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1954-04-23 第19回国会 参議院 本会議 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十三日(金曜日)    午後三時五十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程第三十八号   昭和二十九年四月二十三日    午前十時開議  第一 昭和二十六年度一般会計歳入歳出決算昭和二十六年度特別会計歳入歳出決算昭和二十六年度政府関係機関決算報告書委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  参事報告させます。    〔参事朗読〕  本日議員宮城タマヨ君外二十六名から委員会審査省略要求書を附して左の議案を提出した。  法務大臣検事総長に対する指揮権発動に関し内閣に警告するの決議案本日委員長から左の報告書提出した。  石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部を改正する法律案可決報告書  石油資源探鉱促進臨時措置法案可決報告書      ——————————
  4. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、お諮りいたします。  法務大臣検事総長に対する指揮権発動に関し内閣に警告するの決議案宮城タマヨ君外二十六名発議)  本案は、発議者から、委員会審査省略要求書提出されております。発議者要求通り委員会審査を省略し、直ちに本案審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて本案を議題といたします。これより発議者に対し、趣旨説明発言を許します。宮城タマヨ君。    〔宮城タマヨ登壇拍手
  6. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 先ず初めに決議案朗読いたします。   法務大臣検事総長に対する指揮権発動に関し内閣に警告するの決議案   検事総長自由党幹事長である国会議員逮捕請求許可の請訓をなしたのに対して、法務大臣が「法律的性格重要法案審議の現状に鑑み、特別例外的事情にある」との理由に基き指揮権発動してこれをおさえたことは、検察庁法第十四条の不当な運用と認める。   議員逮捕許諾法案審議関係は、国会の決すべき問題であつて政府今回の措置は、国民関心の的である被疑事実に対し、累次の言明に反して検察権行使を制約し、捜査を困難ならしめ、延いては国民疑惑を深め政治の信用を失墜せしめることとなる。本院はこれを極めて遺憾とする。   政府は、過ちを改め速やかに善後の措置をとるべきである。   右決議する。  以上であります。(拍手)  続いて提案趣旨を申述べます。検察庁法第十四条は、法務大臣指揮監督を規定したもので、「法務大臣は」、第四条、これは検察官職務を規定したものでございます。及び第六条、これは犯罪捜査を規定したものでございます。この「第四条及び第六条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」という条文でございます。法相が今回の処置をされたのは、事件法律的性格重要法案審議に鑑みてとあります。事件法律的性格というのは、具体的に一体何を言つておりますのかよくわかりませんが、恐らく法律上いろいろな問題点が残されておるというほどの意味かと思われます。確かに汚職事件なるものは法律上疑点のある問題ではございますけれども、すでに検察庁が二カ月以上に亘つて捜査を進めて、而も国会議員逮捕につきましては、特に慎重審議を重ねた結果、検察当局の一致した意見によつてすでに数人の国会議員に対して逮捕許諾請求をし、国会承認を得て逮捕なつたのでございます。そうして今、更に佐藤自由党幹事長逮捕許諾請求なつたものでございます。検察庁法第十四条の法務大臣指揮権発動について、政府政治的に干渉し、検察首脳部の総意による佐藤自由党幹事長逮捕許諾請求政治的理由で拒否したということは、明らかに司法権を侵害するものでございまして、(拍手)あの当時の新聞によりますというと、検事総長記者団との会見のときに、これで何もかも終つてしまつたと、捜査支障を来たしたことを歎息して語られておると報じられております。(拍手)これは憲政史上非常な異例でございまして、同時に今後誠に困つた悪例を残すものと言わねばなりません。(拍手)そのことは誠に遺憾に堪えません。かかる捜査支障を来たすような措置をとる以上は、もつと明白な理由がなければならないと思います。(拍手事件法律的性格というような、あいまいな表現では国民疑惑を深めるばかりでございますし、又重要法案審議に鑑みてというのは、若し国政の運営上直ちにその人の必要がある場合は、国会逮捕許諾請求を拒否すべきであつて、そういう場合に備えて、国会にはその権限が与えられておるにもかかわらず、今度初めて政府の方的な見解で検察庁逮捕請求を抑えることになりましたのは、どうも納得ができないのでございます。(拍手)この検察庁法第十四条は、検察当局の行過ぎを是正する場合もつまり純粋に人権擁護意味をも含めた捜査技術、又は実務乃至刑事政策上の観点から適用すべきものと私は解釈しております。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)今回のように、政府又は与党の都合のためにこれを悪用し、捜査支障を来たすような重大結果をもたらせ、全国民に暗い陰を投げつけたこの措置は、政府の大きい過ちたと言いたいのでございます。(拍手)  然るに、昨日本会議場におきまして、総理のこの点についての御答弁を伺つてみましても、身柄の拘束をしないで捜査の実を挙げることこそ、刑事訴訟法精神を生かす妙味であるというような、普通の意味のことのお話がございました。今回のこの重大問題に対しまして何らの反省の色もないばかりか、当然であるというような申し分と私は承知いたしましたので、非常に心淋しい気がいたしました。(拍手検察陣では命がけで職務に当つておられる。検事総長を初めといたしまして、その指揮の下に、東京を中心に拡がつております今回の汚職事件を固めるために、如何に多くの検察官寝食を忘れてなどという生やさしい言葉では到底言い尽されないほどの苦心をし、苦労をいたして全く検察史上前例の少いこの大事件に、ここ二カ月以上も床について寝ることもなさないで、全身全心を以て捜査に当つておるのでございまして、中には職に倒れた者もございます。その家族で犠牲になつた者もございます。それなればこそ、今日国民司法司直を全面的に信頼して、一日も早く事の真相を究明してほしいと願つております。その矢先に、政府の行いましたこの青天霹靂の事実は、国民ひとしく唖然としておるのでございます。(拍手)  過般本院に、綱紀粛正特別委員会設置に対し緊急動議提出されましたあのときに、緑風会は臭いものに蓋をするのではなく、司直の手によつて徹底的究明を迅速に断行せられ、その間司直活動に対しまして何ら外部圧力が加えられないように切望もし、監視もして行くという建前から、参議院綱紀粛正特別委員会設置をなすことについて反対いたしたのでございました。併しその後、私なども法務委員といたしまして、常に司法部に対し外部からの政治的圧力がかからないかと心配しつつ、又監視を怠らなかつたつもりでございましたが、今日この結果を見るに至りましては全く国民に対して申訳ないと深く詫びるのでございます。(拍手)  最後に、この際特に政府に要望したいことは、汚職事件真相究明が日遅れると、それだけ国民疑惑を深めることになり、政治に対する信頼が失墜して行くことでございますことは勿論ですが、私は母の立場にある者、又広い意味教育立場を守つております婦人たちが、如何に今日の悪世相に母心を痛めすり減らしながら、なお熱望しておりますことは、一日も早く日本をきれいなものにしてほしいという願い、(「その通りだ」と呼ぶ者あり、拍手)そうして明日の日本を背負つてつて行きつつあります大切な国家の子供らのために、二度と再びこのような穢らわしい事件を再発しないように、今度こそ根こそぎ洗い清めて最善の措置を講じてほしいという切なる、実に切なる大きい願いが日本津々浦々まで母の願望として叫ばれています。一日も早く日本をきれいな明朗な正しいものにするために、先ず早く捜査を軌道に乗せて一刻も早く結末を示してほしいのでございます。  即ち今回の政府のとつた措置を早急に取消してもらいたい。早く過ちを改めて、検察側佐藤自由党幹事長逮捕許諾請求国会提出されますように、政府の速かなる措置要求いたしまして、この決議案に各議員の御賛成をお願い申上げます。(拍手
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) 本案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。菊川孝夫君。    〔菊川孝夫登壇拍手
  8. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私は社会党第四控室を代表いたしまして、只今提案せられました法務大臣検事総長に対する指揮権発動に関し内閣に警告するの決議案に対しまして全面的に賛成するの意見を申述べます。(拍手)  犬養法務大臣検察庁法第十四条を発動して、自由党幹事長佐藤榮作氏の逮捕許諾要求を抑えまして、造船疑獄捜査に重大なる支障を与え、外、国民には重大なる疑惑を高めましたことにつきましては、行政権不当干渉であつて日本司法史上に大汚点を印したものと言わなければなりません。(拍手)而もこの不当干渉は、犬養法務大臣の心から出たものではなくて、吉田総理とその側近及び緒方総理らが、犬養法相圧力をかけて強要して、この強権発動を行わせたも即であることは、犬養氏が強権発動後、さすがに良心呵責に耐えかねて、の日辞表提出したことによつて明らかなところであります。(拍手木堂氏の御曹子として育ち、白樺派の文士として一片のヒユーマニズムを持ち合わせておつた犬養氏としては、政界の孤児となつて世人から忘れ去られようとしていたときに、吉田総理から拾われて、とにかく柄にもない法務大臣国警担当国務大臣として脚光を浴びるに至つた、その吉田総理に対して旧式的な恩義、これと、検察陣寝食を忘れ、社会正義確立のために敢闘する真摯な態度を連日、百日有余に亘つて見せつけられて来て、この板ばさみとなつて、遂に政治的な自殺的行為とも見られるべき辞表提出行なつた。この心境は一応我々も察せられないことはないのであります。この一事が示すように、余ほどの悪人か政治的感覚の愚鈍なものでない限りは、今回のごとき十四条発動はなし得ないのであります。(拍手)  佐藤幹事長逮捕要求の問題は、すでに明らかなごとく、飯野海運の俣野社長の自供或いは押収された証拠書類によつて、一千万円を収受した事実ははつきりしていて、それが造船利子補給法の成立をめぐつての収賄になるのであるか、単なる政党献金かが、ただ単にその一点だけが弁明の余地があるだけで、詭弁を弄して逃れる余地があるだけでありまして、検察庁法第十四条は、このようなはつきりした場合に適用して抑えるために設けられた条項ではないのでありまして、検察当局が不当な人権蹂躙を行う傾向がある場合即ち検察フアッシヨの声がやかましくなつて来たような場合に、政治的調整を加えることを認めたものであると言わなければなりません。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)又外部圧力に屈しまして検察当局が正当なる検察権発動を行い得なかつた場合、お前もつとしつかりやれといつて指揮するために設けられた条項でありまして、一党の、而も第一党の、与党幹事長といたしまして、悪銭を身に着けた男を逮捕することを待てと言つて抑えるために設けられた条項でないことは、はつきりしておると思うのであります。(拍手)今次の造船疑獄日殖保全等詐欺漢の上前をはねた汚職事件については、検察フアツシヨの声を聞くどころか、これはシーメンス事件以来の大疑獄として、国民憤激頂点に達して、むしろ検察側の弱腰を歯がゆがつているのであります。国民は積極的に、検察当局が秋霜烈日の検察権発動を待望しておると確信いたします。この問題ほど、とにかく検察陣も、しつかりやれ、政界を洗わなければいかんというふうな輿論が高まり、これが統一されたことはないと思うのであります。少くとも政府の一部の人たちでも、自由党の良識ある人たちさえも、この際は徹底的に洗わなければならんと言つているのだ。ただ吉田さんとその側近のみが、必死になつてこれを隠蔽しよう、そうして自己政権の保持に汲々としているのみなのであります。検察当局の今日までの配慮を見まするに、或いは池田政調会長、その他の政治的重要な地位にある連中を取調べるに当つては、まさに共産党が街頭連絡をやつたあの故知に倣いまして、絶対に新聞記者にもわからないように、こつそりと任意出頭を求めて調査をいたしておる。これだけの配慮がなされて、人権蹂躙等の事実は絶対ないのであります。又検察当局の連日に亘る敢闘の美談は数限りなくあるのであります。一新聞記者は、深更を過ぎて自宅に帰つた若い検事が、奥さんから十円銅貨を二つもらつて、手拭をさげて銭湯へ行く姿、ところがこういう姿において、謙虚な生活を続けながら、連日連夜ガス風呂に入つて、そうして美妓を侍らせ、悪銭によつて遊興に耽つていた連中を追及しようという態度に出ている、こういう検察陣に対しまして、不当に、最後頂点に達しようとした、まさに野球で言えば、九回戦に入つたときに試合中止を命じようとするがごときは、言語道断と言わなければなりません。而もそれを弱い犬養氏に強要して、お前がやめるか、おれの恩誼を忘れたかと言つて、大上段に振りかぶつて、こういう無茶な行為をやらした責任は、まさに日本憲政史上司法史上一大汚点を残したものと言わなければなりません。(拍手従つてこの文面に現われているところは、参議院特殊性に鑑みまして、極めて控え目に、穏健に表現されておりまするけれども、その紙背を流れるものは、速かにあなた方の引責辞職を迫つていることが流れているということを忘れてはならないと思う。(拍手司法権独立に対する輿論の動向は、大津事件を髣髴とさせるものがあると思うのであります。佐藤を衝け、池田を挙げよ、緒方を追及せよという声が、今や全国津々浦々に澎湃として盛り上つていることを見逃してはなりません。(拍手吉田内閣五カ年有余の治績で取上げられる最も大きなものの一つは、汚職疑獄事件を続発せしめ、それを刑訴法の盲点を利用して隠蔽したことである。まさに、今や昭和田沼時代言つても言い過ぎではないと思うのであります。今こそ参議院は、これに対しまして重大警告を発する、まさに参議院始つて以来ないという重大警告でなければなりません。そういうふうに政府としても受取るべきであると私は信じます。  特に遺憾なことには、吉田内閣は骨の膸まで腐つているのじやないかということを国民が疑つている。三代に亘る法務大臣のうち、大橋武夫君が二重煙突事件疑惑を受け、次に木村篤太郎君は霊友会事件疑惑を受け、更に又犬養君は、赤坂の待合饅頭を買いに行つた待合饅頭買事件疑惑を受けているのでありまして、犬養氏は、最後良心呵責に耐えかねて辞職したのであります。かくのごとき事態におきまして、参議院吉田内閣一大警告を突き付け、ここに大反省を求めていることを銘記しなければならんと思うのでありまして、又それは参議院の使命であると確信いたしまして、ここに私は賛成した次第なのであります。(拍手)     —————————————
  9. 河井彌八

    議長河井彌八君) 永井純一郎君。    〔永井純一郎登壇拍手
  10. 永井純一郎

    永井純一郎君 只今上程になりました法務大臣検事総長に対する指揮権発動に関し内閣に警告するの決議案に対しまして、私は日本社会党第二控室を代表いたしましてこれに賛成をいたします。  今や全国民は、吉田内閣退陣を今日か明日かと真剣な気持で切望をいたしまして、国会国民のすべての眼が集中いたしておりまするときに、総理大臣は、殆んど大磯の私邸等引籠つて保守合同構想等を練つたり、側近なる者を呼び付けまして、重要法案を無理押しに押通さんとする態度を示しておりまするが、まさにこのことは昨日、本会議におきまして平林太一氏が吉田総理態度を弾劾されまして、吉田総理は正気であるのかという質問をされたのでありましたが、私はまさに、これは国民の声であると感じました。(拍手)今日ここに参議院が党派を超えまして、内閣を糾弾する決議案を可決しようといたしますることは、国会始つて以来の出来事であります。吉田総理が、若し一片良心、良識、而して政治家としての責任感がありまするならば、深くこのことを反省しなければならないと私は考えます。  即ち自由党佐藤幹事長逮捕要求が決定するや、犬養法相をして古今未曾有とも言うべき検察指揮権を濫用し、或いは悪用せしめたのであります。この結果は、犬養君は懊悩の末、詰腹を切らされる結果となつたのであります。一党の、而も与党幹事長破廉恥罪の汚名によつて検察の手によつて逮捕要求せられるという事態は、若し正常なる政治道義の持主ならば、速かにその内閣を総辞職いたしまして、責を天下に謝すべきが当然であることは申すまでもないところであると考える。(拍手)然るにこの当然なる道義感さえすでに吉田総理自身喪失しているのであります。吉田総理はしばしば、重要法案国会審議中であるからという理由を繰返し述べられましたが、この決議案が当院で可決されるという意義は誠に私は重大なものであつて吉田内閣はもはや諸種の重要法案提案責任者としての地位国民が否認をしたものと認められなければならないと信ずるのであります。(拍手)而して又当参議院においてこの決議案が可決される意義が極めて重大であると考えられるところの他の一つ意義は、参議院においては、内閣不信任案提出が事実上できないのであるから、この決議案が通過することは、参議院における内閣不信任意思表示をも私どもは含むものであると考えるものであります。吉田総理はたびたび汚職の事実が明らかになれば責任をとると言つて来たが、与党幹事長並びに政調会長等被疑事実が明確になり、検察当局より最後的な要求が出されるに至つた今日におきましては、もはや政治的責任を明らかにすべき段階であることは言うまでもない自明の理であるにもかかわりませず、言を左右にして政権の座に居坐ろうとする醜いダニのごとき姿は、まさに傲岸というよりも哀れな姿と国民の眼には見られるのであります。(拍手)即ち今や国民が、数限りなき汚職を隠蔽し、権力を以て検察権圧力を加え、而して責任政治の何たるかを弁えないところの吉田内閣のこの態度に対しましては、猛然として憤激の声を挙げ、その早急なる退陣要求するのは当然のことであると考えます。(拍手)  而して検察権政治的中立性が常に厳正に維持されなければならないことは論を待たないところであります。然るが故に百数十日に亘る基礎捜査の結果、更に数十時間の検察陣首脳部会議によつて佐藤幹事長逮捕すべしとの結論を出したものと確信します。然るに法と正義行使に当るべき法務大臣が、一党の利益と政権維持のため、検察権の厳正なる中立性を侵害し、法の権威と国民信頼を失墜せしめました吉田内閣総理大臣のその罪は、実に私は万死に値いすると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)然るに法務大臣をしてこれをなさしめた吉田内閣総理大臣が、恬として、昨日も本会議に見られるごとく、恥じるところなく且つ良心の一かけらをも示さないというに至つては、まさに狂人乱心の沙汰と言わざるを得ません。(拍手)かかる法の中立性をみずから破壊して憚らざる内閣が、一方におきましては教育政治的中立性理由として、その自党の政治的野望を満たさんとして来ているのでありまするが、この内閣性格からしてこの教育政治的中立なるものは悪魔のごとき陰謀に満ちたものであることは、もはや覆うべくもない事実であると申さなければなりません。(拍手)古い歴史を繙くほどもなく、権力と金権が結び付くところ、そこにはもはや民主政治はありません。このことは、政治を腐敗し、国家の大道を誤るものであることは、今更説くまでもないところであると私は確信します。ましてや、漸くその緒につきました日本民主主義は、まさに今や根抵から崩壊の危機に直面していると言わざるを得ないのであります。私どもは、この決議案に示されている精神により、断々乎として吉田内閣の不正と不遜を追及してやみません。(拍手)而してこの決議案は、ただ単に従来のごとき決議案として取扱うものではなく、吉田汚職内閣必殺の破邪の剣たらんことを固く期待いたしまして、私の賛成討論とする次第であります。(拍手)   —————————————
  11. 河井彌八

    議長河井彌八君) 八木幸吉君。    〔八木幸吉登壇拍手
  12. 八木幸吉

    八木幸吉君 私は、只今上程決議案に対し賛成の意を表し、(拍手)改進党を代表して若干の意見を申述べたいと存じます。  第一に、法務大臣は、逮捕承認しなかつた理由として、重要法案審議の状況を挙げておられますが、一体何がために法案審議が遅れたのであるか。誠にお気の毒ではありましたが、御病気による総理大臣長期欠勤と、汚職問題に狂奔する閣僚各位委員会欠席が大なる原因でありまして、(拍手)その責任は、一にかかつて内閣にありと申さなければなりません。(拍手)  第二は、重要法案逮捕との関係でありますが、一体国会議員逮捕について、これに承認を与えるか否かをきめるのは、国会自身でありまして、若し与党幹事長逮捕法案審議の上に支障を来たすと認めるならば、国会逮捕を拒否するだけのことであつて、何ら法務大臣逮捕請求手続を拒否するの理由はないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)  第三に、法務大臣は、逮捕は、政局に重大な影響ありと考えておられるようでありますが、併しながら問題の要点は逮捕そのものではなくして、逮捕請求せらるるがごとき犯罪の容疑が、与党幹事長にかかつているという事実そのものにあるのであります。(拍手)この事実に対して現内閣は深く反省をしなければならんと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)  第四に、法務大臣指揮権発動に関する昨日の総理の御答弁を伺つてみましても、政府法律さえ許せばどんなことでもやる、免れて恥なしという態度であります。併しながら、法律社会秩序最低限度を定めたものでありまして、権力地位にある者、指導的立場に立つ者は、もつと高い道徳的基準によつて行動をいたさなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)実に道義の高揚こそはすべての政策の根本であり、祖国再建の鍵はここにあると申さなければなりません。(拍手疑獄発生以来、各言論機関は、現内閣に対し退陣を勧告いたしております。昨日の朝日新聞の社説のごときは、「超党派的に内閣退陣を迫れ、これ国民の声である」とさえ言つておるのであります。(拍手)又、与党内部においても、幹事会は「総辞職すべし」という意見が多数であつたと承わつております。総理は深く反省しなければならんと思います。  次に検察当局に関する問題でありますが、今回の逮捕請求は、数カ月に亘り全身を打込んだ捜査の結果でありまして、今これが拒否せられたことは、検察当局の士気を沮喪せしめ、捜査に困難を来たし、検察の公正を害したるや、論を待たないのであります。御承知の通り検察庁法第四条は、検察官職務として、裁判所に対し法の正当なる適用を請求することを規定いたしております。検察官が、十分慎重なる捜査の結果、証拠を固め、逮捕許諾請求を申請したことに対し、法務大臣指揮権発動してこれを拒否いたしましたことは、内閣職務として法律を誠実に執行することを規定した憲法第七十三条の精神に反するものでありまして、今回の処置が公正ならざることは犬養氏の辞職が雄弁にこれを物語つております。(「その通り」と呼ぶ者あり)  今や国民は、社会主義実行者たる検察当局活動によつて徹底的に真相が究明せられんことを要求しております。これが政府の不当なる圧迫によつて阻止せられたることに対して、国民憤激は澎湃たるものがあるのであります。(拍手)この際、現内閣のとるべき道は、汚職問題の解決を遷延して、その延命策を講ずることではなくして、一日も速かに疑獄真相を明らかにするため、検察庁逮捕請求許諾の申請を許可し、国会に向つてその手続をとられんことであります。(拍手)実にこの決議案こそは、国民の要望に応え、現内閣に猛省を促す、誠に適切且つ緊要なるものでありまして、私は全面的にこれに賛意を表し、討論を終るものであります。(拍手)     —————————————
  13. 河井彌八

    議長河井彌八君) 鈴木一君。    〔鈴木一君登壇拍手
  14. 鈴木一

    ○鈴木一君 私は無所属クラブを代表いたしまして、本決議案賛成いたします。  我々は、去る十六国会におきまして成立を見ました外航船舶建造融資利子補給法の一部を改正する法律は、業界、官界並びに政府与党等の共同謀議による、最も悪質なる、国民の血税を盗用する法律であり、その背後には一大疑獄が潜在しておることを予知いたしまして、特に犬養法相に対しては、法相としての特殊な立場より、党利にかかわることなく、これが積極的究明をなされんことを強く要求すると共に、我々の手でも、内々真相の調査に当つてつたのであります。この間の事情につきましては、我が会派の代表たる木村議員の、当時の予算委員会並びに本会議における質疑並びに討論の記録によつて明らかでありますが、犬養法相は何故かその職務を怠り、何らの調査もいたさぬのみならず、とかく噂の高い関係業者と料亭に出入りし、法相としてあるまじき行動をとつたのであります。然るにその後数カ月を出でずして悪事露見し、疑獄は表面化し、その醜悪極まりない全貌が次々と明るみに出るようになつたことは、我々の全く遺憾とするところであります。我々は、かくのごとき、国会を舞台として多数の議員が、業界官界と結託し、立法権を悪用し、以て生じた汚職疑獄については、国会の権威を保持し、又、国会に対する国民大衆の負託に応えるためにも、国会みずからがその認められたる、機能を発動し、みずからの手で積極的に問題の究明をいたすのが当然の任務と思料し、本国会の冒頭におきまして綱紀粛正に関する特別委員会の設置を強く要望したのでありますが、すでに司直の手により取調べが行われておるのであるから、一応これに任せ、その成行きを冷静且つ厳粛に見守ると共に、万一にも司法権に対し政治的圧力を加えるがごとき事態に立ち至つた場合には、国会の権威にかけても断固たる措置をとるべきであるとの意見が多数でありましたので、不本意ながら止むなくこれに従い、今日に及んだ次第であります。而して、その後、検察庁関係官の勇気と正義により捜査が進展し、今やまさに問題の核心たる自由党佐藤幹事長逮捕許諾請求となり、政府として重大決意の止むなき段階に到達するや、突如として検察庁法第十四条を悪用し、法相指揮権発動し、重要法案審議等、良識を以てしては到底考えも及ばない屁理窟をこね廻して、我が憲政史上未だ曾つてない、神聖なる司法権に対し、政治的干渉をあえてし、検察庁捜査を実質的に阻止したのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)  吉田首相は、昨日の本会議における同僚議員の質問に対しまして、逮捕国家的見地より困るが、捜査はあくまで継続するのであるから、司法権不当干渉ではないと答弁しております。この種、大規模な而も複雑な汚職事件捜査のためには、関係容疑者を同時に逮捕し、外部との交通を遮断しなければ、証拠は隠滅され、到底、事の真相の究明ができないことは、一般の常識であつて、容疑者の同時逮捕を不可能に陥れておいて、捜査は継続してもろうなどというがごときは、全くの詭弁であつて検察庁に対し正しい捜査ができないような不当な干渉圧迫をし、事をうやむやのうちに葬ろうとする、最も悪辣なる政治的陰謀と申すよりほかありません。(拍手)一国の首相の言動は、今や街の三百代言以下の低劣な言動に堕したのであります。又法相検事総長に対する指揮権は、検察フアツシヨとか、或いは検察行政が甚だしく公正を欠くがごとき場合にのみ、即ち特殊なケースにのみ発動すべきものであつて、このたびのごとき国家的見地からしても検察庁に課せられた当然の任務、即ち議会政治民主政治の確立と堕落防止のためにも、又社会秩序の維持のためにも最も重点をおき、全力を挙げて捜査すべき重大任務の遂行を、万人が納得しない方法を以て妨害、阻止の挙に出でたことは、これ明らかに指揮権の運用であることは、世の識者の見解が殆んど一致しているところでありますから、改めて繰返しません。  吉田首相は昨日、本議場において総辞職の勧告に対して人心未だ我を去らずと申されましたが、吉田首相が国民過半の信頼を博したのは、過ぐる昭和二十二年の総選挙において僅少の差で社会党に敗れた与党自由党が、総裁たる吉田首相の意思により飽くまでも選挙の結果たる民意を尊重し、不明朗な多数派工作をせず、きれいさつぱりと政権社会党に渡したことは、国民の間でその政治立場の如何にかかわらず「吉田のやり方はフエア・プレーだ、さすが吉田民主政治のルールを心得ていると、人心を引きつけ、国民信頼をかち得たのでありますが、然るにその後長く政権の座に坐るに及び政権に対する異常な執念をますます強め、国民信頼を全く裏切り、やることなすこと、筋の通らない議会政治否認、憲法無視の横車を多数の暴力で押しまくつて今日に及んだのであります。(拍手)  このたびの造船疑獄並びにその他の数々の汚職事件には国民ひとしく心を暗くし、心底より憤りを感じ、政治に対して深い疑惑と不信の意を表明して、司法権の独立と神聖を最後の頼りとし、真相の徹底的究明をこい願うと共に、かかる汚れ切つた内閣が、一日も早く退陣せられんことを切望していることは明々白々の事実であります。この国民の声に耳もかさず目をそむけて、厚かましくも人心未だ我を去らずと強弁して、司法権を弾圧し、我が国、憲政史上に、かの東条英機と何ら変ることなき大汚点を残してまで、なお居坐らんと策するのは、一体如何なる理由に基くものであるか。我々はここで曾つての議会政治に対する吉田首相の良心は、今いずこにありやと反問せざるを得ないのであります。我々の常識を以てしては、首相はもはや、責任観念と法に優先する道義感を全く喪失いたしました異状性格者であるか、或いは又首相みずからが、この疑獄関係あるか、或いは又国外の何者かからの強い要請と拘束に基くものか、これらのいずれかであるとしか考えられないのであります。若しも第三であるとするならば、これが敗戦の深刻な現実であるとして、その事実を国民に包み隠しなく告ぐべきであると思うのであります。この際、政府並びに与党に深く反省してもらわなければならないことは、憲法の予期している議会政治は、事態がここまで立至る前に、近代的政党内閣制における良識に基いて内閣の進退、政党の動向が自律的になさるべきことを要求していることであります。これなくして議会政治の正しい運営はあり得ないと同時に、他方においては国民輿論が、政局の変動を規定する慣行が確立されなければならないことであります。検察当局の一挙手一投足により政局の動向が決せられるがごとき今日の事態は、決して健全な姿ということができないのであります。このたびの法務大臣検事総長に対する指揮権発動は、その行使に当つた犬養法相が、世論には勝てず遂に辞任したのであります。このこと自体、法相が決して真の良心指揮権行使と信じ得ないことを証明するものと言わねばならない。従つてこの事実は、端的に今回の指揮権行使が如何に合理性のないものであるかを立証するものであります。  いずれにしてもこのたびの法務大臣検事総長に対する指揮権発動は、三権分立の法治国家の基礎を根柢より破壊するものであり、又先に決定した参議院の意思を無視するのみならず、我が国が広く内外の威信を失うものであることを強調し、速かに指揮権発動を撤回し、内閣は総辞職すべきことを勧告し以て本決議案賛成するものであります。(拍手
  15. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本決議案の採決をいたします。本決議案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  16. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よつて決議案は可決せられました。(拍手)      ——————————
  17. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、昭和二十六年度一般会計歳入歳出決算昭和二十六年度特別会計歳入歳出決算昭和二十六年度政府関係機関決算報告書を議題といたします。    〔「何だ何だ」「副総理返事しろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
  18. 河井彌八

    議長河井彌八君) 静粛に願います。只今、日程第一に入りましたがこれは取消しまして、この際政府から発言があるそうでありますから発言を許します。緒方国務大臣。    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  19. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 犬養法務大臣が今回とりました検察庁法第十四条による指揮権発動は、異例の措置ではありまするが、国政運用上、特に重要法案の通過を期するために、止むを得ないところとして、法によつてつたものでありますが、只今決議されました院議に対しましては、謹んで承わります。(拍手、「進行々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  20. 河井彌八

    議長河井彌八君) 静粛に願います。      ——————————
  21. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、昭和二十六年度一般会計歳入歳出決算昭和二十六年度特別会計歳入歳出決算昭和二十六年度政府関係機関決算報告書を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。決算委員長小林亦治君。    〔小林亦治君登壇拍手
  22. 小林亦治

    ○小林亦治君 只今議題となりました昭和二十六年度の一般会計並びに特別会計及び政府関係機関決算報告書につきまして決算委員会における審議の経過の概要と、その到達したる所見を御報告いたします。  本決算は第十五国会提出されたのでありますが、漸くその審議を終えたものであります。先ず一般会計について御報告いたしますと、歳入決算額は八千九百五十四億余万円で、歳入予算額と比較いたしますと、千十七億余万円を増加しております。歳出予算額は七千九百三十七億余万円で、これに前年度からの繰越金額四百二十九億余万円を加えますと八千三百六十七億余万円となり、このうちから支出額七千四百九十八億余万円及び翌年度への繰越金額七百三十一億余万円を差引きますと、百三十六億余万円の不用額を生じております。  次に、特別会計の数は三十四でありまして、各特別会計の決算額は歳入決算額一兆四千億余万円、歳出決算額一兆二千七百五十億余万円であります。次に、政府関係機関の数は十九でありまして、各機関の決算額の合計は収入決算額五千九百四十五億余万円、支出決算額は四千四百七十九億余万円であります。  以上が決算の大要でありますがこれらに関する詳細は決算書類についてお調べを願います。次に決算に関する審議の結果は、会計検査院が指摘しております不当事項につきましては、おおむね当委員会とその見解を同じういたしております。この不当事項を除くその他の決算事項については別に異議はございません。併しながら国の予算並びにその決算は、そもそも議会制度が生まれるに至つた最大の機縁となつたのみならず、議会制度そのものの中に国の財政を処理するという作業こそ、国民がその代表に負託した最大の権能であり、財政民主主義の確立こそ我々国民代表にとつて最大の義務であることに鑑みまして、この決算報告に当り、一般の世論を背景に、決算委員会が集約した結論を政府に対し国民の名においてこの際一大警告を与え、以てその実現を迫ると同時に、この国会の良識ある各位にこれが御協力を願いたいと存ずる次第でございます。  その第一は、国庫補助金に関するもの、第二は、懲戒処分の励行に関するもの、第三は、会計検査院の拡大強化の点であります。先ず補助金でありますが、政府から補助金負担金その他の名義を以て昭和二十六年度中に地方公共団体とか、組合などに交付した金額は、地方財政交付金を除いて総計千三百余億円の巨額に上つております。そのうち不当事項として会計検査院から指摘せられ、補助金の返還又は減額を要するものとされた金額は総額三億円以上に上り、農林省を筆頭に建設省、運輸省、厚生省、文部省その他これらの合計は五百件になつており、全く驚くべき状況にあります。  当委員会におきましては特に小委員会を設けて補助金問題につき、かくのごとき不当事項の発生する原因並びにその対策につき鋭意検討を重ねました結果、審査報告書に記載されておる通り六項目の結論が出ております。これらの不当事項の殆んど全部が災害復旧その他の土木建築工事に関するものでありますが、先ず補助申請に当つて甚だしい水増しがなされておつたり、調査不十分であつたり、事実に反する設計をしておるものが多い。これらの書類は府県知事を経由することになつておりますが、実際は単に素通りであり、実態に立入つて調査をしていないのが通常であります。主務省の査定も又おおむね机上査定であつて現地調査が励行されておりません。更に工事施行中における指導監督を厳正に行うべきであるが、町村や組合などにはその任に値いするところの技術者はおらない。府県知事はこれらの指導監督を主務大臣より委任されておりながら実際はこれをやつておらない。ここに幾多の事例がありますが、それらを省略することにし、災害の水増し申請が後を断たないことは、地方財政の窮乏にもその大きな原因がありましようが、何よりも国家の支出を司り、事業を指導監督する立場政府の怠慢と無責任が追及せられなければなりません。併し、一面災害を待つてつたり、災害があつたのを喜んだり、或いは災害予算を大幅に獲得したるものを称讃し、或いは英雄にあがめる弊風のあることも事実であります。この乱脈を極めておる実情を打開するためにも、前叙の小委員会の結論六項目は、まさにその抜本策として直ちにこれが具体化に努めるべきものであります。特に又水道行政が厚生、建設両省の共管になつておる。いわゆる二本建行政のまずさに至つては、もはや改めて指摘の要のないほど批難せられておる。これが速かなる一元化を断行すべきものであることを断言しておきます。  第二の問題は、懲戒処分の励行に関する問題であります。会計検査院の検査報告に指摘されておる不当事項は、年々急激に累増して、昭和二十六年度のごときは約千二百件に近くなつており、実に慨歎に堪えざるところでありますが、この点については別途懲戒処分の適正励行に関する決議案提出いたしておるので、その際に所見並びに対策等について明らかにいたしたいと存じます。  第三の問題は、会計検査院の権限の強化拡充であります。これが今日の情勢に照してまさに急務であり、喫緊の必要であることは常々当委員全体が異口同音に唱えておるところであります。今日の検査院の陣容は旧憲法時代に比べたならば、かなりの強化を見ておるのではありますが、一般会計一兆円の予算の中に検査院の予算の占める割合は、驚くなかれ僅かに三億九千万円であり、千分の四にも足りないのであります。国の三つの会計約三兆円近い財政の収支を検査するに、かかる貧弱な陣容なるが故に、その検査も全くいたし方なく、多くは書面検査であつて、実地検査を行なつた個所の割合は全国平均三割弱であります。農林省の補助事業をここに例にとりますと、二十六年度において工事現場四万件以上のうち実地検査をしたものは二千余で、その割合僅かに六%弱であります。これにより多数の不当事実を発見し、国庫補助を減額せしめた金額は一億三千余万円に上るのでありまして、これが全国各会計関係者に与えた精神上の影響と効果は、けだし測り知るべからざる良結果を収めたものと思われます。この一端の実物教訓に照しても、政府は会計検査院の検査能力の拡大と具体的権限の強化について、格段の考慮を払う必要今日より大なるはありません。  決算委員会は、慎重審議の結果、多数を以て以上の通り議決いたしました。但し討論にあたつて、次のごとき意見を述べられましたので、その要点を御紹介しますれば、日本社会党第四控室を代表する岡三郎委員から、「不当事項は年々増加するのみならず、それによると国損の回収も緩慢であり、懲戒処分も極めて軽い、これでは国会の警告を無視するも甚だしいものがあり、この決算は承認しがたい」という発言がありました。自由党を代表する谷口弥三郎委員からは、「不当事項の減少に努めること、職員の研修につとめること、懲戒を厳正にすること、これらを要望するが、この決算報告の議決には賛成する、水道行政の一元化はまさに急務である」との発言がございました。次に緑風会の島村軍次委員は、「この決算報告承認する、但し終戦後の官紀の弛緩に対し抜本策を樹てられたい、会計検査院の機構の拡充が必要であり、懲戒処分の厳正励行に関し対策の検討を希望する」との発言がなされ、又日本社会党第二控室を代表して山田節男委員は、「不当事項の多いことは官紀の弛緩、予算執行の放漫によるもので、これらを是正せしめ、政府を鞭撻する意味で、この際、涙を呑んで決算報告承認には一応反対しておこう、」こういう御発言がなされた。更に無所属クラブを代表した平林太一委員からは、「不当事項は累年増加し、改善の実情が更に見えない。この際行政機関の惰性、悪習慣を打破させるためにも、この決算報告には承認を与えかねる」との意見が述べられ、最後に改進党を代表せられた菊田七平委員から、「終戦後の混乱でも、すでに平常に帰した今日、なお不当事項の累増を歎き、政府反省を促し、不当事項の根絶を期するため、この決算報告に不承認である」との発言のあつたことを御報告いたします。  当委員会は付託されたこの二十六年度の決算審査に力を注ぎますと同時に、なお幾多の重要問題について審議を進めました。かの国鉄会館及びこれに関連する民衆駅の問題、外郭諸団体の問題等について、全国各地にその実態調査から、国鉄当局に対し随時必要な示唆を与えましたが、一方国鉄当局においても部内にそれぞれ調査委員会を設けて、目下これが是正改善策を検討中であり、近くその結論に達せんとする状況にもあるので、更にこれが審議を重ねる予定でございます。造船汚職の問題についても、国費の使途を適切且つ明朗ならしめんとする見地から、すでにその事情の聴取を開始いたしております。又、食糧管理特別会計に関しては、二十六年度の検査報告中に、麻袋問題でその氷山の一角を現わしておりますが、二十七年度においては、ビルマ米、黄変米、イラクの大麦、パキスタンの米、再び麻袋の問題など、更には虎の門の敷地問題、郵便逓送車に関する案件等、幾多重要問題を控えており、当委員会はすでにその一部について、審議調査を開始いたしておりますので、国民一般が当委員会に投げかけている期待に背かないよう、各会派からなる全委員挙つて、ひとしくこれを念願いたしておりますことを、この決算報告に当り一言附加えまして、以上御報告を申上げます。(拍手
  23. 河井彌八

    議長河井彌八君) 本件に関し討論の通告がございます。発言を許します。山田節男君。    〔山田節男君登壇拍手
  24. 山田節男

    ○山田節男君 只今議題になりました昭和二十六年度一般会計歳入放出決算、同じく昭和二十六年度特別会計蔵入歳出決算並びに昭和二十六年度政府関係機関の収入支出決算に関しまして、私は日本社会党を代表いたしまして、これに承認を与えることに反対いたすのでございます。以下その理由を簡略に申上げたいと存じます。  第一は、只今決算委員長が御報告になりました中にもありましたごとく、我々決算委員といたしまして、二十六年度の会計検査によりまする決算検査報告書を主題といたしまして、審議の過程におきまして幾多憂うべき事実を発見いたしました。その主なるものにつきましては、先ほど決算委員長の御報告にございましたから、ここに重複を避けまするが、要するにこの決算の内容を見て痛感いたしましたことは、官紀の弛緩であり、又この国民の血税を使いまするところの予算執行の任に当りまする一般の会計事務職員の不正事項が非常に多いということでございます。終戦以来日本道義の頽廃は著しいものがございまするが、この決算報告を終戦以来、二十二年、三年、四年、五年、六年、七年、年々不当な会計の支出が行われておるということは、誠に憂うべき事態であると存じます。殊に本委員会といたしましては、補助金に関しまする特別の小委員会を開きまして、つぶさに審査いたしましたところ、先ほど委員長の御報告のように、年に約三千億に近い国庫補助金の使用というものは、実に乱脈を極めまして、このことは只今本院におきまして多数決によつて採択されました法務大臣検事総長に対する指揮権発動決議案、この事態と同じようなことがこの予算の執行に行われておる。今日の政界、官界、財界の結託した不正な行為が、尊い国民の血税、労苦のかたまりを使いまする予算執行職員の中においても、年々殖えつつあるという事態は、誠に私どもは目を蔽うものがあるわけでございます。かような意味におきまして、殊に吉田内閣は官紀粛正、綱紀粛正ということを申しておりまするけれども、年々、かようなふしだらな予算の執行が殖えるということは、私ども国民の代表としてこれを黙視することができないのであります。これが本決算委員会で、甚だ異例でございまするけれども、反対せざるを得ない第一の理由でございます。  次に第二の理由といたしましては、私ども国会議員として考えなくてはならないことは、今日の会計検査ということでございます。旧憲法時代におきましては、会計検査院は天皇の直属機関でございました。ドイツにおけるいわゆるプロシヤのシステムでやつておりました。然るに新らしい憲法の下におきましては、会計検査院は内閣の独立の機関でありますけれども、天皇の直属機関ではございません。併しながらイギリスやアメリカとは違いましてこの決算委員会、予算委員会、或いは国会の直属機関でもございません。会計検査院法第二十条によりますならば、会計検査院は、年々の決算の検査報告内閣を通じまして国会にいたすことになつております。このことは、今日決算につきまして、この予算の執行の責任を追及するのは我が国会のみでございます。国会は、会計検査院の厳密なる、公平なる検査の報告に対しまして、これに政治的批判を与え、これに是正を求むるところの最高の機関でございます。かような我々の国会議員としまして当然の職務から見まして、かような誠に不当な、国民を犠牲に供し、官紀をますます弛緩せしむるような、かようなことに対しましては、国会の権威にかけましても、これに承認を与えることは絶対にできないのでございます。  殊に私がこの際申上げたいことは、只今委員長報告にありましたが、二十六年度にタイ国から約三十万トン、金額にいたしまして百四十七億円に近い金を以て米を輸入するに当りまして、砕米の問題、砕米の混入率におきましての処置は、誠に今日のこの政界に現れておりまするがごとく、実にスキャンダルだらけのものでございます。殊に会計検査院が検査して見まするというと、これに対して約一億二千万の損害賠償、クレームをいたすべきであるにもかかわらず、会計検査院の注意によつて漸く政府がそのクレームをした、こういうようなことでございまして、誠に政府のこの行政機関におきまする予算の執行のでたらめというものは、これは誠に氷山の一角に過ぎないのでございまするが、かようなことを許しておきますることは、我々国会の権威におきまして又二十七年度の報告を我々が見ましても、更に輪をかけたようなスキャンダルがあるというようなことを見るにつきましては、私ども国会の権威にかけましても、かような決算を承認することができないのでございます。  以上、不承認理由でございます。(拍手
  25. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。これより本件の採決をいたします。本件全部を問題に供します。本件を委員長報告通り決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  26. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本件は委員長報告通り決せられました。      ─────・─────
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、お諮りをいたします。  懲戒処分の適正励行に関する決議案(小林亦治君外二十名発議)  本案発議者から、委員会審査省略要求書提出されております。発議者要求通り、委員会の審査を省略し、直ちに本案審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて本案を議題といたします。これより発議者に対し趣旨説明発言を許します。小林亦治君。    〔小林亦治君登壇拍手
  29. 小林亦治

    ○小林亦治君 只今上程せられました懲戒処分の適正励行に関する決議案提案理由を説明いたします。  先ず最初に案文を朗読いたします。    懲戒処分の適正励行に関する決議   内閣提出の決算検査報告によれば、公務員による不当行為は累年激増し、官紀の弛緩これより甚しきはなく、国家のため憂慮に耐えない。   然るに他面これらの不当行為者に対する処分は緩慢にして、却つて成規の処罰を回避している観が強い。即ち特に刑事事件に関しない限り、その制裁は単に「注意」又は「訓告」の程度に留まるのを常とし、法律上の懲戒処分は殆んど行われず、国家公務員法第八十二条は空文化している現状である。   かくの如き微温的態度は、不当行為の防止上何等の効果なく、却つて法律軽視の気風を醸成するに過ぎず、懲戒制度の目的を甚しく滅却するものといわなければならない。   内閣は、かくの如き弊風を一掃するため、懲戒処分を厳正に励行し一罰百戒の実を挙げ、もつて吏道の刷新に努むべきである。   右決議する。  次に、決議案趣旨弁明をいたします。  毎年、内閣から国会提出する決算報告には、会計検査院の検査報告を添付することになつておりますが、その中に指摘されておる不当事項は、左の通り年々甚だしい増加を示しております。即ち昭和二十二年度三百八十六件、二十三年度六百二十三件、二十四年度七百五十件、二十五年度千百十三件、二十六年度千百九十八件、二十七年度には千八百十三件という実に驚くべき状況にあります。而もこれらの中には、形式上は一件でありましても、「何々外何カ所」というがごとき記載方法のとられている場合も少くありませんから、実際の件数は、これよりも遙かに多いと見るのが、殆んど疑いを容れないところであります。又、会計検査院が実際に検査を行います個所は、中央官庁ならば毎年検査しますが、地方の出先機関であれば、三年に一回程度であり、土木工事の現場などは、ほんの何分の一という程度の、僅かな個所を実地検査するに過ぎないのでございます。検査院の俎上に上らない隠れたる不当行為が、このほかなお多数に及ぶであろうことは、これは又容易に見通さるるところであります。  尤も、これらの案件がことごとく本質的に悪事という意味ではありません。例えば一度に多量の品物を買入れたが、次の年度には、それが適当に使用されておるというがごときは、計画上の不注意とか、事務処理の不適正とかいう点では批難はせられましようが、本質的に悪事を働いたわけではありません。併しながらこのような案件も、用度経理の上から、或いは受注納入先との関係から、往々にして弊害の起りやすい事柄に鑑みまして、大いに反省の要ありと痛感せられるのは当然であります。  なお、会計検査院の検査能力が、量的にも、質的にも近年次第に強化されて来たがために、摘発されるところの不当事実も従つて多くなつて来たということも疑いなきところであります。併しながら、これらすべての点を考慮に入れましても、とにかく会計事務に関係する公務員の不当行為が余りにも多い、摘発される件数が年々増加しておるというこの点は、客観的に統計数字の上に明瞭な事実であります。この悲しむべき事態を改革するためには、即ち、かかる不当行為に対する防止対策としては、公務員の行政上の責任の追及、即ち懲戒処分の厳正なる励行が、この際最も必要であると思うのであります。  当委員会は、昭和二十一年度の決算審査報告以来、連年に亘つて繰返してこれを政府に警告して参つたが、いつも政府は馬耳東風、糠に釘、(笑声、拍手)いささかも改善の実が現れておりません。仏の顔も三度という言葉があります。すでにそれが五回に亘つて警告を発しているのに何の反響もない。これはこの問題は申さば、最も古き問題であると同時に、又最も新らしい問題であります。当委員会にとりましては、超党派的に何としてもこれだけは貫徹しなければならないところの、全員、党派を超えた強い要求であるということを、この際、今度だけは、必ず政府は銘記して頂かなければならんのであります。  以て政府全体に官紀の弛緩を大いに引き締めなければならない。即ち成規の処分である国家公務員法第八十二条の解釈を厳にし、その処罰を励行しなければなりません。現在のように下僚に対する処分を、成規の法律によることなく、法の認めざるところの単なる「注意」、或いは「訓告」などのごとき、平素の監督上当然の処置を以て、一個の処分であるがごとく見せしむるがごときは、もはや今日の国民の納得しあたわざるところであります。およそ、行政官の懲戒処分については、右の国家公務員法があり、特に会計職員に対しては、会計検査院法及び予算執行職員等の責任に関する法律にも規定がありますが、いずれもこれは今日空文に等しいところの存在となり、殆んど励行せられておらないというのが、今日の実情であります。  その実情を申上げますと、決算検査報告に掲げられている多数の不当行為の中には、その事態の随分重いものがありますが、それに対する制裁は、よほど重いときに「訓告」、相当重いときに「厳重注意」という、およそ法に認めないところの私生児的なる言葉を以て、ごまかしているのが今日の現状なんです。(拍手)「訓告」或いは「厳重注意」などというものは、法律上の懲戒処分でないということは、前言の通りであります。懲戒処分に値しない程度の過失があつた者に対して、上官がその部下を叱り置くというだけのことであります。「免職」、「停職」、「減給」、「戒告」、これらの四つこそ、法律上の懲戒であります。然るに我々の常識から判断しまして、「免職」にも値すると思われるような者、即ちその処置当を得ざりしため、国家に何千万円或いは何億という損害をこうむらしめたというがごとき、免職でもなお足りないと思われるような者が、ただ単に上官から注意を受けたとか、叱られたというだけで済むということは、それ自体が綱紀の紊乱と申して憚りないと存ずるのであります。(拍手)なぜに懲戒処分がかくのごとく有名無実のものになつたのでありましようか。「懲戒処分は、任命権者が、これを行う」ことになつております。上司が部下を裁くのであります。だが実際は、同じ同僚が裁くのであります。そこにはおのずから人情が加わるのが自然かも知れませんが、部下の不当行為については、監督者たる上司にもその責任があるのが当然です。部下を制裁すれば、(「問題はそれだ」と呼ぶ者あり)自分も制裁を受けるわけであるから、いわゆる臭い物に蓋の諺通りになりやすい。つまり部下を庇うと同時に、上司自身の保身のためにお茶を濁して免れるという結果になつているのであります。又不当行為者の責任を問うに当つて、その実行者たる末端の職員の責任追及に重きをおいて、その上級職員たる監督者及び決定者、これらの責任追及が軽視されている傾向の強いことも否定し得ない事実であります。(拍手)その行為が、実際には上司の指揮又は承認の下に行われたものと認められる場合において、換言すれば、上司の指揮又は承認なくしては到底行われ得ないはずである場合においても、その上司たる者の責任追及が不当に軽視されているがごときは本末顛倒であります。断を下す者、決意をなした者が、刑事上ではそれが主犯者です。その決意をなした者が主犯者である。従つてその決意に従つて、その命を受けて働いたところの実行者は、共同正犯か、然らざれば単なる幇助犯に過ぎない。ところが行政上においては、驚くではありませんか。この幇助者であるところの従犯に対する処分が遙かに重く、その決意をなさしめ、その行動を命じたるところの主犯者の罪が軽い、或いは論ぜられずに済んでいる。こういうことが強く指摘せられなければならんのでありまして、時としては一人の犠牲者にすべての責任を負わせて、その同輩又は上司が責任を免れ、恬として恥じざるがごとき場合もあると言われております。甚だしきに至つては、不当行為者が却つていい職に栄転の光栄に浴しているというがごとき場合さえも随分あります。免れて恥なさに至つては、又何をか言わんやであります。更にその者を昇進せしめ、栄転せしむるがごときは、誠に不穏当な百葉かも知れませんが、泥棒に勲章をえたと同じようなものではないか。(拍手)懲戒処分の程度が各省各庁においても均衡を失つておるという場合も見出されます。具体的にその一例を挙げますれば、内容が全く同程度のもの、甲乙の差殆んどなきような二つの失態に対して、その監督者が、一方では月給一割一カ月間だけの減俸で済んでおる、このものは。ほかのものは、同じ分量、程度の失態があつたにもかかわらず、月給一割の減給が十カ月というような、十倍の差のある事例すらあつたのでありまして、これは公平を失するなどという言葉じやない。でたらめも甚だしいと思うのでありまして、なお、月給一割の一カ月間だけの減給などというものは、およそ懲戒ではないので、懲戒と言わんがためには、懲戒をせらるる者が、精神上或いは財産上少くとも苦痛を感ずるものでなければ懲戒ではない。それをなお制裁と称して名目を以て、これらは実情を糊塗するの実例としては誠に顕著なものと言うべきであります。  法律の上では、法令又は予算違反の場合並びに重大な国損を生じた場合に、会計検査院は「当該職員の任命権者」に対して、その者の懲戒処分を「要求することができる」、かように規定してありますが、検査院からの要求は、その実例が殆んどない。いたずらにこの規定が伝家の宝刀として飾られてあるに過ぎない現状に対しても、この際強い反省要求せられるのであります。訓告や厳重注意などの処分は、かかる処分を以てお茶を濁しておる現状に対しては、この際政府は、抜本的対策を立てなければなりません。言い古されている通り、国の財政は悉く国民の血税になるものであることに鑑み、ここに内閣の猛省を促し、行政各部に対し速かなる訓令を与え、以て綱紀の刷新を図られたい。本件決算承認に当つて、各党各派の委員六名がそれぞれ立つて討論をいたしました。その賛成であると反対であるとにかかわらず、この六名の決算委員の全く一致しておる点は、懲戒処分をもつと厳正にやれ、法律が与えておる通りの懲戒権を行使せよという、この一点にあつたことを考えてみましても、政府はこの際、本決議案を尊重し、綱紀粛正のためにも抜本的なる施策を断行せらるるように要望したいのであります。私ども二十名は、全く超党派を以てここに一丸となり、決議の貫徹を決して、本昭和二十六年度決算の審議終了を機会に、本決議案提案した次第であります。  何とぞ満場一致を以て御賛成あらんことを希望いたします。以上終ります。(拍手
  30. 河井彌八

    議長河井彌八君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。長谷山行毅君。    〔長谷山行毅君登壇拍手
  31. 長谷山行毅

    ○長谷山行毅君 私は自由党を代表いたしまして、只今提案されました懲戒処分の適正励行に関する決議案に対し賛成意見を表明するものであります。(拍手)  只今提案者の趣旨弁明にも述べられましたように、会計検査院の検査報告によりますと、会計経理に関する不当事項は、年々増加して参りまして、昭和二十六年度は、先ほども述べられましたように千百九十八件、二十七年度には、これが千八百十三件となつているのであります。これは一面会計検査院の機能が充実した結果であるとも言われるのでありまするが、併しながら会計検査院の検査が充実すればそれだけ不当事項が増加するということであるならば、ここに現われたものは氷山の一角であつて、まだまだ不当のものが多数潜在するということにもなるわけでありまして、これは誠に遺憾に思うところであります。而してこの不当事項の大部分は、国費が効果的に有効的に使用されていないもの、又は国損を来たしたものであります。即ち国民の血税で賄われているところの貴重なる予算が、不当に使用されているというのであります。国民は、国家の興隆と民主主義国家の建設に奮起しながら、その血と汗の税金を納めているとき、而も独立国家としての内容充実のため、なお多額の国費を必要とする現在におきまして、このような不当事項が多数存在しておりますことは誠に遺憾とするところでありまして、我々は一日も早くこのような不当事項の根絶を期さなければならないと思うのであります。  然るに遺憾ながら、これらの不当事項が年々累増し、二十七年度は前年度より更に六百余件増加しておる実情であります。我々はあえてこの件数にこだわるものではありませんが、やはりこれでは事態が十分に改善せられているとは考えられないのであります。政府におきましては、勿論これを共手傍観しておるわけではなく、行政管理庁、その他の内部監査により、組織制度の改善に意を用いられておらるるようでありまするが、残念ながらまだその効果が十分挙がつておらないのであります。これらの不当事項の発生原因は、いろいろ考えられるのでありまするが、会計検査院の指摘するところによりますれば、結論的には、これは主として法令若しくは予算の軽視、又は責任観念の稀薄によると言われておるのであります。即ちこれを言い換えますれば、これは法令や制度の改正、又はその運用上の改善を要するというよりも、むしろその多くは、その事務に当つた責任者が的確な判断を下し、更に一層の努力と注意を払うならば、かような不当事項が発生しないで済んだものではないかと認められると言つているのであります。即ち問題は、公務員の責任感にあるというのであります。会計検査院が二十七年度に指摘している不当事項は千八百余件、この金額は百二億円の多きに上つているのであります。若し国民一般がこのことを聞きました場合には、このような、国に大きな損害を与えた責任者は、定めし厳重なる処罰を受けたことと考えておると思うのであります。ところがこれが実際におきましては、単なる注意とか訓告とかいうお叱り程度で済んでおり、国家公務員法第八十二条に明記せられておりますところの正式な、明確な懲戒処分は殆んど受けていないというのが実情であります。これでは、国民一般は到底納得できないではないかと思われるのであります。尤も、ただ昭和二十六年度分につきましては、これは昭和二十七年の四月の二十八日に制定せられました公務員等の懲戒免除等に関する法律並びに同日付のいわゆる平和条約発効による恩赦の政令によりまして、これらに対する懲戒は免除されましたので、事実上は懲戒処分は行われなかつたことは当然でありまするが、併しながら、それ以前におきましても、それ以後におきましても、実質的にはこの正式な懲戒処分は殆んど余り行われておらないのが実情であつたのであります。  政府は、公務員に対しまして温情を以て臨むという気持は十分わかるのでありまするが、現在のような状態では、国民が納得しないばかりではなく、却つて公務員の責任感を薄くする虞れさえあるのではないかと思うのであります。法令に違反したり職務上の措置を誤り、又努力と注意を怠り、怠慢のために不始末を生じたような場合には、厳にこれを戒告する、これは当然行わなければならないことであり、又従来の弊風と惰性を一掃し、不当事項の発生を未然に防止するために、極めて効果的であると思うのであります。懲戒処分の適正にして厳正な履行につきましては、毎年度の決算審査報告において、特に内閣に対し強く要請されておるところであり、且つ又国費の適正片して効果的使用につきましては、国民一般の関心が特に高まつて来ております現在におきましては、この点に関する措置はもはや一日も忽せにできないものと存ずるのであります。    〔議長退席、副議長着席〕  もとより懲戒ということは濫りに行うべきものではなく、特に事態の重大なるものに対して厳重な処罰を加えてこそ、その効果があり、一罰百戒の途でもあると思うのであります。政府におきましては、速かに法規の改正を要するものはこれを改正し、現行法規の適用に不十分の点があるならば、その励行を促すための適切なる措置をとるべきものと思うのであります。  この意味におきまして、私はこの際、政府に対し官紀の粛正と、それ対する善処方を強く要望いたしまして、本決議案に対し賛成する次第でございます。(拍手
  32. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 奥むめお君。    〔奥むめお君登壇拍手
  33. 奥むめお

    ○奥むめお君 私は国会で、予算の編成が非常に大切な役割を持つと同時に、決算の仕事に非常な意義を感じまして、今日まで決算委員の一人として働いて来たものでございます。  今まで吉田内閣は、五年余り、決算審査報告のときに政府責任者が出て来られたことは、今日が初めてなのでございます。(拍手)而もこの今日という日は、これが衆議院であるならば不信任案とも言うべき警告決議案を出した日であり(拍手)又決算委員会も厳正なる処分を要求する決議案を今日提出しておる。まあこういう日に、ともかく副総理、大蔵大臣をここに御同席願つて参議院全体の総意を結集して決算の重要なる点を決議として表明いたしますことに、私、殊に私の属します緑風会は、賛意を表してやまないのでございます。(拍手)私は緑風会を代表して、この決議案賛成いたします。  決算委員会は常に非常に熱心に予算執行上の不当不正の批難事項につきまして、又年々それが激増して行きます点に、重大な関心を持つて慎重審議を続けて来ているのでございます。審議の過程では、しばしばその責任者を呼んで警告を与え、文書処方を厳重に要望して来たのでありますが、一向にその実は上りませんでした。そして国費の浪費、濫用、不正支出、こういう悲しむべき金額が実に莫大なものに達しておりますことは、先ほど委員長からこの決議案の説明の中で言われた通りでございます。政府反省の色がないように認められるばかりでなく、今日ではすでに行政機構の中にまでも、国家の費用を不正に使う悪い手が伸びて、崩れかかつているこの重大なときに、決算委員会は何としても決議案として適当なる懲戒処分を要求して、不当経理を未然に防ぐことの必要を痛感したわけでございます。二年前に私が昭和二十四年度の決算審査が終つて委員長報告をいたしました場合にも、この壇上から「内閣に対して将来の注意を促すために特に警告をする」と申して、「行政処分が軽きにすぎること、行政処分を厳正にすることが不当行為を防止する上に最も必要であること」を訴えたのでありました。昭和二十五年度決算委員長報告も又同様であつたのでありますけれども、併しいろいろ決算委員会が年々苦心されておるにもかかわらず、今日見られるがごときことにまで、国家財政又国費の不正不当なる使用の事件が累積して、国論がたぎつておりますことは、何としても我慢のならないところでございます。この責任の一切は、私の見ますところ、長きに亘つて政権の座にある吉田政府の無反省と無責任にあると言わねばならないと思うのであります。(拍手)  この国費の不正不当支出、国損、国に損害を与えております金の回収のルーズさ加減というものは、これらの事実を、若しも私たちが広く社会の人に知らせましたならば何と言うでしようか。今社会ではそうではなくてさえ、税金を納める気がなくなつたと、誰しも痛憤しておるのでございます。国費の大部分は、国民の一人々々が血と汗で稼ぎ貯めた金を集めて納めておる浄財で占められております。これが税金であり、又国費の大部分なのでございます。これこそ最も正しく効果的に、国民大衆のために使われるように心を砕くのが政府責任であり、又会計担当官の義務でもあると私は信じて疑いません。然るに何百万、何千万の大金が、どこかへ消えていつてしまう。無駄に浪費されてしまう。而もその不当行為をした当人たちは、刑法に引つかかればともかく、あとは免れて恥なし、当然に懲戒処分を受けなければならないのに、これを免れる。こんなことが続きますならば、国家公務員法も空文になつてしまうと思います。各省の処分調書を見ましても、「注意」、「厳重なる注意」という文字ばかりが目につくのであります。国家公務員法第八十二条を見ますと、懲戒には、免職、停職、減給、戒告があると書いてありますが、国費の不当支出においては、殆んどこれが行われていないのであります。その第八十四条に「懲戒処分は、任命権者が、これを行う」となつておりますから、上官が部下を、又実際には、同僚が自分の同僚を罰するというようなことで、厳正に行われないのが今日までの実情であつて、多くの事件を見ていますと、上官の指図で動いておるなと明らかに見受けられるようなときもあるし、又中には、上官や同僚の君たちが暗黙の了解の下に、今までの仕来たりであるかのように、不当なことが相変らず行われておる姿も感じます次第で、会計検査院に見つかつたものだけが不運だつたと、これをかこつような風さえもあることが、複雑なこの間の事情を、明朗にしなければならないということを誰しも感じているのであります。緑風会におきましても、かねがねこのことを憂いまして、懲戒処分を厳正に励行せしめるためには、必要な立法措置を早く講じなければならない。この考え方の下に目下研究中なのでございます。  今や国民政治に対しまする不信というものは、本院でも又各種委員会におきましても、もう論じ尽されておる通りでございます。二十九年度一兆円の緊縮予算を成立せしめまして、これから、動きつつありますこの国家の明日、明後日のことを考えるにつきましても、私たちは目下国会議員といたしまして、何としてもこの緊縮予算のしわ寄せを国民の大衆に課してはならないのだ。又私たちは、国民大衆に犠牲を課していくような緊縮財政であつてはならないのだという覚悟を持つておるという証しを、身を以て立てて行くその一つの途は、国費の節約を極度に図ること、できる限り紙一枚の物件費の無駄遣いも我々の目の届くようにして節約し、予算を効率的に使用し、かりそめにも、不正不当の支出を行う者があつたならば、厳罰を以てこれに臨んで、禍根を絶つということをするよりほかに、私たちの責任を行う途はないのだと言いたいのでございます。  この意味におきまして、私は決議案賛成の意を表明するものでございます。(拍手
  34. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 大倉精一君。    〔大倉精一君登壇拍手
  35. 大倉精一

    ○大倉精一君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、只今議題となりました懲戒処分の適正励行に関する決議案賛成意見を申述べるものであります。  本案に対する賛成理由につきましては、すでに提案者から詳しく述べられておりますので、私から多くを語る必要はありませんが、この際若干、私の所見を申述べたいと考えております。  会計検査院が毎年指摘いたしておりますところの不当事項の状況は、累年増加の一途を迫るのみでありまして、莫大な国民の血税が年々不当に浪費されておることが明らかにされておるのであります。而も委員会の審議過程を見ましても、かかる事実に対しまして、政府並びに官僚共に、いささかも反省の実を認めることができません。加うるに、現今における底知れぬ汚職疑獄の発展に対する政府の一貫した破廉恥的不遜な態度と相待ちまして、国家国民の将来のために、誠に慄然たるものを禁ぜざるを得ないのであります。政府は、先に十六国会におきまして、昭和二十五年度決算について本院の議決を経ました際に、緒方総理は次のごとき所見を述べております。即ちその大要を速記録について申しますと、このように述べられております。「予算の目的外使用その他不当の使用を厳に戒めると共に、その効率的且つ合理的使用に極力留意いたして参つたのでありますが」云々、「誠に遺憾に堪えないところであります。これにつきましては、今後一層綱紀の粛正、遵法精神の涵養、会計制度の整備、研修施設の充実を図り、経理職員の執務の適正、能率の増進等を期するとともに、予算執行の事前監査を強化して、経理の適正且つ効率的運営を確保し、御要望の趣旨に副うよう格段の努力をいたしたい所存でございます」と述べられております。恐らく本日も昭和二十六年度決算可決に伴いまして、副総理は、このようなことを言われると私は考えております。が併しながら、ここに述べられておりますることは、これは皆尤もでありまして、非常に大事なことであります。こういうことを口で言うことは、誰でも簡単に言えるのでありまするが、問題はその実行であります。その後におきまして、実情は、先に述べましたごとく一向にその実績を見ないのみか、却つてますます悪質と思われるような不明朗な事項が累年累増いたしまして、更に発展して今日のごとき未曾有の疑獄汚職を連発させるに至りまして、国民の、政府、ひいては国会に対する不信その極に達しつつある、誠に憂慮すべき現状に相成つてつたのでありまするが、これはまさに吉田内閣の長年に亘る失政の累積でありまして、まさに末期的症状と申すべきものであるという工合に私は考えるのであります。かくのごとき現実は、先の第十六国会における政府の所見なるものとは全く違いまして、政府の所見なるものは、いわゆる当面をつくろつて国民を欺瞞するところの、単なる作文の朗読に過ぎないということを立証しておるものと言わざるを得ません。  政府は、かかる問題に対しまして、常に、今後一層綱紀の粛正をするとか、或いは遵法精神の涵養をするとかいうことを紋切型のように言つておりますのでありまするが、事実は全く逆でありまして、網記は却つてますます紊乱の累積となつて現われて参りました。法律政府みずからこれを蹂躪して憚らない不遜な態度がますます露骨になつて来るばかりではありません。MSAを受けて、自衛隊という名の軍隊をでつち上げて、国民監視の中で、不遜にも白昼堂々と憲法の空巣狙いをやつているのは、一体誰でありましよう。或いは又いわゆる指揮権なるものを私して、厳粛なるべきところの司法の独立と権威の上に、非常識極まるところの暴力をほしいままにして、恬として恥じざるがごとき不逞の輩は一体誰なのか。(拍手)かかる者こそ先ず第一番に、本決議案にいうところの、厳重に最高の懲戒処分に付せられて然るべきものである。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)その筆頭であると私は考えるのであります。かくのごとき政府の下にあつて、下、又これにならうことは必然でありましよう。決算報告に現われておりまするところの会計検査院の批難事項は、全体の一部に過ぎませんが、これを以てしても、官紀の廃頽まさに極まれりという観を呈していることは、まさに政府の重大なる政治責任と言わざるを得ないのであります。殊に第十六国会におきまして昭和二十五年度決算報告承認に際しまして、私は日本社会党第四控室を代表して次のように要望いたしております。即ち「不当事項を防止するために、不当行為並びに犯罪行為の当事者は勿論、その監督者等の上級者に対する処罰を厳重にすべきである」という条件を付したのでありまするが、これに対して政府は先に述べたように、本院におきまして、「御要望の趣旨に副うよう格段の努力をいたしたい所存でございます」と言明しておりまするが、これ又極めて無責任な空文のそら読みとしか受取ることができません。即ち、先般米の決算委員会における緒方総理初の関係責任者の証言や答弁を通じてみましても、何ら具体的な措置も努力も見出すことができないのであります。  一例を挙げれば、昭和二十六年度の決算審議に引続き、昭和二十七年度の決算審議において大きく問題とされるでありましようところの麻袋の不当購入の問題につきましても、政府並びに関係責任者は、殆んど関心を持つておらず、又殆んど責任を感じていないことを暴露しておるのであります。即ち、昭和二十六年に必要のない麻袋を、三百万枚、八億七千万円の巨費を投じて購入し、一カ月三百万円もの保管料を支払つて一年間も死蔵しておる。そうして会計検査院から厳しく批難されておつたのでありまするけれども、それにもかかわらず、あえて頬被りして、更に又五百万枚余計なものを貝つております。こういう極めて不明朗な、重大な要素を感得される事件でありまするが、この責任者、即ち当時の食糧庁長官は、形式的に一応の責任は問われております。が併しながら、ただ単に「厳重な注意」という、何かわけのわからぬようなことだけで、うやむやに頬被りをされております。    〔副議長退席、議長着席〕  而も更に呆れたことには、決算委員会において、「この処罰を誰からあなたは受けたか」ということを私が質問いたしましたが、彼は「誰から受けたか全く記憶がありません」、こういう答弁を平気でやつております。而も又、彼は会計検査院から激しく批難されているところのこの麻袋の問題に、殆んどその批難事項に対して関心を持たずして、二度目の五百万枚を又購入しておりまするが、この購入に際して、「私は盲判を捺しました」ということを委員会に平気で証言をしております。全く以て、私は奇怪至極であると言わなければなりません。而も当時の責任者たちは、その後却つて栄転をしております。その当時長官であつた者が次官になつたり、或いは総務課長であつた者が長官の椅子に坐つておるというようなことに至つては、全く私は沙汰の限りであるという工合に言わざるを得ないと思います。先に政府が、「不当行為並びに犯罰行為の当事者は勿論、その監督等の上級者に対する処罰を厳重にすることに対して格段の努力をする」と言つたことは、一体どうなつたのでありましよう。この一事を以てしても、如何に政府みずからが網記紊乱の種蒔きをしているかということがわかるのであります。  綱紀の粛正、或いは遵法精神の涵養というようなことは、これは口先だけではどうにもなりません。或いは又機構や制度をいじくつてみても、それだけではどうにもならん問題であります。要は、本決議案の懲戒処分を厳重に励行すべきは勿論でありまするが、かくのごとき道義的不感症を叩き直すこと、これが先決であります。そして、その不感症患者を追つ払うことが根本でなければならんと私は考えるのであります。(拍手)  私をして言わしむるならば、吉田内閣は不感症の症状が、いよいよ以て濃厚になつて参りました。まさに重症患者の診断を下されて然るべきものであろうと私は考えるのであります。かかる吉田内閣において、すでに綱紀粛正とか或いは遵法精神の涵養というようなことを口にする資格は、すでにもう失つておるものという工合に言わなければなりません。本決議案のごときも、吉田内閣の下では、或いは全く意味のないものと言うも過言ではないでございましよう。綱紀の粛正、遵法精神の涵養は、先ず以て吉田内閣が速かに退陣することが先決であり、(拍手)それによつてのみ期待し得るものと言わなければなりません。本決議案も、吉田内閣によつては如何なる懲戒処分をも行う資格がないものと所ぜざるを得ません。吉田首相はこの際、本決議案をみずから実行する資格のないことを率直に自覚して、国家のため速かにみずから進んで進退を決すべきであるということを申上げて、私は本案賛成をするものであります。(拍手
  36. 河井彌八

    議長河井彌八君) 菊田七平君。    〔菊田七平君登壇拍手
  37. 菊田七平

    ○菊田七平君 私は改進党を代表いたしまして、只今の懲戒処分の適正励行に関する決議案賛成の意を表するものであります。(拍手)  我々国民が新生日本育成のために多くの悪条件を克服いたしまして、粉骨砕身の努力を傾注しまして平和国家建設に邁進しておりますのとき、一部の公務員による不当行為は、会計検査院の決算報告書によりまして皆さん御存じの通り昭和二十五年八百余件、二十六年千百余件、二十七年一千八百余件と逐年激増の一途をたどり、而もその件数は氷山の一角に過ぎないことを思いますれば、衷心より私の遺憾に堪えないところであります。(拍手)もとより国家公務員は、その全力を挙げて公共の福祉増進を図り、且つ職務の適正なる遂行に任じ、以て国民の奉仕者たるの実を挙げなければなりませんことは、今更喋々多言を要しないところであります。然るに逐年かくのごとき公務員による不正行為の激増を見つつありますことは、国民一般の道義の頽廃、公務員が国民の奉仕者たるの職責に対する自覚の不徹底、遵法精神の稀薄など、そのよつて来たるところを挙げますれば幾多考えさせらるるところが多いのでございます。なかんずくその最大の原因は、これらの不当行為者に対するところの懲戒処分が甚だ微温的であるということであります。刑事事件に関せざる限りその処分というものは注意或いは訓告等の程度にとどまるのを常といたしておりまして、公務員法第八十二条による法律上の懲戒処分などは殆んど見られないのであります。これがため不当行為者は法律を軽視いたすかのごとき悪風を助長する観のありますことを見逃すことができません。これは私の最も遺憾とするところであります。もとよりかくのごとき不当行為の中には、そのよつて来たる原因によりまして情状酌量の余地のあるものが皆無とはいえないのでありますが、吏道刷新の実を挙げますのには、泣いて馬議を斬るの決意を以て臨まなければなりませんことは勿論でありまして、(拍手)徹庭的な処分をいたすことこそが、一罰百戒、吏道刷新の実を挙げるゆえんであると思うのであります。温情を以て臨まなければならんことは、もとより当然でありますけれども、それにはおのずから限度があります。いたずらに消極的に流れて、国家百年の大計を誤り、国民を塗炭の苦しみに陥れますがごときは、政府当路者として厳に戒しむべきところであると確信いたすのであります。  私は本決議案上程を機会に、一致協力、以て頽廃せる一部公務員たるものが、国民の奉仕者であるところの公務員が国民の師範となるべきことを心からこい願いまして、本決議案に対する賛成討論を終ります。(拍手
  38. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより本決議案の採決をいたします。本決議案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  39. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて決議案は、全会一致を以て可決せられました。(拍手)  只今の決議に対し内閣より発言を求められました。緒方国務大臣。    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  40. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 政府は、本院の決議の趣旨を尊重いたしまして、予算執行上の不当行為の絶滅を期しまするために、今後一層の努力を傾ける所存であります。      ─────・─────
  41. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、日程に追加して、石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部を改正する法律案  石油資源探鉱促進臨時措置法案(いずれも内閣提出、衆議院送付)  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。通商産業委員長中川以良君。    〔中川以良君登壇拍手
  43. 中川以良

    ○中川以良君 只今議題となりました石油資源探鉱促進臨時措置法案、及び石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部を改正する法律案につきましての当委員会における審査の経過並びに結果について一括して御報告を申上げます。  申すまでもなく燃料資源として今日大いなる役割を担つておりまする石油類生産に必要なる原油の国内生産は、年間僅か三十四万キロリッター程度で全需要量の一割にも満たない現状なので、石油資源の重要性と石油輸入外貨節約の必要性より、国内石油資源開発は緊急を要するものであります。かかる現下における緊急なる要請に応えまして、政府は過般、石油資源総合開発五カ年計画を策定いたし、差当り二十九年度予算において石油試掘等補助金として一億三千万円を計上いたしているのであります。両法案はこの五カ年計画を強力に推進いたしまするために、補助金の交付と相並んで石油の探鉱促進等をなすべき各般の法的規制を加えているのであります。即ち石油資源探鉱促進臨時措置法案は、地域を指定して石油を目的とする試掘権に関する制度について臨時に鉱業法の特例を設ける等の措置を講じております。  その内容の第一は、石油の探鉱を急速に実施する必要があると認めるときは、その地域を通産大臣が、石油及び可燃性天然ガス開発審議会に諮つて指定をすること、第二は、指定地域内に存する石油を目的とする試掘権にかかる試掘権者が権利の上に眠ることを許さんために、施業案の変更の勧告及び命令、存続期間、試掘権の譲渡等について鉱業法の特例を規定いたしておるのであります。第三は、指定地域内に存する石油を目的とする鉱業権にかかる鉱業権者に対し、石油の探鉱を急速に実施するために特に必要があると認めるときは、業務又は経理の改善について勧告することができるように規定してあること、第四は、指定地域内に存する石油を目的とする鉱業権にかかる鉱業権者に対する業務又は経理に関する検査等に規定を設けているのであります。なお、本法案は十年以内に廃止することを規定した臨時立法であります。  次に、石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部改正案の内容を申上げます。本改正案は、昭和二十七年六月三十日に公布となりました現行法を一部改正いたしたものでありまして、改正の第一点は、現行法の石油及び天然ガスの探鉱又は二次採取法に対する補助金の後払制度を廃止したこと。第二点は、探鉱又は二次採取法補助金の交付の決定を受けた者の当該探鉱等を完了した場合の届出義務について規定し、これに対する違反について罰則を設けたこと。第三は、探鉱又は二次採取法補助金の交付にかかる納付金の制限を廃止したこと。第四点は、補助金の後払制度の廃止に伴い、補助金の的確な使用を確保するために、補助金の交付を受けた者に対しては、経理の状況についても報告を徴し、又は立入検査をすることができるものとしたこと等であります。  当委員会といたしましては、審議に慎重を期するために、参考人といたしまして、石油及び可燃性天然ガス審議会会長上床国夫東大教授、帝国石油株式会社社長田代寿雄氏、同社探鉱部長中沢道理氏を招致いたし、おのおのその立場より、両法案の前提条件である石油資源開発総合五カ年計画達成の可能性について参考意見を聽取いたしたのであります。  以上両法案に対しまして、政府委員並びに各参考人との間に活溌なる質疑応答が行われたのでございます。その詳細は、速記録に譲ることといたしまして、主なる問題点を挙げますると、次の通りであります。  第一点は、石油資源探鉱促進臨時措置法案の構成内容である指定地域の選定、施業案の変更の勧告及び命令、試掘権の存続期間の短縮及び試掘権の譲渡制限等、すべてが現行鉱業法の特例的規定であり、ただ本法案第十七条に規定する業務又は経理に関する勧告のみが正面より鉱業権者に対処しようとする積極的規定であるにもかかわらず、それが法律的効果の薄い勧告にとどまつておる点は、本法案の狙いである石油探鉱の急速な実施を推進するという建前からすると、法の構成においてバランスを欠き、且つ不十分ではないかとの点でありますが、これに対する政府の見解は、本条を勧告にとどめて命令にまで及ばなかつたのは、命令の場合には国家補償等の複雑な問題が発生する事態をも考慮したためであり、本条の適切なる発動と試掘権の存続期間及び譲渡等の規定を併用することによつて、十分に法的効果を挙げ得るものと確信するということでありました。  第二点は、本法案石油鉱業一般を対象としているが、我が国における原油生産の現状からすれば、帝国石油株式会社が全生産額の九割余を占めており、従つて法案立場を変えて見るならば、帝石対策法案と称しても差支えないのであるが、帝石の現状から言つて、果して帝石対策法案として十分であるかどうかという点であり、衆議院通商産業委員会においては、本法案に附帯して、(一)、政府は帝石の持株権を効果的に行使すること。(二)、帝石経営陣の内紛防止に努め、万一内紛が再燃する場合には助成金を支給しないこと。(三)、帝石の配当は他の公益事業並みとすること等を主たる内容とする決議を行なつているのでありますが、当委員会としても、これらの諸点については慎重な検討を加え、政府当局より、(一)、政府持株は従来の方針を変更して絶対に手放さないこと。(二)、帝石経営陣の内紛は今後絶対に起らぬよう厳重に監視し、万一の場合には断固たる措置をとること。目、帝石の配当は適正に制限すること。以上のごとく行政指導に万全を期する旨、誠意ある確約を得たのであります。かくて質疑を終了し、討論に入りましたところ、豊田委員より、「石油質源探鉱促進臨時措置法案、第十七条の石油の鉱業権者に対する業務又は経理に関する勧告の項は、これを単に勧告にとどめることは当を得た措置でなく、飽くまで勧告に応ぜざるときは命令することができるように修正すべきである。その程度の強力な法的規制を設け、国の監督権を強化しなければ、国家助成を受けて、公益性の濃い石油採取事業について配当制限等の措置を講ずることは困難である。かかる観点より、将来本条を改正せられ、法的にカ全を期すことを希望条件として本案賛成する」との意見の開陳が行われたのであります。又西川委員より、「両法案運用上、厳重なる監督権を以て石油行政に遺憾なきを期せられたい」との意見の開陳があり、賛成の意を表されたのであります。更に三輪委員より、「石油開発事業は、多額の国家資金の助成を受け、且つ諸外国において数多くの国が石油開発事業については国営となつておる現状である。かかる点より勘案して、我が国の石油開発事業も国策会社にすべきである。石油資源探鉱促進臨時措置法案も、将来我が国石油開発事業を国策会社としてその法的表付けをすることを前提として本法の運用を厳重にしなければならない。又、我が国石油開発事業の大宗である帝石の経理並びに役員の構成は、国策に副うものでなければならない。併し現実は種々なる内紛があつて、経営の公益性を重んずる役員と、私益を主に考えている役員が対立してあるようである。公益性を重んずる役員のうち、近く改選される人もあるように聞いておるが、政府は帝石の経営並びに役目の構成が国策に副わぬ場合には断固たる処置をとられたい。なお、我が国五油採取事業は補助金の交付等の優遇措置を受けているのであるから、会社の利益は成るべく開発、増産等に投下すべきで、配当は極力制限をし、電気、ガス等の公益事業以下にすべきである。以上三点について両法案運用の際留意されたい」との意見の開陳があり、同じく賛成の意を表されたのであります。  以上で討論を終り、両法案を一括して採決に入りましたところ、全会一致を以て、両法案とも原案通り可決すべきものと決定をいたした次第であります。  以上、御報告を申上げます。(拍手
  44. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  45. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて両案は、全会一致を以て可決せられました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報を似て御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十四分散会   ————————————— ○本日の会議に付した事件  一、法務大臣検事総長に対する指揮権発動に関し内閣に警告するの決議案  一、日程第一 昭和二十六年度一般会計歳入歳出決算昭和二十六年度特別会計歳入歳出決算昭和二十六年度政府関係機関決算報告書議決報告書  一、懲戒処分の適正励行に関する決議案  一、石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部を改正する法律案  一、石油資源探鉱促進臨時措置法案