○
参考人(
国崎真推君) 私は
只今委員長から御
紹介を頂きました
石炭鉱業連合会の
常任理事国崎真推であります。
只今の
石炭産業が極めて深刻な
不況に陥
つておる、
従つてこれが重大な社会問題にな
つておるということは、すでに
皆さん御承知のことであると思います。この
石炭産業の
不況は
大手中小を通じての事実でありまするが、これは決して今に始ま
つた問題ではありませんで、
昭和二十七年の下期頃から、
石炭界は
過剰貯炭が累増いたしまして、だんだん深刻にな
つて参りまして、他の
産業に先んじて
不況に喘いでおりましたところに、今回の
デフレ強行に追討をかけられまして極度の
金融難に陥
つた。特に
採炭条件も悪い、品位も落ちる、
経営骨格も弱い、特に有力な
金融機関の好悪を持たない
中小炭鉱は最も深刻な
惨状に追込まれたわけでありまして、端的に申しまするというと、
只今中小炭鉱はその約半数が
崩壊の寸前にあると、いうよりも
崩壊の途上にあるというのがむしろ適当であります。そのために
経営協力体である
従業員各位に対して誠に言に絶するような悲惨な
状況を見ておる所もあるようでありまして、この点は誠に遺憾に存じておるのでございます。
然らはこの
石炭業がかような
状態に追込まれた
原因は一体どこにあるかということを、極めて簡単に申上げてみます。
只今圏内炭の
生産能力といいますか、これはかねがね言われておりまするように、二十七年度は四千九百万トン、昨年の二十八年度は五万二百五十万トンと予想されまして、各年度当初におきましては、その
月産の実績におきまして十分その
実勢を示してお
つたのでありまするが、二十七年の下期の例の大きな
炭鉱ストが契機に
なつたとは申しながら、
世界的運賃安と、
実勢を離れました
為替レートに便乗いたしまして、
格安採算の
重油及び
外国炭が急ピツチで増加いたしまして、
国内炭の
需要がこれら
外国商品に食われたために、
石炭の
需給均衡が大幅に崩れたということが最も大きな
原因であります。それを簡単に数字的に申してみまするというと、
重油は二十六年の下期から
鉱工業用として、その前
一般用としては
輸入がありましたが、
鉱工業用として
輸入が
始つたのは二十六年の下期であります。で、
石炭需要が
重油に食われました
数量は、二十六年度におきまして
石炭換算百二十五万トン、二十七年度三百五十万トン、二十八年度は何と六百九十三万、約七百万トンにな
つております。
合計いたしまするというと、この二年半で、二十六年は半年でありまするから、
合計一千百六十八万トンというものが
重油に
石炭の
消費が食われたということに相成
つております。又
外国炭もこれと同様に二十六年度は二百五十万トン
輸入されておりまするのが、二十七年度は百万トン増加して三百五十万トン、二十八年度は更に四百五十万トンに増加いたしまして、その
合計は一千五十万トンであります。この両者を
合計いたしまするというと、二千二百十八万トンになるわけであります。最もこの
外国炭の中には
国産炭では賄えないいわゆる強粘
結炭が約二百万トン入
つておりまするから、これを除きましても、
あと二百万トンはあり余
つておる
国産炭で
十分需給の目安はつくと、こういうことであります。一方然らば
燃料消費はどうな
つておるかといいますというと、これは年々伸びて来ております。
つまり燃料消費といいまするのは
石炭、
重油、
外国炭を入れた
燃料消費でありまするが、二十六年度は四千八百万トン、二十七年度は四千八百九十万トン、二十八年度は五千四百三十万トンと逐年伸びて来ておりまするのにかかわりませず、
国内炭は逆に二十六年度は四千六百五十万トン、二十七年度は四千三百七十万トン、二十八年度は四千三百五十万トンと逐年減少しております。かようなことで、この数字だけ御覧になりましても、
国内の
燃料消費そのものは年々伸びて来ておるにかからず、
重油及び
外国炭といういわゆる
外国商品の侵略によりまして、
国内の
石炭産業が今日の
状態に追い込まれておることは、極めて簡単に申しまするというと、それでおわかりのことと思います。
そこで
只今のこの
石炭廃業の
惨状は
大手、
中小を問いませんが特に
中小炭鉱の
現状を申し上げてみまするというと、まず
中小炭鉱がこの
不況によりまして潰滅した、
つまり潰れて消えてなく
なつたという廃休山の
数量を申し上げてみまするというと、
全国で二十八年度の四月には八百四十八坑という
炭鉱がありました。そのうちに二十八年度において潰れた
炭鉱、これは
中小のみを申し上げまするが、二十八年度において百八十七坑というものが潰れております。二十九年に入りまして四月に五十三坑、五月に三十五坑、六月には二十九坑、
合計三百四坑というものが潰れて消えてなく
なつた。そのうちに
九州が百八十六坑を占めております。これによりまして生じた
失業人員が
中小だけで約三万人。
中小はもと約十三万人ほぼありましたのが、現在では九万七、八千人に減
つております。従いまして
家族を含めておそらく十数万人の
人たちが
生活を失
つておる。ところが
残つた炭鉱といいましても、
炭鉱自体が
只今のように行き語
つておりまするために、
賃金の遅払は、これは私
どものはうでは正確にわかりませんが、一カ月ないし二カ月或いは三カ月にも及んでおるというふうに聞いております。そのために
金券を発行したり或いは
通張を出したりして一時糊塗しておりまするが、この
金券や通帳は信用を失墜いたしまするから、一遍出したらもう
あとは駄目なんです。
只今委員長の
北海道の御視察の刷物を頂きましたが、
北海道の或る一部では本年の二月から
賃金という現金にはお目にかか
つたことがないというような御
報告があります。これはまあ
労働組合の方がお見えにな
つておりまするから、その深刻の
状況は詳しく御説明あらうと思いまするが、そのために我々の
経営の
協力体である
従業員各位に御迷惑をかけたのは勿論、その他
電力料、税金、
社会保険料及び
附近住民に対する資材その他の支払、そういうもので四方八方に迷惑をかけまして、その金額は、これはなかなか掴みにくいのでありますが、この七月に前
佐久石炭局長の
お話によりますというと、約八十億円に上るということを承
つております。
かような次第でありまして、
炭鉱の現在の
惨状は、これはまあ私
どもよりも労組の方から詳しく御
報告があると思いますので、私はこれ以上は差控えまするが、然らばこれをどうしたらいいか、こういう問題であります。これにつきましては、事ここに至りましては、
石炭産業そのものの立直り、再建という
根本政策を離れましては、当面の
緊急対策はなかなか
考えにくいのでありますが、併しかような深刻な
状態に追込まれました以上は、
目先のこの
危機、深刻なる
苦境をどう切抜けるかという問題が浮び上ると思います。従いまして、本席の
委員会のお尋ねは、
長期対策という点よりも、むしろ
目先の
緊急対策をどうするかという点に重点が置かれるやに拝察いたしますので、その点につきまして私の
考えを二、三申上げてみたいと思います。
石炭産業が今日な
つた原因につきましてはいろいろありますが、要するに掘
つた石炭が売れない、売れないから
従つて金がつま
つて来る、金がつまるから
炭鉱が潰れる、簡単に言いますと、そういう順序を辿
つております。そこでこの緊急当面の問題を切抜けるには、売れない
石炭を売れるようにどうしたらできるか、なおつま
つている金をどうしたらこの
危機が切抜けるか、それからまあ更にやむを得ず失業した
人たちの処置をどうするかという問題があろうかと思いまするが、私は前の二点について申上げてみたいと思います。そこで今急に
需要の喚起を明日から図れ
といつても、これは無理な話でありますが、
只今貯炭は七月末に
全国で
生産業者の
手持炭が四百三十万トン。これは去年の七月は四百二十七万トンでありますから、大体それを若干超過しておるという
情勢であります。それで
生産はどうかというと、去年の一—六月に比べまして今年は四百万トンの減産であります。四百万トン
生産が減
つておりながら、
貯炭は前年と同様であるということは、簡単にいいまするというと、それだけ
消費が減
つておる、こういうことに相成るわけであります。その四百三十万トンの、これはまあ八月の十日では四百六万トンに減少しておるのでありますが、これは八月以降は季節的に若干減るというのが年々の通例でありますが、四百三十万トンのうちに、
大手側いわゆる
大手十九社の
貯炭が三百十万トンです。で、
中小は約六十万トン。その他のバランスは、いわゆる
仲買業者、いわゆる商社の
手持であります。現在の出炭はどうかといいますと、大子、
中小を通じまして三百五十万トンの
月産です。そのうちに
大手が二百五十万トン、
中小が百万トンです。
従つて貯炭を
月産に比べてみまするというと、
大手は
月産二百五十万トンに対して
貯炭は三百十万トン持
つておる。
中小は
月産百万トンに対して約六十万トン
貯炭を持
つておる。如何にも
中小は
貯炭の割合が少い。
つまり滞貨が少いというふうに見えまするが、これはもう申すまでもなく、
大手は有力なる
金融機関の背景がありまするので、売れなくても掘る力があるわけです。
中小は売れない
滞貨を抱えては到底や
つて行けないということで、
貯炭が少いということは、これはやむなく
炭鉱が潰れたり或は
生産が縮減したりということの
つまり一時的の切抜け、手を抜いたということに帰著するわけであります。そこでこの
過剰貯炭を何とか
需要を喚起するようにできんかという点で、現在の
水主火従を
水従にするということを我々は申出ておるのであります。今日まで厖大に食われた
重油、
外国炭、なかんずく
重油をこの際
一つ大幅に削減してもらいたい。
重油の今年二十九年度の
輸入計画は二十八年度と同様五百三十七万キロ・
リツターにな
つております。このままでは七百万トンの
重油に食われた
石炭消費はそのままでありまするから、このうちから少くとも百万乃至百五十万キロ・
リツター、
石炭に換算いたしまして二百万乃至三百万、これは倍になりまするから、これを削減してもらいたい。これは外貨の面からい
つても
石炭産業の立ち直りという点からい
つても、当然必要じやないかということで
政府にも迫
つております。
政府もそういう
考えを持
つておられるようでありまして、特に一例を申し上げまするというと、この十月一日からはいわゆる
不急不用贅沢需要とみなされる
暖厨房浴場の
重油は切ると、こういうことをすでに
決定せられまして、
法的規制をするということに相成
つてお
つたわけでありまするが、これが諸般の
政治的理由によるかと思いまするが、遂に流れてしま
つた。
つまり暖厨房浴場あたりの油さえ切れないという始末では、到底その他の鉄鋼或いは
電力、セメント、
重要産業の
油規制はできんじやないかといういうことを私
どもは今歎いておるところであります。その油の削減ということは是非貫徹したいと思
つておりまするが、これは明日から間に合う問題ではない。そこで今
貯炭にな
つておる四百数十万トンのうちの、せめて、まあ二百万トンということを言
つておりまするが、これを
一つ政府において
買上げて
準備貯炭として管理してもらいたいということを要望いたしまして、現在
油業者が油でなくちやならんという主張の
一つとして、
石炭産業は年々大きな
ストをリピートしておるではないか、今
石炭が余る
といつてもいつ又二十七年の末のような
危機に頻せんとも限らん、それで油をそうむやみに
切つたのでは
石炭のみでは
供給の不安があるというのが
一つの
理由なんです。そこでそういうことであれば、今後は
つまり産業を破壊するような
ストは勿論ないと思いまするが、そういう場合に備えるためにも、
政府において
一つの
準備貯炭を管理するということは、今の
石炭危機を救う上からい
つても、又
石炭の
供給の
安定確保を図る上からい
つても、適当ではなかろうか、こういうことを申し出ております。併しこの
政府買上げによる
管理貯炭ということは、現在の
財政状態から見てなかなか困難であるとするなられば、
公益事業を中心とした
大口工場に一定の
保有貯炭を持たしてもらいたい、それに要する
資金は国の
財政資金で融資をしてもらいたいという点を要求しております。今朝の新聞を拝見いたしまするというと、
愛知通産大臣は
国鉄に対して約十億円、
石炭換算にして二十数万トンの
保有貯炭を持たせるという
お話が出ておりましたが、かようなことは
是非一つ御声明通り実行して頂きたい。これは極めて
緊急即効の効果があろうかと思います。
次は、
ちよと御
参考のために申上げまするが、我々業界としては、
国鉄及び
電力に対してその要望をいたしました。
国鉄といたしましては、予算の
関係もあるからということで、その実現を見ませんでしたが、
電力会社につきましては、九
電力会社の各社長が極めて積極的に
協力の心を示して頂きまして、大体
電力会社で六十万トンほど
一つ繰上げをと
つてもらいたい。これはまあ
中小込みであるということで
お話いたしまして、その
了解を得てお
つた。
数量的には勿論別でありますが、
石炭産業の
状況をよく御
了解を願いまして、趣旨に御賛同を
願つてお
つたのでありますが、御案内のような全く稀に見る大豊水のために
石炭の
消費は減り、一方
契約炭は、
消費しないにかかわらず、次々とと
つて頂きましたので、現在
電力会社の
貯炭場はどこもここも充満いたしまして、物理的には収容する余裕がないというまでに相な
つております。現在
国鉄の
貯炭は約四十万トン、
電力の
貯炭は百五十万トンにな
つております。
国鉄は大体一三十四、五万トンくらいの毎月の
消費でございます。そこで
電力にも恐らく物理的に収容の余地があれば、おとり願えるかと
考えております。
次は、
金融問題でありますが、これは現在の
金融は、
政策金融は客観上許されませんので、どうしても個々の、
つまりケース、
ケースでや
つて行くという、ことに相なるわけであります。そういたしまするというと、現在のように
貯炭が過剰をいたしまして、その期間がいつにな
つて消化できるかということがわからん際には、なかなか
金融機関は、
つまり消化の見通しのない
石炭に対して
金融をしぼるわけであります。その結果、今日の
中小炭鉱の
状態に追いこめておるわけでありまするが、これは勿論私
どもといえ
ども、八百四十八もある
炭鉱が、その
炭鉱が現在のまま皆切抜け得るということは勿論
考えておりません。当然その中には止むを得ず遺憾ながら消えていかねばならない宿命の
炭鉱もあると思いますが、現在の段階では国の
経済から見ましても、生かしておかねばならんという
炭鉱までが
崩壊し或いは
崩壊に瀕しておるわけであります。重ねて申上げまするが、二八年においては五千万トンの
消費が予定されておりました。それが現在ではすでに四千八百万トンもあやしいということに相な
つております。
日本の
経済で四千万トンやそこらの
石炭で立ち行くはずは決してありませんので、一旦
炭鉱が潰れてしまうというと、
一般工業と違いまして、これを更に復興するには少くとも
中小炭鉱でも二年、或いは
大手になりますと三年五年の年月を要するわけであります。
従つて今のまま
崩壊に任せておきますならば、やがて
石炭の不足ということが必らず来ます。今日の
石炭の暴落はやがて
石炭の暴騰になるということに相なりまするので、生かしておかなければならん
炭鉱、これは衆目の見るところ、
政府でも
企業診断をや
つておられまするから、或る程度のラインは引き得るわけでありまするから、そういう方面に対しては、特別に何とか
一つ金の行詰りで潰れてしまうということを防ぐために、
特別金融の
方法をお
考えになるのが適当じやないか。かように
考えておりまして、そのことをまああちこちにお願いしておる次第であります。
私の話は一応簡単でございますが、なお、御質問があればお答えいたします。