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1954-05-12 第19回国会 参議院 本会議 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十二日(水曜日)    午後四時五十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第四十五号   昭和二十九年五月十二日    午前十時開議  第一 漁港審議会委員の任命に関する件  第二 けしの栽培並びにあへんの生産、国際取引卸取引及び使用の制限及び取締に関する議定書批准について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)  第三 通商に関する日本国とカナダとの間の協定の批准について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)  第四 離島振興法の一部を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第五 経済援助資金特別会計法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第六 閉鎖機関令の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第七 旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第八 大蔵省関係法令整理に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第九 農林省関係法令整理に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一〇 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一一 補助金等臨時特例等に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一二 軍事郵便貯金等特別処理法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一三 通商産業省関係法令整理に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一四 厚生年金保険法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一五 船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一六 厚生年金保険及び船員保険交渉法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一七 旧海仁会等施設及び附属物転換処理に関する請願委員長報告)  第一八 農山漁村農業協同組合等法人税減免に関する請願委員長報告)  第一九 国有地地上権確認に関する請願委員長報告)  第二〇 旧軍用財産の防衛諸施設使用計画に関する請願委員長報告)  第二一 岩手田瀬ダム建設に伴う漁業権補償請願(二件)(委員長報告)  第二二 兵庫猪名川改修工事施行に関する請願委員長報告)  第二三 群馬藤原ダム建設に伴う補償等請願委員長報告)  第二四 群馬藤原ダム建設に伴う補償道路等確定請願委員長報告)  第二五 災害復旧費国庫補助概算交付に関する請願委員長報告)  第二六 兵庫円山川改修工事促進に関する請願委員長報告)  第二七 高知県物部川東岸改修工事促進に関する請願委員長報告)  第二八 岡山県粟谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第二九 岡山県湯船川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第三〇 岡山野土路川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第三一 岡山中谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第三二 岡山県山乗川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第三三 岡山県西谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第三四 岡山県皆畑川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第三五 岡山県旦土川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第三六 岡山県西河内川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第三七 岡山県行者川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第三八 岡山県引谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第三九 岡山県塩谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第四〇 岡山中谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第四一 岡山道仙寺川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第四二 岡山県羽出西谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第四三 岡山下り芳川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第四四 岡山県舟山川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第四五 岡山県鵜の羽川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第四六 岡山県阿波川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第四七 岡山県加茂町公郷地内砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第四八 岡山県中田川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第四九 岡山五番川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第五〇 岡山県岸谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第五一 岡山県栃谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第五二 岡山県大井町宮部上地内砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第五三 岡山県宮地川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第五四 岡山県大谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第五五 岡山県寺部川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第五六 岡山県未谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第五七 岡山県細田川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第五八 岡山小坂部川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第五九 岡山井原川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第六〇 岡山県三室川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第六一 岡山高野川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第六二 岡山井原川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第六三 岡山県高尾川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第六四 岡山県後門川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第六五 岡山県東谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第六六 岡山梶並川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第六七 岡山県那岐、成松両河川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第六八 岡山和田谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第六九 岡山県入江谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第七〇 岡山津和谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第七一 岡山県河内谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第七二 岡山小高下谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第七三 岡山清常川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第七四 岡山県興法寺川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第七五 岡山県尾原川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第七六 岡山県大谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第七七 岡山県下郷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第七八 岡山坂本川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第七九 岡山県島木川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第八〇 岡山県井谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第八一 岡山長谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第八二 岡山県横谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第八三 岡山血吸川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第八四 岡山県新本川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第八五 岡山滝山川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第八六 岡山大武谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第八七 岡山牛神谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第八八 岡山県八塔寺川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第八九 岡山長谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第九〇 岡山奥山川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第九一 岡山県竜王川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第九二 岡山県正ブ谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第九三 岡山県豊浦川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第九四 岡山県鳴滝川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第九五 岡山県鳩岡川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第九六 岡山県本庄川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第九七 岡山鴨川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第九八 岡山県簗瀬川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第九九 岡山県保々呂川砂防工事施行に関する請願、(委員長報告)  第一〇〇 岡山水尻川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一〇一 岡山県山王、清迫両河川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一〇二 岡山県金上川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一〇三 岡山県三原川外二河川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一〇四 岡山小田川上流砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一〇五 岡山県塩木川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一〇六 岡山県大谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一〇七 岡山県谷山川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一〇八 岡山砂川支流砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一〇九 岡山長谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一一〇 岡山西宝伝川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一一一 岡山県平田川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一一二 岡山高梁川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一二二 岡山県三谷川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一一四 岡山馬屋下村地内山林砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一一五 新潟早川改修工事施行に関する請願委員長報告)  第一一六 災害復旧対策に関する請願委員長報告)  第一一七 北海道頓別川等治水工事促進に関する請願委員長報告)  第一一八 北海道頓別市街地海岸防災工事施行に関する請願委員長報告)  第一一九 埼玉県小山川改修工事施行に関する請願委員長報告)  第一二〇 大阪府淀川補修工事促進に関する請願委員長報告)  第一二一 兵庫県曇川一部改修工事施行に関する請願委員長報告)  第一二二 京都不動川等改修工事促進に関する請願委員長報告)  第一二三 災害復旧事業促進等に関する請願委員長報告)  第一二四 長野県三滝川改修工事施行に関する請願委員長報告)  第一二五 湯田ダム建設に伴う早期補償に関する請願委員長報告)  第一二六 広島県上蒲刈島村梶屋谷砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一二七 佐久間ダム建設に伴う天龍川西岸湖畔道路新設請願委員長報告)  第一二八 北海道夕張市紅葉山、占冠村間等道路新設請願委員長報告)  第一二九 国道二十九号線改良工事促進に関する請願委員長報告)  第一三〇 国道二十九号線中一部改良工事促進に関する請願委員長報告)  第一三一 鹿児島県串木野市内国道舗装工事施行に関する請願委員長報告)  第一三二 二級国道宮崎福山線中一部改良工事施行に関する請願委員長報告)  第一三三 県道小出只見線中一部改良工事促進に関する請願委員長報告)  第一三四 道路整備費財源等に関する臨時措置法励行に関する請願委員長報告)  第一三五 北海道日勝道路開設に関する請願委員長報告)  第一三六 北海道洞爺湖、虻田駅間道路舗装工事施行に関する請願委員長報告)  第一三七 北海道二股上猿払間産業開発道路新設に関する請願委員長報告)  第一三八 関門国道トンネル工事促進に関する請願委員長報告)  第一三九 一級国道十七号線中三国峠開さく工事促進に関する請願委員長報告)  第一四〇 岡山道周匝弓削線改修工事施行に関する請願委員長報告)  第一四一 道路整備費確保に関する請願(二件)(委員長報告)  第一四二 静岡県清水市、新潟直江津間道路改良工事促進に関する請願(二件)(委員長報告)  第一四三 宮城県県道白沢長町停車場線改良工事促進に関する請願委員長報告)  第一四四 国道三十三号線中高知県大崎村寺村橋架替促進に関する請願委員長報告)  第一四五 府県道等除雪費国庫補助に関する請願委員長報告)  第一四六 国道一号線中箱根道路改修工事施行に関する請願委員長報告)  第一四七 大分県久住町、嫗岳村間に自動車道路開設請願委員長報告)  第一四八 県道後免佐古線を東佐古まで延長するの請願委員長報告)  第一四九 広島県県道隠地天応停車場線復旧改良工事促進に関する請願委員長報告)  第一五〇 国道四号線中広瀬橋幅員拡張に関する請願委員長報告)  第一五一 京津国道中京都山科ガード下歩道設置請願委員長報告)  第一五二 都市計画法等改正に関する請願委員長報告)  第一五三 東京都国立町周辺排水幹線路建設に関する請願委員長報告)  第一五四 住宅建設増加促進に関する請願委員長報告)  第一五五 公営住宅建設財源確保に関する請願委員長報告)  第一五六 住宅金融公庫融資賃貸共同住宅重点化に関する請願委員長報告)  第一五七 首都圏住宅供給対策に関する請願委員長報告)  第一五八 産業労働者給与住宅融資の一元化に関する請願委員長報告)  第一五九 第二期公営住宅建設計画に関する請願委員長報告)  第一六〇 建設省補助員身分保障に関する請願委員長報告)  第一六一 国連軍演習場使用に伴う損害補償等請願委員長報告)  第一六二 駐留軍労働者退職手当に関する請願委員長報告)  第一六三 農林漁業金融公庫出資金わく拡大等に関する陳情委員長報告)  第一六四 中小企業金融難打開に関する陳情委員長報告)  第一六五 信濃川水系砂防工事促進に関する陳情委員長報告)  第一六六 岩手伊手川上流砂防ダム構築陳情委員長報告)  第一六七 静岡瀬戸川改修工事施行に関する陳情委員長報告)  第一六八 災害復旧費の施行年割額繰延べ反対に関する陳情委員長報告)  第一六九 山口県有帆川等改修工事施行に関する陳情委員長報告)  第一七〇 埼玉二瀬多目的ダム建設促進に関する陳情委員長報告)  第一七一 静岡桃沢川砂防工事施行に関する陳情委員長報告)  第一七二 過年度災害復旧促進に関する陳情委員長報告)  第一七三 石川県浅野川改修工事施行に関する陳情委員長報告)  第一七四 準用河川厚別川改修工事施行に関する陳情委員長報告)  第一七五 砂利道補修等公共事業費国庫補助復活に関する陳情委員長報告)  第一七六 一級国道八号線改良工事促進に関する陳情委員長報告)  第一七七 道路整備費財源等に関する臨時措置法実施等に関する陳情委員長報告)  第一七八 国道一号線中瀬田川の架橋に関する陳情委員長報告)  第一七九 道路整備費財源等に関する臨時措置法励行に関する陳情(二件)(委員長報告)  第一八〇 道道札幌稚内線中一部舗装工事等施行に関する陳情委員長報告)  第一八一 都市計画促進に関する陳情委員長報告)  第一八二 住宅難解決促進に関する陳情委員長報告)  第一八三 国連軍土地施設収用に伴う特別損失立法化陳情委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
  4. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私はこの際、検察権中立性確保に関する政府答弁についての緊急質問動議を提出いたします。
  5. 鈴木一

    鈴木一君 私は、只今の廣瀬君の動議に賛成いたします。
  6. 河井彌八

    議長河井彌八君) 廣瀬君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて、これより発言を許します。廣瀬久忠君。    〔廣瀬久忠君登壇、拍手
  8. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 過日の私の質問に対する総理、副総理答弁は、期待に反するものでありました。甚だ遺憾に存じております。先ず総理質問をいたします。犬養法相の十四条発動に関する私の質問に対し、総理は「しばしば申しました通り、現在の国会に提案中の重要法案等審議促進するために、佐藤幹事長逮捕を延期することを必要と考えたからでありまして、真に止むを得ない措置であつたのであります。国会におかれても、この事情を了解されて法案審議促進せられることを希望いたして止みません。」こう言つております。この答弁を聞きまして、私はこの答弁おうむ返し総理に返上をいたしたいのであります。総理国会に対し審議促進してくれろと言つておられますが、私から言えば、総理みずから国会にもつと出勤せられたらどうか。(拍手政治最高責任者である総理が、百五十日の会期中二十七日の出勤しかしないというようなことで、国会審議がどうして進みますか。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)又総理答弁の中で、しばしば申した通り法案審議促進のために逮捕を延期することを必要と考えた云々と言つおります。しばしば政府が言つておるのにわからんのかというような感じを与えられました。私はこの言葉を聞いて、政府のわからなさ加減に驚いたのであります。(拍手総理はしばしばと言つておりますが、国会も、しばしば政府に対して警告を発しておる。十四条を発動して逮捕を延期させたことは、国会のきめるべきことを政府が勝手にきめた。甚だけしからんということをしばしば政府に言うております。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手政府警告をしております。それなのに見当違いの、誤つた政府見解を弁解がましく国会に押しつけようとしても、我々が受取るわけがないではありませんか。(拍手かくまで政府が、わからんことを言うておるんでは、法律的に議論してみなければならない。政府を啓蒙しなければならない。元来、検察庁法第十四条但書発動は、検察上の目的のためのみに発動するのが原則です。即ち被疑事件が犯罪になるかならないか等のごとき問題、これは検察上の問題です。こういう問題で法相検事当局との間に意見が異なつた場合には、それは法相検察陣を抑圧してもよろしい。併しながら政治上の理由だけを以て指揮権発動するがごときは許されないと思うのであります。(拍手)それは際限のないことになります。恐ろしいことになります。今度の発動には、法案審議促進という美名を用いておる。若しそれを吉田内閣延命のためにという理由をつけたらどうなりますか。これも政治上の理由でしようが、誰でもそれは違法だと言うでしよう。美名にごまかされてはなりません。自分の党の役員逮捕は困るが、他党の役員なら構わんというに至つては、法の前に平等の憲法原則を蹂躙するものであります。(拍手)又政治上の理由逮捕を延期し得るというならば、経済上の理由でも逮捕を延期し得ることになります。船会社の社長を逮捕すると、海運政策上困るというようなことで逮捕を延期したらどうなります。(拍手)だから私は、十四条但書の規定は、厳格に解釈して、検察上の目的以外には原則としては発動してはならんという解釈を持つておるのであります。(拍手)然るに政府答弁は、法案審議促進のためという政治目的唯一理由として、総理大臣もそうです。副総理もそうです、法務大臣もそうです。政治上の目的唯一理由として、指揮権発動を是認せんとしておる。かくのごときことは、私は法律違反だと思う。重大問題であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)いわんや国会並びに世論論難攻撃を恐れて 一時でも世論を緩和しようと考えて、憲法国会法によつて国会議員逮捕許諾の権限を持つておるのに、強いてこれを避けて、検察庁法第十四条の但書に隠れたということは、憲法を無視したものであります。一種の憲法違反であります。(拍手)ここまで来るというと、申すまでもなく政府は、内閣は、憲法がきめておるところの、内閣法律を誠実に守らなければならんという義務にも違反しておる。だから法律的に言つたならば、犬養法務大臣も、又この法務大臣をしてかくせしめた政府も、共に法律違反をやつておる。憲法違反をやつておる。国会法違反をやつているんだ。こんな違反行為をやつてつてですよ、恬として恥じず、超党派的の参議院警告決議をも顧みずして、何ら反省の色なく、違反行為自体、即ち法案審議促進という政治上の理由で十四条を発動したということは、違法行為なんである。その違法行為自体を、総理初めとして各大臣答弁唯一の材料としておるに至つては驚かざるを得ません。(拍手)  又今回の指揮は、政治上の非常に危険なことである。将来別な内閣が、自分政治上の理由指揮権発動したらどうなりますか。やはりこれも認めなければならんことになる。その悪例を開いたことになるから、実は恐ろしいことであります。こういうようなことをしておつては、検察権中立性は維持できない。私は、政府かくのごとく憲法法律に違反し、政治上に悪例を残したにもかかわらず、その違反行為自体を本議場の答弁唯一の根拠とするに至つては実に沙汰の限りであると思う。(「言語道断だ」と呼ぶ者あり)政府はすべからく、この指揮権発動検察庁法憲法並びに国会法等関係に対して、以上、私の主張に対し、明快なる弁明を与えられんことを望みます。  それから総理になお伺いたいことは、この法律上の問題以外に、別の問題を一つ伺います。それは、総理は、犬養法相とつ処置政治上の影響をどう考えますか。国民道徳への影響をどう考えますか。国民思想への影響をどう総理は考えますか。私はそれを聞きたい。国政運営の根底をなすこれらの重要な問題について、総理の赤裸々なる意見を聞きたいのです。我が国政治家第一人者吉田首相としては、こういう大きい政治上の問題についてこそ、下僚などから書いてもらつた答弁書などを読むのでなくて、あなたの肚の中から国民に訴え、国民に求めなければならんと私は思う。首相は肚の中では、恐らく犬養法相とつ処置は、政治思想道徳に対して与えた影響が悪かつた、困つたものだと肚の中では思つているでしよう。どうか赤誠を吐露して下さい。万難を排して参議院警告決議に聴従してもらいたい。(「そうだ、そうだ」と呼ぶ者あり)過ちを改めて善処すべきは、この時であります。それが大政治家の襟度だと思う。如何ですか。(「さよう、さよう」と呼ぶ者あり)  緒方総理へあと伺います。緒方総理に対しては、私はあなたは十四条発動について総理補佐に遺憾がなかつたか、間違いなかつたかと聞いた。そうしたらそれに対する答弁は、こういうことを言つております。「犬養法務大臣検察庁中立性を尊重いたしまして、独自の判断と責任において発動いたしたものであります。従つて私は、報告は受けましたが、私が総理を補佐すべき立場にはいなかつたのであります。従つて補佐をいたしておりません。」と言つておる。併しながらこれは、私はこの答弁を開いて、それでは副総理は十四条の発動については、法相だけが独自の見解でこれをやつたので、副総理は知らなかつた。総理を補佐しなかつた。それは当時の新聞の状況を見ると、全く違つておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)そういうことをしらじらしいことを言うのは、甚だけしからんことだと私は思う。検察当局法務大臣との論議が二日間に亘つて行われた。白熱してお互いに行き詰り状態となつて法相検事総長に対して最後の断を下した、四月二十一日には、犬養法務大臣首相とも会談しておる。緒方総理とは三回に亘つて会談をしておる。最後会談は、夜の七時半から十一時までの間に約二時間余に亘つておるといわれておる。都下の大新聞は皆こう書いておる。この事実があるにかかわらず、報告を受けただけだ、総理を補佐しなかつたのだと言うに至つては、私はどうしても不思議に堪えない。念のために新聞を読んでお聞かせします。「犬養法相はこの朝出勤前、吉田総理緒方総理に呼びつけられて目黒の公邸を訪ねた。法務省に現れたのは九時すぎ、」それから三時半、「この日はじめて法相大臣室を出た。首相官邸緒方総理を訪ねるという。」ことと、「五時、法相緒方総理に再び因果を含められて帰つて来た。副総理は強気だつたらしい。」「七時半、三たび緒方総理のもとに車を走らせたとき、法相の顔には興奮の色がかくせなかつた。眼が血走つていた。」「十一時、法相は疲れ切つた面持で帰つて来た。」これは毎日新聞です。朝日新聞も殆んど同様のことを書いている。かくのごとき状況であつたのに、緒方総理がどうして首相を補佐しなかつたか。そういうことを聞くのは、実に心外だと思う。隠さんとしても事実は現われています。あなたは同じ私に対する答弁において、こういうことを言つております。これは議会の速記ですよ。「ただ政府としては一途に重要法案の通過成立を期するために一時逮捕の延期を申入れた次第でございます。」申入れたということは、事前に申入れたにきまつている。そうでしよう。それならばですよ、事前にこれを知つておつたにきまつている。これはこの後段の答弁を見ると指揮権発動前において検察当局逮捕要求を知つてこれに対して政府の対策を協議決定し、政府として逮捕延期を由入れたということでしよう。それでも補佐する立場にいなかつたなどと言えましようか。私はこの答弁の前後の矛盾、これをあなたはどう説明してくれますか。私はこの副総理の、今言つた極く僅かな答弁の中に、非常にいやな問題を含んでおることを感じます。それは政府政治と、検察権の独立性とにぶつかる問題があると思う。一つ一つそれを伺つてみます。  あなたのこの答弁のうちに「政府」という言葉があるが、政府とは一体何ですか。この場合に内閣の意味でしようか、総理の意味でしようか、はた又関係大臣の意味でしようか。政府が申入れたのですよ、どういう政府なんですか、それを聞きたい。  その次には、逮捕延期の要求ということを言つている。これは重大事項です。(「とんでもない政府だな」と呼ぶ者あり)重大事項です。閣議決定を以てこの事項はきめられたのか、或いは独断でおやりになつたのか、協議しておやりになつたのか、それを聞きたい。  「一時延期」ということをこれに書いておるが、一時延期とはどういうことだ。加藤法相はこういうことをやつぱり答弁の中で言つている。「この場合重要法案の通過の見通しのつくまで逮捕を延ばすことは止むを得ん。」だから副総理は恐らくこの「一時」というのは、そういう意味でしよう。法案の通過の見通しがついたら、一時も、よろしいということになるでしよう。  それから、これは法律問題ではありませんが、その中にですね、「ただ政府としては一途に」ということがある。「一途に」ということは、他を顧みることなくの意味でありましよう。逮捕要求が検察当局のほうから出て、政府があわてふためいた態度をしておることはよくわかります。併しながら一途に法案が通過すればいい。他を顧みる必要はないのだというような政府の態度に至つては、私は見下げ果てた政府の態度だと思う。こんな馬車馬式の考え方で国政をとられては、たまつたものじやない。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)  それから「一時逮捕の延期を申入れた」と言つておりますが、誰に申入れたのですか、検察当局に申入れたのでしようか。或いは法務大臣に申入れたのでしようか。これを伺つておかなければならない。副総理答弁は、前後大いに矛盾しておる。私はこれは甚だ遺憾に思う。併し私が今分析して幾つも聞いたことも、これ又重要なところなんです。明快な御答弁をお願いします。副総理のような正直な人が、こんな前後矛盾の答弁をしなければならんのは、どういうわけなんでしよう。根本的にそこに無理があるからです。無理を取除かなければ、言葉の技巧などでは通りません。(拍手)無理とは何でしようか。どうして無理を取除けるでしようか。それには参議院警告に穏やかに従うこと以外にはありません。速かに参議院警告決議に聴従せられんことを切に希望いたします。(拍手)  加藤法相に対しても質問がありますが、時間が来たからこれでやめます。以上、総理及び副総理から答弁を願います。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手
  9. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。(「はつきり」、「納得の行くように」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  第一、私が病気のために、国会に出席する時間が甚だ少なかつたことを遺憾といたします。それは病気のためでありますから、御了承を願いたいと思います。  次に、佐藤幹事長の事件に関して逮捕請求に対して指揮権発動したことについての、政治上の理由はよくわかつたが、法律上の理由如何。これはこの前の本議場において私の発言の中に法律上の理由を申さなかつたことは、予算委員会において、すでに私が申しましたところでありますから、略したのでありますが、併し政府としては、検察庁の見方もありましようが、政府といたしては、逮捕ということは容易ならざることである。殊に人権尊重の今日において、新憲法の下において、最も慎しむべき、慎重にいたすべきものであるというのが政府の考え方であります。然るに佐藤幹事長として、逃げ隠れ、逃亡若しくは証拠隠滅等のことを図るべき人、立場にないということは明らかであります。若しこれをいたすならば、みずから自己の責任を、法律上の責任を認めることになるのでありますから、こういうことは、佐藤幹事長としていたすはずはないのであります。即ち逮捕せざれば捜査ができないということは、政府としては了承できないところであります。故に捜査はあくまで続けて差支えないが、逮捕ということについては、政府は同意をできない。即ち第十四条の発動をいたしたわけであります。この法律上の措置については、いろいろ考えはありますが、政府の考えておりますところは、そういうわけであります。又参議院の決議につきましては、政府として、もとより謹しんで承わり、若しくは将来の戒めといたしますが、今回の措置を撤回いたすことは、重要法案等関係もありますから、又、政府が一たびとつ措置でありますから、これについでは撤回することはできません。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手
  10. 緒方竹虎

    ○国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  検察庁法第十四条の発動は、前犬養法務大臣がその独自の判断と責任で行なつたことは、前に申上げた通りでありまして、今その答弁を変更することはいたしません。速記録は見ておりませんが、政府が当時、重要法案の通過成立を希望しておりましたことは事実でありますけれども、指揮権発動をいたすということは、今申上げたように、犬養法務大臣の独自の判断によつたものであります。新聞につきましては、新聞をいろいろ御引用になりましたが、新聞に、見て来たような記事が書いてある、そのことにつきましては、これは責任を負う立場におりません。(拍手)    〔廣瀬久忠君発言の許可を求む〕
  11. 河井彌八

    議長河井彌八君) 廣瀬君に申します。質問時間は過ぎております。    〔「やれやれ」「答弁になつておらん」「進行」と呼ぶ者あり、拍手
  12. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 答弁に洩れがあります。それを一つ御注意いたしておきます。
  13. 河井彌八

    議長河井彌八君) 吉田総理大臣にお尋ねいたしますが、答弁がまだ足らないということでありますから、更に答弁をなさいますか。
  14. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 答弁は…。
  15. 河井彌八

    議長河井彌八君) それでは、緒方国務大臣のほうにもお尋ねいたします。ちよつと答弁が足りないということでありますが、更に答弁をなさいますか、どうですか。    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手
  16. 緒方竹虎

    ○国務大臣緒方竹虎君) 多分答弁が足りないと仰せられますのは、本院の決議に対して、どういう態度をとるか、それについて改めて答弁をしろということでないかと考えますが、これは、先般来繰返しお答えいたしましたように、将来の戒めといたしますが、今、指揮権発動を取消す考えはございません。(拍手
  17. 河井彌八

    議長河井彌八君) 廣瀬君にお答えいたします。吉田総理大臣はもう発言はありません。(「どういうふうに影響を与えたか」「国民に与えた影響を聞いておるのだ」「答弁々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)只今お聞きの通りであります。総理大臣答弁はないと申します。緒方国務大臣答弁は終りました。それについての御判断は諸君のなさるべきことであります。(「議長政府の代弁者じやないぞ」と呼ぶ者あり)議長政府の代弁をしておりません。答弁は促しました。それは、諸君の御判断に委せます。      —————・—————
  18. 田畑金光

    ○田畑金光君 この際、最近のテロリズムの横行、凶悪犯罪の頻発に対する政府の取締りに関する緊急質問動議を提出いたします。
  19. 大和与一

    ○大和与一君 私は、只今の田畑君の動議に賛成をいたします。
  20. 河井彌八

    議長河井彌八君) 田畑君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて、これより発言を許します。田畑金光君。    〔田畑金光君登壇、拍手
  22. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は先ず最初に、吉田総理の心構えについてお尋ねいたしたいのであります。  只今の質疑にもありましたが、五月八日に終る予定の会期は、二週間延長に決定されました。曰く、重要法案の通過を図るためであります。佐藤幹事長に対する逮捕要求に対し法務大臣指揮権発動についても同様の言訳をいたしております。そもそも法案審議の渋滞は、何に基いておりましようか。政府与党が検察庁追及に対し、汚職疑獄事件のもみ消しに狂奔した結果でありまして(「その通り」と呼ぶ者あり。拍手吉田総理の怠慢と議会軽視の結果が今日の事態を招いているのであります。総理は、自由党内にあつてはワンマンで通るかも知れないが、他党に対し、国会に対しましては、さような驕慢極まる態度は寸毫も許されません。(拍手)今後とも吉田総理は、従前のような態度を続けるつもりであるか。反省の御意図があるかどうかを、明確に本議場を通じ明らかにして頂きたい。  次に私は、最近における道義の極端な頽廃、社会悪の頻発に対し、関係当局の所信をお尋ねいたします。凶悪犯罪の続出に半ば神経麻痺症状に陥つている国民も、去る四月十九日、東京都内元町小学校における児童暴行傷害致死事件に関しましては、異常なシヨツクを与えられたのであります。我々といたしまして恐れますることは、このような犯罪を生んでおりまする社会的背景の浄化粛正に関し、政府は如何様な対策をお持合しておるかということであります。エロ・グロ出版物の横行、外人相手の大つぴらな売笑婦のデモ、軍事基地に見られまする目にあまる淫蕩的環境こそ、あらゆる社会悪の根源であり、数多くの青年を不良化している温床であり、占領政策の落し子でありまするが、占領行政の行過ぎを口にする政府は、こういうことに関しましては何らの対策を持合しておりません。殊に我々の注意を惹くのは、学童殺しの下手人坂巻某はヒロポン中毒患者であつたということであります。今日ヒロポン中毒患者は七十万と言われ、或いは百五十万と言われております。古い中国は阿片により国を亡ぼしましたが、現今、日本は曾つての阿片中毒の中国を思わしめるものがあります。今日覚醒剤について、これが取締りを厳重にし、法の不備を是正し、中毒患者の隔離措置を図らなければ、第二、第三の坂巻を生むことは明らかであります。道義の頽廃こそ政治の貧困の所産であり、吉田内閣多年の秕政の集積にほかなりません。造船疑獄を中心とする一連の汚職疑獄は、政府、自由党のヒロポン中毒症状を物語るものであります。(拍手)草葉厚生大臣、小坂国務大臣のこれに対する対策を承わつておきたい。  同時に大達文部大臣にお尋ねいたしまするが、人食い人種の首祭りに類する反動的、陰険極まる立法の通過に憂き身をやつす前に、かかる社会悪の根源を排除し、民主教育実現の基盤を強化することこそ、文教政策の最も重要な点であると考えるのであるが、大達文部大臣は如何ような対策を以て臨まれんとするか、所信を承わつておきたい。  第三に、私は福島県小田炭鉱における暴力事件についてお尋ねいたします。戦後殺伐たる気風は全国を風靡し、なかんずく炭鉱や荒くれた漁村地帯には、この傾向が甚だしかつたこは周知の事実でありまするが、併し民主的労働組合運動の前進は、徐々に封建主義、暴力主義を克服し、炭鉱においても近代的民主化が達成されたのであります。併し今問題としようといたしておりまする小田炭鉱のみは、常磐炭田において今日なお唯一の暴力の山、恐怖の山と言われ、暴行、傷害事件が跡を絶たないのであります。去る四月二十四日朝、元同炭鉱平坑労働組合長であり、現生活協同組合理事長、村会議員、社会党支部長の箭内光は、入坑直前二名の不良の凶刃に倒されたのであります。これのみではありません。昭和二十四年の春、当時の組合長であり、現在も又組合長である遠藤義雄も、或る事件のため山の不良に襲われ、殆んど左眼は失明の状態になつております。無論犯人は逮捕されるに至らず、うやむやのうちに処理され今日に至つております。多くの者が被害を受け、いずれも泣き寝入りの状況でありまして、この山では親分の名前を呼ぶことすら禁句と言われておるのであります。この殺人事件後、山は恐怖に包まれ、警察の捜査に対しても仕返しが大変だ、警察頼るに足らずとして事実を供述しようとする者は殆んどないのであります。何がこのような無警察状態に陥いれたかと申しますならば、地区警察署の無為無策、末端機関の堕落がこのような最悪事態を招いておるのであります。警察に身辺の保護を依頼してもそのまま親分に情報が漏れて仕返しを受ける。一味が暴力傷害事件で逮捕されても、形式的な取調べを済ましてすぐ釈放され、なお一層暴力を発揮する。去る五月八日に地元村におきましては、村民大会を開きましたが、この大会を支配した空気は、警察と検察庁に対する不信の声に満ちていたのであります。去る四月三十日東京都内の松屋ダンスホールにおきましても、無警察的な状態が殺人事件を起しておりまするが、こういうような状況は今日頻々として起きております。まさに民主主義の自殺行為であり、まさに人権は何らの尊重もなされていない風潮になつて参りました。このようなとき、国警当局といたしましては、このような暴行事件について先ず最初にお伺いいたしたいことは、報告を受けておるかどうか。報告を受けておるといたしますならば、このような事件に対する対策はどのように考えておられるか。政治の乱れと共に、この種暴力事件が各地に頻発する傾向にあります。然るに警察頼むに足らずとして、その堕落無能ぶりに対しまして、小坂国務大臣は如何なる指導監督をなされようとするのか、所見を承わつておきたい。  更に私は、労働大臣としての小坂さんにお尋ねするが、現在健全なる労働組合運動が、各地におけるこのような暴力主義によりまして、その正常な発展を阻害されております。労働行政上、如何ようにこの問題に対処されようといたしておるか。  この際加藤法務大臣にお尋ねいたします。佐藤自由党幹事長は、犬養法相の異例の指揮権行使により、逮捕を免かれるに至りました。この結果、大物、殊に政治的権力者は、法に問われることはあり得ぬという法不信の観念は、国民一般に流れてしまつているのであります。地方的に見ましても、親分とか暴力団の一味とかいう力を持つ者には、軽く取扱わしているが、弱き者はことごとく厳罰に処せられております。一体吉田内閣の下における検察行政は、権力者に軽く庶民に重くといたす法の前の不平等を実現することが原則であるのかどうか。法務大臣に承わつておきたいと思うのであります。(拍手)  最後に、私は総理にお尋ねいたします。世はまさに文字通り物情騒然といたして参りました。去る四月十六日三名の男がこの国会の屋上によじ登り、「汚職政界よ恥を知れ」の幟をつるしたのでありますが、これはまだ愛嬌といたしましても、四月二十四日、衆議院における不信任案上程時には、吉田退陣要求のビラが、堂々と国会の中において撒布されているのであります。いずれもが自由党と同じ基盤に立つフアツシヨ分子であるというところに意味深長なものがあるのであります。(拍手)先般、吉田総理には、ダイナマイトが贈られまして総理は札束かと思つて喜ばれたそうであります(笑声)ところが五月三日夜には、札束どころか、人間札束が侵入するに至つたのであります。即ち大阪の住人葛原法生という人物は、明らかに総理刺殺の目的を以て住居侵入をいたして参つたのであります。かくのごとき今日のテロリズムの横行は、曾つての五・一五事件、二・二六事件の前夜を思わしめるものがあるのであります。私たちはこの種の暴力主義に対しましては、徹底的に排除し、法の権威を擁護するためには、動機の如何を問わず、厳粛なる態度を以て司法権は当らなければならんことを当然の措置として考えております。ただ併し、かかる社会的風潮は、何によつてもたらされたものでありましようか。偽りなく、これこそは吉田政権の悪政の所産であり、人心すでに吉田内閣を去つているということを物語つているのであります。五月十日、毎日新聞によれば、犯人葛原法生は、犯行の動機について、次のような手記を発表いたしております。よく吉田総理はお聞き願います。「二年前から今日の内閣に疑問を持つていた。果してこんな政治が正しいのか考えさせられることが多い。五千円の金がないため一家心中するものがあるかと思えば、百万円の横領を働いても平気である。現在の世の中は政治の貧困を物語るものだ。なんとかして吉田内閣を倒さねば国民は救われない。吉田さえ倒せば内閣は解散し、外遊も防げると思つて決行の機会をねらつていたのだ。吉田さえ倒せばおれの役目は終る。外遊して何か相談されてきたのでは国民内閣の「防弾チヨツキ」となるばかりだ。国会内閣不信任案が否決されたときに暗殺を計画したのだ」云々、私は暗殺、暴力、これらの行為に対しましては、断固排撃しなければならんと思うのでありまするが、併しこの犯人容疑者の手記の中に、今日の国民の言わんとする多くの問題が含まれているのであります。(拍手)更に五月の九日の夕刻、吉田首相私邸には、砂糖五斤を土産に持つて吉田総理に就職依頼の青年が訪れたと言われております。数百万に上る失業者諸君が、これから吉田総理の私邸を、公邸を、十重二十重と取り囲みまするならば、一体どうされようといたしておりますか。かく首相のお住い、官邸は、いよいよ警察官の人垣を以て固めなければ、警護の万全を期し得なくなるでありましよう。併しながら民主主義の政治家が、民衆を恐れ、民衆と遮断されなければ、身の安全を保持し得ないということは、何たる悲劇でありましようか。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)独裁国家、独裁政治家と、どこにどういう違いがありましよう。  吉田総理は、国民を恐れ、民衆の声におののく前に、潔く退陣し、自己の責任政治的に明らかにすることこそ、これらのテロリズムを排除し、社会の道義の頽廃を挽回し、併せて政治に対する国民の信頼を回復するゆえんなりと私は考えるのであるが、吉田総理は、最近の世論、世潮に対し、如何ような態度を以て臨まれようとするか承わりたい。国家国民の切羽詰つた声に、静かに耳を傾け、政治責任を明らかにする御意図があるかどうかを、併せて明確な御答弁を承わつておきたいのであります。  吉田総理政治家として晩節を全うすることを欲するならば、一片の良心を持ちなさい。恥と責任を理解なさい。あなたが立派に責任をとり、今日の国民の輿論に応えるとき、初めて道義の頽廃から我が国は救われ、テロリズムから、我が国の民主主義は防衛できるのであります。吉田総理の所見をお尋ねいたしまして、私の質問を終ることにいたします。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手
  23. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  暴力行為、凶悪なる犯罪の取締については今日までも、又将来においても、政府は、かかる事犯の鎮圧、予防のために、十分なる努力をいたす考えであります。私の政策、行為、その他について一々私の批評に対して、お答えはいたしません。(拍手)    〔国務大臣加藤鐐五郎君登壇、拍手
  24. 加藤鐐五郎

    ○国務大臣(加藤鐐五郎君) 御質問中の主なる、福島県小田炭坑事件及びこれら暴力行為に対しまする政府の態度についてお答えいたしたいと存じます。  去る四月二十四日、福島県小田炭坑において発生いたしました殺人事件につきましては、直ちに被疑者二名を逮捕いたしまして取調べると共に、同月二十七日に至り、右被疑者両名の親分と目せられる井田清造をも逮捕いたしまして、目下厳重に捜査を行なつております。(「厳重じやないんだ」と呼ぶ者あり)  同地方におきましては、かねてから暴力事犯が多くありまして、検察庁といたしましては、常に断固たる態度を以てこの種事犯の一掃のために努力しつつあつたのでありますが、本事件発生と同時に、徹底的に捜査を実施しておりますので、目下この地方の不良徒輩も、この厳然たる態度に畏怖いたしました状態が認められるように相成りました。  本件発生直後におきましては、事件関係者側において捜査機関に対する協力をやや躊躇する傾向が認められたのでありましたが、検察庁は警察と連絡の上、一般県民に対し、暴力排除のための強き決意を表明すると共に、五月八日に至りまして、地元防犯協会主催の防犯懇談会には、次席検事などが出席いたしまして、捜査機関に対する一般村民の協力の必要なるゆえんを説明しました結果、村民は積極的な協力をするに至りまして、本件の捜査は支障なく進捗している次第であります。  なおこの場合、テロ凶悪犯罪に対しまして、従来から厳重な検挙方針を以て臨んでおり、殊に暴力団的なものにつきましては、左翼、右翼たるとを間わず、その一掃を期して徹底的な捜査と処理を行いますと共に、他面被害者の保護のためにも、所轄警察署と緊密な連絡をとつて、遺憾のないように配慮しております。  なお、この場合一言付加えて申述べたいと思いますことは、ひとり福島県の暴力事件にとどまらず、最近、思慮分別に乏しい青年が、一時の興奮や政治的感情に駆られまして、直接行動に訴えようとする事犯が発生いたしておるのであります。このような暴力に訴えるがごときことは、その動機の如何にかかわらず、これは民主主義を破壊下るものであつて、厳に戒めなければならんと信じております。然るに世間ややもすればこのような者を志士的人物のごとく賞揚する者がありますが、若しそのようなことがありといたしますれば、ますます暴力的傾向を助長する虞れがありますから、政府においては、かかる風潮を根絶するように努めると共に、国民諸君の協力をお願いいたす次第であります。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手
  25. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 自分の考え方を絶対的なものと考えて、その自分の考え方を通すためには、相手を殺さねばいかんというような暴力主義的な考え方というものは、徹底的に排除すべきものであると考えます。只今法務大臣のお答えで尽きておるのでありまするが、御指摘の小田炭坑の事件につきましても、勿論労政上からも由々しき問題ではございまするが、なお広くこの暴力主義への考え方の絶滅を期する考えでございまして、テロリズムを芽のうちに摘み取るという考え方を以ちまして、左右いずれであるとを問わず、又その動機の如何を問わず、徹底的に暴力事犯の絶滅を期することは勿論、将来におきましても、かかる事犯の予防、鎮圧に努める所存であります。(拍手)    〔国務大臣草葉隆圓君登壇、拍手
  26. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) 最近覚醒剤の中毒者によりまする凶悪犯罪が発生いたしておりますることは誠に遺憾と存ずるのであります。これらの中毒患者につきましては、精神病院、教護院或いは少年院等、その他の機関の協力によりまして、これが保護、治療並びに防止に努めて参つておる次第でございます。  なお、これらに使用されておりまする覚醒剤は、その殆んど全部が密造、密売によると思われまするから、警察当局の行いまする取締と共に、薬事監視員を協力せしめまして、これが取締を徹底いたし、且つ関係各省庁の協力によりまして、新たな中毒患者の発生を防止いたしまするために、強く啓発宣伝をも行なつてつておるのであります。この中毒患者を更に絶滅するために必要な施設等を、今後十分増設いたす予定を以て進んでおる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣大達茂雄君登壇、拍手
  27. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 教育が、その内容におきましても、又その運営においても民主的でなければならんということは、これは教育基本法を貫くところの根本精神であります。政府におきましては、勿論、この趣旨、この精神に副うて文教諸般の施策に当つておる次第でございます。(拍手)    〔田畑金光君発言の許可を求む〕
  28. 河井彌八

    議長河井彌八君) 田畑君。
  29. 田畑金光

    ○田畑金光君 再質問をいたしたいと思います。
  30. 河井彌八

    議長河井彌八君) 田畑君、よろしうございます。登壇を請います。    〔田畑金光君登壇、拍手
  31. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は総理に、ニ点について質問いたしましたが、総理答弁がございません。答弁をせざるところに、総理の驕慢なる根性があるのであります。言論を尊重しない総理の非民主的な態度があるのであります。(「その態度は何だ」と呼ぶ者あり)会期延長は、その総理の驕慢なる態度が招いたのであります。一体、総理は、今後この態度を改めて、国会を尊重し、国会の論議を尊重する御意思があるかどうかということを第一点に伺いたい。  第二点は、あなたのような、言論を尊重しない、反対党の言論は糞でも食えというようなこういう態度、これがテロリズムのそもそもの温床であります。政府は、今日の滔々たる道義の頽廃、テロリズムの横行に対しまして、どういう考えを持つておるのか。これこそ、あなた自身も曾つて苦しんだ軍国主義日本の前夜という感じを我々は見受けるのであるが、総理は一国の政治を担当する責任者としてどういう考えを持つておるのか。明確なる御答弁を願いたい。与党に対して我がままは許されても、反対党に対しては、総理であろうともそのような我がままな態度は許されない。御答弁を願いたい。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手
  32. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  私の態度については、一々弁明をいたしませんが、併し私は、言論は尊重いたします。国会も尊重いたします。(「自分の言論だけじやないか」と呼ぶ者あり)而して最後の何は、テロリズムに対してはいかん、テロリズムはいけないと考えます。(拍手)      —————・—————
  33. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私はこの際、北海道、東北地方の風害及び寒害に対する緊急質問動議を提出いたします。
  34. 戸叶武

    ○戸叶武君 私は、只今の若木勝藏君の緊急質問動議に賛成いたします。
  35. 河井彌八

    議長河井彌八君) 若木君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。若木勝藏君。    〔若木勝藏君登壇、拍手
  37. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私は、今回起つた北海道、東北地方の暴風雨災害に対する政府の対策について若干の質問をしようとするものであります。  今回、北海道、東北地方一帯を襲つた暴風雨は、各地に家屋、船舶、交通、通信、農作物等に与えた損害は莫大なものが認められるのであります。これを現在までの国警本部、当該地方団体の調査によつて概観いたしますと、東北、北海道を通じて人的被害は、死者、負傷者、行方不明を総計して四十二名、このほか北海道において出漁のまま帰還しないところの漁船が百二十隻になつておるのであります。その乗組員約一千余名の安否が不明なのであります。建物の被害としては、倒壊、流失、焼失、破損等、まさに九千九百九十六戸に及んでおり、その他、浸水家屋も相当の見込であります。更に農業については、水田の流失、埋没、温床苗代の壊滅、麦の倒伏、桑園の喪失等の被害は甚大なる数に上つているのでありまして、水産の方面につきましては、船舶の沈没、流失、破損等百八十二を数え、漁網の流失も北海道だけで実に二億一千万円に上つているのであります。林業関係にありましては、木材流失で宮城県のみで一千石を数え、北海道の森林の被害も莫大なるものになると推定されているわけであります。その他、道路、橋梁、堤防等の被害も相当数に上つているのであります。更に罹災者の数もまた多数に亘るものと推測されているのであります。  要するに今回の被害は、特に農作物の発芽や、幼弱な苗育ちの時期に、暴風と氷雪による冷温に見舞われたため、予想以上の被害があるものと見られるし、水産業についても漁期にあるところの関係で、漁船、漁網等の被害が大きくなつているのでありまして、これらは、昨年の東北、北海道の冷水害に匹敵するものと考えられるのであります。  それで、今回の災害に鑑みまして、吉田首相に次の二点を伺いたいのであります。  御承知のごとく我が国は近来相次いで風水害に見舞われまして、その都度国土は荒廃し、莫大な国費を失い、国民の生命すら奪われるに至つているのであります。特に昨年のごときは、まさに全土に亘つてあの大災害を受けているのでありまして、国民の期待は一に政府の治山治水に関する抜本的な対策にあるのであります。このことについては、昨年参議院において大風水害に対処するため二十有余の災害救助復旧関係の特別措置法を立法すると同時に、政府に対しまして、災害に対する当面の措置とともに、災害防除の恒久的対策の樹立についても強く要望しまして、具体的には内閣に治山治水に関するところの協議会を作ることを要請しておつたのであります。政府としては、この治山治水について如何なる根本対策を考えているのか。又この協議会もどんな活動をしているのか。先ずこの点について伺いたいのであります。  次に、今回の災害は、特に北海道等にあつては甚だしいものがありまして、通信の回復とともに漸次広範囲に亘る厖大な被害状況が明らかにされつつあるのであります。殊に昨年来累加しているところの被害の負担は容易ならざるものがありまして、かかる観点から、今回の災害に対して昨年の大水害に関する特別法と同様の措置をとらざるを得ない事態であると考えられますが、政府はこの点についてどのようにお考えになるのか、伺いたいのであります。  次に大蔵大臣に伺いたい点は、先ず第一に、二十九年度の災害予算は約五百三十三億になつているのでありますが、これは大かた二十八年度における災害に振り当てられているのであります。それでは二十九年度に発生したところの災害について一体どういうふうな予算の措置をとつておられるのであるか。この点について伺いたいと思います。  次に、今回の災害の特徴は、その被害程度が大きいばかりでなく、在来のものとは趣を異にしているのであります。即ち、農業関係について見ましても、種子であるとか苗であるとかの被害が多いので、これらの対策は季節的に緊急を要し、殊に東北、北海道のごとき寒冷地帯では、その時期を失えば、無収穫という取返しのつかない事態を見るに至るのであります。従いましてその救済対策は一日の遅延を許さない事情にあると考えられますが、大臣も御承知の通り今や地方財政は極度に逼迫し、二十八年度のごときは赤字三百六十億を出しておるのであります。そういう関係から、これらの緊急措置としては、政府の大幅な融資に待たなければならないことは明らかであると思うのであります。これについて大蔵大臣の御見解を伺いたいのであります。  なお、いつの災害復旧費決定に際しましても見る例は、この被害金額の査定が遅れたり変更されたりするために、現地の対策が迅速を欠き、思わざる損失をこうむることであります。殊に昨年のごときは、各省要求の額が二千五百十九億であつた、それが大蔵省の査定で千七百九十九億に落ちた。更に千三百三十四億に減額されて、而もこの間多くの日時を経過しているために、あの大風水害の復旧に大きな蹉跌を来たしている事情が多々あるのであります。大臣も御承知の通り近来は災害が相次いで起り、それが地方財政の赤字が累加して行くところの原因を作つているのであります。この弊害を除くためにも今後は査定を迅速的確にして災害復旧の措置を誤らないことが急務であると思いますが、これに対する方策を伺いたいのであります。  次に、塚田自治庁長官は地方自治を所管するところの立場から、地方住民の生活安定について特に深い配慮を持たれていると思いますが、今回の災害は予想外に大きく罹災者の受けたところの打撃も甚大なことを考えまして、前例を勘案して地方税等の減免、徴収猶予の措置をおとりになる考えがあるかどうか。その点を伺いたいのであります。  更に、長官は地方財政の極度に逼迫している事情も又誰よりもよく知つておちれるのでありますが、今回の災害に対し、昨年の風水害に対し立法された地方団体の起債の特例に関するところの法律の趣旨と同様の措置を早急におとりになる考えがあるかどうか。この点を伺いたいのであります。なお、これらの災害地域に対し特別交付税の優先的な配慮がとられるかどうか。この点についても伺いたい次第であります。  次いで大野国務大臣に伺いたいと思います。今回の災害によつて北海道開発関係施設にも相当な被害を見ているのでありまするが、これは北海道開発の重要性から見まして、その対策に深甚の配慮を要すると思うのであります。これについて大臣は近日中にその調査に赴かれると聞いておりますが、調査の結果被害程度が相当なものであつた場合に、如何なる措置をおとりになるお考えであるのか伺いたいのであります。  次に農林大臣に伺いたいと思います。今回の災害は、特に農作物、水産関係に広範囲に亘つて被害が大きいのでありますが、特に昨年の冷水害が大きかつた関係から相次いで起つたところの今回の災害は、農家、漁業家にとつてその打撃が大きいのであります。北海道を例にとつてみましても、温床苗代のごときは今年度四百三十六万坪の設置の中に二百五十万坪、即ち六割が壊滅したのであります。而も今年の設置分は昨年の災害国庫補助一億一千万円によつて漸くできたものでありますだけに、季節的に急を要するこの際、復旧をどう措置するかということが重大な問題になるわけであります。十これは東北地方についても同様の事態か生じて来るものと思います。又水産関係を見ましても、北海道だけで漁網の流失損害は二億一千万円に達し、漁船の損害もおびただしく、現に出漁のまま帰還しないところの百二十隻のものがあるのであります。単にこれは船舶の損失というにとどまらず、乗組員千二百有余の人命も氷雪を混えたところの三十何メーターのあの暴風では到底その安全を期待し得ないのであります。而もこれらの多くは中小企業者であり、従つてその対策としては従来に見るごとく、金融にのみ依存することはできない。こう思うのでありまするが、農林大臣のこれに対するところの方策を伺いたいのであります。  なお総体の対策といたしまして融資の部面も考えられるのでありまするが、現地の事情としては特に相次ぐ災害等により、力の弱いところの業者には、なかなか融資の途が開けないのでありまして、これが災害対策からも、又産業振興の上からも国家として適当な保証を与え、これを助成して行く方途を講ずべきだと思いますが、農林大臣の所見を伺いたいのであります。  次に建設大臣に伺いたいと思います。今回の災害で道路の損壊、橋梁の流失、堤防決壊等相当の被害があるのでありまするが、これらに対するところの措置について、又家屋の倒壊破損等も、まさに九千戸以上にも上つておるのでありまするが、罹災者の住宅についての措置についても、如何ようなお考えか伺いたいのであります。  次に厚生大臣に伺いたいと思います。災害に際しまして、最も緊急に、而も適正に行われなければならないのは罹災者に対するところの措置であると思いますが、北海道においては、今回すでに三カ町村に災害救助法が発動され、更に申請中のものもあるのでありまするが、これらに対して厚生省としては緊急に如何なる措置をとられたか。又昨年の風水害に際し災害救助に関するところの特例法が適用されたのでありますが、今回の災害については、これと同様程度の措置をおとりになるのか。その点を伺いたいのであります。更に公衆衛生、病院、診療所、社会福祉事業施設、そういうふうな方面の災害復旧、又、母子福祉資金の骨付、これらについても昨年同様の措置をとるお考えがあるのかどうか。併せてこれを伺いたいのであります。  最後に、文部大臣に伺いたいと思います。今回の災害で、北海道の学校施設の被害は予想外に大きいのでありすす。現在までに判明した分でも二十一校を数えておる。更に増加の見込でありまするが、公立学校施設としては国庫負担法におけるところの国庫負担率は三分の二になつております。これは北海道の特殊事情から見まして、低いというのは、これが在来の強い主張であつたのであります。今回のごとく市町村内において各般に亘るところの災害を受けた場合は、特にこの主張を認め、昨年の風水害の特別措置と同様、四分の三程度のこの負担率を考えることが適切であると思うのでありますが、これに対する大臣のお考えを伺いたいのであります。  以上を以ちまして私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手
  38. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  このたびの北海道及び東北における災害につきましては、政府として誠に同情に堪えないのであります。これに対して只今、関係省において被害状況を一々詳細に調査中であります。その調査の完了を待ちまして、応急適当な処置を講ずる考えでおります。  又治山治水についてのお尋ねがございましたが、これは昨年の大災害にも顧みまして、政府としては治山治水対策を政府の重要施策の一つと考えておりまして、昨年内閣に設置しました治山治水対策協議会で検討された線に沿つて、適当な措置を重点的に効率的に実施いたす考えであります。詳細は主管大臣からお答えいたします。    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手
  39. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。  今回の風害等による災害に対しましては、誠に御同情に堪えません。これらにつきましては目下調査中でございまするが、前年のものに比べますと、損害もさまで甚大のものでもなく、又局地的でもありまするので、差向き特別の措置を講ずる必要はないようにも見られておるのでありまするが、なお十分に実情等を調査いたしました上で必要なる決定をすることといたしたいと存じております。ただ二十八年度災害等で御報告申上げて御了承願つた通り、どうもこの災害については、その後会計検査院、大蔵省及び行政監察等で十分調べた結果によりますると、架空又は重複等の分も出て参りましたり、水増し等があつて、不正不当と見られるものが三割以上にも上つておるというような状況でもございまするので、従つてこの査定には十分適正を期したいと、かように考えております。併し適正を期するがために遅延いたしてはなりませんから、そのための査定並びに対策につきましては、能う限り急速に実施いたしたい。かように考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣大野伴睦君登壇、拍手
  40. 大野伴睦

    ○国務大臣(大野伴睦君) 五月九日夜来の暴風雨の災害は、交通通信の杜絶している地帯が多く、未だ全貌が判明しておりません。併し只今までに判明した被害状況は、家屋の倒壊、漁船の沈没、道路、橋梁等の流失、特に温床苗代の被害は、広汎にして甚大であります。早急に被害の実態を調査いたしまして最善の対策を立てたいと考えておりまするが、御承知のように、北海道開発庁は行政上災害については直接の責任を持つておりませんので、関係各省とよく協議し、善処いたしたいと考えております。  お答え申上げました。(拍手)    〔国務大臣保利茂君登壇、拍手
  41. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) お答えいたします。北海道から東北にかけましての今回の暴風雨によりまして、最も懸念をいたしておりますのは、先ほどお話の未だに消息の明らかでない多数の漁船、操業中の漁船でございます。相当の数に上つておりますことは誠に不幸の至りに存じておるわけでありますが、さて実際のこの災害の状況につきましては、農作物の関係で一番案ぜられますのは、北海道のお話の温床苗代でございます。この温床苗代の被害面積が相当広範囲に亘つておる。それが果して大部分持ち直して行くかどうか。或いは新たな種籾の確保を要するかと至急調査を要する点があるように存じております。東北地方におきましても、例えば岩手県でありますとか、青森県でありますとかの「りんご」が、たまたま開花期に入つており、相当の被害を受けたのではないかと察せられるわけであります。いずれにいたしましても、水産と農産物の関係を至急調査をする必要がございますので、農産物関係の係官、水産物関係の係官を北海道に急派いたしまして、只今十分に調査を遂げておるところでございます。具体的に調査が進みますれば、先ほどお話のように適切な施策をとるようにいたしたいと、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣草葉隆圓君登壇、拍手
  42. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) 今回の災害、殊に北海道の災害につきましては、お話のように災害救助法を実施いたしておりまする町村が現在まで三カ村ございます。今後更に判明いたしまして、必要あります場合には災害救助法を実施いたしまして、十分これらの手当をいたしたいと存じております。社会福祉施設の損害復旧等につきましても、今後十分調査をいたしまして、判明次第、それぞれこれらに対する復旧等をいたして参りたいと存じておりまするが、殊に御指摘の母子福祉資金等につきましても、これらの災害範囲内において、今後それらの関係者と十分連絡をいたしまして処置を講じて去りたいと存じております。なお、昨年実施されました災害特別立法の適用等につきましては、現在のところは、直ちには考えておりません。今後これらの災害等が判明いたしまするにつきまして、十分検討いたしたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣大達茂雄君登壇、拍手
  43. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 公立学校の災害復旧費の補助率の問題でありますが、御承知の通り、北海道につきましては、公共土木の災害復旧費につきましては、特別な補助率が規定してあるのでありますが、公立学校の災害復旧については現在まで規定がありません。併し公共土木との振合から申しましても、今御指摘になりました点は、十分検討する必要があると考えておりますので、その点、今後研究をいたしたいと、かように考えております。(拍手)    〔政府委員青木正君登壇、拍手
  44. 青木正

    政府委員(青木正君) 塚田長官に代りましてお答え申上げます。  災害の状況につきましては目下調査中でありますが、年度当初のことであり、御指摘のごとく、地方財政におきまして、災害による影響甚大なものがあると思うのであります。従いまして、調査の結果によりまして短期融資の斡旋等、取りあえずの処置としては講じなければならんと、かように存じております。なお又、地方税の徴収猶予若しくは減免税の問題等につきましては、各当該公共団体におきまして、条例の定むるところによつて適当な処置をなさることと思うのでありまするが、これに対する財政措置としての特別交付税の問題は、当然に考慮しなければならんと存じておる次第であります。(拍手)    〔政府委員南好雄君登壇、拍手
  45. 南好雄

    政府委員(南好雄君) お答え申上げます。建設省関係の公共土木施設の災害状況につきましては、取りあえず北海道庁をして調査いたさせておりますが、その報告によりますると、今十二日朝八時までの損害は、河川四十五カ所、金額にいたしまして四千一百三十二万円、海岸が八カ所ございまして七千八百九十五万円、道路が六カ所ございまして七百五十万円、計五十九カ所で一億二千七百七十七万円となつております。これは道工事でありまするが、市町村工事につきましては、海岸が三カ所で七百八十万円、道路が四カ所で六百万円、橋梁が三カ所で百九十五万円、合計いたしまして、道及び市町村工事合計いたしまして六十九カ所で一億四千三百五十二万円になつております。  家屋の被害状況は、十二日午前一時現在で、全壊が七百二十三戸、半壊が千二百十四戸、小破が八千八十七戸となつております。漸次この災害が詳細判明いたしますのを待ちまして、予備費の支出、或いは住宅につきましては、住宅金融公庫等の融資等を考えまして、適切な措置を講じたいと考えております。(拍手
  46. 藤田進

    ○藤田進君 私はこの際、会議を暫時休憩せられんことの動議を提出いたします。
  47. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は、只今の藤田君の動議に賛成いたします。
  48. 河井彌八

    議長河井彌八君) 藤田君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  49. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます、よつて藤田君の動議は、全会一致を以て可決せられました。  暫時休憩いたします。    午後六時二十二分休憩    〔休憩後開会に至らなかつた〕      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、検察権中立性確保に関する政府答弁についての緊急質問  一、最近のテロリズムの横行、凶悪犯罪の頻発に対する政府の取締りに関する緊急質問  一、北海道、東北の風害及び寒害に関する緊急質問