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説明員(江下孝君) 先回の
労働委員会におきまして、最近におきまする雇用、失業の概況を申上げましたが、そのうち特に
失業保険関係につきまして、なお本日は詳しく御
説明をいたしたいと思
つております。
失業保険につきましては、一月から離職者が殖えまして、それに伴いまして受給者の数もぐんと殖えたわけでございます。本年の一月に受給者の人員が四十一万七千でございましたが、この五月には四十四万、ここには出ておりませんが、ほぼ六月分も推計ができておりますが、四十五万五千
程度の数に
なつております。この数字は現在のところ減るという見通しはございませんで、今後もずつとこの数字は高い調子を続けて行くだろうという見通しでございます。そこで、それにつきまして
失業保険の
関係の収支
関係がどう
なつておるかということでございます。お手許に差上げております
失業保険事業収支
状況という二枚紙のものがございますが、これを
ちよつと御覧を願いたいと思います。
先ず
一般の
失業保険でございますが、昭和二十七年、八年、九年の五月までの収支
状況を第一表に出しておるのでございます。これによ
つて御覧になりますと、一番左の欄が適用事業所の数でございます。これが今年の五月には二十三万四千、適用事業所の数はずつと毎月殖えて参
つております。被保険者の数もこれに伴いまして増大いたしまして、五月には七百八十二万八千人という数に
なつております。保険料の収納済額でございますが、これはいわゆる保険金の三分の二に当る額でございます。
あと三分の一は国で支出いたします。三分の二に当る額でございますが、これが十五億九千六百二十四万八千円、大よそ十六億
程度のものが毎月収納されておるわけでございます。次に離職票の受付件数と申しますのは、これは事業主の
解雇をいたします場合に、前以て安定所に申請をいたしまして、離職票というものを交付を受けるわけでございます。これによ
つて離職する者にこれを渡しまして、いろいろ書込ませまして、これを離職者が安定所に持
つて行くというこの離職票でございますが、これが御覧の
通りずつと高い数字になりまして、本年の四月に十万を突破いたしましたが、五月には
ちよつと減りましたが、やはり九万九千という非常に高い数字を示しております。初回受給者数、これはその月ごとに新らしく
失業保険金をもらうことに
なつた人でございます。全体の四十何万のうちで、この五月には八万七千というのが新らしく
失業保険金をもらう数に入
つた人たちでございます。受給者の実人員は、先ほど申上げましたように、五月は四十四万という数字に相成
つております。そこで保険金の給付総額でございますが、五月は二十四億四千三十八万九千九百に相成
つております。前月、前々月に比べますと
支給額はやや減
つておりますが、これは単価が比較的低い、安い賃金の人が多く給付をもらうということに
なつた結果だと思
つております。
これが
一般保険の給付
状況でございますが、二枚目に日雇のほうの
失業保険料でありますが、これは相当大きな波がございます。いわゆる就労日数というものとの関連におきまして相当大きな変動がございますが、被保険者数はこれは若干殖えておりますが、余り大きな動きはないというわけでございます。収納済額も殆んど、五月ははつきり出ておりませんが、四月までは五千四百六十一万円ということに
なつております。初回受給者数十万九千、給付の延日数五十八万五千日、平均受給日数が五・三、保険金の給付総額がここで八千六十九万と相成
つております。
そこでこの予算との関連でございますが、給付総額が、五月を押えますと、
一般で二十四億四千三十八万円、日雇で八千六十九万円でございますので、これを合計いたしますと二十五億二千万という数字に相成
つておりますが、予算は御
承知の
通り年間二百七十三億、これを月に割りますと、二十二億
程度になります。三億乃至四億超過をいたしておりますが、御
承知の
通り失業保険特別会計に予備金を三十五億持
つておりますので、これを加えますと三百五億、月に割りますと二十五億
ちよつとということになります。そこで現在の特別会計におきましても、殆んどそれがぎりぎり或いはやや赤字という結果に相成
つております。
そこで今後の
状況でございますが、先ほど申上げましたように、今後この
支給金額はそう大きく減るということはとても予想できないわけでございます。そういたしますと、結局補正の問題があるわけでございますが、あれは特別会計でございまして、御
承知の
通り当年度におきまして
政府負担の三分の一が赤字を示したといいます場合には、法律によりまして、翌々年度までにこれを補てんするということに相成
つておりまして、必ずしも当年度に云々という問題は起きないわけでございます。その間どういたしますかと申しますと、
失業保険の特別会計に現在
失業保険の積立金が約二百六十億ございます。これを一部特別会計に繰入れまして、そうして保険金の給付に当てるわけでございます。そこでこれから少々
失業保険金の
支給が増額いたしましても、本年度におきまして
失業保険金の
支給に支障を来たすということは、これは絶対にないということを申上げたいのでございます。
次に、実は話が前後して恐縮でございますが、先ほど
委員長からもお話がございました全般の
失業対策の構想でございます。これにつきましては前回の当
委員会におきましても強い御要望がございまして、私
どもといたしましても、鋭意この
対策に苦慮いたして参
つたのでございます。現在のところ雇用
情勢もだんだん悪化して来つつありまするので、いろいろ新らしい施策ということを考えて行かなければならないというふうに考えておりますが、実はこの
デフレ政策というものが強く行われますと、どうしてもそのしわ寄せが雇用面に行われるという
現状でございます。そこでただ失業者が出ました
あとの
失業対策をやるというだけではこれはどうも
失業対策としても余り上等の
対策ではないわけであります。で私
どもといたしましては、できるだけ失業者も出さないで、この
デフレ政策を切り抜けるということが一番望ましいのでございますが、併しどうしてもやはり失業者が一部発生するということはこれは避けられないことであると思
つております。ただこの失業者が出ますということにつきましても、ひとりその
対策について、出ました
労働者のいろいろと斡旋その他ということをやりますにいたしましても、どうしてもこう深刻に
なつて参りますと
労働省だけの力でこれをやるというよりは、やはり事業の実施或いは産業官庁というものと緊密に連絡をいたしまして、この失業
情勢の動きと或る
程度即応いたしました産業政策もやはりお考え願わなければならんということも私
ども考えまして、で、取りあえず
関係各省集りまして、今後の
労働問題、特に
失業対策の問題につきましては各省の一つ
担当者を以ちまして、終始連絡調整をいたします
協議機関を設置したいということにいたしまして、先般経済審議庁に
労働対策連絡
協議会を設置いたしたのでございます。これに関与いたしまする省は殆んど各省でございますが、やはり
労働省、審議庁、通産省あたりが主管の官庁になるわけでございます。
そこで先ずこの
協議会におきまして、今後
労働問題、特に
失業対策の問題を如何に取扱
つて行くかということにつきましていろいろ審議をいたしたのでございますが、私
どもといたしましては前々実は申上げておりまする
通り、できるだけ最小の犠牲を以て
失業対策を実施して行く、つまり最も効率的な
失業対策を実施する必要があるという
考え方でこの審議会を考えて頂く。そこで先ず一番先にこの審議会で取上げましたのがいわゆる公共事業に対する問題でございます。公共事業は、御
承知の
通り現在千六百億
程度の国庫補助金を以ちまして全国各地で行われている事業でございますが、予算的に、この予算の金額から推計いたしましても、公共事業に吸収されております
労務者は約八十万人
程度あるのではないかというふうに考えております。そこで御
承知と思いまするが、私
どもの法律で緊急
失業対策法という法律がございまして、この法律によりますと、公共事業に就労する
労務者は一定率以上は公共職業安定所の紹介する失業者でなくてはならないということがはつきり法的に
規定されているのでございまして、一定率と申しますのは、都市地域或いは農村地域等によ
つて率が違いますので、手打ち
労務者は別でございますが、平均いたしまして約三〇%になりますが、三〇%というものは公共職業安定所の紹介をする失業者でなくてはならんというはつきりした
原則がきま
つているわけでございます。で、今日までまあ
関係各省と絶えずこの線について実効を確保するようにや
つて参
つたのでございますが、非常に遺憾なことには、この公共事業への吸収率が非常に悪いのでございます。で現在までのところ約八十万人
程度はあると推定いたされます就労者のうち、安定所のほうで紹介いたしました方の数は僅か五万
程度しか把握されてないのでございます。そこでどういう事情でこういう悪い成績に
なつておるかということでございますが、これについてはもう理由もすべて実ははつきりいたしておるのでございます。で今回私
どものほうでこの公共事業による吸収率の強化乃至励行ということについて、特に
政府全体の
考え方をまとめて打出しましたのは、実はこれについて一番問題となりますのは、この公共事業を実施いたします事業実施官庁乃至は出先の府県知事、或いは農林省、建設省あたりの出先の事業実施
担当者というものが、まあやはりこの失業問題に最も関心を持つようにするということが大事でございます。で
只今までは、恥を申上げるようでございますが、どうもこの公共事業の運営ということが、どうしても事業強化一点張りになりまして、まあ失業者吸収という面では必ずしも各省の協力が得られなか
つたのでございます。でこの点を先ずはつきり確認させるということが今回の
措置の一番大きな眼目でございます。
で、いま一つは、公共事業に就労させます際のいろいろな隘路がございます。例えば公共事業というものは大体におきまして農山村地方において行われることが多いわけでございますが、失業者の密集しております都市より離れていることが多いのでございます。
従つて労務者の移動をどういうふうにやるかというような問題が一つございます。更にこの都市の失業者を直ちに公共事業に入れましても、これはなかなか現実の場合そううまく行くものではないのでございまして、やはりこの
労務者を或る
程度事前に、精神的肉体的に適応させるよう訓練もいたさなければならんという点がございます。或いは日雇
労働者、
失業対策事業就労者等が公共事業に就労いたしますと賃金が月払いになりますので、その間の
生活の保障がなかなか得られない。こうい
つた諸種の事情があ
つたために、従来公共事業への失業者の吸収が十分でなか
つたのでございます。で、それらの点につきまして、すべてこの今回
決定いたしました方針の中に盛込みまして、
関係各省の了承を得て、今後各省一体と
なつて公共事業への失業者の吸収を
図つて行くということにいたしましたのが、先ほどお手許に配りました「公共事業等による失業者吸収
措置の強化について」でございます。で先ほど申上げました点がすべてあるわけでございますが、特に一の「公共事業」の2でございますが、「公共事業の施行地域を、事業効果を害しない限度において、できる限り、失業者が多数発生する地域に即応せしめるよう配慮すること。」、これは実は非常に各省からも強いこれに対する
意見が出たわけでございますが、これを今後やらなければ、この公共事業の失業者吸収
措置の強化は画龍点睛を欠くということで、この点について強く
労働省といたしましての主張をいたしまして、この文言を入れてもら
つたのでございます。
なおこの失業者をできるだけ吸収いたすということにいたしましても、例えば現在の吸収率のきめ方が、殆んど各事業種目別に一律でございまして、必ずしも実態に即していないという点もございますので、こういう点については検討をして、その代り実態に即するような率に変える代りにこれが励行を期するということにいたしたのでございます。でこの点で問題になりますのは、御
承知の
通りの地元労務との
関係でございます。これは勿論事業の種類その他によりましては、地元労務も斡旋するということが適切な場合もあるわけでございますので、一概には言えないのでございますが、併し最も救済の
程度の高い失業者を先ず優先的に斡旋して行くというこの方針はこの二つによ
つて決定されておるのでございますので、今後はこれらの点を考えまして、特に公共事業への配置転換を強力に進めたいと考えておるのでございます。
次にこの大きな二というところに書いてございますが、今まで申上げましたのは主として公共事業の問題でございましたが、公共事業以外でございましても、例えば電源開発事業というようなものは財政投融資の事業でございまして、これらは公共事業とは言えませんけれ
ども、やはりこれらの事業、或るいは地方公共団体が単独の起債を以て、行
なつておりますダムの建設事業とい
つたようなものも当然公共事業に準じた扱いをいたさなければなりませんので、この点についても公共事業の例に準じ失業者の吸収の
措置を図るということで、強力にこれらの事業についても失業者の吸収
措置を実施するということにいたしたのであります。で当然の
措置といたしまして、いわゆる
失業対策事業というものにつきましては、公共事業による失業者の吸収
状況を勘案いたしまして、機動的な且つ重点的な運営を図り、併せて能率の増大を図るということをきめたのでございます。
そこでまあこの実施でございます。どの
程度これによ
つて成果が上るだろうかということでございます。で現在のところ一つの目標というものは持
つておりまするけれ
ども、この目標を達成いたしますには相当強く
関係者が協力いたしませんとなかなか実行できない点がございますので、私
どもといたしましては今この強化の方策の細目につきまして
関係省と急いで打合せをいたしまして、来週それを
決定いたしまして地方に通達をするということにいたしておるのでございます。以上が
労働対策連絡
協議会におきまして初めて
決定をいたしました政策、
失業対策でございます。
でなお、先ほど石炭の問題が出ておりましたが、当然石炭
労務者の問題もこの公共事業による失業者吸収率の強化に伴いまして、今後公共事業方面への斡旋も強化されると思うのでございますが、なおこれは余計なことでございますが、この
協議会におきまして、この次から石炭の
労務者の
失業対策問題を取上げることにいたしております。すでに一案が提出されております。これにつきましては通産省所管のことではございますけれ
ども、
労働省といたましても側面から強力に推進いたしておる点でございます。
一応
説明はこの
程度にとどめまして、
あとで又……。