○岡三郎君 これから
只今議題となりました
国家公務員法の一部を改正する
法律案に対して
所見を述べると共に、
政府に
質疑を行うわけでありまするが、その前に提案者の加藤国務相にお伺いしたいことがあるわけであります。
それは、加藤
国務大臣が先般の参議院人事委員会に御出席の折、私は給与のみを担当する
国務大臣であるということを言われたのであります。而もそのときに、「そのほか、身分その他の問題は」という
質疑に対して、それは又別の所管があるのでありますというお答えにな
つて、当時人事委員会においては大体塚田国務相がこの提案に当るということを言上れてお
つたのであります。そういうふうな観点から、今急に加藤国務相がこの提案者になるということにつきましては不可解であるばかりでなくして、当然この
国家公務員法の一部を改正する
法律案に対しては、吉田首相或いは代理の緒方国務相が提案をされることが私は至当ではないかと思うのであります。これは後刻加藤国務相に対する御
質疑の折に併せて御
所見を伺いたい。こういうふうに考えるものであります。
申上げるまでもなく、人事院制度は、
憲法に保障された労働者としての
国家公務員の団体
交渉権と罷業権を禁止し、これを取上げた代償として、公務員の利益を、或いは生活を守るために
独立の人事院を置き、その
情勢適応の勧告権を規定したものであります。今この人事院を実質的に廃止するならば、当然ここに公務員に対して団体
交渉権、罷業種の復活を図るべきが当然の筋途なのであります。然るに
政府は、何らそれらの
措置をとらんのみか、全体の奉仕者という美名に隠れて公務員の賃金ストップの
措置をこの法案の裏に考えておるのだと申しても過言ではないと私は存ずるのであります。
政府は、又人事院を改組して
国家人事委員会にしたことを、
我が国行政機構の実情に調和した組織と権限を持たしめることを主たる
目的としたと称しておりまするが、このこと
自体政府の非民主的
態度と基本的労働権を無視する
態度を露骨に示したものでありまして公務員を抑圧する以外の何ものでもないと断ぜざるを得ないのであります一
政府はこの改正を占領
政策の是正策と
言つているのでありますが、警察法の改悪、教育破壊法と称すべき二法案と共に
日本の民主化を否定し、
アメリカの隷属のための再
軍備に要する費用を捻出するため、公務員を更に痩せしめる悪法であります。更に
国民の官吏である公務員諸君を、人事権掌握によ
つて政党の手先の官吏たらしめる危険性を内包しているのでありまして独裁的権力確立への意図、更にはこの改悪を前提として公労法改悪への踏台としようとし、全労働者賃金ストップの前提とする意図を内包していると私は思うのであります。而も本案を通覧すると、改正後の
国家公務員法の各規定は支離滅裂、矛盾撞着甚だしいものがあるのであります。本改正案は何でもよいから国会と
国家の人事機関との
関係を断ち切
つて、人事院を
政府の権力部門に没入し、行
政府の従属物としてしまう意図としか考えられないのであります。以下吉田首相ほか
関係大臣に順次御
質疑を申上げたいと思うものであります。
質問の第一点は、占領
政策是正の美名の下に、警察法改正、教職員弾圧法を先に提出し、今回又本法案を提案して人事院を改組せんとしておるのでありまするが、吉田内閣は
日本の民主化にいて
如何に考えておるのか、首相の
所見を問うものであります。第二に、従来
政府は人事院が
独立してお
つてさえその親告を無視して来たので、この改組によ
つて政府は公務員の給与を
如何に改善せんとするのか。首相の
所見を問うものであります。第三点、この法案に対し、公務員諸君は給与勧告はどうなるのか、身分保障はどうなるのか、非常に心配をしておるのであります。この法案が実質的に賃金ストップとなるならば、公務員の業務能率はどうなるのでしようか。
昭和二十六、二十七年の決算
報告によりますれば、二十六年の不当並びに是正事項は一千百九十八件を数えるのであります。これが
昭和二十七
年度になりまするというと、千八百十三件と
漸増ではなくして急増しておるのであります。汚職内閣の下では
如何ともし難いと見逃すわけには絶対に参らないのであります。首相はこれらの不当並びに是正事項の急増は一体
如何なる理由、原因に基くものか、それについてのお考えを明確に伺いたいのであります。
次に、新たに設置される
国家人事委員会は、行政部門の人事行政統轄の中心的執行官庁なのか、単なる諮問機関又は研究機関なのか、伺いたいのであります。ここでちよつと言葉を差し挾みますが、先ほど右派社会党の山下さんの
登壇した話の中に、答弁が抜けておるということにな
つておりまするが、この議題も急速にここに提案されておりまするので、昨日
政府の役人の方が私に
質問要項を取りにおいでになた。従いまして
質問要項の中に載
つてないのもここに
質問をいたしまするので、緒方国務相並びにその他の
関係大臣はよく注意して、どの点が抜けておるかを
一つ検討せられて、(
拍手)ぬかりなくお答えを
一つお願いしたいと思うのです。誠に失礼でございまするが、これだけをお願い申上げまして
質疑を続けます。
質問の第四点は、
政府は
国家人事委員会の制度を長く存続させるつもりなりや、はた又一時的の
措置ではないかという
質問であります。これは急にこの
国家人事委員会の制度を考えたのではないことは、我々もよく熟知しているのでありますが、たまたま
政府は現在公務員制度調査会なるものを設置しつつあるのであります。このことについては、加藤国務相はその委員の選任をすでに終りかか
つていると、だからこの公務員制度調査会の発足真近いと我々は判断してよろしいかと思うのであります。公務員制度の調査をこれから始めるというときに、一方的にこのような
国家人事委員会の制度を作るということになりまするならば、又この調査会の結論によ
つては、これがどうなるのかわからんということになると常識的に考えるのであります。その結果として私は一時的の便法
措置ではないのかと考えたのでありまするが、これに対して明快なる首相のお答えを願いたいと思うのであります。
次に第五点として、何故に別に公務員の給与に関する担当大臣、加藤国務相を担当大臣に置いたのか。機構の簡素化にこれではならないのではないかと私は思うのであります。なぜかというと、この
国家人事委員会が外局として明確に
国家の執行機関としてあるならば、事務簡素化の内閣であるならば、これは内閣
総理大臣直属であ
つて私は然るべきだと思う。そうでなしに、今度できる
国家人事委員、これは浅井さんがなるかどうか知りませんけれども、三人の人事委員は、一体加藤国務相の尻つぺたについて仕事をするのか。こういうことになるのであります。このような無駄を温存して、機構の整備縮小ということは何としても受取れないのでありまして、このような際においてなぜこのような担当大臣を置いたのか、その真意を伺いたいのであります。
次に第六点として、
国家人事委員会には全然
政府に対する
独立的
地位を認めていないのでありまするが、これで
国家公務員の
地位の保護、特に公務員の
経済上の要求の解決が公正にできるかという点であります。御存じのように、公務員法第二十八条、ここには
情勢適応の原則があるのであります。つまり五%の増減があつた場合には、人事委員会は国会と
政府に勧告をするならわしであ
つたのを、今回の改訂によ
つて「
国家人事委員会が俸給表を改訂する必要が生じたと認めるときは、」と直しているのであります。ということになると、どういう場合に
国家人事委員会は勧告するのか。この点を明確に伺いたいのであります。「
国家人事委員会が俸給表を改訂する必要が生じたと認めるとき。」これは誠に主観的でありまして、客観的な何ものもないのであります。客観的な基準が何もないときに、現在の吉田内閣が公正なる給与を公務員に与えるということは絶対に考えられないと私は断言してもこれは過言ではないと思うのであります。従いましてこのような条章の改訂によ
つて、公務員の
経済上の要求の解決が公正にどうしてできるのか。先ほど緒方国務相は、公務員に対する明快な答弁の下に、保護をすると
言つておりまするが、もう少し具体的にお答えを願いたいのであります。併せてこの点は塚田長官に同様にお願いしたいのであります。と同時に、浅井総裁にもこの点はしつかりとお伺いしたいのであります。
次に第七点として、
国家人事委員会が全然
政府に従属する結果、往年の政党人事の弊を再現する虞れがあると思うのであります。即ち人事院があ
つても過去において飯山水産庁長官が自由党から一方的に首を切られて人事院に提訴したことがございます。このときに人事院の公平委員会でこれを審理いたしまして、
政府の敗訴、つまり飯山元水産庁長官の勝訴にしたのに、
政府はいささかも善処してないのであります。人事院のこの公平審理を無視して来たのであります。而もこのような
政府が、
国家人事委員会を従属機関として
政府の人事を公平審理という裁判の形式を以て裁くこと、これは誠に滑稽と思うのでありますが、この点について浅井総裁は公平に公務員の身分を保護することができるのかどうか。この点を明確にお答え願いたいと思うのであります。
次に第八点といたしまして、これは塚田長官に御回答願いたいのでありますが、
国家公務員の給与、勤務
条件に関する事項を、
情勢に適応するように変更することは国会の任務であります。その任務を達成するために、現在では人事院が材料を調査し、勧告を行な
つて国会の活動の下準備をする規定にな
つておるのであります。それを本条ではすべて
国家人事委員会と国会との直接
関係を断
つておりまするが、これは国会の機能を縮小し、人事委員会をただ
政府の用のみに用いんとするものであります。何故に国会の活動を妨害なされるのか。この点明確にお答えを願いたいのであります。次に、行政機再改革の一環として本案を提出したとおつしや
つておりまするが、現在恩給については恩給局と人事院の両方で権限のせり合いをしておるのであります。これを解決せずして何の機構改革でありましようか。恩給に関する事務り担当官庁は
如何にする考えか、この点について加藤
国務大臣にお答えを願いたいのであります、と同時に、人事院か先に勧告いしました給与準則、退職年金法の取扱、並びに近い将来に勧告される地域給についての取扱について、加藤
国務大臣に
所見を伺
つておきたいと思います。次に、若し行政部門の人事
関係事項を純然たる
政府の従属機関に担当せしむるとするならば、なぜ
総理府の内局を以てこれに当てないのか。そうして
総理大臣みずからその責に任ずるの遂に出ないのか。この
質問であります。これは
総理大臣の人事行政に関する
責任を却
つてこの本案においては分散さしておるのでありまして、
総理府の内局を以てこれに当てることこそが
総理大臣の責に任ずる途であると思うのでありますが、従属機関に担当せしむるということになるならば、それらの観点についての御
所見を開陳願いたいと、こう思うのであります。
次に、大蔵大臣に御
質問申上げまするが、物価を五分
程度下げると
言つております
政府のこの
政策が具現するならば、当然人事院は、五%下げるならば、給与の引下げの勧告をするということになるわけであります。それならば
政府が意図するように、給与表の勧告を実施することは今
年度はしなくもいいことになるわけであります。ということになるならば、先ほど申上げましたように、公務員の制度調査会というものが近々発足するのでありますから、十分この公務員制度調査会によ
つて研究された結果を次期国会なり、明年の国会において提案しても十分間に合うのでありまして、これらの点について大蔵大臣に
質問いたしまするが、果して物価は五%下がるのかどうか。これらの一部改正の提案をみるたびに、大蔵省の自信はないのではないかというように私は考えるのであります。もう
一つは、従来もこの勧告に干渉して来た大蔵省が、このような
国家人事委員会の勧告を果して尊重するのかどうか。財政の美名に隠れて無視するのではないかと思うのでありますが、大蔵大臣の今後における勧告に対する
所見を伺いたいのであります。
次に法律の下の規定は、すべて
国家人事委員会規則一本に統一するのか、又は政令と規則と両方を用いるのか、これを明確にお答え願いたいのであります。これは塚田長官にお願いいたします。私の
所見としては、規則を認める上は、規則一本にすべきものと考えるのであります。
次に、このような
政府の改悪意図に対し、従来においてさえも人事院はその勧告を軽視され、
責任を問われて来たのでありますが、このような制度の下に公務員の人事、生活の保障の任に耐え得るか、若し耐え得ないとすれば、人事院改組と共に職を去る
意思がありや。その決意を浅井総裁に伺いたいのであります。
次に、私から申上げるならば、未だ出すべき地域給の勧告も出し得ない無気力な人事院は、すでに盲腸的な存存にな
つておるようであります。
従つて、
政府がいさぎよく切り取
つて、団体
交渉権なり、罷業権を出すとするならば、我々も人事院の廃止に賛成するにやぶさかでないのでありますが、反動的吉田内閣は、いささかもそのようなことを考えておらない。
従つて現在の公務員の利益を守る制度を我々は守らざるを得ないのでありますが、民主的
日本の
総理として吉田さんは、公務員の労働基本権についてどう考えておるのか。全体の奉仕者ということでなくして、この公務員の労働基本権に対する推移を考えた上においてお答えを願いたいのであります。次に、同じく最終的に
総理にお願いしたいのでありますが、先に給与三本建によ
つて、
義務教育に携わる教職員を冷遇しました。更に教育二法案によりまして、
義務制教職員に不当な圧迫を加えておるのであります。今ここに人事院を改組して、一般公務員と共に教職員の生活に不安を投げかけているのでありまするが、国の基盤を培う
義務教育学校教職員に対して、このような不当な圧迫ではなくて、
如何なる待遇向上の途を考えているのか。その
所見を伺いたいのであります。これは口先だけのものであ
つては私はならないと思うのでありますると共に、
義務制教職員に対して、しつかりした
政府の所信を出してもらいたい。これは単に
日本教職員組合を弾圧するということとは別なんであります。
政府と日教組との闘いは正々堂々とやればよろしい。民間の権威を認めないような非民主的な吉田内閣は論外でありまするけれども、併しそれも堂々と闘う場所を求めて、
政府、自由党、日教組が闘えばよろしいが、
義務制教職員は日教組という範疇ではないのでありまして、
国民の負託に応えて、青少年の負託に応えて、日夜精励しているのであります。それを混同して、日教組を圧迫するの余り、
義務制教職員を圧迫しているこの自由党のていたらくに対しては、十分反省を私はしてもらわなければならんと思うのであります。(
拍手)従いまして、これは緑風会、自由党並びに改進党の皆様に申上げますが、日教組を弾圧する余りに、
義務制教職員を弾圧して、国が興るのか、栄えるのかということであります。だから日教組を弾圧したあげくに、徐ろに
義務制の先生方を優遇するのだという答えになるかも知れないけれども、それとこれとは別なのでありまして、
政府は速かに
義務制教職員に対して
如何なる
措置をするのか。
イギリスのバーナム委員会のように、教職員に対しての特別の委員会を構成して、適正、公正なる而も優遇する給与案をお作りになる
意思がおありになるのかどうか。こういう点について首相の明確なるお答えを願いたいのであります。
最後に、人事院が従来の
独立的
地位を全然
失つて行政部即ち国の執行機関の中に没入してしまうことに伴いまして、地方制度においても、これと同様の方向に持
つて行かれる私は心配があると思うのであります。以上について次の二、三点について、地方の人事委員会の
関係をお尋ねいたします。
地方人事委員会又は職員に関する条例を制定、改廃するに当
つて地方議会は地方人事委員会の意見を聞くべき旨の規定がありまするが、これはどうなるのか。塚田長官の御意見を聞きたいと思うのであります。それから人事委員会が、職員の給料表を地方議会に提出すべき旨の規定は、存続させるのかさせないのか。これは
関連であります。
人事委員会が毎年少くとも一回給料表の適不適を議会と公共団体の長とに
報告し、併せて適当な勧告をもなし得る権限の規定がありまするが、これはどうなるか。もう一遍申上げますと、人事委員会が、毎年少くとも一回給料表の適不適を、議会と公共団体の長とに
報告し、併せて適当な勧告をもなし得る権限があるのでありまするが、これが一体どうなるのか。
それから最後に、先ほど御答弁があ
つたのでありまするが、不利益処分に対する審査を請求する期間について、
説明書交付の後三十日以内に請求すべき規定とな
つておりまするが、
国家公務員法の改正に伴い、請求期間を短縮して、処分を受けた時以後というふうに変改し、地方公務員の保護を薄くするにあらざるかどうか。この点については、前には三十日の期間が、
説明書を受けてから三十日とあ
つたのであります。今回のこの
国家公務員法の改正によりまして、処分の日より三十日と、こうあるのであります。これは明確に公務員の不利益を規定した条章でありまして、
説明書を受けてから三十日と、処分から三十日とでは、これは甚しく公務員の不利益になるのでありまして、この点について飽くまでも公務員を不利益にしたのではないというならば、それに対して明快なる私は御回答を願いたいと思うのであります。
以上
質疑を行いましたが、答弁によりましては再
質問を行いたいと思いす持す。以上です。(
拍手)
〔
国務大臣緒方竹虎君
登壇、
拍手〕