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参考人(
横川正市君)
横川でございます。
本日は非常に
国会の多忙なるにもかかわりませず、私
どものいろいろな角度から検討いたしました結果、
政府提案として出されております
郵政省職員の
定員法改正について御
意見を聴取して頂ける
機会を頂いたことを心からお礼を申上げたいと思います。相当長時間に
亘つて、すでに衆議院では
審議を終了いたしました問題でもありますし、又
職員側を代表する私
どもの
立場としては、
郵政本省との間で数次に
亘つて交渉の席上でも明らかにされて来た問題でありますので、この際、細かな
数字、その他については触れることなしに、大きな二、三の点から
意見を述べさせて頂きたいと思うわけであります。
一省の
定員の処置というものがきめられる場合に最も大切なことは、その
定員内において、その省の運営されるいろいろな
行政関係乃至は
現業官庁におけるところの
業務の推進されておる
状況がどのようにな
つておるかということが、
定員の算定の場合の最も大きな基礎的なものになろうというように考えておるわけでありますが
郵政省の
定員につきましては、もうすでに御案内の
資料、その他でも申上げました
通りに、すでに戦後においては、三度目の大きな
定員の
削減がされておるわけであります。その最も大きか
つたのは二十四年度の三万二千、二十六年の一万四千何がしというような、大きな
定員の
削減を受けておるわけであります。
定員を大まかに掴んで
定員行置というものが出された場合に、それで
仕事ができるかできないかということが大きな問題にな
つて来るだろうとは思いますけれ
ども、二十四年と二十六年に、こういうふうに大きく
削減されても、なお且つ現在
仕事をや
つておるではないか、こういうような
意見が出て参りますとすれば、それは非常に私
どもとしては、
現場を預か
つている
職場の一人々々の
立場を十分に理解願えない
言葉だというふうに考えておるわけであります。
殊にこの
郵政の
現場は、これは
事務量を明日に持ち越すということのできない
職場でありますし、それから又
社会におけるところの経済や或いは文化や政治の
面等にまで相当大きく寄与いたしておる面から、時間を争
つておるということは、これはもう否めない事実でありまして、殊に
商店街或いは
問屋筋、
株屋、その他
一般の
取引関係のところでは、一時間を
争つて郵便の
配達の早からんことを常に
要求されておるわけであります。又
郵便の持
つております
性格それ
自体が、
国民生活の
一つ一つの中でその
重要性を持
つておりますから、これを遅延させて或いは遅らせて、一日、二日遅らせてもいいというような
性格でないことは、全体的な視野から考えて見ましても言えるところであります。
併し
戦前におけるところの私
どもの
サービス状態というものを考えて見ますと、
一般従業員は、下部で
余り意見を上部に反映さす
機会が、これはまあ
労働運動の
立場から
言つても、
戦前の場合にはありませんでした。殊にそういうような
意見を吐こうとすれば、それは何か左傾された
思想の持主というような形で監視されるような
状態でもありまして、余り十分な
意見を吐くことはできませんでした。そのために
郵政従業員の
勤務時間は、
現場におけるところの出動時間、例えば
外勤の場合には六時乃至六時半、早朝出勤するというような事例があり、而もその
勤務状態は、
郵便の取集め、小包の
配達、或いはそういうふうなものを混合させた
内容を持
つた仕事をしながら、帰りは六時、七時、遅いのになりますと八時、九時というような長時間の
勤務を行うというのは、これはもう普通であ
つたわけであります。それの半面、
配達回数については、三度地、四度地、五度地、六度地、こういうような
配達回数を持
つておりましたし、中
都市、小
都市におきましても、三度地というような
配達回数を持
つておりました。殊にその
勤務時間は九時間、十時間乃至は十一時間というような長時間の
勤務をして、その
業務を
行なつて参
つたわけであります。このために
郵政省の
サービスという面では、全く大衆に対しては万全を期してお
つたのが
戦前の
状態であ
つたというふうに、私は考えておるわけであります。
それならば、戦後におけるところの
状況はどうかと申しますと、
労働条件がとみに
改善されましたし、殊に
勤労者の
勤務時間が一日八時間というこの形態の中で、
生活と文化的な面を十分活かすということが確定され、それから年間におけるところの
休暇の
制度等も設けられて、そのために或る
程度の
人員の、
戦前を凌ぐところの
増員を図るという結果にな
つて来たことは、これは否めない事実であります。併しそれならば、実際に今私
どもの
勤務いたしております
現場では、
委員会等でも問題にな
つておりますように、
週休或いは
年次休暇、こうい
つたものが完全にとれておるかどうかと申しますと、ほかの
官庁の例には全くない現象が
郵政省の場合にはあるわけであります。これは省の
関係者が
委員会等でも明確に答えておりますように、四十七、八日から五十日以上というような
厖大な
年次休暇をとらないで、これを
仕事の面でとり得ないという
状態を惹起いたしておりますし、
週休のような場合には、これは勿論当然与うべきものであるにもかかわらず、或る
現場においてはその
週休がとれないで、二週間も乃至は三週間というような
休暇のない
勤務を続けておるというような
現実もあるわけであります。
こういうように
戦前と戦後の
郵政省の
サービス部門から考えた一人々々の労働いたしております
実情というものは、幾分
改善はされておりますけれ
ども決してこれがほかの
官庁等に比べてそれに匹敵するだけの
改善が加えられたというふうには考えられないわけであります。併しその
仕事をするために或いは
予算がきめられるために出された
定員の枠内で
仕事をして行かなければならんというこの
現実と、それから
仕事に対するところの愛着というものは、
郵政従業員はほかの
官庁に
優つても劣るものはない。あらゆる部面で無理をしながら、或いは苦難に応えて
公共事業として
郵便業務の中に従事しておる
立場というものを、私は守
つておるというふうに考えておるわけであります。
こういう私
たちの
立場というものを考えて見ますと、一番問題にな
つて来ますのは、今度の
定員改訂がどういう形で行われたかという点に重点がかか
つて来るのではないかというふうに思います。殊に私
どもと
郵政大臣との間で
交渉が持たれた際に、
曾つて郵政省本省と
全逓との間で
交渉を
行なつた際に見ないような、不幸な事態を最近の
交渉の中で惹起いたしました。それは私のほうから非常に細かく
定員の
関係、
郵政省の
内部事情、
労働組合として口にすべきことでない経営の点まで私
どもはいろいろ心配した上で、今度の
定員の
関係については、こうではないだろうかという
意見を出した際に
大臣は、これに対して答弁に困
つて、今日の
交渉はこれまでと
言つて、何の断わりなしに、席を蹴
つて立たれたという事実があ
つたわけであります。これは何を意味するかというと、今度の
定員法をきめられた大きな枠というのは、二十七年の
定員法のときに、前
大臣である
佐藤郵政大臣が、これをや
つた結果、
郵政の
現場定員の場合には殆ん
どもう
削減する余地はありません、こういうことを
国会でも御答弁いたしておりますし、私
どもでも証言いたしておりますし、私
どもの
交渉の席上でも明らかにされております事実、それからここで
——あとで申上げたいと思いますが、個々の
現場の
実情というものは、もうすでに
定員を
削減することのできないというような
実情にある、こういうような
実情を私
どものほうから
説明いたしますと、これに対して抗弁ができない。殊に今度の
定員の
削減は明らかに
政府側の
一つの
政策の上で、天引乃至は掴み取り、こういう形で行われた
内容であ
つて、そのための
定員改訂であ
つたために
説明に困
つたというのが、私は
実情ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
そこで少し
定員の
内容について申上げたいと思うわけでありますが、
郵政省の場合には、
郵便、
貯金、
保険、それと
電気通信関係の
委託事業というふうに分れておりますが、これの
総体の
定員は二十五万五千二百五十五人、このほかに
常勤的労務職員が千八百四十二人、それから
常勤的労務職員とは別に、
定員外で配置されております
非常勤職員が六千二百二十二名、計二十六万三千三百十九名というのが大体
郵政の
仕事を捌いていくための
定員として是非必要な
人員だとされておるわけであります。このほかに季節的な
定員としては実にこれは百二十何万名というのが
季節的定員として
郵政省では是非必要な人力としてあるわけであります。これが大体
郵政省の一年間の繁閑、すべての
業務を遂行して、
サービス部門もできるだけ維持しながら
仕事を
行なつて行こうとする場合の
定員の配置であります。
ただここで私は
非常動の
関係で
昭和二十八年におけるところの
定員改訂の際に、五千五百六十一名の
増員を図られたことがありますが、これはなぜ
増員を図られたかと申しますと、
委託関係の
業務に従事しております
非常勤職員が、これは
一般職員と全く何らその
性格も違いませんし、
業務の
内容も変らないのに、
差別待遇を受けております。
定員外非常動としての
立場を有利にするために
非常勤を組替えて
定員化されたのが五千五百六十一名であります。二十九年度におけるところの
非常勤は、依然として
常勤的非常勤が百八十四名いるということ、
非常勤職員が六千二百二十二名いるということ、こういう事実は、私は
昭和二十八年のときの
定員の組替のときの
思想に立つならば、当然これは組替えられるべきものではないかというように考えるのであります。
更に又今度の
定員改訂の
省側の
説明を読んで見ますと、殖やすべきものは殖やし、減らすべきものは減らす、こういう建前をと
つておりますけれ
ども、
説明書の末尾の中に出されております減らすべきものは減らすという
思想は、一体どういうことかと申しますと、相当無理をしたいわゆる
理由付は
行なつたけれ
ども、
現場でこれができるかどうかということについては、
国会の
審議の了した
あとで検討いたしましよう。こういうのが大体
省当局の
説明のようであります。でありますから、おのずと今度の場合には、省内で考えております
定員操作の問題とそれから
政府で出しました
定員操作との間には、明らかに食い違いがあるということであります。これは私のほうで察知するところ、相当
政府の
政策というものは、
現業官庁である
郵政省の上に大きくのしかか
つてお
つて、そうして
現業官庁を預
つているそれぞれの
責任者の上に、実態を無視したいわゆる結論を出させた、こういう無理な面があるように見受けられるわけであります。
なぜならば、今度の
定員改訂が出された場合に、
省側のほうで出されております
増員要求は一万七千なにがし、一万六千七百五十三名の
要求をいたしておるわけでありまして、これが二十九年度におけるところのいわゆる
事業を
行なつて行く場合の最低の
人員であるというふうに考えて
増員要求をいたしているわけであります。このために私
どもとしては、今度の出されました
定員改訂それ
自体がこれは非常に政治的な
意図を含んでおりまして、
行政官庁のいわゆる
業務を担当するそれぞれの
立場の
人たちに対する大きな圧力をかけた結果出された
数字ではなかろうかというふうに考えるわけであります。
更に又私はこの問題が決定されるまでの
過程は、
郵便におけるところの
外勤事務、それから
特定局におけるところの
外勤者、それから
委託関係の
職員、十万以上の
普通局におけるところの
内勤定員、これらについて行政管理庁との
折衝過程の中に、二千五百名
程度の
復活要求が認められたという事実を仄聞しているわけであります。ところが結果的に、
政府で大体予想いたします
整理人員と比べて見たところが、それではあまりにも数に満たない
関係から、二千五百名の
復活をしないで、千名の
復活に止め、千五百名を更に
郵政省の無理な
定員の上にかぶせて来たという事実を私は仄聞いたしているわけであります。このために
全逓の
立場といたしましては、
現場におけるところの
外勤乃至は
委託関係乃至は十万以上の
郵便局におけるところの
内部事務、これらに千五百名
程度の
人員が無理にかか
つて来た結果、若しもこれが
整理されるならば、これは前に
田村大臣がおられましたときに、日曜の
配達を廃止して、そうして
定員確保を満たそうとして、その
事情に
全逓としては
反対はいたしたけれ
ども、この際はそれだけ削られるならば非常に
サービスの低下になるけれ
ども、日曜の
配達を廃止せざるを得ないのではないだろうか、こういうことを考えて、それぞれ
先生方に陳情を申上げた次第であります。
更に私は今度の
整理が、こういうふうな無理な押し付けられた
数字であるということを実証するために、
内部事情についていささか
説明いたしたいと思いますが、今度の場合は、例えば
本省郵政局関係の
整理人員は十四%乃至十二%というような非常に高い
整理数を持
つているわけであります。私はこういうふうな高い
整理数を持
つたというそれ
自体に対していちいち
意見を申上げるので
はなしに、先ずそういうふうなところから
整理をされた場合に、結果的にどうなるかは差しおきまして、その次に
現場部門について与えられました
保険、
貯金の
支局関係が五%乃至六%という
数字、或いは
現業段階が〇・三%という
数字でありますけれ
ども、
総体的な
数字として出した結果、どういうことが出ておるかと申しますと、先ず
郵便事業の場合の切れない
分野、五名とか六名とかいう郵仮局から、何パーセント切るとい
つたつて、これは切ることができません。或いはどうしても現在の
定員を確保しない限り、一人一区というような担当区を持
つている
郵便部門において切れないというような、こうい
つたものを除外して参りますと最終的にしわ寄せされるという
分野はどこかと申しますと、
保険の
支局、
貯金の
支局、それから
郵便局におきますれば、
内務者とい
つたところに全体的な
数字がかぶさ
つて来る、こういう結果にな
つて来るわけであります。でありまするから
パーセンテージは〇・三だとか〇・六だとか言われますけれ
ども、実際上のかぶ
つて来る
数字というものは、もつと高いものがそれぞれの上にかぶらざるを得なくな
つて来るだろうというふうに考えているわけであります。
又
政府のほうで
説明いたしました一から八までのそれぞれの
事務簡素化或いは
統合乃至はそれぞれの
事務量の
減少等に
伴つての
人員の
削減がでますと、こういう
意見がついておりますけれ
ども、私はそれについて非常に
疑問点があるわけであります。殊に
支局関係におけるところの場合をと
つて見ますと、
東京の
簡易保険支局においては、大体一年間を通じて一日の延
人員七十名ぐらいの季節的な
非常勤を
雇つて事務を
行なつているわけであります。それに対して
パーセンテージを掛けますと、大体それと匹敵するくらいの
程度の
人員の
削減を
行なつているわけであります。これは非常に矛盾した行き方でありますし、この点私
どもは非常に納得のしがたい点であります。いろいろ
説明する点はありますが、そのほかに
東京関係の
現場におけるところの
事務の
内容或いは
郵便物の
増加の
状況、或いは地方におけるところのそれぞれの
事務量の
増加と、
定員操作の窮屈な点、こうい
つたことを考えますと、私は今度の
定員整理が非常に無理な、而も当てのない結果で生まれて来た数子であるということが、明らかに
説明できる
内容ではないかというふうに思
つているわけであります。
更に私は第三番目の問題として、
郵政省の
総体の
予算の中に占める
人件費の割合というものが七〇%乃至は七三%というふうに
厖大なものに言われておるわけであります。こういうふうな
人件費を要している
官庁というものは、これは
現業官庁にはありませんし、或いは
一般会計からそれぞれ
予算化されております
官庁においては別でありまするけれ
ども、
官庁においては別でありまするけれ
ども、こういうようないわゆる
人件費の嵩んでいる
状態というものは、私はこれは単に
郵便料金乃至はその他の問題で
独立採算制の形の中から解決して行くものであるかどうか、この点について私は疑問を持
つておるわけであります。殊に
郵便事業それ
自体が
戦前の
サービスに追いつくのには全くまだまだ遼遠なるものがありますし、
郵便事業の持
つております
使命から申しますともつともつと
一般の公衆に
サービスをしなければならない
仕事であるにもかかわらず、
予算に縛られておるから、それができない。そして又それらの問題を総合いたしますと、
サービスを低下しなければならない。こういうような
実情に当面いたしておるということは、
是非一つ国会において十分御
審議願つて、打開のための
努力をお願いいたしたいと思うわけであります。私
どもは
一般官庁の
かたがたと肩を伍して、そうして
自分達の
仕事に誇とそれから
自負を持
つて、高度な
責任感の上で
仕事を遂行いたしたいという
意欲においては勝るとも劣らないということは、先ほど申上げた
通りでありますがたまたま私
どもは
給与関係或いは
待遇関係或いは
施設関係、こうい
つた問題でほかの
官庁と劣
つて行くならば、
郵政に当職いたしております
職員が
自分達の
職場に対して卑下を感じ、
自分達の
職場に対して何らかの遜色を気持の上で負目として持つとするならば、これは私は
事業の上において非常に大きなマイナスになるだろうというふうに考えておるわけであります。
更に私は今度のこの
定員関係の
審議に当
つて、
先生方の非常に真摯ないろいろな形からの御
意見を聴取いたしておりますが、その点については心から感謝申上げると同時に、
定員のこの出されたそれ
自体の案を修正乃至はこれを撤回するというようなことについては非常に困難が伴われることだろうとは考えますけれ
ども、
郵政の持
つておりますいろいろな観点から、
是非一つこの問題を取上げて頂きまして、
現場を担な
つております一人々々が非常に誇とそれから
自負を持
つて、
責任を遂行できるような方向へ御
努力を切にお願いいたしたいと思うわけであります。
いろいろ細かな
数字につきましては、
資料を持
つておりますけれ
ども、
国会非常にお忙しい短時間の
参考人の
意見を述べる
機会でありましたので、細かな
数字については省きました。後で又いろいろ御陳情申上げたいと思うわけでありますが、
是非一つ私
どもの意のあるところを汲んで頂きまして、慎重に御
審議をお願いいたしたいと、かようにお願いする次第であります。これで終りたいと思います。