○佐藤尚武君
只今議題となりました
日本国と
アメリカ合衆国との間の
相互防衛援助協定の
批准及び農産物の購入に関する
協定、
経済的措置に関する
協定並びに
投資の保証に関する
協定の
締結について
承認を求めるの件につきまして、
外務委員会における
審議の経過と結果を御
報告申上げます。
政府の説明によりますと、
相互防衛援助協定につきましては、
政府は昨年六月、米国議会において
成立した相互安全保障法の改正法により、同国がすでに西欧その他の諸国に対して供与している防衛援助が、
我が国にも供与され得ることにな
つたことを承知いたしましたので、
我が国の自衛力漸増の既定方針に従い、この援助を同法に基き受けることを希望いたしたのでありまするが、その方針を決定するに先立ち、
政府は戦力の保持を禁ずる我が
憲法との
関係及び
我が国経済力との
関係において、十分に米国
政府の意向を確めておくことを適当と
考えまして、これらの点に関する我が方の見解を具して、米国
政府の意向を質したのであります。その結果六月二十四日及び二十六日の日米往復書簡において、彼我の見解が大筋において一致することが明らかとなりましたので、この
基礎に立
つて昨年七月十五日より東京におきまして援助
協定の
締結に関する具体的
交渉を行な
つて参りましたところ、本年三月に入り、
両国政府の間で
最後的に
意見の一致を見るに至りました。かくて三月八日、東京においてこの
相互防衛援助協定の署名を了した次第であります。
本
協定は、十一カ条と附属書七項目から成
つておりまして、その
内容は大部分米国と地の諸国との間の同種の
協定とその揆を一にするものでありまするが、その中には他国の先例に見られない、
我が国の特殊事情に基く特異な規定が設けられておるのであります。即ち、
第一に、相互安全保障法第五百十一条(a)項に揚げられた六条件中、第三の軍事的義務履行の点につきましては、
協定第八条において
我が国の場合は、日米安全保障条約に基く義務以外に出ないことを明らかにし、又第九条において、本
協定が
憲法上の規定に
従つて実施せられること、及び安全保障条約を何ら改変するものでないことを明らかにしたのであります。
第二に、
我が国経済との関連につきまして、前文と第一条において、
我が国の防衛力の増強に当
つては、
経済の安定が不可欠の要素であることを明らかにし、又附属書A項として、他面我が防衛産業助長のため、
日本及び第三国用の装備、資材の
我が国における調達、防衛産業に対する情報の提供、技術者の訓練に関する規定をも設けたのであります。平和を脅威する国との貿易の統制につきましては、米国と他の国との
協定の先例に鑑み、且つ
我が国の国連協力の方針に照らし、これを約束して差支えないと認めましたが、先の本院の決議の次第も十分に尊重いたしまして、附属書D項において、
我が国は米国その他の平和愛好国とこの目的のため協力する趣旨を掲げるに留めたる次第であります。
又、軍事援助顧問団の性格につきましては、第七条においてこれを大使の指揮の下に行動するものと規定し、その員数及び行政事務費につきましては、附属書G項において
我が国財政状況にも鑑み、これを最小限度にとどめることを定めた次第であります。
以上の諸点につきましては、今次
協定の
交渉の過程において取扱に慎重を期し、
従つて交渉も意外に長引いたのでありまするが、
我が国の特殊事情に対する考慮は十分に織込み得たと信ずるのであります。
次に、その
内容を条項別に要約いたしますると、前文には、この
協定が国連憲章、対日
平和条約及び日米安全保障条約の趣旨に副うものであり、
経済の安定が
日本国の防衛能力発展のために不可欠の要素であることを述べております。
本文におきましては、一、装備、資材、役務等の援助の供与、その効果的使用、不要とな
つたものの返還及び譲渡の制限について規定し、二、
日本国政府が米国において不足する原材料又は半加工品で、
日本国内で入手し得るものを譲渡する旨を規定し、三、秘密の物件、役務又は情報についての秘密保持の
措置及び弘報
処置について定め、四、工業所有権及び技術上の知識の交換に関する取極を作ること、五、援助資金の差押防止に関して協議することを定め、六、
日本国が許与する関税及び内国税の免除と、附属書E項に掲げる
日本の租税の免除について規定し、七、
日本国政府がこの
協定に基く援助の進捗状況を観察することを主たる任務とする米国
政府の職員を接受すること、及び行政事務費として米国
政府に円資金を提供することを規定し、八、米国の相互安全保障法第五百十一条(a)項の六条件に関連し、
日本国政府が再確認し、又は受諾する義務について規定し、九、本
協定と日米安全保障条約との
関係及び本
協定が
両国の
憲法上の規定に
従つて実施さるべきことを明らかにし、十、本
協定の実施に関する
両国政府の協議並びに本
協定の再検討と改正について定め、参十一、本
協定は、米国
政府が
日本国政府から、この
協定を
批准した旨の書面による通告を受領したその目に効力を生ずること、及び本
協定は、
協定終了に関する通告を受領した日の後、一年を経過するまで効力を有する旨、又、附属書は、この
協定の不可分の一部であること、本
協定は国際連合事務局に登録することを規定しております。
次に、附属書におきましては、世界平和を脅かす諸国との貿易統制の
措置について協力する旨を定めたほか、おおむね本文条項の細目につき規定しております。
次に、相互安全保障法第五百五十条に基く農産物の円貨による購入及びその円貨の使用に関しまして、同じく三月八日に、一、農産物の購入に関する
協定、二、
経済的措置に関する
協定の署名を了しました。前者は、米国の余剰農産物につき同国の現会計年度において、
総額五千万ドルの取引を行うことを目的とし、
日本国政府は、この購入代金を米国
政府の特別勘定に円貨で積立てる旨を定めており、後者は、農産物の購入代金たる五千万ドルに相当する円貨のうち一千万ドル相当分は、贈与として
我が国に供与され、残与の四千万ドル相当分は、米国が
日本における域外買付に使用することを規定しておりますので、これは防衛産業の強化と
我が国経済の発展に役立つものと
考えます。購入すべき農産物としましては、小麦五十万トン、大麦十万トンを予定しておりますが、これは外貨を使用せず、円で購入し得る点及びその価格が国際小麦
協定の価格と同様の廉価なる点を考慮すれば、相当有利な条件で、
我が国食糧事情の緩和に寄与するものと
考えております。
又、今回同時に署名をみました
投資保証
協定は、
我が国の外貨事情等により、米国の民間
投資の元本及び収益のドル交換が不可能とな
つた場合、並びに当該
投資財産が
日本国内で収用された場合に、米国
政府は
投資家にドルによる補償を与えると同時に、その債権を継承することを
内容とするものでありまして、これは米国の民間
投資者が米国
政府の保証により安心して
我が国に資本投下をなし得る途を開かんとしたものであります。
これを要しまするに、今回署名せられました相互安全保障
関係諸
協定は、
我が国の防衛力の増強と併せて
我が国産業の助長発展に資することを目標とするものでありまして、
政府としましては、これら諸
協定が
我が国の自立自衛の達成に貢献し、又、これにより日米
両国の協力は更に強固の度を加え、延いて
自由諸国の安全保障と世界平和の維持に寄与せんとする
我が国の意図の実現に一歩を進めたものと
考える次第であります。以上が
政府の説明でありました。
これら四件は、先ず本
会議に上程され、
政府の説明と質疑が行われた後、三月十九日
外務委員会に付託されたのでありまするが、委員会は四月八日より
審議を開始し、爾来農林及び内閣、大蔵委員会との連合審査会を合せて十四回に亘
つて慎重
審議を行いました。この間、
吉田内閣総理大臣、岡崎
外務大臣、木村
国務大臣及び
政府委員との間に詳細且つ活撥なる質疑応答が行われ、又、これに先立ち委員会は二日間に互
つて公聴会を開催し、
憲法、国際法、軍事、技術、
経済の各分野における学識経験者の
意見を聴取いたしました。
次に、質疑の要点を取りまとめ御
報告いたします。先ず、「
MSA協定は
憲法に違反するとの
考え方があるが、条約と
憲法とはいずれが優先するのか。
憲法違反の条約は無効か。
政府は
憲法を独善的に解釈して、事実上再軍備を行な
つているが、これは非民主的ではないか。」との
質問に対し、「
憲法と条約といずれが優先するかの問題は、学者間では見解が分れており、
我が国憲法の条章を見てもはつきりしていないが、一つの手がかりとなる点は、
憲法と条約が、その改正又は
締結の手続において難易の別を設けていることである、これによ
つて判断すると、条約が
憲法に優先するとは
考えられない。違憲の条約は、国内法的には無効になると思う。これが国際的に無効かどうかは
憲法の問題ではない。併し、条約は
憲法の範囲内で
締結するのであ
つて、
憲法に違反した条約は結べない。又、これまでに確立した国際法規には、我が
憲法に違反するごときものは存していないと信ずる。
政府はみずからの
所信と解釈に従い、その
責任において政策を遂行している。そして予算の
審議等を通じて、常に
国会に諮
つているのであるから、
国会の知らぬ間に再軍備の既成事実ができ上るということはあり得ない。」との
答弁があり、次に、「
MSA協定第八桑中に、一自国の防衛力と自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し」とあるのは、新たな義務であり、且つ、軍事的義務を負うことになりはしないか。防衛力増強は具体的に言
つてどこまで行けば戦力になるのか。米国が
日本に対し、今日以上に大きな軍備を要求して来たらどうするのか。MSA援助と
我が国防衛計画とは表裏一体の
関係にあり、米駐留軍の引揚げと防衛力増強とが相関
関係にある以上、防衛力増強について長期計画があるべきではないか。米駐留軍の現存兵力はどのくらいか。
日本の自衛力がどの程度になれば米駐留軍は撤退するのか。」等の
質問に対しましては、「防衛力増強に寄与することは義務だと
考える。これを軍事的義務と解するかどうかは各自の見方によるであろう。戦力についてはどれだけの装備があれば戦力になるか、その具体的数字を挙げることはできない。一般的社会通念に基いてきめるよりほかはない。米国が駐留軍を漸減すると言えば、我がほうとしてはこれに応ぜざるを得ない。防衛力増強は初めから
日本が自主的にきめることにな
つておる。米国が
日本に対し、厖大な防衛力を要求して来るようなことは全然ないと
考えておるが、仮にかかる要請があ
つたとしても、国力に相応しない軍隊は持つべきでないと
考える。MSA援助と防衛計画とは理論上
関係はない。我が方に防衛力増強の計画があるときにMSAの援助の問題が起
つたので、結果的に
関係ができたのである。防衛力増強の長期計画を持つことは常識的であり、これができれば結構である。併し
我が国の
経済力との
関係もあり、又原子力研究の進歩と共に、米国ではニユー・ルックと称し、国防計画を変更せんとしておる
情勢でもあるので、
日本として長期計画を立てることは時期尚早であり、又それはできないと思う。米駐留軍の現存兵力は、先方が秘密にしていて全くわからないから、ただ推測するに過ぎない。我が自衛力をどの程度に増強する必要があるかについては、まだ的確な結論は出ていない。現実には我が自衛力増強の程度に応じて駐留軍が引揚げることになるのであ
つて、駐留軍の撤退はここ数年間は望めないと思う。撤退は一般に希望するところであるが、その実現は容易でなく、先ず我が財政力の強化を図るほかはない。現存の米駐留軍は、陸海空の力を総合すると戦力に該当するものと解せられる。
従つて駐留軍に代る程度の自衛力増強は、
憲法上できない。現在の志願制度の下で行い得る自衛力増強にはおのずから限度があり、二十二、三万以上の増強は徴兵制度によらなければ実行不可能であり、徴兵制度は
憲法上許されない。自衛力増強計画は、
昭和二十九年度分だけきま
つたので、
昭和三十年度分については、こうしたいとの予想的な目標だけは立てているが、実際の計画は立てていない」との
答弁がありました。
又、「
日本の基本的防衛方針は、一国防衛主義によるのか。それとも集団防衛主義によるのか。集団防衛とすれば、二国間と多数国間集団防衛とのいずれの方式をとるのか。大西洋条約機構アンザスのごときものには不賛成か。昨今PATO、即ち太平洋条約機構とか、SEATO、即ち
東南アジア条約機構等の
構想について論議されているが、かかる地域的集団安全保障体制に対する
政府の見解如何」との
質問に対しては、「
我が国の防衛方針については、当面は日米安全保障条約によ
つて立てられた二ヵ国間集団防衛
形式を維持して行くわけである。
政府は集団防衛について常に
考えており、国際連合の集団防衛には強い希望を持
つている。地域的集団安全保障体制については、原則的に言えば、兵力提供の義務がなければ、国連憲章の下での地域的機構は結構だと思うが、太平洋条約機構のごときに対しては非常な考慮を要する。現に濠州、ニユージーランド、
東南アジア諸国の
日本に対する誤解はまだ解消していないし、ややもすると
日本の
経済侵略などと言われたりする状況であるから、地域的集団安全保障体制に参加することは、外国の側から見れば、
日本が彼らの信用を回復することが必要であり、又内から見れば、これによ
つて日本がいろいろな義務を負わねばならないから
熟慮を要する問題である。
日本がかかる機構に参加することには、外国中に反対の空気が多いだろうし、又
日本はこれに招請を受けていない。
従つて仮にこのままで加入するとしても、各国の誤解は深まることがあ
つても、解消することはないであろう。今日
日本として肝要なことは、先ず国内の態勢を整えることである」との
答弁があり、次いで、「現在
日本の有する自衛権は、国際法上認められる一般的のものではなく、対日
平和条約、国連憲章第五十一条等にいう限定された
意味の自衛権であ
つて攻撃を受けて始めて
発動するものではないか。自衛権によれば武力行使が認められ、
従つて戦争が認られるのか。
日本が領土の外から武力攻撃を受けた場合、自衛権の
発動により、他国の領土に入
つて行
つてまで武力行使はできるのか。この
協定により、
日本は自由世界防衛の義務を負うに
至つたと
考えるが、この点につき、海外派兵をしないことをはつきりさせるため、
協定に留保を付する
考えはないか。
国民が納得しない海外派兵などしないことを法的に裏付けるため、
協定中にこれを明記することが必要ではないか。
協定第一条中に、日米
両国政府が合意すれば、第三国に対し、装備、資材、役務等を供与する旨を規定しているが、
インドシナヘも供与するのか。装備へ役務とは何か。若し
日本が
インドシナに関する
自由諸国の統一行動に参加を求められたらどうするか」等の
質問に対しましては、「自衛権の狭義の解釈には同感である。ただ
日本が攻撃を受けた場合、国連が
措置をとるまでの間、
日本は一般国際法の認める自衛権をも当然有するものと
考える。自衛権は国の生存権であ
つて、独立国として当然にする固有の権利である。
憲法第九条第一項で国権の
発動と武力行使を禁止しているのは、国際紛争解決の手段としてであ
つて、それ以外の場合ならいいわけであるが、同条第二項で、戦力と交戦権を否認しているから、如何なる場合にも戦力を以てする戦争はできないことになる。併し自衛権のためなら、それが国際法上認められる自衛権の限界内においてであれば、武力行使は許される。武力行使は必ずしも戦争になるとは限らない。自衛権の及ぶ範囲については、理論と実際とは違い、四辺海に囲まれる
日本は、陸続きの欧州諸国とは事情が違
つており、むつかしい問題であるが、他国の領土の中にまで追いかけることは、自衛権の範囲内ではなかろうと思う。
協定第一条中の規定は、
日本が米国から受けた援助のうち、不要にな
つたものを他国の使用に供するというのであ
つて、即ち米国と
MSA協定を結んでいる国にはこれを供与することができるわけであるが、この規定が適用されるのはずつと後のことである。この
協定は、
憲法上の規定に
従つて実施するのであるから、役務のうちに軍事的役務を含むがごとき心配はない。次に、この
協定は装備、資材等の援助を受けて、
日本の防衛力を強めるためのものであ
つて、海外派兵のごときを問題にする
協定ではない。海外派兵は夢想だもしないことであり、どこからも誘いをかけられたこともない。この問題は
日本政府がみずからきめることであ
つて、派兵をしないことを他国によ
つて保証してもらうべき筋合いのものではない。かように本
協定はこの問題と何ら
関係のないものであるが、
国民の間に不安を抱く向きもあるので、念のためその趣旨を
協定調印の際の挨拶のうちで述べたのである。それで十分だと思う。
従つてこの
協定に留保を付したり、このことを明記したりする必要があるとは
考えない。海外派兵は
国民が希望すれば別だが、
国民の多くはこれを欲しないであろうし、仮に
憲法上可能であ
つても、これはすべきことではない。さようなことは
政府は全然
考えていない。
日本に対して若し
インドシナについての統一行動への参加要求があ
つたら断わるほかはない。又
日本の国力がこれを許さない」との
答弁がありました。
又、「
日本にと
つては中ソとの
国交が
調整されないままに、
MSA協定によ
つて、米国との連繋が進む点に一つの不安がある。中ソとの
国交調整は積極的に進むべきではないか、
政府の
構想はどうか」との
質問に対し、「趣旨は同感であるが、中ソとの問題は、
日本だけの問題ではなく、世界の問題である。この問題が解決すれば、現在の国際緊張は殆んど解決されるであろう。
日本はこれによ
つて直接利益を受けるのであるが、問題の解決には時が必要である。解決方法としては、
日本だけの力でなく、集団的結合による国際的解決とか、中ソに対する第三国からの助言なども
考えられるが、問題は国際的空気が緩和することと、どういう方法で接触し、
交渉するかという点にあ
つて、今のところ具体的方策は持
つていない」との
答弁がありました。
又、「農産物買付
総額は幾らになるのか。買付価格と国内での売渡価格の開きから生ずる利得金はどう
処置するのか。来年度もMSA法による農産物の買付をするつもりか。贈与分の千万ドルに相当する円貨はどう使うのか」との
質問に対しては、「現在麦の市場価格は平均トン当り七十六、七ドルであるから、買付け
総額は予定の五千万ドル一ぱいにはならない。大体小麦六万トンに相当する金額が残ることになると思うが、この残額は小麦などの買付に用いることになるであろう。買付と売渡価格との差額は、すでにこれを予定して、食糧の輸入補給金の予算中に織込んである。来年度の小麦輸入量の
見通しは、作柄にもよることであるが、人口の自然増と粉食の増加等のため、国内の小麦の需要増加が予想されるので、平年度の平均輸入量百五十万トンを上廻り、大体昨年程度の輸入が必要となると思う。
従つて来年度もMSA法による買付は望ましく、これについては新たに先方と
交渉するわけである。贈与分三十六億円は、開発銀行を通じての融資に用いる方針であ
つて、今回は防衛産業のために使用することにきま
つているが、今後農産物の買付の際、贈与分が与えられる場合は、一般産業にも用い得るよう努力するつもりである」との
答弁でありました。その他の詳細は
会議録によ
つて御承知を願いたいと存じます。
委員会は四月二十七日質疑を了し、引続き討論に入りましたところ、先ず中田委員は、「社会党を代表して本件に反対の討論をするものである。第一に
MSA協定に浮彫りされた
政府の
外交政策は、曾
つて日独伊同盟が
我が国を破局の運命に導いたと同じ轍を踏む虞れが多分にある。
政府は
平和条約、日米安保条約によ
つて米国に追随し、遂に西欧陣営に踏み切
つた、対米一辺倒の危険な
吉田外交に強く反対する。第二に、MSA機構に入り込むのは、米国の世界政策に
我が国の運命を従属せしめることである。この
協定の根拠法たる相互安全保障法は、米国の利益を目的とするものである。即ちMS
協定は、米国が
日本をして中ソ
両国を牽制せしめんとするものであ
つて、これは戦争への道である。米国が極東において目指すのは、共産勢力を抑えるだけでなく、蒋政権を再び中国本土に返さんとするものである。我々は現在の米国の政策に反対し、真の
意味の親米政策を樹立せんことを希望するものである。第三に、この
協定は、平和と安全保障に対し個別的及び集団的安全保障を無条件に信奉し、新たな要素である原爆、水爆等の兵器の発展に何らの考慮を払
つていない。米国の要請のみによ
つてなされた自衛力の増強は、何ら
我が国の安全保障にはならない。第四に、この
協定は
憲法に違反し、且つ新たなる軍事義務を負
つている。それは
協定第八条によ
つても明らかである。又
政府は
MSA協定に照応して防衛
関係二
法案を提出した。それによれば、直接間接侵略に対する防衛任務を規定しているが、これは交戦権を想定しており、現行
憲法に違反することは明白である。又
協定第九条第二項の規定も何ら違憲性を阻却するものではない。第五に、援助とは名のみであ
つて、負担のみ多く、又、援助の受諾は
我が国経済の自立を危くし、
国民生活を根底より破壊する。これを要するに、米国の原爆、水爆の独占が破れた今日、MSAを受けて、対立する米ソ両陣営の一方につくことは、何ら
我が国の安全を保障するものではない。隣りに敵国を作らない自主中立こそ最良の安全である。今、
我が国のなすべきことは、未調印国との
国交を
調整し、
経済の自立体制を確立し、
国民生活の安定を計ることである」と述べられ、
次に、鹿島委員は、自由党を代表し、MSAの軍事援助を受ける要なしとか、米国に
日本が従属するとか、本
協定が
国民生活を圧迫し、
経済を困難に陥れるとかの反対論を反駁せられ、「
MSA協定が万一
成立しなか
つた場合には、
我が国が
政治経済上甚大な損害を受ける」旨を指摘して本件に賛成の意を表せられました。
次いで曾祢委員は、
日本社会党は、国連による国際平和と安全の
確保に期待し、地域的集団保障制度の必要を認める。そして
我が国の自衛力は、その基盤である
経済、社会秩序の確立が根本であると確信する。併し不平等な日米安保条約は根本的に改訂すべきであり、自衛力については、警察予備隊程度のものにとどめるべきことを
主張し、「
憲法を空文化し、
国民生活を圧迫する再軍備には
断固反対するものである。以上の観点よりMSA
関係諸
協定には反対である。一、一国防衛の基本方針は、自主独立の
立場において
国民の理解と納得の下に策定すべきものであるにかかわらず、
政府は何ら自主的な計画を持たずして、米国の要請に応じ、
憲法空文化の方法によ
つて防衛力の飛躍的増強と本格的再軍備を実行せんとしておる。我々は再軍備に反対する当然の帰結として、これと裏腹の
関係にある
MSA協定に反対するものである。二、
政府は長期防衛計画を明らかにするとの先の公約を無視し、且つ財政の長期
見通しを的確に把握することなくして、この
協定により再軍備に乗出さんとしているのは賛成できない。三、安保条約は、二国間の片務的な安全保障
協定であるが、今度の
協定は、二国間の共同防衛
協定であり、安保条約による軍事的義務以外は含まないという
政府の説明は納得ができない。かかる安保条約かち本
協定への推移は極めて重大な国策の変化を示しておる。又この
協定から、太平洋同盟条約、
東南アジア条約機構等に発展するのではないかとの疑点に対し、
政府が明確な説明を与えていないことも遺憾である。四、
アメリカとの共同防衛、自由世界の防衛能力に対する寄与並び心
日本の防衛力増強等の義務を規定する本
協定は、
憲法第九条に違反する疑が濃厚であるが、この点に関する
政府の
答弁は甚だあいまいである。五、次に本
協定自体は双務的安全保障条約であるから、理論上海外派兵への道が開かれていることは否定できない。然るに
政府がこれを明確に禁止する
措置を講じていないことは容認し得ない。六、顧問団の任務は
日本の自主独立を侵害する虞れがあると認められるが、
政府の
答弁は納得することができない。七、
経済援助については、仮に
政府の言うごとく若干の
経済援助とな
つていても、他面再軍備に要する厖大な経費を
考えると、財政
経済上の負担は差引き極めて重いものとなる。八、
最後に、対共産圏貿易の制限を、あらためて条約上の義務として認めたことは、
我が国経済自立のための
外交の本義にもとるものと思う。
以上の
理由によ
つて反対の意向を表明する」と述べられました。
梶原委員は、
緑風会多数の
意見を代表し、「
我が国は、自衛権に基き、その本然の姿に立ち帰らんとして、この援助を受けるものであり、防衛力増強は自主的に行われるものであり、又本
協定の諸般の義務は
憲法違反にはならないものであるから、本件に賛成である。ただ、
MSA協定による防衛力漸増は現
憲法で許される限界点であると思う」等の
意見を述べられました。
次に、高良委員は、
緑風会数名の
意見と婦人層並びに青少年の願望を代表して、「
アジアの危機と、
アメリカの
経済的破局を避けるため、人道的
立場に立
つて、本
協定に反対する義務を有するものと信ずる。国連憲章第二条において全世界が希求するごとく、平和と安全と正義は平和手段によるべきであ
つて、武力行使は厳に慎しむべきものである。然るに、この
協定は、自衛の名の下に
日本再武装を義務付けるものである。戦力を放棄した
日本国民が、軍隊であり戦力である陸海空軍を持つことは
憲法違反である。真に祖国自衛のためだけの防衛力は、国力に応じた警察予備隊を以て足れりとする。この
協定は多数国間の域外買付の名によ
つて戦略兵器の国際的基地化を図るものである。原、水爆戦の脅威を目前にして、人類を破滅から救うためには、国連憲章と
日本憲法の真精神に立帰らねばならない。そして
日本は、MSA援助を受けないで、平和に貢献する強い決意を持つ国となることが、
アメリカに対して真の友情であり、又
アジア諸国並びに共産陣営へ貢献し得るゆえんであると信ずる。
日本の自衛隊が米国にと
つて集団安全保障の大きな力となるであろうとの過大な期待を持たせることは、日米の真実な友情を損なう危険が強いので、本件に反対する」と述べられました。
最後に、鶴見委員は、改進党を代表し、「この
協定には多くの不安と不満があるが、戦後、自由を回復した
日本が、本
協定によ
つて自由諸国と協力し、世界
国家への考を持
つて国際連合の方向へ進まんとし、又建設的な道を歩まんとしているものであるから、これに賛成である。ただ、この際
政府に対し、本
協定の実施に当
つては、
日本の自主独立性を貫くよう遺憾なきを期するよう警告し、注意を促したい」との旨を述べられました。
これを以て討論を終結し、四件を一括して採決を行いましたところ、これら四件は
承認すべきものと多数を以て決定いたしました。
右、御
報告いたします。(
拍手)