての計算もなかなか立ちませんから、向うの言う考え方計算もできるだけしてみる、こちらの主張に基く計算の仕方もして、そうしてそれによつて必ず大きな違いがあるから、どういうところに大きな違いができるかということになるというと、根本の理論の問題になつて、そうして又いろいろ理論闘争をやるということにいたしたいと思つて、今数字の計算をやつております。勿論平均ベースによる国家公務員駐留軍労務者等の関係については或いは国会の各委員会等でも説明をしたこともあると思いますが、そういう表もできておりますが、今言う具体的の人の比較をいろいろサンプルのようなものを取上げて計算をした比較を作つてみる、これを今やつております。そして調達庁としましては、私先ほど申しましたようなこの比較の基礎になる枠をどうするか、こういうものは入れるべきじやない、こういうものは入れるべきだということについての調達庁の今考えていることは、これは各省の事務当局、関係当局とも話合つておりまして、殊に保険の問題のごときは労働省の失業保険課長、当然保険局長も同じわけでありますが、この間私ども折衝のところを聞いておつたようでありますが、完全に労働省の意見と全く同じだ、どこまでもこれは譲つてもらつては困る、一歩でもそれが崩れるということになると非常に他に影響するから、是非一つ調達庁として頑張つてもらいたいという労働省の意向もありますし、又労働省に言われるまでもなく私ども非常に正しいと思つておりますので、この正しいと思います主張だけはどんなことがあつても譲らずに頑張つて行きたい、かように考えております。
  15. 相馬助治

    相馬助治君 そうすると軍関係から、同一学歴、同一勤続の具体的な者について国家公務委員駐留軍労務者との給与の実態を比較検討したデータを出せという話に接して、調達庁はそのデータを出すことを承諾して作りつつある、こういうことですか、今……。
  16. 山内隆一

    説明員山内隆一君) その通りであります。
  17. 相馬助治

    相馬助治君 私その軍の要請を正式に受取ることのほうがおかしいと思うのです。というのは、同一学歴、同一勤続と言うても、その比べる場合には法的に労働者がどのような身分が保障されているか、安定しているかということの条件が一致している場合には今のようなデータを出せますけれども駐留軍労務者の場合と国家公務員の場合とは、その労働者としての立つている地域社会は違うし、それから社会的な基盤が違うところに問題があるのですから、そのデータを出して見たところが、荏苒日を空しくするばかりで、又問題が振出しに戻つて失業保険を入れるの入れないの、退職金がどうのこうのといつて、問題が蒸し返されると思うので、私はそのデータを出して問題が解決するとは思われない。今の次長さんのお話でも、その点については私が今言うているようなことを懸念されているようですが、問題はもつと政府が本腰になつて意見の食い違いを是正して、そうして妥協でも何でもいいからとにかく意見が一致して、基礎的な意見が一致して、その上にデータの提出なり何なりに応ずべきであつて、どうも私は交渉の順序がおかしい。別な俗な言葉で言えば弱腰過ぎるし、どうも附に落ちないのですが、これらについてはどのようなお考えか、再度一つ御見解をこの際承わつておきたいと思います。
  18. 山内隆一

    説明員山内隆一君) 只今の御意見一応御尤ものように思いますが、私も先ほど申上げましたように……。
  19. 相馬助治

    相馬助治君 一応御尤ものように思いますがというのは、大体は御尤もでないということですか。はつきりして下さい。私は本気で聞いているのです。
  20. 山内隆一

    説明員山内隆一君) 全部申上げてから……。  先ほどちよつと申上げたと思いますが、軍の一番の責任者であるテンプル少将としては、もう話をする必要ない、もう増額は認めん、いろいろな書面は来ているけれども、これは全部認めることはできんというようなはねつけたような恰好の言い分があつて、うつかりすると、それで手を切られてしまつては困る。それでいろいろ話合つた結果、今の数字問題のところまで来たわけなんです。そこで今御意見のありましたように、私どももなかなか比較というものはできないのです。必要な数字を出して見ても、これはいろいろの事情が違うので、数字を形式的に絶対額だけを比べて見て、一方が多いとか少いとかということによつてこの問題が解決すべきものじやないと考えております。その意味においては全く同感でありますが、さればといつてあの数字を、じやそういう事情があるから、予想されるから出さぬといいますときには、もう取りつく島のないような形になつてしまうと、これは私どもとしてはまだまだ大いに主張したい点がたくさんありますから、何とか頑張つて、まだまだ今後継続してやりたいという念に燃えておつたので、そのときの事情から言えば、それが唯一の今後の折衝の手掛りであるということを繰返しテンプル少将が言われましたので、そこで私どもも出そう、そこで出すに当つて、軍の希望の通りのものはむずかしい、恐らくできないかも知れませんけれども、作つてみます。併し又我々の考えているような今の平均べースのものは詳細できておりますけれども、個人々々の比較のものはなかなか拾うのがむずかしいのでありまして、どの程度似たようなものが拾えるかわかりませんけれども、私ども考えている枠の計算をしましたそういうデータのいろいろなものを出して折衝する。そうするとその間に今度数字を基礎にして話をしますというと、なぜ違うかということになつて、よほど一般抽象論をやるよりはわかりやすくなつて来るのじやないか。その機会に私どもが言いたい、向うとしては聞く必要がないというような事項でも大いに一つ主張して、そしてだんだんとこちらの考え方理解してもらうように持つて行きたい、そんなような気持がありましたので、同意をして今作つておるわけでありまして、勿論今御心配になられたような数字だけ出しますと非常に誤解が起りますから必ずそれには説明を加えて、そうでないと折角作つた意味をなさない。例えばまあ失業保険手当を入れろという向う主張に対して、これを入れるのはまさか六カ月をぶち込むわけには行かないから、過去の実績から見て、やめた人で失業保険手当をもらつた人の平均が三カ月になるか四カ月になるか、そういうデータがあるわけです。それから退職した人で失業保険手当をもらうようになつた人が何%あるかということもあるのでありますから、それらを総合した平均率を出して計算して載せておきます。具体的の内容の説明については、これは成るべく載せてあるけれども、この人が果してもらえるかどうかわからないじやないか、これじや意味をなさんじやないかという、こういう説明でもして蹴つてしまうということも考えられますので、とにかくそんなようないろいろな意味を加味してデータを作つて出そうということになつたわけであります。
  21. 田村文吉

    ○田村文吉君 調達庁に伺いたいのですが、今の軍で主張しておられます退職金というものは一人当りにすると大体どのくらいの金額になつておりますか。それから組合要求をしておられる八割増というものは、およそ一人当りどのくらいになつておりますか。又調達庁で中へ入つていろいろ御斡旋になつているので、必ずしもそれはきまつた線ではないと思うのですが、今までお話になつている線から言うと、一人当りどのくらいになるのか。併せて総体な金額でどのくらい違うことになるか。若しそれがわかればなお結構であります。ちよつとお知らせ願います。
  22. 山内隆一

    説明員山内隆一君) お答えいたします。今の現在の駐留軍労務者退職手当の規定によります金額でありますが、これは六カ月ちよつとを前提として、勤続期間の長い者は実は今殆んどいないことになつております。それは事実長いのですけれども、講和条約発効を一つの境として、過去の分については全部退職手当計算してお払いをいたしておりますので、そんな関係で期間計算はそれからになつておるので、短い者だけを申しますと……。
  23. 田村文吉

    ○田村文吉君 一人当り平均を出して頂けば結構です。
  24. 山内隆一

    説明員山内隆一君) ちよつと全部の平均より少し、無論平均でありますが、期間別にちよつと申上げて、六カ月までの者については、今の駐留軍のほうの現行規定によりますと二万五千円、これは平均ベースに基く計算ですが、二万五千八百六十円になります。それから組合要求による八〇%増によつて計算しますと四万六千五百四十八円、それから調達庁の拠出している案によりますと六五三千七百八十八円。それから便宜国家公務員の今の規定によりまして計算しますと四万二千七百八十四円となります。それから満二年のところを申します。三年勤務している者につきまして今の現行規定によりますと五万八千六百十六円、それから組合の八〇%増の要求が十万五千五百九円、調達庁の案によりますと九万四千八百二十円、国家公務員のほうでは七万一千一三百七円、大体そんなような数字になつております。  大体論から言つてみますというと、組合の八〇%増と調達庁の案を比較しましても、極くほんの短期間しか勤務してない者では調達庁の案のほうがむしろ遙かに高くなつております。これはなぜかと申しますと、調達庁の場合は国家公務員の場合の最低保障制を取入れて計算をしておるわけでありまして、そんな関係から多くなつております。その代り勤続年数の長いほうになりますと、八〇%増によりますれば非常に大きく開いて参りまして、例えば三年のところを比べてみましても、用達庁の案では十一万三百三十六円、八〇%増では十四万三千七百四十七円、そういう工合に勤続年数が多くなると八〇%増ではえらい開き方をいたします。これは現行規定によりましても、現行規定で丁度すれすれのようなところは、四カ年の勤務の者が現行規定による額と調達庁の最低保障額ではかなり接近いたしております。併しそれが一五年以上になりますと大体現行規定のもの、これは調達庁案では最低保障をとつたのでありますから現在のままになつておりますから、同じになるのは当然であります。そんなような状態になつております。一万五千人が整理されるという前提計算いたしますと、調達庁の案では六億円増、この六億円増というのは現在の規定によるよりは六億円増、それから組合案の八割増では十一三億増ということになるわけであります。
  25. 田村文吉

    ○田村文吉君 今のお話は組合案で十三億増、調達庁で六億増ということは、軍の計算をした数字よりはそれだけ殖えるというのですか。
  26. 山内隆一

    説明員山内隆一君) 現行規定による計算、言い換えれば軍の主張した額に比べてというわけであります。
  27. 阿具根登

    ○阿具根登君 只今説明の数字はこの前長官から聞いた数字とちよつと違つているようでありますけれども、その点については今は申上げないとして、この前の委員会でも問題になつておりました組合要求に対して調達庁は、この八割増というのは無理である、とても軍と折衝の段階に入るような数字ではない。それで調達庁が独自の案を作つた。これに対して組合反対である。そうするならば組合反対しておるような案を軍と折衝する場合に調達庁としては本当の折衝はできないのであろう。それで組合がこれを了解するかどうかという問題については、組合と十分話合いをしたい、そうして組合の了解を得たい。こういうことを長官も盛んに言つておられたと思う。今次長の話をお聞きして、組合は八割増については固執をしておらない、こういうことを聞いたのですが、それは調達庁の案を了解しておる、肯定しておるのだ、こういうように考えてよろしうございますか。
  28. 山内隆一

    説明員山内隆一君) この組合のほうの八〇%増は必ずしも固執しない。それじや何十パーセント増とはつきりした意見は出ておるわけじやありませんので、果して調達庁の案ならば呑むというふうに解釈していいかどうか非常に疑問であります。但しこういうことは計算から言えると思いますのは、勤続年数の短い部分については或いは私のほうの計算の数字等から言いまして、大体話がつくのじやないか。ただ私のほうの案というものは、先ほど申しました通り勤続年数の短い者について国家公務員と同じような最低保障制を取入れた案で、いわばほんの一部改正の案でありますので、組合が率は、或る程度増額の率は譲歩しましても、勤続年数の長いほうについてももうずつとその率、仮に三〇%増とか或いは四〇%増ということを作つてみましても、勤続年数の長いほうには調達庁は手を入れておりませんので、それについても全部手を入れるべしという意見になりますとまだ話がつかんということになると思います。ただ今は殆んど長い者でも三年半でございますから、今すぐ直さんでも近く基本協定のほうでどうせこの問題に入るからそのときに検討することにして、当面の必要に早く応ずるように、今どんどんやめて生活に困つておる人がありますから、そういう意味においては或いは折衝の如何によつて話がつくのではないか、かようにも想像されるわけであります。
  29. 阿具根登

    ○阿具根登君 この前この問題を質問しておりますので繰返したくないのですが、この前質問したのが九月の十日であります。そうするとすでに一カ月も経過しておる今日、同じような状態でそうして調達庁は同じことをやつておられる。そうして今の話を聞きますと、その間にすでに失業した人は生活に窮迫しておるから或いは調達庁の案を了解してくれるかも知れない。こういうようなお考え折衝を持つておられるというようにしか考えられない。一カ月半の間に私たちがあれだけ強力に御質問も申上げ、要望も申上げたのであるけれども、何一つそれが進展しておらない。まあ仮に調達庁の次長の御答弁で、一応組合側調達庁の案に折れてくれるだろう、そういうような安易な考えで進んだといたしましても、そうすればその責任は調達庁に全部あることになる。ところが調達庁は軍との交渉においてまだ全然打開の途も講ぜられておらない。こういうことになつて来ますと、どうなるのか。調達庁としてはどういう対策を持つておられるのか。調達庁自体でなくて、労働省にもまあ御相談あつて政府としての態度で進んでおられるということをお聞きしたのですが、そうすればこの責任は政府がすでに背負つておるのだ、政府に全責任があるのだ、こういうことに私は考えるのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  30. 山内隆一

    説明員山内隆一君) 先ほど申上げました通り組合との関係を話をする一方、軍との折衝もやつております。ところが何としても軍のほうで全部負担をする性質のものでありますので、軍との或る程度の話の見通しがつかんうちにはそう深く進んで組合と話をするわけに行かん。その点に非常に痛し痒しの点があるわけでありますが、そうこうしているうちに組合のほうから三者会談を申入れ、それを折衝する、或いは、二者会談について初めはいかんと言つたのをあとで原則は認める、だから必ずそれはいずれは三者会談を開くつもりだけれども、今開いても効果がないじやないか。その前にお互い管理者側として軍と調達庁との間でもう少し意見の調整を図らなければ意味をなさないのじやないかということになつて、そこで三者会談の問題を今度は折衝を続けたわけでありますが、その間二者会絞の意見の調整というものは、結局今の金額比較する基礎になる、どういう枠で比較すべきかという問題に入つて先ほど申上げましたような保険の問題とか或いは解雇手当、予告手当の問題とか、ベースの問題とか、いろいろに入つてしまつて、それを今度は一番重要な問題だから向う反駁されればこちらも反駁しなければならんということで、何としてもそれが話がつかなければ、結局数字に入つて意味をなさないというようなわけで、長く時間を経過いたしたわけでありまして、先ほど申上げましたように漸く今具体的な数字の問題で更に話合おうというところに来ましたので、取り急いでそれらの数字の計算をして早く出したい。もう二、三日中に提出して折衝したい、こんなふうに考えております。
  31. 阿具根登

    ○阿具根登君 調達庁が非公式に軍のほうと話合つてそうして中間の案を出されるのじやない、軍のほうの意向を聞く前に調達庁自体としては退職手当についてはかくあるべきであるという問題を打出したのだ、こういうことにつきましては私は非常に賛意を表するものでありますが、それなればそれなりに調達庁としては確固たる信念があるはずだと思う。そうして組合に対しても組合要求はこれでは高過ぎる、併し今のままでは非常にこれは組合が言う通りに無理だ、それで各般の情勢から眺めて見てかくあるべきである。国家公務員と比べてみればこれだけ上昇すべきであるということで、確信あるこの調停案を出されたと私は思つておるのですが、軍との折衝においていろいろ難関もあるようでありますが、その確信に向つて今でも全然譲歩するというか、どちらが譲るということはなくて、飽くまでもこれが正しいのだ、これを必ず通すというお考えがおありかどうかお伺いしたい。
  32. 山内隆一

    説明員山内隆一君) ちよつと速記をとめて頂きたいと思います。
  33. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記をちよつととめて下さい。    〔速記中止〕
  34. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。駐留軍労務者労働問題に関しましては、前回の委員会以後における経過について山内次長から詳細に報告を受けたわけであります。この際問題を早期に解決すべきでありますが、そのためには是非とも更に政府のお考えを質す必要があろうかと思いますので、緒方副総理、小坂労働大臣等に出席を求めたいと存じます。委員会は明日まででございまするので、早速委員長においてさように手配をいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ではさようにいたします。
  36. 吉田法晴

    吉田法晴君 大変御質疑を願つてなお補足してお尋ねするのは恐縮ですが、一、三伺いたいのですが、それは組合要求だとこうなる、調達庁考えだとこうなる、こういうお話でしたが、その中で最低保障の線を上に上げて行けばと、こういうお話がございました。これは下のほうの勤務年数の少いところでは調達庁案に最低保障を入れるとこうなる、こういう考え方だと思うのですが、それについてどういうようにお考えになつておりますか。調達庁としては今までの案が最も妥当だとお考えになるのですか。それともそういう下のほうに最低保障を入れればその線を引くことも論理的に当然だとお考えになつて、そういうほうがより合理的とお考えになつておるのか。合理性と言いますか、或いは調達庁退職金の問題についての論理的な考え方お尋ねしたい。
  37. 山内隆一

    説明員山内隆一君) 調達庁の現在のこの問題に対する考え方は、もうすでにやめておる人ができて非常にお困りになつておるというような状態であり、それから駐留軍労務者の長い勤務者であつても、講和条約の発効を一つの時期に区切つて退職手当を払つております関係で皆勤務年数が短いわけであります。実益から言うと短い勤務年数の三年以下とか、せめて四年以下を考えておけば今のところとしてはいいじやないか。それでなくては、折衝が徒らにむずかしくなるよりは、そういうできるだけ問題を圧縮して、狭い範囲でこの際解決して、そうして長い問題についてはいずれこれは今の基本協定の中で給与問題だけが残つていますので、そのときに十分全体の構成を考えていいのじやないかと、こう思つております。
  38. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすればその問題についてはあとで又緒方副総理といいますか、或いは労働大臣といいますか、御出席を願つて質疑をするということでございますのでお尋ねをいたしません。先ほどから委員長からもお話が出ておりましたが、この問題に関連をいたしましていろいろの問題が起つておる。例えば朝霞事件のごときはそうですが、秋はたまたま問題の起りました翌日参りまして、多少の調査をしたりしたのでありますが、これはストライキが行われようとする、或いはピケが張られ或いは使用者側からストライキ破りが行われる、これは普通の状態だと思うのでありますが、区域外に出て棍棒が振われ、或いは人事不省に陥つて道路上に倒れ、そうしてまあ警察もあれはひどいと言つておる。或いは検察庁も動いておりましたが、当のMPは依然として、私どもの参りましたときにも門のあたりでうろついておる。こういう実態を見ますと、あのストをめぐつてのこうした対立がああいう乱暴なことが行われ、或いは法が無視され、而もなお法の前に何ら処罰も或いは正当な法の行使も行われん、こういうことになりますと、米軍に対する附近の人たちの反米感情というものも当然起つて参ると思う。まあ退職金についての日本考え方ということもございますけれども、問題に関連して起りました問題から、更にああいう混乱が起つて参る、或いは不幸が起つて参る。而もそれが何ら処罰をされることもなしに過されるということになりますと、これは大変問題が深刻になつて参る、或いは複雑になつて参ると思うのでありますが、ああいう問題について如何ように処罰せられましたか、或いはその後どうなりましたか、この際伺つておきたい。
  39. 山内隆一

    説明員山内隆一君) この問題は誠に遺憾な問題でございまして、いろいろの点からこれは研究もし、解決しなければならん問題がたくさんあると思いますが、実は昨日極東軍司令部に警察庁長官、それから外務省の伊関国際協力局長、労働省の労政局長、私のほうの労務部長が集まりまして、やはりテンプル少将中心でこの問題が相当長い間論議されたのであります。  そこで私自身行つておりませんので、内容全体は承知しておりませんが、結論として、警察庁のほうで、大至急ああいうピケラインを張つているようなときに組合員外或いは組合員であつても働きたい人に働かせるようにすべきであるが、如何にしたらそれじや穏便に入れるか、そのやり方を詳細書面にして提出してくれ、こういうことで、警察側としては承知しましたということで最後は別れております。その議論になつた点は無論いろいろの点に亘つたでしようが、特に中心は、一体ピケを、張るなんていうことはストライキの期間中ならばわかるけれどもストライキ以外の時間にまで張るということは一体どういうことか、そんなことは不当じやないかという問題が論議され、それから今度は警察官はそこに立会つてつて、なぜ何もしなかつたかという問題を中心として、警察官というものはおのずから活動する限界があるのだ、その限界の問題で論議が闘わされている。それから中へ入りたい人に対して無理に押え付けることはできないじやないか、それはその通りだけれどもストに協力するように説得することはできるのだ、その説得というのは一体どの程度までが説得で、どの程度までが説得を逸脱した問題かというようなことが盛んに論ぜられたようであります。最後は非常にきわどい話が盛んにされたのですが、如何にしたならば働きたい者を働かせることができるか、その手続なり或いはそのときのやり方といいますか、そういうものを詳細に書いて出してくれ、こういうことでまだまとまつた結論が出ていないようであります。
  40. 吉田法晴

    吉田法晴君 大変どうも今までの関係者といいますか、向うとの話が方向を間違えておりますので、この点機会を改めてもち少し質疑をしなければならんかと思うのですが、結論はとにかく、いろいろ問題はあつたが、どうしたら働きたい者を円満に働かせることができるか、その方法日本政府側で軍に提供する。これでは問題を軍の要望の線で解決しよう、こういうことで、その前提にはピケの限界といいますか、或いはストライキの前の日にピケを張ることは妥当ではないんじやないか、こういうふうな気分と申しますか、解釈でしがなかつたような気がいたします。  ここでピケの限界或いはスト破りの権限の限界、こういうものを詳しく申上げようとは思いません。その場所であるとは思いませんが、そういう問題もいろいろ論議されたかも知れませんけれども、境界が向うで線が引いてある、境界の中にピケが立つている、外に説得隊が立つてつた。その線を誠えて道路上に出て来てそして説得をしようとする者に棍棒を振い、或いは当身を食わしたというか、みぞおちを突いたのか知りませんけれども、踏んだり蹴つたり、昏倒をし、それから或る人のごときは三インチも縫わなきやならんような傷を二つも負わせる。これはどんなに見ても法の限界を越えておるというか、或いは公務の範囲を逸脱していることは、これは争う余地がないと思う。そういうのをどうして防ぐか、或いは処罰すべきものは処罰する、附随して問題が起らないように或いは正当な権限を越えて権限が行使されるのをどういうように防ぐか、これはあとから出て来る問題だと思う。そのあとから出て来る問題が先になつて、そしてどうしたら働きたい者を働かせることができるか、いわばどうしたらスト破りの方法を打立てることができるか、こういうことで、調達庁なり或いは外務省、労働省が協議になるということは甚だ以て私は心外千万、以てのほかだと思う。  重ねてお尋ねをいたしたいのでありますが、その不法なものについての処罰或いはその不法をどうして防止するかということは論議されないで、どうしてストライキを破るか、或いは働きたいという者をどうしたら円満に働かせるかと、それだけが相談の対象であつたのかどうか、一つ重ねて承わりたいと思います。
  41. 山内隆一

    説明員山内隆一君) 先ほど申しましたように、私案はその席に同席しておりませんことと、それから今のお尋ねの点が、或いは問題が問題でありますために、関係の各省たくさんいるところでやるよりは、或いはこれはもう軍と警察だけの間のほうが適当と思われて略したのか、或いは若干触れたのか、その辺のこともわかりませんし、実は昨日の会合も、調達庁は参りましたものの、調達庁はどつちかというと、問題から言うと少し関係の薄いほうで、立会つたという状態であつたらしうございまして、今お尋ねの点は重大問題でありますが、私よく承知していないことと、或いは仕事の関係から言つてどもの範囲外に属することが多いように存じまするので、差控えさして頂きたいと思います。
  42. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではここで調達庁の次長に御質問申上げるのは無理かと思いますから、別の機会に関係者を呼んで方針を明らかにするように一つお取計らいを願いたいと思います。
  43. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 承知いたしました。
  44. 吉田法晴

    吉田法晴君 それからもう一つ最後に一点伺いますが、委員会決議で、退職金問題を含みまして駐留軍労務者の、先ほど次長もお話のように、北海道初め全国相当の整理問題が出ておりますが、それについての失業対策を速かに政府において打立てられるようにということを、こういうことを決議したわけであります。これは労働省とも関連をいたしますが、それらについてはどういう工合に具体的の樹立をされておりますのか、調達庁側においてきまつております点をこの際お示しを願いたいと思います。例えばこれは北海道においては倉庫をもらつて何か仕事を始めようとしておるという事実をもう一カ月以上前に聞きました。それから従来駐留軍労組の福岡では支部が自分で職業補導をやつておりました。それも今続けておりますが、今生業資金を県の歳計現金を労金に預託して貸してもらいたい、こういう動きを、いわば労働組合が自分で失業後の或いは、首切られた後の問題を考えておるというような、これは大変同情すべき実態にあるのです。この前の委員会の要望に応えて調達庁としてはどういうあれをなされましたか、併せて承わつておきたい。
  45. 山内隆一

    説明員山内隆一君) 退職した者或いはするような予告を受けた者を早く就職を斡旋することは最も大事なことと思いまして、かねてから折衝を続けておる大きな就職場所としては、自衛隊のほうにたくさんとつてもらおうということと、それから空軍のほう、北海道は陸軍は撤退の関係で整理されますけれども、空軍の施設のほうはむしろ強化されるような傾向にありまして、北海道においても相当な増員が予想されまして、そのほうに極力優先的にとつてもらおうということを一番二大眼目として折衝を続けて参りましたのですが、幸いに両方関係者からの非常に深い理解と同情もありまして、今数字は手許にありませんので申上げかねますが、非常に予想通りに順調にこの問題は進んでおると、かように聞いております。その以外のほうにつきましてはやはり職業補導というような形、これは一般失業対策としての各種の施策を講じて、できるだけ労働力を有効に活用するという方向で、これは調達庁も無論関係がありますが、労働省のほうで主としてそういうものは受持つて今折角努力中でございます。
  46. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは二時まで休憩をいたします。    午後零時五十七分休憩    —————・—————    午後二時四十二分開会
  47. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 休憩前に引続き労働委員会を再開いたします。  この際小坂労働大臣が出席せられておりますので、過般来の委員会で調査をして参りました新労働政策について更に調査を続行いたしたいと思います。特に明日も本委員会は開会せられることになつておりまするし、小坂労働大臣も明日は長時間に亘つて出席を願う約束ができておりまするから、従つて今明日に亘りまして、新労働政策の中で緊急性のあるものについての調査をいたしたいと、こう考えるわけであります。  先ず第一に前委員会後における一般労働情勢について労働大臣から説明を求めたいと存じます。特に最近の労働争議の実情につきまして詳しくお話を承わりたいと考えるわけであります。従いまして本日は労働大臣の時間が制約せられておりまするようでございますから、その他の事件につきましては明日に譲ることを御了承頂きたいと思います。
  48. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) それでは委員長のお話もございまするから、最近の労働事情につきまして若干申上げさせて頂くことにいたします。  先ずこの労働争議について特に話せという話でございまするが、年別のこの労働争議発生件数及び参加人員について見ますると、昭和二十四年が件数にいたしまして千三百六件でございまして、参加人員が二百二十八万人、二十五年が千三百九十九件、参加人員百四十九万、二十六年が千百四十六件、参加人員が二百万、二十七年が千百九十五件、参加人員が二百八十一万、二十八年が千二百三十二件で、参加人員が二百九十六万人と、二十九年は一月から六月まででございまするが、件数四百四十七件、参加人員が八十八万人ということになつております。  それからこの労働争議の損失日数で見ますると、二十七年は最高でございまして、千五百万日を超えております。ところが三十八年になりますると四百二十七万日ということになつております。昭和三十四年が四百三十万日でございまするから、大体その程度になつたのであります。二十九年の一月から六月までは百十万日、前年に比べますと、これを算術的に二で割りましたものと考えれば前年より相当少くなつておる。こういうことが言えると思うのであります。ただその間にありまして、消極的争議と申しますか、例えば解雇反対ストというような争議が多少比重を増して来ているということが言えるのでございまして、二十七年には消極的争議が一八%でございましたが、二十八年には一四%であつたのであります。ところが本年は一月から六月までの間をとつて見ますると二八%というふうになつておりまして、これは尼崎製鋼或いは室蘭製鋼、又全駐労の争議、そういういうようなものを数えればさようになつておるのであります。そこで争議行為におきまして暴力といいますか、不法事件が相当に多くなつておるのでありまして、昭和二十五年に八十四件でございましたのが、二十六年に四十八件、二十七年に百六件、二十八年に百七十九件、今年になりますと一月から六月までの半年間で百三十件を数えておるような実情でございます。  そこでこれらのものはすべてピケをめぐつての問題でございまするので、ピケの合法性の限界というものはやはり知らずして侵すものも相当あるのではないか。こう考えまするので、このピケの合法性の限界につきまして、的な考え方というものを明らかにするように従来研究をいたしておりましたところ、本日この考え方を発表いたしましたのでございまするが、これにつきまして申上げておきたいと思います。  基本的な考え方といたしましては、労働者の団結権、団体交渉権、その他の行動する権利というものは、勿論法に基くところでありますけれども、これが暴行、脅迫、その他不法なる実力の行使によつて他人の行動や意思に強制を加えることは、団結権、団体交渉権を保障した法の限界を逸脱したものであるということであります。なお労働組合の団結権に基く統制力は、原則といたしまして、組会員の範囲にしか及ばないものであるということは言うまでもないのでありますが、統制力の範囲外にあります者に対しまして通常労働組合は何らの拘束を加える立場にないということであります。  更にピツケテイングでありますが、ピケツテイングは組合ストに対する統制手段でありますから、この対象は勿論組合員に限られて来ることと思うのであります。そこで使用者又はその利益を代表する者でありまするが、これは当該争議の相手方に属する者であつて、元来争議行為中においても就業しておらなければならないし、会社の施設の管理等に当り、又争議の解決に努める等の義務と責任を有するものでありまするから、これらの者の正当な業務のための入場を妨害するということはピケツテイングといえども許されることはできないというのであります。なお第三者についてでございますが、従業員以外の顧客、お客さんであるとか、出入りの商人等の第三者に対するピケツテイングについては、これらの者の出入や正当な業務を妨害するということは許されることはできないのであります。なお組合員以外の労働者に対するものでありますが、労働組合の統制力は、原則として当該労働組合組合員以外に及べないのでありますから、組合員以外の就業者に対しては当該労働争議について理解と協力を要請するにとどまつて、その就労を妨げることはできないのであります。なお使用者が争議中にスキヤツプを雇い入れ、その業務を続けることは、労働争議に対する使用者の対抗手段でありまして、それ自体は不当労働行為に至らないのであります。なお職場占拠が行われておりますが、これについて申しますと、労働者が争議行為として使用者の意思に反してその設備等を占拠し損壊し、若くは除去する等のことによりましてその業務を妨害し、又は使用者若くはその指揮を受けて就労中の者のなしつつある業務を暴行、脅迫、坐り込み等によつて妨害することは正当のものとは理解されないのであります。  労働者が使用者からの明らかにされた意思を以て退去を要求されたというような場合、それにもかかわらずなお不当に工場、事業場内にとどまつて占拠することは、これは違法行為であることは明白である。こういうことであります。なおロツク・アウトが行われております場合には労働者が使用者の意思に反して工場、事業場内において作業し或いは就労を強行することは正当の行為ではありません。かような考え方を本日を以て明らかにした次第であります。  なお最近の失業情勢につきまして若干申上げておきたいと思います。  その前にけい肺法のことにつきまして種々お話がございましたので、そのことについて……。
  49. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと労働大臣に申上げます。今日時間を非常にお急ぎのようでありますから一般失業問題その他、只今お話になりかけました問題等は明日に譲りたいと思いますから、従つて今日は最近の労働情勢並びに特に労働争議の一般情勢、こういうものについて委員諸君からも御質疑があろうかと思いますから、これに限定をいたしたいと思います。  それで先ほどの大臣のお話の中で総括的な労働争議の情勢等についてお話がございましたが、最近起きておりまする重要な労働争議の個々の問題につきまして、例えば日本製鋼の争議或いは東京証券の争議、その他地方銀行或いは地方の証券取引所等の争議がございますが、こういうものについてかいつまんで一つお話を願つておきたいと思います。
  50. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) では非常に詳細にわたりましてでございますから、或いは事務当局から申上げたほうがよろしいかも知れないとも思いまするが、委員長のお話でございまするから、私からかいつまんでお話をすることにいたします。  先ず日本製鋼における人員整理をめぐつての争議でございまするが、これは御承知のように従業員数は六千二百七十名に対して賃金ベースは約一万三千五百円、まあ残業等を含めると約二万円の月収、こういうことでございます。経済界の不況によりましてこの会社は大体赤字を累積して参りまして、三月末の決算が五億七千五百万円の赤字でございまするが、これにつきまして企業合理化を実施するということになつたのでございます。六月十七日に組合に対しまして企業合理化の一環として人員整理、人件費として月に二千二百八十余万円の節減をする再建案を示しまして、これにつきまして人員整理が千二百四十六名、そのうち室蘭製鋼所におきます人員が九百十五名、臨時の作業員九十五名、計一千十名というのでございます。  この人員整理の問題をめぐりまして疑義が起きて参りましたのでございまするが、その際組合交渉の結果、七月四日、八月二十二日、二回にわたりまして交渉が行われまして、今申上げました人員整理の人員の数或いは整理の条件、そういうものが修正をせられまして、なお残留者に対しまして一人当り平均八千円を生活費として貸付ける、こういうことになりましたのでございます。そこでその争議の経過に行われて参りました実際について申上げることは非常に長くなりますが、如何いたしましようか。
  51. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 日本製鋼の問題は明日掘り下げていろいろ質疑をする予定になつておりますから、只今程度でよろしいと思います。
  52. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) さようでございますか。なお簡単に最近の状態を申上げておきまするが、十月六日以来、工場構内に作業で宿泊して従事しております第二組合員が、十三日午後四時工場の正門から帰宅をいたしまして、十六日以来は工場正門の所に第一組合員が一千名乃至一千三百名がピケを張つております。連日の工場入場は室蘭埠頭から海路を通じて行われておるという状態でありまして、一、二の殴打事件等も発生しております。併しこのほかさしたる暴行事件も今のところわかつておりません。  なお富十製鉄の室蘭労組が富士製鉄の室蘭製鉄所の副所長に対しまして、労使一体となつて日鋼争議のために斡旋役を会社側に引受けてもらいたいとの要請がありました。併し会社側は即答を避けておる。而も態度は本日に至るまで明確になつておらない、こういう状況でございます。  なお北海道の中労委が八月の二十二日臨時総会を開きまして、斡旋は今後継続する。併し斡旋の時期、方法については議長に一任するということにして事件の推移を見守つておる、かような状況でございます。  なお山梨銀行の争議でございまするが、これは組合員が六百九十八名で、本年三月の二十日給与体系の合理化と併せて賃上げ、退職金の増額要求等を掲げまして、数度にわたつて交渉して参りましたのであります。七月三十日になりまして、全銀連傘下各単組は、大会の決議に基きまして全国的な賃上げ闘争を開始したのでありまするが、これに呼応してこの労組も強力な交渉を始めまして、八月三十日、全銀連の指令のリボンの着用戦術を実施したのであります。なお九月二十六日組合スト権の中執委委譲を打ち出さんとして組合側の執行部は臨時大会を開いたのでありますが、たまたま反対派が議事進行直前に執行部不信任案を提出したのでありますが、七十五対四十五で否決されたのでありますが、そのとき以来、反対派四十名で否決されまして、大会は流会になりました。十月四日に組合は組織分裂を完全ユ二オン・シヨツプで阻止しようとの要求を掲げまして、完全ユニオン・シヨツプの締結を要求しておるのでありますが、これは果して銀行側として拒否するところとなつております。そこで銀行側は五%の賃上げ、それからなおシヨツプ制は完全ユニオンということを回答いたしました。併し組合側はこれに対して会社側の回答を拒否して坐り込み集会戦術等守の闘争戦術強化を決定しております。十月十六日総評の高木事務局長が同労組の応援のために到着いたしまして争議指導を行なつたのであります。その後第一組合は難航を続けましたが、物分れになりまして、更に二十一日朝闘争委員会を開き、地労委の幹旋を申請することを決定して、二十二日午前零時から県下三十二支店の二十四時間事業放棄を指令いたしたのであります。地労委もこれにつきまして幹旋をいたしました。四月以降総額七十万円、平均五%に相当いたしますが、この賃上げと、完全ユニオンは、第一、第二の組合が統合されるように努力し、その実現を待つて考えるという斡旋案を出したのであります。併し銀行側はこれに対して回答をしましたが、組合側は不満といたしまして、予定通りストライキに突入して、更に二十三日、二十四日ストをいたしまして、これを無期限ストに切換えました。なおストライキは県の労連、全銀連の応援を得まして、銀行内に泊り込み、第一組合スト前夜から銀行内に泊り込んで、スト当日も第二組合によつて行われておるのでありまするが、これを拒否する第一組合との間にトラルブが発生しているのであります。かような状況でございます。  更に証券取引所の争議でございまするが、東京証券取引所は二十九年の四月三十八日に組合を結成いたしまして、組合員が六百五十五名、委員長が組谷節也という人であります。八月三十日、組合はユニオンシヨツプ制の労働協約の締結、九月期の生活補給金として現行基準一万九千円を二カ月分支給せよ、高校卒業生の十八才初任給九千円の給与体系の確立、現在は初任給が七千一百円で、約三割のアツプということになるのでありますが、こういう要求書を提出いたしておるわけであります。九月二日の第一回交渉で理事者側はユニオンシヨツプ制は原則として認めることを回答いたしまして、九月期の生活補給金の支給の新賃金給与体系は問題が大きいから更に検討したい、かようなことを回答いたしておるのであります。九月三日の第二回の団交では、理事者側は生活補給金一・八カ月を最低として支給することを回答、組合側もこれを了承いたしたのであります。九月十八日生活補給金一・八カ月分を一律支給として協定書の調印が行われ、その後の交渉では労働協約の逐条審議が行われましたが、シヨツプ制、平和条項問題で交渉が進展いたさなかつたのであります。更に十月の十二日、組合交渉を促進させるために臨時全員総会を開きまして、賃上げ六〇%の要求、完全ユニオン・シヨツプの締結の二点を更に強力に推し進める方針を確認いたしまして、十八日までの回答期限を付けて十三日理事者側に要求書を提出いたしました。そこで団交が開かれまして、理事者側は次の五項目を回答いたしたのであります。即ちユニオン・シヨツプの原則は認めるが、ユニオン・シヨツプ制は若干の例外規定を設けるべきものと考える。賃上げは平均一万六千九百一円、即ち二一%アツプに相当いたしまするが、右賃金は非組合員を含む全従業員の平均で、昭和二十九年十月の昇給分をその中に含んでおる、かような状況であります。家族手当は最高三千円、交通費は全額支給、かようなんでありますが、これに対しまして、闘争方針を協議いたしました組合では、ストライキ権の確立を行なつたのでありまして、その後十九、二十、二十一日まで連日団交が持たれましたが、進展をいたしませんで、理事者側は都労委の斡旋によらなければ解決の方法がないとして、都労委の斡旋申請を主張いたしたのでありますが、組合側はまだ団交の余地ありとして都労委の斡旋に強い反対をいたしたのであります。  一方都労委は二十一日午後三時から総会を開いてその対策を協議した結果、斡旋態勢に入れるように木村清司、三鬼陽之助等労、使、公益の各側より二名より成る斡旋委員が内定しました。なお二十二日に歩み寄りが見られませんでしたので、理事者側を招きまして事情聴取を委員会としては行いました。更に組合側を招いて聞こうとしましたところ、組合側はこれを拒否いたしましたので、都労委は斡旋をするということについての対策を協議した結果、この争議が行われれば社会的、経済的影響が重要であるから、都労委、斡旋委立会の下に速かに団交を開いて、事態を収拾したいとの申入れを行なつたのであります。そこでこの申入れに対しまして理事者側は即座にかかることに応ずるという旨の回答をしたのでありますが、組合側は難色を示しまして、そこで労働者側の斡旋委員は種々説得した結果、午後一時申入れに応ずる旨を回答し、労使双方の申入れによりまして、二十六日午後四時から開かれまして、なお引続いて開かれることになつておりましたところが、組合側といたしましては、昨日これは決裂したと言つて退席をしたのであります。労働委員会側といたしましては、一つ双方の争点の内容を明らかにして、双方の要求の具体的な十項目について明瞭にしてもらいたい。それによつて何とか斡旋案をまとめて行きたいという申入れをしたのでありますが、理事者側はこれに承諾したのでありますが、組合側はその説得を聞かず、争議に今暁より入つております。かようなことでございます。  なお他に全駐労の問題もございますが、これは今朝ほどお聞き取り頂いたことのようであります。  以上を以ちまして御報告といたします。
  53. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がないというので大変残念ですが、記者会見をやられて、行政解釈について政府意見を述べた。それからここで述べ放しで立たれるということは私どもとして納得行かないので、或る程度の質疑、それから明らかにしたいところがあります。  今、日鋼或いは東証、山梨銀行等について争議のかいつまんだ報告がございましたが、先ほど出された行政解釈の発表というのは、前に東証等争議に当つて建物を占拠したり、或いは行過ぎたピケが行われているというような大臣の所見もあつたようですが、行政解釈と、それから東京証券の争議、或いは争議行為とは関連があるかのごとくでありますが、その点はどうであるか伺いたい。
  54. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 先ほどここでも申上げましたように、ピケの合法性の限界を明らかにするということは非常に必要なことと私は考えております。そこでこの問題につきまして種種事務当局その他でも案を練りましたのでございますが、漸く結実いたしましたので本日発表した次第でございますが、時たまたま東証の争議がありましたわけでございます。これにつきましてこの解釈に照らしてどうかというと、これは行過ぎと思われる点が多分にある、こういうことを申したわけでございます。
  55. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると行政的な解釈はかねての要望に従つていろいろ研究した結果を発表したのだ、行政府の必要からした、たまたまやつておる東証の争議についても所見を明らかにした、こういう話でありますが、聞くところによりますと、本日今二時頃から警察官を動員して東証のピケを警察の実力を以て排除するということが行われようとしている。或いは行われつつあるかのように聞くのでありますが、この点については政府としてはどういう関係でありますか。今の行政解釈、それから行政解釈と東証の争議行為についての大臣の所見というものと、それから警察の介入というものとの間に私は必然的な関連があるように思うのでありますが、その点実際にどういう工合になつておりますのか。大臣、或いは大臣が御承知がなければ行政当局から一つ説明願いたい。
  56. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 私労働省の責任を持つ者としまして、法の運用に当りましてはどういう解釈によつてなすべきかということを明らかにいたしますのであります。この解釈は、法でありますから適正なる運用をしなければならない、その観点に立ちまして法務或いは警察の当局でそれぞれのお考えにおいて措置をせられる、かような関係だと思います。
  57. 吉田法晴

    吉田法晴君 委員会の前に実は私はその点についての大臣の所見を質し、争議の具体的な段階に政府が介入した事態は余りなかつたように考えるが、特に今度の場合について介入される理由等を承わろうとしたのですが、時間がなくてこの委員会へ移りましたが、法の解釈或いは適正なる運営がなされることを望むということと、それから警察の行動というのは、これはおのずから別であります。併しピケの限界について行政解釈を下したいという点を閣議に報告される、或いは閣議の了承を受けられた、その前段東証等の争議を見ておると行き過ぎがあるということが大臣によつて表明されたということと、それから警察の実際の動きが何者の指揮によつてなされたかは別問題としまして、警察大臣と申しますか、警察担当の大臣からも指示があつたと、今までの措置から考えて我々そういうように了解せざるを得ないのであります。そうすると政府として、労働省として、或いは労働大臣として法の解釈を表明するということと、それから警察が動き出すということは別かも知れないけれども政府としては、この争議の限界についての行政的な解釈の発表と、それから警察の介入との間には性質としては繋りはないが、責任を負うべき事態が存在すると考えるのですが、その点はどうですか。
  58. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 政府としてピケ・ラインの合法性の限界というものはかようなものであるという解釈の責任者は私であります。労働法の解釈でありますから私でありますが、併しその考え方に基きまして、こういう形で更に御意見があれば承わりたいと、こういうことで閣議において閣僚諸君の意見も聞きまして、私としての労働省の見解を発表したのであります。即ち政府の解釈をやりましたわけであります。それはそのことでありまして、当然なすべきことであります。政府法律を執行し、法律を国民に守つてもらうという立場にありますものでありますから、当然でありますが、又警察担当の大臣或いは法務大臣としても、或いはその当局におきまして、実情の認識においてこれらを措置されるということはそれは又そのお考えによる、こういうことで、私は別に特にそれについてどうこうという考えはありませんが、私としては労働法の解釈として、解釈上はこうなると、こういうことを明らかにしたのであります。
  59. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると閣議了承を求めた、従つて政府の行政解釈によつてはこうだと、こういうことは政府として明らかにして、警察が介入するということについて自分は指示はしなかつた、或いは要請はしなかつた、併し警察がこの解釈に従つて動くということは知つておられた、そうですが。或いは例えば警察担当大臣において、或いは警察がその解釈に従つて実力行使をして、或いは建物の中におる労働組合員を排除するということは知つてつた、こういうことに解釈してよろしうございますか。
  60. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 知つている、知つてないということは別に問題じやないのでございまして、それは私にお聞きになるほうが無理なんで、そういうことは私は解釈として明らかにしている。むしろ私はそれじや逆に伺いたいのですが、法治国として法律が正しく運営されるということはいかんとあなたはおつしやるのですか。そういう意味でございますれば、これは見解が相違するのですが、私はこういう法律解釈を明らかにして、閣議も了承している、異議はないと、それ以外に附加えることはなかろう、或いはこれを削るということもなかろう、こういうことでございます。
  61. 吉田法晴

    吉田法晴君 珍らしく逆間を受けましたから、その逆間に答えるのはあとでいたします。法律の解釈権が政府だけにあるものとは思つておらん。これは裁判所もそうでしよう。行政解釈に対して国会も解釈をする権能を持つている。或いは労働法の解釈については、失礼だけれども労働大臣よりも僕のほうが又経験と識見を持つているつもりです。それはとにかくとして、これはあとでやります。問題は警察が介入することを知つてつたかどうか、こういうことを尋ねている。
  62. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) そういうことについては別に聞いてもおりませんし、知つてつたかというような御質問を受けることもおかしいと思うのでありますが、とにかくそういうことは、私さつきから申上げている通り、法の解釈を明らかにして、あとはそれぞれの責任者によつて措置する責任と義務があるのでございましよう。併しそれらはそのかたがたの判断になる、私は相談を受ける立場でもないしと、こういうことでございます。
  63. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと一点だけ、今のお話の点は明日やるとしまして、私は重要な点を一、二点だけ伺つておきたいと思います。今日吉田君の今の質問を聞いておりますと、二時頃には警察官が実力行使を行なつたやに言われているのでありますが、そういう情報が労働省のほうへ来ているかどうか、これを先ず伺いたいと思います。
  64. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 私は聞いておりません。
  65. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働省のほうとしては……。
  66. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 私としては外からすつと来たので、記者会見をあちらこちらとやりまして、通産、経審でやりまして来たので、まだ聞いておりません。
  67. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 政府委員のほうはどうです。
  68. 石黒拓爾

    政府委員(石黒拓爾君) 私は一時過ぎまで役所におりましたが、そのときまでは特段そういう情報が入つておりません。
  69. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) いや二時からというのだから……、じやそれをちよつと調べて頂きたい。大臣が退席されてからでもまだこの委員会やりますから、すぐ調べて下さい。  それから第二点は、仮に警察官が実力行使を行なつたといたしますというと、東証の争議は昨晩入つたわけであります。従つて時間的にはまだ幾らもたつていないわけであります。従来の労働省の方針によりますと、或いは法務省の方針によりますと、実力行使をやられる前には、一応労使双方に警告をされる慣習に大体なつてつたと思います。そういう警告をされているかどうか、この点をおわかりになつてつたならばお答え願いたい。
  70. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 労働省として実力行使をするから警告をするといつたことは今までもないと思います。これは取締当局においてやることで、その前に取締当局としては警告をして行かなければならない、そういうことだと思うのです。今回どういうことになつておるか知りませんので、今回も恐らくそうなつておると思います。
  71. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それも一つ併せて調査を願いたい。それから労働省も今日は余りにも工合よく符節があつているものだから、吉田君の質問が出たと思いますが、一応個々の処置に対しましては、争議の扱い方について勧告をせられておつたことは否定をなさらんと思います。で、その点警察官の介入について警告云々ということは法務省のことで、労働争議そのものについての処理についての勧告は労働省の所管だ、そのことについてお尋ねしたわけです。
  72. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) そのことについては、私どもとしては、できるだけ円満な話合いによる団交を進めろということを従来から都労委、その他の機関を通して言つてくれということを言つておりました。而も都労委が斡旋にすでに乗り出しているのでありますから、できるだけ都労委の団交の斡旋を受けろということは申しております。併しこれもそういうことを直接育つていいのかどうかわかりませんので、まあ都労委のほうから特に言つてもらつておりますし、労政局長のほうからもそう言つております。
  73. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それからもう一点は、本日の閣議でピケの限界についての方針を決定せられた、こういう工合に伺つたのでありますが、法務大臣は出席をせられておつたかどうかを一つ
  74. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 出席をしておられました。
  75. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうしますとその法務大臣の出席せられておる閣議において、東証の争議について、労働大臣が只今決定をしたと言つて報告をされたピケの合法性の限界に従つて只今行われておるストは非合法である、こういう見解から警叫察官の実力行使をやろうと、こういうようなお話合いが閣議の中で出たか出なかつたか、この点を伺いたいと思います。
  76. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 何か非常に訊問されているようですが、委員会はそういうことじやないと思います。国政全般についての御審議であろうと思いますが……。
  77. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) いや、質問ですから……。
  78. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 別にそういうことは申上げる必要もありませんし、特にそういう趣旨のものではありません。
  79. 田畑金光

    田畑金光君 只今労働大臣のピケの合法性の問題についての措置、それから今お聞きしますると三時から警察がこれに介入する、こういうような話を聞きましてどうも緊迫感を感じさせるような感がするわけであります。政府が法の解釈を下す、或いは文法の執行をするという立場については十分に了解ができますが、今いろいろ深刻な争議が展開されているこの最中におきまして、ピケの合法性について改めて、或いは事新らしく解釈を下すということは、客観的な事態から判断いたしましたときに、当然労使関係は自主的な、原則としては自主的な立場で解決すべしという従来の大臣の態度からしますると、我々納得が行かん感じがするわけであります。どういうわけでこういう時期に、時間に、今更ピケの合法性の行政解釈を下し、そして又客観的には警察の介入という事態を招いている。労働大臣といたしまして、どういうわけで行政解釈を事新らしく開明なされたのか、当然こういうような問題に関しましては、これまで再々争議はなされたと思います。或いは又争議に伴い不幸な暴力行為等もあつたかと思うわけであります。そういうふうに当然もうすでになされているはずの行政解釈というものが今事新らしくなされなければならん、これはどういう政府考え方の下になされたのか、一つお聞きしたいと思います。
  80. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) その点は従来いろいろ問題になりまして、私ども政府としてもう少しピケの問題についてはつきりした見解を表明すべきではないかという声をあちこちから聞いておりまして、成るほど事態としても、例えば或る会社の争議で執達吏がその職務を執行しようと思つてもどうしてもできない、そこで警察に要請をする。警察も午前から午後にかけてどうしてもこういう事情ですから皆さんこれは公務の執行なんで、仮処分がなされて、その執達吏が行くのですから、これについては一つ争議とは別の問題ですということを何回も言つてもどうしてもならん。それで警察に出てやつてくれというので警察が参りますと、そこへまあ車へ飛ついてしまうというようなこともありまして、執達吏の執行ができんというような状態では如何にも行過ぎじやないかということは、しばくそういつた趣旨のことが私どものところへ来るのであります。  御承知のように昨年ピケの合法性の限界という行政解釈を下したのですが、あれじや余りにも漠然とし過ぎておつて、もう少し具体的に言つてくれなければわからん、こういうことを言つて参ります声が非常に多いので、先般来から研究しておつたというのが実情であります。イギリスあたりでピケの問題は、これはもうストというのは不就労が原則でありますから、決して就労させない、こういうことで、見ておりますと、プラカードを立てて、そうして争議破りをしては困ります、争議に協力しましようといつてプラカードを立てて歩いたり、或いは腕を組んで、誰がスト破りをやつたかということを見ている。こういう程度であつて、数を以てどうしてもスクラムを組んで入れさせない、或いは組合員以外の出入りの商人をとめるとか使用者側をとめるとか、そういうようなことは、ストに関するピケなんですからこれはおかしいじやないか。イギリスあたりではそんなことは常識外の問題として、誰もやらんことになつております。我が国の労働環境というものは比較的新らしいものですから、これが変な方向に行きますと、非常に国家の再建上も考えなければならん問題があるのじやないか。そこでもう少し行政解釈を具体的に明瞭に出す、こういうことで実はやつたのであります。
  81. 阿具根登

    ○阿具根登君 今の問題につきまして、今英国の問題を出されましたが、一方的に組合のほうのことだけ言われましたが、例えばイギリスの港湾労働者の争議を見ましても、あれだけの争議になつてもピケを破つてつて来るとか、使用者がスキヤツブを入れるということは全然ないわけです。ところが今度の解釈によれば、スキヤツブを認めたということは、これは労働争議権を或る意味で剥奪した、私はこう考える。今やつているストに対しても、大臣の今度の発言が、発表が、どちらにどういうように影響して来たかということを見ただけでも、非常に労働者に不利になつている。これはアメリカでも英国でも、そういう経営者がスキヤツブを入れるようなことはやつておりません。そういうことは……。そうすると労働者のほうにだけそういうピケを張つてプラカードを立ててやつているだけだ、それでできるのです、英国も米国も……。ところが日本ではそういうことができない。この日本の環境を無視して、一方的にそういうことを、スキヤツブを入れてよろしいというようなことを申されたということは、労働者に対して非常な圧迫であり、スト権の剥奪だと思うのですが、その点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  82. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 私もイギリスやアメリカ労働組合のように早く健全なものに日本がなつてほしいと思つております。どうも最近見ますと、暴力行為が発生するというようなことが普通のようになつておる。これは非常に私は困つた傾向だと思う。それはなぜそういうことが起きるかというと、やはり法律の解釈がはつきりしないんじやないか。法律の解釈がはつきりすればこれは協力して下さるかたもたくさんあるでしよう。そのために非常に不利になるということはない。むしろ両方とも良識を以て無理をせんで行くということになる。今そういうようなことが非常に簡単に、日常茶飯事的に行われておる。何かと言えば直ぐピケだ、ピケを突破するということがどうしても第三者に及ぼしたり、経営者側を入れなかつたりするということが普通になつてしまつてはこれは困ると思う。で、ピケの解釈をああいうふうに……。
  83. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじや、今の実際の神様を聞いていると、実は労働大臣が自分から警察の活動について意見を述ぶべき立場にないと言われた。隣りで地方行政委員会をやつているから地方行曲委員長を通じて警察担当大臣に交渉をしてもらつた、こういう話です。東評であるからというので特に労働争議に警察が介入をしようという方針ではない、従来の方針でおる。但しまあピケについては説得が第一であつて、何時何十分実力行使をしなければならん、こういう気持ではない、併し最悪の場合には実力行使も止むを得ないと考えておる、こういう話であります。多少私ども最初理解いたしましたのと違うようですが、大臣は東証争議に関連してピケの限界というものについて行政解釈をし、そうして直ちに警察が今の甲証争議に実力介入をすることが望ましいと考えておられるか。それとも先ほどお話のような自主的な交渉が中心である、ああした事態に対しては冷静な判断を双方に要求することによつてこの問題は円満に解決し、そして自主交渉の軌道に乗せることが好ましいと考えておられるのか。それとも私ども最初考えましたように、行政解釈と相前後して、その解釈に従つて実力行使をするというようなことが望ましいと考えておられるか。その点は一つはつきり伺つておきたい。
  84. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 先ほど私に対して警察の引くようにという話がありましたので、それは私の権限ではない。法務大臣が警察権を担当しておられるということを申上げましたので、これは私も別にその警察のやられることについてとかくのことを言う必要がないし、そういうことを言うべきものでもないと思つております。ですからそういう事態の判断は法務大臣においてなされるのが適当である。今承われば非常に妥当なお考えのように思います。私ももとより交渉が円満に行きまして、この争議が解決するということを思えばこそ、都労委において十分斡旋、団交という方法考えてやつてもらいたいということを申しております。もとより争議が解決するということを望んでおるわけであります。
  85. 吉田法晴

    吉田法晴君 解釈の権限は、行政解釈だけでなしに、裁判所にしても或いは国会にしても、解釈権があるということをお認めになるだろうと思います。お認めになりましようね、それは。
  86. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 行政府として行政を執行する場合に、その解釈をするということは当り前のことだと思います。
  87. 吉田法晴

    吉田法晴君 いや、ほかの点について……。
  88. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 国会として法律についていろいろ御意見を述べられるということはあるでしよう。
  89. 吉田法晴

    吉田法晴君 裁判所についてもそうですね。
  90. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 裁判所はもとよりその一つ一つ事件について判断をするべきものですから、そういう立場にありますね。
  91. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじやもう一度念を押しますが、東証の問題について行政解釈を下し、それに従つて直ちに警察が実力行使をすることを望んだわけではない。円満解決を望むという点は、これはもう一度念を押しますけれども労働大臣としてもむしろ望むところだ。直ちに実力行使、或いは問題が紛糾することを望むわけではない。これは重ねて聞くけれども、異議はございませんね。
  92. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 私はこの東証の争議があつてもなくても、このピケの合法性に関する見解というものを明らかにしようと考えておつたのです。ですからそれに対して、それとその実力行使との関係を付けてお考えのようですが、これは又別の問題でございますから、そういう問題が起きて必要になれば治安の責任上法治国として、その責任の担当者がどう考えられるということはその立場において、労働大臣としての立場では、できるだけ労働争議の問題というのは話合いで円満に解決するということを望むということは、もとより然るべきごとだと考えております。
  93. 田畑金光

    田畑金光君 ちよつと委員長、さつきの行政解釈の内容というものを少し資料として労働省のほうで速かに出してもらいたいな、ここで……。
  94. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  95. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。先ほど労働大臣に調査を依頼しました東証ストのこの極く最近の、午後の状態についての報告を願いたいと思います。
  96. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 只今本省に電話で聞きましたところでは、警察官の実力による介入について、警察当局より正式に連絡は何事もなかつたということでございます。それで現地に都の労政職員、又うちの職員も随時見に参つておりますので、そういう者から状況は連絡があつた。それによると、二時頃警察官が大分出て来たという連絡がありまして、それからその後繰返し繰返し警察官が警告をいたしておる。それから取引所側が玄関から入るという準備を整えておるというのが入りました。それから電話をかけております最中の連絡として、警察官が実力行使を始めるようであるということでございました。
  97. 吉田法晴

    吉田法晴君 始めるようだというのは何時ですか。
  98. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) これは今かけておりましたから、三時三十五分から四十分頃の間のことだと思います。
  99. 吉田法晴

    吉田法晴君 労政局長がおりませんから、行政解釈という点は法規課長も関連しなさつたろうし、新聞記者発表の前に法規課長がおられたかどうか知りませんが、併し一応文書に起案するときは法規課長もおつたろうから、一つ今のところ最小限法規課長しかおられませんから、多少質疑をいたしたいと思いますが、今の現場におる労働省の係官の連絡によると、繰返し警察が警告を発しておる、警告を発しておるという内容はどういうことなのか。それから使用者側がその中に入ろうとしておる、その使用者側というのは理事なのか、それともその他の者、これはまあ見解発表の三ですか、これは項目はわかりませんけれども、使用者或いは使用者側という言葉もありますから、今入ろうとしておる使用者側のこと、それから三時四十分頃実力行使をやろうとしておる、そのやろうとしておる実力行使というのはどういうことなのか、もう少しはつきり伺いたい。
  100. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 実は取り急ぎましたので、その点十分確めておりませんが、又現地からも公衆電話で争議情報に必要な限度で送つて参りますので、警告の内容その他について詳細にはまだ来ておりません。必要がございますれば更に確める手配をいたします。
  101. 吉田法晴

    吉田法晴君 それからもう一つ、それじや委員長なり労働省側に伺いますが、労政局長がどこに行つたかわからん。或いは東証争議の現場に行つておるのかも知らん、こういう想像話ですが、どこに行つておるのか、そうしていつここに現われるのか伺いたい。
  102. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 私出先から参りましたので存じませんが、政府委員案への連絡は三時半頃労政局長が行くはずのところの見当がついておるので、そこへ今連絡中であるということだそうであります。問もなく見付かることと思います。
  103. 吉田法晴

    吉田法晴君 三時半頃労政局長が行くというのは争議の現場ですね。
  104. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 三時半に参るというのは。
  105. 吉田法晴

    吉田法晴君 どこに参る。
  106. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 本日労働問題協議会、その他の会合がございますので、そのいずれかに出席の予定があるのじやないか、これは想像でございます。恐らく争議現場ではないと思います。
  107. 吉田法晴

    吉田法晴君 実は見ておりますと、東証争議に関連して法規解釈、行政的な法規の解釈を発表し、それから警察が動くということも或る程度了承をしておるのである。それから大臣も出て来るには出て来たけれども、一応今日言うだけ出て、いい加減で労働委員会は逃げて行く。それから労政局長も出て来て、それについての我々の質疑というか、或いは反駁を聞かないで、実際的に東証争議の弾圧をやろう、こういう態勢のように思えますが、そうじやないのですか。
  108. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 私どもといたしましては争議を弾圧しようというような意図、或いは国会からの御出席の御要求に対しまして故意にこれを逃げるというようなことは絶対にないものと考えております。
  109. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは事実上そうじやないのですか。客観的にそうじやないか。まあそれは幾ら言つてもしようがありませんが、労政局長は来るのか、来んのかね。
  110. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 連絡小でございますので、来るものと思つておりますが。
  111. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは政府側のほうが揃つておりませんので、審議がちよつと進みませんから、本日はこれで散会をいたしたいと思います。  なお、明日は十時から予定の通り議事の進行を図りますからということを御了承を願いたいと思います。    午後三時四十八分散会