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説明員(石原武夫君)
只今政務次官からこれの概略大綱について
説明がございましたので、あと具体的なことにつきましてできるだけ簡単に主な点について御
説明を付加させて頂きたいと存じます。
その前に一言お断り申上げておきたいのですが、以下御
説明いたしますような具体的な対策につきましては、実は
政府部内におきましても勿論
関係各省がおありになるわけで、その辺の意見の
調整をまだいたしておりませんので、一応経済審議庁として
考えております
程度を本日お手許に資料として差上げてございますので、いずれ
政府としてきめます際には
関係のそれぞれの専門のところとも御相談することに相なろうかと思いますので、
従つて政府としては或る
程度これと違うような具体的な対策ということに相なるかも知れません。ただ先ほど政務次官がお述べになりました大綱につきましては少くとも経済審議庁としてはこういうふうに
考えておるというふうに御了解願
つて差支えないと
考えております。以下十数項目について分れて書いてございますので、
一つ一つ朗読するような
説明は余り時間を要するかと思いますので、成るべく簡単に御
説明をいたしたいと思います。
第一は輸出振興対策でございますが、これは先ほど政務次官が
お話になりましたように、今後の政策が経営的な正常貿易による均衡回復ということにございますので、最も力を入れて
考えなければならん問題だというふうに
考えております。それでその
一つといたしまして三十二年度までに一応現在のところでは十七億四千万ドルという
数字が出ております。これはまだ多少検討の余地を残しておりますので、多少変るかも知れませんが、一応さような目標を三十二年度に立てまして、輸出目標
制度を採用する、これは余り詳しい
説明をするのは時間がかかりますので如何かと思いますので、簡単に
お話いたしまするが、実は通産省が中心になりまして、各商品ごとに、市場別に現在の見通しから
言つてこの
程度輸出を増加し得るだろう、勿論それに必要な対策は併せ講ずるというのが前提でございますが、成るべく実現性のある案にしたいということで、各商品別に、市場別に検討して作
つたものでございます。一応三十二年度までに十七億四千万ドルという
数字にな
つております。これはこの
数字が大きいとか小さいとか、いろいろ批判はあるようでございますが、当初はもう少し大きな
数字を目標として輸出の増進を図りたいという気持もございましたが、具体的に作業をいたしてみますると、一番問題になりますのは、東南地域が
日本としては最も重要な輸出市場でございます。従いましてさような方面につきましてはこの
計画に織り込んでおります
数字よりももう少し大きい
数字の輸出が可能であろうかというふうにも算定できますが、相手国の輸入力と申しますか、或いは我が国と当該相手国との貿易のバランスというようなものを
考えますと、なかなか当該相手国の輸入力が少いというようなことから東南アジアに対する輸出というものを或る
程度控え目にいたしましたので、さような点が大きく響きまして、一応十七億四千万ドルとな
つております。一応これを
政府として目標をきめまして、今後輸出の
政府としての対策を立てる
一つの目標にし、又民間としてもそれぞれそれを目標にして輸出の増進を図
つて行く、かように
考えるのであります。
あとここに書いてございますのは、海外の輸入原料を特に確保するとか、輸出金融の問題、或いは先ほど御
説明申しましたように輸出所得に対します現在でも或る
程度の優遇措置を講じておりますが、更にこれを強化するというような点、或いは商品別に輸出
組合を作る、或いは輸出入取引法を改正いたしまして、輸出の面におきましてはもう少し強い協定ができ、而もアウト・サイダーも必要によればこの協定に縛り得るような措置を講ずるというようなことで輸出の促進を図
つて行きたいというふうに
考えております。更に経済外交推進につきましては、これは特に御
説明申上げるまでもございませんが、すでに現在におきましてもまだ
日本が不当なと申しますか、非常に不利な関税の取扱いを受けているところもございますし、今後東南アジアとの経済協力というようなことで経済的に進めて参ります上におきましても、これは外交的に更に措置を要する点が多々あるわけでございまして、又中南米等の新市場の開拓につきましても同様の問題があろうかと思います。
次に輸入の抑制対策でございますが、これはやはり今後できるだけ正常貿易によります国際収支のバランスを回復するということになりますと、どうしても輸出がそれほど伸びませんので、やはり輸入の枠にどうしても限度がございます。現在
考えておりますのは、大体本年度並み、本年度は二十億ドルぐらいの輸入ということに一応限度として
考えておりますが、多少の
数字は将来のことでございますので、動くかと思いますが、これが大幅に増加するというようなことは不可能であろうと思いますので、
従つて輸入は或る
程度本年実行しておりますように不急不要品等を中心にできるだけ抑制をして行きたいということで今後
計画をいたす
考えでございます。
それに関連いたしまして自給度の向上ということによりまして輸入の
節約を図るという問題が当然あると思います。それが三番目に「国内自給度の向上」と書いてございまして、第一は食糧の増産でございます。これはすでに現在におきましても相当量の輸入をいたしておりますが、約年々百万殖える人口の増加によりまして、当然食糧の増加輸入が必要になるわけでございますが、その面をできるだけ国内の食糧増産によりまして、少くとも人口増加による
程度の食糧は国内で増産を図りたいというふうに
考えております。ただ又食糧の増産の
計画はいろいろ農林省等に案があり、すでに発表にな
つておられる点もございますが、現在のような財政の
状況でその
計画はなかなか実行が困難でございますので、果して食糧がどの
程度国内で三十二年度までに増産するかということは、財政の面もございましてまだ未定でございますが、先ほど申上げました輸出目標を十七億四千にいたしまして、輸入二十億というようなことを
考えておりました際には、大体外貨としては現行の輸入所要資金の範囲内ぐらいに一応収めたい、こういうことでございます。量的には多少まだ国内の増産で全部カバーできるかどうかについては検討の余地があると思いますが、御承知のように食糧は最近国際的に非常な過剰にな
つており、価格も相当下落の傾向に現在もございます。なお今後も多少下落をするのではないかと予想されます。併し或いは将来におきましては食生活の改善というようなことも
考えられる余地があるかと思いますので、さような面で輸入食糧の外貨総額としては三十三年度におきましても大体この
程度にいたして行きたいというふうに
考えておりますが、さような
意味で食糧の是非国内で増産に努めて行きたい。
それから今国で非常に繊維原料の輸入が非常に大きなウエートを占めておりますが、それをできるだけ節減いたしますために、羊毛なり綿花なりの代替といたしまして合成繊維の増産を図
つて行きたい。これはアセテートと称するものを含んでおりますが、これで一応現在
考えておりますのは三十二年度におきまして合成繊維のアセテートを含めまして一億ポンド、これを今の棉花代用に一部代替になりますので、それを一応の推算をいたしますと約五千万ドル弱という
数字になります。五千万ドルちよつと切れるかと思いますが、それぐらいの
数字の繊維輸入原料の
節約ができるということで
計画を進めております。なお今申しましたのに関連いたしまして、かような合成繊維を国内で増産いたしまして、それによ
つて内需を主として賄
つて参りますためには、やはりかような新規産業の需要と申しますか、それの安定した需要を確保するという必要が是非あろうと思いますので、将来は、或いは場合によりまして混紡というようなことを或る
程度何らかの
方法で強制して行く必要があろうかというふうにも
考えております。これは今直ちに強制するというほどでもないと思いますが、現在の生産数量はさように大きくございませんので、ただ非常に大きくなりました際にいろいろな
関係で、繊維等は個人の趣味もございますので、果してそういうものがそれだけ簡単に国内で需要されるかという点は多少の私としては不安もございますので、さような際には将来輸入原料の混紡というようなことも相当
考えて行かないと、なかなか国内の急速な増産が困難であるというふうに
考えております。
その他輸入外貨の
節約ということで、
一つは外航船舶、これは相当大きな金額に達します。これは今後どの
程度の外航船舶を毎年建造して行くかにつきましてはまだ確定的に
政府としてはきま
つておりませんが、仮に毎年二十万トンくらいずつ外航船舶を作
つて行くといたしますると、一年に二十万トンできますと、外貨の
節約額と申しますか、或いは手取額と申しますか、千五百万ドルくらいに相成るのでございます。
従つて三十二年までやりますと、これも約五万ドル近くの
節約ということに相成ろうかと思います。
そのほか国産機械或いは自動車等の工業の国内産業の育成を図
つて、現在相当これらの輸入をいたしておりますが、さようなものを国産に振り替えて行きたいというふうに
考えております。
なお新らしい技術をできるだけ国内で奨励し、起しまして、それによ
つて或いは或るものについては輸出の増進に役立てる、或るものについては国内自給度の向上に資したいというふうに
考えております。
それから四番目が産業基盤の強化策でございまするが、これは今後輸出を伸ばしますためには、
日本経済全体の健全な発達を図りますためにも、どうしても現在の国内産業の基盤を強化いたしまして、製品コ
ストの低下、或いは品質の向上を図りまして輸出力を増進する必要があろうと思います。さような観点からいたしまして、第一には資本蓄積の増進、これは先ほど御
説明ありましたような再評価の問題、或いは企業の内部留保の問題等について税法上の特段の措置を講じたいというふうに
考えております。それから二番目に企業をそれぞれ強化いたしまして又この合理化を促進いたしますために、生産をできるだけ量産化する必要があろうと思いますので、これは製品をそれぞれ専門的な生産に移すとか、或いは企業の統合が必要であれば統合を促進するというようなことで、できるだけさような面からのコ
ストの引下げも
考えたいというふうに
考えております。それからその次に三番目に、何分さような合理化をいたしますためには相当の設備に資金を投ずる必要がございまするが、今の緊縮的な財政
経済政策の中ではさようなものを調達いたしますにはどうしても重点的に必要な部面に資金を流すという措置を講ずる必要があろうと思いますので、財政の投融資につきしては今後さような重点的な効率化を図
つて行きたい、かように
考えております。又資金の質的、統制と申しまするか、重点化と申しまするか、さようなことをいたしますにつきましても或る
程度の将来の見通しということは必要であろうと思いますので、主要産業別に生産の目標を作りまして、資金の質的な
調整、外貨の割当等についての基準にいたして参りたいというふうに
考えております。それからなお国際的な観点から見まして、製品の過当な騰落によ
つて輸出が阻害されるということもままございますので、かような過当な競争の防止につきましては、先ほ
どもちよつと触れましたように、輸出
組合法等の改正或いはその他の措置でそれの防止対策をと
つて参りたいというふうに
考えております。一々申上げると時間を要しまするので、若し後ほど御質問があればその際に補足してお答えさして頂くことにして、主な点だけについて、各項目について御
説明さして頂きたいと思います。
従つて、五番目の財政投融資の問題でございますが、財政投融資につきましても今後重点的に
考えまして、第一に輸出の振興或いは自給度の向上のために必要な資金、中小企業の
関係の資金、或いは輸出入銀行の資金を先ず優先的に確保するようにいたしたいと
考えますし、財政投融資に当りましても、今後それによる効果が十分把握し、実現するようなことも
一つ考えて行きたいと思います。それと共に資金の量に制限がございますので、不必要と申しますか、不急の面については徹底的に抑制をいたしまして、重点的に、国全体から見まして資金効率のいい面に資金を流して行きたい。これにつきまして必要があれば何らかの、ここには「投資
調整委員会」と書いてありますが、何かかような資金の
調整の
委員会的な組織を設けまして今まで非難もございましたが、単なる資金の量的規制でなくて質的規制を加味して今後の資金に対する
計画をや
つて参りたいというふうに
考えます。その次は金利でございますが、金利は御承知のように国際的に比べて高く、まあこれはいろいろ比較によりまし逢いますが、倍くらいの金利であるということは御承知の
通りであります。これは金融機関の合理化ということにも関連いたしますが、我々といたしましては漸次金利も
一つ引下げて参りたいというふうに
考えます。その他償却等については先ほど触れましたが、我々といたしましては中小企業の租税負担は現在のところ実際上は大企業に比べまして高いのではないかというふうに感じておりますが、これは財政全般の問題もありますので、如何なる案が可能か、なお今後検討をしなければなりませんが、
考え方といたしましては、この面についてはもう少し税制についても改正をいたす必要があろうというふうに
考えます。
それから次に六番目の物価の対策でございますが、これは緊縮政策を実行して参ります上に総合的な物価の対策が必要であろうと思いますので、第一には公共料金を中心にいたしまして、何かかようなものについて一元的に取扱い得るようにいたしたらどうかという点を今検討中でございます。それからなお物価の問題の中に今後の見通しから申上げますると、やはり或る
程度でこぼこができる、輸入が或る
程度制約がございますために、輸入原料の中で或いは物によ
つては値下りを予想されるというふうなものもございましようし、或いは中には国産的な商品でありましても割高と申しますか、非常に高い価格が維持されるというような問題も起るかと思います。これは現在でも国産品についてもすでに御承知のようにセメントにつきましては非常に高い価格が維持されるということで問題にな
つております。さような面も今後起るかと思いますが、これらにつきましても何か指示価格を作る、或いは勧告等を
考え、何らかの
一つ措置を
考える必要があるのじやなかろうかというふうに
考えます。
それからその次に書いてございますが、二番目に書いてございます物価の問題と関連して我々の
考え方といたしましては、経済の建直しをいたします間につきましては、物価も一般的に下がることがございます。給与についてはできるだけ
建前としては従来のように非常に大幅に引上げるということは
一つ下げるように何らか
考えたいというふうに
考えます。これは別に我々のほうも何か法令でも
考えるとかいうようなことは全く
考えておりませんが、具体的な施策の方向としてはできるだけ暫らくの間そうした方向にすべての点が向けられるように
考えておりますし、なお争議等につきましても現在のような段階では非常に労使の間に意見が合わずに長い間争議の
状況が続きますことは、労使双方とも非常な痛手に相成ろうかと思いますので、又国としても損失になるかと思いますので、何らかの、さような場合に第三者が入
つた形で早く合理的な解決がつくような
方法もこの際
考えたらどうかというふうに
考えておるわけであります。
それから七番目が失業対策であります。これは現在緊縮政策を実行して参りまして、或る
程度物価が下
つたというような面もございますが、失業の問題は漸次問題化しておると
考えております。これらにつきましては現在労働省でいろいろ御心配になりまして、公共事業につきましての吸収でございますとか、或いは現在すでに既定の
予算の範囲内におきまして公共事業費等の、特に失業の
状況の悪化しております地域に対しまして、何らかの繰上げ措置を講ずるというような方針で具体的に今御検討を願
つておりまするが、特にさような点につきましては、例えば炭鉱地帯でありますとか造船地帯でありますとか、機業地帯でありますとか、相当失業者が集団的に発生しておるというような点につきましては、特別の措置を
考えなければならんと
考えております。なお少し先の問題といたしましても、今後今のような政策がとられて行く上におきましては、相当失業の面或いは
雇用の面につきまして十分な配慮をいたしませんと、そもそももとの基本の
計画自身がその面から崩れて来るという御心配もあろうかと
考えておりますので、来年度
予算等におきましても十分それらの点は配意をする必要があろうかと
考えております。さような場合に、できれば勿論全体の現在の財政の下において、その枠内において十分なかような措置が講ぜられることが望ましいと思いますが、非常にそれがむずかしい場合におきましては、一部増税してでもかような面に十分な配意をして然るべきだと、一応そういうふうに
考えまして、いろいろその点は財政の問題でございまするので、検討する余地が多分にございまするが、さような問題も
一つ問題として今検討いたしておるわけであります。
それからその次は消費の抑制対策でありまするが、これは御承知のようにこういうような政策を今と
つておりまするが、それにいたしましても全体の購買力というのは余り落ちておらない。
従つてどうしても今後この緊縮政策を効果あらしめるためには、消費の
節約を図りまして、その貯蓄されました資金を経済全体が建直るような方向に使用させて行くということが是非必要だろうと思いまして、これは具体的な対策としては非常にむずかしい問題であろうかと思いまするが、何らか今後さような面に力を入れて案を
考えて行きたいというふうに
考えております。
それから九番目が中小企業の対策でございまするが、これは申すまでもなく、先ほどの失業、
雇用の現象というような問題と関連いたしまして、今の政策がいわゆる中小企業のほうに非常にひどく影響を持
つておりますことは事実だと思いますので、中小企業の対策につきましては更に今後も力を入れるべきだというふうに
考えております。ここに書いてありますような対策を、これは特に新らしい問題でもございませんが、力を入れて促進をして行きたいというふうに
考えております。
それから十番目が財政の
関係でございまするが、これにつきましては三十年度以降の
予算につきましても更に再検討をいたしまして、重点化を図りまして、均衡財政の線を崩さないようにして行きたいという方針でございます。これはあとの点につきましてはすでに申上げました点と重複いたしますので、省略さして頂きますが、失業対策等については所要の経費を充当するとか、なお国の財政の緊縮に伴
つて地方財政についても同様に何らか今後措置が必要ではなかろうかというふうに
考えております。
その次は十一が租税の対策でございまするが、これにつきましては先ほど政務次官からも
お話がありましたし、各項目に殆んど触れておりますので一応御
説明を省略さして頂きたいと思います。
十二が農業の対策でございまして、これは特段のあれがございませんが、先ほど申しましたように更に資金の効果的な活用を図りまして、食糧の増産に力を入れたいということと、なお食糧価格につきましても、物価全体の対策と調和のとれたような決定をして行きたいと思います。なお三番目にございますのは肥料でございますが、肥料につきましては、これは目下肥料審議会が審議中てございますので、
考え方といたしましては、農産物価の安定というような点から、できるだけ低廉な価格で供給できるような措置を講じて参りたい、そういうふうに
考えております。
十三は外資の導入でございまするが、国際収支の
関係から申しましても、外資の導入に当
つては、将来の負担にもなることでございまするので、できるだけ厳選をしなければならないと思いますが、一面現在非常に脆弱化している我が国の経済基盤を強化する
意味、或いはコ
ストの低減、品質の向上に役立つ点もございまするので、電力、石炭、鉄鋼、機械、その他につきまして、或いは農業等につきまして外資の導入を図りたい。これはすでに御承知のように世界銀行と、かようなものについて
交渉が明衣開始されているような
状況でございます。
それからその次の防衛産業でございますが、これは防衛力の漸増の方針に
従つて防衛産業の整備をして行こうということでございますが、ややもすると非常に過剰な投資と申しまするか、非常に設備が余計できるというような心配もございますので、今後かような新らしい防衛産業が整備される際にはその辺の点は十分考慮をいたしまして適正規模で産業が起るというふうにいたしたいと思います。
以上一応概略でございます。