○郡祐一君
只今議題となりました二法案について、委員会における審議の経過とその結果について御
報告いたします。
先ず、
日本国における
国際連合の
軍隊の地位に関する協定の
実施に伴う
刑事特別法案について申上げます。
本法案は、
日本国における
国際連合の
軍隊の地位に関する協定の
実施に伴う国内手続についての規定を定めたものであります。即ち
日本国に駐留する
国際連合の
軍隊に対する刑事裁判権の行使につきましては、すでに昨年十月二十六日署名されました
日本国における
国際連合の
軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の発効に伴い、その国内手続につき、
日本国における
国際連合の
軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の
実施に伴う刑事特別法が公布
施行されておりまするが、今回締結されました右の協定は、その第十六条におきまして、右議定書と全く同様の規定を設けており、
日本国との間にこの協定の効力が発生した国に属する
国際連合の
軍隊に対する刑事裁判権の行使については、爾後この協定によ
つて規律されることを定めております。そこでこれらの国の朝鮮に派遣した
軍隊の
日本国にある間におけるものに関しましては、協定の趣旨に則り、刑事上の手続法について特別規定を設ける必要が生じましたので、本法はそれに応ぜんとするものであります。本法案は、
日本国と
アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法と殆んど同じでありまして、ただそのうち実体規定が除かれておるに過ぎません。
委員会におきましては、慎重に審議を重ね、適切な質疑がなされ、それに対し政府側より説明がありましたが、その詳細は速記録に譲ることといたします。
質疑を終り、討論に入りましたところ、羽仁議員の発言があり、「今日において、なお
日本国内に外国
軍隊の活動を認めて、その構成員の活動を保障し、或いはその責任を律する
法律を持
つていることは、日本の完全主権の回復を困難ならしめている。又本法案の制定の動機とな
つている朝鮮事件は、目下開催の
ジユネーヴ会議で根本的解決の方向に向
つているときであるから、時期としても当を得ていない。これらの理由によ
つて本法案には反対である」旨が述べられました。
採決に入りましたところ、多数を以て、本法案は可決するものと決定した次第であります。
次に、
国際連合の
軍隊に関する
民事特別法の適用に関する
法律案について申上げます。
この
法律案は、
日本国における
国際連合の
軍隊の地位に関する協定及び
日本国における合衆国
軍隊及び
国際連合の
軍隊の共同の作為又は不作為から生ずる請求権に関する議定書の
実施に伴い、民事に関し国内法について所要の定めをしようとするものであります。
日米行政協定
実施に伴いまして先に
日本国と
アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う
民事特別法が制定されましたが、日米行政協定と今回の
国連軍の地位に関する協定の民事に関する部分及び議定書を比較しますと、国内法の規定を必要とする事項につきましては、その内容は全く同一であります。
本法案は先ず第一に、
民事特別法の適用に関しましては、
国連軍を
アメリカ合衆国駐留軍とみなすこととし、第二に、
アメリカ合衆国駐留軍、又は
国連軍の行動に起因する事故の被害者が、
国連軍のいずれかの派遣国、又は
アメリカ合衆国であるときは、
日本国には損害賠償の責任がないこととするのほか、遡及適用等の経過規定を設けているのであります。
委員会におきましては慎重に審議を重ね、事各委員より適切な質疑がなされました。その主なる点を申しますと、
国連軍の不法行為に対して
日本国が責任を負うことは独立性を害するのではないかという点、本法案は
アメリカ合衆国駐留軍とみなすとしているが、その規定の仕方が不適当ではないかという点、派遣国の意義、義勇軍の取扱、現在までの不法行為の事例等であります。これに対しまして政府側より、不法行為についてはその事実を説明し、賠償の額等一切について日本の裁判所が日本の国内法に準拠して決定するのであるから、独立性は害されないということ、又本法案の対象は、国連の決議に基いて正式に派遣した国の
軍隊に限られ、いわゆる義勇軍は包含されない点等、それぞれ
答弁がありました。これらの質疑応答及び審議の詳細につきましては
会議録に譲ります。
かくて質疑を終り、討論に入りましたところ、亀田委員より、「本法案は国内に外国
軍隊を置くことを前提としているもので、国の独立と世界平和に有害であること、損害について最終的にその四分の一を
日本国政府が負担することは独立性の侵害であること、而もそれに遡及効を認めることは甚だ不合理であること等の理由により反対する」旨の発言がありました。
討論を終り、採決いたしましたところ、本法案は、多数を以て可決いたした次第であります。
以上、御
報告いたします。(
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