○小林政夫君 私は
修正案を
提案したわけでありまするから、もとより
修正案に賛成をし、
衆議院送付のその他の部分についても賛成をいたします。
現段階、文は現時限における資本の所有者が何人でございましようとも、その資本は国の富であり、又多くは人類の富でありますから、これが尊重されなければならんことは当然でありまして、徒らな食いつぶしは許されないのであります。その所有の形態に異存があろうとも、その破壊を図るべきことは許さるべきことではない。
只今菊川
委員の討論を承わりまして、私は非常に心強いものを感じたのであります。なお、大蔵
委員会における両社会党
委員は真に、真摯にこの
法案と取つ組まれまして、実に十分なる認識の下に、この案を不徹底として反対をされているのであります。私は、従来の資本に対する両社の態度の非常なる前進であると考えまして、深甚なる敬意を表する次第であります。
本法案は、利益配当を制限し、或いは従業労働者のべース・アップを抑制するというようなことが本旨ではないのでありまして、架空の利益の計上か阻止し、労使双方よりの資本食いつぶしを阻止することが目的であると私は思います。で、
本法案の
内容は、
委員長報告その他によ
つて、十分御
了承願つたことと思いますが、私の分け方を以てするならば、三つの
内容を持
つておると思います。再評価促進の
措置。架空利益計上阻止のための
措置。過小の公称資本是正。それは裏返せば、配当率の
適正化を促進する、この三つの
内容に分けられると思うのであります。
で、再評価促進の
措置といたしましては、再評価税の減免、この再評価税の減免ということについては、第三次再評価分に対する再評価税は全免をし、一次、二次分は半減して一二分とする。こういうことであります。今、菊川
委員は、
相当多額の減税をや
つてけしからんかのごとき発言がございましたが、由来再評価というものは、何も利益があつたものではないのでありまして、資産の評価替である。時価に合すに過ぎない。それによ
つて特別な利益が生れたものではないのでありまして、これから税金を取るということが間違いなんであります。(
拍手)税金を取るということは間違いである。我々はこの再評価
関係の
法案を
審議する際に、常に再評価税は取るべからずということを強く主張して参つたのであります。その一端が容れられて、今回強制再評価をやるに当
つて、第三次再評価に対する再評価税は全免する。併し今までの均衡もあるからということで、第一次、第二次分は半分取る。こういうことに
なつたのでありまして、この一次、二次分に対する半分も、私は取
つてもらいたくない。取るべからずと私は信ずる。ただ、ここでその税を取るなという立場から考えてみますと「同じくこの
国会において通過をいたしました租税特別
措置法の
改正によ
つて、再評価積立金は、資本へ組入れたいわゆる無償増資に対する年五%の配当金は経費に算入するという
措置をとりました。それによる法人
関係の税負担の軽減、これと今の一次、二次分の税負担とが必ずしも見合いませんけれども、先ず先ずそういうことで諦めがつくと私は考えて、不満足ながらこの点を許すことにいたしたのであります。
固定資産税の軽減でありますが、これはやはり再評価を促進する、今まで再評価をやらなければならんということを企業者はわか
つてお
つても、この固定資産税の負担というものは、この再評価をやる上において、非常に障害であつたのであります。そこで、少くともこの第三次の再評価をやつたことによ
つて固定資産税が殖えないように
措置をしたわけであります。即ち、第三次再評価より以前の課税標準を以て三年間固定資産税をかける。即ち三年間は第三次再評価前の課税
価格に据置く、こういう
措置でありまして、そう不当な軽減
措置ではないのであります。ただこの中で少し技術的な細かい問題に入
つて恐縮でありますが、この二十八年中に第三次再評価を行な
つて、この
法案の所期の目的に積極的に協力をしたというか、その趣旨を体してやつたものは、この二十九年の固定資産税は、その再評価した、第三次再評価した高く
なつた評価
基準を以て課税をされ、そうして三十年、三十一年、三十二年の三年間が二十七
年度の課税
価格で以て課税を受ける。こういうことで、二十九年だけがぽこつと高くな
つて、あとひつこんでいる、こういうことが行われている。二十九年に再評価したものは二十八
年度の課税
価格で課税されますから、三十年、三十一年、三十二年と続いて一二年間同じ再評価前の課税
価格で以て固定資産税を負担するということになるわけでありまして、そこにちよつとおかしい点があるのであります。私はこの点を改めたいと思いましたけれども、この
法案の
審議が大分遅れて今日こうや
つて上程されるような状態でありますので、すでに二十九
年度の固定資産税については四月第一期分についての課税徴税
決定をいたしております。そこで技術的にもこれを元へ返す、改めるのが少し困難となりましたので、止む得ず
了承することにいたしたのであります。
次は架空利益計上阻止のための
措置でありますが、この点は最低再評価限度まで再評価を行わなかつた場合の配当制限及び資本金五百万円以上の株式会社が総会に
提出し、或いは新聞に公告をするところの貸借対照表に再評価
実施状況を附記させることにしております。又減価償却が法定償却の九〇%以下の場合には配当を制限する、同時に損益計算書に減価償却の
実施状況を附記させることにしております。この
措置によ
つて架空利益計上を阻止しておるわけでありますが、この配当制限の率、一体二〇%という
衆議院の
修正というものが果して制限になるかならないか。これは
只今も菊川議員からお話がありましたが、この最近における株式会社の平均配当率を調べて見ますと、
昭和二十八年上期においては日銀調べによると一七・七%にな
つており、三菱経済研究所の調べによると一六・七五%、二十九年三月期決算においては東京証券取引所の調べによりすすと、有配無配両会社の平均で以て一四・六一%であります。又有配会社だけの平均でありますと一八・八五%、このような状態で、而もその配当率というものは漸減している、だんだん下
つている、下つた結果がそうな
つている。こういう状態でありまして、二〇以ということは殆んど……、殆んどじやない、全然制限をしないということと同じことであります。果せるかな日本証券業連合会会長の小池厚之助氏が我々の
委員会に来ての発言の中に、笑いながら、私たちは配当制限には絶叫反対です、二〇%ならその趣旨と同じです。こういう発言をされているわけでありまして、二〇%では配当制限とは言えないのだ。そこで少くとも今の二点については、即ち最低再評価限度までの再評価をやらない。或いはその再評価した結果による資産の法定償却の九〇%以上やらない。こういうものについては、本来の趣旨から言えば配当をやらすべきものではない。無配で我慢させるべきものであります。併しながら、いろゝの経済の現在の段階から考えて、まあステツプ・バイ・ステツプで行くという意味において、
政府原案一五%にな
つている。そこで我々は不満足、甚だ不十分であるとは思いますけれども、その線まで下りて一五%、一五%ならば、多少配当制限の効果を発揮できると思うのであります。
第三の過小の公称資本是正、即ち配当率の
適正化の
措置、こういう点はどういうことかというと、今、菊川
委員が問題にされたこの点があるために、私の
修正に皆さんがたの左右社会党、改進党の同調が得られなかつたのでありますが、再評価積立金の資本組入、これは三〇%がいいか四〇%がいいか、こういう問題であります。私は、この点は資本充実という観点から言うならば大して問題ではない。それは資本に組入れるか、或いは積立金として内部留保して持
つておるかということの違いでありまして、資本を充実する点から言えば、大して違いではないのであります。勿論それを三〇%にいたしましても、資本に組入れない場合には、配当を一割五分に制限する。この配当を一割五分に制限するというところに眼目があるのでありまして、この一割五分でおおむねその配当の
基準を揃える。そういうことであ
つて、この資本の、菊川
委員の指摘された再評価積立金を食いつぶす。こういうことは資本へ組入れるのであれば減資
手続を経なければならんから少し面倒である、こういうことでありますけれども、再評価積立金は、再評価法の百七条第一項三号の定めるところによ
つて、すべての積立金を食いつぶして、なお且つ損が出るという場合には、その損金を消すことができる。これをその損金の穴埋めには使えない。そうすることは理論上できないことである。
従つて損金を埋めるために再評価積立金を食うことも、株式の減資をすることも、企業者としての受取り方、或いは一般の投資家の受取り方としては同じシヴイアな気持を以て接しなければならんということなのである。同じことである。ただ積立金を食うのだから大したことはない。減資
手続ならば、
相当経営者としては恥じなければならん。こういうことではなくて、再評価積立金を食おうと、減資
手続をしようと、企業家としての努力が足りなかつたという点においては同じであ
つて、一般の投資家もやはりそのようにとるべきであります。(「投資家を騙したよ」と呼ぶ者あり)騙される投資家は知識が足りないのであ
つて、騙されないような知識を持つべきであります。(「暴言だよ」と呼ぶ者あり)
従つて資本組入れ割合というものは、この問題の中心ではない。その配当を一五%に制限するというところが問題である。それが証拠に、今の証券界の代表あたりは、資本組入れは四〇形で結構です、配当だけを二〇%の制限にしてもらいたい、こういうことを言
つている。そこで、そういう点から見ましても、私はこの資本組入れを三〇%にするか、四〇%にするかということは、本案の狙いとするところの企業資本の充実という点から考えれば、そう根本的な問題ではないと思うのであります。
なお、これは細かいことになりますが、同族会社というものがこの資本組入れを強要されず、
従つて先般通つた租税特別
措置法によ
つて資本に組入れられたいわゆる無償増資に当てられたものに対する五分の配当というものを同族会社だけは損金に算入しない。こういう
措置がとられた。同族会社でも大きな会社がございますが、おおむね中小企業者は同族会社が多い。この中小企業者が多いところの同族会社が、その減免
措置にあずからないということは、甚だ不当であるということを、その租税特別
措置法の
審議の際にも私は強く申して、次の機会には是非是正されることを要望したのでありますが、今度のこの
法案においては、同族会社といえども、再評価及び減価償却の
実施状況を公示する義務を負わされている。この点から考えると、どうもそこに
政府当局においても、少し観念の、思想の分裂と言えば極端でありますけれども、多少そこに取扱において当を得てない点であるので、速かな機会において、その点は是非改めてもらいたい。こう思うのであります。
以上、私はこの
法案は、菊川
委員の御指摘のように、そう十分なものとは言えませんけれども、私は経営者及び従業労働者の真撃なる努力によ
つて、この企業資本が、その自発的な努力によ
つて充実させるように、一層の精進を望みまして私の賛成討論を終ります。(
拍手)
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