○若木勝藏君 私は、今回起つた北海道、東北地方の暴風雨災害に対する
政府の対策について若干の
質問をしようとするものであります。
今回、北海道、東北地方一帯を襲つた暴風雨は、各地に家屋、船舶、交通、通信、農作物等に与えた損害は莫大なものが認められるのであります。これを現在までの国警本部、当該地方団体の調査によ
つて概観いたしますと、東北、北海道を通じて人的被害は、死者、負傷者、行方不明を総計して四十二名、このほか北海道において出漁のまま帰還しないところの漁船が百二十隻にな
つておるのであります。その乗組員約一千余名の安否が不明なのであります。建物の被害としては、倒壊、流失、焼失、破損等、まさに九千九百九十六戸に及んでおり、その他、浸水家屋も相当の見込であります。更に農業については、水田の流失、埋没、温床苗代の壊滅、麦の倒伏、桑園の喪失等の被害は甚大なる数に上
つているのでありまして、水産の方面につきましては、船舶の沈没、流失、破損等百八十二を数え、漁網の流失も北海道だけで実に二億一千万円に上
つているのであります。林業
関係にありましては、木材流失で宮城県のみで一千石を数え、北海道の森林の被害も莫大なるものになると推定されているわけであります。その他、道路、橋梁、堤防等の被害も相当数に上
つているのであります。更に罹災者の数もまた多数に亘るものと推測されているのであります。
要するに今回の被害は、特に農作物の発芽や、幼弱な苗育ちの時期に、暴風と氷雪による冷温に見舞われたため、予想以上の被害があるものと見られるし、水産業についても漁期にあるところの
関係で、漁船、漁網等の被害が大きくな
つているのでありまして、これらは、昨年の東北、北海道の冷水害に匹敵するものと考えられるのであります。
それで、今回の災害に鑑みまして、吉田
首相に次の二点を伺いたいのであります。
御承知のごとく我が国は近来相次いで風水害に見舞われまして、その都度国土は荒廃し、莫大な国費を失い、
国民の生命すら奪われるに
至つているのであります。特に昨年のごときは、まさに全土に亘
つてあの大災害を受けているのでありまして、
国民の期待は一に
政府の治山治水に関する抜本的な対策にあるのであります。このことについては、昨年
参議院において大風水害に対処するため二十有余の災害救助復旧
関係の特別
措置法を立法すると同時に、
政府に対しまして、災害に対する当面の
措置とともに、災害防除の恒久的対策の樹立についても強く要望しまして、具体的には
内閣に治山治水に関するところの協議会を作ることを要請しておつたのであります。
政府としては、この治山治水について如何なる根本対策を考えているのか。又この協議会もどんな活動をしているのか。先ずこの点について伺いたいのであります。
次に、今回の災害は、特に北海道等にあ
つては甚だしいものがありまして、通信の回復とともに漸次広範囲に亘る厖大な被害状況が明らかにされつつあるのであります。殊に昨年来累加しているところの被害の負担は容易ならざるものがありまして、かかる観点から、今回の災害に対して昨年の大水害に関する特別法と同様の
措置をとらざるを得ない事態であると考えられますが、
政府はこの点についてどのようにお考えになるのか、伺いたいのであります。
次に大蔵
大臣に伺いたい点は、先ず第一に、二十九年度の災害予算は約五百三十三億にな
つているのでありますが、これは大かた二十八年度における災害に振り当てられているのであります。それでは二十九年度に発生したところの災害について一体どういうふうな予算の
措置をと
つておられるのであるか。この点について伺いたいと思います。
次に、今回の災害の特徴は、その被害程度が大きいばかりでなく、在来のものとは趣を異にしているのであります。即ち、農業
関係について見ましても、種子であるとか苗であるとかの被害が多いので、これらの対策は季節的に緊急を要し、殊に東北、北海道のごとき寒冷地帯では、その時期を失えば、無収穫という取返しのつかない事態を見るに至るのであります。従いましてその救済対策は一日の遅延を許さない事情にあると考えられますが、
大臣も御承知の
通り今や地方財政は極度に逼迫し、二十八年度のごときは赤字三百六十億を出しておるのであります。そういう
関係から、これらの緊急
措置としては、
政府の大幅な融資に待たなければならないことは明らかであると思うのであります。これについて大蔵
大臣の御
見解を伺いたいのであります。
なお、いつの
災害復旧費決定に際しましても見る例は、この被害金額の査定が遅れたり変更されたりするために、現地の対策が迅速を欠き、思わざる損失をこうむることであります。殊に昨年のごときは、各省要求の額が二千五百十九億であつた、それが大蔵省の査定で千七百九十九億に落ちた。更に千三百三十四億に減額されて、而もこの間多くの日時を経過しているために、あの大風水害の復旧に大きな蹉跌を来たしている事情が多々あるのであります。
大臣も御承知の
通り近来は災害が相次いで起り、それが地方財政の赤字が累加して行くところの原因を作
つているのであります。この弊害を除くためにも今後は査定を迅速的確にして災害復旧の
措置を誤らないことが急務であると思いますが、これに対する方策を伺いたいのであります。
次に、塚田自治庁長官は地方自治を所管するところの立場から、地方住民の生活安定について特に深い配慮を持たれていると思いますが、今回の災害は予想外に大きく罹災者の受けたところの打撃も甚大なことを考えまして、前例を勘案して地方税等の減免、徴収猶予の
措置をおとりになる考えがあるかどうか。その点を伺いたいのであります。
更に、長官は地方財政の極度に逼迫している事情も又誰よりもよく知
つておちれるのでありますが、今回の災害に対し、昨年の風水害に対し立法された地方団体の起債の特例に関するところの
法律の趣旨と同様の
措置を早急におとりになる考えがあるかどうか。この点を伺いたいのであります。なお、これらの災害地域に対し特別交付税の優先的な配慮がとられるかどうか。この点についても伺いたい次第であります。
次いで大野国務
大臣に伺いたいと思います。今回の災害によ
つて北海道開発
関係の
施設にも相当な被害を見ているのでありまするが、これは北海道開発の重要性から見まして、その対策に深甚の配慮を要すると思うのであります。これについて
大臣は近日中にその調査に赴かれると聞いておりますが、調査の結果被害程度が相当なものであつた場合に、如何なる
措置をおとりになるお考えであるのか伺いたいのであります。
次に農林
大臣に伺いたいと思います。今回の災害は、特に農作物、水産
関係に広範囲に亘
つて被害が大きいのでありますが、特に昨年の冷水害が大きかつた
関係から相次いで起つたところの今回の災害は、農家、漁業家にと
つてその打撃が大きいのであります。北海道を例にと
つてみましても、温床苗代のごときは今年度四百三十六万坪の設置の中に二百五十万坪、即ち六割が壊滅したのであります。而も今年の設置分は昨年の災害国庫補助一億一千万円によ
つて漸くできたものでありますだけに、季節的に急を要するこの際、復旧をどう
措置するかということが重大な問題になるわけであります。十これは東北地方についても同様の事態か生じて来るものと思います。又水産
関係を見ましても、北海道だけで漁網の流失損害は二億一千万円に達し、漁船の損害もおびただしく、現に出漁のまま帰還しないところの百二十隻のものがあるのであります。単にこれは船舶の損失というにとどまらず、乗組員千二百有余の人命も氷雪を混えたところの三十何メーターのあの暴風では到底その安全を期待し得ないのであります。而もこれらの多くは
中小企業者であり、
従つてその対策としては従来に見るごとく、金融にのみ依存することはできない。こう思うのでありまするが、農林
大臣のこれに対するところの方策を伺いたいのであります。
なお総体の対策といたしまして融資の部面も考えられるのでありまするが、現地の事情としては特に相次ぐ災害等により、力の弱いところの業者には、なかなか融資の途が開けないのでありまして、これが災害対策からも、又産業振興の上からも国家として適当な保証を与え、これを助成して行く方途を講ずべきだと思いますが、農林
大臣の所見を伺いたいのであります。
次に建設
大臣に伺いたいと思います。今回の災害で道路の損壊、橋梁の流失、堤防決壊等相当の被害があるのでありまするが、これらに対するところの
措置について、又家屋の倒壊破損等も、まさに九千戸以上にも上
つておるのでありまするが、罹災者の住宅についての
措置についても、如何ようなお考えか伺いたいのであります。
次に厚生
大臣に伺いたいと思います。災害に際しまして、最も緊急に、而も適正に行われなければならないのは罹災者に対するところの
措置であると思いますが、北海道においては、今回すでに三カ町村に災害救助法が
発動され、更に申請中のものもあるのでありまするが、これらに対して厚生省としては緊急に如何なる
措置をとられたか。又昨年の風水害に際し災害救助に関するところの特例法が適用されたのでありますが、今回の災害については、これと同様程度の
措置をおとりになるのか。その点を伺いたいのであります。更に公衆衛生、病院、診療所、社会福祉事業
施設、そういうふうな方面の災害復旧、又、母子福祉資金の骨付、これらについても昨年同様の
措置をとるお考えがあるのかどうか。併せてこれを伺いたいのであります。
最後に、文部
大臣に伺いたいと思います。今回の災害で、北海道の学校
施設の被害は予想外に大きいのでありすす。現在までに判明した分でも二十一校を数えておる。更に増加の見込でありまするが、公立学校
施設としては国庫負担法におけるところの国庫負担率は三分の二にな
つております。これは北海道の特殊事情から見まして、低いというのは、これが在来の強い主張であつたのであります。今回のごとく市町村内において各般に亘るところの災害を受けた場合は、特にこの主張を認め、昨年の風水害の特別
措置と同様、四分の三程度のこの負担率を考えることが適切であると思うのでありますが、これに対する
大臣のお考えを伺いたいのであります。
以上を以ちまして私の
質問を終ります。(
拍手)
〔国務
大臣吉田茂君登壇、
拍手〕