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政府委員(小滝彬君) 御指摘のように、
只今フイリピンとの賠償交渉が行詰りの状態にあることは非常に遺憾であります。昨年岡崎
大臣が南方へ参りまして、準備的な
話合いをし、そして昨年の幕に至りまして、大野公使がフィリピンへ赴任して、爾来ずつと交渉を続けて参りましたところ、漸く本月の初めの頃に至りまして、双方の数字などについても大体
話合いができましたので、去る十五日に大体双方で
合意した点を公表したことは、もう新聞でも御
承知の
通りであります。然るにその後フイリピン側においては、特に上院の議院の中で、
日本がフィリピンにと
つては十倍ドルの経済価値を生ずるだけの賠償をする、そうしてそれには
日本としては四億ドルを下らざる
程度の支出をして、それが十年、又場合によ
つては更に十年延ばすこともあるのであろうが、その
期間内にこれを行うというのは、これはフイリピン側の従来の主張をさること非常に遠いのであ
つて、こういうことを基礎としては交渉は最終的な妥結に導くことはよろしくない、これは飽くまで拒否すべきであるという反対論が強く抬頭して来たようであります。そこで十七日にガルシア外務
大臣がゼネバに参りまする日に第一回の会合が行われました。その次の二十一日を予定しておりました正式会談も当分これを延期しようということになりまして、フイリピン
政府のほうは、目下上院のそうした反対の議員諸君といろいろ
話合いをして、何とか妥結の途を開くため努力しておるようであります。先ほどのフイリピンからの電話によりましても、現在ではマラカニアン宮殿でマグサイサイ大統領が主宰しまして、こうした会合を開いておるようであります。が併し、心までのところにおいては、フイリピン側の意見としては、大野・ガルシア間に
話合いのできた数字というものは、飽くまで交渉のスターチング・ポイント、出発点であ
つて、この実質を変更するということを必ずしも妨げるものではないという趣旨のことを数時間前別か公表いたしたようであります。
日本側といたしましては、これまで予備交渉において安組したポイントというものは飽くまで交渉の基礎であ
つて、それに空いていろいろな条件等が今後
決定せらるべきものであるという態度をと
つておりまするので、この双方の主張というものは、今対立状態であります。が併し、ここまで参りましたことでありまするし、相馬君の御指摘の
通り、日比の
関係というものは非常に重大であります。貿易面から見ましても、一日も早くこの
関係を正常なものにいたしたしたいのでありまするから、私
どもとしては、何とか最後の線においてあらゆる努力をして、これまでのラインで話をまとめ上げたいと現にマニラ等と連絡いたしておるのであります。
ただ併し、新聞報道が正しいとするならば、今どうしても現実に十億ドルの支出が要るとか、或いは年限が五年というようなことになりますると、これは他の諸国にも
影響するうことでありまするので、それを直ちに引受けるというような方向転換は非常にむつかしいだろうと思います。が併し、これは仮に万が一にも決裂するようなことがありましても、将来できるだけ悪い
影響を残さないように、一応話を中止するにしても、十分な
措置をいたしまして、将来悪い
影響を残さないような方法を考えなければならないと思います。が、現在の
段階におきましては、飽くまで今度の機会に妥結ができるように最善の努力をいたしたいと考えておりますが、見通しといたしましては、何とも現在では申上げることができないのを遺憾といたしております。