○川村松助君
只今議題となりました二
法案につきまして、文部
委員会における
審議の
経過と結果を御
報告申上げます。
先ず、
へき地教育振興法案につきまして申上げます。
本
法案は、
政府提出にかかるものでありますが、
衆議院において
修正議決と
なつたものであります。本
法案は、憲法に
規定されております教育の機会均等の趣旨に鑑みまして、今日、甚だしくその発展を阻害されております僻地における教育を
振興せんとするものであります。ここに僻地と申しまするのは、山間地、離島その他これと似通つた条件を備えた
地域であ
つて、交通困難で自然的、経済的、文化的諸条件に恵まれない所であります。この僻地におきましては、一般に小規模の学校が多く、教育の施設、設備は不十分であり、而も教職員を
確保することも容易でなく、その上これらの悪条件に応ずるためには、学習指導
方法についても、更に工夫と改善を考えなければならない点が多いのでありまして、誠に憂うべき状態にあるのであります。かかる実情に対しまして、本
法案は、次のような対策を講じているのであります。
先ず市町村につきましては、市町村は、教育内容の充実、教員住宅の建設、学校教育及び社会教育の用に供するための教育施設の設置、健康管理の適正な
実施、通学の便の提供等のため必要な
措置を講ずることといたしております。次に、都道府県は、教育内容の充実のため必要な調査研究等を行い、必要に応じて教員養成施設を設け、教職員の定員の決定並びに特殊勤務手当について、特別の考慮を払い、又教職員の採用その他についても、必要な指導、助言、斡旋を行うことを
規定しております。最後に、国の任務としましては、僻地における教育について、必要な調査研究を行い、地方公共
団体が教員住宅を建築したとき、学校教育及び社会教育の用に供する教育施設を設けたとき、並びに教員養成施設を設置したとき、それらの
経費の一部を補助することとしております。以上が、本
法案の内容の主なる点でございます。
委員会の
審議におきましては、木村、松原、高田、荒木、野本、高橋、加賀山、須藤の各委員より、極めて活発な質問がございましたが、これらの
質疑応答によ
つて明らかになりました主なる点について申上げます。
先ず第一に、「本
年度予算によりましては、本
法案に盛られた内容を
実施する上に極めて不十分ではないか」との疑念については、「本
年度は先ず僻地教育
振興の第一歩を踏み出すものである」旨の
説明がありました。第二に、「離島
振興法に定める
規定が、本
法案に
規定する事項の
実施の妨げにならない」ということであります。第三に、「本
法案は、地方の教育行政を市町村或いは都道府県に対しまして
規定し、直接教育行政を担当する教育
委員会に対して
規定していないために、両者の職務権限に混乱を起すことはないか」との点についてでありますが、「これらの
規定は立法技術の問題であ
つて、教育
委員会の権限は、教育
委員会法の定めるところであるから、その区別は自明のことである」との
説明がありました。第四に、「本
法案による国の補助は、地方に対する一部補助に過ぎないから、
地方財政の貧弱、劣悪な所は、補助対象とならないのではないか」という点については、「そのような疲弊市町村に対しては、別途の施策が考えられなければならない」ことが明らかとなりました。その他の
質疑応答の詳細は
速記録に譲ることといたします。
質疑を終り、
討論に入りましたところ、相馬委員より、後に述べますような附帯決議を附して
本案に
賛成の意見が表明され、須藤委員よりは、本
法案は羊頭狗肉的であ
つて、その精神が間違
つているという趣旨の反対意見が述べられました。
討論を終り、
採決に入りましたところ、
委員会は
衆議院送付案を多数を以て可決すべきものと決定いたしました。
なお相馬委員
提出の附帯決議も多数を以てこれを可決いたしました。附帯決議の内容は次の
通りでございます。
一、
政府はへき地における教育の実情を精確に調査把握すると共に、中央教育
審議会等の適切な機関に諮問し、へき地教育に対する総合的恒久的
振興策を樹立すること。
二、
政府はへき地学校に勤務する教員及び職員の特殊勤務手当の増額その他必要な優遇
措置を可及的速かに
実施し得るよう努力すること。
三、
政府は教育効果の向上か図るために、へき地の小規模学校を本校に統合する際は、その本校施設について、これを国庫補助の対象とするを開くように
措置すること。
四、
政府は、市町村がへき地における学校健康管理の適正な
実施のための巡回診療並びに学校給食等を行い、児童及び生徒の通学を容易にするため事業を行うときは、必要な国庫補助をなし得るよう努力すること。
五、
政府はへき地における教育の特殊事情並びにへき地学校の所在する地方公共
団体の財政事情に鑑み、集会室の建設のみならずへき地の事情に即応するように校舎、寄宿舎の施設、設備についても速かにその内容を整備するため特別な基準を設け、且つ国庫補助、起債等についても特別な
措置を講ずること。
六、
政府はへき地における学校が教育課程として実地見学を行う場合、児童、生徒の
負担する費用についてその一部を国が
負担し得るよう考慮すること。
以上を以て御
報告といたします。
次に、
文化財保護法の一部を
改正する
法律案につきまして、
委員会における
審議の
経過並びにその結果を御
報告いたします。
先ず
政府の本
法案提案の
理由といたしますところは、
昭和二十五年に
文化財保護法が
制定せられまして以来すでに三年有半を閲しましたが、この間における法運用の経験に徴しまして、その
規定の整備を必要とするいろいろの問題が出て参りましたので、ここに
改正法律案を
提出したということであります。
而して本
改正案の主要点について概略を申上げますと、およそ次の五点でございます。第一は、重要文化財について新たに管理
団体の
制度を設けたことであります。この
制度によりますると、文化財保護
委員会は、地方公共
団体その他の法人を管理
団体に指定いたしまして、重要文化財の保存のため必要な管理、修理等を行わせることができまずから、重要文化財の所有者が判明しない場合、又は所有者による管理が著しく不適当である場合等には、その管理及び修理が或いは放置され、或いは極めて不完全にとどまることを
防止できることとなります。第二は、無形文化財について新たに指定
制度を設け、無形文化財のうち重要なものを指定して、その保護の万全を期することと共に、その他無形文化財に関する
規定を整備したことであります。第三は、従来有形文化財の一つとして
規定されておりました民俗資料は、国民生活の推移を理解するに欠くことのできない資料であり、有形文化財と価値の観点を異にするのみならず、常に無形のものを伴
つている特色がありますので、これを別個の体系の下に保護する必要があるという見地から、新たに一章を設けて民俗資料の保護に関する適切な
規定を整備したことであります。第四は、史跡名勝天然記念物等の保護と、所有権等の財産権及び一般公益との調整に関する
規定を整備したことであります。史跡名勝天然記念物は、特に土地に関する権利等と関連する面が強いため、文化財保護
委員会の
現状変更の処分等について不服のある者に
異議申立の途を開き、その際公開による聽聞を行い、関係行政機関と協議し、又は意見を聞く等の
措置により、所有権その他の財産権を尊重し、国土の開発その他の公益との調整を図る上に万全を期しております。最後に、以上のほか史跡名勝天然記念物に関し、他の法令になら
つて、無断
現状変更等をした者に対する原状回復命令の
制度を設け、又罰則
規定について他の法令との均衡を考慮して
所要の整備を行な
つております。
以上は、本
改正案の内容の骨子でございますが、次に
審議の過程において行われました
質疑並びにこれに対する
政府の
答弁につきまして、大要を簡単に申上げます。
先ず、「新たに設けられました重要文化財の管理
制度につきまして、地方公共
団体若しくは法人に、果して適当な者が得られるか」との質問に対しましては、「若し法人に適者が得られなければ地方公共
団体であり、地方公共
団体は殆んど文化財に関する専門職員を置いている」との
答弁があり、「保護法である以上、国と地方との財政
措置はどのようにな
つているか、国が管理する場合の費用についても考慮されてあるか」との質問に対しましては、「国家管理の必要あるものの存することも感じてはいるが、第一段階として管理能力のあるものに管理させる建前をとり、国の援助に要する
経費については大蔵当局から支出するよう了解できている」旨の
答弁がありました。次に、「民俗資料について民俗博物館のごときものを設けて、民俗資料を一堂に集め、保護と公開をする必要を認めてはいないか」との質問に対しましては、「
政府もかねがねその必要性を認め、国立民俗資料博物館設立の準備費を
予算に組みたいと思つたが、実現が困難であつた」との
答弁がありました。次に、「文化財保護
委員会の国際的
地位如何」との質問に対しましては、「文化財を武力から保護する国際
条約に加入の手続をと
つている、又
駐留軍についても、
我が国の文化財を尊重するよう
条約が結ばれんとしている、文化財は国際的に赤十字と同様に扱われんとしている」旨の
答弁がありました。次に、「地方教育
委員会においては、文化財の保護に関して相当に熱心であるにもかかわらず、全国的には未だ関心が低いと聞く、如何にしてこれに対処するか。文化財を国民教育に取り入れることを考えているか」との質問に対しましては、「
我が国が世界に冠絶するものは文化財である。サンフランシスコにおける日本古美術展はこの自負心をますます大ならしめている。文化財保護行政に携わ
つている地方の者を中央に集めて、時々指導の講習を行な
つている」との
答弁がありました。次に、「重要文化財の海外流出の実情如何、又文化財関係の在外駐在員を外国に駐在せしめ、文化財を通しての国際理解に資する意図はないか」との質問に対しましては、「終戦の際、警察官の不注意により四十数点の国宝刀劔が流出したが、そのほかには殆んどない、殊に保護法
制定後は全くないと言える。海外文化駐留員の
制度については、外務省等とも協議研究し、その実現を期したい」との
答弁がありました。又、「管理
団体の管理の対象が多く寺院等である関係上、信仰の自由と相反する管理の懸念はないか」との質問に対しましては、「このことは、
改正法案の
実施に当り最も重要な点であ
つて、宗教行事に対しては如何なるプラスもマイナスも厳に慎しむべきであるから、管理
団体の権限範囲を
委員会規則で十分に考慮し、宗教行事にはノータッチで行きたい」旨の
答弁がありました。なお、民俗舞踊、民謡等の民俗文化の保護育成、文化財保護に関する広報活動、国宝等の買取
措置、文化財の有料公開、観覧料の徴収、都道府県教育
委員会への権限委任等について、各委員から活発な
質疑が行われましたが、これらについての詳細は、会議録に譲ることといたします。
かくて
質疑を終了いたしまして、
討論に入りましたが、別に意見もございませんでしたので、直ちに
採決をいたしましたところ、
全会一致を以て、可決すべきものと決定いたしました。
以上、御
報告申上げます。(
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