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参考人(
竹俣高敏君) 三会社につきまして、私
ども最も簡単かと思うほうから
お話を申上げますが、実は
新聞に出ておりましたのは国策パルプ、津上製作所でございますので、それは一応念のために見て参
つたのでございますけれ
ども、片倉製糸のことはこれは初めて伺いますので、十分な準備はございませんけれ
ども、これはたしか農林省からの農林
政策の一
つたと思いますが、生糸を手で製造いたしませんで、機械製糸、特に自働操糸機でやるということ、これは非常に国策的でもあるし、今後生糸を輸出する何かの手助けにもなるであろう、
従つて開発
銀行として取上げて然るべきものであろうという
お話、我々も尤もだと
思つてそういう会社を
調べたのでありますが、御
承知のように片倉製糸は
日本においてそういう製糸
業界で、いわばズバ抜けております。従いまして、その会社に先ずそういう新らしい
方法を設置するということは、先ほど申上げました育成価値とい
つたような点から、或いは償還力を確保するとい
つた点から先ず万全であるというふうに
考えられますし、更に片倉製糸が行な
つておりました自働操糸機の
方法は片倉製糸自身が御発明に
なつたものでありまして、従いまして、それを工業化しようということについて、私
どもとしては殆んど問題なく結構なことであろうと
考えまして
融資をしたように記憶しております。而もその金がほかに使われたということは別の言葉で言えば、我々のところにお持ちになりまして、こういう
計画だという
計画ができ上
つていないということになるかと思いますが、恐らくそれはでき上
つているはずであります。
従つてそういうふうなお
疑いは一応お解き頂けるのではないかと思います。
次に津上製作所につきましては、これは御
承知の精密機械工
業界のいわばナンバー・ワンで、一番でございますが、当時これは
昭和二十七年の日付にな
つておりますが、二十七年の暮でございまして、輸入機械代四千六百万円ほどの
予算を持
つておられます。そのうちの一部、開発
銀行に対しては二千七百万円ほど貸して欲しいというお申出であ
つたのでございますが、それがどういう機械で、それがどういうふうに使われるのであろうかということを
考えました。そういたしますると、当時なかなか機械の輸出とい
つたようなもの、特に精密機械の輸出ということができなか
つたのでございますが、この会社の造
つております捻子の自動盤、捻子切自動盤でございます、これはアメリカにおいて極めて好評でございまして、その年数を忘れましたが、何かアメリカにおけるそういう工作機械の展覧会みたいなものがあ
つたときに出品して、そのときに評判を得てそれがどんどんアメリカに売れるようにな
つているということで、それをバツク・アップいたしますために、それを造るための工作機械をアメリカから入れる、先ほどから言いましたように四千何百万円の
予算のうち二千七百万円申込んで来られた、それを又いろいろな点から搾りまして、ちよつと数字を忘れましたが、千何百万円かをその当時承諾したわけであります。併し一挙にそれだけの金が要るはずもないということで、手附金から出して行こうというときに金を出したのでございますが、たまたま非常にまずいことで不渡手形を出してしま
つた、これは私
どもに言わせるとちよつと不思議なのでございまして、この会社の財政
状態を
調べて参りますると、負債の率とか、資産の率とかい
つたものがかなり良好でございますから、普通に切廻しておるならば、そうい
つたまずさが出て来なか
つたんだろうと思いますが、恐らく会社御当局の、特に
金融というか、金繰りを御担当にな
つていたかたが何か手違いをされたとい
つたようなことから、そういう不渡手形を出されたのではないかと私は
思つております。従いまして不渡手形を出さなければならないほど会社内容が腐
つておるというふうには現在でも
考えておりませんし、仮に財政的な、
経理的な面が仮にそうであ
つたとしましても、この会社の先ほど言いました捻子切自動盤或いは精密測定器具、化学用のポンプ、例えば、ギア・ポンプとい
つたようなもの、これは恐らく機械工
業界にお聞きになれば直ぐわかりますように、相当高いものであります。最高レベルだと言
つて差支えないと思います。従いまして開発
銀行といたしましては、輸出振興のための基礎を作る設備であるということで援助をいたしました。ただ
只今御質疑がありましたように、たまたまそのときにおいて金繰りをや
つていらつしやるかたのまずさから不渡を出した、
従つてその出しました金がほかの取引
銀行で、これはもう
金融機関の間の特異的な問題もございますが、一応ほかの
銀行が手形か何か落すのに使うために補助的に落してしま
つたということのまずさを
感じ……。私
どもは法律的にそういうことはできませんけれ
ども、これは
銀行界の道義的な問題でございますので、その交渉を今続けておるわけでございます。これが津上製作所に関する問題。
それから最後の国策パルプの問題、実は私率直に申上げまして
新聞を見て驚いたのでございますが、これも大分古い話で二十七年の二月でございます。国策パルプからのお申出は旭川の工場に自家発電四千五百万キロワツトの火力発電を作るのだということの申出でございます。これは大体三億円ぐらいの
予算がかかるのでございますが、そのうちの三分の一、一億円見当を
融資せんかという会社からのお申出がございまして、私
どもとしてはこれを
調べまして、御
承知のように当時はパルプ
業界がどちらかと申しますと、よくなか
つたのでございます。それで会社の申出は、実はざつくばらんに申上げますと、そいつを不況を乗切るために積極的に増産をして行きたい、そのためには電力が不足するので、そいつを認めて欲しいというお申出があ
つたので、
金融機関としては
考えたけれ
ども、そういう積極策に簡単に同調するわけに行かない、これは増産のためにこの電力を必要とするということであれは必ずしも賛成できない、果して真意はどうであろうかということを私
考えましたので、私これは戦前からよく親しくもしておりますので、副社長の水野成夫氏を訪ねまして、どうもこういうお申出は甚だ開発
銀行としてもお手伝いも筋が通らないと思うがという
質問をしたのであります。恐らくその
質問をした経過ですから、いわば
木村さんの疑念をお持ちになられるのは
審査部内における判定の経過をお取上げにな
つておるのではないかと思います。それでそのときには水野さんは、やはりそういう細かいことを御存じありませんので、事務当局何を言うかと、そうおつしやいませんが、そうい
つたような
感じで、いや、自分が
小林総裁のほうに電話をかけるというような言い方をされたんであります。勿論それでは私
どもは腑に落ちませんので、甚だ、そういう言い方は甚だけしからんと思いましたから、これは或いは否定になるのではないかというような気持を私は一時持ちましたが、よくよくそれを
調べてみますと、その旭川工場で従来火力発露の自家発を持
つておりまする火力は七千五百キロ、而もそれの年間の稼働率は七六・五%という稼働率でございまして、これは玄人のかたならばどなたでもおわかりであろうと思います。火力発電は大体六〇%前後の一年間を通じて稼働になるというのが普通かと思います。従いまして七〇%以上である場合には相当過負荷であるということが言えると思います。従いまして、それを補うのではないだろうかというようなことを、細かくもら
つております資料で先ずこれを
考え、次に渇水期の場合にはどうなるかと申しますと、勿論その自家発だけで工場運転しているわけではございませんので、買電もございますので、普通の場合には九千五百九十七キロ、これは計算上出て来るのであります。一万キロ近い電力か必要であります。ところがこれが渇水期になりますると、一万八百二十キロワットというようなことが出て参ります。それは渇水期になりますと、割当電力が減
つて参ります。そこでここで九千五百九十七キロと七千五百キロでは、その間に二千キロの差がありまするし、結局差引三千三百キロ必要であるという計算が一応出て参りますのに対して、会社の申出が四千五百キロであるから、これはまだ遠いのではないかというふうに
考えて参りますると、先ほどちよつと申上げました増産
合理化計画をやる、
仕事の機械化をする。例えば材木の皮をとる機械、これは材木を人れてごろごろや
つて皮を機械的にとるとい
つたような
方法、いわゆる人力でとるよりも、そういうことをやることによ
つてコストを引下げる
方法をとりつつあ
つた、それらの馬力が三千馬力以上かかる、これを電力に直しますと千八百キロほどになります。従いまして三千三百キロの不足と、千八百キロとを足しますと五千何百キロになるのでございますが、それに対して四千五百キロほどの余熱利用の自家発をやるということであるならば、最初私が極めて荒つぼく
考えましたように、会社が増産態勢を整えるためにこれだけ電力の不足だというふうに必ずしもならないのではないかということに気が付いて、向うの会社当局の技術陣と
話合をいたしまして、結局会社もそういうことであるのだ、副社長はそういうことを知らんもんだから、そういうような失礼なことを或いは申上げたかも知らんというような話でございました。従いまして約三億の
予算のうちを一億足しまして、不況期にありましたところの国策パルプの電力事情を安定ならしめる、それで合理的な、手作業的なものを省くということに使われているということでございますので、当然これは開発
銀行として援助して然るべきものだ、而も紙パルプ
関係では国策パルプだけではございませんで、何社かに同じようなアイデアで以て
融資をいたしております。従いまして或いは水野さんがああい
つたかたでございまするから、おれは事務当局の判定なんか得ないで、むしろ
小林総裁からじかに借りたというようなことを或いは言われたかも知れん、これは憶測でございますが、そうい
つたようなことが或いは
木村委員のお耳に入
つたのではないか、これはまあ臆測でございますから、或いは違
つているかも知れません。そのように私は実は
感じた次第でございます。従いまして
審査当局のきめたものを、開発
銀行の重役陣か、
総裁がまげて
融資をしたということは毛頭ないと、私からはつきり申上げておきます。