運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-02-09 第19回国会 参議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月九日(火曜日)    午前十一時十一分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    委員            榊原  亨君            吉野 信次君            阿具根 登君            吉田 法晴君            小林 亦治君            寺本 広作君            市川 房枝君   委員外議員    赤松 常子君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君   政府委員    労働政務次官  安井  謙君    労働省労政局長 中西  實君    労働省婦人少年    局長      藤田 たき君    労働省労働基準    局長      亀井  光君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    外務省国際協力    局次長     關 守三郎君    調達庁総務部長 山内 隆一君    調達庁労務部長 百田 正弘君    労働大臣官房国    際労働課長   橘 善四郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○労働情勢一般に関する調査の件  (労働行政基本方針に関する件)  (特需工場及び駐留軍労務者労働  問題に関する件)   ―――――――――――――
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。  お諾りをいたします。赤松常子君から委員外発言を求められておりますが、許可してよろしうございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それではさように取計いをいたします。  本日は広報でお知らせをいたしましたように、前の委員会で表明せられました労働大臣労働行政一般に対する所信について質疑を行うことになつております。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 吉田法晴

    吉田法晴君 先般伺いました小坂労働大臣の本委員会における所信の披瀝は、本年予算に関連してなされました総理大臣以下関係大臣施政方針演説、或いは今後におきます政府方針従つて労働行政をやつて行きたい、こういう御方針てあつた承知をするのであります。ところがその中で、いわば端的に申しますと、独占資本を中心といたします日本資本階級経済政策或いは財政政策等と関連し、その一部として労働行政をやろうというように拝承をするのであります。最近の実際の労働省の動きと関連して考えますときに、かくのごとくあるならば、労働省労働省たるゆえんがどこにあるのか、労働省として資本家労働省たろうとされるのか、或いは労働者を含めて勤労者サービス機関としての労働省たろうとされるのか、この基本的な態度について先ず疑問を持つのであります。労働大臣所信を承わりたいと思います。
  5. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。  いろいろ御意見もあろうと存じますが、私どもといたしましては、日本経済的基盤を完全に確立するということが、大きな敗戦のあと我々のなさねばならん重要な事柄であろうかと考えておるのであります。やはり日本経済基盤を確立せぬことには全体体の国民生活というものの確保も期し得ないであろうし、又日本自身でいわゆる自給自足経済を営んでいるなら又話は別でございましようが、やはり世界各国との間に、或いは輸出貿易を通じ或いは国際的な金融関係を通じて経済交流を営んでおりまするので、その間に処して日本の行く途を誤たざるように持つて行かにやならんじやないか。それには今申したどうしてもインフレーシヨン的な傾向というものは是正をして、この機会に産業基盤を確立し、輸出貿易伸長を期さねばならん、こういう考え方でおるのであります。  そこで今お尋ねの独占資本という言葉もございましたが、私どもはいわゆる独占資本というものはどういう形のものであるか、これは見解によつて異りましようが、吉田さんに実は伺いたいと思うのでございますが、どういうことが独占資本であるか、私はよく了解しておりません。戦前のごときいわゆるコンツエルン形態のものはないと思つております。文法によつて私的独占の禁止というものはなされておると考えておるのであります。そこで今申上げたよう考え方から国民経済全体との調和と均衡を得て国民生活の安定をして行こう、こういう建前で、労働省の施策というものは勿論労働者諸君生活内容を豊かにする、そうして向上せしめるということを目標といたすのでありますが、これも単にこのことだけに専念する余り、全体の経済規模拡大というものを閑却してはならないのでありまして、やはり国民経済全般、或いは国民全体にサービスする、日本経済をよく持つて行く、そうしてその中に駒ける勤労階級の幸福を高めよう、こういう立場考えておるつもりでございます。
  6. 吉田法晴

    吉田法晴君 お話の中にコンツエルンがなくなつたから独占資本がなくなつたというお話でありますが、もつと端的に今の日本に関連して申しますならば、日経連等いわゆる経済団体、財界、こういうものの言うことを、或いはそういう方針従つて労働行政をやられるならば、それは独占資本労働政策労働者が代つてやる、こういうことになるのじやないかという意味で私は申上げたのであります。そうして他方言葉の中にも、労働者生活向上ということは言葉としては一応出て参りました。併してこの演説と申しますか、大臣所信を一貫して承わりますと、実質的に労働者生活向上ようという意図方策が全然なくて、今の言葉によりますと、経済規模拡大というために、全体のために賃金を抑えよう、或いは賃金を上げるとそれがインフレ原因になるからそれを抑えよう、こういう方策が盛られておる。実際的に労働者生活向上というものは全然考えられておらん、こういうことを申上げておるのであります。  大臣所信を一貫して流れるものを基礎にして話をしておるのでありますから、その一部だけを取上げて先ず論議をするというわけには行かんと思います。言葉の中にもございましたが、二十九年度予算が再軍備を絶対的な前提において、そうしてその他の点については国民生活を犠牲にしてもやつて行く、そうしてインフレを抑える。そのインフレ経済目立を防げる或いは貿易伸長を妨げる、こういうお話であります。経済全体の問題についても経済規模拡大或いは国民生活の安定という点においてはこれは恐らく異論はなかろうと思う。私どもも無論を申上げるのではありません。ただそれをどういう工合にしたら経済規模拡大するか、或いは国民生活が安定するか、そこで議論が分れて来ております。私どもは再軍備或いは再軍備に関連する軍需生産経済規模が真に拡大されると思わないし、或いは純消費的なそういう部面が大きくなりますことはむしろインフレ拡大になる。インフレ要素に間違いなくなると信じておりますが、貿易拡大のためにはこれは単に名目的なインフレ防止或いは名目賃金切下げ等によつては達成されるのではなくて、貿易を可能にする日本の自立的な態勢、或いは国際的に、アメリカの言うことだけを聞くというのではなくて、中国を含むアジアの諸国との間に本当に貿易が行われる、こうして、初めて貿易の促進或いは自立経済基礎ができ上ると思うのです。  それからインフレ原因も、過去において終戦直後は軍の無計画的な放出を生産部面に導入しないで、消費的な部面に多量の物資を放出して行つたの原因でございましよう。その後インフレ政策がとられて来た。そうして朝鮮事変の前には繊維その他滞貨がたまつた。これを消化するために滞貨金融等も行われたのですが、擬制的な購買力というものを作るためにインフレ政策がとられて来た。或いは朝鮮事変等もございましたが、その朝鮮事変等によつて経済規模拡大したごとくであつたけれども、それは朝鮮事変という消費的な部面にこの金と物とが注ぎ込まれた。それが経済に還つて来たかというと還つて来ておりません。その関係産業の、或いは工業生産力向上というものはあつたかも知れませんけれども日本経済全体の経済規模拡大したと考えられるかというと、これは大いに疑問があると思うのであります。そういう経済規模の本当の拡大方策という点についても、政府方針と私ども違つた意見を持つておりますが、それをここでまあ深く論議しようとは思いません。  併し事労働委員会或いは労働行政に関連をいたしますと、労働者生活向上と安定、そうしてそれによる生産性向上というものが生産力発展或いは経済規模拡大のこれは大きな要素である。通産行政的な見解から、或いは今の自由党の言われるよう財政方針から労働行政をやつて行かれるなら、私は労働大臣は要らんと思う。労働省は要らんと思う。担当しておられます労働者生活を通じて経済規模拡大生産力向上というものを図る工夫をされることが労働大臣の私は任務だと思う。その点は考えられておらんのじやないか。或いはインフレ防止或いはそのためにする名目賃金の抑圧、こういう方策から考えておられるところに労働省労働省たるゆえんがないのじやないか。労働者の実質的な生活の安定と向上とがどこに図られようとしているか。ないじやないかということを申上げて、先ほどのよう議論をしたわけであります。重ねて一つ御答弁をお願いいたします。
  7. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 労働省要らんじやないかということですが、まあそういう御議論も、そのまま行けば自由党内閣は要らないということだろうと思うのです。それは、まあ仮定ですが、社会党内閣を組織されて、労働省というものがその中で活動される場合に、やはりその持つ全体の経済政策、政治的な考え方なりの線に沿つて労働行政をやられるであろうし、我々のほうとしても党の基本方針というものにやはり労働政策というものがあるのですから、それに副つた労働政策をやつて行くことは、これはもう当然なことだと思うのであります。ただ一般的に言えますことは、御心配になるようなその非常に資本の蓄積或いは資本活動力というものを充実せしめようとする余り、そのしわが労働関係の面に寄つて来るということをできるだけ少くする。そういう虞れのないように持つて行くということが、これはやはり自由党内閣であろうと或いは社会党内閣であろうと、労働行政を担当する者のとるべき途ではなかろうかと私は思うので、その意味において私どもは今度の緊縮財政、超均衡予算ともいわれるこの予算の中で、労働関係のものはこれはもう卒直に言つて各省よりも一番私は減り方が少い。むしろ殖えているのです。実際四%くらい全部で殖えておりますから、一般会計で以て。なお特別会計で申上げれば、この前にも申上げたように、労災病院が四億円が十一億円になつているとか、或いは新らしい考え方として職業補導施設を作るとか、それは四億円の経費を計上するとか、そうして住宅が二十億が三十七億の予算になつている。そうした特別会計の面では非常にまあ金を出さしているわけであります。  それでまあこれはどういう点を特にそれじや実際的にいかんと、政策全般についておつしやるのか、私もよく了解できないのでありまするが、私ども考え方からすれば、一国が独立国としてありまする場合に、それはもう非常に理想的な形て言えば、防衛力なんていうものは要らん、なくても済む。これはもう望ましいことであるに通いないと思うのでありますが、やはり独立国である以上自分の国を自分防衛するということは現在の常識であると考えます。防衛するに足りるだけの力というものはなければならん。そこで現在防衛力がないから日米安全保障条約によつて日本防衛アメリカに分担さしている。そこで先方の防衛力がだんだん少くなつて行くというこの条約の精神によつて防衛力を少くするというのですから、アメリカが少くなるに従つて日本防衛力というものは漸増して行く、まあこういう私ども考えなんです。これは常識だ、それに要する費用というものは日本国財政の中からできるだけ出して行くということは、これは再軍備でも何でもないので、これは世界あらゆる国、如何なる国に対しても適用される問題であろうと思うのです。或る国は軍備を持つておる国もあります。併し少くとも軍備に至らんまでも防衛力を持つということは当り前のことだと、こう思うのです。そこで申上げるまでもないことですが、そうした金をどうして出すかと言えば、結局日本は資源が少くて土地が小さい、そこで輸出入貿易によつてその資金を賄わねばならない。そこで昨年度などは二億ドルからの逆調になつておる。こういう情勢で進んで行くということは結局日本経済の破滅になつてしまう。これはどうしても輸出能力の増強といつたようなものを図らなければならない。それには何としても個人生活を一番苦しめるのはインフレだし、又輸出という一番日本の大事な仕事の障害になるものはこれ又インフレなんだから、インフレ的傾向というものは思い切つて切断するようにしなきやならん。本来ならばもつと早くすべきことだつたのですが、朝鮮事変その他の予期せざるものに酔うて、日本経済が一時的な根のない好況に酔うてここまで来てしまつた。ここでは本当に構想を新たにしてインフレを断然切断するという、こういう気持にならにやならんというので今度の予算ができておるわけです。その予算の範囲内において今私の申上げたようなできる限り労働関係においては従来よりも予算を殖やし、又労働者諸君生活向上というものを図ろう。それにはやはり名目賃金ばかり上げておつたのでは駄目なんで、名目賃金を上げるということは結局物価が非常に上つて来る。インフレーシヨンが非常な勢いで高進しておる時代には、それは賃金物価に追い付くようにさせろということでベース・アツプも意味があるのですが、物価が大体安定しているときは、それへ賃金が上つて行けば、どうしてもこれは消費購買力の増加になる。消費購買力が殖えれば又物価が上る。物価が上れば又賃金だということで、どうしてもいたちごつこになつちまうので、これはどうしても国民経済全体からこれを考え直してみる必要があるのじやないか。  そこで日本の国のことだけ言つてつて客観性がないから世界各国情勢も試みに見てみる。国民所得全体が日本は小さい。そこで国民所得の中において占める賃金俸給の割合というものがどのくらいかというと、この間御説明申上げたように昨年末は四九・八%、約半分になつておる。それはどのくらいの人が取つておるか、三六%ぐらいの人が取つておる。イギリスなどではこれは九一%、殆んど雇用者でありますが、その九一%の人が六四%か五%程度でしたか、六五%ぐらい取つておる。アメリカが八二%ぐらいの人が六四%ぐらい取つておる。そういう情勢から見てみると、日本のこの賃金俸給の全体が国民所得の中において占むる比重は相当重いのだ。だからこの名目的な比重を幾ら殖やしても、今申上げるように名目的なものが上れば名目的な物価を呼び上げるのだから、どうしてもこれは一つ実質賃金向上に力を注がなければならん。とにかく物価が上るということを抑えて、そうして政府は四月からこの新予算減税をする。そうした減税その他の措置によつて、或いは福利施設その他によつてできるだけ実質的な賃金内容を上げる。そういうことでないと、これは日本経済全体が持たないのじやないか。それでまあ今頃になつてドイツあたりに行つて見て来た人が言うのですが、ドイツに教えられるまでもない。皆がその気になつて労働階級というものがあり、資本家階級というものが又あつて、この二つの階級が対立して行くというよう考えを捨てて、お互に日本経済全体というものを睨み合せ、協調してこの危機を切抜けるというような気分になければ、これは悔を千載に残すのじやないかというふうな考えを持つておるのでございますが、まあ余り長くなるといけませんから。
  8. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ再軍備問題が出ましたけれども、これについて長く議論すべきところではありませんが、一応国民の声を以て反論をしておきたいと思います。  先般京都市長の選挙に参りました際に、一市民、これはどちらかといいますと、大野木会に入つておりまして、自由党系市民だと思うのですが、その人がこう言つた。我々の生活ができないのに再軍備なんということがどうして言われるのか、国民生活の安定した後にこれは自由党としても考えるべきだろう、こういうことを申しておりました。これは恐らく国民の素朴な声の代表的なものだと思うのです。私どもの原則的な再軍備は絶対反対するという点をおいたとしても、こんなに生活ができない際に再軍備なんと考えることはもつてのほかだというのはこれは素朴な国民の共通的な心情だろう。市民の声を以て、一京都市民の声を以て反論をしておきたいと思います。  それから今のお話の中で、インフレ賃金の問題というお話が出表したが、これは全般小坂労働行政の中心的な問題だろうと思います。インフレがどうして起るのか、あたかも賃金上昇、名目的な賃金上昇によつてのみインフレが起るかのようお話をされるのは、これは小坂さんとも覚えぬ。国民経済全体を考えられて、消費的な部面、それから生産的な部面、それから経済全体の中で何がインフレ的な要素をなしておるか、これは私が申上げるまでもなく、小坂さんといえども恐らく賃金だけがインフレ要因だとはお考えにならないと思う。それから従来の賃金問題の実績を考えてみましても、物価上昇生計費上昇あとから賃金改訂という問題が行われている。従つてインフレ時代には、インフレのテンポとそれから賃金上昇といいますか、インフレに即応した是正との間には鋏状の差ができることも、これも御存じだろうと思う。当面の今年の賃金問題にしても、或いは昨年の公務員のベース・アップの問題にしても、人事院の勧告を待つまでもありませんが、物価上つた生計費上つた、それに応じて賃金を上げんとするならば一三%ほどの賃金を、昨年の五月でしたか、五月において直すべきである、こういう勧告が出た。それに対して政府は何%というものを上げたのであります。従つて五月の数字でも四%近い差ができておる。その後の物価騰貴を考慮に入れれば、恐らく一割近い生活切下げというものが公務員においても行われておる。昨年末以来民間産業においても賃金問題が或いは賃上げ運動が行われておりますが、それは昨年の初め以来の物価騰貴に即応して、或いはこれに対して実質生活を合わせる、是正するために賃金問題が起つておる。これはもう明らかだと思う。そういう事態をおいて、賃金を上げればインフレが起る、こういう素朴な、恐らくそれが不正確だということは小坂さん自身が知つておられると思う。その知りながら、賃金を上げることがインフレ原因だと言つて、先ず賃金を抑えることから始められるところに、あのドツジさんのときにもそうでありましたが、労働行政資本家的性格を私どもが言うわけです。インフレ賃金との関係については一つここで正しい見解を御表明を願いたいと思う。  それから国民所得の問題について、もらつた数字によると、二十七年度で四七・七%、それからもらつた表にはございませんが、あなたの所信の中には四九・六%と書いてあります。問題はこういう基礎が、これは賃金、それからその基礎になつている中には大臣も含み或いは重役さん級の勤労所得も入つておるのだと思いますが、国民の総人口の中に占める勤労所得者の数というものを考えなければなりません。ただ四九%あるから、幾らあるからということでは、これはただ抑えるだけの材料にしかならん。ですから問題は、この表によると、全国都市統計で一万七千幾らという数字が出ておりますが、実質生活が問題なんです。或いは実質賃金が問題なんです。実質賃金はやつとこさ、多少インチキがあるかも知れませんが、労働省統計では戦前水準に達した、こう書いてある。問題は、その実質資金或いは生活を安定させる、恐らく自由党の場合には戦前水準復活がせいぜいだろうと思うのですが、私ども生活水準戦前復帰でなくて、もつと上げなければならん。これは国際的に見て、生活水準を比べればはつきりする。そこで問題は、労働者生活押下げる、実質的に押下げることによつて経済規模拡大を図ろうとするのか、それともその向上の上に経済規模拡大を図り、生産力発展を図る、こういうことなのか。その点について述べられておりますのは、ただパーセンテージが多いからこれを抑えなければならん、こう御説明がなされておりますが、それは間違いじやないか。或いはインフレの問題についても、インフレの決定的な要因は別にある。これは戦後の、戦前に遡つてもいいのですが、インフレの歴史を考えてみればこれは明らかだと思う。  なお労使関係のことが言われますが、労働者だけ抑えるのでなくて、労働省としては、たとえ自由党であろうとも、これは資本家も若し抑えるとするならば抑えなければならん。或いは賃金問題について双方が対等の立場で交渉をし、そうしてそこに貨金問題をきめて行くという実体を作ることが問題なのに、或いは標準賃金制というようなもので以て抑えて行こう、或いはこの中に、組合についてもまあ指図がましい方針が出ております。これはこの所信だけでなくて、労働省機関紙というのですか、準機関紙的な「週刊労働」にも出ておりますが、特定労働組合を育成しよう、こういう意図がおありのようですが、MSA態勢の中で、特定政府の言うことを聞く労働組合だけを育成して行こう、こういう御方針なのか、それも併せて一つ承わりたい。
  9. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたしますが、先ずインフレーシヨンはどうして起るか、これは賃金だけから起るじやないというお話ですが、私は何もインフレーシヨン賃金から起るとは決して一言つておりません。インフレーシヨンは御承知ように国の財政に一番問題があると思います。財政金融面において資金撒布超過がなされるときに一番顕著になると思うのです。そういうことは、大体において戦争するとか非常な饑饉があつたとか、そういうようなことで、資本が非常に過小になつているその資本を埋めようするときに、生産が伴わないで擬性資本が出て来るというときに起ることは、私から言うまでもなく御承知のことだと思います。そこでこういう政策を極力とつているわけなんであります。  今度の予算につきましては一兆円で抑えられるかというようなことをいろいろ予算委員会でも御質問を受けているわけなんで、そういう際に一兆以内で予算を組む、そうして勿論非常に均衡の度合いを強くして、財政的な赤字或いは金融的な赤字を出さんということでやつているわけなんで、その際において、労働賃金の面においても、個人消費、家計の面においても、全部が合理的な健全性を目指してやつて行かないと、この大きな経済政策の転換というものは成功できないだろう、こういうふうに考えるわけなんでございます。  過去の二、三年の物価の足取りを見てみましても、結局大きなインフレーシヨンというものはない、じりじり漸騰傾向になつている。そういう際に何がそれを呼んでいるかというと、勿論これは政府赤字的な支出というものも多少は今までなかつたとは言えないと思うのですが、やはり賃金の面においてその物価漸騰を呼んでいる。賃金というものは大体消費的なものなんです。消費が殖えるということが物価を呼び上げるということは否定できない、誰も否定できないと思うのです。どうもそういう傾向に来ているのではないか。終戦後の三、四年というもは非常なインフレーシヨンがあつた。そういう際に賃金の追つかけるということは、むしろこれは追つかけ方が少いと言えた時代もある。併し今は違うと思うのです。それは世界各国でそういう考え方をとつている。日本だけが終戦直後に考えたことを金科玉条として、いつまでも同じ木魚を叩いて同じ念仏を唱えておる日本は、世界の進運から取り残されてしまう。そのときに臍を噛んでも仕方がない。こういう意味で、決して労力問題だけに、賃金にしわ寄せして、インフレ原因賃金に持つてつて労働階級を苦しめ、或いはその生活内容向上を無理やりに抑え付けるというけちな考え方は毛頭持つておりません。全体として均衡のとれた政策インフレ阻止の政策輸出貿易伸張の政策というものを全体的に歩調を合せてとつて行かなければならない、こういう考えであるわけであります  次に国民所得内における賃金俸給比重というものについてのお話があつたのですが、それはどのくらいに取つているかということにならなければ割合が出んじやないかと言われますが、その通りでございます。でありますから私はさつきも各国の雇用所得者というものの数を申上げた。日本の場合は御承知ように、農業、中小企業が多いので、これらは皆経済審議庁の調べによつているものでございますが、個人業種所得が非常にパーセンテージが多いのですね。イギリスなんかは個人業種所得が殆どない。全部雇用所得で、九一%までそうである。日本の場合は三一%くらい雇用所得者、その割合を取つて見ますと、全体の少い割合の人が相当多数の割合を賃金俸給において占めているということを申しているわけなんです。ですから全体の国民経済というものは一つ組合せができている。日本日本自体の一つ経済構造というものがあるわけなんですね。日本は中小企業が多くて、農業が相当に国民の過半数を占めている。そういう経済構造がずつと日本としては、日本資本主義革命をやつてからの形が、経済構造ができている。それを終戦後だけ、全体の経済機構が変らないのに、所得の面だけ賃金俸給をべらぼうに伸ばして行けば、そのしわというものはほかに寄る。これは決して日本経済を健全にするゆえんではない、こういうことは言えると思うのです。私はその点を強調しているわけなんであります。  それから何か特定の労組を育成する方針があるのじやないかというお話ですが、私はそういうことは別に考えておりませんがやはり民主的な労組というものに伸びて行つてもらいたい。労働組合法にもありますように、政治団体では労組というものはないのであります。やはり労働組合という場合は政治的なものを主とするよう労働組合であるか政党であるかわからんよう労働組合は、若しありとすれば甚だ不健全である。やはり労組というものは経済問題についての経済基盤を強化するための結合体であるこういうことを考えております。それにはできるだけ民主的に政治的ですと或る程度指導者原理というものが働いて、上から下に強制するようなことができますが、労働組合というものはできるだけ民主的にやつて、皆さんの意見をまとめる労組であつてほしいという考え方です。決して特定のものを育てるという意味ではございません。  殊にMSA受入態勢に有利なようにというお話もございましたが、MSAの問題は今朝の新聞にも出ておつたのですが、アメリカにおいても最近反動が出ている。これは非常にアメリカにとつて不利な協定であるというようなことも言われております。我々としてはやはりできるだけ足しになるもの入れて、早く経済を回復させようと思つておるのでありますが、どうもアメリカの手先になるのじやないかというよう議論が非常にあるようでございます。最近アメリカにおいても、日本に有利過ぎて、こんなものはよくないというようなことを書いている新聞があります。新聞の名前は忘れましたが、二、三あるようでございます。そんな情勢でございまして、決して何か一部の方がお考えになるような、日本の利益を図らんで外国の利益のために奉仕するという考え方のものではないのでございます。今の日本経済基盤というものは、こんなことで私は皆でいい気になつて、ある物をみな食つちまえというようなことになれば、実に脆弱なもので、累卵の危きに立つたものである。私は日本経済を回復するために、全般を思い切つた体制にしたいというふうに考えております。
  10. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連して。労働大臣説明を聞いておりますと、又この前のご説明を聞いておりますと、私たちと出発点が違うようです。例えば物価賃金の問題につきましても、すでにバランスが取れておつて、そうしてこれから先もまあ従来の惰性によつてベース・アップを目標にしてストライキを繰返しているというようなことを言われておりますが、今の労働者賃金で、果して大臣が言われておられるように楽な生活をしておるかどうかという問題についてどういう分析をしておられるか、お尋ねしたいと思います。  一例を申上げますと、私たちのところの資料で見ますると、或る炭鉱の実態生計を調査してみるならば、約九千人の一つの炭鉱を対象に調査した場合に、この九〇%近くが高利貸に悩まされておる。平均二万円の借金をしている、こういうことがはつきり出ております。そういう借金に追われておりながら、それでは政府物価を安定するために、物価のこれ以上の上昇をストツプするよう政策を何を立てられているのか、それよりも労働者賃金のストップをされている。今でさえもそういう九〇%にも近い人が約二万円に近い借金をしている。これは炭鉱の街に労働大臣つて来ればわかる。特殊の関係もあるかも知れませんが、如何に高利貸が横行しているか、こういうようなときに際して今のよう賃金で辛抱せよというようなことは、私は余りにも現実を知らない大臣が東京におつて机上プランだけでやつておられると思う。大臣こそ従来の惰性で考えておられる。何かそういう点について抜本的な問題を持つておられるかどうか、こういう問題であります。  例えば先ほどドイツの問題が出ましたけれども、それではドイツの炭鉱はどうなつておるのか、英国の炭鉱はどうなつているか、日本の炭鉱の現実はどうか、これをこのまま何の対策も立てずにそうして経済面から、日本労働者よし辛抱してくれということでやて行けるかどうか、この問題について一つお尋ねいたします。
  11. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は決して現在の労働者諸君生活が豊だとは考えていないのです。これでいいのだとも勧化テいないのです。ただ今申上げたように、国民所得の中で非常に占める割合が上つていることはこれは数字によつてはつきりしておる。戦前三九%だつたものが昨年は四九%になつておる。これはさつき申上げましたよう日本の特殊構造がありますからそれで非常にアンバランスになつておる。そのアンバランスというものは日本経済全体をこわしてしまうのだ、こういうことを言つているわけなんです。今の二万円の借金というお話は、私は特殊の例だろうと思いますが、統計的に見まするというと、最近相当賃金も安定して参りまして、昨年の八月は全都市の労働階級労働者諸君の家計費調査によりますと平均二千円ぐらいの黒字になつている。暮にやつぱり闇米や何かの関係でございましよう、減つて来て、千円以下になつておる。併し貯金も千円近くもできるということに数字の上ではなつております。そこで私どもとしては、この際賃金を上げるということよりも物価を下げるというほうが大事だと、こういうことを考えております。物価を下げて、そうして賃金の実質的な内容をよくして行くということでないと、これは名目賃金は上りますが、御承知ように製品の価格というものが上るのですね。そうすればそれだけ日本商品というものが高いということになるのです。高ければ売れんのですよ、売れなければ結局貿易がそれだけ逆調になる。そうすると結局日本のこの特殊性ですか、まあ大体食糧から輸入してかからなければならない。お互いに着ている洋服の羊毛は輸入しなければならない、シャツの綿花は輸入しなければならない、そういう輸入資金がなくなるということは、日本経済がつぶれてしまうということですね。ですから私は一つ労働者各位の生活内容というものを上げるべく保護すべきだと考えますが、一律にただ賃金を上げてくれという考え方、これはもう私は考え直して頂きたいのです。(「一律ということは」と呼ぶ者あり)やはりベース・アーツプということです。応能的に、非常に能率がよければそれで取る、そういうことでないと一律のベース・アツプというものは、今申上げましたように全体の中に占める割合が或る程度限界に達しておる。これは経済学者が皆言つておるわけなんです。  そこでそういう状態になつたので、これは本当に何とか考えなければならない。我々だつてできるだけ上げます上げますと言つておれば、こんな楽な話はない。併し気が付いたときはもう足の下が崩れてしまうということになつては、政治家としてお互いにやつている以上、それは実に子孫に対しても済まん。どうしてもこの際には大きな転換を必要とするこういうふうに思います。
  12. 阿具根登

    ○阿具根登君 労働大臣が言われるのはわかりますけれども、実績の上に立つて私はそういう政策を立ててもらいたいと思うのです。例えばそれでは、政府は今おつしやつたよう物価を下げるべきであると言つておる半面には、どんどん上つておるのが現実だ。鉄道でも下げるか、米も下つておるか、電気は下つておるか、砂糖は下つておるか、国民の実際の生活に切つても切れない衣食住ですら一つも下つた傾向はない。そういうやつを本当に実質賃金を上げるためならば、労働省としてはどういう政策を持つておるか。何をどれだけ下げて、君たちの実質賃金を上げるんだと、こういう確信がおありだと思いますがその点をお聞きいたします。
  13. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この間も大蔵大臣や経審長官が申上げておりましたが、大体五%から一〇%物価を下げるという固い決意で臨んでおるわけです。今電力料金のお話が出ましたが、私は電力料金は上げたくないと考えております。とにかくいわゆる物価の全体をずつとずらして上げて行くというベース・アップという考え方ですね、これはどうしても消費を呼びます。これは誰が何と言つても確かにそうなんですからね。(「それだけじやないんだよ」と呼ぶ者あり)そこでそれをやつて行くことが日本経済をつぶしてしまうということになるということを考える。(「資本家的だ」と呼ぶ者あり)これは決して資本家的でも何でもないですね。国民経経的に見た場合に理論的にそうなるんですね。それは大いに強調したいと思います。
  14. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういう数字を見てそれだけを強調しておられますが、日本の現代の労働情勢から見てストライキを毎年々々やつておる。労働大臣がいつも顔をしかめて出ておられ、この前もスト規制法もあれだけ奮闘して出して、労働大臣の思う通りになりましたけれども労働者賃金は幾らもらつておるか。我々が調査したところによれば坑外の労働者であつても八千円です、月に。残業或いは日曜出勤した人が一万円から一万二千円、一万二千円は最高です。実際は現在の炭鉱の不況からいたしましても殆んど坑外八千円から九千円までです。こういう現実の中においてストライキをやつておる。私が先ほど言つた物価賃金のアンバランス、それをただ数字の上から大臣はこれはバランスが取れておると、こういうよう言つておられますけれども、実体は私が申上げましたように、そういう環境の中にあるからこそ九割も近い人が高利貸に悩まされておる。こういう現実が起りつつある。而もそれが日本の基本産業、この日本の基本産業に対する考え方をどういうように持つておられるか。ただ賃金だけで割切る問題であるか、或いはこの機構そのものに対しても抜本的にメスを加えなければできないのか、その点はどういうようにお考えになつておるか、これをお聞きしたい。
  15. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) やはり政策というのは、相関連するものでございまして、まあ一つの例でございますが、というのは、一昨年の炭鉱の大ストライキですね、非常に出炭量が減つた。そうすると石炭を使つてつておるこの工場では、これは危くてこれだけに依存できん。それじや重油に切替えようじやないかと、御承知ように重油に切替えが行われておるわけです。そうすると、賃金を上げようと思つてつたストライキが、結局石炭そのものの需要を減らてしまうということになるんですがね。ストライキということは、お話が出ましたが、私はできるだけ一つ話合いによつてつて頂くようと特にお願いしたいと思うんですね。特にストをやるために相当の費用がかかる。そのストのために賃金の中から千円なり二千円なりというものを毎月組合に払う、結局ストをやつてべースを獲得しても、実質において収入は殖えないという場合もあると、こう思うのです。ですからそういうことは成るたけ最後の手段にして、何か組合というものはストをやらなくちやいかんよう考え方はできるだけ一つ……(「させるほうが悪い」と呼ぶ者あり)させるほうが悪いというお話もありますが、それはできるだけ経営者側においても譲るべきところは譲つてもらいたいということで、私なんか余り軟弱な政策だといつて、一時は評判もよくないかも知れませんが、軟弱でも何でも、できるだけ話合つてつてもらうようにお願いしたいと思つておるわけです。決してさつき申上げたように今の給料が十分であつて、これ以上もう上げる必要はちつともないんだということは、私は毛頭言いませんが、ただ日本経済がよくならんというと、個人が少し給料が殖えたと思つて喜んでも、これは結局インフレになつて自分の買う物を少くしてしまう、購買力そのものを減らしてしまうのです。実質的にそれじや駄目なんですから、そこのところは思い切つて一つ政府のほうでもいろいろ直すべき点もあれば考えて、できるだけ労働者諸君にも御納得を頂けるようなことをしようと思つておりますが、それにしてもやはり余り、これじや食えんのだ、どうするんだと言つても、これはそのそう名案も出て来ない。或る程度耐え忍んで、そうして働き出すという考えにならんと、私は日本そのものが危いように思うのです。
  16. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣の話を聞いておれば、まあ労働者だけが辛抱して行け、ストフイキをやらずに耐え忍んで行けと、こういうことに尽きると思うのです。なぜストライキをやらなければできなかつた労働者自分賃金を犠牲にしてストライキをやつたら、非常に生活は窮屈になるのです。いつかも申上げたと思いますが、その労働者がなぜストライキをやらなければできないかという問題については何らお考えになつておらない。ただストライキという現象だけをつかまえて、そうしてストライキをやるからまずいんだ、ストライキをやらずに辛抱しなさい、そうして働いて金を取りなさい、こういうことは、これはもう何も新しい問題でなくて、資本家階級の人が皆言う言葉であつて労働大臣は一方的な言棄だけを聞いておる。労働者言葉は本当に聞いておられなかつたのではないか、こういうように私は考えて非常に残念に思うわけです。  先ほど話が出ましたように、ドイツではストライキを炭鉱も全然やつていない。ストライキをやらなくていいような機構になつておることは御承知のはずです。英国でもそうです。それで最も貧乏な、そうして国民のたくさんおるこの日本が、なぜ資本主義そのままの今の形態で行かねばできないか。私が本当に大臣にお聞きしたいことはわざと避けておられる。そうしてお互いにストライキをやれば国の経済も破綻するのであるから辛抱してくれ辛抱してくれ、ただ労働者だけに辛抱せよ辛抱せよと言つておられるけれども、それじや経営者はどういう態度をとつて来たか、現在とりつつあるか。日本の炭鉱なら炭鉱というものはどういう現状にあるかということは百も御承知のはずだと思う。それならば日本の置かれているこの現状を十分見たならば、先進国の経済の現状も労働組合のあり方も、資本家のあり方もとくと御承知労働大臣であるならば、もつと私は突込んだ政策があるべきである、こういうように思うわけです。  それからもう一つ、どうせ関連していますから質問いたしますが、先ほど労働大臣の話の中で、労災保険で十一億の予算を取つて労災病院の新設を行うということを……。
  17. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 各論に亘るのは今日午後から又続行しますから、一つ総括論のところでお願いいたします。  それではちよつと労働大臣に今の問題で関連的にお尋ねしたいと思いますが、私簡単にお尋ねいたしますから簡単で結構です。先ほどの労働大臣お話を承わつておりますと、今年度以降貸金べースの変更は好しくないので抑えたい、こういう意味発言がありましたが、その通り了承しておつてよいですか。
  18. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 抑えたいというのですが、私はできるだけ下げてもらいたいと思つております。ただ抑えるという権能は我々にはないのです。要するに労働協約によつて協議をして、そうして賃金を決定するという自主的な立場をとつておるわけですから、政府が関与して抑えるというようなことは考えておりません。
  19. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 要するに産業政策労働政策として、自由党内閣賃金ベースの変更は、上昇はこの際は回避したい、こういう強い意思であるということは間違いないわけですか。
  20. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 賃金べースはできるだけ、下げてもらいたい。その理由は今くどくど申上げたわけです。
  21. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでいいわけですね。そうしますともう少しお尋ねしますがその賃金ベースの上昇を抑えたいという理由が、国民総所得の半ばを勤労所得が占めておるということが一つの大きな理由になつておるようですが、それで大体よろしいですか。
  22. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そうですね。その基礎はさつきも言いましたように、賃金俸給によつて生活をしておる人の割合が三六・七である。而もそれが半ばを占めておる。そういうところに国民経済構造上において限界が来ておる、こういう見方です。
  23. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうしますと、只今の税制から見た場合に勤労者の負担をしているいわゆる勤労所得というものについて税の捕捉が完全に行なわれて私はいると思うんですが大臣はどう思いますか。
  24. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その通りです。
  25. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうしますとその他の法人とか個人業種所得、こういつたような税の捕捉というものは完全に行われていると、こうお考えになりますか、どうですか。
  26. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 比較の問題ですけれども、それは勤労所得のほうが源泉徴収ですから、それはずつといいと思います。
  27. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) あなたも経済の専門家なんですが、例えば遊興飲食税一つつても、或いは大企業の法人税をとつても本当に厳格に課税されていると、こうお考えになりますか。
  28. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 遊興飲食税は御承知ように府県税でありますし、又団体交渉によつて納めるような恰好になつておりますから、これは余り完全だとは言えませんね。
  29. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうすると要するに今のお話では、勤労者の所得税というものは非常に完全に捕捉されている、その他の法人所得、個人業種所得というようなものはこれには及ばない、こういうことははつきり言われる。そうすると私も予算委員として当時相当追及したことがありますが、只今大蔵省が算定している国民所得ですね。国民所得というものの計算の基礎をなしているものは、毎来の歳入でも要するに所得額というものが分配所得としていつも計算の基礎になつているように私は思うんですか、その点はどうお考えになりますか、
  30. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その点今お話ありましたように遊興飲食税、入場税というようなものはまあ我々としてもいろいろ考えているところもあるのですが、入場税のほうは今度国税のほうに移しました。
  31. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) いや、それはただ一例を申上げただけです。
  32. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 遊興飲食税のほうは従来の通りになつておりますけれども、ただ言えますことは、そういう所得全体が非常に少いということなんですね。やはり個人業種所得のほうは、これは大半はやはり農村におる方或いは中小企業の方、これは非常に税金を少く納めておるかどうかということは、これはどうも私は相当程度ちやんと納めておられると思つております。それだけ馬鹿に少いということはないと思います。
  33. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私が今御質問申上げたのはそういうことでなくて、只今大蔵省或いは経済審議庁あたりが計算しておる国民所得というものは、非常に計算のしにくいものである。捕捉のしにくいものである。又これを年によつてにわかに大変動を起すよう数字を出すことも困難である。いわゆる税収のやはり無理からんところの根拠数字に一応使われておる。従つて歳入も各種の税収ですね、その税収というものを基礎にして、大体国民所得は税収の何倍になつておる、こういうような比較論がいつも予算委員会では説明せられるわけですが、そういう意味から言えば……。
  34. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 委員長のおつしやることはよくわかります。こういうことでしよう……。
  35. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) いや、みんな聞いて下さい。そういうことだから、捕捉がうまく、均衡が取れていないものを土台にして国民所得というものは計算をしておる。その国民所得の中で四九%勤労者の所得があるから賃金は上げなくてもいい、そういう理論は、少くとも素人理論としてはいいと思うけれども小坂労働大臣のいわゆる経済通の理論としては少し飛躍をなさつていやしないか、こういう工合に私は受取るのですが……。
  36. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) おつしやる意味はよくわかります。そこで結局ここに何%という所得を出してもこれは当てにならんのじやないか、勤労所得のほうははつきり所得が出ておる。個人業種所得のほうはあいまいだから、どつちが多い少いと言つてみても実態は不明確じやないかという御質問だということはよくわかります。これはそうじやないのでして、これは比率でございまして、勤労所得のほうはぎりぎり完全に取るということは、これは昔からあるわけで、最近取れているわけじやない。この比率というものはずつとあるわけなんですね。只今私申上げましたように、戦前はこの三九%、それが四九%、これは取られる対象も税の取り方も別に変つておるわけじやないのでです。  もう一つ国民所得というものは税金から取つておるわけじやないので、これは御承知よう生産国民所得、分配国民所得とありまして、その双方の総合したもので計算しておるわけです。税が幾ら取れるから国民所得は幾ら、こういうふうに類推しておらんのです。税は税、国民所得は審議庁において商品の年産数量というようなものから生産所得を出す。それが受けて行くルートに従つて分配所得を出す、こういうことで基礎が違つておるわけです。
  37. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それはいつでも予算委員会でも論争になるところですが、政府のほうは常にそういう御説明なんです。併し実際に税の捕捉すら十分にできないものが、どうしてこの雄大な国民所得の捕捉が完全にできますか。できないから従つて予算説明上の巧みさを得るために、現実に把握し得る税収額というものを基礎にして、それの何倍ぐらいならば国民経済は立て得るであろうというような一応の頭の中で構想を描いて、そうして国民所得というものが計瞥されておるということは、大体これは常識になつておるわけです。私が申上げたいことは、戦前から同じよう勤労所得は得ておるというけれども、私は勤労所得の税金が高過ぎる。戦争前に千二百円が免税点だつたのですが、千二百円は今三百倍にしてみれば三十六万円です。そういうところが免税点になつておるのが今ずつと切下げられておる。従つて勤労者はまじめに百パーセント税を納めながら、而も納める人が非常に多くなつておる。これは戦争前と戦後との非常な大きな相違点ですね。そういうところが細かく分析されないで、ただ出て来た、役所で出て来た数字だけを根拠にして、賃金ベースの引上げは好ましくないのだ。こういう断定を労働大臣が下されて、そうして労働行政を行われるということは少し急に過ぎやしないかという工合に私は耳に響くものだから質問を申上げているわけです。
  38. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたしますが、実数は、例えば昭和五年をとつてみますると、全体一〇〇として見ますと、農林業が四七・五%、非農林業が五二・五%。それから二十八年をとつてみますと、農林業が四四%で非農林業が五六・〇%、まあ多少非農林業のほうが殖えておりまするけれども、それほどこの大きな全体のパーセンテージを狂わすほどの変化はないと思う。一つ傾向として比率というようなものをお取上げ願えればいいので、何もこれが一%殖えたからどうとか、二%だから限界だとか、そういう細かいことではない、大体半分まで来ておる。そうした目安が一つの判断の資料になろうかと存ずる次第であります。
  39. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうするとちよつと私もう一点だけお伺いいたします。大体賃金論のほうは私もまだ今の大臣説明では完全に了承できない立場に、今考えを持つております。もう少し議論をしたいのですが、時間がありませんから又後日に譲りますが、次に物価論のほうですが、今物価を五%なり一〇%下げたいとおつしやつたのですがね、これは贅沢品を下げられても勤労大衆は別に問題ないので、直接消費物資、家庭消費物資でなければならない。ところが現実に先ほど全体のことが問題になつておりましたが、最近の市場を御覧になればわかりまするように、もう砂糖が非常に値上りをしておる、それから食料品が非常に値上りをしておる、そこへ豆腐が値上りをしておる、どんどん最近一割以上は上つておる。一割下るというのじやなくて一割以上上つておる。これはもう現実だからどうしようもない。こういう工合に現在行われておるのだが、今の小坂労働行政の中で説明されたことと少くとも物価面では逆現象が起きておる。これについてどういう政策をおとりになるか、これを伺いたい。
  40. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 最近そういう物価変動がありますことは御指摘の通りだと思いますが、これはまあ結局一つの思惑的現象がどうしてもありまして、例えば外貨を規制しなければならん、非常に手持ち外貨が減つて来ておるので、それで外貨予算を徹底的に殖やす、こういうことは当然のことなんですが、そういう話が出ますとすぐに見越し輸入ができて来るとか、今豆腐なんかのお話が出ましたが、それでは大豆ということですぐそつちのほうに思惑が行く、そういうようなことで一時的に今ちよつと変調を来たしておる。これは外貨予算の扱いというものはよほど上手にやらないと、大蔵大臣もそのことで特に一萬田日銀総裁とも会つたようですけれども、やつぱり全般政策として物価を下げるという方針財政といわず金融といわず、外貨予算の使い方といわず、全体的にそこへ持つて行かなければならないと思います。
  41. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そこで外貨予算のことで触れたから更に附加えますが、我が国はとにかく国民経済を維持するのに輸入物資を相当仰がなければ維持できないわけです。そういう場合に外貨予算がこういう工合になつて、幾ら物価の値上りも止むを得ないということで政策がないということであれば、これはやはり非常に生活の破綻を来たすことになるので、僕としては思惑とか何とかいう表現は非常に穏やかでないと思うが、要するに現実に値上りしているこの裏を考えてみれば、私は小坂労働大臣がそれだけ労働行政について抱負経輪を得たことを行われようとするならば、企業経営の面についてもつとも良心的な、もつと道徳的な経営を経営者諸君がやるように私は強力な指導をすべきだと思うのです。そういう点をしないで、徒らに労働者階級だけに政策を以て望むということは私は過ちじやないかと思う。弱者を非常にいじめるものじやないかというふうに私は言わざるを得ない。例えば国家財政投資の造船の資金も、あれだけ私どもが国家財政をやつてつて、それを五分か一分か知りませんけれども、それをリベートして、そこら辺の待合で使つてしまう、どこかへ献金してしまうというようなふしだらな経済というものが行われている。而もそれに対して吉田内閣経済政策としてこれを粛正するということは一言も触れていない。そういうことでは如何に労働大臣労働行政を声を大にして叫んでも私は勤労者諸君がついて行かないと思う、その点はどうですか。
  42. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それで物価を下げたいということですね、それは年間を通じて必ず下げるつもりでおります。今一時的の現象として思惑などがあつてつたということを申上げたので、決して思惑ということを是認したのではない。経済活動というものはなかなか象の全体を押えるようなもので、一カ所押えると、片方の足を押えますと片方の足を上げてみたりすることがあるわけですから。又現象に副うてできるだけ規制方針方策をとつて行かなければならない、こういうふうに思つております。これは必ずいたします。  ところで経営者の方面に対して何ら施策がないじやないかというお話でございました。これは御尤もなんで、私はやはり全般に労使協力、協調という以上、労働者側に協力をしてもらいたいという以上、経営者側にこれだけのものをしてもらいたいということを申すことは当然だと思います。その意味関係閣僚には強く申入れしておることもございます。ちよつとその片鱗がここに出ておりますが、つまり再評価のことを言つておるのでございますが、とにかく相当自粛して参りたいと思います。  それにもう今委員長の言われたことについては私は本当に同感なんですね、ただもつと政治自身も清くならなければならん。或いはやつぱり全体が国家の危機を乗り切るのだという気持にならんといかんと思います。  日本輸出は三割、戦前の三割です。もうドイツあたりは三割殖えておるのですね。基準年次プラス三割、日本では基準年次の三割、こんなようなことでは私は日本というものがどうなつて行くか、実に深憂に堪えないという感じを持つている。こういうことはもう政党とか或いは階級などという考え方はもう一時やめて、本当に協力体制ができんものかなと思う。私は労働者大衆、特にこれだけにやるというのではなく……。
  43. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) わかりました。それではもう一つ最後に結論的なことを伺いますが、そこで問題は、国民経済の建直しをやるということであれば、労働行政だけではできない。産業行政からすべてを総合的にやらなければならんということは労働大臣もお認めになつたわけです。その点は私も諒としますが、そういうことを若しやるとするならば、やはり内閣としてまとまつたものをお立てになつて労働大臣として労働行政はこうである、併しその裏付をする産業行政、経済行政というものはこうするのだということをお示し願わなければ、我々として非常に理解しにくい。若しそれがなければ労働大臣の点取り演説だと、こう言われてもしようがないと私は思うのです。その点は一つ成るべく近い機会に一つお示しを願いたいと思います。  それから更にに今言われたように営の正常化と、労働組合労働者に対する或る種の要求をせられるということであるならば、そういうものを政治の力でやるということは、私は現在の自由経済主義をとつている限りにおいてはなかなかむづかしいと考える。そういうことをやるのは、今ドイツがやつているように、各企業ごとに経営者と労働組合とが話合いをやつて、企業の正常化をやる。労働者が企業の中に融け込んで働きかけるこういうよう態勢を作るところに労働行政の私は中心があるべきで、労働省賃金が高いからこれはやめたほうがよかろうというようなお説を立てて天下に振りまかれるということは、これは私は労働行政の中核じやないと私は考えるのですが、その点はどうですか。
  44. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 終戦後何か賃金は上げるべきものであるということで、ただ一途に来ているわけですね、この辺で一つ振り返つて見ていいじやないか。一体今の賃金のよりどころというのは、国際的に見てもどうであろうというので、私は一つの警鐘を打つているわけです。何も自由党政府だから特定のものを押付けて、言うことを聞かなかつたら牢屋に入れるというような、そういうよう政策は我々は持つていない。いとも自由に、いとも活発に、いとも民主的に話合つてもらうというのが我々自由党政府考え方です。ですからそういう意味言つているのであります。  そこで経営者側においてもできるだけこういうことじやいかんじやないかということは言つてもおりますし、又、経営者側のほうでも考えておりますように新聞などにも出ておるのでありますが、私はただできるだけ中で話合つてつてもらうということは賛成でございますが、それはドイツあたり労働組合の話をいろいろ聞いて見ますとあれはやつぱり共産主義の洗礼も受け、共産主義というものはどういうものなのかということもよく知つている。ところがこちらの労組は終戦後突兀として現われ、突如として尨大に発展したので、非常はその点の訓練がない。だからいきなりいわゆるドイツでやつているような共同決定に見られるようなことを法律でやつてみたところで、これはうまく行きつこない。むしろ闘争の場を深く広くしてしまうということだけで、これは結局駄目だという意見が多いようです。ですからそういうことができるような気分ができて来なければならん。労働者と呼べば資本家と応えるというような、そういうことでなくて、もう少し経済者側も働く側もよく話合うように持つてつたらどうなんですかね。どこの場でも自由党と言えばすべて労働政策が反動だというようなことを言わないで、やつぱりこれはやつてみたところで、労働者側がひどく社会党内閣を攻撃したことがあるのですから、やつぱりそう万全にはならないのですから、今なし得る現段階において尤もいい方法というものをお互いに考えるということになつて来ないと、これは悔を千載に残す、そういう段階に来ている。
  45. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) 簡単にちよつと労働大臣にお聞きしたいのでございますが、私前回に大臣が御説明なさいましたこれを拝見いたしました。この中で労働基準法に関係いたしておりまする諸規則の改正に対する政府の態度をお聞きしたいのでございますが、この中に改正すべきであるという意見が各方面にあると書いてございます。政府は各方面という、この各方面の頭の向け方はどちらに向けておりますか
  46. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 各種各方面でございます
  47. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) 私はそういう御返事に対しましても決して納得いたしません。その事実は、すでに示されております、諸規則の改正要綱が出ております。これは中央審議会にかけられる問題でございますから、そこで論議されるわけでございますが、その中に一、二、大変私ども労働者側から見まして、決して我々の意見が入れられてないむしろ反対側の意見に左右されてこの原案ができている、こういう感じを深くする点が数カ所ございます。  殊に中小企業の面で、今まで十人未満の工場には適用されていないいろいろな手続やいろんな枠というものを、今度三十人未満にまで拡げるというようなことは、全然それが無視されていたような実情でございますにかかわらず、これを又三十人未満の事業場からは外すということになりましたならば、その数も数十万に達するわけでございますし、全然そこには労働者を守る法規というものが何ら適用されていない。無軌道状態が現出するわけなんであつて、こういうことが先ほどからしばしば労働大臣がおつしやつておりますように、労働者生活を守るのだとおつしやることと全然反対の傾向になるじやございませんか。こういう点に対して、この改正の意見というものはどちらから出たかということははつきりしていることなんであつて、それを私は考えまして、決して各方面ではなくて、或る強力な一方面、例えば新聞にも報道しておりますが、それは特に東商とか日経連の要望が強かつたということすら出ているのでございまして、幾ら各方面とおつしやいましても、労働階級は決して我々の意見が取入れられたとは考えません。こういう点が一つ。  それからもう一つは、施行規則の中の一つの問題でございまして、これは私が関係いたしております労働組合に直接関連性がございますからお尋ねしたいのでございますが、事業附属寄宿舎、全繊維同盟は、との事業附属寄宿舎というものに対して労働条件だという考えを持つている。ところが事業者側は、これは生活条件だという考えを持つていて、終戦後明確に経営者側と労働組合と対立している点なんでございます。ところがこういう大きな問題を含んでいる条文が、今度あつさり削除されて来た。それを見て驚いたのでございます。こういうふうな点を併せまして、決して労働者のためによく考えられた改正ではなくして、その反対側の意向が強く盛られている改正要綱だと思うのであります。そういう事実を申上げて、もう一度政府のこの諸規則に対する改正の態度を明確にの聞きしたいと思います。
  48. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、この労働基準法の施行規則というものは、相当検討すべき点が多かろうかと思つているのでございます。まあとにかく啓蒙的な規定が多い。さつきも申上げよように、日本経済の実態というものは非常に憂うべき実態でございます。まあこの法律ができましたときの諸情勢、法律並びに施行規則ができたときの諸情勢と今と非常に違つているんですね。啓蒙的な例えば廊下を高くしろ、それはいいことに違いないのですけれども、或いは便所を成るべく水洗にしたい、そこまで一つ日本経済の実態が許さんということであればそういう点はもつとも実情に合うようにして行くということがよくはないか。各方面というのは資本家側だろうという御意見でありますけれども、まじめに日本のことを考えている人の意見、どちらにも属せないそういう人の意見でも、随分、少し実情に合わないじやないかということをよく言われるのです。これができますときの事情もいろいろ御承知かとも思います。我々日本自身の手でこういうものを考え直したいということです。我々向米一辺倒でないのですから、いろいろこちらの考え考えたいと思いますということであります。揚げ足を取る話は別ですが、不まじめに考えている人が言つておるのじやなくて、まじめに考えている人の言つておる意見として、こういうことは改正さるべきじやないかということであります。
  49. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) もう一点。只今おつしやいました水洗便所は経済が許さん、それは現状に合わないとおつしやる。勿論そういう点もあるでしようが、又それで現状に合う点もあるのであつて、だからといつてその規則全部を削除するということの考え方は私は非常に不満なんでございます。  それから時間もございませんからもう一点お聞きしたいのでございますが、この大臣の御説明の最後のページのおしまいから四行目に、或いは国際的水準を下廻るがごとき改正をいたさない考えでございますということがはつきり明記されております。これはこの通り信頼いたしたいと思うのでありますが……。
  50. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その通りでございます。
  51. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) 例えば労働基準局を地方委譲するというようなことは、明らかにこの国際労働条約にも反することなんでございますにかかわらず、それが流布されているとかいうような従来の経過がございますが、これははつきりとおわかり頂けると考えてよろしうございますか。
  52. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたしますが、国際水準を下廻らざるよう考えております次第でございます。
  53. 寺本廣作

    ○寺本広作君 先ほど委員長から、具体問題はあとへ廻すというようお話でございましたが、大分具体的な問題が出ているようですが、どうですかこの辺で……。
  54. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働大臣は、午後一時に労働基準審議会に出席をして、挨拶だけ済まして再び当委員会へ来られるそうです。ですから一時半なら間に合うと思いますので、そのときに再開をすることにいたします。  それでは休憩いたします。    午後零時三十三分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十四分開会
  55. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 委員会を再開いたします。
  56. 吉田法晴

    吉田法晴君 午前中に引続き労働大臣の答弁に関連して質問を続けるわけですが、午前中物価を抑えたいというお話でありましたが、物価を抑える方法としては、具体的に示されたのは、関係閣僚に要請がしてある。而も具体的な方法としては資産の再評価に関連して資本の蓄積を図りたい、こういうまあ方針だけである、具体的にいうと。物価を抑えたいという意図は、それでは今までのやり方を変えて、自由主義的な経営が思惑のために、先ほど思惑という話もありましたが、思惑を含んで自由に資金を操作する、或いは外貨にしましても外貨の割当の枠内で思惑をやるというふうなこと、これを防ぐ方法が従来はなかつたのですが、統制をおやりになるのかというと統制はいたしません、こういうお話ですが、それでは何らかの計画的な経済政策をやるのかどうか。これはまあ自立経済という点から過去において、或いは前の通産大臣自立経済ということを言われた。或いは経済審議庁長官は経済計画について若干の抱負を述べられた。これは労働行政の関連性でかまいませんが、そういう何らかの計画性を以てやつて行くというお気持なのか、それが一つ労働者だけを抑えるつもりはない、但し、資本家の蒙を啓くという方策については具体的に何ら話も出なかつたのですが、まあ共同決定法のお話もありましたが、ドイツその他において、希望せられるごとくストライキが年中行事になつておらん国においては、賃金の問題についてストライキに訴えなくても賃金問題が解決し得るようになつておる。或いは労使が経営の中において対等になつておるという態勢まあ法制になつているところもありますが、その上で賃金問題が片付けられておる。このことは御否定になるまいと思う。そうしますと具体的なストライキによらないでそれでは賃金問題が解決し得る方法についてどのよう考えておられるか。私どもが承わるところでは、標準賃金制を布いて、標準賃金というものを統計の上から出して、それを労使の話合いの参考にする、こういう構想のようですが、ほかの点の、或いは労働組合を抑え、或いは民主的な経営の秩序というものを確立するのじやなくて、公務員についてもそうでありますが、民間企業についてもスト規制法、或いは労働運動の大衆行動を抑えるという方法で標準賃金制というものを運用して行くとするならば、それは標準賃金が或いは最高賃金になり、或いは標準賃金が実態賃金になりますが、理論生計費に基いて賃金考えるか、或いは実態生計費に基いて賃金考えるかというのと、同じよう日本労働者賃金、特に中小企業その他においては低い賃金に抑える。或いは低い労働条件に抑える。或いはスト禁止法と関連して賃金についてもこれは引下げる以外の役割はしないとしか考えられないのですが、そういう労使関係について別に構想があるならば承わりたいと思います。
  57. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 物価を引下げるという考え方でいることは先ほど申上げた通りでありますが、この物価を人為的に個々の物価についていわゆるマル公を作つて統制をして行くと、それで物価の低落を考えるという行き方は、どうも実は試験済で、それもどうも余り芳しい結果をもたらさなかつたというふうに判断しておるのでありまして、で全般的には物価ということは、政府の一番物価に大きな決定打を与えるのは、響くのは国家の財政であろうと思います。そこで国家の財政は一兆を厳守するというようなことでやつておるわけでありまして、やつておることは御承知の通りでございます。更にこの資金面においてやはり赤字金融を絶対に慎むということで、消費をできるだけ必要最小限度の生活を充実するという方面に持つてつて、贅沢品については課税の率を上げて行くというふうな考え物価を下げて行こうということであります。全般的な財政金融の一体化によつて経済の正常化をもたらし、なお消費全体について健全な方向へ持つて行く、それによつて物価を下げるのだこういう考え方であるわけであります。  更に資本家の蒙を啓くにはどうすればいいかということでございましたが、一概に蒙を啓くというばかりも脅えず、相当よく考えた経営者もいることだと思いますけれども、併し何といいましても私は資産の再評価ということによりまして経常の実態を認識せしめる。そのことからいろいろな無駄な消費というものも考えられなくなるのじやないか。資本家も、経営者陣もいわゆる資本が非常に少なく見積つてありますると、僅かの利益でも利益率は非常に高く感じさせられますので、非常に企業の実態の判断を誤つておるという点もあると考えられますので、再評価を法律で強制するほうがいいかどうかという点についてはかなりまだ関係者において議論をしておるようでありますが、将来、少くとも再評価税を取つたあのやり方をやめて、再評価しいいような形にして再評価をやらしたほほがいいというふうに考えておるのであります。  標準賃金は今お話ように、とにかく賃金の実態を明らかにする。それも業種別、職種別、年齢別、経験別というふうに細かく賃金の実態を明らかにして行つて、労資間のこの賃金考え方に対するよりどころを明らかにする。そうしていわゆる良識によつて、現国状と見合せた賃金のあり場所というものを判断してもらう基礎を作ればよろしくはないかというふうに思つております。  西ドイツ等でもいろいろ新しい考え方で、先ほどもお話申上げました共同決定法なんかもやつておるのでありますが、併しこれはやはり基幹産業である石炭、鉄鉱、そういつたものについて行われておるので、他の部門はまだそこまで行つていないのであります。それじや西ドイツには争議は全然ないかというと、そういうこともないのでありまして、要するに争議をやつて全般的な、経済全体の非常な均衡を破るような大きな争議ではない。ただ賃金値上げにしても、非常に日本の国のよう経済の全体の均衡をゆさぶるような大きなベース・アップというものを中心とした争議はない、こういうことのようであります。ですからそれはやはり労使間の協約、話合いによつて賃金を自主的に決定して行く。労使間の問題は労使間の良識によつてさばいて行く、こういう原則を、できるだけ良識を持つ基礎を役所としちや与えてやるのだと、こういう行き方がまあ私ども考えの根底でございます。決して日本の労使の諸君を信用しないという気持は全然ないのでありますが、ただいろいろ見て来た人の話によりますると、ドイツあたり労働組合の幹部諸君とも話合つてみると、非常に長い労働経験を経ておる共産主義の治下にあつて、如何に共産主義というものの実態があるかということを体験して来ておる。こちらはそういう体験がないものですから、どうもいきなりドイツでやつておると言つて日本でやつた場合にはどういう結果が出て来るかというと、なかなかマイナスの面が多く出やしないかという考え方を持つておるのでありまして、私どもとしましては、今申上げましたような労使間で自由に話合つて、良識を以て事を判断する、そういう慣習を付けるようにできるだけ側面から労使双方に呼びかけて行くととういう立場がよろしいのではないかと思つておるのであります。
  58. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちよつとお尋ねしたい。今ドイツの問題が出ました。その前も出まして、何かドイツ労働者日本労働者よりも非常に共産主義の脅威なんかを感じていて非常に建設的だとか、こういうふうなことを労働者だけが、ドイツ労働者日本労働者よりも優れておるのだ、或いは民主的に洗練されておるのだと、こういうことをおつしやつておられますが、実際ドイツを見て来た人は私は異口同音に言うと思うのです。例えば同じように国が敗れた。日本で見れば外観だけは、日本の現在でもビルだけは続々とできておる。遊び場所は続々とできておる。ところがドイツに行つてみればそういうものは殆んどない。殆んど生産施設福利施設に使われておる。いわゆる労働者の住宅はどんどん建てておるけれども、ビルデイングその他は実にできておらない。機関車にしても実に能率的な機関車はできておるけれども、駅は日本ようになつていない。いろいろな点から見て、こえは労働者が民主的に非常に洗練されておるということよりも、資本家、経営者そのものが、政治そのものが、生産政策そのものが、労働者をそうなるように、私は納得のできるよう政策を立てておると思うのです。  そういう点は大臣は全然触れておらない。ドイツに行つた人は誰でも見えるようにまだ戦災の跡が残つておると思うのです。そうして生産者、労働者の福祉対策というものをあらかじめ重点的に考えておる。そういうところでドイツ労働者は民主主義を学んでおる。  日本は御承知ように逆に疑獄ばかり多くて、金は変なところに使われておる。ビルデイングだけは物凄くできる。自動車だけは戦前の何倍も東京を走つておる。而もそれは外国の高級の車である。こういう政策を立てておいて、日本労働者が何かこの中で、一部の組合の指導者が政治的にどうのこうのと言われておるけれども、実際労働大臣立場としてそういうふうに考えておられるのか。これも労働者だけをそういうふうに考えずに、何がそういう原因になつておるかということをもう少し分析して、そうして労働大臣立場としてどういうふうにお考えになるか、一つお聞きしたいと思う。
  59. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は決して労働者諸君だけに義務を押付けるという気持は全然ないのでありまして、ただ今お話の次第もあつたので、お答えしてそう、言つたわけでありますが、今の日本の状況を以て非常によいとは考えておらない。どうしてももう少し全体に引締ると、これは先ほど申上げたようにですね、引締ることが日本経済施設全般に亘つて、それの一環としての労働行政の面においても、やはり転機に臨んでその転機を打ち破るに然るべき考え方と心組を持たなければならない、こういうことを言つておるつもりであるのであります。  で、ただまあ私どもそういう何か大きな転機を必要とすると思うのでありまするけれども、この点は進歩じやないかと思うのですね。この間も労働問題協議会でそういう話が出まして、そのときに労働者側の非常に有力な委員から、それじや一つ政府経済政策全般、そういうことについて緊縮方針をやつておるのか、現実にはどうか、今丁度阿具根委員お話ようなことが出た。併しそれじやこういう条件を出して、この条件が満たされるならストを年中行事とする考え方は反省されるかという話が出て、それじや一つ具体案を作つてようかということまで行つて、まだ結論が何もないんでありますが、何かそういうような話合いになるか、それとも何かもつと違つて来るのではないかどうか、期待を一つ持つのであります。  一部の組合の指導者がどうのこうのというお話は、これは特にそれにおこだわりになる必要はないのではないかと思うのであります。これは全般言つておるのでありまして、例えば反米、反吉田、反MSAということが組合の活動の一つ方針になることはないのではないか、これはちよつと行き過ぎではないか、政治活動ではないか……。
  60. 阿具根登

    ○阿具根登君 すぐ政治活動ということを言つて、何か組合幹部と組合員が遊離するように、或いは第二組合を如何にも示唆されるようなことを言われるけれども、今この労働政策を言われた中においても、労働大臣としては一つの構想を、テーマを持つておられるはずだと思うのです。それならばどういうことを、どういう考えがあるから労働者はこれをどう考えるか、資本家はどう考えるかということがあれば、私たちも随分検討したいと思うのです。ところが労働大臣は一貫して日本労働者は辛抱してくれ、ストライキをやつてくれるな、一部の指導者に引摺られてくれるな、こういうことだけであつて一つも斬新なことがない。従来の慣習に流れておる。それでは別個な新らしい観点から、新らしい角度からこれを眺めて合理的にということを言つておられるけれども、事実出しておられるのはちつとも新らしい角度が見えておらない。いわゆる今までやつてみたのがこういう結果になつて、今非常に憂慮すべき日本経済状態であるというのじや、労働大臣としては、自由党内閣労働大臣として、労働者サービス機関としてどうあるべきだという姿を私はもつと掘り下げて打出して頂きたかつたと思うのです。ところがこれについてはまだ見るものがないと思う。そういう点についてお考えになつておることがあつたら率直にお聞きしたいと思うのです。
  61. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 阿具根委員お話は、何かこう新らしい、例えば共同決定に見られるような経営参加の方式とかそういうものを御期待になつておるようにも窺われるのでございますが、それは先ほど申上げましたようにどうも少し、今急速にそういう話まで行つても、労使の実態がそこまで、そういう話合いをするというほどに行つていないのじやないか、こういうふうに判断するわけです。  そこで先ほども申上げておりますように、今後は名目賃金ということを問題にせずに実質賃金を如何にして労働者は獲得することができるか、それはやはり生産性向上だし、物価引下げという面で政府を鞭撻してそういう施策に協力して頂く、そういうことによつて実質賃金を獲得する度合を殖やして行く、又政府においても労働者諸君にそういう御協力を願う以上は、とにかく経営者諸君に対してもできるだけこの危機を乗切るにふさわしい労使協力態勢を作るにはどうしたらいいかという話合いをできるだけ進めて行くように慫慂、勧告するというふうに考えておるわけです。政府としてこういう態勢でやつてもらおうというような協議機関を考えるというところまではちよつと今のところは行つていない。率直に言つてこう申上げるより仕方がないと思います。
  62. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) さつき吉田君の質問に対して大臣の御答弁で、一点だけちよつとお尋ねしておきたいと思うのですが、経営の正常化を期待するために資産の再評価を進めたいということをおつしやつたのですが、資産の再評価というのは、資産再評価額を資本へ組入れることまで考えておられるのか、或いは再評価だけなんですか。
  63. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたしますが、第三次再評価ということをどう持つて行くか、まあ組入れるのが原則でございまするけれども、従来任意制度をとつて来たのですが、従来やつていないところと、やつておるところの均衡論が出て来るわけですが、そこでこれは通産省においていろいろ取運びますので、私からちよつとお答えするのも筋でないと思います。まだ研究の過程にあると思います。それは通産大臣とよく話しておることなんでございます。いずれにいたしましても、再評価すれば、結局それは資本に組入れるということは当然のことです。そこで資本がそれだけ殖えて参りますれば、これは社用族、公用族の横行するというこの面が非常に少くなつて来ることは事実だと思います。
  64. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 僕は先ほど労働政策について相当強い方針を出されたので、それと相対的な関係にある経営者に対してやはり強い考えを私は出されなきやいかんと思うのです、大臣の思い付きではちよつと困るので、当然再評価したならば、それを資本に組入れて、経営の内容がよくみずからわかるよう方策に私はすべきであると思うのですけれども吉田内閣としては、いろいろな施政方針演説その他を読んで見て、そこまでのお気持は全然ないようなんです。再評価を法的に強制するという考えもなければ、その再評価したものを資本へ組入れることについて強制するという考え方もない。そういうことについては実に資本家の御意向の通りに吉田内閣従つて行こう、その面からは何ら経済再建の経営者的方策というものは講ぜられていない。私は午前中に労働大臣がそれだけ労働行政について強いお考えがあるならば、片手落ちじやないかというので追及したのはやはりそこにあるのですが、この点は一つどうですか。  皆さんにお諮りいたしますが、労働大臣としては恐くら所管外のことだから、今の答弁ぐらいしか出ないと思いますが、一遍通商産業大臣に近い機会に出席を求めて、本日の問題の中で通産行政或いは経済審議庁に関係するようなことがあれば、その点について質すことにしたらば如何かと思いますが、如何でございますか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  65. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それではそういうことにいたします。
  66. 吉田法晴

    吉田法晴君 今委員長からも明らかに言われましたけれども、資産再評価或いは自己資本の増加というものが、不健全経営を抑える一つの方法として考えられるということで、労働行政方針の中にまで入れられたのですが、併しそれは答弁の中にありますように、これを期待する、再評価を強制するところまでは考えておらん、こういうお答えです。  物価賃金との問題について所見をはつきり異にいたしますが、仮に賃金問題について物価が上る、生活費が上る、だから賃金を上げなければならんということをしよつちゆう問題にしておかなければならんということは、これは労働者といえども恐らく好むところではありません。先ほど阿具根君も申しましたけれども、ストライキをやつたところで、経営者も損失を招きますが、労働者もより大きい損失を受けるのであります。大きなストライキをやれば半年は生活の打撃を受けて、回復できないような損害を受けるのですから、これは労働者といえども好むところではありませんが、仮にそれを繰返したくない、年中行事のようにしたくないという気持はわかるとしても、それを具体的にやめる方法、減らす方法として考えるならば、労働行政として考えるならば、もつと或いは物価賃金とがスライドする、こういう制度を打立てるのも一つの方法だと思います。これは賃金におけるスライド制の確立という点もありましよう。或いは中国を僅か見た経験ですが、賃金をフンで現わし、そのフンの中にいろいろな必要な生活物資が入つております。そうすると物価の高騰に従つて賃金が自然に動く、物価政府が公示するという形で賃金物価とが一緒に上り下りする、こういうスライド制が違つた形ではあるが確立される。ドイツその他でもスライド制の問題を、私は詳しく聞きませんけれども、そういう制度が確立されておるということも聞いておる。仮に労働行政として政府がやり得る方法で、物価が上るに従つて或いは下るに従つて賃金物価と並行する、こういうことをするならば、現在の生活水準なら生活水準というものも問題になりましようが、それによつて絶えず紛争を起さなければならんという点は防止し得るでしよう。そういう点をどういうよう考えておられるのか、そういうことは考えておらないのか。  それから標準賃金制の書棚的な役割について先ほどちよつと触れましたけれども、ほかのいろいろな関係を抑える、或いは組合のスト権をなくする或いは制限する、或いは闘う方法をスト規制法なり或いは刑罰法規を以てびんびん処断する、こういう方法で抑える。或いは行政方針としてストの頻発は好ましくない、こういう方法で抑えながら、資本家に対しては何ら希望するところもなく、或いは抑えるところもなくて標準賃金制というものを布くならば、それは企業別或いは年齢別、いろいろありますけれども日本の場合に中小企業の低い賃金がそのまま押し付けられることになつて参りましよう。恐らく大企業なら大企業の高いほうを抑えて、低いほうを引上げるのには役に立たんだろうと思いますが、仮にそういうものがあるとしても、或いは企業別の標準賃金というものを作るならば、労働省のあれでもわかりますけれども、インド並みの賃金水準、或いは中小企業の場合にもつと低い賃金をそのまま合理化するという役割しか果さんでしよう。  従つて労使関係における対等の条件を打ち立てる、これが民主主義と言われるならば、経営方針における自由主義もさることながら、戦後打ち立てられた労使の関係における民主的な対等の関係というものを仮に労働大臣が守ろうとされるならば、労使の関係の対等なる方策をお考えにならなければならん。それは或いは共同決定法でなくとも、或いは経営協議会法でなくても、日本にも経営協議会の制度というものがあつた、或いは勧奨されて来た。或いは労働協約も勧奨されて来た。併し労働協約すら今日殆んど大部分の企業内においてはない実情であります。それをどういう工合に直すか。これは共同決定法なり或いは経営協議会法といつたような法律の問題ではありませんでしたけれども、話が出るのは、我々が言つているのは、労使の関係を対等にする方策としてどういうものを考えておられるか、何も考えておらんじやないか。そこで具体的に言えば、日本の場合に経営について労働者が参加し得る方法としてどういうものを考えておられるか、或いは労使の対等を実演するためにどういう具体的な方法を考えられておるのか、労働組合を抑え付けて標準賃金制を布く、或いは資産の再評価について資本家に期待する、こういうことで、あと賃金の値上げがインフレを起す、こういう議論賃金を抑える役割しか果さないよう標準賃金制を脅えるのは、それは一方的じやないか。資本家言つていることと労働省言つておることとどこが違うのかという点はそういう点でありますが、具体的に賃金物価のスライドの方法について、或いは経営の中における労使の対等の具体的方策についてどういうふうに考えておりますか。
  67. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 賃金物価をスライドさしたらどうなるというお考えでしたが、物価がどういうふうになつているかという物価の見方でございます。これは御承知ようにいろいろ方式があるのでありますが、これは一つの万古不易の見方だというものをきめられる国ならよろしいと思う。賃金も公定してしまえば、スライドさせた沈金は、これは公定だと言つてその賃金を絶対的に守らせ得る国ならばよろしい。いわゆる計画経済を行い得る経済体制の国であれば、私はそういうことは可能だと思つております。併し日本の場合はそれはできないと思うのです。そういう国では出発点から公定できる。政府の力によつて決定できる。併し自由主義社会、自由主義経済体制をとつておるもの、そういうものから言わせますと、スライドと言つてもスライドの基準がない。御承知ようにラスパイレス式もあるしパーシエ式もあるし、或いは政府言つているフイツシヤー式というのもある。そういうきめ方自体が問題になつて、スライドさせると簡単に言つても、やれパーシエ式だ、やれラスパイレス式だということで、そういう議論に日を送つてしまう。だから我々としては計画経済の国じやない、やはり自由主義経済の国である。それで経済も長い計画というと一つの希望的な目標を立てます。さりとてその目標から外れたら罰則があるとか或いは勲章があつて、その政府の高官になるとか、そういうような国でないから、これはちよつとむずかしいのじやないか。スライドするという考えは、物価が大幅に上つておれば、それは一つの大よそのめど、或いは終戦直後のようインフレーシヨンの状態がどんどん進んでおるときなら、これはもうこういうふうに物価上つたから賃金もこれだけ上ろうというような追駈けつこになるのは、これは仕方がない。物価が上るのは望ましくないけれども、止むを得ない必然の結果である。併し物価が今日のように横這いする際、賃金の名目的なものを上げるより、むしろ物価を抑えて、賃金の実質的なほうをとるというように指導するよりほかに方法はないと思つております。  経営内における労使対等の問題でございますが、私は対等の原則がそんなに害されるというふうには思われない。その点はよく話合いを行う素地は十分にできておる。ただ話合いをするかしないかということが問題なんで、できるだけ話をするように進める、こういうよう考えで先ほどから申上げておるわけであります。
  68. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあスライドさせる方法についていろいろ意見があるから、そういう方法はとりにくいといつたよう意味のことを言われたのですが、例えばそれは人事院にしても或いは仲裁裁定委員会にしても、物価生計費賃金というものが相関連して、如何にあるべきかということを、これはめきるでしよう。その前にストライキ権を奪わなければならない、或いは制限したということがここでは問題になりますけれども、これを一応おいて考えると、生計費とそれから賃金とをどういう工合に調整するかという機構として考える。まあそういう物価生計費とを調整する方法はもう一切考えん、実質賃金という名目で、とにかく名目賃金は抑えるという方針ならばこれは別である。  そこで物価賃金との調整方法、それがしばしば紛争になる。その紛争を好ましくないという意見なら具体的な方法を考えらるべきだ。過去においてそれを労働組合資本家、或いは資本家団体との交渉でやつて賃金を上げない。例えば物価が横這いになつておるから、或いは物価が下つたから、場合によつては炭価が下つたから賃金は上げられない、そういうことを資本家諸君は言つて来た。それをそのまま、理由は実質賃金を上げるという理由であるけれども、実質上名目賃金を抑えるという考え方、それで先ほど申上げた通り理窟はどうあろうとも賃金だけは、名目賃金だけは抑える、こういう態度なのか。或いはそうでなければ物価生計費との調整を具体的にどういうふうな方法で調整をしようとするのか。ただストライキの年中行事は好ましくない、具体的な方法は何も示されていない。こういうことを申上げるので、それからこれは経営の中の労使対等関係だけ言われましたけれども、経営であつても、国家の場合でもそうでありますが、労使対等の関係をどういう工合に賃金問題について或いは経営について、或いは先ほど政治活動について、組合が政治に関与するのは云々ということを言われたけれども、例えば公務員の場合に、或いは公務員でなくても、公共企業体にしてもその他にしてもそうですけれども賃金問題について政府が具体的な方策考えないで、ただ賃金を抑える。物価が横這いである云々と言われますけれども、去年一年なら去年一年について物価上つたことは事実である。そういうものを無視して近頃とにかく賃上げは困る、公務員についても或いは民間労働者についてもそこに問題、紛争が起る原因がある。その賃金問題について或いは経営について、或いは政治について労使対等の具体的な方策をどのよう考えておられるのか。何もないから……、考えておるとするならばどういうものを考えておるかということをお尋ねしておるのです。
  69. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 要するに物価賃金の悪循環を断ち切りたいという、こういう考えでございまして、賃金を上げる、その消費購買力が殖えるだけ又物価が上つて行く、いわゆる物価が上るから賃金を上げる、こういうことを繰返して行く間に、日本の品は物価が高くて外国市場でも消化されない。そうすると日本のよつて立つところの貿易がどうにもならなくなつてしまう、日本の基本資材が輸入できなくなつてしまう、こういう関係になるのでございますから、どうしてもこの辺で戦後からずつと来た慢性的な惰性を打切ろう、そのことが非常に望ましいんじやないかという考え方なんです。  それから賃金問題をただ賃金問題だけで見ないで、やはり国民経済との関連で見直そうじやないか、こういう提唱でございます。それでは賃金は永久に釘付けかというとそうじやないんで、先ほどから申上げておるように、賃金統制という考え方は、自由党としては統制をするという気持はない。そこまでは考えておらない。ですから要するに物価上昇を呼び醒ますよう賃金の値上げというものはこの辺でやめなければならんことじやないか、こういうことなんであります。  で、この企業内部における労使対等の原則がないとおつしやいますが、私はそれは先ほど申上げますように、全然そう思つていない。非常によくやつておられる会社もあるようでございます。それから団体交渉はどこでも行なつて、団体交渉を拒否すればそれは不当労働行為だし、それは法律によつて保護される。特に労使対等関係が破れているとは私は思わない。要するに労働者にそれじやもう少し経営権を与えるということになりますると、これは先ほど申上げたように、まあ経営権は経営者のものだと私は思いますし、今のよう組合考え方では一気にそこまでは行かれない。将来はわかりませんが、少くとももう少し協調的になる基盤だけでも作らなければいけない。そういうことに対して私は労使双方に極力に懇請する、呼びかける、こういう考え方でおるのでございます。中には現在物価を下げようという運動を積極的にやつておられる経営者もあるようですが、ものによつては安くして売出している会社もあるようであります。そういうような気分をだんだんに醸成して行くということが必要ではなかろうかと考えております。
  70. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今大分議事が進んでおりますが、今日一応大臣所信についての質疑を終りたいと思いますので、順序としまして、労政の関係、それからその次に職安の関係基礎関係、それから少年婦人関係、こういうような順序でなるべく一つ質疑をお願いしたいと思います。一応労政の関係が終りましたならば職安のほうへ移つて参りたいと思います。  それから大臣にちよつとお願いしておきますが、御答弁は、成るべく要を得て簡潔にお願いをしたいと思います。
  71. 吉田法晴

    吉田法晴君 根本的にものの考え方の違うところ、或いは事態の認識の相違から話は幾らたつても歩み寄りをみせないのですが、今のストライキがなぜ起るか、そのストライキが起る原因について対策を立てるというときにおのずから考えが違つて来る。ストライキが労働者の責任において、労働組合の責任だけで起ると考えておる労働大臣考え方に反撥し、そうしてその上からストライキを起さない具体的な方法について、スライド問題等を出して所信を伺つたのですが、そういうことについては全然まあ考えがない。いわば賃金問題について公正な考えがなくて、ひたすら資本家の言うよう考え方だけしか考えておられぬということで尽きておるのであります。  それから経営について対等の問題についてもそうであります。なお最近金融引締めその他による中小企業の労働争議の場合には、金融の問題或いは経営の基本的な問題に関連して賃金、首切りとそれから経営の問題が起つて来る。好むと好まざるとにかかわらず、経営の問題について中小企業の場合は労働者が責任を分たざるを得ないような状態の中で賃金問題或いは首切り問題が争われている。そうすると労働大臣の逃げにもかかわらず、これは具体的に解決をつけて行かなければならん問題であるということだけ申上げで労使の対等について、対等原則の実現について労働大臣は何ら考えがない。ただ通産大臣なり或いは経済審議庁長官が考えておるようなことしか考えておらない。そういう意味においては労働大臣としてはこれらの点については考えているか、或いは努力が足らん。或いはこれは労働大臣としてのやはり資格にも関連して来ると思うのでありまして、足らぬことだけを申上げて進めたいと思います。
  72. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今外務省の關国際協力局次長がお見えになつております。間もなく調達庁の百田労務部長、通産省の徳永重工業局長がおいでになります。關次長は四時からアメリカ大使館のほうに行かれるそうでありますから、御質問がありましたならば、ちよつと前に御質問をお願いいたしたいと思います。
  73. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 簡潔にお答えを申上げますが、私の考えはいろいろ申上げたようなことで尽きておると思います。労働問題は要するに国民経済の観点から見て行く必要があろうかと、こういうことなんであります。労使いずれということでもないのでありまして、やはり国民経済全体の中の労働問題、こういうふうに考えて見ませんと、両方とも壁に当つてしまうということであります。
  74. 吉田法晴

    吉田法晴君 国民経済の中において資本家のことだけしか考えられておらんから、それでは労働大臣としては不十分だ、不適任だ、こういうことを申上げている。例えば物価を下げるにしても或いは生産費を下げるにしても……。これは例えば資本の増加なり或いはそれによる生産性向上というものが考えられなければ、ただ賃金切下げだけで生産費を下げようという方策ならば、それは資本家的な態度であるこう申上げている。或いは例えば経済の中で純消費的な消費だけを勧奨する、料理屋や待合や、それから或いは大衆的なものにもなりますけれども、パチンコや競馬や競輪や、そういうものだけ奨励しておいて、純生産的な、さつき消費の点も出ましたけれども労働生産性に役立つための消費なら、或いは労働者の住宅を建てるなら、それが何でインフレになりますか。生産性向上のために資本を投下するのも我々は別に異議がない。ただその投下の方法は自由党と我々の場合では方策が違うだろう。併しながら資本の実際の増加というものを図らないで、生産の有機的な向上というものをなさないで、生産向上だけをやる。賃金を上げると物価が上がる。そういうことになるから、これは資本家的な労働行政に過ぎんじやないか、ほかには何も考えられてはいない、こういうことを申上げているのです。
  75. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えしますか。
  76. 吉田法晴

    吉田法晴君 いや、これはもう答えは要りませんよ。これは議論じやなくて、いつまでやつて資本家的な労働行政だけしか示されないから我々は不満であるし、それは労働省の姿ではない。資本家だけの政策をやるなら労働省は要らん。もう少し労働者生活向上なり物価の安定の上に、資本家だけの労働行政でなく、国民経済の自立というものを考えなければならない。労働大臣ならば考えてもらいたい、こういうことを申し上げているのです。
  77. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) ちよつと関連して……。只今労働大臣国民経済全体の見地から労使関係賃金問題を考えるべきだということを繰返しおつしやつております。ところがその国民の中の大部分を占めている労働者階級、その労働者階級の中の又大部分を占めております中小企業者の問題がこの中に一つも取入れられていないのですね。一体中小企業が日本産業構造の中に占めている部分が約七五%を占めている統計なんでございますが、そこに働いております労働者というものは、本当に声を上げるにも上げ得ない弱い立場に置かれて、その中で労使の対等の関係の確立なんということは夢にもまだ思われていない状態なんでございますね。この面にもう少し、もう少しどころか、うんと労働政策の問題を強く持込んで、そうして正しい労使関係をここに作つて行くということが、今大臣のおつしやる国民経済全体の見地からすれば賃金問題なり労使関係の正しいそれが基礎になると思うのであります。ところがその基礎が誠に跛行状態であつて、何ら釣合が取れていない。又その光の射すよう政策も行われていない。全然無視されている。そういうことを一体どうお考えになつているのでございましようか。今申されましたが、それには一言も触れてはいません。どうぞその点に対する大臣の御所見を承わりたいと思います。
  78. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この我が国の就業者の総数は御承知と思いますが約四千万、三千九百五十八万人であります。そのうちの自家営業者というのが二五%、まあ二六%近く、それから雇用労働者、雇用されておる者が三七%、それから家族労働者が三七%、大体そういう国民の就業構成になつているわけでございます。そこでそういう全般のバランスを破らないように、勿論それぞれについてできるだけのその労働条件の向上ということを図ります。これは政府として極力いたしますが、これはやはり全般が豊かにならないとそれぞれの労働条件というものがよくならんのではないか。これはやはり日本経済全体の基礎を確立して、そうして日本経済全体の拡大意図しませんければ個人生活水準向上もできない。全体をそのままにしておいて個人だけ向上させると結局インフレーションになつてつて来る。そういう状態であるわけでございます。おつしやるまでもなく、私どもとしても中小企業の問題、又そこに雇用される方々の問題、非常に重要に考えております。
  79. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今關次長がお見えになつておりますから、時間がありませんので質問が若しあれば優先的にして頂きたい。  それから労働大臣に伺つておきますが、特需工場関係労働問題、それから駐留軍労務者労働問題については、昨年の十七国会以来当委員会は満場一致でしばしば意思の統一を図つて政府に申入れをいたしております。問題も未解決の問題が多々あるように思うのでありますが、この大臣所信説明にはこの点は一言も触れておられないのですけれども労働省としてはあの問題は参議院の労働委員会考えておるほど重要視しておられないのかどうか、この点を先ず伺つておきます。
  80. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 非常に重要に考えまして、御承知ように労務基本契約というものが非常に部分発効も延びておりまして、これはアメリカ関係でもいろいろな三軍それぞれの関係があり、又全体の予算関係もありますので、關次長からお聞き願いますけれども、延びておりまして、漸くこのほど保安関係なり或いは人員整理する場合の共同管理、こういうものの書類が参り、昨年の暮までにすつかりこちらは準備して司令部との関係は済んだのでありますが、その後の三軍との話合いが延びておつたのであります、連合軍総司令部です……。それでなお軍政と軍令と分れておるわけでございまして、そういう関係で遅れておりましたが、漸く発効されまして、今のお話特需工場関係もできるだけその線に沿うてやりますように努力はいたしております。併し何分これは私契約の関係もございまして、そう基準を一本に、政府と司令部との間に話をしてきめるというふうな関係に行つて駆りませんものですから、まあいろいろ苦心はしておるわけでございます。
  81. 阿具根登

    ○阿具根登君 今の問題御質問申上げたいと思つてつたのですが、私契約だから非常に特需の問題は困つておる、こういうことを言つておられますが、この特需関係の現状を見てみますと、直接雇用よりも、例えば退職金にいたしましても非常に不利な条件に置かれておる。同じこういう特需の品物をやるのに非常に不利な立場に置かれておる。こういうことを政府としては直接雇用にして、これを特需関係に当らせる考えはないかどうか。特需関係労働者としては政府で直接雇用にしてもらいたい、こういう希望を非常に強く持つておる。これに対してどういうようなお考えを持つておられるか。
  82. 中西實

    政府委員(中西實君) この特需が始りました当初におきまして、これも一般の労務と同じように間接の契約といいますか、政府が中に立つての契約にする、そうしますれば勢い労務関係もそれに準じて変つて参るわけでございますが、これの議論が出たわけでございます。併しながら当時から今日に至るまで、やはり一応この問題は民間の私契約に任して、従つて労務関係もその会社が私契約に基いていろいろと特需を受ける。それに応じて労務関係はその会社の従業員として行くというのがこの段階において適当であろうというわけで、今日まで至つておるのでありまして、この問題は根本問題でございますが、今のところはこれを直ちに間接契約にするというよう意図はないのでございます。
  83. 阿具根登

    ○阿具根登君 まだ質問ございますが、關次長さんが非常にお急ぎのようですから、關次長さんのほうにお尋ねしたいと思います。昨年の秋から暮にかけて、米軍の軍事予算が三一%削減されまして、非常に人員整理が行われたことは御承知の通りでありますが、今又東日本重工業の東京製作所で一千二百名の従業員が整理されんとしておるこういうことに対しては何か外務省で手を打つてもらつておるか。  それから又、それに伴つて今まで四十八時間の労働が四十時間に切下げられておる、このために実質賃金が三千円から低下しており、非常に生活に困窮を来しておる、こういう点について外務省で何か考えられたことがあるかどうか。  それから一九五五年のアメリカ予算教書を見ますと、約二八%再び予算が削減される見込みだ、こういうものについてどういうふうにお考えになつておるか。今のままで行けば、これ以上特需工場その他直接関係しておるものも非常に不安に追い込まれる。こういうふうに考えられるが、それに対して外務省の国際協力局としては何か交渉されたか、何か考えがありましたらお伺いしたい。
  84. 關守三郎

    説明員(關守三郎君) 最初の二つの問題につきましては、未だ労働省のほうからも何も言つておりませんので、私のほうからは処置はとつておりません。  第三の、予算削減に伴い特需工場の仕事が減るだろうこのことは一番大切な問題でございますので、すぐに去年の騒ぎがあつたあとにすぐ手紙を書きまして、この間もその催促をいたしております。これから三時にアメリカ大使館の人が来るのも実はそれに関係のある話でありまして、大体それに関して或る程度の返答があるのではなかろうか、こういうふうに思つております。その点は仕事が減らないようにどういうふうになつているか、少くとも見通しをつけまして十分にあらかじめその手を打つということが一番大切であると、そういうふうに考えております。
  85. 阿具根登

    ○阿具根登君 まだ御承知ない点は労政局のほうにあとで又お尋ねいたしますが、例えば私契約であるので、退職金を労働者と雇用主との間に結んでいる。ところがアメリカでは退職金に対する税金等を全然見てやらない。そのために協約はあつても特需会社の工員は退職金が二五も切下げられている、こういう問題について非常に折衝もした模様てありますが、いわゆる請負金額が八%利益があつたならばそれ以上は打切つてしまう、こういうようアメリカ政策によつて、どうしても約束されている退職金も出て来ない、こういうことが現実面として浮び上つておりますが、恐らく關次長は御承知ないと思いますが、日本の税制維持の問題、それから退職金等の問題は、これは十分アメリカにわかるように御説明をして頂いて、そしてでき得ればこういう特需関係の私契約でなくて、やはり日本政府と直接に雇用してもらうように強力に折衝ができ得るものかどうか、その点を一つつてもらいたいという希望なんですがね。
  86. 關守三郎

    説明員(關守三郎君) 先ほど中四局長からお話のありました通り、サービスの契約というものはこれは米軍が勝手に選んでできるというふうに行政協定の何条ですかできまつているわけなんです。それを今更変えるということはちよつと困難かと思いますが、たとえ直接契約にいたしましても、余り筋の通らないことを言つているようなことがございましたら、これは幾らでも直させるべきである、こういうふうに考えております。だから直接契約はいかんから全部間接契約にしろということは、今約束をしていることまでは、それは今ちよつと持出しかねる、こういう状況になつております。
  87. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすれば日米行政協定によつて或る種のものは免税されるということを言つているようてありますが、その点についてはどういうふうにお考えになりますか。例えばそういう契約ができないとするならば、日本の慣習により或いは協約によつて退職金がきまつている、而もその税金を米軍が持たない、そのために日本の労務者の退職金が二五%から三〇%も切下げられる、こういうような現実があるならば、この免税されるという点で、免税をするというような方法がとれるかどうか。
  88. 關守三郎

    説明員(關守三郎君) これは内容の話に、実質的に非常に問題がありまして、むしろ労働省の方のほうがその点はよくわかるのじやないかと思いますが、行政協定の面からはその種の税を免除するということは、これは謳つていないように記憶しております。つまり労務者のもらう退職金で、そういうものに税をかけないというようなことは、それは行政協定からは出て来ないように思います。ただ明瞭に日本の法律に違反しているというような場合には、これは当然直させなければならないのでありまして、果してそういうことになつているのかどうか、もう少し研究させて頂きたい、こういうふうに考えております。
  89. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 關次長、今の質問の要点、私も或いはピントを外すかも知れませんが、問題は、米軍と特需工場と契約をする場合に、いわゆる請負契約の中で賃金についての経費も勿論認められているわけですね。ところがその賃金或いは退職金というような諸経費になる部分について税がかけられる、その税だけを米軍が認めるか認めないか、単価の中で……、そういう問題だろうと今想像するのですが、税込みで行くか税外しで行くかという問題だと思うのですが、恐らく今の特需工場と米軍の契約で行けば、これは相当シヴイアに絞つて単価を協定しているわけですから、諸経費の中へ当然日本勤労者に支払うべき給与については、国内の労働協約等できめられている退職金の率を、或いは紛与も同じだろうと思いますが、支払われるように、諸経費の中へ課税相当額を見こむべきじやないか、こういう工合に考えるのですが、今の阿具根君の話だと課税対象額から外外されていることのようですがね、その点はどうなんですか。
  90. 中西實

    政府委員(中西實君) 額の高その他私もちよつと詳細存じておりませんけれども、結局向うとの契約の中に占めている退職金の額の問題であります。恐らくそういつた税引きのことまで考えてやつていないのじやなかろうか。従つて会社がうんと能率でも上げて別個に退職積立金というものをやれば、日本の国内法と同じように適用になるのでございますから勿論そうなつて来る。併しながら向うのくれるのが税まで考えての額は恐らく見込んでないのじやないかというふうに考えます。
  91. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこは違うのです。能率を上げて利潤を多く増せば、それから税も含めたものも出る、こういうお考えようですけれども、能率を上げて利潤を上げれば、その利潤は向うから取るわけなんです。何ぼ能率を上げても八%まで来たら、それ以上の利潤はやらないわけなんです、取つてしまうわけなんです。それだから退職金も払わない、ところが退職金には税金があるのじやないか、その税金を含めた退職金をコストの中に入れなければいけないわけです。ところがそういうものは米軍はどうしても見ないというのです。そこで問題になつて来ているわけです。
  92. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) これは労政局長、あなたのお考えは少し違つておるように思うのです。それは国内でも、例えば私鉄の運賃料金ですね、ガスの料金、電気料金、こういうものの認可申請の基準になつているやつは、諸経費の中に全部入つているのです。賃金も入つておれば退職金の税も、それぞれ全部諸経費の中に入れて現在幾らときめているので、経営をやつてその上利潤があればなお配当するとか何とかということになる。その意味においては特需工場の請負契約というものはそういう形でなくちやいかんと思う。それよりも或る意味においてはシヴイアなんです。一定の利潤以上上げれば単価の切下げと、こういうものをやる。そこでやはり税込みでないと今言つたような問題が出ると思うのですが、ちよつとどうですか、その点。
  93. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) ちよつと私特需工場に働いている労働者及び直用者の問題で、労管の点からお聞きしたいと思うのでございます。簡単でございますが、まず第一にお聞きしたいのでございますが、退職金は直用労働者とそれから特需工場労働者との率はどうなつておりますか。直用労働者の退職金はどうなつておりますか。
  94. 阿具根登

    ○阿具根登君 御存じないなら私のほうから答えましよう。直用者の場合は、勤続二年未満の場合は、一年につき月収一カ月、二年以上五年までは一年につき月収一・ニカ月五年以上の場合は一・五カ月、こういうふうになつているわけであります。ところが特需の場合は一年につき基本給の一カ月、ずつと一年々々なんです。そうして而もそれにやめる場合には二五%の税金で全額はもらつていないから七五%、それで打切られる。それで直接雇用者と特需の人は退職金について非常に大きな差が出て来ておる。同じ仕事をやつておりながら非常に大きな差が出て来ておる。これを是正してもらいたいというのが今の私の質問の要旨だつたのですが……。
  95. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) 非常な開きがあるということに私問題があると思うのですが、同じに働いておるのでございますから、そう危険度も違いないのにもかかわらず、そういう退職金の査定が非常にこれが違つている。そういう場合の保障というようなものをもつと政府考えてもらいたいというのが私の質問の結論なんでございますが、その点を政府はどう考えておられるのか伺いたいと思います。
  96. 中西實

    政府委員(中西實君) これは退職金ばかりではございませんで給与の点につきましても、直用と特需の労務者との間では差があるということが言われております。具体的にどの程度でありますか、これは特需工場のそれぞれで違うと思います。そこでそういう差がある。それから退職金にしても差が今おつしやつたようにあるでございましよう。これあたりは結局各特需契約によつてそれぞれ各業者が契約によつてきめて行くわけなんであります。今まで実はそういつた給与、退職金について非常な差があるから、それを自分たちのところではどうにもならないので、政府の力を借りてやつてくれというような話は実はなかつたのであります。あらゆる会社それぞれに、これは日本の会社すべてそうでありますが、給与べースにしましても、退職金の額にしましてもそれぞれ違うわけであります。特需会社におきまして、給与を自分たちはもつと出したいのだ、併しどうも自分たちの力で契約をする場合にはどうにもならないということでございまして、そういう要望がありますれば、これ又外務省を通じまして話合いをしなければならんと思うのであります。
  97. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) もう一つ退職引当金、積立金に対する税金は、直用労働者の場合どのくらいかけられておりますか。それから間接雇用の場合はどのくらいかけられておりますか、税金の点の説明を伺いたいと思います。
  98. 中西實

    政府委員(中西實君) これは退職金の日本の税金のかけ方と同じでございまして、あれは二十万円ございましたか、控除しまいて、そうして個別の退職金だけを特に課税標準にいたしましてやつておる、あの一般の退職金の税法通りであります。
  99. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) これは直用労働者も特需に働いている労働者も、その税金のかけ方は違いないのでございますか。
  100. 中西實

    政府委員(中西實君) そうでございます。
  101. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ところが一部の特需工場には、私が聞くところによると、大蔵省へ運動をして減税措置がとられておる、どの程度か知りませんが、とられておるということを聞いたことがありますが……。
  102. 中西實

    政府委員(中西實君) そういうことはできるはずはないのでございますが……。
  103. 阿具根登

    ○阿具根登君 それだから今赤松議員も言われたように、こういう不合理が同じ仕事をしているのに私契約なるがために生じておる。これに対する何かの対策を立てなければいけないが、政府としてどういうような対策をお考えになつておるか。ただこういうことがわかつたからということではなくて、こういうことに対してどう合わせて行くかというような問題です。第一は直接雇用にしてもらいたい。そうでなかつたならば、いわゆる私契約をやつておる業者が非常に弱いものだから、それで本当にやつて行けない。直接雇用と同様な条件を獲得するために政府としてあらゆる手を打つてもらいたい、こういうことなんですが、それに対して、どういうふうにお考えになつておりますか。
  104. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) どうですか。今の退職金と税金の問題ですね。労働省も外務省のほうもまだそこまで突込んで、阿具根君が質問しておられるほど実情がどうもよくおわかりになつていないようにぼくは見受けるのでが、係の人が間もなく見えると思いますので、ちよつとあとにあずけておいて頂きたい。
  105. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほどちよつと委員長から聞かれたが、労務契約、日米関係、英連邦関係、その他聞こうと思いましたら、關次長中座いたしましたので留保しなければならないのですが、そこで前に戻るわけですが、一般的なものの考え方については資本家的なものの考え方をするのか、或いは労働者生活向上による生産力向上ということを考えるのか、幾ら言つてもきりありませんので、具体的な問題に入つて参りたいと思います。  新聞等を見ましても、或いは実際に考えてみても、労働省が昭和二十九年度にやろうとする方向の中で、一番大きな問題は、公企労法の改正、標準賃金制の実施或いは労働基準法施行規則等の改正、そのほかに幾らかございますが、それは物価の騰貴に比べれば予算も増額した。これは名目的には増加になりますかどうか、疑問だと言わざるを得ないのです。労政関係については、公企労法の改正とそれから標準賃金制の実施、こういうようになろうかと思うのです。公企労法については目下慎重考慮中というのですか、考えてはおるが、提出するかどうか目下考慮中というのですが、それはいつ出したら通るかという見通しをつけて、いつ出すかという点について慎重考慮中だと私どもは読んでいる。事新しく聞き方をいたしますけれども、いつ頃お出しになるのか。或いは通過の工作をやつて、見通しがついたらお出しになる、こういう段階なのか。  それから内容について一、二お尋ねいたしますが、委員会の任命或いは構成について、三・三・五、その五の員数、その選出の方法については、先般来労使協議会というのですか、その他でも相当反対があつて、特に公益委員というか、第三者からも相当はつきりした反対的な意見が出ておつたと思うのでありますが、そういうのは無視してやれば、原案通り公益委員五、而も労働大臣の選考をした者を国会の承認を得て総理が任命するという。朝日新聞によりますと、政府の息のかかつた委員を出す、こういう御意思でありますのかどうか。それから仲裁制度の仲裁のやり方について、公共企業体等の能率的な運営と公共福祉の増進、小坂労働大臣の好きな文句が入つておりますが、或いは民間労働者との給与の適正な均衡、公共企業体の財政状態、国の財政健全性及び国民経済に対する影響と、賃金を抑えるのだという意図もはつきり出ております。予算上、資金上支出不可能な裁定は国会の承認があるまで効力を発生しない。裁定そのものの根本的な意義を骨抜きにする考え方をここに現わそう。或いは給与の水準が生計費又は民間労働者の給与水準が著しく変動しない限り濫りにこれを変動させないようにしなければならない旨の規定を設ける等、先ほどからの説明を聞いておると、五%や一〇%生計費が高騰しても、それは賃金変動の理由にはならん。こういうふうな昨年の実績等考えて、物価は横這だとして、一〇%上つて生計費は著しい変動はないと考えられておる意向を表明されましたが、実績に鑑みまして、そういうのも生計費の著しい変動でない、或いは民間労働者の給与水準が云々と書いてありますが、今のような状態から見ますならば、恐らく民間賃金もこれは著しく変動しておらんのだから、物価が一〇%上つたつて給与水準を上げるという理由にはならん、こういうふうな御意向が出て来そうでありますが、これらの点もどういう工合に考えておられるか。従来の或いは国家公務員法或いは公企労法の底を流れております、ストライキ権を奪つたのだから、或いは団体行動権を制限したのだから、その代りに勧告をすれば、それを十分生かすために政事府は運用されるであろう、或いは裁定は団体交渉による団体協約と同じと認める、こういう点は全く失われて、公企労法のこれは改正と称せられますが、改悪であることには間違いない。基方的な労働者の基本権を奪つて、その代りに作つた制度ではなくなる点が明らかでありますが、これらの内容の点についてはどういう工合に考えられておられまするか。案はできておるのでありますか、提出の時期と関連して御説明願いたいと思います。
  106. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 公労法の問題につきましては、実は試案を作りまして、労働省として、事務的に試案を作つて、各方面の意見を聞いておるわけであります。今労使協議会と言われましたが、これは労働問題協議会と御記憶願いたい。そこにも出しまして、意見を聞き、労使双方、公社側或いは組合側の意見を聞いております。労働問題協事議会の場合には、今お話ような数についての意見よりも、むしろ任命方式についてもう少し考えたらいいじやないかというよう意見があつたのであります。それほど激しいというふうな印象は受けないので、まあ労使双方、殊に労働者側にも十分意見を聞いてやろうというふうに、行なう場合は行なおうというふうな考え方意見を聞いておるのであります。併し今あなたのおつしやつたような、そんなべらぼうなことをするというよう意見はむしろ少いので、むしろ三十五条、十六条の関係を、あういうふうな歴史的な一つの沿革があるので、もう少しはつきり時期の点で、いつ仲裁が効力を発生するのだ、例えば国会の承認のあつたときに仲裁の効力が発生するのだというふうにしてもらうほうが、むしろフエアに、公正な交渉をする場合にいいのじやないかというふうな気分もあるようであります。併しいずれにいたしましても、労働関係の法案というものは、今お話のあつたように、何でも改悪反事対だということで、本当の改正であつても改悪として徒らに紛議を捲き起す点もあるのでありますから、そういうことのないように、一つできるだけ話は聞きたい、こういう態度でおります。従つてまだ試案の域を出ない。いつ提出するか、時期についてもはつきりしたものができていない、こういうふうに御理解願いたい。
  107. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の労働大臣のお言葉の中に、徒らに紛議を生ずるような論議だというお話がありましたが、私が質問を申上げた点が、徒らに紛議を起すような論議と、かように言われるのですか。
  108. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 必ずしもあなたがそうというのではなくて、労働関係の法案というものはとかくそういうことになつて内容をよく見ないで非常な紛議を起す事ということもあるから、よく内容については十分話合つて、そうして扱い方をきめるほうがよかろうという、こういう考えでおります。従つてまだ意見というものは確定してないと、こういうふうに御了解願いたい。
  109. 吉田法晴

    吉田法晴君 私はまあこれはつまり公けに公労法改正の構想というものを承わつておらんから、公企労法改正の意図が、それは大臣所信の中にはつきり出ている。ただ慎重考慮中云々ということを書いてありますが、それは時期の点だけなのか、内容については新聞その他で承知する以外にないから、その新聞で承知するところによると、公企労法の根本的な成り立ち、或いは意義というものを全く失うような改悪であると考えるがどうかという、こういう御質問を申上げたのに、改正と言えば何でも改悪だと言い、徒らに紛議を起させるよう議論をすると言われては、これは議員を侮辱するも甚だしいと思う。改めてお答え願いたい。
  110. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それは吉田さんに申上げたのじや決してないのでありまして、従来そういうことがたまたまあるから、そういうことのないよう一つつて行きたいと、こういうことでございます。今お読みになりました新聞記事の通りに内容考えている。併し試案でございますから、これはもう公式に委員会の皆さんにお諮りする段階になつていない、こういうことなんでございます。
  111. 吉田法晴

    吉田法晴君 試案ならば試案に基いて私はお話するのを、それを改正を何でも改悪と言う、或いは徒らな紛議を起すよう議論なんだという前言は取消してもらいたい。私が内容についてこういうことが報ぜられているが、これは本当か、こういうことを聞いているのに、徒らな紛議を起す議論というのは何です。
  112. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私が言つたのは決してそういうことは言つたのじやないので、そういうふうにあなたがお取りになるならば、それは私のほうで余り紛糾させるのが目的で言つているのじやないので取消してもようございますが、とにかく要するに試案を関係各方面に提示して意見を求めている段階だ。従つて案そのものがなければどうにもならん。而して労働関係の法案というものの扱い方というものは、従来の沿革もあるからよく十分意見を聞くようにして、これこそ新らしい行き方といいますか、できるだけ政府がきめてぽかつと出してやつて行く、そういうことじやなくて、当事者の意見を十分参酌して行きたい、こういう考え言つているのであります。
  113. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは試案であつて、案としては労働省案としてもまとまつておらん。まして閣議等に諮るといつたようなことは定めておらん、これから各方面にいろいろ相談をして改正案を作るとすれば、どういう案を作るかという試案、かように了解していいですか。労働問題協議会にかけられたり、或いは自由党その他にも相談をされているようだから、少くとも労働省案としては新聞に報ぜられているよう内容を持ち、そうしてその案を作るためにいろいろな相談なり手続が進められている。それを多少私は揶揄的に、もう案はできて、与党工作或いは政党とか会派に働きかけて、通る見通しがつくなら出したい、こういうことで折角工作をしておられるのか、こういうことを聞いたのですが、今のお話ではまだ労働省案でもなし、試案で各方面に相談する本当の試案を作つただけで、その内容は新聞に報ぜられているところと、かように聞くんですが、そうですが。
  114. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今まで申上げた通りなんです。要するに試案であつて、それを各方面に話している内容はそこに出ている通りで、今仰せられた通りです。
  115. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると労働省としてもまだ最後案としてきまつているわけではない。これを各方面に配つて、いろいろ意見を求め、そうして修正するところもあるだろう。或いは委員の任命方針についてもその他についてもこれは変える案である。これから相談をして聞いて行つて、よりよいものを作るための試案を出すか出さんかはまだわからん。こういう段階だと承知していいですか。
  116. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その通りですが、先ほど申上げているように、これは、労働関係の法案というものはできるだけその関係者の意向を聞くという一つの行き方をとりたい。こういうことで、それには案がなければ、ただどうするのだと言つて聞いたんじや話になりませんから、例えばこういうことはどうだ、こういうことを労働省としていろいろな意見を聞いて、一つの草案というか試案というか、そういうものを作つているわけです。これは御意見を聞いた上で本当のコンクリートのものにしたい。従つてその時期は、案そのものができていないから、提出の時期というのは全然今のところ考えていない、こういうことです。
  117. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると具体的な内容について、試案というか草案というか各方面に意見を求めるについては案がなければ話にならないから案を作つた、こういう説明でありますから、それでは先ほど申上げましたような趣旨、或いは或る新聞には、ちよつと触れ落しましたけれども、交渉の単位制をやめて、組合ごとに交渉委員会を設けるという構想があるようですが、それを或る新聞は、第二組合にも交渉の途をあけるものだ、こういう批評をしております。それらのものを含んで、私は先ほど私の意見を加えて質問をしたのですが、いろいろ問題があるので、これらの点について、私は先ほど申上げるよう委員の任命方針について、或いは仲裁そのものの性格について、例えば能率的な運営と公共の福祉の増進云々というような、或いは国家財政状態も考えろとか、民間給与との均衡を図れとか、或いは公共企業体の財政状態も考えろとか、こういう賃金を抑える、或いは職員の給与改訂を非常に困難にするような状況等もある。従つてそれは公企労法の成立ちからいうならば改悪ではないか、或いはできたその裁定も、国会の承認があるまでは効力を発生しない、こういうことになりますならば、団体交渉に代るものとして調停委員会、仲裁委員会を作つたその精神に反して来る。従つて公企労法そのものの根本的な転換になる。そこで公企労法の改正であるならば、あなたが言われるような、改悪ではなくて改正であるならば、主として公企労法ができた基本的な精神は法の中に貫かれなければならない。そうすると労働省考えられた草案なるものは、これは直さるべきだ。そういう点で基本的に公企労法或いは仲裁裁定その他の性格を変えるような点はこれを直さるべきだと思うのです、そういう点については意見を聞いて直したいという話だから、直す意思がおありかどうか。
  118. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それと反対の御意見もありますから、双方いろいろ伺つて善処したいと思います。
  119. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと吉田君、手続問題になるから……。公労法については労働省としては改正をしたいという意思があることははつきりしているのですね。現状を改正したいという意思があることははつきりしているのですね。
  120. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その改正したいという要望が非常に多いから、要望に応えまして考えておるわけです。要するに……。
  121. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) その要望というのは大体どこから出ておるのですか。
  122. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国会ですよ。国会の多数……。
  123. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 国会から出ているのですか。
  124. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国会にもございますし、公社関係のものにもございます。それから一部私が会つた方の、労組の関係の方の中にも、それはやはり必要でしようねという御意見を言われる方もございます。
  125. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうすると大体労働省考え方はわかりました。そうすると先ほど大臣は労組というものはどうも食わず嫌いで、すぐボイコツトされる虞れがあるので、食えるか食えないかよく一つ見てもらおう、こういうお話があるのですがね。大体そうしますと、そういう意味で各方面の意見を今聴取しておられると思いますが、各方価で大体食えるというような工合に意見が出て来れば、法案をまとめて国会へお出しになるのですか。
  126. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 各方面の意見を聞いて、そうしてこれを入れれば非常によくなるという御意見が多いとか、そういうことがあれば決定したいと思います。今のところはいずれにしても決定いたしておりません。
  127. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうしますともう少し掘り下げて聞きますが、今まで私の経験によりますと、こういう労組法の改正というものは経営者側の立場に立つ人は大体賛成のようです。中立の立場に立つ人でも先ず過半数以上賛成のようです。反対の意思を表明するのが従業員側のようです。そうしますと、若しそういう現象分析が間違であるならば御訂正願いたいと思いますが、大体そうだと思うんです。その場合に今意見を聞いておられるというのは労組側というか、従業員側が満足するような状態であれば、話合いが付けば出すとおつしやるのか、一応意見は従業員側に聞くが、一応聞きおく程度で、反対意見を押して出すと、そういうお気持であるのか、その辺はどうなんですか。これは私は過去しばしばの例があり、歯に衣を着せて物を申す必要はないので、率直に一つ述べて頂きたいと思います。
  128. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 折角のお話ですが、そこまで申上げなければならんのですか、これはまあ私の判断にお任せ願いまして、私もできるだけ良識的に各方面の意見を容れるべきは容れ改正する必要があるとすれば多数意見も聞き、少数意見もできるだけ収拾したい。若干でも少数意見でもあれば出さんのか、こう問い詰められましては、にわかにお答えすべき筋でないように思います。
  129. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) その裏を読んでおけばいい、こういうことですか。
  130. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあそういうことです。(笑声)   ―――――――――――――
  131. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど労働大臣の御答弁、これは公開の席で速記もついておりますから、委員長がたしなめられたような、私の話ではないと思うんですが、公企労法改正の要望が各方面から、国会、先ず国会から、初めは国会だけを言つておられる。あとで公社、一部労組と言われましたが、国会からというお話でございますから、国会のどういうところから出たのか、恐らく国会でございますならば、国会議員は個々に申上げるというようなことではなかろうと思う。国会のどういうところで、衆議院でありますか、参議院でありますか、これは国会の場合に衆参両院を通過しなければならん。共同の決議案でも出れば国会の要望にもなろうかと思いますが、そういうことは存じませんが、国会のどこから、何委員から、或いはどの委員会から出たのか、一つ明確に御答弁願いたい。
  132. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この点は私は言葉が足りないので、これは吉田さんに訂正を申上げさして頂きます。要するにそういう意味ではございません。国会の中でいろいろそういうことを言われる方が多い、こういう意味で申したのでありまして、国会議員の議決であるか、委員会であるとか、そういうことではない。そうしてどこであるという御質問は少しどうも野暮のようでございまして、そこまでお答えすることは差控えさしてもらいたいと思います。
  133. 吉田法晴

    吉田法晴君 国会の公開の委員会で、国会から要望が出た、こう言われるのに、どこから出たかという質問が野暮だと言われるならばこれは心外である。国会というものは憲法にも或いは国会法にも書いてございますが、国会の意思決定というものは本会議か、或いは委員会委員会もこれは或いは国会の意思ということにはならんと思います。だから国会というものは、これは本会議で衆議院と参議院と一致するときもあります。一致せんときもあります。少くとも本会議を通過しなければ国会の意思というものは出ません。或いは委員会で決議というようなものがある場合もあるかも知れませんが、国会と言われる以上、国会の一議員が言つたから、言わんからというので、国会から要望があつたということはできません。公開の席上で労働大臣が御答弁になつた言葉だと思われません。国会のどこからあつたのか、その点お伺いしたい。
  134. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほどちよつと速記を停止してのお話合いのような気がしましたので、それは国会ですよと申上げたのです。その意味は、国会の中でいろいろそういう意見を聞くものですから――そういう趣旨でございますから、今の御質疑ようにおとりになりますならば、その点は訂正いたします。
  135. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の御答弁は、国会の中でというお話でありますが、その御意思は、国会という公式のものなのか、或いは国会の中で……まさか便所の中でという話はなかつたろうが、速記もついておりますが、さつきは、国会から要望があつたということは、はつきりしている。なんだつたら速記を調べてもわかります。先ほど労働大臣でしたか、委員長でしたか、ここはとにかくあなたの言われるような便所の中や控室の話ではない。国会の労働委員会質疑を申上げ、そしてここで答弁せられている労働大臣の答弁の中で、国会から要望があつたというから、それなら我々が常識考えている国会の、或いは国会の中で、或いは正式に言うならば、衆議院か参議院か、或いは労働委員会なのか、或いは運輸委員会か知りませんが、どこでそういう要望があつたのか。国会という意味の国会に関係をいたします。或いは大臣が答弁せられる意味において、国会のどこから出たのか。一つお聞きしたいと思います。
  136. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  137. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を起して。
  138. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほど私はこの公労法改正すべしという声が多いということをどこで判断するということについて聞かれましたとき、「国会ですよ」とというふうに申上げました。そのことが問題になりましたので、それは「国会の正式の意思の発動であるという意味にとられるならば、それは取消します」ということを申したのでございまするが、私の言う趣旨は、国会議員の各位の中に公労法をもう少し合理的に運営できるよう考えたらよかろう、こういう御意見のかたが多いよう考えましたので、この改正について研究しておる次第であります。
  139. 吉田法晴

    吉田法晴君 「国会で」という言葉は、「国会の正式の意思の発動ではなくして、国会議員の中に公労法を改正すべきだという意見のかたが多いということを知つたので」と、こういう御説明でありました。これは参議院の労働委員会で国会議員である労働大臣が御答弁になる言葉でありますから、重ねて伺いたいと思うのでありますが国会議員の意思の多くが公労法改正に賛成であると、こういう御意見でありますが、それは何を通じて御判断になりますのでしようか。或いは委員会か或いは本会議か知りませんが、そういうところで意見が出る以外にはないと思うのであります。正式の意思の発動ではないと言われますけれども、国会議員の意見が多いと、こう言われますから、その国会議員の意見はどこに現われておりますか、承わりたいと思います。
  140. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は国会議員の意思の多くがということを、過半数がそう要望していると、こういう意味でそういう言葉を使つたかどうか速記を読んでみないとわかりませんが、そういう意味では少くともないのでありまして、私も党の幹部として国会において活動しております場合に、そういう意見を多数聞きますれば、そういう意見も相当に多いと、こういう判断をするのであります。そういう意味一つ御了解を願いたいと思います。
  141. 吉田法晴

    吉田法晴君 国会議員の意見が多いかどうかということは、この問題についてもほかの問題についてもそうですが、或いは委員会或いは本会議以外に意見は出ないと思います。多数と言われましたのはどういう御判断ですか、承わりたい。
  142. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 要するに、比較多数であるかどうかということは、委員会なり本会議なりで採決してみなければわからんことであります。私の言うのは、多くの人々の中にそういう意見を持つておる人々があると、こういうことを言つておるので、比較多数であるかどうかということでなくして、多くの者がと、こういうことであります。
  143. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうしますと、国会議員のどの程度か知りませんが、小坂さんが聞かれた国会議員、或いは接触された多くがそういう意見を持つてつた。これはまあ一番近いところで自由党でしようが、自由党の国会議員の多くがそういう意見を持つてつた、こういうことで公労法改正の決意をされた、こういうわけですか。
  144. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そのようにお考えになつてよろしいと思います。多くという言葉は多くの者という意味であつて、多数であるか多数でないかということは、正式に諮つてみないとわからんことであります。要するに多くの者がそういう意見言つているのを耳にし、又意見の開陳を受けたりしてそういう判断をすると、こういうことの意味に御了承願います。
  145. 吉田法晴

    吉田法晴君 多くの者というのは、これは国会の中で比較的多数であるかどうかという問題ではない、それは委員会なり或いは本会議で採決してみなければわからん、それはその通りだと思う。併し労働大臣という政府の機関、これは個人小坂ではありません。政府の機関が、公労法という法律を改正する意思を決定し或いは立案の活動を開始するために必要な意思の表現というものが仮にあるとするならば、「国会で」という言葉に関連いたしますならば或いは国会との関係がございますならば、それは委員会なり或いは本会議なりの意思或いは決議の場合もありましよう。或いは決議とまでは行かないでも、意思決定がなされるときに、初めて大臣として或いは行政機関の責任者として動き出されるものがあるだろうと思う。自由党の政調会できまつて自由党として政策を出す、或いは法律の改正を出すというのもわからんことはありませんが、自由党できまつたからそういう工合に出すと、こういう話をされるわけじやありませんでしよう自分の接した者の中の比較的多くの者がそういう意思であるから云々……。で、仮にこれは公労法となりますと労働法であります。或いは衆議院の労働委員会もあり、参議院の労働委員会もありますが、そこで意思決定があつたというなら別問題。そうであるとは言われない。それならば自由党だとも言われない。多くの者と言われる。そういう非公式な意思の発表というか、個人的な意見を集め合せたもので、労働省としては或いは労働大臣としては重要な法律の改廃を決意さるべき建前にあるのかどうか。その点を一つ承わりたい。
  146. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この試案がまとまりましたならば、恐らく国会に附議して御意思を決定して頂くと、こういうことなると思います。併しその原案は、これは政府が法律を出そうと考えておるわけでありまして、その原案の意思決定に先立つていろいろな人の意見を聞いてみる、これはもう当然なことだと思います。
  147. 吉田法晴

    吉田法晴君 質問は、「国会で」という初めの言葉に関連して、国会というものは全然関係がないのだ。「国会で」と申上げたのは国会の中でという意味でもない。国会とは関係なしに話が出たんだ、或いは立案したんだと言われるなら別問題ですが、まだ「国会の中で」という言葉が残つておる。そうすると、国会の中のどこだと、こういう質問をしたところが、「多くの者」というお話ですから、その「多くの者」というものを正式に取上げらるべき地位にある者として、その「多くの者」というのはどういうものか、そういうことを聞いておるのですが、その「多くの者」の国会的な意味これはまだはつきりせんようであります。その点をもう少しはつきりして頂きたい。
  148. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国会議員であります。
  149. 吉田法晴

    吉田法晴君 国会議員であるならば国会議員が正式に協議をする場所は委員会なり本会議なりしかないと思う。そうすると、どこです、国会議員が意思を表明する場合は。
  150. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国会議員で私が国会内において話を受けた人を言つておるので、国会議員は国会内において正式の機関以外に意思の発表はできんということは私は承知しておりません。
  151. 吉田法晴

    吉田法晴君 国会議員といえども人として意見の発表ができないということは私もそれは考えておりません。併し国会議員が国会議員として意見を発表するというのは委員会なり本会議以外にどこですか。どこで多くの者の意見を聞かれたのですか。
  152. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そういうことを申上げる必要はないじやないですか。国会の議事堂、国会内において国会議員がいろいろ話をし合う。悪いことならば別ですけれども、いやしくも政策の問題に対して国会議員がいろいろの場所で国会内で話し合うということは、これは当り前のことでしよう
  153. 吉田法晴

    吉田法晴君 労働大臣の政治的な感覚と言いますか、或いは労働大臣としての責任的な感覚に驚くのですが、先ほど労働委員会労働大臣として答弁された中に「国会で」という言葉があつた。それと同じですが、国会というものをどういうふうに考えておられるのか。或いは国会議員が意思を発表する、国会議員が個人として意思を発表する。或いは政治的な現象として言葉を使う。或いは意見を発表する。それはどこであろうとかまいません。併し国会議員が国会議員として意見を述べるというのは委員会なり本会議以外にどこにありますか。
  154. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私も実は驚いておるのですが、あなたのほうは党の代議士会もあり、或いは党の部屋でもおやりになると思います。控室でいろいろな政治的な意見の開陳をやる、同じことではないですか。
  155. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは党の党人として或いは政治的には国会議員ということになるのであります。法的に或いは国会法上の意味において国会議員が国会議員として意見を述べる、これは委員会なり本会議以外にどこにありますか。だから自由党なら自由党でそういう意見が多く出たから、こういうお話なら、それはわかりますけれども、国会議員が控室で意見を述べる、ここで答弁なさる、あなたが大臣として答弁なさるお話の中に、そういうことで国会議員の多くの者、こういうことを述べるということになる理由になりますか。
  156. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国会の中に、吉田委員も御承知ようにいろいろな場所があるわけであります。政府委員の部屋もありますし、閣僚室もありますし、自由党の控室もありますし、その他のいろいろな場所があるわけですね。私も朝から夕方まで国会におりますわけですから、国会の中でいろいろな話が出ますことは、これはもうあなたの場合でも同じだと思う。そういう場合に私に話すときに、これは私的な話だと言つて話すのではなくて、天下の公器をあずかる者として自分意見を国政について述べれば、それはその人の政治的な意見がどこにあるかということはお互いにこれは判断できるわけですね。そういう人が多ければ、相当の人がそういう意見だ。これは当り前ですよ。そこで正式にそれではこういう法律をきめるという場合には、私の党では自由党の機関にかけて決定いたします。決定いたしました後に政府が出すのであれば、これは政府提案ですから、閣議によつて決定いたしますれば、決定いたします。そうして国会に附議して両院の御審議を経て多数を得ればここで可決決定して法律になるわけでありますから、そういうことで、何も前段階においてどこでどうしたということを育つても、これは当然のことをやつておるわけでありまして、どうもわかりませんな。
  157. 吉田法晴

    吉田法晴君 労働大臣はまあ法律家じやないから、大臣或いは国会議員といもうのの法的な地位というものについて御自覚がないのだと私はまあ了解いたしますが、これはもう少し帰つてから聞いて頂きたい。国会議員として正式に発言する機会は委員会或いは本会議以外にありません、法的効果を持つのは。それ以外で代議士会で、どこへ行つて聞かれたのか存じませんけれども個人としての国会議員の意見を聞いた。それは法上の国会議員ではありません。個人としての国会議員から聞いたのを、いろいろ聞いた中で比較的多いように思つた、こういうお話であります。そうですが。
  158. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 何と言いますかね、政策を決定する場合に、できるだけ人の意見を聞いてやりたいと私は考えております。ただ、委員会以外に人の意見が聞けない、いやしくも国会議員の意見委員会以外に聞けないというのは、これは、私はおつしやる通りに法律の専門家じやないが、常識的におかしいことになると思います。できるだけ私は国会議員各位の御意見を伺つてやるつもりでおりますが、それはいろいろな段階がある。委員会でこうして正式に伺う段階もある。或いは党というものに所属しておるのでありますから、その党内でいろいろな意見も出ます。こういう段階もあります。又決定する場合には党の正式機関において発言する場合もあるわけです。いろいろな段階かあるのでして、でありますから、何か自覚が足りんとか、法律の知識がわからんとかおつしやるけれども、それ以外のものがあるように思います。
  159. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) これは今の御両所の意見をいつまで伺つてつても限りがありません。というのは片一方は常識論ですし、片一方は法律論ですし…。
  160. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 法律論というのはおしいですね。
  161. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そう言われると私も言わざるを得ない。それは法律論なら私は吉田君の言われる通りだと思う。常識論なら又小坂労働大臣の言われることもわからんでもない。併しそれをなお労働大臣が言われるなら、私はなおもう少し議論しなければならないと思う。それをなお私が、会話が平行線だから、議事が大分遅れますから、この辺でと思つて発言をしましたのは、国会議員の中にそういう考えがあるという常識論を言われて、そうして更に自由党の部内にそういう意見があるように了解していいかと言われて、労働大臣はさよう考えてよろしいということを速記をつけてさつき言われたのですね。それならば、私はこの限りにおいて常識論として了承して行くよりほかに仕方がないよう考えております。そこが又元へ戻つて来れば、これはもう一遍議運へでも持ち出して「国会の中」というをやらなければならん。どうです。私が今仲裁に入つたわけではありませんが、片や常識論、片や法律論で論議が進んだが、論議の過程で小坂労働大臣の言われたことは大体わかつたからこの辺で了承するということでいけませんか。
  162. 吉田法晴

    吉田法晴君 いずれにしてもはつきりしてもらえばよい。公けの答弁で「国会の中で」と言われた。初めは、「国会で」と言われた。それは国会のどこです。そうすると、その点は、『「国会で」というのは取り消します、「国会の中で」』と、こう言われた。国会の中でも、正式の議論として国会の中で意見があつた、多数の意見があつたということがどこではつきりしているか。個人として私が接触しておつた者がそういう意見であつたというような、そういう非公式なものを労働大臣としては機関として取上げられますか。或いはそれは労働問題協議会といつたようなものも開かれておる。それはそれで一応労働行政をやつて行くために、諮問機関でしようが作られる。そこから出たというなら、それでもいい。或いはあなたが自由党の議員であることもわかりますが、自由党なら自由党でもいい。併し国会の中で正規の意見があつたからそれを拾い出したということで、労働大臣が重要な法律を決定する理由になりますか。ならんでしよう
  163. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 吉田君、それでね、あなたの御意見は一応小坂労働大臣常識的な話で、労働大臣が取上げることが当を得ているかいないかという第二段の追及に移つているのですが、それは私は御自由だと思うけれども、私のちよつと完ほど申上げた平行線は、私の言つたことでつ了承してもらいたいということです。それでいけませんか。常識論のほうの追及は大いにおやりになつても自由ですけれどもね。
  164. 吉田法晴

    吉田法晴君 こういう問題についてそう長い時間をとろうとは私は思いません。思いませんが、労働大臣大臣としての常識に基く答弁でないものだから、その点をいずれでもいいからはつきりしてくれと、こういうのですよ。
  165. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それは速記を止めてからあとで申上げたことではつきりしているものと思うのですが、委員長のおとりなしで、平行線だということで私のほうは了解しておきます。
  166. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは、常識的な議論はしたけれども、それが正規或いは法的な議論ではない、こういうことを認められてのお話ですか。法的な正式な話じやない、それは常識的な話だということですか。
  167. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 法的とおつしやいますけれども、この法律について一つの試案を持つということの判断に各種の人の意見を聞くということは、法律に別に……、法律的にどうこうとおつしやるのはよくわからないのです。国会内の雰囲気を、いろいろ知るということは、これは大臣として当然すべき大変重要なことだと思います。それについて国会の内部でいろいろな人の意見を伺うわけでありますから、私の接したところによるとそういう人が相当多いので、そこで試案を一つ考えて行く、こういうことなのであります、しばしば申上げますが。
  168. 吉田法晴

    吉田法晴君 労働大臣として答弁しておられるのだから労働大臣としてどういう工合に政治を運営して行くか、或いは国会を運営して行くか、これは当然お考えだろうと思う。国会に関連してお考えになるならば、国会の正式の意思表現の場である委員会なり本会議というものを除いて、立話で、多くの人に接触したから云々と、こういうことが労働大臣として重要な法律の改正の理由として挙げ得るのですか。私はそう思わん。それならば、そのほかの理由の通る理屈を挙げられて、それはあなたの理屈でかまわんけれども、はつきりしてもらいたい。
  169. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その法律を出しますようになりますれば、そのとにいろいろ申上げます。
  170. 吉田法晴

    吉田法晴君 議論を全部やめちやつて、どういういきさつでこの法律を改正するに至つたか、そういう理由等も提案のときに改めて出すというのですか。それなら今までの質疑をして来た、議論をして来た問題は御破算にしてしまうと、こういうことでいいのですか。
  171. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほども申したように、法律を出します際には、党の意思も決定しなければなりません。それから閣議の決定も得て出すわけですから、そのときは、はつきりすると思うのです、その以前のことなんです。
  172. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは心得ております、心得ておりますが、国会で、或いは国会の中でと言われるから、それを正規な意味で、国会で、或いは国会の中でと言われるなら、どこだと言つているのですよ。
  173. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国会の要するに建物の中の各所であります。それ以上はどうですか、言う必要がありますか。
  174. 吉田法晴

    吉田法晴君 国会の中のどこであるかといつたようなことを聞いているのではないのですよ。そういうことを聞こうとは思つていません。国会の中で、正規の機関でない場所で、その自分の接触した多くの人がそういう意見であつたからと、そういうことが重要な法律改正の決意をした重大な要素、決定的な要素考えられるとするならば、それは国会議員から、国会から出られた大臣としての資格がこれは考えられるという意味で、私は申上げたのです。というのは、国会、或いは国会議員というものは、正規の意見を表明すべき場所は委員会或いは本会議以外にない。国会でこういう意見があつたから参労法を改正した、こういう意見を言われて、或いは労働委員会で、或いは参議院の本会議なりで、それは黙つておりましたけれども、少くとも私どもはこの労働委員会でそういう議論は出なかつた。或いはそういう意思決定はなかつた。それで国会でそういう意見があつたからこの法案を提案しました、こうお話になつたら、それでは国会のどこでやられたのか。我々のこの委員会か。運営委員でやられたのか。或いは大蔵委員会でなされたのか。それを聞くのは当然ではないですか。
  175. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほど申上げておりまするように、そうした正式機関の場所ではない。国会の中でその種々の議員からそういう意見を聞く、こういうことは当然であつていいと思う。党の意見は、あなたにも御承知でしようけれども、何度も決定するわけではない。その意思決定というものは最終のものができたときに、一回決定すればいい。その前にこれを決定するかどうかということについては、いろいろな人の意見があればその通り決定されるわけです。その前に議員が改正について要望をすれば、大体党の意思はそこにあるということで、あとは今度は自分のほうとしては、行政大臣としては技術的にいろいろな観点をまとめ上げてみる、それがいいかどうかということについて、今度は最後に党の意思決定をして、そして国会に諮る。或いはあなたもそうでしようが、私も随分長い間国会におりますので、よく申上げるまでもないことだと思うのですが。
  176. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは党の意思決定があつたわけでもないと、それから国会の本会議場でも、委員会でも、いずれも正式の機関において決定したということはどこにもない。自分の接触した多くと思う。客観的に多いかどうかということはわからない。自分個人的に会つた多くの者の中に公労法を改正せらるべきではないか、こういう意見の人が多かつたように思うから、そこで公労法改正の手続に入つた。こういうことですか。
  177. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 手続といいますか、試案をもつてそれの意見を聞く、こういう段階を踏んでいるわけです。
  178. 吉田法晴

    吉田法晴君 試案をもつ、それの動機になつたと、こういうわけですか。
  179. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そうです。   ―――――――――――――
  180. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今調達庁の山内総務部長がお見えになつておりますので、先ほどの問題にもどります。  総務部長は問題点は御承知になつたでございましようか……。  それではもう一遍簡単に申上げましよう。実は先ほど阿具根君から特需工場の労務者の問題につきまして質問がありました。その内容は、特需工場と米軍との受入契約の中に、退職金その他の諸公課、諸公課が税込であすます。従つて経理の中で明確に諸公課が別抜きにされていない。賃金の単価の中へ入つておる。従つて実際に運営をしてみるというと、一定の利潤以上挙げれば、その企業の利得になるのではなくて、単価の切下げが向うから要求されて、従つて現実に退職金等を払いますというと、受入契約単価の中で支払い得ると予定して協約等を労使の間に結んだその金額を払えなくなる。要するに税金が込みで入つておりますので、実際に労務者に渡す場合には協約金額等は相当な税金を差引かなければならない。手取は相当減つてしまう。これは原資のほうで減るわけです。こういう御質問があつたのございますが、この点について誤答弁を願います。
  181. 山内隆一

    説明員(山内隆一君) 只今の委員長からお話のこの委員会に現われた御質問でございます施需工場と軍との間は、御承知ようにもう政府機関は関係なしに直接の契約で、全く自由な立場でいたしておりますので、その条件等について私どもが一々かれこれ言う筋合いはないようになつておりますが、ただ契約の一般条項、施殊条項について、余り不合理なものについては、事前に話合つて、私どもの、調達庁側の意向を相当入れた一般の条項がで上つておるわけであります。この条項は必ずしも私どもが満足するような程度には達しておりません。併し相手のあることでありますから、或る程度のところでまあ満足せざるを得ないような事情になつております。従つて只今のお尋ねの税金の関係は私ども詳細には存じませんが、当然この税が幾らというようなものは或る程度のマージンを認められますので、そういうような場合にいろいろの経費として当然コストの中に入れてあるものと思つております。そこで労務者の退職手当は、実は普通の退職の場合の引当金だけ契約価格の中に見込んで、ありますので実際最近のよう情勢では普通退職と見ることもできないような退職の仕方が相当あります。併しながら一応契約書としてはそういうふうになつておりますので、特別退職の場合の増額手当を支給することはできないよう情勢になつておりますために、最近軍のほうにそういうことを申入れまして、整理等の場合、或いは発注量の激減した場合に処する道として、その整理の場合には増額手当を支給してもらうように申入れてあります。従つて現在の普通退職の引当金と整理退職の場合の退職金との差額を支給してもらいたいということを申入れて、折衝はいたしておりますが、まだ決定するに至つておりません。  税金の問題は、これは調達庁が関接調達をやつております時分でも、やはり当然その中に税の或る予想額は諸経費として入れてもらつておりますので、その直接契約の場合にも当然見込んでおるものと考えております。退職手当の場合の税金はこれは退職手当についての税金として特別にこれを免除するとかいうようなことは非常に困難じやなないかと考えております。
  182. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、この問題は、もう調達庁には随分まあ承知されて交渉もされたのだと思つて、実は最初から質問をしておつたのでありますが、外務省關次長も御存じないようでありますし、今、部長も御存じないようでありますが、只今の退職金にいたしましても、当然諸経費の中に税金も入つておるのだ、コストの中に入つておるのだという御答弁でありますけれども、それが入つておらない。それで第一の要望といたしましては、こういう直接雇用、間接雇用にできないかと、そうして現在の間接雇用と直接雇用のこの特需との差をなくしてもらいたい、同等に扱つてもらいたいというのが、第一の意見なんです。  それから第二は、こういうように諸経費の中にきまつておる退職金の税金も含んでおらない、これを含めるように十分折衝されておつたものかどうかと、こういうことをお聞きしておるわけでありますが、御存じなかつたようでありますので、この点をお聞きいたしますと共に、もう一つ前のやつは四十八時間を四十時間に縮小されて、そのために月に換算して約三千円のマイナスを来たしておる。こういうことを我々は聞いておる。それでは間接雇用はどういうようにそれはなつておるか。これも恐らく四十時間に下げられておると思う。それならばその八時間の補償は一〇〇%してもらつておるかどうか。これも第二としてお聞きしたいのですが、もう一つは、四十八時間の労働を四十時間に縮小されて、それだけの収入の減少を来たしておるからこれは当然米軍のほうで支給すべきだ、それで一〇〇%の補償をせよとこういうことを言つておるわけであります。  それに対しましては、特需の会社側は六〇%の補償をする。どういうことを言つておる。併し六〇%では極めて生活に困難も来たすし、現在の給料も御存じの通りでありますから、一〇〇%になるように交渉をして頂きたい。こういう点でまあ質問を申上げておるわけでありますから。
  183. 山内隆一

    説明員(山内隆一君) お答えいたします。この問題について、お話ようないろいろの労務者側にとつて不利益なこと、或いは非常に思いがけない、会社としても非常に迷惑を受けておることは、お話の通りだと思つております。  なぜかようになるかという根本の問題について、今の御意見の中にありましたが、一つには、この根本のやり方というものを変えたらどうか。米軍と日本の業者と全く自由な立場でやるから、そんな契約をして、而も又契約を一応調達庁等も入りましての条項をきめましても、その解釈の仕方ということによつて大分又違つて来る場合もありますので、そういうことからいろいろの不利益が起るということが予想されるわけです。今日のところは御承知ような日米合同委員会の下部機構として契約調停委員会というものを設けまして、業者のほうからそのときどき契約から起る意外な不利益の問題がありましたときには、そこに持ち出して折衝して、成る程度の話合いをつける道が開かれておりまして、調達庁がその契約調停委員会の主査を持つております。そんなことから、一カ年に約三百万ドルくらいの業者からの不服申立てに対して、軍との折衝の結果、業者側に利益をもたらしておるような実績も持つております。併しそういうことだけ如何に持つて行きましても、業者ひいては労務者に非常に不利益を招きますので、それでは又やり方を以前やつたような間接調達のような形にしてはどうか。これはいろいろの意見のあるところだと思いますが、私どもとしては全く同感なんであります。併しいろいろの事情から、すでに行政協定で、軍の、講和条約発効後は直接調達となつてきまりまして、ただ若干その間に入り得る余地としては、行政協定十二条の中に調通協力の名前の下において幾分か入り得るような道が開かれて、それと十八条の中に、紛争の起つた場合にやはりまあ入り得る道が開かれておるわけであります。そんなようなわけでありまして、これを簡単に改訂するということはなかなか容易じやないことでありまして、私どもは希望としては御意見の通りでありますが、今のところまだ実現する見通しもついておりません。無論努力中ではございます。  それからもう一つは、軍が途中で予算が縮小される、削られるという理由の下に、一旦契約しておりましても、途中で打切りをやる場合、それから一応契約は終りましても、当然仕事の性質上、工場の設備等、或いは労務者の関係その他すべて計画をしておりますから、当然又次に発注があるものと予想をしておる場合に、次に意外にも全然発注がないという場合に、不測の損を蒙むるわけでありまして、その場合に処する道として、私のほうから、発注量に伴う減価額は価格改訂条項に基いて調整してもらいたい、数量が減りますればおのずから最初入礼したときの単価が余計にかかりますから、そういう意味で当然改訂してもらいたい。又発注量の減小した場合に、これは多く工場を専用している場合でありますが、これを部分打切りとして扱つて、打切補償及び継続部分の価格増額をしてもらいたいというような申入れをして、これ又契約調停委員会で、或いはものによつては調達調整委員会でもこれを一つ主張して行こうじやないかというようなことを考えまして、すでに書面上申入れてございます。なおもつと根本の問題として、先ほど申しました調達の方式の問題のほかに、事業の安定を図るように、軍において発注量をもつと恒常化してもらいたい、成るべく平均化してもらいたい、そうして途中で打切るような場合でも、できるだけ早く日本政府に通告してその対策を講ずる余地をとつてもらいたいと、こういうことも申入れて外務省と共に折衝しつつあるような次第でございます。
  184. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間の縮小について、補償の問題はお答えがなかつたのですが、これをお答え願いたいと思いますが、契約の打切りとか縮小の場合は、少くとも一カ月以前に通知せよということは、相当交渉されておるものと思います。その結果どうなつてか。今のお話では今まだ交渉中のようなお答えの仕方でありましたが、それもどうなつておるか。はつきりさして頂きたい。
  185. 山内隆一

    説明員(山内隆一君) お答えいたします。先ほど申上げるように、いろいろの問題を捉えまして申入れて折衝しつつありますが、まだ決定するに至つておりません。なお強くその委員会に出席する者に、早く主張して、何とか少しでも、一歩でも解決に向つて進めるように努力するつもりでおります。
  186. 阿具根登

    ○阿具根登君 努力してもらつてつて、まだ実が結んでおらないのは残念ですが、その場合におきましても、例えば契約の期間を途中で打切つたり、或いは縮小の場合においても、使われていた労務者は路頭に迷つて来る。こういうことから考えましても、従来、特別退職金、予告手当等を十分に盛り込んだ補償措置も政府には随分陳情してあつたように聞いております。そういう点についてはどういう交渉をされておるかお伺いしたい。
  187. 山内隆一

    説明員(山内隆一君) 当時、業者側、労働者側でこの問題の成行きについていろいろ不平不満がありまして、陳情も頂きまして、労働省或いは外務省、その他関係省と一緒に、いろいろ業者側の意向も聞き、労働者側の意向も聞き、これが解決に努力して来たわけでありますが、結局先ほど申上げたようなことを強く申入れて解決をしてもらうことと、それから、それが実現しないうちでも、先ほど申しました、これは結果的に救済手段となりまして恐縮ですが、非常に不利益を受けた場合には、その業者の申入れによりまして、或いは労務者側の申入れによりまして、労働委員会のそれぞれの機関にかけてできるだけ業者側或いは労務者側の有利になるように解釈いたすべく最善の努力をいたしております。今後ますますこの方面に力を入れたいと考えております。
  188. 阿具根登

    ○阿具根登君 努力して頂いておることはわかりますが私の質問いたしました成果は何も期するところはございませんようでありますが、時間もございませんので、只今質問いたしましたそのほかにもまだ二、三項目ありますが、それは特需関係労働者諸君も調達庁のほうに陳情に来るものと思いますので、これが実現できるように極力努力をお願いして、私の質問をこれで打切ります。
  189. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) 私は今の問題に関連いたしまして質問したいこともございますが、次回の労働委員会まで留保いたします。
  190. 市川房枝

    ○市川房枝君 この間の労働大臣の御所信の中に婦人、少年の福祉向上については、その啓蒙調査活動を更に活発化してこれに対処する所存でありますとございましたのは、大変に私どもとして嬉しいと思いままが、併し活発化するためには予算並びに人員の問題があると思いますが、その問題についてどうなつておりまするかお伺いをしたいと思います。
  191. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 婦人少年局関係についてはすでに市川委員よりもいろいろ御高配を頂いておりますが、この問題につきまして予算をできるだけと思つて努力したのでございますが、御承知ように千万円以下の補助金を全部打切るということは、これは各省共通の強い線として出されました。婦人少年局関係としますと、働く婦人の家が問題になるわけでございます。この点もいろいろ折衝したのでございまするが、やはりそうした大きな線が動かし得ませんので、どうもなりませんということは遺憾でございましたが、このことは実は本省の補助が少くて地元負担が相当多いものですから、場所によつては喜ばれますが、場所によつては、これはと思うところではなかなか地元の御協力が得られないという節もございます。今年のところは、御承知ように八幡、川崎を明年度は一時打切るの止むなきに至りました。その関係で約九百八十万くらい経費を打切るのでございますが、全般的に見ますと、むしろ活動費が一割がた殖えております。これは他者の関係から見ると、婦人少年局関係は、相当に予算面では、決して多いとは私は申しませんで、微力を恥ずるのでございます。全般的な関係から見ますと、割合的には殖えておる、そんなことで一つ御了承願えればと思うのです。更に人員の整理の点につきましてもいろいろ御要望がございまして、行政管理庁その他との折衝をいたしました。これは地方には全然来ません。本省でも極めて僅かだと思います。本年度四人、これは希望退職で辞められるかたがある程度ではないか、こういうふうに思つております。
  192. 市川房枝

    ○市川房枝君 そのあとに地方の婦人少年室に協働員を置いて大いにやるということを伺つたのでございますが、この問題は地方婦人少年室の府県への移管の問題と関連があると思うのです。これは婦人少年室ばかりではなくて、基準監督局の問題も一緒になつて来ると思いますけれども若し地方委譲になりますというと、折角のそういう新らしい企画もその目的の通りに行えるかどうか、それに関連しまして、婦人少年局の本省のいろいろな企画、そういうものも本省の希望通りに実行できるかどうか疑問に思いますが、その出先機関の地方委譲の問題はどういうふうになつておりますか。
  193. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 働く婦人の家がやめになつた代りといつてはなんでございますが、そうした局所的なものよりも、全般的に婦人少年問題の啓蒙をするほうがよくはないかということで、新たに今お話ような協助員を作りまして、地方において婦人少年問題に理解のある、活動力のあるかたになつてもらいたいと思います。それにつきましては、僅かでございますが、経費を差上げるように、予算措置をしておるのでありますけれども、今お話ような地方委譲の問題、これは委譲はいたさないということは、はつきりいたしておりますが、ただ機関委任ということを、考えてはどうか、ここういう案が出ておりまするが、これはまだ決定いたしておりません。私ども考え方からいたしますれば、若し機関委任をするならば、婦人少年室のみならず、労働関係全般を機関委任する。国家機関である労働機構を作つて、その一環として婦人少年室を捉えるということでありますれば、中央からのそういう施策が行われると思いますけれども、婦人少年室だけを機関委任するということは考えられないと思います。そういうことでございますれば私どもは了承しかねるよう考えております。
  194. 市川房枝

    ○市川房枝君 今の地方委譲の問題は、是非私どもは、基準監督局ともどもこれは国家機関として現状のままでやつて頂くことをお願いしておきたいと思います。  それから十八国会の深川タマヱ氏の本会議における質問に対して、労働大臣が婦人の転落防止のための施設と言いますか、貸付金制度も考えておるということの御発表がありましたけれども、その問題はどういうふうになりましたかお伺いしたいと思います。
  195. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 貸付金の問題につきましては、労働省として非常に強く大蔵省に折衝しておつたのでありまするが、どうも遺憾ながら今年のところは緊縮のあおりを食いまして実現いたさないのでございます。この点非常に遺憾でございますが、続いて……。
  196. 市川房枝

    ○市川房枝君 続いて来年度と言いますか、来々年度……。
  197. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようでございます。
  198. 市川房枝

    ○市川房枝君 是非御努力を願いたいと思います。  それからもう一つお伺いをしたいと思いますが、それは国際連合に婦人の地位委員会というのがありまして、それには労働省から婦人少年局長がオフイシヤルオブザーバーと言いますか、そういう形で二回御出席になつておると思うのですが、その婦人の地位委員会の提案で、国連の社会経済理事会から、この前の国連総会にいわゆる婦人参政権に関する条約が提案になりまして、これが可決になつております。私は丁度そのときに国際連合に傍聴に参つておりましたし、問題が婦人参政権に関する問題でありますものですから、いろいろそのことについて実は調査し、当時の日本にもそのことを書いたのですが、これはまだ日本は未加盟国でありますけれども日本にも批准の勧誘が行くだろう、こういうことを聞いて参りまして、その後そのことについて注意しておりましたところが、昨年の十一月に、外務大臣宛に国際連合の事務局からその勧誘の書面が実は来ておるということを聞いたのでございます。そうしてその問題について、日本政府としてどういうふうにお考えになつておるかということを外務省の条約局長にお目にかかつてお話をしたのであります。そうしましたら、この問題はまあ所管の省から外務省に御提案があつて、その上で考慮する、こういうお話でありまして、じや所管は一体どこでしようかというようなことで条約局長は、初めそれは厚生省でしようとおつしやいまして、私はその関係を知つておりますから、所管と言えば労働省になるのじやないかと思うのですがということで申上げたわけなんですが、労働大臣はそういうことを御承知でしようか。或いはその問題について労働省としてどんなふうにお考えになつておりますか。それをお伺いいたしたいと思います。
  199. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国際労働課長から御答弁いたしたいと思います。
  200. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) その前にちよつと関連して一つ大臣に質問しておきますが、先ほどの市川君の御質問の中で地方委譲の問題の中で、基準局の関係を地方委譲するように法律案が出て、内閣委員会に付託されるような空気にあると私は聞いておりますが、そういう事実があるかどうかということ。それからもう一つは、私の聞くところによると、労働省の内部でも基準行政を地方委譲してもいいじやないかという空気があるということを私は聞いて、非常に心外に思つておるのです。これは昭和二十二年であつたと思うが、職業安定法をやるときに、私は大体中央一貫行政というものは当時は反対論者であつた。職業安定機関というものは地方の都道府県にこれをやらせたらよくはないか、そのほうが余ほど円滑に行くのじやないかということを質問したときに、当時の労働省は、江口次官のときだつたと思うが、非常に強い迷論というか、迷つた論を私は正してもらつたことがあるのです。これはまだ頭にこびりついておる。そういうときに、今労働省が行政機構改革に名を借りて、一番大事な基準行政を都道府県に委譲することに若し賛意を表するというようなことがあれば、それはゆゆしいことだと思うのです。その辺の真偽を一つ明らかにしてもらいたいと思います。
  201. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 法律案が内閣委員会へ出るというお話は、実は初耳で、全然聞いておりません。なお地方委譲ということは私ども反対でありますし、党のほうでも全然その話は考えていないと思います。なおよく調べてみます。新聞に出ていたのは委譲と出ておりましたが、あれは違いまして、機関委任ということを考えれば考えるかということでありまして、なお最終的なものは何も決定しておりません。
  202. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今日の事態はそうかも知れませんが、将来はどうですか。
  203. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私の考えでは、ああしたものはやはり国家機関でなければということなんです。私の所掌しております限りはそういうことはないと思います。ただよく委譲々々と出るのですが、あれは自由党でも、委譲ということは誰か個人的に一人二人言つた人があるかも知れませんが、これは政府の機関でそういうことはないしということがきまつております。ただ機関委任ということは、要するに機関である何か労働局というようなものを都道府県に置いて、その中に基準局も置く。無論これは国家機関ですから労働省に属する。ただ知事というものがその中に介在する。こういう考え方です。それは一つあるのす。あるのですが、それはまだ確定しておりませんので、自治庁と労働省との間でもまだ意見を交わしているようです。従つて法律案が出るというようなことはないと思いますが、なおよく研究いたしましよう
  204. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) その点は、今の大臣の言明よりも、もう少し僕はコンクリートになりつつあることを聞いておるので、国会内の空気はこの問題に関する限り僕らのほうが或いはちよつと詳しいかも知れないが、今労働大臣がそういう御決意であれば……。
  205. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は責任ある立場で申しておるのですから、詳しいかどうか主観的に御判断願つて結構ですが、ただ委譲ということは絶対にございません。
  206. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 途中に知事の入ることが困るのです。その点をはつきりしておいてもらいたい。
  207. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それはそうでない意見もありまして、困るという意見もあるし、入れるべきだという意見もあるわけですが、その点はよく自治庁とも折衝して見ようと思つております。
  208. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働省意見としてはどうです。
  209. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 労働省意見としては、要するに一つの国家機関ができて委譲されるということになるならば、これは一つのすつきりした形になるというふうにも考えておりますが、併しそれもどうもいろいろ意見があります、その点については。そうすると、若しそういう部分的な、例えは基準局だけが国家機関としての形のままで機関委任されるということであれば、これはまずいんじやないかというふうに私は考えています。
  210. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと待つて下さい。まだそうするとおかしいのですが、労働省としては少くとも労働行政の一番大きな行政を軌道に乗せるためには、他がどうあろうと、企準と職安と婦人少年、これだけは、はつきりと確保すると、なおできれば労政までも、これは労政局長もおられるが、この前から足がないから困るとかというが、労政局、この四つは当然労働大臣としては責任を持つて、とにかく自由党の大勢を引きずつてでも存置し、拡張し、確立するんだという、そういう強い意思の表明があつて然るべきじやないですか。
  211. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その足がないということをおつしやいましたが、結局その労政関係は地方には何にも足が本当にないのですが、これはやはり統一的に考えてもいいのじやないかという意見を持つております。とすれば、労政、基準、婦人少年、職安というものは、やはり一つのまとめた国家機関として置いて、ただ地方のことでもあるから知事に機関として委任する、こういう考え一つ考えではないかというのが一部に相当強力にある。ただ委譲という問題は、これは自由党内に完全な意見調整ができているからそれは考えていないのです。
  212. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働大臣の意思はどうですか。一部にあるなしじやなくして、労働大臣としては労働行政の今日の状況を見てどういう工合にお考えになつているか、私の意思は申上げたが。
  213. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは全く相手の出方でありまして、相手というとおかしいが、関係するいろいろの人の意見の調整が十分できておりませんから、まあ私の意思は、とにかく地方に委譲するということは絶対に困るということを言つているわけです。
  214. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 委任も含めてですか。
  215. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いや、機関委任で全部ひとまとめになつて委譲するということが完全にできれば、それは一つ考え方だと思つています。知事が介在して困ると言つておられますけれども、これは労働大臣が直接そこへこれは国の機関ですから命令をするわけです。ただその機関の、その間に知事というものがやはり地方行政の担当官として容喙するということはあつてもいいのじやないかという気持はありますが、併しそういう形ができるかどうかということはかなり各方面の意見がまだわかれておりますからそれを全部調整できればそれも一つ考え方でありますが、それができなければ私は無理だと、こういうふうに思つております。
  216. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そのときの行政官の身分、これはやはり国家公務員ですか。
  217. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国家公務員です。国家機関ですからね。
  218. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは府県知事の任命制と関連しているようですが……。
  219. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いや、それは全然関係ないです。現状において……。
  220. 吉田法晴

    吉田法晴君 関係ないとすれば、言われているような委譲の場合と、委任の場合と、程度は違うかも知れませんが、朝日新聞でしたか、御覧になつたと思うのですが、基準行政を地方に委任する場合に、新聞が心配するような、これは地方の議員等の関与して来る余地が出て来ることは、これは聞違いないと思うんです。そうでなくてさえ……。
  221. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 関与する余地がないための国家機関でなければならん、こういうことを言つているわけです。
  222. 吉田法晴

    吉田法晴君 だから委任なら委任にも反対……。
  223. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 機関委任なら地方議会の関与する余地はない。
  224. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そういう先例はありますか。
  225. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ国家警察ですか……。
  226. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、警察の場合は、自治体の場合は別、それから国家警察の場合においては一応その心配はないかも知れませんが、例えば職安行政の従来の分と、従来の形と、どれだけ違うのか知りませんが、大体似たようなものになるのじやありませんか。
  227. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは違うのですよ。
  228. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじや委任するという意味はどこにあるのですか。
  229. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 機関として、委任する。要するに国家機関である労働共準局、国家機関である婦人少年局、そういうものがあつて、その間に知事を通すというわけですね。
  230. 吉田法晴

    吉田法晴君 知事を通すのならば、知事ならば、その知事の委任範囲内において地方議会なり或いは何なりの論争の対象になり得ることは間違いないのじやないですか。それじや何の委任の意味があるのですか。
  231. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 地方機関ではないのですからね。地方の機関の運営について地方議会はいろいろ関与するのですね。併し国家機関であるから……。
  232. 吉田法晴

    吉田法晴君 そういうことはらば委任をする必要がどこにあるのです。
  233. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 併しそれは知事としてのいろいろな意見を述べる、これはあつてもいいことだと思うのです。
  234. 吉田法晴

    吉田法晴君 それならば地方自治体の首長としての……。
  235. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 但しですね、知事は労働大臣の指揮監督の下にその面においては置かれるわけですね。これは今も言つているように、そういうことをすることについて反対意見もあるわけです。全部委譲してくれいという意見も非常に強いわけです。私はそれはいかんと、こう言つている。その調整がまだできていないから、もう少しこれは時間を貸して頂いたほうがいいと思うのです。今確定的な意見を述べて、それについて論議をする段階ではないと思うのです。
  236. 吉田法晴

    吉田法晴君 ただ、みんなが心配するのは、基準行政についてすら後退が行われようとしておる。施行規則の改正もですが、それ以前に、例えば人員、経費の削減等から、一年に一遍というのも、各車業体も廻れないような実態にある、そこに勢い施行現則の改廃も行われようとしておること、それから知事ならば、知事の地方自治体の長としてならば、直接自治体の住民の投票によつて自治体の長としての知事ならば、それはその機関委任ならば機関委任の御念もおかしいでしようが、労働大臣の仕事を知事を経由と言うか、それだけ機関委任すると言うのならば、知事を国家機関ならば国家機関にする点に、先ほど申上げたような、知事の任命制云々という構想も出て来る。或いはその構想の根拠になり得るであろう自治体の長に、言われるように国家の意思が直接行くのならば、委任する何の意味があるか。若しあるとするならば、その中に地方自治体の長としての知事に対してきかぬという説明はなされるけれども、地方議会なり何なりの批判と言うか、或いは論議の介入が出て来るのじやないか。そうでなくてさえ末端の基準監督署と、それから何と言うか使用者その他との関係考えるたらば、そういう心配が起つて来るのは当然だと思うのです。従つて、そういう面においてそういうまぎらわしい或いは実益のない機関委任ならば機関委任しても、私どもはやるべきじやない。こういう点から、それはまあ論議の境でありましようが、そういう考究に対してさえ批判と反対が表明されているという事態ですから、我々はそういう点について十分考慮し、基準行政において後退のないように、或いは機構の問題についても考えなきやならん。こういうことですよ。
  237. 赤松常子

    委員外議委員赤松常子君) 只今のに関連いたしますが、さつき私はちよつと大臣にお伺いいたしまして、国際的な水準を下廻らないようにするということをはつきり明言されまして、そのときも私なお国際労働条約の違反にならないように、違反になるような後退を防ぐようにという意味で、その点を御質問いたしましたら、大臣も確認して、国際労働条約は忠実に守るよう意味の御答弁をなさいました。それと今の基準行政委譲の問題ですね。非常に私は矛盾を今感じるのでございますが、なぜそういう論議が出るのでございましよう。基準行政は国の監督下に置かなくちやいけないという、この国際労働条約がすでにございますのです。それを大臣もさつき守るとおつしやつたのでございますが、なぜそういう論議をなさるのでございましようか。
  238. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御承知ように、行政機構の改革をいろいろ考えておるわけでございます。それで地方の出先機関をどうするかということですが、委譲というような問題が出て参ります。それで私どもといたしましては只今仰せのようなI・L・O条約との関連もあつて、やはりセントラル・オーソリテイと書いてありますが、このような監督下に置かなきやならないということが書いてありますから、これはできないということを言つているわけです。併しこれはあくまで国家機関でなければならない。併し国家機関でも、地方長官を介するということを考えて見てくれんかという強い要請がありますので、そこで、それじや全般を一円にして考えるならば考える。もつと具体的に申しますと、労政関係というものをこれは国家機関に一つにまとめて、そうしていわゆる労働局という国の機関に一本にして、そうしてやるということならば、それも一つ考えではないかとも思うのですね。併し今も申上げておりまするように、まあ私のいろいろお話申上げていることを通して気持はおわかり願えるだろうと思います。私としては、やはり中央の国の機関である。これはもう絶対譲らんと言いますか、これは地方委譲という問題はないのです。ただその地方との関連を何においてつけるかということになれば、今の、方針だと言つておりますけれども、併しこれは曲折があるのです。ですから、今ここで私に対して皆さんが御意見を賜わるよう考え方を、実は私も持つているので、なお折衝してみる考えでおります。
  239. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) 多くは申しませんが、強い要請がおありになるということは、どちらから強い要請があつたのでございましようか。
  240. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それは申すことは差控えますが、これはお互いに国会議員で、各政党に属しているのでありますから、それは多言を要しないと思いますから……。
  241. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) もうこれは根本的原則というものが立てられているのでございますから、むしろその地方の知事の介入ということを私は恐れているのであつて、そういうことの論議が発生する余地はないと私どもつているのですから、もう一度払は国際労働条約を強く守るということの御確認を願いたいと思います。
  242. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただ地方の、長官が関与するということが、非常に労働条件の低下になるというふうには、私どもは実はそれは考えないのでございます。ただ実際、(「長官ではないよ」と呼ぶ者あり)知事が関係しないということと、関係するということと、そう実は違うというふうには思われないので、問題は、県議会関係関係して来るということになると、非常にその部局々々によつて緩急の度ができて来はしないか。まあやはり基準というようなものを動かすことになるので、やはりこれはまずい。併し地方の長官が関与するということは、或る面から、又逆に言えばいい点もあるので、これはいろいろな給与とか、その他の面では、これは相当に地方によつてはいいところもあるわけでございますから、そういう面では却つてよろしくなる。実際の仕事に携わる人がよくなるというような点も逆に言えばあるにはあるのです。そういう点をいろいろ勘案しているわけでありますから、これは繰返し申上げるように、まだ結論の出ていない問題でございますから、これはなお自治庁その他のほうとも十分話合いをしてみたいと考えております。
  243. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) いや、結論が出ていないから、労働大臣の意思を私も皆さんも確かめておられるのだと思います。結論が出ていれば、それは法律が出てからで結構であります。問題は、労働大臣が基準法の諸規則のああいう緩和について、職を賭して反対されるというくらいの強い御意思であれば問題はないと思うのですね。例えばこの間の厚生費削減で、山縣厚生大臣は、とにかくあれは反対の意思を表明して辞めたのです。私はそういう強い意思が表明されれば、我々も安心するのだけれども、どうも諸規則の緩和については極めて合理的のよう説明をされるので、我々は危惧を持つわけです。而もその諸規則の改正ということは、どこから出て来たかと言えば、これは都通府県から、やはり地方の経営者団体を通じて上つて来ているわけです。地方の議会の圧力が直接来ないような組織と言われるけれども、県知事はこれは間接には全部議会の圧力がかかつている、今日の日本の地方政治から言えば……。ですから、それはただ単に形式論であり、詭弁に過ぎないと思う。議会の圧力が……、知事が国家機関であるからと言つて、知事は決して議会の圧力は入らないと言うけれども、それは形式論であつて、必ず入る。そういう大意味で、この際は労働臣は、まだ話がきまつていなければ、労働大臣の意思としては、地方委譲は勿論、委任も反対をする。そういう私は言明をしてもらいたいと思いますね。(「賛成」と呼ぶ者なり)
  244. 吉田法晴

    吉田法晴君 今ちよつと大臣が言われたのでは、給与の問題が言われたのですね。国家公務員だということを先ほど言つておられて、今は機関委任で、知事が中に入るだけであつて、地方議会その他は一切容喙を許さないということをおつしやつたけれども、給与を地方公務員並みにやるということになると、どういうことになりますか。
  245. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それはおつしやる通り国家公務員でありますから、給与そのものは違わないのであります。併しながらまあその他の点の施設等と話合い……、機関の委任を受けて、知事の下におれば、そういう点ではうまく話合いによつて行くであろうこういう程度の意味であります。(「おかしいな」と呼ぶ者あり)  そこで、この婦人少年室のこの問題は、今申しておりまするように、委譲ということは絶対にないのであります。これはないのであります。  そこで、あとはどうするかということにつきまして、機関委任の問題につきましては、これはまあ相当曲折があるかと思いますが、私は今もお話があつたように、余り安請合いしてしまつたりするようなことはいたしませんが、大体自分考え方は通すつもりでおります。予算面におきましてのお話が出ましたけれども、私の考え方は通したつもりでおりまして、ただ余り職を賭けてもとか何とかいうことを言つて……、これはちよつと余り言うことは好かんものですから言いませんけれども、大体皆さんの御趣旨はわかりましたから、できるだけ話をしてみたいと思います。
  246. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) すると、重ねて私、念を押しておきますが、労働大臣の心境はとにかく基準行政も、その他の労働行政も、私は全部を言いたいのだが、大体今問題になつている地方行政については、委譲も、委任もとにかく反対である、そういうふうに理解していいのですか。
  247. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 機関委任の点につきましてはいろいろ議論があるのです。で、まあもう少し私ども考えていることがはつきり入りますれば別ですけれども、どういうふうに考えておりますか。まだ関係者の意向もはつきりしないところもありまして、この点は十分話合つてみたいと思つております。
  248. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私はほかの意見はどうでもいいのです、労働大臣個人がどう思つておられるか。
  249. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは内閣として意見をきめるので、私が個人意見をここで発表してみたところで始まらない。その点は、はつきりしております。
  250. 吉田法晴

    吉田法晴君 さつきはとにかく正式の機関で表明された意見でないものまでも、法の改正の大きな決定的な要素になつたと言いますが、ここで委員会で口を揃えて、正規に話をしている。これは労働委員会で出た国会議員の多数の意見です。それについて個人として……、個人がやはり好きだけれども労働大臣として答えるということは当り前であつて、今までの労働大臣の職務から言うならば、基準行政は労働省で、国でやる、こういう方針は、はつきりしているわけだ。それをここで委任も含めて、従来の基準行政は国で直接やつて行くことをやつて行きたい、こういうことを言えぬというのは、おかしい。はつきりしたらいいじやありませんか。
  251. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 基準行政を国の機関としてやるということは、はつきりしているわけです。ただ委任も、国の機関委任も含めてと言われるから、ここで私がはつきり言つたからと言つて、よくなるものじやないから、これは多数の意思で……。
  252. 吉田法晴

    吉田法晴君 だから、するかせんか、はつきりして……。
  253. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 或る機関で、多数の意思できまつていることがあるのですね。あなたは新聞をよく御覧になつているからおわかりだろうが……。だからここでいろいろな機会に、私が口でああ言つた、こう言つたということが、余りいい結果をもたらさないから、私は意見の発表を差控える、こういうことです。
  254. 吉田法晴

    吉田法晴君 新聞で御承知であろうが、別のところで話があつているから、調はきまつたというような言い方かも知れませんが、そこでこんなところでというような話がありましたが……。
  255. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いや、こんなところでとは言いません。あちらでこう言う、こちらでこう言うと言いました。
  256. 吉田法晴

    吉田法晴君 いや、こんなところでと言いかけて……、訂正しないでもいい。(笑声)
  257. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それは言つていない。
  258. 吉田法晴

    吉田法晴君 言いかけたことだけは聞違いない。労働委員会で正規に言うことを、労働大臣として努力するといす言葉が言えないということはないと思います。
  259. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) よくその真意をお汲み取り願いたいのですがね。私がここで意見言つてもそれがいい結果をもたらさないような場合であれば、これは言わんほうがよろしいかと私は思う。あなたは多数の意思とおつしやるけれども、ここに大家があれですけれども、これはなお出ていない人の意見もあるわけですね。ですからこの際にこう追い詰められて、いろいろおつしやることが、私はいい結果をもたらさんと、私はこう判断しているのです。
  260. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それはそうです。それでは今の最後の言葉を再確認して、そしてこれも又裏を読むよりしようがない。そういうことですね。   ―――――――――――――
  261. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは国際課長……。
  262. 橘善四郎

    説明員(橘善四郎君) 先ほどの市川先生の御質問に対して御答弁いたします。婦人の参政権に関する条約というのは国際連合の総会において採択されたものでございます。御承知の通りに、我が国は未だ加盟国ではないのでございまするが、外務省を通じて労働省のほうに認証謄本写が参つたのでございます、労働省といたしましては事務的に目下研究調査中でございまして、非加盟国が果して国連の採択した条約を批准でき得るものか否やというようなこと、なお又内容が、実はこの間、認証謄本等の書類が来たばかりでございまして、まだはつきりといたしておりませんので、目下研究しておるという程度であるのでございます。
  263. 市川房枝

    ○市川房枝君 非加盟国が批准できるかどうかわからないというお話ですが、それは向うから来ている手紙に、ちやんと批准してくれと書いて来ているのです。その手紙をよく御覧になれば、私も外務省から写しをもらつて来ているから、お読み願えればその点はよくわかると思うのです。いずれ又あとで……。
  264. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) 一つ最近ちよつと私、職安の調査に当る際のことでございまするが、それは実は昨日、私雇用安定課長のところへ参りまして、一応問題を提出しておいたのでございますが、それは簡単に申しますと、三年前に職業紹介事業を労働組合の形式でやりたいという……、百二十人ばかりの、派出看護婦の人たが集つて労働組合を設立して、そうして職業紹介所の認可を受けるという問題を取り上げて、書類を出しておるのでございます。三年越しになりますけれども、まだそれが許されない、許可されないという問題がございまして、実は私その設立のときに相談を受けておりまして、ちよつと連絡が途絶えておりましてもう許可が下りているものと思つていたら、一作々日陳情がございまして、それで大変これが助成或いは指導という点が非常に欠けております感じを受けるのでございます。有料職業紹介所をどんどん作つておられる。周囲にもどんどん看板が上つているのに、こういう労働者みずからがやつて行こうというそういうこの紹介所の許可というものが、三年越し何とかかんとか文句を言われて許可されないという実情を、一昨々日ですか、知りまして、それで私、昨日課長のところへ行つたのでございますが、それを通じまして、私、中小企業問題と非常に共通の問題があるということを痛感しているのでございますが、そういう小さいところの労働者の福祉というものに対して、労働省自体がどういう指導をしようと思つておいでになるのか。今年は非常に経済界も深刻な様相を現わして来るというときでございますし、中小企業面における倒産、破産というものが現われた場合に、そこの労使関係紛争問題というものを、政府は一体どう処置しようと思つておいでになるのか。そういう上に現われない問題に対しまして何ら考えられていないということを、さつきも御質問申上げた次第なんでございますが、今の問題と非常に共通性があるので、関連して、中小企業の労使問題に対し、一般問題に対し労働大臣のもう一度明確なる御答弁をお願いし、更に江下局長に対しましては、これをよくお調べ下さいまして、どこに問題があつたのか、なぜ三年越し放置されたか、これを次の労働委員会に御報告願いたい。
  265. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 先ほどお話を承わりまして、早速調べてみますが、まだ詳しいことは申上げるまでに至つておりませんが、この次に申さして頂きたいと思います。  労働組合によりまする労働者供給事業の許可と申しますのは、職安法によりまして現在行なつておるわけでございますが、建前といたしましては、まあ国が国費を以ちまして、全国に安定所の組織を持つて、職業紹介を求職者に対して公平に行うという建前をとつております関係上、誰でも職業紹介をやりたいから、はい、それではお前さんおやりなさい、そういう実は態勢をとつていないわけでございます。国といたしましては、これは求職者に対しまして公平に扱うという建前から、この原則を貫いておるわけでございます。そとで、まあ労働組合によりましてこういう事業を行いたいと言いました場合におきましては、私どもとしては、まあ安定所の業務からみまして、これは労働組合にやらしたほうが安定所にやらせるよりは円滑に行くという点が一つの大きな問題になりますのと、いま一つは、その組合がいわゆるボスに支配されていないかという、つまり民主化された組合であるか。いま一つ労働者供給をやるだけの経済的な力を持つているか。大体この三つの点を調査いたしまして許可をいたすと、こういうことにしております。従いまして、若し三年もということになりますと、実は私そんなことはないと思いますが、併し先ほどそういうお話でございますので、至急調査いたしましてお答えいたしたいと思います。
  266. 吉田法晴

    吉田法晴君 職安行政の問題については、職安法の施行規則の問題それから港湾労働法立法の要請に関連して、港湾労働組合に職業紹介をやらしてもらいたい、こういう問題等もございますので、併せて別の機会に一つ私からも質疑をいたしたいと思いますので、他日に譲りたいと思います。  それからもう一つ、先ほど公企労法改正の基礎になりました事由、改正試案を作られるときに、多数の議員が云々ということですが、正規に衆議院においては多数の議員の署名を以て法律案の改正が出されておる。従つてそういうものがどの程度試案の中に取入れられておるか等の問題もございますが、これらも時間がございませんので、次の機会に譲りたいと思います。  それで先ほどから待つて頂いておりますので、要点だけを一つ説明をいたしたいと思います。先ほどの……。
  267. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ちよつとその前に、衆議院で多数議員が署名を以てどうしたとか、そんなことは、私、言いません。
  268. 吉田法晴

    吉田法晴君 公労法改正案が出ております。
  269. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ああ、それと関連して……、そうですが。
  270. 吉田法晴

    吉田法晴君 問題は英連邦軍の国連協定の問題、それから日米労務基本契約の改訂についてでありますが、英連邦関係について、国連協定の大綱は間接雇用で行くということで話が進んでおる。こういう話を聞いておりますけれども、まだ調印に至つておらん。どういう程度になつておるのか。いつ調印がせられるのか。それから政府関係の受入態勢がどの程度にできておるのか。それから全員が間接雇用になるものと期待するのでありますが、その範囲等……。それから日米労務基本契約について、これは長官がおりませんが、方針は従来はつきりしておりますし、それから中西労政局長は日米合同委員会の労務委員会委員長ということで大変責任を感じて推進をなさつておると思いますので、大体事情がわかつておるはずであります。部分発効に関連をいたしまして、全体が改訂、調印せられませんために、或いは保安解雇が一部行われたり、或いは地労委の不当労働行為に対する救済命令が出ておるのに、それが実施されない。こういう具体的な問題も出ております。交渉が自主的に、アメリカの軍の意向によつて日本側が引摺られることなしに、相当強い決意と態勢とを以て進められるならば、これらの全面的な未調印による、全部の未調印による弊害的な事故等も防止し得るのだと思うのでありますが、どうなつておるのか。そしてどういうつもりなのか。決意のほどをつ承わりたいと思います。
  271. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 只今二つの問題についてお尋ねになつておるようでありますが第一に国連協定の問題でございます。協定自体がいつ頃調印されるのか、どういうふうに進んでおるかということにつきましては、これは外務省で折衝しておることでございますので、私から申上げることはできませんが、その中にございまする間接雇用の問題につきましては、すでに当委員会におきましても、その点につきましての強い御要望もございまして、我々といたしましても、そういう方向で、関係のある向うとの折衝には出席いたしたのでございますが、現在までのところは、一応こちらにおりまするところの英濠軍関係におきましては、間接雇用に異存がないということで、本国に請訓中であるということを聞いております。見通しといたしましては、これは国連協定自体の問題になりましようが、これが成立した暁には間接雇用になる見通しが強いのではないか。こういうふうに考えております。これに対する受入態勢の問題でございますが、これにつきましては、我々のほうといたしまして、当然、間接雇用となりますれば調達庁が法律上の雇用主になる、こういうことになろうかと思いますので、現在、呉に大部分、あとは山口県の岩国、東京の恵比寿にあるわけでありますが、切替が円滑に参りますように、これも現地に、ほかの双務契借と同様に現地に委託するようになろうかと、こういうふうに存じますが、関係府県におきまして切替のスムースに参りますように、まだ公式にやるわけには参りませんが内々準備を進めておるような状況であります。全員が間接雇用になるかどうかというような点につきましては、原則としてさようになるものと考えます。ただアメリカの場合におきましても、いわゆるドメスティックサービスといつたようなものにつきましては、多少直傭の形として残るものがあるのじやなかろうかというよう考えられますが多少アメリカとイギリスの違うところもあろうかと思いますので、できるだけ全員が雇用になるようなふうに努力して参りたいと、かよう考えております。  第二に、日米労務基本契約につきましてのお尋ねでございますが昨年の十月一日に基本協定に調印いたしましてから四カ月ばかりたつております。その間におきまして、実はこの日米労務基本契約というものは、先般調印いたしました基本協定のほかに四つの附属書と五つの労働政策指令というものがございまして、全部で十から成つているものでございます。この附属書の並びに二というものは給与関係の問題でございまして、これが現在出ている原案といたしましては、職階職務級制を準用するというようなことで出ております。附属書三というのは管理の手続、四が船員といつたようなことになつております。それらの点につきましては、日本政府といたしましての対案をそれぞれ提出いたしたのでございますが、これに対しまして更に米側から日本の対案に対する又対案が来る、それに対して又対案が来るというようなことで折衝が続けられているわけでございますが、一番そのうちで遅れておりますのが給与関係に関する附属書一、二でございまして、これは先方でも特に委員会を設けまして研究いたしておりまして、昨日から再び交渉が再開せられたというような状況になつているわけでございます。  で、なぜかように早く進まないかというような点につきましては、いろいろな関係もあろうかと存じますが、第一に、交渉の相手が例えば市ケ谷の極東軍司令部だけであるというようなことであれば簡単でございますが、それぞれ陸海空の三軍がございますし、これらの三軍が予算関係のある事項につきましては直接ワシントンに結び付いているというよう関係で、この三軍の意見の調整ということに非常に時間がかかつている。従つて我々が折衝いたします場合におきましても、こちらの提案を受入れられないということならば、向うは簡単に返事できますけれども、こちらが突張つて参りますと、一応その場では返事ができない。又三軍の意見を調査せねばいかんというようなことで、今日までやつているのでございますが、だんだん問題が狭められて参つております。併しながら、まあこれは早くできたほうがいいか、多少まずいところが、不満足なところがあつても早くできたほうがいいか。或いはとにかく最後まで通すというようなことで行くかというような点につきましては、いろいろ考え方もあろうかと存じますが、我々といたしましては、今のところ、とにかく主張すべきはするといつたようなことで進んで参つているのでございまして、これが併しながら現行契約よりはかなり進んでいるというようなことにもなつておりますので、まあでき得べくんば一日も早くこれを完成いたしたい、かよう考えまして努力中でございます。更に本契約自体がさように遅れておりますために、この十の部分が全部両者で合意を見た暁に発効する、こういうことになつているわけでございますが、併しながら先般の基本協定調印の際のアメリカ側との了解事項といたしましては、両者の明確な合意によつて、できるだけこの基本協定に盛られた事項の合意いたした分については部分的に事前に発効して行こうという了解もありますので、我々といたしましてはこの方面にも努力をいたしまして、先般二月の二日に、このうちの保安に関する条項、これのみは、現行契約の附属協定という形ではございますが、これを部分的に発効せしめたような次第でございます。  なお、先ほどお話にごさいました地労委の決定等について、契約が発効しないからこうした事態が起るというようお話もございましたけれども、この点につきましては、アメリカ側といたしましは、地労委の決定なり或いは裁判所の判決にいたしましても、自分のほうが不利であるというものについては飽くまでも最後まで争うべきだというよう考え方を持つておる。又これがアメリカにおきまする習慣でございますかどうか、とにかく損失をかけることを……勝手に訴訟の手段をいい加減に放棄しちやいかんというようなこともあるように聞いておりますので、そういうことで、向うが地労委の決定があつて不利であれば中労委に持つて来る、こういうよう考え方をいたしておるようでございますが、我々といたしましては地労委の決定があればできるだけ一つそこで呑んだらどうかということで折衝を続けておりますが、アメリカ側の方針といたしましては、そういうふうなことで中労委に持つて来る、こういうような形になつておる。これが現状でございます。
  272. 吉田法晴

    吉田法晴君 中西さんからは御答弁を頂きませんでしたが、今のに附加えるべきものがありませんか。
  273. 中西實

    政府委員(中西實君) 今の国連軍の間接雇用の問題、それから基本契約の問題は、これは調達庁が直接やつておりますので、今のに附加える問題はございません。ただ特需工場労働条項、これは結局保安解雇が一番問題になつておりますが、この条項の改正方について、日米合同委員会労働委員会で我々のほうから対案を出しましてやつております。この問題は今のお話とは別の問題でございますけれども、我々のほうで今向うと折衝しておりますのはその点だけでございます。
  274. 吉田法晴

    吉田法晴君 大体承わつたんですが、後半の日米労務基本契約に関連する問題で、陸海空軍の意見が一本にまとまらん云々という理由は、これはもう半年もそれより以上も前から伺つておるので、今更こと新らしく逓辞として言われても私ども聞くわけに参らんと思います。努力と多少の誠意は十分了承いたします。了承いたしますが、なお一つ実際に解決をしてもらわなければならんことなんで、更に一つ強い態度で臨んで頂きたい。  それから、例えば最後に出ました地労委の例などを引いてみても、或いは保安解雇の具体的な例を見ても、例えば地労委と中労委の関係が地方裁判所と最高裁判所との関係でないことはもうはつきりしている。向うの言い分を実際に調達庁として黙認をしている、黙認をしているといつては語弊があるかも知れませんけれども、向うの理窟を実際に活かさしているわけです。その辺には日本労働委員会の建前を十分説得して労働委員会の仲裁命令に服しないという実態が出ておるわけですから、そういうことを申上げるわけです。そこで部分発効いたしました部分についても、全体的にそういうことのないように、特調がつも一つとはつきり或いは強く実際に行われるように推進を願いたい。特に国連軍関係については、基本的には日米労務基本契約のやり方と同じに間接雇用の点については了承をした、こういう話を承わつたのはもう大分前の話です。あとまあ基本協定の成立云々ということが言われますけれども、実際に問題はあるわけです。或いは受入態勢もこれから考えようということですが、了解のついたところから実際に実施して行くという面については、もつと方法があるだろうと思うんです。或いは日米合同委員会という構想が中央においてはありますが、地方にはない。ところが実際には直接折衝だけじやなしに、まあ地方の機関も含めて合同委員会ようなものが持たれて、或いは持たれることが望ましいという結論は出ている。そうすると、基本協定を待たなくても、労務関係について或いは保安解雇の問題について、実際にやつて行くことは可能でないとは言えぬと思う。或いは契約の調印について促進を願うと共に、部分的な施行或いは部分的な実施の面についてもなお残つておる。政府というか或いは特調等の弱腰といつては語弊があるかも知れませんが、十分に自主的な態度の発揮が足りないように思いますので、その点については更に努力を願いたいと思います。個々の点について具体的な方法があるならばお示しを頂きたいと思うのでありますが、具体的な方法を考慮願い、障害の点も一つ一つ克服し、協定の全文の調印とその実施との速やかならんことを要望をして、質問を終りたいと思います。個々の点について御構想があるならば更に伺いたいと思います。
  275. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 特にございません。
  276. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) 私、先に大臣に御質問申上げました中小企業問題の労使関係という問題に対するもう少し明確な大臣の御答弁を願いたいと思います。中小企業問題が今年は深刻化するだろうと思うんです。そういうことに関しまして先ほどもちよつと伺つたんですが、善処いたしますという簡単な御答弁だつたんですが、もう少しこれに関し大臣の具体的なお考えをもつと承わりたいと思うんです。労働問題というと、いやストライキは困るとか或いは賃金はこれぐらいだとか、そういう現われた問題だけを取上げてそれが労働問題の焦点のようにおつしやるけれども、私の申したいのは、繰返して申しますように、声を揚げることができない人々の持つている深刻な問題がたくさんにあるわけですが、これに対して政府の又大臣のお考えというものが誠に僅かであるし、それに対する御所見が余り披瀝されていないということで、それに対しての御回答をお願いしたい。
  277. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 中小企業の問題は、我が国の産業の特殊の構造から来る問題でございまして、私どもとしましても、十分にこの点に注意をし、深い関心を持つておりますが、まあ政府としましてのいろいろな諸方策は、すでに本会議場等でも申上げておきましたのですが、できる限り、この金融の面で中小企業に関する特殊金融機関を動員する、政府財政資金もその方面にできるだけ投入する、中小企業そのものを活発に運営、経常してもらえるような諸施策を講ずると同時に、この税金の面でも、基礎控除の引上げその他の措置によりまして、できるだけ減税方針をとつて行くということを考えておるわけであります。  なお、これは通産大臣自身政策の問題になりましようと思いまするが、私ども話合つておりますることは、やはりつの系列をつけたらどうか、やはりその中小企業の精算する品物の購入先、或いは販売先を、できるだけ堅実な企業との結び付きを付けてやるということを斡旋しようじやないかというようなことを申しておるわけであります。又、中小企業自身につきましても、やはり信用保証協会の制度もございまするが、ああしたような、共同して信用を得るという、又業種、業態の診断を触るたけ政府としても機関を動員していたしまして、そうして信用をつけてやる。金融もさることながら、その金融基礎になる信用をつけてやるこういうような施策をいろいろい考えておる次第でございます。何といたしましても、企業の健全化ということがあつて初めて働く人の賃金の安定ということも期し得られるのでございますので、そういつた全般の中小企業の問題といたしまして、そこの経営の問題も、それから働く人の保護の問題、その生活内容を豊かにする、そういうこともできる限りの施策を講じて参りたい、こう考えております。
  278. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほどの百田部長の答弁に関連して一つだけ承わりますが、陸海軍三軍の合意がなかなか一つにまとまらんので云々というお話でありましたが、そういう解決の方法として、理由はなるたけ聞くのだが、その解決の方法として、極東軍司令部ですか、それと三軍と一緒に交渉をするという方法をとられたかどうか。とる意思があるのかどうか。それからもう一つ、そういう点から見ると、国連軍関係についても、どうせ受入態勢、合同委員会ようなものを地方に委託して云々というお話でありますが、そういう機関を、受入態勢の準備を含めてやつたらどうか、こういうことを具体的に考えられますが、この具体的の方法についてどういうふうにお考えになりますか。
  279. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 今の第一点でございますが、実は私が昨年参りました当初の八月頃におきましては、FECを含めて三軍の代表者が出ておつた。それでなかなか交渉が進まないという状況もございして、九月一日の仮調印後におきましては、もつぱらFECの参謀次長が先頭に立ちまして、一人でやるというようなことになつて来て、実は三軍を抑えて参つた。その後大体そういう形を継続して参つたのでございますが、最近におきまして、御承知の通りさつき実は逓辞ではございませんので、こういう案が出ればこれに対してこつちが対案を出す。対案ごとに一々三軍の意見を交わさなければ返事ができないというような形になつておるわけでございます。それで、私どもとしても、実は今お話になつたようなことを、我々事務当局としてはこの際交渉の仕方を変えなければならん、こういうよう考えております。これは長官が参謀次長と最後的に折衝して、今後いよいよ最後的な追い込みみたいな形になつておりますので、どういう形をとるかということにつきましては御交渉になられる、こういうことになろうかと存じておりまするが、私としては何らかここで転換しなければ、而も交渉権限を持ち、その三軍の意見を決定し得る権限を持つた者が出て来なければ、あのままでは、今のままでは時間がかかるじやないかということを考えております。  第二点につきましては、実は、国連協定の調印という問題と関連して考えなければなりませんし、こちらにおる英濠軍の関係はまだ本国に請訓中で、最後的なあれは来ていないというような形でございますので、我々として、また正式な準備活動、法律上の雇用主としての準備活動これはできませんが、実際においてさようなこともあろうかと存じますので、これは労働省とも相談いたしまして研究いたしたいと思います。
  280. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、第一点のほうは、初めは一緒にやつてつたが、まとまらないので、参謀次長ですか、司令部を代表して一応参謀次長が出て来た。ここの陸、海、空、それぞれ対案を出して、それを取次いでやる。最後の仕上げとして交そういう形も考えなければならん。形はそういう形をとつて、最後の締めくくりをやるというか、多少抑え付けるところもあつて、FECのほうで三軍を納得させる、そういう形をとることを考える。こういう御答弁と了解していいですか。
  281. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 私ども事務当局といたしましては、とにかく一々三軍に廻す、それで、それの意見をとるに相当時間がかかるというようなことでは困るから、何らか先ほど申上げましたような方法をとらなければいかんのではないかと事務当局としては考えてまります。最後的にこれがどういうふうにしたらいいか、これは相手の参謀次長の立場もあろうかと思いますが、福島長官が参謀次長との話合いできめたい、こういうふうに考えております。促進する方法も考えております。
  282. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣にお尋ねしますが、大臣所信の中に、労使協力の実を挙げるための裏付けとして労働者の福祉を第一に考えられておるようでありますが、その中から第一に取上げられでおりますのは、失業保険積立金の四億円の活用を言つておられるようであります。失業保険の積立金は、今度の予算書で見ますと、本年末では二百八十七億の多額になつておるものと思います。実際労働大臣が本当に福祉を考えておられるならば、この三分の一はこれは労働者の金額である。これを労働者が使えるように、或いは労働省、或いは三者会議等で使えるような対策を考えられたことがあるかどうか、それをお尋ねします。
  283. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 仰せのように、失業保険の積立金をできる限り活用したいと考えまして、現在二百二十億ございます。これを大蔵省ともいろいろ折衝をいたしてみましたところ、まあ御承知ように、大蔵省としてはこれをできるだけ全体の金融操作に使いたいという意見を強く持つておりまして、まあ利子の程度でもよこさんかということでいろいろ折衝してみたのでございますが、何分にも前年度が一億円そこそこでございましたので、まあ非常に強引に交渉いたしましたのでございまするが、その四倍程度だが我慢してくれというようなことで、一応私はそれで引下つたわけであります。併し今後できるだけ、御趣旨のよう考え方を私も持つておりますので、国全体の金融操作をするという大蔵省の考え方もわからんのではないのでありまするが、できる限りこの労働関係に還元するように交渉いたす考えでおります。今年の予算のところは四億でございます。更にまあ労働者住宅資金融通法の関係もございまして、その住宅関係のほうはできるだけその関係もあるから余計廻わすということで、前年境二十億のものを三十七億というように増したわけであります。これはできるだけ年を逐うて多くしたいと思つております。
  284. 阿具根登

    ○阿具根登君 そのほかに厚生年令の積立も八百七十億からの大金があると思います。大蔵省の資金運用部資金の大部分は労働者の出した金が入つておると思うのであります。こういう点から考えます場合に、労働者の福祉が第一に考えられておるのにかかわらず、これが一つも活用されておらない。いわゆる間接的に相当出しておるようでありますが、直接的には微々たるものである。こういうことを考えます場合に、もつと積極的にこれを労働者の直接福祉に使つて頂きたい。恐らくこれは組合からも今後強力な要望になつて来るものと思います。なお又そのほかにちよつとお尋ねいたしたいのは、公務員のこれに代る共済制度があつたと思いますが、これはどういうような制度になつておるかお尋ねいたします。
  285. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 会計課長は……
  286. 阿具根登

    ○阿具根登君 いいです。公務員の制度は、恐らく二者会談か三者会談で大蔵省の資金部に入つておらない。そうするなら、皆さんたちの直接の公務員のそういう金額だけは自由に使つて非常に福祉に活用されておられる。ところが一般民間産業の苦しい中から積上げたこの金は、殆んど、或いは極端に言うならば悪いほうにまで使つておられるよう傾向もあるのじやないかと、こういうよう考えるわけであります。ここは一つ労働大臣の本当の肚をきめて、この金額を直接労働者に役に立つように、その金の三分一のは、労働者が積んだ金である。経営者が三分の一は積立てた金である。国が三分の一出しておるならば、大蔵省が自由に使うことのできないようにするのが、私は労働大臣としての最も大きな今後の福祉対策に対する眼目でなからねばならないと思うのであります。時間もございませんから、強力にこれを要望いたしまして、恐らく又違つた立場においても、或いは他の会議の場所におきましても、これは労働大臣に要求し続けて行くべきものと思つておりますので、強力に実現方をお願いして、私の質問を終ります。
  287. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) 一つお願いでございますが、すでに新聞紙上に出ております基準法の施行細則の改正案でございますね、あれを一つ資料として労働委員に御配付願いたいと存じます。
  288. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 承知いたしました。
  289. 赤松常子

    委員外議員赤松常子君) あれはまとまつているのでございますか。あれが最終案なのでございましようか。
  290. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御承知ように中央基準審議会がございまして、そこに諮問することになつておりますので、そのほうに実は基準局長が参つておりますから、いずれ資料といたしまして御配付いたします。
  291. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 最後に、これは細かいことですが、労働大臣に質しておきたいのですが、失業対策事業ですね。説明によりますと本年度百十一億円、昨年度補正予算を加えて百億八千万円であるから相相な増額をした、こういうふうにおつしやつた。これは人員的にもたしか若干殖えておるよう説明があつたと思いますが、実際自由労働者賃金が昨年から一割程度引上げられておるわけですね。そういう点から見ると私は増額にはならないと思うのですが、この辺の関係をちよつと御説明願います。
  292. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 昨年の公共事業予算は九十七億でございましたが、それを以ちまして九月の十五日に一割程度値上げをいたしました。更に今年の一月十五日には八千万円の追加予算で二%強の値上げをいたしたわけでございます。そこでまあ来年度といたしましては、本年度の実績で、大体割当の数を申上げますと十五万五千程度、ずつと本年度は割当をいたしておるわけであります。そこで今の賃上げを見込みまして、大体五%の人員増をはじきまたしのが、百十一億になるわけでございまして、昨年度の予算の中には例の冷害対策関係が相当入つております。で、当初に又多少予備費的なものも入つておりましたので、かれこれ合せて間に合つたわけでございます。来年度は百十一億で人員は五%増し、賃金は平均二百八十二円ということで計算しておるわけであります。
  293. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうしますと、昨年度の冷害及び予備費で支出したものですね、これを除いたものと本年度予算と比較して五%殖える、こういうわけですか。
  294. 江下孝

    政府委員(江下孝君) そうでございます。
  295. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) わかりました。  よろしうございますか。…ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  296. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を起して。  本日はこれにて閉会いたします。    午後五時四十八分散会