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1954-08-05 第19回国会 参議院 労働委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月五日(木曜日)    午前十一時一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員赤松常子君辞任につき、その 補欠として村尾重雄君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事      井上 清一君            田村 文吉君            田畑 金光君    委員      早川 愼一君            阿具根 登君            吉田 法晴君            村尾 重雄君            市川 房枝君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    調達庁長官   福島慎太郎君    労働省労政局長 中西  実君    労働省労働基準    局長      亀井  光君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   参考人    全駐留軍労働組    合中央執行委員    長       市川  誠君    日本炭鉱労働組    合九州地方中小    炭鉱対策部長  今村 国年君    日本炭鉱労働組    合北海道地方中   小炭鉱対策部長  飯盛 亮平君    高倉商事株式会    社取締役    中山 亀彦君   —————————————   本日の会議に付した事件理事補欠選任の件 ○労働情勢一般に関する調査の件  (駐留軍労務者労働問題に関する  件)  (中小炭鉱における労働問題に関す  る件)  (総合的失業対策に関する件) ○けい肺法案吉田法晴君外十二名発  議) ○労働基準法の一部を改正する法律案  (吉田法町晴君外十二名発議)   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会を開きます。  本日の委員会及び明日の委員会会議に付するべく予定をしておりまする事件は、公報でお知らせいたしました通りに、労働情勢一般に関する調査といたしまして、デフレ政策影響と雇用安定に関する件、総合的失業対策に関する件、一般労働問題に関する件の三つでございます。更にけい肺法案労働基準法の一部を改正する法律案につきましても併せてこれを行いたいと存じます。  で本日は出席大臣都合等もございまするので、デフレ政策影響と雇用安定に関する件、総合的失業対策に関する件につきまして、政府当局との関係は明日に譲ることにいたしたいと思いますので、御了承頂きたいと存じます。  速記ちよつととめて下さい。    〔速記中止
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を付けて下さい。  この際、委員の方にお諮りいたします。当委員会は先に田畑君が一時委員を辞任されたため、理事が一名欠員のままになつておりますが、その後田畑君が再び委員に戻られましたので、この際田畑君を理事に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 異議ないものと認め、田畑君を理事に指名をいたします。   —————————————
  5. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、先ほどお諮りをいたしました議事の予定に従いまして、先ず最初一般労働問題に関する件について調査をいたしたいと存じます。この際、特に福島調達庁長官の当面の労働問題につきまして説明を煩わしたいと思います。
  6. 吉田法晴

    吉田法晴君 大変恐れ入りますが、福島長官に御説明頂くの結構でございますが、そのあと、先ほど実は私御相談を申上げましたけれども、全駐労の委員長参考人として、御説明を願つて頂くようにお取計いを願いたいと思います。
  7. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今吉田君から駐留軍労働組合労働問題につきまして、労組の委員長参考人として発言を許されたいと、こういう提案がございました。よろしうございますか。
  8. 田村文吉

    田村文吉君 見えていられるのですか。
  9. 吉田法晴

    吉田法晴君 参りますが、先ほど要請をいたしましたが、福島長官お話を願つている間には参着いたすかと思います。
  10. 田村文吉

    田村文吉君 余り長い時間でないように……。
  11. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 異議ないようでございますから、さように決定をいたします。
  12. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 調達庁関係と申しますか、いわゆる駐留軍労務関係につきまして本日の委員会で、いろいろ当面問題もたくさん出ておりますので、当然御質問も御頂戴することになると思いますが、その前に甚だ勝手でございますが、一応全般的な情勢を、今日の情勢並びにここに至りました背景などにつきまして一応御説明をさせて頂きたいと思います。  御承知のように駐留軍労務関係と申しますのは、アメリカ軍、大体においてアメリカ軍でございますが、最近は国連軍関係もございまして、現在ではその労務者といいますかは十八万七、八千、かれこれ十九万近くあるわけであります。最近いろいろな問題が起つておりますが、その根源になりますのは、昨年来問題になつておりました労務基本契約が未だにできてないというところから来るわけであります。労務基本契約交渉状況はどうなつているかということが先ず以て一番の重要問題になるわけであります。労務基本契約と申しますのは、会り初めの頃から申上げますことも恐縮でございますが、占領労務関係を律しますために基本契約というものかでき、講和発効占領中のものとはとにかく趣も原則も変つて参りましたので、早速に講和発効後の事態に即応した新契約にならなければならないということで改訂交渉始つたわけであります。ところが占領後すぐ始つたのでありますが、今日まで未だにできておらないというのが現状であります。私どもは昨年の夏からこの問題に携わつて参りましたが、昨年の夏までかれこれ二カ年かかりまして進捗しない。昨年の夏は御承知通りの全駐労並びに日駐労のストライキというところにまで発展いたしましたのですが、その後ストライキ契機といたしまして交渉も析出に進捗いたしまして、昨年の十月一日には基本契約のうち、本文につきましては米軍代表者ハンロン少将日本側代表者私でございますが、この間に調印を了したということになつたわけでございます。  ただその際に問題となりましたのは、調印はできたのであるが、効力はいつから発生するかという問題がありまして、これには主文だけでは細かい細目がきまつておらないのであるから、附属書が当時は四つつたのです。四つ附属書並びにそれ以外の労働政策指令という名を付けておりますが、そういつた関係附属書類が完成するのを待つて一齊に効力を発生させることにしたいということにきまりましたので、調印はできておりますが、未だに効力を発生せずして、従つて未だに占領時代契約によつてつておるという現状になるわけでございます。その際に、附属書その他が完成するまで発効を待たせられるということは、技術的にいつて確かにその必要があることは承認せざるを得ないが、併しその中に例えば保安解雇といつたような問題については占領中の契約とは全然趣を異にした画期的な保安条項というものも主文の中にきまつたのであるから、これは非常にいいことなんだから、全部の効力の発生を待たなければ首尾一貫しないという点があることは承認するが、こういつたたちの問題については部分的に先に効力を生ぜしめるという措置をとろうではないかという大体の話合いができておりまして、従いまして昨年の十一月以降の情勢と申しますのは、主文は済みましたので、附属書について交渉を続行するということ、主文中の重要なものについては部分的に効力を発生させるという処置をとること、これに全力を挙げたわけであります。そこで新らしくできてまだ効力発効を待たせられております主文の中で最も意味の深い保安解雇といつた問題について、従来の契約で言えば軍側決定次第で即日解雇ということになつておりましたものを、日本側との協議体制のはつきりしたものにする、救済方法の付いたものにする、その部分発効というものを引続いてやろうということで、十月、十一月、十二月と交渉はかなり長引いたのでありますが、漸くそれが二月二日に保安解雇に関する部分発効的な協定ができた。  ところがその際にこういう理論が一つありました。新契約というものは調印は了しておるけれども効力は発生しておらない。そうすると現在テクニカルに言えば、効力を持つておるのは旧契約である。旧契約の一部というものを有効にするためには新契約の一部発効ということではいけないのであつて、古い契約のサプレメンタリー・アグリーメント、付属協定ということで古い契約の一部を改正する。従つてこの部分発効の親は古い契約であるということでないとちよつと辻褄が合わんということで、私どももそれに同意いたしまして、二月二日に古い契約部分的改正ということで新契約の一部か効力を発生したということになつたわけなんです。これがまあその当時はその理論差支ないと思つておりましたのですが、ちよつと今日に至りまして、それがもとでいささか困難も招来したことがあるのでございますが、これは後ほど申上げますが、部分発効をすべきものと考えられたうち最も重要なものだけは一応それで効力を発生させ、残る二つばかり予定したものもございましたのですが、このほうは未だに効力が発生しない。まあ問題も比較的重要でない点もありますので、部分発効ということで事態を緩和させるということが目的でもありますし、実質的でもないということで今日の話題には余りなつておらないということになつておるわけです。問題の附属書その他の処置がどうなつておるかということが一番重要な問題に今日なるわけであります。  附属書四つでございまして、その一、二は給与に関連する、三は人事手続管理手続に関する面、四は船員に関する特例、こういうことになつておりますのですが、一番大きな問題と申しますのはその附属書の一、二の関係であり、これが本来申しますと、これはまあ忌憚なく申上げれば、組合指導者諸君に言わせれば主文その他の重要問題が、主文で青筋を立てて我々も議論したのであります。か、十九万人の人全部の意味から言えば、保安解雇といつたような問題が仮にあるにいたしましても、これは年に五十か六十か、それよりも給与表改訂といつたような問題は非常な重要問題に全部の人にはなるわけでありまして、どちらかと言えば注文二十何ヵ条よりもアネツクス・ワン・ツーというほうが大きい問題だということは確かに言えることなのでありますが、根本的な問題につきしてはいろいろ議論もあるわけであります。旧契約スケジユール・Aとして知られております現行給与規程というものは一つ一つ附足したものでありますので、全体として調和が取れてない、統一が取れてないという面は確かにあります。それに対してアメリカ案としてはアネツクス・一、二という形で全部を総合したものが出て来ておるという点は、確かに形としてはよくなるということは言えるのでありますが、どうしても実際問題として給与が効くという問題もあるわけであります。そこでこの問題にかなり手間を取りましたのでございますが、我々の考え方としては、アネツクス四つ、その他の附属書、こういう非常に厚さの厖大なものでありますので、これを一々本来ならば組合意見も入れて、三者の間に会議を重ねて行くべきものでありましようけれども、それではいつになつたら基本協約ができるかわからないということで、その大きなものの中には極めて事務的なものも相当入つておる。従つてこれらは事務的なものとして、組合意見は我々も調達庁としては連絡もし、意見を聞くけれども、きめ方としては調達庁で責任をとつて米軍の間でばたばたきめてしまいたい。残る重要な問題について、例えば特別退職手当の問題とか或いは有給休暇の問題とか、かなり重要な問題でありますが、それらの点をできるだけしぼつて、五つにするか、六つにするかあとに残して、それ以外の部分は先ず片付けてしまいたいということで、組合側とも或る程度相談はいたしておりますし、そのやり方というものには同意を得ておるつもりでありますが、事務的に大部分は実は片付けてしまつたという状況になるわけであります。勿論これは我々は事務的であるからこつちから片付けてしまうという問題に対して、組合のほうは三者でやつてもらわなければ困るという意見も多々あると思いますけれども、そういつたことで余り問題を多く残しては困るが、本来言えば組合意見も多く言いたいところだろうけれども、我々としてできるだけ事務的なという解釈の幅を拡げて、多少組合に無理を忍んでもらつても、事務事務的と称して片付けてしまつたということは事実であります。一部分そういつた関係アネツクス、その他の問題も片付きまして、ここに組合としても最も重要な関係を持つておる問題、特別退職手当有給休暇、その他の問題を数個あとに残して、問題の整理が相当に付いたというところになりますので、これから組合調達庁米軍といわゆる三者会談形式で重要問題を一つ討議して行こう、去年のストライキ以後やつておりましたような協議交渉形式にこれから始めて行こうというまでの準備をいたしたつもりであります。  ところがその間アメリカ側担当者その他の総人替わりその他もありまして、若干時間的ズレも生じまして、本格的な三者会談による協議というものが始まらないで、この夏に差かかつてつたわけであります。そこへ北海道における陸軍移駐の問題或いは陸軍予算削減による大量の人員整理という問題が出て参りましたというのが現状であるわけでございます。それ以上ちよつと速記をとめて……。
  13. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記をとめて下さい。    午前十一時二十三分速記中止    ——————————    午前十一時四十分速記開始
  14. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。
  15. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 要するに北海道問題或いは全般的な陸軍予算削減に伴いまして、では何がそこに起るか、我々に関しまする限りは特別退職手当という問題になるわけであります。特別退職手当の問題という経緯を一応申上げますと、駐留軍労務者というものは官公吏と違つて永久的な勤務ではない。従つてその給与というものも官公吏よりは少しは分がよくてもいいのだということは一応の根本原則になるわけで、曽つて過去において駐留軍労務者給与がきまりますときも、給与のベースも大体一割増という線にきまつた。退職手当規定というものも官吏退職手当規定ちよつと上廻る線できまつておるわけであります。それでそのままでくれれば何ということはないのでありますが、ところが順政府の、日本官吏行政整理の問題がここ数回ございました際に、官吏退職手当規定が一部改正されて、存職年限の短い者については最低保障という思想がくみ入れられたわけであります。従いまして二年、三年が、特に二年以下ですが、二年以下の官吏退職手当駐留軍労務者の二年以下退職手当よりもいいということに、官吏のほうが上つて来て追越してしまつた。そこで私どもはその事態は是正さるべきだと考えております。これに対して組合から従来の駐留軍労務者退職規定の八〇%増の特別退職手当計算が出ておりますが、これは正直のところちよつと話が大き過ぎると私は考えております。実益はありませんけれども、比較してみますと、十年という在職者は本当はないわけでありますが、十年或いは五、六年でもいいのですが、その辺になりますと、現在の官吏退職金のかれこれ三倍、若しくはそれ以上ということに組合の案ではなるのでありますが、これはいいとか悪いとか申上げておるのではございませんか、実際上の意味から申しましてこの案ではちよつと通るまい。又通らなくても仕方がないと私は考えております。併しながらこの二年、三年という年数のものについて官吏より下廻つておるという面は是正されなければならないというふうに考えております。ただ問題はまあ非常に複雑しておりまして、申上げただけですと非常に簡単なのでありますが、早い話が官吏で一年未満行政整理出会つた者は、今申上げました最低保障がありますから、二・七カ月分ですか、これだけは最低保障としてもらえることになる。失業保険ですか、これが六〇%の六カ月でありますから、三・六カ月これは誰でももらえることになる。官吏一念未満最低保障は、それに達しなければ失業手当の六カ月分三・六というものはこれは保障されておるということになる。駐留軍労務者の場合には失業手当のほうはこれは全部もらえますから、三・六は取れる。それに退職金がこれは官吏の一年未満退職金より少いにしてもそれはプラスになる。そうすると失業手当という問題を仮に勘定に入れてみれば、現在でも退職手当という名前の付いたものは官吏のほうが多いが、金としては駐留軍労務者のほうが多くないかという議論がすでに一つある。それに関しましては恩給の関係とか共済組合関係とかいろいろなことが言えるだろうと思います。  それからもう一つ駐留軍労務者について言われることは、駐留軍労務者というものが講和発効の際に一遍勤務関係を清算して退職金を取つてまつた。それで現在の者は全部二年近所になつ、来ておる。あのときに清算がされておらなければ現在の者は大抵は七年くらい、七年ということで計算をしてみると、現在の程度においてすら官吏退職金より駐留軍労務者退職金のほうが多いのではないか。先に退職手当を取つて全部が二年になつたから少くなつただけの話で、本来から言えば駐留軍労務者関係退職手当のほうがそれは多い。前の退職金でも返してくれれば考え直してもいいという議論を恐らくはアメリカとしてはするだろう。一遍払つてまつたものは我々のほうとして、どうすることもできない関係もありますので、その点の問題といたしましては、私ども講和発効時に清算した問題について触れたくないという考え方交渉いたすつもりでありますが、問題の複雑な点はさような点があるわけでありまして、二五%に達する予算削減に伴う陸軍全般的な行政整理という問題につきましては、その実際の最初解雇者がいつ頃出るかということは、まだ我々が同意しなければきまらないわけであります。成るべくそれを早い時期にやりたい。それがどういう数できまりますか、一万とか一万五千とか、二万という数字がどうきまるか、一万を或いは判ることに交渉の結果なるかも知れないとも思つております。二万だの三万だのと言われたのでは一遍に首切るというわけにも参らんかと思います。或る程度の数におさまつた数になるのであれば、まだそういう決定もいたしておりませんし、アメリカ側に私の意見も言つておりませんが、できるだけ早く処置をきめて解雇というところへ持つて行きたい。もとが金の節約にあるのですから早く人の首を切ればほかの人が助かる。事務でごたごたして遅れますと、解雇者が殖えるという関係になります。できるだけ早い機会に数を確かめた上で、できれば一遍に解雇者を出すほうの方式が正しいのじやないかというような考え方をしております。  只今まで申上げましたところが大体基本契約交渉状況それからその後起つた保安隊との問題、解雇の問題、陸軍の全面的な行政整理の問題に伴います特別退職手当の問題、こういう諸点に関します一般状況の御報告でございます。  なお御賛同がございましたら当然お答えしなければなりませんので、後ほど更に申上げたいと思います。
  16. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 質疑に入ります前に先ほど御承認を得ましたところに従つて駐留軍労働組合市川中央執行委員長参考人としての発言を許します。  市川君にちよつとお願い申しておきますが、福島調達庁長官は今日は御都合で十二時に退席されるそうであります。従いましてその点をお含みの上で一つ要領よく御発言を願います。
  17. 市川誠

    参考人市川誠君) 全駐労中央執行委員長市川誠であります。只今委員長からのお言葉もありましたので、時間の関係もありますので問題点だけを摘出して陳述をいたしたいと思います。  今福島長官から大体現在駐留軍労働者現状について説明がなされましたので、重復する点を避けたいと思いますが、私どもが一番苦しい点は、問題は北海値撤退に伴う失業対策の問題であります。すでにこの問題につきましては、九月の十四日に解雇発効します五百四十七名の第一次の解雇通告がなされております。そうして又数日中に第二次、約五十品名程度解雇が通告されるだろうということも言われております。いよいよ撤退に伴う首切りの問題が本格的に行われるというように考えておるのであります。一方こういう状況なつておりますが、併し雇用主であります政府、又労働者失業対策の問題を扱う立場にあります労働省等対策を私どもはいろいろと折衝した範囲におきましては、現状におきましては困る者は失業対策事業に行つてくれ、それでもいけない場合には生活保護を受けてくれ、こういう程度の回答より出ていないわけであります。こういう現状では到底占領時代から苦しい条件の中に八年、九年という労働を提供して来た労働者として納得行かないものがあるのであります。  そこで具体的な問題としては北海道における完全な失業対策確立図つてもらいたい。而もこれは現行制度の中においてはすでに頭打ちの状態ではないかというように考えております。従つてども国会方面にお願いする点は、現行制度の枠を超えての早急な失業対策の完全な確立という点を要望したいのであります。そういう段階に至るまでの措置といたしまして、当面労働者の取りあえずの生活を保障する措置といたしまして、私どもは昨年来要求しておりますところの特別退職手当支給の問題を北海道首切り問題を契機といたしまして現実的な解決を図つて行きたい、その実現を期したいというように考えておるのであります。たまたま陸軍関係ではやはり昨年までの大量整理に引続いて、新らしい年度の予算削減伴つて約三万程度首切りがなされるのではないかというように言われております。陸軍関係十一万五、六千の労働者に比較してみますと、若し二割五分という予算削減がそののまま整理の者に寄せられて来た場合には大体四人に一名の首切りという状況であります。こういう状況も私どもが全般的な失業対策確立乃至は特別退職手当の早急なる支給を要求するかなり緊迫した、要求の要素となつておるのであります。特にアメリカがあれだけの予算削減をするというならば、我々が労働者失業対策の不安について日本政府側として考慮してもらいたい問題は、財源的な問題としては行政協定に基くところの防衛分担金が一応表面的にはアメリカ日本側折半負担ということになつておる。若しアメリカ軍側が大規模な予算削減をして、そうして日本に駐留する軍隊の経費というものはそれだけ減るならば、それに見合つた日本政府側防衛分担金の節減ということも当然外交交渉によつて解決するのではないか、そうであるとするならばそういうような部面の額というものをやはり労働者失業対策部面に十分に廻してもらいたいということ々是非御検討願いたいのであります。  すでにこれらの大量整理の問題は、長官軍側事前折衝を急いでいられるのでありますが、軍側のとつておる措置はすでに大分で八月の百三十五名、東京TOD関係で八月五日に四十二名、又東京補給廠で八月の三日に七十五名と、神奈川のYEDではすでに第一次八十名、第二次百五十名、第三次八十名というように九十日間中における計画を立てて首切りを出しております。こういう状態を見ますと、軍側は果して日本政府側と誠意を以て事前調整図つて、そうしてこの人員整理に対処しようという考えがあるのかないのか、極めてその真意というものを疑わざるを得ないのであります。勿論こういう現地に出ております状況につきましても政府側にも情報を通報いたしまして、軍との折衝によつて措置をいたしてもらうようにいたしておるのでありますが、我々としてはこういうような個々のこま切れ的な首切りの問題というものは、全般的な計画の中にはつきりそれが調整された後に出さるべきであるというように考えております。勿論大量整理の中での労働強化の問題、その部面からの首切り反対という問題も出て参りますが、それらが私どものやはり具体的な交渉の中で主張して行く点になつて参ります。いずれにいたしましてもこれだけの大規模な整理が行われるということになりますれば国内における労働事情、特に北海道等におきましては石炭産業或いは鉄鋼、造船等を見ましてもかなり労働事情は悪化いたしておりまして、むしろ労働問題という枠から社会問題或いは治安問題の枠に入つておるのではないかというように現地へ出張しての調査等の結果では感ぜられるのであります。そういう際におきまして北海道撤退に伴う整理問題、又陸軍関係の大量人員整理に伴う問題につきまして早急な完全な失業対策確立、特に現行制度の枠を超えての措置というものを早急にとつてもらいたい。又それまでの間における特別退職手当支給というものを早急に措置してもらいたいということを強くお願いしたいのであります。  保安解雇の問題にも長官が言及されておりますが、二月の二日に保安協定が作られた後に空軍関係陸軍関係、海軍関係とも出されて参つたのでありますが、ところが保安協定を同意したその主義というものは、無実のものはこの協定の中において十分救済をされるという点について期待しておつたのでありますが、その実績というものは我々は完全に期待を裏切られたと、特に鳥取の場合におきまして、鳥取の地区本部の委員長であります門脇志郎君に対しましては保安解雇該当者のいろいろな事情を聴収して、対政府、対軍部折衝に当つたという理由を以て保安解雇該当者という拡大解釈をとつてつておるのであります。鳥取には他に第二組合がありますので、明らかに全駐労に対するところの弾圧の見地から利用されておるのではないかということが十分に察知されるので、この点についても協定の中における調達庁長官意見というものを十分に活かして、そして我々が保安解雇協定に同意し、その中で期待した実績というものが確立できるように政府側の強力な対軍交渉を要求します。鳥取問題については私自身文書で司令官に直接解雇の撤回を要求しております。若し政府と軍との交渉が何らの打開を見ない場合は、私どもはこの保安解雇協定という問題について根本的に考え直したところの対策というものを打出さなければならないのじやないかと考えております。  次に過般起つた横田の問題でありますが、組合側としては司令官の出した二つの文書が完全に撤回されておらないので、その点については割切れないものを持つておるのでありますが、半面現地には他の労働条件の問題等もありますので、一応不満ではありますか、現地における円満なる労使関係の樹立というものを期待して静観しておる態度をとつております。その後現地で問題の発端になりました源泉徴収の問題につきましては、軍側も他の基地でやつておると同様の措置をとるということを言明しておりますから、問題の発端になつた減泉徴収問題は一応結着をした形になつております。いずれにいたしましても横田問題の中に包蔵いたしておるものは更により深い考慮を払つて我々としては措置して行かなければならないのではないかというふうに考えております。こういうような北海道撤退に伴う首切り陸軍関係大量整理或いは保安解雇の問題が全部行詰つた、そういう中において昨年来の全般品的な基本契約改訂ということが一向に進捗しないということがかなりの苦悩になつておることも事実であります、独立後我々は新しい契約改訂の中において日本政府の自主的の管理権というものを確立して、日本労働法或いは労働慣行に基いて十分に日本労働者を保護してもらいたいということを契約改訂において期待したのでありますが、すでに三年になるが一向に解決せられない。こういう状況を見ますと、軍側労働政策というものは、口で言つておることと実際に行なつておることとかなり違つておるというように我々としては疑わざるを得ないのであります。併しいずれにしても契約問題につきましても、今起つております首切りの問題、特別退職金問題等の解決を契機といたしまして早急に全般的の改訂を行つて、残る労働者について十分保護できるような契約改訂を早急に取り結んで行きたいと考えております。  以上時間の関係で簡単でありますが、問題点についての我々の考え方の一端を述べたのであります。最後に附加えて申上げますと、特別退職金の問題は、これは私ども組合員ばかりでなく、他の関駐労、全日海の組合員の共通した要望でありまして、この実現のためには私ども組合としては最後の場合には実力行使をかけて闘い取る。そうでない限り、八、九年の間、国の負担しておつたところの労働提供の義務をまじめに果したその報いというものが何もないじやないかということが強調されておりますので、それらの点も十分御配慮の上で、国会方面においても十分の御尽力をお願いしたいということを申上げまして、一応陳述を終ります。
  18. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 御質問を願い ます。
  19. 田村文吉

    田村文吉君 長官に伺いますが、今度北海道米軍撤退で八千名の失業者が大体出るということが書いてありますが、その通り了承してよろしいのですか。
  20. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 私は先ほど四千数百名と申上げましたが、八千名という情報も出ておりますので御質問になつたことと思いますが、両方とも正しいと思います。実際に軍に働いております日本人というのは七千数百名、そのうちに調達庁関係政府が間接雇用でアメリカ側に提供しておりますものは四千数百名、それからアメリカ軍が直接雇用しておりますのが三千名近く、アメリカ軍がいなくなりますと全部要らなくなるわけで、失業者は七千数百名出る。併し調達庁関係しております、調達庁を通して給料を払つておりますものは四千数百名しかおらんということでございます。
  21. 田村文吉

    田村文吉君 それからアメリカ陸軍の、二割五分ですか、三割の整理ですか、この問題と重複するのですか、しないのですか。
  22. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 北海道の問題は当然二割五分のうちに入ると考えております。北海道から内地への移駐問題というものはかなり前から計画されたものでございまして、昨年漸く表へ出たのでありますが、移駐に伴つてその現場では日本人の労務者が要らなくなるという問題でありましたのですが、そのあとで二五%の節約問題が起りましたので、労務者を何人か整理して、それだけの節約額を出そうとするわけであります。その前に丁度時期を併せて北海道で四千名が落ちてしまいますので、当然この四千数百名が二五%の節約に貢献するわけでございます。
  23. 田村文吉

    田村文吉君 そうすると合計はやはり二万八千人を越さないというふうに考えてよろしいわけですか。
  24. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) それは越さないと考えております。陸軍で十一万二、三千ございまして、二五%の予算削減でございますが、労務者関係では二五%の金を弾き出して来いということに恐らくならないであろう。ほかの施設を廃止するとかいろいろの問題もありますので、そのほうで余計に削減ができて来れば労務関係では、これは予測でございますが、もう直きわかりますが、最大限度二〇%くらいの削減をしろということに恐らくなるだろうと思つております。仮に一番大きな数字をとりますれば二五%になるわけでございます。併しながら二五%で二万八千何名、こうなりましても、その二万八千何名をこの際首切つたのではあとで自然退職者が二万近く出て参りますから、併せてそれを新規採用しなければならないということになるのでございます。自然退職者の分はあらかじめ二万八千の中から差引いて整理しておかなければならんということになります。自然退職者を勘定いたしましただけでも、二万八千から自然退職者が月に千名、年間一万二千名、予算的にはこれを年間六千と仮に見るといたしますと、少くとも六千人を控除して、二万八千人から六千人を差引いたもので整理を出発しなければならんということになります。  それからなお実は申上げませんでしたが、空軍関係ではかれこれ三千人くらいの人員を新たに必要という問題がございまして、空軍に三千くらいの転用はできると考えております。これも又最大に考えますと二万八千という数字が若し出て参るにいたしましても、これも減らさなければならない。北海道の四千数百名も、これも解雇でありますから、減らしたと言つたところでちよつと工合が悪いのでありますが、これも一応既定計画として除けば、今後内地におきまして新たに解雇として計画を立てなければならんという数は二万八千から相当減つて来るわけです。
  25. 田村文吉

    田村文吉君 結局の数字が自然に退職する人もあるからそういうものを差引いて、二万八千数百名のほかにプラス空軍の関係、それからもう一つは直用というのが三千八百人、これは北海道ですが、全国にやはり相当あると思うが、そういうようなものを合せまして、お見込は大体どのくらい米軍整理撤退とによりまして解雇しなければならんのが出るのですか。自然にやめる人を除いて……。
  26. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) ちよつとむずかしい問題でございますが、北海道でやめる人などを含めまして二万ということは考えられないと思つております。それ以下に当然なければならんと考えておりますが、それが二万五千くらいまでで取りますか、それとも更に減らして、一万二、三千まで行くことができるかというところであろうと思います。まあ二万五千と二万の間に大体に落付く公算が一番大きいのではなかろうかと考えております。
  27. 田村文吉

    田村文吉君 これはあなたに伺うのはちよつと無理かも知れませんが、今度日本の自衛隊がやるということになりますと、やはり相当人を使わなければならん。その入替はどのくらいやはり従来の人が使われるということになるのでしようか。そういう点について何か若し労働省でおわかりなら結構ですが……。
  28. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 私どもといたしましては、日本の自衛隊に当然相当な数を取つてもらいたいという思想を初めから持つておりました。日本の自衛隊というものは昔の日本の軍隊とは違うので、一人前の自衛隊員が雑役までやるというようなことは将来とも考えられないのではないか。従つて雑役についてはアメリカのやつているような、やはり契約労務というものの採用を考慮すべきだということをかねて自衛隊に対しては主張いたしておるのでありますが、まだ根本的にそういうところまでにはなつておりませんが、自衛隊といたしましては、自衛隊員のほかに防衛岸の職員として相当数を採用するということは考えておりまして、北海道関係では一千人をちよつと超えるくらいの新規採用、自衛隊職員の採用ということが考えられておると聞いております。これに対しましては私どもは駐留軍関係でこの際やめる人たちを優先的に雇用してほしいという打合せをいたしておりまして、まだはつきりしたところまでは参りませんが、先ず実質的には優先雇用ということに大体なるであろう。やかましく申しますと、防衛庁の職員ということでありますので、これは公務員になる。従来の駐留軍の労務者が公務員ということになりますと、やれ試験とか人事院規則とかそういうような関係がある。駐留軍の労務者諸君に試験をさせて、受からん者もあるというような失礼なことは申上げませんが、成るべく試験などは省いてもらつて、優先雇用が実質上できるように……、規則の面からそういうはつきりした約束はできないでも、運用の面においてそういう線を出してもらうようにということで、この辺のことは大体やつてくれるということになるであろうと考えております。
  29. 田村文吉

    田村文吉君 今の防衛庁の隊員自体は、それらの数は今そう大したものでないと思いますが、それ以外に今まで駐留軍が使つた工合に、或る程度土木関係等のものに使う見込は今のところないのですね。
  30. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 今のところでは、これは防衛庁のことでございますので、権威を持つて申上げるわけには参りませんけれども、大体自衛隊員の一割くらいの職員を平行して使うというような計画になつておると聞いておりますが、従いまして北海道の場合には一千人を上廻りましても二千人にはならないということになる。
  31. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちよつと今のに関連して……。一五%と計算して、一万八千人から、自然退職その他を引いて、一万五千から二万というお話でありますが、そのときにこれは月千として、一万二千くらい自然退職がある、もつとありそうなお話でしたが、一万二千と計算してもその中から、六千人しか差引けない。そういうお話でしたが、月一千名、一年間で一万二千名ならば、一万二千引いてもいいのじやないかという気がするのですが、その点はどうですか。  それからもう一つ、先ほど市川委員長から話がありました東京、大分、神奈川、こういうところで合計いたしますとこれは四百人くらいになるかと思いますが、すでに整理の通告があつた。私も実は一昨日大分におつたのですが、その全体の経費二五%減という話があるので、その中に入るのか入らないのか、そういうことがあるならば、それまで待つてもらつていいじやないか、全体の中でこの折衝をすべきではなかろうか、こういう現地の声もございました。この東京、大分、神奈川等の数字もその中に関連して、折衝ができるのかどうか、その二点一つお伺いしたいと思います。
  32. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 最初の自然退職者の数でございますが、これは年に見積りすれば一万三千人、毎月千人ずつやめて行く、こういうことになりますが、目的は二五%の予算削減にありますので、来年の六月までにやめて来る千人の自然退職者というものは来年の六月までの予算に一カ月分の貢献しかしてくれない。今すぐやめる千人というのは十二カ月分の貢献をしてくれる。ですから金の面から見ますと、一年かかつて一万二千人やめれば六千が今やめたと同じような貢献しかしてくれないことになる。ですから金の面では一万二千退職者があるから六千は首切らんでいいということになります。  それから第二点の九州のキヤンプ・ウツド或いはキヤンプ筑摩川、大分、熊本両方のあれが若干の人員整理が出た、こういうお話でありますが、これは昨日の問題で話をして参つたのでありますが、実は二五%の予算削減以外にアメリカ軍の制度でマン・パワー・サーべ一とか何とか言うのでありますが、常時監察団が歩いておりまして、ここの部隊は人員が余つておる、仕事に比較して人員が余計であるということを指摘して人員を減らして行く。最近は特にガードについて人員過剰であるということを指摘されるのが非常に多いのであります。まあ会計検査みたいなものであります。そういうマン・パワー・サーベーの結果、この九州の人員整理というものがその結論として出てきておつたわけです。それにいたしましてもこの二五%問題と時期が一緒になりました。先にこれを出してもらつたのでは、特に筑摩川の部隊長などは予算削減の結果といつたような掲示をしておるそうじやないか……、これは明らかに間違いであつて予算削減関係のものは全部待たしてある。予算があるとないとにかかわらず、過剰人員は置いておけないということで整理をするという二つの方針がそこで競合したわけでありますので、昨日私どもの要求としては、御指摘の通り予算削減による大整理があるのであるから、部分的にやられてしまつたのでは……全般的な計画を立ててその上でやる。全般的な計画というのはあらゆる要素を考慮に入れた上できめたもので、いたし方ない、これは無理やりにでも呑んでもらわなければならないとしないと権威が付かないんじやないか、初めにちよちよこやられたのじや、そういう話をしたのでありまして、その結果昨日一応中間的な数字が出ておりましたので、これも入れて取りあえず当つてみたのであります。その予算削減の全体の分布ができましてから、それが三万と出ても二万五千と出ても、それで削減して行くことになりますが、その際にこの過剰人員という問題と競合しておりますところは幾らいじりましても結局においてやめてもらうということになるわけであります。手続としては確かに一緒にやつてからやるほうがよかつたということはもう司令部側も承認しておりますし、先にこれをやられてあわてておるといことも事実でありますが、これも取入れまして、中間的な案から最終的な案に行くという計算の中に入れてみましたが、これは最後に行きましても、結局もともと人員過剰という問題から出発した問題でありますので、予算に関係なくそれだけの整理というものは最終案においてもこれが出て来なければならんということになりますので、どうせ同じであれば、若干手違いで早くなつたということは事実であるけれども、これを引込めさせて中に入れても又同じ数字として最終案に出て来るということが明らかになりましたので、追認しようということにいたしましたわけで、ちよつと申上げました通り人員整理というものはその本源が予算にあります限りは、一月でも早く整理が実現実行すれば一人でも二人でも影響をこうむる人は減るということになりますので、手続としては確かに御指摘の通り我々も面白くなかつたのでありますが、調べました結果、これだけ先にでは追認しようということにしたわけであります。
  33. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の大分その他の九州の例は、これは今お話のマン・パワー・サーべーの、実は今の司令官は当時のサーべーのメンバーであつたというので、前の司令官はやめなくてもいいというのを、立場上といいますか、多少感情もあつて強行されたように実は聞いております。従つて実際の処理として、この収め方として、一応全体の中で考えて頂くという方法が具体的な解決方法として唯一のものではないかと実は考えたわけであります。これは解決の方法として考慮願いたいということも申上げたのですが、全体のあれから言いますれば、やはりこれも人員が過剰その他で多いか多くないかはともかくとしまして、今までの予算でやはり削減することになることには間違いないのであります。従つて全体の数字に影響して来ることはお考えの通りだと思います。そうするとやはり二万八千なら二万八千という仮定の数字であますが、引かれることは間違いないと思います。今、一万五千から二万という、こういうまあお話でありますが、中間的数字が出たということでありますが、その中間的な数字というのはお話のような数字なんでしようか、まあ速記をとめてでもいいですが、若しお話ができるならばお話をして項きたいと思います。
  34. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 中間的な数字といたしましては二万以上の数字が出ているわけであります。これは各部隊で労働強化にならない一線ということを条件にいたしまして、整理できる数というのを一応集めて来たのであります。併し勿論この中には北海道の問題も入つているわけであります。併しこれには自然減員も、空軍への転用も、何もかも入つておりますので、相当大きな数ではありますけれども、二万数千の数ではありますけれども、これは一応現地部隊から集めました数字で、これに対して我々は申上げました自然減員を何千人とるか、空軍との交渉でこれはちよつと難航している面もあるのですが、空軍との交渉で何千人にするかというような点を織込むとか、若くは陸軍そのほかの面で節約の実の挙つたところから金を流して来て人員のほうを減らして行くとか、そういう調整をこれから始めることになるわけであります。実際の数は二万数千という数が出ておりますけれども、実際の数はどこに落付くかというその標準には中間的な数字はまだならないわけであります。
  35. 吉田法晴

    吉田法晴君 これはまあ北海道を含めまして、その数字が減るように、これは私が福島長官の話を中心にして計算しても、やはり一万五千ぐらいになります。減るように御努力を願いたいと思うのでありますが、北海道の問題につきましては、この前実は委員会としても、今日、明日の委員会対策を立てて、十全の対策を立てて臨んでもらいたいという、こういうことを労働省に申上げておいたわけであります。或いは調達庁としてもお考えを頂いておるようでありますが、職業補導その他の面も考えまして、長官なり或いは労働省から、要望をいたしました点についての回答といいますか、方針を一つお示しを頂きたいと思います。
  36. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 北海道対策といたしましては必ずしも調達庁長官のお答えのできるものばかりではございますまいと思いますけれども、一応今の失業対策その他の面にも関連しますが、全般的に北海道の、御質問の趣旨より少し外れるかも知れませんが、全般的の北海道の問題に対して調達庁としてはどういう対策、どういうような考え方をしておるかというのは、少し重りますが、もう一度申上げますと、失業保険法の適用という問題、失業対策連絡会議といつた問題自衛隊への切替といつた場合優先雇用という問題を話を付けるという問題、駐留軍労務者失業対策連絡協議会をもうちよつと気のきいたものにできないかといつた問題、いろいろございますわけでありますが、そのいろいろの点の中に、解雇用の時期を明確にしよう、少くとも八月中はやらない、従つて石炭手当の問題はそれで解決したと言つていい、少くとも四十五日以前に調達庁のほうに協議させるという問題、それから部隊と同行をして東北地方で働ける者の数を何とか確保しなければならない、組合と申しますか、労務者側の希望者は七百人以上部隊と同行してもよいという者がおるのです。これの同行という問題を軍側では余り希望しておりませんが、直用関係で、家族従業員のような者は多少あるかと思いますが、それ以外の者につきましては、軍側も余り希望しておらない、いろいろ制度の関係もあるのですが、一応同行ということを考えないという思想ではありますが、我々のほうとしては折角希望者もある、どうせ向うへ行くとすぐに人を雇わなければならん、何とかしてくれ、連れて行つてほしい、向うへ行つた場合は、宿舎の関係は調調達庁関係、或いは従来の軍司令部の関係でできるだけのことをする。軍有の余裕施設の活用、軍関係の用員宿舎の関係、いろいろ軍側とその辺の交渉はしておるのであります。  ちよつと申上げました自衛隊職員への切替斡旋ということも、まあ自衛隊員の一割ということになれば、千五百名くらいだろうということで、できるだけこの数を、優先雇用の数を確保しようと申上げましたが、石炭手当、寒冷地手当の支給の問題は解決いたしたわけであります。退職手当の問題が、まだ……、これは目下交渉中ということです。職業補導の問題のほうがもつと大きくクローズ・アツプされることだろうと思います。これにはほかの官庁との関係もございますので、できるだけ我々のほうとしてはほかの官庁とも協力して、何とかめどを付けたいと考えております。  もう一つは、どうせ年内には完全な移駐が実行されて、その頃には解雇の言い渡しが来るだろう、言い渡しが来るときには四十五日前にわかる、四十五日の間就職運動はできない、どうせ来るから今から就職運動をしよう、今から職があると自分の都合で移つてしまう、これはこちらから解雇通告を出してないので希望退職になつてしまう、退職手当は半分になつてしまう、それは困るから、どうせ何カ月かかるかわからんから、放つておけば解雇通知が来るわけで、それが解雇通知が来る一カ月、二カ月前に自分で職を見付けて希望的に退職するということになれば、これにはこちらの整理手当、退職手当を払つてほしいということは当然の問題でありましようが、組合側からも要望があるので、これを何とか軍側交渉したいと思つておりますが、これは飽くまで希望退職という形になつております。相手が兵隊のことでありますので、規則の面からいうと真向うから抵触するわけです。解雇通知を成るべく早く出して、四十五日以前に、少くとも四十五日以前に解雇通知を出さなければならんということにはなつておりますけれども、六十日、七十日の解雇通知を出しても差支えないわけです。そういう希望者が出て来た場合には、例えば本人の希望であつて、八十日、百日という通知を出す、その間に本人がやめれば、これは整理手当、退職手当が出せるのじやないか。いろいろ研究してみようと考えております。  失業保険金の給付期間の延長という問題もあります。これはちよつとやりにくい問題であります。実現できるかどうかわかりません。むしろむずかしいのではないかと思うのでありますが、併し研究するだけはしたいと考えております。生業資金の貸付といつたようなこともあるかと思います。これらは北海道庁と相談をしないとなかなかうまく行かないと考えますから、これは目下相談中であります。就職運動の便宜供与、就職運動のために、解雇通知が来てからでは間に合わない、それまでに職が見付かつたら、やめる場合に解雇と同じにしてくれという、それは先ほど申上げましたが、それにいたしましても休暇期間とか、そういつたものを融通を付けないと、就職期間中に更に就職運動をするということはやはり能率も上らなかろう、前職のために。有給休暇の三日間というのもありますけれども、就職という問題を考慮いたしまして、更に休めて就探しに歩ける時間的に便宜を図ろう、こういつたようなことも考えておるわけであります。調達庁といたしまして、かき集めてやつております面というものは、申上げるとまあ一々話が細かいようでございますけれども、併しこういう問題が組織的に或る程度の効果を上げるようになりますれば、失業対策といたしましても相当の効果はあるものだと考えております。全面的に国といたしまして失業対策を、組合諸君がやつておられるような、現行の枠を超えて大がかりの問題として考えるというような点につきましては、まだ私からどういうことになつておるかということを申上げるわけに行かない状況でございます。
  37. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連して。或いは重複するかもわかりませんが、私はこの問題について一応三つに分けて御質問申上げたいと思います。それは米軍撤退に伴う解雇の問題、これにつきましては、只今言われました解雇された人の失業の問題が第一なんです。それに対してはいわゆる生業資金を貸付けるとか或いは就職の斡旋をするとか、或いは技術の訓練をするとか、いろいろ言われておりますが、これはまあ駐留軍だけでなくて、相当な失業者も出ておるので、労働省としても失業対策としては十分考慮すべきであろうと思いますし、調達庁とも十分話合つてやられるものと私は思つておる。それが一点と、それから先ほども言われておりました退職金の問題、特別退職金をどうするかという問題、それから今度は予算の二五%の削減による失業の問題、こういう三つに分けて御質問申上げたいと思います。  失業者の問題は、先ほど言つた通り、特別退職金については長官の話では、一応二つの線が軍側から言われるであろうということを言われておる。第一は、駐留軍の労務者は、結論として一般官公吏よりも退職金がいい、こういうことを言つて来るだろうと思う。それに対しては、一般官公吏は恩給、共済会等があつて、必ずしもそうではないということを考えておると長官は言われておる。全くそうだと思う。そのほかに一般官公吏は、例えば二年なら二年、三年なら三年でやめる、自己の都合でやめる場合と、駐留軍が引揚げるために、やめたくない人が切られるという問題は大きな私は差があると思うのです。これに対する考え方。  それから第二番目として、講和発効による退職が一応きまつて、その当時に退職金を受取つておる。それだから現在二年くらいにしかならないけれども退職金は実際は大きなものだ、こういうことを駐留軍が言うに違いない、こういう二つの点で非常に何か差があるように私は聞いたのですが、これは一般通念的に考えれば、短い期間で退職をしておつて、又今度は新たに採用されて、そうして再び短い期間に解雇になるということは、最もみじめな最も低い退職金になると私は思うのでありますが、その講和発効による退職金というものは、どういう性格のものであつたか。今の退職金と比較して、非常に大きいものであつたか、或いは通算して七年にもなる人が今の退職金計算したならばそれよりも却つて多くなつておるか、その点を一つお尋ねしたいと思のであります。  それから三番目の予算の二五%削減による解雇については、今お二万から御質問もありましたし御答弁もございましたが、御答弁の中にもあつたように、二五%の削減がこれは即人員整理とは考えられない。いわゆるこれは作業量が、二五%減るということは先ず考えられないので、二五%削減が即人員整理となるならば労働強化になるのだ。それで労働強化にならないようにするということが第一点であつたと思うのです。そうするならば二万八千人というこの人員は相当減つて来ると私は思うのです。そうしてそのほかに自然退職か一万人から一万五千人、平均して一万二、三十人の人が自然に減る。こういうことになつて来るならば、事実解雇をしなければならないという人は極端に減つてしまうのだ。先ほどの話ではその一千名減るのはたつた一カ月だ、こういうふうに言われるけれども二五%の削減が作業量を二五%減らすのじやないということから考えて行くならば、当然それは埋め合せができる問題であろうと私は思うのです。この三点について時間が非常に少いようですから極く簡単に御質問申上げたのですが、御答弁願いたいと思います。
  38. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと委員各位に御相談しますが、長官は十二時四十分には、大分延ばして頂いておりますが、どうしても御退席にならなければいけないそうです。従つて関連し御質問のある方は一諸におつしやつておいて頂きたいと思います。
  39. 田畑金光

    田畑金光君 長官のほうからの御答弁によりまして、北海道地区或いはその他の駐留軍労務者の失業問題について調達庁としてのやつておられる分野については御説明がありましたが、これは失業者として出て来た以上は、労働省の所管として当然取上げて行く何らかの具体的な施策があるものと思うわけであります。併し又調達庁としては、折角その所管の中から出て来た失業者でありまするが故に、そういう観点から労働省のやつておられる所管の中にも成る程度つて行かれることは又当然のことと思うわけですが、そういうような点について労働者の御意見を、駐留軍労務者に関する失業問題についてのみお尋ねしておきたいと思います。  それからもう一つ長官にお尋ねしたいことは、先ほど全駐労の市川中央執行委員長からお話がありましたが、アメリカ側の軍事予算が昨年は約三一%削減されたが、労働時間の短縮によつて人員整理に至らずして一応切抜けて来た。ところが本年度の七月以降の軍事予算を見ると、これが又二五%削減を受けておる。で今回はどうしても人員整理に手を著けなくちやならん、こういうような状況だとお聞きしたわけであります。そこで日本に駐留しておるアメリカ軍隊に対しまして防衛支出金というものか折半という形で負担されておるわけでありまして、昨年度は六百二十億、本年度は五百八十五億でありますが、とにかくこれだけを我が国が駐留軍の防御支出金として分担をしておるわけであります。アメリカ側の予算が削減された場合に、一体日本の負担する防衛支出金というものはどういうことになるのであるか、当然に折半して支出するということになれは、我が国の負担する予算の削減ということも考慮されるはずですし、そうなればその予算の運用等におきまして十分に失業対策の問題等も積極的な進展が望み得ると思うのであります。こういうような点は、どうなつているのか、一つ長官からお聞かせ願いたいと思います。
  40. 吉田法晴

    吉田法晴君 今田畑君が私の尋ねたい一点を挙げてくれましたが、防衛分担金日本側の今後の減少を考えるならば、それを特別退職金の資金に充て得るのじやないか、こういう市川委員長のお話等に関連して一つ御答弁を願いたいと思います。  それから特別退職手当の問題については、これは十九国会の終頃の委員会で私どもが聞いたところでは、八割増の措置はできるように私は福島長官なり或いは労働者から答弁を聞いておつたと思うのです。速記を見ると明らかでございますが、少くもこの前には出せる、出したい、こういう御答弁であつたと思います。この委員会での先ほどの御答弁は少しそれと違つてつたように思うのでありますが、その点。  それから一昨年の四月二十八日でしたか、退職金の問題がございましたが、前から通算をしてそうして八割増をし、その中から支払つたものを計算上差引く云々ということは、これは止むを得ないかも知れんと思うのですが、北海道の例についていつても、恐らく他に転用をする、或いは食つて行くといういろんなものを差引いても三千名くらいは残ると思うのです。そうするとその三千名程度の人がこれからどうやつてつて行くかということは大きな問題だと思うのです。生業資金のことについても北海道長官とも相談をしておるということですが、恐らく八割増ししてもらつても五万円を起す人は少いのじやないかと思う。それは日雇に行くという人もあるかも知れない、そういうことをしなければならんという人もあるかも知れないが、或いは間代を引いても、住居一つ見付けるにしても、転住するとすれば五万円やそこらでは何もならん、従つてこれから生活をして行くのに最小限度のものは確保してやらなければ、解決にならんと思います。これは労働省にも関連して来るのですが、労働者のほうはあとからゆつくり承わることにして、特別退職手当なり今後の生活についてどういう保障を、今まで扱つて来られた調達庁として考えておられるか、その点伺つておきたい。  なおこれは希望でありますが、保安雇用の問題或いは労働基本契約の問題等もございますが、今までのいきさつを見ると、折角の長官の御努力も初めの意図通りに行かずに、だんだん押されて来ておる、こういう感じがいたしますので、長官も今までのいきさつでいろいろ考えられたところもあるだろうと思うのですが、一つ最後の御努力を願つて保安解雇の問題にしても或いは基本契約の問題についても、これは十分に一つ最後の意気込を実現して頂くことを要果申上げて御努力を順いたいと思うのです。
  41. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 初めに予算二五%削減に伴う陸軍関係の総人員がどういうことになるかという見通しの問題につきまして御質問になりましたので申上げますが、これは容易にはつきりしたことをきめかねる問題でありますが、試みに一番少くなる場合があり得るとすればどういう数になるであろうかということを一応考えてみますと、二五%の予算削減に対して、人員のほうで二五%という要求は恐らく食わないであろう、これは一六%、一七%ということになつて、あとはほかのほうの施設でかぶるからということになれば、もつと話は違つて来ますが、仮にこれを二〇%が人員のほう、労務のほうへかぶつて来るということになりますと、二〇%の人員の減を考えなければならんということにいたしますと、その人員減といいましても、単純にどこもかしこも二〇%ずつ減らすというやり方もございますし、又施設の返還とか、配置とかいうことに関連いたしまして重点を置いて行く方法もありまして、例えば大阪の日赤病院を今月、間もなく解除返還してもらうのでおりますが、これを解除させる、日本労務者の人員は三百人をちよつと越しておりますが、これが首になります。これは三百七十人ばかり減つたことにしかならんのでありましようが、病院そのものを廃止してしまうのでありますから、節約額は人員よりも遥かに大きなものが出て来る。そういうものをできるだけ見付けたいということが私どもの努力の一つの目安なのでありますが、それはそれといたしまして、極く算術的に考えますと、十二万二、三千人、十一万人の二〇%、二万二千人ぐらいが一応整理の対象になる。そういたしますと、北海道の分は四十人、それが保安隊その他の、いわゆる陸軍としては四千人ぐらいは給料を払わないということになる。これは引けるのじやないか。それから北海道のほうでは話の表に出て来ておらないので見落しがちでございますが、直用関係者が三人ぐらい首になつておる。これは調達庁を経由しないけれども陸軍が直接金を払つておる、これも差引けるじやないか。空軍の関係でとにかく三千人ぐらいのチヤンスがあるということで、これを何とか実現すれば、この三千人というものをそちらに転用すればいいので、自然退職者というものの見方、数字のとり方は非常にむずかしいと思いますが、まあ仮に月に千人あるといたしまして、年に一万二千人、一年に一万二千人ぐらいやめた場合に幾らの節約になるか、これは私も素人ではつきりいたしませんけれども、約六千人の給料が節約になると見るべきであろうと考えられますが、あれやこれやを考えますと、もとが仮に二、三千人であれば、殆んどもとがなくなつてしまうじやないかということも考えられるのであります。それから又きつく考えて行けば、仮に二五%で十一万何ぼであるから二万八千人ぐらいで、空軍の関係というものは、空軍が陸軍からの転用では困る、自分たちの保安基準によつて審査して採用し直すのだということでなかなからちがあかない、解決できないとか、直用関係は家族従業員が主であるから、遠くへ越したところで家族従事員は要るのだ、三千人は差引けないとか、いろいろなことになつて来ると思いますが、非常にその減つて来る要素は多分にあるのでありまして、二万八千若しくは三万以上というような中間的な数字というものが最終的にどのくらいになるかということは、何とも言えないことでありまして、それに対してそれを減らし得る要素というものを厳重に指摘しなければならんということは当然であると思いますので、我々としてもこの関係は十分気を付けて相談して参りたいと考えております。  特別手当の件でありますが、これは八割増ということは、八割増の特別退職手当という問題は、従来は組合の主張しておりました八割増という線で全部話ができ上つてつたということは事実でありまして、先般の国会中の当委員会で私が申上げました八割のほうも何とかするのだということを申上げたということでありますが、これは速記をお調べ頂きたいと思うのでありますが、私の記憶に間違いがなければ、特別退職手当というものは、一応組合の要求する八割増という線で理解されておるけれども、八割増ということで実現できるかどうかは別として、とにもかくにも特別の手当というものをこの際部隊の軍命解雇以外に組立てなければならないのだということは認めざるを得ないし、又努力もするという趣旨で申上げておりましたつもりでございまして、若しもそういうことになつておりませんでしたら、私どものほうの、私の言い間違いでございますので、お許しを得たいと思います。それがまあ二カ年という勤続年数になつておりますので、どう見積つたところで五万円、六万円ということで、当面の足しにならんではないかということでありますが、これは私がそう言つておるわけではないのであります。これからのアメリカ交渉になりました際に、それはまあ二年だから五万円ぐらいしかない、これでは困るじやないかということはそうだけれども、問題は五年分を先に取つちやつたじやないか、これはアメリカで払うとか、日本政府で払うとかいうことを言つたのじやない。労務者をよこせよこせというのでとつちやつて、今度は二カ年分だから五万円しかないということを言われても、あのときにおいてあの問題がなければ、現在は七年、八年ということで計算するのだから、これは何十万円に必ずなるはずであつて、今五万円というのはおかしいじやないかというのが、一つの論議の的になるであろう、従つてその関係でどういうふうに調整して議論するかということが今後のあれの問題になるということをあらかじめ申上げておいたつもりでございます。私ども考え方は、講和発効当時に清算いたしましたものを、今更どう言つたところでしようがない、これは一済んだことであつて、今更計算に組入れる額をアメリカに言われたところで、これはどうしようもない。然らば全体で二年しか在職していないということで、最低保障というところへ持つて行きたい。幸いに官吏についても最低保障制度というものができたことであるから、こういうように考えて、特別退職手当の解決の線というように考えておるわけであります。清算済の手当とも関連して面倒な点は多々あると思いますけれど、何とかその辺は官公吏に準ずる、官公吏と同等以上の特別退職手当最低保障の線というものは確保したい、これはもう職を賭してもやつてみたいと考えておるわけであります。  防衛分担金についての御指摘もございましたが、これはまあアメリカ日本において使つております防衛関係の費用というものの総額が折半されて、防衛分担金は日米折半の費用から成り立つておるものであれば、御指摘の通り議論になると思いますけれども防衛分担金は御承知のようにアメリカ日本におきます経費の極く一部分でありまして、合わせて三億ドル程度のものでありまして、日本側で分担しております一億五千万ドル近い費用というものは、駐留軍労務者関係すら支弁するに足りない金額になります。これの増減ということから、いきなりにはアメリカの、例えばアメリカ側の予算二五%削減からいきなりには防衛分担金の減少という問題を直ちに結論付けることはできないのであろう。勿論二五%と申しますれば四分の一でありますから、これは陸軍関係だけであつて、空軍は殖やすから、陸海空を総計すれば一五、六%であるとアメリカは言うだろうと思いますが、一五、六%の減になつた場合に、防衛分担金にもそれがおせおせになつ影響して来るということは確かに事実であります。その関係から将来防衛分担金の減額という問題が、当然この次の年度に問題になるということは予想されまするけれども、今日この際、直ちにアメリカ側の二五%減に伴つて日本側のすでに支払つてある分担金を減らして、それを特別退職手当の資金とする、財源とするということは、いきなりにはそういう筋道にはなりかねるのではないかと考えざるを得ない、こういうふうに私は考えておる次第でございます。
  42. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは午前中の会議はこれで終りたいと思います。三時から開会をいたします。    午後零時五十一分休憩    ——————————    午後二時二十六分開会
  43. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 休憩前に続いて会議を開きます。  ちよつと委員の皆さんにお諮りを申上げます。実は総会目的な失業対策に関する調査をこれから行うわけでありますが、この際一番問題になつておりまする中小炭鉱の失業、その他の労働問題につきまして、業者の代表として高倉商事株式会社の中山亀彦君、それから九州の中小炭鉱の労組側の対策部長今村国年君、北海道の同じく対策部長飯盛亮平君の五名を参考人といたしまして、一応最近の炭鉱事情について事情を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  44. 田村文吉

    田村文吉君 異議ありませんが、今の九州と北海道対策委員のとおつしやるのはどういう御資格なのですか、はつきりいつたら。
  45. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働組合中小炭鉱対策部長です。
  46. 田村文吉

    田村文吉君 労働組合というのですが、何か単産があつて、単産を何か代表でそういうことをなさるのでしようか。そこをはつきりして……。
  47. 阿具根登

    ○阿具根登君 炭労の九州と北海道の支部の中小関係の部長なんです。
  48. 田村文吉

    田村文吉君 わかりました。
  49. 井上清一

    ○井上清一君 かいつまんで一つお話を……。
  50. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは只今委員会の承認を得ましたので順次発言をお願いしますが、大体発言時間はお一人十分程度に一つお願いをいたしたいと存じます。
  51. 今村国年

    参考人(今村国年君) それでは日本炭鉱労働組合九州地方本部の役員をしております中小炭鉱組合を担当しております今村という者であります。非常に窮迫をしております地方の状況について陳述をさして頂きたいと思います。  実は十九回の国会当時衆議院の労働委員会にも参考人として出席をいたしまして、陳述をいたしたのでございますが、端的に申上げますと、石炭が売れません。これが石炭が余りますと、どういたしましても自然条件が悪いので、炭質が悪いということと、それから得意先を持たない、それから金融機関とのつながりがない、こういつたような条件が中小炭鉱にございますので、炭鉱全般として悪い。石炭が余つておる、このしわ寄せが中小炭鉱にどうしてもなされる、こういう一般的な状態でございますので、これをやはり何とか解決をして頂かなければならないということで申上げたのであります。  そこで私ども労働組合の立場からいたしますと、結局労働者として労働組合の活動範囲内でいろいろと御要望申上げるということになるわけでございますが、現在の炭鉱の特に中小炭鉱状態は、労資の関係労働者生活を維持し、雇用を継続し、労働条件を改善して行く、こういうことの不可能な実態にあるわけであります。企業努力によつて今の不況を切り拓くことができない、こういう実態でございますので、そのことを先ず解決して頂かんと、結局労働問題の以前の問題だということでございます。  そこで私がそのとき衆議院の労働委員会で主張いたしましたことも現在も変りはないと思うのですが、問題は石炭の消費がもう少し増大するということが一番望ましいわけであります。そこで申上げるまでもなく、石炭の消費が増大するということは、日本の経済活動、産業構造につながつて参りますし、それから国際的ないわゆる貿易関関係等におきましても、それぞれの根本的な問題が解決をいたしませんと、この問題の解決にならない。そこでその問題を私どもは私どもなりの主張がございますので、そういうふうに改良して頂きたいという主張は持つておりますけれども、当面そのことを申上げましても、今の状態の中で現在賃金が遅払いになりまして、生活さえ困難な状態、この当面しておる状態の解決にはならない。  そこで一番問題になりますのは、昨年度の実績で見ましても、外国炭が二百九十五万トン入つております。それから重油が五百三十七万キロ・リツターと聞いておりますが、この中に石炭に代替された分が三百四十三万キロ・リツター、大体石炭に換算いたしまして七百万トン相当の重油が石炭市場を食い荒しておる、こういう状態でございますので、当面根本的な経済政策そのものはそれといたしましても、この重油が国内の石炭市場を食い荒しておる、この状態だけはなんとか改良して頂きたい。と申上げますことは、戦時中非常に出炭強化をやりまして、炭鉱が荒れております。このことはいわゆる戦争を遂行するという国策上からやられたことであつて、更に設備の近がなかつた、こういうことで炭鉱は荒れ放題になつております。そこで現在生産原価が高いというような状態が終戦後現われておりますので、これは当然私どもやはりこの炭鉱の労使だけがその犠牲をこうむつて改良して行くべきではなかろう。勿論あらゆる産業はそういう状態にあることは申上げるまでもないのでございますが、特に炭鉱だけは年々掘れば掘るほど深くなつて参りますし、ほかの産業と違つて現状を維持するためにもやはり改良を必要とする特殊な実情なんでございますので、そういう観点からいたしましても保護されなければならない。終戦後ちよつと保護されましたが、石炭が余るということで、その後放り出された、こういう実態でございますので、保護をされるべきである。而もこれは私どもの立場から言いますと、炭鉱資本家それだけの保護だけではどうにもならない。そういうやり方でない保護をやつてもらいたいということを主張いたしたのでありますが、これも今の政策の枠内ではできない。そこで結局重油で石炭を圧迫して保護ができないとするならば、そういう石炭を圧迫する条件だけでも排除してもらいたい。このことを主張を申上げたわけであります。なお、石炭と重油価格との比較等もいたしましたが、私ども石炭のほうが割高になるとは考えておりません。現在の状態では重油と石炭の消費市場の価格は大体とんとんであると考えております。なお、重油に関税を付しますと、むしろ重油のほうが割高になる、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。而も炭鉱は御承知のように、一日操業を停止いたしますと破壊をいたします。破壊をしてしまいますと、これが再開するためには数年間を要しますし、尨大な資金を要するわけであります。非常に国際的な変動の多い現在でございますから、重油が入らないようなことになつた場合の日本の産業の状態を考えますと、炭鉱を破壊した、重油は入らなくなつた、そのときの日本の産業の状態を想像いたしますと、その点からだけでも、これはやはり積極的な炭鉱の保護ができないにいたしましても、炭鉱を逆に圧迫するようなやり方はやめて頂きたい、こういうふうな主張を申上げたわけであります。現在もそういうふうに考えております。  そのときいろいろと重油の規制についてのお約束を頂いたのでございますが、実際には六月重油を輸入されました実績を今回参りましてお聞きいたしますと、規制がなされておらない、こういう実態でございますので、当時重油の輸入を規制することによつて、更に国鉄その他の大口消費の価格の決定、こういうことと相待つて、大体七月頃からは石炭の市場の荷動きが好転するだろう、こういうようなことが申されておりましたが、重油は規制をされない。それから非常に雨が多かつた関係で、電力会社等の需要も減つておる関係もございますが、市場の状態はますます悪くなつておる。従つてども当面憂慮いたしますことは、炭鉱の、特に中小炭鉱といたしましては、やはり昔のような経済活動と申しますか、盆暮、こういつた季節ということがやはり支払その他の締切というものに大きな山になつておるのが実情でこの状態というものは最早そういう労働組合の指導力等ではどうにもならない限界にまで来ておるように私どもは考えておるわけでございます。従つて衆議院のほうでもいろいろとお願いを申上げまして、参議院のほうにおかれましても、委員のかたが現地に直接調査に行かれたかたもおいでになるように聞いておりますので、実情については詳しく御承知だと考えますから、時間がございませんので、くどくどとその説明はいたしませんが、そういつた実態を十分御認識下さいまして、思い切つた対策と活動とをやつて頂きたいし、労働者に対しての支払その他の支払もしなければなりませんし、この旬日を出でずして地方では非常に混乱した状態中小炭鉱の全般に亘つて起りはしないか、こういうことを憂慮いたしております。賃金の遅払が続いておりますので、労働者生活は、ここで表現の仕方もないほど窮迫をしております。従つてそういつた状態から参りますと、これは労働組合の活動の秩序の中で何とかやつて行くといつたような事態にはなり得ない。もつと死活の問題、生命の問題に直結をいたしまして、非常に法治国の国民としての法内活動を逸脱するような活動も派生としはしないか、これは家族を抱えまして食うか食わないかという境目でございますので、そういつた不測の状態も、私ども非常に指導者の位置にあるものとして懸念をいたしております。そういうことのないように努力を今日まで続けて参つておりますけれども、現地の状態というものは最早そういう労働組合の指導力等ではどうにもならない限界にまで来ておるように私どもは考えておるわけでございます。従つて衆議院のほうでもいろいろとお願いを申上げまして、衆議院のほうにおかれましても、委員のかたが現地に直接調査に行かれたかたもおいでになるように聞いておりますので、実情については詳しく御承知だと考えますから、時間がございませんので、くどくどとその説明はいたしませんが、そういつた実態を十分御認識下さいまして、思い切つた対策と活動とをやつて頂きたいと、このことを現地の状態に合せましてお願いを申上げまして、時間がございませんから陳述に代えさせて頂きたいと思います。
  52. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 次に高倉商事株式会社、取締役中山亀彦君発言を許します。
  53. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 私のほうは福岡県に一坑と、佐賀県に一坑と、長崎県に一坑、都合三坑所有しておりまして、全従業員は約二千五百名おります。そうして、毎月の出炭量が合計二万二千トンという目標で進んでおりましたのでありますが、最近は経済的に難儀をしておりますので、現在二千五百人の鉱員諸君に賃金の支払いができませんので、三月分までしか支払いをしておりません。そうして、あとは主食とそれから調味料、所によりますと野菜と魚の一部分を現物給与しておるような状況でございまして、一人当りが五千円か六千円くらいしきや配給ができずにおります。それで、これは去年の十月頃の状態でございまして、今日では殆んど社会的に非常に危惧されるような状態にまでなつて来ておりますので、何とかして資金調達をしなければ由々しい問題が起るのではないか、こういうことで、前の日本炭鉱労働組合の今村氏の協力を得まして、まあ今回陳情に参りましたような状態でございます。  私のほうといたしましては、現在生産費が三山平均いたしまして約三千五百円から六百円くらいなところでございます。それが販売の面になりますと、鉱所渡しで二千二百円から二千四百円の間でございまして、都合よく行きましても赤字がトン当り千円以上つくということになつております。それに一昨年の六月二十六日に大半の鉱員を抱えております佐賀県の岩屋鉱業所というのがあの水害に会いまして、全山水没いたしました。それから、当時これは再建するのか到底むずかしかろうというので、まあ話も出ましたけれども、そういうことでは、当時の鉱員が千五百名おりましたので、千五百名の人間の行き場がない。何とかして社長に継続できるように資金の調達をして頂きたいということを相談いたしまして、そうして、それではということで、その後坑内水を揚げますし、それから資金の調達も、自分の資材をそろそろ売り払いまして、或る程度揚水できましたので、坑内の回復にかかりました。ところが、どうしても将来は機械的に合理化しなければ、どうも採算が取れんのじやないかというようなことになりまして、開発銀行に御相談いたしまして、機械化のために一億六千万の融資を頂きまして、自分でこれに資金の調達をいたしまして、約四億の金を入れまして、機械合理化を図りまして、そうして幾分でも生産費の低下して、そうして幾分でも生産費の低下を図るということで、漸く本年の一月に、資金の都合で、どうしてもやつて行けませんのを、無理やつとに石炭を出すということで、一月に二千トンばかり、二月に四千トン、三月に六千トンというふうにやつて来ましたのであります。か、その後賃金の未払が重なり重なりいたしまして、どうしても賃金が思うように払えませんので、鉱員諸君の生産意欲ががた落ちということになりまして、今日では二万二千トンの出炭に対しまして、六千トンから八千トンというような状態でございます。それで一層資金面に困難をいたしまして、今日では一週に千円の現金が払えません。五月一の月が千七百円、六月が六千円ばかり、それから七月が千五百円しか払えんという状態で、今日まで事なく過ごして来ましたことは、日本炭鉱労働組合の指導者の方々に協力して頂きまして、そうして今日までまあやつて来ましたのでありますが、田舎の盆も近まりますし、かてて約四カ月以上の賃金の未払ということになりますと、もう鉱員諸君も金に代えられるものは全部金に代えてしまつて、何一つないのです。それでも会社かつぶれたら仕事場を失うのだというようなことを、よく理解してくれまして、今日、までは協力してくれましたのですが、もう今後これ以上は協力できないということで、何とかこれをしなければいかんということで、本日陳情に参りました次第でございます。  併し従業員が二千五百名おりますが、どうしましても事業の継続が不可能だというようなことになりますと、一遍に二千五百名に上る失業者を出さなければいけない。で、失業者を出して失業保険ということになりますと、私のほうは平均三百二十円ぐらいになるのじやないかと思います。それで二千五百人出しますと、厖大なことでもありますし、今日まで、社長の精神といたしまして、何とかして我々は学校に行つた人聞でないのだから、できるだけ国家に対して御奉公するつもりで、一人の失業者も出さずにということで頑張つて来たわけでありますが、もう資金が何ともこれ以上にできませんので、止むを得ず廃山か休山かというようなところにまで立至つております次第であります。  誠に申訳ありませんですけれども、そうなりますと、現在の未払なんか、すでに六、七千万円ぐらい、きれいに清算しますと、なるかも知れんと思いますが、そういうのは一銭も払えないようになりますしすることは、本当に暴動化するような傾向もあるということでございますので、非常に社長初め、我々に至るまで、一生懸命になつてこれを苦慮しておるような次第でございます。  が併し現在の物価と、それから生産費、販売価格、それから原価と、こういうことを見合わして行きますと、トン当り一千二百円くらいの赤はどうしても免れませんわけでございます。何とかこの点のバランスのとれますようにお取計らいがお願いできますると、我々中小炭鉱業苦は救わるるわけでありまして、私のほうはそういう中小でございますので私のところより以下の炭鉱は無数にあるわけでございます。もう朝も昼も会うと、どうなるか、炭価の状況はどうだろう、出したところで今日四百万トンも余つておるという話じやが、どうも困るのだ。もう貯炭場もなくなつた。盆が来た。実際今のところでは企業家は殆んど影を隠しておるというような状態でございます。で、影を隠したところで働く人はどうも始末がつかん。で、何とかこの救済をして頂けますならば、我々は一生懸命になつてまあ生産費の安くなるようにはしたいと思いますが、第一番にただ腕一本に働いております鉱員諸君の今日の生活ということに非常に考えさせられる次第でありまして、このことにつきましては、政府のほうに、いいときだけ自分たちでやつて、悪くなつたら政府にということになるようでありますけれども、何とか救済の途がありますならば救済して頂いて、そうして将来事業家は石炭の採掘をさえしたら、自分の抱えておる労務者だけは何とか最低生活でも安心してさせて行かれるような方法をとつて頂くようにお願いする次第であります。  以上のようなことでまあ自分が苦しいからというわけでもありませんけれども、まあお願いに上りました次第でございます。
  54. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして日本炭鉱労働組北海道中小対策部長飯盛亮平君の発言を許します。
  55. 飯盛亮平

    参考人(飯盛亮平君) 炭労北海道地方の中小対策部長をやつております飯盛亮平であります。  只今まで二人の方におきまして、今日までの状態についてのお話がございましたので、私どものほうからそれについてくどくど申上げるまでもないと思います。で、今日私どもが、如何なる新聞或いは雑誌を見ましても、しわ寄せという言葉が大きく使われておるわけでありますけれども、しわ寄せという言葉につきましては、中小企業或いは中小炭鉱のみに使われる言葉でありまして、そのよつて来たる原因については、今申上げましたように申上げるまでもないと、こう考えるわけであります。  そこで私は北海道を中心にいたしました中小炭鉱状態について若干申上げて、なお、最後に要請事項を若干申上げたいと、かように考えておるわけでございます。  で、私共炭労に参加をいたしております炭鉱につきましては、中小炭鉱の場合二十炭鉱でございまして、未組織の炭鉱につきましては、現在四十三炭鉱あるわけでございます。で、今日までこういう状態の中におきまして、六月末までに調査して参りましたが、すでに閉山或いは休山した炭鉱が二十三炭鉱でございます。  こういう状態の中で、一方私ども労働者としての賃金の支払い状態は如何ようになつておるかと申上げますと、私ども炭労傘下二十炭鉱のうち十六炭鉱がすでに二カ月以上の未払い賃金を持つておるわけであります。最高の山につきましては百四十七名程度で約五千八百万という大きい未払い賃金を持つておる山も中には含まれておるわけであります。然らば未組織のほうはどうかと申上げますと、未組織のほうにおきましても約九〇%が未払い賃金を持つておるという現状でございまして、今日会社と労働組合との問に労働協約によつて、何月何日に賃金を支払うという、この規定を遵守されておるという炭鉱が、残念ながら北海道においては三炭鉱乃至四炭鉱しかない、こういう現状でございます。  特に私ども炭労傘下の中におきましてのこの二十炭鉱の貯炭の状況を申上げましても、五月末現有で約七万トンを持つておるだけであります。中小炭鉱の場合につきましては御承知通り能率が非常に悪い、或いはこの点につきましては、立地条件の問題がそうなるわけでございまして、そういう状態でありながら、現実持つておる炭を如何に米代に代えるかということで汲々しておるという山についても、実質的には取引がないために貯炭を増さなければならない、こういう状態に立つてるわけでございます。  更に又いわゆる販売いたしました手形が、大体手形日数にいたしまして百二十日から百五十日になつている、甚だしいところにつきましては百八十日という手形が横行しておるのが事実でございまして、こういう点は特に今回の金融引締という、こういう状態の中で、いわゆる二つの形の狭撃を中小炭鉱が受けておるような現状でございます。一つの山の例を申上げますと、いわゆる五月一日に会社側から一方的に閉山を通告しました。朝日炭鉱の例でございますけれども、この山につきましては、従業員が全部で三百五十名程度でございます。この山につきましては、実はいろいろなお話がございまして、いわゆる東京から社長がたまたま山元へ参らず、札幌におつた形の中で一方的に閉山の通告をいたしたわけでございます。そういう状態の中で、或いは解雇手当の、手続もやらなければ、又未払金の整理もしておらない、こういう状態のまま二カ月を過したわけであります。勿論、三百五十名の組合員を抱えましていろいろと奔走いたしまして、アルバイトをもつて今日まで続けておるような現状でございますが、いわゆる食生活におきましては、我々が想像することのできない状態でございまして、いわゆる朝にも夕にも野草を入れたところの主食をもつて何とか維持しておる。こういう状態が総体的な状態であつて、特に朝日炭鉱の場合につきましては顕著であつたわけであります。  こういう状態がございましたが、いろいろと私どもも話合を進めて参りまして、今日私ども炭労自体から資金を出しまして、この山の再開をすることの運びになりまして、今日どうやら話合を続けておるようなわけでございます。  こういう状態でございまして、こういう実際というものがいわゆる一山二山ならともかくといたしまして、その六割程度というものが、そういう状態に至つておるということでございます。特に金融引締によりますところの中小炭鉱状態というものが極めて困難な状態なつておりまして、その結果がいわゆる労働金庫という一つの形にこの市中銀行のしわ寄せというものを寄せられておる。こういうことで北海道労働金庫の貸出状況というのをお手許に出したわけでありますが、この資料を見ますというと、大体二十八年の四月から二十九年の五月まで集約いたしたわけでございます。これはすべて炭労保証という形で行なつておるわけでございますが、約一億二千万という資金を労働金庫から出しておるわけでございます。従つてこういう状態につきましては、道炭労のいわゆる保証で行なつておるという状態であり、私ども労働組合という組織の力におきましてはすでに限界に来ておりますけれども、併しながら今日市中銀行に参りましても、いろいろと話合がつかないし、はた又官庁に尋ねて見ましても、解決のつく問題ではございませんので、必然的に企業資金なり生活資金というものが労働組合の手によつて賄われておるということが現状でございます。勿論一億二千万の資金につきましては、北海道の私ども炭労傘下の二十炭鉱のうち十六炭鉱が使つておるわけでございまして、全炭鉱が使つておるという状態ではございませんので、二炭鉱にいたしますと、約八百万から九百万の資金というものが労働金庫から出されておる、こういう状態北海道現状でございます。  従つて今日私どもが特に御要請申上げたいことは、先ず金融対策といたしまして、今日の中小炭鉱、特に北海道におきましてはいわゆる北海道開発という問題もあり或いは日本の全体のいわゆる経済力から参りましても、中小企業の力の大なる点を十二分に勘案いたしまして、開発銀行或いは興業銀行を通じましての融資の問題を具体的に取上げまして、こういう中小炭鉱に融資を行う方法を講じて頂きたい、かように考えておるわけでございます。  次に第三点の問題でございますが、需給の問題でございます。この点につきましてはしばしば陳情申上あげまして、先般まで四千五百万トン乃至四千六百万トンというお話を承わつて参りましたが、未だにその目標というものが決定されておらず、たまたま巷に四千三百万トンというお話が出ておるわけでございますけれども、今日炭鉱の持つ力から参りましても、五千万トンという生産能力を持つておるわけであります。従つて日本でいわゆる採掘されるところの炭は、日本の国内において消費されるという総合燃料対策というものを具体的にやはり作つて頂きたい。この点を要請申上げるわけでございます。  なお、これに関係して参りますところの重油の削減の問題もございますし、外国炭のいわゆる輸入削減の問題もございますので、こういう点も含めた形で打出して頂きたい、かように考えておるわけでございます。  次に、失業対策の問題でございますが、如何に私どもが渾身の力を揮いまして、その企業の再建のために努力いたしたといたしましても、その企業自体が採算見地に立つておらん、こういう状態でありますれば、私ども涙をのんでやはりそれらの閉山を認めなければならん、これが現実の状態であり、その状態に対するところの失業対策というものが具体的に立てられなければならん、かように考えておるわけでございます。今日までいろいろ休廃山が再建をする場合に、必然的に伴つて参ります犠牲は、人員整理でありまして、而もその人員整理退職金も支払われないし、勿論未払賃金も払われない、或いは退職手当も払われない。現実の職をどうするかという状態の中で、失業保険を受けるという状態でございまして、従つてその間までの稼働状態から判断して参りますと、失業保険の等級という問題も極めて微々たる問題でありまして、失業保険のみでは生活維持はできん。而も失業という一つの状態の中で、そういう形でございますから、ここで一つ新たに就労の問題を考えなければならんということが出て参りますけれども、そういう具体的な形というものが、未だに行われておらん、この点は私どもといたしましても誠に遺憾とするところでありますので、この点も一つ併せて具体的に一つ結論出して頂くよう御要請申上げまして、私の陳述に代える次第でございます。
  56. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  57. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。
  58. 田村文吉

    田村文吉君 中山さんにちよつとお伺いいたしたいのですが、失礼ですが、あなたは何年くらい炭鉱に御従事しておられますか。現在は高倉商事の何をやつておいでになりますか。
  59. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 商事の理事でございますが、大体私は十八から五十六の今日まで炭鉱の仕事をしておりまして、殆んど炭鉱で一代過したような状態でございます。
  60. 田村文吉

    田村文吉君 そこで中山さんに伺いたいんですが、この問題は先般の労働委員会で非常に問題であつて、ひとりこれは労働委員会だけの問題でなくて、通産省としても重大な問題となつております。随分従業員のかたが山に野菜をあさるような悲惨な状況があるということまで伺つて、今度委員のかたがわざわざ調査においでになりました。そこで根本的に昔からおやりになつているというから私はお伺いしたいのですが、今お話の中に、生産原価が三千五百円から三千六百円つくのに販売単価が二千四百円だ。それで、私は非常に疑問に思つているのは、昭和十年の昭和石炭という会社ができるまでは、石炭一トン、横浜にしましても私どもの北陸にいたしましても、一トン安いときには七円というときがあつた。まあ十円くらいが中値で昭和石炭ができた。その当時には撫順炭が我々のところには七円五十銭で揚げて入つた。でございますから、その当時の九州石炭は恐らくは山元で二円か二円五十銭くらいじやなかつたかと思います。それがどうして今日一千倍近い二千五百円でも引合わないようになつたか、この根本の問題を一つ自由に、私は大炭鉱には特殊ないろいろ理由があると思うのでありますが、中小炭鉱としてそういう点についてはどういうお考えですか。これが解決されないと、一時金をお借りになつて、そういう救済法を立てても、日本の炭鉱というものは立つて行かない。そういうことになつたんでは救済の方法がなくなつて来る。どうしてもこの際、立て直すには、一体その禍根がどこにあるかということを実は知りたいんです。例えば一人当りの採炭量は昭和十年頃にはどのくらいお掘りになつたか、それから今日はどうなのか、今日の賃金のお話は、実物の給与は五千円ぐらいで、あとは千二、三百円入るか入らんかというようなお話でございましたが、果してそれは昭和十年ぐらいに比べて、賃金は倍数にしたらどのくらいの倍数になつておるか、こういう点を私は知りたい。  それからだんだん山が深くなればなるほど経費は高くなります。なりますが、中小炭鉱すべてが必ずしもそういうわけでも私はないかと思うのです。が、一体そんなふうにほかの物価が三百倍とか四百倍でおさまつておるのに、石炭が一千倍でも引合わないということになつた根本の原因はどこにあるか、こういう根本のことを実際家のあなたから一つちよつと説明をして頂きたいと思うのです。
  61. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 現在は坑木が相当に中小は非常に要りますので、中小は鉄柱なんかを使いませんので、殆んど坑木、木で賄つております。この坑木は少しも下つておりません。それから火薬類が上るとも下りません。電力が上るとも下りません。それから賃金にいたしましても、どう言いますが、下げるということは殆ど不可能と言つてもいいぐらい、それは昭和十何年頃に比較しますと、今日の坑夫諸君の生活というのも大変違うことになつておる。昔の炭鉱部屋とか監獄部屋というようなことで、無理やりに住ましておりましたけれども、今日ではそういうわけにも行きませんので、それで私のところが現在までが一人当り七トン半乃至八トンぐらいでございまして、それではどうしてもやつて行けないからということで、機械化しなければいけないということで、まあ私どもつておりますところの岩屋鉱というのが約一万六千トン、五千トン乃至六千トンは軽く見ましても出さなければいけないのでありますけれども、これは運搬坑道が少し長いので、四キロからありますので、これを機械化することが一番必要だということで、重油の機関車を入れまして、それから炭車も鉄車に切替えますしというようなことで、約四億ばかりの資金をつぎ込んで、漸く仕事のできるようになりましたが、さて炭価のほうが下りましたので、どうしてもさつき申上げましたように、千何百円の赤字だと、こういつておるのであります。そういうことでございます。
  62. 田村文吉

    田村文吉君 そこで今の原価二千四百円とか二千五百円という中には一億五千万の金をお借りになつておる。自分の手許へ一億五千万の金を用意したというが、金利は一トン当り幾らですか。
  63. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 金利は約四百円ばかりかかつております。四百円から、この二、三カ月はどうですか知りませんけれども、その前が四、五月が四百三十円くらいトン当りかかつておりますのでございます。これがかからんことになりますと、大変に違うのですけれども、まあ無理に無理をして行きますので、どうしてもそれだけかかるわけであります。
  64. 田村文吉

    田村文吉君 私は昔あなたのところの岩盤炭鉱というものの炭というものを随分使つた。だからよく知つておる。昔は恐らくあなたの山元で二円くらいの炭じやなかつたかと思うのです。それが今日二千四百円も二千五百円もする。千倍からかかるということは今お話になつたごとくに火薬は高いとおつしやるけれども、火薬はそんなに倍数は上つておりません。それからもう一つ例をお引きになりました電力料金なんかは、昔に比べると漸く三百倍にならない、二百何十倍、坑木だけが石炭に漸く類似した一千倍近くになつておる。これは非常にわかるのです。それは坑木というものは重要生産費を占めておりますが、一番私は大きいのは、労働賃金と、これは厚生施設だと思うのです。いろいろの施設。そこで私は問題として伺うのは一体どのくらいの賃金の、ノミナルな賃金というものは殖えておるのだろうか。その当時はどのくらいであつたのか、今どのくらいになつておるかということを、何か御比較わかりませんか。
  65. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 明治のことでありますけれども、私たちがとかく働く時分は、一人前が十七銭くらいでございましたが、そういう時代がありましたが……
  66. 田村文吉

    田村文吉君 それはちよつと古過ぎるのでありますが、昭和十年くらいの戦争の始まる前は、その頃は一体どのくらいの賃金でおやりになつておるのですか。それに比べると賃金というものは今どのくらいの倍数になつておるのですか。若し炭労のほうで、そういう点についての御調査があれば、なお結構ですが。
  67. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) そういうのが、私ではどういうふうに申上げていいのかちよつと……。
  68. 田村文吉

    田村文吉君 私はその専門家がいられますが、今の問題は、ノミナルの形式賃金という問題よりは、厚生施設とか、いろいろの住宅費とか、そういうものも余計ある。或いは建増すと、それは金利が殖えますし、それは金利になつて相当入つておる。そういうような工合で、いわゆる厚生施設というものを加えると、本当の賃金というものはわからない。そういうような点がどうも私には……、今後の一体炭鉱業で、今さつき今村さんからお話があつたように、油をとめるとか石炭の輸入をとめるとか、こういうことも我々できるだけ一つ努力します、考えて行ぎたいと思つておるのだが、一体石炭自体がこう高いのでは、内地の炭鉱の鉄を作る製鋼ですね、そういうものは安いものはできない。これもやつぱり一千倍近くの、八百倍から一千倍近くかかつておる。だから船が高い、こういうことになつておる。だから日本の経済はみんなそういうふうになつておる。それで先ず第一に根本の石炭というものは、どうしてこれが高いのか、これはもう下げられないのか。こういうような問題が今後の日本の経済を決定する問題になるから、そこでまあ実際におやりになつていらつしやるあなたの感じから考えてみて、一体どうしてこうなつたのだろうということを承われたら一つ承わらして頂きたい、こういうわけです。
  69. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 以前は私がそういう、大体学問がありませんので、そういうほうまで突込んでおりませんのですが、現在は労働賃金が約生産費の五〇%から五二%くらいかかつておるわけでございます。その五二%くらいのうちの約一割、一〇%くらいが厚生施設費くらいなものでありまして、殆んどが労働賃金である。それでも私のほうはよそに比較して余りいい賃金ではありません。できるならもう少しくらいは何とかしたいと思うような、安いほうでございます。
  70. 田村文吉

    田村文吉君 それじやなお伺いますが、あれですか、現在現物給与が五千円くらいになつておる。そのほかに千二、三百円しかやれないというような、こういうお話ですが、間違いがあるかも知れませんが、大体表面的にはどのくらいお払いになるということが、あなたのほうとしてはおきめになつておるのですか。
  71. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 大体一万五千円ぐらいは平均払わなければいけないのじやないかと、こう思つております。
  72. 田村文吉

    田村文吉君 現物給与を入れてですね。
  73. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) いいえ、大体当り前払いますと、平均一人二万五千円から六千円ぐらい払うのが順当だと思いますけれども、現在のところでは、会社の内容が悪いので、六千円から七千円、七千五百円ぐらいしか現物給与ともで払つておりません。
  74. 今村国年

    参考人(今村国年君) 今いろいろ中山さんからおつしやいました三千四、五百円という生産原価でございますが、尤も炭鉱の場合の生産原価は労務費が約半分占めております。従つて石炭の価格が上つたということになりますと、やはり労務費が戦前に比較して倍率が高いといたしますと、これはやはり上つたということになるでしよう。一番大きなウエイトを占めておるだけに、そういうことは一応言えると考えますが、そこでそれは比較いたします場合に、いろいろ問題があろうかと考えます。生活消費物資のその頃の価格と今の価格の比較等もあると考えますが、その生活実態を見ます場合に、その価格比較だけでも行かない場合があります。そこでどうもお聞きしておりますと、べら棒に賃金が高くなつたから、石炭の値段が高くなつたのじやないか、それ以外には考えられない、こういつたようにおつしやつておいでになるように受取つたわけでございますが、そこで私どもこの賃金のほうの担当部長がおりますが、私賃金のほうを専門に担当いたしておりませんので、そういつた戦前との比較その他はいたしておらないのでございますが、只今申上げましたように、労務費か非常に生産原価の中の高い比率を占めておりますから、石炭の値段が上つたということについては、労務費が比較して上つておるということは、これは否めない。それが妥当であるかどうかということにつきましては、いろいろと問題があろうかと考えます。御承知のように、昭和十年頃ですと、ぼつぼつ石炭景気が出かかつてはおりましたが、とてもそれは人間として考えられるような労働はやつておらなかつた従つて月収から比較いたしますと、私どもの考えは、その頃やはり坑内第一線で働く人は三円乃至三円五十銭の日給を取つてつたと記憶します。ですから月収で参る場合には、現在と比較いたしましての倍率は、一千倍とか何とかそんな大きな数字にはならないと考えます。これは数字を持つておりませんので、正確には申上げかねますが、少くともその頃の坑内で請負をやつておりますいわゆる直接夫というものの労働時間は平均いたしますと、十一時間乃至十二時間働いておつたろうと思います。従つてそれを現在只今まで持つて来て、その状態で働いてその賃金の比較が妥当だということには、これはやはり社会的に見てもならない。そこで若し労務賃金が非常に高くなつておるといたしましても、これはやはりもう少し炭鉱労働者の体力の限界も考えて頂かなければならん。その時の社会的な状態もやはり考慮に入れて考えられなければならん問題だろうと考えます。ですが、さつき申上げますように、資料を持つておりませんので、正確にはお話ができかねるわけなんですが、従つて若干上つておる、上がる比率は若干高い、こういうことはまああるだろうと考えております。それにはそういつた要素があるのだということを御考慮願いたい。それから今御指摘になりました三千五、六百円生産原価がかかるのに販売価格が二千四百円乃至二千五百円で、こういうことで、赤字が続いて賃金が払えないから困るので、金を貸してくれと言つて金を借りて来て、そこで借りた金を払つてしまつて、更に又何カ月か先に同じような状態になる。そういうことでは炭鉱に金を貸して再建してやつても何もならない。いわゆる捨て金になつてしまう。それともう一つ非常に国内炭が割高であるために、これを原料とし或いは火熱源として使う鉄鋼なんかは、特に生産原価の中に石炭が高いウエートを占めておるわけであります。そういう石炭によつて物を造り、その物の値段が高くなる。それは重油との比較においておつしやるような点も考えられるわけですが、今中山重役が言われました二千四百円という石炭の値段、これは六千カロリーを超しているわけです。二千四百円の石炭の値段と関税を一銭も取つておらない重油との値段を比較して頂いたら、どつちが高いかということは私が申上げるまでもなくよくおわかりだろうと思います。勿論私ども二千四百円の値段で参りますと、中山重役が言つておられますように、一万五千円程度が現在高倉商事の賃金協定の賃金支払い額です。それを一万五千円を払いますと二千四百円で売れない。二千四百円乃至二千五百円で石炭を売るためには、もう少し労務賃金を下げなければならない。こういうことでいろいろ組合も検討いたしまして、それに合うように労務賃金を下げて行つたのが、一週間に千円の現金と一千五百円の現物を支給する、従つてこれは税抜きになりますが、手取四週間といたしまして月二万円、それで参りますと二千四百円の生産原価に当てはまる。ただしこれは申上げるまでもなく、非常に詳しいようでございますが、適正な能率というものがあるわけです。御承知のように、能率が非常に下りますと、特に石炭産業の場合には、生産原価の中に占めますコスト費の部分が多い。従つて一定の能率を維持いたしませんと、どんなにいたしましても生産原価というものは非常に高くつく。そういう能率との関係もあるわけでございますが、従つて中山重役が言われたように、三千五、六百円の生産原価がかかるということですと、これは減価償却とか或いは今の支払い状態に合せて修正すると、更に労務賃金を切り下げる、こういう企業努力をいたしまして、販売価格に合うようにするわけであります。従つてそれは能率との関係もございますが、当然それには二万二千トン出なければならない。そこでその計画で参りますとやつて行けるということになります。更にそうして出ました石炭の値段はカロリー当り四十銭に当らない。重油は現在一円です。一円と四十銭でございますから、割高になるということは燃焼効率、それから窯たきの占めるいろいろの諸がかり、これを勘案いたしまして、それからよしんば京浜地方まで持つてつたといたしましても、一番輸送距離の遠い所まで持つてつたといたしましても、私もはとんとんである、こういうふうに考えております。従つて生産原価の面はそういうふうに二千四百円なら二千四百円、二千五百円なら二千五百円で、私どもとしては非常に不満ですが、それで生活ができるかと言いますと、本当に食べるだけです。着る物も買えない、こういつた実態なんですが、炭鉱をつぶして失業するよりもいいということで、私どもそれで忍ぶということにいたしますれば、生産原価は合うということになります。それから他の産業に与えるコスト高の問題も決してそういうことではない、こういうふうに私どもは考えております。こういう資料も石炭局等に詳しいのがございますし、十分御検討願えれば、もう少し詳しい科学的な数字が出ようかと考えております。そこでやはり幾らか割高になつて参ります。それは大手の石炭が高いのですから、国鉄炭にいたしましても、カロリー当り六十九銭くらいにきまつたということを聞き及んでおりまして、割高になつて参つたかと考えております。先ほど私が申上げましたように国内には資源がない、あるといえば殆んど石炭だけじやないかと思います。この国内にある資源を利用して産業を安定化すると共に、外貨をもう少し必要な方向に使うべきが妥当じやないか、そういたしますと、若干の割高ぐらいはこれは我慢して頂くのが妥当じやないか、炭鉱労働者が失業しないというだけの立場でなく、こういう主張は私どもは当然正しい主張だと考えております。
  75. 田村文吉

    田村文吉君 いろいろ教えて頂いて有難うございます。私は今の賃金が高いということを言つておるのでなくて、今の説明によると一万五千円のベースにおいて三千六百円の原価がかかる。こういうふうに承知してよろしいですね。それで私は二万五千円が高いとは何も言わないのだが、一体今お話になつたように、石炭は販売原価が二千四百円から二千五百円で、重油のほうが高いのに、なぜ石炭を使わないのか、工場経営をする人はもうちやんと知つております。どのくらいの重油の価格になれば、石炭と対抗し得るか、決して損のものを取るはずがない。それは必ず釣合がとれておるのに違いない。それはやはり炭鉱に影響して来る。重油が石炭より割高だというなら明日の日からでも皆石炭に転換して行きます。二重設備があつても、それを取壊わしてもやる、こういうことになると思います。そこで問題は、先刻申しましたように、一体昭和十年頃炭鉱で三円なんか取つておる人は、恐らくこれはお調べ頂けばわかると思います。そんな高い賃金の人は恐らくいないと思うのですが、賃金の問題よりは、あの当時は撫順炭がどんどん横浜に来て七円五十銭で買えた。それが昭和十年に昭和石炭というものができて、これまでは炭鉱はたまらないというので、話合いをつけて十円という値段で回復しておる。その十円に回復した値段にしても、現有の販売価格二千五百円に対しては同じ六千カロリー、上のものにしては高過ぎる。こういうわけで、私は今の賃金が高過ぎるとは思わない、一体何がこれをそうさしとおるか。こういう点を我々は根本的に考えて行かなければ、今後の大事な燃料に対する方策が立たない、こう思うものですから、実際おやりになつておる皆様から、現実的に言つて何がこういうふうにしておるのか、こういう点を一つ聞かせて頂きたい。こういう意味で、決して賃金が高いとか安いとかということでなく、今お話になりましたように、できるだけ国産品の愛用のため、たとえ重油のほうが安くても、石炭を使うように私ども大いにやるつもりであります。一体米にしましても昔一石二円で今日は一万円ですから、五百倍になつておる。米が高いといつても五百倍、ところが石炭とか鉄とかというものになると、どういうわけか知らないが、千倍近くになつておる。この因はどこにあるだろうかということを私は非常に不思議に思つております。皆様にお目にかかつた機会に、私は大炭鉱の三井の山川さんなどにはこの問題をよく議論しておるのでありますが、何が一体こうさせておるのか聞きたいわけです。終戦後において設備の改善というような立派なことを政府が言つたために、無暗に金を新規に注ぎ込んで、今日は借金が多くてその借金の利息に食われておる。これも事実です。そんなことをしないほうが実はよかつたのだけれども、合理化、合理化何と言つて偉そうなことを言つて政府がむやみに金を貸すものだから、ついうかうかと一割の利息の金でやつたところが、今になつて利息は一トンについて四百円もかかる、こういうような時代が来た。そうしなかつたかたもあるのかも知れない、そういうふうなことでいろいろ私は根本の原因をこれは一つ掘り下げて検討する必要がある、こういう意味で体験をなすつていらつしやるおかたがたの御意見を聞きたい、こう思つて大変いろいろ御意見を承わつて利巧になつたのですが、なお、そういうことについての御資料が炭労にもおありだと思います。私も、無論労働省にも調べて頂けると思うのでありますが、そういう資料も頂きまして研究して行きたい、こう考えております。
  76. 吉田法晴

    吉田法晴君 田村先生の出されました疑問に関連して私から例を申上げて……、これはどちらからでも構いませんが、昭和十年の賃金がどのくらいであつたか、私どももうろ覚えでございますが、先ほどの田村さんのお話のように、三円というのは事実なかつたろうと思う。二円内外、さつき今村君の話の金額はまあ十年、十一年くらいの坑内採炭夫の賃金じやないか、平均いたしますと二円にならないくらいじやないかと思うのです。そうして計算をいたしますと、大体賃金は坑内を平均いたしますと、さつき二万五千円というお話がありましたが、一万五千円になりかねているのが全国平均からいたしますと実情じやないかと思いますが、二百五十倍になつているか、なつていないかというのが実情じやないかと思いますが、そのへん御記憶がありましたら、一つお話を願いたいと思います。  それからこれはどうして炭価が高くなつて引き合わなくなつたかという全国的な問題と、それから岩屋或いは筑紫の問題は水害等もあつて、ひどい例ですが、集約的に出ているのじやないか、先ほどお話の二万二千トン出れば二千四、五百円でも大体償うことになるのだが、実際岩屋の場合一万五、六千トンでなければならないものが或いは三月六千円トン、こういうような半分も出ておらない、そこに炭価の収支償わない原因があるかと思うのですが、そういうことでございますかどうか。そこで今の田村先生の疑問の点から言いますというと、戦争中に五千万トンを超して六千万トン近く出そうとした全国の能力からいたしますと、五千五百万トン或いはそれを超すような能力を以て五、六千万トン近いものを出せば、とんとんということになるが、それを制限して参りますと、実利がないということで四千五百万トンということを言うのですが、そうなつて参りますと、岩屋の姿のような引き合わない、或いは赤字が出て来るのじやないか、ここに問題があるのじやないだろうか。岩屋の場合等は一万五、六千トンについて実際には五、六千トンくらいしか出ていない。そこに赤字が出ている原因があるので、問題は賃金ではない、こう考えるのですが、如何ですか。
  77. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 賃金の遅払いが関係しまして、生産意欲が落ちて出炭量が減つたから、結局生産費が高いということになりますわけでございます。大抵組合相談をしまして、そうして話合をいたしまして、二〇%の賃金カツトということを相談合いまして、そうして会社の存亡の時期だから、そういうことも一応呑んで協力しようというのが現在の販売価格が山上二千四百円くらいのところでどうかこうか、余り大きい赤字を出さずに済むということになるわけです。それが経済上都合が悪いので、賃金を払わないというのが一つの原因で、それ以上に生産費がつくということになりますので、大体我々の見当といたしましては、消費地までせめてここの芝浦で七十五銭乃至八十銭くらいまでに炭価ができますと余り無理をせんでもよろしいというようなことになるのじやないか、こう考えるわけです。
  78. 田村文吉

    田村文吉君 先刻のお話の中に、一人当り八トンとか十トンとかというお話があつたのですが、今日中小炭鉱で経済的に言つて十五トン掘らなければ問題にならないのじやないか。事実そのくらい掘つていられるのじやないか。ただそれは人間が多いから設備がないから止むを得ない、掘らないのだ、これは別問題です。金繰がつかないからそれだけは掘らないというのは別問題です。少くとも今日効率的にやるならば、現在の労働時間でおやりになつても、一人がどうしたつて月十五、六トンから二十トン近くまで、殊に中小炭鉱はそのくらい掘らなければ合わないということに定説はなつているのじやないですか、どうですか。
  79. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 私のほうで行きましたら、大体十四トンを最後の目標にしておりますが、十一トンくらいまではこぎつけたら、どうかこうか今の賃金だつたらやつて行けるのじやないかと思いますが……。
  80. 田村文吉

    田村文吉君 今の賃金は幾らですか。
  81. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 基準賃金は今度二〇%カツトしまして五百二十七円。
  82. 今村国年

    参考人(今村国年君) 月収一万五千円の八〇%ですから一万二千円……。
  83. 田村文吉

    田村文吉君 十四トンなら引合うのですか。
  84. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 十四トンというのは平均で申しますと、大手さんくらいに或る程度機械化しなければ、平均十四トン、十五トンというのは殆んどむずかしいのじやないか、こう考えます。その十四トンまでこぎつけたいと思つて、岩屋鉱に限り去年の七月頃から御相談しまして第一着として機械の合理化それから洗炭の機械化ということで四億ばかり入れましたが、そうなつて来ますと、十二トン、十三トンまでこぎつけられる。そうなつて来ますと、或る程度の炭価が安くなつてもついて行ける、こういう目的で仕事を始めたわけであります。
  85. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 実は只今の問題は田村委員が前から問題にしておられるところですし、やはり田村さんの問題にしておられる点は、反対論は反対論を口でなくて理論的に或る程度はつきりとしたほうがいいと私は思うのです。そこでこれは御相談ですけれども、戦争前の状態における炭価、これは勿論出ると思う。現在の状態に置直して……、それからこういう不況に見舞われる前の時における炭価、生産費、それから今日のように不況になつて来たときの炭価、要するに野放しに売れて行く炭価と、今のように市場がつかえてしまつて一般に生産制限をやつている炭価の値上り、そういつた三つの条件があろうかと思いますから、これについての炭価の一応の比較計算、それからそれぞれそういう推移の理由、こういうものを炭鉱の経営者側も出して頂き、それから労働組合のほうも一つ計算をやつて頂き、役所は役所としてどういう見解を待つているか、これは通産省の主管かも知れませんが出して頂く、こういうような工合にして、もう一度次回にでもはつきりわかるようにしたらどうですか、これは私個人の提案ですが。
  86. 田村文吉

    田村文吉君 非常に結構ですが、ただこの問題は実は石炭だけの問題ではなく、日本のあらゆる産業が今なめておる苦痛なんです。大なり小なり同じような、程度はありますが……。そういう問題について、私どもはこれは根本的に考えなければならんと思う。こういうことが今問題になつておるので、そこで今いろいろ、炭界の大きな業者の三井さんあたりは、私のところに同僚がおられますので、これは大分突込んで聞いておるのですが、今日は折角中小炭鉱の方がおいでになつたのでありますから、中小炭鉱の実情を一つ私は伺いたい。  ただ私が今意外に思つたのは、一人当り十一トンとおつしやる。中小炭鉱などは、私はもう手放してしまつたのですが、小さな炭鉱で、田舎で残つた炭でまだやつておるのが、一日一人十八トンぐらい掘つておるのだが、機械化も何もしていないのですが、働いておるのだが、併し労働基準法も犯していない。状態がいいとおつしやればそうなんだが、十トンや十一トンでは、これはどうしてもありつこはないと思うのだが、そういう点について、三井のように機械化したらできるのだというように簡単な問題ではなくして、もう少し方法がないものかなあということを疑問に思うものですから、ちよつと私は今の中山さんに聞いてみたいと思つたのです。
  87. 阿具根登

    ○阿具根登君 田村先生の御質問に対、しまして、私も関連して質問するのですが、今私の持つておる資料が先生の御質問に合うか合わないかわかりませんけれども、非常に私も自分の経験した問題でもありますし、興味深い問題でもありますから、体験と共に一応お話を申上げて、そして中山さんの御回答をお願いしたいと思うのです。  私も大正十五年に坑内に下つたときは、五十五銭で下りました。御質問の昭和十二年というのは一円十二、三銭だつたと思います。その頃私は坑外でありましたから、坑内はプラス二十銭して頂けば一応おわかりになると思う。そういう給料であつたわけです。そのときは、昭和十二年といえば、私が二十四、五才ですから、その点を含んでお考えになりまして、私が今現場に帰れば一万一千円ぐらいの収入でありますから、約二百五十倍だと見て殆んど間違いない数字だと私は思つております。  で、中小炭鉱の私たちが今度調べましたやつで見ましても、丁度コストが四千円ぐらいのところをとつてみますと、こういうように、区分けしてある。物品費が六百三十一円、労務費が二千二百三十八円、経費が七百四十五円、控除費が五十四円、それから本社費が二百七十円、支払利子が二百十七円、これで大体トンの原価が四千九十三円になるわけです。それからそれに対して給料は一応一人当り平均一万三千円、そして出炭トン数は一人当り八・五トンぐらいです。それで四千円になる。ところがここを今の状態で私たちが労働組合の立場から考えてこれ以上はもう不可能だと、例えば賃金は一五%減らし、そうして標準作業量は一〇%増し、そして余つた人間はやめてもらつて、そうしてもうぎりぎりこれ以上どうしてもできないという、恐らく日本中小炭鉱でも最低かと思うようなところで、その計画が九・六八トンです。このくらいしか今の中小炭鉱では出ないと思うのです。十八トンも出るというところは、私は今度そういうところを一度見せてもらおうと思うのですが、私は見たことはありません。そういう点から取締役さんにお尋ねいたしたいと思うのは、あなたのところは九千トンの計画をされておつたと私は記憶いたしております。そういう場合にどれだけの人員を組んでおられて、一人当り何トンの計画をされて、コスト幾らで、そうして売炭価格が幾らに組んで九千トンを最近事業計画として出されたか、それを一応お尋ねしたいのです。
  88. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 現在の人間が、職員を入れまして九百五十人乃至千人、それで九千トン、それからそのときの炭鉱の生産費が二千八百円、そういうことで一応……、水害の完全復旧ができておりませんので、それがこの十月頃には完全に復旧しますと、又二百人ぐらいが要るのじやないかと思いますけれども、私のほうの理事者も来ておりますが、十一月頃になりますと現在やつております人おろしがなくなりますから、それが二百名ぐらい人間が要らないようになるのであります。そこでその人間を今度現在復旧しておりますほうの仕事場へ持つて行きますから、丁度現在の人間九百五十人乃至千人が当分続けなければ、仕事場の拡張ができるまで続けて行かなくちやしようがないということになつておるわけです。それで少し問題を惹起しておりますけれども、それは今度おいで頂くとよくおわかりになりましようと思いますが、将来はそういうことではいかんと考えております。
  89. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今の、石炭のいわゆる生産原価の問題は、明日通産省が出席せられまするので、そのときに改めてもう一度おやりを願う。只今すぐ通産省の石炭局に連絡をとらせるようにいたしましたから、それまでに資料が間に合えば提出を頂くと、こういうことにいたしまして、準備をいたしますから、一応参考人に対する質疑は一つこの程度で打切つて頂きたいと、こう考えます。
  90. 田村文吉

    田村文吉君 失礼ですが、今会社の理事とおつしやいましたが、会社の理事というのはどういうのですか、重役じやないですか。
  91. 中山亀彦

    参考人(中山亀彦君) 重役ということでございます。   —————————————
  92. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そこで次の議事に移りたいと思いますが、本日予定いたしましたのは、デフレ政策影響と雇用安定に関する件、総合的失業対策に関する件と、けい肺法案に関する件と、この二つの中で、デフレ政策影響と雇用安定に関する件、この問題は主として積極的ないわば失業対策でありますので、明日通産省並びに大蔵省の出席を求めていたしたいと、こう考えおります。大体中心はそういう工合にいたしたいと考えます。総合的な失業対策に関する件は、これは労働省のほうから主として説明を願うと、こういうことになろうかと思います。  先ず労働省のほうから、最初けい肺法案につきまして、十九国会の終りに小坂労働大臣が言明された方針に従つて作業をしておられると思いますが、その進行の工合を一つ中間報告をお願いをいたしたいということが第一点であります。それから第二点は、これは委員の皆さんにちよつとお断りを申上げなければなりませんが、総合的な失業対策に関する件につきまして、七月七日の委員会でありましたか、各省に亘りまして、当労働委員会の強い意向を表明いたしまして、労働省、通産省が中心になつて作業をやつて頂いておりました。新聞にはちらほら出ておりましたが、今日その責任者であられる労働大臣は御出席願えないそうであります。その理由とするところは、陛下が北海道へおいでになりまするので、それに対する責任大臣としていろいろ御多忙のようであります。そういう理由で出られないということでございますので、この点は一つ御了承を願つて労働省の責任ある政府委員のほうから一つ伺うと、こういうことになろうかと思いますので、御了承願いたいと思います。
  93. 吉田法晴

    吉田法晴君 説明を始めてもらうのはいいのですが、労働大臣が労働大臣としてか、それとも警察担当の大臣としてか知りませんが、北海道に天皇陛下に御同行になる、そこで明日については事実問題として出席が願えないとあれば、これは御出席は願えないかも知らんということを午前中に考えたりしたのですが、根本的に問題にすれば、政治的に責任のあられる立場にない、陛下に同行するということで国会に……、それも昨日、今日きめたわけじやない、この前からきめて、今日、明日委員会をやりたい、こういうことなので、而も今デフレ政策のしわ寄せが労働者に参つて労働問題、社会問題というよりも治安問題になつておる。こういう状態の中で総合対策を立てて、委員会に出てもらいたい、こういうことを要請してこの委員会を開いたのに、一時間も三十分も、或いはもつと短くてもとにかくですが、全然出て来られないということについては了承をいたしがたい。委員長は、委員長において適宜取計うと、こういうことでしたが、今の説明で以て私ども納得することができません。どういう手続をとられたか、或いはその理由にいたしましても、納得の行く説明を一つ労働省のほうからしてもらわんことには私ども了承いたしがたいのであります。もう少し具体的に御説明願いたい。
  94. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 実は私、労働大臣にお会いをいたしたわけではありません。労働大臣の秘書官並びに中西労政局長等を煩わしまして、非常に重要な問題であるから限られた時間でも御出席を願いたいということについて再三、私自身の意見も加えましたし、この当委員会で今日御発言になりました意見も加えて出席の要求をしたわけであります。併し秘書官を通じて伝達されたことは、出席できないので一つ悪しからず了承を願いたいということでございました。
  95. 吉田法晴

    吉田法晴君 ただ悪しからず了承願いたいということでは了承できんと、こう言つておるのです。具体的に今日でも一時間できなければ三十分、三十分できなければ何十分でも是非出てもらいたい。私どもわからん話をしておらん。而も明日付いて行くというのは何に付いて行くのか知らんけれども、もう少し労働省から答弁願いたい。国会を放つたらかして何しに行くのですか、鞄持に付いて行くわけではないでしよう。中西労政局長その衝に当られたなら二つ答弁して下さい。
  96. 田村文吉

    田村文吉君 吉田君のお話も御尤もではあるが、只今委員長が言われたように、これ以上その問題を追及したところでどうにもならんのだから、やはり私は時間をセーブして、今のできるだけ一つの質問をし、説明を聴取するということに御進行あらんことをお願いします。
  97. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは進行をいたします。進行をいたしますが、併し労働省からもう少し誠意ある説明と答弁を願いたい。午前中なら午前中は閣議で出られんということは了承したのです。それから明日も来られんだろうと、それじや一時間出られんければ三十分でも幾らでも出てもらいたいと、この前から要望をして、その後努力しておられるところは新聞紙上では多少拝見をいたします。併し文書でここに出ておるものから見ると、例えば昨日閣議において決定なつたということについてももらつちやおらん。これは説明されるのだろうと思う。次官も、政務次官は代られたのかどうか知りませんが、前の次官が挨拶に来られたようでありますが、実際に出ておりません。それなら午後なら午後やり繰りをいたしましたけれども、どうしてもこれだけはつかんという説明があるならば、それは納得しますけれども、一時間でなくても三十分でも二十分でも、出られるだけ出てもらいたいという話に対して、ただ出られんから御了承願いたいと、それだけでは納得ができません。
  98. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 大体私も、新聞に、どんどん中間発表しおられる失業対策の問題は、少くとも我々は、当委員会の七月七日のあの委員会の空気をそのまま尊重して、政府当局がいろいろと作業をして一応の進め方をしておられると理解しております。それについて新聞発表をされておるにかかわらず、今日資料としても何もここへ出されておらない。お持ちになつておれば、大変失礼だけれども、そういう経過も一つ伺わなければならない。特に今日は、大蔵大臣、通産大臣も明日出席の時間をはつきりと約束してもらつた。所管の労働大臣が出席されないということは委員長自身も大変遺憾に思います。
  99. 吉田法晴

    吉田法晴君 付加えて申上げますと、時間の割振りをしたけれども、どうしてもこうこういうことで出られん、それでは折角要望に従つて立てて来た対策はこうこうだと、これは誰それをして答弁させますと、こういう話があるなら別問題です。ただ出られんということで、あと局長さんなり何なりお前行つておけと、これでは労働委員会に対しても国会に対しても責任を尽せるものではないと思う。そうなると随行するのと国会とどつちが大切かと、こう開き直らざるを得ない。
  100. 中西実

    説明員(中西実君) 私直接の関係ではございませんけれども、実はあいにく政務次官も交替の時期に当りまして、実は政務次官がおられれば是非出られることになつておつたのでありますが、そこで今日は午前中大臣閣議へ出ておられまして、前々からそれで午前中は塞がつておるように聞いておりました。ずつと行く先その他は秘書官から詳細は聞いておりません。ただ午後は、昨日会いましたときは、是非今日中に司令部その他との連絡をつけて、今駐留軍で今月の十一日或いは二十二、二十三日にストの計画もしておるようだと、是非これを目鼻をつけたいので向うと交渉したいというので、実はこれには調達庁長官も一緒に行かれたと思いますが、恐らくずつと交渉しておられるのではないかと思います。それでお立ちになる汽車はよく聞いておりませんけれども、夕方の汽車で那須のほうに立たれるというふうに聞いておるのであります。今日の日程いろいろございますが、大体はまあ所管々々で局長がすべて心得ておりまするので、政務次官もおりませんで誠に申訳ございませんが、殊に失業対策の点につきましては所管局長十分に用意しておりますので、御了承願いたいと思います。
  101. 田畑金光

    田畑金光君 今の中西局長のお話も一応わかりますけれども、政務次官の辞令を発令したのは昨日でありましたか、新聞で我々も見たわけでありますけれども、どういうわけで佐々木盛雄新労働政務次官が本日こちらに出席していないのか、この点一つ中西局長御存じであるならお聞かせ願いたいと思います。
  102. 中西実

    説明員(中西実君) 実は昨日発令になりまして、今日引継ぎの行事もあるかと思つてつたのでありますが、前からの予定があつたのでございましよう。今日から、これも詳細聞いておりませんが、旅行に出られたようでございます。今週一ぱい、恐らく来週の月曜日には出ると、私も実はまだお会いしていないのでございますが、来週の月曜日には帰つて来るからと、こういうことで出掛けられたようでございます。で今日実は見えられないという事情のようでございます。
  103. 吉田法晴

    吉田法晴君 佐々木さんは就任されたばかりで、実際問題として、ここに来て読み上げるのならばとにかくとしても、質問に立つということはなかなかむずかしいでしよう。併しそれにしても福島さんは昼から駐留軍の折衝があるということをおつしやつた。それから大臣も一緒に行かれるということも我々は承知しております。併し午前中、とにかく十二時には行かなければならんということでしたが、半或いは四十分と、こういうことで、一時までに行かなければならんということで最大限におつとめになつた。ところが出られんというだけで、それでは何時から何時まで駐留軍のほうの関係があるから、それから先これだけしか出られんということで出て来られるなら、その誠意は認めます。併し私が言うように、とにかく労働委員会なら労働委員会に行つて説明をするという資料、或いは大臣の答弁というか、そういうものも用意なさらず、或いは次官にそれを代りとしてやらせるという誠意もないし、或いは二十分にしても三十分にしても、たとえ十分にしても、これだけしかないからという御誠意もないなら、明日は通産大臣或いは大蔵大臣が出て来られるというのでしよう。問題は労働問題から出発しているわけですが、私は他の省の大臣に対しても、労働大臣としてはそれはやはりつとめに欠けるところがあるのじやないか、問題は誠意の点を申上げているわけです。ただおれは行かないと言うておけばそれで済む、あとは君ら適当にやれ、これでは我々はやはり誠意を認めがたい。
  104. 田村文吉

    田村文吉君 今の吉田君の御発言も御尤もだと思います。僕も又政務次官に対し、昨日発令を受けたならば、今日は労働委員会があるといえば、何をおいても来て、挨拶だけでもされて、然る後に旅行に出られるのが筋道である。それを政務次官というものは何も大したものじやないというふうに考えて、旅行の先約があるからと言つて出掛けられたということに私は遺憾の意を表します。だからそういう点もありますが、今日はもう四時になる、折角失業対策についていろいろ今日はお見えになつて質疑をするというのですが、まあそういうことのために論議を長く取るということを差控えて説明を伺おうじやありませんか。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  105. 田畑金光

    田畑金光君 まあ私も結論としては田村委員のお話のように落着かざるを得んけれども、併し労働大臣の十九国会から当委員会への出席簿を見たとき非常に遺憾に堪えない、こういう感じを持つわけであります。この間の労働委員会の際においても、我々として十分に労働大臣に対して賛同し、政府の方針を問い質したかつたのだけれども、これすらもいろんな用事にかこつけられて十分に意を尽すことができなかつたわけです。殊に今回は当面の失業対策も考えたときに、政府も各局等を通じ再々方針等を明らかにしておるから、今回の委員会には労働大臣の出席があるものと期待していたにもかかわらずこういう始末になつておるわけなんです。勿論労働省の三局長が出席しておられるからには、その所管部門に関する答弁については遺憾はないと思うけれども、併し私たちは現内閣の労働政策について方針を尋ねたいと思つてつておるわけなんです。肝腎の労働大臣が朝から顔を見せないということは不遜極まる態度だと申上げたいのです。吉田と同じような恰好をして、労働大臣が委員会等を軽視するということは許すべからざる不遜な態度だと思うのです。これは同じ考え方なんです、
  106. 田村文吉

    田村文吉君 遺憾の意を表しつつ聞こうじやないですか。進行進行。
  107. 田畑金光

    田畑金光君 そこで我々といたしましてはこの点は適当な機会に徹底的に追及しなくちやならんと、こう思うのだが、三局長に私はお尋ねしたいのですが、恐らく局長としてもそれぞれの担当行政については労働大臣の補佐役だと私は見ておるわけなんです。或いは筆頭局長は中西さんかも知れませんが、そういう点においてはもう少し局長としても労働委員会の権威というものを考えられるならば、大臣に対しても強く忠告して然るべきだと私は考えるわけなんです。今朝ほど来の様子を見ておると、大臣が出席しなければ止むを得んじやないか、何かしらんこういうような態度と空気が見受けられるか、非常に私は許すべからざるこれはあり方だ、こう思うのです。いない者をつかまえて幾ら論議してものれんに腕押しの感じを免れないのでありますけれども、併し局長としてはもう少しこれは助言、或いは大臣に対する強い要請等をなされて、労働委員会の機能を十分に全うするように御協力が願いたい、こう考えるわけなんです。この点についてどうですか、亀井局長、大変さつきから御意見おありのようだが、一つ中西局長、亀井局長に御意見を承わつておきたい。
  108. 中西実

    説明員(中西実君) 午前中からのお話もございましたので十分事情を伝えておきます。大臣もよく心得ての上でほうぼうにお歩きのことと思うのでありまして、小坂大臣の日頃のお人柄からいいまして、国会軽視というようなことは私は到底思つておられないというように考えるのであります。よく伝えまして、御趣旨のほどは申上げておきますですが、どうか今日のところは一つ大臣にそういうお気持のないことを御推察頂きまして、只今担当の局長から御答弁をお聞き願いたいと思います。
  109. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  110. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。  それでは政府当局から説明を聞くことにいたします。
  111. 亀井光

    説明員(亀井光君) けい肺対策につきましては、去る第十九国会における当委員会におきまして政府に対する御要望もございましたし、又それに対する大臣の御答弁もございましたことは御承知通りでございます。我々といたしましてもできるだけ只今なつて、おりまするけい肺対策審議会の審議を促進することに努めております。而してこの審議会の審議におきまして結論を得がたいというふうな場合も考慮いたしまして、政府としましても検討をいたしておるような段階でございまして、まだ結論を得ていないのでございます。
  112. 田村文吉

    田村文吉君 審議会というのはその後開かれたのですか。
  113. 亀井光

    説明員(亀井光君) 審議会はその後十九国会後におきましては六月十二日に開きました。これは総会でございます。それでこれは改選後の最初の総会でございまして、従来の審議会におきまして御承知のように四つの部会を設けまして検討して参りました審議の方式を再確認をいたしまして、将来もこの四つの部会におきまして検討を進めることが議決されたわけであります。従いまして現段階におきまするこの四つの部会の現況を申上げますと、粉塵の恕限度の部会、それから診断の部会、これは大体結論が近く出るのでございます。一番やはり問題のございまするのが厚生対策部会でございまするが、これはお手許の資料にございまするような資料の項目につきまして目下調査をいたしておるのでございます。この調査と並行的に厚生部会としての結論、即ち補償を中心としてのけい肺対策というものをどういうふうに結論付けるかということが審議されております。
  114. 吉田法晴

    吉田法晴君 今多少補足されたのですが、最初の御答弁といいますか、報告は木で鼻をくくつたような、けい肺対策審議会をやつております、こういう御答弁であつた。まさに労働大臣の態度そのままでしたが、(笑声)例えば診断関係或いは粉塵関係については大体結論に到達しました。それで厚生対策関係が一番問題であつたでしようが、それがまだ結論が出ておりません。ここまでは報告として聞いたのです。なかなかこの報告によつても結論が出かねるだろう。十九国会のお話は、結論が出ないときも考えて、結論が出ないとしても十九国会には案を具し、予算を付して、三十年度の予算、或いは次の国会には案を出したい、こういうことだつたのですから、それじや厚生部会がいつ頃まで結論が出ないならこうこうこうするつもりだ、こういう点まで言つてもらわなければ、先ほど申上げましたような木で鼻をくくつたような答弁になるのですが、その点はどうですか、併せて一つ御答弁願いたい。
  115. 亀井光

    説明員(亀井光君) 我々の現在のスケジユールから申上げますと、予算の折衝が十月から始まるわけでございます。従いまして厚生対策部会の結論もできまするならばそれまでに得たいというふうに思つております。併しそれまでに結論を得ませんければ、政府政府としての考え方をまとめて結論を得なければならんのじやないかというふうに考えております。
  116. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちよつとそれに関連した問題ですけれども、けい肺診断が認定されるのは八カ月から一年半、長いのは二年以上になつて、すでに切れる間際までわからんというようなことが非常に多いのですが、どういうような径路をとつて現在やつておられるのですか。
  117. 亀井光

    説明員(亀井光君) けい肺の診断につきましては、御承知のようにこの病気に対しまする専門家が非常に我が国で少いために、すべて中央におきましてこの審査を従来やつて来たわけであります。その後けい肺の問題が社会的に大きな問題となりましてからは、各地におきましてけい肺に対しまする研究が進んで参りまして、現在におきましては北海道、仙台或いは栃木県或いは東京、神奈川、関西、九州というふうに、それぞれ労災病院のございまする地域を主体としまして、それぞれの地方にこの診断を任しておるわけであります。従いまして最近におきましてはそう遅いという問題はないと思います。過去におきましては中央で一括やつておりましたために、そういう事案もあつたかと思います。
  118. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと職業安定局長に伺いますが、今日我々はあの閣議決定をされたその内容についてもつと詳しい資料が、これは私ども新聞で大体承知しておるのですが、資料が手許に配付せられた、七月七日の委員会の要請に応えられるものだと私も思つてつたのですが、そういうものは何もないのですけれども、それについて先ず最初に伺つておきたいと思います。
  119. 江下孝

    説明員(江下孝君) 資料といたしまして本日提出いたしておりますのは、「最近における雇用失業情勢」、それから、「失業保険事業収支状況」、「失業保険金初回受給者男女別数」、それから「離職者の男女別離職事由別割合」というものでございます。なおこのほかに委員会から実は具体的に御要望がございましたので、私どもといたしましてもできるだけ資料をと思いましてやつて参りましたけれども、折角の御希望通りの資料が実は本日までできなかつたものでございますから、一応本日はこの三つの資料を提出したわけでございます。
  120. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと私お断りしておきます。今何も閣議決定以外に資料がないと申上げたのは、私のところに配達漏れになつていたようでございまして、あることを承知いたしました。
  121. 江下孝

    説明員(江下孝君) 先回の労働委員会におきまして、最近におきまする雇用、失業の概況を申上げましたが、そのうち特に失業保険関係につきまして、なお本日は詳しく御説明をいたしたいと思つております。  失業保険につきましては、一月から離職者が殖えまして、それに伴いまして受給者の数もぐんと殖えたわけでございます。本年の一月に受給者の人員が四十一万七千でございましたが、この五月には四十四万、ここには出ておりませんが、ほぼ六月分も推計ができておりますが、四十五万五千程度の数になつております。この数字は現在のところ減るという見通しはございませんで、今後もずつとこの数字は高い調子を続けて行くだろうという見通しでございます。そこで、それにつきまして失業保険関係の収支関係がどうなつておるかということでございます。お手許に差上げております失業保険事業収支状況という二枚紙のものがございますが、これをちよつと御覧を願いたいと思います。  先ず一般失業保険でございますが、昭和二十七年、八年、九年の五月までの収支状況を第一表に出しておるのでございます。これによつて御覧になりますと、一番左の欄が適用事業所の数でございます。これが今年の五月には二十三万四千、適用事業所の数はずつと毎月殖えて参つております。被保険者の数もこれに伴いまして増大いたしまして、五月には七百八十二万八千人という数になつております。保険料の収納済額でございますが、これはいわゆる保険金の三分の二に当る額でございます。あと三分の一は国で支出いたします。三分の二に当る額でございますが、これが十五億九千六百二十四万八千円、大よそ十六億程度のものが毎月収納されておるわけでございます。次に離職票の受付件数と申しますのは、これは事業主の解雇をいたします場合に、前以て安定所に申請をいたしまして、離職票というものを交付を受けるわけでございます。これによつて離職する者にこれを渡しまして、いろいろ書込ませまして、これを離職者が安定所に持つて行くというこの離職票でございますが、これが御覧の通りずつと高い数字になりまして、本年の四月に十万を突破いたしましたが、五月にはちよつと減りましたが、やはり九万九千という非常に高い数字を示しております。初回受給者数、これはその月ごとに新らしく失業保険金をもらうことになつた人でございます。全体の四十何万のうちで、この五月には八万七千というのが新らしく失業保険金をもらう数に入つた人たちでございます。受給者の実人員は、先ほど申上げましたように、五月は四十四万という数字に相成つております。そこで保険金の給付総額でございますが、五月は二十四億四千三十八万九千九百に相成つております。前月、前々月に比べますと支給額はやや減つておりますが、これは単価が比較的低い、安い賃金の人が多く給付をもらうということになつた結果だと思つております。  これが一般保険の給付状況でございますが、二枚目に日雇のほうの失業保険料でありますが、これは相当大きな波がございます。いわゆる就労日数というものとの関連におきまして相当大きな変動がございますが、被保険者数はこれは若干殖えておりますが、余り大きな動きはないというわけでございます。収納済額も殆んど、五月ははつきり出ておりませんが、四月までは五千四百六十一万円ということになつております。初回受給者数十万九千、給付の延日数五十八万五千日、平均受給日数が五・三、保険金の給付総額がここで八千六十九万と相成つております。  そこでこの予算との関連でございますが、給付総額が、五月を押えますと、一般で二十四億四千三十八万円、日雇で八千六十九万円でございますので、これを合計いたしますと二十五億二千万という数字に相成つておりますが、予算は御承知通り年間二百七十三億、これを月に割りますと、二十二億程度になります。三億乃至四億超過をいたしておりますが、御承知通り失業保険特別会計に予備金を三十五億持つておりますので、これを加えますと三百五億、月に割りますと二十五億ちよつとということになります。そこで現在の特別会計におきましても、殆んどそれがぎりぎり或いはやや赤字という結果に相成つております。  そこで今後の状況でございますが、先ほど申上げましたように、今後この支給金額はそう大きく減るということはとても予想できないわけでございます。そういたしますと、結局補正の問題があるわけでございますが、あれは特別会計でございまして、御承知通り当年度におきまして政府負担の三分の一が赤字を示したといいます場合には、法律によりまして、翌々年度までにこれを補てんするということに相成つておりまして、必ずしも当年度に云々という問題は起きないわけでございます。その間どういたしますかと申しますと、失業保険の特別会計に現在失業保険の積立金が約二百六十億ございます。これを一部特別会計に繰入れまして、そうして保険金の給付に当てるわけでございます。そこでこれから少々失業保険金の支給が増額いたしましても、本年度におきまして失業保険金の支給に支障を来たすということは、これは絶対にないということを申上げたいのでございます。  次に、実は話が前後して恐縮でございますが、先ほど委員長からもお話がございました全般の失業対策の構想でございます。これにつきましては前回の当委員会におきましても強い御要望がございまして、私どもといたしましても、鋭意この対策に苦慮いたして参つたのでございます。現在のところ雇用情勢もだんだん悪化して来つつありまするので、いろいろ新らしい施策ということを考えて行かなければならないというふうに考えておりますが、実はこのデフレ政策というものが強く行われますと、どうしてもそのしわ寄せが雇用面に行われるという現状でございます。そこでただ失業者が出ましたあと失業対策をやるというだけではこれはどうも失業対策としても余り上等の対策ではないわけであります。で私どもといたしましては、できるだけ失業者も出さないで、このデフレ政策を切り抜けるということが一番望ましいのでございますが、併しどうしてもやはり失業者が一部発生するということはこれは避けられないことであると思つております。ただこの失業者が出ますということにつきましても、ひとりその対策について、出ました労働者のいろいろと斡旋その他ということをやりますにいたしましても、どうしてもこう深刻になつて参りますと労働省だけの力でこれをやるというよりは、やはり事業の実施或いは産業官庁というものと緊密に連絡をいたしまして、この失業情勢の動きと或る程度即応いたしました産業政策もやはりお考え願わなければならんということも私ども考えまして、で、取りあえず関係各省集りまして、今後の労働問題、特に失業対策の問題につきましては各省の一つ担当者を以ちまして、終始連絡調整をいたします協議機関を設置したいということにいたしまして、先般経済審議庁に労働対策連絡協議会を設置いたしたのでございます。これに関与いたしまする省は殆んど各省でございますが、やはり労働省、審議庁、通産省あたりが主管の官庁になるわけでございます。  そこで先ずこの協議会におきまして、今後労働問題、特に失業対策の問題を如何に取扱つて行くかということにつきましていろいろ審議をいたしたのでございますが、私どもといたしましては前々実は申上げておりまする通り、できるだけ最小の犠牲を以て失業対策を実施して行く、つまり最も効率的な失業対策を実施する必要があるという考え方でこの審議会を考えて頂く。そこで先ず一番先にこの審議会で取上げましたのがいわゆる公共事業に対する問題でございます。公共事業は、御承知通り現在千六百億程度の国庫補助金を以ちまして全国各地で行われている事業でございますが、予算的に、この予算の金額から推計いたしましても、公共事業に吸収されております労務者は約八十万人程度あるのではないかというふうに考えております。そこで御承知と思いまするが、私どもの法律で緊急失業対策法という法律がございまして、この法律によりますと、公共事業に就労する労務者は一定率以上は公共職業安定所の紹介する失業者でなくてはならないということがはつきり法的に規定されているのでございまして、一定率と申しますのは、都市地域或いは農村地域等によつて率が違いますので、手打ち労務者は別でございますが、平均いたしまして約三〇%になりますが、三〇%というものは公共職業安定所の紹介をする失業者でなくてはならんというはつきりした原則がきまつているわけでございます。で、今日までまあ関係各省と絶えずこの線について実効を確保するようにやつてつたのでございますが、非常に遺憾なことには、この公共事業への吸収率が非常に悪いのでございます。で現在までのところ約八十万人程度はあると推定いたされます就労者のうち、安定所のほうで紹介いたしました方の数は僅か五万程度しか把握されてないのでございます。そこでどういう事情でこういう悪い成績になつておるかということでございますが、これについてはもう理由もすべて実ははつきりいたしておるのでございます。で今回私どものほうでこの公共事業による吸収率の強化乃至励行ということについて、特に政府全体の考え方をまとめて打出しましたのは、実はこれについて一番問題となりますのは、この公共事業を実施いたします事業実施官庁乃至は出先の府県知事、或いは農林省、建設省あたりの出先の事業実施担当者というものが、まあやはりこの失業問題に最も関心を持つようにするということが大事でございます。で只今までは、恥を申上げるようでございますが、どうもこの公共事業の運営ということが、どうしても事業強化一点張りになりまして、まあ失業者吸収という面では必ずしも各省の協力が得られなかつたのでございます。でこの点を先ずはつきり確認させるということが今回の措置の一番大きな眼目でございます。  で、いま一つは、公共事業に就労させます際のいろいろな隘路がございます。例えば公共事業というものは大体におきまして農山村地方において行われることが多いわけでございますが、失業者の密集しております都市より離れていることが多いのでございます。従つて労務者の移動をどういうふうにやるかというような問題が一つございます。更にこの都市の失業者を直ちに公共事業に入れましても、これはなかなか現実の場合そううまく行くものではないのでございまして、やはりこの労務者を或る程度事前に、精神的肉体的に適応させるよう訓練もいたさなければならんという点がございます。或いは日雇労働者失業対策事業就労者等が公共事業に就労いたしますと賃金が月払いになりますので、その間の生活の保障がなかなか得られない。こういつた諸種の事情があつたために、従来公共事業への失業者の吸収が十分でなかつたのでございます。で、それらの点につきまして、すべてこの今回決定いたしました方針の中に盛込みまして、関係各省の了承を得て、今後各省一体となつて公共事業への失業者の吸収を図つて行くということにいたしましたのが、先ほどお手許に配りました「公共事業等による失業者吸収措置の強化について」でございます。で先ほど申上げました点がすべてあるわけでございますが、特に一の「公共事業」の2でございますが、「公共事業の施行地域を、事業効果を害しない限度において、できる限り、失業者が多数発生する地域に即応せしめるよう配慮すること。」、これは実は非常に各省からも強いこれに対する意見が出たわけでございますが、これを今後やらなければ、この公共事業の失業者吸収措置の強化は画龍点睛を欠くということで、この点について強く労働省といたしましての主張をいたしまして、この文言を入れてもらつたのでございます。  なおこの失業者をできるだけ吸収いたすということにいたしましても、例えば現在の吸収率のきめ方が、殆んど各事業種目別に一律でございまして、必ずしも実態に即していないという点もございますので、こういう点については検討をして、その代り実態に即するような率に変える代りにこれが励行を期するということにいたしたのでございます。でこの点で問題になりますのは、御承知通りの地元労務との関係でございます。これは勿論事業の種類その他によりましては、地元労務も斡旋するということが適切な場合もあるわけでございますので、一概には言えないのでございますが、併し最も救済の程度の高い失業者を先ず優先的に斡旋して行くというこの方針はこの二つによつて決定されておるのでございますので、今後はこれらの点を考えまして、特に公共事業への配置転換を強力に進めたいと考えておるのでございます。  次にこの大きな二というところに書いてございますが、今まで申上げましたのは主として公共事業の問題でございましたが、公共事業以外でございましても、例えば電源開発事業というようなものは財政投融資の事業でございまして、これらは公共事業とは言えませんけれども、やはりこれらの事業、或るいは地方公共団体が単独の起債を以て、行なつておりますダムの建設事業といつたようなものも当然公共事業に準じた扱いをいたさなければなりませんので、この点についても公共事業の例に準じ失業者の吸収の措置を図るということで、強力にこれらの事業についても失業者の吸収措置を実施するということにいたしたのであります。で当然の措置といたしまして、いわゆる失業対策事業というものにつきましては、公共事業による失業者の吸収状況を勘案いたしまして、機動的な且つ重点的な運営を図り、併せて能率の増大を図るということをきめたのでございます。  そこでまあこの実施でございます。どの程度これによつて成果が上るだろうかということでございます。で現在のところ一つの目標というものは持つておりまするけれども、この目標を達成いたしますには相当強く関係者が協力いたしませんとなかなか実行できない点がございますので、私どもといたしましては今この強化の方策の細目につきまして関係省と急いで打合せをいたしまして、来週それを決定いたしまして地方に通達をするということにいたしておるのでございます。以上が労働対策連絡協議会におきまして初めて決定をいたしました政策、失業対策でございます。  でなお、先ほど石炭の問題が出ておりましたが、当然石炭労務者の問題もこの公共事業による失業者吸収率の強化に伴いまして、今後公共事業方面への斡旋も強化されると思うのでございますが、なおこれは余計なことでございますが、この協議会におきまして、この次から石炭の労務者失業対策問題を取上げることにいたしております。すでに一案が提出されております。これにつきましては通産省所管のことではございますけれども労働省といたましても側面から強力に推進いたしておる点でございます。  一応説明はこの程度にとどめまして、あとで又……。
  122. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと御報告申上げますが、只今労働大臣から出席を急にするというお話がございましたから、暫くお待ちを願いたいと思います。那須へ行く汽車に乗るまでと、こういうことでございます。
  123. 江下孝

    説明員(江下孝君) 話が前後いたしましたが、操業短縮に伴う一時帰休制度に関する計画につきまして概要御説明をいたしたいと思います。  ここにプリントに書いております点を或る程度読みながら説明を加えて参りたいと思います。御承知のように昨年暮からの企業整備によりまして一時に大量の失業者の発生、これに伴います労使の紛争をできるだけ避けるために、失業保険制度の運用によります帰休制度を採出いたしまして、これによつて雇用の安定を図るというのが狙いでございます。一時帰休制度の失業保険の対象となる要件でございますが、経営不振、操業短縮等による企業整備の避けがたい事業、これが一つの要件でございます。いま一つは、右の企業整備によつて一時に大量の解雇者を生じ社会不安の発生が予想がせられるものであるという、いわゆる公益性の強いものをこれで考えているのであります。三は、一時帰休制度を実施することにより企業の円滑なる運営が確保され一時帰休者を再吸収ができる途の確実な事業であること、これは当然でございまして、再吸収できないというようなことでございますれば一般失業保険ということになりまして、特別にこの帰休制度による必要ないのでございます。次に一時帰休制度を実施しようとする事業は一時帰休に関する労働協約を締結する、これもいろいろ帰休後の条件等がございますので、労使による労働協約を結んで行くということを前提といたしております。次に、事業主は一時帰休者に対し失業保険の給付対象となる期間手当その他の給与支給することができない、これも当然でございまして、一時帰休とはいえ失業保険でございますので離職という形をとるわけでございます。従つてその他の給与を会社側で支給するということは当然ないわけでございます。それから失業保険料が完全納付されていることを条件にいたしております。  実施の要領、一、二、三まで説明をいたしたいと思いますが、一時帰休をする労働者は再雇用を約する一時離職の取扱いとし、失業保険の対象とする。つまり一時離職でございます。必ず再雇用を約するという条件がここに付いているのでございます。帰休期間はおおむね三カ月とし、帰休終了後六カ月以上再雇用するものであること、おおむね三カ月といたしましたのは別にはつきりした基準があるわけでもございませんが、ただ六カ月の期間ということになりますと、これは失業保険の満度まで行くわけでございます。さりとて一カ月というような短い帰休期間というのも如何かと存じまして、その中をとりまして三カ月と……、勿論失業保険全体の保険経済の見地からもこの点については三カ月という線をとつたわけでございます。帰休終了後六カ月以上再雇用するものである、この条件を付けましたのは、仮に再雇用されましたあとで又、整理されるということではこの帰休制度が十分活きて参りません。どうしても六カ月というものは再雇用されるということでなくては、その後において離職した場合に失業保険金がもらえないはずでございますので、この点については労働者保険の見地から特に加えたのでございます。  そこでこれがまあ帰休制度の要領でございますが、これを考えました原因は、御承知通り現在の不景気の経済の下におきまして、事業主が非常に経済上困つておりまして、現実に労働者の賃金も払えない。一方におきまして、労務者のほうから見ますと、貸金がもらえないために非常に生活が困つておる。この際一時労務者に対する賃金等を失業保険金制度によりまして振替えいたしまして、その点について或る程度経済上の緩和が得られますれば、更に一定の月日がたちましたあとには再建できるというような企業が相当あるわけでございます。で、失業保険制度というものは、本来必ずしもこういう事態を予想して制定されたものであるとは思いませんけれども、併し現在のような事態に対処しまして、この失業保険制度をこの場合に活用して行くということは、危急の際の措置として私どもは是認されるべきものであるというふうに考えております。現在までのところこの帰休制度によります失業保険金の支給順はまだそう多くは参つておりませんが、何しろ条件も付いておりませんので、今いろいろと労使間におきましてこの点について検討中のようでございます。恐らく近い機会には相当多くの帰休制度による申請が出て参るであろうというふうに私どもは予想をいたしておるのでございます。
  124. 田村文吉

    田村文吉君 ちよつと順次お尋ねしたいのですが、今の帰休制度ですね、これは仮に三カ月たつたあと解雇した場合にはあとの三カ月分は失業保険の対象にはならないのですか、そういう意味に考えて、よろしいのですか。
  125. 江下孝

    説明員(江下孝君) さようでございます。
  126. 田村文吉

    田村文吉君 それから失業者の出る場所と使う場所が離れておることが調整に非常に困るということが、一番お困りになつておる状況じやないかと思うのですが、それは公共事業は殆んど全部請負仕事が多いんじややいですか。請負業者が幸いに職業安定所というものを通して失業者を吸収してくれりやいいんだが、一番能率的に安く上げなきやならんという考え方から持つて行くと、そういう人は使いたがらないというのが当然だと思う。当然であるとすると、なかなかそういうことで以て調整をおとりになろうとしても事実できんのじやないかと思う。例えば或る府県に、ブロツクブロツクに、ここはこの道路を作る、ここはこの橋梁を作る、そこの土地は請負制度によらずして、工賃が高く付いてもしようがないから、労働者を吸収するためにやる、こうおつしやるならそういうものはできるけれども、それじや今日財政多端の折からなかなかそう金は出ませんということになるので、誠にお考えはいいのだが、その調整方法というものはなかなかつかんのじやないかと思う。これが非常な悩みじやないかと思うのですが、これはまあ大臣に一つお伺いするのですが、そういう点は作文の上から言えば非常に結構な作文なんだが、事実問題としては、そういう労働者を請負業者は使いたがらない。だから発生する場所とそれから使う人間とその性質自体がなかなかマツチしない。こういう問題をどういうふうにして公共事業に吸収されるのか、その点が一つ伺いたいのであります。
  127. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 誠に御尤もな点だと思います。私どももそういう点を非常に懸念はいたしておるのであります。併し今までの公共事業、失業対策事業というものは、各省のセクシヨナリズムということで言われるかも知れませんけれども、何といたしましても、実施の方が違うということでうまく連絡がつかない。やはり仕事の性質が、失業対策業におきましても、道路を直したり或いは鋪装したりしておるものですから、相当似通つたものもある。そうすればその間にもう少し有機的な組合せを考えて行つてはどうかというのでございます。或る場所におきまして非常に公共事業のために人員を補充しておる、すぐそこから幾らも離れない町で失業対事業をやつておるというようなことで、国民の税金をあずかる政府としてもう少しその間に連絡をとらして有効に組合せをしてみる必要があるのではないかというふうに考えますので、それにつきまして、やはりその間の輸送がないためにそういうふうになつておるとか、或いは距離は五里ぐらいのところをやつてつても、その間はトラツクで以て通わせるようにすればもう少し吸収してもらえるじやないか、そういうものについては実際調べてそういうことがあるとすれば、そういう方法を実施してみたらどうかというのでございます。各県知事におきまして自分の管下でどれくらいどこで公共事業をやつている、ここでこういう失業対策業を行なつているという実態をもう少ししつかり睨んで頂いて、実態を把握して頂くところからそういつた組合せの問題がもう少し出て来るのではないかと思うのであります。  もう一つ、失業対策事業というものは、どういう肉体的条件を持つた人も大体似たような形で仕事を与えられ、割振られておるわけですね。これをもう少し、相当に失対事業に従事しておる者もおるのですから、その人々の特徴によつてもう少し整理しまして、そうして願わくば班別みたいにして、この班はこういう仕事をやるということにきまつてしまえば、毎日職安へ参りましてカードをもらう、その間の時間も非常に不経済でございますし、その間の待つておる時間、交通に費す労力、そういうものも相当のものでありますから、もう少しその間にけじめをつけてみたらどうか。それから今お話のような公共事業と言つても、失業対策事業に従事しておる人がなかなかやり得ない面が多いじやないかという点はその通りでございまするが、そういたしますれば、少し失業者の側においても、その肉体的な条件等をいろいろ見まして、或る程度の講習といいますか、そうした公共事業の行い得るような基礎的な訓練に与えるという方法をとつてみますれば、やはりその面から公共事業に喜んで向つてもらう人もいるじやないかと、そういうものも少しずつ国全体で以て統合してみますると、相当にまだまだ公共事業へ吸収して頂くものがありはしないか、こういう考え方が一つの狙いでございます。  それからなお場所等につきましても、すでに今年の事業計画はきまつておりまするが、まあにわかに場所は変更するということはなかなか困難でございまするが、併し今後の問題につきましては、又今までの未着手のものにつきましては、できる限り失業者の発生する場所とも睨み合せて公共事業を運営するように気を配つてもらいましたならば、ここに相当期待できる、そんなような気持でおります。
  128. 田村文吉

    田村文吉君 問題は、道路であるとか発電所であるとかいうように、なかなかそういうのは請負でやつているものだから、そんな能率の悪いものは使わないということが一番癌になるじやないか。結局今使われるのは農地改良とか、そういつたような方面に短期に訓練でもして、そういうものに、政府の公務員でなくて、臨時雇でも何でもしてお使いになるならば、或る程度の吸収ができるかも知れない。今のようにすべて職安で以て人を供給するというような限りにおいてはなかなか請負者が使いたがらないということに非常に難点があるのであります。こういうことを思うのですがね。いや作文は結構だし、大臣の理想は結構なんたが、実際問題としてなかなかそう行かないので、これはもう少し考えて頂きたい。それには大体失礼ですが、あれは失業者というものは五大都市とそれから府県に分けてどのくらいの割になつておりますか。
  129. 江下孝

    説明員(江下孝君) 約四割から四割五分程度でございます。
  130. 田村文吉

    田村文吉君 そこに大きな難点が私はあると思うのです。そういうような人で、いわゆる都会のインテリくずれみたいな者に発電所へ行けどこへ行けと言つても行きやしない、そこに非常に大きな困難があると思う。私はそこでこの前にも大臣にちよつと申上げたのだが、職安だけでいいか、職安以外にも何かそういうものを紹介するものがあつても、失業の多いときには止むを得ないのじやないか、こういうことを申上げておるが、これば別にお考えになつてもおらんようですが、そういうことを考えるあれでもありませんか。
  131. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) その点も別にこの面では出て来ておりませんが、十分考えさして頂きたいと考えております。差当り今お話が出ましたように六大都市し非常に失業者が増大しておる。殊に東京に集まつておる傾向がおる。そこで六大都市におきましては、職安の出張所のようなものを設けまして、窓口をもつと広くしようじやないかということで二十カ所を予定しております。この点九月頃を目途といたしまして早急に整備をいたしたいと考えております。
  132. 田村文吉

    田村文吉君 まだお伺いしたいことがありますけれども、ほかの委員もあるようですから私は暫らく……。
  133. 井上清一

    ○井上清一君 今御意見が出ました都市の失業者を地方の公共事業に吸収するという問題で、私はいろいろ実務をやつておりますときに痛感しました問題であり、一番大きな難点は、移動させることはできるのだけれども、移動する施設が現在の失対事業では考えられていないという点が非常に欠点だと思うのです。ですからそういう点で今度一つ、失業者なかなか動きたがらない、とにかくキヤンプを作るとか或いは特殊のいろいろな施設をしてやつて、公共事業が主として行われているのは、やはり都心から離れた所が多いものですから、そういう点で一番難点がある。ですからこの点十分一つ御研究を頂きたい。  それから昭和六年、七年、八年、九年にかけて、失業対策事業のときは、比較的失業者を多く吸収して、公共事業等非常に多くの復興の工事がなされた。今の東京周辺の循環線は失対事業でやつたのです。あの当時吸収率のよかつたのは先ほど田村さんから御指摘になりましたように、相当直営工事で強制的に四〇%なり五〇%なりというものを失業者を使つたのです。それでかなり、そういう方策をやはりもう少し他の官庁と連絡をおとりになつて、若しできれば労働省直営の工事でおやりになるという点にまで私はおやりになつたほうが効果的じやないか。あの当時は内務省の社会局で失対事業というものをとにかく主管して、工事の設計その他はまあ何だけれども、工場監督をやつたりいろいろなことをやるのも社会局並びに各府県の社会課で以てやつて、相当私は効果が上つたと思うのですが、あの当時の記録をお調べになつて、もうちよつと公共事業と失対事業というものを密接に関連を持たして運営してやつて頂いたほうが効果があるし、今度はそういう狙いで以てこの御計画をなすつたのだろうと思いますが、この計画を一つ大いに推進して頂きたい、こういうふうに私は思います。
  134. 吉田法晴

    吉田法晴君 実は労働大臣出て来られないので、多少注文を申上げておつた。これはまあ委員長からもあとからお話がございましようから、この点は私は触れません。ただこの前の委員会なりその後当面のデフレ政策による労働問題が労働問題でなくて治安問題にまでなろうとしておる、こういう状態に対して総合対策を立ててもらいたい。その後帰休制度なり或いは公共事業に関する閣議決定等が出たことも私ども新聞で承知をしておりますが、これらの点も労働大臣から実は新聞の発表以上に労働委員会としては承わりたい、こう思つてつたのですが、午前中の場合には閣議決定の分の資料も出て来ないで、閣議決定そのまま出て来たのですが、それ以上の説明は今質疑をやつておる途上で、その他の総合対策については私どもまだ承わることができないので、労働省に或いは大臣に不満を申上げておつたわけです。そこで閣議決定の点は、まあ細かい点は局長等に承わつて参りますが、これを含みます労働対策について一つ大臣からこの際承わりたいと思います。例えば失業者が殖えておる、或いは賃金遅欠配が生じておる、或いは炭鉱においても金券等が出て来ておる、そしてだんだん、これは或いは特定の産業或いは地方かも知れませんけれども、治安問題にまでなろうとしておるという点は、これは労働省もお認めになつておるだろうと思います。それに対して帰休制度の発表がこの前からありましたけれども、実際にはまだ殆んど申出は今のところない。それから公共事業による失業者の吸収措置の強化という閣議決定があつても、これはこれから……、それについて只今いろいろ質疑があつたような隘路等もあるでしよう。そもそも四十万と言われる顕在失業者がどんどん殖えて、或いは賃金の遅欠配、これが全国で言うと十五億も越すと先に言われておる、これに対してどうするか、或いは又今殖えつつある失業者或いは雇用を失おうとする或いは生活を破壊されつつある労働者についてどうするか、そうして全般的な雇用計画、これは産業政策に関連して先ほど所管局長も言われましたけれども、炭鉱、鉄鋼、造船、これらのものについては私が申上げるまでもなく労働大臣も御承知だと思います。或いは鉄鋼なら鉄鋼についても労金融資等だけであるかも知れませんけれども労働大臣も多少お考えもあつたようでございますが、その後政府負担と申しますか、開銀負担が減つたために造船数量も減つて参りました。そうすると全体の雇用計画と申しますか或いは産業にどういう工合に吸収して行くか、或いは賃金の遅欠配、或いは治安対策とまで言われるものをどういう工合に解消して行くか、これは恐らく閣議で大臣から問題を出して、或いは経審長官なり或いは通産大臣とも協議の上閣議で検討されたことだと思うのでありますが、それらの点についてどういう対策をお立てになつたか、承わりたいと思います。  それからなお今お話の中に出ましたけれども、労金融資という点は大臣からも前に承わつたことがございます。ところが現地に参つてみますというと、労金それ自身が返済の見込が立たなければなかなか貸付けることができない。北海道の実情を午後劈頭、北海道の中小企業対策の世話をしております労働組合の指導者からも聞いたのでありますが、その辺にも実際にいろいろ問題がある。そこで生活資金或いは生業資金を含んでこれの融資をどうするか、労金融資を含んで融資をどうするか、こういう問題もございますが、労金融資或いはその他の緊急の融資についてどういう対策を立てられたか、これも一つ承わりたいと思います。具体的な点については又あとでお尋ねをいたしますけれども、全般的な総合対策について通産大臣或いは大蔵大臣から明日承わるということでありますが、その前に担当大臣である労働大臣から一つ局長説明でない、広汎な総合対策を一つ御説明頂きたいと思います。
  135. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 私は今日少したて込んでおりまして、大変にどうも今まで失礼いたしましたことをお詫び申上げます。  最近の失業の状況等につきましては種々問題があるわけでございますが、根本的な問題としましては私どもは経済の地固めをやる。今まで朝鮮ブームに乗りまして膨脹していた日本経済を立たせる大綱であるところの輸出入貿易の面から見て、このままでは支え切れないという状況が顕著になりましたので、やはり朝鮮事変というような偶発的なことによつて生きていた日本の経済を真の意味で自立させるということから、今までの傾向を矯めまして一兆円予算なり財政投資の縮減というような方法で経済地固め、建直しに邁進しておりますこの際に、どうしてもそのしわが出て来る。そのしわ寄せを大きく政府が又財政投資をして公共事業を活発化して救つて行くというような方向がとれないところに問題がある。デフレという言葉を使つて大蔵大臣はおられませんけれども、言つてみればデフレ下の失業対策ということに失業対策の非常な問題があると考えております。どうしても事前に手を打つて失業を発生しないようにやつて行くということが、将来インフレーシヨンをやつて行くということになれば、これは簡単に解決してしまうものでありますか、それができない現況におきまして、どうしても一つの枠の中でどうそのしわを極端に寄らせずに持つて行くか、こういうところに苦心があるものかと考えております。やはりいろいろお聞き取り頂きましたように、労働省の大筋としましては、失業保険がございまする間に他にできる限り就労の機会を斡旋する、そしてどうしてもそれができない場合においては失業対策事業によつてこれを吸収して行く、これか大筋でございますが、それも失業対策事業と、一般に行われております現在の予算下においての公共事業との間にもう少し組合せを有機的にやつて行けばまだ吸収能力があるのではないかと思われるような点につきましては、只今議題になつておりますような公共事業による失業吸収措置の強化についてという閣議決定をいたしておるのでございます。又失業保険というものをできるだけ機動性を以て活用しようという意味から、操業短縮に伴う一時帰休制度に関する計画というものにつきまして、これ又閣議の決定を見まして実施をいたしているのでございます。  要しまするに今申上げたように、じや景気をうんと出すのだということができない今の日本の経済を、本当にありのままの姿に見て、そうして輸出を振興して、健全な基礎において又日本経済の復興を図るという、そうした大きな経済政策のラインに沿うて、そこに寄つてくるしわをどう伸ばして行くかという失業対策でございまするから、かくかくこういうことをするのだということよりも、むしろ現在まで行われているものの中にある矛盾と申しますか、不合理と申しますか、非能率と申しますか、そういう点を能率的にするということで先ず問題を取上げねばならん、こういうようなことで今までいたしております次第でございます。
  136. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、枠内という話がありましたが、デフレという言葉は、大蔵大臣は使つておられないけれども、事実問題としては大部分についてデフレの現象を示している。そのデフレ下の労働問題であり、或いは予算の枠内での労働対策従つて失業保険の予算の枠内で帰休制度を考える、或いはまた今の予算の枠内で公共事業の中での失業者の吸収、こういうことのように今の答弁は拝聽をしたのですが、通産大臣でさえも、これは経審長官を兼ねておられるが、デフレ改築の手直しという言葉ではございませんが、調整とい言葉で今の矛盾、或いは中小企業なり或いは平和産業というような問題について対処しよう、或いは輸出金融という点で問題を解決しよう。これは方向は枠内といえば枠内ですが、少くとも今の矛盾を最小限是正をしようという意図は、通産大臣或いは経審長官にもあるように私も聞いているのであります、それから大蔵大臣にいたしましても、そういう気持は私ども多少聞かぬことはないのですが、労働大臣はこの当面の事実に対して、飽くまで予算の枠内或いはデフレ政策の枠内で片付くと思つておられるのですか。これは枠内では到底問題は解決しないと思う。従つてこの帰休制度にしても、帰休制度によつて労働省として幾ら救済ができる、或いは公共事業による失業者の吸収措置によつてどのくらい問題が解決するか、こういう数字は恐らくおありになると思う。施策を講じて、それがどの程度の効果を持つかという計算なしにはやつておられんだろうと思うのですが、今の見通し……。  それから例えば四百万といわれる顕在失業者に対しましても、それとその拡大するものについての対策を考えておられることは間違いない。それをもつと、局長のお話はあとで聞きますから、大臣としての閣議に持ち出された労働対策についてもう少し識見を伺いたい。これ小坂労働大臣経済学者でもあり、相当のお考えをお持ちになつていることは私どもとしても多少想像せんことはない。今のようなお話ではなかろうと思うのであります。一つお示しを願いたい。
  137. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 現在やつております政府のいわゆる地固め政策と申しますか、それにつきまして種々異論があり、御意見があることも承知しておりますが、併し私どもとしてはこれはとにかく一度日本経済の通らねばならん途と心得まして、でき得る限りやつてみよう、こういう考えであります。その結果先ほど私が申上げましたようなしわが寄り過ぎて、将来これを適当な伸びるべき時期に伸ばすことができないような深い溝になりますような兆候が顕著な際におきましては、これは政治でございますから、その際適当な弾力的な措置を考えられるかと思いますが、現有の問題といたしましては、どうしても日本経済の通らねばならん途を筋を追つて見る。こういうことは必要ではなかろうかと考えておるのであります。勿論現存の税制なり或いは金融のやり方なりというものは十全のものとも考えません。その点に関しまして、不合理な点があれば、それをその都度新たた政策として、変えるべきものは憂えて行くというふうには心得ておりますが、ただ私の立場といたしまして、ただこういう政策をするのだということは、経審長官の立場ならこれは又別でございますが、ちよつと差出がましいかと存じます。経審長官も、いわゆる手直し論というのは、ああいう一部に伝えられた意味でないというふうに言つておられたように聞きましたけれども、要するに政策でございますから、一つの目標をきめましても、それを一年にやります場合と半年にやります場合、或いは又三年間にやります場合と、その緩急の度合が違うのでございまして、その間の調整と申しますか、適当な現状に即した手を打つということが問題ではなかろうかと思います。私どもは今の政府決定いたしました政策に副うてやつてつて、その間に今申上げましたような、従来あります制度でも、もつとこういう点を能率的にしたら問題の解消の役に立つではなかろうかと思われる点は努力してそのようにいたす考えでやつております。  公共事業の失業吸収強化ということでどのくらいの数が出るか、或いは一時帰休制度ということでどのくらいの失業者が吸収できるか、こういう問題につきましては、これは見通しの問題でございまして、帰休制度でも、これは事業者なり組合なりがどの程度受入れてくれるかということにもよりますので、確たる数字は申上げにくいのでありますが、まあ両方の制度を併せて十五、六万の者は吸収できるのではなかろうかというふうに現在のところ一応考えております。
  138. 吉田法晴

    吉田法晴君 この点はどうなんですか、両方併せて十五、六万という数字でありますが、一番緊急なのは炭鉱、それから造船、それから鉄鋼、こう言われておりますが、その他一般に中小企業等の倒壊整理が出ておる。不渡手形が月に五万も出ているというのでありますから、その数字等もこれは御承知だろうと思うのでありますが、雇用労働者を現在の数からどの程度に維持するのか、これは石炭でいいますとどのくらいの生産数量を維持するか、或いは造船にして幾ら、こういう労働者の総数というものは恐らくお考えになつていると思う。で、この野放しに、どんな結果が出て来ようともかまわんという恰好で今までなされて来た。その結果この商業部門から生産部門に来て、どんどん縮小或るいは倒壊、こういう現化が出て来ているのですけれども、雇用労働者はどのくらいで、それから出て参ります失業者を幾らと計算をして。十五、六万なら十五、六万の人たちで大体済むだろうと、こういうように考えておられるのか、その点一つお考えを伺いたいと思います。
  139. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 現在御承知のように我が国の特徴というのは一次産業が非常に多いというのが特徴でございまして、四八%くらいいわゆる労働力人口のうち占めておるのであります。で、その他にいわゆる雇用労働者並びに自営業者というふうになります。まあ全体で最近労働力人口として出て来ておりますのが四十万を少し越しております。で、イギリスあたりはこの一次産業というのは極めて少くて九%程度しかないものですから、イギリスあたりですと緊縮財政即失業人口ということになりますのですが、我が国の場合はその出て来た失業人口がどう吸収されて行くかということに非常に問題があるのでございます。従来は御承知のように非常に家族制度が強かつたわけで、この吸収率が強かつたわけでありますが、最近におきましてはそういう傾向が大分変つて来ております。どの程度になりますかということは、これは少し実績を見てみませんと何とも申上げにくいのであります。
  140. 田村文吉

    田村文吉君 何ですか、今一時帰休制度については造船とか鉄とか石炭とかいうようなものについてお考えになつたのが初めのようでございますが、その後のお話合いであらゆる産業に対してすべて平等にお扱いになる、こういうふうに伺つておりますが、それに間違いございせんか。
  141. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) さようでございます。
  142. 田村文吉

    田村文吉君 そこで私にこれは自分の勘を申上げるので、統計数字を持つておりませんからなんですが、実際絞つてみるというと、日本の過剰労働人口というものは恐らくは一割五分から一割はあるのじやないか。仮に工場労働者が一千万あるとすれば、百万から百五十万の人は本当を言うと過剰な人じやないか。そこで或る産業が一割五分なり二割を循環して帰休制度を用いる場合に、不況であるから止むを得ないということでやる場合には、それは労働省としてお認めになる御方針でありますか、どうですか。
  143. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 私はこの推移を見てないと何とも申上げられないし、それを今申上げますことは、少し出過ぎたことになるかも知れませんが、田村委員の御質問でございますから、そういう意味でフランクに率直に申上げますと、私も実はいわゆる擬制雇用と申しますか、実際に必要はもの以上の雇用というものはあると思います。そこで二割というものを一応対象といたしまして、二割を帰休させておれば、その分を国家負担において保険の給付を受けておりますれば、その分に対しては何とかやつて行けるのじやないかという気持を持つております。例えばその連中が三カ月たてば帰つて来る。その場合に今度余剰を抱えて行かなければならないという問題が出て来ます。その場合に私どもとしては次の段階を又考えるべきものじやなかろうかと思つておりますが、今直ちに最初からそれをたらい廻しにするとかいうようなことを申しますと、財政支出も相当あることでございまして、一応実情を見て、次の段階はそのときにきて、皆さんの御納得を得るというほうが、むしろ問題がうまく行くのじやなかろうかと思いまして、今案はそういうふうに……。
  144. 田村文吉

    田村文吉君 そこを私は伺いたいのですが、一遍きりだけ二割なら二割という帰休制度を認めるという意味か、三カ月たつたもとで又交替々々してやつて行く場合に、それも又認めておやりになるのか、一遍やつたらそのあと又考えるのだというふうになるのか、それが皆わからないから、そこでそれをちよつとお伺いしたのです。
  145. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) その気分は正にあるのでございますが、現在の失業保険制度がこういうことを前提としていないでできておりますから、そういうことがあるなら、失業保険制度も負担の区分など少し直すところが出て来るのじやなかろうかと思いますので、私の気持はそういうところにあるので、もう少し保険経済主体として見ても行き立ち得るような方向を考えながらやつてみたらどうか、三カ月の間には十分その成案もできると思います。
  146. 田村文吉

    田村文吉君 そういう御配慮があれば結構であると思いますが、結局はそういうところまで追付かないためにも、或いは為替のレートでも切下げて、思い切つたことをやるなら別でありますが、そういうことをやらないならば、人間は余るし物価も高いから、原価を切下げしなければならんという、状態ですから、若し今の政治を続けておやりになるという限りにおいては、どうしても思い切つて、本年五百億かかろうが、又企業者も或る程度の保険料を支払おうが止むを得ない、一つの失業救済の方法じやないかということは考えられる。それはまあ永いことじやない、一年かそこらの問題でしよう。やがては根本的に解決されるときが来ると思います。まあ私は労働政策としては、若し今日の経済政策をそのまま実行される限りにおいては、そこまで見て行かんと、どうも一方は早く均衡してしまつて、二割やつたのが、政府から六割、七割かの保険料をもらつた。遅ればせにはもう金がなくてもらえない。或いは一遍はやつたけれども二度目はもらえない、こういうような不公平がないようにやつてもらいたいと思うのです。根本的にそういう問題まで一つ踏込んでおやりになる御意思があるかどうか伺いたいのですが、今の御説明で取りあえず一つやつて、その上でというのですが、一遍やつてみてあとの人が馬鹿をみないようにやつてもらわなければ困るので、大臣としての御覚悟がなければ困るので、お伺いしたのです。
  147. 阿具根登

    ○阿具根登君 一時帰休制度が出ましたので、これに関連して御質問申上げますが、帰休制度は失業保険料を完納したところがこれを適用していい、而も三カ月一回限り、こういうことを言つておられる。私は何か労働省が一つの試しを投げ出されている、こういうようにしか考えられない。大臣は恐らく炭鉱の実態を知つておられん。九州ではすでに炭鉱を経営している経営者が二人も自殺していることを御存じかどうか知りませんが、失業保険を完納できるようなところはこういう心配はないのです。今殆んど炭鉱が生きるか死ぬかといつて騒いでおるところは、失業保険も払えない、従業員の給料も払えないところなんです。而もそういうところが、三カ月先に見通しがあるかということは、政府が何ら見通しのある政策を示していない今日、三カ月後に採用できるという見通しは持つていない。それで炭鉱は今のところ一坑だつてこれに食い付いて来たところはないと思う。労使共に食い付いて来ておらない。実際は本当に困つたところを救うようなこれは制度ではないと私は思うのですが、それに対してどういうふうなお考えを持つておられるのか。
  148. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) この物価がもう少し下りますと、国際的にも競争し得るというので、大蔵大臣あたりは二割高いということを申しておるのであります。二割を一年間にはとても下げられませんし、今年の目標を五分乃至一割というところに置いておりますのは御承知通りであります。まあ大体二年くらいに物価を下げようかというような気持であるように私ども推察をいたしておるのであります。その期間失業保険のことで只今田村先生からいろいろ御注意頂いて有難く拝承いたしましたが、そういう運用をどういうふうに持つてつたらいいかということは、国家全体と睨み合せて申上げましたが、その点もそうでございますし、今までこの給与支給というものはこれは全く自主的になされておつて非常に企業別に格差があるのでございますが、高く出しておつたところはそれでは失業保険を受ける場合に又高い保険料、こういうことになりますので、そういう間の調整もやはりして行かなければならない、こう存じまして、先ず第一着手といたしまして、只今御審議を頂いておりますような三カ月間給付六カ月再雇用という方針で第一弾を投げておるわけでございます。その場合完納していなければ全然適用がないのかということでございますが、必ずしも文字通り完納でなくても、従来からその完納の意思があり、情勢によりまして十分な善意を持つて保険制度の運営に協力して頂いているという実績がありますれば、少しくらいのところは又あとで払込んで頂くようなことにして適用すると、その辺は弾力的にやつてもよかろうと、こういうふうに考えております。
  149. 田畑金光

    田畑金光君 労働大臣に二、三お尋ねしたいと思いますが、その前に一言労働大臣に希望を申上げたいと思います。  労働大臣も本日から明日にかけて労働委員会が開かれることは御承知であつたと、こう思うわけであります。こういう客観的な情勢の中で、而も労働委員会の議題がデフレ下における再雇用の問題、失業対策の問題を中心として開かれたわけでありまして、我々といたしましては労働大臣の責任ある方針というものを承わることが、この委員会の中心的な課題でもあると考えるわけであります。ところが今朝ほど来大臣の出席を求めたわけでありますけれども、閣議その他の事情もあるし、或いは又明日から天皇の随行として旅行されるというような御事情も我々十分承知はしたわけでありますけれども、併しながら委員会が開かれておる以上、求められたくても当然大臣としては出席をして頂いて、そしてこの委員会の審議に十分協力される態度であつて欲しいと、こう考えるわけであります。やはり国会を尊重し、或いは委員会に対しまして、委員会の機能を十分尊重されて行くところに国政の発展があろうと考えるわけであります。行政府と立法府が侵さず侵されず、相互のやはり協力の下に国政を円満に巡行できるものと考えるわけであります。一つこの点は今後労働大臣としては労働委員会の尊重ということを十分に御考慮願いたいということ。  それからもう一つお尋ねしたいことは、明日も労働委員会が引続き開かれるわけですが、新聞で承わりますると、昨日政務次官は替つております。すでに昨日の午後新政務次官は辞令をもらつておるということを聞いておりまするが、当然に新政務次官が大臣の留守中は労働行政に関しての補佐をするのが当然でありましようし、又本日のような委員会には初めての委員会でありまするから、新政務次官の挨拶等があるものと期待していたわけでありまするが、そういうこともどうなつたのかさつぱり期待が外れたわけであります。この点に関しまして労働大臣の御所見を承つておきたいと思います。
  150. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 先ほども実はお詫びを申上げたわけでございますが、重ねてのことで恐れ入る次第でございます。六日に行幸がありますことも御承知通りでございまして、私もその方面に若干関係がありますので、重要な打合せもいたさなければならず、甚だ失礼をしてしまいました。  もう一つ御承知の駐留軍の人員整理との関係もございまして、退職手当、その他のいろいろ要求が出ておることも御承知通りでございます。私も、十日に第一回のストをやるというような話もありますので、九日には長官が更に軍側と面会をいたしましていろいろ話をいたしますが、その前に私としてもやはり十分米軍当局と話をしなければなりませんので、実は先ほども米軍と話をしておつたのであります。その結果はまあ割合に私の意見ははよく聞いてくれたように考えておるのでありますが、それが終りましたのが四時半頃でございましたから、私は直ちに電話をかけて、今用が済んだが、労働委員会はやつておられるかと開きましたら、やつておられる、而も大臣出席についてはいろいろ問題があるということを聞きましたので、これは誠に自分として忙しいとはいいながら、甚だどうも御無礼をいたしたというので、すぐ参りまして、早速お詫びを申上げたわけでありしまして、決して自分の勝手にやつておることでございませんで、やはり米軍なりとの交渉なんという問題は、土曜日は先生方もおりません、やはりきめた日にやつてしまいませんと、なかなか国会があるから又にしてくれと言いますと、交渉がうまく行きません。そういう関係に携わつた次第でございますから、その点は一つ御了承を願いたいと思います。
  151. 田畑金光

    田畑金光君 政務次官は。
  152. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 新政務次官の問題はまだきまつたばかりのことでございまして、聞きますと東京におられない、これは又帰られましてから御挨拶は当然にあろうと思つております。
  153. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 実は労働大臣は七時ちよつと前の汽車で那須へ出発される、その間に夕食もいたしたいというお話でありまするから、どうか一つ御常識の範囲内で願いたいと思います。
  154. 田畑金光

    田畑金光君 只今の御答弁に対しまして更に追及するということは本日はやめることにいたしますが、一つ労働大臣も積極的に委員会等に御出席なさつて、みずから進んで労働政策等を報され、国会に協力を求める民主的な態度に終始してもらいたい、このことだけ要望として申上げておきます。  それから先ほど来の質問で、労働省当局の考え方というものは大体了解が付いたわけでありますが、先ほどの労働大臣の蘊蓄ある経済政策については、我々としても十分に傾聴に値するものだと、こういう感じを持つわけであります。併しながらそただ国際収支のバランスを図つて日本の経済を自立せしめるためには、現在行われておるように、金融引締政策で財政の緊縮政策をとつて行かればならんのだというこの経済の運営についても考え方自体としては我々として了承できるわけであります。併し一般論的に申しますならば、この財政経済政策によつては、詰るところ中小企業の問題と、それから勤労者の生活権の問題というものが完全に無視されている結果になつていないかということであります。詳しく申上げる必要もないのでありますけれども、例えば政府の指定預金等を例にとつてみましても、昨年の十月から今年の四月までの統計を見ますならば、中小企業に貸出すための指定預金は、三百六十億も吸い上げられておるけれども、併し半面において日銀の貸出額はそれだけ殖えておるという数字が出ておるわけであります。或いは又財閥銀行の貸出等を我々が見ましても、自己資本の三〇%になんなんとする大きな一件数億、数十億の融資をしておる事例も我々は見ておるわけであります。従いまして今の金融引締政策というものは詰まるところ集中融資であり或いは系列融資であるという、銀行資本の背景を持つ特定大企業には融資の自由が与えられておるけれども、中小企業というものは完全に銀行の窓口から締め出しを食つておる。この傾向は今日の地方銀行においても同様な姿を見るわけであります。又半面において二十九年度の予算の構成と性格というものを分析いたしましても、私たちは今回の予算というものが国民生活の問題を非常に抹殺しておる。これは勿論現在の政府考え方と私たちの考え方とは対立しておりまするから、とやかく申しましても水掛論になるかも知れません。ただ私の申上げたいことは、これだけのデフレ政策をやる以上は、半面において国民生活の安定の面或いは失業対策の面、社会保険の問題、こういう面においてはもう少し血のある政策が当然持たれて然るべきじやないかと考えるわけであります。先般結核患者が東京都庁に或いは地方県庁の庁舎に坐込みをやつておりまするが、いろいろこれは日本患者同盟等の政治的な動き等も批判されておりますけれども、併し百三十七万に上る要入院結核患者に対しまして十八万病床前後の準備しかなされていないという今日のこの社会保険の貧弱に大きな原因があろうと考えるわけであります。そういう点を見ましたときに、先ほど来江下局長から現在の雇用の状況或いは現存の失業保険の受給の状況失業保険財政の収支の状況ということを承わりましたときに、すでに限界に来ておるように見受けるわけであります。更に今後のこの下半期に予測されるデフレ経済のあほりというものを考えましたときに、どうしてもこれは我々といたしましては失業対策問題を中心とします補正予算が必要ではないかと考えるわけであります。六月二十九日の閣議決定を見ますると、一般会計において百九十九億の節約を図ろう、特別会計において四十五億の節約を図り、財政投融資において一〇%の節減を図ろうというような実行予算の編成がなされたわけでございますが、勿論これは繊維消費税がつぶれたということ、或いは入場税が非常に実施の時期が遅れたということ、こういうような収入の不足を埋合せすると共に、又保守三派の修正による予算の増額の埋合せのために実行予算も組まれたと思いますけれども、我々は半面において政府といたしましてもこの秋の情勢によつて失業対策問題、災害復旧問題を中心とする補正予算ということを考慮されて実行予算が編成されたものと考えるわけであります。政府当局といたしましてどうしても現行予算の枠内において今後予測される失業問題と取組んで行かれる御所信であるのか、或いは今後の客観的な情勢の変動によつては補正予算等も考慮せられて、当面の社会不安或いは治安の問題等の解決に当つて行かれようとする御方針であるのか、この点改めて労働大臣の所信を承わつておきたいと考えます。
  155. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) デフレ経済といいますか、金融の引締めで経済の基盤を強固にするための地固め政策を行うという半面、でき得る限り社会保障的な施策については仰せの通り意を用いることは私どもの念願といたすところであります。いわゆる血もあり涙もあるという政策でなければならんと存じております。併しやはり国全体か健全に立直つて、而も国民の生活というものが健全になるのでございますから、そうした全体の建直しをおろそかにすることもできないというふうに考えているのであります。  失業問題につきましては、私も乏しいものでございますが、全力を打込みまして問題を解決いたして参りたいというふうに考えておりますが、先ほど申上げたようにインプレーシヨンをやつて解決するということはこれは何もならないと思うものでありますから、ここに非常に苦心をいたしておりますわけであります。そこでインフレーシヨンを招くような補正ということは私はもう極力避けるべきである、こう考えておりまするが、併し節約をいたしました金額の中からいろいろいたしてみまして、失業対策関係の諸経費につきましては必要とあらばできるだけ折衝もいたして、とにかく先ほど申上げたように失業の問題につきましては私の全責任において解決といいますか、遺憾なからしめたいと念願いたしている次第でございます。
  156. 村尾重雄

    村尾重雄君 この一時帰休制度についてお伺いしたいのですが、いずれ詳しくはこの問題が相当重大なので安定局長から伺いたいと思つておりますが、それは後日にしまして、あなたに二点だけお聞きしたいと思います。  というのは、この一時帰休制度が発表になつたのは七月の十六日だと思いますが、その後これに対していろいろ労働省はどうしてこの案をこしらえたのかということが関係者の問題になつているのです、そこで大臣にお伺いしたいのは、当初考えられた対象事業所である、造船並びに石炭の事業所だと思いますが、このほうと最初から御相談の上で成る程度の了解の上でこの制度をお考えになつたのか。そうでなければその後七月十八日から今日まで、この造船、石炭事業所からどういうこれに対する反応があつたかということ、それからそれと一般事業所にもこれを及ぼすという話なんですが、一般事業所からどういう反応がその後あつたかということなんです。先ほど局長のお話を伺つておりますと、それぞれ労使間において準備をしているというお話を伺つたのですが、恐らくそれは準備でなくて労働省へこれに対する問合せがある、こういうものを考えたが、一体これはどういうことだという問合せだけで、恐らく労使間でこれを受けるべく話合いが、労働協約を結ぼうとか、そういう着々準備が進められているのではなくして、私の想像するのではただどういうものかという問合せの程度に過ぎないのだろうと思いますが、その反応をお伺いしたいということと、もう一つはたしか二十七年の四月と思いましたが、綿紡績の操業短縮による離職者に対して失業保険制度というものを採用するということについての一つの措置がとられたときに、あの当時操業短縮によつてこの制度を受けた者がこれは解雇なつております。大体において退職になつておる。という意味は、再び事業所には戻つて来ていない。恐らくそれと同じ轍を踏んで、今非常に不況になつた事業所のこれは首切り、退職を手伝うものになりはしないかという疑いを持つのですが、そういうことになれば、これを考えられた考え方というものに対して、どんなに善意でやられたとしても、私は将来に非常に悪い何を残すと思うのですが、それに対してどうお考えになつておるか、この三点だけ一つ伺いたい。
  157. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) お話のように当初石炭、造船それぞれ、殊に造船の場合顕著でございますが、十次造船の計画がきまれば相当に又、不況から立直る会社も出て来るわけでございまして、これを取りあえず考えたのですが、今回自由党のほうからも強力なる御意見が出まして、承わつてみれば誠に御尤もでございますので、そのほうがよかろうというので一般に及ぼしたのでございます。併しこれにつきまして石炭、造船その他の産業からいろいろお話のように問合せがございます。併し問合せの中に希望も強いのでございまして、これは一回限りじや役に立たん、もう少し次には又次の場合というふうに廻わさしてくれなければ、自分らとしては端的な制度だとは思わないというふうな御意見が実は強いわけでございます。この点は誠に御尤もな点でありますし、私どもも案として当然それは考えたのでございますが、今の財政事情等から見て、先ほど申上げましたように失業保険制度そのものももう少しやはり一方においてはいじつておいて、さてこれでやるというふうにしたほうがよくはないかというふうにも考えまして、目下この点は十分研究をさして頂きたいと考えております。なお準備をしておる都合もありますし、まあ非常にこの程度では問題にならんというふうに考えておられる反応も率直に言いましてあります。でありまするからそういう点を十分私どもは傾聴いたしまして、善意において研究いたしたいと考えております。  それから再雇用の問題が問題にならんのではないかというお話がございましたが、私どもは三カ月という期限を切りましたのは、六カ月の再雇用ということを前提にしまして、今お話のありましたように首切りを安易にするというふうには使われないように、六カ月の再雇用ということを特に強調いたしております次第でございまして、そういう点で過去の綿紡の場合の例も大いに参考にしなければならんと思いますが、私ども考え方としましては、この制度は飽くまで失業に対する、又現在の金融引締め等によつて一時的に非常に打撃を受けた場合の労使間の救済制度として考えておる次第であります。
  158. 市川房枝

    市川房枝君 簡単にちよつと二、三の点だけ労働大臣にお伺いしたいと思いますが、失業者がだんだんたくさん出て来ます場合に、しわ寄せは一番弱い婦人に来るのです。女教員の首切りの問題、女子だけの停年制の問題とか、或いは共稼ぎの場合やめさせるというような事態もすでに出て来ておるようですが、併し婦人も食わなきやならない、いや未亡人なんかの場合には夫に代つて子供たちまで養育しなけりやならんという責任を持つている場合がたくさんありますけれども、その問題について労働省としてといいますか、労働大臣としてどんなふうなお考えを持つておるのでありますか、お伺いしたい。  それからもう一つは、失業者がだんだん出て来ますと、結局内職といいますか、家庭内職によつて生活を維持する。いや、その家庭内職も実はこういう時代にはだんだん少くなるでありましようし、それから新らしい一つの家庭内職としても問題にされておりますのは、賃金が非常に安い。その安い賃金が不払になる場合が相当出て来ております。内職者に対しては何ら法的の保護もないわけでありまするが、賃金が不払に対してもどうにもしようがないということになりますか、或いはまあそういうものに対して何らかの救済といいますか、対策をお考え頂いているか、或いは将来頂けそうかどうか、その点伺いたいと思います。
  159. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 婦人の問題は誠に御尤もでございますが、私どもも婦人に対する職業補導でございますが、その授産の方法をやはり一律に男子と同じような職業補導をいたしませんで、婦人にはやはり婦人に適した職業がございますので、そうしたことにも少し意を用いるようにしたらどうかということで、婦人少年局とも相談をいたしておるようなわけでございます。人によりましては非常に家事労働というものを軽蔑しておる方もありますけれども、やはりそういうものが一方においては非常に要求されておる点もございますので、いわゆるハウス・キーピングということも一つの職業ではなかろうかと思いますので、そういう方法も一つ新らしく研究して参りたいというふうに、そんなことはほんの一端でございまして、婦人少年局のほうでも十分いろいろな資料を取つて研究していてくれますのでございますが、私は差当りの問題は職業補導の内容、授産の内容というものをもう少し研究しようじやないかということで早急に結論を出すように話合つておる次第でございます。第二の、内職は非常に安いのでございます。而も賃金不払が非常にやはり多いのでございます。これはやはり自治団体において、例えば東京都などで以て何かそうした問題を少し取りまとめて、それがやはり補導所とも連絡をとり、各所においてもう少し対象のはつきりしたところと内職を斡旋をするというふうな方向に行きますように考えてもらいたいという、ことで、今実は協議をいたしております次第であります。十分考えます。
  160. 田畑金光

    田畑金光君 簡単に一つだけお尋ねしたいと思うのですが、七月初めのこの間の委員会説明では、五月末の賃金の不払が十五億を越えていたわけで、あります。ところが今回は六月末になりますると十六億七千万という状況なつて来ておるわけでありますが、この間の委員会の節にも労働大臣から強く、労働金庫を通じて生活資金の融資について、大蔵当局と折衝をなされるこういう御答弁を承わつたわけであります。幸いにいたしまして、造船部門に関しましては近く三億六千万の政府資金の預託が実現するということを我我は聞いておりまして、労働省当局の労を多とするものであります。一産業でもこの問題が解決せられたということは、一つの前進の大きな機会だろうと考えるわけであります。この点につきまして労働大臣としては今後ともこのような形で更に他の産業或いは一般の中小企業に対しましても同様な政府資金の導入という考え方を以て大蔵省に折衝される御意思があるかどうかということが一つ、もう一つの点は、相関連いたしますが、御承知のごとく、政府の資金をたとえ労働金庫が預りましても、危険はどうしても労働金庫の責任において負担しなければならないわけであります。こういうことでは、折角政府資金を預りましても、その運用のよろしきを完うすることができんわけであります。当然中小企業信用保険法等に基くような構想が労働金庫に対しましてもとらるべきではなかろうかと考えるわけであります。或いは損失補償制度の単独立法化というような構想もあろうかと思います。こういうような点につきましても、労働大臣は行く行くこういう構想で労働金庫を強化して行くべきであるという御意思があるかどうか、この点だけ承わつておきたいと思います。
  161. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 造船に対しまする労金の融資斡旋につきまして非常にお言葉を頂きまして恐縮いたします。この問題は造船の場合非常にこの見通しが十次造船というものではつきりいたしております。それは割合に交渉がしやすかつたのであります。他の産業部門におきまする労働金庫の融資の問題はやはりこの見通しの問題と関連いたしますので、私も交渉はいたしまするが、やはり石炭なら石炭、或いは綿紡なら綿紡というふうに大体将来の見通しというものを或る程度つけませんといけない、これはやはり私といいますより通産大臣の問題でございます。これも併せて協力して話合つて進みたいと思います。  なお労金が非常に預金が殖えておりますことは、片方はどんどん預金が殖えておるのだから自己資金で貸したらいいじやないかということを言つておる向きもあります。自己資金が貸せないものを政府が全部肩代りで出してやろうということは見通しがなくちや出せないんじやないかという議論につきましても、一応金融という本質からしまして肯けないこともない。問題は各企業においての見通しの立て方である、こういうふうに考えております。なおこの信用再保険の考え方ですね、これは今まで企業に対していたしておりましたが、この労働金庫という場合は労働者個人に対する問題であつて、なかなかそう簡単には参りかねるかと思いますが、この点は十分今後の研究問題として協議いたします。
  162. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 大変時間が過ぎましたから大臣にあと二分ばかりちよつと……。今日は実は私非常に重要な点で労働大臣にお尋ねしたいと思つておりました。その一つは、昨日の東京新聞の夕刊に載りました政府並びに自由党が立案せられるという経済三カ年計画について労働大臣としてどういうお考えをお持ちになつておるかと主要な点についてお尋ねをしたいということ、第二点はこの間閣議で御決定なつ失業対策要綱について、私としては非常に疑問な点がたくさんありますが、今日時間がありませんので、従つていずれ又他日の機会に譲ることになろうかと思います。また通産大臣等にもお尋ねすればわかる点もありましようが、ただここで明日おいでになりませんので、各局長と一つ若干の時間でもお打合せを願つて善処を願いたい点が一つあるわけです。それは、一番遺憾な点は、閣議決定せられた失業対策要綱について数字的な裏付が余りないことであります。で、私はやはりああいう要綱をおやりになれば数字的な裏付というものを成るべく早く発表されて、皆が安心できるようにしたいと思うわけです。それから更にその数字的な裏付の場合に労働省が今発表されておる失業者の把握、顕在潜在の区別がないようでありますが、この顕在と潜在の失業者に分けておよその数字というものを把握しておかなければいけないと思うのでありますが、只今労働省としては失業保険の受給者の実人員を主なる根拠としていつもお出しになつておるが、併し失業者は、失業保険の給付六カ月の期限が切れた後の失業者というものが完全に再就労しているわけじやない、それがどの程度就労しておるのか、失業者としてどの程度溢れておるか、こういうこともやはりチエツクしておかなければならん。それから五人未満失業保険の大将になつていない企業の勤労者というものはデフレ政策によつてどの程度失業しておるのか、又中小企業者自身が倒産によつて失業しておる数が相当あつ、そういうものについての大つかみの数字でも結構ですけれども、やはり統計を以て行政をやつて行こうという、新らしい行政の確立をやるとすれば、やはり数字の裏付けが私は必要だと思う。そういうものが私の満足するような資料がないので、これについては明日でももう少し私は質問をいたしてみたいと思つておりますから、それを一労働省のほうで困難でしようけれども、一応探るように労働大臣のほうからも一つ局長のほうへ言い伝えておて頂きたいということです。  それから経済三カ年計画のほうは私は非常に疑問の点を持つております。特に最近外為の木内信胤氏が発表しておるような経済理論なんかを読んでみますと、同じ自由党系の間にも相当な理論の対立もあるように私は考える。そういう点から労働問題の側から質問をしたいと思つておるわけでありまして、この点は明日の委員会で通産大臣等に質すときに労働省からもおいでを願うのでありましようから一つお聞き願つて労働省としての方針を明らかにして頂きたい、こういう工合に注文いたしておきます。
  163. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) なおちよつと東京新聞の記事は実は私は見て驚きまして、私は何ら関知しないということを話しましたところが、これが全然観測記事で根拠のあるものではないということです。いずれにいたしましても経審長官からお聞き取り願いたいと思います。
  164. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) では本日はこれにて閉会いたします。    午後六時七分散会