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1954-04-16 第19回国会 参議院 本会議 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十六日(金曜日)    午前十一時二十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第三十五号   昭和二十九年四月十六日    午前十時開議  第一 清掃法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二 あへん法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第三 日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第四 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、繊維製品検査所の出張所の設置に関し承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、場朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  この際、お諮りいたします。徳川頼貞君から、病気のため会期中請暇の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて許可することに決しました。      ——————————
  5. 江田三郎

    江田三郎君 私はこの際、肥料問題に関する緊急質問動議提出いたします。
  6. 天田勝正

    天田勝正君 只今江田君の動議に賛成いたします。
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) 江田君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。  よつて、これより発言を許します。江田三郎君。    〔江田三郎登壇拍手
  9. 江田三郎

    江田三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、当面の肥料問題について若干の質問をいたしたいと思います。  丁度、昨今春肥需要最盛期になつておりますが、肥料のうち一番重要なのは硫安であります。一昨年及び昨年は、硫安ダンピングがやかましい問題になりましたが、日本農民は、今日もなお国際価格よりも高い硫安を買わされているのであります。政府は二十七年の八月以来、この硫安価格を適正にするために安定帯価格を設けるように指導しておられますが、私どもの疑問といたしますことは、一体何を基礎にしてこの指導行なつておるかという点であります。いやしくも政府として指導に当られる以上は、生産者消費者とに、おのおの勝手なこと誓わせてやくざの喧嘩を仲裁するように、いい加減なところで手を打つということではないと思うのであります。指導という以上は、確たる根拠がなければならんはずでありまして、その根拠は一体何であるかということをお伺いしたいのであります。  安定帯価格措置がとられるようになりましたのは、ダンピング問題が起つてからであります。ダンピングであるか否かということは、生産費はつきりしないとわかりません。ダンピングにならんように、而も国内価格の安定のために適切な措置をするという以上は、生産費幾らかということが何よりも大切な前提条件であることは、誰が考えてもわかりきつたことであります。安定帯価格指導に当る経済審議庁農林省並び通産省は、生産費基礎としてやつておるのか、或いは又何の根拠もなしにその日暮しで事に当つているのかをお尋ねしたいのであります。政府としては、統制廃止以後は法律に基く調査権限がないから生産費はわからんと答えられるかも知れません。併し法律上の権限がなくても調べる方法は幾らでもあります。通産省にも農林省にも、或いは経済審議庁にも、それぞれ肥料専門家がたくさんおられるのでありまして、この人々が揃いも揃つてでくの坊というわけではないと思うのであります。殊に通産省としましては、硫安工場に対する開発銀行の融資を推薦するに当りまして工場が添付しておるところの生産費計算に目を通しておるはずであります。この工場設備はどうか、能力はどうか、生産費幾らか、何ほどの合理化資金をつぎ込んだならば、生産費幾ら下るかということがわからないで、盲滅法に処理しておるのではないと思うのであります。生産費がわからんということは、今更言えんはずでありまして、この点お答え願いたいと思うのであります。  現に、三月十六日の本院農林委員会において、通産省柿手説明員河野謙三君の質問で、河野君の「そうしますと、各社別原価計算を一応通産省としては持つておる。併しそれを公表する自由を持たない。こういうわけですね、そうですが。」というこの質問に対しまして、「さようでございます。」と答えているのであります。そこで、この政府調査による生産費が果して幾らであるのか、又この生産費から見て現在の安定帯価格が果して妥当であるかどうかを、通産農林大臣お答えを頂きたいのであります。  で、現在安定帯価格は一かます八百五十三円でありますが、私どもは、これは高過ぎると思うのであります。硫安輸出は出血だと、こう言われておるのに、どのメーカー株主配当は二割五分乃至一割五分行なつているのでありまして、この点から見ましても、国内価格が高過ぎるということは言えるのであります。ところが最近の実勢相場安定帯価格を下廻つておりまして、メーカーから全購連に対しまして、一かます十円のリベートを出すような状態になつております。この点からしますると、安定帯価格があるがために、もつと値下りするものを逆に食止めておるんではないかとも考えられるのであります。昨年の凶作以来、農家経済は急速に悪化して参りましたが、政府肥料政策は、資本利潤を守ることに篤く、農民を忘れたものとしか見受けることができないのであります。現在、政府臨時硫安需給安定法案提出しており、私ども農林委員会で、この審査行なつておるのでありますが、この経過を見ましても政府の反農民的態度指摘できるのであります。この法案提案説明によりますというと、価格安定のため生産費基準とし、農産物価格その他の経済事情を考慮して適正な販売価格を公定するということになつております。ところが私どもには政府考えておる生産費はつきりしない。従つてこの法案成立の暁、どのような価格が公定されるかということは見極めが付かない。そこで私どもは、生産費資料提出を求めたのであります。資料があるということは、先ほど私が読上げました農林委員会議事録はつきもいたしております。而も政府は、これを出し渋るのであります。遂に農林委員会といたしましては、成規の手続によつて議長を通じて、政府資料提出要求をいたしましたところ、四月六日、農林大臣通産大臣の名を以て、これに拒否の回答を寄越しております。私はこの点について、緒方総理にお尋ねいたしますが、国会法第百四条には、「各議院から審査又は調査のため、内閣官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。」となつております。硫安生産費は、法案審議上誰が考えても必要な資料であり、委員会答弁によると、政府が便宜調査した資料はある。参議院農林委員会は、議長を通じて成規にこの資料提出を求めた。然るに政府は、これを拒否した。これは明らかに国会法第百四条の違反であります。(拍手)両大臣のこの回答によりますというと、「各種資料参考として、平均的原価を推定概算することは可能であつて、これを事務上の参考としている。併しながら、この原価についても通商産業省見解公表することは、これを差控えたい所存である。」というのであります。これによりましても明らかに資料の存在を認めながら、その提出を拒否しておるのであります。尤も回答の最後に、「ついては、懇談会等適当な機会において、事務当局より上記平均的原価試算について篤と御説明させることといたしたい。」と附加えてあります。或いは副総理は、この附けたりを以て国会法違反ではないと抗弁をされるかも知れませんが、それは成り立ちません。なぜならば、要求は、当院の農林委員会委員長名を以て議長を通じて行なつたところの国会法によるハウスとしての成規なものでありまして懇談会は、何ら成規機関ではないのであります。参議院要求を拒否したことは間違いはございません。或いは政府は、生産費公表輸出等に障碍を来たすと逃げられるかも知れませんが、需給安定法成立の暁には、生産費は公開されなくてはなりません。従つてこれは理由になりません。又如何なる理由がありましても、国会法第百四条は拒否できる例外を認めていないのでありまして、この点、旧国会法とは違つておるのであります。この国会法違反について、政府は如何なる責任をとられるのか、明確に答えて頂きたい。私ども議員は、調査のための十分な機関を持つていないのでありまして、政府議員資料要求を拒否されることは、立法府審議権を奪い去るものと言わなければならんのであります。(拍手)事は、一農林委員会の問題ではなくして、立法府行政府との本質的な問題であります。かかる国会法第百四条違反は未だ前例のないことでありまして、重大な慣例がここで初めて作られるのでありますからして、政府答えはあいまいであることを許しません。なぜ政府生産費公表を拒否するのか。生産費公表すれば、現在の不当に高い安定帯価格安定法成立後の販売価格を引下げざるを得ません。農民は喜びましても、肥料資本家不当利潤を吐き出さなければならんのであります。資本家不当利潤を守るためには汚職をもあえてする政府は、同じく資本家利潤のためには、国会法をも無視して憚からんのかということを御答弁をお願いしたいのであります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  10. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 三月三十一日の参議院議長から内閣へ御要求があつたのに対しましてお答え申したことを繰返すようになるかも知れませんが、硫安生産の所管をいたしておりまする通産省におきましては、平均原価を推算することは可能でありまして、事務の必要上その資料を持つておりますけれども各社生産原価をとつていないのでありまして、従いまして、御要求ではありまするが、やはりこれを提出し得ない事情を御了承願うほかはないのであります。  国会法の百四条は、成るほど今御指摘通りでありますが、これに対しましては、その間の政府平均原価に対する資料その他につきまして、秘密会等であれば申上げることができるかと思いまするが、(「秘密にする必要があるか」「はつきりすればいいじやないか」と呼ぶ者あり)これを資料として提出することは差控えたい。それを御了承を願います。    〔国務大臣保利茂登壇拍手
  11. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 政府といたしましては、江田さんが言われますように、生産コスト調査する権限が今日ございません。二十七年の秋におきまして硫安価格が著しく暴騰いたしました。農家経済に与える影響等を考慮いたしまして、できるだけこの肥料価格を安定して農家の経営を安固ならしめなければならないという考えで、安定帯価格という指導政策とつたわけでありますが、併しながら、どういうコストによつてこの硫安ができ上つているかという確実なる資料政府は持たないわけでありますから、従つてその安定帯価格基準としましては、一応はやはりこの市価を基準として、而も生産の今後の見通し、内需の動向及び農家経済に与える影響等を考慮いたしまして九百円を基準として上下三十円の幅を持たせる安定帯価格を設定いたして、その中において取引が行われたことは御承知通りであります。お話のように、昨年二月におきましては、これを四十円引下げまして、八百六十円を中心として今日まで来ておりますが、この春肥状態は、昨年と比べますれば、同じ安定帯価格ではございますけれども、昨年の春肥状態と比較いたしますれば、今日全購連と各メーカーと協定取引いたしておりまする価格は、約四十円から四十五円を引下げて八百二、三十円のところで取引行なつておるわけでございます。併しこれが果してそのお話のように、不当に高い価格になつておるかどうかということは、政府といたしまして、生産コスト調査するところの権限を持つておりませんから、それは私は高いとも安いとも断定的にこれを申上げることはできないわけであります。併しながら、肥料は何と申しましても、農家にとりましては最大の生産資材でございますので、これが妥当な納得せられる値段農家に供給せられるという必要を認めまして、そのために昨年以来臨時硫安需給安定法の御審議を煩わして、そうして政府権限を持つて生産費調査し、生産者最高販売価格を設定して、そうしてこの肥料の適正な価格を設定いたしたい。こういう考えでやつておるわけでございます。    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  12. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) お答えいたします。  硫安生産原価につきましては、通産省におきまして、生産の数量、現在量、価格等、或いは一応現状を前提といたしまして、各種資料参考として平均的原価を推算することは可能でもございまするし、これを事務上の参考資料として持ち合せております。従いまして、この分につきましては、懇談会委員会等におきまして、然るべく篤と御説明をこの上ともいたしたいと存じております。  それから各社別、或いは特に工場別等の具体的な原価資料は、政府といたしましても、公式に調査したものを持ち合せていないのでございます。従いましてこれを提出するに由なしというわけでございます。この点を御了承願いたいと思います。
  13. 江田三郎

    江田三郎君 再質問
  14. 河井彌八

    議長河井彌八君) よろしうございます。御登壇を求めます。    〔江田三郎登壇拍手
  15. 江田三郎

    江田三郎君 私は、日本農林大臣肥料のことについてまるで知らないということについて、今更のようにあきれてしまつたのであります。(拍手)一体、現在の安定帯価格が九百円前後三十円というものをいつきめたのですか。そんな値段はどこにありますか。安定帯価格値段を知らないような者が農林大臣でおるから、我々はこういう質問をしなければならんのであります。然るに、その取引価格幾らかと言えば、今の農林大臣説明によると、八百二十円から三十円だ。若しあなたの説明通りであれば、九百円できめたものが、実際には八百二十円、八百三十円で取引されておることになるのであります。きめた値段と百円からの違いが出るのであります。そういうようなでたらめなものが安定帯価格と言えるのでありますか。それを以て、あなたは農林大臣の責を尽していると言えるのでありますか。余りにも人を馬鹿にしていると思うのであります。  更に私は、副総理並びに通産大臣にお尋ねいたしますが、通産大臣は、この各社別資料がない、併しながら平均的な数字はある、これは懇談会委員会等説明すると、こうお答えになりました。委員会説明するというならば話はわかります。これは成規機関であります。併しながら懇談会というものは、これは議院成規機関ではないのでありまして、成規要求に対する答えに、これに、文書に書いてあるのは懇談会説明するということだけなんであります。若しこの答えをあなたが今に至つて修正されるならば、それで筋は通りますが、若し修正されて、この懇談会というのを、そうではなしに委員会と言うのならば、それならばそれでよろしいが、一旦出したこの公文書処置は一体どうするのかということなんです。今の答えと、この公文書は違うのであります。この公文書に関する限りは、はつきりと、どう抗弁されたところで百四条の違反であります。百四条の違反でないと言うのならば、その由を説明して頂きたい。副総理にも、して頂きたい。その説明ができないのならば、この出した書類処置はどうするのだということをもう一遍はつきりとお答え願いたい。副総理と両方お願いいたします。    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  16. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 百四条につきましては、先ほど申上げましたように、御指摘通りでありますが、各社別生産費はとつておりませんので、これはどうも出せんように思います。ただ推算につきましては、或いは秘密会等お話ができるのじやないかと考えております。(「処置はどうするのだ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣保利茂登壇
  17. 保利茂

    国務大臣保利茂君) お叱りを受けましたけれども、先ほど申上げまするように、第一回に安定帯価格を設定いたしましたのは昭和二十七年の十月であります。一俵、その際は最低を八百七十円、最高九百三十円の安定帯価格であります。先ほど申上げましたように、その後の肥料事情に鑑みまして昨年の二月以降は、最低値八百二十五円、最高値八百九十五円を以て安定帯価格といたしているわけでございます。今日の取引は、この安定帯価格の中において取引が行われている、こう申しているわけであります。    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  18. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 重ねてお答え申上げまするが、私はこの回答と私の先ほどの答弁とは食い違つておらないつもりであります。私の答弁申上げましたことは、この回答につきましての解釈を申上げたわけでございます。  それからその次に、遺憾ながら、公式に持ち合せておりません調査提出することが不可能でございます。持ち合せておりますものにつきましては、単に書類等によつて答弁申上げまするよりも、場合によりましては懇談会等におきまして、我々の考えておりますることを率直に御説明いたしたほうが適当と思いましたので、先ほどのような、答弁のような扱いをしたいと思うのであります。
  19. 江田三郎

    江田三郎君 もう一遍質問
  20. 河井彌八

    議長河井彌八君) よろしうございます。登壇を求めます。    〔江田三郎登壇拍手
  21. 江田三郎

    江田三郎君 農林大臣答えは、自分議事録を読まれたら、自分の矛盾に気がつくと思いますから私は申しません、時間がありませんから。副総理通産大臣にもう一遍念を押しますが、あなたは、通産大臣委員会等答弁をするということは、食い違いではなくして、この文書解釈だと言われましたが、併し懇談会という字から、どうして委員会という答えが出るのでありますか。懇談会懇談会であります。懇談会は、成規機関ではないのであります。委員会成規機関なのであります。懇談会が、委員会という言葉をも含むというような、そういう詭弁を以てこの問題を片付けられては困るのであります。これは立法府行政府の基本的な本質的な問題であります。この問題の処理如何によりましては、我々は議員として国会審議権を奪われることになるのであります。こういう重大な問題につきましてさような詭弁は私は許されないと思うのであります。国会法百四条違反は、前例のないことであります。それだけは、はつきりとした答弁でこの問題を処理しなければ、あとへ大変な尾をひくと思いますので、もう一遍重ねてお尋ねいたしますが、委員会答えるというのに間違いないのか。委員会答えるということになると、この文書とは違つて来るのでありまして、然らばこの文書に対する責任は、誰が負い、どう処理するかということをもう一度お答え願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  22. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 私のお答えは、先ほど申しましたお答えを繰返すだけでございますので省略させて頂きます。    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  23. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この回答文書でございますが、この中に、「原価についても通商産業省見解公表することは、これを差控えたい所存である。」こういう一項がございますことは御承知通りであります。で、これらの点につきまして私は委員会において、例えば秘密会というような恰好で御説明を申上げることにいたしたい。このことは、先ほど申しましたようにこの文書の私の解釈でありまして、矛盾することはございませんし、従つて国会法違反するとは考えません。(拍手)      ─────・─────
  24. 堂森芳夫

    堂森芳夫君 私はこの際、第十次造船計画に関する緊急質問動議提出いたします。
  25. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、只今堂森君の動議に賛成いたします。
  26. 河井彌八

    議長河井彌八君) 堂森君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて、これより発言を許します。堂森芳夫君。    〔堂森芳夫登壇拍手
  28. 堂森芳夫

    堂森芳夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、第十次計画造船促進に関する緊急質問をいたさんとするものであります。  我が国の経済自立のためには、海運造船拡大強化が是非とも必要であることは申すまでもないところであります。昭和二十九年度の貿易の見通しにおきましても、約九千万ドルくらいの輸入超過が予想されるのでありまして、これを克服するためにも、どうしてもこの際、海運造船の飛躍的な拡充強化を図らねばならぬと思うのであります。  私が国の造船の稼働可能の船台総トン数は六十五万トンと言われておりますが、これだけの設備を持ちながら、政府の両院における答弁を見ておりますると、今年度の第十次造船建造量は約十七万総トン輸出船舶の予想約十万総トン、更に保安庁の船舶その他を合せましても五万総トンでありまするから、合計三十二万総トン程度大型船として昭和二十九年度に受註を予想されておるのであります。然るに政府は、リベートにからむ未曾有の造船疑獄のために、未だに第十次造船計画具体策を持ち合せていないのでありまするが、このことは、日本経済自立、更に造船所、これに関連する下請工場等に働きます労働者にとりましては死活問題でありまして、大きな社会問題となるのであります。  今や白日の下に暴露されつつあります造船疑獄は、その深さと拡がりにおきましては、まさに近代疑獄史上稀に見る大事件であります。この事件は、国家資金を食いものにしようとするところの保守政治勢力資本家階級の結託を如実に示すものであります。昨日の朝日新聞によりますと、検察当局は、「造船疑獄三つの線、ワイロ性の強いものに捜査集中、浮ぶ代議士の名数十」と報じておるのであります。この姿は、あたかも甘きに集う蟻のごとくでありまして、国民の血税を吸う吸血鬼とも称すべきものであります。今や疑獄国民の視聴の焦点となり、盛り上る憤激となつておるのであります。この醜態は、即ち吉田内閣が五年間の失政を集約的に表現したものでありまして、まさに歴史的意味を持つものであります。吉田首相は、芦田内閣疑獄事件で倒れたあとを受けまして組閣せられましたときには、疑獄事件を徹底的に究明し、その結果を日本だけでなく、世界に向つて公表し、そうして日本の不名誉を救うのだと言つておられました。然るに、このたびの疑獄事件では、徹底的に究明して日本の不名誉を救うつもりだとは言つておられません。いずれ、司直の手に渡つておるのであるから、その結果が判明するのを待つて善処するのだと言つておられます。吉田首相芦田内閣あとにおいて政権を担当されましたときには、司直の手で結果がはつきりするのを待たないで、歴史上稀に見る不祥事だとか、日本の不名誉だと断定しておるのであります。昭電事件は、未だに裁判の進行中であります。結果ははつきりしておりません。そうしますると、吉田首相が当時不祥事とか不名誉だと言われましたことは、恐らく政治上の道義から判断せられたものと思うのであります。そうしますと、吉田首相言葉は、前後論理が一貫しておりません。内閣を造るたびに道義の高揚を一枚看板のように掲げて来られました吉田首相は、今日の造船その他の疑獄政治責任を感じられないのでありましようか。吉田首相は欠席しておられますので、緒方総理にお尋ねいたします。  自由党は一昨日、保守新党に関する声明書を発表いたしました。伝え聞くところによりますと、緒方総理の筆になるものだと言われております。一体あの声明書を読みまして、国民は何と感じたでありましようか。今更のごとく、少数党内閣であるから国会の運営が明朗でないとか、時局の要請が、政局の安定と人心の一新を求めておるとか、内外の情勢が強大な政治力を必要としているとか、述べられておりますが、これは畢竟ずるに進展する汚職におののいて、その責任をとろうとせず、保守政権を維持せんとするにあることは明らかであります。毫も汚職の責任などには触れられていないのであります。民主主義政治とは責任政治であります。又輿論政治であります。自由党の幹事長の佐藤氏も、一昨日造船疑獄に関連して召喚されたと言われております。与党の幹事長と言えば、政府にとつても表裏一体の極めて重要なるポストであります。与党の幹事長が、造船疑獄にからまる大きな疑いを受けるということは極めて重大であります。このような事態でも内閣責任をとろうとしないのか。御所見のほどを承わりたいのであります。  造船疑獄の発展は、自由党の幹事長の取調べに及んで、いよいよその本筋に入つたかの感を抱かせるものでありますが、ここまでに来る間に、犬養法相は、与党の圧力によつて法務大臣という立場から、いろいろと検察当局に対して捜査の手心を加えることを要求しておるという噂がありますが、若しこれが事実とするならば、断じて許されないところであります。事実、議員の逮捕許諾要求国会提出が、閣議決定が遅れておるという理由で延しておつた事実もあるのでありまして、かかる小手先の手段に対し、検察当局が憤慨し、検事総長が、その促進方を要望するという事態があつたのであります。我々はむしろあらゆる困難を排除して、この汚れ切つた内情にメスを入れている検察当局に対して、法相は激励を与え、更にその進展に尽力するのが法相としての立場に忠実なるゆえんであると考えるが、法相の所見は如何でありましようか。そもそも、造船疑獄の発生につきましては、その温床が挙げられるのであります。その一つは計画造船であり、又、計画造船国家資金であり、又、計画造船とその方法であります。疑獄の核心は造船利子補給法の改正であり、保守政治勢力資本家陣営の結託であります。すでに述べましたごとく、第十次造船計画の具体化は、焦眉の急を要する問題であります。我が党は、第十次造船促進対策並びに海運、造船両業界再編成案なるものを発表しておるのでありまするが、そこで大蔵大臣及び運輸大臣にお尋ねいたしまするが、今日造船疑獄が、かくも腐れ切つた姿をさらけ出しておるということは、造船会社や船会社が、政府資金を湯水のごとく浪費した結果であり、この面で資金の行先についての十分なる監督並びに監査が行われていなかつたことが、大きな原因の一つであると考えるのであります。今後第十次造船について、この種の弊害を排除して、造船の十分なる効果を挙げるために、如何なる方法で政府資金の使途について有効適切に使われているかを監査するか。この際、確信ある御答弁をお願い申上げたいのであります。  本年度の予算は、保守三派によつて修正通過いたしました。三派の共同修正は九十億円の歳出増を図り、財源の一部として開銀の投融資の中から十五億円を捻出することになつておりますが、造船に対する融資百八十五億円を更に圧縮して、造船融資にのみそのしわ寄せをするのではないかと言われておりまするが、この点に対しまして大蔵大臣、運輸大臣にお尋ねしたいのであります。  市中銀行におきましては、造船疑獄の進展と相待つて造船融資に対する協力は難色を示しておるのでありまするが、予定されている市中銀行三割の協力が得られない場合、政府はどのような措置考えておられるのでありまするか。又政府は市銀の三割協調融資を努力して参つたようでありまするが、現在如何ようになつておるのでありましようか。市中銀行が融資に難色を示しておる主要な理由は、海運業並びに造船業の再編成を希望しておると考えるのであります。外航船の国有、造船合理化審議会の民主化並びに強化、或いは造船業に対する単独事業法の設定など各種の方針を以て再編する意思がありや否やをお伺いしたいのであります。  一昨年並びに昨年の我が国におきまして建造いたしました総トン数を見まするならば、二十七年度は六十四万総トンであります。二十八年度は四十万トンでございまして、来年度は更に減少して一二十二万トンと予想されるのでありまするが、非常な激減でございます。而も目下建造中の船舶が、四月、五月には完成いたしまして、我が国が持つておりまするところの常用の大型船台数五十七のうち、五月には、実に四十が空きとなるのであります。このことは、我が国の経済自立のためにも重大な問題であり、又多くの失業者を街頭に放り出すのであります。今仮に第十次造船十七万トンが着工されますといたしましても、又輸出船の十万トン、保安庁の船五万トンなどを着工いたすといたしましても、全国の造船所に二万人の失業者が発生し、更に造船関連工業を含めると、およそ七万五千人の失業者が出ることになるのであります。造船並びに関連産業を平均した扶養家族を二・五人と仮定しまするならば、およそ二十万の家族を含めた人間が路頭に迷うことになるのであります。更に、造船所が中心となつてつておりまする都市は、財政的にも大きな影響を受けるのでありまして、第十次造船計画の推進は、一日も放置することができないのであります。政府は五月中に、第十次造船を着工する自信ありや否やを明確に答弁願いたいのであります。大量の失業者の続出が予想される事態に対しまして、労働大臣は如何に対処されるか。又貴下は国務大臣として、第十次造船の促進について如何に努力しておられまするか。併せて御答弁を願いたいのであります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  29. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えいたします。  保守合同に関しまする自由党の声明書は御覧を頂いたように感じまするが、これは政府が昨年の選挙後、比較多数を以て、而も国会の指名にあずかりまして第五次吉田内閣を組織いたして以来の願望でありまして、ただその間に、居ながらいわゆる同憂の諸勢力の合流を求めるということは、これはやり方として適切でない。そういう考えを持ちました結果、百尺竿頭一歩を進めまして、先ずおのれを空しうして一層謙虚な態度を以て、できれば各保守勢力が従来の行きがかりを棄てて解体をして、その幹部も、民主的な公選によつてやるということによりまして、今、時局の要請でありまする政局の安定に貢献することができやしないか。そういう意味から党の態度を決し、あの声明書を発出いたしました次第でありまして、これと現在の汚職問題とは全然関係はございません。如何なる事態の下にも、今日の政局を安定する上におきまして、是非やらねばならないことであると考えております。  なお、現在の汚職問題、造船汚職に関しまして、いろいろ御意見がありましたが、自由党の佐藤幹事長が造船政治献金問題について聴取されたことは事実であります。併しながら、このいわゆる汚職事件の全貌というものは、まだ明瞭になつていないのでありまして、政府といたしましては、検察の手によりまして、どこまでも公正に、且つ徹底的に、この機会に政界のもやもやを究明することを切願しておる次第でありまして、その全貌が明かになりました上におきまして政府は善処するつもりでおりますることは、たびたび本議場におきましても総理大臣から申上げた通りであります。ただ、現在といたしましては、軽々な言動をいたしまするよりも、政府としましては、緊急なる諸施策を推進して行きますることが、政府としても一番大きな責任であると、かように考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  30. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えを申上げます。お尋ねの件は、政府は、与党の圧迫によつて検察当局に手心を加えておるような噂があるが、果してそうであるかというような御趣旨であつたと思います。しばしば申上げましたように、私どもは、少しも政治的圧迫を検察当局に加えておりません。国民の注目をしておりますかかる事件に対して、厳正公平でなくては議会政治に対する信用の問題もありますので、深くこの点は心にとめまして、厳正中正に行なつておる次第でございます。さよう御承知を願いたいと思います。    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  31. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。  この造船融資が適正に使われることにつきましては、誠にお話の点御同感でございます。従いまして私どもとしては、船会社に対しましては運輸省の考査室を通じまして、又それぞれの金融機関、開銀その他に対しましては、大蔵省として十分これを監督いたしまして、誤りなきを期したいと存じております。  それからこの三党協定の、いわゆる三党修正の結果としまして十五億の開銀に対する融資が減つたのでございまするが、この融資の減つたのは、どういう、何についてこれを減ずるかということにつきましては、只今開銀の資金状況等も勘案して、いろいろ相談をいたしておりまして、まだ検討中でございます。これが全額、現在の十次造船から減るものとは私ども考えておりませんが、十次造船につきましても若干減ることは避けがたいと存じておるのであります。  なお、市中銀行についてのこともございましたが、船会社の営業が不振になつておりますのは御承知通りでありますのと、又差入れます担保が不足等の関係もありまして、造船融資に多少躊躇しておることはお話通りでありますが、併しながら国策的見地から、その協力を求めまして、漸次市中銀行の理解を求めて、これは一つの大きな社会問題でもあり、国策的見地から勿論必要でもありますので、是非とも第十次造船は、予期のごとくにこれを遂行いたしたいと努力いたしておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣石井光次郎君登壇拍手
  32. 石井光次郎

    国務大臣(石井光次郎君) お答えいたします。  造船量が年々減つて、この数年減つて参りまして、本年度は何だかんだ入れまして三十二万トンぐらい、能力の半分ぐらいになるということは誠にお話通りでございまして、これがこのままやられましても相当船台は空くわけでございます。私どもは一方には海外からの注文によります造船輸出ということもできるだけやることによつて日本造船能力を維持して行きたいと、こう感じておりまするが、いずれにいたしましても、戦前から持つておりまする能力をそのまま今後も維持して行くということは、これはなかなか私は困難なことであろうと思うのでございます。これはいろいろな点から見まして、鋼材が非常に安くなるとか、いろいろなことで船の値段が下りまするならば、外国からの注文も来るのでございまするが、今いろいろの点から見まして、決してよそより安くない状態でありますから、それらの点も考えまして、何とかこの計画造船以外に外国への輸出というようなことも考えて、造船力を維持したいと思うのでございます。  さて、日本のほうの側だけ考えまして、二十九年度は約十七万トン見当だということを申しておるのでございまするが、これは船の性質によりまして多少の増減が出て来ると思うのでございますが、これを成るべく早くやらなければ困る。六月からは船台が殆んど空いてしもうということも、十分承知いたしておるのでございます。これについて本年、二十九年度は二十八年と同じようなつもりで、多少担保力等は減りまするが、市中銀行は、二十九年度までは私は貸してくれるのだということを考えておる。というのは、昨年の暮頃に金融業者から申出がありまして、それは担保力を我々のほうにもう少し増すようなことをしてもらいたい。ということは、開銀のほうに手厳しく担保を取られるから、少し緩めてもらいたいという意味であつたと思うのであります。それから三割を、もう少し減らせるものならば二割くらいにでも減らしてもらいたいというようなことでありましたが、これは希望でありまして、だんだん様子を聞きますと、二十九年度は市中、三割を、やつてもらえると私どもは思うておつたのであります。ところがさつきからお話がありましたように、造船疑獄というようなものも片一方に起つて、今年の造船になりますと、問題が非常に例年と違う形になりましたのは、金融業者も造船所も、それから船主も、皆一体となつてこの造船をやるということに向つておりましたのが、この造船所と従業員以外は非常にその力が、方向が、動く力が弱くなり、金融業者はそれに加うるに又二十九年度の財政の緊縮、又金融の引締という問題等のために、資金そのもので銀行が困つて参りました。それでどうもなかなか出せないというような声を盛んに出しておられるのでありますが、併し若しこれを出してもらわずに、どんな方法かで、政府だけの資金でやるといたしますと、昨年よりも減りました造船量が更に減つて来ることになりますし、何とかして私は、これはさつき大蔵大臣が申しましたように市中の協力を得るような方法をいろいろ今相談中でございますが、これによりまして造船量を確保して、今までのような方向によつて確保して行きたいと思うのであります。  それで肝心のお尋ねの五月に着手できるかという問題でございます。先頃から銀行業者、造船業者、それから船主、それぞれ一緒になつて打合せをし、政府も又経済閣僚の間で打合せをいろいろいたしまして、この十次造船にかかるにはどうすればいいかということで、又いろいろと実施に行くまでの相談をいたしている次第でありますが、まだ結論というところに至りません。併し私どもは六月に非常に困る状態になるということを十分了承しておりますから、できるだけ急いで、できるだけそれに調子を合わせるような形で造船の注文が出せるように、あらゆる努力をいたすつもりでございます。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎君登壇拍手
  33. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) 造船部門におきまする労働者は約十万人でございまして、計画造船に関係ある労働者は約七万人でございまするが、現在までのところ、賃金の不払も退職の問題も起きておりません。併しながら、只今お話のような問題は、非常に焦眉の急にあるものと考えますので、何といたしましても十次造船の計画を進捗せしむるということは、非常に大きな命題でございますので、私どももこの線に沿いまして、関係閣僚との間にできるだけこれを円満に進捗せしむるよう協力いたしております次第でございます。万一不幸にいたしまして失業等の生じます場合には、これが転職のことを職安機構をして図るなり、或いは失業保険なり、又万一不幸な場合には、失業対策法等の適用も考慮せざるを得ぬ場合もあるかも知れません。何といたしましても十次造船計画を推進する、これが非常に大きなことと思いまして、その点で努力いたしたいと考えております。      ——————————
  34. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、清掃法案  日程第二、あへん法案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、両案を一括して、議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長上條愛一君。    〔上條愛一君登壇拍手
  36. 上條愛一

    ○上條愛一君 只今上程せられました清掃法案及びあへん法案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。  先ず清掃法案について申上げます。現在清掃事業の根拠法規たる汚物掃除法は明治三十三年に制定せられましたものでありまして、五十数年後の今日の情勢に即応した清掃事業を行う上において、もはや十分にその機能を果すことができなくなつたので、清掃事業の効率的な運営を図るため、新たに本法案提出されたのであります。  本法案の主たる内容は次の通りであります。第一は、清掃事業における市町村、都道府県及び国の責務を明らかにすると共に、国民の積極的な協力についても規定を設けたことであります。第二は、清掃の対象となる汚物について、実態に即応して若干の変更を加えたことであります。第三は、清掃の必要性の地域差を考慮し、特別清掃地域の制定を設けると共に、観光地、キャンプ場、スキー場、海水浴場等季節的に多数人の集合する地域については、期間を限つて季節的清掃地域の制度を設けたことであります。第四は、特別清掃地域及び季節的清掃地域においては濫りに汚物を投棄することを禁止すると共に、ふん尿は一定の方法によるものでなければ肥料として使用してはならないこととしたことであります。第五は、清掃施設に関し、し尿浄化槽、し尿消化槽の維持管理の基準を定め、これらによるふん尿の処理が不完全であると認めるときは、都道府県知事が必要な措置命令をすることができることとしたのであります。第六は、特別清掃地域内においては、市町村の作業の計画的運営に支障なからしめるために、汚物取扱業は市町村長の許可を要することとしたことであります。第七は、全国的に生活環境の清潔保持を図るため、公共の水域、一定の海域には、濫りにふん尿を捨てることを禁止し、又大掃除の施行について規定をいたしました。  以上が政府提出案の要点でありまするが、衆議院においては、技術的及び財政的援助、ふん尿の使用方法の制限による農家への影響、汚物取扱業に対する許可制、特殊汚物の処理、清掃施設に対する補助並びに融資等について、大幅な修正が加えられたのであります。  衆議院における修正の要旨は、第一に、清掃地域にあつては、業務上その他の事由で多量の汚物を排出する場合には、当該経営者その他に対し、市町村長がその汚物を処分することを命じ得るようにしたのであります。第二には、清掃地域においては、市町村長が農業経営に支障のないように必要な施設を設置するよう責務規定を設けたこと。第三に、施設の整備を図り、災害時の清掃事業の徹底を図るため、国庫補助の規定を設けたことと。清掃施設の設置に要する資金を融通斡旋すべき国の責務を明らかにしたこと等であります。  厚生委員会におきましては、政府案並びに衆議院修正点について慎重審議が重ねられましたが、更に農林委員会及び通産委員会から、修正若しくは要望等の申入れがありましたので、環境衛生と農家経済又は企業関係との調整或いは清掃施設の整備に対する財政的裏付け等の諸問題、更に罰則に対する異議申立等については、特に熱心なる質疑検討が行われましたが、その詳細は、速記録によつて御了承願いたいと存じます。  かくて質疑を終了し、討論に入りましたところ、堂森委員より、修正動議提出がありました。その修正案の要旨は、一、市町村又は市町村長とあるのは、特別区の存する区域については、それぞれ都又は都知事とすることを明瞭にしたこと。二に、多量の汚物又は特殊の汚物の処理に関する市町村長の違反命令に不服のある者は異議の申立をなし得ること等であります。  又湯山委員よりは、本案に対する附帯決議の動議提出されました。案文は次の通りであります。    附帯決議  清掃事業の徹底を期するため、清掃施設の整備に対しては、昭和二十九年度以降地方起債の増額を認むる等、資金融通の途を拡大すると共に、国庫補助の増額措置を講ずることを要望する。  以上を以て討論を終結し、採決に入りましたところ、堂森委員提出の修正案及び湯山委員提出の附帯決議案は、全会一致を以て可決せられ、次いで修正部分を除く衆議院送付案も全会一致で可決せられました。よつて本案は、全会一致を以て修正議決すべきものと決定いたしました。  次に、あへん法案について申上げます。明治三十年に制定されました阿片法は、昭和二十年連合軍総司令部の覚書によつて、けしの栽培が禁止され、事実上死文化し、昭和二十三年麻薬取締法の制定に当つてこれが廃止せられて今日に及んでおるのでありますが、あへんの国内保有量は逐次減少するに至りましたので、今後国が輸入の途を講ずると共に、終戦直後禁止されましたけしの栽培を復活する必要が生じて来たのであります。又我が国は、一九五三年に調印された国際条約の要請に基きまして、あへんの輸入、輸出、一手買取り及び売渡しの権能を国に専属せしめる義務も生ずることになりましたので、この際、国民医療の万全を期するために、その適正な調整を図ることと相成つた次第であります。  本法案の主たる内容を申上げますと、第一は、けしの栽培についてはあへんの生産計画及び取締上の観点から、栽培区域並びに栽培面積を指定し、栽培の経営能力等を有する者に栽培許可を与え、けし耕作者に対しては播種前における収納価格の公告、モルヒネ鑑定前の概算払及び災害補償等の制度を設けてあへんの生産を行わしむることといたしております。なお学術研究のため研究栽培者の制度も併せて考慮いたしております。第二は、国は、けし耕作者等の生産したあへんをすべて収納し、あへんの生産事情、輸入価格及びその他の経済事情等を考慮して適正な収納価格を定めることにいたしました。又収納したあへんは、輸入あへんと共に国が保有し、国内需給事情に即して適正な数量を麻薬製造業者に売渡し、医療用麻薬の適正な生産を期しております。第三は、あへんは医療上欠くべからざる麻薬原料でありますが、その半面に恐るべき有害作用がありまするので、従来麻薬取締法に基いて行なつて来た取締と同様の取締をこのあへん法案においてもなすことにいたしたのであります。特にけしの栽培、あへん、けしがら等の取扱に関し、新たな取締規定を整備すると共に、あへん監視員制度を設けたことであります。  以上が本案の大要でありまするが、厚生委員会におきましては、四回に亘り慎重審議が続けられ、あへん行政と取締関係等については熱心に質疑が行われましたが、その詳細につきましては、速記録を御覧願いたいと存じます。  かくて質疑を終了し、討論に入りましたところ、大谷委員より、本法の施行期日を五月一日に改め、大蔵省設置法の第七条第十七号を改めることの修正動議提出せられました。  以上で討論を終結し、採決を行いましたところ、大谷委員の修正動議は、全会一致を以て可決せられ、次いで修正部分を除く衆議院送付案についても、これ又全会一致を以て可決せられました。よつて本案は、全会一致、修正議決すべきものと決定いたした次第であります。  以上、御報告申上げます。(拍手
  37. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  38. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて両案は、全会一致を以て、委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  39. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第三、日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)  日程第四、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、繊維製品検査所の出張所の設置に関し承認を求めるの件(衆議院送付)  以上、両件を一括して、議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。通商産業委員会理事海野三朗君。    〔海野三朗君登壇拍手
  41. 海野三朗

    ○海野三朗君 只今議題となりました日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案について、委員会における審査の経過並びに結果について御報告申上げます。  先ず、本改正案の内容について申上げます。日本製鉄株式会社法廃止法、即ち現行法は、日本製鉄株式会社が企業再建整備法の規定による決定整備計画に従いまして、昭和二十五年三月三十一日に解散し、清算事務に入りましたのに伴つて日本製鉄株式会社法を廃止すると共に、これに伴う経過措置を規定したものであります。本改正案は、現行法附則第五項及び第六項を改正いたしたものであります。そこで現行法の当該規定を説明いたしますと次の通りでございます。  すでに廃止せられました日本製鉄株式会社法によりますと、いわゆる一般担保制の適用により、社債の発行に当つては、工場抵当法による工場財団を組成する必要がなかつたため、同社の資産につきましては、全く工場財団の組成に必要な措置が講ぜられなかつたので、日本製鉄株式会社の第二会社である八幡、富士の両製鉄会社に対して工場財団組成のための猶予期間を設け、当初二カ年を限つて一般担保による社債の発行を許容し、その担保の効力及び当時の見返資金、今日の日本開発銀行にかかわる担保の効力について三カ年を限つて認めて参つたのでありますが、その後諸般の事情から、昭和二十七年法律第九十一号を以て、おのおのの期限をそれぞれ二カ年延長して今日に至つたのであります。本改正案は、これら社債の発行期限、社債の担保の効力及び日本開発銀行の貸付金にかかわる担保の効力等を、おのおの更に二カ年延長せんとするものであります。その理由には次の二点が挙げられるのであります。  第一点は、八幡、富士の両社の設備合理化計画の進捗に伴つて、一般担保の対象となる債務を急激に増加し、現行法に規定せられた本年八月五日の期限内に、この債務に見合う工場財団の組成完了が困難視されて参つたことであります。第二点は、現行の工場財団制度その他我が国の担保制度は、主として不動産抵当を中心とするもので、人的、物的の諸要素の総合されて活動している企業体に対する担保制度としては、不十分であり、且つ工場財団組成の手続は極めて複雑で、円滑な資金調達の要求には応じ得ない憾みのあるところから、政府においては、一般担保制度に関する一般法の制定について検討中でありましたが、漸くその成案を得る運びとなつて参りましたので、今国会は無理としても、近き将来の国会提出せられる予定になつておるのであります。同法が制定されれば、当然八幡、富士の両社に適用せられ、工場財団の組成の必要なく社債発行等が可能になつて参りますので、一般担保制度成立までの過渡的措置として、一応今回の処置をいたすことが妥当と認められたからであります。  以上を以て本改正案の内容及び提案の理由を申上げました。  なお、委員会における質疑応答につきまして、その詳細については速記録に譲るといたしまして、特に期限を延長した理由政府提出予定されている一般担保制度に関する問題及び鉄鋼政策一般の問題について、熱心なる質疑応答が行われたのであります。かくして質疑を終了し、討論に入りましたところ、社会党第四控室を代表いたしまして海野委員より、「一般担保制度に関する一般法の国会提出を可及的速かに実現されたい」というところの意見の開陳があり、次いで天田委員より社会党第二控室を代表いたしまして、「本法案のごとくたびたびの期間を延長するのは、通産行政の見通しの不確実なる証左であるから、今後かかる事態を生ぜしめぬよう十分留意されたい」との意見の開陳があり、それぞれ賛成の意を表明されたのであります。以上で討論を終り、採決を行いましたところ、全会一致を以て可決すべきものと決定いたしたのであります。  右、御報告申上げます。(拍手)  次に、只今議題となりました地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、繊維製品検査所の出張所の設置に関し承認を求めるの件について、通商産業委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。  この内容は、件名の示すように繊維製品検査所の出張所を設けたいというのであります。繊維製品検査所は、輸出絹人絹織物の検査表示を実施している国の機関でありまして、京都ほか七カ所に本所が設置され、東京ほか二十三カ所に支所及び出張所が設置されております。併し現在では鹿児島地方には検査所が設置されておりませんので、同地方における輸出絹人絹織物の検査表示は、すべて神戸繊維製品検査所の福岡支所から出張して行なつている実情であります。福岡市と鹿児島市とは距離も遠く、而も昨今では鹿児島地方における検査数量は、月を逐つて急激に増加して来ておりまするので、検査申請者の便宜を図ると共に、業務の円滑、且つ迅速な遂行を図るために、鹿児島市に神戸繊維製品検査所の出張所を設置する必要があるとし、その設置の承認を国会に求めて来たのであります。なお、この増設については、人員並びに経費の増加を伴わず、現行予算の範囲内で実施し得ることとなつております。  通商産業委員会においては、本件に関し慎重に審議いたし、鹿児島港における輸出絹人絹織物の取扱高、その仕向地、或いは何故に産地で検査を行わずに、積出港で検査を受けなければならないのかなどについて質疑が重ねられましたが、その詳細は、速記録を御覧願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論に入りましたるところ、天田委員より、「従来鹿児島までの出張検査は、受託出張規則に基いて出張検査員の旅費を業者に負担せしめていたとのことであるが、かかることは業者にとつては過重負担ともなり、厳正なる検査の励行に支障を来たすきらいがあるから、成るべくかかる事態のなくなるよう配慮すべきである。又検査所の業務を簡素化して検査技術者が本来の職務に尽瘁できるよう監督すべきである。」と附言して、賛成の旨発言がなされました。三輪委員から、「輸出貿易の拠点となるべき他の開港場より、貿易に関連し検査所設置の希望がある場合は、事情を考慮して検討すべきである。又、輸出検査に当つては、我が国輸出品の声価を維持向上させるよう厳重に実施すべきである、」と要望して、賛成意見の開陳がなされました。討論を終局し、採決に入りましたるところ、全会一致を以て原案通り承認すべきものと決定いたしました次第であります。  以上、御報告申上げます。(拍手
  42. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両件の採決をいたします。  先ず、日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  43. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  44. 河井彌八

    議長河井彌八君) 次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、繊細製品検査所の出張所の設置に関し承認を求めるの件を問題に供します。委員長報告通り本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  45. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本件は、全会一致を以て承認することに決しました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十三分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、議員の請暇  一、肥料問題に関する緊急質問  一、第十次造船計画に関する緊急質問  一、日程第一 清掃法案  一、日程第二 あへん法案  一、日程第三 日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案  一、日程第四 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、繊維製品検査所の出張所の設置に関し承認を求めるの件