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湯山勇君 私は日本社会党を代表いたしまして、
昭和二十八
年度一般会計予算補正第三号に対して、反対をいたします。
補正予算は、本来
補正でありますから、それによ
つて予算全体がより適正にならなければならないものでありますが、本
補正は、当然法的にも
措置しなければならないものがあるにもかかわらず、それが
措置されておらず、又
予算全体のバランスをも却
つて乱しているのでありまして、これでは全く
補正の意味をなさないと思うのであります。特に今回追加されました
義務教育費国庫負担金二十七億八千万円は、
政府の不見識と
政府部内の不統一の結果
提出されたものでございまして、
政府が、平衡交付金というものが一体どういう性質のものか。そしてその平衡交付金が法定
経費とどういう
関係にあるか、こういうことを全く無視したものである。即ち平衡交付金が法定
経費に優先するというような、そういう本末顛倒した誤りを犯したためにこういう
補正を組まなければならなく
なつたものだと、こう判断するものでございます。而もこういうふうにして出したこの
経費を打切るということは、これはいろいろ問題がありますが、ともかくも
大蔵大臣は
国会に一度ならず二度までこれの打切りを拠案されました。そうなれば当然これは
補正しなければならないことがわか
つているにもかかわらず、
大蔵大臣は前回は、今後
補正は出さないということを断言されたのでございます。このことはただ単に
大蔵大臣が出さないということを言われたということだけにとどまらないで、
大蔵大臣が
補正をしないと言
つても
補正をするのだというようなことになりますから、大臣個人の問題ではなくて、大蔵当局、更に国家
財政に対する
国民の信頼を著しく低下させるものである、こう
考えなければなりません。こういう状態であれば、たとえ
政府が耐乏生活というようなことをおつしやいましても、
国民は
政府の言うことを信頼しない。
補正をやらないと言
つてもやはり
補正を出すのだ、こういうことにな
つてしまいます。現に中小企業、特に織物
関係の中小企業の人は、大体まあ
政府の言うことの反対をや
つておれば、先ずどうにかや
つて行けるということを言
つておるくらいでございます。これらの点は十分御反省願いたいと思います。
更に問題になりますことは、今回の二十七億八千万は
大蔵大臣の
説明においては、明らかに三都
府県に対して十二月から、三月までの分と言
つておられたのでありますけれども、本日にな
つて、政令県でない所へも余りがあれば出してもよいというような御
答弁がございました。
文部省の
答弁では、政令県は正確に五月の実績によ
つて計算しているのだから間違いはない、こういうことを申しておるのでございますから、余りがあれば他へ廻すというようなことは不可能である、若し他にこれを廻せば当然東京、大阪、神奈川の県は
不足を来たして来ると思います。更にもつと重要なことは、
国会へこれが提案されたことを知り、又これが通過したときには、この三県はこれだけもらえると、こう信じておるはずでございます。ところが実際は、只今のような含みのある御
答弁をなさ
つておりましたが、そういうことによ
つて、
国会で決議された
通りの金額が瑛京、大阪、神奈川の諸県はもらえない。こういうことは全く不明朗きわまるものであ
つて、私はそういういきさつだけでも、本
予算に対しては反対をしなければならないと思うのでございます。殊にこれが
大蔵大臣の提案以後におきまして、ただ
予算を通すためだけの取引にされたというような噂がありますけれども、若しぞのようなことがあるとするならば、これは
予算委員会を侮辱するものであると言わなければならない。非常な私は憤りを感ずるものでございます。政令にきめられてない他の四十一
府県においては赤字十億を抱えておりますし、更に
文部省止め置きの七億と合せて合計十七億の未収金を抱えております。而も今日窮迫した
地方財政の実情におきましては、このしわ寄せが教員の定員減、或いは助教員の整理、更には昇給、昇格のストップ、そういうことにな
つておりまして、各
府県の教育界は今や重大な危機に立
つておるのでございます。文部大臣はこれに対して実支出の半分を出すと、常常
答弁では申しておりますけれども、併し今日までの
政府のやり方、只今この
補正の三都
府県分に対する
審議においても、計上されたものがそのままもらえない。こういうことがある実情から
考えましても、或いは過去においてしばしば
政府は出すと言
つておきながら出さない。そういう実例から
考えましても、もはや都道
府県の知事は、大臣の言うことをそのまま受取れないほど
政府に対しては不信の念を持
つております。だから現に手にもらうまでは、やらうという言葉だけでは仕事ができない、こういう状態でありますので、このようなことが起
つているのでございますが、この四十
府県に対する
措置が全然なされていない。すでに十億の赤字があるということが
見込まれているにもかかわらずこの
措置がなされていないということは、これは全く
政府の怠慢である、こう言うほかはないのでございます。
次に、私は現在の
政府が
国民生活を甚だしく軽視しているということがこの
補正、
予算に現われているということを申上げたいのでございます。本
年度におきまして生活保護費は、現在約四十七億の赤字が確実であるとされております。そこで
政府もこのことをお認めにな
つて、予備金から十二億をお出しになりました。併しなお
不足があるので、当初
政府は、二十九
年度予算において前
年度の
不足分として二十億を計上されたのでございますけれども、更にそれで足りないことはよくおわかりにな
つている。そこで簡単に三派修正で五億というものを増加したのでございます。併しながらこれだけ殖やしましても、なお且つ現在の赤字を解消することは不可能である。更に又この二十五億の
予算措置の仕方にいたしましても、現在すでにこれだけの赤字があるということが明らかにされて、更に
補正予算が今回
提出されるということも確実である以上は、当然これは
補正予算に計上されるべき性格のものであ
つて、これを二十九
年度予算に組んで二十八
年度の
不足分とするがごときは、違法ではないにしても
予算を組む建前から言えば常軌を逸したやり方であると言わなければならない次第でございます。次に、児童保護費につきましては、現在九億五千万の
不足があるということが確実でございますが、これもお認めにな
つて、一応五億を予備金から
措置されておりますけれども、残つた四億五千万については何ら考慮がされておりません。当然これも
補正予算が出される以上、本
補正に計上しなければならないものであるにもかかわらず、そのまま放任されている。この生活保護法の保護費の問題と児童保護費の二つのことは、
政府か如何に民生を無視しているかを端的に現わしたものとして私ども絶対承服できないところでございます。
次に、この本
補正予算は
法律違反を犯している。これは本
補正予算だけではなくて、本
年度予算全般を通じて言えることだと思うのでございますが、それは食品衛生法第二十六条による
経費でございます。この
経費は当然国がその二分の一を持たなければならないことにな
つておりまして、今回のようなビキニの問題があるなしにかかわらず、
国民の食生活、
国民衛生を守
つて行くという立場から計上しなければならないのでございますが、この費目が二十八
年度の本
予算は勿論、三回の
補正のどれにもその項目さへも見当らない。これは極めて重大であると言わなければならないと思います。御
答弁によれば、平衡交付金に入
つているというようなことでございますけれども、併しこれ又
地方財政法十九条にある国が負担しなければならない項目の中には入
つていないのでございます。従
つていずれにいたしましても、このことは違法の
措置であるし、更にもう少しこれを何と申しますか、大きく申しますならば、
内閣は
法律を誠実に
執行し、国務を総理するという、あの憲法七十三条にさえも違反していると、こういうふうにも
考えられるのでございまして、これらの点全く
国民生活を無視している。こういう点において承服しがたいものでございます。
次に、これらの財源
措置の問題でございますが、これらの財源を、例えば国立
学校の定員等から出しております。こういうことは全く実情を無視したやり方でございまして、国立
学校は定員が不定で実際に困
つておる。その困
つておるところから更に減額をして、而も随分余
つて当然繰越金にしなければならないものを、更に
法律を出して繰越をさせようというような、あの
保安庁費或いは保安隊の費用、防衛金、こういうものは僅か申訳に手をつけてはおりますけれども、そのまま放置されている。バターか大砲か、バターも大砲もと吉田総理はおつしやいましたけれども、併し現実は先ほど来申上げますように、全く大砲がバターを食
つてしま
つている。これがこの
補正予算にも十分現れておると思うのでございます。
それらの点を総合いたしまして、私は本
補正予算に反対をいたす次第でございます。