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1954-06-07 第19回国会 参議院 本会議 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年六月七日(月曜日)    午後二時五十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第六十一号   昭和二十九年六月七日    午前十時開議  第一 農業委員会法の一部を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第二 農業協同組合法の一部を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第三 蚕糸関係風害等対策に関する請願委員長報告)  第四 桑園等の凍霜害対策に関する請願委員長報告)  第五 国有林野払下げ等に関する請願委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、農業委員会法の一部を改正する法律案……  只今議長は、日程第一に入ろうといたしましたところ小林英三君ほか三名から、成規賛成者を得て、只今地方行政委員会審査中の警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案について、国会法第五十六条の三の規定により、この際、同委員会委員長をして、一時間以内に中間報告をさせ、委員長報告せざるときは、事故あるものとみなして、理事をして報告せしめ、報告時間を一時間以内とすることの動議が提出されております。  よつて、本動議議題といたします。これより本動議採決をいたします。本動議賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  4. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よつて動議は、可決せられました。  午後四時まで、休憩いたします。    午後三時一分休憩      ——————————    午後四時十七分開議
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  議長は、先刻の決議を直ちに地方行政委員長内村清次君に伝達し、その出席を求めましたが、委員長出席いたしません。  よつて、先刻の決議に基き、地方行政委員長は事故あるものとみなし、警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案につき、地方行政委員会理事から、中間報告を求めます。地方行政委員会理事堀末治君。    〔堀末治登壇拍手
  6. 堀末治

    堀末治君 只今議題となりました警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案について、地方行政委員会における審査経過の概況を御報告いたします。  警察法案提案理由は、現在の警察制度は、国家地方警察市町村自治体警察の二本建であり、又警察単位が細分化され、警察運営責任が分割されているため、警察効率的運営が損われ、又国警自警の施設及び人員が互いに重複しているため、国民にとつて複雑且つ不経済な負担となつている等の弊を生じている。併しこれらの欠陥を是正するに当つては、警察の民主的な運営、換言すれば国民警察運営に対する関与は、依然としてこれを保障しつつ、この民主的な保障基盤の上に、治安任務遂行能率化責任明確化図つたのであるというのであります。  その内容主要点は、第一に、公委員会制度中央地方共に存置したこと、即ち、警察管理運営民主的保障を確保するため、中央地方を通じて公安委員会制度を置き、警察管理せしめることといたしたのであります。  第二に、警察府県警察に一本化したこと、即ち、現在の国警、自警は共にこれを廃止して、新たに都道府県警察を置くこととしたのであります。なお、大都市警察については、これを府県と併立させることは、大都市とその周辺地域とを遮断し、警察対象としての両地区の一体性を阻害し、財政的にも極めて不経済な結果を来たすとしう理由で、府県警察に一元化することにいたしたのであります。  第三は、府県警察内容であります。即ち、都道府県警察については、国家的要請に基く最小限の制約を除いて、これに自治体警察としての性格を具備せしめることとしたのであります。  第四には、中央警察機構のことであります。即ち、中央警察官理機関たる国家公安委員会委員長は、国務大臣を以て充てることとし、国家公安委員会は、その管理の下に警察庁を置いて、国の公安にかかる警察運営を掌り、警察の教養、通信、鑑識、統計及び装備に関する事項を統轄し、並びに警察行政に関する調整を行わしめることといたしたのであります。  以上が警察法案主要点でありますが、政府はこれによつて三万人の減員と約八十九億円の節約ができると説明いたしておるのであります。  以上の内容を有する警察法原案に対し、衆議院において修正が加えられましたが、その修正要点並びに理由は、次の通りであります。  先ず修正の第一点としては、任免権の点であります。即ち、一、警察庁長官任免は、これを国家公安委員会内閣総理大臣承認を得て行うこととし、二、警視総監任免は、国家公安委員会が、都公安委員会同意を得、内閣総理大臣承認を得て行うこととし、三、警察本部長及びその他の都道府県警視正以上の警察官任免は、国家公安委員会都道府県公安委員会同意を得て行うことに改めることとしたのであります。即ち、これらの点は、いずれも内閣総理大臣又は警察庁長官任免権を持ち、国家公安委員会意見を聞くこととしてあります政府案を、国家公安委員会任免権を持たせ、その場合に内閣総理大臣承認を得ること、或いは都道府県公安委員会同意を得て行わしめることにしようとするものであります。而してその理由としては、民主的な保障基盤の上に、治安任務遂行能率化責任明確化を図る趣旨から見て、任命権をいずれに属せしめるかは、政府においても慎重に考慮されたことと思われるのでありますが、今回の制度の上では、あえて任命権内閣総理大臣又は警察庁長官に属せしめずとも、その趣旨は達成できるでありましようし、又人事権の掌握によつて徒らに無用の誤解を招くがごときことは適当ではないというにあるのであります。  次に修正の第二点につきましては、大都市警察問題に関することであります。この点につきましては、大都市、即ち五大市を有する府県につきまして特例を加え、一、五大府県公安委員の数を五人とし、そのうち二人は五大市の市長が市議会の同意を得て推薦する者について知事任命することとし、二、五大市区域内における府県警察本部事務を分掌させるため、市警察部を置き、市警察部長市警察部事務を統轄し、府県警察本部長の命を受け、所属職員を指揮監督するものといたしたのであります。その理由といたしましては、大都市警察の問題については、政府案におきましては、府県警察に一元化しているのでありまして、これについては従来の経験に鑑み、警察運営有機的活動の障害を除去し、警察活動一体性を保とうという趣旨にある点は了解できるのでありますが、五大市区域内の警察事務には特殊性もあることであり、従つてこれらの市住民意思府県警察に反映させるためには、五大府県公安委員の数を二人増加し、市より推薦したる者を加え、又これらの市部内の事務処理のため、市警察部を置くことによつて市の実情にも適応した警察運営を図るのが適当であろうというのであります。而して五大市警察を今直ちに本法施行と同時に府県に一元化するには、準備その他の都合もありますので、その時期を一カ年間延期し、その間は、府県警察と同様の性格の市の警察として措置することといたしたのであります。従つてこの一カ年は、五大府県公安委員を五名とする例外規定も停止するものであります。  第三点は、都の公安委員会は五人の委員を以て組織するものと修正したのであります。これは東京都が我が国の首都であり、人口は全国の約一割を占め、警察事務も極めて多く、国家的利害関係も複雑でありますので、公安委員を五人とすることが警察の処理の上にも、又民主的保障の上にも適当と考えたからとのことであります。  第四点としては、公安委員資格要件を緩和し、これを任命前五年間に警察又は検察前歴を有しない者と改めたことであります。政府案におきましては、従前の制限を大幅に緩和いたしてはおりまするが、なお警察又は検察前歴のある者を欠格要件としておりますことは、その趣旨とするところは、一応了解できますが、少しでも専門の経験を有する者を一切且つ無期限に制限いたしますことは、余りにも厳格に過ぎると思われますので、これを五年前の前歴者までに緩和したものであるというのであります。  次に、警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案は、警察法案と関連して関係法令規定整理し、これに伴い、所要の経過措置を定めるものであります。これに対しましても、衆議院において若干の修正が加えられましたが、その修正は、警察法案修正と対応して、当然必要な条文の引用上の整理であります。  地方行政委員会におきましては、五月十七日、右両法案に関し、小坂国務大臣より提案理由説明衆議院議員西村直己君より修正理由説明を聞き、同じく二十日、二十一日の両日には公聴会を開き、全国知事会代表愛知県知事桑原幹根君をはじめ、各団体代表者学識経験者等十四人の公述人より意見を聞いた後、各委員との間に質疑応答を重ねました。  五月二十五日より実質的審査段階に入り、先ず総括質問より始めて、逐条審議に至るまで、二十五日、二十六日、二十八日、二十九日、六月一日、二日、三日と連日に亘り、慎重なる審議を続けたのであります。而してその間吉田内閣総理大臣緒方総理を初め、関係大臣出席を求め、委員各位との間に質疑応答が繰返されたのであります。二十七日には、地方行政内閣人事・法務の連合委員会を開きました。二十八日には、警視総監田中榮一君ほか四名の参考人より、主として、一、自治体警察側より見た警察法案、二、首都警察特異性、三、警察におけるいわゆる特高教育等の問題について供述を聴取いたしました。同日  午後には、本法案重要性に鑑み、特に吉田内閣総理大臣出席を求め、各委員との間に熱心なる質疑応答が行われました。以上の審議に当つて、各委員政府側との間に行われました質疑応答は、いずれも法案内容重要性に対応して、各般の事項に亘り、頗る広汎な範囲に及ぶものでありますので、その詳細につきましては、速記録について御覧願うことといたし、ここにはその焦点とも見られる主なる問題点の大体を御報告申上げることにとどめたいと存じます。  先ず第一は、警察法基本理念に関する問題であります。即ち、「現行警察法には、前文があつて警察法制定基本理念を明らかにし、その中で地方自治の真義を推進する観点から、又人間尊厳最高度に確保し、更に国民に属する民主的権威の組織を確立する目的を以てというような点が強調されているが、これらの地方分権人間尊厳性主権在民等日本国憲法基本精神は、今回の警察法案のどこにどのように取入れられているか、今回前文を削除したのは、現行警察法民主的建前地方自治趣旨を没却し、能率化経費節約の名の下に、中央集権的国家警察を打立てんとする政府の意図の現われではないか」との質問に対しては、緒方総理小坂国務大臣その他政府側より、「前文を削つたのは、法律形式の上から、前文は削るほうがよいと考えた以外に他意はない。法案第一条に揚げたこの法律目的は、現行法翻訳的口調日本人的感覚による文句、条文として書き改めたまでであつて、別段趣旨を変更したわけではない。即ち法案第一条中に「民主的理念を基調とする警察管理運営保障し」云々と規定しているのは、憲法に謳われた地方分権主権在民の精神を含めたものであり、又人間尊厳最高度に確保することを意味するものであつて、いずれも憲法の根底に流れる民主的理念に帰するのであるから、警察法に改めて詳しく強調するまでもないと考える。民主警察基本線は飽くまで堅持する方針は何ら変つていない」旨の答弁がありました。  第二に、「法案によれば、国家公安委員会委員長及び五人の委員から成り、委員長国務大臣を以て充てる、委員は、不偏不党公平中正に職務を遂行すべき旨の宣誓を行うこととなつており、又委員は、政党その他の政治的団体役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならないとある。国家公安委員会委員長に、政党内閣国務大臣を以て充てることになれば、国家公安委員会中立性は損なわれ、選挙干渉人事介入等によつて、全警察政府の意のままに動くようになり、その政治偏向によつて恐るべき弊害をもたらす虞れはないか。最近検察庁法第十四条による法務大臣指揮権発動の例もあり、危惧の念に堪えない」との質問に対しては、緒方小坂大臣より、「国の治安責任を明確にするために、国務大臣国家公安委員長に充てることにした。併し委員長は、委員ではなく、表決権を有せず、採決権を有するだけであり、委員会は、委員長及び五人の奇数の委員によつて構成されるのみならず、委員は、国会同意を得て任命され、五カ年の任期が保障されて、政治から全く中立性を保ち得ることになつているので、チエツク・アンド・バランスの作用が働き、国務大臣たる委員長が、不当なインフルエンスを及ぼして、国家公安委員会政治的中立性を害する虞れはない。即ち今回の制度は、政党内閣の下における治安責任明確化と、警察政治的中立維持二つ要件の調和を図つた苦心の結果である」旨の答弁がありました。  なお、「委員長会務総理し、委員会を代表するとあるが、これについて不当に政治的に委員会を左右し、又は委員長個人として独断専行し得る余地はないか」との質問に対し、「委員長会務総理するというのは、委員会を招集し、これを主宰するほか、委員会の庶務をすべくくるだけであつて委員会に不当の圧力を加える余地はない。又委員会を代表するというのは、委員会で決定せられたことを外部に向つて代表するだけであつて委員長として委員会意思に基かないで外部に行動することはできない」との答弁がありました。  第三は、「府県警察性格について、政府提案理由説明の中で、府県自治体警察であると述べているが、その幹部は、これを国家公務員とし、その人事中央で握り、これに対して府県警察最高管理責任者たる府県公安委員会に殆んど発言権を与えていない。かように基本的地方公共団体たる市町村自治体警察を一挙に廃止し、能率化と称して、府県警察一本化を企て、人事を通じて全国警察中央の強い統制の下に置こうとする今回の警察法案のどこに、府県警察自治体警察なりと説明できる根拠があるか」との質問に対しましては、「府県警察は、知事府県議会同意を得て任命する府県公安委員会が全面的に管理し、その経費も原則として府県が負担し、若干の幹部を除いては、全部地方公務員であり、府県警察内部組織人事管理は、法律によるもののほかは、全部地方の条例で定めるものであるから、実質上これが府県自治体警察であることは疑いない。ただ警察事務は、国と地方利害に関するものであるので、その特殊性に鑑み、最小限度において必要な国家的要請を国に留保したに過ぎないものである」旨の答弁がありました。第四は、「法案第七十四条に「内閣総理大臣は、第七十一条の規定により、緊急事態布告を発した場合には、これを発した日から二十日以内に国会に付議してその承認を求めなければならない。但し、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会においてすみやかにその承認を求めなければならない」とあるが、この但書の衆議院が解散されている場合には、憲法第五十四条に従い参議院緊急集会を求めて、その承認を求めるべきではないか。これは政府参議院軽視の現れではないか」との質問に対しては、小坂国務大臣より、「この国会承認は、政府布告に対する責任の解除を本旨とするものであるから、多少遅れることはあつても、完全に成立した国会両院承認を得ることが必要且つ適当と考えたのであつて参議院軽視の念は毛頭ない」旨の答弁がありました。第五に、「現在自治体警察国家地方警察職員の間に相当大きな給与の差があり、府県警察なつた場合、本俸が相当引下けられる結果となり、この場合その差額は手当として支給せられることとなつているが、これは恩給の基礎には計算せられていない。従つて自治体警察諸君の中には、恩給上非常な損を招く結果となるが、政府はこれに対して何らかの対策を考慮する必要はないか」との質問に対し、「政府は、成るべく近い機会に、この趣旨の実現を図る手段を講ずるよう努力をいたしたい」旨の答弁がありました。  第六は、「内閣総理大臣への権力桑中が、本法案によつてますます助長されないか」との質問に対しましては、吉田内閣総理大臣より、「権限内閣総理大臣に集中されるというが、民主政治の下においては内閣総理大臣権限は、それぞれ民主的機関を通じて行われるので、独裁になる虞れはない」旨の答弁がありました。以上が質疑応答内容の主なるものであります。  かくして本法案審議最終段階に入り、多数委員意見に反して、たびたび且つ長時間の休憩が行われ、又はそのまま流会となり、遂に討論採決に入ることができなかつたことは、誠に遺憾に堪えない次第であります。  以上、御報告申上げます。(拍手)      ——————————
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) 小林英三君ほか三名から、賛成者を得て、この際、地方行政委員長から中間報告があつた警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案を一括して、国会法第五十六条の三の規定により、本会議において審議することの動議が提出されております。  よつて、本動議議題といたします。これより本動議採決をいたします。本動議賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  8. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よつて、本動議は可決せられました。      ——————————
  9. 河井彌八

    議長河井彌八君) 警察法案  警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、両案を一括して議題といたします。     —————————————
  10. 河井彌八

    議長河井彌八君) 両案に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。笹森順造君。(「総理大臣が来てないぞ」「休憩」と呼ぶ者あり)少しここで待ちます……。笹森順造君。    〔笹森順造登壇拍手
  11. 笹森順造

    笹森順造君 只今議題となつております警察法案に対しまして、私は総理に対し、改進党を代表いたしまして若干の質疑を行います。  それは、この法案を出しました内容責任についてであります。第一に、警察法案提出が原因となつて国会未曾有の大不祥事、大混乱を来たしたことについて、総理は如何なる政治責任を感じていられるか、伺いたいのであります。今国会において、多くの法案が提出せられたのでありますが、わけてもこの警察法案は、総理が常に重大法案として言われておるのであります。この法案をめぐつて衆参両院における議論が白熱化されたことは言うまでもございません。而もその背景には、相対立するところ二つ意見がありまして、私どもは、長い間両者の陳情をつぶさに受けたのであります。故に私どもがこれに対しては、慎重審議をして、而して世論の帰趨するところに向つて良識ある国会としての結論を得たかつたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)ところが、不幸にしてその段階を経ることができませんで、先ほど堀理事から報告のありましたことを伺いまして、皆様がた如何にお感じになつたであろうか。私どもがこの内容を考えてみますると、決してこの法案が、慎重審議のすべての過程を終つていない。私自身も総理に対しまして、なお総括質問が残つておるので、おいでを願つて、これに対するところ答弁を求め、約束をしておられたのであります。のみならずこの法律は、僅かに総則の第一章を終り、第二章に入りまして、漸くその前半について、私ども逐条審議を始めたのみであります。そのほかにこの内容を御覧になりますると、重要なる多くのものが残されておる次第であります。第三章の警察庁のこと、これには、第五節まで詳しくあります。第四章の都道府県警察のことも、又第四節まで残つております。而も又第五章において、警察職員に関すること、第六章において、緊急事態特別措置に関すること、第七章において、雑則、更に附則があります。これらの逐条審議は、全く、今申しました二章の後半後、残つておるのであります。而もこの間に多くの、この法律違憲であるだろう。或いは又法の秩序を紊しているだろう。或いは唱えらるるごとく、この表題の、自治体警察と申しておりまするが、法規内容を見ますると、全くこれに相背馳するところのものを私どもは見出す。この意味において掲げておるところの目標、法規実施等に関して、自家撞着を私どもは見出しておる。而もこの法律全体を通覧しまして、直ちに感じられますことは、これは現行法のその形式逐条的に取入れまして、新らしい考え方から、これを盛り込んだだけの話でありますが故に、頗る立法の技術において、拙劣であり、杜撰であるという点が見出されるのであります。これが全く新らしい警察法であるならば、新らしい意味において、新らしくこれを作つたならば、こうした法律自体の矛盾を起さなかつたでありましよう。この法の形式は、非常なちぐはぐな点のたくさんあることを私は見出して、これを遺憾としておる次第であります。而も又、私がこれからお尋ねします二、三の点もございますから、そのことに触れて申上げますが、いずれにいたしましても、こういう審議が十分に尽されておらないというところに、折角会期を十日延長しとしますならば、その間において、なお十分の審議ができるはずであります。(「そうだ」「できないじやないかと呼ぶ者あり)むしろ、できないとおつしやる方もありましようが、少くとも改進党は、十分このことを審議するつもりで、又その予定でおつたので承りますが、不幸にして、ここにおいて大多数の起立によつて中間報告が求められた。その中間報告を求められたとは、法規においては、私は必ずしも反対はできない。併しながらその中間報告を求めて、更に九日の日があるのに、なぜこれがために慎重審議しなかつたか。而もこれを取上げなければならないという理由はどこにあるかを聞かなければならない。この意味において、私はこの法案に対するところ審議が十分でないということで、私はこの第二の質問をしなければならない。  即ち第二に、本法案審議が本院において漸くその緒につき、大部分が未審議のまま違憲並びに法の秩序を紊乱する疑義があるのに、今、強いてこの法案を議了しなければならない、強行して、而も甚だお粗末な、国民の納得のすることのできないままに、これを終らなければならないという理由、その理由とするところは何であるか。その点についてこれを総理に質すのであります。(「総理責任じやない」と呼ぶ者あり)この法案を提出した責任内閣である。内閣がこれを提出しておるのであるから、総理責任者である。  第三に、本法案において、国家公安委員会委員長には、政治中立性、不偏不党を要求せぬ制度となつておるのであるが、現在の政党内閣の下では止むを得ないと緒方総理が私に答えておるのであるが、この点について私は過日、総理に、同意見であるかということを尋ねましたときに、これは当時、聞いておらないから自分は答えられないと言われたのであります。そこで、私は速記録を持つて参りました。この速記録によつて総理大臣の明快なる御答弁を求むる次第であります。極く要点は短いのでありますから、その分だけ朗読をいたします。これは五月二十六日の委員会における質疑応答であります。  笹森委員会性格上の要件でありまする「政党その他の政治的団体役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。」という規定委員長に適用するものでありますか、適用しないものでありますか、お伺いいたします。」緒方総理「それはしません。そのために委員長委員になつておらないのであります。」笹森「そこが問題なのであります。つまり総理大臣任命する委員長たる国務大臣はその身分の本質においては政治運動ができるものであります。ところ委員には政治運動を禁じておるはずであります。必須的な要件は、この政治中立性に対しまして委員長には及ばないというのが只今の副総理の言明のように伺いましたが、その通りでありますか。」緒方総理「当然にそうなつて参ります。」笹森従つてこの制度政治運動のできない委員の上に政治運動のできる国務大臣をその会の長として確定的に置く、従つてこの制度は不偏不党の原則を無視した大きな抜け穴を作つている、それが副総理の御意図であると思つてよろしうございますか。」緒方総理「すべての場合にそうであるとは私考えません。委員長表決権を持つていないのでありまして、五人の委員は大体において委員会としての判断をしてくれると考えております。」笹森「私の聞いておりますのは、そういう適用の問題ではなくして、制度上そういうこの委員長には中立性、不偏不党というものをしなくてもいいという制度になつておるのではないかという点であります。そういうことがこの法律の最も大事な点として私どもがはつきりしておきたい点でありますから、制度上この委員長には不偏不党というものは要求しておらんという制度であると私どもは理解するのでありますが、如何でございましようか。」緒方総理「現在の政党内閣の下におきましてはそういうことも止むを得ないと考えます。」  これが問題の焦点であります。私どもが過去において日本の政治歴史の悲惨なる政党の争いが、どこから来ていたか。この警察権力を持つておるところのものが、当時の政党のその方面に、不偏不党に反する実に偏頗な、而も又残酷なる政争を展開しておる事実を私は見たのであります。ここに五人の委員は、本当に不偏不党であることが要求されておるにもかかわらず、この政治責任の積極的なる政治活動のできるところ委員長を置くということに、私どもは重大なる法律上の俑を作るものと考えます。(拍手)この点が、私どもの是非とも修正しなければならんと思つた点なのであります。そこで私どもが、警察法に対するところ修正案として改進党が用意しておつたこの点についても、総理意見を伺わなければならない。   警察法案の一部を次のように修正する。   第四条第二項中「委員長及び」を削る。   第六条を削り、第七条を第六条とし、第八条を第七条とする。   一、第九条第一項及び第五項中「第七条」を「第六条」に改め、同条は第八条とし、第十条を第九条とし、同条の次に次の一条を加える。   (委員長)  第十条 国家公安委員会委員長を置き、委員が互選する。  2 委員長の任期は、一年とする。但し、再任することができる。  3 委員長は、会務総理し、国家公安委員会を代表する。  4 国家公安委員会は、あらかじめ委員の互選により委員長に故障がある場合において委員長を代理する者を定めておかなければならない。   第十一条第一項中「委員長及び」を削り、同条第三項を削る。   第四十一条第四項中「第九条」を「第八条」に改める。   附則第六項中「第七条」を「第六条」に改める。  こういうのであります。この抜本的なる修正が成立いたしましたならば、これによつて、私どもが懸念いたしております最も重大なる日本の将来の政界に暗影を投ずるようなことが、これによつて削除されるでありましよう。これが即ち改進党が修正案として用意しておつたものでありまするが、このことの委員会における審議なしに、ここに、私どもが本議場にこれを出さなければならなくなつた。この点について、もう一度総理大臣が反省せられて、この点について修正するなり、或いは又何かの方法を以てこういう欠点のかいように、これは運用上の問題でたく、制度上の欠点と認めなければならないという点について、総理意見を伺いたいのであります。  次に、第四として申上げますことは、本法案により、国家公務員地方公務員人事権を握ることは、国家権力を以て自治体の特権を破壊するものではないかという点であります。この点は、委員会の席上においても、しばしば論議せられたのでありまするが、結局するところ、法の出発点を私ども見出すことはできなかつた。この法案現行法のこの国家地方警察制度をやめて、又五千人以上の人口の市町村の自治警察をやめて一本にする。これが自治警察だと、先ほど委員長報告にもあつた自治体警察、それは警察の仕事として国家的なものがあることは、これは勿論であります。でありますが、本質としてこれが自治体警察なりや否や、警察国家を作るものでないかという疑いに対して、まだこの疑点が残つている。そこでこの制度といたしましては、意図するところのものは何であるか。先ほどの国家公安委員長国務大臣を以て任ずるのと相通ずる一つの思想が流れている。つまり警視正以上の者が都道府県の、それは本部長になるでしよう、或いは又その他の役職に就く、これが全部国家公務員である。この国家公務員が、警視以下の警部、警部補、巡査に至るすべての地方公務員人事権をこれが握るのであります。つまり国家公務員地方公務員人事権を握るという法律がここで新たにできるのであります。これでありまするならば、国の力が自治体を破壊するのではなかろうかというのが、私どもの最も大きな疑点であり、自治体の特権を守ろうとするものの立場でなければならない。どこにこういう法律の出発点があるかと問い質しましても、それは国権の最高の機関である国会できめれば、そうなるのだというお答え以外に我々は得られなかつた。こういうところに、秩序を紊るような法律は、良識ある緑風会の方々は大体反対だということを私は聞いている。良識のない人はどうであるか私はわからん。こういうところに日本の民主主義の破壊があるというのが、私どものこの立法に対する大きな疑点であります。若し然らずとするならば、どうかこのことについて明快なる御答弁を伺いたい。近頃、現政府が提出して参りまするところ法律は、占領下における多くの立法の国情に合わざるものを是正するのだということをおつしやる。私は必ずしもそれは否定いたされたいのでありまするが、これに対しまして私どもが本格的なる、日本に初めて生れて成長しつつあるところの民主主義のこの大きな、大らかなるものを阻止してはいけない。行き過ぎを是正することは、これは賛成であります。でありまするが、その芽を摘むような、少くともここにおいてこの地方自治体の自由を束縛するような法律を、ここであなた方がこれを確定されるとするならば、これは永久にその責任が問われなければならんのであります。この点について自治体の真の自由を守ろう、どこまでも自治体の育成強化のために図ろうという意図があるならば、この点に対するところの明快なるお答えをお願いしたいと思います。  第五にお尋ねしなければならん点がある。それは何であるかと申しますと、第一にお尋ねをいたしましたように、甚だ不幸なる出来事ではありますけれども、この議場内においても、それは政府与党と対蹠的なる意見と地位におるかも知れんけれども、同僚議員の相当数の者が、この国会は無効の延期なりとして出席しておられない。(「どういうわけだ」と呼ぶ者あり)こういう状況において、私どもはこの法律審議して行くのでありますが、こういう状況において審議せられたるものに対して、政府は飽くまでこれが正しいものとして主張せられるのでありましようか。これは後に残る問題であります。私どもは、河井議長の我々に伝えられました正式なる、少くとも形式的なるこの二日の延長並びに十日の延長に対しましては、その通告を受けたという事実において、私どもはこれに従わざるを得ない。これが良識ある改進党の立場であります。併し具さにその内容を検討しまするならば、私ども第三者の立場としてはそうでありますが、第一者と第二者との間に何か過誤があるならば、今後制定せられましたところ法律が一体どうなるかということに対して、これ又現内閣総理大臣としての態度を明確にして置くことを私はここで要望する。のみならず、私どもが現在の日本の社会現象として憂いますることは何であるかと申しますと、現在の自治体警察が会期延長無効の立場をとつて、この警察法案が通過したとしても、これに従わないというような場合も起り得ることを私どもは懸念する。即ちこの新らしい制度に反対しておりまするところの五大都市並びに多くの市町村警察は、この法律は無効であるというような立場をとつて、今後これに従わないという、そういう事象が起つて来ることを私は非常に懸念している。こういうような国を非常に混乱に陥れるようなことが起つた場合に、その責任はどこにあるか。又これを如何なる方策を以て正しいものに直すかということが、今後の重大な問題となつて来るわけであります。私どもは、単にこの法律を今制定するばかりではない。これからよつて来たるところのこの重大なる政治責任に対しましても、今、総理のお答えを願わなければならん段階に立至つたのであります。  以上の五点について、総理より明快なる御答弁あらんことを望むものであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  12. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  第一の御質問は、このたびの国会の未曾有の大不祥事件、大混乱を来たしたことに対しまして、総理大臣政治責任を問うということでありますが、私はその意味の何たることを了解ができないのであります。このたびの不祥事件、このたびの混乱は、一体誰がいたしたのであるか。議事が進行できながつたようにいたした者があると我々は考えざるを得ないのであります。その議事の進行を妨げたことが、私の責任総理大臣責任であるとは考えておりません。現に政府は、衆議院から警察法案参議院に送付いたしましてから月余に亘る協議を求めておるのであります。又その間に、国会をしばしば延期して、而うして国会の慎重なる審議を要求いたしたのであります。にもかかわらず、今日に至るまで、その審議未了、若しくは議事ができないような事態に陥つておるということは、これは政府責任とは全然考えないのであります。  更に委員会中立性について御質問がありましたが、委員長はこれは議事の決定に預かるものではないのであります。又委員はその身分が保障されておるのであります。故にその中立性は十分保障されていると政府は考えるのであります。又、本法によつて地方公務員人事権を握るということは、国家権力を以て自治体の特権を侵すものであるという御議論でありますが、警視総監、又は警察本部長国家公務員であり、府県の機関としては、地方公務員法の定める人事管理に従うものでありますから、御意見のようなことはないと私は確信いたします。又自治警においてこのたびの会期延長を無効と認めるということでありますが、政府といたしましては、衆議院議長から、会期の延長の通知を正式に受けておるのであります。今回の会期延長は無効だとは政府は考えておりません。その他は、主管大臣からお答えいたします。(「もう少し丁寧に答えられないかな」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  13. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 私、今、笹森君の御質問を拝聴しておりましたが、特に私に御質問なつた点はないと存じますので、議長から御指名がありましたけれども、この点を申上げて退きます。(「納得できないことですよ」と呼ぶ者あり)
  14. 河井彌八

    議長河井彌八君) 笹森君、質問よろしうございますか。
  15. 笹森順造

    笹森順造君 よろしうございます。
  16. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて、質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  両案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。楠見義里君。    〔楠見義男君登壇拍手
  17. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は、只今議題となつておりまする警察法案外一件について、反対の意思を表明せんとするものであります。  反対の理由は数点に亘つており、順次これを申述べたいと存じまするが、その前に、この際、一言附け加えておきたいと存じます。政府国民の囂々たる非難のうちに、法律を不当に悪用して検察庁法第十四条による指揮権を発動し、而も又本院の警告決議をもあえて顧みず、誤つた行政措置を撤回せざるままの状態を固執してまで、その成立を庶幾したいわゆる重要法案の一つであるこの警察法案が、今日このような異例の状況の下において審議されるということは誠に遺憾であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)殊に、去る三日夜の衆議院における我が国憲政史上未曾有の不祥事は、民主主義の危機をひしひしと痛感せしむるところでありまするが、これも又この警察法案に関連するところ少からざるを思うとき、更にその感を深うせしむるものであります。国会こそは、民主主義達成への前駆であり、同時に又民主主義を守る後衛でありまして、暴力を防ぐ最後のよりどころであります。国権の最高機関にして言論の府たるこの国会の一角に暴力行為が惹起したことは、誠に痛恨事であり、そのよつて来たるところ、或いは理非曲直のいずれに存するかは、国民の正しく批判するところであり、関係者又、この際十分に慎思反省を要するところでありましよう。ただ、我々参議院は、いよいよ国民の信倚に応え、その権威と尊厳保持のためにも、他の轍を踏むことなく、飽くまでも冷静に、与えられた情勢に正しく対処して、重要法案であればあるだけに、今日この会議におきましても、慎重審議を重ね、あらゆる論議を尽して参りたいと念願するものでございます。  警察法案に対する私の反対理由の主なるものは次の四点であります。  第一点は、国家公安委員会委員長国務大臣を以て充てるという点であります。現行警察法は勿論、新警察法案におきましても、警察制度を貫く原則は、民主的警察であり、その組織の中核は公安委員会制度であります。そうしてその運営上における基本的な態度として、強く要請せられているものは、不偏不党、公平、中正の精神であります。で、このことは、法律目的として規定されておりまする第一条において「民主的理念を基調とする警察管理運営保障し、」と言い、警察の責務として規定されておりまする第二条において、警察は「その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、」と言われ、服務の宣誓の内容として規定されておりまする第三条において、「この法律により警察の職務を行うすべての職員は……」尤も国務大臣は、特別職の故を以てか職員から除外されているようでありますが、「警察の職務を行うすべての職員は、日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行うものとする。」と規定されていることに徴しても明白であります。警察組織法たる本法案において、その中心たる国家公安委員会委員長政党内閣制の下における国務大臣、而も朝に任命せられ、夕には何らの身分的保障なくして、総理大臣罷免権発動の対象となることあるべき渺々たる紐付き国務大臣を以て充てるということは、民主的警察制度の根本と全く相反馳するものと言わなければなりません。この点に関する政府の考え方は責任所在の明確化ということをその提案理由としておられます。然らば責任所在の明確化ということは、具体的に言えば如何なることを意味するかと質しますれば、委員長は、会務総理し、委員会を代表するけれども委員会においては表決権を有せず、ただ五人の委員の中で、欠席者があつて表決において可否同数の場合にのみ決定権を持つに過ぎず、このことは法案第十一条にも明らかに規定されておるのでありますが、従つて委員長は、総理大臣国会承認を得て任命するところの有能なる国家公安委員諸公に対しては、何らの指揮その他の影響力を及ぼすものでない旨を明らかにいたしております。そこで政治責任明確化ということは、小坂国務大臣委員会答弁せられましたように、常に政府の意向を委員会に、又委員会の空気を政府に、それぞれ反映せしむる、いわば伝達機能を果たすということに過ぎません。而もその間、何らの影響力を及ぼさざる一種の連絡機関としての委員長であります。前に申述べましたごとく、警察組織の中核体たるこの委員会制度、而も民主的な公平中正を旨とするこの制度を保持せんとする警察組織において、右のような常識的にも納得できない理由を以て原案を固執せんとすることには、どうしても反対せざるを得ません。連絡伝達機能を果たすということであるならば、例えば担当国務大臣が、常時、委員会出席して、何時でも政府の意向を連絡するための発言の機会を与えたり、或いは委員会の空気を閣議に連絡する機会を与えるような措置を行政的に、又は法律規定すれば足りるのでありまして、原案の趣旨が、真に政府説明通りだとすれば、問題が大きく、又いろいろと疑問のある点でありまするだけに、他の方法を講ずべきであると思うのであります。又若し政府説明するところ以外に、何らか他の意図ありとすれば、それこそ反対論者の虞れる警察権の集中掌握、政党化のそしりを免れないのでございましよう。要するにこの問題は、民主警察の中心柱として認めた公安委員会制度内閣との調整を如何にするかに帰着するわけでありますが、公安委員会制度性格において、何らの変更を加えずして、これを存置する以上、原案のごとく国務大臣を以て委員長に充てるということは、全く矛盾する考えであります。  反対の第二点は、都道府県公安委員会の自主性の問題であります。政府原案は、第四十九条及び第五十条について、衆議院における修正によりまして、多少改善されましたけれども、まだ十分とは申せません。都道府県公安委員会制度国家公安委員会制度と共に民主的警察組織のキー・ポイントであることは、申すまでもございません。本来警察機能は、旧憲法下におきましては、国家統治権の作用として認められ、いわゆる警察一体の原則に基いて組織運営せられたものであります。従つてその機能は、いわば軍隊的に能率的に発揮せられておつたのでありまして、このことは、一面いろいろの弊害も生じましたけれども、他面又、大きな長所でもあつたわけであります。併し新憲法下におきましては、能率の点において、或いは経費の点において、いろいろ問題がありましたが、特に地方自治との関連、地方自治体の主導権が強調せられ、その結果、従来と全く趣を異にした警察組織が生まれたのでございまして、新警察制度においても、やはり都道府県警察がその主たる要素を成しており、一面警察の有する国家的な性格と如何に調和せしめて行くかということが、本法案においても問題の中心点たるべきであります。即ち、このような観点から、衆議院においても修正を加えられたことと思いまするが、いわゆる三派協定は不徹底のそしりを免れません。即ち、警察作用の性格を旧憲法時代と異なり、地方自治体警察と国家警察とを明らかに分けて観念し、而もその組織運営の中心としての公安委員会制度を設けた以上、委員会の自主性は厳に認むべきであると思うのであります。  反対の第三点は、地方公務員たるべき者の一部を国家公務員として、而もその国家公務員都道府県に属する地方公務員任免権を持つという点でございます。本法案におきましては、都道府県地方警察職員任免権国家公務員たる警視総監又は警察本部長が握つております。このことは、地方自治に対する重大なる侵害であると思うのであります。前にもしばしば申述べましたごとく、新警察制度は、都道府県警察の存在を前提とし、これを警察組織の中に認めた以上、都道府県警察に従事する職員は、飽くまで自治体の職員とすべきであります。ただ警察機能の中で、国家的性格の存することを強調するの余り、あえて地方自治の侵害まで試みんとすることは、事の本末を誤まるものであります。で私は、警察機能について国家的性格のあることに異論を挿むものではございませんが、その機能を果たすためには、別途自治体警察に対する国の指揮監督権を更に強化するの措置を考え、或いはこれを法律規定すべきでありまして、本来、地方公務員たるべき一部の職員国家公務員とし、その国家公務員地方警察職員任免権を持つに至つては、中央集権制の弊に立ち戻るものであると考えますると共に、任免権を持たねば物事がうまく行かんという旧態依然たる考え方自体、もうそろそろ改むべきではなかろうかと思うのであります。今日、任免権よりももつと大きな力が、国民の輿論という形で厳に存しておることを忘れてはなりません。このことは、本院における警察法に関する公聴会で、自治体警察側公述人から、自治体警察に対して特高訓練が強制せられた実情や、将来は選挙干渉の起る懸念あることについて意見の開陳があつたことに思い合せ、我々の注目すべきことであると思うのであります。  反対の第四点は、いわゆる五大都市警察について、その経過的措置及びこの法案成立後の措置に関してであります。衆議院において修正せられました点は、原案を著しく改悪しておると私は思います。三派修正は、それぞれの立場からする妥協の所産とは存じまするが、問題を、今後更に一層複雑化するの虞れなしとしないか、甚だ憂うるものであります。衆議院修正の附則第二十八項におきましては、いわゆる五大都市たる指定都市警察自治体警察としての現状を、この法律制定後一年間、現状のまま延ばすこととしておるのでありますが、このことは如何なる理由に基くものか、その意図全く不明であります。都道府県警察への移行に必要とする準備期間は、政府原案においては、おおむね三カ月余を予定しておるものと認められるのでありますが、そのことに対する十分の検討もなく、ただただ漠然と一年間延ばし、現在のごとき、甚だ遺憾でありますが、国警自警対立の状況を残すということは、甚だ了解しがたい点であります。殊に問題になりますのは、法案修正の結果、指定市において、市警察本部なる組織が恒久的に残る点であります。事の当否は別といたしまして、原案においては、自治体警察は、都道府県警察に一本化し、警察機能の能率化を図つておるのであります。然るに修正された市警察本部は、都道府県警察本部の指揮下にあるとは申しながら、独立して管下警察署をみずからの統率下に置くのでありまするから、迅速を尊ぶ警察機能からすれば、一段階余分のものが新たに設けられたことになり、このことは、現在の五大都市警察をそのまま存置することよりも、能率という点から申しますれば、更に悪くなるように思われるのであります。要するに五大都市警察は、存置するか廃止するかのいずれかをとらず、姑息なる妥協の所産は、却つて将来に禍根を残すものとして、この点についても反対せざるを得ないのであります。  以上は、私の本法案に対する反対の根拠とする理由の主なるものでありますが、このほか、例えば公安委員の就任資格に関する欠格条項、法案成立後における自治警察職員の新制度移行に伴う経過規定の不備等々、数多くの不備欠陥或いは疑問の点が存するのであります。而してそれらのもののうち、行政措置によつて或いは又法律運用の妙味によつてカバーされるものも少くないと思われまするから、あえてここにあげつろう必要はないと思いまするが、以上挙げました理由四点、なかんずく第一点の国家公安委員長国務大臣を充てるという点だけは、本案も又庶幾している民主的警察制度の眼目を貫くという観点から、どうしても反対せざるを得ないことを重ねて強調し、私の反対討論を終る次第であります。(拍手
  18. 河井彌八

    議長河井彌八君) 伊能芳雄君。    〔伊能芳雄君登壇拍手
  19. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 私は自由党を代表いたしまして、只今議題となつております警察法案並びに警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案に関し、衆議院送付案に賛成意見を表明したいと存じます。  現在の警察法は、周知のごとく、占領下の初期において連合国の日本占領政策の一環として制定されたものであります。これら一連の占領政策は、日本における民主主義の育成と強化に最大の重点をおいて行われたものであり、それは我が国の戦前におけるフアツシヨと全体主義に対する当然の反省であり、又その再現を防ぐ趣旨でもあつて、我々国民といたしましても、誤まつた戦争を遂行した経過を顧みて、深く自己批判をしておつた場合であつたのであります。我々は占領政策に盛られたこの民主主義の精神を更に育成強化しなければならないことは言うを待ちません。およそ民主主義は、その原理においてこそ不動のものでありますが、これが諸制度として具体化されるとき、その国の歴史的、文化的、社会的、経済的の諸条件と、又、多分に国民性を基盤とすることは言うまでもないところでありまして、それぞれの国にそれぞれ特有の民主主義的な制度が育つていることは、民主主義の諸先進国に見る通りであります。この歴史的、文化的、社会的、経済的諸条件乃至国民性を無視した観念的な民主主審制度は到底あり得ないのであります。即ち我が国情に即し我が国民性に適した特有な民主主義の制度が樹立さるべきであり、それは、我が国における過去の民主主義発展の過程、我が国の文化的、経済的、社会的諸条件を別にしては、到底考えることができないのであります。然るに占領政策においては、曾つてつたことのある我が国の民主主義の歴史を忘れたのか、或いは故意にか、極めてプリミティブな民主主義が、更には又富裕国にのみ適用し得るような極めてエキスペンシブな民主主義が、我が国情と我が国民性を無視して強行されて来た事実は、これを我々は見逃すことができないのであります。  ここに我々は、占領政策によつて強行された日本民主化の諸制度について真剣に検討を加え、過去における我が国の民主主義の歴史を深く批判し、フアッシヨに至つた跡を反省し、真に我が国情に合致する民主主義を自分のものとして身につけ、育てなければならん段階に到達していることを痛感するものであります。我が自由党が夙に占領行政の是正を力強く叫び、実行に移そうとしているゆえんは、全くここにあるのでありまして、私はこの見地に立つて法案を検討してみたいと思うのであります。  戦前の我が国の警察制度は、徳川時代の封建制度を脱却して、統一国家への移行と共に、あらゆる他の制度と共に、統一国家への傾向の強い先進国、仏、独の制度を模範として取入れた国家警察であつたのであります。而してその統一性と能率主義の点から見れば万国無比な警察を樹立したことは、万人のひとしく認めるところであります。併しながら余りにも能率主義に偏したために、極端なる独善に陥り、フアツシヨの傾向が抬頭するに及んで、遂に軍閥に利用さるるに至り、国民をして窒息せしむるに至つたのであります。現在の民主主義警察制度は、これに対する大きな反省と共に、連合軍の指導によつて作られたものであります。即ちこの制度は、我が国に、先ほど申しましたように、曾つて民主主義の行われたことを強いて忘れて、民主主義のイロハから手ほどきをやるつもりであつたか、或いは故意に警察力を分散してこれを弱化するつもりであつたか、アメリカの開拓地に個々ばらばらに育つた自主的な警察制度、或いはイギリスの自由市に自然発生的に生れた警察制度、——これらはすでに両国共に、近代的統一国家の完成と共に、これに即応した有機的警察制度にとつくの昔に改編されておるのでありますが——、この程度の極端なプリミティブな民主主義警察を、我が国情を全く無視して強行したものであり、近代的統一国家の制度としては、すでに極めて陳腐化した、時代もの化したものでありまして、見方によつては最も封建的なものともいうことができるのであります。即ち、現在の警察法においては、今日の統一国家になければならぬ警察の有機性、統一性、国家性を全く無視しており、制度的に見れば、個々ばらばらの警察であり、今日の時代における有機的な事象、特に全国的な治安問題等には到底対応できない時代遅れの制度であり、そこに大きな欠陥が見出されて来たのは当然の帰結であります。事実、その運営の点より見ましても幾多の欠陥を包蔵しておりまして、その弊害は、近来漸次濃化する傾向にありますことは、国民のひとしく認むるところでありまして、警察制度の改正は、すでに国民の世論となつて来たのであります。この段階に至つて、なお現制度を固守せんとする人々の愚はむしろ滑稽ともいうべきであります。  世論は警察制度の改正を求めております。そうして現在求められておる警察制度は、国家的有機性と能率主義の長所を復活すると共に、戦後我が警察に取入れ、育てて来た民主主義的美点を十分に活かし、併せて、我が国の貧弱な国力、殊に経済財政の実情に応じた経費のかからない警察制度でなければなりません。およそ警察は、十分に能率的で、国民の生命、財産、身体の保護、犯罪の鎮圧、捜査その他社会の秩序の維持に十分に役立つものでなければなりません。観念的にして素朴な民主主義の理論に従つて警察を分権化して、警察力を徒らに分散し弱化して警察の民主化成れりとするがごときは、警察本来の使命を忘れたものと言わなければなりません。(拍手警察は絶対に民主主義の飾りものではありません。又近代的統一国家における警察においては、国内治安維持こそ最高の国家的要請であり、その責任政府にあることは極めて自明のことに属し、これを明確化しておくことは絶対に必要であります。(拍手)このことは、近代的民主主義国家において要請せられているかの責任内閣制の原則から考えて、極めて当然のことであり、これこそ警察制度の一大眼目と言つても過言ではありません。(拍手)併しながら一面過去における我が警察運営の跡を顧みるとき、警察の民主的運営が十分に保障されるような組織でなければならんことも又当然で、六年に亘り運営されて来た現在の警察制度におけるこの面における運営の仕方は極力保持しなければならんところであります。即ち警察が時の政府や一部勢力者のために利用されるような組織であつてはならず、又その運営が独善的に行われるようなことなく、住民に親しまれ、且つ愛される警察でなければならないのであります。警察の仕事が常に中正に国民監視の下に運営される保障がなければならず、往年の政党警察、権力警察の弊を繰返す愚は、厳にこれを戒めなければならんところであります。  なお我が警察制度については、他の民主主義諸制度と同様に、できるだけ経費のかからない制度とすることが、我が国の貧弱な国民経済の要請でもあることを特に附加えなければなりません。我が国の国民経済の現状において、富裕国に育つた民主主義警察のあり方をそのまま我が国に植え付けて、能率の上らない無駄の多い警察をやつて行くほどの余裕はあるはずがありません。併しながら我が国の警察制度についての以上の要請、なかなか両立しにくい要素を内蔵していることも又事実であります。即ち能率的なことと民主的なこと、又警察責任明確化警察中立性の維持というこれらの要素は、これを警察組織として見るならば、前者に重きを置くと、後者の保障が薄くなり、後者を重視すると、前者が軽くなる結果となるのであつて、これらの相反撥する要素を最も適当なところにおいて調和点を見出そうとする努力が続けられて来たと思うのであります。  今回衆議院より送付された警察法案は、これを如上の諸点より見るとき、以上の要請を比較的よく満たし、これを適当なるところに調和し得た制度と言うべきであると信ずるものであります。即ち今回の警察法案が、国家地方警察全国四百有余の市町村自治体警察とを廃止して、これを都道府県警察に一元化し、簡素化したことによつて警察事務能率化すると共に、経費の節減に大なる効果をもたらすことについては、これ、何人といえども疑いを差挾む余地はございません。又警察行政の要請である治安責任明確化されるものでなければならんことについては、これ又言うを要しませんが、このことについて、国家公安委員長国務大臣を以て充てることによつて、これを十分に果たしており、又警察中立性維持については、国及び都道府県における公安委員会制度運営によつてこれを果たそうとしておるのであります。  今回の法案に対する非難の一つは、この法案において警察の民主性が侵される虞れがないかという点でありまするが、前述の通り、民主性と能率性、中立性責任明確化と、それぞれ相対立する要素を制度の上において如何に調和すべきかは極めて困難な問題であり、又意見の分るるところでありますので、我々はこの法案に対する批判につきましても、輿論に聞いて検討したのでありますが、その多くは十分なる理由に乏しく、或いは誤解であり、又ためにする議論であると言わざるを得ないのでありまして、要は、今後の公安委員会制度運営如何にかかつておると申すべきであります。非難の二つは、国家公安委員長国務大臣にしたことによつて中立性を害するというのでありますが、前に述べたように、国の行政全般に責任を持つ政府の意図を治安行政の面に反映し、一般の行政と警察行政との連絡のとれた、調整のとれた制度として運営されることを目途としたもので、この委員会制により警察中立性を維持しつつ、治安についての国の責任を明確にすることが可能とされておるのであります。即ち国の治安についての政府責任警察行政についての中立性の確保という二つの要請を満たして巧みにこれを調和し得たものというべきであります。現行制度のごとく、内閣公安委員会とを分断しなければ、警察中立性を維持し得ないと論ずる者は、政党政治の原則に基き責任内閣制をとつている今日、その人みずからが政党内閣制、責任内閣政治についての主張を否認したものというべきであります。(拍手)又地方自治の観点からいうならば、近代的統一国家においては、中央を無視して地方なく、地方を無視して中央なく、中央集権と地方分権を適度に調整した制度こそ理想的な民主主義の制度というべきであります。極端な分権制は往昔の領主政治、封建制に通ずるものであり、特にその事務自体において、国家的性格地方性格とを兼ね具えた警察事務性格、そして狭小な国土に多数の人口を擁する我が国の実情から見て、本案における府県警察は、自治体たる府県を単位としたもので、警察の広域性から見て極めて適切であり、又これに自治体としての自主性を認めつつ、適度の国家性、有機性を与え、近代国家における警察としての有機性を保たしめようとするものであり、この上より見るも、民主警察の理念は十分維持されており、府県の自治は十分尊重せられていることを看取できるのであります。  以上述べるごとく、この法案は、警察の要請する数々の相反撥する要請を誠に巧みに調和し、近代民主主義国家における警察として、特に我が国の歴史と社会情勢に適応した警察組織を作るものであり、本法案に対する非難のごときはことごとくいわれないものと言うべきであります。  我々は、我が国における治安を維持し、国民を暴力より守り、民主主義の繁栄を期待するが故に、本法案の成立を切に希望するものであります。  以上を以て私の賛成討論を終りたいと存じます。(拍手)     —————————————
  20. 河井彌八

    議長河井彌八君) 小林武治君。    〔小林武治君登壇拍手
  21. 小林武治

    ○小林武治君 私は緑風会、多数意見を代表いたしまして、只今議題となりました警察法案ほか一件に対し賛成の意を表するものであります。(拍手)  即ち現行警察制度は、昭和二十二年に占領政策の一環として従前の制度を根本的に改変したものであり、その狙いとするところは、警察制度を民主化、地方分権化するということにあつたのでありまするが、その真意はむしろ日本の警察の分散弱体化にあつたのでありまして、その効果は意外に早く現われ、警察はいわば支離滅裂となり、その無気力、その非能率は社会不安まで惹起するに至つたことは、なお我々の記憶に新たなるところであります。(拍手従つてこれをそのまま放置することは、生命財産の保障にまで危惧の念を抱かしむるものであり、これが改善は、早くも国民の関心を深めつつあつたのであります。私も当時地方行政責任者といたしまして、治安の確保に重大なる不安を感じ、政府当局に対し再三に亘り、強くこれが是正の要望をいたしたのでありまするが、遺憾ながなら十分なる改正を見ず、荏苒今日に至りましたのであります。今日遅蒔きながらも、これが根本的改正案の提出を見ましたことは、その細部に至りましては、種々の異論もあろうと存ずるのでありまするが、その大本、その趣旨につきましては、我々としましては大いにこれに賛意を表するものであります。(拍手)  即ち力の分散、権限の分化、組織の細分化は、半面において直ちに力の弱化を来たすは理の当然であり、従つて客観情勢に対応して力の強化、能率化、経済化を図らんとせば、或る程度の力を集中、組織の強化、又地域を広域化する要あるは言を待たないところでありまして、今回の改正案におきまして、市町村自治体警察を廃止して、広域自治体たる府県警察に再編することは、警察力の能率化、経済化を要望する当然の帰結と、してこれに賛意を表せざるを得ないのであります。併しながら先般の改正が、日本の警察に幾多の救うべからざる欠陥をもたらしたることは争うべからざる事実とするも、而もなお日本の警察を民主化し、又住民に親しましたその功績は没却することができないのであります。従いましてこの長所をでき得る限り存置することの要は、今回の改正におきましても、これを看過することができないのであります。その意味におきまして都道府県公安委員会の活用は本案の眼目でなければなりません。その自主独立性を強化するためには、格段の用意を必要とするものであり、今回の衆議院送付案においても、府県警察本部長任免についてその同意を要することとしたるは、その趣旨に副うものとして賛意を表するものであります。更にこの際政府に対しても、この都道府県公安委員会の自主性尊重のためには、今後一層の戒慎を要望しておくものであります。  なお、本改正案におきまして国務大臣国家公安委員長とすることにつきましては、強い反対があつたことは御承知の通りでありまするが、その反対の理由は、警察中央集権化、政府の御用化、或いは一党の私物となることを恐れるが故にあることに鑑み、政府はこの点に深く思いをいたし、その反対を今後杞憂に終らしめるよう格段の御注意を促すものであります。(拍手)  なお、今回の警察法改正に当り、国民をして最も危惧の念を抱くのは、過去において我々が苦い経験を持つ警察国家の再現であり、特高警察の復活であります。この点につきましては、政府としてむしろ神経過敏に過ぎるくらいの反省、自粛を必要とするものと信じます。即ち人権の擁護は、我々国民としては絶対の要請であり、警察権の濫用については、当局として厳にこれを戒むべきものであります。而してこれが防止につきましては、必ずしも組織の整備や法令の完備によつてのみ、これを全うし得るものではありません。要は、その衝に当る人の問題であります。即ち警察官は、とかく専門化し、ややもすればその視野は狭く、常識においても必ずしも万全とは申されないのであり、又その職務に熱心な余り、行き過ぎの虞れがある者もあるにつきましては、警察官の人選、その教養、又平素の訓練に当りましても、当局においては十分の戒慎をせられ、いやしくも国民警察、住民の警察官として欠くることのないように、重ねて要望いたしておくものであります。この意味におきまして警察学校の運営につきましては、政府に格段の配意を願つておきたいのであります。即ち従来の傾向からいたしますれば、学校の運営等は、とかく軽視せられるのでありますが、この警察本来の目的達成のためには、どうしても警察学校の運営につきまして、政府の格段の配慮を要望しておくものであります。  なお今回の改正に当りましては、府県市町村それぞれの立場におきまして、自治警の存廃をめぐり、激烈に運動、陳情の行われたことは、無理からぬこととは思われるのでありますが、而もなお、これがために浪費されたる労力、時間、経費は莫大にして、その国民的損失は誠に遺憾とするところであります。政府としても、国民としても、実に一考を要することであります。又これがため府県対都市の対立抗争を促し、治安当局相互間にすら、幾多の摩擦、対立をもたらしたことは、今後の治安維持の上にも禍根を残したものと思うのであります。特に某市警察本部長のごときは、国家警察本部のなすところを暴露し、又これを公然と誹謗し、その考え方へその態度を全く異にしておることを露呈したるがごときは、事柄の善悪は別として、一団としての警察組織警察活動に対する国民の信頼を失わしめたことは重大遺憾事であり、いわば現行の制度の欠陥を端的に露呈いたしたものとして、改正の必要をみずから証明するものと言わざるを得ないのであります。而してこれら治安当局間の対立抗争は、国家のために一日も速かにこれを終結せしむべきであつて、そのためにも、本法案の速かなる成立を私は要望せざるを得ないのであります。(拍手)この点につきまして、衆議院は、五大市の市警をなお一年間存続せしめることに修正せられたのでありまするが、かかる妥協は、むしろ右の対立抗争を激化せしむるばかりではなく、住民並びに関係当局の運動、陳情を一層熾烈化せしむるもとでありまして、我々は、にわかにこれに賛意を表することができないのでありまするが、併しこの際の措置として止むを得ざるものとしてこれを認めるものであります。  次に、警察の改編に伴う警察官の給与、恩給の問題でありまするが、この点につきましては、自治体警察側の要望は、或る程度容れられておるのでありますが、恩給につきましては、地方の切実なる要望に鑑み、恩給計算の基本額について選択権を認めるよう、今後政府当局の措置を要望しておくものであります。  なお、警察改編につき人事の問題でありまするが、人事の適正化は、この警察制度改正の成否を私は左右するものと思うものであります。いやしくも自治警側に不利を及ぼさざるよう、国警側の謙虚なる態度を望むものであります。  なお終りに、本法案審議期間の問題について一言いたします。本案は御承知のように、五月十五日に衆議院より送付せられたものであります。爾来僅かに二十数日を数えるに過ぎないのであります。かかる期間を以て、本案のごとき重大法案を議了せんとしたことは、本院として遺憾とするところでありまして、この点につきましては、この際政府当局並びに衆議院に対しても深甚の考慮を求めざるを得ないのであります。併しながら私、地方行政委員として、この際申上げておきます。我々は、かかる短期間にもかかわらず、我々の努力により、相当程度の審議を尽したということをあえて皆さんに申上げておく次第であります。(拍手)  以上、要するに本案は、私どもの要望、客観的の情勢並びに日本の現状に鑑み、警察組織を再編せんとするものでありまするが、警察の本質は、常に不偏不党、厳正、公平なるべきものであり、特にその権限の行使に当りましては、いやしくも人権の尊重を旨とすべきものでありまするが故に、政府並びに関係当局は、これが運営に当りましては、この点につき厳に戒慎せられることを強く要望いたしまして、本案にはなお若干不満を持つものでありまするが、これらは、それぞれ他日の改善に待つこととして、この際は次善の措置として、衆議院送付の二法案賛成することといたしまして、私の討論を終ります。(拍手
  22. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより両案の採決をいたします。(「議長々々」と呼ぶ者あり)両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立〕    〔「賛成」「反対」と呼ぶ者あり〕
  23. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よつて両案は、可決せられました。(拍手)議事の都合により、本日はこれにて延会いたします。次会の議事日程は、決定次第、公報を以て御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十九分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、地方行政委員会において審査中の警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案について国会法第五十六条の三の規定により、此の際、同委員会委員長をして一時間以内に中間報告をさせ、委員長報告せざるときは、事故あるものと看做して理事をして報告せしめ、報告時間を一時間以内とすることの動議  一、警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案中間報告  一、地方行政委員長から中間報告があつた警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案を一括して国会法第五十六条の三の規定により本会議において審議することの動議  一、警察法案  一、警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案