○藤田進君 私は
日本社会党を代表いたしまして、
只今提案せられました国連
協定に関しまして
関係大臣に質疑をいたすものであります。
先ず最初に、
総理大臣に代りまして
緒方副
総理から御
答弁を頂きたいのでありますが、三点お
伺いいたします。
その第一点は、本
協定が殆んど呉市地区とその周辺に影響が限られておりますることと、更に本
協定によりまして、かなりの影響と、我が国に対する極めて厖大なる負担も
考えられますので、本
協定の
審議が一体いつ頃になるのか、一応の予定をいたしたいと
考えますので、かねて
総理や或いは副
総理は、平和はだんだん近づき、戦争は遠のいている。
従つて朝鮮におきます動乱も平和になる、これが期待できるという言明が曾
つてあつたのでございますが、このような情勢の分析から
考えますると、もはや国連
協定によ
つて新たに国連軍の駐留を長期に亘
つて認めるかのごとき必要はもはやないのではないか、かようにも
考えられるのであります。従いまして、この点に関して、国際情勢上
如何なる平和への見通しをお持ちか、延いては本
協定の動機とな
つておりまする朝鮮動乱の見通し等について、その終結するであろう時期、見通しについて明確なる御
答弁を頂きたいと思うのであります。
第二の点は、本
協定を見ますると、殆んど無期限の国連軍駐留とも解される状態でございます。
従つて日本国といたしましては、極めて重大なる関心を持たざるを得ないのであ
つて、
只今仏領インドシナにおける動乱或いは又将来不特定なる地域に新らしく動乱が起つたような場合に、朝鮮動乱と同様、本
協定を基礎として、
日本が新たなる基地としての国連援助、こういうことが要求せられるやにも容易に想像し得るのであります。この点につきまして副
総理の所見を承わりたいのであります。
第三点は、本
協定の示します
通り、国連軍が
日本に駐留いたしますためには、講和条約の定めに基いて新たなる
協定を必要といたしております。即ち対日平和条約の第六条(a)項は、すべての占領軍は、平和条約発効後九十日以内に
日本から撤退しなければならない。但し新たなる
協定が結ばれた場合には駐留を続けることができると、このようにな
つております。然るに今日ここに承認を求めて来られておりまする
協定以外に、何らの
協定も存在いたしておらないと
考えるのであります。そう
考えて参りますると、従来まで長期に亘る
協定なき下の駐留は、国際法上の違法ではないかと
考えますが、この点は
如何でありましようか。又日米安全保障条約の署名の際の事情を勘安いたしますると、国連軍の駐留は吉田、アチソン交換公文にあ
つて、これが基礎だとも言われているやに聞くのであります。併し吉田、アチソン交換公文は、単に対日平和条約の第五条(a)項の(iii)の点を繰返したに過ぎないのであ
つて、当然別途に本案のごとく、内容は別といたしまして新らしい
協定が必要であると解するのであります。この点は
如何でありましようか、御
質問を申上げます。
次に、外務
大臣に対しまして八点質疑をいたします。
その第一の点は、国連
協定締結に際しまして、現地におきます委員会が
設置せられることにな
つております。その現地委員会の機能、権限等につきましては極めて本
協定実施に関して大なる影響を持つものでありまして、この現地委員会に対して、その職務、権限、その範囲、運営の方法等について明確にして頂きたいのであります。国連軍の施設の利用状況や、或いはその他の事情を刻々本委員会が調査をいたしまして、
日本側に返還せしめるべき事情が出て参りましたならば、これを要請せしめるごとき、実質的な権能を与える必要があるやにも
考えるのでございまするが、この点現地当局等においても強く要請いたしているところであります。これら権能、運営について、その現地の要請等容れる用意があるや否や、この点お
伺いいたします。
なお本
協定は、二十数条余に亘るかなり厖大なものであり、且つ内容は、極めて負担の多きに失する状況でありまするがために、かなり細かい点もお
伺いいたしたいのでありまするが、時間も定めがございまするので、爾余の点は委員会に移すといたしまして、大きな点のみをお
伺いいたすことといたします。
従つて第二の点に移りまするが、国連軍のうち英連邦軍へ提供いたしまする施設については、原則として現状止むを得ず、拡大をしないという、こういうことは勿論でございまするが、将来に亘りましても、兵員、物資これらの減少に応じまして逐次縮小し得るようにこの
措置を講ずべきであると
考えるのでありまするが、この点のお
考えと、更に現在接収いたしておりまする施設が必要以上に厖大であります。私は本
協定に直接
関係ある呉市についても調査を現地でいたしました。非常に接収が必要以上の厖大を極めております。新らしい戦争が起るやの
印象さえ受けるのでございます。こういう厖大な接収により平和転換への工場建設や港湾の整備の用地、こういう点について、誠に遺憾な点であ
つて、殆んどさような平和建設への転換が余儀なくされております。これらの点につきまして岡崎外務
大臣は強く要求返還をせられたと思うのではございまするが、その実効が上
つておりません点を勘案いたしまして、ここにその返還についての見通しと今後の
政府の
態度をお
伺いいたします。
第三の点は、施設の集約的な使用とか或いはその他の事情に基きまして、国連軍の自主的な
立場から、その施設を移転する場合があります。で、そういう場合に、その移転費用は、国連軍或いは少くとも現地市民等の一方的な負担になるべきではないと
考えるのでございまするが、これらについて
政府はこの負担の点をどのように
考えて
協定せられたのであるかお
伺いいたしたいと思います。第四点は、旧軍施設を転、活用して、産業都市、港湾都市の建設を進めている現地にと
つては、施設の再接収、これは重大な支障を与えることになるのであります。過去、旧軍港施設を調査いたして見ますると、一旦接収解除、解放せられた施設等が、平和的な産業に転換せられ、相当な投資、設備をいたしました暁に、再び強権を以てこれが接収という
事態が起
つて、至大なる迷惑をこうむり、ひいては将来への平和転換というものが大きな支障を来たしておりまするが、このような再接収ということについて、
政府はどのような
態度と見通しでありまするか、お
伺いをいたします。更に第五の点は、呉旧軍港の現状は、英連邦軍の軍港と
言つても過言でないほど多く占用せられております。この状態でありまするがために、呉市の港湾機能は甚だしく阻害されるというふうに
考えると同時に、今後当然これらの占用は、逐次早急にとかれ返還をしなければならないし、この要求は地元、現地市民の大きなる要求とな
つて現われつつあるのであります。この点について今後の返還を要求せられる
意思があるかどうかお
伺いいたします。若し事実問題として返還が容易でないという場合には、当然
政府としてこれが代替の施設を考慮せられなければならないと思うのでありまするが、具体的なその対策を承りたいのであります。第六の点は、この
協定締結前に公務の執行中にあらざる国連軍からの負傷、死亡或いはその他の財産上の損害が、非常に累積増大いたしているのが現状であります。これらの補償についても、十分公正なる解決がなされなければならないと
考えるのでありまするが、具体的な
政府としての解決の用意があるかどうか。ありといたしますならばその内容をお示し願いたいのであります。第七の点は、国連軍は、
日本国における施設を使用することができる。こういう条文に相成
つておりまするが、日米行政
協定のごとく提供の義務というものがこれはないもののように
考えるのでありまするが、この点は
如何でございましようか。更に義務がないといたしました場合には、国連軍の施設使用に伴
つてしばしば生じまする特別損失について、国連軍側が補償する
責任ありとの見解をと
つておられまするか。又その際、
政府は立替払い等の
措置をとられて、後日国連軍との間で決済せられるような意図を持
つておられるか。この点について特に
お答えを願いたいのでございます。第八の点は、駐留軍の行為によりまする農林、水産、これらの損失について、日米行政
協定の場合を見ますると、これはその
協定に対応して特別な立法がなされて、買収或いは補償などの
関係で或る程度の保護をされているやに思うのであります。今回の国連軍
協定の締結を見ますると、その点が不明確でございまして、この点、
国民の当然の権利を保護されるためには、特別立法化を
考えておられると思うのでございまするが、その点についてお
伺いいたし、更にその点をお
考えであるならば、その概要について承りたいのであります。
以上が、外務
大臣に対しまして、その交渉場裡における状態と併せて
お答えを願いたい点であります。
次に大蔵
大臣に対しまして、四点お
伺いいたします。この点は自治庁長官に
お答えを願うべき筋のものであるやに
考えるのでございまするが、併し現状は、むしろ大蔵
大臣がネツクとな
つているやに伝えられておりまするがために、一応大蔵
大臣に四点お
伺いいたします。若し自治庁長官において
お答えの必要があるとお
考えになります場合には
お答えを願いたいと、併せてお願いをいたしておきます。
その第一点は、呉の市民は、旧軍事施設の活用によりまして、この施設の民間産業への切換え、いわば平和産業、港湾都市、こういうことを念願して参
つておるのでありまするし、唯一の立地条件、基盤とな
つております。で、この点は、市民の生活の安定、或いは市税収入の増加、これらを念願して参りましたが、今回の国連
協定は、この念願いたしました点に大きく反しまして、産業転換に支障を来たしますと共に、固定資産税、或いは電気ガス税など、地方税の適用を全面的に不可能ならしめて、一方的に国連軍の優位を
協定いたしております。このようにな
つて参りますると、市の財政には甚大なる影響を与えるのでありまして、若し
協定が現状において今日
如何ともできないと仮にいたします場合でも、当然、
政府はこれに対しまして、何らかの善処をされる必要がありはしないか、国家的な見地でこれらの事情を解決すべきではないかと
考えるのでございまするが、この点についてその善処のほどをお
伺いいたします。
第二の点は、呉市民は、国連軍駐留によりまして、必然的に年々相当多額なる行政負担を余儀なくされております。一例を挙げてみますると、かなり厖大な資料を持
つておりまするが、集約的に
考えて、少くとも四十億になんなんといたすと思うのであります。このような現実の出費に対しまして、
政府は
如何なる
措置をとられるのであろうか、この点をお
伺いいたします。第三の点は、日米安全保障条約に基く米軍駐留地域は、防衛分担金の支払によ
つて何らかの補償を受けておりまするが、国連
協定に基く国連軍駐留地域に対しましては、
政府としてどのような
措置をとられるか。第二の
質問と併せて
お答えを願いたいのであります。第四の点は、本案の第十九条に基いて、必要とする立法、予算等が速かに
措置せられなければならないことに相成
つております。で、この場合、特に予算上、具体的な
措置をどのようにとろうとされているか、その時期的な面についても併せて承わりたいのであります。
次は通産
大臣に対しまして、ただ一点だけお
伺いをいたします。
今日の旧軍港市、大きくは四つありまするが、その中でも、本
協定と密接な
関係を持ちまする呉市の現状は、過去長い間、国家のために奉仕して参
つております。これも戦争への強制という
立場から、余儀なくかようなことに相成
つて参りました。今日、終戦と共に、その施設、立地の従来の条件というか、このようなものが根底から崩れて参つたのであります。いわば時の
政府の捨子のような状態にありまして、二十万市民のみならず、周辺多数の人々は、呉市の疲弊と共に、将来を極めて不安に感じている状態であります。この呉市について、すでに平和都市への転換のために特別立法がなされていることは御承知の
通りであります。然るに今日この特別立法の趣旨は、実際には具現せられないで放置せられているのみか、次第に再び軍港市防衛帯などのために振替えられんとするような気配さえ見えるのであります。このことは当該現地並びに周辺の広く好まざるところでありまして、むしろこの際、通産
大臣におかれては、国の通産行政の一環とせられまして、これら厖大な施設を、国家の
立場から、総合的に平和への産業転換を図り、国の力によ
つて真に合理的に公正なこの施設への解決がなされなければならないと
考えるのでございます。これらの点について何ら見るべきものがなく、ただ単に現地当局に一方的に任されているのみで、何ら実効が上
つておりません。私は現地をつぶさに調査いたしましたが、あの厖大な施設が全く不経済なままに、ぽつぽつと利用というか、使用せられて、いわば利権が絡んだ形で諸所に僅かながらな民間工場ができている状態でありまして、さしもの立地条件を殊更に失効いたしつつあるという現状であります。こういう点から通産行政の一環としての通産
大臣の所見を承わりたいのでございます。
私は、以上申上げた若干の
意見にありまする
通り、この際、今からでも、国家的な、総合的な
立場から、平和転換への計画が進められなければならないと思うのでありまするが、この点をお
伺いいたしたいのでございます。
最後に
労働大臣に対しまして四点お
伺いをいたします。
第一の点は、国連
協定に附随いたしまして、国連軍との間に労務基本契約を、暫定的ではなくして、これを締結する
意思があるかどうか、この点でございます。で、若し締結されるとしますならば、その時期は速かなるを要すると
考えますけれ
ども、この時期については、いつ頃であるか。又、内容は日米基本契約以上に公正平等なものでなければならんと思うのでありまするが、この点について
政府の
考えはどうであるか。又、若し締結しないという場合が生じました場合、日米基本契約に準じた取扱をすることになるとは思うのでありまするが、その場合にも、前述のごとき考慮が必要であると思うのであります。この点につきまして
労働大臣のお
考えを承わりたいと思います。
第二の点は、労務基本契約の締結交渉が現地で行われるのであるか、或いは東京において行われるのであるか、この点であります。若し現地で行われるというような場合は、
政府の出先機関をより強化せられまして、国連軍労務本部長との間に、対等の見劣りのない形の交渉ができるよう、労務
担当官の優秀な者を派遣する必要もあろうかと
考えるのであります。この点に関する御
意思をお
伺いしたいのであります。更に又、労務諸条件の履行を確保いたしまして、労使双方の円満且つ平和的な
関係を維持するために、練達なる労務
担当官を現地に常駐せしむる必要があると思うのでありまするが、その点について
政府はどのようにお
考えですか、お
伺いいたします。
第三の点は、米軍で行われましたように、予算上、或いは軍の作戦上、国連の一方的な
都合によりまして、相当多量の解雇者を将来出すような場合が容易に予想し得るのでありまするが、このような場合、特殊な事情にありまするこの現地、呉市に対しまして、
政府がその失業対策を考慮すべきであると思うのでありまするが、その考慮せられているであろう具体的な案をお示し願いたいのであります。
最後に第四の点は、本
協定案の第十六条に、(C)、そのうちの(ii)司であります。これによりますると、紛らわしいものが挿入されておりまして、特に括弧してサボタージュ、この(サボタージュ)は、国の安全に関する罪として含まれている。このようにな
つているのでありまするが、このことは当然、本案の第九条の4、又は同様に掲げておりまする第十四条の七にいうところの「労働者の権利は、
日本国の法令で定めるところによらなければならない。」、こういう点と競合するやに一応
考えられるのでございまするが、この点について特に明確にいたしたいのは、
日本の法令、労働法、憲法、これらの法令で定めるところによるといたしますならば、罷業を以て対抗するなどの場合には、これはこの第十六条二の(C)(ii)等に謳いまするこれらサボタージュなどは適用せられないと解釈されるのでありまするが、この点について、
労働大臣から明確にして頂きたいのでございます。
以上を以ちまして私の
質問を終りまするが、まだ若干時間があるようでございまするから、御
答弁如何によりましては、再
質問いたしたいと思います。いずれにいたしましても、箇条的に簡単に申上げましたので、相当質疑の点は数多く亘
つておりまするけれ
ども、以上申上げた順次に御
答弁を特に煩わしたいと
考えます。(
拍手)
〔
国務大臣緒方竹虎君
登壇、
拍手〕