○深川タマヱ君
只今議題となりました
土地区画整理法案及び同施行
法案について建設
委員会における
審議の
経過並びに結果を御
報告申上げます。
土地区画整理法案は、都市計画区域内における土
地区画整理事業の円滑な施行を促進して公共施設の整備改善及び宅地の利用増進を図り、以て健全な市街地の造成に資することを
目的といたすものでございます。御承知の通り、土
地区画整理事業は、従来都市計画法及び特別都市計画法に基いて
運営されていたのでございますが、事業施行に関する主要な事項は、旧耕地整理法によ
つておるのでございます。然るに、同法は、明治四十二年の制定にかかり、すでに
昭和二十四年に廃止されておるばかりでなく、元来、市街地における区画整理事業には適合いたさない部分が少くないのでございます。
従つて土
地区画整理に関するこれらの法律を総合整備する必要は、すでに年来認められておつたところであり、今回の
提案を見た次第でございます。
以下、本案の従来の土
地区画整理
制度と異なる主なる点を述べますと、第一、土
地区画整理組合は、従来は土地所有者によ
つて組織することを原則といたしておりましたが、近時の借地権の重要性に鑑み、事業を円滑に施行するため、借地権者もその組合員となることといたしております。第二に、
地方公共団体は、従来は建設大臣の施行命令によ
つて事業を施行することとな
つておるのでございますが、これを
地方の実情に応じて自主的に事業を施行することといたしております。第三に、国の利害に重大な
関係がある土
地区画整理事業については、従来も戦災復興事業のごとく、行政庁が施行に当
つておるのでございますが、今後においてもこの
制度は維持され、なお特に必要がある場合は、建設大臣みずから事業を施行することができることでございます。第四に、事業の円滑な施行を図るため、土地の所有者、借地権者のみならず、その他の
関係権利者の
意見が反映し得るような
措置を講ずることでございます。事業計画及び換地計画を定めるに当りましては、あらかじめ公衆の縦覧に供し、利害
関係者の
意見提出の途を聞き、土
地区画整理
審議会の委員、土
地区画整理組合の役員及び総代の任期を定め、又その改選、解任請求
制度を設ける等の
措置を講じております。第五に、
一定規模以下の過小宅地、過小借地、又は
関係権利者の同意がある宅地につきましては、換地に代えて建築物の一部を与える立体換地
制度を設けておるのでございます。
次に、
土地区画整理法施行法案は、土
地区画整理法の施行に伴う必要な
経過規定と、
関係法令の改廃を規定するものでございます。
建設
委員会におきましては、右二
法案に対し逐条、慎重な
質疑応答を重ねましたが、
審議の詳細は
会議録によ
つて御承知を願うことにいたします。
質疑は、土
地区画整理事業全般に亘り、甚だ広汎に及んだのでございますが、主なる事項といたしましては、一つ、都市計画と土
地区画整理事業との
関係、区画整理事業が都市計画事業として施行される場合。二つ、事業主体については行政庁が施行する、国の利害に重大なる
関係を有する事業の意義と、それを定める
基準、個人施行と組合施行及び
地方公共団体施行の差異。三つ、組合施行の場合について、当初から事業施行に
反対した者の立場、係争中の土地の権利者の取扱、土
地区画整理
審議会委員及び評価員の人選。四つ、換地計画における過小宅地、過小借地の
基準、立体換地の場合、従前の土地との照応の問題、保留地を定める
基準及び処分
方法。このほか仮換地の諸問題等でございます。特に立体換地については、その実施に当り生ずる各種の問題につき、多くの
質疑応答が重ねられた次第でございます。
なお、本
法案に対しましては「農林
委員長から、食糧増産を図り、耕作者の地位を安定するため、土地を区画整理事業の施行については、
関係農
業者の意向を十分に反映させる必要があるとして、第八条及び第百二十二条の
修正につき申入れがございました。申入れに対して、
委員会は慎重に
審議研究をいたしました結果、
委員会といたしましては、附帯決議を附してその
趣旨に副うよう努めることになりました。
かくて
質疑を終了いたし、
土地区画整理法案につき
討論に入りましたところ、田中委員から、「本案は旧制に対して前進であるので
賛成するが、
審議の過程に見るときは、他の法制との関連においてなお不十分なものがある。その一、二の例を挙げれば、一つ、借地権を所有権同様に取扱
つておることは適当であるが、借家権、農地耕作権者の区画整理事業に対する
発言権を更に考慮すること。二つ、立体換地により都市の立体化を図ることは適当であるが、一方これに逆行するごとき宅地造成に関する立法を見ることは遺憾である。宅地造成に当
つては、地上権その他の権利に十分考慮を払うと共に、近い将来都市計画法の
改正に当
つては、都市立体化の促進を図り、又立体換地に関する規定を完備することを望む」旨の
発言があり、次いで小笠原委員から、「本案に
賛成するが、本案に関連して、食糧の増産、耕作者の権利の保護に関して農林
委員長から申入れがあつた。その一は、本
法案第八条第二項の規定を
修正して、事業計画に関し、耕作権者の同意を条件とすること。その二は、第百二十二条の規定による建設大臣の認可に当り、政令で定める割合以上の農地又は放牧採草地が含まれている場合は、農林大臣の
意見を聞かなければならんとするものである。この申入れに対しては、本
委員会は慎重な
審議を重ねたのであるが、第二の点については、申入れの
趣旨は他の途で考慮ができると認められ、
政府も又これを考慮するとのことであつた。第一の耕作権の保護については、多くの研究をしたのであるが、土
地区画整理事業の遂行との調整を図ることが立法技術上困難であるとの結論に到達した。
従つて本法の運用に当
つては、土
地区画整理事業の遂行と、農耕者の権利の保護との調整については、
政府に十分な留意を要求する必要がある。よ
つてここに、本
法案に対して附帯決議を附することを
提案する。」
附帯決議案
本
土地区画整理法案は、旧
制度に比し、一歩前進せるものとは認められるが、農耕地と市街地との調整に関しての
審議の
経過に鑑み、本法の実施に際し、
政府において左の点に十分留意すべきである。
一、耕作者の諸権利を不当に侵害するがごとき事態を生ぜしめないよう努めること。
二、農地との調整に関する政令立案に当りては、建設、農林両省において十分なる連絡をとり、前記の
趣旨実現方につき、特段の配慮をなすこと。
右決議する。
以上のような附帯決議を附する
賛成意見が述べられました。次に石川委員から、「本案に
賛成し、小笠原委員
提案の附帯決議に
賛成する。本案は文化都市の建設を企図するものである。然るに近時町村合併等の実情は、一面においてはややもすれば、都市の人口集中、食糧増産の阻害を来たす結果が見られるものがある。よ
つて本法の実施に当
つては、区画整理事業の認否、都市計画区域の設定、都市計画事業の認可に総合的な見地から考慮を払うことを条件として
賛成する」旨の
発言があり、三浦委員からは、「附帯決議を前提として本案に
賛成する」との
意見が述べられました。
かくて
討論を終結、
採決の結果、全会一致、
原案通り可決すべきものと決定いたしました。次いで、小笠原委員
提案の附帯決議案につき
採決いたしたところ、全会一致これを可決いたしました。緒方国務大臣からは、「本決議の
趣旨を尊重し、本法の
運営に遺憾なきを期する」旨の
発言がありましたことを申添えておきます。
次に、
土地区画整理法施行法案につき
討論に入りましたところ、小澤委員から、「本案に
賛成するが、一部
修正案を提出する。」
土地区画整理法施行法案に対する
修正案
土地区画整理法施行法案の一部を次のように
修正する。
第二十条中「第百十一条の六」を「第七十三条の六」に改める。
この
修正案は、去る六日、本院において
地方税法の一部を
改正する
法律案が
修正議決せられた結果、本
法案第二十条中の字句を
修正する必要が生じたもので、全く形式的なものである
趣旨の
発言があり、一部
修正案の提出がありました。
かくて
討論を終結、先ず小澤委員提出の
修正案を
採決に付しましたところ、全会一致、これを可決いたし、次に
修正部分を除く
原案全部につき
採決いたしましたところ、全会一致、これを可決いたしました。
以上、御
報告申上げます。(
拍手)