○成瀬幡治君 私は、
日本社会党第四控室を代表いたしまして、
只今上程されました本
法律案に反対をいたすものでございます。以下簡単に反対の理由を申述べます。
入場税設定について、歴史的に申しますならば、敗戦直後の税制改革において、地方公共団体に独立
財源を与え、中央に依存することなく、地方自治体が実質的に独立して行けるようにとの観点から、
入場税として
遊興飲食税と共に創設せられたものであります。即ち
入場税は、地方の独立
財源の中心をなすものであります。而して今回税制調査会は、この
入場税及び
遊興飲食税を税金の
偏在是正のために、
国税に移管せよと答申して参りました。
政府はこの答申に接し、
入場税、
遊興飲食税を答申案
通り、
国税に移管する
方針を最初に
決定いたしましたが、汚職でとみに名を挙げました赤坂、新橋の待合、料理店を中心とした反対
陳情に接するや、文字
通り一夜のうちに豹変し、
入場税のみを
国税に移管して
関係業者並びに
国民に暗い影を与えたのであります。(
拍手)元来
入場税、
遊興飲食税は車の両輪で
地方税の中心をなして来たのであります。当時の、未だ現
政府の汚職疑獄が表面化しておらなか
つたので、
国民も余り騒がなか
つたのでありますが、若しこれが今日なされたとするなら、世論はその不明朗な取引を許さなか
つたでしよう。
政府の
税制改正の方途を見ておりますと、先ず最初に、今度はこの税制を
改正するぞとアドバルーンを揚げます。業者が驚いて
陳情に駈けつけて、縷々
陳情をしますと、その効果が実を結び、アドバルーンは泡のごとく消え去
つて参ります。すると
政府は又新らしい税制改革のアドバルーンを揚げるのであります。白羽の矢を立てられた
関係業者は
陳情に駈けつける。このことが繰返えされ、
陳情の度合が薄か
つたと思われるもののみが、
法律案として
提出されるように思われてならないのであります。民主政治を
陳情政治のごとく
考えており、又昨日も、我が党の松本議員の
質問に答えて、吉田首相は、政党に対する政治寄金は、政党政治の続く限りあるのは当然だと申されておるのでありますが、まさしく造船疑獄を初めとする今回の汚職で、その一端をさらけ出したごとく、この立法は、すべて献金、リベートのためにするという
政府の態度は、
国民を憤激せしめ、かかる吉田自由党内閣は、速かに退陣すべきであるというのが、今日全国津々浦々の
国民の声であります。(
拍手)
入場税法案は立法過程において誠に不明朗なものがあり、又
遊興飲食税と共に
入場税は、
地方税として存置すべきであるというのが我が党の態度であります。
入場税は
入場譲与税として、地方公共団体へ
交付されるのでありますから、地方自治体は結局中央へ
陳情せねばならなくなります。これは中央集権化であり、地方自治体の強化、確立とは逆行し、
警察法
改正などと共に反動立法であります。これが反対の第一の理由であります。
〔副
議長退席、
議長着席〕
反対の第二の理由は、
課税範囲並びに課税標準及び
税率を、プロ野球を初めとするスポーツと
映画、
演劇などの文芸
関係の健全娯楽と競馬、競輪等の賭博的行為と同一にしておる点であります。否、競馬、競輪などの賭博的行為の
入場に関しては、
入場税は取らないという結果にな
つておるのであります。何となれば、競馬、競輪は大体において
入場料金を一人一回五円から五十円で、課税対象以下の
入場料金であります。従
つて入場税は課せられないということになるのであります。敗戦後の
国民気風は、希望を失い、ために自暴自棄となり、刹那的になり、賭博的行為に息を抜くというのが、敗戦
国民の例であり、これが惰性となり、遂にその民族の滅亡を招くのであります。為政者、指導的立場にある者は、この
国民に希望を与え、奮起を求める政策を立てることが何より大切であり、言葉のみの愛国心はどれほど大きな声で叫んでも、何の役にも立たないのであります。よき政策こそのみが敗戦の
国民気風を一新するものであります。然るに、自暴自棄、刹那的な
国民気風に迎合して、競輪、競馬、モーターボート、小型自動車などの賭博的立法をなし、てら銭稼ぎを
政府はや
つておるのでありますが、
政府は前非を悔い、かかる賭博的行為の
入場には、税を重くし、少しでも
国民が賭博的行為から遠ざかるようにすることこそ重要なことであると思われるのに、今回の
改正においては、実情を知りつつ、
入場税が全然課税されないようにし、却
つてこれを奨励するかのごときは、一部業者のための
改正であると申すべきであり、国を憂えざる者のなす業であり、誠に遺憾に堪えないところであります。(
拍手)汚職と賭博は国を亡ぼすものであります。賭博的行為にチエツクして、半面健全娯楽を推奨して行く、かかる法の
改正こそなされるべきであります。これが反対の第二の理由であります。第三点は、免税興行と
入場税の保全担保の件が、委員会の
質疑を通じてあいまいであるという点であります。免税興行におきましては、別表に
事例を挙げ、その第十二項において「その他前各号に掲げるものに類するもので、政令で定めるもの」とあり、又支出先又は支出の
目的の項で、
事例を挙げ、終りに「その他これらに類するもので、政令で定めるもの」とな
つているのであります。すべてが政令に委ねられているのは徴税者によ
つて融通自在であります。今までの例によりますと、正直者が馬鹿をみておるのであります。不正直者が世にはばかるような立法は、百害あ
つて一利なしであります。次に保全担保でありますが、
国税庁
関係の人たちによ
つて、その必要の認定が独断でなされるのであります。成るほど基準は第十四条の一項二項によ
つて示されておるのでありますが、その認定はやはり心証であります。主催者に脅威を与える権限を持
つているものが心証による断定は、汚職に発展する危険を十二分に持
つているのであります。即ち利害得失を及ぼすものの認定が、あいまいな基準にな
つていることは、利に敏な業者につけ込まれ、知らず知らずの間に犯罪者を作り出すことになるのであります。以上、要するに本法案は、その過程において不明朗であり、中央集権化であり、その
内容において、賭博的行為の奨励をなし、
国民の頽廃的思潮に油を注ぐことは、国を売るものであり、又汚職が生み出される危険も十二分に持
つておるのであります。我が党はかかる本法案に断固反対するものであります。(
拍手)
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