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1954-03-22 第19回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十二日(月曜日)    午前十時五十二分開会   —————————————   委員の異動 本日委員松浦清一君辞任につき、そ の補欠として、田中一君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            小野 義夫君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男岩    委員            石坂 豊一君            伊能 芳雄君            鹿島守之助君            小林 英三君            佐藤清一郎君            白波瀬米吉君            高橋  衛君            瀧井治三郎君            中川 幸平君            宮本 邦彦君            横山 フク君            井野 碩哉君            小林 政夫君            田村 文吉君            高木 正夫君            村上 義一君            岡田 宗司君            亀田 得治君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            藤原 道子君            三橋八次郎君            湯山  勇君            相馬 助治君            永井純一郎君            田中  一君   国務大臣   大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君    厚 生 大 臣 草葉 隆圓君    農 林 大 臣 保利  茂君    通商産業大臣  愛知 揆一君    運 輸 大 臣 石井光次郎君    郵 政 大 臣 塚田十一郎君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君   政府委員    人事院人事官  神田 五雄君    人事院事務総局    管理局長    丸尾  毅君    国家地方警察本    部総務部会計課    長       中原ただし君    自治庁行政部長 小林与三次君    法務省刑事局長 井本 台吉君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君    外務政務次官  小滝  彬君    外務省経済局長    心得      小田部謙一君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    厚生省薬務局長 高田 正己君    農林大臣官房長 渡部 伍良君    農林省蚕糸局長 寺内 祥一君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    運輸省鉄道監督    局長      植田 純一君    労働政務次官  安井  謙君    建設政務次官  南  好雄君    建設省河川局長 米田 正文君    建設省道路局長 富樫 凱一君    建設省営繕局長 木村 恵一君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件昭和二十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 私の質問は主として法務大臣に直接いたしたいと考えていたのですが、病気で欠席だということでございますので、法務大臣自身にお答え願わなければならない問題は後日の機会に留保しておきたいと思います。  そこで、先ず刑事局長にお尋ねいたします。今回のたくさんの汚職事件ですね、この取調べ検察当局で現在進めておりますが、これは相当その捜査が進歩しおると私どもいろいろな情報から判断できるわけです。ただそのことに関連して私どもが重大な関心を持つておる一つのことは、相当不浄な金が多数の政治家に渡されたということははつきりしておるのですが、ただその金を受取つた人職務権限を問題となつておる事項について持つておるかどうか、こういう点が非常に問題になつておるように私ども聞くのです。これは非常に重要なことであつて現行法で若しそういう場合に起訴しにくいということでありましても、現在の国民感情から言うならば、これは到底納得しがたい問題だろうと我々考えております。従いまして、例えば現在の刑法を一部改正して、いわゆる斡旋収賄、こういうものも処罰するような規定を設ける必要があるのではないか、こういうふうに私どもは現在の汚職取調べ状況考えて感ずるのですが、この点について法務当局では如何なる見解、或いは何かそういうことに対する準備でもおありかどうか、この点を先ずお尋ねいたします。
  4. 井本台吉

    政府委員井本台吉君) お答えいたします。斡旋収賄罪に関する問題は、昭和十五年の刑法改正仮案の二百一条にも一応立案されております。二百一条には、「公務員共地位利用シ他公務員職務ニ属スル事項ニ付キ斡旋ヲ為スコト又ハ為シタルコトニ関シ賄賂要求シテ収受シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ処ス其要求ヲ為シタルニ止マルトキ亦同ジ」と、こういう規定がございます。これらの規定につきましては、戦争前に、たしか昭和十五、六年頃と記憶いたしまするが、一度刑法改正案として国会に出されたと記憶いたします。その当時は諸種の事情によりまして成立しなかつたのでございます。戦時刑事特別法改正案といたしまして、官吏だけについて斡旋収賄罪規定を設けまして、そのときにはこれは衆議院貴族院通りまして、一応斡旋収賄規定ができたのでございます。併しながら、当時の戦時刑事特別法は終戦と同時に間もなく全般的に廃止になりました。現在といたしましても、売職罪事案が一番問題になりまするのは、授受された金銭がその公務員職務関係があるかどうかという点でございます。これが立証上非常に困難であり、又判定がむずかしいので、広く売職に類似の行為を取締るのは、斡旋収賄規定を設けたほうがいいのではないかという議論もございます。最近の新聞紙上にもちらほらさような意見が見える次第でございます。私どもといたしましても、かような規定取締便宜上はあるほうがいいのではないかという考えがありまして、よりより研究中でございます。ただこの規定ができることによつて、又余りに刑罰の範囲が広くなるのではないかという点も心配いたしまして、その点はどの程度が適当であるかということについていろいろ研究をいたしておる次第でございます。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 研究段階のようにお答えがありましたが、今度の国会に間に合うように研究をまとめるような状況でありますかどうか、もう少し具体的に……。
  6. 井本台吉

    政府委員井本台吉君) 現在ではまだ提出するという考えまで至つてはおりません。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 今回の汚職事件に関連して、そういう斡旋収賄規定がないために非常に不都合な事態が起つておると、当然国民感情から言つたら起訴しなければならない、そういうふうなものが相当逃されておると、こう我々考えるのですが、この点はどうでしようか。
  8. 井本台吉

    政府委員井本台吉君) お答えいたします。まだ具体的に詳しい事例報告を受けておりませんので、これらの報告が集まりますと、或いはお話のような事案もあるかも知れないと思うのでございます。只今のところでは、さような具体的な事例報告は受けておりません。併しながら、先ほど申上げましたように、収賄罪規定がいつも職務に関しという点で問題になりますので、この点をいま少しく拡げて取締便宜を与えてもいいのではないかという気持は、私ども常日頃考えておる次第でございまして、只今もこの点をどうするか、鋭意研究中でございます。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 これは法務大臣にお聞きすべきことかも知れませんが、只今検察庁が手を付けておる汚職捜査はどの程度段階まで行つているのですか。具体的な個々の事件についてでなしに、例えば情報によれば大体来月の上旬までには一応の取りまとめをするというふうなニュースも我々は聞いておる。そういうおおまかな意味でどの程度まで進捗しているか、これを聞きたい。
  10. 井本台吉

    政府委員井本台吉君) 成るべく早く取りまとめをしたいという気持ではおりますが、現在いつになれば或る程度取りまとめができるかということはちよつと明言いたしかねる事情にございます。とにかく多数の人を今調べまして、鋭意完結を急いでおるという状況でございます。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 この問題だけで余り時間をとり過ぎても困りますので、最後に希望を申上げておきますが、これは刑事事件の性格から言いましても一応の取りまとめと言いますか、目途というものは来月の上旬頃には出されて来る、これは私ども見当です。そうなりますれば、当然先ほど質疑応答いたしましたこの分は斡旋収賄罪規定がないために逃がれた、こういうものは必ず相当私は出て来ると思う。そういう具体的な現実に一つ立脚して、至急やはり斡旋収賄という問題、これの立法化の問題をやはり検討してもらいたい。来月の上旬にそういうものが一応まとまつたとしても、なお国会があと一月あるわけですから、私はこれは期間的にも間に合うと思う。それの必要性といつたようなことはそう大した論議をしなくてもこれは私は是認される問題だと思う。法務当局さえその問題に対して積極的な熱意と態度を持てば問題になる事柄だと考えますから、善処方一つ要望いたしておきます。  それから次に人権擁護局長にお尋ねいたします。予算等で細かいことを少し聞くかも知れませんが、私は今度の予算案について質疑をしたい点がたくさんあるのですが、只今質問したい点は、予算全体から見るならば非常に僅かの金額の部門なんです。ただ今度の予算並びにそれに関連するいろいろな新しい法律、これは何といつても世間が心配しておるように非常に逆コースの方向を進めておる。私はそれと対照して逆コースということは当然に一方では人権侵害ということが予想される。ところがその予想される人権擁護という問題については非常に予算は不親切なんです。大蔵大臣はどこかへ行かれたようですが、恐らく大蔵大臣なんかは人権擁護予算がどの程度なつておるのかお知りになつておらないくらいの状況じやないかと考えておるのです。そういう立場から金額は少いのですが、質的には私どもとして非常にこれは重大な問題だと考えておりまするので、少しお聞きをして見たいと思います。  先ず質疑の順序として明らかにして欲しいことは、政府人権擁護機関が受理した人権侵犯事件、これを一つここで御発表願いたい。これは人権擁護機関政府にできてから昭和二十八年、昨年末までのものを年度別に一応御発表願いたい。
  12. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) お答えいたします。人権擁護局が当時の法務庁に設置されましたのが昭和二十三年の二月十五日であります。昭和二十三年におきましては人権侵犯事件として受理しました件数は全部で僅か四十八件であります。翌年の昭和二十四年に至りましては、これが一躍増加いたしまして五千七十六件という数に殖えております。これは最初二十三年におきましては人権擁護委員令という政令によりまして、全国に百五十人の人権擁護委員を設けたのでありまして、まだ人権というものがよく国民にわかつておらない。又人権擁護局存在を知らないというようなことで非常に事件が少なかつたと思うのですが、翌年におきましては、漸く人権擁護局という存在一般人たちにも知れるようになつて来て、又人権擁護委員法という法律作つて人権擁護委員の数が非常に殖えましたので、そういう関係からだと存じますが、昭和二十四年度におきましては五千七十六件の数に殖えております。昭和二十五年におきましては五千六百九十二件に増加いたしました。それから昭和二十六年におきましては、これが一躍非常に殖えまして、一万五千六百八十九件という数になつております。昭和二十七年におきましては二万七百五十二件、更に昭和二十八年におきましては二万九千百四十四件というふうに、漸次事件が増加しつつある次第でございます。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 只今のやつは正式に政府機関が受理をした件数でありますが、これは見当になりますが、このほかにどの程度人権侵害事件というものが日本で起きておるというふうにお考えですか。
  14. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) お答えいたします。これ以外にどのくらいの件数があるかという推定はちよつと私只今いたしかねるのでございますが、全国に配置されておりまする人権擁護委員が公職その他のいろいろ忙しい仕事を持つておりまする関係上、事件を受けても法務局のはうに報告をして来ないというような場合が非常に多いのじやなかろうかという場合もございます。又事件はございましても、従来の封建的な政治に馴らされております一般国民というものが、得てしてまだ泣寝入りをして我慢してしまうというような場合も非常に多いのじやなかろうか。従つてここに出ておりまする数字も言い方がちよつと大袈裟のようですが、まだまだ氷山の一角のような状態ではなかろうかというふうな感じがいたすのでありまして、ただ事件がどの程度かという数字につきましては、今の場合ちよつと推定いたしかねるのでございます。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 それでは次に、例えば昭和二十八年二万九千幾らという件数に達しておりますが、これは二十八年だけで結構ですが、その中で特別公務員警察官による人権侵害事件というものはどの程度なつておりますか。
  16. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) お答えいたします。公務員によりまする審判事件でありまするが、二十八年度におきましては総計千百八十一件であります。そのうちこの公務員特別公務員一般公務員に分けられておりますが、特別公務員による事件は全部で六百八十九件、一般公務員によりまする侵犯事件が四百九十二件、このうち特別公務員によりまする六百八十九件のうち、この大部分は警察官による人権侵犯事件、こうお考えつて差支えないのではないかと思います。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 灘、警察官日本人口の中で占める比率、そういう点から言いますと、只今の六百八十九件というこの数字は非常に率が高いと思うのです。だから結局我々の人権侵害というものの一番の問題は、特別公務員である警察官との関係で非常にこれは重車な問題を持つておると思います。  そこで次にお聞きしたいのは、法務当局では今後こういう人権事件というものが増加すると考えておられますか、或いは減ると考えておられますか、その点についてはどういう見通しですか。
  18. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 先ほどもちよつと申しましたように、人権思想というものが国民一般にまだ全国の隅々までには行渡つておらないということが率直な私たち考えであります。そこで日本におきましては、この自由人権思想というものの普及高揚ということが非常に大きな重要な仕事だというふうに考えております。二十九年度におきましては、この人権擁護委員只今四千五百人ほど委嘱しておりますが、これを二十九年度におきましては、各市町村、村々まで全部できたらば置きたい、かような考えでおります。御承知の通り人権侵犯事件というものは、都会よりもむしろ農村におきまして、まだこういう人権というものに対する認識が低いということが考えられるのでございます。そこで全国の村々にまで人権擁護委員を設け、そうして自由人権思想普及高揚を図りますると、自然にそれに伴つて今まで泣寝入りしておつたものがみずからの人権をみずから守るのだということで、人権侵害に対して救済を求めて来るというような事件が多くなるのではなかろうか、かように考えております。二十九年度におきましては、三十八年度以上に事件が増加するであろうというような見通しを持つておる次第でございます。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 そういう人権事件が増加するという見通しに立つて考える場合に、例えば提出されておる予算を検討してみますると、人権擁護委員の数ですね。これ自身定数との間に非常なギヤップがある。而もこれが一割や二割ならいいのですが、非常に多いわけです。これは定数幾らなつておりますか、擁護委員定数と現在数ですね。
  20. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 現在の人権擁護委員の実数は四千五百五十名でございます。それに対しまして定足数といたしましては一万六百七十四人、これは全国市町村にそれぞれ人権擁護委員を配置するのでありますが、市におきましては二名、これは人口五万以下に対して二名であります。それ以上につきましては定足数によりまして殖えております。それから町と村には各一名ずつ、東京は特別区としまして各区に二名ずつというのが定足数なつておりまして、これが全部で全国で一万六百七十四名ということになるのであります。それから人権擁護委員法におきましては二万名までを置くことができるということになつておりまして、最低限度二万名までの人権擁護委員を持てるように法律で認められておる次第であります。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、定足数に対して現状は約半分ですね。非常に少いわけなんです。少いわけなんですが、この点は勿論我々として納得がいかない。これはどうしても定足数まで早く揃うように努力をしなければなりませんが、もう一つ問題は、只今現在の擁護委員実在員が四千五百五十名、こう言われましたが、人権擁護委員に対して出すところの実費弁償、これは四千五百五十名では組まれておらないのですね。私が調べたところによりますと、三千九百二十二人ですか、三人ですか、これで組まれておるのですね。これは間違いありませんか。
  22. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 予算人員として認められておりまする数は、三千九百二十三名でございます。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 これは併しどういうわけですか。現在すでに四千五百五十名おるのに、三千九百二十三人しか予算では実費弁償などの費用を認めない。私こういうことは、例えば保安隊、これを仮に殖やすと言えば、必ずその員数に応じて予算というものが計算されておる。これは大蔵大臣おりませんが、主計局長それはどういうわけでそういう取扱をされるのですか、ちよつと主計局長から……。
  24. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 詳しい資料を手許に持合せておりませんので、的確なことは更に取調べて申上げますが、従来三千九百人くらいの対象人員で賄つて参りましたのでございますが、その後人員が順次殖えて参りまして、それに応ずるだけの予算増額を期し得ない、これが実情でございます。これは従来三千九百人余り予算でずつと賄つて参りましたものでございますから、委員の実際の活動状況等考えまして、まあこの程度予算で間に合うのじやないかというようなことで、従来の金額政府は踏襲して来ている、それが実情でございます。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 まあ主計局長は咄嗟にああいう御答弁をされておりますが、人権擁護局長からいろいろ聞かないと御答弁できないことで、頭の中にないのですよ。だから私は一つ認識を改めてもらいたい。  で、昨年は三千七百三十五名の擁護委員に対して三千九百二十三名の分を出しておるのです。幾らか余分を見て、年間に幾らか増加して来ると見て、人員が。それを今年はもうすでに全然出発点から大きなギャプが出ておる。人権擁護活動状況を見て大体これくらいで行けるのじやないかとあなたおつしやつたけれども、それは全然違いますよ。人権擁護活動は昨年よりももつと殖えると、こう局長自身見通しをつけておる。これは私どももそう考えておる。これは実質的には例えばああいう教員に対する法律、或いはいわゆる秘密保護法、ああいうような法律が出て来れば必ずこれはもうそれに伴つて殖えるのですよ、それだけでも。だからこれは十分この際反省をしてもらわないといけない。それで、一つお聞きしますが、保安隊とか警備隊ですね、これは員数が一人殖えてもその分はきちつと出して行くのでしよう。それはどうですか。
  26. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 一人殖えてもというのはこれは極端な話でございまして、恐らくそういう場合には予算のやり繰りその他でやるということで、特にそのために予算補正措置等を講ずることはないだろうと存じます。まとまつて殖えます場合にはその分だけを月割、つまり警備隊保安隊でございますと、いつ頃人員が充実されるかというその問題とのかね合いで或る程度月割予算を計上いたしております。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 勿論私、一人殖えてもと言つたのは、これは一つの比喩的に言つただけなんです。少くとも保安隊の数が殖えれば殖えた人たちにほかの人たちと同じようにいろいろな手当なりそういうものが廻つて行くような措置だけは講じておるわけでしよう、これは間違いないでしよう。ところが擁護委員の場合にはそれがほかに予算があるわけでもないから全然できないわけですよ、こういうやり方では……。だからこれは私は勿論増額修正とかそういうことは余り賛成しないほうなんですが、併し金額にしてもほんの嘩かなんですから、こういう基本的な数字が初めから食い違つておるというようなことは訂正するようにしてもらいたい  それからもう一つ、これはやはりあなたに聞きますが、人権擁護委員の一年間の実費弁償ですね、これが一人千円なんですよ。一月に八十円と幾らかなんですね。人権擁護委員というのは事件一つ受持つと、この八十円の中からいろんなものを出して行かなければならない。ほかに何もないのですよ。会合なんかの旅費は勿論別に組んでありますが、それはまあ別のことです。事件そのものに対するやつはこういう状態なんです。あなたこれを適当だと思いますか。そういうことで人権問題というような、事件としては実にむずかしい問題ですが、起きればそういうことが擁護できると考えますか。
  28. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 人権擁護委員というのは金だけの問題ではないと存じます。多分に精神的な面もあるのじやないかと思います。例えば民生委員等につきましても、どの程度手当を出しておるか、恐らく余り手当を出してないと思いますが、金が多いから活動ができるという性質のものではないと存ずる次第であります。それでも実費弁償としての金額は勿論支給されなければならないわけでありますが、千円が多いとか少いかとか、まあ足りないというお話でございますが、これはいろんなケースがあろうかと思うのでございまして、まあ政府のほかのいろんな制度とのかね合いで千円というような予算の積算をいたしておるわけであります。  なお、これは先ほどからお叱りを受けておるわけでございますが、従来は三千九百人ぐらいの予算定員で何とか賄つて参りましたわけでございまして、今後お話がございましたように、ますますこの仕事が殖えて参つて人員も殖やさなければならんというようなことになつて参りますと、当然千円の実費弁償を払う予算がない、そうなつて参りました場合にどうするかというと、これはお話がございましたように極力善処をいたしたいと考えます。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 それでは最後人権擁護局縮小の問題ですね。これも実はどうしても法務大臣意見も直接聞かなければならない点なんですが、いないから局長からお答え願いたいのですが、今度の新しい定員で局が縮小されますが、その人員とか名称なんかはどういうふうになるんです。
  30. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) お答え申上げます。人権擁護局縮小というものに対しましては、まだ政府としてもきのておりませんので、今のところただ自由党の行革特別委員会におきまして、人権擁護局官房の部にするという案がきまりました。これが行政管理庁のほうに送られて来たという程度に聞いておりまして、それ以上まだ政府としては人権擁護局官房の部にするこいう案にはまだ固つておりませんので、それ以上ちよつとお答えしかねます。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 まだ局を部に格下げするということがきまつておらないというのであれば非常に結構だと思うのですが、定員幾ら縮小されるように聞いておるんですが、どことどこが縮小されるのです。
  32. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 大変恐縮でございますが今の質問の要点がちよつと……。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 定員ですね、定員縮小考えられておるようですが、どの部分で縮小されるのですか、人権擁護局の。
  34. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) お答えいたします。人権擁護局で一名減ということになつております。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 本省ですね、地方はどうなんです。
  36. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 地方では十二名減ということになつております。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 それで予算は、予算の節約はどれくらいになるのです、ざつとしたところ。
  38. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 別に予算にはそう影響は殆んどないんじやないかというふうに考えます。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 私もまあ予算上そんな程度なら大したことはないと思つておるんですが、最初から申上げたように、人権擁護仕事というものはますます重要な段階に私入ると思うのです。だからそういう際に予算上大した影響のないような縮小ということは絶対避けてもらいたいと思うのです。私は局が廃止されればいろいろな意味で影響が出て来ると思うのですが、局長自身そういう点はどういうふうに考えておられますか。
  40. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 只今お尋ねのように人権擁護という問題が非常に重大な問題であることは言うまでもございません。そこで人権擁護局が仮に格下げと申しますか、縮小されるということになりますると、先ほど申上げたように予算人員等においては殆んど影響がないんじやないか、ただ、その反対の場合を考えてみますときに、人権擁護に対して軽視と言いますか、というような考え方を一般に与える悪い影響というものは非常に大きいんじやないか、御承知のように人権擁護仕事というものはその権威と申しまするか、権威と信頼というものが非常に大きく要求せられておりますので、人権擁護局という局を格下げするという気持一般人心に与える影響というものが非常に大きいんじやないかというようなことを心配いたしておる次第でございます。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 私はこの際むしろ法務当局がこういう考えを持たないかどうかということを聞きたいのです。それは絡ドげではなく、むしろ法務府の外局ですね、或る程度独立性を持つた外局くらいにする、勿論政府予算が十分なければ急に予算をそのために殖やすということは必要がないかも知れんが、これは問題の性質上それくらいの取扱いをすべき問題ではないかと実は考えておるのです。でまあ例えば人事院のような性格ですね。勿論人事院の場合であれば予算との関連が出て政府としても取扱いにくいというふうなことがあるかも知れませんが、人権擁護の場合にはそういう予算上のことは関係ないわけなんです。だから人権擁護ということに本気に熱意があればこれはできる問題だと思うのですね。私は法務省自身がもつとそういうふうに積極的にこれは考えてもらいたい。一方では人権侵害の虞れのある法律なり或いは予算というものが予想されるわけなんですから、他方ではやはりこういう面に対する積極的な手をやはり考えて欲しい。こう思つておるのですが、局長はどうでしようか。
  42. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 只今の御質問の趣旨は人権擁護局を外局というようなものにされたらどうかというような御質問と存ずるのでありますが、まだ法務省といたしましては、この点につきまして考え方がきまつておりませんので、法務省の意見を申上げるわけに参らないのであります。ただ率直に私個人の意見といたしましては、人権擁護という仕事が独立性を必要とするものである、又高い権威を必要とするものであるというような立場から考えますると、只今亀田委員の御質問の御趣旨には私は反対いたしかねるのでございまして、趣旨としては私も同感な感じをいたしておるのでございますが、ただ法務省といたしましては、予算等のいろいろの関係もございまするので、今のところこの案に対しましてはまだきまつた考えを持つておらない次第でございます。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 あと法務大臣になりますから、これは留保しておきます。  それから副総理はどうしました。
  44. 青木一男

    委員長青木一男君) 副総理は公務のためどうしても午前中は駄目になりましたから、午後にあなたのやつを継続して。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 これも短時間なんですから。
  46. 青木一男

    委員長青木一男君) 午後は正確にいたしますから。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 それじやこちらへお越しになるときにちよつとだけでいいですから、留保しておきます。
  48. 青木一男

    委員長青木一男君) よろしゆうございます。  出席大臣の都合によりまして、暫時休憩して、午後は正確に一時より始めたいと思います。    午前十一時三十四分休憩    —————・—————    午後一時四十四分開会
  49. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続き会議を開きます。
  50. 永井純一郎

    永井純一郎君 私は副総理に主として初めにお伺いいたしますが、この前の十七国会における災害予算のときに、予算の不正不当支出の防止につきまして、本予算委員会は決議をいたしております。同時に決算委員会のほうも同様な趣旨の決議をいたしたのでありまするが、この点は副総理がよく御承知のところであると考えます。一昨日も緑風会の森さんから相当このことについて詳細な質問があつたのでございますが、私はこの点を特に只今問題になり、非常に国民が注視をしておりまするところの役所の高級職員の汚職の問題と関連して、この高級職員の汚職を未然に防ぐ方策をどうするかということについて、私は副総理にお伺いをしたいのであります。御承知のように、この役所の汚職一つの大きな原因になつておりますのが、役所が出す補助金等を通じて、事前に選挙運動が実際上行われておるという点は、これはもう副総理もよく御承知のところであると考えます。この前の災害予算のときにも緑風会の森さんなり、或いは中田君からの質問に対しまして、副総理は、その点は重大な問題であつて、役人の汚職を未然に防ぐために是非考慮しなければならない、併し全然その立候補を制限してしまうことは憲法違反の疑いがあり、この年限をきめて制限するということであればよかろうと思うから善処するということをお答えになりまして、速記録にちやんと載つておりまするが、その後これらの問題が非常に各省に亘つて今日現われておりますが、副総理は何らその対策をこれについてはしておられないように私ども考えるのでありまするが、この考え方につきまして、先ず副総理から御答弁を頂きたい、こう考えます。
  51. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) お答え申上げます。十七国会で中田議員その他から選挙の場合の役人の立候補制限について御質問があつたことを記憶いたしておりまするし、少し遅れておりますが、その点につきましては、今日もどの程度の制限をすべきであるかということについてまだ結論を得ずにおるのであります。ただ今御指摘になりました昨今の汚職問題と役所関係、これとは必ずしも関連して考えていないのでありまして、今の役所の高級官吏の汚職は、長い間に多少綱紀が弛んでおつた。その綱紀の弛んだ意味におきまして、選挙の場合の綱紀が弛むことと関連はできるかも知れませんが、前の官吏の立候補につきましては、これは退職した時期と立候補の時期と余り接近していることによつて官権を利用する虞れがあるので、その間を時期的に何か断ち切る方法はないかという考え方をしておつたのであります。
  52. 永井純一郎

    永井純一郎君 只今問題になつておりまする官界の汚職が、立候補と必ずしも直接関係がないというお話でありますが、実際はそうではなくて、只今問題になつておりまする以外のもので、私は多少の報告なり情報を具体な問題としてたくさん持つておりまするが、汚職を起し得る事実がたくさん現在ございます。それは例えば郵政でありまするとか、大蔵でありまするとか、農林、建設、これらについての具体的な事例がたくさんあるわけなんです。併しそれがまだ汚職として上つて来ておらないだけでございまするが、これは私どものほうの参議院としては、もう各派を通じて非常にこれは悪いことである、こうして出て来た人たちが、又、例えば一つの土建会社を作つている例もあります。そしてそれが二十八年度の災害のあの膨大な予算の請負工事をやつている。その責任者といいまするか、代表の重役等は、皆そういつた関係で選挙で出て来た人が議員になつて、それらの会社をやつている。これらの事例がたくさん私どもの所に報告が来ておりまするが、こういうやり方が、現在もすでに自分が立候補するという意思を、来たるべき衆参の選挙に対しまして立候補するという意思を明らかにして、たびたびその地盤と思われる所に出張をしております。そうして其だしきは、後援会のごときものが作られて金が集まつたりしている。その証拠には、地盤と思われる所から来た町村長さん等の補助金をもらう人たちの側との接触が盛んに行われ、而も一流の料亭等において、部長や局長といつたような人たちは私は大した金があるはずがないと思う。併し立派な料亭に接待をしていろいろなことが行われている。飲み食いが行われている。こういうことが順次行われて行きますと、どうしても官界は汚職が現に行われるし、又将来非常に不都合なことが起る心配があると思う。例えば一つの例を申上げますると、農林大臣が見えていたら話そうと思つていたのですが、土地改良等の補助金が各府県非常にたくさん出るわけでありまするが、それが造船の割戻しと同じように割戻しされて耕地協会といつたような立派な建物を作つたり、或いはその他のことにこれがたくさん使われております。その額は恐らく総補助金の三割にも達するであろうと言われているくらいであります。私どもは折角僅かな補助金を、十分な補助金でなしに、本年度の災害復旧にいたしましても、これは大蔵大臣と副総理とは特別委員会で前々私どもと折衝をして頂いたわけでありましたが、本年度の三・五・二の五に当らない、三ぐらいしかもらつていないわけでありますが、この中から、そういつたようなふうに村に出た補助金が、又そういつた人たちによつて割戻しされて、実際上の耕地に使う金が二割も三割も少くなるといつたようなことが現実に行われておりまするし、会計検査院もその点を十分にどういうわけかはつきりついておらない。併し問題があるということは、会計検査院自体も我々の前に言つておりまするが、はつきり追及が行われておらない実情でございます。で、私はそういつたような実情がありまするから、特にああいうひどい災害があつて、その金が非常に予算で総額が削られているというような実情がありまするので、汚職関係がないと副総理はおつしやいますが、決してこれが…必ずそういつた汚職が出て来るわけでありまするから、この際、私ははつきりした方針を約束通り立てて頂いて、そして官界の汚職を未然に防ぐ。聞くところによりますと、欧洲では、殆んど役人は三年乃至五年は立候補できない。フランス等では五年間の制限が付されているということを聞いているのでありまするが、政府の、一つ汚職を未然に防ぐ方針として、はつきりした方針を打ち立てて頂きたい、こう思うわけでありまするから、もう一度その辺を確めておきたいと考えます。
  53. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 今御指摘になりましたような虞れのあることはお説の通り考えます。従いまして、選挙関係の法規につきましては、結論を急ぐことにいたしたいと考えます。
  54. 永井純一郎

    永井純一郎君 只今の御答弁によりまして、政府汚職に対しましては、特に国民が一番遺憾に思うのは、この役人の汚職であります。これは非常ににがにがしく思つているわけでありまするから、これに対して、副総理から今お答えになりましたような、法制的といいますか、法律的にも処置をとりたいということでありまするので、私は一応その点を了承するわけでありまするが、なおこの点は、二、三カ月前の私は新聞で読んだのですが、専売公社の人間野さんという総裁のことが書いてありましたが、それは専売公社におきましては、自分の所管の役人の一切に、麻雀とゴルフ、それから選挙に立候補することを禁止する、禁ずる、総裁としてですね、自分の部下に対して…。この麻雀とゴルフと立候補が一番汚職のもとであつて、官紀が繁れるもとであるとして、それでこの三つは絶対に専売公社においてはやらないという申合せといいますか、自粛しようという申合せを総裁みずからされたということが新聞に出ておりまして、私は非常に立派な総裁であると思うのです。少くとも、私は、法律でそういうことをやつて頂くということが是非必要でありまするが、直ちに、法律ができるまでのうちに、私はしなければならんと思いますのは、この人間野総裁が言われましたように、麻雀だのゴルフだのということが、大蔵、農林、建設、郵政その他経済関係の通産省等において非常に行われているんですね。これも国民が今非常に疑惑の目を以て見ておりまするから、これは一つ副総理から各省大臣に対して、こういうものを自粛して、そうして国民の前に、汚職をみずから我々は断とうとしているということを、内閣としても示して頂く意味におきまして、こういつたものを各省大臣が自主的に自分の部下に対して申合せといいまするか、禁止して行くということが、私は今すぐして頂かなければならんことじやないかと思うのです。これは運輸省の何とかという官房長も、ゴルフからあの汚職が始まつているということも、これは私ども新聞で知つているわけでありますが、この辺に対する考え方もここで一つ副総理から明らかにして頂きたい、こう考えます。
  55. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 私どももはつきりした汚職かどうか知りませんが、そういうふうな麻雀とかゴルフとかが、日曜でなくて、ウイーク・デーにすら行われている。少し遊興が過ぎておるということをちよちよい耳にいたしますが、参議院の予算委員会で御質疑なつたことでありますから……、この個々のリクリエーシヨンをどうする、制限するということを考えるのでありませんけれども、どういうふうにこれを取締るか、処置するかということにつきましては、各大臣とよく検討してみたいと思います。
  56. 永井純一郎

    永井純一郎君 私も自分たち仲間同士の遊びとしてやることは別に悪いと申上げるわけではありませんが、これは当り前なんですが、多くは麻雀、ゴルフ、それから立候補が、すべて財界人といいますか、そういつた人たち、会社の人たちと繋がつて始終行われている。一緒に行われている。立候補にしても、我々が何とかするから是非お出なさいということで行われているのを我々たくさん人物を知つておりますが、そういうことが盛んに各省にある。これが実際には汚職の根本だと思うのです。役人はそう金があるわけがないんですから。そこで私どもは、そういう意味で、禁止するということはできないかも知れませんが、この総裁のやられたような自粛を、直ちに自粛させる。同時に、法律は副総理も作りたいと言われるのでありまするから、これはまあ結構なことでありますが、それ以前に、こういうことを自粛さして行くという方針をとりませんと、私は税金を折角納める国民が、これは喜んでなかなか税金を納めない、無理やりに取らなければならんということにどうしてもなつて行く、こういうふうに考えるのでございます。  なお現在のこの国家公務員法によりますと、その百二条で、「人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」とまあ漠然とした規定がありまするが、而もこれには厳重な罰則があり、そして人事院規則のほうでは、「職名、職権又はその他の公私の影響力を利用する」、政治的な目的のために利用するようなことはいけない、こういうことをちやんと人事院規則で繭つているわけですね。又寄附金や会費又はその他の金品を求め、「若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与」することもいけないというふうに国家公務員法に書いております。これは役人が在職中に自分の職権、職名を暗々のうちに確かに利用しており、それらが補助金と繋がり、或いは会社の寄附金と繋がり、そうして現在すでにそういつた金でいろいろの人を集めて饗応をしているというようなことが現実に、事実はたくさんありますが、そんなことは私は一々決して申上げるわけではありませんが、これらが私はいけない。そして国家公務員法、人事院規則のこれは違反である、明らかなんですね。こう思います。そうしてこの人事院規則の第八項で、最後に「各省各庁の長は、法又は規則に定める政治的行為の禁止又は制限に違反する行為又は事実があつたことを知つたときは、直ちに人事院に通知」しなければならないと書いてありまするが、各省大臣では、そういうふうにこのことをまじめに今やつておる人は私はないと思います。で、人事院に各省の大臣が通知をすると同時に、これらの「違反行為の防止又は矯正のために適切な措置を」各省各庁の長はとらなければならないということを人事院規則ははつきり書いておるのです。私は、政府が今教職員の政治活動禁止の法律なんかを逆に出して来ておりますけれども、役人自体の、こういう国家公務員法できめておる汚職の原因になるようなことさえもまだ各省各庁はやつておらない。これも私は直ちに一つ、これから各省各庁の長に副総理から通達をしてもらつて、具体的に指示をして頂きたい。  同時に、人事院にお尋ねしますが、人事院のほうでは、私が今申上げたようなことに対してどういう考えをお持ちになつておるのか。ここでその意見を求めておきたいと考えます。
  57. 神田五雄

    政府委員(神田五雄君) お答え申上げます。公務員の立候補前の運動につきましては、人事院といたしましては、公務員は全体の奉仕者として公務に専念する、そういう立場におるべきだと思いますので、事前運動のごときは余りかんばしいことではないと思います。ただ併し事前運動は普通の場合、公職選挙法でこれは問題になり、取締るのでありまして、公務員法並びに人事院規則は、特定の個人に対する選挙のこれは禁止ということになつておりますので、本人の行為については、別に規定を設けていないと、かように解釈いたします。
  58. 永井純一郎

    永井純一郎君 今の人事官の答弁は私は非常におかしいと思うのですが、条文を読みますとそういうふうにもとれる。ところが少くとも現職の役人が自分自身で立候補する意思があり、且つその意思を第三者に向つて発表しておる。そうするとこの人事院規則なり、国家公務員法は、必ずしも自分以外の者の政治的目的というものは明文にそういうふうに書いているのではないんです。ですから国家公務員がそういつたことがないように戒めるための、そういつたことから汚職が起りやすいから、そういうことのないための国家公務員法であり、個々のものの規定はですね、又人事院規則でありまするから、みずからそういう意思を持つてつて、そうしてそういう政治的な目的のためにいろいろ名前で会費を取つたり、或いは自分の職名、職権を何となしに影響力をそれによつて与えるようなことをしたりするようなことは、これは私は当然公務員としては許されないことだ。従つてこの中の、この規則の中にはそういうことをも含むか、例えば含まんとしても、これはよくないことなんですから、併し私は当然これらは含む、こう思うのです。そこで人事院としては、それは法律的にこれを非常に文字的に解釈して、別にそんなことは書いてないんだといつたようなことでは、これは済まんと思う、国家公務員法の趣旨からいつて。そういう意味なんです。法律で全然関係ないんだということも私は言えないと思いますよ。
  59. 神田五雄

    政府委員(神田五雄君) 如何にもお説御尤もであります。併し人事院といたしましては、人事院規則その他の委任事項については、一切各省庁に委しておりまして、直接それにタッチするようなことはしていないのでありまするが、若し違反行為があつた場合に、各省庁から人事院に対していろいろの材料を提供する、こういうことになつた、それによつて人事院の態度をきめるということにしております。直接はしておりません。併し国家公務員法の精神から行きますと、先ほど申上げましたように、事前の選挙運動をやるというようなことは決して喜ぶべきこと、褒めたことでもないというふうに考えております。
  60. 永井純一郎

    永井純一郎君 この人事院規則の一番最後の第八項に、よく読んでおられないのじやないかと思いますが、ここにはそういつた行為又は事実があつたときは、直ちに各省各庁はへ事院に通知することになつておるのですね。通知を受けたら人事院はどういうことをするのですか。それが私はよくわからない。
  61. 神田五雄

    政府委員(神田五雄君) そういう場合には調査の上勧告することになつております。
  62. 永井純一郎

    永井純一郎君 勧告だけでなしに、懲戒全般のことができるのでしようね、人事院で……。
  63. 神田五雄

    政府委員(神田五雄君) その場合には任命権者に連絡いたしまして、任命権者のほうですることになつております。
  64. 永井純一郎

    永井純一郎君 そういたしますと、その各省各庁はあなたのほうに通知をし、あなたのほうが又各省各庁に戻して、任命権者ですから……、各省各庁の長が任命権者ですな、そうして徴戒をやるのですか。
  65. 神田五雄

    政府委員(神田五雄君) 各省庁の取扱方が適当でなかつた場合には、人事院としてもこれはやれることになつております。
  66. 永井純一郎

    永井純一郎君 副総理の答弁並びに只今の人事院の答弁によりまして大体了承をいたしました。この点につきましては各省が、特に経済関係省が補助金を通じてそういうことが行われておるし、又補助金がいろいろな外郭団体等を通じて割戻されておる。そうしてその割戻された金が実際上政治的に使われておる。そこで今私が多数知つておる町村長さんがたが実にそれで困つておられるわけです。工事費が、実際上工事に使う金がそれで少くなる。ひどいのになりますると、頭から二割くらいを取つて補助金を渡しておる例は、これは多数ある。こういうことはもうとても許されないことでありまするので、ここで答弁されただけでなしに、副総理から各省庁を督励されまして、汚職を未然に防ぐ実際上の措置法律的な措置をおとり下さるように、念のため更に申上げておきます。  それから大蔵大臣にお伺いいたしたいのですが、この前の災害予算で、特別委員会でいろいろと災害復旧対策を論議いたしました。そうしてその最後の、これは副総理も大蔵大臣も大体二十八年度のあの大水害と、それから十三号台風の復旧は三・五・二であります。こう二人で我々に約束をしたはずなんです。ところが今度の予算を見ますと、約五百三十三億しか組まれておらないのでありますが、これは一体三・五・二でやるという方針をなぜお捨てになつたのか、これを一つ先ずお伺いしたい。
  67. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 二十八年災害につきして丁度いろいろな、例えば水増しがあるとか、各種の意見等も出ましたので、大蔵省におきまして十二月の一日から十幾日に亘つて九千数百件を取調べ、更に行政管理庁のほうにおきましても三千数百件を取上げて、やはり二十八年災害であります。それから会計検査院においても九千数百件を取上げまして即刻調査いたしましたところ、不当不正の事実と見るべきもの、即ち内訳で申しますると、架空な工事、或いは二重工事、或いは特に水増しをしたと見るべきものが、大蔵省の調べでは件数で三割二分強、それから行政管理庁のほうの調べでは五割二分強、更に会計検査院の調べでも二割何分強あつたのであります。そこで御承知のごとくに、これはまだ全部をとつても調べておるのではございませんが、これは永井さんよく御記憶だろうと思うのですが、約千八百何億から千五百六十五億にしたのはどういうことかというようなお話でございまして、この千八百何億というのは、当時その時の査定であつたが、その後だんだんと調査が進行するに従つて、千五百六十五億になつたということを詳しく表で当時申上げました。ところがその後の今の調べが、そういうふうに三カ所で調べた結果に相当いわゆる不正不当と見るべきものがございましたので、その割合で調べますると、千百数十億に一応圧縮されたのであります。尤も今後実情を調べて、あとをずつと調べておりますから、更に増加する分が出て参ることもあろうかと思います。更に減額することもあろうかと思いますが、一応その比率で出しますと千百数十億になつたのであります。そこで三・五・二の比率を特に変えるという意味はなかつたのでありますが、大体におきまして二十八年災害につきましては、御承知の予備費から支出した分並びにいわゆる救農国会と称せられる分で支出した分、並びに今回の二十九年度予算等を見ますると、大体それで六割くらい仕事が進行して参ることになるのであります。尤も予算のほうが十二分にありますれば、もつと計上すべきでございましたけれども予算が一方そういう非常ないわゆる緊縮予算で、予算の配分が思うように任せなかつた時でございましたので、重点的にこれを使つてもらうということを主にいたしまして、大体只今申上げた、又仰せになつたような金額を計上した次第でございまするが、これによつて六割はやれると、こういうふうに見ておる次第でございます。なおその折に百五十七億ですか、最初の三の割合でやると運用部からこれを出さなければならんじやないかという、当時二の三も三党その他での御協議の次第もあつたのでありまして、これは実情に即して進行の程度に応じて出しましようということを申しておきましたが、その後実情に即してこれを調べました。調べました結果、約四十数億をちよつと出る程度の額が、そういうふうな調べがつきましたので、この分は先般年度も超えて使うことでございまするので、審議会の議にかけまして、運用部のほうから四十億を出すことに審議会の議を経ました。従つてその予算面以上に出る分が四十億ばかりございますが、大体において五にはちよつと達しませんことは御承知の通りでありますが、予算がそういうふうに窮屈でございましたので、できるだけの措置はとつたと、こういうことに御了承願いたいと存じます。
  68. 永井純一郎

    永井純一郎君 仮に今の大蔵大臣数字が、査定をした結果不正不当の数字があつて、そういうふうに千五百七十五億だつたと思います。六十五億だと言われましたが、千五百七十五億と思います。それが千百五十億くらいになつて、これから比率を出せばこうなるというようなお話ですが、先ほど申上げましたように、今までそういつたような役人等の大体関係から不正不当に使われている金というものが約二割乃至三割だという割合に、もうこれはそういう数字が出ているのですね。そういう役人を通じてそういうことが行われる二割乃至三割をぴつたりと今すぐとめないと、とめておかないと、不正不当だと大蔵省が言つて総額を千百五十億くらいにして、そうしてこの補助金を流してやるわけですが、これが少くなつた中から又二割か三割実際上の工事費が少くなるということになるのですね。一面、今度は会計検査院まで行つて現地の査定を相当多数やつて、そうしてこれがもうめちやくちやな査定を実際やつております、現地で……。ところが現地の土地改良区なり、町村長がたに言わせれば、役人が何だかんだといつてつて行く金が二割か三割あるのだ、補助金の中から…。そのくらいのものを見ておかなければ工事費というものがなくなるのだという、これは反対の陳情が盛んに私どもの所に来ております。で、今すぐ私が先ほど来副総理に申上げたようなことをとめてしまつて、そうしてその上で今おつしやるような数字を流して行けば私はいいと思うのですがね。これは一つ、実際上そういうことが行われておるわけでありますから………。これは厳重な査定をして行つて、どこも殆んど復旧しなければ、これは私も見てみて、これを全部査定を削るというようなことは全く言語道断だと思うような個所が幾らでもございました私の県でも……。ところがそういうものも二割も三割も不正不当の事実があるから、お前の県もそういう箇所が何十カ所ある、そういうことを基準に全体を二割、三割削つてしまつて、そうして総額を、千七百五十億あつたものを千百五十億に大蔵省はしたのだと思う。ところがそうしますと、その少くなつた中から又二割か三割そういうふうに割戻したり何かしたり、或いはその他の、一々申上げませんが、その他の誠に忌むべき方向へこの補助金を流しておりますると、実際の工事費というものは非常に少くなつてしまうという危険が私はあると思いますので、この点は先ほど副総理に申上げましたことを大蔵大臣とよく御相談になつて、そういうことが直ちに今度の災害復旧費の中からはないような措置をしてもらいたいと思いまするが、それを一体どういうふうにして大蔵省はそれをなくして頂くか、これを私は大蔵大臣に一応お伺いをしておきたい、こう考えます。
  69. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 最初にちよつと永井さんに申上げておきたいのですが、二割か三割不当な支出が当然あるかのごとく仰せでございまするが、私ども実は只今申上げましたのは、大蔵省なり、或いは行政管理庁なり、或いは会計検査院で二十八年災害について調べたものがそうなるということを申上げましたのでありまして、そのほかに、なおよそへ流れて行く、いわゆる永井さんの、汚職その他の原因となるものが二割、三割であるということでは、これは大変なことなんでありまして、私ども実はさようなことはないと思つているのでございまするが、若しありますれば、これは事実に基いて、私ども是非とも糾弾しなければならんと思います。又これは明らかにしなければならんと思いますから、是非、若しございましたらその実例をお示し下されば、私どももすぐ手をつけまして、地方財務局を使いましてこれはやりますから、これは国費は大切でございますから、どうかそういうものが一つでもありましたときにはお知らせを願いますれば、これによつて十分処置いたしたいと考えておりまするが、その点一つ永井さんのほうにもお願い申上げておきます。  それからその次の問題でございまするが、実は今度、過日森さんからのお話もあり、本委員会の決議の次第もありましたので、過ぐる金曜日の閣議で、補助金等の予算執行の適正化に関する法律案要綱というものを取りきめております。明日は法案そのものをきめたいと考えているのでありまするが、これに基きますると、最初に予算の、まあこれこれ要るのだという災害予算等出して参ります。そうして予算の執行者の責任を、それによつて執行者をきめまして、又それについて中間報告とか、いろいろなものを報告で徴することにいたします。更に工事が完了すると同時に、完了報告を受け、完了報告に基いて調査いたしまして、概算は先にやつておくのでございますが、その上で的確なる最後の支払をすることに相成つておりまするから、今後はこの法律を御承認願うと、そういう余地は全然なくなると思います。併しそれでも、例えばごまかそうとする人であれば、帳簿その他でうまくごまかしましよう、受取書等で……。そういう事実が発覚した場合におきましては、これに対する処分の方法をとつております。例えば補助金をそれがために余計取つたから戻させるとか、或いは固い利息金をそれがために付けさせるとか、各種のことをやつて補助金等の返還のことも取りきめておるのであります。更にそればかりではなく、いわば一種の何といいますか官金へん取のようなものにも相当いたしまするから、これに対する責任者に対して罰則をつける。このことがちよつとほかとの罰則の割合等がございまして、まあ何で割合があるかと言いますと、私したものじやない、取ることは取つたけれども、私したものじやないということが、同じ取つちやいるのだが、国のものを余計使つたには相違ないのでありますが、併し公の団体に使つておるのだからというような関係があつて、多少ほかとの罰則関係等で法務省との調整等が遅れたわけでございますが、それもきまりましたから、そういうことで所要の罰則規定を設けるということにいたしまするから、今後はこの委員会の御決議の次第もあり、固くそういうことが守れると存じております。併し今までの分につきましても、私ども相当厳格にやつたつもりでおりますが、又いろいろなこと耳にもいたします。実例はなかなかつかめませんので、この間二十八年についての災害について調べた結果は、先ほど申上げた通りでありますが、なお私ども調べた以外に二、三割そういうふうなものがあれば、これは大変遺憾なことでございますから、どうか実例等ございましたら、厳重に私どものほうでも調べますから、お知らせ願いますと大変仕合せな次第でございます。
  70. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 只今大蔵大臣お話聞きますと、幸い立法化措置ができたようですが、第十七国会の当委員会の決議に基いてできたのですから、一つ是非予算の採決までに見せて頂きたいと思うわけであります。中央地方を通じまして二兆円近くの予算の中で厖大なロスが、私鞄に一ぱい持つていますが、一つそれを見ぬと果して適正に使われるかどうか、我々もこの採決には躊躇するわけです。それを見ませんと三月三十一日の採決もなかなか面倒だと思いますので、一つ至急にそれを出して頂いて、必ず当委員会では理事会にお諮りして、是非その問題を真剣に討議をしてみたいと思いますので、至急に一つ見せて頂きたい。
  71. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 法案の要綱は金曜日の閣議で決定いたしましたが、法律案は明日の閣議で決定する段取りになつております。従いまして閣議決定次第お出しすることにいたします。勿論三十一日などと言わずに、もつと早くこれはお手許へお出しすることにいたしますので、よろしくお願いいたします。
  72. 永井純一郎

    永井純一郎君 そういう実例があつたら成るべく教えてくれということです。これはたくさんあるのですが、まあ一々ここで申上げるのもあれですが、又里げると個人的にいろいろ繋がる問題も多数ありますので、それは申上げません。例えば抽象的に一つ例を申上げますが、先ほども申上げましたような、農業土木関係で相当の補助金が出ておりますが、御承知のように全国に四十五か六県漏れなく、どこの県も耕地協会なんというものを持つて、非常に立派な建物、膨大な金をかけて宿泊施設から一切あります。そういつたものは実際は全部補助金を割戻して、賦課して集めた金でできております。これを全国集計してみますとそれは膨大な金額にこれだけでもなつて来るわけですね、一つの例を引くと……。併しこれは実際はそうですが、経理上は土地改良費が入つて、村の会計に入つて、そこからすぐ戻した勘定にはならないでしよう。それは帳面でいろいろやれるでしよう。併し実際はそこから割戻しておるということを町村長さんが皆言つておるわけです。それで非常に困難をしておる。ひどいのになると、頭からその分だけを引いてやつて来ておる。これは一番少いのは百分の一・七ぐらい取つておるのがありますが、大体百分の二・五から三ぐらいを取つておるようです。ここ三、四年来そういうことが実際上行われて来ており、これが先ほど申上げました立候補その他とすべて結付いて来ておるということは、私は何と言つても一番汚職の原因であるし、これを未然に防がなければならん、こう考えるのですが、その他いろいろな実例を必要であれば、私のほうで集めたものは大蔵大臣にはお示しして行くようにしたい、こう考えております。  それからもう一点大蔵大臣に伺いたいのは、先ほど六割と言われましたが、これは二十八年度の補正予算でやつた分と、それから二十九年度に組んだ五百三十三億と合せて二十九年度末において六割程度が復旧する、こういうことですね、たしか。
  73. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) そうでございますが、そのほかにさつき申した四十億を今の分に加えれば幾らかそれだけ割がよくなりますが、大体において六割という勘定になると思います。
  74. 永井純一郎

    永井純一郎君 もう時間がないそうですから、もう一つだけ。今度の二十八年度の災害復旧で会計検査院が一緒に行つて査定をしておりますが、而も二十八年度分のみならず、二十六年度、二十七年度のも残つておる分についても査定をしちやつて、それでその分を打切るという査定の仕方をして来ておりますが、これは実際の問題として、二十六年度、二十七年度分まで削つて行かれるということになりますと、計画した事業量がありまするから、あとは全部村が負担するというような結果が起つたんでは、これはもう到底村の負担ではできぬことですから、これはどういうわけでああいう査定をされたか、一応伺つておきたい。
  75. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 会計検査院はその職責上当然の任務といたしまして、各省が行いました査定が果して正しいものであるかどうかということを検査する権限があるわけでございまして、そういう観点から、二十六年度災、三十七年度災につきましての事業費の査定の適否を検査しておる、さような事情にあると思います。二十八年度災につきましても、すでに査定が一応完了しておるものがございますので、そういうものにつきましては、恐らく検査院が現地につきまして検査を実行しておる、そういう事実があると存じます。
  76. 永井純一郎

    永井純一郎君 そうすると、二十六年度、二十七年度分について、会計検査院が行つて、予定が百億だつたものを、これは水増しがあるというようなことになりまして、三十六年度分を又査定して、この範囲でやれ、つまりそれだけ補助金が少くなるわけです。ところが計画はそうなつていないので、あとの負担を村でしなければならんと、こう村言つているのです、それでないと予定の工事ができないわけですから。そういうことになつて行くのですか。
  77. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 二十六年度又は七年度の災害につきまして、建設省なり農林省が事業費を幾ら幾らと査定をいたしておる。それを検査院が検査いたしました結果、例えば非常な超過工事或いは便乗工事がその中に含まれておる、これは本来補助の対象にすべきものではないと、そういう結論に達する場合があると思います。それういう場合には、農林省なり建設省なりの査定が甘かつたという判定を下されまして、その旨が検査院から国会報告される、さような段取りになるわけでございます。
  78. 永井純一郎

    永井純一郎君 ところが、私の言うのは二十六年度、二十七年度は年度割で来ていて、総事業量が一千万円とすれば二十六年度が四百万円、二十七年度は三百万円来ておりますね。ところが七百万円というものを使つていましよう。それを一千万円の全体を査定するから、仮にいわば七百万円に全体を削つてしまつたとすると、あとの最後の分は一銭もないでしよう。工事はまだできていないですから、従つてそれを全部村で負担しなければならんと、こういうことになる。そこまで言わぬでも、あなたのほうではわかると思つたから聞いたんだが、そういうことになるわけですね。それで非常に困つておる。これはこのままで放つておいたんでは、私はとても実際問題として片が付かない。これは何らかの方法で、或る程度の査定は止むを得ぬとしても、工事が完成するような措置をやつてやらないと、町村ではとてもできませんからね。この点を私は伺つておきたいわけなんです。
  79. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 二十六、七年度のような過年度の災害でございましても、その事業費の査定が著しく不当であつたという場合に、検査院から適正な査定のあるべき姿を示されますと、若し残りの金がまだ補助金として交付済みでない場合には、これは適正な検査院の判断に従つて補助を打切るという場合もあり得るわけでございます。これは、市町村の施行いたしました工事が、本来補助の対象でない程度に達しておる、或いは便乗、そういうことが原因でそういう事態が起つたわけでございますので、そういう結論が出ました場合には、補助を打切られても止むを得ないのではないかと私どもは存じます。
  80. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで私は大臣に……。この点は、これは事務当局としては今のようなお答え、仕方がないと思いますが、そういつたふうに、実際上工事が完成しないで放つて置くということはこれはできないと思いますので、もう過ぎ去つた分についてはですよ。やつぱり工事は完成をさせるということだけは私は必要だと思う。それは厳重な監督をし、厳重な査定をなして、もう一度…、今主計局が言うようにしますと、半分ぐらいできたまま、残つたままになるということになりますから、この点はやはり今後もつと実情をお調べになつた上で、何かやはり工事は完成するようにですね、適切な考慮をやはり払つて頂くということをして頂かなければ、これはやつばり実際問題としては解決して行かない。この点大臣から一つ考え方を承わつておきたいと思います。
  81. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 過年度災害の中にも、相当いわゆる水増しその他不正不当のものがあることは事実でありまして、ここに表がありますから、若し必要ならばあとから差上げますが、そういつたこともありますけれども、今永井さんのお話なつておるそれがどうも仕事ができぬでしまうということも、これは実際上において非常に困るであろうと思いまするから、一遍実情取調べまして、私どものほうもその実情に即して何とか考えたいと存じます。要するに、事柄はやりたい、併し不正不当というものは一切除きたいというのが補助の趣旨でございまするから、よく一つ実情を調べさして頂きたいと思います。
  82. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ちよつと御参考までに過年度災につきまして、昨年の十二月に実施いたしました私どもの監査の結果を御披露申上げたいと思いますが、監査は千五百三十九件実行いたしました。その中で、完全な重複査定、つまり両方から補助金をもらうような格好になつておりますものが二件、それから架空工事であるもの、例えば全然橋がなかつた所に災害復旧であると称して橋をかけたようなものが十三件、それから水増し申請のありましたものが三十九件、そのほか便乗、廃工工事、並びに査定額と竣工額との差額等が不当と認められますものが四百六十六件、合計五百二十件の不正不当なる事案が発見されたわけでございます。こういう事案につきましては、或る程度工事が進んでおりましても補助金を打切られ、その後の分は自己の負担で実行せざるを得ぬというような止むを得ざるものが多い、そういうことを御了承願いたいと存じます。
  83. 青木一男

    委員長青木一男君) この際、午前中亀田君が保留されました緒方副総理に対する質疑を……。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 副総理に午前中お伺いする予定だつたのですが、お見えにならなかつたので……、簡単にお尋ねしますが、問題は先つてから問題になつておるビキニ問題です。三月十九日外務大臣がこの予算委員会で第五副龍丸の問題で説明をされた。その際に我が党の佐多委員から、アメリカが設定した禁止区域、これは一体完全に合法的なものかどうか、こういう意味の質問がなされており、それに対して外務大臣は、広汎な禁止区域のうちで領海を含む閉鎖地域ですね、領海の近辺の閉鎖地域、これは完全に合法的であるが、それ以外の危険地域、ここについては問題がやはりある。勿論それが非合法だと、こういう答弁じやないのですが、考慮すべきものがやはりあるのじやないかと思う、そういう趣旨のことが答弁されておる。私はこれは非常に突は我々として重要な問題だと考えておるのです。で、今度の第五福龍丸の問題を契機にして、政府が現在アメリカ政府に対していろいろ折衝されておる、その折衝の中には、恐らく禁止区域の設定の問題、この問題も、私どもはこの問題を一つの土台としてやはり交渉さるべき問題だ、こういうふうに解釈をしていたのです。これは国民誰でもそういうふうに解釈しておると思う。ところが外務大臣がこの予算委員会でそのようなことを言つおるその同じ三月十九日、この三月十九日に新聞の報道によりますと、アメリカ政府は危険区域を更に数倍に拡大する、このことを在米の日本大使館を通じて我が政府に通告をしたと、こういうことが発表されておるわけなんですね。私はこれは実に時節柄重大な実は問題だと思つておるのです。先だつて問題を起したあの範囲の地域であつても、これは一体どうなのか、公海の中に一方的にそういうことができるのか、非常な疑問を持つておるときに、これを数倍に拡大する、大変な問題だと思うのです。それで政府に、これは単なる一外務大臣とかそういうわけには行かないと思いまして、副総理にこの点を実はお尋ねするわけなんですが、一つは、そういう新聞に載つておるような拡大をするという通告が正式に政府に対してあつたものかどうか、若しあつたとすれば、その内容はどういう内容のものか、いろいろ記事によつてその広さなり、或いは禁止期間、こういつたような点幾らか不明確な点があるようですが、その点はどうか。それからもう一つは、政府はそういう一つの通告があつたとすれば、どういうふうにこれに対処されようとしておるか、これを聞きたい。恐らくそういう重大な問題を鵜呑みにされるはずがなかろうと思う。現にこれは日本の遠洋漁業についても非常に重大な影響があるということで、漁業者も非常にこの問題については関心を持つておる。そういうわけですから一つ副総理に政府全体の考え方をこの際明確にしてもらいたいと思う。
  85. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 只今の御質疑の点は私も全然同感、同じ感想を持つておりまするが、まだ正式に私どもの所に公報というようなものが届いておりません。外務省に届いているかも知れませんが、私まだ見ておりません。その点はいわゆるゲインジャー・ゾーン、危険区域というものを幾倍かに拡大されるということを新聞記事で見ただけでありまして、従つて責任ある答弁をいたすことができないのでありますが、これは勿論日本だけの問題でなく、原子爆弾、或いは水爆というものが今新たな大きな問題を提起しておりますだけに、これは国際的の問題であると思いまするし、特に日本といたしましては、遠洋漁業に始終出漁、慣行的に出漁しておる地方でありますだけに、問題は更に手近の問題も含まれると思いますだけに、十分に公報を研究いたしました上に、適宜の措置をとつて行かなければならんと考えております。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 こういう重大な問題について、まだよく政府のほうでは新聞の報道等を確認しておらないということでありますから、更につき進んで今回の区域拡大の通告の問題、これについてお尋ねすることは保留いたしておきますが、これは明確になり次第一つ明らかにしてもらいたい。本当にそういう通告があるのか。あるとすれば政府のこれに対する態度、これは取扱い方によつては、非常に重要だと考えております。その明確な通告の内容、政府考え方等が明らかになつた上で、これは改めてこの点に対してだけ私更に若干質疑をしてみたいと思います。そういう風にこの点、委員長のほうでお取計ら願いたい思います。もう一点あるのですが、これに関連があるようですから……。
  87. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 緒方副総理がさつき申されたように原爆、水爆等に非常に大きな問題がありまして、その面からも重大ですが、特に若しこれを認めますと、日韓交渉は甚だしく不利になつて参ります。李承晩大統領が一方的な領海宣言をやつておるけれども、これはもうアメリカのほうを認めれば、何だアメリカのほうは認めておるじやないか、おれのほうはどうだというようなことで、私は日韓交渉は絶望的にむずかしくなつて、東のほうでも魚も取れない。又東支那海においても重大な問題があると思いますので、岡崎外務大臣等の意見を見ますと、甚だアメリカに対して遠慮されておるようですが、原爆、水爆等の関連とは別に日韓交渉は極めて困難になるという点もお含みの上で、十分一つ慎重な配慮を以て御折衝をお願いしたいと思うわけであります。なお朝日の二十日のワシントンの電報によると、もうすでに十九日にアメリカ大使館にすでに連絡があつた、通告があつた、こういうふうに出ておるのですが、副総理の所にはまだ何の御連絡もないのでしようか。十九日にアメリカでは決定して通告した、こういうことになつておる。
  88. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 失礼いたしました。私の所に届いていなかつただけで、今農林大臣の手許にありましたから、農林大臣からちよつと水産関係に関連して説明いたします。
  89. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 私がお答えすべきことでないかも知れませんが、漁業関係の、水産関係の主管者といたしまして、この問題に関しまして重大な関心を払つております。私どもとしましては、三月二十日の午後、外務省からビキニ環礁附近爆発物の危険区域拡大に関する件ということで、お話のような外務省から通報を受けました。その内容を検討いたしますると共に、直ちにこれに関する諸般の内部手配を進めております。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 その内部手配というのは、これはどうなんですか。これは私の考えでは、こういう通告はいろいろ疑問があるわけですから、内部手配というと何かそれを認めて、もつと危険区域がこういうことになるそうだから、日本は危い所に寄らぬようにせい、何かそういうことでも言われたように思うのですが、そうですが。
  91. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) この間から今回の事件に関しても漁業者に対する周知徹底方が極めて欠くるところがあつたじやないかというこ差しばく御指摘頂いておることは、その通りでございまして、お答えしておりましたように、この危険区域を認めるとか認めないということは別といたしましても、こういう措置の通報を受けておりまする以上、私どもとしましては、当該地方に関係の深い地帯に対して、一応そういう通報を受けた、従つてこれに対して十分注意をして欲しいという措置をとることは、私は認める、認めないということは別として、これはとらなければならん措置であろう、そういうことで関係の県知事、或いは三崎とか清水の無線局を通じて、出漁しておりまする漁業者にそういう徹底方をいたしたような次第であります。(「黙認ですか」と呼ぶ者あり)
  92. 亀田得治

    亀田得治君 それは農林大臣、重大な問題ですよ。そういうことを簡単にするから、アメリカ一辺倒だなんていうことを言われる。一辺倒なんていうのはデマでも何でもないでしよう。今大臣がとられた措置というものは、これは閣議に諮られたのですか、どうなんですか。
  93. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 副総理が御承知のないくらいでありますから、閣議には無論諮つておらんわけであります。ただ私どもとしましては、外務省、海上保安庁、水産庁事務当局の連絡会を持ちまして、こういう一応の緊急措置はとつておるわけであります。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 これはそういう事務当局だけで事務的に処理すべき問題では私はなかろうと思う。これはやはり総理が差支えがあれば、副総理が中心になつて、それを十分検討されて、然る後に処理さるべきものだと私は考えますが、これは副総理の御見解は如何でしようか。
  95. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 原爆の試験をするビキニ島がアメリカの領土と言いますか、領海内であるので、そこで原子爆弾或いは水素爆弾の試験をするということは、これは認めざるを得ないと思うのですが、その威力が今回の事柄の経過を見ておりますと、アメリカ側自身ですら予想外の大きな威力を持つてつた、そのために今までの立入禁止区域と申しますか、ゲインジャー・ゾーンと申しておりまする所を、差当りこれを拡げなければ、そこを航行する、或いは出漁する船が危害を受ける、それをこつちに向つて通達することは、アメリカとして即時とるべきことであり、これはその限りにおいては、当然のことであると考えるのです。これに対しまして、公海のどこまでも、そう地域を一方的に拡げるかどうかということは、将来この爆弾の威力が更に幾層倍か殖えて行くこともありましようし、これは日本の問題として、勿論問題でもありますが、国際的によほど研究を要する問題ではないか、これに対しては新たな問題が起るのではないかというふうに、私ここで今質問を承わつて咄嗟の感想であります。
  96. 亀田得治

    亀田得治君 どうも納得行きませんがね。このアメリカが通告して来たから、危ないから差当り関係者に知らした、こういうことなんですが、最初に申上げたように、そういう危険区域の設定は、先だつてのものですらやはり考慮すべき点があるわけでしよう。今度はそれを更に広くするのですから、これは国際法の公海自由の原則はこれは一体どうなるのか。いろいろな問題がたくさんあるわけですよ。だから本来ならば、先方からそういう通告が来たならば、先方に対して日本政府から、それはちよつと待つてくれ、その試験は待つてくれ、絶対にそれをとめるというわけでもないのだが、とにかく問題になつておるのは明らかにして、それからやろうじやないか、これだけのことは一応提案されて、然る後に更にこちらの内部的な問題は次善の措置としてお考えになる、こうあるべきなんです。ところがどうもさつきからの扱いで行きますと、これはもう黙認といいますか、実績をここで作られてしまいますよ。これはこういう国際法というような領域では、私から特に言わなくても一つの前例とか、実績、こういうものは何といつてもやはり大きな後の判断に影響を持つのですよ。そういう意味から今のような政府の態度では、私は日本として非常に不利な状態に追込まれるのではないかと懸念するのです。元来そんな試験というようなものを、そんなに急いでアメリカが、やる必要はないでしよう、試験なんですから……。今戦争が起きているわけでないでしよう。それが二月、三月延びたからといつても何でもないでしよう。基本的にいろいろな問題を解決して然る後にやるのが当り前でしよう。私はどうもこういう今答弁されたような行き方では腑に落ちない。試験よりも我々の生命とか、公海の自由の原則とか、こういう法理なり、人道というものはもつともつと大きいでしよう。そんな原子爆弾の試験をいつやるかというような問題よりも……。これは副総理の只今の答弁じや甚だ不満ですが、それはどういうふうにお考えですか。では、こういうふうに具体的に聞きましよう。試験を二月や三月或いは半歳延ばすことと、一方でそういう公海の自由の原則に対する対立の問題が出ておる。それと我々日本人にとつては命の問題が出ている。この二つを一体あなたはどちらが重いと見られるのですか。
  97. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 私は原子爆弾試験のための爆発、そのときの何と申しますか、国際的の決定を承知しておりませんので、ここで責任のあるお答えができませんが、今アメリカ側の何は、その拡大する一方的の意思を通告して参つたので、政府でやりましたのは、それに対する日本の出漁等の蒙むる危険がどういうものであるかということを、今農林省、水産庁で研究いたしておるのであります。その何ができ次第閣議にもかけることと思いますが、今の専門的の公海の自由に関連いたしての危険地域拡大がどういう法的効果を生ずるかということにつきましては、外務省の条約局の専門からでないと私からではちよつと答弁ができません。
  98. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連して……。問題はそういう事務的な処理の問題ではないのです。先ほどから聞いているように、それは農林省或いは水産庁その他で事務的な内部的な処理としてそういう手配をされること、それは或いは事務的な問題としては了承もされるかも知れない。併し内部的な処理として遅滞なくそういうことをされると同時に、そのことは何にもアメリカからの申出でを承諾しているのじやないのだ、従つてそれと同時に一体そういうことが国際法上許されていいのかどうか。仮に国際法上許されるとしても、日本としては非常に迷惑千万なことでありますから、それらに対して日本としてのしつかりした態度がきまつていて、内部措置を、国内措置をされると同時に、遅滞なくアメリカ側に対してもいろいろな措置、手配、態度表明がなされなければならない。それにもかかわらずそういう問題を未だに知らないのだ、まだ何にも検討していないのだというようなことでは、余り政治的な責任を軽視しておられるのじやないか。その点をどうお考えなつているのか、その点をどう対処しようとしておられるのかという政治的な責任を聞いておるのでありますから、事務的な事情は別として、もう一遍その点を副総理明確な態度を示して頂きたい。
  99. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 今回の爆発が、爆弾の威力が当事国であるアメリカですら予想していなかつた大きな威力を発揮した、それで倉皇、今の差当りの地域の拡大をやつたのであると思いますが、これに対してどう日本の態度をすべきかということは無論外務省として研究をいたしております。ただ、私ここで承知しておりませんから、責任あるお答えができないということを申上げておるだけでございます。
  100. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 関連して……。保利大臣にお伺いしますが、外務省や保安庁等とお打合せの上こういう措置をとつたということですが、その際外務省としてはこういうことが国際法上正しいというふうに言つおつたのですか。我々としてはやはり対米外交がいつものようにこういうことで事実上アメリカの通告を是認し、そうして国民のこれに対する反感を外らしながら、実際巧妙にそれを外らしながら、アメリカリの要請に応じて国際法上の公海自由の原則について大きな問題を残しそうして各国との交渉も極めて不利になつたと思うのですが、その際外務省はこれに対してどういうふうに言つていましたか。その点を一つ、私としてはこういう形で黙認して、実際は事実上アメリカの通告を受諾したというような形でこういう態度を決定されたのではないかと思うのですが、外務省おられませんが、その際折衝に当られた保利大臣としてはどういうふうなニュアンスを以てお受けになりましたか。
  101. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) ニュアンスとしてとおつしやいますけれども、私直接実は水産庁長官から報告を受けたところに基きまして、そうして私として措置すべきことを内部的に水産庁に指示をして、指示をしたと申しますことは、この危険区域が国際法上法的効力がどうであるとか、こうであるとかいうことは、これは私がかれこれ申上げる筋合のことではございませんから……、ただ併しこれだけの危険区域を指定するという通報を受けて、何らの措置を講じないということは、私としてはできませんから、先ずとりあえず出漁している漁船もたくさんあることでございますから、これらに対して周知せしめるところの措置をとり、同時に一体これはああいう危険物の実験の結果、不慮の思わざる危険が区域外に及んだというようなことになるわけですから、従つて先方がどういう意図でその拡大をしたか、それは無論私は承知いたしておりませんけれども、仮にあれだけ拡大せられて、変更せられないという場合においては、我が国の漁業に及ぼす影響が実際どういう影響を受けるであろうか、これを先ず至急に調べる、それから又今度の危険区域拡大は六月三十日までというように期限を切つてあるようであります。併し素人考えでは六月三十日までといつても、六月三十日までずつと危険であるのでは無論なかろうし、その実験の危険でない間航行、操業の自由が得られるというような措置はとられないものかどうか。それから又あれだけの何と申しますか、拡大せられました区域の中に南方方面に出漁いたしまする漁船に及ぼす影響が一番大きいところは、航行上の航海して参ります通り道が、あの西南の尖つたところになると思います。あそこは一体どうしても必要なのか、危険が避けられないものかどうか、避けられる方法はないかというようなことを検討いたしまして、そういうことを外交当局とよくこちらのほうで検討をいたした上で、外交当局に相談を持ちかけるという手配をいたしているわけでありますが、無論これらのことが事務的に私どもとして用意ができましたならば、これは閣議にも持ち出すつもりでいるわけでございますけれども、まだ閣議には二十日の土曜日のことでございまして、閣議の機会がございませんで、これは無論臨時閣議があれば何でもないことですけれども、そういう今状況であります。
  102. 青木一男

    委員長青木一男君) ちよつと亀田君お諮りいたします。今の問題は外務当局がおいでにならないとはつきりしない点があると思うのでございますが、要求いたしましたが、他の委員会においてやはりこの問題をやつているそうでございますから、来られないと思います。従つて予算委員会としてはこの問題は他日の機会に譲りまして、この程度一つ進行して頂きたいと思います。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 只今の農林大臣の答弁をだんだん聞いておりますと、結局アメリカの通告をどうも認めたような立場でいろいろな措置が講ぜられておるように推測される。農林大臣はそれは俺の管轄外の問題であるというふうな立場でやられておるようにも思うのですが、思うのですが併しこれは俺は農林大臣だからそういう公海自由の問題とか、そういつたようなことは知らないのだと、そういう問題じやないと思うのですね。これはもう国民の誰もが関心を持つておる。あなたは国務大臣なんだからね、同時に……。私はその立場でそんな、単に事務的に管轄が違うというようなことで済まされる問題ではなかろうと思う。併しまあ今委員長も言われたように、これは外務大臣自身は恐らくその電報も直接見られ、そうしてその上で農林大臣のほうにも廻わされたものと思いますから、一つ外務大臣の見解がどのようなものになつておるのか、こういうことが一つ明らかになるように別個に一つ取計らいを要求いたしておきます。
  104. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちよつとそれに関連して……。外務大臣の一人の所見でなくて、今みたいに非常に重大な問題でありますし、殊にこの間の外務大臣の答弁でも、今亀田君も言いましたように閉鎖区域はこれは問題ないとしても、いわゆる広い意味での危険区域の設定なんか、この間の程度においてすらすでに疑問であるというような問題なんですから、これを更に六倍も何倍もに設定をするということは、もつと疑問なことははつきりしておる。我々はその直接の利害関係者としてどうしてもこういうことは認められないという立場に立つておるのですが、そういう国民の強い要望があることをお含みの上に、単に外務大臣一個の見解等々でなくて、十分に閣議なり何なりで御審議を願つた上に政府の統一した意見、態度を別の機会に表明されんことを希望して、他の機会に譲ることに承諾いたします。
  105. 青木一男

    委員長青木一男君) 亀田君、あなた大分時間が過ぎておりますが……。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 ちよつと時間を取り過ぎておるらしいですが、政府のほうが簡単に答弁が行かないものですから、責任は七分三分くらいだと思います。  そこでもう一つだけお尋ねいたしますが、原子力の管理の問題ですね。これは政府も非常に関心を持つておられると思うのです。それで私のお聞きしたいことは、今ほうぼうで言われておる原子力の管理をどういうふうにしてやつて行くか、ああいう実験だけですらあれだけの被害が出ておる。でこの根本方針は、これは政府のほうで立つておりますか。何かそういうことに対する考え方は……。まとまつていましようか。
  107. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) ちよつとお尋ねしますが、国際的に政府でどういう発言をするかということでございますか。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 ああそうです。
  109. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) まだまとまつておりません。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 それじやそれはその程度にしておきますが、ただ私の政府に、これはまあ副総理にお尋ねすることはですね、再軍備がいいとか悪いとかいろいろな議論もたくさんございますけれどもね、この原子力の状態を見て、政治家としては一番何が必要かとこういうことなんですね。いろいろな政策があろうが、いろいろな方針もあろうが、私は一番必要なのは日本をともかく戦場にしてはならんとこういうことだと思うのです。勝つか負けるかではないと思うのです。ここの場所が戦場になつてはならない。というのは私はなぜこういうことを心配するか、これは私ども毎日聞くことなんです、たくさんの人から。——それはですね、どんな原子力の管理の方法を世界が発明してもですよ、それは平時のことですね、そんなこと……。戦時についてはこうするんだとか、そんなことは取極めておつても、それは取極めをしておるだけのことだ。これが破られるということは、例えば第一次世界大戦の場合は毒ガスの問題があつた。破られておるのですね。それから第二次世界大戦の場合でも、原子爆弾がここに落ちておるわけですね。あのときはまだ原子力管理のそういう協定がないと、こういうふうに言われるかも知れませんですけれどもね、あれは何といつても……。
  111. 青木一男

    委員長青木一男君) 亀田君……。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 すぐ、簡単にします。毒ガス以上にこれは強力なものなんでしよう。毒ガスの禁止規定があれば、それ以上のものを人道上認めてはならない、常識ですよ、これは人類としての常識ですよ。それがやはり戦争が職烈になつて来ると破られるわけですね。私はこういう現実を政治家というものは本当に心配しなければならない。でこれはですね、特に我々が心配出するのは、例えばアメリカの両院の原子力委員会委員長のコール氏が、自分たちは水爆を世界のどんな所にでも持つて行ける、現在ですね、こういうことを言つておる。併しですね、そのためには前進基地が必要だと、こういうことをはつきり言つておる。又アメリカが本土から持つて行くだけの実力はない。併し前進基地さえ適当にできれば世界のどこにでも持つて行ける、こういうことを言つておる。これはもう常識的に誰が考えても、その前進基地というのはヨーロッパであり、中東であり、日本なんだ。でこの中間地帯の人がみんな心配しておるのはそれでしよう。これは保守党とか社会党とかそういうことを抜きにして、人がいないようになつ政治も何もないんですからね、よほどこれは考えるべき問題だと思う。それから敵対国にしたつて結局何でしよう、前進基地から水爆が飛んで来るということなら必ずこの場所が狙われるでしよう。私はそういう時代になつた場合には、平生どんな原子力管理の一つの取極めというようなものがあつても駄目だと思うのです。戦時におけるそういう放射能の監理なんということはこんなことはできませんよ。だから私の考えるのはですね、どうしてもこの日本というのをそういう外国の基地をここに与えてはいかん。あなたは自由党を離れた立場で考えたら私はそうお語りになると思う。それで聞いておる、どうですか、その点。
  113. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 今コールでございますか、その原子力委員長の言葉を御引用になりましたが、今の兵器の進歩するテンポから見ますると、前進基地を必要としない時期も必ず来ると思う。従つて前進基地と別に考えていいと思いますが、いずれにいたしましても戦争の場合に戦争前の規定が無視されることは、今までの戦争の例から見てやはり予想せざるを得ない。その意味から私はすべての危険を防ぐためには戦争をなからしめる、戦争の起らないようにする以外に方法はないのでございます。この原子力の管理、勿論戦争の場合には引当にならないということも今御指摘の通りでございます。地上から戦争をなからしめるというところまで行かなければ、私はその危険は去らない。兵器が非常な飛躍的な進歩をしておることも或る意味において戦争をなからしめる一つの原因になりますが、更に進んで人類が一緒になつて戦争をなからしめる協力をする時代に早く持つて行かなければならない。但しそれと日本が今現実に当面して多少の防衛力を持つこととはこれは別でございます。
  114. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連して……。極く簡単に副総理にお尋ねと申しますか、お願いを兼ねて申上げたいと思います。先般外務大臣にアメリカに対して原爆の使用禁止を申入れる意思はないかという質問をいたしましたのに対して、外務大臣は、アメリカにとつては相手国があることだから、一方的にアメリカだけにこれの禁止を申入れる意思はないと、こういう御答弁がありました。それに続いて、それならばアメリカとかソ連とかイギリスとかを限らないで、世界のすべての国に対してこういうことはやらないことにしよう、持たないようにしようという、そういう勧告をする意思はないかという質問をいたしましたのに対して、全部の国にやることなら考えてもいいというような答弁がありました。で今佐多委員の質問に対して、国際管理についてはまだ検討していないというようなことでございましたが、これはこういう直接の被害を三回も受けた日本といたしましては、当然しなければならないことであると思いますので、只今問題になりました危険区域拡大の問題を閣議で御検討になるとき、併せてこの問題を御検討になられまして、この検討の結果を御発表願いたいと思います。  なお続いて一つ申上げたいことは、先般岡崎外務大臣は、横須賀に放射線を抜く相当大きな設備ができておるということを本委員会において発表されました。今亀田委員の質問と関連いたしまして、日本にそういう強大な放射線を除去する装置があるということは、ひよつとするとすでに日本は原子兵器の基地になつているのじやないかという心配があるのです。若しそれがなければ、そういう心配のない状態ならば、なぜそういう放射線を抜く装置を横須賀に設置したか、こういう疑問が残ります。そこでこの問題も質問いたしたのに対して、外務大臣は極めてあいまいな答弁しかいたしておりませんが、これも同時にはつきり検討した上で、併せてそのときに御答弁頂きたいと思います。
  115. 田村文吉

    ○田村文吉君 大蔵大臣ちよつと二、三のことをお尋ねいたしたいのでありますが、第三次再評価を強制なさる法律を近いうちにお出しになるのじやないか、こう思つておるのでありますが、その御趣旨には間違いございませんか。
  116. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 聞違いございません。近いうちに出すことにいたしております。
  117. 田村文吉

    ○田村文吉君 そこで第三次再評価をなさる場合において、私は基本的の問題として、第一今後の物価というものはどのくらいの程度まで下げるとか、或いは現在のままで維持して行こうとか、何か目安がおありになるのじやないか。例えば再評価を現在の実質価額の二割引程度まで再評価を認めようというようなことに伺つているのでありまするが、一体価額の基準或いは今後の物価の基準はどのようなふうにお考えなつているか、これを一つ……。
  118. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 再評価のほうは物価の実基準から出しませんで、再評価の……(田村文吉君「関係がある」と述ぶ)関係はございますが、お話のごとく大体限度額一ばいという考え方も一応ありましたけれども、今回は強制的な意味を持つておりますので、実は限度額の八割にとどめることにいたしております。更に陳腐化の資産などにつきましてはそれよりもなお若干減じてよいということにいたしておりますので、一応物価としては大体この間一貫した答弁になつておりまするような工合に、これからむしろ合理的な生産が行われることになり、経理が一層合理化されることにもなつて、今のような社外分配等が減る部分が相当出て来るのじやないかと思いますから、従つて幾らかという目安は置いておりませんが、物価引下げには相当役立つのじやないかと考えております。
  119. 田村文吉

    ○田村文吉君 そこで今の国際水準に比べまして日本の物価が三割くらい高いというようなことをよく言われるのでありますが、そういたしますと、再評価を現在の時価の二割引程度に再評価をするということになりますと、若し日本の物価が世界水準に到達した場合には、再評価をしたことが一割くらい高く再評価されるということの矛盾を起しはせんか、こういうことを考えるのでありますが、こういうことはお考えになりませんですか。
  120. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 再評価の内容にもよることでございますし、且つ物価もこれは一様にそう申しておりますものの、例えば繊維品でありまして、特に綿製の繊維品のごときものは、そう世界的に高いとは申されません。従いましてまあ一般に申しますれば、二割乃至三割くらい高いのは普通でございますけれども、併しそう高くない部分もございますので、ごく概論的に申しますれば、再評価によつて一割とか二割とかそういう数字を出すことが非常に困難である。但し現在の再評価というものが行われていない部分については、社外分配等が相当多く行われておつて、これが延いて日本の産業の合理化の妨げになつておることは、これはもう絶えず世間から批判されておる通りでありますので、その点を今度の資産再評価でやりたい、こういうやうに考えておる次第であります。
  121. 田村文吉

    ○田村文吉君 過去のすべての物価が上ろう、上ろうとしたインフレ時代におきましては、そういうような考え方もよいのですが、今やデフレになろうとして物価が下ろうというような情勢にあるときに、而も再評価さるべき一番大きなものは鉄、機械、セメント等のものでございますから、国際水準よりは或いは三割どころじやない、四割も、五割も或いは高いかも知れん。そういうもので二割引くらいで再評価なさいます等ということは、すぐに私は矛盾を来たすようなことが起つて来はしないか。こういうことを心配するので、或いは業種によつては成るほとしてよかつたという業種もありましよう。業種によつては強制されたために、とんでもない自分の資産というものを過評価しておくことになりまして、非常に経済のために危い、こういうふうに考えられるのですが、そうお考えになりませんか。
  122. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 個々の業種についてはいろいろ影響が違うかと私は考えますが、私どもはこの減価償却費が再評価の結果大変増加いたしますので、従つてほかの経費の節約とか、企業の合理化等で十分私は吸収できるのじやないかと思う。従いまして余り生産品の価格に大きな影響が来るとは実は考えておらないのでございます。併しこういう経費の節約なり、企業の合理化が行われることが、延いて物価の引下げの方針に副つて行くものであると、こうは考えております。ただ、御承知のごとく今度の再評価、今の強制的なものは八割にしておりますし、それから又六割五分以上の分については、明日法律案を出すそうでありますが、これは無税にいたしております。そんなところでちよつとお示しのような影響がどの部分にどう出るかは個々のものの情勢によつて違うと思います。
  123. 田村文吉

    ○田村文吉君 私は反対に再評価をなさるために減価償却費が殖える。まあ、例えば一番いい例は、国鉄或いは政府の行なつていらつしやる企業等でございますが、そういうものが償却費が殖えると原価が高うなる。原価が高うなるから、値上げをしなければならん、こういうような問題に、逆に再評価のために、すべての原価が高うなつて、物価を上げなければならん、こういうふうな、ジレンマに非常に陥るように考えるのでありまして、この点までの御用意が今度のあれにはございますかどうか、その点を私は伺いたい。
  124. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) この点につきましては、これは西ドイツあたりが率先やつて非常にいい効果を挙げておりますように、一応そういうふうに、いわゆる償却の範囲が非常に拡まるといういい面がありますし、他面私がたびたび申しましたように、それで企業の合理化を促進しますし、又経費の節約をしなければならんようにして参りますから、どうもその点から見て私は物価の面で強く反対の現象が現れて来るとは考えておりません。
  125. 田村文吉

    ○田村文吉君 見解の相違でございますから、私はあまり強いて申しませんが、ドイツのように物価が余り上らないところと、日本のように非常な物価の値上りをしている、今ここに反落時代に向つているときに、こういうものをやつて、特に公共企業に行なつていらつしやるような賃金、料金、そういうものが原価がこうなるからというので上げなければならん、一番いい例は電気、鉄道、そういうものに非常にかかる。これは折角低物価政策をやろうと思つたものが、こういうことをおやりになるために、むしろ高物価の原因を作ることになりはせんか。つまり時代がずれた、二年前、三年前になすつたのならこれはわかつた。今ここに来て再評価の強制をなさるというこは、時がずれているのではないか、こういう心配を持つのであります。併しこれ以上は……。私の一番言わんとするところは、再評価によりまして固定資産の償却を多くするというので、駅実な内容にするという点は非常に結構なんであります。いわゆる一面においては法人税が引下げになる。そういうことになる。ところが私は法人税の四割二分というのは高いと思う。これは実は二重課税で、法人で取られて個人のほうで取られるのだから、こういうものは、シヤウプが勧告したときは三割五分でございましたが、今日日本としては三割くらいに下げて、中小企業も大きいものも皆同じに課税率をつける、こういうふうにすべきが本当であるのに、いろいろこね廻して、こうして非常に税を払うことに対して巧妙な人がうまくやるし、そうでない人は損をする、こういうようなことになることが実は心配なんです。そういう意味でお伺いしたのでありますが、まだそのほかにいろいろ再評価以外にも、大企業のいわゆる儲かる産業には多いのです。そういう点については大蔵大臣はどうお考えなつていますか。もつと素朴に法人税を下げるなら下げる、こう考えるべきじやないか、こういうことを私は申上げたい。
  126. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 実は法人税を下げるということについては、私は全く田村さんと御同感なんです。それでこれは税制調査会のときに私の意見を述べたのでありますが、これはシヤウプの税制勧告三五%というのはなかなか当時の事情として相当思い切つた説であつたが、同時にあれが日本の産業の回復を助けていることは争えないことである。特にそれが四二%になつて、相当いわゆる目に余るようないわゆる社用族が出て来たことも争えないことでありまして、従つて私はできれば、実はこの間のときも四〇にしたいということでしばしば相談したのでありましたが、どうもいろいろな処から四〇にすることすら到当実現を見なかつたことも誠に遺憾に考えております。併し実は日本のような資本の蓄積の足らんところでは、これを減ずるということは資本の蓄積を増加せしむるゆえんでもありますので、又いわゆる社用族退治の一端にもなることであります。私はこれは何か機会があれば是非この点は下げたい。ただ田村さんがおつしやるように、三〇まで下げ得るかどうかはわかりませんが、四〇にすることすら容易でなかつたのですが、この程度は別ですが、下げたいと考えております。世界銀行調査団がこちらへ参りましたときに、日本の税制調整案を見ましてその向うのドール氏の意見としても、先ず法人税を下ぐべきではなかつたかということを言つてつたのであります。そういうことをいろいろ書いたメモのようなものを私のところにくれまして、御参考になるかと言つてくれましたから、実は私も同感なんだ、併し当時の事情から、少額所得者を減ずることのほうがなお急がれるから、止むを得ずこうした。事情は非常によくわかる、特に日本では少額所得者というものは世界的に見て、非常に絶対的な金額が少いのだからよくわかるが、この次には是非これをやるべきであろうということをドール氏も申しておりましたが、この点私も同感なんであります。何か機会があれば是非この点はやりたいと考えております。
  127. 田村文吉

    ○田村文吉君 その問題はそのくらいにしておきますが、やはり関連いたしまして、所得税、法人税の額がとうとう五千億突破するように相成つたのでありますが、昭和十年の二億二千七百万円に比べますると、丁度二千二百倍という倍数になるのであります。ところが国民所得は漸く四百倍に過ぎないのに、この矛盾が国民をして誠に塗炭の苦しみに陥れる結果になつている。政府は毎年減税減税ということを言つておられまするが、私は国民所得に対してはむしろ増税になつている。地方税が又これに伴つて増加してつておるのでありまするが、政府はこの問題に対しまして徹底的な解決策を図る時期にいよいよ到達しているのだ、こういうことを私は考えざるを得ないのであります。そこでまあ第一に国の事業量と地方の事業量を勘案して、公共事業、社会保障、教育事業等を根本的に再検討すると共に、大手術を加える必要が起つているのじやないか。第二番目には、財政投融資の問題でありますが、社会保障の意味でやつている財政投資を私は申すのでありませんが、それ以外のいわゆるコンマーシャル・ベースで立つべき性質のものを、財政投融資というものを多くしていらつしやる、開発銀行等の仕事がそうでありまするが、こういうような仕事はむしろこれをやめて、いわゆる民間の資本で、そういうものはコンマーシャル・ベースで賄うという平常な操作に引戻すということが必要になつているのではなかろうか、これが第二番。それから第三番目には特定産業に対して補助助成を今までやり、又或いは今後そういうことの考えが出て来ないとも限らんのでありまするが、そういうことはやらないようにすることが必要である。それから自衛力の問題でありますが、これは世界各国の水準が大体あるのでありますから、大体この程度を下らないようにする等々によりまして、財政規模を思い切つて一つ縮減することが、絶対に避けられない情勢になつていると考えるのであります。一面又同じ税でございましても、直接税が二千二百倍にもなつているのでありますから、それをどうしても間接税に移行することを考えて行かなければならない。特に奢侈品に対しましてはこれを相当に増額をいたしまして、いわゆる剛健質朴の気風を作興する一面、直接税の軽減によりまして、資本を蓄積するということが必要と考えるのでありまするが、これにつきまして大蔵大臣は、根本的にどういう考えをお持ちになつて、今後の三十年度の予算、二十九年度の実行予算等におきましてどうお考えなつておられますか、ちよつと伺いたいと思います。
  128. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 大体お示しの数字でありますが、ちよつと私のほうで調べた数字を最初から申しますと、所得税、法人税の合計額が二十九年度で四千七百五十二億円であります。全体の租税収入に対しますると五・一六%になつているのであります。従いまして戦前昭和九、十、十一年の平均二二%に比べますと、終戦後はいわゆる直接税中心主義がとられまして、従つて全体の税収入の中に占める所得税、法人税の割合が多くなつたのでありまして、一番多くなつたのは昭和二十六年度でございまして、この時には五六・六%となつたのでありますが、その後直接税を幾らか減税するという方針をとつておりまするので、その割合が漸次低下して来ておるのであります。日本の経済の事情から見ますと、これは田村さんのお話のごとく、実際は直接税の割合がなお高いように私は思います。従いまして漸次これを間接税、特に今お話のありました奢侈的なものの方面へ進むべきふると思いまするが、併しこの間接税の増徴というもおのずから限度があることでありますし、又今度のごとく例えば繊維品で奢侈維維品と言つても、すぐにどういうものか大衆課税だ、大衆課税だというようなことが言われるのです。そうすると中身を調べずに大衆課税だというふうにすぐこれに反対する人があるというような工合でございまして、従つてよほど中身についてのことを調べなければなりませんが、併し大体においてやはりもう少し間接税の方面を増徴することのほうが日本経済の実情に合つたもののごとく私は感じております。  なおその次に公共事業費等でありますが、これはどうも日本の公共事業費という中には治山治水等、根本的な分が相当含まれているので、これを削減するということは困難でありますけれども、やはり国費の按配を行う上から見ると、重点的にこれをやつて効果を挙げるという方面にもう少し頭を注ぐことにして、公共事業費等からの負担は漸次少くして行きたい。まあ少くとも本年以上余り大きい増額をさして行きたくないと、かように考えております。  それから財政投融資につきましては、これは私よく繰返して申します通り、これは私ども漸次少くすべきである、これについては全然反対の御意見もよく伺うのでございますが、これは資本の蓄積が民間だけじや十分でないから、止むを得ず政府のほうで財政投融資をやつて、国策上必要な産業にこれを投融資しておるのであるが、これは漸次縮小するのが本来の姿だということはこれ私たびたび申しているので、本年も一つその考え方を具現したもの、尤も財源関係もありまして、思うに委せなかつた点もありますが、そういうふうに考えております。  それからいわゆる特定産業その他の補助、助成の点であります。まあ造船についてはいろいろ疑獄問題等があつて、誠に不愉快な問題も起つておるのでありますが、せめて金利ぐらいは世界的水準で同じぐらいに……日本だけが足駄を履いておる、よその国では靴を履いているというのでは競争ができないから、金利ぐらいは同じくらいに持つて行きたいというのが金利の補助になつておるのでありますが、これがよく言われているいわゆる竹馬の経済と言われるゆえんでありまして、こういうことはでき得れば漸次これを避けて参るようにいたしたい、かように考えておるのであります。  なお自衛力漸増についてのお話は全く御同感でございます。ただ、現在の日本の自衛力に使つております費用は、国民所得の点、或いは租税のうちに占める部分等から見ましても、世界各国とは比較にならんほど少額であります。併し今日本経済の実情等から見ますと、急激にこの負担が増加することはこれは耐え得るものではございません。従いまして日本国民生活を低下させず、又日本の経済力とマッチした自衛力以上の漸増はこれは断じてやるべきでない。この点は飽くまで自主的に日本の国防は従つて考えらるべきである、かように考えておる次第でございます。
  129. 田村文吉

    ○田村文吉君 余り時間がありませんから端折つて伺いますが、この間の私は総括質問のときにお伺いいたしまして、合理化のために資金を出すというようなことについてはやぶさかではないと、ないが在庫量が殖えるために資金を融通するというようなものに対しては徹底的に引締めなければならんというようなことを仰せになつたと思いますが、実際今日はこういうふうに先行き引締めが行われるということになりますというと、問屋も買控えをする。従つてメーカーのほうでは品物が残つて来る。だから或る程度は、今までは半月もなかつたものが一カ月も一カ月半もストックを持つようになる。こういうことは当然起ることでありまして、こういうことを無理になさるということは非常に財界を混乱させると、こう私は考えておる。むしろ今日は新らしい増設というようなものは少しこの際は差控えてもらつても、そういう経済界に混乱を起させないような方面に注入してやるということが必要なんじやないか。ただ徒らに引締め引締めとおつしやつて、流動資金をただ締めるということはどうも感心しないのでありますが、この間の総括質問の御答弁の中に在庫融資に対してはやらんと、ストックにし対てはやらんというお話があつたので、これも余り現実を離れたお考えのように考えましたので…、私はそうかといつて放漫におやりなさいというのじやない。ないが、引締めつつ弛めつつやる。これは経済に余り混乱を起させないようにして行かんというと、生産というものもとまつちまう。こういうことになつちまつたんじや取り返しがつかん、こう考えるのですが、この点について特にあとで通産大臣にもお伺いしたいのでありますが、大蔵大臣自体がどうお考えなつておるか伺います。
  130. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) これは過日も申した通りどもは丁度オーバー・ローンなどが昨年の末からだんだん増加しておる等の状況に鑑みまして、やはり金融引締めということはこれは強化すべきであると考えております。この点は変りませんが、併し田村さんが仰せになるように、私どもは実は決して正常金融を圧迫するという考えは毛頭持つておりません。この点は繰返し申上げておきます。ただ、今のお話の中に新規事業等は、もうそういう資金は供給せんように、これは同感であります。まあ合理化その他に必要な分については、又日本が特に輸入に待たなければならんようなものについて国内産業でこれを賄つて行くような、例えば化学繊維の拡張等については、これは引続き面倒を見る必要があろうと思いますが、そのほかのものについて少くとも川村さんあたりよくおつしやる過剰投資に類するようなものの新規資金は、これは供給してもらいたくないというので、この点は実は日本銀行のほうにも話してございます。ただお話の点の、いわゆる私が言うと、思惑なんでありますが、思惑というものには、この間から期限も短縮してもらい、そのほか金利も高め、いろいろこれをとめるという方策をとつてもらつておりますが、同時に滞貨というものもこれは自然に今まで起つておる通常なるものについての金融ならよろしいですが、これが若干でも思惑を加えての滞貨融資になりますと、それがために折角この予算等が所期しておる物価の下落等を妨げるということにも相成ります。併し物価下落を急いで業者を傷つけてしまうことになりますと、それは又ひいて生産の萎縮を来して、却つて物価が上るという状況にもなりまするので、それらの点はなかなかむずかしいことでありますが、併し長い経験で金融業者が睨んでおればやれることでありますので、俗に言う緩厳よろしきを得てそのときに臨んでもらいたい。なお金融のことについて大蔵省は一々差出口はいたしておりません。これは中央銀行である日本銀行に大体委しておりますが、併し方針としてのことはこれは絶えず打合せをいたしておりまして、望んでおります。まあそれで現実の問題として正常金融なりその他の面から余り御不自由が起つて来ることはないかと思うのでありますが、尤もこの点についてオーバーローンが起つて来るのは当然なんだから、これを認めて今のまま行けという御議論もあるのでありますが、当然であつたかも知れませんが、又私どもつて来た原因は相当わかるのでありますが、併し健全な状態でないことも明かでございますので、これも一度にとは申しません、一度にと申さんのは、去年の年末から三月末、三月末までの漸次増加しておる実情から見ても、理論を貫いておらんことはおわかりでございましようけれども、やはり方針としてはそういうことで臨んでもらわなければならん、かように考えておる次第でございます。
  131. 田村文吉

    ○田村文吉君 通産大臣からもお答えを願わなければなりませんが、その前に大蔵大臣に申上げたいのは、この間、お話のあつた輸入金融ですね、輸入に対するものに対して或る程度の引締を無論行わなければならん、こういう点はわかるのでありますが、ただ余り急激でないことを望んでおつたのでありますが、今もう滞貨金融というものは、余り大蔵大臣が金融を締める締めると言つておどかしなさるものだから、世の中がすつかりおびえてしまつて、これでは一国の経済というものは成り立つて行かないんだ、こういう点を私はただ放漫におやりなさいということを言うわけじやないけれども、滞貨金融というものは滞貨金融が起る理由があつて起るのであります。オーバー・ローンが起るのはオーバー・ローンが起る理由がある。皆政府が金を吹ひ上げて、そうしてそれを特殊な産業に特殊にお廻しになるようなことをなさるから、今のオーバー・ローンが曲つて来た。こういうような点をお考えなつて、現在のようなおびえ切つた状態にしてしまうということは、私は折角これから復活をし、又今後発展をしようとしている、又原価を切下げて行こうという場合に、こういうことされたのでは、却つてどうも非常に角を矯めて牛を殺すことになるんじやないか。これはよほど大蔵大臣が現実をもう少し認識してもらわなければならない。これには通産大臣から特別の御助成を願わなければならん、こう私は考えるのでありまして、通産大臣はこういう点について特に中小企業におきまして非常に今日は金融の方法がないというようなみじめな状況に立至つているのであります。こういうものをただ中小金融に金を廻せばいいじやないかというような簡単な問題じやない。政府が日銀をしてノーマルな状態にやはり資金というものを融通さしてやらないと、ただ締めるんだ、締めるんだじやいかん、こういうことを申上げたいのであります。大蔵大臣はお急ぎのようでありますから、私は大蔵大臣の答弁はこれで結構でございますが、通産大臣からなおこの点についての御答弁々承わりたいと思います。
  132. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 只今御指摘の点は私は非常に御尤もだと思うのでありまして、実は先般他の委員会におきまして、私が丁度角を矯めんとして牛を殺すようなことはやりたくないというようなことから、いろいろな点について申上げましたところが、そんな弱いことじやいかんじやないかというようなお叱りも受けたような次第でございますが、これははつきりデフレ的な政策をやろうというこの基本線は何としても一つ大きく打出して行かなければならないと思うのでありますが、特に中小金融等に関する限りにおきましては、やはりその措置か緩厳よろしきを得るということが、全体の政策をして効果あらしめる私は要諦ではなかろうかと考えておりますので、大蔵省は勿論でございますが、日本銀行等に対しましても、従来よりも特に通産省としても連絡をよくし、又東京方面のみではございませんで、大阪その他の地方との連携や、情報の交換もできるだけよくいたしまして、適時適切に手が打てるような態勢を漸次整備して参つておるつもりでございます。
  133. 田村文吉

    ○田村文吉君 経本長官として、又通産大臣としてお伺いをいたしたいのでありますが、昨年独禁法が改正されたのでありますが、今日のように日本の経済がかなりに窮迫して参りますというと、私はこの独禁法全部を廃止する時期が来ているんじやないか。と申しますのは、日本の市場は御承知のように余りにも狭いのであります。又資本の蓄積が殆んどないと言つてもいいくらいなのでありまして、あらゆる事業会社が七割は借入金とかその他のもので賄つておるようなことで、自己資金というものは殆んどない。そういうような情勢でありますのに、国が狭くて人間が多い。従つてややもすと事業というものが濫設されますので、少し或る事業が景気がいいといえばすぐそれを真似して産業が興つて来る、こういうようなことでありまして、私はアメリカのような事業とは全然違う。それであるのに未だにこれが残つておる。併し昨年の改正で公正取引委員会の承認を得ればいいんだということになつたんだからいいじやないか、こう一応はおつしやるでありましようが、実は経済のことは非常に時期を急ぐのでございまして、公正取引委員会に行つて、いや社会的に与える影響がどうであるとか、原価がどうであるとかということを調べていて頂くうちに一月や二月はすぐ経つてしまう。実際救済しなければならないときには間に合わない。こういうようなことが多いのでございますので、私はもう独禁法というものは全面的にこれは廃止する時期が来たんだ、日本には合わないんだ、若し仮にこういうことの独占資本或いは事業の集中によつて弊害が起る虞れがあるならば、それに対するだけの手当をすればいいので、今のように全面的に独禁法のようなものが存在することはおかしいんだ、こういうふうに考えるのでありますが、政府はこれを廃止するお考えがありませんかどうかお伺いいたしたい。
  134. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 独禁法につきましては、私私どもといたしましては今廃止するというような意図は持つておりません。只今承わりました御意見は私も御尤もの点が多々あると思うのでありますが、ただ現在のところ、私はこれからの日本の経済の行き方として、自由競争が激化する、企業間において特に不景気、不況等に対処するためのカルテルを結んで生産や販売数量の制限をしたり、価格の維持をするというような共同行為を行おうとする傾向が必ず生じて来るのではないかと思われるのでありますが、若しこのような不況に対処するためのカルテルが安易に許されるといたしまするならば、一連の政策はその施行が妨げられることになるのではなかろうか、今後の経済政策の基本的な動向から見ましても、甚だ好ましくない結果になるのではなかろうかと思うのであります。従つて独禁法上不況カルテルを許すというような場合におきましては、特に慎重な態度を以て臨まなければならない。私はいやしくも安易にこれを認むべきではないと考えるのでありまして、この点からいたしましても独占禁止法は私は存続しておいて頂きたいと考えるわけでございます。併し、と申しまして、例えば原価の引下げとか品質の改善とか企業の合理化とかいうようなことのために、特に必要があります場合において、企業間の一定範囲の共同行為を許すということに現在なつておるわけでございますが、いわゆるかような合理化カルテルにつきましては、或いはむしろ積極的に促進すればいい面もあるのではなかろうかと、こういうふうに考えておるわけでございます。大体いろいろと今申しましたような点につきまして、なおその他についても具体的に考えなければならんところが多々あると思いますが、今後独禁法の運用その他につきましては、これも又特に公正取引委員会との間に通産省当局といたしましても現に十分の連絡をとりつつありますが、今後も更に一層緊密な連繋をとりましてやつて参りたいと思つております。
  135. 田村文吉

    ○田村文吉君 通産大臣がこの点に対する認識余り徹底していない憾みを私は持ちますので、繰返して申上げるのでありますが、今の共同行為によつて価格を維持したり、或いは又生産の制限をするというようなことは、それによつて物価を下げることをとめ切れるものじやないのであります。ということは、日本の経済というものはそんな組織の経済じやない。仮に相当利益があれば、第三者が出てすぐ競争行為をやるというようなことで、おのずから調整がありますので、ただ大きな水が山からどつと降つて来るものをとめどめチェックする仕事をして行くんです。こういう共同行為がないと、この折角の大水のために田畑は全部荒されてしまう。こういうことがあるので私は日本実情には合わないんだ。併し許可があるからいいじやないかということは、さつき申上げたように、これは実際問題として不可能になるのであります。でありますからこの点はもう少しく、甚だ失礼な申分でございますが、いわゆる放つたらかしておくということは、弱小のものが潰れて大きなものが残つて独占が起るということになる。こうならないように、すべての産業に皆その所を得せしめるためにはそういう行為が必要なんだということをもう少し御認識を頂きたいのでありますが、今の御答弁でございますというと、どうも私どもちよつと見当が違うのでありますが、これは大臣のお考えだけでなく、大臣以下皆さんのお考えがそういうところにあるんじやないかと思つて私は非常に心配するのであります。こういう点について更に御検討を私は煩わしたいと思うのでありますが、大臣どうお考えですか。
  136. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 先ほどもお断りいたしましたように、お尋ねの点につきましては私も御尤もと考える点が多々あるのでありますが、ただ現在の、何と申しますか、政策の転換の際におきまして、この独占禁止法の全廃ということまで考えることは、行過ぎと言うよりは、現在の政策の遂行上私は支障がある点があるのじやなかろうかということを、主として私としては考えておるわけでございます。いま一つは根本的な問題として経済の民主化と申しますか、こういう考え方を一つ残しておくと言いますか、その線をここに維持しておきながらその運用上においては、この前の改正のときにも大分実情に合うようになつておりましたので、只今御指摘のようにこれは併し許可すればいいじやないかと言つても、経済の実態に副わんような、遅れたり、或いは見当違いな許可をしたりしなかつたりすることが弊害として挙げられるというようなお話でございますが、こういう運営の面においての改善ということは十分考えるというようなことによりまして、私は弊害は除去されるのではなかろうかと、こういうふうに考えるわけでございますが、なおこれらの点につきましてはとくと研究させて頂きたいと思います。
  137. 田村文吉

    ○田村文吉君 電力料金の値上げが申請されておるようでございますが、固定資産がだんだん高くなるので或る程度値上げしなきやならんということもわからんではないのでありますけれども、何分すべてが低物価政策を唱えておる今日でございますのと、電気会社自体は昨年の冬以来暖冬異変で割合に水力に恵まれて来られたのでございますから、少くもここ一年くらいは値上げというようなものは遠慮してもらいたいと、こういうふうに私考える。又これがされませんということは、日本の低物価政策を幾ら唱えても事実はできんということになるんじやないかと、こう思うのが一つ。それから現在でも東北、北陸方面の水力地帯でありますね。そういうものが水火力調整金という名前で、いわゆる水力を持たない地方に対して数億円の金を毎年とられるような制度になつておるのであります。こういうような、いわゆる東北であるとか、北陸であるとかいうような、誠に天恵に恵まれない地方におきましては、せめて持つているこの水力電気によりまして幾らか生産の条件をよくしようと、こういうふうになつておるのにかかわらず、こういうことがございまするというと誠に遺憾に存じまするので、水火力調整金は近いうちに電気法を御改訂ですか、新たにお作りになる場合に、こういうものは御廃止願うべきが当然だと思うのでありますが、東北、北陸等の、そういう誠に恵まれざる県に対して水力を特別に暖かい恵まれた地方と成るべく平均にするというような考え方を、これは変えて行くべきだ。従つて水火力調整金というようなものを今までやつて来たこと自体が非常な搾取をやつて来たと、こういうように私は考えておる。この二点について大臣の御答弁を頂きたい。
  138. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 電気料金の問題につきましてはこれまでもしばしば私も申上げる機会があつたかと思いますが、只今の御指摘のように、私といたしましても、これを今日の状態におきまして上げる、これは不適当ではなかろうかと考えておりますが、それに代る方法、或いは今後に処する対策等につきましては、丁度各地において開かれました聴聞会等も漸次終了いたしますので、これら総合的な各方面からのいろいろの考え方を集結いたしまして、不日はつきりした政府の態度を打出したいと思つておりますが、只今の御趣旨につきましては私も賛成でございます。  それから水火力調整金の問題につきましては、只今お話がございましたように、電気事業の再編成によつて急激に料金の地域差が生ずることを避ける、産業と国民生活に及ぼす影響を緩和するというようなことで設けられたものであるわけでありますが、その後の状況によつて漸次縮減すべきものであると考えるわけであります。ただ現状から見まして、これを直ちに撤廃するというようなことは、現在以上に地域差を深めることになりますので、漸次漸進的にこれを縮減するという方法をとつて参りたいと考えております。
  139. 田村文吉

    ○田村文吉君 地方自治庁長官にお尋ねしたいと思います。地方債並びに借入金の最近の総額は如何ほどになつておりますか、又そのうちに民間の資本によつておるものはどのくらいになつておりますか、又毎年、最近の二十九年度の予算においてどのくらい利子をお払いになつておりますか、ちよつと数字を承わりたい。
  140. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) 二十八年度末におきます地方債の総額は三千五百億でございます。この中でいわゆる民間資金によつております公募の分が四百億ございます。それからして三十九年度予算に、以上申上げました総額に対して予定される利子が二百二十億でありまして、この二百二十億に元金の償還を含めて全債費としてが大体三百八十五億というものを二十九年度予算には計上いたしておるわけでございます。
  141. 田村文吉

    ○田村文吉君 四百億が公募でございまして、百億はそうすると民間と承知してよろしいですか。三千五百億の総額の中で公募の分は……。
  142. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) 四百億。
  143. 田村文吉

    ○田村文吉君 四百億。そうするとその他のものは………。
  144. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) 預金部資金。
  145. 田村文吉

    ○田村文吉君 預金部資金でありますか。そこで私は長官に伺いたいのでありますが、国は現在五千億くらいの国債を持つておると思うのでありまするが、今年度の予算の大体半分であります。その上から言えば、地方自治のほうでも九千数百億の予算に対して三千五百億くらいあつてもいいのじやないか、こういう答弁が出るかも知れませんが、毎年国債のほうではこれを発行しないように努力しております。地方のほうでは数百億ずつの公募を許しておるということで、地方というものが非常に借金が殖えて来ておるのであります。これは地方へ行けばそうでありますし、又個人になるとますます借金が殖えて行く。こういうことで国だけは余り借金が殖えない。こういうような非常な矛盾した状態なつておるのであります。今後こういうような借金政策を地方自治にやはりやらして行つていいものかどうか、こういう点について長官のお考えを伺いたい。
  146. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) 恐らくお尋ねは今後の地方財政を非常に御心配を頂いておる気持から出ておると思うのでありまして、先日も実は小林委員のお尋ねのときに、自分は今の地方財政の年々の財政計画の上に地方債というものが大きな財源として考えられておる行き方に非常な疑念を持つておるということをお答え申上げておつたのであります。今のような状態で、現在の状態ではそんなに心配する状態ではないと思うのでありますけれども、御指摘のように、毎年こういうような状態を繰返して行くということになれば、非常心配される事態が出て来ると思うので、そういう点も考慮に置きまして、今後何年後くらいにはどうなるかということをいろいろ検討いたしまして見ておるのであります。昭和四十五、六年というところに大体なると、今申上げましたこの元利償還千五百億ぐらいというものが必要になつて来る、そういうような状態なつたら、これはまさに御指摘のように、地方財政の危機であると考えております。過去において、昭和七年にこういう状態が一度あつたように記憶いたしておるのでありまして、そのときには振替えして、利子の安いものにしましたり、期間が、期限が来ているものを延ばしたというような苦い経験があるわけで、ありますが、そうならないように実は私は非常に心配をしておるわけです。で今年の三十九年度の財政計画の中では、そういう点も考慮いたしまして、相当固有の財源になる部分を殖やしたわけでありまして、税収入なんかも今まで三二、三%の歳入総額においての比率が、今度は三九%近くまで持つて行くというような措置を講じたわけであります。併しなおそれで十分あるとは考えておりませんので、今後御指摘の点を十分頭に置きまして、逐次こういう起債の枠による地方財政の賄いというものは、十分先の見通しを頭に置きながら訂正をして参りたい、こういう考え方をいたしております。
  147. 田村文吉

    ○田村文吉君 これは大蔵大臣にも前にお尋ねいたしたのでありますが、これは国の財政、地方の財政その根本的な建直しになるのでありますが、現在のように公共事業でありましても、教育でも、社会保障でも、すべて国がやる。そこで国がやるのだが、その元はやはり地方から請願、陳情があつて、国も或る程度せざるを得ないということでやるのでありますが、その結果は、結局地方財政は又そのお供をして行くということで、地方財政の窮乏の一つの原因にもなつていると、そこで根本的に考え方を変えて、もつと地方というものに権利を持たせるといいますか、地方自体が土地の改良にいたしましても土木その他の事業、或いは社会保障等のことにつきましても、或る程度の税を得て、そうしてこれをやつて行くと、而もこれが国家的なものであるから国が或る程度を助成するという程度にとどめて、地方がもつと主体性を持つようにして、このような事業を遂行するということが極めて経済的になるんじやないか、こういうことを考えるのでありますが、これは私の研究が足りませんのかどうか知りませんが、こういう点について、私はこの問題は大蔵省と自治庁との根本的な問題であると私は考えるのですが、今のように、先刻も伺つておりますというと、国でやりました公共事業の二千何件のうち、五百何件に若干の不正というものが起つておる、こういうようなことを私は防ぐには、どうしても地方というものが主になつて事業をやると、国はこれに対して若干の補助をやる制度と申しますか、そういうような制度のほうが、悪いことも行われにくいのじやないかと思う。又県民とか市民とかいうものが、町民というものが、目の前に見ている仕事のほうが、よほどそういう点において経済的に金を使つているんではなかろうか、こういうふうに考えるのでありますが、長官はどう言うようにお考えになりますか。
  148. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) お尋ねの点は、現在この勢がいろいろいたしております仕事の全般について、一概には申せないと思うのであります。例えば公共事業にいたしましても、地方が一般単独事業でいたしておりますような仕事は、お考えがまさに私は当つておると思います。併し災害等の場合に、一部分地方が負担するというようなものもある場合には、必ずしもそう行かないのでありまして、ただ考え方としては、大体は御指摘の考え方に私も同感でありまして、仕事のうちで、地方が主になつ考えられる性質の仕事が、確かに相当あると考えられる。そういうものは地方にいつも重点を置いて、地方に主体を置いて考えて、従つてそれに伴つて、地方財源というものも、そういうものを頭に置きながら考えて、そうして地方が独自の財源の中で、勿論独自の財源と申しましても、全部独自の財源をすべての地方団体にというわけには行きませんが、勿論今の交付税制度というものも一緒に考えて、とにかく地方が独自の財源の中で、この程度はできるという範囲内で、仕事をやるという仕組に持つて行くほうが、確かに私も考え方としては健全であり、又浪費を防ぐという意味においても、非常に有効な方法であるとも勿論考えているわけであります。勿論現在の状態は、地方に仕事がありますときには、必ずそれに伴つて一応地方財政というものの措置はいたしているわけになつているのでありますが、必ずしも十分ではない面が多々あるわけでありますから、考え方としては、自分も御指摘のような方向に逐次地方財源の運営の考え方をいたして参りたい、ということに考えております。
  149. 田村文吉

    ○田村文吉君 市町村民税の賦課方法が、細かく言いますと五通りもあるそうでありますが、そこでこれは税制審議会におきまして、まあ或る程度こういうものまで統一はしないで、地方自治に任したほうがいいであろうというような答申も出ているようでありますが、私は誠に極端な例でございまするけれども、頂いた資料で拝見いたしますと、年額二十四万円の収入で、三人の家族の給料生活者で、東京、大阪、名古屋等の大都市では、年額四千二百八十円という市民税を払つているのでありますが、東北、北陸等の雪害地帯並びに人口の割合に稀薄なところ、僻阪の地でございます、そういうところでございますと、大体年額同じ収入に対して八千円、或いは多いのは一万一千円、こういうふうに払つておられるのであります。二倍或いは三倍の市民税を払つている。町村民税も同じであろうと思うのであります。そこで所得税の原税に対しまして、少ないものは二割ぐらいで済んでおりますが、多いものになると五割も払つている。こういう非常な不公平が出ているのでありまして、そういうものには関係なしに公務員の地域給というものがきめられている。誠に矛盾した話ではないかと、私は考えているのであります。私は無論これにはその地方の財政の窮乏というような問題も、無論あるにはあるのでありますが、先ず第一に市町村民税の賦課方法というものを一定にして、そうしてその範囲内において、一割のものは八分とか、八分のものは六分とかいうようにいたして、お互いにそういうものは市町村の間、或いは国の間でもこれを公表して自粛する、こういうようにやらしたほうが、地方、自治というものは完全に行くのじやないか、こういうふうに考えるのでありますので、これはむしろ一定のオプションの一なら一、オプションの二なら二というものに、これは理論があるでありましようから、御検討の上でおきめになりまして、一つの率にして、お互いの市町村の間で自粛し合う、こういう制度をおとりになることがいいのじやないか、こう思うのでありますが、お考えはどうでありますか。
  150. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) お尋ねの点は私もしばしば検討して見たことであるわけなんでありますけれども、ただ今の地方財政というものの考え方は、勿論税というものを、或る基準を与えて、これの範囲でとるようにということにいたしておりますけれども、やはり標準税額があり、その上に制限税率というものがあつて、やはり自治団体に或る程度財源の余地、余裕というものを残して置くという考え方になつているわけであります。又そうなつておりませんでも、一定のぴちつと国税のきまつた率で、どこでもとらなければならんというと、個々の住民が納得をされて、当該自治団体のために何かしたいという場合に、ゆとりが全然つかないということになつてしまうわけであります。そこでまあ一応の標準のものを出しておいて、その上下は当該自治団体の議会が判断をしてきめて行く。それで今御指摘の市町村民税のいろいろな方式でありますが、どういう工合なものをおつしやつたか、ちよつとわかりかねるのでありますが、大体この市町村民税の課税の標準は、御承知のようにオプション一、二、三と三つあるわけでありまして、各自治団体がどれによつてつておるかということを調べて見ますと、都市は大体第一方式によつておる。それからして農村地帯が大体第二方式によつておるということになつておる。まあ第二方式によつているものが非常に多いことは多いのであります。併し都市なんか依然として第一方式によつておるということを見ますと、やはり個々の自治団体によつて、課税の便宜やなんかで、必ずしも一本でないほうが、非常に自治団体のためにいいのじやないかとも思われる面があるわけでありまして、ただそのことのために、御承知のようにこれらが基礎になりまして交付税の額というものがきまるのでございますからして、余計とつておるから交付税が少いということになつてはいけませんからして、基準財政収入額の算定のときは、これは全部御承知のように第一方式で統一をしておる。従つて第一方式で統一をして、基準財政収入額を算定しております以上、第二方式で以て第一方式よりも余計とられておる市町村、自治団体があるとすれば、それは当該市町村の何かの面で住民に還つて来ておるのじやないかというまあ考え方をいたしておりますので、必ずしもこれが今すぐに統一をするほうがいいかどうかという点になりますと、まだ、にわかに結論が出しかねて、今度の改正におきましてもこのままでおいたわけであります。なお今後十分検討して行きたいと考えます。
  151. 田村文吉

    ○田村文吉君 ただ、今申上げたのは、一つの都市は一万一千円……、二十余万円の所得で一万一千円払う。で東京とか、大阪とかいう大都会になると、四千三百幾らかで済むというようなことは、如何にもどうもまあ知らなきや知らないでいいのですが、わかりますと非常に不愉快な感じを持つのでありまして、つまり貧乏なところほど税金を余計払わなきやならんという、その原因はどこにこれは起因しているか。こういう点が自治庁としてお考えを頂かなきやならん問題じやないかということを私は考えますが故に、先ず課税方法をきめちまつて、その制限率の以内において、或いは少いところは少くしておけばいいし、多いところは多くしておけばいい。とにかく方法だけは一定にしておくということが必要じやないか。又今の地域給なんぞの問題は、これは人事院の問題になるのでありますが、地域給の問題などは、こういうことはちつとも考えていないと私は思うのであります。こういう点が非常に大きな……、或いは東北であるとか、北陸であるとかという辺陣のところは非常に大きな負担を背負つているのですから……、ということを、一体その根本の原因はどこから来ているかということを、私は知り、従つてこれに対する対策を考えなきやならん、こういう意味で私はお尋ねしているのでありますが、根本の問題はどこにあるのですか。
  152. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) これはまあ根本の問題がどこにあるかということであれば、恐らく田村委員の御指摘になつておりますような東北とか、或いは北陸というようなところの一般的な、恐らく自治団体財政が楽でないということにあると思われます。それと同時に過去、それが長い間繋がつておるものでありますから、自治団体の財政が楽ではないにかかわらず、しなければならない、又はしたい仕事が非常にたくさんあるということにもあると思うのであります。従つてそういう方法で以て税収を上げながらも、なお且つ十分仕事もできないでおるということに原因があると思うのでありまして、ですからその面を今の制度の上では、先ほど申上げましたように、税を余計取られておるからして、国が面倒を見る部分を少くしておくということにはなつておらんのでありますが、これは併し全体として考えて、私も何らか東北或いは北陸あたりの自治団体というものには考慮できる面があるのではないかという、漠然たる考え方は持つておるのでありますが、なかなか理窟がついてこうこう数字で、これくらいのものはよく面倒を見るというよう考え方が、なかなか出て参りませんので、考え方としては漠然として、いつも疑念を持ちながらも、まだ具体的な解決策が得られないでおるわけであります。
  153. 田村文吉

    ○田村文吉君 人事院は見えておられますか。帰られましたか。今の問題、若し人事院でそういうお考え…、考慮されているかどうかということを、若しわかりましたら聞きたいのです。
  154. 青木一男

    委員長青木一男君) 帰つて、おらんようでございます。
  155. 田村文吉

    ○田村文吉君 ああそうですか。それならばよろしうございます。  私は最後に農林大臣にお伺いいたしたいのでありますが、極めて素朴な質問なんでありますが、先般同僚議員からお伺いいたしたのでありますが、そこで私は或る程度年度を切つてちよつとお伺いしたい。  昭和二十四年から今年二十九年でございますが、丁度五年でございますが、どのように今年度は、二十四年に比べて、米、麦、いもは殖える見込をお立てになつておりますか、先ずそれを伺いたい。
  156. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) ちよつ私御質問の要点が…。
  157. 田村文吉

    ○田村文吉君 書いて差上げたつもりでありますが、参つておりませんでしたか。二十四年とこの二十九年の生産見込ですね、米、麦、いものどういうふうに変つた、殖えておりますか。それをお伺いいたしたいのであります。
  158. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 二十四年、米から申上げます。大体この生産の逐年の情勢は、米につきましては、二十四年、六千二百五十五万石、三十五年六千四百三十三万石、二十六年六千二十七万石、二十七年が六千六百十五万石、二十八年が五千四百九十二万石、二十九年は……。
  159. 田村文吉

    ○田村文吉君 予想……。
  160. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) これは大体平年作を予想するはかなかろうかと思います。約六千四百万石と推計すべきだと思います。  それから麦につきましては、二十四年、二千五百八十万石、二十五年、二千五百六十八万石、二十六年、二千八百六十一万石、二十七年、二千八百九十万石、二十八年は二千七百二十九万石。
  161. 田村文吉

    ○田村文吉君 二十九年の予想もやはり平年作として……。
  162. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) ええ。大体これも二千八百万乃至二千九百万。  甘藷は二十四年が十五億七千万貫、貫でございます。二十五年が十六億七千万貫、二十六年、十四億七千万貫、二十七年、十六億五千万貫、二十八年、十四億三千万貫、でこれは統制の関係もありますけれども、まあ大体十六億貫乃至十七億貫が、豊凶によつて動きましようけれども、そのくらいに見られるのであります。  馬鈴薯は、これは逐年のを調べておりませんが、二十四年が六億四千万貫、そこで二十八年が六億八千万貫、これも六億乃至七億万貫と、一応予想しております。
  163. 田村文吉

    ○田村文吉君 それは時価に見積つてどのくらいの金額になりますか、御算定になつたものはございませんか。
  164. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) あります。ありますが………。
  165. 田村文吉

    ○田村文吉君 二十四年と二十九年の生産見込でよろしうございます。累年のはいいです。
  166. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 価格が大分動いておりますので……。
  167. 田村文吉

    ○田村文吉君 現在の……。
  168. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 現在の価格に換算してですか、ちよつと資料が…。
  169. 田村文吉

    ○田村文吉君 出なければ結構です。今度五年たちましたあとに、これは昭和三十四年、それに対して農林大臣はどのくらいを米、麦、いもについて生産される予定が立てられますか。全然予定が立ちませんか、それをちよつと伺いたい。
  170. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 御論議を頂いております、農林省で立てておりますいわゆる食糧増産五カ年計画でございますが、その目標といたしておりますのは、米麦換算で、三十二年度には、農地関係の増産対策によつて約一千百万石、耕種改善によつて四百五十万石、両方合せまして千五百六十余万石の増産をいたさなければ食糧事情は非常に困難な事態に当面するのじやないか、こういうふうに心配をいたしております。
  171. 田村文吉

    ○田村文吉君 二十四年度から食糧増産費に御支出になつた費用は、全額、この間の同僚議員に対してお答えになつたのは約二千億というお話でございましたが、数字に間違いはありませんか。
  172. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 二十九年、来年度までのを含めまして、土地改良等農地に関する面について国家が支出いたし、且ついたすべきものは約一千五十億、耕種改善等の食糧増産費に出しますのが九十億前後、これに地元負担に対する融資の措置としていたしております農林漁業金融公庫等のいわゆる融資措置、これが来年度までを合せますると約四百億、従いまして千五、六百億が中央から地方に流しております食糧対策の費用でございます。
  173. 田村文吉

    ○田村文吉君 併せて伺いますが、それは地方の支出はどのくらいに見たらいいか。それから今の千五百億とおつしやるのは、何年から何年までの支出ですか。
  174. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 国から支出いたします分が五五%に相当する、地方庁で負担しておりますのが一〇%、加元負担が約三五%、従つて、この千五百億の使途になるわけでございますが、このうち、尤も融資分の四百億内外は地元負担に対する融資措置なつておるわけでございます。ですからその分が減ります。
  175. 田村文吉

    ○田村文吉君 千五百億は何年からいつまで。
  176. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) これは終戦後でございます。
  177. 田村文吉

    ○田村文吉君 終戦から全部ですか。
  178. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) ええ。
  179. 田村文吉

    ○田村文吉君 ちよつと伺いますと、甘藷などは産額が減つておるようでありますが、甘藷などは比較的に増産が容易でありまして、倍額に増産することも著しく困難ではないというようなことを聞いておるのでありまして、農林大臣もいわゆる人造米に対して努力をせられておりますが、それに対してとかくの議論も出ておるようでありますが、どんな形でもいいから、食糧の自給というものをどうしても完成しなければならん。こういう点から考えて、人造米であろうが、甘藷であろうが、こういうものにどんどん力を一つ入れて行かなければならん。単に食糧の増産というだけではないが、同時に有畜農業を発達さして、畜産の増加を図り、又漁獲高も殖やし、又一面において、今のような甘藷等比較的容易に増産のできるものをこれを食糧に振替えるというようなこともなさる、つまり二通りの途があると思うのですね。一生懸命で米麦の増産をなさることと、それから一面において、食生活を或る程度改善して行く、この二つの問題をどうしても日本国民としては解決しなければならない時期に迫られておるのに、未だ、私どもは誠に残念でございますが、農林大臣からいつになつたら食糧のあれはできます、平年作において自給自足ができますと、大抵の見当見通しがここ八年の御経験から出て来そうに思うのでありまするが、どうなんでしようか。いつ頃になつたら食糧のそういうような総合対策が先成して、食糧自給の域に達することができるか、どうしても不可能か、不可能ならば止むを得ないですが、どういうことになつておりますか。それを一つ承わりたい。
  180. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 食糧問題の考え方につきましては、私も全然同様にです、一面とにかく作つても作つても足りない状態でございますから、無論増産の手を緩めるべきではない、同時に又従来の特殊性をそのまま考えておつたんでは、これ又いつまでたつても解決するときがない。そこに食生活改善の急務なるゆえんがあるわけであります。そういう両面からものを考えるわけでございますが、然らばいつ頃一体日本の食糧というものは外国の世話にならんでやつて行けるか、私ども無論農林省内部の計画にとどまるわけでありますけれども、二十八年から十年間の後には総合的に、只今お話のような趣意に従つて、総合食糧の自給体制を整えたい、こういう内部計画の下に進めておるわけでございますけれども、その中間目標として計画をいたしておるのが五カ年計画であるわけであります。この五カ年計画も、御承知のような財政事情のためにかなりの圧縮をされておるわけでございます。私ども農林省として、食糧当局として考えておりますのはそういうところを目標として考えております。
  181. 田村文吉

    ○田村文吉君 三十八年になりますということは、相当日本人口が増加しておりますが、そういうものを見込んでの御勘定と思いますが、そういうふうに了承してよろしうございますか。そこで私は農林大臣にお尋ねしたいのでありますが、農林当局の間でそういうことを考えておる、こういうことでございまして、私は日本国民としてはもつとはつきりとこれに対する認識と希望と自覚を持つて進んで行くべきだ。それについて予算というものもきまるし、増産も達成されるのだ。ただ私ども五カ年計画を伺い、又専門の方々から或る程度お話は伺うのでありますが、昭和三十八年になつたならば日本の食糧は絶対に自給自足できるように、農林当局としては今最善の努力をしているのだ。これについては先ず五カ年の計画を講じているのだ。今後はこういうふうにして米はいくら麦はいくらということになり、なお有畜農業と畜産はどのくらい殖える、或いは又水産はどのくらい殖える、又かんしよ、人造米はどういうふうにできるというようなことは、やはり国民に明らかにしてこれを訴えて、そうしておいでになることが政治の大事な要諦じやないか。こういうふうに考えるのでありますが、私はいたずらにただ机上プランを作つてそれで満足するという意味でなくて、そういう理想というもの、ゆめでございますか知りませんがそれを国民に持たせて進むべきじやないか。こういうふうに考えるのでありますが、農林大臣はどうお考えなつておりますか。
  182. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 私ども同様に考えておりまして、従つて畜産振興に対しましても、十年計画を以て進めて参つておりますし、そのことは無論今日までしばしば発表もいたしているわけでございます。今日私只今ここに資料を持ちませんけれども、それぞれ発表もいたし、ただ併しながら更にお話のように食糧に対する広く全国民の理解を得てこれらを達成して行かなければならん。そういう理解の度を高めるという意味も加わりまして、内閣に食糧対策協議会、これは当委員会でも有力な御発言があつたわけでございますし、設けてできるだけとにかく食糧の問題でございますから、国民のこれこそもう納得と理解と協力を得なければ解決することはできないわけでございますから、私どもといたしましてはすべてを赤裸々に国民の前に示しまして御協力をお願いいたして行きたい、こういう考えでおります。
  183. 田村文吉

    ○田村文吉君 最後に、今のような御趣旨であるのは結構でありますが、なかなか大臣が考えなつているように世間には徹底しておらん。例えば食生活の改霊一つにいたしましても、あちらの婦人会でこういう説を唱える場合もあり、あちらでこういう説もあるということは聞いております。聞いておりますが、もつと一つ農林省としてはこの食生活の改善につきまして、合理的で可能性のあるそういうような問題をもつと太い線で打ち出して頂いて、国民をおのずからそれに向わしめるということが必要なのじやないか。私はそれを非常に痛感してもう三、四年前から非常にやかましく申しているのです。さつぱりいろいろお話はあるのでありますがなかなかそれが行つていない。或いは厚生省の所管であるとか或いは農林省の所管であるとかというようなことを言つているのです。そういう問題こそは先ず早く一つ根本をきめて、そうしてお進みになるべきじやないかと思うのであります。そういう点について所信を伺つておきたいと思います。
  184. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 極めて抽象的な言葉ですが、私といたしましてはそういう見方から国民の皆様にお願いをいたしております点は、何ほど増産に力を入れましても、米のみによつて日本の食糧を解決するということは困難である。而も米は国民の約半ばを占める農村及び農民を支える大事な農家経済の支柱となるものでありますから、従つて、この米の値段というものは相当高いものだということは、消費者におかれてもよく御理解と御協力をお願いいたしたい。同時に又米以外のものにつきましての、主としては麦でございますが、或いは麦のままで消費するなり、或いは加工消費をするなり、この麦に対する消費をどうしても普及して行かなければならん。殊に私どもとしましては、来年度の予算にもその傾向を表わしておると私は申上げるほかはございませんけれども、そういう麦食を普及奨励、御協力を願うために、どうしても酪農の急速な発展を促して行かなければならん、こういう趣旨で施策を講じているわけであります。  先ほどちよつとお話もございました人造米に対しまする私の考えは、今日外米に対しましても、消費者自身においてかなりの批判がある。私どもも日日頂いておつてそういう感じを強くしているわけでございますが、これが今日は貿易状況からいたしましても、かなり国民経済を圧迫しているわけで、このいわばまずい外米に大きく頼るということを一時に切り落すというわけにも無論参りませんけれども、並べてみて外米と人造米と、人造米も私は相当品質の改良が今年度あたり行われる期待をいたしておるわけでございます。とにかく米食主義を一遍に切り換えるというわけには無論参らん、外米も或る程度入れなければならん、これはもう申すまでもありませんけれども、何とかこのまずい外米に代り得るような人造米が消費者に提供せられるなら、外米のいいかたは無論外米を召上つて頂く、人造米でいいかたはへ造米を食べてもらう。そうすることによつて、先ほどお話の、いもから生じまするところのでん粉等によつて、大きな食糧上の寄与をして行くということ等に考えをもちまして、人造米に対しても奨励策を講ずるという態度をとつているわけでございます。併しまあどうも好き嫌いがございまして、いやもうそんなものを奨励するのはとんでもない話だというようなことで、食わず嫌いでもございますまいけれども、食われた結果が悪かつたから、そういうこともあろうと思いますが、片方を押すと片方からやかましく言われる。これは食糧ですから当然のことだと思うわけです。彼此勘案して、併し全体のやはり食糧需給策をそういう困難にぶつかつても進めて行かなければならん。こういうふうに私は考え、そういうことに対する特に消費大衆の理解と御協力を得るために、或いはお話のように、私どもの努力がまだ足りないところがあろうかと存じますから、意の点は十分一つ考えて施策の上に講じたい、かように考えております。
  185. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちよつと今の問題に関連して。農林大臣の御説明の中に輸入食糧、特に外米の輸入数量ですが、新らしい外貨予算の編成によつてこれが更に相当変化するのかどうか。その場合外米の輸入が減るのじやないかと思いますが、減つた場合に、今のお話の人造米によつてそれを代替をするというような意味で、人造米を配給の米の需給の中にお考えなつておるかどうか。その辺のことについて或いはお考えになる用意があるかどうか。
  186. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 外貨予算の最終的なまだ結論がつかないでいるわけでございますが、一応の私ども考えといたしましては、多少操作上の工夫は要するものとは存じますけれども、大体は百十四万トンでございますか、その買付到着は行われるようなことを是非やらしてもらいたいということは今日希望いたしているところでございます。大体できるだろうと思つておりますが、併し人造米を米の需給計画の中に入れるという考えは持つておりません。どちらにいたしましても十五日の配給でございますから、あとの十五日はどうしても何か消費者は工夫を願わなきやならない。そこでまあ麦に入つて、頂けばこれに一番こしたことはございませんけれども、いろいろの手を尽して、そうして消費者が一番御都合のよろしいものを選択工夫をして頂くようなやはり食糧を供給をして行く。そういうところで私は人造米もそういう役割の一つの中にとりあげられる価値がある、又今後ますますこれは研究、或いは工夫によりまして品質の改善も行われて行くということは確信いたしておりますから、相当の寄与をなし得ると考えますけれども、併しこれを直ちに外米の輸入節減を図つて需給計画の中に入れて行く、或いは配給計画の中に入れて行くということは、今日は私は全然考えておりません。
  187. 青木一男

    委員長青木一男君) 三橋君、今大蔵大臣と厚生大臣すぐ堪えますから。
  188. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 先ず大蔵大臣にお伺いしたいと思いますが、今提案されております補助金等臨時特例に関する法律案が若し改正成立したとしたならば、補助金に変化が起りまして該当法律に示しております事業或いは施設、それらを施行して行きますにおきまして重大なる影響があると思うのでございます。こういうような見地からいたしますると、あの法律と密接不離な関係にあります各委員会に付託いたしまして、十分慎重審議すべきものであると思うのでありますが、それにもかかわらず一括して提出したことはどういう理由によるのでございましようか。
  189. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) これはあのうちに三十三ぐらい法案があるかと存じます。それを各省に分けていろいろ御審議を願いますると、実は説明にも人が足らんというようなこと等もいろいろ問題が起りまして、従つて成るべく一括して出してくれ、特別委員会を作るからということでございましたので、それで一括して出して衆議院では特別委員会ができまして御審議をお願い申上げている。但し必要な省がそこへ出ましてそれぞれ説明御答弁も申上げている、こういう次第でございます。
  190. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 成るほど提出法案は二十三あるようでございますが、そのうちの十三は議員立法によつて成立したものであります。政府のほうから提出して成立したものは十でありまして、議員立法のほうが断然多いような気がするのでございます。政府は従来から予算を伴う議員立法は抑制しなければならないというような意図から考え出たものでありますかどうか。若しそうだとすれば、この立法権というものを侵害するのではなかろうかというような感じがいたしますが、御所信は如何でございますか。
  191. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 勿論政府としましては新規の歳出増加を伴うとか、或いは歳出を伴うものは予算の編成権等の問題もありまして望むところではございませんが、併し国会で御修正になりますとか、或いは国会御提案になるものはそれぞれ国会の権限によるものでありまして、これを何らおとめするという考えは持つておりません。併し今度の考え方は実は別に議員立法だからどうという関係では全然ございません。その点はさつき二十三件のうちにたまたま議員立方かかるものが十三件ある、これだけでございますが、実は補助金の整理の事柄についてはむしろこの国会内でも一時世論とも言うべき相当強い要望がありまして、各種の補助金を整理しろ、こういう補助金をたくさん出しておつても先へ行けば殆んど二階から目薬ぐらいの程度で何ともしようがない。而もそれがために地方費の膨脹を来たす云々等の御意見等も相当ございましたので、従つて今度の予算では大体件数で百、金額で六十億ばかりの予算を少くすることにお願いいたしているのであります。そのうちで今度の二十三の法律で大体三十億円の予算の節減をお願い申上げている。但し議員の御立法の分も含めておりますので、又日本の財政事情が許せば又そのときのこともございますから、当分の間これを停止するという考え方で皆様の御審議をお願い申上げておる、こういう事情でございます。  従いまして勿論政府は出ておりまする法律について、それに基いて予算を編成すべきことは当然でございますが、同時に国会で承認を得られるであろうと見込みます分につきましては、それに基いて予算を組みますこと、これは従来とも政府がやつて来ておりますことで、このことは三橋氏も御承知のごとくに、今度こういうふうに増税するのだということを歳入の見込を立てて、そうして予算を組んで増税案をお出ししております。そうして今度こういうふうに減税するのだというときは、減税案の見込を立てましてそうして減税についての歳入の減を見込みましてその法律案を又別個に出している。こういう次第でございますので、今回の分もそういうわけで何等国会のほうの審議権、立法権に対して、これは特に御協賛をお願い申上げておる次第でございまするので、触れるものではない、かように考えております。
  192. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 補助金を大別いたしまして、法律に基く補助金と、法律に明記されておらん補助金とあると思うのでございますが、その割合はどのぐらいになつておるのでございましようか。
  193. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 法律にらない予算による補助金が圧倒的に多うございます。それは例えば公共事業の補助金は非常に大きいのでございますが、これが法律による義務的なものにはなつていないようなものが大部心でございます。
  194. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 あの臨時特例に関する法律案の中には当分という文字を皆使つておりますが、あれは近い機会に現行通り復元するという意味があるのでございますか。又復元するとしたならばあの当分という期間はどのくらいを考えておられるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  195. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) これは本年度の予算の編成方針として申上げましたときに、大体こういうふうに物価の五分乃至一割の引下を国際収支を合すためにやつて行く。併しこれでは恐らくまだ初期の目的を達しなければ三十年度も同様にやりますし、三十一年度では三十一年度全年かからんうちにこれは是非国際競争力を持つところまで持つて参りたい。こういうことをしばしば御答弁申しげている次第でございます。従いましてまあ当分の間ということは実はそのときの情勢の判断にもよることでございますが、情勢によつて半年でも当分の関ととれるし二、三年でも当分の商ととれますが、一応私ども予算の面から言えば当分の間という意味はまあ二年か三年くらいまでを頭におきましてこの所期の目的を達するまでという意味に考えておるのでございます。
  196. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 農林大臣に伺いますが、食糧増産の確保の上から農業改良普及事業は極めて重要であるということは、保利農林大臣が本会議及び委員会においてしばしば述べたところでありまして、私どもその通りだと思うのであります。併し今回の整理に当りまして農業改良普及員、生活改善普及員、専門技術員及び農業改良研究員の人員整理に関する方針は如何でございますか。
  197. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) この改良普及事業の重要性につきましては、この席でもしばしば御論議を頂ました点でございます。今回のいわゆる人員整理に当りまして、生活改善普及員の分はもう全然対象になつていないわけでございます。のみならず先般の衆議院の修正ではたしか五百九十何名かの増員をするように相成つておると思います。改良普及事業の専門技術員の六百五十名ほどの中から約二十七名を、二十九年及び三十年に亘つて十一名と十六名を減員するようにいたしておるわけでございますけれども、約一万二千の改良普及員につきましてはまあ第一線に出ておる人たちにつきましては全然考えていないわけであります。
  198. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 私の聞いたところでは農業改良普及員、生活改善普及員並びに農業改良研究員のほうは整理がないと聞いておりますが間違いでございましようか。
  199. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 先ほど申上げましたように改良普及員にはございません。専門技術員の六百数十の中の二十七というのが対象であります。
  200. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 農業改良研究員、専門技術員、農業改良普及員及び生活改善普及員の設置に関する補助金の来年度予算は、補助率は二分の一といたしまして約十億一百万円計上せられているのであります。それと同じ額は地方で又やはり十億一百万円を負担しなければならない。これは二十八年度の該当経費に対する地方負担というものは、約六億二千二百万円に比べますと三億七千九百万円の負担増になつているのであります。なお従来におきましても大蔵省の査定と実際給与の差額がありますために、実質的には三分の二即ち六六%の補助とならなければならないのが、普及員の場合におきましては五九%、専門技術員の場合におきましては嘩かに三二%になつておるのであります。若しこれが二分の一の補助率に引下げられたとしたならば普及員では四五%、専門技術員では僅かに二四%の補助となるのでございます。普及事業の総額は国も地方も一緒に入れましての去年の総額を見ますと、二十九億幾ら使つておるのでございますが、これを国庫、府県、市町村という額に割つてみました場合におきましては、国庫補助は四三%、県の義務負担は二二%純県費でやつておりますものは二四%、市町村その他の団体でやつておりますものは十一%になつているのであります。これが若しも補助率が二分の一に下つて来たという場合におきましては、その負担額が一層増加することになるのであります。かかる負担増加を、地方の現在の財政状態におきましていかにこれを救済してこの事業を盛り立てて行くかというような御計画、御自信がありましたならばお伺いをいたしたいと思うのでございます。又以上の事情から見ましてもなかなかかかる負担増は今日の地方財政におきましてはむずかしいことだと思うのであります。こういうような結果は、結局は経費から通算いたしまして考えました場合におきましては、いかに農林大臣は農業改良普及員は整理をしないのだといたしましても、現在一万二千六百名あります普及員のうち四千七百六十名が必ずこれは整理の対象になつて来ると思うのでございます。農業改良普及員及び生活改善普及員は予算人員の整理は対象となつておらないというふうに言つておるのでありますけれども、その操作におきまして今申上げましたようなことによつて結局抜打的にこれは整理をされることは必然のことであると思うのでございます。これはおもてには整理はせん、農業改良助長というものは必要だというようなふうに見せかけておきまして、実質的には整理の対象にされてしまうというような即ち欺瞞が是正されませんと、食糧の増産の実効を上げることは不可能だと思うのでございます。農林大臣及び大蔵当局の御所見はいかがでございますか。
  201. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) これは先日も御論議ございましたわけでございますが、改良普及員に対する補助率を二分の一に切げた、そのためにその分だけは平衡交付金に入れて地方の自治制による運営に委せるという処置をとつておりますけれども、この改良普及事業は単に食糧増産のために大事なことでありますばかりでなく、日本の農村が新らしい技術をどんどん難せしめて、農業が進歩し発展いたして行くことは即ち日本の進歩を促す基本的な条件だと私は考えているわけでございます。食糧増産の面、農村の発展を促す面から行きましても、そのことは併し同時にこの地方各県においても同様の認識を私は持つて頂いていると思うわけでございます。いかに中央で農業改良普及員が大事だ、大事だと申しましても、地方において全然それは駄目だと言つているようなところでは御懸念のようなことは、私は起り得ないとは万保証はいたしかねますけれども、併し今日農業改良普及員及び生活改善普及員の働いていてくれますことにつきましての認識は、中央でも地方でも同様に高くこれを評価いたしていると私は確信をいたしております。従いまして、財源措置は別途平衡交付金において相当とられておるわけでございますから、地方はやはり地方の発展のために御心配のようなことの起らないことを私はこいねがつているし、又そういう措置は私どもとして必要な措置は講ずるつもりでございますから、その御心配のないように一つ処置をして行く考えでおります。
  202. 小林武治

    小林武治君 関連して。今農林大臣のお話だと非常に重要な仕事であるから地方もこれに協力しなければならん。こういうお話でありますから、そういたしますと土地改良のごときものは非常に大切だ、地方も協力しなければならん。こういうようなことになつて今後予算が窮屈になつて来たら国もやるけれども地方ももつと協力せいということで、補助金は大幅にその交付率というものが削限されるというお含みでおつしやつておるのですか。
  203. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) そういう意味では申上げておりません。改良普及員に対する認識が県においても私は私どもと同様に持つておられると思う。又国会の両院を通じての御論議も改良普及員の活動というものに対しては高い評価を頂いておるわけでございます。これがあります限りは整理をするとか何とかいうような心配に対しては、整理する必要のない程度の平衡交付金における措置はできているわけでございます。それを減らしてほかのほうへ持つてつて改良普及員を整理するというような点は私はないようにしなければならんという意味で申上げたのであります。
  204. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 大蔵省にお尋ねのございました点だけお答え申上げます。農業改良普及事業費補助金その他の補助金でございますが、これは補助金の裏の地方負担は、先ほど農林大臣からお答えがございましたように、すべて地方財政計画の中に織込んでこれを計上いたしております。例えば農業改良普及事業費補助金について申上げますと、本年度は十一億六千九百万円の国費に対しまして地方費を五億八千四百万円みております。二十九年度は現行法のままでございますと国費が十二億七千七百万円、地方費が六億三千八百万円でございますが、これを補助率を改訂いたしまして国費が九億五千八百万円、地方費も九億五千八百万円と同額を計上しているわけでございます。先ほど現実の補助率が低いというようなお話もございましたが、これは予算で認めております員数外に付け足しと申しますか府県等で特にエキストラの技術員等を置いている、そういつたようなことから起つておる関係でございまして、予算で認めております員数につきましては地方負担の分を完全に地方財政計画に織込んでいることを御了承頂きたいと思います。
  205. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 今三分の二が二分の一になつた、その差額はこの地方交付税交付金の中に計上しているとこう言われますが、それは本当でございますか。
  206. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 地方交付税の所要額、従つて交付率を決定する場合も、地方財政計画の中には地方財政需要といたしまして完全に只今の所要額を織込んでおります。
  207. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 本当にそうだといたしますれば、今まで改良助長法一本建であつたものを何もすき好んで二本建にするというような必要は何もないと思うのでございますが、これは一体どういうわけで二本建になさつたのでございますか。
  208. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 農業技術の改良というのは、なかなか重大な問題であることは先ほどお話がありました通りでございまして、従つて政府から三分の二の補助金を出しているわけでございますが、これはひとり国だけの事業ではないのでございまして国と地方とがやはりおのおの責任を持つて処置すべき事項だと考えております。従いまして補助率も一般的な補助金整理の方針の一環として考えたわけでございますが、大体責任を両分するというような観点から考えますと、二分の一補助として国も地方もそれに対してできるだけ力を尽す、制度が変りましたですがその所要財源は勿論みてやらなければいけないのでございますが、それを認めてそういう責任をはつきりすると、そうして両方が力を合せて技術の改良、食糧の増産に湛進すると、かような観点から今度の補助金整理を行なつたわけでございまして、その一つの例であるわけでございます。
  209. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 この農業改良普及事業の最初第一回のアメリカの人が講習をしたとき私も講習生の一人だつたのでございますが、この仕事は非常に重要な仕事であつて、本当から言えば国が全額を持つてやるべき仕事である。こういうようなことを申されたのでありますが、共同農業改良普及事業というような意味で、地方には迷惑だけれども三分の一だけ持つてもらわなければならん、こういうことでやつたわけでございます。ほかのことは随分アメリカの言うことをきいているようでございますが、このことだけはアメリカの言うことをきかんというのは一体どういうわけでございますか。
  210. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 丁度逆な御意見も実は先ほどこの委員会で伺つたわけでございまして、できるだけひも付の補助金でないように地方に自主的な財源を与えたらどうかというような御意見も承わつたばかりでございます。まあ物事は極端はいけないのでございまして、結局二分の一補助というぐらいのところがこの事業の性質から考えても丁度適当であると、さように私ども考えております。
  211. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 地方交付税交付金の中へ計上せられたと言いますけれども、来年度のこの交付税交付金の予算を見ますと、一千二百十六億円でございます。この二十八年度の予算を見ますれば一千三百七十六億円になつておりまして百六十億円だけ少くなつておるのでございます。いろいろ操作がございましようけれどもこういうようなことから見ますと、本当にこの普及事業の六分の一というものはこの交付金の中に入つているのかどうかということを非常に疑うのでございます。これはただ考えただけの問題であつて実際言うことと行うこととは食い違つているのではなかろうかと私は思うのでございます。前年との差額六分の一は交付税交付金に含まれているからそのほうから必ず支出をいたしまして、そうしてこの人員整理などが行われないように、この地方の財政に窮乏を与えないように、十分にこの助長法にあるような工合にこの事業を盛り上げて行くというような御意思があるかどうか。農林、大蔵、地方自治の三当局に遺憾のない措置をして頂くような用意があるかどうかということをお伺いしたいと思います。
  212. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 先ほども申上げますように、改良普及事業に対しては地方庁においても高くこれを評価していると私は確信いたしておりますけれども、更に御懸念のようなことのないように私のほうとしてはできるだけの措置をいたすつもりであります。
  213. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 交付税の所要額を見てございますし、又交付税を各地方団体に分けます場合の基準にも一つこの事項が入つているわけでございますので、適正なる配分が行われることと期待いたしております。万一各地方におきまして減らすというような場合には補助金そのものも減つて参るわけでございまして、そういうようなことは各地方団体等においても行われないことを期待いたしますし、又行政上においてもさような指導に万全を期すべきであると存ずるのであります。
  214. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) 数字やその他先ほど主計局長からもう申上げているわけなのでありますが、ただ幾らかお尋ねを伺つてつて、交付税というものの考え方にもう少し御説明申上げたらいいかと思う点がございますので、実は今度大分国の補助率を引下げたものがこのほかにあるわけでありますが、これは大蔵省側が補助率を引下げるという考え方にはおのずから地方の負担分と国の負担分との或る割合があるので、そしてどんなに国が面倒をみるといつても半分ぐらいというのが補助というものの建前から当然じやないかという考え方で出たものと私は承知いたしております。又その考え方は賛成でありますが、その場合に私どもが地方の負担増というものを当然考えなければなりませんので、そういうものはこの農業改良普及関係ばかりのものではございませんで全部見てあります。ただその見方といいますのは、私どもが地方財政計画を立てます場合には今の現実のやり方といたしましては、二十八年度の財政規模というものを頭におきましてその上に、今までの財政規模の上で見べくして見ておらなかつたものを先ずプラスする。それを既定財政規模の是正といつているわけですが、その上に二十九年度の予算で特別に出て来たものをプラスして行く。そうして地方財政規模というものがきまつて参るわけであります。それが今年は約五百億二十八年度よりもふえているわけでありまして、その五百億の中にこういうものもあるわけであります。  そこで財政計画はその総体のわくをきめまして地方の税でどれくらいとれるか、その他の収入でどれくらいとれるかということを考えて、国から交付税で幾ら出すと、こういうことに結論が出ているわけですからして、当然地方財政計画の中には、地方交付税の中に入つているというよりも財政計画の中に入つていると、こういうふうに御了解願いたい。そういう工合にして総体の計画に先ず入れますと同時に今度これを配分するわけでありますから、その配分をいたします場合に、やはり当該費目の単位費用にこの変化というものを織込まなければならないわけです。その場合も単位費用の改正によりまして織込んで、現実にこの総体のわくの財政規模の中に据えた金がその目的に、それぞれの必要なる団体に交付されるようにちやんといたしております。従つて計画の上では十分計画が立つておりますし又実行できると思つております。ただ先ほどから問題になつております現実に地方あたりがそれにプラスをしてあれをいたしておりますものは、これは計画のほかでありますけれども、少くとも計画に考えておりますものだけは地方財政の上にも十分措置がしてあるし、又実行ができるようになつておりますものと御了承願います。
  215. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 普及事業の関係はそれくらいにしておきまして、次の問題に移ります。  日本の全農家六百十四万二千戸のうち専業農家は四〇・九%、兼業農家は五九・一%ございます。公共事業費が減額せられ、殊に農林関係の公共事業費が相当減つたようでありますが、災害地や凶作地や凶作地域の農家の収入というものがそのために減ると思うのでございます。殊に冷害地などはこれから田植をして秋の収穫までの生活費とか営農費というようなものが考えられなければならんのでありますが、そういうようなことにつきまして何らかそういうような方策を考えておられますかどうかということを先ずお伺いしたいと思います。  それから今申上げましたような専業農家が非常に少くて兼業農家が非常に多い。こういうようなことから考えますると、やはり日本の農業政策というものは特別な、それらの農家をいかにして保護するかということを考えて行かなければ増産もできなければ農村は亡ぶというようなことになると思うのでありますが、そういうことに対しましての具体的の方策をお考えでありますれば農林大臣にお伺いしたいと思います。
  216. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 仰せのように農地はむしろ減る、そこへ農家の数は急激に増加しておりますというような現象がある。従つて農家経済の所得の状況を分析してみましても農外収入に依存している度合は相当高い。それが公共事業の推進と丁度歩調を合して現われて来ているということは、公共事業の実施によつて農家のいわゆる農外収入、勤労収入というものが相当ふえて来ているということを現わしていると思うわけでございますが、農地局関係の公共事業予算としましては、三十九年度の対策費用は昨年が二百七十五億でありましたのが二百七十八億五千万円、若干ふえたようなことになつております。又災害復旧費のほうも当初予算は昨年は百三一十六億でありましたのが、来年度百五十四億四千万円を計上いたしておりますから、その面におきましては減少は来たさない、こういうふうに考えております。なおこの零細専業農家と申しますか、零細な農業のみに依存している農家の自立策というものを、どうしても私はこの耕作のみならずやはり乳牛等の導入ということによる多角経営と申しますか、どうしてもそれが必要だと、個々の小さい事例を見ましても乳牛等をかなり無理しておりますけれどもつている農家は、耕作反別が非常に少い農家でも相当の経営が行われているという事例を私も承知いたしているのでございます。そういうわけでこの乳牛の導入につきましては御承知のような処置もできるだけ拡大してとつてつている次第であります。いずれにいたしましても耕作反別を急激にふやすことはもう言うべくして行われないことでありますから、どうしてもそういういわゆる副業的な収入を強く持つて行くということのほかになかろうと私は考えております。
  217. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 その次の問題は、食糧の増産ということにつきましては土地改良事業に随分重点をおいてやつているように見えるのでございます。併しながら農産物の増産はただ単に土地を改良したということだけによつてその目的を達するものではないのでございまして、土地を改良したならばそのあとにすぐ附随いたしまして改良した土地をいかに技術的に増産に仕向けて行くかということが非常に必要なことでありますが、ただもう土地改良費さえ出せば増産になるというような考えに今なつて行つているようでございますが、一昨日のお話を伺いますと土地改良による増産効果というものは約百十四万石くらいよりしかないというようになつているのでございますが、投資した金の量からいいまするとその改良した土地の技術的な利用方法ということを更に高めましたならば、土地改良事業と相待つて増産の効果というものは速かに上つて行くと思うのでございますが、そういうような改良した土地に対する耕種の改善、営農の改善向上ということに対しましてどういうような措置をとられているか、お伺いしたいと思います。
  218. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) これは私は全然同感でございまして、ここに農林技術陣の持つている使命が非常に大きいものがある。一番肝心なまあ一応のこの増産計画として申上げて参つております主たる部分は農地改良、或いは干拓、開墾等による耕地の基礎要件を整えるというところにある。で、表わし得る増産効果というものはどれだけであるかということの説明の手段、と言つては甚だ語弊があるかも知れませんけれども御説明を申上げておるわけでございますが、然らばそれでお話のように土地改良したからそれで増産がすぐできるものと思うのはとんでもないことじやないか。これには当然もう非常に困難を伴いますと存じますけれども、どうしてもこの技術陣の活動によつてこの改良せられ整備せられた農地が十三分に生産力を発揮するようにしてもらうためには、どうしてもこの技術の浸透というものが必要である。ここにまあ大きく中央的に申上げますれば農業技術員の責任が私は非常に重いと同時に、農業改良普及事業の必要なゆえんがそこにあると存ずるわけでございます。これは三橋さん大体御覧頂いていると思いますけれども、そういう意味で改良あと地に対する試験地と申しますか、そういうものを設定する費用等を二十九年度の予算に計上いたしまして、十分に土地改良後の成果が上がるような方途を講じて参りたいということを表わしているわけでございます。
  219. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 一つ土地改良事業の成果を上げますためには、今後そういう方面の予算を十分に組んで頂きまして、そうして多量に、多額に投資いたしました土地改良事業の成果を、速かに上げられんことをお願いいたします。  次に病虫害の問題でございますが、これは甚だ抽象的なお尋ねでございますけれども、農林大臣は病害虫発生予察事業と植物防疫事業との関係をどういうようにお考えなつておりますか。
  220. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 私も素人でございますから無論詳しくは申上げ得ないと思いますけれども、とにかくこの増産の大切なときに、無論病虫害というものは、近年発生したわけではないのでございますけれども、この病虫害の発生被害によつて収穫し得べき非常にたくさんの作物を失うということは、これだけ大きな国費を投じて増産計画を推進しております今日の国情からいたしますれば、私はこの病虫害に食われるのを見送るというようなことはもう絶対に避けなければならない。そういう意味で病虫害の発生予察と申しますか、徴候が出ましたときに速かに手を打つてこれが拡がらないようにするということは特に大切であるということで、この農業問題はかなり大蔵省と私ども議論をいたして来たところでございます。大蔵省財務当局におかれてもこの病虫害に対する処置の大事なことは無論よく理解を頂いているわけでございます。特に昨年度あたりあれだけ大きな金を費やしたのもそういう認識の上に立つているわけでございます。そこで先ず発生初期において早く手当をすること、それに対しては予察事業を拡大充実して行くことが必要ではないか。それとその撒布器具がないから手遅れになるというようなことがあつてはならない。これに対しては来年度相当の措置を講ずるようにいたしているわけでございます。農薬の整備備蓄と申しますか保管と申しますか、これに対しても相当の処置を講じておりますけれども、全体の農薬補助費が五万町歩とか六万町歩とかいうような対象で予算を組んでおりますから、非常にこれをおろそかに扱つているように或いは御心配であろうかと存じますが以上申し上げたような趣意によつて万全を尽して参りたいと考えます。
  221. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 発生予察というものと植物防疫というものと組合せまして、科学的に病虫害防除の予算を計上します場合におきましては、まだまだ少い経費でもつとたくさんの病虫を防ぐ方法があるのでございます。まあそれはいずれかの機会に申し上げることにいたしまして、発生予察というものは適時に防除するとかいうようなそういう簡単なことではなくて、大体今の発生予察事業の研究の方向からみますとどの病虫害はどういう年に何年おきに出て来るというような統計などもあるのでございますから、重点的に予算を組みましていつた場合におきましては、平年度におきましてはもつと少ない予算で発生したときには更に潤沢に経費を出して参るというような方法もできると思うのでございます。これが本当の発生予察事業というものと植物防疫というものとの有機的な結合であるわけであります。まあその問題は又の機会にお尋ねすることといたしまして、一昨日大蔵大臣は農薬は生産資材であるから受益者が負担すべきであるということを言いましたけれども、農林大臣もやはりそういうふうにお考えでございますか如何でございますか。
  222. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 大蔵大臣もそう断言されたわけじやなかろうと私は思うのでございます。私はこの農薬補助というものは或る一人が手をつけないと米がとれないからと言つてそれでそれだけやられればもうあとは放つておいても大丈夫だというようなものでございましたならばそういうことも言えるかと存じますけれども、協同作業的に集団的にやらなければこの効果を上げることはできない性質のものである。それで単純な事業ならそれはもう結果はそうなるにきまつておると存じますけれども、防除事業の性質というものは必ずしもそういうふうには言えないのではないか、私はそういうふうに考えております。
  223. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 それで安心をいたしました。そこでこの防疫事業と申しますのは、御承知のようにその病気の伝染伝播をとめるというような場合におきましては、個人の農業経営も或いは個人の利益ということも無視して進まなければならんことがたくさんあるのでありまして、これは必ずしも生産資材、肥料などとは同じではないことは申すまでもないのでございます。病虫害の被害は昨年におきまして大体六百万石あつたようでございます。凶作の年には、病虫害が発生いたしましてそのために更に凶作の程度を深めるというようなことから昨年は六百万石程度の被害があつたようでございまするけれども、これを若しも半分防除できて収穫をしたとしましても三百万石でございます。土地改良によつて百十四万石乃至百六十万石だというのでございますが、それに比べますと非常に少い金で三百万石の増産ができる。こういうふうに非常に予算を節減いたしまして増産目的を早く達するものがあるにもかかわらず、そういうものは金を減らしておきまして増産がちよつとの間に合わんようなものに大量の金をかける、こういうようなふうでは食糧自給の日もほど遠いことと私は思うのでございます。こういう点につきましてとにかくこの食糧増産の一途として病虫害を更に大きく取上げて頂きたい。今年の予算などとも比較してみましてもよくわかるように、実際三十八年におきましてはいもち病が七十八万町歩も発生しているのでございます。併し今度の防除の面積は二十九年度におきましては五万五千七百町歩しか計上しておらん、こういうことでは増産の目的を達することができないのでございます。更に又うんかは麦の病虫害ですが異常発生指定病虫害から落ちているようでございますが、これは防除しないでもいいということなんですかどうなんですか。
  224. 渡部伍良

    政府委員(渡部伍良君) 三橋委員のよく御承知のように、うんかはどつちかというと突発性であります。麦のさび病は長雨等が主とした原因になつているものと考えております。従いまして、うんかの発生等とは違つた様相を呈するのではないか、こういうふうに考えております。
  225. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 そうなつて来ますと一つ技術問題を取上げなければならないのでございますが、麦のさび病はこれまでの書物にはやはり雨天のときに発生することが多いというふうに書いてありましたが、併しながらうんかは御承知のように満洲のほうからの黄塵と一緒に胞子が飛んで来るということが言われているのであります。満洲からの黄塵の中に胞子が入つているかどうかということは確かめてはおりませんが、それは結局乾いた年に発生が多いということを意味しております。これは一つ官房長も研究して御覧になればすぐにわかりますが、乾いた年のほうがさび病は余計発生します。うどんこ病は湿つた年に発生するようでございます。この点指導する上において十分御注意をお願いしたいと思います。そこで来年度の防除面積を非常に少くしたということは、何か科学的根拠に基きまして今年はこれだけよりしか発生しないだろうというようなことで、責任を持つてされたのでございますか、どうでございますか。
  226. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 昨年は御承知のように凶作の年で、且つ又この凶作の起りましたのは早害、冷害、而もその冷害というものに病害が加わりまして更に被害の度が激甚を極めたわけでございます。無論五万五千七百町歩というものは、私は率直に申上げまして科学的な根拠があろうはずはございません。併しながら昨年のような大きなことは一応予想しないでもいいじやないか。併しこの事業は先ほど来お話のように仮に農家が全然手をこまねいてやらないということになりますると、直ちに一面から農業災害補償という大きな国の負担に変つて来ることになりますから、今年の発生の少きことを希望いたしておりますけれども、発生の状況によりましては当然措置いたさなければならんと私は考えているわけでございます。一応併し昨年は異常の災害、病虫害の発生もございましてああいうふうな厖大な国費を投じておるわけでございますけれども、一応の目安は今年はああいうふうなこともあるまいということで計上いたしている次第であります。
  227. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 試験研究の結果を尊重するということを常に言つておられますけれども、試験研究の結果を尊重するということはただ予算を守つてやるということではないのでありまして、その結果を十分にこの予算面にとり入れ、或いは政策面にとり入れるということが必要なのでございまして、ただ経費がないからというので非科学的な予算のほうから逆算いたしまして、実際は七十八万町歩発生しておるいもち病を五万五千七百町歩にするというようなことは、日頃農林大臣は試験研究の結果を尊重すると言われておりますのに、全くそのふだんの言葉と相反しているように思うのでございますが、その点はどういうふうにお考えでございますか。
  228. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 財政当局並びに政府部内で私どもといたしましてはそういう趣意で努力いたしました結果がそこに現われているということを確信いたしております。
  229. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 時間がございませんので簡単にやります。  次に農薬の問題でございます。これは非常に消費量が多くなりまして昭和二十五年におきましては二十一億円、二十六年には四十五億円、二十七年におきまして六十八億円、二十八年におきましては百十五億円の消費があるようでございますが、農家はざつとならしてみまして一戸につきまして千円以上の支出をしているのでございます。恐らく更にこの消費が増加して来ると思うのでございますが、安く量を十分定期に配給するような措置は来年度できるものでございますか如何でございますか。  なおついでに、農薬が漸次進歩して来るに従いまして防除効果の高いものができて来ておりますが、又半面におきましてはその薬剤は人畜に非常に激しい害を及ぼすものがあるのでございます。パラチオン剤のごときはその一つでございますが、そのために昨年死んだ者もたくさんあると思うのでございます。増産のために農家の生命に危険を感じさせながらやるということは農家に対しまして申訳のないことでございます。昨年におきますホリドールの人畜に対する被害の状況を農林当局並びに厚生当局のかたから承わりたいと思います。
  230. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) お話の有機燐製剤等によります中毒症状、只今お話になりました。パラチオン剤を中心にした被害の状態が大分現われているのでございます。昨年一月から、十月までの全国を調査いたしました結果、中毒患者が一千二十三人、死亡いたしましたのが百五十四人、合計一千百七十七人、この死亡の中で今の二化めい虫の駆除のためでなしに自殺のために使つたのが九十七件ございます。約三分の三は、悪用しておつたというわけなのであります。それを除きましても只今申上げましたように相当中毒並びに死亡という現象が現われておる次第でございます。従いましてこれらの相当人畜に被害を及ぼすという状態でありますため、毒物及び劇物取締法の法律にも照し、更にこの有機燐製剤の取扱につきましては昨年の五月厚生省で取扱準則を定めました。これによつて相当厳密に厳格に取扱うことにいたしておりまするが、或いはこれらがなお不徹底ではないかと考えておるような次第でありまして、これらの点につきましては農林省等とよく連絡をいたしまして、これらの被害の人畜に及ぼさないような具体的な方法をとつて行きたいと、両省で目下検討をいたしておる次第であります。
  231. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) およそ農薬から発生します被害の状況只今お話通りでございます。私どもの承知いたしておりますところでは、初め使い出しましたときは非常に用心をして規則通りに使いますため障りは出て来ない、そのうちたびを重ねるとつい不用意になつて来るということで思わぬどうも被害を出しているということは非常に遺憾に存じておるわけでございます。ここにもやはり私は改良普及員等の大きな使命があると存じております。只今厚生大臣のお話になりました通りに十分の対策を講じて参りたいと考えております。  農薬をもつと安く国で供給できるようにしないか、只今農薬補助対象面積が五万五千町歩ということでお叱りを頂きましたが、従来以上に充実をいたしました予算措置を講じ、又病虫害が発生しても農薬が手に入らないということでは困るというので、保管に対しても、又薬があつても器具がないからまけないというようなことに対しても予算措置も講じておりますが、今日の状況からいたしますれば精一ばいと申上げるほかはないわけでございます。無論大きい意味からいたしますれば、お話のようなことができ得れば大変結構だと思いますけれども、現状では以上申上げました程度が精一ぱいのところであると申上げざるを得ない。
  232. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 まだ問題がたくさん残つておりますがこれは又別の機会にしましてたつた一つだけお伺いいたします。  燃えやすい繊維品の販売禁止という法律がアメリカで来る七月一日から実施になるようでございますが、この販売禁止の法律が実施されますと、日本から行つております絹スカーフ或いは羽二重等がこのため影響を受けるのではなかろうかと思うのでございますが、そういう場合に日本の養蚕業或いは製糸業というものはどういうような影響を受けるか。又日本の対米貿易というものはどういうようになるかということにつきまして御所見を伺いたいと思います。
  233. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは私からお答えいたしますことが十分でありますかどうかわかりませんが、不足の部分は補足して頂くことにいたしまして私から取りあえずお答えいたします。  只今御指摘のように昨年の米国の第八十三議会で成立いたしました可燃性織物法によりますと、一定の可燃性の織物及び衣料の米国内における製造販売又は輸入を含む一切の取引を禁止することを目的とした法律ができたわけでございます。これによりますと、その詳細のまだ施行規則等は作られていないようでございますが、例えば具体的に申しますと巾二インチで長さ六インチ台の布地について引火のテストを行いまして、その大きさのものを四秒未満の速度で全部焔が全燃しつくす場合、かかる布地を以て作られた衣料及び衣料用織物は禁止品目となるわけでございます。但し一定の帽子、それから長さ十四インチ以内の手袋、靴下、糸、芯地等は衣料にあらず等の理由で除外されることになつておるわけでございます。仮にこうした法律が、先ほど申しましたようにまだ施行規則が細部等に亘つて明瞭でない点もございますが、若し七月一日から施行されることになりますと、我が国の対米輸出に及ぼす影響は相当重大でございまして、特に薄手の絹織物及び絹スカーフ、ハンカチーフ類は大打撃を受けることに相成るわけでございます。従いまして現在政府といたしましては、この対策としておおよそ次のようなことを考えているわけでございます。第一にスカーフ、ハンカチーフ類はいわゆる衣料にあらずという見解をとりまして、その全面的な適用除外を主張いたしているわけでございまして、この点が外務省におかれて非常に熱心に現在外交折衝を行つてもらつているわけでございます。それから第二には各種の衣料及び織物について所定の方式のテストを行いまして、該当の範囲を明確にいたすように全力を注いでおるわけでございます。それから第三にいわゆる軽目の織物等につきましては、あらゆる角度から不燃加工に関する研究を行いまして、市場の確保に努力をいたしたいと考えております。これは今後の恒久的対策になるわけであります。それから第四にすでに契約いたしました分が相当あるのでございますが、これらにつきまして織布業者、加工業者、輸出業者があとで損害を受けませんように金融なり保険の面等に関しまして可能な限りの補助手段を行いまするよう研究中でございます。最後に先ほど申しましたようにこの法律の施行の細則は米国側で近く決定され発表されると思うのでございまするが、そこに至りまする間におきましてあらゆる点で我が方に不利になりませんように、細目の点に亘りましてできるだけの交渉をし、先方の好意ある措置を得るように努力いたしたいと考えております。
  234. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この法律が立法されるに至りました理由として、カリフォルニアの一少女のセーターですか火がついて焼けて人道上の問題を起した、或いはカウボーイ風のズボンに火がついて少年がやけどした、而もそれが十年以上前で最近はそういう事例は殆んどないのにこういう立法措置がされたということは、実はそういう人道上の問題に名をかりて形を変えた新たなる関税として、同種の業者がそういうようにしたのではないかというような、形を変えた同業者の利益擁護のための関税ではないかということが言われているわけであります。最近はそういう事例はない、殆んど十年ぐらい前にそういうことがあつたことが今度の理由にされておるこいうことですが、そういうことについ詫びにいろいろ愛知通産大臣がお話なつたような善後措署がなされているのですが、昨年六月末にこの法律が議会を通過しているのですが、アメリカにおります大使館の人或いは農林省でも生糸の販路を拡張しその普及宣伝に努めるために去年も千九百万の予算を通じて生糸に関する駐在員がアメリカにおると思うのですが、一体そういうような一旦法律が通つてからは大変ですのに、なぜこの立法過程でその対策をなされなかつたかというような点。更にいろいろこの法律がどうしても実施されるということになりますと、七月ではなかなかいろいろ日に強いような加工等をするのにはかなりの技術的な期間も必要と思うのですが、そういうことの実施の延期に対する問題或いはこの法律を撤回してもらうような措置はもうできないものであるかというようなことについて一つお伺いしたいと思います。
  235. 藤原道子

    ○藤原道子君 その点に関連して。聞くところによりますとあの法律が通つて以来、アメリカでは燃焼しないような研究がずつと続けられているということが報ぜられております。我が国におきましては施行細則は未だ明らかでないとしてもその法律が通つたことは現実なのでございます。その後国内の生産業者に対してそうしたことについての指導を今までやつておいでになつたか、その研究をしておいでになつたかという点を一つ付け加えてお伺いをいたしたい。
  236. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 第一は昨年の六月にこの法律がアメリカで施行せられて以来どういうふうなことをやつて来たか。又この問題はその次に長い間のアメリカでの話題であつたようであるが、それは突如として昨年こういうふうな立法がされたことについては、何らか日本に対して特殊の意図があるのではないかどうか。こういう御趣旨のお尋ねであつたと思いますが、これは只今お話のありました通り、相当前からアメリカとしては話題になつておつた問題のようでございます。それから昨年に法律ができましてから、実はどういうふうな施行細則で果して実施されるかどうかというような点についても、率直に申しますと不明確な点もございましたので、ついこちら側といたしましてもこれに対しまする対策についてやや十分でなかつた点もあつたかと思います。この点は率直に認めざるを得ないと思います。併しながらこれは御承知のように米国国内におきましても製造販売も一切禁止いたしまして、日本からの輸入だけではない、輸入を含むことは勿論でございますが、アメリカの国内の業者といたしましても相当これは打撃を受けることも多いと思うのでありまして、特に日本に対しまして可燃性のものということに籍口して、特に輸入を禁圧するというような意図がこの背後に隠されてあるものとは私は考えておりません。  それからその次に藤原さんからのお尋ねでございますが、これにつきましては、何分先ほど申上げましたように、法律としては最近の問題になつたこともございますので、十分な現在まで燃えないようなものを作るようにということの特に特段の措置をいたしたこともございませんけれども、併し一般的な輸出の振興というような点、或いは技術の向上というような点につきましては、燃えないような工夫をこらすということの研究一般的にはやつておりませんが、特にこの問題に関連して特段の措置をとつたというところまでは行つておりません。
  237. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 もう一点。
  238. 青木一男

    委員長青木一男君) 簡単に願います。
  239. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 保利大臣にお伺いしますが、七月一日からこれが実施されるということになりますと、春の繭が丁度出廻時期なんで、そうしてこれに該当するのが一千万ドルぐらいあるということですが、これはかなり製糸家として繭価協定に対しまして繭の値段を叩く恰好な材料になつて、非常に繭価に悪影響を私は及ぼすと思うのです。いつでも春の出廻時期の前になりますと、海外市場は弱気であるという電報をたくさんよこしまして、いつでもふだんよりか一、二割下げて買つて繭の出廻が終りますとたいてい上るのが慣例なんです。丁度折しもこの施行期日が七月一日というのは出廻時期なんです。これは非常に繭価協定に悪影響を及ぼしまして、養蚕業者は非常な痛手を受けると思いますので、一つ是非それに対して十分な措置をお願いしたいということと、この問題について我々が新聞で注意深く見ていまして、これを外務省や或いは農林省なんかのほうからこういう報告は出ていなくて、新聞社のアメリカ駐在の特派員からこの記事が出ておるのです。一体去年千九百万もとつてたいていアメリカに職員が行つていると思うのですが、ダンスなんかしておつて議会の生糸に関するようなことをちつともやらないのじやないか。そうすると今年度又三倍の五千万も出ておるのですが、これはよほどこの経費については考慮を要すると思うのですが、大体生糸に関する商務官といいますか行つていると思うのですが、どうなんですか。
  240. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 何か農林省の役人が向うへ行つてダンスでもしておる……今年、来年度からは駐在員を置くという計画になつておりますけれども、おりませんです。
  241. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 千九百万はどうして出ているか。
  242. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) おりません。それはその費用ではござりません。只今お話の春繭の出廻期に当つて、養蚕農家がこれによつて不当な取扱を受けないように措置しなければならんということは御尤もだと思います。これは併し先ほど通産大臣から申上げますように、主としてこれに該当する日本の絹織物については除外例等を求めるという今努力をいたしておりますから、そういうことが起らないように一つ努力をするということが先決だろうと存じます。相当やはり糸換算で二万俵か三万俵くらいに当るものが出て来ると存じますから、厳格にこれを施行するということとになると、そういうことをやられては大変でございます。先ほど通産大臣が申上げました除外例を求めつつ、そして不燃化加工の技術を普及して行くという時間的な余裕を持つように努力するということが当面の大事なことだと思います。
  243. 田中一

    田中一君 先ず第一に建設大臣、大蔵大臣に伺いたいのですが、先般建設委員会におきまして建設大臣が、二十九年度の予算の編成に当りましては、国土総合開発の実を上げるために少くとも補償費を初年度に全額払うようにするという言明をしております。従つて、この言明につきましては大蔵大臣は了承の上でこの言明がありましたのか先ず第一に伺いたいと存じます。
  244. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 私は何も実は聞いておりません。或いは主計局長が知つておるかも知れませんが、何も大蔵省としては承知いたしておりません。
  245. 南好雄

    政府委員(南好雄君) お答え申上げます。ちよつと今よその話をしておりまして御返事が遅れましたことは誠に申訳ありません。ダムの補償につきましてその補償費を予算一般的に計上してあるかどうかというお尋ねでございますが、これは御承知のように補償費がきまつた場合にはこれを計上いたしますが、きまらない場合におきましてはどれほど補償費に要るかということを事前に計つて予算に計上するということは、できるだけ補償を早くという希望がございましても、予算技術その他いろいろの点から見ましてなかなか困難な点ではなかろうかと考えております。併し予算にないからといつて補償費のきまつたものを支払わないようなことのないように進み方、交渉の点をいろいろ考慮いたしまして成るべく速かに補償をきめ、而もそのきまつた補償金については速かに予算に計上してこれを払つて行くという方針を今までとつておるような次第であります。
  246. 田中一

    田中一君 持時間がないのに質問しようと思うのには、そういう不十分な答弁では勘だ迷惑なんですが、建設大臣は十二月十三日の委員会におきまして、二十九年度の予算の編成方針は継続事業であるところの電源開発の水没その他の補償費は、初年度において大幅にそれを盛り込んで支払をしてから仕事にかかると、こういう言明をしておるのであります。大蔵大臣もう一遍御答弁願います。
  247. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 事業の進行に応じて払うことはよく承知しておりますが、その他のことは私は承知しておりません。
  248. 田中一

    田中一君 どうも甚だ困るのですがね。少くとも事業遂行の三年計画、五年計画を立てた以上、補償の問題を組込んだ予算が計上してあるはずなんです。ただ現在は事業量に応じてその部分のみの補償を払うからすべての地区で問題が起きるのです。従つて、最初の計画通り全額に近い補償を払うならば、すべての電源開発その他の事業はスムースに進むはずなんです。その点を伺つているのです。
  249. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ダムその他の辿設の予算の算定の段取りでございますが、これは五年計画とか三年計画とかあるはずでございまして、その計画に合せて建設省から予算の要求がございます。私どもはその要求に即しまして個々の具体的な個所の実情に応じて査定をいたしておるわけでありまして、補償の段階に入つておりますものにつきましては補償の予算を組みますし、その他いろいろなニュアンスがあるわけでございます。要するに建設省のお立てになつておる計画、その個個の実情に即した査定をいたしているというお答えを申上げざるを得ないの一でございまして、あらゆる個所について先ず補償費を組むというようなことは、資金を有効に活用するというゆえんでも、ないのではないかと、やはり個個の実情に即して考えなければならないのではないかと、さように考えます。
  250. 田中一

    田中一君 見解の相違ですからもう何も言いません。ただ経審長官に伺いしますが、昨年の四月二十六日閣議決定いたしました保証要請は立法化する意思がないかを伺いたいと存じます。
  251. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。昨年四月二十六日の閣議決定につきまして只今のところ立法化するつもりは持つておりません。ただこの点はなお篤と研究いたしたいと思つております。
  252. 田中一

    田中一君 農林省、建設省、すべての補償料が地区や係官によつて認定が違うのです。従つて、多くの補償問題が起きるわけなんです。その点について伺つたのですが、然らば佐久間ダムその他こういう点につきまして私が現 地に参りましたところが、現閣僚が現地におきまして補償並びにその他の事項につきましてあつせんの事業を営んでいる。例えば佐久間ダムにおきましては現国務大臣の大野伴睦君が天龍総合開発協力会なる団体を持ちまして、三県十三町村をまとめましてそうして補償料の交渉をやつております。その理事長として当面の事務をやつておりますのは前建設大臣の野田卯一君でございます。この点につきましては、経審長官並びに建設大臣は承知していらつしやいますかどうか、伺いたいと思います。
  253. 南好雄

    政府委員(南好雄君) お答え申上げます。そういう協力会があることは存じておりますが、その長が誰であるか、事務局長が誰であるか、それは建設省としては知らんそうでございます。どういうふうな形で事務を執行しておるかも又つまびらかにしておらんというのが実情だそうであります。
  254. 田中一

    田中一君 通産大臣に伺いますが、あなたは電源開発会社の監督権をお持ちだと存じますが、少くとも現職の大臣が地元側に立つて電源開発会社と補償の問題について交渉するというすがたがよいか悪いか、殊その理事長として現地に乗り込んで、地元の人間と常に会合を持つておるところの前々建設大臣野田卯一君のすがたが妥当であるかどうかを伺いたいとおもいます。
  255. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 誠に申訳ございませんが、私はその協力会議なるものの実体を把握しておりませんので、これは調査いたしてからお答えすることにいたしたいと思います。
  256. 田中一

    田中一君 同じく佐久間ダムの電源開発会社が三十八億の補償費を国鉄に払いまして、国鉄が飯田線の付け換えをやつております。これがこの電源開発の工程と相待つて三年間にこの工事を完成すると言うことになつていますが、運輸大臣はこの三年間であの隧道や橋梁の多いこの工事を実際に完成する方途をお待ちかどうか伺いたいと思います。
  257. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) お答えします。この飯田線の付換え問題につきまして、電源開発会社と国鉄の間に取交しておる覚書の中に、工期については会社の発電開始に支障のないよう国鉄において極力努力するとなつておりまして、国鉄もその線にそつて努力いたしておりますので、御承知のように大変な橋梁、トンネルが多い所でありますが、目下のところダムの完成までに線路の位換えができるという目途で努力をいたしております。
  258. 田中一

    田中一君 時間がないのでもう余り再質問できないので弱つておりますが、建設大臣に伺いますが、現在未着手の発電用の水利権というものが約百十六カ所許可しております。この長いものは明治三十九年に許可をしたのもが未だに着手されないでおる現状であります。昔から水利権という問題はすでに利権に続きまして非常に大きな問題を起しております。これが未だ百十九件というものが未着手のままにある。そうして一番古いものでは明治三十九年に許可になつておる。こうしたものが河川法の趣旨から行きましても、法文から行きましても私は好ましくないものと存じます。そこで例えば天龍川の水利権の問題にしましても、只見川の問題にしましても福島県、新潟県はしのぎを削つてつております。そうして多くの国費、県費を使つております。この実情から見ましてこうした未着手の百十九の利権というものをこのまま放置するつもりかどうか。或いは河川法によりまして一年以内に着工しないものは取上げて一遍政府のほうに返して、そうして又経済的に可能なる範囲の申請者に対して再許可をするという方途をとるかどうかを伺いたいと思います。
  259. 南好雄

    政府委員(南好雄君) お答え申上げます。田中先生のこの質問につきましてはいつも御意見拝聴しておるのでございます。建設省におきましても、未利用の水利権と申しますのはもとより水利権の性質上なかなか公共的の面が多いのでございまして、余りに長く使わずに放置しておくと申しますことにつきましては私も同様の考えを持つております。で昨年春河川局長の通牒ではございますが、未利用の水利権につきまして各県知事に対して速かに調査をして整理をするようにという通牒をしてあるのでございますが、御承知の通り水利権はなかなかいろいろむずかしい問題がございまして、中央の考てえおりますようにはかがしく整理の実があがつていないことは非常に遺憾ではございますが、放置しておくつもりはないのでありまして、できるだけこれを整理してゆく方針の下において監督をいたしておりますような状態でございます。
  260. 田中一

    田中一君 この水利権の問題が過去の政治家の間においては利権として扱われておりました。従つて今日の場合では万々ないとは思いますけれども、只見川一つの問題にしましてもああした福島県、新潟県の多くの県費を使つて運動、陳情をやつております。この実情から見て一日も早く河川法を改正しまして少くとも国民のための水利権という面からこの法律の改正をする意思はあるかないかをもう一遍伺います。
  261. 南好雄

    政府委員(南好雄君) お答え申上げます。河川法が法律の体系といたしまして相当なかなか立派な法律ではありますが、その後ときの経過に従いして実情に合わん面も出て参つております。そこで河川法を実情に合わしてもつと適切に使い得るようにいたしたいために、過去三年前あたりから河川法の改正をする準備に着手しております。漸く最近成案を得ましたのでできるだけ早くまとめまして今国会中にも提出いたしたい。この方針で先般も要綱を閣議に稟請したような次第ではありますが、何と申しましても、農林省におきましても、或いは通商産業省におきましても関係する面が非常に多くございまして、本当のことを申上げますると事務的にまだ一致をしておらんというのが実情でございます。併し何とかして河川法を現状に即したもつとその運用の適切にできるような法律に変えて行きたい、という建設省の意向で絶えず努力しております関係からそのうちに成案が得られる、こういうつもりで目下鋭意各省と交渉しておるというのが実情でございます。
  262. 田中一

    田中一君 次に通産大臣に伺いますが、耐火建築促進法という法律を御存じでございますか。ところでこれは関達して大蔵大臣に伺うのですが、二十九年度においては一億円の予算が計上されまして、都市の不燃化、少くとも木材資源を確保する意味におきまして、たくさんある石灰を使つた不燃都市を作るという意向につきましてはどういう御見解を持つておるか。通産大臣に、木材の需給の見通し、無論国内資源はございません、従つて輸入する量をどうするかの問題、それからこれに伴う外貨の問題はどうするか、これについて伺いたい。
  263. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 先ず基礎になりまする木材の需給の見通しでございますが、御承知のように需要の八割程度を占めております坑木、建築、包装用及び。パルプのうち、坑木と建築と包装用は二十九年度におきまして生産活動が或る程度停滞する。それから投資活動が抑制されるというようなことを背景といたしまして、需要のさしたる増大はないと思うのでありますが、パルプのみは一割以上の増産をいたしたいと考えておりますため需要増が見込まれますが、総量といたしましては昭和二十八年と大きな変動はないかと考えるわけでございます。でパルプだけが一割以上ということになりますと、増加ということを考えますと木材の需要の増は三百万石の見込でございます。これに対しまする供給のほうでございますが、一応の見通しといたしまして、国内で生産は二十八年度と大体同様に一億石程度と見込んでおります。外材の輸入につきましては、御承知のような外貨事情でございますから、必ずしも十分な輸入量の増大を期しがたいのではございますが、極力その確保に努めますと共に一方におきましては消費の節約とか代用資源の活用というようなことについて需要者側の御協力を頂きたいと考えております。  なお外材の輸入について二十九年度に幾らの外貨を割当てるかということにつきましては、先般来お答え申上げておりますように、いま数日の御猶予を頂きまして他の物資と併せまして具体的な数字を決定いたしたいと考えております。
  264. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 只今田中さんのおつしやるように二十九年度は一億だけ計上してある次第でございます。予算緊縮の折から私どももやむを得ず一億だけ計上した次第であります。勿論でき得るだけ不燃建築のできることが望ましいのでありますが、尤も実情から申しますとその後木材が上つて来たのと、不燃建築の補助がありまするから去年くらいのところには実際に考えております。
  265. 田中一

    田中一君 官庁の建物が一〇〇%不燃化であることが望ましいのです。ところが現在の二十九年度の予算におきまして約七千五百万円程度の国警の予算が木造建築をすることになつております。この内容を見ますといわゆる留置所を含む庁舎なんです一殊に北海道のように寒い所では寒冷住宅促進法を出しまして全部国民にまで不燃化を強制しておるにかかわらず、留置所を含む国警の庁舎が木造であつていいという理由はないのです。そこで国警長官に伺いますが、このような形であらゆる留置所を含む庁舎を作られることは、被疑者はどうなつてもよろしい、火事になつたら焼け死んでもいいのだというような考を持つてつているのかやはり生命を守ろうという意味で不燃建築にしようという意思はないかどうか、これを伺いたいと思います。
  266. 中原ただし

    政府委員中原ただし君) 只今御発言の趣旨につきましては我々も可能であれば全面的に耐火建築物にしたいという年来の希望を持つておるわけでございますが、例えば二十九年度の地区署の関係の建設費の枠が大体三千五百万程度でございます。一方現在の国家地方警察の地区署が九百三十になつておるのでございますが、そのうち五十年以上たちましたのが一五%、百四、五十カ所ございまして相当いたんでおりまして、これを更新するほうに実は手いつぱいの状況でございまして、従いまして我々といたしましては今建設省のほうもいろいろ相談をいたしおりますが、御趣旨の点を十分反映しながら極力やつて行きたいということを考えておりますが、結局御承知のように殊に今度お願いしております場所は大体村落地帯の警察署でございまして、規模も百坪程度以下のものが大部分でございます。従いまして御趣旨の点を加味した上で現地の実情と睨み合せまして、耐火構造にすべきものにつきましては耐火構造にするということでやつて参りたい、こう思つております。従来は大部分は防火構造程度で処理いたして来ております。勿論都市部にあります一部につきましては耐火構造でやつたものもざいますが、来年度におきましても現地の実情を見まして、実は一昨日も建設省と現地の視察をして参りまして、技術的にも検討してもらつたのでありますが、御趣旨の点を十分取入れまして、耐火棚造にすべき点につきましては耐火構造にするということでやつて行きたいと思つております。それからなお只今の御発言の金額の中に鑑識関係の庁舎が入つております。これは大体耐火構造でやるという構想にいたしております。それから学校関係につきましては従来から引続きやつておりました工事の一部の増築でございまして、而も環境等の教養上の効果なども睨み合せまして極めて一般民家とは離隔いたしました開謝地にいたしておりますので、大体防火構造程度で技術的にも問題がないのじやないか、こういう工合に考えております。御趣旨の点につきましては今後とも十分加味した上で予算の執行をやつて行きたい、こう思つております。
  267. 田中一

    田中一君 今の問題について大蔵大臣は適当な予算措置を取る意思がありますか。
  268. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 財政全これは私どももそういう建築物は不燃性であるべきだということは強く考えております。ただ、今日のところ財政上多少思うに任せん点があるのは御了承願うほかないと存じます。
  269. 田中一

    田中一君 建設大臣、大蔵大臣に伺いますが、第一期公営住宅三カ年計画は二十九年度で終る予定でございます。ところが十八万戸のうち五万戸残つております。従つてこの残つております。五万戸につきましては両大臣はどういう責任をお取りになるか、同時にこの計画は国会の承認を受けております従つてこの計画の変更の承認を国会から受ける意思があるかどうか伺います。
  270. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) どうも財政上思うに任せませんのでこれを延ばすほかないと考えております。
  271. 南好雄

    政府委員(南好雄君) お答え申上げます。田中委員の御指摘通りまだ約五万戸近くのものが当初の計画通り末だにできておりません。大変遺憾なことではありますが、国家全般の財政上の点から見ましてやむを得ないものと考えまして、本年度の予算ができたわけであります。今後の方針につきましては財政事情を勘案いたしまして十分な施策を立てまして、又建設委員会その他の機関に御承認を仰ぐような手続をして参りたいと考えております。
  272. 田中一

    田中一君 これは国会の承認を受けた計画なんです。従つてこれを変更する場合には国会の再承認を瞬けるかどうかを伺います。
  273. 南好雄

    政府委員(南好雄君) お答え申上げます。住宅建設計画は院の承認を得ておるのでありますが、国家財政の点から見まして本年度のような予算がでたのでございまして、予算そのものとして御承認になつたといたしますならば、その点でやはり一応の前の承認が訂正されたものと、こういうふうに考えておりますので、改めて建設委員会その他の承認を更新するというようなつもりはございません。
  274. 田中一

    田中一君 東京都は二十七年度、二十六年度、二十五年度、三年に亘つて政府から割当てられた公営住宅費を返上しております。ところが二十九年度の都の予算を見ますと、三十九億の住宅費を計上しております。そうしてその内容を見ますとそのうちの二十億は起債を以て賄う。こう予算書に書いてございますが、自治庁長官はこれを承認しているものか。或いはこれが承認されたものならば建設は可能と思います。併し承認しないものならば又二十九年度には国から補助したところの住宅費を返すというような現実が生れると思うのです。その際全国にはまだまだ住宅のほしいところがたくさんございます。この点についてはどういう御見解を持つておられるか伺いたい。
  275. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) どういうお尋ねでしたか、東京都だけの二十億の起債予定をどうするかというお尋ねだけでありますか、それとも全国の分
  276. 田中一

    田中一君 東京都だけです。
  277. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) 東京都がそういうふうに予算を組んでいるということを私も今初めて承知をいたしたのでありますけれども、自治団体、殊に都道府県が予算を組みましたときには、一応そういう見通しを以て希望を含めて予算を組んでおるのでありまして、過去の何年間かのやり方から見ましても今の地方財政の一般財源とか起債というようなものを全体から判断をいたしまして、東京都のような財政の比較的にゆとりのある所にこれだけ大きな財源を起債のわくとして与えなければならんということは到底考えられないことであります。
  278. 田中一

    田中一君 現在我が国の住宅行政は厚生省並びに建設省の二本で出ております。御承知のように厚生省からは産業労務者に対する厚生年金の還元融資という形で府県を通じて流されております。建設省の場合は住宅金融公庫法の単行法で出ております。このような考の窓口がおのおの異なつた貸付方針、異なつた利率、そのようなもので住宅供給をやつておりますが、この点について一元化する意思があるかどうか、両大臣に伺います。
  279. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) お話のように住宅行政は、今建設省を中心として厚生省もこれに関係をいたしております。従いまして建設省と厚生省とはよく連絡をとつて、殊に第二種住宅の問題については、どちらかと申しますと、厚生省が比重を重く持つている、こういう恰好になつております。併しともそれに関連して参つておりますので、或いは建設の計画なり、居住者とか家賃その他の問題につきましては、よく関係を保ちながらいたして参つておりますが、お話のように、建設、厚生同省におきまする住宅行政におきましては、願わくば一元化するほうが将来は妥当であろうとも考えております。併しこれらの点につきましては、よく行政機構の整備等について目下検討をされておりますので、これらの点から十分検討して参りたいと思つております。
  280. 南好雄

    政府委員(南好雄君) お答え申上げます。只今厚生大臣からお答えして頂きましたように、この住宅政策が三つにわかれていると申しますことは、或る意味においては支障の来る場合もございますので事務的には十分に連絡をつけてやつております。併し厚生省所管の住宅は田中先生御承知の通り厚生年金の地方還元という趣旨でやられております。必ずしも建設省の住宅政策と全く同一方針をとるというようなわけに参りかねる節もあるやに伺つております。併しいずれにいたしましても、貸付利率とか或いは償還年限等が甚だしく違うようであれば、たとえ対象が違つておりましても国の政策として不都合な点も生じますので、こういう点につきましては両省が十分事務的連絡をいたしまして支障のないようにやつて行きたい、要は無理に窓口を一つにせずとも相互の施策に矛盾のないようにやつて行きたいという趣旨で、只今事務的に連絡をいたしておるような次第でございます。
  281. 田中一

    田中一君 今の問題について貸付条件、利率などが違う点は大蔵大臣も御存じですか。
  282. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) その資金の性質が違うので違うことは知つておりますが、どういうふうに違つているか細かいことはよく存じませんので政府委員からよく答弁いたさせます。
  283. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 地方債で参りますものと、厚生年金の還元分、これも資金運用部の資金でありますから同じでありますが、住宅金融公庫から流れます資金のほうが率が幾分安くなつております。従いまして又償還年限等につきましても住宅金融公庫のほうは比較的長期になつておりますが、資金運用部資金のほうはそれほど長くないと承知いたしております。
  284. 田中一

    田中一君 最後にもう一点伺いますが、二十九年度予算を見ますと、官庁営繕費が二十八年度は十二億幾らが七億に軽減されております。ところが一方行政整理のほうでは三百六十八名の整理をする。併し又一方において百三十七名の増員をするという形になつております。事業量が減つて一方整理をし一方増員をするという形です。これは無論保安庁の仕事、又は安全保障諸費から駐留軍関係、その他の営繕が行われるという見通しの下にやつていると思います。併しながら一方保安庁では又三百名くらいの営繕の定員増をやろうとして予算計画も立てておりますが、このように不確定なる事業のために百三十七名の新らしい定員増をやるという考え方はどういうところから来ておるか。同時にどういう大蔵大臣の職権か何か知りませんが、少くも保安庁並びに安全保障諸費から出るところの営繕費という金は誰が配分をして、そうして若しも建設省の営繕局に持つて行くならば何年間の計画性があるものか、どういう配分をするかを伺いたいと思います。
  285. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 今の分については、保安庁の関係は保安庁でやるのであります。従いまして大蔵省が直接この関係は持つておりません。  なお付け落しましたが、その使途が一方で減り一方でふえていることはどういうことかということでございましたが減る分は行政整理の分でございましてその後法律措置等でふえる分があります。これは大蔵省の方の例を見ても、繊維税、今のあれなんか通りますれば多少違います。又地方税だつたものが国税に移管されると又違いまするが、同時に他方では一定の率に基いた減員をいたしますので、そういうことが各方面に出ていると思います。但しこれはいわゆる行政管理庁のほうでやつておりますから、私どものほうの予算がそういうふうに相成つております。
  286. 田中一

    田中一君 行政管理庁の答弁を求めます。
  287. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 行政整理と定員の増減との関係只今大臣から御説明がございました通りでございます。建設省と特調との関係は、多少定員の振替えがございます。調達庁の減らされる定員を建設省に持つて参りまして、国全体としては単なる振替でございます。増減はないわけでございます。  なお臨時的な計画のために増員をやるのはいかがであるか、建設その他の関係を考慮しているかというお尋ねでございましたが、これは毎年々々各省の定員を洗い直しているわけでございまして、そういうふうに毎年洗い直すことが結局国費の節減を期待し得るゆえんだと考えておるわけでございます。その場合に極く短期の臨時的な事業でございますれば定員の増加という形ではなくて自由労務者等を雇うという道も開かれておりますけれども、そうでない場合はやはり定員がふえたり減つたりするわけでございまして、これは計画も大事であると思いますが、予算の面ではその問題並びにほかの諸般の要素をかみ合せまして毎年再検討をしている、さような実情なつております。
  288. 田中一

    田中一君 建設大臣に伺うのですが、今の問題ですね一体保安庁並びに安全保障諸費から来るところの金が二十九年度幾ら建設省が預託を受けるか、或いは三十年度は幾ら受けるかという計画がなければ、少くとも一般財政では減つておるのです。約半分近くなつておるのです。これに対する定員増は考えられないのですか。一体保安庁並びに何といいますか、大蔵省が金を握つていますから、この二つの問題はどのくらいの事業量を引受けるかということは、明確になつておつたらば御説明願いたいと思います。
  289. 南好雄

    政府委員(南好雄君) お答え申上げます。二十九年度の保安庁の費用は九十億でございます。それから安全保障諸費は二十八年、二十九年を合計いたしまして二百六十億になつております。人間の関係は二十九年、三十年、三十一年というように長期の見通しが立てられれば非常にこれに越したことはないと思いますが、財政状態とかいろいろの点を考案いたしまして、そう長期に亘らなくても、今主計局長のお返事がありましたように、二十九年につきまして毎年人間を洗つて或る程度の増減をやつて行くということでも、仕事をやる段において支障のないように大蔵省と十分連絡をとつてつておるような次第でございます。
  290. 田中一

    田中一君 もう一点。建設省中心にお話して甚だ失礼ですが、建設省の現場の職員というものは労務者と一緒になつて働いている関係上、朝は三十分乃至一時間早く、夜も同じく三十分乃至一時間遅く、土曜日は午後もすつと勤務しておるのです。ところが現場員に対する超勤というものは二十七年度が一カ月六時間しか渡してございません。二十八年度にやつと十二時間渡すようになりました。そこでういう場合起動が正確に完全にもらえない限り超勤を拒否するという形は違法でありますか、違法でございませんか伺いたいと思います。
  291. 南好雄

    政府委員(南好雄君) お答え申上げます。建設省の仕事田中先生も御承知の通り、地方建設局におきましては直轄事業で面接仕事をしておるところがあるのでございまして、その方面におきましてはお言葉の通り直接労務に常時共に従つておるわけでございます。超勤は二十七年、八年、九年と漸次大蔵省も大変了解して頂いてふえてはおるのでございます。併し超勤の出し方が御承知の通り予算の範囲内に、こういうことになつております関係から、或る場合におきましては予算がなくなるというようなことも出て参るのであります。そういうような場合には誠にむずかしい問題にはなるのでありますが、現在のところではどうにかこうにかやれる程度に行つておるというのが実情でございます。
  292. 田中一

    田中一君 労働大臣に伺いますが、国鉄その他公共企業体が超勤を若し払わん場合、これは超勤拒否をしても当然これは違法にならんというような見解をあなたはお持ちかどうか伺いたいのです。同時に今の建設大臣の御答弁は甚だ不満足で、当然働いておる超過勤務に手当をやらん場合には無論これは職場を放棄してやめてもよろしいという御見解のもとに御答弁なすつたと思いますが、もう一遍伺います。
  293. 安井謙

    政府委員(安井謙君) お答え申上げます。三公社五現業の公労法適用の企業体におきましては、これは当然こういつた不払という問題は起り得ない。あればそれは監督官の摘発その他の適当な処置がとられる、こう心得ております。
  294. 南好雄

    政府委員(南好雄君) お答え申すげます。建設省におきましては先ほどお答え申上げましたように、予算の範囲内において超勤を出して行く。地方建設局におきましても予算の範囲内において超過勤務を払うような方法で仕事を勘案してやつて行く。予算がなくて無理に働かすというようなことは今のところはそう見受けられない。どうにかこうにかつじつまを合してやつて行ける状態である、こう御返事申上げたんです。
  295. 青木一男

    委員長青木一男君) これにて一般質疑の各派持時間は終了いたしました。一般質疑は一応終局いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十五分散会