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国務大臣(
小坂善太郎君) 私も先般来
労働省内部におきまして少し研究してみてもらいたいということを申したことは
新聞等にも御報道願いました。自由党におきましてもこの
考え方を
説明してもらいたいというようなことで御
説明いたしたものがございます。それに基きまして
只今委員長の仰せのような私の
考え方を聞いて頂くという意味で申上げてみたいと思います。併しこれは飽くまで
構想でございまして、そういう
考え方を持
つてはどうだろうか、或いはこの
考え方に基いて
現実に施策を行うとすればどういう点が問題になるか研究して行こうではないか、こういうことでございます。そこで私の根本的の
考え方といたしましては、終戦直後総
司令部が参りまして、いろいろ
日本民主化のことを指導いたしたのでありまするが、その
一環といたしまして、
労働関係の諸
法律も強い指導、干渉を受けて制定せられたことは御
承知の
通りであります。併しその後
相当の年月を閲しておりまするし、
我が国内におきましても十分その間の
経験を積んで参りました。そこで
我が国自身の持
つておりまする
経済的な
基盤というものはどういうものかと
考えてみますると、まあ先ず第一に非常に土地が狭い、人が多い、而もその
人口が非常な勢いを以て殖えつつある。そこでその
人口を養うには資源も乏しい
関係上、どうしても食糧を含めて
輸入をして行かなければならない。
輸入をするには金が要る、その金は、どうして獲得するかというと外国への輸出によ
つて、そのマージンによ
つて輸入資金を獲得して行く、こういう基本的な
産業自体を維持する国に特有な構造があるわけであります。これを失いますというと、いわゆる海外の市場におきましての
競争力において完全に
日本の
競争が負けるということになりますると、結局国全体が
失業をする。
日本の
産業が成立たず、
日本の
国民もその
産業によ
つて職を得る者も
失業をするということになるのでありまするから、やはり
日本自体のそうした
経済的な
基盤をもととして、
労働関係全般についてもその後の
経験を快調として
考えては如何か。勿論その
考え方というものが
世界全般の
考え方のレベルを下廻るものであ
つてはならないし、働く者の
福祉を守るという
理想を捨ててはならない、捨ててはならないけれ
ども、
現実にその
基盤を持たずして、ただ単に
理想のみを追うということになりますれば、その
理想はもとより
現実の
基盤を失
つてしまうということになるのでありまするから、そういう
関係を十分に考慮しながら
労働関係の問題を見直してみようではないか、まあそういうことなんであります。
ただ私は
労働問題についての扱い方或いは
労働法制についての扱い方といたしまして、これはやはり
労使対等の
立場において問題を
考える際に
双方から
信頼を受けるものでなければならんと思
つております。併しその
信頼というものも
理解の上に立つものであ
つて、ただ単に力ずくでこういう
法律があるのだからそれを守
つて行けということだけではいけない、それも
法律ができる以上はこれは守
つてもらわなければ困りますけれ
ども、
法律を作る過程におきましてはできるだけ納得の行く方向で行くべきであろう、こういうふうに
考えておりますので、まあ勿論多数の意思の赴くところによ
つて最終的にはきまる問題でありますけれ
ども、こうした
考え方をできるだけ世に問うて、
一般の
議論の花の中から何かそこに実るものがあれば非常な結構なことではないか、そういうような
考え方で
一般労働問題について
お互いに研究して行く、こういうことであるわけであります。
只今委員長のお示しの例えば
労組の
政治資金の
問題等につきましても、
イギリス等におきましては御
承知のように
労働法規の中に、一九一三年
労働組合法第三条、第七条におきまして、
労働組合の
基金は左の場合を除いて
政治上の
目的には使用できない。即ち
組合員の無
記名投票によ
つて政治目的を行うことを
組合の
目的として承認される場合でないとこれは使用できんという規定にな
つておりまするし、そうした
目的の支払は別個の
政治基金からするのである。そうしてその
政治基金を醵出し若しくは拒絶することの理由として、
組合員が不利益の取扱を受けないということが明瞭にな
つておりまするので、まあこういうことな
ども現在の
我が国のいわゆる
組合基金というものはやはりもう少し明瞭に
組合員自身の
福祉ということと、いわゆる
政治資金というものとはつきり区別して
考えることがよいのではないか。併しこれをどういう
法制で扱うかということにつきましては、これは
労働組合法というよりもむしろ
政治資金規正法というようなものの中で各党によ
つて考えて行つたらよいのではないかというような
考えを持
つておるのでございます。併し
労働関係につきましては、今申上げましたように、
労働政策の基本というものをやはり
日本の
経済を
国民全般が守
つて行くのだ、こういう
立場から、できるだけ合理的な
労使関係、
産業平和を確立する。そういう
基礎の下に、やはり
組合員個人それぞれが十分に満足されるような、そうした傾向に
政策の重点をおきたい、こういうことでございまして、やはりそうした趣旨からいたしまして、
労働教育の徹底、
労働経済統計の整備、そうして
国民一般の正しい
理解を深めることによりまして、いわゆる
労使の問題は
労使だけが満足すればいいというのではなく、やはり
国民一般の
理解の下に、
労働争議というものは、真に止むを得ざる場合には
ストライキもいいけれ
ども、何ということなしに
ただストライキをや
つておるということによ
つて国がよくもならんのだ、そういうようなことをよく認識してもらうようにしたいと
考えるのであります。まあこれは飽くまで
構想でございまするが、私は
争議行為の
開始というような際におきましては、やはり
民主主義の建前から全部の無
記名投票によ
つて開始の要件をきめるというようなことも
考えてはよろしいのではないか。又先ほど申上げましたような
政治活動につきましては、これは合理的な限界を設ける必要がありはしないかというようなことを
考えておるのでございます。
なお
労働者の
福祉関係等につきましても、これにつきましては現在の
労働金庫というようなものをできるだけ広汎に活用してもらうような
対策を持ちたいと思いますが、先般来もいろいろ問題もございました、
政府の預託の問題もございましたが、これはやはり
労働中央金庫というようなものを
作つて、更にこれを強力に推進するほうがよろしかろうと思います。又
労働者の
福利共済団体法というような
法律を設けまして、いわゆる組織されざる
中小企業の
労働者諸君を
団体によりましてその相互の
福利を図る、こういう
考え方を導入いたしたいと存じております次第であります。又、若し可能であるならばでございますが、
労働省内におきましても
福祉関係を主とする、つまり
労働者諸君の
福祉関係をのみ
考える
福祉局というようなものを設置いたしてみたいとも
考えるのでございます。
なお
労働基準法につきましては、先般来国会におきましても種々御
説明を申上げましたこともございまするし、又御質疑もあつたのでございますが、やはり働いて行かなければや
つて行けないのでございまするが、
現行法におきましても
労働時間というものは実
労働一日八時間、週四十八時間制にな
つておりまして、これに対する例外は種種番いてあるのであります。併しながら私
どもといたしまして、この
労働時間というものは実
労働時間であるのだということをもう少し明確に
お互いに認識し合う必要がありはしないか。
間際労働条約におきまする
労働時間制というものは
工業的企業及び商業、
事業所におきまして一日八時間、週四十八時間という実
労働にな
つておりますが、又
炭鉱におきましては一日七時間四十五分、
ガラス工場におきましては
週平均四十二時間に短縮、
公共事業におきましては週四十時間、
繊維工業におきましても週四十時間というふうに時間の
条約があるわけでございまするが、問題は、
労働時間とはそれでは如何なるものかということを
お互いにもう少し明確にすることがよろしいのではないか。まあ私
どもの
解釈といたしましては、
労働時間と称するのは、
労働者が
使用者の
指揮に服する時間をいう、
使用者の
指揮に服しない時間を包含しないという、
繊維工業における
労働時間に関する
条約に定めてありまする
労働時間というものの
考えて方を適当と
考えておるのでございまするが、そうしたことをもう少し徹底させる必要があるのではなかろうかと思います。併しよく
基準法が悪い
基準法が悪いという
意見がありまして、私よく聞いてみますと、
基準法というのは働く時間ではなくて、ただ単に拘束時間をいうておるんだという
意見がありますが、実際に
基準法に示してあるところは実
労働一日八時間ということなんだということをもう少し徹底させる必要がありはしないか。要するにみんなが働きみんなが調和を保
つて産業の平和を保
つて行くという
態勢、そして
ストライキというものはそう濫りに濫用されない、そしてそこに
産業平和が確立せられるという
態勢が先ほど申上げました
日本経済の実態から申しまして必要だということは誰しも
考えるところでありますが、それにつきまして、それは他の
政策面において種々改善さるべき点もございましようけれ
ども、それは勿論や
つてもらいたいことといたしまして、
労働政策の面からいたしましては、
労働法規の
解釈等について、或いは
労働法規そのものについてもう少し
考えてみようではないか、こういうのが私の
考えておる主体でございます。
なお
委員長の御指摘の中に
解雇制限法のことがございましたが、これは西ドイツにおきまして
解雇制限法というのがございますのでありますが、これは御
承知のことを存じますが、
我が国におきましても現在の
デフレ下におきまして、
デフレに藉口しての首切りというのが非常に濫発せられるというような危険がありとするならば、やはりこれに関しまして社会的に、不当な
解雇はできないというような
制限を置くことも
一つの
考え方であると思います。非常に公平なる機関があ
つて、それの裁定というものが下りましたならば、それに対する
解雇というものは社会的に妥当なりと認識せられるものであるから、それに対する
解雇反対の
ストライキというものもこれも行えないということにすれば、これは非常に合理的に話が進むというふうにも思いますので、この点につきましても
現実に一体どういう障害があるだろうか、或いはやるとすればどういう点を取上げたらいいだろうというので研究してもらいたいということを申した次第でございます。
次は、これは
構想ではございませんで、
失業の問題につきまして私
どもとして
失業対策の
強化措置を
考えておるのでございます。これは
現実に是非行わねばならん、これは
構想と申しまするよりも具体的な
対策でございまするが、本
年度におきましては、
政府のほうといたしましても、
経済の地固めの
政策を行う、国際的に
日本が
独立国として繁栄し得る
経済的な
基礎を作りたい、こういうことで努力はいたしておるのでございまするが、半面におきましてやはり雇用の面におきましてそのしわが
失業の形において出て来る事実も否めませんのでございまして、これに関しましては私
どもとしてできる限りの手を打たねばならんと
考えておる次第でございます。現在のところ
大都市及び
炭鉱地帯等の
特殊地域におきましては
相当の
失業情勢が広が
つておるのでございます。これは今後におきましても
相当に進展する場合も予想せられまするから、これに対しましては、特に
失業対策につきましては先ず
地域別に重点的にこれが
措置をするということを
考えたいと思
つております。なお現在
失業保険を受けたいという、又受けつつある人は四十数万人に上
つておりまするが、この
失業保険の切れる時期がやはり問題でございまして、これはやはり明年の一月以降そういう
事態が現れて来るわけでございまするが、明年の下半期の後半になりましては特に
失業対策費について
相当額の増加を必要とすると
考えております。この点につきましては
現実に具体的に
措置をいたしたいと
考えております。又その必要を認めておる次第でございます。なお
地方財政が、やはり最近
失業といいますか、
事業不振のために、
相当地方負担に支障を生じておる
町村がございまして、特定の
地域におきましては
地方財政が
相当悪化しておるようであります。これに対しましては
一定水準以上の
失業対策事業を行う
町村に対しましては、この
超過分について
補助率を考慮する、或いは
交付税の
措置を講ずるというように、何か
失業対策事業と
一般の
基準財政需要との
関係を睨み合せて、
一般の
基準財政需要の中に占める
失業対策費の割合が特に大きい
市町村に対しましては、特にこれについて
補助率の引上げ或いは
交付税の
増額等の
措置を
自治庁において講ぜられるように要望する必要があるのではないか、こういうふうに
考えているのでございます。次に
大都市又は
炭鉱地帯のように特に
失業情勢について深刻なものが見られます
地域につきましては、
目下労働対策連絡協議会において検討されておりますことでありまするが、特に
鉱害復旧事業等のような適切な
公共事業を一部繰上げの
方途を講ずる必要があると存じております。又
産業関連施設につきまして、例えば
道路、港湾、橋梁のような、その
地域におきます
産業振興に非常に有効なものであ
つて、而も
受益者において積極的に
負担の意思あるものにつきましては、
失業対策事業の
実施について特別に考慮するという
措置を
考えたいと
考えているわけであります。これは一部におきましては、
目的税を創設して
失業対策費に充てろという
議論もございますが、私はそうしたことも或いは結構かも知れませんけれ
ども、新税の創設ということにはなかなか問題がございまして、この
道路を新設するということが非常に有利であるからそれについては
負担金を出していい、こういうものがあるといたしますると、その寄付を
市町村において受付ける、これについて
市町村がそれだけの
負担能力ができるわけでありますから、そこにおきまして
失業対策事業を
実施する、こういうような
考えをと
つて参る、かように思
つているのであります。なお、
明年度におきましては、これはこれから大いに折衝せねばならん問題かと思いますが、やはり
失業青年層の中から特に
国土の
建設をするというような気分を持つ者を選抜いたしまして、これに
職業訓練を行うというような形におきまして、現在
建設省が行な
つております或いは農林省が行な
つておりますような
産業開発青年隊、或いは
農村建設青年隊というようなそうした規模の
目的において、
失業対策としての
効果は認めがたいものもございまするが、そうしたような
国土の
建設をするという
目的で
国土建設隊を設置する。これは勿論
労働省におきまして主としてやる
事業ではございませんけれ
ども、こうしたものについて
労務面からの
訓練、或いは人員の
配置の
計画等をお手伝いさせてもらえるようなそうした
国土建設隊というようなことを
考えてみたいと思
つているのでございます。
なお、
失業対策事業の
運営を改善せねばならんと思いまするが、この点につきましては、やはり
一般に
資材費の
増額ということが言われておりますが、これにつきまして、
関係各省とも折衝してみたいと存じまするが、やはりこの
失業対策事業についても
労務監督の
能率化というものをもう少し
考えねばならんと思います。で、
産業能率の良否ということは、これは
失業対策事業ではというふうに言われる向きもあるかも知れませんが、やはり
公共事業と
失業対策事業を噛み合わせる以上、それをうまく噛み合わせて参る以上は或る程度の
労務監督というものはなされなければならんと思います。それに関しまして
就労者の通正
配置ということもこれ又必要なことであろうと思います。或いはそれにつきまして
現場小廻り制を
考える、或いは
現場直行制を
考える、
安定所の窓口に何時間も待
つてお
つて現場へ歩いて行くというようなことでなしに、或る程度固定化したならば
現場に面行ずるという方法を
考えるというような、いろいろな
失業対策事業運営そのものを
改正するということも必要と存するのでございまして、これらにつきまして、
安定局を
中心といたしまして十分に具体的に
運営し得る
方途を伸ばしたい、かように
考えておるのでございます。
なお
公共事業と
失業対策事業を有機的に
組合せる
考え方でございまするが、これに関しましては、これは非常にうまく
運営されればその
効果は大きいものと存ずるのでございます。そこで
地域的に又時期的に
失業情勢に応じた弾力的な
運営を図りますために、将来やはり
公共事業の中にも
明年度の
予算編成等の際には、
災対策予備費のような例に倣いまして、
失業対策的な
公共事業につきまして
一定の
予備費を流用して
労働省の要請する時期或いは
地域等において
各省が
失業情勢に応じて
公共事業の
実施を計画するような、そういう
失業対策的な
効果を
狙つた公共事業運営につきましても十分に考慮してもらいたいと
考えておるのであります。これは
労働省自身がやることでなくて、勿論
建設省もやることでございますが、これにつきまして
労働省として十分その
運営に協力さしてもらうということが、全体の国費を有効に使い、
失業対策としても有効なる
対策の
一環となろうかと
考えておる次第でございます。
以上簡単でございますが、
考えております一端を申述べたわけでございまして、あとは御質問に応じましてお答えしたほうが話の焦点が明らかになると思います。