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1954-02-25 第19回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聴会 ———————————————— 昭和二十九年二月二十五日(木曜日)    午前十時三十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            三浦 義男君    委員            石坂 豊一君            伊能 芳雄君            小野 義夫君            鹿島守之助君            小林 英三君            佐藤清一郎君            白波瀬米吉君            高橋  衛君            瀧井治三郎君            宮本 邦彦君            横山 フク君            吉田 萬次君            岸  良一君            新谷寅三郎君            田村 文吉君            高木 正夫君            中山 福藏君            村上 義一君            岡田 宗司君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            三橋八次郎君            湯山  勇君            相馬 助治君            曾弥  益君            松永 義雄君            山下 義信君            苫米地義三君            武藤 常介君            千田  正君   政府委員    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       正示啓次郎君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   公述人    経済評論家   高橋 亀吉君    武蔵大学経済学    部長      鈴木 武雄君    不二商事株式会    社社長     高垣勝次郎君    国民経済研究協    会理事     岡崎 文勲君    主婦連合会副会    長       船田 文子君    日本労働組合総   評議会調査部長  島  清丈君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十九年度一般会計予参算(内  閣送付) ○昭和二十九年度特別会計予算内閣  送付) ○昭和二十九年度政府関係機関予算  (内閣送付)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。本日は公聴会において公述人の御意見を伺うことにいたします。公述人の方々はお忙しいところをおいで頂きましてありがとうございます。先ず高橋亀吉君にお願いいたします。
  3. 高橋亀吉

    公述人高橋亀吉君) 二十九年度の予算そのものに関連したことは鈴木君その他専門の方のほうからお話があると思いますので、私は今度のデフレ政策が一体どういう影響を及ぼすか、どうせねばならないかというふうなデフレ政策そのものの一般に関して私見を述べてみたいと思うのであります。  今度のデフレ政策は目的は四つあると思うのでありますが、その一つは生産以上の消費を抑圧しようということであります。第二は物価を下げて日本経済国際競争力を強化して行く、そうして輸出の増進、輸入の削減を図ろうとすることであります。第一は資本の効率をよりよく利用して国民蓄積を増大して行こうということ、第四はこのデフレ政策がてこになつて民間事業の整備を徹底させて行こう、この四つの目的を持つているものだと思うのであります。自然この政策をどう進めて行くか、どういう手を打つべきか、どういう影響があるかということはこの四つの目的に合致するか否かということを中心にして評価されるべきだと思うわけでありますが、ところでデフレ政策というからにはインフレの根源をからすということに第一に目を向けるべきだと思うのでありますが、それは財政、特に中央及び地方の財政の放漫を是正するということは言うまでもないのでありますが、併し今日の日本の国際収支を悪化させたインフレのより大きな原因は事業経営の放漫というところに根ざしていると思うのであります。その事業経営の放漫を助長し促進したものが財政金融の放漫である。こういうことが言えると思うのでありますけれども、併しこの際インフレの根源をからし、国際収支の悪化を防ごうというのには最も大きなインフレ要因をなしている事業経営の放漫を是正するということ、それに関連して国民の過大消費を抑えるということ、即ち財政事業経営国民消費、この三つの放漫を是正するということでなければならないわけであります。単に財政の緊縮というだけで目的が達せられるものではないと思うのであります。それからして財政を緊縮するということは当然にこの三つの面の放漫な消費を抑制するそのてこになる、こういう意味において財政の緊縮が考えられるべきだろう、こういうふうに思うのであります。そこで問題になります点は現在のデフレ政策と申しますと主として財政金融でありますが、それで以上の目的が達せられるか、これで十分か、或いは行き過ぎておるか、或いは過小か、こういう問題が第一に起ると思うのであります。次にはそうしたデフレ政策経済界が果してこれに耐えるかどうか、その影響は一体どうだ、こういう問題があると思うのであります。そこで、それらに対してどういう対策が必要か、これが今日の問題の点だと思う次第であります。  先ず財政デフレ政策でありますが、これは財政消費を削減して国民経済有効購買力有効需要を減らす、これが第一の目的を持つておると思うのでありますが、これにはそのどういう点を減らしたらいいかという面において相当問題があるわけでありますが、多分これは鈴木君等があとで専門の立場からお話があると思いますから、私は一般論を申す関係上その点は省きます。それから財政デフレのもう一つの役割は事業及び国民の負担を軽減するということであります。併しさつき申しましたようなこの際デフレ政策を必要としておる一般的観点から言いまして、財政デフレ政策の持つておるもう一つの大きな意味は、政府は財政上のデフレ政策を強行するということによつて、全体の今日本が必要としておるデフレ政策をあらゆる方面に断固として進めるこの意思表示をしておる。政府の財政に対する態度によつて他の全体のデフレ政策に対する政府の決意というものがここに指標的に現われる、そういう意味において財政デフレというものが大きく見らるべきだというふうに思つております。  ところで今度の財政デフレ経済的影響でありますが、これは三つのアングルからその影響が計られると思うのであります。一つは通貨をどこまで収縮し得るかという点でありますが、これは御承知のように歳入において約四百億円内外縮小とみている。こういう点が超均衡予算的な性格を実質的に持つている。こういうわけでありますが、これは併しデフレ政策が成功すれば実際このくらいの収入減はやはり起ると見るべきでありましようから、果して実質上の通貨収縮政策になるかならないかということは疑問でありますが、とにかくその面から見て影響を考えるという点が一つありますが、この点はさつき言いましたようなわけでそう大きく経済界影響を及ぼすと見るほどのものではない、こういうふうに言い得ると思うのであります。もう一つの見方は、前年度つまり二十八年度に比べて今度の財政がどれだけ収縮しているかという観点から影響を見ようとする点でありますが、これは御承知のように一般会計で二百七十七億、投融資会計まで加えて六百億近くが前年度に比べて少い。それだけ経済界影響が来るわけであります。多くの見方はこの金額を中心にしてどういう影響があるか。こういうふうに見ているわけでありますが、併し御承知のように地方財政までも入れればそう減つていないということになるのでありまして、これだけであれば財政面から来るデフレ経済界に及ぼす直接の影響というものはそう大きいものではない、こういう見方が一応成り立つと思うのであります。併し経済界に及ぼす影響という面から見ますと、以上二つの点よりもこれから述べます第三の点がより真実に近い予想になるのじやないかと思うのであります。というのは経済界は前途を予想していつも動いているのであります。そこで二十九年度予算というものをこれまで経済界はほぼどれくらいのものと予想して動いて来たかと言いますと、御承知のように少くとも一兆二千億円内外に上るものじやないか、それ以下にはよう抑え得ない情勢ではないか、又今までの年々増加して来たテンポから言いましても大体一兆二千億、これがほぼ今までのテンポから言えば妥当な点ではないかというふうな考え方から、経済界自身は二十九年度は一兆二千億円の予算、こういう予想の下に経済活動をして来たと見るべきなんです。それは現に十二月初め頃までも、或いは中頃までもそういう考え方が瀰漫しておつたわけであります。然るにそれが一兆億以下に抑えられた。こういうわけでありますから経済界への影響としては約二千億円の収縮が来た、こういう影響が現われる。こう見るべきであろうと思うのであります。そういうふうに見ますとこの程度の財政デフレでありましても相当の影響経済界にある、こう見ざるを得ないということになると思うのであります。  併し二十九年度というと少し時間が食い違いがありますが、暦年で二十九年における経済界デフレの本体は、財政よりも金融自身にあると思うのであります。金融の収縮という面のほうが今年のデフレを最も強く支配する要因である、こういうふうに見るべきであろうと思うわけであります。従つてデフレ影響を見る場合には金融を合せて特に強く見る必要があるわけであります。金融のデフレのほうがひどいというのは日本銀行が金融を締めるからという意味ではないのでありまして、それよりも国際収支が悪化して国内の資金が海外に流出する。そこから若し金本位制度であれば自動的に金融が締まるはずでありますが、今日管理通貨の下といえどもこういう影響は依然として強く作用するのでありますが、それが少くとも暦年の二十九年においては三億ドル内外の赤字になる。約一千億円以上の資金が海外に流れ出るわけであります。放つておけばそれだけ通貨が縮小する、こういう働きをするわけであります。先にも申しましたように財政面においては或いは四百億円近くの通貨の縮小があるかも知れないが、併しこれはデフレ政策が成功すれば歳入減がそれだけ多くなつて通貨の縮小にはならない公算も強いものでありますが、金融面では明らかに約一千億円の通貨の縮小が起る、こういう状態にあるわけであります。そこで問題はこの国際収支から起る通貨の縮小の全部を直ちに通貨の縮小として現わすか、或いはそれを急激にやらずに徐徐にそれが出るようにするか、又はその一部分を日本銀行の手心で緩和する措置を講ずるか、こういうことが問題になるわけでありまして、その措置如何によつて影響が違つて来るのであります。併しそれらについてはあとで時間があれば述べたいと思うのでありますが、併しこの財政金融デフレ影響として挙げました以上申しました点は、実はどういうデフレの量がここに起るか、こういう問題だけなのであります。一定のデフレの量がここに起るとして、それが経済界にどういう影響を及ぼすかということになりますと、これはここでデフレが起る量ばかりが問題ではないのでありまして、これを受入れる経済界の状態が一体どういう状態にあるか、その状態如何によつて影響は非常に違つて来るのであります。丁度健康体であれば風邪をちよつとひいてとんぷく一服飲めばなおるぐらいの風邪でありましても、体が非常に弱つておるとか或いは相当結核が進んでおるとかということになれば、その風邪がもとで重患にもなりましようし命取りにもなるのであります。それと同じようでこれだけのデフレを受入れる現在の経済界がどういう状態にあるのか、健康体であればこれだけのデフレの量があるその影響だけを一応見れば経済界への影響というものはおよそ見当がつくわけでありまするけれども、併し現在の経済界状態如何によつては、健康体の場合に比べて或いはそれに何倍する影響が出るかも知れないのであります。そこで、ここで財政金融デフレ経済界に及ぼす影響を見ます場合には、そのデフレの量と速度も無論大きな要因でありますけれども、これを受入れる経済界体工合というものを検討してみる必要があるわけであります。  ところで現在の日本の経済界はどういう位置にいるかと言いますと、さつき申しました通り一つインフレの要因として放漫な経営をしている。財政以上に国全体から見ればインフレ要因をばらまいている。これを一つ抑えねばならないという位置にあるわけでありますが、その放漫経営をやつております最も中心的な部面は、減価償却を怠つて欺瞞的な利潤を出して資産を食いつぶしている。払つている税金も配当も賃金も利子も、無論重役の賞与とか社用族的な費用も利益があつてつているのではなくて資産を食い込んでやつている。こういう面が非常に多い。こういう点であります。そこでこれをどうして抑えるか、こういうことが必要になるのでありますが、大ざつぱに数字を見ましても約年々二千億円の減価償却の不足が起つているのであります。これは大蔵省調査国民所得に対する減価償却率を昭和九—十一年平均と二十七年とを比べてみましてその差が約三%八になつておりますが、これを国民所得にかけると約二千億というものが出るのであります。そのほかに企業界はそれまでの赤字損失を隠して、ごまかした経営をやつている。これがどのくらい大きな国全体のインフレを助長しているかと言えば、今問題になつております例えば保全経済会を見ればいい。内容が空になつてつてもあるような顔をして高い配当を払つている。そうすれば受取つた人間は金があるつもりです。財産もあり金も入つたつもりで消費している。実際は皆食い込んで大部分はないのだ。こういうような全体を食い込みながら皆に消費カを与えている。こういうのが事業界にも非常にと言つていいくらい多いのであります。これをここで中止せしめねばならない。こういう位置にいるのであります。そのほか現在日々損をしているにもかかわらずそのうちにはよくなるのではないかというふうな淡い期待を持つて、いわゆる自転車操業、損を隠しながら経営をしている。こういう面が又今日の日本のインフレ、所得以上の消費をしているそういう方面に大きな影響を及ぼしているのであります。これを中止せしめる必要がある、こういう事態にあるのであります。  それからもう一つ今日の経済界の位置を語るものはこういう点にあるのであります。一体大景気の時代には財界は金が容易にもうかるものでありますから経営が非常に放漫になるのであります。それは当然なんであります。それを経費を二倍三倍に膨脹させても利潤が四倍五倍ともうかるときには経費の膨脹というものは問題にならん。そこで経営がいつでも大景気の場合には放漫になつて来ます。その上にそういう時代には物価が高い、それでもうかる、こういう採算で事業がいつも乱立されます。相当事業が起るのであります。ところがそれが平常状態に返ればそんな放漫な経費は許されない。乃至は物価の高い時代に作つた事業はやつて行けない。現に問題になつている船なんかはすでにそうでありますけれども、そういう事態に追込まれるのであります。そこでその上に相当の事業は到底支払いきれないような借金を背負つておる。整理をすればそれだけの借金を払う能力がないにもかかわらず、放つておけばごまかして金利だけ払つておる。こういうふうな形をやつているのであります。そういう面を整理しながら日本の経済はやつて行けるものではないのです。日々くい込みを続けておるということになるのであります。  そこで以上申しましたような経済界の整理を平時にもどれば必要とするのであります。  ところで現在の日本の経済はどうかと言いますと、終戦後物価が約三百倍にも暴騰し、その上に朝鮮ブームの段階というものを経ておりまして、或る意味において非常な大景気のあとという状態にあるわけでありますが、当然自然そういう整理を一応やらねば経済の立直りは不可能なんです。到底できない。ところがそういう整理を事業家は放つておいたらやるかというとなかなかやらないのです。これは大正九年の反動のあとでもその前の場合でもそうであります。というのはそうやればぼろが出る。自分の位置もなくなり事業も倒れるかも知れない。こういうわけでありますからできるだけ弥縫したい。その上に或いは景気の波がそのうちには寄せてそれで救われるのではないかという希望を常に持つのであります。人間の欲で同じようなことを考えて同じ歴史をくり返すのであります。もう一つは今度も問題になつておりますけれども、こういう場合に政府の救済援助を求める。そこでスキャンダルが出る。大正九年ののちにも非常なスキャンダルがその場合に出ました。で御承知のように軍部のフアツシヨを養成したような政党に対して国民が信頼をなくした。そういう気分は大正九年以降の反動の整理を事業界が自力で自主的にやらずに、或いは政府の援助救済その他の運動をうんと続けたということにあつたのであります。今度も同じことをやつてつて現に御承知のような問題を起しておる。そういうわけで放つておいてはなかなかやらないがどうしてもこれを整理をやらねばやつて行けない。それは丁度財政も同じなんであります。財政も今までのような財政ではやつて行けない。これは整理せなければいかないという場合に、政党なり政府なりが事前に早々と整理をやつた例があるかというと歴史においてもそういうことはめつたにないのです。それは事業界と同じでありまして、せつぱつまらないとやらないせつぱつまつて今度のときもそうです、二十八年度の予算でやるべきことをやつていなくて二十九年度に急カーブを描いてやつた。それは要するに国際収支がいよいよ悪化してこんなでは大変だ、こういう事態ができて初めて財政の整理もできたわけであります。それと同じように経済界の整理も事態が相当急迫して、その急迫した事態が相当進まなければやらない。それはどういうことかと言うと不況です。不景気が来る。金詰りが来る。これではにつちもさつちもできない。今までのやり方ではとつてもできないという事態が起らない限りやろうとはしないものなのであります。そこで今まで財政なり金融なりそれで財界の弥縫を助けて来たそういう政策を打ち切る。そうして経済界の相当な不景気を出す。金詰りを出す。そうして初めてこういう財界の整理ができるのであります。そういうわけでデフレ政策経済界が必要とし、その国が必要としております場合にはそれはいつも財政金融デフレだけではないのでありまして、それがてこになつて今申しますような経済界の整理を徹底さす、財界の切開手術をやらす、こういう作用を合せて常に持つておるのであります。そういうわけでありますから今度のデフレは単にこれだけのデフレの量があるというだけではなしに経済界がそういう状態にありますから、併せて経済界の今までの弥縫、ごまかし、やりくりというものが表面に出て来る、その整理をせねばならない、こういうものが併せて起るわけであります。当然それだけの影響が財界に起るものと見ねばならない次第であります。  そこでそういう場合に先ず一番必要なことは国民各層の人心を一変さすことなんです。今までのような安易なやりかたでは駄目だ、ここでさて今後やつて行けるという状態にまで経営を全部やり替えにやいけない。それは国民の生活においても労働のほうにおいても同じである。そういう気分を一新させ、政党のほうでもそうでありまして、少し困ればすぐ財政を膨脹さして何とかしてやろう、そういう気分を一新さしてしまう、こういうことが必要であるのであります。その自覚が早くできればできるだけデフレの量は少くても問題が解決され、目的が達せられるのでありますが、その自覚が少ければ少いほどデフレの量が多くなつてにつちもさつちもいかなくなる。行政力が強くならないと整理ができない、自然反動が多きい、こういうことになると思うわけであります。ところで現在の財界はどうかと言いますと、これだけのデフレ政策をとりながら御承知のようにまだこのデフレ政策を果して遂行し得るか否かということについて半信半疑の状態である。或いはデフレを強行すれば財界がそこここに破綻が起る、そんなことは今の弱体内閣ではやれないのじやないかということから大したことはやらないだろう、こうした考え、又やつてみても財界に破綻が起きればこの前去年の春、いろいろ不渡手形が大会社に出ると、日銀が救済したように今度もやるのじやないか、やらざるを得ないのじやないか、そうなれば却つてインフレになるのではないかというような考え方を持つておるとか、或いは手持外貨がここまで減つてくれば結局は輸入制限をするのじやないか、そうなれば物価はむしろ上がるのだというので思惑をやつている、つまり物価が下るどころか上がるのだという思惑も行われている。或いは円レートの切下げが必至じやないか。こういうふうな考え方が相当財界を支配しておりまして、デフレ政策を遂行し得る力があるかないかについて半信半疑の状態にあるのであります。こういう状態が現にあるということは、若しこれを続けよう、その目的を達しようとすれば今一段の強いデフレ政策の圧力が必要だ、こういうことに一方にはなります。若し又その圧力から来る打撃を恐れてここで態度を緩和する、こういう形になればデフレ政策は頓挫して来る。一度頓挫するという形になればもはや国民は今日の政党政治に対してデフレ政策を遂行する能力なしと、こういうふうに見ると思うのであります。つまり政党政治に対してデフレ強行の能力なしという不信任が起るわけであります、そうなればこれは当然に大きなインフレ思惑が国民全体に起つて参るわけでありまして、それを阻止することはそうなれば容易でない、恐らくできなくなるのじやなかろうか。やろうとすれば今日以上の、それに何倍する蛮勇を振つてデフレをやつて相当の大きな犠牲が起つてもかまわないだけのことをやるか、どららかになると思うのであります。そういうわけで中途で挫折さすということは大変なことだ。こういうふうに思うわけでありまして、経済界をできるだけ大きな反動なしに而もデフレの目的を達しようというのには、デフレ政策を遂行するこの決意に国民が半信半疑でいる状態を早く打破する必要があると思うのであります。これは今日重大なポイントであると思うわけであります。そのためにはどうしても或る点の圧力を加える必要がある。と言つても今のところどういう圧力を加えるかというと、政府の決意、政党の決意というものを一段と強めるほかない。とすれば手取り早い方法は金融を一段と締めるということでありますが、併しできるならこの状態であるならば、二十九年度予算がまだ通過もしていないのでありますけれども、それに対しても実行予算を組んでもう一段締めるというくらいの決意を現わすべきである。そうすれば国民も財界も政府の決意というものに信頼をおいて今言つたような反抗運動を起さない、それだけ大きな圧力なしにデフレの目的が達せられる。こういう形になるのではないかと思う次第であります。  ところで以上申しましたことによつてわかりますように、今度のデフレは相当の影響経済界に出ます。と言うよりはさつきも言いますように、今日の日本の経済界は今までの通りでやつていけない事業がうんとあるのであります。これを整理せねばいかない、或るものは合同さすべきであります。或るものは減資をする、うんと縮小せねばやつて行けない事業も相当あります。経営もうんと整理せねばならん、配当も減らさすべきである。そうやつて行かなければやつて行けない事業がざらにあるわけであります。当然これはデフレ政策をとらなくてもそれらの事業はやつて行けないのであります。ただデフレ政策はそれらの事業の整理を促進さす、ふんぎりをつけさすとこういう働きをするわけでありますが、それだけ見ましても相当の破綻が続出する、かなりのシヨツクが起る、こう見ざるを得ないわけであります。  そこでそういう場合にそれらの破綻を恐れて、ここで何とか手を打つ必要があるかどうかという問題でありますが、財界からは現にそれらについて相当の陳情もあるようでありますけれども、これらは断じて中途で救済すべき手を打つべきでないと思うのです。これは大正九年の反動以降の場合によく現われておるのでありますが、当時御承知のように九年反動後、財界の癌という言葉で言われておりましたが、財界の整理ができていない、業界の整理ができていない。事業の整理を徹底させ癌を手術しようとすれば命にかかわる。放つておけばだんだん体が悪くなる。財界が悪くなる、こういう意味で財界の癌と言われておつたのでありますが、これがあつてなかなかできずに結局大正九年からぐずぐずして昭和二年の金融恐慌の破綻にまで持つて行つたのであります。この当時の政策を顧みてみますと日本銀行なり政府なりは、経済界に混乱が起りそうだと言いますと、その混乱を防遏するということに全力を挙げた。それには目先一応成功したけれども、より重大なポイント即ち経済界の整理すべきものは、損のあるものは損を切らし徹底的な整理をせねば日本の経済界は立ち直らない。そこで整理すべきものは整理さすのだ、こういうメスの入れ方が非常に不十分である。これが大正九年以降の経済の癌を作り、それからさつき言いましたようなその救済のために政党に運動してそうして政党の腐敗を起したが、結局は昭和二年の金融恐慌でそれが破綻した、暴露した。こういうことがあるのであります。そこで個々の問題はここで少々の混乱が起きてもデフレを遂行して整理すべきものは整理さすということが先ず第一段に必要であると思うのであります。併しながら今の日本の経済界はまだ病後でありまだ健康体にもどつていない。財戦の痛手を受けて病後でありますから整理するだけでへとへとになつてしまう。相当困つてしまう。それを整理したあと放つておいてひとりでに立ち直るだけの力があるかというとこれはないと見るべきである。そこで整理した上でこれならやつて行けるという状態を作つたからには、その場合にはこの立ち直りを促進する政策をとる。こういうわけで整理を先ず徹底させて、その上ならば必要な手は伸べる。その態度をとるべきであると思う。つまり混乱が起ることを恐れてそれを防遏するという政策を排して徹底的に整理させてそのあとで必要な手は伸べる、こうあるべきだと思うのであります。無論国家的な必要の事業は放つておいてはやつて行けない、こういう事業もありましよう。それに対しては或る程度まで国家が必要な保護をし助長政策をとる。こういうことも必要になると思うのでありますが、これも先ず整理を徹底さすべきなんで、例えば今度汚職事件で問題を起した船舶にいたしましても、なぜあれだけの保護政策をとるならば合同を条件にしなかつたか、或いは経理の徹底的な整理を条件にしてその上でなぜあれだけの援助費を出さなかつたかというふうに、整理さすべきこともさせずにいろいろの金を出したところで駄目なんです。整理を先ず徹底させて国家的に必要な事業であるならばそのあとで必要な施策を講ずべきだ、こういうふうに思うのであります。そういうわけでここで財界に或る程度の破綻が起るのを恐れる必要はない。問題はその整理ができたあとでどういう手を打つか。この準備ができておるかどうか。そこに問題がある。こういうふうに思うのであります。例えば今の日本で整理を要求しておるからさつき言いましたような合同、合併、資本の整理、減配、無配、こういうようなことも相当必要でありましようし、或る場合には借入金も半分ぐらいちよん切つて債権者に負担さすというぐらいのこともあつて然るべきでありましよう。当然に経費は徹底的に整理する。経営はうんと合理化する。従業員も過大なるものは整理する。こういうことも必要になつて来ると思うのであります。  のみならず私はここで重大な点だと思いますことは、一体日本のようなこういう資源が貧弱で、而も敗戦後更に貧弱になつて、而も敗戦の結果資本蓄積の大部分は破壊されている。生産条件は非常に悪化した今日の日本において、主なる基礎産業において実働七時間しか働いていない。而もその労働者が中小企業のほぼ倍の賃金をとつている、それだけはコストが高くなつている、これでやつて行けるかどうかという点です。そういう整理をするのには政治力がない。経営者にもできないのですよ。今のなりじやあできない。これは事業が赤裸々になつてつていけるかいけないかという生死の断崖に立たなければ、これでやつて行けるかどうかということがはつきりしないのです。そういう意味においてもいい加減なことでこれでやつて行けるもんではないのでありまして、全体的にここで整理すべきものは整理する。日本の経済の如実な姿を赤裸々にここに出して、必要な整理は、敢行さす、その上で手を打つ、こういうことをやるべきではなかろうか、こう思うのであります。これに対して経済界その他の人ではそういうことは戦前のように労働勢力の弱いときはできただろうけれども、今日のような場合にはそんな整理ができつこはない。そんな切開手術はできないのではないかという見方があるのでありまするが、然らばこのままでやつて行けるかということがさつきも言いましたように根本の命題になるのであります。さつきも言いましたように、これではやつて行けないのです。やつて行けるはずがないのです。どんなに考えたところで実働七時間でこの日本の資源の貧弱な資本のない国で、どうしてやつて行けるのか。それは一部分の産業はやつて行ける。又それだけの払えないことはないけれども、それだけ高い賃金をとつているのですからほかのほうの産業をみんな圧迫している。全部がやつて行けない。こういうわけで国民経済全体から見てこれでやつて行けるか、こういうことが問題になるのでありまして、やつて行けるか行けないかという面を労働者諸君にも如実に自覚してもらう、これ以外にこの問題を解決する方法はないと思うのです。それには一応なまはんかな政府の救済政策はよしてしまつて如実の赤裸々の姿を一応出す。これでなければしようがないんじやないか。とともに労働対策自身も、今のように組織労働ばかりじやなしに、組織されない労働が一番悲惨である、賃金も半分だ。そのほかに多くの半失業者、失業者がいるのみならず、これから労働年令に達する人は就職難で非常に困つている。この解決をするのには雇用力をふやすほかない。産業を発達さすほかない。それにはどうしたらいいかという、働く国民全体の広い意味の労働者全体を考えた対策を、そういう意味において立てる必要があるのでありまして、労働勢力が強いから今日そういうことができないと、然らばこのままで行つたらどうなるんだ、こういうことと、問題の解決は一体どうしてできるんだということを考えると、やはりここで赤裸々な姿を出すべきだと、こういうふうに思う次第であります。  ところでそんなことをやれば、恐慌が起らないかというと、これは私は一般的恐慌は起きないと思う。こういうデフレ政策をやればというので、よく例えば松方公がやつた明治十三年から八年間のデフレ政策が問題になつたり、或いは昭和四年から六年の浜口内閣、井上蔵相の手によつて行われたデフレ政策等が引合いに出されるようでありますが、これはまるきり事情が違つている。あのときは為替が相当下つているやつを人為的に上げようとしたのであります。その上に浜口内閣のときには世界恐慌が起つているのであります。今度はそういうものは両方ともないのであります。むしろ今日のデフレ政策にやや以た類型を過去に求めれば、近くはドツジラインでありましよう。それよりもよりよく似ておるのは大正十一年の二月に加藤友三郎内閣の海軍の軍縮を中心にして財政金融デフレ政策をとりました。つまり第一次大戦及び戦後の大景気の反動を受けたあとの経済界の整理を必要とする段階においてとつたデフレ政策、及び関東大震災後のいわゆる震災景気を抑える意味において十三年六月に護憲三派内閣で浜口蔵相がやつた金融及び財政の緊縮政策、このときは緊縮政策で当時の三井物産等に匹敵する大きな貿易商の高田商会等も倒れ、神戸の鈴木商店が危いことも表面に出た。こういう影響を及ぼしましたけれども恐慌にはなつていない。今例をとれば以上二つの面が一番よく似ておると思うのであります。恐慌になる虞れは万々ないと思うのであります。一体恐慌というのが起るというのには信用の基盤に激変が起ることが一つの条件である。例えば経済界の根抵に大激変が起つた、或いは震災が起つたとか、或いは第一次戦争がぽこつと勃発したとか、こういう形で経済界に混乱が起つた、相手の取引先の信用状態がわからなくなつた、不安になつた、こういうのでみそもくそも一緒にして相手を警戒する。こういう不安状態が出ない限りは恐慌には滅多になるものではないのであります。ところが現在は世界の景気に大反動があれば別でありますけれども、これは今のところは景気の後退はあつても大したことはない。国内の経済基盤にも何も変化がない。で各取引所も銀行も相手方の資産状態がほぼわかつておるのでありまして、こういう状態においてデフレが来たからといつて今言つたようなここに破産者が起つたからと言つて、すぐそれで全般的な恐慌が起るはずはないのであります。そんなことは万々ないと見ていい。もう一つは一般恐慌が起るというには大金融界に飛火するということが必要であります。金融界があぶない、大きな銀行があぶない……ところが今回の場合は長い間に、昭和二年の金融恐慌、及び新銀行法及びその後の整理によりまして銀行の数は非常に減つております。大体今まで恐慌の場合に銀行取付の口火になつた小銀行というものが殆んどなくなつております。そういうことを考えてみますと一般恐慌になるという虞れは万々ないとこう見ていいわけでありますし、この状態において一般恐慌を起さない方式をとるということは、大したインフレを起さずに十分とり得るのであります。一般恐慌を恐れる必要はないと思うのであります。ただ私やなんかにも大きな会社の重役が、君、僕のところでさえここでデフレやられたらやつて行けないのだぞ、我々の知つているところのあすこも何もこれじややつて行けない、だからデフレ政策とるよりないじやないか。こういうような見方がある。私はそのときにだからこそデフレ政策をやるのだ、あなたのところまでそんな今のなりでやつて行けないという経営状態じやメスを入れるほかないじやないか。あなたのところまでそうだつたらば、それは大変なんだといつて私は言つたのですが、そういうふうにみんな痛い思いをして整理をしようという段階にいないのでありますが、併しここで整理と言つても以上申しましたようにやつて行けないところを整理するだけなんです。やつて行けなくなるというのじやない。それはおよそ見当がついている。どれくらいのことをやらなければならんということもおよそ見当がついておるのでありますから、そういう恐慌が来るという虞れはない。そこで断固としてやるべきだと思うのであります。併しながらこれだけのことをやるからには、デフレのしわ寄せを全部財界に責任を負わして放つておいてできるか。又放つておいてもいい倫理かというと、必ずしもそうではない。今日のような財界の事態を起した半面には、政府の政策がその責任を負うべきものも多々あるわけなんであります。でありますから、これについてはできるだけそういう財界の整理を円滑にできるように総合的な対策が要ると思うのであります。単なるデフレで圧迫するばかりじやなしに、側面からいろいろの手段を講じてそれがやつて行けるようにする。その一つは固定資産再評価、今度国会に提出されようとする再評価、つまり企業資本充実策であります。これは私は政府原案はまだ手温いと思う。資産再評価は限度一ぱい強制すべきだ。八〇%しか強制しない。限度一ぱいにしましても、今日本当に必要な資産再評価の実はまだ七、八割に達しない。限度一ぱいやつても全体のやらなければならない部分の七、八割なんです。これを徹底的に強制すべきだと思う。それから資本繰入れもこれを強制すべしだと思う。そうなれば増資ができない、こういう議論があります。これは如何にも尤もな抗議でありますが、私は増資ができなければ、一応資本を全部繰入れて減資したらいい。減資さしたらいい。減資させれば同じことなんだ。併し減資させれば同じことだと言いながら実は重大な差異が起る。ここで減資せねばならないということは経営者の非常な責任だ。今までのように高級車に乗つて今までのような贅沢をやりながら減資ができるものじやない。徹底的に整理しなければ、事業経営を徹底的に整理しなければ減資できるものじやない。そういう意味において減資するということをやれば、強制さしたところが何ら増資に差支えないのであります。そして又そういうことをやれば株が下るという議論があります。一体株価というものは事業の真実を表明する値段、適正な値段であつて然るべきなんだ。これを政府が守る、市場、取引所が守るという性格のものだ。それが今ごまかしの株の値段が出ている。それが下る、正しい値段に下る。これがいけないからといつてこれを援助するような政策を政府としてとるべきではないと思うのであります。又繰入れないということはどういう形になるかというと、それだけ積立金の余裕があります。だものだからほかに損をしても平気でこれをやつている。簡単に積立金で損が埋められるものですから、事業の経営というものを依然として放漫にする。そういうわけでさつきも言いましたように、事業界というものは自分自身でなかなかやらない。これは単に窮業界ばかりでなく、多くの人間がそうなんですけれども、やらないものですから整理をせざるを得ないところに追い込むほかはない。そうするには金融で締めるということは非常な圧迫が他に参りますけれども、固定資産で締めるということはそれだけなんです。悪い影響が一番少くて而も事業界の整備を徹底さすことに効力が非常に強いのであります。  それからオーバーローン解消策がありますが、これはいろいろの見方があると思うのですが、私はこの際としては徹底的に整理をさして事業界の……、そうしてさつき言つたようにこれだけでへとへとになりますから、そうして相当借金や何かが過大で動けないという事業が相当出て来る。そういう場合にこのオーバ・ローン解消策というものは、それらをも考慮して全体の債務を解決する。こういう方向に持つて行くべきではないかと思うのであります。その立場から言いますとまだ早い。先ずデフレ政策を徹底的にやらして、その結果を見てどういう手を打つたらいいかというときにこれはリザーブすべきではないか、こういうふうに思うのであります。  その他独禁法にしても或いは農村対策にしても、物価を下げるというからには、御承知のように日本の賃金物価は米価と非常に密接な関係があるのでありますからこれと照応した政策をとるべきであります。殊に世界の農産品はだんだん下つて、それを基礎にして世界の賃金ができ物価が下ると、こういう場合にこれと遊離した米価政策をとりながら、一方には物価を下げようという方向をとる政策も間違つているわけであります。労働対策にしても財政にしても今までのようなやり方ではまだ駄目なんです。徹底的にとるべき措置もあるでありましようし、失業対策も今のなりで十分だとは考えられない。こういうふうに打つべき手は多々ある、こういうふうに思うわけでありますが、併しこれらを先ず全部揃えて、そうしてデフレ政策をとれという財界の要望はその限り私は正しいと思うのであります。が併し実際問題としては以上申上げましたような政策は、これは皆さんのほうが私どもよりよりよく御承知のように、これは一応勢いが出ないとできるものじやない。勢いが出なくちやいけない。勢いが出て初めてできる。  例えば浜口内閣が昭和四年——六年であれだけのデフレ政策をとつた。四年に官吏の減俸令を出した、一番最初に……。これは理論的には一番正しい方法だけれども、余り出しようが早いので勢いが付かないうちに出したから駄目になつてしまつた。今度は昭和六年には減俸案がすらりと通つた。これは先ず理論的に全部を揃えてやるべきでありましようが、実際問題としては勢いが付かなければやれない政策が多多ある。勢いを付けてやる、これが必要だと思うのであります。そういう面は頭の中へは皆さん是非入れておいて頂きたいのですが、併しこれが揃わなければやれないというのではデフレ政策はやれるものではない。先ずやつてしまつて、相当困難な事情があつて、そこで勢いが付いて初めていろいろな総合政策ができる。こう見るべきだと思うのでありますから、先ず今度のデフレ政策は徹底的にやるようにして頂きたい、こういうふうに思う次第であります。(拍子)   —————————————
  4. 青木一男

    委員長青木一男君) 時間の都合で高橋君に対する質疑は省略いたします。  次に鈴木武雄君の御意見を拝聴さして頂きたいと思います。(拍子)
  5. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 予算案の批判ということはいろいろの角度からこれを行うことができるわけでございますが、大きく分けまして二通りのやり方があると思います。  その一つは、予算案に現われました政府の各般の施策乃至は政策に関するものでありまして、例えば政府予算案では、或る種の施策には予算措置が非常に厚い、併し他の種の施策には薄いが、むしろその逆が正しい政治ではないかといつたような批判であります。或いはかくかくの施策には予算案計上程度の金額では何ほどの仕事もできない、政府はそのような政策に対して果して誠意があるのかといつたような批判であります。つまりこの種の批判は、言わば予算案を物差にいたしましての政府の施策そのもの、財政政策以外の一般政策に対する政治論的な批判であるということができると思います。  もう一つの批判は、予算案そのものに対する批判、いわば財政政策に対する批判であります。予算案の批判といたしましては、このいずれもが重要であることは申すまでもございませんが、インフレーシヨンの克服ということが当面重要な課題となつております現在のような段階におきましては、予算案そのものに対する財政政策的な純財政論的な批判が特に重要であると私は考えるのであります。ところが第一の種類の予算案批判は、政治的にも非常に派手でありまして、大向うにも喜ばれるものでありますので、多くの論者は好んでそのほうに力を入れる傾向にありますので、私のときには今更そういうことに余り多くのお喋りをする必要がないと思いますので、私はあえて第二のほうの批判、即ち予算案そのものに対する純財政論的な見地からの、従つて非常に地味な意見を申上げたいと思うのであります。  私はそのような見地から、主として第一に、今度のいわゆる一兆円予算というものが単に表面だけの一兆円予算であるということ。それから第三に、緊縮予算であるということは認めるといたしましても、果して非常に大きなデフレ的な効果を発揮する予算であるかどうかということ。この二点を中心にいたしまして私見を申述べさせて頂きたいと思います。  私は我が国の国際収支の現状からいたしまして、外貨ポジシヨンが危険な状態に向いつつあるということ、従いまして円の危機が増大しつつあるということを憂慮しているのでありまして、これに対処するために、先ず財政緊縮と均衡化を図ることが急務であると考えているのでございます。この点では、今度の予算案編成に当りまして、政府特に大蔵省がとりました緊縮方針には、私は大体において賛意を表し、又その努力には大いに敬意を表するにやぶさかでないのでありますが、これは今に始まつた私の主張ではないのでありますから、私としましては政府の目の醒め方がむしろ遅かつたとさえ思うのであります。世間ではMSA受諾に伴う防衛力増強の関係で、政府は止むなく緊縮方針に転じたのだという意見が非常に多うございますが、或いはそうであるかも知れません。併し仮にそのような対外的な関係からする制約乃至圧力というものがなかつたといたしますならば、緊縮財政というものはやらなくてよかつたのかと申しますと、そうは言えないと思うのであります。やはり緊縮財政は必要であると私は思うのでございます。国際収支の急速な悪化を眼前にいたしまして、なお膨張放漫財政にメスを当て得ないような財政家でありますならば、それでは財政家の名に値しないと言わなければならないと思います。従いまして今度の予算案に対する私の評価というものは、それが緊縮予算であるということには決して反対ではありません。むしろ賛成でございますが、果して世間が騒ぐほどの徹底的な緊縮予算であると言えるか、特に非常に大きなデフレ的効果を持つような予算であると言えるか、そういうところに問題点があろと思うのであります。  そこで先ず第一に一般会計予算が九千九百九十五億円、いわゆる一兆円予算を実現することができたということについてでございますが、これは端的に申しますと、私はインチキであると思います。昨年暮に発表されました大蔵省原案は一応忠実な一兆円予算つたと言えるのでありますが、政府案として最終的に決定を見たところの、この国会に提案されております予算案というものは、無理に一兆円予算の外観を作るために手の込んだ操作を加えられているように考えるのであります。  その一は連合国の財産補償費、これは予算に二十六億円計上されてございますが、連合国財産補償法によりまして年次支払所要額は百億円というようなことになつておりますから、七十四億円が不足しているわけであります。これを二十八年度予算計上額で未使用になつております四億円と、それから二十七年度予算の使用残額七十億円、これを繰越すことによりまして不足を補填するという建前になつているようであります。二十八年度の未使用残額を二十九年度に繰越すということは、財政法の繰越明許費となつております以上差支えありませんけれども、二十七年度の未使用残額を二十九年度において繰越使用するということは、これは財政法上許されていないのでありまして、従つて別途財政法第四十二条の特例に関する法律案を提出して所要の措置を講ずることとしているのであります。予算案の大蔵省原案では、連合国財産補償費につきましては、そういう財政法上の特例措置を必要としない建て方をしていたのであります。その後食糧増産対策費でありますとか、社会保障諸費などの経費復活が必要となりまして、そのままでは予算の規模が一兆円を超えることになりましたので、この連合国財政補償費を七十億円削りまして、これを予算外に追いやることとしたのであります。二十九年度もこの連合国財産補償費は、或いは実際の支払の必要がなく、又ありましても予算に計上されている二十六億円以内で済む程度となるかも知れませんけれども、単に外観だけ一兆円予算の形式をとりつくろうために財政法の特例法まで出すということは、御都合主義だと言われても仕方がないのではないか、悪例をあとに残すものと言わなければならないと思うのであります。  その二、同じく財政法の今の特例法によりまして、安全保障諸費につきましても再繰越を認めることにしてしるようであります。これはまあ九十億円ほどでありますが、二十七年度から二十八年度に繰越されました安全保障諸費の中で、二十八年度に未使用となりましたものを二十九年度に使用する必要が若しあるといたしますならば、特例法というようなものがない場合には、当然この未使用額は二十八年度の剰余金の一部になるわけでありまして、改めて二十九年度歳出予算に安全保障諸費の項を立てるということが必要であろうと思います。  その三、租税払戻金を歳出予算から外したことであります。二十八年度予算には九十億円租税払戻金というものが計上されております。それを今度の予算案では削つてしまつたのでありますが、租税払戻の必要がなくなつたのでないことは、これは勿論でありましようから、仮に租税払戻金が二十九年度も九十億円程度あるとしますならば、これは租税の自然増収から支払わねばならんことになります。ところが租税払戻と申しますのは、既往年度の租税の過納に対する払戻しでありますから、これを当年度の租税収入で差引くべきではなくて、当年度の歳出予算に計上しまして、当年度の租税その他歳入予算の範囲内で支払わるべきものだと思います。それを歳出予算から外しましたのは、これ又一兆円の予算の外観を取りつくろうためにほかならない。而も予算外で自然増収を使うということは、自然増収を大体棚上げするという今度の予算編成方針に背馳するものと言わなければならないと思います。  その四、国税に移管せられました入場税の措置についてであります。これは入場税の税収額の九割を地方団体に譲与するものでありますが、これは他の租税と同様に一応一般会計歳入の租税収入中に含めまして、一般会計歳出予算における交付税及び譲与税配付金特別会計繰入れという項に改めて同額を計上すべき性質のものと思います。然るにこの百七十二億八千万円というものを一般会計を通さずに、交付税及び譲与税配付金特別会計の面接の収入支出とすることによりまして、この百七十二億円を一般会計予算の外に追い出しまして、一兆円予算の外観を取りつくろつているのであります。これは国の財政としては、結局通り抜け勘定でありますから、実質的にはあえて非難すべきことではないかも知れませんけれども、どうも小手先の細工を弄したように見えましてすつきりしないのであります。租税をこのように一般会計以外の他の会計で賦課徴収しました事例は、昭和十二年の北支事件特別税と、昭和二十二年でありましたか、あの財産税とであります。この北支事件特別税は臨時軍事費特別会計に直接収入いたしましたが、昭和十二年八月の実施から翌十三年三月まででありまして、僅か九カ月であります。そして支那事変特別税というものに代りまして、それからは一般会計に収入して、改めて一般会計から臨時軍事費特別会計に繰入れているのであります。財産税は、これは一回限りの臨時税でありますから、財産税等収入金特別会計に直接収入したというのも止むを得ないと思います。ところが入場税は経営税でありまして、且つその九割が譲与税として地方に配付されるといたしましても、一割は国の組税収入として国の歳出財源となるものでありますが、それを交付税及び譲与税配付金特別会計受入金としまして雑収入に計上しているというこのやり方はどうも感心できないのであります。  その五、国有林野事業特別会計の利益金三十二億円でありますが、今度の予算では、国有林野事業特別会計におきましても、民有林につきまして治山事業を行うこととしておりますが、従来の方式からいたしますならば、この種の事業費は一般会計の公共事業費のほうに計上し、国有林野事業特別会計のこの利益金は一般会計に繰入れるべきであろうと思います。それをしてないというのもやはり一兆円の外観を取りつくろうためであろうと考えられます。  その六、郵便貯金特別会計歳入不足補填であります。従来資金運用部特別会計の剰余金を一般会計に繰入れまして、一般会計から郵便貯金特別会計に繰入れておりましたのを、二十九年度予算案では、資金運用部資金から直接繰入れることにいたしまして、これによつて四十億円というものを一般会計の歳出予算から外しているのであります。  その七、緊要物資輸入基金特別会計が二十九年度から廃止となるのにつきまして、この特別会計が二十八年度末において保有しております現金二十五億、これは最初の基金の出資額に相当いたしますが、これは産業投資特別会計が二十九年度の歳入として受入れまして、そのほかの資産、負債は一般会計が引継ぐということといたしておりますが、産業投資特別会計が受入れますこの二十五億円というのは、これまでの予算の建て方からいたしますならば、やはり一応一般会計に受入れまして、そこから産業投資特別会計に繰入れらるべきものと思うのであります。  大体このような操作によりまして、合計五百二十億九千六百万円が一般会計予算面から外されているのであります。従いまして二十八年度と同じ予算の建て方をするといたしますならば、二十九年度一般会計予算は一兆五百十六億八千四百万円となるのであります。それを無理して外観だけを一兆円予算に見せかけているというわけであります。こんなにまでして何も一兆円予算の形式を取りつくろう必要はないと私は思います。政府はよろしく一兆円予算の看板を外すべきだ、そうして二十九年度一般会計予算は、実質的に一兆五百十六億円であるということ、従いまして、二十八年度の予算に比べまして二百四十四億円の膨脹であるということを率直に告白すべきだと思います。財政の民主化ということは、予算案をできるだけ国民にわかりやすくしまして、端的に内容の実質がわかるようにすることが先ず必要であろうと思います。それはなかなかむずかしいことではありますけれども、併し殊更に手の込んだ操作を加えて、表面だけを見ていては内実がわからないというようにするのは財政民主化に反するものと考えるのであります。  第二に、今度の予算案のデフレ的な効果ということについてでございます。今度の予算案がデフレを意図した緊縮予算である。自然増収を棚上げすることにしているという意味におきまして、実質的には均衡以上の超均衡予算であるということは否定できないと思います。併し今度の予算案が果してどれほどのデフレ的効果を実際に発揮するかということはこれと別問題であろうと思います。言い換えれば政府言つておりますように、物価を5%乃至一〇%引下げ、国際収支赤字を九千万ドル程度にとどめるということができるかどうかということは大いに検討討を要する必要があろうと思います。二十九年度予算案から計算されました国庫対民間収支は、大蔵省の計算では、指定預金の関係と前年度予算の未使用額の繰越関係、これを除きまして十一億円の引揚超過ということになつております。これは外国為替特別会計を除きました計算では散超要因といたしまして、一般会計が前年度剰余金繰入の四百三億円、それから食管特別会計におきまして食糧証券の発行増加二百十億円、合わせて六百十三億円でありますが、外国為替特別会計におきまして外貨の支払超過九千万ドルに見合う円資金の引揚げ超過三百二十四億円と、それから別口外貨貸付の減少によりまして引揚超過三百億円、合わせて六百二十四億円の引揚超過が見込まれますので、差引十一億円の揚超という、こういう計算でございます。そこでこの大蔵省の計算からも明らかでありますように、二十九年度予算は、予算そのものの構造からは六百十三億円もの散超予算なのでありまして、これが差引十一億円の揚超予算となりますのは、国際収支の文払超過、赤字関係と別口外貨貸付の整理減少の結果でありまして、即ち予算の執行乃至運用の関係であります。それも国際収支赤字による外国為替特別会計の揚超は政府の努力によるものでも何でもないのでありまして、むしろ国際収支を均衡させようという政府の意図が十分に達せられないことから生ずる揚超なのであります。つまり好まざる客観的事態の反映でしかないわけであります。二十九年度予算の国庫対民間収支に関する大蔵省の計算につきましては、なお吟味する必要があろうと思います。即ち予算の構造上の散超要因といたしましては、以上申しました大蔵省の計算のほかに産業投資特別会計における先ほど申しました緊要物資輸入基金特別会計の整理残余金二十五億円の繰入れをして財源に充てているということ、それから余裕金の八億円を使用するということを、合わせて三十三億というものは、これは過去の蓄積資金の取りくずしでありますから散超要因に数うべきではないかと思います。  それからその次に食管特別会計の予備費百億円、これは結局使用されざるを得ないであろうと思われますから、使用されるとすれば食管会計の赤字は前の二百十億円を加えまして三百十億円となると思います。  その三は、先ほど申しました租税払戻金九十億円、以上の結果、予算の構造上における修正散超要因の合計は八百三十六億円となるのであります。それから予算の執行上の散超要因といたしましては歳出繰越しの関係であります。二十八年度から二十九年度への繰越額は十二月末現在の予算、この二十八年度、予算の使用状況、十二月末現在の数字から想像して見ますと、約千百億円ぐらいが繰越されることになろうかと思います。それから二十九年度から三十年度への繰越しがどのくらいになるか、これは予想ができませんけれども、大体九百億円ぐらいがまあ繰越される。こう考えますと、差引二百億円が繰越し関係で散超要因になる。これは極く予想に過ぎませんけれども、そういうことが言えると思います。  それから資金運用部におきまして回収強化が、回収を非常に強化するという計画になつておりますが、それが計画通りに行くかどうか、逆に八十億円程度の放出超過となつて、それだけ余裕金を食いつぶさねばならんことになりはしないか。これはただ危惧でありますけれども、そうだとすれば、それだけが散超要因になる以上、予算執行上の散超要因としましては二百八十億円、そこで構造上の散超要因八百三十六億円とこの執行上の二百八十億円と合わせまして千百十六億円という散超要因が考えられるのであります。  これに対しまして揚超要因といたしましては、これは予算の執行上の関係たけでありますが、第一は自然増収であります。この自然増収を棚上げするといたしまして、それが棚上げするとすればそれだけの場超になるわけであります。これは大体六百億円ぐらい見込み得るのではないかと考えられます。それから外国為替特別会計の関係、これは政府の見込では九千万ドルの国際収支赤字ということになつておりますが、もつと赤字は多くなるのぐはなかろうか。それが二億ドルぐらいになるのではないかという予想をする人が多いようでありますが、仮に二億ドルといたしますと、政府予想よりも三百九十七億円揚超が殖えまして、合計七百二十億円、こういうことになります。そこで自然増収とそれからこの外為関係の増加、揚超の修正増加、これを合わせまして九百九十七億円になります。それに前に申しました大蔵省の見込が六百二十四億円、これを加えますと揚超要因は千六百二十一億円、こういうことになります。そこで、差引揚超は五百五億円、先の散超要因と差引きまして揚超は五百五億円、こういう計算が私としては出て来るのであります。即ち大蔵省の見込よりも揚超額が多くなりますけれども、これはもつぱら自然増収とそれから外為関係によるのでありまして、それがなかつたといたしますならば、つまり国際収支が幸いにも均衡するとか或いは自然増収を棚上げしないで補正予算の財源に使うとか、そのほか自然増収を棚上げしないといたしますならば、今度の予算は千百十六億円の散超予算だ、こういうことになるのであります。国際収支赤字を大蔵省の見込通りといたしますと、自然増収を別として、揚超が六百二十四億円、これに対して散超が私の計算では千百十六億円、そこでこの散超の千百十六億円から自然増収による揚超六百億円というものを差引きますと五百十六億円という散超が出ます。そうしますと何のことはない、政府政策とか積極的な努力とは全然関係のない、客観的な国際収支赤字によるところの引揚超過、つまりデフレ的な要因、それを財政面からの散超でぼぼカバーしている。こういうような結論が数字的に出て来るのであります。御承知のように国債収支が赤字になつて輸入金融の機構のためにそれが国内金融、延いて国内の資金量、通貨量というものに直接反映して来ない。だから輸入金融の機構を改善し、輸入金融をもつと引締めなければいけないということが今言われておるわけでありますが、それと同じ理窟がやはり予算の構造の上からも言えるのではないかと思うのであります。丁度国際収支赤字による揚超を財政面からの散超でカバーしておると、こういうような状態になつております。そういうような意味におきまして、むしろ今度の予算は徹底的なデフレ予算であるとは言えないと思います。確かに前年度予算、二十八年度、予算と比べまして緊縮なつたということは言えます。そしてそれから来るところの、今まで膨脹の一途を辿つて来た予算が、ここで一応足踏みした、而も或る程度緊縮なつたということから来る財界経済界への影響というものは、やはり相当大きなものがあろうかと思いますけれども、併しこれを殊更デフレ予算である、そして世間が騒ぐほど徹底的なデフレ影響が出て来る、そういう予算であるとは私としては言えないように思うのであります。大体時間が参りましたのでこの程度で……。(拍手)
  6. 青木一男

    委員長青木一男君) 先ず若干の質問を鈴木教授にお願いしたいと思いますが、質問おありのかたはお述べを願います。
  7. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今の鈴木さんのお話で、国際収支の赤を財政収支の均衡でカバーする、チェックしようとしておると思いますが、そうすると、対策としては国際収支の赤をどういうことにすれば、今お話のような、期待されるような経済の建直しということができるのだというふうにお考えになるのか、その点を、もう少しはつきり……。
  8. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 佐多さんが今御質問になりました非常に大きな問題については、今にわかにお答えするほどのあれを持つておりませんけれども、私がさつき発言しましたことと関連する限りにおきましては、予算面からしますと千何百億円の、先ほどの私の計算では千何百億円の散超になる、こんな散超になるような予算の組み方をしないで、もつと前年度剰余金の関係で散超になる。これはまあ一応止むを得ないとしましても、そのほかの散超要因というものはやはりなくするくらいの予算の組み方をする、そうすると名実共に徹底的なデフレ予算だということを申上げることができるけれども、今のような程度ではまだ緊縮予算であるということは、一応認めるとしても、非常に大きなデフレ効果を及ぼす予算であるとは私としては申上げかねると、そういうことを申上げたのであります。
  9. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それからそうすると、今のインフレ克服の政策としては財政収支の均衡というか、その均衡の仕方に不足なり不満があるので、これをもつと徹底的にやればいいというお話なのか、そうでなくて、財政収支の均衡だけでは問題は解決しないので、もつと根本的に国際収支の赤そのものの克服の政策、従つてまあそれはどういう政策になるか、財政以前の、或いは財政以外の問題で措置しなければならない問題というふうにお考えになつておるのか、その辺の関連をもう少し伺いたいと思います。
  10. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) これは私の考えとしましてはいろいろな方策があります。財政上の方策もその一つでありますが、そのほかにいろいろな方策があることは勿論だと思います。例えば経済的な方策ばかりでなしに、政治的な方策と申しますか、例えば中共の貿易が制限されておる、これをもつと自由にしてもらうことであるとか、或いは東南アジアの諸民族の対日感情というものが未だにしつくりしていない。これが貿易にもかなりマイナスの影響を及ぼしておると思うのですが、そういう対日感情がもつと緩和するような政治上、外交上の大きな手を打つてもらわなければならない。或いはまあ日英協定は比較的うまく行きましたけれども、ああいう輸出相手国の輸入制限とか、そういうようなことに対するもつと外交上のいろいろな手を打つて、そういう輸入制限とか、そういうものをできるだけ緩和してもらう。或いはガツトに本式に加入するとか、これはむしろ経済外的な努力だと思いますが、そういう努力も非常に必要であると同時に、経済的な努力としてもいろいろな政策財政政策以外にあろうかと思います。思いますが、ともかく先ず財政面から財政が非常に膨脹して、購買力が非常に増加するというような、この面を先ずカットするということが、まあ先決的に必要なんであります。それだけですべての国際収支の問題が解決されるとは思いませんけれども、それは先ず先決であり、そしてそれはかなりやはり必要なことではないか。そういうふうに考えます。
  11. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、財政規模をもう少し縮小しなければならんという御議論であると思うのですが、どういう費目をもう少し更に削らねばならないか、どういう費目に史に無駄があるのではないかという点はどうですか。
  12. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) それは政治の問題になると思うのでありまして、先ほど第一の批判として申上げました範囲で、これは政府にしてもそれから与党、野党にしましても、それから国民のそれぞれにしましても、いろいろ意見が違つておると思うのでありますが、これは結局国会の中で一つの大きな総枠をお互いに譲り合つて、総枠を膨脹させるということのないように、総枠の範囲内においてお互いに議論をされて、その結果、ウエイトという、割振りということについては、きめて頂きたいと思うのですが、私個人の希望といたしましては、今年の予算では防衛費の増額というのは極く僅か二百億円弱でありまして、世間でわいわい言うほど防衛費の増額というものは、今年のこの当初予算というと悪いですけれども、今出ている予算案ではそれほど大きな増額ではありませんけれども、MSAを受諾して、これから先のことを考えますと、これは三十年度三十一年度やはり相当増額して来る要因であろうと思う。だからこれはやはり何とかチエツクすることを考えないと、将来の財政問題としては非常に困難な局面が予想されるように思うのです。
  13. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 本年度の予算を施行いたしまして、政府物価を下げる、まあこういうようなつもりで、五%乃至一割の物価を下げるつもりのようですが、鈴木さんはこの予算が施行されることによつて、まあこれによつて起される一種のデフレーシヨンによつて政府予想されるような物価が下るというふうにお考えになりますか。
  14. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 先ほど申上げましたように、これからのまあ予算執行の態度と申しますか、今度の予算案が成立するにいたしまして、それを前提とした場合には、これからの予算執行の態度如何によりまして、かなり違つて来る。それを見守るより今のところしようがないと思うのですが、まあ大体私はそんなに物価は下らないじやないかというふうに、むしろ危惧しているようなわけであります。
  15. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それから国際収支の面ですが、政府予想は私ども甘いと思うのですが、今年の国際収支は、やはり世界的な不況、特にアメリカがやはり予想されるよりは悪いと思うので、従つて日本の場合、その影響する国際収支もどうもよくならない。そういたしますというと、為替相場の問題が重大な問題になる。どうも為替相場の問題はタブーでして、誰も言わないのです。この点についての予想並びにこの問題についてのお考えはどうかということをお伺いしたい。
  16. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 私の考えといたしましては、為替レートというものを絶対神聖視して、何が何でもこれを堅持しなければいけないと考えるのは、これは最も古典的な金本位時代考え方でありまして、今日では必ずしもそんなに絶対神聖視する必要はないと思うのです。ないと思うのですけれども、現在この三百六十円レートを切下げるということ、現在そういう切下げをするということについては、私は反対でありまして、やはり財政緊縮とか、相当徹底したデフレ政策とか、そういうものをやりまして、一応基盤を作つた上で、それから今度はなんといいますか、政策的、意識的と申しますか、むしろこちらのほうから一つ意識して、適当なところまで為替レートを変更するということなら、そうしてそのあとのいろんな対策なり準備も計画的に準備して、それから引下げるというのであれば、私はやつてもよろしいと思いますけれども、そこまで反対はいたしませんが、今切下げるということは、これはいわゆる追い詰められて止むを得ず引きずられてレートの変更をするということでありまして、これはいつまで経つても、再切下げ再切下げになるのではないかと思いますから、やはりレートの切下げということは今は絶対やるべきじやない。むしろ物価水準のほうを現在のレートに適合させるような努力をすべきじやないか、このように思います。
  17. 青木一男

    委員長青木一男君) 他に御発言がなければ、これにて午前中の公聴会を終ります。午後は一瞬半より継続いたします。    午後零時二十三分休憩    —————・—————    午後一時四十六分開会
  18. 青木一男

    委員長青木一男君) 午前に引続き会議を開きます。  高垣勝次郎君の公述をお願いいたします。
  19. 高垣勝次郎

    公述人高垣勝次郎君) 只今御紹介にあずかりました不二商事株式会社社長高垣勝次郎であります。御指名によりまして意見を申し述べさして頂きます。  大蔵省主計局発行の昭和二十九年度予算の説明中、冒頭に、経済運営の基本方針と題しまして、大要次のように述べております。我が国の国際収支は、二十八年に至り逆調に転じ、一般物価も戦後の最高を示している。一方世界各国は財政緊縮等により物価を引下げており、若しこのままに推移するならば、我が国経済自立の基本条件たる通貨の安定は期しがたい。転入増大と輸出不振に拍車をかけ、遠からず外貨の枯渇を来たすであろう。従つて国際収支の均衡を回復することは、現在最も重要な課題であり、その解決のためには、物価の引下げを図ることが急務である云々。誠に同感でありまして、この点に関しまして貿易に従事しておりまするものの一人といたしまして意見を申し述べて見たいと存ずるのであります。  我が国の国際収支が早晩均衡を失う虞れがあり、而もその場合には、悪化の速度は極めて急激であろうということは、つとに憂慮せられております。その予防策といたしまして、輸出貿易の振興を図るべきであるとし、具体的の方策が種々論義せられておりますことは、御承知通りでございます。併しながら不幸にいたしまして、最近手持外貨が大幅に減少いたしまして、種種の問題を投げかけておる状態であります。この点に関しまして、経済審議庁は二十九年度の我が国の国際収支の見透しといたしまして、収入は二十四億七千五百万ドル。うち輸出が十三億七千五百万ドル、貿易外が十一億ドル、これに対しまして支出といたしまして二十五億六千五百万ドル、うち輸入が、二十一億四千万ドル、貿易外が四億二千五百万ドル、差引き入超九千万ドルと計算しておりまするが、この見積りは甘過ぎるのではないかと一般に批評せられておるようであります。仮にこの数字に基きまして、商品の輸出入だけを比較して見ますと、入超額は実に七億六千五百万、ドルに達しまして、この不足は大体いわゆる特需と称せられるものによりまする収入と見合うことになつております。併しながら比較的不安定な特需にいつまでも依存することのできないのは勿論でございます。できるだけ早く輸出入の差を縮小するように国を挙げて努力することが急務と存ぜられるのであります。この差額を縮小いたしまするためには、輸入の削減と、輸出の増進を図るほかないのでございまするが、現在のところ、不在にして、いろいろの事値よりまして、輸入はともすれば増加の趨勢にあるに反しまして、輸出はその増加が甚だ困難な状態にあるように見受けられます。勿論、必要物資の輸入削減は、その国内価格の昂騰をもたらしまするのみならず、折角向上しつつありまする産業生産指数の後退をも余儀なくさせる供れもございまするので、国際収支の改善は、主として輸出の増大によつて解決することができれば最も好都合であり、これに向かつて努力する必要があると思います。  而して、第一に輸出不振の原因として考えられる最も大きな問題は、我が国の物価水準が国際水準を遥かに上廻つておることであります。而も我が国の物価の下落は容易にこれを予測することができざるに反しまして、海外物価は漸落の傾向にある。物価水準の差は日を追うてますます大となつておるのであります。現在程度の輸出にいたしましても、主としてこれは三重価格によつて漸く維持せられておるのでありまするが、これは飽くまでも権道でありまして、相手国からダンピングとして、報復課税を課せられる慮れさえもあるのであります。到底永続し得べき性質のものではない。速かに是正さるべき問題であると思うのであります。この物価引下につきましては、最近財政議面において、いろいろの手段が講ぜられておりまして、経済審議庁におきましては、二十九年度下半期においては、生産財の物価は、これらの施策のために六、七彩も下落を示すであろうと予測を立てておりまするが、更にこれらの施策に加えまして、社会政策労働政策等をも包含する総合政策の確立によりまして、強力に物価下落の目的を達成することを期することが必要であると思われます。  第三は、貿易商社の弱体の問題でございます。戦後我が国の貿易機槽は、極端なる弱化政策に禍いせられ、その性質上、固定資産を有せざるために、戦後のインフレに伴いまして、資本の弱小化となり、一方重要産業に対するがごとき育成策は顧みられず、非常な混乱に陥つたのであります。その結果は、弱小貿易商社の濫立となりまして、信用は低下し、貿易は不円滑となり、その間に倒産者相次ぎ、そのため我が国の貿易が阻害せられたことは想像に余りあるものがあるのであります。最近貿易商社の強化育成の声が、各方面から挙げられておりまするゆえんと存じます。この問題は、貿易商社自体がみずから進んで、研究、実行すべきものでございまして、一部においては、その実現を見つつあるのでございまするが、輸出取引に対する税制上その他の負担の減免措置輸入外貨資金の商社割当等によりまして、これを助成しまして、輸出取引の進展を図らしむべきであると存じます。これらの方策は、海外諸国におきましても、いずれもいち早く強力に実施せられているところでございます。  第三に対外問題でございまするが、現在は各国とも管理貿易でありまして、特に日本商品に対する各国の輸入制限措置は強化せられております。その最も著るしい例は英連邦諸国でございます。この輸入制限を緩和させますることは、外交交渉に待つほかはないのでございますが、この点につきましては、我が方の努力如何によりましては、或る程度打開し得る見込は十分にあると思われます。その一例は過般調印せられました日英支払協定でございます。従来日本商品の輸入に対しまして、相当高圧的な政策をとつておりました英本岡並びにその植民地の市場の門を開かしめたものとして、相当の収継があつたように考えられておりまするが、これは我が旧から派遣いたしました使節並びに駅英公館の活動に負うところが非常に大なるものがあると思われるのであります。今後更に英連邦自治領、南米諸国、東南ア諸国その他との通商交渉が進められる必要がありますので、在外公館の強化並びに使節派遣等に要しまする十分なる経費を計上せられんことを希望いたします。  次に貿易関係の歳出費目につきまして、一言申上げますが、第一に日本輸出入銀行への投資は、三十九年度は零となつておりまするが、これは同行が現在保有しておりまする自己資金で、十分との見込だと存ぜられるのでありますが、貿易商社といたしましては、目下プラント輸出に精進しているような様子でありまして、資金不足のためにこれらの輸出商談に阻害のないように、十分に適当な御処置をお願いいたします。なおプラント輸出のみならず、商品の委託積送等に対する金融をも、業界においては希望している次第でございます。  第二に貿易振興費でございまするが、これは主として輸出関係のものでありまして、例えば貿易斡旋所設置補助、海外見本市参加補助、重機械類技術の増進費補助等であります。通産省よりの要求額約十億円に対しまして、その三分の一、約三億三千万円に査定せられているやに承知いたしておりまするが、これは前年度に比しまして、相当の増額とはなつておりまするが、輸出振興の重大性に鑑みまして、査定額の増加を希望いたします。  以上甚だ簡単でございまするが、極めて限られました範囲におきまして、私の公述を終りたいと思います。御静聴を有難うございました。
  20. 青木一男

    委員長青木一男君) 高垣君の公述に対して、質問のあるかたは御質疑を願います。   —————————————
  21. 青木一男

    委員長青木一男君) 御質問がないようでございますから、次に岡崎文勲君の公述をお願いいたします。
  22. 岡崎文勲

    公述人(岡崎文勲君) 私、御紹介を頂きました岡崎でございます。  本日は時間の関係で、主として保安庁関係予算に重点を置いて意見を申述べたいと思います。申上げる順序は、お手許に差上げてございますこの覚えにある通りでありまして、先ず第一には、国民所得財政支出予算関係を極く概略申上げ、次に、防衛関係経費、史に、保安庁の二十九年度の予算案、次に、防衛費を裁定する上についての要件若干、終りに、防衛方式変革の予見というような順序で申上げたいと思います。  先ず第一に、この国民所得財政支出予算関係でありますが、それにつきましては、主として国民所得一般会計支出並びに国家及び地方財政支出、この関係の主要なことについて申上げます。  本年度の国民所得見込額五兆九千八百億円、これは見込でありまするし、私どもこの経審の国民所得の調査内容につきましては、必ずしも十全とは考えておりません。従つてこれは一応見込で、どの程度の信頼性がおけるかは別としまして、仮にこれをこの程度に行くものと仮定をいたしますと、二十九年度の一般会計支出予算九千九百九十五億、これは一六・七%に当りますから、昨年の一七・二%、一昨年の一七・七%、これよりはやや低くなつております。併しながら我が国におきますこの国家財政といい、殊にこの地方財政支出が非常に比重が高くなつておるということも併せ考える必要があるのでありまして、試みに本年度の国家並びに地方財政支出を概算いたして見ますと、一般会計の九千九百九十五億円、そのうち地方財政に廻るべきもの千九百九十五億円、差引八千億円であります。これと財政投資融資二千八百五億円、そのうち一般会計分に含まれるもの二百億を差引きますと、二千六百五億円、それから最後に地方財政の九千五十三億円、これらを差引いた国家並びに地方財政の純計支出予算額は二兆、一骨五十八億円ということになると思うのであります。これは国民所得見込額に対しまして実に三四%という高率であります。試みに昭和五年満洲事変勃発前年の国民所得百八億円、そのときの一般会計財政支出十五億六千万円、これは一四・四%に当ります。それから日華事変勃発の前年、即ち十一年の国民所得は百五十五億円、これに対して一般会計財政支出が二十二億八千万円、これが国民所得に対して一四・七%、こういうことでありますから、二十九年度の予算案九千九百九十五億円の一六・七%は、決して比率が低いものではないということがはつきり言えると思うのであります。で、この戦前と戦後の比較は、これは戦前、戦後の国力の関係を無視したものでありまして、私どもの研究によりますれば、現状の日本の真の国力は、戦前の半分若しくは半分以下と考えております。と申しますのは、領土は四割四分減つておる。それから毎年朝鮮、台湾から約千五百万石の米を移入できた。それから砂糖は一〇〇%台湾のもので賄い得たのであります。それから金のごときも五十数億トンのうち約半分は朝鮮、台湾から来て、日本輸入に非常に寄与したのであります。それから満洲の昭和製鋼の半製品、本渓湖の粘結炭、撫順炭、それから非鉄金属、鉱物、それから大豆、雑穀、そういうようなもの、或いは南樺太の石炭、パルプ用材或いは南洋の燐鉱石、又終戦直後海外の在外資産ことごとくを剥奪された、こういうような状況に加えまして、人口は二割五分以上増加しておりますので、戦前食糧の輸入は七、八%程度であつたものが、今日におきましては実に総輸入額に対して三三%という高率になつておる。こういういろいろな状況を考えてみますと、現状の日本の自力は戦前の半分か半分以下と、こう考えたほうが安全だろうと思うのであります。  そういう点から申しますると、今日の国家並びに地方財政支出というものは国力では賄いがたいような膨脹を来たしておる、こう考えてよろしいのではないかと思います。これが結局税金に非常に大きな影響を及ぼしておるのありまして、この税金と物価との関係を見ますると、三十八年度の国税、地方税の合計が一兆二千百七十七億円であります。これは大蔵省の官房調査課から出しております財政経済統計要覧にもはつきり出ておりますが、これは国民所得に対して二〇・五%に当つております。国民一人当り実に一万四千十三円であります。戦前九—十一年平均が、一人当り一十七円でございますから、今日の二十八年度の税金は五百十九倍、こういう高率であります。ところが昨年十二月の卸売物価並びに消費物価はどうであるかと申しますと、やはり同様に九—十一年の平均に対しまして、卸売物価は三百六十倍、それから消費物価は三百倍、こういうことでありますから、税金の五百十九倍というものは遙かに各種の物価よりも異常に高くなつておるということは、要するに国次財政地方財政も、共に現在の我が国力不相応に膨脹しておるという一つの証左であろうと思うのであります。先ほど申しました戦前、戦後の国力の比を一応除外して考えて見ますと、国家財政は戦前におきまして大体国民所得の一四・五%内外でありますから、これを今日にそのまま引当てて見ますと八千六百億円見当が一応妥当な数字になる。そのうち勢前国防費に三五%程度出しておりましたから、これを一応二千億と仮に見ますと、国防費以外の一般財政支出は六千六百億円見当が日本の国力にしてまあ妥当なところで、そうしますと現状よりは約三分の一何とかして圧縮をする必要がある。これができなければ、この防衛費というものもよほど考えなければならないというようなふうに考えられます。  以上、簡単でございますが、全般の予算国民所得や税金の関係についてはその程度にいたします。  次に国防関係経費について申上げます。これは、大蔵省の二十九年度予算の説明(未定稿)という主計局から出しておりますものに書いてあるのでありますが、この「経費配分の重点化」の所に「防衛関係経費については、独立国たるにふさわしい自衛力の充実を図るため所要の増額を行う」というふうになつております。それから「歳出予算の主要内容」として、防衛支出金は本年度の五百八十五億円、昨年度の六百二十億円よりも三十五億円減、それから保安五経費、本年度七百八十八億円、昨年度の六百十、三億円に対して百七十五億円増、防衛支出金と保安庁経費合計しまして、本年度千三百七十三億円、昨年度の千二百三十三億円に対して百四十四億円の増と、こういうことになつております。そこで国民所得見込額に対しまして、この千三百七十三億円は二・三%に当るわけであります。これは如何にも主要諸外国よりは低率であるということは聞違いはございませんが、それでも国民一人当りの可処分所得を調べて見ますと、アメリカは日本の十倍以上であります。イギリスのような相当国民の負担が多い国においてすら三倍以上になつております。そうありますから、この防衛費が大きいとか少いとかいうことは、決して比率は出せないのでありますが、まあ最近そういう馬鹿なことを言う者はなくなつたようでありまして、昨年来私どもは頻りにただ単なる比率の大小を以て防衛費がどうのこうのというような意見に対して極力反駁して参つたのでありますが、往々にして相当経済の知識のあるへでも五%程度は差支えないとか、或いは国実財政支出の二割五分程度はいいんだとかいうようなことを言つておりますけれども、これはとんでもない謬見であると思います。要は防衛支出を国民がどの程度負担し得る余力があるかということが核心をなすものだと私どもは信じておるわけであります。そこでこの税金のすでに高いことは申した通りでございますが、日英米三国の所得税免税点を比較して見ますと、勤労所得者で夫婦者で子供二人の場合、日本におきましては、その免税点は年収十二万九千四百十二円、これは二十七年の改正法によるわけでありますが、これに対してアメリカはどうかと申しますと、九十五万四百円まで税金がかからないのです。イギリスは三十九万九千旧、それからフランスは十三万六千二百四十円、ドイツは十九万九千四百七十一円、イタリアは十五万三千百十二円、こういうように日本の免税点は一番低い。それだけ低額所得者が税金で苦しんでおるということが甘えると思うのであります。それでは所得税を払う人の税率はどうであるかと申しますと、日本におきまして勤労者で夫婦者で子供二人ある場合、四十三万三千円の年収のある者は日本におきまして二二%二所得税がかかります。これに対してアメリカはゼロ、イギリスはポイント五%、それから八十六万四千円の年収のある者、日本におきましては三四・一考、アメリカは依然としてゼロ、イギリスが一三・二%、こういうように日本所得税率というものも相当低額所得者には高率になつておる。ということは、結局国民の全体が所得が少いから低額所得者からも相当徴税しなければ国の財政が賄えないというような状況にあるからだと思うのであります。そのほか貧富の懸隔がだんだん甚だしくなつて来て、今日におきまして、総理大臣程度の給与を取つておる人も、戦前における中産階級の上の部程度しか所得はない、こういうこともはつきりいたしております。それから貯蓄の関係も、戦前におきましては、年収の約一・七倍あつたわけです。だから今日年収三十万円程度ある者は平均して貯蓄は五十万円程度持つてつたのでありますが、今日三十万円の年収の人は約四割、十三万円見当しか貯蓄を持つていない。これがいわゆる民間の資本の蓄積がないために、現在企業におきましても株式で賄つておるものが一側内外、銀行から融資を受けておるのが七割前後、これが戦前におきましては逆で七制見当が株式で賄い、銀行から融資を受けているのは二或いは三制以内、こういうような状況の変化がございます。エンゲル係数も、日本が依然として英米諸国よりも高く、而も戦前と戦後の開きを見てみますと、日本はその開きが非常に大きいというようなこともはつきり数字から出せるわけであります。  こういうような状況でございますので、日本が自衛力を増強するという必要がありましても、現状以上に国民に負担を加重さしていいという根拠は一つも見当らないのであります。そこで、防衛費を増加する必要がありますならば、財政支出を節減するとか、或いは投資融資を重点化するとか、或いは不要不急品の輸入の防止と、こういうような措置によつてできるだけこの経済の建直しと財政資金の捻出、そういうようなことによつて賄うよりほかいたし方がないと思います。で、先ほどの公述人も申されましたが、この不要不急品の輸入は、実に驚ろくべきことでありまして、私この二十八年のやつはちよつとまだ詳しくやつておりませんのでここではつきり申上げられませんが、三十七年のやつについて調べて見たのですが、不要不急品の輸入が八千五百万ドル見当でございます。そのうちにはバナナ二十四億とか、或いはコーヒーが十億、ココアが同様十億、チヨコレート六億、それからウイスキーのごとき三十八億、それから香水でありますとか、自家用車が、これはもう二十八年度は遥かに大きくなつておりますが、これで七十七億とか、合計しまして八千五百万ドルの不要不急の輸入をやつておる。そのうち求償関係としてざつと二千四百万、ドル見当はあるのであります。併し、これも千五百万ドル程度には圧縮可能である。それから駐留軍関係の要望、これは二十七年度は千五百万ドルあつたのでありますが、実際の実績は千三百八十万ドル、そのうち外人が使用したと思われるものが五百万ドルですから、あと八百万ドルは実に日本人の一部の賛沢な者がそれを流用しておる、こういうことでございます。従つて、この八千五百万トルから、少くとも半分は節減しても決して日本一般大衆の物価を引上げるという心配はなくてやれるはずであります。又ガソリンにしても同じことでありまして、これはガソリンは入つておりませんが、今年、石油が実に二十八年度は八百万キロを突破しておるのでありまして、戦前の最高民需四百万キロの倍以上になつております。それからタクシーのごとき、実車率は約半分くらいしかない。五〇%くらいしか実車率はないのでありますが、あとの半分は外貨を煙にしておるような馬鹿なことを平気でやつておる。ところが、アメリカにおいてさえタクシーをやりつ放しで、ああいう煙になつておるようなことはやつていないはずであります。で、私ども笊で水を掬うようなこういう為替管理をやられては、これはもう国はとてももつて行けんということははつきりわかるのでありますが、どうしてそういう馬鹿げたことが依然として行われるのか、まあ奇怪至極なことだと思つておる次第であります。  次に、保安庁の予算に入りますが、保安庁の二十九年度の予算案については、一般説明書としてお手許に保安庁から配付しているようですが、これはちよつとわかりにくい関係がございますので、私のほうで一覧してわかるような表にして差上げてございます。それで二十九年度の人員の増加は四万千三百八十七人、それから経費は百七十五億円増ということであります。それでこの全般の経費を挑めて見ますと、あそこは最近できた役所であり、それから如何にも日蔭者的な存在であるために一般経費相当圧縮されている。これは古い官庁から見れば実にみじめな程度の経費しか認められていないように私は見たのでありますが、ただ一、二問題にするに足る点があると思うのであります。  それはこの地上軍の増加に対してアメリカの圧力相当かかつているということが予算面にも現れているということであります。というのは、この地上軍の増勢、ユ二ホームが三万人、それから平服が八千七百人、計三万八千七百人、この増勢とそれから編成替をやる、従来は一万五千人を一つの管区隊としておつた、それが四つつたやつを、今度は一万二千七百人として六管区制にするということと、各種の特科隊を若干増勢するというような内容であります。これに要する諸経費、これが問題でありまして、右にも申したような増勢或いは編成替に対しまして、三十九年度見込んでおります経費は、補助的装備費と申しますか、装備費はゼロになつております。それから備品費、被服費、それから施設費その他、これは所要額を計上しております。従いまして装備費がゼロにしてあるということは、正常の状態でありますと百四十三億九千万円ほど要するはずであります。これに対してどういう処理をするかと申しますと、五十五億三千万円見当はアメリカからの供与に期待する、残り八十八億六千万円はストックを充当する、こういうことであります。この総装備費百四十三億九千万円、この穴には今申したやりくり算段によつてつているわけでありますが、ここに私は将来保安庁関係に大きな穴があくもう端緒を開いているものじやないかとひそかに憂うるものであります。と申しますのは、この八十八億六千万円のうち、二十六年度の補正予算、それから三十七年度の予算で認められております定数外の予備費、これはランニング・ストックに相当する、これが三十五億円分、それから二十八年度同じくランニング・ストックとしての四十億円分、合計七十五億分のランニング・ストックが現在ある。それから二十八年度装備品の更新代替の財政負担、これを平均化するというための更新分、レプレイスするための経費四十五億円、この三つのものから八十八億円余の装備費に充当するものを取りあえず立替えて使うということになつているのであります。これが非常に問題でございまして、私ども見ますれば曾つての陸海軍が会計法を非常に窮屈に解釈して、こういう更新代替、レプレイスするための経費を認められなかつたものですから、自然或る時期になるとこそつと補充計画であるとか、或いは充実計画であるとかいうような名目で相当大きなこぶ付の予算を請求する、これはその国力が上昇過程にありますときには呑込みますけれども、そういかん場合には当然艦艇兵器が陳腐化せざるを得ない。これは明らかに旧陸海軍の装備が非常に陳腐化した大きな原因であつたわけでありますが、この二十八年度の予算でそういうレプレイスする経費を認められたということは、実に私は画期的な進歩であつたと思うのでありますが、これがもう三年度がら崩れるということは、明らかに将来又陳腐化したような自衛力になる慮れが多分にある、こういうふうにまあ心配いたすわけであります。のみならず例えば今年車両でありますとか、或いは施設機械であるとか、或いは電気機器であるとかいうものが零になつておりますから、そのほうに関係のある軍需工場というものは、二十九年度は殆んど注文がない。がたつと来るわけです。こういう不安定な状態ではこれはちよつと業界としても非常に困るんじやあるまいか、私ども考えるわけであります。東大の有沢教授がこういうことを或る講演会で言われております。財政学上軍事費というものは、必然的に膨脹するものだというのです。これは会計法というもの、これは一般の事務官庁であれば大体あれでいいんですけれども、非常に物件費を多く食うような官庁におきましては、どうしても代替更新用の経費を見ている、十の力を出せるものならば八くらいにとめて、あとの二はどうしてもレプレイスするに足る経費を計上する、つまりできるだけの規模よりも二割或いは三割程度圧縮した状態において常に兵器を近代化するというこの考え方が私非常に必要であると思うのでありますが、現役中商工省に二回行きましたときに、ほうぼうの商工省関係の工業試験所その他も見て廻つたときにも驚いたんですが、折角最初作るときには非常に立流な設備であつても、これは数年たつたらもうほこりだらけな実にまずい結果になつておる。これは学校あたりの研究機関でも同様であります。この考え方を改めない限り、日本の科学技術は私進歩しないのではあるまいかと思うのであります。でありますから、こういう物件費を非常に必要とする官庁その他の機関におきましては、特にこの更新分というものを経営化することに一段と御努力が願わしいと感ずるわけでございます。  それからなお地上軍の増勢の施設関係でちよつと問題になるのでありますが、来年度の支払いの関係になつておりますこの二十九年度国庫債務負担行為としての三寸八億円のうち、八億円は十九年度の増勢見込に対して、あと二十億円というものは来年の増員を予想しての増築分のようにまあ私見るのでありますが、これから見ても如何にアメリカが地上軍の増勢に圧力を加えておるかという一端が競われて、甚だ私どもは不愉快に思うのであります。で、アメリカとしては極東のバランスをとるために、日本に三十数万の地上軍をというような希望と思いますが、これはおよそ日本の地理的の環境であるとか、或いはソ連の侵略に使える船舶の量であるとか、或いは空挺隊の能力であるとかいうようなものを余り調べずに、ただ漠然と頭数でバランスをとらすというふうな考え方でありますが、日本が「自衛に徹するならば、決して三十数万もの大軍は要らないのであります。時間がございませんから、詳しいその根拠は省きますけれども、明治四年に陸軍の親衛隊ができましたときには、四個聯隊一万一千名でございます。それから翌五年に徳川幕府で持つてつた船並びに諸藩から献納した船合しまして二万三千八百トン、これが陸海軍の母体で、四十数年に亘つて築き上げた陸海軍、それを今日数年のうちに戦前程度の防衛力を持とうということ自体がおかしいのでありまして、昭和五年に一体陸海軍はどのくりいな兵力量があつたかと申しますと、昭和五年の十月の国勢調査の結果でありますが、内地の陸軍が十三万八丁人、海軍が八方五千人、計三十三万三千人が当時の、共力量であります。このほか朝鮮に二個師団それから満洲、百湾に若干の守備部隊が三万五千ぐらいおりましたがにそれを合しても二十五万八千人であります。それをここ数干のうちに、地上軍だけ三十万以上というようなことは、とてもこれは話にならん計画で、若しこれを日本がやれば完全に国は潰れると言つても過言ではないと思います。  次に、この保安庁の予算関係を離れまして、防衛費を算定される上の要件の若干を申述べたいと思います。  第一は、初度装備費でありますが、現在保安庁で言つております装備費と申しまするものは、若干の車両それから施設機械それから電気機器、これでありまして、それとてもアメリカから相当のものを貸与を受けておるのであります。それから訓練用の弾薬も向うから無償でもらい受けておる。それかりいわゆる特車と申しますか、ああいう主要な兵器それから艦艇、こういうものも全部貸与されておりますから、保安庁で言う装備費というものは、実際に要る費用のまあせいぜい五分の二見当しか上つていないはずであります。だからこれは日本が完全にもう初度装備を整えるとすれば、現在考えておるものの三倍以上の総装備費を当然必要こするのだということを一つ頭に置いて考える必要がある。それから維持費についても大体同様のことが言えるのでありまして、説明掛には維持費、陸上一人当り三十一万九千一十円、それから海上一人当り年五十三万一千四百円と載つておりますが、今申したような諸兵器の修理費であるとか、或いはそれの更新費であるとか、或いは弾薬の消粍補填費とかいうものを加えますと、相当一人当りの維持費も上るはずであります。それで今これはちよつと試みに極く概算をやつてみたのでありますが、一つはここ数年のうちに陸上を十個師団、十八万人とし、それから海上のほうを十五万五千トン、三万五千人、航空関係飛行機千二百機四万人、そのほか防空隊員一万人、二十六万五千人を数年のうちに装備して、その翌年からの平年の経営費がどうなるかと申しますと、二千四百八十億円になります。それから軍需用の原材料、それから石油購入等のために要する外貨が九千万ドル見当になります。現在十二億見当しか輸出力がないのにこの九千万ドルというものは非常に大きな比重になつて参ります。更に、これは二十九年度の兵力量で、一体平年の経常費がどうなるかと計算してみますと、陸上十四万人、それから海上九万トン、一万六千人、航空関係大体三百機見当で人間が七千人、この程度の規模でずつと行くものとしますと、陸上関係として経営費が年七、八百億円、海上関係が二百七十億円、それから航空関係が百七十億円、合計千百喜五十億円、この程度ですと二十九年に予定されております五百八十五億円の防衛支出金はそのまま残るわけでありますから、それを合せて千七百三十五億円、これは国民所得に対して二・九%、こういうことになります。  次は防衛用の資材及び石油についてでありますが、これはちよつと時間がございませんので省略して、先ほど申した程度にとどめますが、日本の戦前の国力の最高潮時は昭和十三年でございます。それから日華事変がどんどん拡大して、民需物資がぐんぐん抑えられる、十五年には戦略物資がやや上昇して、十五年が最高であります。それから十六年には加速度的に戦略物資の供給力も減つております。もう明らかに十六年は日本経済的な危機を示しておつたわけでありますが、これに対して十六年の十二月東条首相が最後の御前会議で述べておりますのは、今や国力は支那事変前に数倍すということを言つております。こういうような観応的に政治をやられだからこそ、国民は非常な悲惨な目に遭つたと思います。戦略物的国力を比較して見ますと、太平洋戦争勃発前後においては、戦略物的国力はアメリカの実に七十分の一です。これで三年八カ月戦さをやつたこと自体が不思議なほどであつて、如何に頑張り通したかということも言えるわけでございます。  それから次に、防衛産業は先ほど申した数字には全然入つていないのですが、大体二十六万万千人程度の軍備に必要とするところの中級兵器以下を造る軍需工場の施設機械に約一千五百億円は要ります。それからそのほか港湾、橋梁、道路或いは電気、ガスを引くとか或いは素材工場を造るとか、それから実験研究施設を造るとかいうことになりますと、少くとも一兆円は必要とする。現に横須賀に海軍の航空技術廠がありましたが、あすこに投入した実験研究施設、機械、これだけで終戦後アメリカ占領車から撤去、破壊されたものを一応今日の時価に直して見ますと、一千億円を突破するのでございます。従いまして一応軍需工場が成り立つには少くとも一兆億円は必要とすると私は考えております。こういうような諸点を一つ御考慮頂きまして、この防衛をどういうふうに持つて行くか、或いはその経費についてどういう査定をすべきかということを御考慮願いたいと思います。  それから最後に申上げたいのは、防衛方式変革の要件でございますが、これは昨年暮以来アメリカは誘導兵器、長距離ロケツト弾等に重点を置いて、旧来の陸上それから海軍の兵力を減らす、差当り三百五十万を三百万、将来は三百五十万に減少するということでスタートしております。そのはね返りが結局西欧なり日本の防衛増強に圧力が加わつておるわけでありますが、日本が非常な苦労をして、ここ数年に或る程度の陸海空軍を作りましても、そのときにはすでにそういう軍備というものは、これは絶対に無用とは申しません。朝鮮或いはインドシナあたりのああいう戦さの方式も絶無でありませんから、絶対無駄とは申しませんが、併し主流な防衛方式の兵器というものは現在の陸海軍のいずれにも所属しないような恰好のものになる。イギリスはすでにアメリカよりも一年先んじてやつております。ソ連の状況は余り詳しくはわかりませんが、これも当然やつておるに相違ない。そういうようなことを考えますときに、余りに旧来の方式の防衛に経費を注ぎ込んでおくと、又後悔しなければならんということも考えられるし、それから私どもつくぞ、過去を顧みまして、残念に思いますのは、陸海軍の実験研究機関とも非常に少数の技術者で、而も軍の機密に隠れて天狗になつてつた、その間に相手方が非常に進歩しておつた。これはもう電波探知機あたりは明瞭にそういうことが言えるわけでありますが、今度保安庁で五億数千万円予算の増額を見込んでおるようでありますけれども、又々曾ての陸海軍の研究機関のごとく、非常に固まつた、偏狭なものになる可能性もなしとしないと思いますので、この組織運用と申しますか、学者或いは見聞の研究機関を十全に活用できるようなふうなものにしてもらいたいというようなことを念願する次第であります。  非常に大ざつぱに、たくさんのことを申上げて何しましたが、何か御質疑ございましたら承わりたいと思います。
  23. 青木一男

    委員長青木一男君) 御質問ありましたらば……。
  24. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 先ほどちよつと端折られた点ですが、いわゆる現在の政府、或いはアメリカ側が将来ソ連、中共からの侵略があるかも知れない、あるだろう、そういうものに備えるために日本はこういう自衛力を増強しなければならんという考え方に出発して、こういう予算が組まれていると思うのですが、私たちは政治的な判定としては、ソ連、中共からの侵略はあり得ないということを、政治的には判定をいたしておるのですが、戦略的に見て一体ソ連、中共から日本への侵略というものがあり得るのか、そういう侵略をするとすれば、戦略的にどういう態勢なり、どういう準備がなければならないか、そういう準備が現在或いは近い将来においてあり得るのかどうか、その辺を戦略的な見地から、もう少し詳しく御説明を願いたい。
  25. 岡崎文勲

    公述人(岡崎文勲君) これは非常に重要な点だと思いますが、私は少くともここに当分の間、ソ連といい、中共といい、日本に対して侵略する、そうして第三次大戦をも辞せないというほど向うとしては自信がないとはつきり申せることは、先ず第一は石油の関係からでありますが、この石油はソ連圏が実に七形です。それから自由圏とサウジアラビア方面のものを合せまして、九三%、こういう大きな比率になつております。だから兵力そのものから言えば、これはソ連は恐らく一カ月以内に西欧諸国を席巻するだけの実力はありましようが、併し結局はこの石油のことで行き詰つてしまうということは明瞭でございます。もう今日日本が、民需だけで八百万キロの油を使つておる。ソ連のあの厖大な軍隊で戦争をやるとすれば、年に三千万や四千万ぐらいな油ではとてもこれは戦さはできない。持続はできないということははつきり言えると思うのであります。そこでこの第三次大戦が起るとすれば、必ずサスジアラビア、イラン、イラク、あの石油の争奪から起きるだろう。併し仮にこのソ連が、あの石油地帯を抑えましても、原油をそのまま軍用にはできませんから、これは非常にむずかしい。だから将来原子力というものが動力に使えるような時代になりますればこれは知りませんが、石油が軍事用の動力の基礎である限りにおいて、ソ連から第三次大戦をあえてしてまで日本に侵略するというようなことは到底考えられない、私どもはこう考えます。  それから第二は、このソ連なり中共の船舶です。これは一九五一年六月にアメリカの船舶協会の調べによりますと、ソ連の汽船が百四十万総トン、うち貨物船が九十万総トン、これは千トン以上の船舶です。それから一昨年の六月ロイドの統計によりますと、百トン以上の船が十七万総トン、これは百トン以上を加えれば日本でも機帆船あたり相当ありますから、恐らく外洋に使える貨物船としては、一昨年の六月でさえ私は百二十万総トンを超えることはないと思つております。と申しまするのは、ソ連はほうぼうに船を注文しておりますが、一昨年のごとき十万総トンちよつと切れるのですが、三千トン以上の船の注文を受けているのは、イタリア一ぱいだけです。あとは実に小さな船が多い。こういう点から申しましても、ここ数年後においても、ソ連が外洋に使える三千トン以上の貨物船が、百五十万総トンを超えることはないだろう、こういうことが一応言える。中共に至つてはこれはもう問題外です。それから太平洋戦争の場合に、ジャワ作戦が終つたとき、あそこで足踏みしておりましたので、私陸軍の戦備課長にそういう馬鹿なことはない、二個師団豪州に上陸すれば完全に豪州は押えられるのだから、大いにやるべしだということを申したのでありますが、参謀本部としては、当時すでに相当の民船を徴用しておつた関係から、一個師団、二十万総トンを要するので、四十万総トンも徴用を増加するに忍びないということで、沙汰やみになつた経緯がございます。当時の陸軍と今日の重装備の、アメリカ式の一個師団の装備は約十倍見当殖えます。それから火力は五倍乃至七倍と、こう言われておるのです。今度シベリア、アジア大陸から日本との距離は非常に近いから、船腹の利用度とかいう点からは、非常に有利には違いありませんが、装備が充実しておる、比較にならんほど多いという見当から、私ども一応の見当としては、一個師団分少くとも二十五万総トンを必要とする、そこで四個師団に対しては実に百万総トンの船を必要とする、三千トンの船とすると三百三十三隻でありますが、この無線なり、潜水艦、飛行機の発達しておる今日、欧州から三百三十隻もの船舶を、極秘裡に極東に集中できるかどうかということです。それから落下傘、空挺隊でありますが、ソ連は極東に、或る人は八個師団と言うし、或る人はそうもあるまいと言うのですが、これは数に別段関係は私はないと考える。我々が太平洋戦争中にやりましたパレンバン、或いはメナドの落下傘部隊というものは、機銃と小銃の極めて軽装備の部隊であつたわけであります。今日におきましてはジープ程度は落下傘で落とせる。併し二十五トン或いは四十トンもあるような戦車、或いは重砲というものは、これはもう絶対上から落とせない。だから超大型の輸送機に一門ずつ、一台ずつ入れて、そうして飛行をして、結局日本を侵略するとすれば、日本のどこかの航空基地に着陸して、そうして引き出さなければ使用できないのです。だから空挺隊が日本に侵略するとすれば、日本に武力革命でも起きて、それを扇動するゲリラ部隊程度しか考えられない。そこで百万総トンの船を使い、四個師団の地上軍等が或る程度空挺隊と呼応してやるにしましても、途中で全然こちらが反撃しなければ無傷で上がりますけれども、或る程度例えばこれを五分の一減殺するとか、或いは三分の一減殺する若干の激撃戦闘機、或いは夜間に襲撃できる海軍の小艦艇というようなものがありますれば無傷で上がることはあるまい。従つて北海道の防衛のごときも、四個師団程度あれば一応しのげる。で攻撃部隊は内戦に立つ防衛部隊の約三倍の戦力を必要とするというのが常識になつておりますから、そういう意味におきましても、日本が自衛に徹する限りそうべらぼうなものは要らんし、それから先ほど申されました日本の地理的な環境から考えましても、ソ連なり或いは中共が日本を積極的に侵略する意図は私はちよつと想像できないのであります。これは絶無とは断言できんにしても、非常に困難であるということだけは言いきれると思います。
  26. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 只今頂いた表の二枚目のところ、これはいろいろな段があるのですが、どういうふうに読むのですか。
  27. 岡崎文勲

    公述人(岡崎文勲君) これは例えば陸上自衛隊運営費四百億三千万円、これは現勢維持費三百五十億二千万円と増勢初度費及び維持費五十億一千万円とを合せれば四百億三千万円になります。それから今度は五十億一千万円の増勢初度費及び維持費を、初度費と維持費に分ければ、二十二億と二十八億一千万円になる。こういうふうに段階的にわかりやすく、ただ欄に一緒に書かずに段階をつけただけの話です。   —————————————
  28. 青木一男

    委員長青木一男君) 船田文子さん。
  29. 船田文子

    公述人(船田文子君) 私主婦連合会の船田文子でございます。  私は純粋の家庭の立場から、このたびの予算に当りまして私ども本当に身近かな例を二、三挙げまして、この予算編成についてのほんの私どもの感想を申上げるだけでございまして、余り細かい僅かな金額のことばかり申上げますので、皆さん方お扱いになります金額が大変に桁が違いますので、妙にお感じかと存じますけれども、実際に家庭の女の立場からいたしますと、このたびの予算の一兆円と申しますのも、私どもには全然見当のつかない数字でございまして、零が幾つついているか一生懸命算えてみなければわからないといつた感じが実感でございます。  それでその全体に亙りましてどこがどうということなどは、よく私どもでは理解できないのが実情でございますけれども、その中で私ども仲間と話合いましたので一番嬉しいと思いましたことは、このたびの予算編成の基本方針として政府が御発表になりましたその目的が、物価の引下であるということと、それから自立経済を建て直し、そうして生活の安定を目指しているというこの基本方針の御発表を、非常に私どもは我が意を得たように思うのでございます。そうしてその具体的な編成の中に、私この数年来私どもの仲間と共に非常に熱望いたしました方針が織込まれております。それは本年度予算の中に、賭博によります益金というもの、競輪の益金、オートレースの益金など、それから宝くじの益金といつたようなものがみんな削られておるといつたようなことは、大変我が意を得たような感じをいたしました。先年ハイアライ法が国会に上程されましたときも、私どもはこの賭博を一日も早く終熄させたいという精神に立ちまして、必死になつてこの反対運動をいたしたものでございます。それであの賭博を一日も早く一掃したい、その念願がややこのたびは国家財政の中にそれを織込まれなかつたという形で現れて参りましたことを一大進歩であると存ずる次第でございます。そうしてその次の段階としては、地方財政の収入の中にもこれが織込まれないで済むようなことが将来できて参るのでないかということを予想いたしますと、本当に私ども精神的に明るい見通しに立ちましたわけでございます。  そうして私どもがこの予算の編成につきましてもつと問題にいたしますことは、この予算を国家の政治の上でどう使われて行くかという点のほうが、むしろ私どもの日常生活に大変影響の多いことでございまして、ここに最近にも私どもの身近に起きました二、三実例を申上げますと、それが分捕り予算の形におきまして各省が予算をお取りになる。そうしてそれを一律に頭を削られたために大部分の予算が減つてつておるといつたような状態からも起きて参る現象でございましようが、実は例を挙げますと、食生活の改善費というものが農林省予算の中に組まれております。それから厚生省のほうには栄養改善費といつたようなものが取られておりますが、その経費が末端へ参りまして配分されますと、東京都だけでは百五十万円ほどになりますそうでございます。それを東京都が各区に配分いたしまして、そうしてその食生活改善をどのような形で実行するかという点になりますと、これは家庭の主婦を相手に栄養料理の講習会をしよう、粉食奨励の講習会をしようじやないかということに、どちらの方面からも実行方法として一致するらしいのでございます。で農林省関係からも家庭の婦人相手に栄養料理の講習会、粉食に合う料理の講習会、厚生省関係からも参り、農林省関係からもあり、又最近は教育関係、文部省関係の費用からも学校給食に対する理解を深めるという意味から、家庭の婦人相手に給食に適した料理の講習会といつたようなことで、講習会、講習会で現れて参ります。昨年度の予算の使い方として、そういう形で現れて参りますが、こんなに三方面予算が分捕られて、そうして現われて来ることが三つに分れて、余りにわんさと押しかけて来るというような形であるならば、私どもはその三つ一つにして、そうしてもう少し、講習会的なことでお茶を濁してしまうといつたようなことでなく、もつとまとまつたことに使つて頂いたならば、もつと効果的にこの予算が使えるのじやないかというふうな感じを深く持つたのでございます。  それから同じことで私どもの身の廻りに起きておりますことは、青少年の保護育成といつた方面にもやはり同じように警察関係からもいろいろに呼びかけがございますし、又文部省からもいろいろな呼びかけの催しがございます。そういうようなことで同じような方法で二重に使われておりますが、その予算の元はやはり両方から予算が取られておりますから、その使い道としては一つにしたならば、もつとまとまつた予算の取り方があるのではないかと思います。誠に末端になりますと、いわゆるこれつぽつちの予算ならば何にもできないから、こんなことでお茶を濁しましようというのがあつちにもこつちにも現われておるかと思います。そういう点に私どもは何か大変国家的に無駄をしているような感じを強く持つのでございます。  それから今年度の食糧関係におきまして、昨年のお米の不作によりまして都会地の配給米が非常に減つて参りました。今年の二月から配給量が内地米がおよそ三分の二に減つて参りました。その代りといたしまして外米の輸入という問題が起きて参つておりますが、予算で今年のを拝見いたしますと、昨年度が三百億円の輸入補給金でありましたのが、今年度は九十億円の輸入補給金となつております。そういたしますとその大部分が外米の輸入補給金に使われるのでありますが、九十億円の補給金を使うといたしますと、勢いお高い外米は輸入できません。今輸入いたしております外米のうちで一番出高いのがアメリカのカリフオルニア米、それから台湾米などでございまして、この種類は日本米を向うに持つて参りまして栽培いたしました内地米種でございますから、現に配給の場合にも準内地米といつて配給いたしておるのでございまして、内地米と同じお値段で配給になつておりますから、お味といたしましては内地米と同じに私どもは炊いて頂けるのでございます。ところが南方米のビルマ米、タイ米などでございますと、形も違いますが味が非常に悪うございまして、この外米のほうは内地米にまぜてそれを食べる、この外米の配給最が二月からは丁度内地米と同じ量になりました。内地米が七日分、外米も七日分くらいになりました。そういたしますと家庭へそれを配給しましたときに内地米五割、外米五割で炊きましたのでは、これはとても頂けない。外米の混入度は三割混入が限度でございますから、どういたしましてもあと二割乃至三割というものはどちらの家庭でも先ず食べ切れないということでございます。家庭で外米を全部食べますところは、必ずそれに見合うだけの闇米を買つておるという状態でございますので、突き詰めて申しますれば、折角何十億という貴重な外貨を硬いまして輸入いたしました外米を大都市だけでそれを消費いたしておりますが、家庭におきましては配給されましても、それを食べ切れないから配給辞退をするという状態でございます。配給所へ参りましてどのくらい外米の配給量があるかということを尋ねて見ますと、私尋ねて歩きました数カ所の配給所のを総合いたして見ますと、約半分くらいしか消化いたしておりません。約半分はもう配給辞退であると申しても余りはずれないかと思います。その半分、数量にいたしますとどのくらいになりますか、ちよつと私に計算できませんが、それだけのお米の配給辞退量は一体どこへ消えてなくなつておりますのか、私どもには実に不思議でございます。食糧庁へ行つて調べて見ましても、配給辞退という報告は殆んど来ておらないのでございます。外米も何らかの形で配給してみんなが食べてしまつた形になつておりますが、実情はそうでなくて、それが何らかほかに流れ、お味噌の中へ入つておるか煎餅になつておるかよくわかりませんが、そういうところになりますと貴重な外貨を使い、貴重な国家の費用を使つて輸入いたしました外米を非常に無駄にしておる、つまりそういうことでございます。こういう点にも輸入に当りましての品質を選ぶということが間違つておるだけに無駄をしてしまつておるということになるのではないか、そういうことを強く感じるのでございます。  それから本年度の政府の方針に従いまして行政整理百もされるかもわからない、それから各企業が非常に緊縮されまして、必然的に失業者も出て来るかもわからないという今年の見通しだそうでございますが、そういたしまして予算の中に生活保護費、失業対策費などを拝見いたしますと、昨年度より格別殖えておりません。それでその失業者なり生活保護を受けなければならないような人たちを吸収できないと思われますので、そういたしますと勢い家庭の相互扶助におきましてそれを背負つて行かなければならないのではないかということが予想されますので、こういう緊縮財政となり、そうして国家的に事業の引締めということをなさいますときには、せめて生活保護費、失業対策費のようなものには、今までの予算よりかもたくさんに見込んだ費用を御準備になつた上でそういう政策をとつて頂きたいということを切に思う次第でございます。  それからこれは私はせがれから聞きましたけれども、気象観測の費用が非常に削られたために定点観測ができない、そのために天気予報が非常にこの頃は目茶苦茶だということをせがれが歎いておりますが、私などはそれが僅か二億円の費用が足りないためにそういうことになつたと聞きますと、これは食糧増産と非常に関係がございますので、どうしてそういう根本的な、なくてはならないものが食糧増産費のほうから二億円くらい廻してあげても、できないものじやないだろうということをつい今朝私せがれと語り合つてつたのでございますけれども、そういうところに余りに予算の融通性のなさといつたようなことを、僅かほんの一、二の例から申しまして私感じるのでございます。  それで最後に私の希望といたしまして申上げたいことは、お役所のどちらへ伺つて見ましても、私たちが家庭のやりくりをいたします観念から見ますと、どこでも物件費に非常に無駄が多いということを感じます。僅かこれくらい節約しても大したことはないとおつしやるのが、どちらでも男のかたのお言葉でございますけれども、極く僅かなものでも引締めて、そうして百円、二百円をどういうふうにしてやりくりしようかと思います私どもの頭から見ますと、お役所の物件費はもつともつと詰められるのではないかということをいつでも考えます。それからこちらの議院へ参りますと議院会館など、あれがアパートになりましたらよほど人が救われるのじやないかということを実感として思いますけれども、そのようにいたしましてもつと、予算の大きい数字ばかりお扱いになりますかたには、余り細かいことのように思召しましようが、塵も積れば山となるの例えのような精神になりまして、私たちは本年度本当に賭博根性を国民から一掃して、そうしてもつと地味な、まじめなことで一致して積立て行くという心がまえになりたいものだと思いますときに、本年度の予算に幾分でも現われております政府緊縮に対するお考えになり方、自立経済の立て方のお考えになり方を、私た一はできるだけの意味で支持し、又予算をもつと合理的に皆さんの御審議を頂きたいと存ずる次第でございます。もう私の本当に思い付きだけしか申上げられませんけれども、これで終ります。
  30. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 政府緊縮予算の基礎の考え方消費が、個人の消費が非常に多過ぎるのだ、殊にこの一、二年非常に殖え過ぎた、従つて消費を非常に減らさなければならない。そういう意味において耐乏生活をやらなければならない、こういうことの考え方が基本になつておると思うのですが、主婦のかたがたから御覧になつてこの一、二年にそんなにどこで消費が一体殖えておるという感じを持つておるのか、或いはそれを減らすとすればどういうところを、主として減らしたいのか、その辺の感じを岡かせて頂きたいのです。
  31. 船田文子

    公述人(船田文子君) これは私もその点は申上げたいところでございます。予算委員会でなく大蔵委員会の税収のお話でございましたら大いに申したいところでございますが、先頃遊興飲食税を国家で吸い上げるというときに非常に陳情団体が抑しかけて、それに議員諸公がお負けになつて地方に据置のままになつたとか、或いは十割課税のところが一割しか人づていないとかいうことを聞きますたびに、これは私ども一番消費の大なるものがああいうところで消費されておる、家庭の個人個人の消費と申しましても、恐らく私は家庭の僅かな消費に対してそれをとやかくおつしやるのではなくして、ああいう大きい宴会とか、そういう点に非常な無駄がなされておりますし、又よく着物なども非常に贅沢なものがあるじやないかということをおつしやられますが、あの着物を、あれだけの贅沢品、今度の繊維税の対象になりますようなものを着ております人たちはどのくらいで、あるかと申しますと、むしろ洋服のほうの男のかたの外嚢などのものにはございましようけれども、婦人の衣服には割合一般の人には少くて、そうして非常に遊里の人たちの便いますのは殆んど税金の対象になるのであります。それでいながらああいう色街の、呉服屋さんはこれは闇の商人で皆脱税をいたしております。そういうところに非常に矛盾を感じますし、又新聞などにああいう所の繁昌ぶりが書かれますことは、これは私ども家庭のものはあの辺が家庭の女のオフ・リミツトでございますだけに感情的にも憤りを非常に感じておりますけれども、各家庭で引締めると申しましても、家庭の極く一部のものではないかしら、引締める必要のあるものは極く一部ではないか、私が家庭を見まして、昨年当りから非常に貯蓄しようという気持が高まつてつたのも事実でございますし、貯金の場合にも、零細な貯金のものが高まつてつているのも事実だと思います。ところが最近零細なお金を集めたその金融が非常に妙なところに使われることが起きますと、ああいうことが一つございましても皆の貯蓄の意欲などを一段とくじきまして、又物価はどんどん上つて参りまして、インフレになつて参ります傾向がここで抑えられますならば、必ず皆各家庭は貯蓄に協力いたすでございましようけれども、物価がどんどん上つて参りますときには、幾ら貯めてもさつぱり駄目だ、こういう実感がございましては貯蓄意欲もなくなるだろうと思います。先ず物価を下げて頂く、物価を下げる方向に持つて行くということを私どもはそういう意味からいたしましても、苦しいながらも貯蓄の楽しみも出て来るということは本当に有難いことだと思つております。   —————————————
  32. 青木一男

    委員長青木一男君) 次に島清丈君。
  33. 島清丈

    公述人(島清丈君) 総評本部の島でございます。労働組合の立場から申上げたいと思いますが、総評は三百万人の大きい組織でございますが、家族を含めましても一千万以上ございます。ところがこの頃私たちの総評のほうにありとあらゆる団体がいらつしやいます。皆困つた、困つた、こういうことでございますので、次に申すことはむしろ労働組合というよりも、一般国民大衆の意見だというふうに考えて、ちよつといろいろな、例えば予算案、そういうことで御討議申上げようとして、招待状一本出しましても、室が入り切れないくらい集まつて来る。労働組合以外の社会保障費一つの問題にいたしましても、三十二団体がいらつしやつたのでこちらがびつくりするくらいであります。或いは大きい会議で経済問題を論じようとして集まりますが、労働組合も含めてでございますけれども、百六十団体集まるという、日本つてないこういう一般的な苦悩の姿が総評を中心として、労働組合だけではなくして現われておる。こういう点につきまして、私以下申上げることは、そういうような立場も含めてだ、こう申上げたいのであります。  先ず第一にこの予算案は次のような理由によつて根本的に私たちの立場から言えば反対でございまして、従つてあとで述べますように組替えをして頂きたい、こう要請するものであります。  反対の理由といたしましては、第一に国民の切実な生活要求を全く無視している、国民の利益を踏みにじつた予算だという印象が非常に強いのであります。これは労働組合の立場からだけではございません。言い換えますと、この予算は全く労働者なり、農民なり、中小企業家、その他市民、こういう甚大な犠牲の上に立つて、或いは貧困とか、破滅の上に立つて、軍事経済一本槍のいわゆるMSA予算という性格のものであるからでございます。言い換えますと、国民のふところから依然として重税を取立てながら、それを而も国民のための支出はとことんまで削り取つてしまつた。軍事費だけはやたらに殖やした苛酷な再軍備予算だ、こういうふうな印象は労働組合員にあらざる一般国民が広汎に持つているという事実を明らかにしたいのであります。  具体的に一般会計の歳出査定額を見ますと、三十八年度と比較いたしまして、増減をずつと作つて見ました。ここに表がございますが、時間が制約されておりますので、一々申上げませんが、片端から削減されておりますが、大きく殖えたのはいわゆる私たちで言う軍事費、再軍備費、或いは軍人恩給、警察費などでございまして、その他は一切削減しているとしか考えられない。或いは少し殖えたような形でありましても、当然殖えるべきものが余り殖やされていないというような形、こう考えるわけであります。  そうして一方又逆にここで上つたのは、以上のような犠牲の上に軍事費が四百七十一億も増加している。直接軍事費、間接軍事費その他を計算してでございますが、結局防衛費が全体の一六・七%から二〇%膨れ上つたということは、民生費が逆に減つているということになるわけでございますので、私はどうしても納得できない。これは労働組合だけではありません、一般国民大衆が育つております。その点をどうか一つお考え願いたいと思うのであります。従つて次に申上げたいことは、この予算によつて具体的には国民大衆はどんなみじめな状態に置かれているかについて、一、二の例を申上げて行きたいと思います。数限りなくございますが、時間がございませんから、いろいろ資料がございますが、若干の例を申上げて行きたいのであります。  生活保護費の問題でございますが、五万人増加、こういうことになつておりますが、一人当りは五百円切下げられて内容が悪くなつております。こういうことはあり得ないのであります。二十八年九月末には百九十三万四千何がしを対象といたします。一人が千六百三十四円であつたものが新予算では百九十五万に対して千百六十六円と、こういうふうに切下げられておるわけであります。こういうようなこと、それから失業対策費にいたしましても昨年の完全失業は五十万人というような御発表があつたそうでございますが、二十九年度は恐らく百万人を突破する、完全失業の場合に。潜在失業の場合には政府発表の場合でも昨年の場合六百八十万人と聞いておりますが、実際は一千万人あると、こういうふうに考えるわけですが、本年は更に厖大なものになる、こう考えております。従つて失業対策費は十億円増加となつておりますが、失業増加で職業安定所はあぶれることは必至でございまして、具体的な例を申上げますると、飯塚の職安にはこれは組合のほうから聞いたことでございますが、九千人押しかけている。田川の職安では八千人が群がつていると聞くのであります。ですから田川、飯塚というのは、これは二里くらいでございますからそう遠いところではございませんが、二里四方くらいのところで両方足しましても一万七千人かの失業者があるという事実は、これはやはり全国的に至る所で起るのではないかと、こういう危惧を持つているわけであります。住宅対策にいたしましても三百十四万戸不足だというのに、一十八年は五万五千戸が予算でございましたが、二十九年には而もまだ四千戸減らす、こういうことでは住宅対策といたしましては、特に労働者の住宅対策として納得できないのでございます。中小企業対策におきましては財政投融資が三千三百八十九億から二千八百億に減らされておりまするし、日銀がカバーいたしませんから中小企業は倒産するといつて至る所で中小企業の団体も騒ぎ、そして総評にも持込んで来ている事実を見逃して頂いては困ると存じます。農民の場合も特にそうでありまして開拓費は殆んど削減されているし、毎年五千戸の入植ができなくなつて来た。而も田畑がございますと一銭の収入がなくても生活保護がもらえないのだそうでございまして、この点どういうふうな結果になつて行くかということが気がかりでございます。国民保険の問題にいたしましても現在の二割の国庫負担では立直れないそうでございまして、秋田県の鹿角郡でございますが、医療費は六カ月も遅払いされているそうでございますので、この点についても今の予算では困るわけでございます。それから食糧の問題でございますが、公述人のかたがたもお話でございますのではしよつて申上げる点は、内地米の増産対策を放棄しているために小麦の輸入を増大して米食率が切下げられることが非常に問題になつております。結核対策でございますが、五万床増床しなくらやならんのに、国立の増床は一つだに認められておりません。現在精神病の場合におきましては十二万六千人でございますが、病床は僅かに一万七千でございまして、この頃の特徴的なことは中小企業家の発狂が多いということでございます。学校関係におきましてはもうほかの公述人も順次御説明にたると思いますので、特に私たちの立場から困るのは、給食減、或いは教科書の無償配給をとめた点などでございまして、こういうふうな数え立てて行きますと数限りございませんが、幾多の資料がございますが、時間がございませんので一例を申上げたわけでございますが、結局労働者の首切りは増大する、新らしい予算のために造船業だけでも三万人の失業が出るはずでございまして関連産業を入れますと十四万人の失業が出るということでございます。造船業一つだけでもそうでございます。こういうふうな点で困ります。  ところが歳入のほうはどうかと言いますと、一兆一千億の歳入を見積つていらつしやつたはずでございますが、九千九百億の歳出のために一兆一千億を歳入も又九千億に縮めていらつしやいますので、一千億円のその将来の収入についてはどういうふうに使われるかについて大きい疑問を持つておるわけであります。恐らく軍事予算の中に注ぎ足されるのじやないかという、そういう一般的な印象が強うございます。特に勤労所得税が、これは根本的に反対の立場でございますが、とにかくもつと免税点を上げなくちやならん、現在の段階では。それでもとにかく生活を救うためにしなくちやならん。生活苦の中での重税ほど苦しいものはございません。大衆は骨身にこれだけは応えておる。少くとも基礎控除はもつと上げろという声、戦前なかつた勤労所得税で非常に国民大衆は困つておるわけであります。  以上のことを具体的に一例として申上げましたが、ここでそれじや、君たちはどうしろというのか、国民大衆はどういうふうに要求しておるか、これは総評だけではない、五十団体集まつたときもございます。三十二団体集まつたときもございます。百六十団体集まつたときもございますが、それぞれで意見が出ておりましたが、その中で極くかいつまんだ結論だけを、粗筋だけ簡単に申上げて見たいと思うのですが、結局再軍備費、弾圧費を、そういうものを削つて下さい、こういうことが一つ。それから戦争経済による、軍事経済による貧困と零落から国民を守つてもらいたい。その中で当面必要な社会保障費の最低額をおれたちによこしてもらえんかという国民の声、例えば失業対策費と失業保険を計算いたして見ますと、千六十五億円要る。生活保護費だけでも五百六十四億円要るんだ。結核対策、公衆衛生費だけでも七百十九億円要る。児童保護費だけでも二百三十六億円要る。社会保険費では五百三十七億円くれ、こういうふうな要求が具体的に生のままで飛び出して参るわけであります。住宅及び教育、これも二千六百五億円を確保せよ、こういう意見がどんどん出て来まして、結果的にはこういうふうに統一されておるわけでございます。結局再軍備を名目とする独占資本の攻勢から平和産業、特に中小企業を守れ、当面必要な設備近代化と運転資金をよこせ、こういうことが中小企業のかたがたからも言われるわけであり、中小企業金融公庫の融資を三百億円くれと、たくさんございますが省略いたします。食糧関係におきましても、増産対策費、災害対策費、営農資金をよこせ、生産者の米価は一万二千円にしてもらいたいとか、戦争経済による首切りや賃金ストップ、そういうことはやめて頂いて、災害、失業、健康、厚生年金保険、こういうような完全獲得を要求しておることは事実でございます。  それから国内市場を開発する建設事業費千百七十九億を支出してもらいたい。弾圧官僚を殖やしたり保安隊を殖やしながら国民に奉仕する官吏を首切るようなこと、そういう行政整理はやめてもらいたい。先ほど申しました勤労控除を殖やせとか種々ございますが、特にここで特徴的なことは、中小企業家から出ておりますが、個人業者に自家労賃の課税をしている、所得税法第十一条二項を削除してもらいたいという強い要請がございます。それからもう一つ関連でございますが、中小法人業者、企業組合の法人格を奪つて個人のみの自家労賃課税をする、その所得税法の第三条の二項、第四十三条、第六十七条を削除してもらいたいという要求がございます。それから大資本の脱税を捕捉してもらいたいとか、間接税、専売の益金なども含めて引上げ、新設には反対だ、郵便貯金とか厚生年金、失業保険、簡易保険の積立金はこれはおれたちの納得できる使い方がやられておらないからおれたちの手に返せという要求がございます。ここで以上のような広汎な国民の要求が出て参りますが、それじやあ一体予算はどうなるんだと、こういうような御質問が出ようかと存じますが、私たちは政党でございませんので、或いは政府でございませんからそういう細密な設計図を作ろうとも考えておりませんし、如何に多くの団体が集まりましても全国民の意思を即断するにはまだ少し憚かる点もあろうという謙虚な気持から、そういう明細なバランス・シートは作つておりませんが、ただ言えることは、先ず再軍備費を削りなさいということが一つ、それから二は税金の取れる限度は政治のやり方できまるのでありまして、今の政策ではどんな数字を挙げても無駄だという声が多うございます。例えば税務官吏は大会社や銀行の支出を調べることができないようにできていることなどとか、或いはその財政規模をどうするかは制度とか政策によつてきまるので、数字を論議することは必要がない。而も中日貿易を推し進めて平和経済政策をとるときには平和経済が発展いたしますので、そういう規模の中では又変つて来る、こういう点が言われているわけでございます。もう一つ、例えば首切りが防げれば失業対策費は少くて済むというふうな工合に国民の要求というのは重なり合つて、要求はされましてもそれを二重に出すことは無意味でございますので、それについては、そういう上に立つて政党或いは国会、政府におきましてどうか国民の声を容れて頂いてお作り願いたい、こういうふうに考えるわけであります。  結論的に申上げます。日本国民大衆は、戦後インフレと独占価格と合理化攻勢と重税と低賃金、低米価政策と弾圧政策によりまして失業、倒産、自殺、生活の窮乏を来たして参りましたことは統計が示しております。こんなときに以上のように大衆を犠牲とするような新予算はどうしても国民が納得できませんので、これを打破るために、潜在的なそういう力もあるかも知れません。併し顕在すると潜在するとにかかわらず、いずれもこれに抵抗したいという気持が出ていることは私たちが各地を廻りまして目のあたり見て参りました。こういう点につきまして将来の政治経済の安定のためにも御考慮願いたいと存じます。特に言われておりますことは、その半面金融独占資本或いは軍事資本は軍事経済政策によつて厖大な蓄積をやつて来たじやないか、おれたちは貧しいのだ、それにあれを見ろ、昨年の政府経済白書によりますと民間資本形成は年間一兆二千億を発表いたしておりますが、ああいうふうに、あれを見ましても大体資本蓄積の規模がはつきりとして参ると思いますが、それがどういうふうに使われているかが問題であります。その半ばは数百のビルデイングの建設に使われているんだということが建設省方面から伝えられております。立並ぶビルデイングはそれを物語つていると存じます。特に社用族の氾濫です。これは東大の有沢教授も朝日新聞で御発表になつておりましたが、恐らく年間三千億円になるだろうと、ここまで言われております。その蔭には厖大な労働者といわず農民といわず市民といわず大衆の貧しさの蓄積がございますることは最近の東京都の家計調査におきまして見ましても、一家の支出を賄つているのに主人の収入では足らない、二千円から三千円全部赤字でございます。家計調査がはつきりと発表いたしております。従いまして時間がございませんから結論的に一、二申上げて見ますと、政治経済の安定を本当に望まれるならば、現在のようなこういう新予算を組まれるその根本的な政策から変えてもらえまいか。特需にぶら下つた軍事経済政策を切替えて平和経済政策に切替えるべきだ。予算の基礎はここから出るべきだ、国民の生活窮乏によるそういう怒りに拍車を加えるものはいけない。ところがそれに又拍車を加えているものが出て参りました。これは政治に対する不信であります。各地を廻りまして、これにつきましては驚くほど怒りが大衆の中に、一般のかたがたの中に出ております。保全経済会の問題、造船疑獄の問題、従いまして大衆の貧困の中から搾り上げた金で一握りの大資本のかただけがふところに入れて、そして政治と結ぶ、こういうような行き方は、これは日本全体の姿じやないかとまで言われて来た、こういう印象を今与えるべきじやない、私はこういうように考えます。政治の根本は国民大衆の生活を守ることが第一でございますので、どうか一つ民族の将来を思い、国民を愛されるという点につきましていずれも同一でございますから、どうかこのMSA再軍備予算を以上の通り組み替えて頂きたい。これが国民の願いでございます。非常に粗筋でございましたが、感想のようなことを述べまして、公述に代えます。
  34. 青木一男

    委員長青木一男君) 御質問がありましたならばどうぞ。
  35. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 今お話の中で警察費が本年度の予算では殖えているというようなお言葉がありましたが、どういう資料でそれは殖えておりますか。
  36. 島清丈

    公述人(島清丈君) これは二十八年度の予算額がゼロで、一般会計歳出概算査定額重要経費別内訳というものを作つて見たわけでございますが、二十八年度予算はこれではゼロになつて、それから現行制度による査定額、これもゼロで、地方財政制度改正による増減、こういうような意味で入れておりますので、そういう意味でございまして、ですから違う意味でございましたならばその点修正いたします。
  37. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 地方の費用を入れなければ実際警察費というのは全部出て来ませんが、国の財政の面だけでは国家地方警察の費用が全然削られて、そして新らしく警察費というのが入つて、それを相殺するとむしろ減つておるというのが今の国の財政になつておると私は考えております。そういう点はどういうふうにお考えでございますか。
  38. 島清丈

    公述人(島清丈君) これの考え方の基礎は、警察制度の中央集権制度反対だ、こういうような意味からの考え方でございますから、そういうように御承知願いたい、こういうように思います。ですから地方がこちらに来たら一緒じやないか、そういう希望であれば又違うかも知れません。
  39. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 まあ反対を先に出して言われないで、数字から一……。国の財政の上ではとにかく六十億ほど減つているように出ております。
  40. 島清丈

    公述人(島清丈君) 警察費でございますね。私の説明が間違いでございましたら何時でも修正いたします、専門家でないのでございますから。ただ以上申上げました地方財政制度改正による増減で比較いたしますと、八百二十八万四千円、こういうふうに増のほうに出ておりますので、この数字が間違いでございましたならば取消します。併し八百二十八万四千円は二十八年度予算額と、二十九年度概算査定額との増減の比較をしたものでございまして、増になつております。この資料が違うのでございましたら、その項については御説明願つて修正してもよろしうございます。ただ私の申上げた意味は、大部分の民生費が削られているのだ、こういうことを申上げた一例でございますので、その点お取違えのないように願いたいと思います。
  41. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 これはまあこれ以上申上げても仕方ありませんが、今度の警察制度の改正は国の財政、それから地方財政を合せたものが全体として減るというふうな点を一つ承知おき願いたいと思います。
  42. 島清丈

    公述人(島清丈君) その点につきましては本日御答弁できないのでございまして、警察法につきましては、別途に根本的に中央集権的な警察制度に反対でございますから、民主的な警察にしたいために自治体警察……、自治体警察が欠陥がございますれば、それはよくすることについて民主的になるように考慮すべきですね、そういう考え方の立場から申上げておりますので、全体に多い少いというようなことについては具体的には検討いたしません。
  43. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 もう一つ伺いたいのは、歳入が一兆一千億くらいあるはずだが隠しておるというふうなお話があつたように思うのですが、それはどういう計算からですか。
  44. 島清丈

    公述人(島清丈君) それはこういうことでございます。最初の大蔵省の歳入見積りは一兆一千億ほどあつたわけです。従いましてアメリカ側の緊縮予算でああいう要請で九千九百億に歳出のほうを少くいたしましたときに、それに見合して九千九百億の歳入とした、こういうふうに見ておるわけでございますから、一千億は所得税の自然増、こういうところを見込んでであろうと考えますけれども、将来一千億の、最初の予想通り一兆一千億入つた場合は、その一千億はどういうふうに使われるのかということを申上げたわけです。これは新らしい財源に私たちの言う、そういう趣旨に使われなくて、私たちの言う民生費に使うべきだ、こういうことと、それから先ほど申上げた再軍備予算、軍事費は削つてもらいたい、これが当面の要求なんだ、財源なんだということを申上げて、細密なそういうバランス・シートでここで申上げなかつた理由の一つとして、その中でそれを補足するために申上げたわけであります。こういう意味であります。
  45. 青木一男

    委員長青木一男君) ほかに御発言ございませんか。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十五分散会