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1954-03-19 第19回国会 参議院 本会議 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十九日(金曜日)    午前十時二十三分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十一号   昭和二十九年三月十九日    午前十時開議  第一 日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件、農産物購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件及び投資保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件(趣旨説明)(前会の続)  第二 国家公務員法の一部を改正する法律案趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件、農産物購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件及び投資保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件(趣旨説明)(前会の続)  一昨日の趣旨説明に対し、これより順次質疑を許します。鹿島守之助君。    〔鹿島守之助登壇拍手
  4. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 今回、政府から提出されました日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定、いわゆるMSA並びにこれに関連する三協定について、私は自由党を代表して若干の質疑を行うと同時に、この際、我が国外交並びに経済政策に関し、政府当局の所信を伺いたいと存じます。  MSA協定が本月八日、日米間に調印せられたことは、単に日米両国の利益であるばかりでなく、東亜の平和を強化し、延いては世界平和維持に寄与するものとして慶祝の意を表するものであります。又、昨年夏以来今日まで八カ月の長きに亘る困難な交渉に当られました岡崎外務大臣初め政府当局に対し、深甚なる敬意と謝意とを表するものであります。  今回締結MSA協定は、長期間白米両国間において慎重審議せられ、我が国特殊事情十分考慮に加えられており、又、完全なる自由意思により協定せられたものでありますから、これに対し賛意を表するものであります。今回の協定締結によつて日本自由主義諸国の仲間に入るのでありますが、かような経過平和条約日米安全保障条約並びに行政協定締結せられている以上、何の不思議もなく当然の帰結でありまして、むしろ歴史的必然とも申すべきものと確信する次第であります。我が国MSA援助を受諾することによつて、もはや根本的に無防備中立は不可能となります。日米安全保障条約によつて日本を直接侵略から防衛すると言つても、日本独立国である以上、いつまでも外国軍隊によつて防衛してもらうわけには参りません。日本が真の独立国となるためには、どうしても自衛力漸増が必要であり、それに応じてアメリカ軍隊日本から逐次撤退することになつておりますから、我が国防衛力増強への援助はこれを受けるのが当然の筋合いであると思考いたします。現在自由主義諸国の殆んどすべてが、アメリカから如何にして多くの援助を硬得せんかと努力している折柄日本だけがこの援助を躊躇することは、誠に理解しがたいところであります。併し、これが問題となるゆえんは、我が国がこれを受諾するにおいてはアメリカ合衆国の改正一九五一年相互安全保障法第五百十一条a項所定の六条件を約束せねばならないからであります。我が国において闘わされた多くの論争も、主としてこれらが我が国憲法に矛盾しはしないか等の問題をめぐつて行われた次第であります。(「その通りじやないか」と呼ぶ者あり)今回MSA協定調印を見ましても、これに関する疑問は依然として残つているように思われるのであります。  先ず政治問題について次の七点に関し質問いたしたいと存じますから、何とぞ政府当局の明快なる御説明をお願いいたします。  第一点、相互安全保障法第五百十一条の諸義務、特に第四号並びに第五号に基いて日本は再軍備する義務並びに集団保障に参加し、海外派兵義務を負うことになりはしないか。第二点、軍事顧問団の職能から内政干渉の危険はないか。第三点、MSAにより軍事援助を受けることは、日本憲法第九条第二項「戦力は、これを保持しない。」ということに違反しはしないか。第四点、相互防衛援助協定というが、日本アメリカ援助する具体的内容は何であるか明らかにせられたい。第五点、将来の日本防衛力増強の計票と見合つて今後アメリカ援助は継続される見込があるか。又その援助自体的内容の見通はどうであるか。第六点、今回のMSA協定は、差当り一ヵ年と規定しているが、次年度に関し何らかの構想があるか。あれば承わりたい。第七点、MSA援助内容、特に援助の総額、完成兵器の種類、数量について判明しているところを明らかにされたい。  次に、経済問題に移りたいと存じます。  我が国民は、MSA経済援助に多くの期待をかけていたようであります。併しながらMSA援助は飽くまで軍事援助でありますから、最初から多くを期待することは無理ではないかと存じます。それにもかかわらず若干の経済援助が得られましたことについて、政府当局に対し深甚なる謝意を表するものであります。併しながら将来はこの経済援助が一層増加せしめねばならないと存じます。つきましては、MSA援助日本経済に及ぼす影響、なかんずく日本経済に裨益する点、並びにそれとは反対に負担となる点を明らかにせられたい。  本協定調印の際、アリソン大使はその挨拶において、昨年五月五日、アイゼンハワー大統領相互安全保障計画を議会に提出された時の同大統領教書の一節を引用されております。それによれば、アメリカ政府においては経済軍事に従属せしむるものではなく、経済軍事を併行して重視していることを明らかにしております。又その教書には、そのほかに日本にとり極めて重要なことがあります。即ち、日本技術的熟練生産能力の偉大な予備士を持つているが、南アジア及び東南アジア地域経済力を建設するためにこの予備力は現在まだ十分に利用せられていない。更に又、アメリカ日本その隣国間の貿易関係が順調に発展するために最善を尽し、経済政策措置として朝鮮や恐らくその他に対する供与買付日本で行うであろうとあります。これはMSA運用上、日本経済援助しようとする大いなる政策との表現であり、従つてMSA協定やその関係連協定字句如何にかかわらず、大局的見地より協定の今後の運用面において、私はまだアメリカからの経済援助に関し多くの期待が持てるのではないかと考えるものでありますが、この点に関する政府当局の隔意ない見解を伺いたいと存じます。  元来アメリカ合衆国対外援動は、マーシャルプラン欧州経済復興援助計画から進んでアジアにおける経済開発目的として行う。いわゆるポイントフオア計画となり、アジア諸国食糧増産水力発電等に対する援助を受け得られるのであります。もともとアメリカ対外援助は、世界経済復興後進地域経済文化の向上並びに社会不安の根絶を目的としておるものでありますから、たとえMSA援助が、最近ダレス国務長官のいわゆる捲返し政策、ロール・バツク・ポリシイから軍事援助傾向が強化されたとしても、日本として日本防衛培養源となる経済力の確立なくしては相互保障は完全に行われないことは明白な事実であると考えます。かかるが故に防衛力増強には、工業力増強食糧増産並びに貧乏をなくすることが必要であります。これがためには治水、治山、灌漑、電源開発を目指すいわゆる国土総合的開発に先ず以て日本は全力を注ぐべきものであると思います。アメリカの一九五一年相互安全保障法第二条a項には、同法の目的として挙げられた三点中の一つに、友好国の資源を開発するというのがあります。又アジアに対するMSA援助は昨年度約八億八千万ドルに対し、本会計年度はその倍額の約十七億ドルに増加しております。将来も、ヨーロッパに対するものを減じてもアジアに対する援助増加するものと考えられます。日本に対するMSA援助は、その運用面からして他のアジア諸国に対すると同様、将来我が国国土総合開発にも与えられるものと考えられますが、これに対する政府当局所見を伺いたいと存じます。  私は、かようなアメリカとの外交上の交渉において、なお一層の成功を収めるためには、一つ条件が要るのではないかと考えるものであります。それはアメリカ大統領はその教書において、アメリカ各国援助を与える程度は、各国相互安全保障共同任務においてその応分の責務を果す割合に応じてこれを決定するものであることを率直に申しております。即ち我々に与えられるところの経済援助は、我々の果そうとする安全保障共同義務を引受ける程度によるのではないかと思うのであります。なおMSAの真の意誉と価値を判断するためには、MSAの個々の条文とは別に、世界政策的見地よりこれを検討せなければならないと存じます。ワシントンにおけるMSAの審議において、ダレス国務長官上院予算委員会での証言で、西のドイツ、東の日本は、安全保障問題の見地からすると、そのいずれを失つても、他方では著しくソ連邦の産業軍事上の力を増加することになるという点で重要な地位を占めておると申しております。下院外交委員会報告書の中にも、同様のことが記されております。日本ドイツは、いずれも米・ソ二大陣営国際的対立の間に介在し、両陣営勢力均衡を左右するものとして、世界政策的見地より特別の注意と関心が払われておる実情であります。この時期におけるMSA協定は、日本アメリカ陣営に参加するものとして批判せられることは、けだし止むを得ないことと思考いたします。MSA受諾責任は重大であります。併し他方、これを拒否する責任も又一層重大だと思います。如何なる国家もその締結せる同盟又は協商において、その陣営を鞍替えして成功した例は歴史上ありません。それは戦争革命を意味するのであります。若しもイギリスが一九二三年、即ち大正十二年日英同盟を廃棄しなかつたならば、日本は第二次世界大戦に参戦せず、仮に参戦したとしても、英米側に組みし、勝利を収めていたでありましよう。従つて今日の東亜動乱革命は起らなかつたでありましよう。又若しMSA協定が不成立となり、延いてはアメリカ日米安全保障条約を廃棄するに至つたならば、東亜は忽ち動乱革命の巷となり、挙げてソ連勢力圏内に陥るでありましよう。それは決して平和への道ではありません。  本件議案が、去る十一日、衆議院本会議に上程せられた際、片山哲君は、最近のベルリンにおけるアメリカフランスイギリスソ連の四カ国外相会議成功であり、国際緊張が緩和されたかのように申されましたが、少くとも最大議題であつたドイツ問題は何一つ片付かなかつたのであります。或る面においては、却つて緊張の度合いを加えておるのであります。その証拠には、二月二十五日イギリス下院における外交討論においてアトリー労働党党首は、「私はドイツを再武装するという構想を憎む点では決して人後に落ちるものではない。併し我々は現実に即した判断を下さなければならないのであり、特にベルリン会議後の事態とその後に来る事態を無視するわけには行かない」と申しており、又西ドイツ首相アデナウアーはそれより二日前、西ベルリンにおける演説において、アトリー同様ドイツ国民に対し重大な警告を発しているのであります。即ち、「四カ国外相会議ソ連に何ら譲歩の意思のないことを明らかにした。ソ連政策は現状を維持して西欧侵略のための時を稼ぐにある。今や我々は夢を捨てるべきときである。西欧側が更に譲歩すべきであるとなす人は、現実事態を知らぬものである。情勢は重大であるが、絶望的ではない」と述べております。西においての真理は、東においても同様であると確信いたします。  東における情勢は西に劣らず重大であります。併し決して絶望的ではありますまい。それは自然現象ではなく、今後の我々の努力如何にかかる問題であります。我々は断然夢を捨てるべきときであります。この重大なる国際危局に際し、吉田総理初め政府当局の忍耐と勇気を以て善処せられんことを切に要望して、私の質問を終りたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  5. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) MSA援助を受ける結果、海外派兵義務を負うことになりはしないかという御質問でありますが、今回の相互防衛援助協宗は、主としては完成兵器装備技術等供与を定めたものでありまして、海外派遣等による相互援助を定めたものでないことは申上げるまでもないと存じます。従いまして海外派遣等は今次の協定範囲外のことで、我が国として完全に独立見解で定めることでありまするが、政府といたしましては、海外派遣等は絶対これをやる考えのないことは、これまでもしばしば申上げた通りであります。  次に、軍事顧問団のことでありまするが、顧問団内政干渉をするというような危険はないと考えております。従来、すでにこの種顧問団が駐在しておりまするイギリス或いはフランス等諸国でも、御説のような事例は起つておりません。  それからMSA援助を受けることは憲法違反ではないか。これはMSAによつて日本戦力を保持するということになるのでありませんから、憲法には違反しないと考えております。  相互防衛援助協定というが、日本アメリカ援助する具体的内容は何であるか。これは協定に規定してありますように、アメリカが自国の資源において不足し又は不足する虞れがある結果必要とする原材料、又は半加工品日本国内で入手することができるものを生産し、米国政府に譲渡することを容易にするというような点が援助でありまして、その他日本自衛力増強し、米国負担を減ずることにおいても、間接的ではありまするが、米国援助することになるわけであります。  それからMSA協定軍事援助が主であるが、将来運用面において経済援助増加せしめる見込があるかどうか。いわゆる経済援助とは経済協力法による援助を指すものでありまして、防衛援助とは別個のものであります。従いましていわゆる経済援助協定ができない限り、防衛援助協定から本格的な経済援助を引出すことはできないのであります。ポイントフオア計画による援助、即ち技術開発援助につきましても同様と考えております。一方、いわゆる経済援助は、米国対外援助方針として漸減の傾向にあるようであります。技術援助は、後進国開発が主たる目的でありまするから、双方とも我が国といたしましてはこれを受ける公算は、全くないか、或いはありましても、極く少いと見るより仕方がないと考えられます。MSA経済的に有益であるのは、従いまして域外買付兵器産業への投資米国民間投資家の対日投資に対する保証というようなものと了解いたしております。  爾余の御質問につきましては、所管大臣からお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎登壇拍手
  6. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 大体緒方国務大臣からの御答弁で御了承願つたことと思います。ただ一点、MSA協定によつて日本が再軍備義務負担するかどうかということについて申述べたいと思います。相互安全保障法第五百十一条の問題でありまするが、この四号、五号におきましては、我が国の政治的及び経済的安定と両立した範囲内において、日本が自主的に措置をとればいいのでありまして、無制限に義務負担しておるわけではありません。要するに我が国の人力、資源設備能力及び一般的経済状態の許す範囲内においてのみすればよいのでありまして、我が国が決してMSA協定によつて軍備負担するわけではありません。勿論日本は自主的に自衛力漸増をやつて行きたい。かように考えております。    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  7. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) MSA援助は、差当り一年間を規定しておりますが、これはアメリカ相互安全保障法が毎年成立するのでありまして、その関係から一年に切つてございますが、これは他の国の場合も全く同様で皆一年となつております。そこで今後の援助見通しはどうかと申しますと、これは勿論形式的に見通しをきめるのでありますから正確には言えないということも言えましようけれども、実際上は、今後ともずつと必要の範囲内で継続される見込であります。又その具体的内容も、我が国防衛計画の増減によりましてこれ又増減するわけでありまして、従いまして若し日本側計画が今年と同様のものであれば、援助も大体今年と同様のものは少くとも期待される。こういうことになろうかと思つております。又その援助内容として完成兵器その他どういうものが来るかということでありますが、これは実はこの協定が国会で承認されますと、政府としては正式に米国側に対し援助内容について交渉をする権限を得るわけでありまして、只今のところは非公式に下話をいたしておる程度であります。併しながらその話の模様によりますれば、大体保安庁側が希望しておるような兵器装備等は、援助として受け得るものと確信をいたしております。(拍手)    〔政府委員植木庚子郎君登壇拍手
  8. 植木庚子郎

    政府委員植木庚子郎君) お答え申上げます。  MSA援助日本経済に及ぼす影響はどういうふうに考えるか、或いは日本経済に貢献をもたらす点はどういう点であり、マイナスになる点はどういう点があるかという御質問の要旨に拝承いたしたのでありますが、MSA援助日本経済に対しましていい影響を与える点と考えられますことは、第一には、我が国防衛計画の実施に必要な国費の負担がそれだけ少くて済むのではないかという点が第一点に考えられると思います。第二には、我国に対する域外買付増加期待し得るのではないかと考えられるのであります。第三には、経済的措置に関する協定によりまして、我が国工業その他の経済力増強に資するために一千万ドルの贈与が得られるという点が挙げられると思います。第四には、昨年の凶作によりまして輸入を必要とする小麦等を円貨で購入ができるということが非常ないい点だと思います。第五には、投資保証協定によりまして我が国への外資導入増加期待し得るのではないか。かように考えられると思うのであります。又マイナスになる点といたしましては、協定による義務の遂行という点につきまして、これは我が国経済力範囲内において実行することにいたしておるのでございますから、一特に挙げるものがないのではないかと、かように存ずる次第でございます。(拍手)     ━━━━━━━━━━━━━
  9. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 梶原茂嘉君。    〔梶原茂嘉登壇拍手
  10. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私は、只今議題になつておりまするMSA協定関連いたしまして、数項目に亘り総理大臣その他関係閣僚所見を質さんとするものであります。  新憲法の制定に当りまして、我々は戦争と平和の維持に関する新たなる理念我が国独自の基本的態度として確立したのであります。爾来今日に至るまでの間にこの基本的態度には、数次に亘りまして若干の変化を示すに至つたのであります。一つ日本主権回復をもたらしました平和条約で、いま一つは同時に締結されました日米安全保障条約であります。前者においては国家の個別的又は集団的の自衛固有権利が国際的に確認せられ、後者においては、その固有の集団的又は個別的の権利を前提として、その権利行使として我が国はその防衛のための措置アメリカ軍の駐留に委ねたのであります。更に国内におきましては、警察予備隊保安隊を経まして自衛隊の制度がまさに発足せんとしているのであります。自衛隊保安隊と異なりまして警察的性格を脱却して、国家自衛権行使として外国の直接侵略に備えんとする軍隊的性格を有するものでありますことは、これは明らかなところであります。そうして最後に只今議題となつておりますところのMSA協定と相成つておるわけであります。而してこの間の経過において、我が国民の平和、戦争及び防衛等に対しまする考え方の上にも或る種の変化が生じて参りましたことは、これは否定することはできないと思うのであります。併しながら安保条約より後の一連の経過から見まして、今回のMSA協定が当然の結果であるとして、我々は安易に安心をして喜んでいいのかどうか。私はいささか疑問に思うのであります。現在MSA協定と我が自衛隊とは、相互に結び付きながら、我が防衛問題に新たなる性格を作り出さんとしているのであり、而もこれは世界を通ずる安全保障体制の中のまさしく一環として新たなる段階に直面せんとしているというものであることは疑いをいれないところであります。憲法はもとより国家基本法として国家存在の秩序のよりどころであり、国民に対する指導理念基礎でありますが、憲法も法であります以上、時勢の推移によつてその解釈弾力があるということは当然であり、同時に又その弾力性におのずから限度の存在することも、これは否みがたいところであります。憲法解釈は、極めて重要な問題でありますけれども、これと同等以上に肝要なことは、我々の平和、戦争並びに安全保障に関する生きている現実の基本的な理念それ自体が私は問題であると思うのであります。今日MSA協定をめぐりまして、異常なる国民関心が高まり深刻な不安があるのであります。このことは問題の実体が、周到に配意せられたと思われるこのMSA協定の各条項の字句にあるのではない。又外務大臣の談にあるのでもないのであります。その基礎をなすところのもの、その背景をなすところのもの、換言いたしますと世界を通ずる安全保障体制に必然的に関連して行く我が国防衛体制あり方如何に問題が所在するということを端的に示しているのであります。勿論一国防衛ということ、又一国のみの平和ということは、理念といたしましても、現実的にも、もはやあり得ないかと思われるのであります。我が国の平和は、世界安全保障との何らかの関連においてのみ存在すると思うのであります。そして最も大事なことは、この両者の関連性如何なる性格のものであるかということであろうと思うのであります。アジア大陸と、歴史的にも地勢的にも不離の関係にあり、且つ独立直後であつて、而も独立の実がまだ整わぬ、こういう特殊の事態に加えまして、憲法の条章の如何にかかわらず、真に平和を念願するものである。この我々日本態度は、インドのネール首相の場合は別といたしましても、アメリカとはもとより、その他の自由諸国ともおのずから異なるところのものがなければならんと私は思うのであります。総理は、世界安全保障体制の上において我が国の占めるべき立場はどうであるか、占めるべき地位はどうであるか、及び我々の日本のその役割というものはどういうものであるかということについて、明確なる理念を宣明せらるべきであろうと思うのであります。而も現在はまさしくその時期である。かように考えるのであります。この根本の理念について、私は総理所見を質さんとするものであります。  第二点として、国際連合に対しまする我が国態度、特に国連憲章安全保障に対しまする我が国義務について、政府見解を質したいと思う。我が国は、平和条約において国際連合に加盟する意思を表明し、同時に国連憲章の原則を遵守する責任を明らかにし、国際連合がその憲章従つてとるところのあらゆる措置に対して、これに援助を与える義務を負つたのであります。現在、世界を通じまして、平和、戦争についての理念なり、或いは平和を確保するための安全保障、又その安全保障を具体化するための方法等に関しましては、これは唯一とは言い得ないでありましようけれども、国連の存在及び国連憲章がその基礎的のものであるということは、これは疑いを容れないところであります。勿論、現在国連下において世界が二分せられ、我が国自身も、又中共も、未だこれに参加することはできない。その国連の機能の上におきましても、又、運営の上におきましても、遺憾の点の少くないということは、これは認めざるを得ないところであります。而もなお国連が平和の維持の中核体であり、その憲章安全保障の基本的理念であるということは、これは変りはないと思うのであります。国連の機能は極めて広いのでありまするけれども、その眼目とするところは安全保障に関するところのものであり、平和の破壊及び侵略行為に対する行動にあることは、これは疑いを容れないところであります。而して国連のとりまするところの軍事措置は、国際上の警察的行動と観念せられるべきものであります。従いまして、従来の戦争並びにその軍事行動とは、本質的に理念性格を異にしていることは極めて明瞭であります。従つて又、我が憲法第九条第一項に言いまするところの国際平和を念願する根本精神においては同一でありまするけれども、同条において放棄したところの戦争及び武力行使とは、観念を異にし、性格を異にするものでありますること、これ又疑いを容れない。従いまして、かかる観点よりいたしまするならば、国連憲章による警察的行動に我が国が参画するということは、これは我が国憲法に抵触、背反しないものと理解することを私は至当と考えるのであります。    〔議長退席、副議長着席〕 又、憲法が条約に優先するということは、これは一般的に通説であろうと思うのであります。併しながら、憲法第九条第一項に関する限りにおきましては、これが国際的、対外的の宣言である効果は勿論存在するのでありますが、対外的に如何なる法律的効果を有するのか、如何なる法律的効果を伴うかは、疑問の存するところであります。国連憲章の原則に従う義務を負いましたところの我が国として、憲法第九条第一項が国連憲章に当然に優先するという解釈は、果して正しいか否か、私は疑問とするのであります。政府見解を伺いたいと思う次第であります。現実の問題として起り得る戦争に対して国連憲章による警察的武力行動を以て日本の平和と独立を確保しようとする他国の武力行使は、これは是認する、併し自国の武力行使は、これを否認するという観念に、如何なる普遍的な合理性が存在するのか、疑問なきを得ないわけであります。MSA協定から直ちに海外派兵等の義務を生じないということは、これは外務大臣説明を待つまでもなく明瞭なことであります。併しながら国連憲章の場合におきましては、問題はそう簡単ではあるまいと思われるのであります。勿論、国連憲章の下におきましても、海外に出兵するかどうかということ自体は、我が国の自主的主体性の立場から、我が国において決定し得るものであることは、これは勿論のことであります。私は、国連に加盟の意を表明しておる政府は、我が国防衛体制国連憲章との関連をどう考えておるか。如何なる態度を以て臨まんとしておるのか。特に国連の安全保障関連する我が憲法解釈について政府見解を伺いたいと思うのであります。次は地域的集団安全保障に対する政府見解を伺いたい。現在の自由国家を通じまする安全保障体制は、漸次地域的集団防衛体制に進みつつありますることは御承知の通りであります。このことは太平洋におきましても同様であります。アメリカ、フィリピン間相互防衛協定におきましては、その前文において「太平洋地域において、地域的安全保障の一層包括的な制度が発展するまでの間、平和及び安全保障の保持のための集団的防衛についての現在の努力を強化することを希望し」云々と言つておるのであります。オーストラリア、ニュージーランド及びアメリカ三国安全保障条約におきましても同様の表現をいたしておるのであります。もとより地域的集団安全保障体制は、国連憲章に通じまする一連の形態でありましようけれども、一面、明白な軍事同盟的な件格を持つものであります。従いまして、我が国の現在置かれている立場から見ましても、又、憲法第九条の趣旨よりいたしましても、我が国がこれに参画するということは到底容易に考え得られないところであります。政府は地域的集団安全保障体制に対して如何なる考えを持つておられるか。伺いたい点であります。  次に私は、本協定日米安全保障条約との関連についてお伺いしたい。  日米安全保障条約は、独立直後の日本におきまする自衛力の完全なる喪失に対して、直接侵略のほか間接侵略に対しましても日本自衛権行使として、アメリカ駐留軍がその防衛の任務を負つたのであります。併しながら、すでに我がほうの自衛力漸増が進んで参つて、直接侵略に対しても備えを整えんとする段階に達したのであります。この段階において、間接侵略に対する防衛は、私は、我が国自体のカにおいて、我が国自体においてこれを相当すべきものではなかろうかと思うのであります。勿論、直接侵略を伴いまする間接侵略の場合は、これは事態は別個の様相を呈するものでありまして、おのずから別の問題となるのでありまするけれども、直接侵略を伴わざる国内限りの間接侵略は、内乱的或いは国内の騒擾的の性質を有するものであります。これは当然我が国自体において対処して然るべきものであろうと思うのであります。今日の状況において、アメリカ駐留軍にこの種の間接侵略に対する責任を負つてもらう必要が果して具体的にあるのかどうか。直接侵略を伴わない間接侵略は、国内における内乱的性格である。同胞相闘うということであります。MSA協定によつて創設されんとする自衛隊は、間接侵略に当つてアメリカの武器を借り、アメリカから援助を受けて同胞畑討つのであります。私はその姿を想定することに異常なる苦しみを感ずるのであります。まして、日米安全保障条約によつて国内限りの内乱騒擾に対してもアメリカ兵の出動することが条約上きめられておるということは、遺憾千万に思うのであります。自衛力増強は、私もその必要を痛感する一人であります。自衛隊が今日外敵に対して外部よりの侵略に備えんとする段階において而もなお国内の治安を維持するためにアメリカ援助を必要とするのであるか。条約に基く責任アメリカに負つてもらわなければならないのか。今回の自衛カの増強計画を以てしても我が国自体の力を以て間接侵略に対処し得ないのかどうか。この点について私は木村国務大臣のまじめな見解を承わりたいと思うのであります。この意味において私は安保条約の改訂を行うことが緊要と考えるのであります。外相及び木村長官の見解を承わりたい。  次に私は、国際緊張の原因除去に関する問題に触れたいと思うのであります。  今日、世界の両陣営の間に対立する緊張を緩和するために、種々の機会において不断の努力が行われつつあることは、御承知の通りであります。そうして軽微とはいいながら緩和の方向に進みつつあるように見られることは、喜ばしいことと思うのであります。現在MSA援助関連して国民の持つておりまする不安の一つは、我が防衛体制が自由世界に共通する一つの型にまさしく当てはまつて、この段階をワン・ステップとして、更に来たるべき段階に必然的に進むであろうという不安であります。而もこの不安は、我が国アジアの一国として、アジア大陸に不離の関係にあるにかかわらず、現在相対立する一方のソ連及び中共とは、不幸にして未だ平和友好関係が回復せず、我が国の運命にも関しまする朝鮮問題に対してすら、我が国は発言をすることができない。かかる意味においては、独立国とはいえ、まさしく半身不随の独立国の立場より脱却し得ない状態のままに、一方の自由主義陣営軍事的きずなに制約せられるであろうとする懸念によつて倍加せられて行くのであります。私は、日米がお互いに協力する、お互いに助け合うということを、決して否認するものではないのであります。併しながら、これらの状況から見まして、国際緊張の緩和に異常なる関心を我々が持つことは、これ又当然であります。本協定第八条には「日本国政府は、……国際緊張の原因を除去するため相互間で合意することがある措置を執ること」と掲載されておるのであります。勿論この日米の合意という表現によつて国際緊張の原因を除去するための我がほうの独自の措置をとることを制約する趣旨とは思われないのでありますが、この条項は具体的に如何なる意図を持つておるのか。又、政府自体如何なる構想を持つてこの条項に関し対処せんとしておるのか。お伺いしたい点であります。防衛力増強の真の目的が平和と国の独立を確保するということであるとすれば、防衛力増強を意図する政府は、同時に、より以上の熱意と努力を国際緊張の緩和のために注がなければならんと思うものであります。殊に日ソ及び中共との関係における平和克服の問題については、総理は常に、本問題の解決は相手方の態度にかかる、中ソ友好条約を以て彼らは日本を仮想敵国としておるという旨の見解をしばしば表明せられておるのであります。私もその事実に目を蔽うものではないのであります。併しながら、日ソ及び中共の関係がこのままの状況でいつまでも続くものとは到底考えられない。時の経過に伴いまして、おのずから事に推移と変化があるものであろうということを思うものであります。現在のアメリカ指導理念を以ていたしますれば、事は困難でありましようが、幸い首相は近くヨーロッパ及びインドに外遊せられると聞くのであります。その間で問題に何らか打開の途を見出される機会のあることを私は期待するものであります。MSA協定第八条の国際緊張の原因除去に関して総理見解を質す次第であります。  次に私は、MSA援助計画が我がほうの自衛力増強計画に対して占めておるウエイトについてお伺いしたい。  国家防衛力の根幹は、国民精神と総合的の経済力にあるということは、これは言うまでもないところであります。然るに、防衛問題について、アメリカ援助とも関連して、国民の思想感情は分裂の様相を示しておる。経済力は、その基盤未だ極めて脆弱であつて、来年度より初めて耐乏予算を以て自立経済の建設へのスタートを今において切り直さなければならないという惨めな現状にあるのであります。かかる状況の下に自衛力増強をするということは、何としても我が国自体の力によつて我が国自体の積極的な信念によつて作り上げられなければならんのであります。然るに、国民の耐乏生活を要請しつつ自衛力を強化して参るのに、安易なる心構えと方策を以て、他国の援助によつて安易に行うということでは、到底私は正常にして健全なる成果を期待することは困難だと思います。徒らに独立国家としての自主性を損なう以外の何ものでもないと思うのであります。どうしても自由諸国間、日米間の相互協力、相互援助、これは私は緊要であろうと信ずるのでありますが、併しながらそれは飽くまで我が国の自主性、主体性を損なうものであつてはならんということであります。勿論その主体性、独自性というものが頑迷固陋、国際的に正しく通じないものであつてはならんこと、これは勿論でありまするけれども、自主性、主体性のないところに本当の相互援助はあり得ない。かように思うのであります。朝鮮事変によりまする特需は、一見非常に日本に幸いしたようでありまするけれども、又一面自立経済の達成の上に不幸なる禍いを招来したのであります。かかる事態MSA援助によつて国の根本にかかわるところの自衛力増強の上に起るとすれば、これに越す禍いは私はないと思うのであります。この観点から第一に、アメリカ相互援助計画如何なる具体的関連性日本防衛計画に対して持つておるか。援助計画は我が計画の上にどれほどのウェイトを持つておると政府は評価しておるのであるか。MSA援助は勿論アメリカ自体の方針によつて今後変更されることはあり得るのであります。それに対する用意があらかじめなくちやならん。政府はそれに対する用意を果して持つておるかという点について、木村長官、外務大臣所見を伺いたい。  最後に、私は農産物購入に関する日米間の協定について農林大臣にお伺いしたい。現在の主要食糧の状況、外貨の状況から見まして、アメリカ農産物を円貨を以て購入すること自体は、両国にとつて好ましいことと思うのであります。併しながら本件の購入に関しまする諸般の措置は、協定によりますると、アメリカ会計年度末、即ちこの六月末までに大体完了することを必要とするようであります。果してこの短かい間にこの大量のものを購入するのに、取引その他の点で適正を期し得るや否や。又大事な食糧でありますが、品質等の点において遺憾なきを期し得るかどうか、過去の事例に徴しましても懸念なしとしないのであります。農林大臣に万全の用意があるか、これに対して用意をなし得るのかどうか伺いたい。これが一点。  二点は、千万ドル相当額が防衛支持援助として贈与される点よりして、いわゆる経済援助の突破口のごとくいわれておるのであります。幸い、本年は幸か不幸か去年の凶作のあとを受けまして、六十万トン程度の輸入は勿論可能であります。併しながら平年作の場合を考えますると、勿論輸入食糧は必要最小限度を輸入するのでありまするから、これを輸入いたします場合に、どうしても他の面をカットせざるを得ない。ところが本協定第三条におきまして、農産物購入アメリカ及び他の友好国の通常の市場取引を排除し、又はこれに代替してはならないという規定があるのであります。従いましてこの条項から考えますると、平年作程度の作柄の場合におきましては、これに期待し得る量はそう多くないと思うのであります。従つて余剰農産物購入に基きまする経済援助の将来につきまして、私は大なる期待をかけ得たいと、かように思うのであります。この点に関しまする農林大臣の見通しをお伺いしたい。  以上を以ちまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  11. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  日米間に共同行動をとる場合若しありといたしますれば、それは安保条約に基いて協議決定すれば、今のとこるそれで足りるのでありまして、従つてそのために必然的に同条約の改訂を必要とするというようには解しておりません。  それから地域的集団保障との関係を御質問でありましたが、地域的集団保障は相近接する諸国が結束を固くして侵略的行動を未然に阻止し、又これが不可能な場合は共同してこれに対抗することを目的とするものであるのは申すまでもありません。現下の国際情勢の下におきましては、いずれの国も一国だけで自国の安全保障を全うし得ることは困難でありまするために、必然的に地域的集団安全保障の力を借りざるを得なくなつておるのが現状であります。で、我が国といたしても、憲法に制約せらるる関係から、他国の例と全く同様とはいえませんけれども、何らかの形を考慮する必要があるのであろうと考えております。併しこれらの点につきまして、只今確固たる方針をきめておるわけでは、ございません。  それから更に、中ソに対する関係総理の外遊の機会に何か調整を図る意図があるかどうかという意味の御質問であつたと承わりましたが、今噂されております総理の外遊が実現した場合、中ソに対する関係、特に中国に対する関係でありまするが、これはイギリスアメリカの中国に対する態度が御承知のように違つておりまするので、日本が将来長い中国との関係を考慮いたす場合にも、その発足点におきまして、米英の態度が歩み寄ることが、若し可能であれば、それが私は第一段階でないかと思います。で、総理の外遊中に、或いは非公式的にでも、そういうことについて米英の当局者と話をする機会があることを期待しております。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  12. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国連憲章にいう軍事措置についてのお話でありますが、この国連憲章に基きまして安保理事会等が軍事行動をとることに決定した場合に、加盟国として兵力を提供する義務は直ちに負つていないのでありまして、かかる場合には国連と特別の協定を結んで兵力の提供の義務を約束した国だけが、自動的に兵力を提供することになるのでありますが、現実にはまだいずれの国もかかる特別の協定を結んでおりません。従いまして将来日本が国連に加盟した場合にかかる義務を負うかどうか、まだ実は加盟もいたしておりませんが、加盟した場合にかかる特別の協定を結ぶかどうかということは、我が国の全く自由なる決定に任されておるのは、現在他の国連加盟国と同様であると勿論考えております。従いましてこの点につきましては憲法の規定を考慮いたしまして、憲法の規定に副うような措置をとれば足りると考えております。  次に、安保条約の改訂についてのお話がありましたが、お話のように日本国内における擾乱とか、内乱等においてもアメリカ駐留軍の援助を求めることができるという規定になつておりまして、これは独立国として実にどうかと思われるような規定であると初めから考えております。併しながら過去におけるチェコスロヴアキアその他の例をとりますと、なかなか昔考えておるような国内の擾乱、内乱というものとはその性質を異にしておりますので、安全保障条約におきましても外国の使嗾によるということを入れまして、大規模な国内の擾乱若しくは内乱ということに特に念を押しております。そして又かような場合でも普通は勿論国内の力においてこれを鎮圧するのが当然でありますので、特に政府の明示の要請があつた場合にのみアメリカの駐留軍は出動することになつております。従いまして政府の明示の要請がない場合には、駐留軍は国内の内乱等には出動いたさないのでありますが、政府としてこういう要請は勿論なすべきでないと普通には考えられますが、併し外国の使嗾による大規模な内乱、擾乱というものが一体どの程度に行われるかということは、なかなか只今想像が付かないのでありまして、万一非常なことになつて、国が全く間接侵略の餌食になるというような場合が仮にありといたしますならば、政府としてはやむを得ず駐留軍の出動を要請する場合もなきにしもあらずというよりは、そういうようなことも考慮いたしておくほうがいいのじやないかというのが安全保障条約にある規定でありまして、政府としては決してこの明示の要請をむやみにいたすつもりは全然ないのでありますから、只今のところ念のための規定としてこの程度のものはまだ暫らく残しておいても差支えないのじやないか、こう考えておるのであります。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎登壇拍手
  13. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 大体岡崎外相の今の答弁でおわかりだと思います。これは日本からの要請のあつた場合に初めて駐留軍が動く建前になつておるのであります。只今保安隊の実勢におきましては、私は相当の国内の叛乱、大擾乱があつても、これに対処して行けるものと確信は持つております。従いまして我々はさような要請をするような現実の問題はなかろうかと考えております。併し今の岡崎外相からの説明がありましたように、事態がどういうことになるかも予想できませんので、かような規定を設けておいても私は何ら差支えない。こう考えております。  それから日本自衛計画日本が独自でやることは当然であります。我々も又それを以て今漸増計画を立てておるのであります。併しながら完成兵器その他の点におきましては日本で賄うことは到底完全にでき得ないのであります。アメリカ援助を待つことよりいたしかたありません。誠に残念であります。従いまして将来アメリカからどのような援助を受け得るかということについて十分考慮いたしまして、これを織り込んで自主的に自衛計画を立てたいと、こう考えております。(拍手)    〔政府委員平野三郎君登壇拍手
  14. 平野三郎

    政府委員(平野三郎君) MSAによります農産物購入に関する御質問でございまするが、第一点は、アメリカ会計年度関係で六月までに契約を完了しなければならないことになつておりまするので、それでは政府はこの六十万トンの輸入について万全の措置を持ち得るかどうか。こういう点でございまするが、契約は六月までにしなければなりませんが、引渡しはそれ以後になつても差支えないことになつておりまするので、又従来の食管特別会計でやつておりましたと同様の方式を以てやるわけでございまするから、政府としては万全の自信を持つておる次第でございます。  第三点は、MSA協定第三条によりまする平常取引を阻害する虞れはないか。こういう点でございまするが、これはもとより既定計画範囲内においてやることでございまするし、特に本年は御承知の米の不作によりますところの輸入増加分を見ておるわけでございまするから、これ又何らその点の御心配はない。かように考えておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  15. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 羽生三七君。    〔羽生三七君登壇拍手〕    〔副議長退席、議長着席〕
  16. 羽生三七

    ○羽生三七君 サンフランシスコ講和条約締結このかた、日本は自由主義国家群に属して世界の平和に貢献するという方向、名目の下に、アメリカの極東戦略の一翼を担わされることになり来たつたことは、改めてここに指摘するまでもなく明瞭なる事実でございます。今ここに日米相互防衛援助協定調印を通じて、我が国は更に対米従属の度合いを一層深めることになろうとしておるのでありますが、汚職や疑獄で疑惑に包まれておる現政府の下で、我が国将来の運命に重大な影響をもたらすであろう本協定が結ばれたことも一つの特徴と言わなければなりません。私は日本社会党を代表して、以下いわゆるMSA協定に関する疑点を質したいと思います。  MSAの実体は、当初よりまぎれもなく軍事援助そのものであつたのでありますが、政府はその実体を正確に確めることなく、経済援助等に多大の期待をかげながら、約八カ月間に亘つて日米交渉が続けられたのであります。併し米国側の強い圧力が終始我がほうを圧倒して取結ばれたものが本協定であることは誰しも想像し得るところと存じます。かかる日米交渉経過からして、この協定は細目的にはとにかく、大局的にはアメリカ側の意図する方向には合致するでありましようが、我が日本にとつては得るところ少いものであるのみか、逆に我が国の対米従属を一層強化し、日米安全保障条約に規定された一連の期待や消極的義務を更に積極的義務にまで強め、そうしてより端的に言えば、海外派兵への危惧を有する性質のものにまで発展せしめたものであると断ぜざるを得ないのであります。而もこの協定と不可分の関係に立つ自衛隊の創設は、我が国の再軍備を促進し、平和憲法を空文と化せしめ、我が国の将来の運命に重大な影響を与えんとしておるものであります。尤もこの協定の文面に現われた表現形式だけを見ますと、政府政府なりに相当の苦心を払つたことは認めます。併しそれにもかかわらず、この協定は現行憲法との関係海外派兵の問題、日本経済との関連等等、日本の現在及び将来に関して重大な疑点を含む性質のものであります。  先ず問題の第二点は、本協定の第八条についてであります。言うまでもなく、この条項は相互安全保障法五百十一条(a)項の六条件を取入れたものでありますが、同項(3)の軍事義務を本協定において再確認することにつきましては、政府解釈通り日米安保条約で規定された軍事義務、即ちアメリカ軍の駐留に関連して日本における施設や区域の提供というような、或る意味では消極的な義務であると理解いたします。これは政府の言う通りであります。併し同条項中の国際緊張の原因を除去するため相互に合意される処置をとるということは、この問題につきましては、先ほど梶原委員からもお尋ねがありましたが、一体具体的には何を意味するのでありましようか。これら(a)項の六条件については政府はしばしばMSAを受諾した諸国が一般に認めている条件だから差支えないという見解をとつているようであります。併し戦争放棄を憲法で明示している日本と他国とを同一の立場で論ずることは適当ではありません。これらの諸条件は、客観的条件の発展如何によつて海外派兵義務が生ずることともなりかねないことは、全国民のひとしく憂えているところでございます。尤もこれにつきましては、それゆえに本協定調印の際の挨拶で、日米双方が、この問題についてはその心配のないことを明らかにしたと言われるでありましようが、挨拶で特に述べなければならぬこと自体がこの問題の重要性を物語つていると言えるのであります。(拍手)挨拶でわざわざ述べるくらいならばなぜこれを協定文中に明記しなかつたのでありますか。或いは更にこのような問題は条約の体裁上協定文中に入れるべきではなく、我がほうの自主性に基いて、協定他方の当事国から要求があつても、我がほうがこれに合意しなければよいという主張をされるかも知れませんが、現政府アメリカの対日政策に対して今日までどのような態度をとり来たつたかと考えただけで問題の性質が極めて重要であると考えられるのであります。更に又言うまでもなく外交は或る意味では力関係でもありますから、将来に備えて解釈上一点の疑義もないように明確にしておくことが望ましいのであります。又仮に将来どのような政府ができましても、相手国に合意する事態が起らんという保証はどこにもありません。このことは極めて重大であるのでありまして、即ち平和憲法の厳として存する今日、海外派兵というような重要な問題が我がほうの合意ということだけで重大な事態を惹起し、且つ又直ちに憲法違反となるという形で協定文中に織り込まれているということはどういうことでありましようか。これについて政府はその意味で本協定の第九条の2において、自国の憲法の規定に従つてということを明らかにしたと言うでありましようが、私が只今述べたような疑義を本協定が有すればこそ、かかる語るに落ちるがごとき条項を入れなければならんことになつたのではないかと思います。  更に又重要なことは、現行憲法に関する政府解釈であります。政府憲法に対する解釈は全く御都合主義であつて国内治安維持のための予備隊が保安隊となり、更にこれが又直接侵略に対応するというためで自衛隊となり、陸海空三軍を持つようになつて戦力でもなければ軍隊でもないという、その都度、既成事実を合理化する憲法解釈をやつて行けば、最後には世界平和を維持し、国際間の緊張の原因を除去するということで海外派兵というようなことになつて憲法違反でないというような解釈すら生れかねないとさえ思われるのであります。自衛のためであろうとも武力戦は当然に憲法違反であります。このことは国家固有権利であります自衛権の問題とは全然別個の事柄であります。而して自衛の名による憲法の拡大解釈の杞憂は全然根拠がないことではない。曾つて軍人の中には攻撃は最大の防禦というような考え方もあつたのでありますし、且つ又由来、如何なる国といえども侵略の名の下に武力を行使することはないのでありまして、自衛の名において先制攻撃を加える事例が戦史上の類型となつておるのであります。それが侵略であるかどうかは後世の歴史がこれを審判するのでありますから、たとえ本協定第九条2の規定があるとしましても、問題をより明確にしておくことが絶対緊要の要件と言わなければなりません。従つて協定の第八条に含まれる諸条件については、これらの条件海外派兵義務付けるものでないことを端的に且つ明確に協定文上に規定する必要があると思われますが、これに関する政府見解を明らかにせられたいのであります。  憲法との関連で更にお尋ねしたいことは、現行平和憲法の規定に従つてMSA協定そのものを制約し縛つて行くか、つまり憲法の規定に従つて協定そのものを縛つて行くのか。それとも協定の双務的な性格から、万一問題が発展した場合には、憲法そのものをも改変して行く方針なのかということであります。これに関する政府従来の答弁は、第三者的客観的立場に立つて見解でありますが、私は総理に、平和憲法における戦争放棄を飽くまで正しいと信じて守つて行く考えなのか、それとも双務協定的なこの本協定性格の発展から、問題が起つた場合にはそれは改変すべきだというのか、主観的な心境を、これは総理大臣にお尋ねしたいのであります。言葉の魔術を使わないように率直なる答弁を希望いたします。  なお、外務大臣にお尋ねしたいことは、本協定憲法と牴触しないようにあらゆる知恵を絞つたということを外務省で言つておられますが、一体外務省側から見てどの点が憲法と牴触するように考えられるか。外務省側の見解を明らかにされたいのであります。  次にお尋ねしたい問題は、主として五百十一条(c)項の規定に関してであります。自衛隊の創設に関連して昨今云云されておる日米共同作戦の問題は、言うまでもなくいずれかの国が日本への直接侵略を行う場合を想定してのことであります。併しそれとは別に、協定他方の当事国たるアメリカが万一日本以外の第三国と紛争を起して我がほうに共同行動を求める場合はどういう処置をとりますか。直接侵略じやありませんよ。アメリカ他方の国と問題を起してその結果協定の一方の当事国たる日本に共同行動を求める場合には、どういう処置をとられますか。この場合は言うまでもなく直接侵略とは何らの関係もないことであります。これについて政府は我がほうは合意しなければよいということで問題を簡単に片付けられるかも知れません。併し我々の疑問に感ずることは、五百十一条(c)項の諸規定に関してであります。勿論これはアメリカの親法律でありますから、本協定の文面には直接の関係はありませんが、我々がMSA協定を検討する場合、その全体を貫く性格或いはその背景をなすものとして、アメリカ相互安全保障法そのものが十分に吟味されなければならんと考えるのであります。(c)項は即ち次のように規定しております。長官は、この場合の長官とはアメリカの長官でありますが、「長官は本法を運営するに当り」云々といつたあとで、「且つその地域における集団的安全保障を推進する計画に参加するのでなければ、本法に基く如何なる援助を受けられないことを保証しなければならない」と規定し、更にその次には、「又長官は、相互安全保障努力の成功のため適当若しくは必要なる場合、被援助国が相互防禦のためそれらの国の産業を動員し、且つ自国の財政、予算、資本、政治及び軍事資源をこの法律の目的に適合させるよう適当なる措置をとり、且つ自助と相互協力のため適当な他の処置をとることを保証しなければならない」と規定しておるのであります。  問題は以上の通りであります。本協定文面上の形式はとにかくといたしまして、アメリカ自身がどういう考えを持つてMSA協定に臨んでいるかを見るには、これが一つの目安となることはいうまでもございません。MSA協定に臨んだ米国の基本方針は、相互安全保障法に盛られた精神を基礎としていることは当然でありましよう。そうしてMSA協定はその名の示す、ごとく日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定なのであります。相互でありますから言うまでもなく双務協定であります。然りとすれば(c)項に言う「被援助国が相互防禦のため」適当な処置を求められることはあり得ないことではないのであります。現在はもとより我々理解しておりますが、将来においてはいろいろな問題が起り得るのであります。日米安全保障条約は、先に申したように日本への直接侵略があつた場合のアメリカの行動を規制するものでありますが、それとは別に先にも述べたように、アメリカ日本以外の第三国と紛争を起して、日本に、つまり被援助国たる日本に「相互防禦」の要請が行われるような場合には、政府は一体どういう立場をおとりになりますか。協定文中の制約ではありませんが、併しMSA協定の背景をなすアメリカ基本法に盛られた重要な課題として政府見解を明らかにせられたいのであります。  これに関連して更にお尋ねしたいことは、この協定の成立を通じて政府は明確に西欧陣営へ所属したと見てよいかということであります。政府しばしばの言明から、今日まで日本が民主主義国家群の側に立つていたことは間違いありません。併しそれは或る意味では精神的な気持の上の問題であつたに過ぎません。併し今回のMSA協定の性質からして、ここに明白に精神的なものから条約的な基礎の上に立つて、西欧陣営に所属したものと見ることができるのでありますが、総理並びに外務大臣見解を明らかにせられたいのであります。なお、これによつて中ソ等との国交回復の機会を却つて遠ざけることになりはしないか。この問題についても、併せて御答弁をお願いします。  更に、外務大臣にお尋ねしたい次の問題は、相互安全保障法全体を貫く地域的集団安全保障体制確立の期待から見て、このMSA協定は将来太平洋軍事同盟へ発展して行く布石となりはしないかということであります。将来米軍の撤退する場合は、日米安保条約基礎的な条件が変るのでありますから、今すぐ撤退とは申しませんが、いずれ撤退する場合には、その基礎的な条件が変るわけでありますから、今私がここに述べたことは決して不合理な推定とは思われないのであります。  次に、木村保安庁長官にお尋ねいたしますが、本協定による援助の大部分が完成兵器であることは言うまでもありません。而もこれらの兵器はアメリカの使い古しの兵器であります。いやしくも近代戦について多少でも理解を有する人でありますならば、兵器発達の速度、マス・プロダクシヨンが近代戦についてどれだけ不可欠の要件であるかを知ることができると思います。高度のジェット機、原爆、水爆の保有されている今日、一億ドルとか二億ドルとかいうような払下兵器で、そうして我が国の地理的条件の下で、そして更に又地上部隊中心の軍編成で、実際にどういう役割が果せるというのでありますか。この政府の考え方は新らしい戦争に対する見解において、我々と全く異なるものでありますが、木村長官の御見解を承わりたいのであります。尤も朝鮮やインドシナにおけるがごとき局地戦争或いは制限戦争の場合を云々される向きもありますが、かかる制限戦争のすべてが、同一国内に二重政権が存在する場合にのみ発生するケースであることを知る必要がありましよう。同一国内に二つの政府が存在する場合にのみ発生するケースであります。更に又、政府は直接侵略に対応するものとして自衛隊を創設し、MSA協定を通じてアメリカからの援助を受けるわけでありますが、ここで我々が特に考えなければならんことは、いわゆる直接侵略日本以外の他国間相互の紛争に巻き込まれる問題と別個に考える必要があるということであります。これは先ほどもちよつと触れました。今、日本では直接侵略の場合の危険だけが云云されております。併し、日本以外の他国間相互の紛争に巻き込まれる場合の危険と、危険のウエイトはいずれが多いとお考えになりますか。これは木村保安庁長官の率直な見解をお尋ねいたします。  木村長官に対する質問の第二点は、我が国防衛計画についてであります。MSA協定をした以上、当然具体的な年次計画がなければならんはずであります。これに関しては先日の予算委員会における曾祢議員の質問に答えて木村長官は、それはそのときの国力によるのであるから、今は何とも言えないとのことでありましたが、これはいささか変な話であります。即ち一定の年次計画を持ち、その計画がそのときの国力なり財政上の理由で実行不可能な場合には、例えば五万増強の予定を三万にとどめるとかいうように、その基礎を示すものがなければ、どうして可能不可能の判断ができますか。それは出たとこ勝負だというような安易なことで、アメリカMSA協定承認するでありましようか。その年次の経済事情や財政規模によつて計画が不確定になることは我々も理解いたします。併しこの協定承認をこの国会に求める以上、而も又自衛力漸増が一種の義務となつているこの協定の性質上から、当然その計画を明示する責任政府にあります。これは木村保安庁長官から率直なる御答弁を求めたいのであります。  次に、日本経済との関連においてMSA協定を見れば、どういうことになるでありましようか。先ずこの協定の前文においては、「経済の安定が日本国防衛能力の発展のために欠くことができない要素であり、また、日本国の寄与がその経済の一般的な条件及び能力の許す範囲においてのみ行うことができる」ことを明らかにしております。我々が今日、日本経済の現状を見るに、輸出の不振、輸入の増加、手持外貨の減少等、経済は悪化の一途を辿つております。加うるに防衛費の増加は内政費への圧迫となつて、脆弱な日本経済の現状においては、これが勤労大衆、農民、中小企業へしわ寄せされ、このまま進めば、日本経済は必ずや決定的な段階に立ち至るとさえ思われるのがその状況であります。かかる国民生活への圧迫は、窮極において政府の最も恐れる治安の混乱を招来することは必然でありましよう。かかる段階においては、むしろ国際的には、あえて敵を求めず、特定国家又は国家群に依存することなく、すべての国に対して友好的態度を以て臨み、いわゆる再軍備費はこれを民生費に充当することによつて自立経済基礎を固め、貿易上のアンバランスを克服して、平和経済を通じて世界の国々に寄与することが最も賢明な策であり、又それによつて国内治安の確立も可能であることを我々は固く信じておるものでございます。かかる意味から、日本経済の現状の下における防衛費は、本協定の前文に書かれている自国の経済条件及び能力が許す限度を超えていると考えられますが、これに関する政府見解を伺いたいのであります。政府としては或いは予算総額中に占める防衛費の比率を外国のそれと比較して云々されるかもしれませんが、これは余り意味のないことで、真実の意味における国民生活水準から問題を具体的に検討すべきであろうと思います。MSA援助は、結局のところ、日本経済の基盤を強めることとはならず、逆にその弱化を招来し、兵器の生産や特需依存への度合いを深め、平和経済の確立、正常貿易による外貨獲得の方向といよいよ背反することとなり、これをアメリカ側から見ても、MSA援助は、窮極においてはアメリカの意図と合致せず、却つて日本経済の矛盾を深め、経済の悪化がアメリカの最も恐れる治安の混乱すらも招来することとなり、アメリカの納税者の負担も全く意味のない結果となるであろうことは余りにも明瞭であります。而も又更に重要なことは、僅々一億ドル程度の兵器の援助すら、日本経済の現状から欠くべからざるものとする政府は、防衛軍の増強が更に一段と進み、それに伴つて維持防衛費が一層増加して行く場合、果してその経費の通常的負担に堪え得られるでありましようか。国民に耐乏を要求する二十九年度予算は、その具体的現われの第一歩と言うことができるのであります。アメリカ経済に内在する諸矛盾はアメリカの景気後退を必至とし、やがてMSA援助を打切る方向に進むことはほぼ確実と想定されるのでありますが、この援助打切りとなつたあと、日本政府は自力でこれを賄えるでありましようか。若し又アメリカ援助が今後続くと仮定いたしましても、そのような防衛軍は隷属国の御用軍隊以外の何ものでもないと言わなければなりません。その場合には経済力の許す範囲でと政府は答弁されるでありましようが、併し軍隊と同様な自衛隊を持つた場合、これはまさに物理的法則とも言うべき力となつて、恐らくこれをセーヴすることは殆んど不可能に近いものとなることを覚悟しなければなりません。これに関してアメリカの著名な軍事評論家セパスキー氏の言に耳を傾けることも無意味ではないと存じます。セパスキー氏の曰く、「日本を強固に固めるためには、われわれは西欧のマーシャル・プランに匹敵する浪費を決意せねばならぬ。だが各国は所要の防衛力を達成する前に破産の危機に瀕しよう」と警告しておるのであります。政府は、本協定の前文に示された日本経済の能力限界に関連して、この問題をどのようにお考えになりますか。総理大臣、大蔵大臣、保安庁長官等からの答弁を求めます。  これらの問題のほか秘密保護に関する問題、中共貿易制限に関する問題、軍事顧問団に関する問題等更に余剰農産物買付協定、円貨の使途協定投資保証協定等についても十分これを質したいのでありますが、時間の関係上、全部これらの質疑は委員会に譲ることといたしたいのであります。  ただ最後に一言いたしたいことは、我々は国際情勢を判断するに当りまして、米ソの冷戦が終結したとか、将来国際紛争の危険は絶無であるとかいうような安易な観測に立つものではありません。併し過ぐるベルリン会議や又近く開かれるジュネーヴにおけるアジア会議への動きを見ますると、各国とも東西両陣営共存の可能性を信じつつ、平和へのいとぐちを見つけるためにそれぞれが最大限の努力を傾け、軍備拡張よりもむしろ自国の経済的発展を図り、国際貿易にうち勝つための懸、命な努力を払つているのが世界の一般的方向であることを確信するものであります。然るに我が国はむしろこの国際的方向に背を向け、近隣諸国を仮想敵国に仕立てて平和憲法を蹂躪しつつ再軍備体制を強化しようとしているのであります。現にアメリカ自身すら国内における減税、在外部隊の漸減をその方針としているのであります。MSA協定日本自身の防衛という問題よりも、むしろアメリカ自身の国内的、国際的要請から起つているものと華足せざるを得ないのであります。その証拠には汚職問題で内閣が危機に瀕していると伝えられた際に、MSA協定かうまく取結ばれるかどうかを一番心配したのが、ほかならぬ援助国という立場のアメリカ側であると想像されることは、余りにも問題の皮肉と言わなければなりません。我々は日本に関する吉田首相の善意を疑うものではありません。首相自身は、日本のためによかれと考えてMSA協定を結ばれたものと思います。併しその首相の主観的善意にもかかわらず、MSAは結局において日本安全保障とならず、我が国の運命をいばらの道に引入れるものであると断言せざるを得ないことは、日本民族の大いなる不幸と断言せざるを得ないのであります。吉田内閣は今日まで国民に対して再軍備をしないと公約して来たのでありますが、併し今政府が現にとつている政策は、それが自衛のためであろうとも、明々白々疑う余地のない再軍備であります。政府は悪法のわがまま勝手な解釈を行い、議会の多数を頼んで無理を強引に押切ろうというのでありますか。これが今日までの国民に対する公約に反していることは一点疑う余地がありません。祖国の将来に関して重大な影響をもたらす本協定承認を国会に求める前に、政府はみずから総辞職して、信を国民に問うべきであると思いますが、吉田総理所見を質したいのであります。  これを以て私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  17. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) MSA協定の結果日米安全保障条約の消極的義務が積極的義務に発展したのではないかという御質問でありまするが、軍事義務に関する限りお説のような事実はございません。防衛力増強につきましては、安保条約では期待されるにとどまつてつたのでありますが、今次の協定では、形式的にせよ義務付けられたことはお説の通りでありまするが、これは政府の既定方針であるのみならず、政治及び経済的安定の許す限りという条件でありまする関係から、実質的に新らしい義務を生じたとは考えておりません。  又この協定は平和憲法を空文化するものではないかというお説でありまするが、この協定憲法の枠内における防衛力増強のためのものでありまして、憲法との間に何らの議論はない。政府といたしましては、特にこの点の懸念をなからしめるため、念のため協定中に本協定憲法の条章に従つて定める旨を書きましたことは、只今も御引用になりました通りであります。  それから憲法を拡大解釈して国際紛争の渦中に入つていやしないかという御危惧を披瀝されましたが、政府MSA協定関連憲法を拡大解釈するというようなことは毛頭考えておりません。憲法の拡大解釈の結果、国際紛争の渦中に入るといつたようなことは、私どもといたしましては、そうお疑いになることを今日の民族の動向からして甚だ不可解に思う次第であります。  それから現行憲法制約下にMSAを縛つて行くのか、或いは情勢変化憲法そのものを改正して行くのかという意味の御質問と了解いたしましたが、MSA協定は、我が国憲法の規定に従つて実施されるのは当然でありまして、MSAとの関係憲法改正を必要とするというようなことにはならないと確信いたしております。  なおその際に、政府は平和憲法の精神をどこまでも守つて行くつもりか。これははつきり申上げまするが、政府は平和憲法の前文に掲げられた理想、いわゆる平和憲法の精神というものはどこまでも守つて行くつもりでありまして、これは決して言葉のあやで申すわけでありません。  それから政府はこの協定を通して従来の立場から、積極的に西欧陣営に投じたものであり、その結果、中ソとの国交回復を更に困難にしやしないかという御懸念でありますが、我が国は民主主義国家群と行動を共にすることは基本方針の一つでありまして、従来ともこのラインを通して来て参つておる次第でございます。この協定のため、中ソとの国交回復が新たに困難を生ずるということは考えておりません。それから最後にこの協定承認を国会に求める前に内閣は総辞職をしたらどうかという御勧告でありまするが、これは謹んで御返上申上げます。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  18. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 羽生君は、先ずこの協定米国の強い圧力でできたとか、或いは日本の対米隷属を一層強化したなどと言われましたが、これは全く事実を曲げた虚構の言説であると思います。  協定の第八条の諸条件についてのお話でありますが、これは他の諸国がすべて受諾していることでありまするが、我が国特殊事情に鑑みまして、特にその第三項を変更しておることは御承知の通りであります。海外派兵について、これは昨年来からの国会の討議において、社会党の諸君も、海外派兵をなさぬということを何らかの形で明らかにせよとしばしば言われたのであります。併しながら、この協定アメリカから兵器、装備等の援助を受けて、日本がこれを受諾するということを約する協定で、海外派兵とは全く問題が違いますから、協定の文内に入れることは適当でないので、私の挨拶の中に念のためこの点に言及したのであります。ところが海外派兵をしないという規定がないから危ぶない。こういうお話でありますが、そんならこの協定には日本を共産化しないという規定もないから、共産化する義務も出て来ると、こういうお言葉と同じであるから、私は到底承服できないのであります。  なお、相互安全保障法という米国の法律を引出してのいろいろなお話でありますが、これは米国基本法であり’まするから、参考にはなりまするけれども、米国の法律は、日本がこれを守る義務は何もないのであります。問題は、ここに提出してあります協定について、日本権利義務如何ようであるかということを御検討下されば足りるのであります。  太平洋防衛協定等についてのお話がありましたが、この構想はしばしば新聞等には言われておりまするが、具体的にそれじや何があるかと言うと、何もないのであります。そこで、併し若し仮にこういうものができた場合はどうするかというお尋ねでありますが、そのときは我が国憲法なり、その他政治上、経済上の情勢によつてこれに加わるかどうかを決すれば足りると考えております。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎登壇拍手
  19. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御説の通り、兵器の進歩は著しいものがあります。将来この兵器の進歩がとこまで進むか予想することはできませんが、我々といたしましてもこの兵器の進歩については非常な関心を持つております。昨日も申上げたように、いわゆる電波兵器の発達が今後どこまで進んで行くか。これによつて私は日本防衛力のあり方も相当変つて来るのじやなかろうかと考えております。そこで現在におきまして、強力な外部の侵略に対しては、勿論日本独自で以てこれを防ぐことができないのは当然であります。これは誠に残念であります。そこで我々といたしましては、いわゆる日米安全保障条約によつてアメリカ援助を待つよりいたし方ない。この間に徐々に我々は国力を回復し、又兵器の進歩に備えて研究して行きたい。こう考えております。  第二は、外国戦争に巻き込まれる危険と外部からの侵略との危険がどちらが多いだろうか。こういう御議論でありますが、私は日本は他国の戦争に巻き込まるべきものじやない。又外部からの不当なる侵略の危険が私は多いと考えております。これがあればこそ、我々は今度自衛隊法によつて外部の侵略に備えんとしておるのであります。  次に、防衛計画を示せということでありまするが、長期の防衛計画は私は只今持合せはありません。又さような長期の防衛計画は到底作り得ざるものと考えております。ただ自衛力漸増方針として我々はこの計画を立てるべきであろうと考えております。これとても今申上げまする兵器の進歩、或いは国の財政力その他を勘案いたしまして、確定的なものは立て得ないのであります。止むを得ず本二十九年度計画を立てて、今御審議を願つておる。三十年度については多少の目どはついておりまするが、これとても確定的なものではありません。併し、我々といたしましては、この漸増計画は是非とも立てたいと考えて、各方面の資料を集めて今研究中であります。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  20. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) ドル不足、国民生活等の現状から見て、自衛力増強を行うべきではないというお話でございましたが、私どもは完全な独立国として自衛力を持つのは当然のことと考えておりまするし、従つて政府として国力に応じた規模の自衛力漸増を企図している次第でありまして、防衛関係費の予算に対する割合も、これは御承知のごとく各国に比べて遥かに低く、又二十九年度の予算においても財政全体の立場から見て極めて妥当な自衛力の経費を計上した次第であることはよくおわかりのことと思うのであります。これらはいずれも一般会計で財政措置を講じておりまするので、MSAとは何ら関係がないものでございまするから、我が国としては国力の範囲、即ち財政力、経済力の回復に伴いまして、独立国家にふさわしい自衛力漸増して参る。こういう方針でございます。     —————————————
  21. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 曾祢益君。    〔曾祢益君登壇拍手
  22. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は日本社会党を代表いたしまして、MSA関係協定に対しまして、極く重要点だけを政府に伺いたいと存じます。  日本社会党は、日本が自由世界、民主陣営に帰属することを肯定し、これとの団結と協力を是認するものでありまするが、同時に自主独立外交によつて世界と友好を求めることを我が国外交の本義と考えるものであります。我が国安全保障につきましては、国連の国際平和と安全の確保に期待すると共に、現状におきましては、国連の安全保障の補助として地域集団保障制度の必要を認めるものでございます。更に独立国たる以上、我が国自衛権を有するは当然であり、自衛権の裏付である自衛力は、その基盤である国民自衛意欲の盛り上るような、健康にして公正な経済、社会秩序の確立が根本であると確信するものであります。併しながら、形式、内容共に不平等な日米安保条約は根本的に改訂すべきであり、又自衛力については現行憲法を遵守し、差当り国内治安を維持するための警察予備隊程度のものにとどめることを主張し、吉田内閣の憲法空文化と国民生活圧迫による再軍備に断固反対するものであります。  MSA関係協定を案ずるに当りまして、我が党は以上の基本的態度から検討を加えんとするものであります。而して我々は、本協定憲法空文化と国民生活圧迫の再軍備と裏腹の関係にあること。協定成立に至る吉田内閣の外交が秘密外交と自主性喪失の結果であること。協定安保条約すらを逸脱し、憲法に違反する疑い濃厚であること。顧問団の任務、合同指揮権等が我が国の自主独立を侵害する虞れがあること。並びにMSA援助の受入れが、却つて我が国の正しい経済自立を害し、経済財政上有害である等の理由に基きまして、本協定に対し反対的観点に立つて、以下若干の質問をなさんとするものであります。  先ず第一に、一国の防衛の基本方針は、飽くまで自主独立の立場において、国民の理解と納得の下に策定すべきが当然であるにかかわらず、政府態度措置とは全く自主性を欠き、先に、我が国の対外安全は勿論、対内安全の根本すらも挙げてアメリカ軍に依存するとして、安保条約説明されておきながら、最近の国際情勢の変転に応じ、アメリカの戦略配置が転換して、駐留軍が漸減するに見合いまして、我が国防衛力増強を強要して来ると、今度はこの間の情勢変化に対処する政府の所信を国民に訴えることもなく、我が国経済力国民の心理状態も無視し、何らの自主的な防衛方針も計画も持たずして、先ず以てアメリカの要請を受け入れる態度をとつて交渉に当られた次第であります。その結果、ここに二十九年度予算に見られるような防衛力の飛躍的増強と、保安庁法改正に見られるような本格的再軍備が、而も憲法空文化の方法によつて実行されんとしつつあるのであります。MSA協定は、このような政府防衛問題の本末転倒の取上げ方と、自主性喪失外交の結果にほかならないと考えますが、総理は、この重大な疑惑に対し、進んでその明確なる所信を国民に向つて披瀝される御意向はないか。  第二点、総理は去る十七回国会の本院予算委員会におきまして、先ほど同僚羽生委員も触れられましたが、私の質問に対し、二十九年度の予算提出に当つては、単に二十九年度防衛増強計画を示すにとどまらず、アメリカ軍の撤退に即応する我が国の長期防衛計画の全貌とその年次計画を明らかにする旨を、明確に答弁されておるのであります。これは第十七回国会参議院予算委員会会議録第五号、十一月七日の分に明瞭になつております。私の今の質問に対しまして、吉田総理は、「これは全体の計画が立つて、そうして各年度計画をなすのが当然でありまするから、全体の計画ができ、その計画の全貌を示して、そのうち実行し得るものは来年度に幾ら、再来年度に幾らと、年次計画を立てることになろうと思います。」私が更に進んで、「別な言葉で言いますと、少くとも来年度の予算が出るときには……いわゆる長期計画の全貌というものが少くとも同時に国会を通じて国民に示される、かように了解して間違いございませんか。」これに対して吉田総理は、「未だそこまで話し合つてはおりませんが、お話のようなことが順序であるべきものだと、私は常識的に考えて、そう思います。」明瞭であろうと思うのであります。それにもかかわらず、今回こま切れ的に二十九年度防衛計画のみを提案した理由は一体どこにあるか。又この重大な公約の無視に対して、総理の政治的責任をどこに置くかを、明瞭にお聞かせ願いたいのであります。  第三点、元来MSA援助の授受に関する協定は、当該国とアメリカとの間に、これに先んじまして地域集団保障協定というものが存在しておる。存在していない場合は別でありますが、いる場合には、この基本的な防衛協定の存在する場合には、これを前提といたしましてアメリカ援助受入れに対する権利義務を規定する一種の実施協定或いは細目協定の性質のものであることは、これは北大西洋同盟条約諸国アメリカとの間のMSA協定の例を見ても一点の疑いのないところであります。又このことは、MSA法の五百十一条(a)の(3)に、「合衆国が一方の当事国である多数国間若しくは二国間の協定又は条約に基いて自国が受諾した(過去の形で、ハズ・アツシュームドとなつている)軍事義務を履行すること」という字句に照らしても明瞭である。然るに今般の協定は「日米相互防衛援助協定、」この名前からして安保条約とは非常に性質が変つていることを示しております。この名前にふさわしく、安保条約とは別個に、別の基本的な日米の共同防衛権利義務を定める条約であります。即ち、安保条約は、いわば日本アメリカに守つてもらうことを趣旨とするニカ国間の片務的な、双務的でない、片務的な安全保障協定でございまするが、今回の協定は、ニカ国間の共同、双務的な防衛協定であることは、これ又、同僚羽生君が指摘した通り。  更に安保条約の下では、少くとも厳格に法律的に見るならば、日本防衛に対する責任漸増的に負うということは、前文に掲げたアメリカ期待に過ぎず、日本義務はないということか言えるでございましようが、今回り協定におきましては、すでに同僚が指摘したように、第八条において「自国の防衛能力の増強に必要となることかあるすべての合理的な措置をとる」ことを明瞭に約諾している。更に第八条において「自由世界防衛力の発展及び維持に寄与する」ことを約諾しているのであります。従つて、本協定安保条約の基本的な軍事義務以外の義務は含んでおらないという政府の御説明は、言葉は過ぎるようでありますが、欺瞞ではないか。岡崎外相の明快なる御答弁を願いたいのであります。第四に、右のように安保条約から日米相互防衛援助協定へ移つた。即ち片務防衛協定から双務防衛協定に移つた。同時に、更に二国間条約から多数国集団保障制度へ転移するという、極めて重大な外交安全保障の基本的変化か行われているのではないか。この点は、先ほども申しましたように、第八条の自由世界防衛力に対する日本の寄与の義務というニカ国間だけの問題ではない。それもはつきり今度の協定は書いている。又第一条には、この日本供与する援助を、アメリカに対してのみでなくて、第三国に対してもこれを供与する道をはつきりと第一条は開いている。これらの点から言いまして、今申上げましたように、外交安全保障の基本的な性質の変化を持つている。決して軍事的な援助の受入れというような実施細目協定の性質ではなく、基本的なものであるということを政府は明確に認め、そうしてこれを明瞭に、この基本の違いというものと、これに対処する政府の所信を、堂々と且つ条理を尽してなぜ国民に理解と納得を求めるような態度をとられなかつたのか。  又この協定締結から、多くの諸君が言われましたように、確かに今の法体系の変化から言いますと、伝えられる太平洋同盟条約等に発展する一歩をはつきりと阻み出していると思いますが、改めて明確なる御答弁を願いたいのであります。  第五に、更に以上のような広汎な義務規定を内包しております協定の中に、海外派兵禁止に関する条項がない。これは何と申されても、かかる二国間から多数国間に、片務条約から双務条約に移つたというこの条約においてこそ、海外派遣禁止の明確な規定がなされなければならないと思いまするが、どうしてもこれを取りつける御意向がないか。改めて明確にして頂きたいのであります。  第六に、アメリカとの共同防衛、自由世界防衛能力に対する寄与並びに日本防衛力増強等の条約上の義務を規定する本協定は、果して軍隊その他の戦力の保持を禁止し、交戦権を否認した憲法の条項に違反しないと言えるかどうか。成るほど協定第九条には「各国政府が自国の憲法上の規定に従つて実施する。」こう言つておるからこれでいいのだという御答弁のようでありまするが、これも私をして納得せしめ得ないのであります。これは岡崎外務大臣も昨日のこの席上における御答弁でも申されたように、これは憲法の手続に従つて国会の承認を求めるというような、手続を示したものに過ぎない。これで本協定内容憲法に逸脱してないという免責、責任免除の規定の条約文としての体裁から言つても、さような意味を持つものでは断じてございません。而もなおおかしなことには、憲法の手続に従つて実施されるということは、その示している憲法は決して条約上、法律上現行憲法に限らない、そのときの憲法でいい。こういうことになるならば、ますます以て政府が苦心をされて入れたと称する第九条の規定は、何らこの条約の内容そのものが憲法に逸脱しないということの食いとめになつておらないということは、明確至極であろうと存ずるのであります。殊に憲法九十八条第二項の正しい解釈から言うならば、国際法規及び国際条約の或るものは憲法に優先し得るというのが第一次吉田内閣以来の政府の明確なる解釈においておや。ますますこの点は我々としては断じて納得できないのでございます。  協定第七条の顧問団の任務或いは合同指揮権、日米行政協定第二十四条に基く日米共同行動の場合の合同指揮権、これらについての政府の御答弁もどうも我々は納得し得ない。殊に保安庁長官においては、それは日本が自主的にやるのだというようなことを言つて如何にも日本に指揮権があるように言つておられまするが、これは北大西洋同盟条約の例等を見ましても、さようなことは承服できない。当然に合同指揮権はいずれの国の指揮官がとるか、全体においてはどうだ、陸軍においてはどうだというような問題が当然に起つて来ると思いまするが、明確にお示し願いたいのであります。  次に、政府は元来軍事援助を本旨といたしまするMSAの受入れが、あたかも経済援助を伴うものであるかの宣伝に努めて来ました。併しその全体が何であるかは、今般の余剰農産物買付協定、又苦肉の策である経済的措置に関する協定等によつて、もはやその実体は明らかとなつた。我々は当初から真の経済自立は社会主義計画経済を実施し、援助より貿易、紐付きよりは自立を趣旨とすることを主張し、政府の欺瞞と安易な受入れに反対して警告を発して参つたのであります。仮に今後経済援助が若干与えられるような場合があつたといたしましても、又武器援助そのものが軍事費の切り詰めには若干の貢献は計算上ありましよう。併し他面において厖大な再軍備の創設費及び維持費を必要とするために、この経済財政上の負担は差引き極めて重くなることは明瞭ではございませんか。大蔵大臣にお伺いしたいのは、特にこの協定に当りまして防衛分担金の減額は誠にノミナルなものに過ぎない。今後如何にして防衛分担金の減額を図るか。この見通し如何を伺うのであります。  最後に、岡崎外務大臣は、今度の協定によつて対共産圏国との貿易のいわゆる禁止規定が附属書に譲られたと、よほどの成功であるやに言つておられまするが、世界の態勢から言うならば、今日チャーチル首相が言つておりますように、やはり共産圏に対する自由諸国の貿易についても調整を要し、これを緩和する方向に進むべきではないかというのが、これは現状である。アメリカ諸国の第十回の全アメリカ会議におきましても、共産圏に対する戦略物資の供給を禁止することは賛成である。併しその犠牲に対してはアメリカからその補償をやつてもらいたいという決議が通つており、西ドイツのブリユツヒヤー副総理は、同じくこの対共産圏貿易について、「現実に平等な取扱がなされていない。」かようなことを堂々と述べているのであります。いずれもアメリカの最もちかしい、いわば同盟国の首相にしてそのような態度をとつているのであります。日本社会党は対共産圏貿易のみによつて日本経済自立ができるとか、或いはこれに対する過大な評価をなすものではありませんが、このMSA協定に当つて政府はこの日本経済自立並びに世界の緊張緩和にプラスになり、自由国家群を強化する一助ともなる対共産圏貿易の問題を如何に対処されるか。明確な御回答を願いたいのであります。時間がありませんので、その他重要な細目については委員会における質疑に譲ることといたしまして私の質問はこれを以て終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  23. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  防衛政策というような国の、国民の利害休戚の根底に触れる大きな政策は、国民の理解と納得の上にきめなければいけないという御趣旨は、政府といたしましても全く同感に考えております。これに関連して政府は秘密外交のみをやつているではないかという御意見でありましたが、政府といたしましては、決して秘密外交をやつているつもりは、ございません。ただ交渉経過におきまして、成る程度秘密が保たれなければならんことは、これは曾祢君におきましても十分御了承のことと考えます。だからといつても自主性がないと断定されることも甚だ迷惑な次第でありまして、政府といたしましては、こういう大きな問題につきましては、どこまでも自主性をはつきりすることに努めている次第でございます。  それから十七国会において防衛の長期計画を出すことを、防衛計画の長期計画を二十九年度予算と同時に提案することを約したが、今日その長期計画の提案がないのはけしからんという御質問であります。自衛力増強年度ごとの計画は、長期計画の一応の目途をつけてその一環として考えるべきものでありまするし、又長期計画の成案を得れば、これを国会に提出いたしますることは勿論当然でありまして、そのことを申上げたのでありまするが、ただ二十九年度計画及び予算と同時に長期計画を出すことを約束したとは記憶しておりません。長期計画につきましては、あらゆる角度から検討中でありまするが、将来に亘ることでありまするので、種々不確定を伴う要素がまだ甚だ多い。そういうわけで、まだ今日成案を得るに至つていないのでありまして、成案を得れば、勿論国会の御審議を経て承認を得たいと考えております。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 先ずこの協定の第八条の、我が国防衛力増強義務及び自由世界防衛力増強義務等は、安保条約義務を逸脱するものではないかというお話でありますが、私が繰返して申上げておりますのは、このMSAの、アメリカの法律で言えば第五百十一条の第三項に言う軍事義務というものは、安全保障条約の義務を出るものでない。で、MSA協定を結びますると、この五百十一条第三項の、いわゆる軍事義務以外にいろいろの義務を負うのでありまして、これは別に安保条約を逸脱するとか何とかいう問題でない。要するに安保条約で負つておる義務は、この五百十一条の第三項の義務を指すものであつて、その他の義務は、安保条約義務とは別問題であります。これはMSA援助を受ける以上は、世界の非常な多数の国が全部受諾しておる義務でありまして、差支えないと考えまするし、又これは永久に負う義務ではなくしてそういうものを負いたくなければ、援助を受けなければよろしいのでありまして、この点は誤解ないように御了解を願いたいと思います。  それからこのMSA援助には、基本的な防衛計画、例えば北大西洋条約に似たような太平洋同盟条約というようなものがなければいけないのであつて、将来これに向うその第一歩ではないかというお話でありますが、これも先ほどお答えを申しました通り、私はこの太平洋防衛協定というような基本協定がなければならんものとは考えておりません。又そういうものが仮に将来できましたときも、先ほど申しました通り日本憲法なり、日本の政治、経済の状況に鑑みて、これに加わるかどうかを決定すべき問題で、MSA協定援助とは、これは特に関係はないと思つております。  それから海外派兵についての御議論でありますが、これはもう繰返し繰返し御説明いたしましたように、この協定は物による援助を規定しておるのでありまして、海外派兵と兵力による援助とは無関係であります。で、こういう海外派兵義務等がこの協定の中にあればともかく、全然ないのにかかる義務を負うことはあり得ないのであります。  それから憲法協定第九条の規定との関連性でありまするが、私もこの協定第九条の「憲法上の規定に従つて」云云ということは、必ずしも必要はない規定だと考えております。この規定がなくても、政府憲法の条章によつてこの協定を処理するのは当然のことであります。併し国会おいてしばしば議論もありまして、又こういう規定を入れることは別段先例に鑑みてもおかしくないのでありまするから、念のためかかる規定を入れた次第であります。なお、最後に平和を脅威する国との貿易の制限についてのお話でありまするが、我々はかかる貿易の制限は、他の自由主義諸国と協力してやるものであるということをここに述べておるのでありまして、国際協力の精神から、イギリスでいろいろ考えもありましよう。ドイツも考えがありましよう。日本も考えがあるのでありまして、これらを統制して、自由主義諸国全般が一定の方針で歩調を合せてこういうことについて措置をとる。これは何ら差支えがないと考えております。    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  25. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 防衛支出金の二十九年度予算は五百八十四億八千万円でありまして、米軍交付金五百三十二億八千万円、提供施設の借料及び補償関係費五十二億となつていることは御了承の通りであります。これを二十八年度に比較しますると、米軍交付金で二十五億二千万円、提供施設借料、補償関係費で十億円、合計三十五億二千万円の減少となつております。日本防衛のための経費とこの防衛分担金との関係につきましては、この双方を合せた経費が一体として問題になりまするので、一方が増加しますれば他方の減少でこれを調整するという必要がある。こういう考え方から、日本日本防衛のための経費を増加しました場合におきましては、防衛分担金の減額に考慮を払つて行くことは当然のことであります。これは日米両国政府間に了解せられておる次第であります。ただ、二十九年度予算では、仰せのごとくに保安庁経費が百七十五億殖えておる。併し防衛分担金が減る割合が少いじやないかというお考えもあろうかと思いますけれども、実は合衆国側の分担金も、行政協定成立当時の負担額に比べますると、著しく増加いたしておりまするので、米軍の交付金については七百万ドル、二十五億二千万円の減額を決定されたような次第でございます。今後自衛力漸増に伴いまして駐留米軍の減少が考慮されまするから、従つてこれらの事情を勘案しまして、この米軍交付金の減額についてはできるだけ努力いたしたいと、かように考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  26. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 貿易の統制の問題についてのお尋ねにつきましては、只今外務大臣からお答えがありました通りでございまして、今回の協定附属書Dの規定は、貿易の制限につきましての国連協力の現状を成文化したに過ぎないのでありまして、従つて日本側としては何ら新らしい義務を負うものではないと解しておるのでございます。私はむしろ他の平和愛好諸国とへの協力ということを謳うりことによりまして、日本が西欧諸国、他の平和愛好国と同等の立場に立ちました輸出統制を行うことを意味するものであると、かように解すべきものと考えるのでありまして我が国が現在実施いたしておりまする対共産圏等の貿易制限につきましては、これが緩和につきまして、今後もできるだけの努力を尽したいと考えております。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎登壇拍手
  27. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。  日米が共同作戦をする場合におきましては、行政協定第二十四条によつて日米間において対等の立場において協議して適当な措置をとることになつております。なお、自衛隊の行動は、申すまでもなく総理大臣、保安庁長官、各幕僚を通じてこれを指揮し、しこれを行うものでありましてアメリカの何らの干渉を受けるものではないことを御了承を御願いいたします。(拍手)     —————————————
  28. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 鶴見祐輔君。    〔鶴見祐輔君登壇拍手
  29. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私は只今問題になつておりまするMSAの問題につきまして、改進党を代表して政府にお尋ねをいたしたいのであります。  すでにこの問題については、各方面から詳細なる質疑、討論がありましたから、私は二つ簡単なる点について、国民がこの協定について抱いておる一つは不安の感じ、いま一つは失望の感じがどういうものであるかということを述べて、これに対する政府の明白ばる御答弁を得たいと思うのであります。  国民が何故に不安の感じを持つておるかと申しますと、それは日本が本協定締結に際して独立国たる主体性を堅持するためにどのような措置政府がとつたかという点であります。本協定基礎になつておりまする米国相互安全保障法は非常に長い標題を持りておりますが、それは「国際平和及び安全保障のために、友好国に援助を与えて、米国の安全を維持し、外交政策を促進し及び一般の福祉を培うことを目的とする法律」というのであります。この米国の基本的の政策である国際平和及び安全保障維持ということに対しては、日本国民は全幅の同調を惜しまないと思うのであります。ただここに日本国民が不安を感じ、明らかにしておきたいと思うことは、「米国外交政策を促進し」という文字の意味であります。政府はこれを如何ように理解しておられるかということをお尋ねをいたしたいのであります。何となれば、一九三三年の三月、ルーズヴェルトが大統領に就任して以来一九四五年四月、その死亡に至るまでの間の十二年間は、明白に米国外交政策は親ソ政策であります。従つて終戦直後日本に進駐して参りました米国を中心とするところの連合各国の占領政策というものが、この米国外交政策を基調といたしておつたということは隠れもなき事実でありまして、あの当時の占領政策を今日我々が振返つてみても明白であります。一兵も残さず日本を武装解除し、平和憲法日本に与えて、日本の大会社、大商会、銀行等が国際市場において競争ができないほど細分され、経験と知識を持つた指導者、専門家が二十五万の数に及んで各方面から追放されたという事実はこれを物語つておるのであります。然るに最近に至つて米国のその対日政策が、殆んど百八十度に転回をいたしておると思うのであります。これはニクソン副大統領の声明を待つまでもなく、我々が明白に理解をいたしておつたところでありますが、即ち米国が僅かの時間の間にこのような基本的な外交政策が変つて、そのために日本に対するところの政策も変り、而もその影響は単に軍事外交のみならず、或いは警察、経済、教育の末にまで及ばんといたしておることを考えます場合に、日本国民の憂いとするところは、政府はこの間に処して如何にして日本独立国としての主体性を堅持する措置をとつておられるかという点であります。勿論国力の相違はある。故に我々は平等な相互的の力を持つていないでありましよう。併しながら日本民族としては、最後に守らなければならん線があり、限界があるのであります。それは何であるかと言えば、日本国民の圧倒的の感情は、もう再び戦争をしたくないということであります。(拍手)この原子力の時代における戦争がどんな非人道的な残酷なものであるかということを身を以て体験したのは、日本民族だけであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)故に日本民族の心持が、戦争にはこりごりした、戦争は何ものも解決しないんだという感じが日本の中にあるということは(拍手)明白なる事実であつて、この裏付けがあつてこそ、今、日本国内憲法九条を守ろうという運動が起つていることは争いがたき事実であります。そこでこの日本国民感情を、MSAによつて日本の国策が非常な前進をいたそうとする時に、政府如何なる具体的の措置をとつて、これを堅持しようとしておられるかということを伺いたいのであります。言い換えれば、日本民族は表門からも裏門からも国際戦争に入りたくないのであります。従つて今同僚曾祢議員からもお尋ねがありましたように、海外派兵という文字は、これは技術的な文字ではなくして、日本国民感情の現われが具体的にここに結集しておるということを考えます場合に、私はこの協定締結に際しては、日本政府としては誤解の余地のないほど明白なる言葉を以て、日本民族が海外に派兵せざるは勿論、如何なる国際戦争にも介入しないのだということを先方に通達しておられるかどうかを伺つておきたい。これは外務大臣アメリカの大使との口頭の挨拶だけでは十分ではないのでありまして、今まで政府防衛問題に対するところの答弁を聞いておりますと、誠にあいまいである。日本国民の憂いとするところ、不安とするところは、現政府が既成事実を作つて国民の知らない間に、日本政策が根本的の転回をいたしておるという事実でありまするが故に、私は重ねてこの点について首相、副首相並びに外務大臣から、どのような具体的の措置をとつておられるか。若しとつておられるなら、国会において国民意思を明白に表明する方法をとらなければならないと思うのであります。  第二に私がお伺いいたしたいことは、本協定が発表された時に、日本国民の中には蔽い隠すことのできない失望の感じがあつたということであります。それはなぜであるかというと、昨年以来日一日と深刻になつて参りました経済不況に対して、このMSAが何らかの救いの手を差延べるではなかろうかという期待国民が持つておつたからであります。国民をしてかくのごとき期待を抱かしめたことは政府責任であると私は思う。(「然り」と呼ぶ者あり、拍手)初めからないとわかつておつたなら、なぜこれを国民にはつきりと知らしておかなかつたか。又或いは政府自身も経済援助がもつとあると考えていたのではなかろうかとすら私は思うのであります。即ち今日の窮迫した経済情勢に対して、そうでないなら、なぜ政府はこのように只今あわてて、いろいろな発表や施設をいたしておりますか。例えば最近に至つて政府は帯出奨励のためにはリンク制拡大のほかないと言い出している。リンク制は部分的平価切下げにほかならない。政府はすでに二重価格制をとつておる。これも一種の平価切下げであります。又石油や砂糖に対しては統制をすると言つたり、政府の勘定で輸入してその利益を政府が収めようとするかのごとき感じを与えている。これは明白に自由党の根本的の経済政策であつた自由放任の政策を捨てて統制へ進もうといたすものであつて、吉田内閣の従来の経済政策の破綻であると私は思うのであります。(拍手)それは政府自身がMSAにやはり期待を持つてつたのか裏切られたためではないかと私は思うのであります。最近に至つて日本経済情勢如何に窮迫しておるかは申述べるまでもない。それは政府のとつたところの政策が露呈して来たからであります。昨年末以来の金融の引締めと外貨が急激に減少したためであつて、これをMSAによつて補い得るかのごときそら頼みを政府はしていなかつたと断言なさることができるか。若しそうでないというなら、具体的な説明を伺いたいと思うのであります。  そこで私が根本問題として伺いたいことは、一体政府は、外国援助によつて自国の経済を支えようとしたところに根本的な欠陥があるのではないかという点であります。政府は自力更生の機会を今までしばしば持つていたのであります。占領直後に米国からすでに二十億ドル余の援助物資並びにその他のものが来ておる。或いは朝鮮の戦乱の後には、その半ばにおいては、日本は十三億ドルを超えるところの外貨を持つておる。これを利用して若し当時の政府外国の機械と技術と原料とを買つて日本産業の合理化をいたして日本の生産品を世界市場において競争できるまでの低物価に下げることができたはずであります。然るにこれをいたさないでおいて、今度はMSAによつて一種の特需景気を維持できるが、ごとく装おつたのが今国民の前に真相が暴露したのであります。これは政府経済政策計画性が欠如いたしておつたからであつて今日、一兆を超えない予算を作つて政府がその態度を改めると申しましても、立憲治下においてはこれは由々しき政府責任であります。  この際政府MSA援助を以て単純なる外国援助と、即ち経済援助としないで、日本の将来の建直しのためには飽くまでも自分の力でやるのだという決心を国民に表明して国民の中から外国依頼心を払拭することが私は刻下の最大の急務であると思うのでありますが、これに対して関係者大臣の御答弁を得たい。そしてこの議場の上から国民の持つておる不安と失望に対する明確なる政府の決意のほどを表明して頂きたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  30. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) アメリカ世界政策が一九四五年の半ば頃から急に変つたことは、只今御指摘の通りであります。それまでルーズベルト大統領の治世下のアメリカが比較的親ソ的な政策をとつてつたのが、一九四五年のドイツの崩壊前後に、一変したことは御指摘の通りでありますが、その結果として、戦争は何ものも解決しないという嘆声が世界的に起つたことも事実であります。これは何故にアメリカがそういう政策を変えたかと申しますれば、全く客観的情勢変化、更に具体的に申しますれば、ソ連態度ドイツ崩壊前後に急に変つて参つた。それが私は根本的の理由でなかつたかと想像いたしております。それだけに、客観情勢変化のあることを予想して、国の外交が、或いは国の政策が自主的でなければならんというその重要性はますます加わつて参ると存じます。そういう点におきまして、今回のMSA協定がそれに伴つて日本海外派兵を将来余儀なくせしむることのないように、この点につきましては政府といたしましても十分に慎重に注意を払つたつもりでございますが、更にこの点につきましては、国民的にもはつきり自主的の立場をとつて、将来如何なる政府が現われましようとも、そういう危険のないようにあらかじめ覚悟しておく必要があろうかと考えております。  それから経済援助のことについてお尋ねでありましたが、政府MSA協定締結することによつて少なからざる経済的利益をも享受できる旨を明らかにしたことは事実でありまするが、いわゆる経済援助なるものを受けられると、非常な大きな経済的の利益が受けられるというような誇大な宣伝をいたしたことはないつもりであります。この協定による経済的利益といたしましては、域外買付農産物の円貨買付、又は右代価の二〇%の贈与及び投資保証等、当初期待しておつた以上のものを受けられたように思つております。政府といたしましては、右は利益といたしておりまするけれども、お説のごとく国民援助に対する不当に大きな依頼心を抱くことなく、いよいよ自力更生の決意を強固にせんことを切望している次第であります。  以上、お答え申上げます。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  31. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今総理から大体お答えをいたしておられますので、補足的に申上げますと、アメリカMSA法を引用されまして、このアメリカ対外援助というものは米国外交政策を推進するという点にあるので、そうすると、米国外交政策が変なものであつたならば危いじやないか。そういう御懸念があるようでありますが、私はアメリカ外交方針というものは、根本的には世界平和維持をすることによりまして自国の安全を守ろうとするごとに尽きておると思うのでございまして、ただこの根本方針を実現するための外交政策につきましては、世界情勢変化によりまして変化することは先ほど副総理から申上げた通りであります。従いまして私は米国外交政策が変更いたしましても、それは時の情勢でやむを得んこともしばしばあろうと思いまするが、この根本方針である平和の維持という点については変りはないのであつて米国が平和を維持せんとする政策から、戦争に持つて行こうという政策に変つたとは、到底考えられないのでありまして、この点については、MSA協定を結ぶに当りましても、アメリカ政策がどこにあるかという点は、十分検討いたしたつもりでありまして、心配の点はないと考えておつたのであります。    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  32. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お説のうちには、御尤もな点もありますが、政府といたしましては、日本の置かれておる内外の経済事情等から見て、国際収支の均衡を回復することを目標として緊縮予算の編成、金融引締めの強化等、財政金融全般に亘つて自力による経済健全化の諸方策を進めておる次第でありまして、MSAアメリカからの援助のみに依存しておるというような他力本願の政策を進めておりません。    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  33. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 経済援助の問題につきましては、これを期待する人或いは希望する人のそれぞれの見方によつて私はいろいろの考え方があつたろうと思うのであります。併しながら政府といたしましては、この一月にはつきり申上げておりまするように特需等にいつまでも頼れるものでないということを前提にして、仮にMSA調印というようなことがあつた場合におきましても、これからの日本経済の持つて行き方はなかなか楽観を許すものではないということは、経済演説等におきましてもはつきり謳つておるのでございます。この観点から、この現状の下において国際収支の改善を中心とする総合的な経済政策を打出すことが絶対に必要である。こういう我々は考え方をとつておるわけでございます。従つて一兆円予算を第一といたしまして、例えば外貨の予算の問題、金融引締めの問題というようなものにつきましては、一連の自主的な考え方によりまして、将来の日本経済の自立ということを見通しまして、総合的な見通しの下に計画的な計画を進めて参りたいと思うのであります。自由党が過去において、あたかも何もかにも自由放りつぱなしの経済政策をとつて参つたかのうな仰せでございましたけれども、例えば外貨予算の編成を初めといたしまして、そのときそのときによりまして必要の措置をとり、調整を加えて行くことは、生きものの経済を扱つて参りまする責任当局といたしましては当然のことであり、又今後もその考え方を進めて参りたいと存じます。(拍手)    〔鶴見祐輔君発言の許可を求む〕
  34. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 鶴見祐輔君、御登壇を願います。    〔鶴見祐軸君登壇拍手
  35. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 只今、副総理並びに外務大臣から、私の第一の点に関する御答弁がありましたが、これは私は故意か、或いは何か私の質問の意味を取り違えてお答えになつておると思うのであります。私の伺つておることは、客観情勢が変つたからアメリカ外交政策が変つたのだというような、子供のようなことを伺つておるのではありません。現にヤルタ協定をルーズヴェルトが結んだときは、イギリスのチャーチルは反対であり、外務大臣のイーデンは、調印しなさるなと、あのように熱烈に総理大臣言つておるのであります。いわばそれは見通しの間違いであります。今日においてアメリカ国内の有力なる新聞で、即時ロシアに開戦すべしとボストンの新聞は社説で書いておる。そういう急激な議論が起るのでありますから、一国の国民の中にある一億六千万の、人により考えが違う、そのどの考えがアメリカの支配的勢力になるかわからない。即ちアメリカの輿論というものは非常に激変しますから、この根本の問題について、世界の平和と安全の保障については日本は全幅の同調を惜しまない。けれどもアメリカの方針が一々変る場合に、万一、本年の十一月の選挙で民主党のアトリー・ステイヴンソンの勢力が殖えるというような場合に、アメリカの国策も多少の変化が実は予想され得る。その場合に日本が善処しまして、日本自身の最低限度の線だけは守るような措置をおとりになつておるかどうかと申上げておるのであつて客観情勢変化ということを伺つておるのではございません。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇
  36. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えを申上げますが、私が申しましたのは、ヤルタ協定を結んだ後にアメリカ政策が変つたのは、これは客観情勢が変つたのが原因でルーズヴェルトの外交政策が、いや、そうじやありません。ルーズヴェルトは、間もなく死亡しましたが、その後トルーマンの対ソ政策が変つた。これは客観情勢が変つたことが主たる原因だと思います。この客観情勢変化というものは国際政治には常にある。従いまして私が先ほど申しましたのは、客観情勢如何なる変化を来たすことがあろうとも、それに動かされることなく、国の外交としては常に自主性を持つていなければならないということを申上げたのでありまして、その自主性からして、自主性の観点から今回のMSA協定につきましては、政府としてはどこまでも日本の国の将来のことを考えて、慎重に検討いたし、慎重に締結をいたしたのでありまして、客観情勢の御説明を申上げたわけでは決してないのであります。(拍手)     —————————————
  37. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇拍手
  38. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は、国民MSA協定に関して一番関心を持ち、聞きたいと思つている点についてお伺いしたいと思いますが、その第一は、MSA協定の本当の目的は何であるか。真の目的が私は隠されているのではないかと思うのであります。そこで本当の目当はどこにあるかということを第一にお伺いしいた。  それから第二には、この際、現在特にMSA協定によつて防衛力増強しなければならない理由。これはどういうところにあるか。  それから第三には、このMSA協定及び小麦協定経済的効果如何。財政、金融、産業に対する影響如何。  第四は、MSA協定国民生活への影響。  この四点について政府側の御答弁を聞きました上で、更に私は質問をいたしたいと思います。  第一と第二につきましては、緒方副総理及び外務大臣。第三、第四につきましては、大蔵大臣及び通産大臣又外務大臣に御質問申上げます。    〔国務大臣緒方竹虎登壇
  39. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) MSA協定に何か隠された目的がないかという御質疑のように承わりましたが、相互防衛援助協定は、我が国防衛力漸増に必要な援助を受けることによつて独立国としての自衛能力の増大を図り、延いて日米両国相互の安全を強化することによつて世界の平和の維持に寄与せんとするものでありまして、これ以外に御示唆になりましたような目的は隠されておりません。  以下の御質疑に対しましては、所管大臣からお答えいたします。    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  40. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) MSA協定に何かほかの目的が穏されておらないかということは、只今緒方副総理からお答えした通りであります。  MSA協定を結んで防衛力増強せねばならん理由と申しますと、結局現在の日本の置かれたる国際的地位、それから独立国としての日本の建前から申しまして、できるだけ経済上、政治上の理由、条件の許す限り防衛力増強を図るのはこれは当然のことと考えております。  以上、お答えいたします。    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇
  41. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 小麦協定経済的効果の話でございましたが、これは凶作で外国から輸入を必要とする小麦等をドルによらず円価で買入れができること。又小麦五千万ドルの一千万ドル、三十六億円がいわゆるグラントとして日本に贈与せられて、それが日本工業その他経済力増強に使用することができること。その次は四千万ドルの分、即ち百四十四億円が日本銀行におけるアメリカの口座に積立てられまして、防衛産業等の育成に寄与すること。これらがいろいろもとになつて将来域外買付増加することであります。もう少し広い意味でなお申しまするならば、更に二つほどあるかと思います。それは日本防衛計画実施に必要な国費の負担が軽減されることもその一つでありましよう。更に又、今度投資保証協定ができておりまするから、これで日本に外資が入りやすくなり、日本産業の開発に幾らか役立つ。こういうことがほかに考えられるかと思います。    〔国務大臣愛知揆一君登壇
  42. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 小麦協定の件につきましては、只今大蔵大臣からお答え申上げました通りでございます。  それからMSA協定国民生活への影響の問題でございますが、これは申上げるまでもないと思いまするが、私は今回の協定の前文に、「防衛援助計画の策定に当つて経済の安定が日本国防衛能力の発展のために欠くことができない要素であり、また、日本国の寄与がその経済の一般的な条件及び能力の許す範囲においてのみ行うことができること」という文章がありまする通り、この考え方を本旨といたします限り、国民生活への悪影響を与えることは考えられないと存ずるのでございます。むしろ集団安全保障の下におきまして、我が国が国力に応じて負担するところの防衛支出の一部について援助を受けることになりまするから、この点は負担の軽減になりますると共に、只今大蔵大臣から申上げましたごとく、域外調達や食糧購入の国際収支の改善、或いは生産技術の向上ということを考えまする場合に、積極的な影響があるものと考えるわけでございます。    〔木村禧八郎君発言の許可を求む〕
  43. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇
  44. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今の御答弁を聞きまして、私は政府側のMSA協定に関する考えが全く逆立ちしていると言わざるを得ないのです。私は少くとも真の目的については二つのことが隠されていると思うのです。このことが国民に明らかになつておらないのです。隠されている目的の第一は、このMSA協定が、アメリカ防衛を第一義の目的としておるのであります。日本防衛はその手段であり、第二義的なものであります。こういうことが隠されており、政府はこれを隠すことに努力しております。従つてこの協定は、名前は日米相互防衛援助協定となつておりますが、実質は相互防衛援助ではなく、日本側アメリカに対する片務的防衛援助を意味する。アメリカ日本に兵器を援助するのは、アメリカを守るために日本人に武器をかつがせて、日本国民の負担と犠牲においてアメリカ防衛のための再軍備をさせる協定ではないかと思うのであります。その論拠として私は四つのことを挙げることができると思います。  その第一は、今回調印しました日米相互防衛協定第一条には、アメリカ合衆国政府がこの協定従つて使用に供する援助は、一九四九年の相互防衛援助法、一九五一年の相互安全保障法等々の規定に従つて供与するものとすると定めてあります。ところで一九四九年の相互防衛援助法の正式の名称は、御承知の通りアン・アクト・ツー・プロモート・ザ・フォーリン・ポリシー・アンド・プロヴアイド・フォー・ザ・ディフェンス・アンド・ジェネラル・ウエルフェア・オブ・ザ・ユーナイテツド・ステーツ・バイ・フアーニシング・ミリタリー・アルスタンス・ツー・フオーリン・ネイシヨンズとなつておる。これは、外国軍事援助をすることによつてアメリカ外交政策を推進し、アメリカ防衛と一般的福祉を確保することを目的とすると、はつきり書かれておるのであります。更に一九五一年の相互安全保障法の正式の名前もやはりそうなつておる。この点はMSA協定というものは、アメリカ防衛によるそれを主としておるということもはつきりしておる。これを政府は隠しております。日本防衛ではありません。  それから第二は、今回のMSA協定の第八条、これは五百十一条((a))項の規定を盛り込んだものでありますので、その中にもはつきりと、「アメリカ合衆国政府が提供するすべての援助の効果的な利用を確保するための適当な措置を執るものとする。」こうなつております。これはMSA援助によりまして、日本アメリカ防衛のために効果的な再軍備をすることを意味しておる。而もMSA五百十一条(a)項にははつきりと、アメリカ大統領アメリカの安全を確保すると認めない場合には外国に対して援助を与えない、如何なる援助も与えないということを、MSA五百十一条(a)項にはつきりと冒頭に書いてある。ですからアメリカ防衛ということが明らかであることがはつきりしております。それから次には、これは昨年ロンドンで発行されましたフィリップ・ポルリーヴアーという人のアメリカ・オーバー・ブリテン、即ち「イギリスを支配するアメリカ」という本の中に書いてあるのであります。「アメリカの在英基地から飛び立つたB29は優に東ヨーロツパを越えてウラル山脈に達し得るけれども、ソ連爆撃機はベルリンからでさえ米本国に到達できない。併しイギリスは爆弾の雨を浴びなければならない。」こう書いてある。そうしてこの著者はこう言つております。「これが相互安全保障なるものである。」非常なる痛烈な批判をしておる。それにもかかわらず相互安全保障という「相互」という字がなぜ使われるか。これに対してこの著者はこう言つております。それはアメリカのフインレター空軍長官が言いましたところの「脅かしの戦術」を使うべしという原則を引合いに出しまして、そうして赤色侵略の恐怖を強調することが、軍拡を相互防衛援助という名によつて可能にするモットーとして使われたのである、こういうふうに言つておる。このことは、今度の日米相互防衛援助協定に当てはまらないでしようか。原爆、水爆はアメリカが独占しておるのではありません。ソ連も持つております。アメリカMSA援助によつて日本に再軍備をさせて、ソ連アメリカに対する原爆、水爆攻撃を防ぎ得るか知れません。併し日本には原爆、水爆が落ちる可能性が大きくなることは師うことはできない。これでどうして相互防衛でありましよう。アメリカが原爆の攻撃を防ぐ可能性がこれでできるか知りませんが、日本は原爆の見舞を受ける可能性が大きくなるわけです。小さくなるのではないのです。これけ決して相互防衛ではございません。この点私は、政府は隠しておる。昨日も指摘されましたが、このMSA協定アメリカの安全と防衛が第一義であるとMSA協定にはつきりと書いてある。なぜか政府はこの点を明らかにしない。  第二に、このMSA及びそれによる再軍備、これが真の意味で祖国を守るためではなく、祖国という美名によつて日本及びアメリカの大資本の独占的利潤と搾取の自由とを防衛する。こういうものである。こういう目的が隠されておると思う。昨日この壇上から自由党の植竹氏は、祖国を守らねばな久んと非常に熱弁を振われました。大資本家や、その利益を代弁する保守党の人たちは、祖国のために大いに熱狂します。そうして祖国を愛するとか、祖国を防衛するとか言いながら、祖国を外国軍事基地と化し、日本婦人の貞操を外国人に販売せしめて国際収支のバランスを合わせたり、風水害が起つたと言つては、祖国にセメントや鋼材や、木材の独占価格を吊り上げて高く売り付けて、そうして祖国の財政経済を困難に陥れ、疑獄や汚職によつて祖国の財産を、私服を肥やすために騙り盗んで祖国を瞞着して怪しまないではありませんか。こういう種類の祖国は大資本家の手に握られた単なる道具としての祖国である。租税、公債、関税を以て国民大衆を搾り取る道具としての祖国であつて、彼らの利益になるときは祖国防衛を口実としまして民族を互いに戦わせ、純然たる私的な、そして全く非国家的な利害を虚偽の旗を以て掩い隠すところの祖国であります。私たちも同じ名前の祖国を愛します。併し祖国という名前は同じでも、我々の愛する祖国は、あらゆる協同社会の基礎であり、国民大衆の生存の根底となる祖国であります。(拍手)大資本の代弁者たる保守党の諸君は、国民大衆を欺き、搾取する道具としての祖国を防衛するためにMSA協定を結び、そうして大砲や軍艦、航空機、その他の軍備予算を可決しようとしておるのであります。又その裏付けとして教育中立法の制定、警察力の中央集権化、秘密保護法等による特高警察の復活を行おうとしているのであります。これがMSA協定とその再軍備の本当の目的ではありませんか。この目的が隠蔽され偽装され、この隠蔽と偽装の下に政界、財界、官界を通じて腐敗と堕落が展開され、渦を巻いている。私はそう思います。この点緒方副総理に再び私は質問したいのであります。  更に、経済的効果について、これは私は全く政府は大きな誤算を犯したのである。その誤算をごまかすために、これが日本防衛するための防衞費の節約になるとか、小麦の援助を受ければ、日本が外貨を使わなくて、そうして小麦を買い得るから外貨の節約になるとかごまかしておりますが、これは明らかに外務省が一九五三年のMSA改正について非常な誤算を犯していると思うのであります。最初経済援助があのようにあると言つたのは、最初一九五三年のMSAの改正案によると、あたかも日本経済援助を受け得るがごとき改正があつたのです。そういう項目があつたのです。一九五三年のMSA改正の主なる点は、アメリカの余剰農産物の使用に関する五百五十条の規定を挿入したことと、もう一つ援助費予算の地域別及び援助種類別移用の規定を拡大しようと、こういう二つにあつたわけです。ところがこの移用の拡大の規定は、実はその後において、これは大蔵省の調査月報にも明らかに書いてあります通りに、実は移用できる途を開こうとしたのであるが、成立した改正法では結局この考えは撤回されて旧法通りとなつてしまつたのであります。日本経済援助を受ける場合には、結局他の地域に対する経済援助の予算から移用するか、又はヨーロツパに対する軍事援助の予算から移用するか、この二つにしかないのです。五三年の改正においてこれが可能のごとく見えたのですけれども、結論においてはこれが撤回されてできなくなつたのです。池田大蔵大臣とロバートソンとの会談において実は経済援助があると思つたのがなかつた。ところが外務省の調査では経済援助があるやに聞いておつた。外務省はこの改正案の最初の項目についてそう考えておつた。ところが結果はそうでなかつたのです。これが重大な誤算です。外務大臣はこのMSA協定イギリス日本と違う点について、いやこれは同じであると言ておりますが、重大な違う点が二つあります。その一つは、イギリスフランス、その他MSAを受けておる国には、日本のような再軍備を、或いは武力の保持を禁じた憲法はございません。日本は再軍備を禁止した憲法があるのです。この点が違う第一点であります。違う第二点は、イギリスフランス等はいわゆる経済援助を受けておるのです。ディフェンス・サポート・エイドをもらつているのです。日本はもらつていないのです。この点は大きな違いなんです。非常な誤算なんです。このために日本の資材を以て再軍備をしなければなりませんから、結局不生産的支出が殖えて、日本経済の価値は廃棄されて、インフレの基本的な原因がここに醸成されるのであります。ここに国民生活の低下が生ずる。従つて今回のMSA協定は、再軍備を通じて国民生活を低下させるものである。ところが何か国民生活に役立つがごときことは全く逆立ちであります。こういう真実を政府国民に偽りなくこれを明らかにすべき義務がある。みんなごまかされています。私は本当の目的、本当の影響、そういうものを改めて質問いたします。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  45. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えいたします。  アメリカアメリカ防衛を考えることは、これは当然だと思います。又安全確保を期待し得ない場合に援助をしないと考えることも当然であると思います。それは今日国際間の対立と申しますか、現実が、今御承知の通りである限り、アメリカアメリカの利害を主として考えることは、これは当然であると考えます。併しながら極東の平和、その一環としての日本防衛に関しましてアメリカ日本の間の意見が一致したその際に、アメリカとの間にMSA協定を結ぶことは少しも不思議ではない。初めから慈善の援助を得ようと思つていないのでありまして、国際的に利害が一致したその結果として、この協定を結ぶことは国として当然でありまして、今御指摘のような、それによつて直ちにアメリカに隷属するための協定であるというようなことは、私どもといたしましては想像も及ばんことであります。  それから更に第二番目の目的として、これはアメリカの搾取制度の自由を確保するための云々というお話がありましたが、それ以下の御意見は伺つておりますると、これを要するに、世界観の相違と申しまするか、意見の相違でありますから、私からお答えをいたしません。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  46. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今副総理からお答えになりましたが、木村君は何かえらい四つばかり理由を挙げて、どうだというお話でありますから、簡単にお答えいたしますと、第一の、アメリカ防衛を考えておるんじやないか。これは今副総理が言われた通り、当り前でありまして、又これを政府が隠しておるというお話でありますが、鶴見さんにもこの点は、はつきり言つておるのであつて、何ら不思議なことはないのであります。それから援助の効果的利用というのは、これは当然援助を受けた物資を無駄に使わないということであります。第三に、大統領はその考えによつて援助をしないことがあるのであろう。これは今副総理からお話のあつた通り、平和を乱す国があつたり、或いは米国を攻撃するような意図のある国に援助を与えるわけはないのであります。第四に、何か外国人の著書を引かれましていろいろのお話でありますが、世の中には共産主義者もあれば反米主義者もおるのであつて、これらの人の都合のいい言動だけを引用する議論に取り合うわけには行かないのであります。  それから経済援助につきまして、いろいろ外務省の内情を御承知のようなお話でありまするが、外務省はこういう点について誤解をいたしたことは一度もありません。木村君の御研究の程度のことは、ずつと以前から研究済みであります。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  47. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 経済効果等については、すでに述べた通りであり、その他の問題は、両大臣から答弁された通りであります。(拍手)    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  48. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほどお答え申上げた通りでありますが、根本は私どもの考え方は、自衛力を国力に応じて漸増いたしたい。その立場から申しまして、今回のMSA協定関連いたしまして、先ほど申上げましたような防衛の支出についての国民負担すべきものを、援助を受けることによつてこれを軽減するということが一つでございまするし、更にそれに関連いたしまして域外調達を増額する。これもドルの域外調達をできるだけキープいたしまして、その上に更に余剰農産物の売却代金等によつての円の調達をも殖やすというような考慮もしてもらうというわけでございまするし、更に生産技術の向上、或いは先ほど大蔵大臣が言われましたように、投資保証協定等の関連において外資の導入も殖えるというような諸般の関係から申しまして、国民経済に対して私はいい影響があるということを申上げたのでありまして、なお詳細につきましては、他の機会に私どもの信念を申上げることにいたしたいと思います。(拍手
  49. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  二時四十五分まで休憩いたします。    午後一時四十二分休憩      ─────・─────    午後三時八分開議
  50. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。    〔山下義信君発言の許可を求む〕
  51. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 山下君はどういうことですか。
  52. 山下義信

    ○山下義信君 私は、昨日の本会議における質疑に対しまして緒方国務大臣がなされた答弁に関し、一身上の弁明をいたしたいと存じますから、発言をお許し願いたいと思います。
  53. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) よろしうございます。発言を許します。山下義信君。    〔山下義信君登壇拍手
  54. 山下義信

    ○山下義信君 昨日、防衛二法案に対しまして質疑をいたしました私の質疑に関しまして、緒方副総理が答弁をされましたその中に、私の述べました言葉に対しまして取消しの御要求があつたのであります。このことは簡単に考えますると、或いは又大したことでないように思われるかもわからんと思うのでありますが、併しながら、本会議におきまして各党代表質問質問者の発言に対しまして、政府の而も内閣を代表する副総理地位にある人が、議員のその発言に対して取消しを要求せられたということは、私はこれは軽々に看過はできないと考えるのでございます。昨日私の持ち時間はすでに経過いたしまして再質問をいたしまする機会はなかつたのでありまするし、午後は、所用がございまして議場におりませなんだので、今朝このことに関しまして、弁明の機会を申出たのであります。幸いに議運におきましてお許しを得まして、ここに発言をいたす次第でございまするが、私の昨日の質疑に対しまして、政府の答弁は殆んどなされていないのであります。持ち時間は御承知のごとく僅かに二十分に過ぎないのでありますが、私の質疑の要綱はおよそ十項目あつたのであります。それに対しまして政府の答弁は殆んど半数にも満たないのでございまして、今日なお答弁のございません項目だけを申上げますれば、防衛計画に自主性のないことを申上げまして、今日のMSAに関しまする質疑にも、殆んど質問者がこの点を繰返しておられたのでありまするが、若し政府にこの防衛計画について自主性があると言うならば、その計画の自主性を率直に答えなければならんということを申上げたが、お答えがないのであります。何を標準にして十六万数千の自衛隊にするのかという基準、何を考えて海上自衛隊、空軍の自衛隊を建設するという構想を持つたかという、その自衛計画の自主的構想というものを示さなければならんと考えるのでありまするが、これに対して御答弁がないのであります。又およそ国防、自衛ということを考えまするならば、言うまでもなく、その必要なる客観情勢というものを国民の前に示すべきは当然であります。政府はしばしば極東軍事情勢について、関係国からその情報を受けていることは事実でありまするが、それを国民の前に明示いたしましてかような必要があるから、ここに我が国自衛が必要であるというゆえんを示さなければならんと考えまして、その点を質問いたしましたが、御答弁がないのであります。殊に私が重要な問題としてお尋ねいたしましたのは、兵器の貸与を受けまずるが、それに必要なる弾薬というものの扱い方というものは、アメリカ側とどういう約束になつておるか、我がほうで自由に弾丸、火薬の発注ができるのか、どうするか、そのできた弾薬というものは、どういうふうに我がほうにおいて扱うことになつておるしか、アメリカとの関係は、約束はどうなつておるかということを質問いたしたのでありまするが、これに対する御答弁はないのであります。  殊に重要な問題といたしまして自衛隊の最高指揮権を総理大臣に与えるという今回の法律、これは実に重大問題でありますが、如何なる根拠に基いて総理大臣自衛隊の最高指揮権を与えるかという憲法上の根拠をお尋ねいたしましたのに御答弁がないのであります。  これに関連いたしまして、軍国主義の復活につきまして緒方副総理にお尋ねをいたしたのであります。言うまでもなく、文官優越性というものを堅持して行こうというその裏には、当然軍国主義の復活というものを阻止して行かなければならん。それが文官を以て最高指揮官に当てるというところの目円の一つでありまするから、軍国主義の復活について如何なる信念を持つておるかということをお尋ねいたしたののあります。たまたま副総理が首相に代つて御着席で、内閣を代表してお答えになるのでありまするから、この問題に関しましての答弁者としては打つてつけとある。私は緒方副総理から、この軍国主義の復活について、その風潮に対して如何にこれを排除して行くか、軍国主義復活の過失を再び繰返さないためには、如何なる用意を持つておるかということを、あなたの口から聞くことは非常に有意義であると考えたのであります。従つて特に私はその点に関しまして、この点について「右翼との関係浅からずと言われる緒方副総理から、その所信を承わりたいと思います。」かように申上げたのであります。然るところ、それについての御答弁はなくいたしまして、如何なる考えを以てやるか、どういう信念でやつておるかということのお答えはなくいたしまして、私に対しまして、「何か私が右翼に関係があるというようなことを言われましたが、右翼ということは、これは複数であつて、私は右翼の者も知つておりますが、私が右翼の運動のどこに関係がありますか。御指摘をお願いしたい。若し御指摘がなければお取消しを願いたい。」かような御発言があつたのであります。私はこれは何のことか、この意味を解するに苦しむのでありますが、あなたが右翼の運動に関係があるということをお尋ねしたのではないのであります。又そういうことを指摘しているのではないのであります。併しながら、右翼との関係浅からずと世間が言つておるということは天下周知のことでございまするが、それは例えば今月の文芸春秋におきまして、最も緒方副総理と親しいと言われる、而も人物評論家として当代随一の阿部真之助氏も、緒方氏は、右翼に関係があるかの、ごとく世間から見られておる、又見られやすい態度があるということを、その人物評論の中に言つておるのであります。例えば極く最近のものだけを見ましても、三月十四日の週間サンケイにおきましては、「右翼は動く」という大きな表題の中に又緒方副総理に関する記事も出ておるのであります。私はそういう新聞雑誌のことを取立ててここに申上げようとは思いません。併しながら、副総理現実に戦時小磯内閣の情報局総裁といたしまして、我が国戦争政治の中心にあつて、軍部とこの大戦に従事する戦争指導者として右翼との関係が浅からずあつた経歴であるということは、これは明らかでございます。且つ又今回保安庁が設置せられまして、保安庁長官に緒方副総理が擬せられた、或いは御自身も保安庁長官に就職することを、或いは希望せられたというような風評もある。若し保安庁長官に就職した暁には、いわゆる西郷隆盛になつて、これに魂を入れるのだという抱負を持つておられたというようなことを世評は言うのであります。或いは新たに情報局を設置する緒方構想というものを持つて将来これらが又他日の再軍備の下における情報組織の考え方であるというような批判をするものもあるのでありまして、緒方副総理が、いろいろ右翼関係の個人的な知己、その他経歴からいたしまして浅からざる関係があるという世評は、これは否みがたいのでございます。私の言葉が非常にあなたを刺激した。今日の政界で将来の、何と言いまするか、政局の中心にある、或いは次の内閣を背負うかのごとき世評の高い今日でありまするから、こういう点につきまして、非常に神経を過敏にお使いになるということならば、私の言葉尻をとらえて取消しを要求されるよりは、その機会に、進んで軍国主義の復活を排除するあなたの信念、決して右翼的なそういうことに関係もない。そういう行動もするものでないということを、私の質問によつてお答えになることが私は至当であろうかと考えるのでございます。(拍手)従いまして私の質問の言辞を、ここで取消す必要のないことを申上げ、むしろ取消しを要求せられましたあなたのお言葉の取消しを私は逆に要求いたしまして、弁明を終る次第であります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  55. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 只今山下君の御発言は、一身上の弁明ということでありましたが、不必要なことばかりお述べになつたのでありまして、私が申しましたのは、昨日、あなたの御意見をお述べになるにつきまして、私が右翼に関係深いと噂せらるるというようなことは何も必要もない。私が昨日議場におりまして、どなたかほかの議員の発言ではありましたが、例えば茶坊主とか、三級大臣とか、或いは私に右翼とか、この参議院の質疑応答に必要のない、まあ申さば、甚だ聞き苦しい言葉を述べられることは、それは国会の論議を高めるゆえんではない。(「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)そこで私はあなたの発言に対して御注意をした。それを何も威丈高になつておつしやることは何もない。(「答弁をはつきり言えばいいんだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)私は右翼の人間は知つております。知つておりますが、何か右翼運動に関係があるが、ごとき御発言は、私は甚だ心外であります。右翼という言葉は、今日の民主主義に反する、即ちフアツシヨ的傾向を表わしておる。右翼という言葉は端的にそれを表わしておる。それは御存じであるかどうか知りませんが、そういう意味で、ここで私に向つておつしやることは、非常な侮辱であると考えましたから、お取消しが願えるなら、根拠がなければ、お取消しを願いたい。さように申したのでありまして、私の発言を取消しいたしませんのみならず、その点につきまして十分の御反省をお願いしたいと存じます。(拍手、「何を言うか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  56. 山下義信

    ○山下義信君 簡単でございますから、自席から発言することをお許しを願いたいと思います。(「登壇々々」と呼ぶ者あり)
  57. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 山下義信君。
  58. 山下義信

    ○山下義信君 只今の緒方副総理の御言明については、私は承服することはできません。従いまして、この緒方副総理と右翼との関係は、私どもが適当な権限を以て、今後これを問題として処置いたしたいと考えまするから、この点重ねて申上げておきたいと存じます。(「休憩」「議員の発言を不必要とは何を言うか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)      —————・—————
  59. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 日程第二、国家公務員法の一部を改正する法律案趣旨説明)  本案につき、国会法第五十六条の二の規定により、内閣から、その趣旨説明を求めます。加藤国務大臣。    〔国務大臣加藤鐐五郎君登壇拍手
  60. 加藤鐐五郎

    国務大臣(加藤鐐五郎君) 只今議題となりました国家公務員法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。  この改正法律案は行政機構改革の一環として、現在の人事院を国家人事委員会に改組し、中央人事機関として我が国行政機構の実情に調和した組織と権限を持たしめることを主たる目的とし、併せて行政事務簡素化の線に沿つた二、三の点についての改正を行わんとするものでありまして、その要点は次の通りであります。  第一に、従前内閣の所轄に属しておりました人事院を改組して、総理府の外局として国家人事委員会を置くことといたしました。これに伴いまして人事官は国家人事委員に、人事院総裁は国家人事委員長に名称を改めるほか、国家人事委員の認証、給与保障、宣誓及び兼職制限に関する規定等を改めることにいたしました。又、人事院には国家行政組織法の適用がなかつたのでありまするが、この改正により他の外局と同様、国家行政組織法の適用、従つて行政機関職員定員法の適用をも受けることとなるため、国家人事委員会の内部組織及び定員はこれらの法律に基いて定められることになりました。従いまして事務局の部の設置、その所掌事務等内部組織に関する主要な事項を国家公務員法中に明記することといたしたのであります。第二に、国家人事委員会の権限及び機能に関する点でありますが、給与の勧告その他人事行政に関する意見の申出等は国会及び内閣に同時に行うこととなつておりましたのを改め、これらを内閣に対して行い、内閣はこれを国会に報告しなければならないことといたしました。俸給表の改訂に関する勧告につきましては、従来俸給を百分の五以上増減する必要が生じたときに行うことになつておりましたのを、国家人事委員会が俸給表の改訂を必要と認めるときに行うことに改めましたほか、内閣はこの勧告があつた日から五日以内にこれを国家報告しなければならないよう報告の期限を明定いたしました。地域給その他の給与に関する勧告についても同様の報告期限を附しております。なお、いわゆる二重予算及び人事院指令の制度は他の外局並みにこの際廃止することといたしました。  第三に、行政事務簡素化の線に沿つた改正といたしまして、任命権の委任手続、不利益処分の審査の請求の期限、起訴中の者の懲戒手続、条件承認制度等につきまして、廃止、簡素化等の改正を行うと共に、併せて二、三の規定の整備を行うことといたしました。  第四に、経過的規定といたしまして、従前の人事院、同事務総局及び地方の事務所がそれぞれ国家人事委員会、同事務局及び地方の事務所として同一性を以て存続することを定め、現に在職する人事官は、そのまま国家人事委員として在職し、人事院総裁として命ぜられている者は、国家人事委員長として命ぜられた者とすることを定め、それぞれ人事官としての残任期間を以て国家人事委員としての任期といたしました。  以上改正の要点を御説明いたしましたが、その他の点につきましては、中央人事機関として国家公務員法を実施する国家人事委員会の権限は、従前の人事院の権限と変りありません。  何とぞ慎重御審議の上、速かに御贊同あらんことをお願い申上げます。(拍手
  61. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 只今趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。宮田重文君。    〔宮田重文君登壇拍手
  62. 宮田重文

    ○宮田重文君 私は自由党を代表いたしまして、今回上程せられました国家公務員法の一部を改正する法律案につき、政府の所信を質したいと存ずるものであります。  国家公務員法目的は、憲法の意図する民主国家にふさわしい公務員制度を樹立し、以て国民に対して公務の民主的、能率的運営を保障しようとするものでありまして、従来の我が国の官吏制度を改革して、全体の奉仕者としての公務員たらしめんとし、昭和二十二年十月、第一回国会において制定せられ臨時人事委員会が設けられたのでありました。その後、昭和二十三年七月二十二日付を以て国家公務員制度改革に関するマツカーサー元帥の書簡に接し、この書簡に示された趣旨に応じまして第三回国会において、政府における職員関係と私企業における労働関係の区別を明らかにいたしますと共に、人事委員会を人事院に改めてその権限を強化し、又準司法的機関としてその性格も明確にいたしたのであります。人事院はその後、政府職員の職務を分類整理する職階制、成績主義を原則とする任用制度、職階制に基く給与制度、職員の能率増進計画、職員の処遇の公正を期するための公平制度、公務上の傷病、災害に対する補償制度、永年忠実に勤務する職員を保護するための恩給制度、国民全体の奉仕者たるの実を挙げさせるための職員の服務基準など、その整備に鋭意努力をいたし、争議権及び団体協約締結権を持たない国家公務員の立場を保護することに努め来たつたのであります。政府説明するところによれば、この改正法律案は行政機構改革の一環として、現在の人事院を国家人事委員会に改組し、中央人事機関として我が国行政機構の実情に調和した組織と権限とを持たしめることを目的とし、併せて行政事務簡素化の線に沿つた改正を行わんとするものであるとして従前内閣の所轄に属しておりました人事院を改組して総理府の外局として国家人事委員会をおくことにいたしたと申しておるのであります。  我々は国民の輿論に応えて、我が国の国力、特に財政力に応じて、民主的にして簡素、そして能率的な行政機構の改革を断行し、自立経済自衛基盤を確立し、国民負担の軽減を図り、占領行政を是正し、民生の安定に努むることが最も緊要なることと信ずるものであります。  そこで、先ず政府にお尋ねいたしたいことは、今回の改組については、政府国家公務員法第一条に定められている目的、即ち公務の民主的能率的運営を確保するという目的を促進すための改正と考えて提案されたものと思われますが、この際、改正を必要とする理由について、更に明確にして頂きたいと存じます。第二に、戦後各種の統制法令を初め、国民を拘束する法律等が占領軍の要請又は指導の下に制定せられて、これが国民に大きな事務負担を課し、或いは行政機構を複雑にしたものも少くないのでありますが、現在の人事院制度につきましても、従来の占領行政の行き過ぎであり、又アメリカの行政委員会制度の直輸入であると批判する向きもあり、その弊も見られたとも称せられておりますが、この点について政府見解如何でありましようか。又第三点といたしましては、内閣の行政権と行政委員会の独立性の問題についてでありますが、憲法の条章によれば、国会が唯一の立法機関であり、又司法権はすべて裁判所に属すると定めてあるのに対し、行政権については内閣に属するとあるのみであつて、これに関連して内閣責任制の問題と人事院の独立的権限についても、学界にも種々の議論があつたのであります。即ち人事院が行なつておるように、元来内閣の権限に属すべき事項についてまで、内閣から独立の機関を設けて、これに分掌せしめることは、議院内閣制に基く内閣責任制の原則を乱すものであるとの説もあります。行政権は内閣に属するという憲法の基本原理に基いた内閣責任制の明確化という大前提は当然でありますが、これと行政委員会の独立性との関係をめぐり、種々の疑念が持たれ、或いは今回の改正は人事院の権限を不当に縮小するものではないかとの疑念を持ち、そのような主張をする向きもあるのでありますが、政府はこの際、十分に学界の諸説を再検討されて明確にされ、その調和を図られたことと思いますが、この点について、どのような措置がとられたのかお伺いいたしたいと存じます。第四に、給与の勧告権或いは公務員の不利益処分に対する審査請求権について、改組後の国家人事委員会においても、実質的にはなお従来通りの権限を確保されることになつておるものと解釈できるかどうか。国家公務員にとりましては、極めて重大な問題でありますので、この点を明らかにして頂きたいと存じます。第五に、従来の人事院が行なつて来た職階制に基く任用制度、給与準則等については、政府はその一切を否定して、新たなる別の制度を考えておるか、或いは又その長をとり短を捨てて、公務員制度の確立を図る考えであるか。この点についてもお伺いをいたします。最後に、人事院改組に伴い直ちに公務員の団体交渉権等の復活を伝うる説もあるのでありますが、私は国家公務員法の諸条章の制定の精神に鑑み、国家公務員諸君は、全体の奉仕者として、祖国再建のため国民に範を垂れんことを希望し、同時に政府も又公務員の福祉を守り、その利益を擁護すべき義務の遂行に遺憾なきことを期し、十分その目的を達するよう努力されることを要望するものでありますが、これに対する政府の抱負をお伺いいたしたいと思います。以上を以て私の質問を終りたいと思います。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  63. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。今回の改正は、主として人事院を中央人事行政機関としてふさわしいような地位と権限を有し、而もできるだけ簡素合理的な機構のものに改組し、その他若干手続の簡素化を図つたものであります。勿論国家公務員法第一條の目的を損なうような点はないつもりであります。  次に、今回の人事院の制度は、アメリカの占領行政下にあつてアメリカの制度の直輸入であつたと言われておつたが、どうであるか。お尋ねのような傾向もあつたので、今回人事院を出央人事行政機関として我が国の実情にふさわしい地位と権限を有し、而もできるだけ簡素合理的なものに改組いたしたつもりであります。次に、行政委員会と憲法との関係でありまするが、行政委員会は内閣から完全に独立しているものではなく、人事、予算等の点におきまして内閣の権限下にありまする以上、憲法に違反するものとは考えられません。  次に、給与の勧告権、不利益処分の審査請求権の問題でありまするが、今回の改正により国家人事委員会は内閣に対し勧告を行い、内閣はこの勧告を受取つてから五日以内に、これを国会に報告しなければならないことになつており、又不利益処分の審査請求につきましても、職員は処分を受けた後三十日以内に審査請求ができることにたつております。  職階制、任用制等についての御質疑もありましたが、昨年人事院から給与準則の勧告がありましたが、これは職階制、任用制度等にも関連し、公務員制度の根本に触れる問題でありますので、政府といたしましては、近く発足る公務員制度調査会においてこれら上総合的に検討する所存でございます。  人事院改組に伴つて団体交渉権の復活云々という御質疑で、ございましたが、公務員は、国民全体に対する奉仕者でありますから、民間産業の労働出と異なり、争議権その他団体行動権に制約を受けるのは当然であると考えております。併し政府が公務員の福祉と利益を保護するため万全の措置を講ずることもこれ又当然であります。その点については今回の人事院の改組に止つても十分意を用いておるところで上り、又今後とも最善の努力をいたす弁えであります。(拍手)    〔政府委員浅井清君登壇拍手
  64. 浅井清

    政府委員(浅井清君) 今回の改正中について私はお尋ねがございましたが、今回の改正は人事院から意図し、積極的に希望したものではございません。この点は最初に申上げておきたいと存じます。  私からお答えし得ることは二点でございますが、第一に御懸念になりました不利益処分の請求に関しましては、何ら変るところはないと思つております。この点に関する限り職員の利益は損なわれるということはないと考えております。次に給与の勧告権に関しましては、国会に対する勧告がなくなつておるのでありまして、この点はいろいろと御論議もあろうかと思いますが、これは国会の御判断に一任いたしたいと考えます。     —————————————
  65. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 岡三郎君。    〔岡三郎君登壇拍手
  66. 岡三郎

    ○岡三郎君 これから只今議題となりました国家公務員法の一部を改正する法律案に対して所見を述べると共に、政府質疑を行うわけでありまするが、その前に提案者の加藤国務相にお伺いしたいことがあるわけであります。  それは、加藤国務大臣が先般の参議院人事委員会に御出席の折、私は給与のみを担当する国務大臣であるということを言われたのであります。而もそのときに、「そのほか、身分その他の問題は」という質疑に対して、それは又別の所管があるのでありますというお答えになつて、当時人事委員会においては大体塚田国務相がこの提案に当るということを言上れておつたのであります。そういうふうな観点から、今急に加藤国務相がこの提案者になるということにつきましては不可解であるばかりでなくして、当然この国家公務員法の一部を改正する法律案に対しては、吉田首相或いは代理の緒方国務相が提案をされることが私は至当ではないかと思うのであります。これは後刻加藤国務相に対する御質疑の折に併せて御所見を伺いたい。こういうふうに考えるものであります。  申上げるまでもなく、人事院制度は、憲法に保障された労働者としての国家公務員の団体交渉権と罷業権を禁止し、これを取上げた代償として、公務員の利益を、或いは生活を守るために独立の人事院を置き、その情勢適応の勧告権を規定したものであります。今この人事院を実質的に廃止するならば、当然ここに公務員に対して団体交渉権、罷業種の復活を図るべきが当然の筋途なのであります。然るに政府は、何らそれらの措置をとらんのみか、全体の奉仕者という美名に隠れて公務員の賃金ストップの措置をこの法案の裏に考えておるのだと申しても過言ではないと私は存ずるのであります。政府は、又人事院を改組して国家人事委員会にしたことを、我が国行政機構の実情に調和した組織と権限を持たしめることを主たる目的としたと称しておりまするが、このこと自体政府の非民主的態度と基本的労働権を無視する態度を露骨に示したものでありまして公務員を抑圧する以外の何ものでもないと断ぜざるを得ないのであります一政府はこの改正を占領政策の是正策と言つているのでありますが、警察法の改悪、教育破壊法と称すべき二法案と共に日本の民主化を否定し、アメリカの隷属のための再軍備に要する費用を捻出するため、公務員を更に痩せしめる悪法であります。更に国民の官吏である公務員諸君を、人事権掌握によつて政党の手先の官吏たらしめる危険性を内包しているのでありまして独裁的権力確立への意図、更にはこの改悪を前提として公労法改悪への踏台としようとし、全労働者賃金ストップの前提とする意図を内包していると私は思うのであります。而も本案を通覧すると、改正後の国家公務員法の各規定は支離滅裂、矛盾撞着甚だしいものがあるのであります。本改正案は何でもよいから国会と国家の人事機関との関係を断ち切つて、人事院を政府の権力部門に没入し、行政府の従属物としてしまう意図としか考えられないのであります。以下吉田首相ほか関係大臣に順次御質疑を申上げたいと思うものであります。  質問の第一点は、占領政策是正の美名の下に、警察法改正、教職員弾圧法を先に提出し、今回又本法案を提案して人事院を改組せんとしておるのでありまするが、吉田内閣は日本の民主化にいて如何に考えておるのか、首相の所見を問うものであります。第二に、従来政府は人事院が独立しておつてさえその親告を無視して来たので、この改組によつて政府は公務員の給与を如何に改善せんとするのか。首相の所見を問うものであります。第三点、この法案に対し、公務員諸君は給与勧告はどうなるのか、身分保障はどうなるのか、非常に心配をしておるのであります。この法案が実質的に賃金ストップとなるならば、公務員の業務能率はどうなるのでしようか。昭和二十六、二十七年の決算報告によりますれば、二十六年の不当並びに是正事項は一千百九十八件を数えるのであります。これが昭和二十七年度になりまするというと、千八百十三件と漸増ではなくして急増しておるのであります。汚職内閣の下では如何ともし難いと見逃すわけには絶対に参らないのであります。首相はこれらの不当並びに是正事項の急増は一体如何なる理由、原因に基くものか、それについてのお考えを明確に伺いたいのであります。  次に、新たに設置される国家人事委員会は、行政部門の人事行政統轄の中心的執行官庁なのか、単なる諮問機関又は研究機関なのか、伺いたいのであります。ここでちよつと言葉を差し挾みますが、先ほど右派社会党の山下さんの登壇した話の中に、答弁が抜けておるということになつておりまするが、この議題も急速にここに提案されておりまするので、昨日政府の役人の方が私に質問要項を取りにおいでになた。従いまして質問要項の中に載つてないのもここに質問をいたしまするので、緒方国務相並びにその他の関係大臣はよく注意して、どの点が抜けておるかを一つ検討せられて、(拍手)ぬかりなくお答えを一つお願いしたいと思うのです。誠に失礼でございまするが、これだけをお願い申上げまして質疑を続けます。  質問の第四点は、政府国家人事委員会の制度を長く存続させるつもりなりや、はた又一時的の措置ではないかという質問であります。これは急にこの国家人事委員会の制度を考えたのではないことは、我々もよく熟知しているのでありますが、たまたま政府は現在公務員制度調査会なるものを設置しつつあるのであります。このことについては、加藤国務相はその委員の選任をすでに終りかかつていると、だからこの公務員制度調査会の発足真近いと我々は判断してよろしいかと思うのであります。公務員制度の調査をこれから始めるというときに、一方的にこのような国家人事委員会の制度を作るということになりまするならば、又この調査会の結論によつては、これがどうなるのかわからんということになると常識的に考えるのであります。その結果として私は一時的の便法措置ではないのかと考えたのでありまするが、これに対して明快なる首相のお答えを願いたいと思うのであります。  次に第五点として、何故に別に公務員の給与に関する担当大臣、加藤国務相を担当大臣に置いたのか。機構の簡素化にこれではならないのではないかと私は思うのであります。なぜかというと、この国家人事委員会が外局として明確に国家の執行機関としてあるならば、事務簡素化の内閣であるならば、これは内閣総理大臣直属であつて私は然るべきだと思う。そうでなしに、今度できる国家人事委員、これは浅井さんがなるかどうか知りませんけれども、三人の人事委員は、一体加藤国務相の尻つぺたについて仕事をするのか。こういうことになるのであります。このような無駄を温存して、機構の整備縮小ということは何としても受取れないのでありまして、このような際においてなぜこのような担当大臣を置いたのか、その真意を伺いたいのであります。  次に第六点として、国家人事委員会には全然政府に対する独立地位を認めていないのでありまするが、これで国家公務員の地位の保護、特に公務員の経済上の要求の解決が公正にできるかという点であります。御存じのように、公務員法第二十八条、ここには情勢適応の原則があるのであります。つまり五%の増減があつた場合には、人事委員会は国会と政府に勧告をするならわしであつたのを、今回の改訂によつて国家人事委員会が俸給表を改訂する必要が生じたと認めるときは、」と直しているのであります。ということになると、どういう場合に国家人事委員会は勧告するのか。この点を明確に伺いたいのであります。「国家人事委員会が俸給表を改訂する必要が生じたと認めるとき。」これは誠に主観的でありまして、客観的な何ものもないのであります。客観的な基準が何もないときに、現在の吉田内閣が公正なる給与を公務員に与えるということは絶対に考えられないと私は断言してもこれは過言ではないと思うのであります。従いましてこのような条章の改訂によつて、公務員の経済上の要求の解決が公正にどうしてできるのか。先ほど緒方国務相は、公務員に対する明快な答弁の下に、保護をすると言つておりまするが、もう少し具体的にお答えを願いたいのであります。併せてこの点は塚田長官に同様にお願いしたいのであります。と同時に、浅井総裁にもこの点はしつかりとお伺いしたいのであります。  次に第七点として、国家人事委員会が全然政府に従属する結果、往年の政党人事の弊を再現する虞れがあると思うのであります。即ち人事院があつても過去において飯山水産庁長官が自由党から一方的に首を切られて人事院に提訴したことがございます。このときに人事院の公平委員会でこれを審理いたしまして、政府の敗訴、つまり飯山元水産庁長官の勝訴にしたのに、政府はいささかも善処してないのであります。人事院のこの公平審理を無視して来たのであります。而もこのような政府が、国家人事委員会を従属機関として政府の人事を公平審理という裁判の形式を以て裁くこと、これは誠に滑稽と思うのでありますが、この点について浅井総裁は公平に公務員の身分を保護することができるのかどうか。この点を明確にお答え願いたいと思うのであります。  次に第八点といたしまして、これは塚田長官に御回答願いたいのでありますが、国家公務員の給与、勤務条件に関する事項を、情勢に適応するように変更することは国会の任務であります。その任務を達成するために、現在では人事院が材料を調査し、勧告を行なつて国会の活動の下準備をする規定になつておるのであります。それを本条ではすべて国家人事委員会と国会との直接関係を断つておりまするが、これは国会の機能を縮小し、人事委員会をただ政府の用のみに用いんとするものであります。何故に国会の活動を妨害なされるのか。この点明確にお答えを願いたいのであります。次に、行政機再改革の一環として本案を提出したとおつしやつておりまするが、現在恩給については恩給局と人事院の両方で権限のせり合いをしておるのであります。これを解決せずして何の機構改革でありましようか。恩給に関する事務り担当官庁は如何にする考えか、この点について加藤国務大臣にお答えを願いたいのであります、と同時に、人事院か先に勧告いしました給与準則、退職年金法の取扱、並びに近い将来に勧告される地域給についての取扱について、加藤国務大臣所見を伺つておきたいと思います。次に、若し行政部門の人事関係事項を純然たる政府の従属機関に担当せしむるとするならば、なぜ総理府の内局を以てこれに当てないのか。そうして総理大臣みずからその責に任ずるの遂に出ないのか。この質問であります。これは総理大臣の人事行政に関する責任を却つてこの本案においては分散さしておるのでありまして、総理府の内局を以てこれに当てることこそが総理大臣の責に任ずる途であると思うのでありますが、従属機関に担当せしむるということになるならば、それらの観点についての御所見を開陳願いたいと、こう思うのであります。  次に、大蔵大臣に御質問申上げまするが、物価を五分程度下げると言つております政府のこの政策が具現するならば、当然人事院は、五%下げるならば、給与の引下げの勧告をするということになるわけであります。それならば政府が意図するように、給与表の勧告を実施することは今年度はしなくもいいことになるわけであります。ということになるならば、先ほど申上げましたように、公務員の制度調査会というものが近々発足するのでありますから、十分この公務員制度調査会によつて研究された結果を次期国会なり、明年の国会において提案しても十分間に合うのでありまして、これらの点について大蔵大臣に質問いたしまするが、果して物価は五%下がるのかどうか。これらの一部改正の提案をみるたびに、大蔵省の自信はないのではないかというように私は考えるのであります。もう一つは、従来もこの勧告に干渉して来た大蔵省が、このような国家人事委員会の勧告を果して尊重するのかどうか。財政の美名に隠れて無視するのではないかと思うのでありますが、大蔵大臣の今後における勧告に対する所見を伺いたいのであります。  次に法律の下の規定は、すべて国家人事委員会規則一本に統一するのか、又は政令と規則と両方を用いるのか、これを明確にお答え願いたいのであります。これは塚田長官にお願いいたします。私の所見としては、規則を認める上は、規則一本にすべきものと考えるのであります。  次に、このような政府の改悪意図に対し、従来においてさえも人事院はその勧告を軽視され、責任を問われて来たのでありますが、このような制度の下に公務員の人事、生活の保障の任に耐え得るか、若し耐え得ないとすれば、人事院改組と共に職を去る意思がありや。その決意を浅井総裁に伺いたいのであります。  次に、私から申上げるならば、未だ出すべき地域給の勧告も出し得ない無気力な人事院は、すでに盲腸的な存存になつておるようであります。従つて政府がいさぎよく切り取つて、団体交渉権なり、罷業権を出すとするならば、我々も人事院の廃止に賛成するにやぶさかでないのでありますが、反動的吉田内閣は、いささかもそのようなことを考えておらない。従つて現在の公務員の利益を守る制度を我々は守らざるを得ないのでありますが、民主的日本総理として吉田さんは、公務員の労働基本権についてどう考えておるのか。全体の奉仕者ということでなくして、この公務員の労働基本権に対する推移を考えた上においてお答えを願いたいのであります。次に、同じく最終的に総理にお願いしたいのでありますが、先に給与三本建によつて義務教育に携わる教職員を冷遇しました。更に教育二法案によりまして、義務制教職員に不当な圧迫を加えておるのであります。今ここに人事院を改組して、一般公務員と共に教職員の生活に不安を投げかけているのでありまするが、国の基盤を培う義務教育学校教職員に対して、このような不当な圧迫ではなくて、如何なる待遇向上の途を考えているのか。その所見を伺いたいのであります。これは口先だけのものであつては私はならないと思うのでありますると共に、義務制教職員に対して、しつかりした政府の所信を出してもらいたい。これは単に日本教職員組合を弾圧するということとは別なんであります。政府と日教組との闘いは正々堂々とやればよろしい。民間の権威を認めないような非民主的な吉田内閣は論外でありまするけれども、併しそれも堂々と闘う場所を求めて、政府、自由党、日教組が闘えばよろしいが、義務制教職員は日教組という範疇ではないのでありまして、国民の負託に応えて、青少年の負託に応えて、日夜精励しているのであります。それを混同して、日教組を圧迫するの余り、義務制教職員を圧迫しているこの自由党のていたらくに対しては、十分反省を私はしてもらわなければならんと思うのであります。(拍手)従いまして、これは緑風会、自由党並びに改進党の皆様に申上げますが、日教組を弾圧する余りに、義務制教職員を弾圧して、国が興るのか、栄えるのかということであります。だから日教組を弾圧したあげくに、徐ろに義務制の先生方を優遇するのだという答えになるかも知れないけれども、それとこれとは別なのでありまして、政府は速かに義務制教職員に対して如何なる措置をするのか。イギリスのバーナム委員会のように、教職員に対しての特別の委員会を構成して、適正、公正なる而も優遇する給与案をお作りになる意思がおありになるのかどうか。こういう点について首相の明確なるお答えを願いたいのであります。  最後に、人事院が従来の独立地位を全然失つて行政部即ち国の執行機関の中に没入してしまうことに伴いまして、地方制度においても、これと同様の方向に持つて行かれる私は心配があると思うのであります。以上について次の二、三点について、地方の人事委員会の関係をお尋ねいたします。  地方人事委員会又は職員に関する条例を制定、改廃するに当つて地方議会は地方人事委員会の意見を聞くべき旨の規定がありまするが、これはどうなるのか。塚田長官の御意見を聞きたいと思うのであります。それから人事委員会が、職員の給料表を地方議会に提出すべき旨の規定は、存続させるのかさせないのか。これは関連であります。  人事委員会が毎年少くとも一回給料表の適不適を議会と公共団体の長とに報告し、併せて適当な勧告をもなし得る権限の規定がありまするが、これはどうなるか。もう一遍申上げますと、人事委員会が、毎年少くとも一回給料表の適不適を、議会と公共団体の長とに報告し、併せて適当な勧告をもなし得る権限があるのでありまするが、これが一体どうなるのか。  それから最後に、先ほど御答弁があつたのでありまするが、不利益処分に対する審査を請求する期間について、説明書交付の後三十日以内に請求すべき規定となつておりまするが、国家公務員法の改正に伴い、請求期間を短縮して、処分を受けた時以後というふうに変改し、地方公務員の保護を薄くするにあらざるかどうか。この点については、前には三十日の期間が、説明書を受けてから三十日とあつたのであります。今回のこの国家公務員法の改正によりまして、処分の日より三十日と、こうあるのであります。これは明確に公務員の不利益を規定した条章でありまして、説明書を受けてから三十日と、処分から三十日とでは、これは甚しく公務員の不利益になるのでありまして、この点について飽くまでも公務員を不利益にしたのではないというならば、それに対して明快なる私は御回答を願いたいと思うのであります。  以上質疑を行いましたが、答弁によりましては再質問を行いたいと思いす持す。以上です。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  67. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  日本の民主化というひとについてどう考ているか。今回の人事機構の改正に関連して御質問でありまするが、今回の人事院の改組は行政改革の一環として中央人事行政機構を我が国の行政組織の上から見て適切、且つ簡素なものに改める意図に出でたものであります。従いまして、政府は占領政策云云の美名の下に何か反動政策を行なつているような御所論でありましたが、決してそういう意図ではなく、従来の経験に鑑み、それが国情に適応するよう改革を行わんとするものでありまして、民主化の根本方針には何ら変りはないのであります。次に公務員の給与に関してでありますが、政府は人事院の勧告は従来とも常に尊重して参つたつもりであります。勿論今後におきましても、国家人事委員会の勧告を尊重し、公務員の給与水準の適正化、給与体系の合理化にはどこまでも努力をいたす所存であります。新たに設置される国家人事委員会は、一体執行機関であるか、諮問機関であるかという御質問でありまするが、国家人事委員会は総理府の外局でありまして一般職の公務員全般に対する人事行政の実施機関でありまして、従つて単なる諮問機関でもなく、研究機関でもないのであります。  更に今回の人事委員会は、一時的の措置であるのかどうかという御質問であります。今回の改正は、人事院を我が国の行政組織上適切な機構組織に改めんとするものでありまして、行政機構合理化の見地から、速かにこれを行う必要を感じて決行いたした次第であります。公務員給与に関する担当大臣を別に置いたのはどういう意味かと、これは国家公務員等の給与につきまして、内閣側の取扱いの万全を期するために、今回特に公務員給与に関する担当大臣を置くことにいたしたのであります。  公務員の団体交渉権についての御質疑がありましたが、公務員は国家全体に対する奉仕者でありまするから、民間産業の労働者とは違つて、争議権、その他団体交渉権に制約を受けるのは当然であると考えております。併し勿論政府は、公務員の福祉と利益を保護するため万全の措置を講ずべきことは当然でありまするので、この点今回の人事院の改組に当りましても十分意を用いているつもりであります。  なお義務制教職員の待遇につきましては、政府としても、勿論日教組とは区別して考えているのでありまして、できるだけの優遇を講じて参りたい所存であります。   以上お答えいたします。    〔政府委員浅井清君登壇拍手
  68. 浅井清

    政府委員(浅井清君) 今回の改正によつて人事院が国家人事委員会として、単なる諮問機関、従属機関になつたのではないかというお尋ねでございますが、私どもとしてはさように考えていないのでございます。(「本当か」と呼ぶ者あり)もとより独立性において、程度の差はございますけれども、決してこれは諮問機関ではない。外局ではございましようけれども、それは形の上で申したのでありまして、国家公務員法の個々の規定から築き上げられておりまする国家人事委員会の独立性というものは私は保たれていると考えているのでございます。勿論これは国会の御判断に待つほかはないことでございまするが、私どもとしてはそういうふうに考えているのでございます。  そこで最前岡さんから御指摘になりました、内閣の更迭によつて非常に一般職の職員の身分に影響がある。いわゆるスポイル・システムが入つて来る余地等があるのじやないかという御疑念がございましたが、私どもはさように考えておりませんので、私どもといたしましては、最初に行革本部で立案いたしておりました人事院の二分案、即ち内閣に人事局を設ける案に対して強硬に反対して参つたのもその趣旨でございます。  次に公務員法の二十八条、即ち勧告についての御質疑がございましたが、私はこの百分の五云々の規定を取つて、規定を抽象化したことによつて、今後勧告が行われなくなるというような見通しは持つておりません。この点について私どもは前途においても決して悲観はいたしていないのでございます。ただ国会に対する勧告がなくなりましたことにつきましては相当大きな変化だと思いますが、その点は最前お答えを申上げた通りでございます。なお、私どもの進退について御発言がございましたが、我々は我々の良心の命ずるところに従つて進退いたしたいと存じます。    〔国務大臣塚田十一郎君登壇拍手
  69. 塚田十一郎

    国務大臣(塚田十一郎君) お答え申上げます。  十分注意しておつたつもりでありますが、若しもお尋ねの点で答弁が漏れましたら改めて御注意を頂きたいと存じます。  先ず第一点、この国家公務員法第二十八条に規定をいたしておりますこの五%という制限を除いたのはどういうわけか。五%という標準を除いたのはどういうわけかということでありますが、御承知のように現在の法律の上にある五%も、この五%というところを境にして、やはり人事院が必要が生じたと認められるかどうかということを判断をいたしておるわけであります。やはり現在の法律でも重点を人事院の判断というところに置いてあると思うのであります。やはり人事院の判断に主を置くという関係からいたしますならば、五%というような制限を置かずに、むしろ或いは五%以下であつても以上であつても、どうしてもこれ以上は放つて置けないという認識に到達したときに、これは人事院が勧告をされるほうが適当じやないか。こういう考え方で直したわけであります。  第二に、勧告を国会にするということを切りましたのは、これは今度のこの人事院を人事委員会に改組いたしましたと同じ考え方でありまして、政府一つの機関ということになりましたので、政府が国会に対する場合には、いつも内閣から一本に繋がつて行く、政府部内の一機関が、直接この国会に繋がるという考え方は、行政組織法上適当じやないのじやないかという考え方でありまして、併しそのために国会がお持ちになつておるこの公務員の給与に対する重要な判断の機能を失うということは適当でありませんので、内閣が勧告を受けた場合には直もに五日以内に国会に御報告を申上げるということによつて、国会がその機会に御活動願えるようにいたしておるわけであります。  それからなぜ内局にしなかつたかということでありますが、やはり今度の改組によりましても、若干この準司法的な仕事をする部面が残つておるわけでありまして、やはり内局であるよりは外局であるほうが機構の形として適当ではないかと、こういう考え方に基いているわけであります。それから国家公務員法を施行する場合の施行令は、政令によるか、それとも人事院規則によるかというお尋ねでありますが、これは人事院規則によつてつて行くつもりであります。  それから次に地方の人事制度に関連をいたして、地方議会の地方人事委員から意見を聞くということをどうするか。これは従来のまま存続いたすつもりであります。又地方人事委員会が地方議会に報告勧告をする権限も従来のまま存続をいたすつもりであります。それからして不利益処分のこの処分をなし得る期間でありますが、これは今度の国家公務員法の改正におきましては、今御指摘のように処分を受けた日からということになつている。それは国家公務員法の改正と同じ考え方で、なお延いては団体が非常に小さいからして、そんなに長い期間は要らないのじやないかという考え方から、十五日以内ということにいたしたいと考えておるわけであります。この点若干御指摘のような、却つて不利益処分に対する保護が薄くなつたのではないかという御意見もあるかと思いますが、運用の面で、そういう懸念の起きないように十分注意をして参りたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣加藤鐐五郎君登壇拍手
  70. 加藤鐐五郎

    国務大臣(加藤鐐五郎君) 只今岡君よりいたしまして、参議院の委員会において私が給与に関する担当大臣であると申したことは仰せの通りでございます。国家公務員法の改正は、もとより行政機構改革の一環でありますが故に、他に法案の説明者があるのが適当でないかという御意見のように承わりましたのですが、その今回の国家公務員法改正の大部分を占めておるものは給与に関するものでありますから、私から御説明申した次第でございます。又私は一面国務大臣として説明をいたしたのでございまして、何ら差支えないことであると信じておるのでございます。次に公務員制度調査会のことにつきまして御質問があつたようでありまするが、これは急いで人選をいたしまして朝野の相当の人々を集めまして調査を至急進めるつもりでおるのでございます。それから次に担当大臣を新たに置いたということは却つて事務を複雑にするのではないかというような御質問がございましたが、申すまでもなく人事院の仕事の大部分というものは給与が占めておりますにかかわらず、従来におきましては総理府の官房のほか、これを処理する特別の機構がなかつたのでございます。然るに只今は給与準則、退職年金等重要な問題が山積しておるのでございまするが故に、責任の行く分掌を明確にし、これを実際化するためには私が担当になることはあえて屋上屋を置くというようなことにはならないと信じておるのでございます。  次に恩給局と人事局との権限が重複競合しているのではないかというような御質問がございましたが、現在恩給法に基く事務は、総理府恩給局が担当しておりますことは御承知の通りでございます。国家公務員法の百八条におきましては、「恩給制度は、健全な保険数理を基礎として計画され、人事院によつて運用されるものでなければならない。」と規定されておりますが、現在のところでは相互に権限が競合、複雑してはおりません。それから次に年金と地域給の問題はどうなつているかという御質問のように存じましたが、昨年十一月人事院より国家公務員法の規定に基きまして、恩給制度に関する研究成果の提出及び意見の申出がありましたが、その内容は極めて重要な事項に属しておりますので、給与準則に関する勧告と共に、政府といたしましては近く発足いたしまする公務員制度調査会において慎重検討いたしまして、その結果を得たいと存ずる次第でございます。  それから次に地域給につきましては、政府は先に勤務地手当制度合理化の一環といたしまして、従来の五段級にあるのを四段級に整理実施いたしたことは御承知の通りでございまするが、今後とも勤務地手当制度の合理化について人事委員会の勧告を待つて検討いたしたいと存ずる次第でございます。  右、御答弁申上げます。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  71. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 物価は果して下るかというお尋ねでございましたが、これは財政の緊縮を第一着手といたしまして、金融引締めの強化とか、貿易為替政策、その他企業の近代化、合理化、或いは税制の特別措置等各般の施策をやりますので、昭和二十七年度の物価に、即ち今から見まして五分乃至一割の物価引下げは、必ずできると固く信じておる次第でございます。  それから人事院の勧告を尊重するか。これは仰せになるまでもなく、十分尊重するのでありますが、同時に財政事情を無視するわけにも参らないということを御了承願つておきます。(拍手)    〔岡三郎君発言の許可を求む〕
  72. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 岡君。    〔岡三郎君登壇拍手
  73. 岡三郎

    ○岡三郎君 三分間ありまするので答弁漏れについて……。  先に質問をいたしたいと思います。緒方副総理に。昭和二十六、七年の決算報告によると、不当並びに是正事項が二十六年度においては千百九十八件、二十七年度において千八百十三件と急増しているのでありまするが、国民の血税をこのように累増する事件で無駄に使つておるのであります。副総理はこれらの不当並びに是正事項の急増は一体如何なる理由原因に基くのか。これに対する政府の決意をお伺いしたいのであります。  それから浅井総裁にお尋ねいたしまするが、五%のこの数字、つまり物差がなくなつた場合において、どういう場合に勧告するのか。「改訂する必要が生じたとき」、これはどういうときのことを言うのか。これを明確にお答え願いたいと思います。それから同じく総裁に、政府の従属機関ではない。どこを指して今回の国家人事委員会は独立しているのか。ここを明確にお答え願いたい。独立なものか。観念的に独立しているように言つておりますが、我々が見たところは肝腎、要めなところは、皆従属しております。従つて政府の従属機関が政府の人事を公平審理するという裁判の形式、これで公務員の保護ができるかどうか。よろしいですか。飯山水産庁長官なり矢追博士の例をとつて私は言つたのですが、従来公平審理で勝訴になつた人も復活させておかないで、こういう形態でどれだけ公務員の身分を保障できるかどうか。その確信をお伺いしたいのです。できなければできないといつてもらいたいのであります。  それから緒方副総理義務制教職員と日教組とを区別しておる。こう言つておりますが、具体的にやつていることは区別しておらないのであります。三本建給与によつて義務制教員を冷遇しております。今回の法案は義務制教職員に対する不当な圧迫であります。又、人事院の改組によつて生活の不安を招来する心配があるのであります。従いまして、義務制教職員に対してこうするという所見や抱負が、一国の副総理ならばおありと思うのであります。一つ明確にお答え願いたいと思います。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  74. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 昭和二十六年、二十七年の不当支出が三千件になんなんとしておりまするのは、これは政府としても誠に遺憾に存じております。これに対しては適宜の措置をしておると思いまするが、今後予算の施行につきましては十分注意をいたしまして、こういう不当支出のないように努力いたしたいと考えております。(「原因を聞いているのだ、どうしてそういうことになつたのか」と呼ぶ者あり)今ここに私は承知しておりません。  それから義務制教職員の優遇の問題につきましては、文部省を督励いたしまして、十分実績を挙げたいと考えております。    〔政府委員浅井清君登壇
  75. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お答えを申上げます。  百分の五ということを削りますならば、結局、給与を決定する諸条件変化によつて人事院が適当と認めたるときは、いつでも勧告できる。かように相成りますので、将来の人事委員会といたしましては非常にゆとりのある規定を得たことになるのであります。(「甘い甘い」「何を言つてつているのだ」と呼ぶ者あり)これは決して私どもは非常に勧告権を狭められたとは考えていないのでございます。なお不利益処分の判定につきましては、従来から何ら干渉を受けていないと共に、将来において内閣がこれに干渉すべき何らの基礎国家公務員にはございません。例をお挙げになりました個人のことにつきましては、この席上で申上げたくないのでありまするが、これは、その人が復活できなかつたのは、判定処分を内閣が無視したのではなくて、そのかたが、あの当時行われました高級官吏の試験に落第をされたから復活することができなかつたのでございます。     —————————————
  76. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 松澤兼人君。    〔松澤兼人君登壇拍手
  77. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は日本社会党を代表いたしまして、只今議題となりました国家公務員法の一部を改正する法律案につき、若干質問をいたしたいと存じます。  先ず第一に伺いたいことは、政府の公務員制度に対する基本的な考え方についてであります。  このたびの国家公務員法の一部を改正する法律案は、その内容が極めて非民主的な官僚制度復活の精神で貫かれ、且つ極めてあいまいな改正を企てておるのであります。一言で言うならば、政府の公務員制度についての基本的な理念が明確でなく、その改正の真意が奈辺に存するか了解に苦しむものであります。この法律案の提案理由によりますと、このたびの改正は、行政機構改革の一環としてこれを行い、併せて行政事務の簡素化即ち人事院の人員整理を行うことを語つており、看板は極めて欺瞞的なものと申さなければなりません。改正案によりますと、従来の人事院、同事務総局及び地方の事務所がそれぞれ国家人事委員会、同事務局及び地方の事務所として、同一性を持つて存続することを定め、現に在職する人事官はそのまま国家人事委員として在職し、人事院総裁は国家人事委員長に命ぜられることになるのであります。従つて、改正の理由で言います行政機構の改革とは、実はこれから質問しようと考えております人事院独立の権限を削除するという点を除けば、全く有名無実なものであり、又、定員法の適用による人員整理もわずか八十八人という数字であつて、実質的な意味は存在しないのであります。このような形式的な結果しか実現できないのに、全面的に国家公務員法の改正をあえて企てる政府の真意は、国家公務員法我が国情に適合したものに改めるという名目の下に、人事院独立の権限を削除することであると考えざるを得ないのであります。  改正法によりますと、従来内閣の所轄の下にあつた人事院が、総理府の外局として内閣総理大臣の所轄の下に置かれることになつております。これは人事院の独立性を侵して、極めて政治色の濃いものとし、再び官僚政治を復活強化することになるのであります。昭和二十三年における公務員法改正に当つて、当時、吉田内閣総理大臣は、参議院人事労働連合委員会において次のように発言しておるのであります。即ち「今回の公務員法は……人事院が政党色を帯びることのないように、又一面から申すと、官僚政治に陥つて、……民主政治の発達を妨げるというようなことがないように、人事院としては或る程度独立性を保つて、……一々政府の指揮監督を受けるのではなくて、独立地位を持つようにさせることによつて官僚政治の弊を救う。よつて以て民主政治の確立を図るという点に重きを置いておると考え」云々、このように吉田総理も明確に人事院の性格を述べておるのであります。又、浅井人事委員長も、二十三年十一月十日の法案の内容説明で「能う限りの独立性が確保せられることを必要欠くべからざる要件といたしまするので」云々と申しておるのであります。なお浅井総裁の書かれた国家公務員法精義には、「政党の猟官制度によつてよい意味のビューロクラシーが破壊される虞れのある時期がまだ将来に残されておるならば、人事行政の専掌機関の独立性が必要とされるし、又現実の政治情勢政府職員の団体行動権を強く制限しなければならないとしたならば、その代りに、この専掌機関の独立性によつて政府職員の利益を保護することも必要となる」と、人事行政の公正を保つための人事院の独立性を強調されております。我が国において著しい行政、人事のすべてに亘る官僚勢力の横暴を是正する役割は、人事院が独立機構でなければ完全には果せないことは明らかであります。  そこで私は緒方副総理及び人事院総裁に伺いたいのであります。この改正は、教育公務員の政治活動禁止、警察法の改正、保安庁法の改正と密接な関連のある政府の施策であつて、民主主義に逆行し、現在の国家公務員を陛下の官吏とする反動的観念の表われであると思うのでありますが、政府の所信を伺いたい。人事行政の公正を保つためには、人事院は準司法的機関としてその独立性を確保しなければならないのでありますが、政府如何なる見地からこの独立性を不要とし、二重予算制度を廃止し、内閣に従属する改正をあえてしたのであるか伺いたい。国家公務員法は、その給与を大蔵官僚に依存することから解放し、民主化を目途として作られたものであるが、現在の段階において、これ以上の民主化は必要ないと考えられるのであるかどうか。我々は従来の人事院の運営や、人事官の態度が、必ずしも万全であつたとは思わないのであります。人事院が時に吉田政府に対し独立性をあいまいにし、勧告の時期を政治的に考慮して、公務員の憤激をかつた事実を想起するのであります。併しそれでも公務員にとつては、人事院はこれまで或る意味において頼りとなつて来たのであります。この程度の人事院でも、時に政府はこれを厄介視し、迷惑視して来たのでありますが、今回の改正は、かかる政府の一方的な利己主義的な考え方から出たものでないかを疑わせるのでありますが、明確なる答弁をお願いしたいのであります。  次に、人事院の勧告権についてであります。従来人事院は給与の報告、勧告その他人事行政に関する意見の申出等は、国会及び内閣に同時に行うことになつておりましたが、改正案によりますと、国家人事委員会は内閣に対してこれを行い、内閣はこれを国会に報告しなければならんということになるのであります。これは重大な改正でありまして、実は今度の改正の焦点をなすべきものかと考えられます。総理府の外局として、総理大臣の所轄の下に置かれた、いわば従属機関である国家人事委員会が、真に公正にして科学的、且つ客観的な勧告をなし得るか否かは、おのずから明らかであります。人事院が独立性を保つことは、まさしく新憲法に内在する原理から出たものであつて、これこそが絶対主義的、官僚的、中央集権制を解体し得る保障であつたのであります。他方この制度は、公務員の労働運動の制限という、憲法で規定された団体交渉権、争議権の制限及び禁止の代価として、公務員の身分保障、労働条件維持、保護の役割を人事院が負うことになつたのであります。而してこの場合、戦前の身分的、封建的人事行政に対して、民主的、能率的人事行政を行うことが標傍されたわけであります。然るに政府が今回の改正で意図している国会に対する勧告権の廃止、独立性の喪失は、人事院設置の意義を無視したものであり、憲法に保障された労働者の権利を蹂躙する措置と言わなければならないのであります。結局において人事院の廃止の真意は、人事院が公務員の保護機関である限り、政府と併立し、人事行政の民主化を標擁する限り、反動的な官僚勢力と対立することを目の敵にしたからにほかならないのであります。  ここで副総理にお伺いいたしたいことは、国会に対する勧告権を削除し、内閣のみにこれをなすことにした真の理由はどこにあるのでありますか。国会と内閣に同時に勧告をなし得る現行法の精神は、前述の通り労働基本権の制限及び禁止という国家公務員法の規定による一つの救済手段であり、公務員の福祉と利益に対する保障であつたのでありますが、人事院の性格を変改し、その権限を縮小する以上、公務員の基本的労働権を復活すべきであると考えるのでありますが、如何でありましようか。今後、官公庁の公務員は人事院の保障という砦を失い、直接政府に対して要求をぶつつけることになると思うのでありますが、人事院という緩衝地帯をなくしてしまつた政府は、如何にして今後公務員の要求に対処せられる所存であるか、お伺いしたい。  以上種々考え来るならば、このたびの改正は国家人事委員会という形式的な残骸のみを残して、現存する人事院の実質的な独立権は一切骨抜きになつております。かくては漸く緒につき始めた我が国官僚制受の民主的改革も一夜にして崩壊し、いまわしき思い出に満ちた中央集権的な官僚制度の復活強化となることは明らかであります。他方、公務員の利益を守るべき第三者的独立機関の廃止は、団交権と争議権の制限下にある公務員をして、不当に絶望感を与える結果ともなり、公務員の民主的且つ能率的な運営を阻害するのみでなく、絶望感はやがてその運動形態を新たな形にすることも当然予想せられなければならないのであります。人事院制度を廃止しようとしている政府は、一体、今後公務員制度に対してどういう理念を以て臨むのか。政府の方針を具体的に且つ明確に説明して頂きたい。  次に、塚田行政管理庁長官にお伺いいたします。今回の国家公務員法の改正は、いわゆる行政機構の改革という華々しき出発にかかわらず、漸く実現し得たただ一つの結論であります。泰山鳴動して漸く人事院廃止という改悪となつたのであります。この結果、今後の行政の適正なる運営が甚だしく影響を受けると思われるのでありますが、行政管理庁長官としての御意見を伺いたい。なお、最初の行政機構の改革が挫折した理由及び今後の行政改革の見通しに関する構想をも併せて伺いたい。  次に、加藤国務大臣にお伺いいたしたいのであります。この改正法案が成立いたしますと、今後は加藤国務大臣が給与大臣として、公務員の給与の問題を直接に所管せられることになるのでありますが、国家公務員の身分、給与に対して、如何なる抱負と基本的な理念を持つておられるか。給与の実情と、人事院から給与に関する勧告、特に地域給の改訂の勧告があつた場合に、如何に対処せられるものか。この際率直なる御意見を示されたい。  なお、これに関連して小笠原大蔵大臣にお尋ねいたします。若し給与改訂、地域給改訂等の勧告がなされた場合、国家財政の実情はよくわかるのでありますが、又一方には公務員の生活の立場も考えなければならないのであります。如何にこれに対して善処せられるか、お伺いいたします。  更に続いて、塚田自治庁長官にお伺いいたします。国家公務員法の改正が行われれば、地方公務員に対しても何らかの改正がなされるのではないかとも考えられますが、如何なる見解を持つておられるか。なお、地方公務員の停年制及び共済組合について何らかの措置をとられる考えがあるかどうかを伺いたいのであります。  最後に、浅井人事院総裁にお伺いいたします。先に述べたところにより、総裁は新らしい人事管理制度が設けられてから、或いは臨時人事委員長として又人事官として、人事行政に参画されて来たのでありますが、人事院の独立性に関し、今日如何なる見解を有しておられるか。今日も先ほど申しました所信をもつて、何らそこに変化がないかどうか、表明を願いたいと存じます。次に総裁は、今回の国家公務員法の改正について、内閣から如何なる意見を求められたか。或いは如何なる意見を内閣に申出たのであるか、御説明願いたい。人事院総裁及び人事官はそのまま国家人事委員長及び委員に就任することになり、身分は保障せられることになるわけでありますが、人事院廃止によつて国家公務員は唯一のよりどころを失うことになるわけであつて国家人事委員長として、改正国家公務員法の下において今後如何に公務員の利益と福祉を守らんとするお考えであるか、御意見を表明願いたい。本年一月からのベースアップは地域給の五%を本俸の中に繰入れたもので、実質的には勧告の全面的実施ではないのであります。現在の給与の実情が果して公務員の生活を保障すると考えているかどうか。公務員が要求しております一万八千八百円ベースの線に沿つて、改めて給与の改訂をする意思があるかどうか。  最後に、国会において衆参両院の人事委員会が一致して要請しております地域給改訂の勧告については、総裁は去る二月十九日「人事院は両院人事委会の強い御要望もあるので地域給の不均衡是正の措置については善処する。但し勧告の時期については諸般の情勢を掛酌して慎重に考慮する。」と言つおりますが、改訂の作業進捗状況及び改訂の時期についてお伺いいたしたいのであります。  以上を以ちまして、私の質問を終りたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  78. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  今回の人事機構の改正につきましていろいろ御意見がありましたが、今般の国家公務員法改正の趣旨は、行政改革の一環として中央人事行政機構を我が国の行政組織の上から見て、適切且つ簡素なものに改め、併せて占領下の特殊事情の下に私ども国家公務員法実施の経過に鑑み、我が国情に副わない点を改めようとする次第でありまして、反動的でも非民主的な立法でもないのであります。人事行政のうち審判裁定というような準司法的作業を公正に行うためには、お説のようにこれに当る職員の地位、身分に保障を与える必要があるのであります。今回の改正におきましても、この点については変りはないのであります。  それから政府は人事院を厄介視したのではないかということでありまするが、決してそういうことはございません。このたびの改正は行政機構の合理化の見地から、先ほど申上げましたように、占領下の特殊事情に基く行過ぎを是正し、人事行政機構の簡素合理化を図つた次第であります。  それから、国会に対する勧告権を削除し、内閣だけにした理由はどういうところにあるか。行政機関が国会に対して直接勧告権を持つことは、責任内閣制の建前から見まして不適当でありまするから、これをやめることにいたしましたが、人事委員会の勧告は重要なものと考えまするので、内閣がこれを受けたのち速かに国会に報告することにしたのでありまして、勧告を尊重する念に変りはないつもりであります。  なお、人事院の権限を縮小された以上、公務員の基本的労働権を復活すべきではないかという御趣旨の御質問がありましたが、公務員は先ほどもどなたかの御質問にお答えいたしましたように、国民全体の奉仕者でありまするから、民間産業の労働者と異なり、争議権その他の団体行動権に制約を受けるのは当然でありまするが、政府は公務員の福祉と利益を保護するために万全の措置を講ずべきことも当然であり、そういう考えからこの点につきましては、従来より最善の努力をいたしている次第でありまするが、今回の人事院の改組に当りましても、人事院に与えられていたこの種の権能は何ら取上げたわけではありません。  最後に、公務員制度に対する基本的な理念はどうかという御質問であります。憲法第十五条の定めるように、公務員は国民全体の奉仕者であり、この意味から公務員制度も国民に対して公務の民主的且つ能率的な運営を保障するものでなければならない。さように考えております。  以上お答え申上げます。(拍手)    〔国務大臣塚田十一郎君登壇拍手
  79. 塚田十一郎

    国務大臣(塚田十一郎君) お答え申上げます。  今度の人事院の改組で、人事院の持つておつた従来の機能が非常に果せなくなるのではないかという御意見であります。私どももこれを改組いたします場合には、その点に最も注意をいたしたわけであります。ただ私どもが、なぜこの人事院改組というものを考えたかと申しますと、一つは、今までの機構が、行政機関としての機構としてどうも適当でない。私どもはこの行政委員会というもの、殊に占領制度の下にできた行政委員会というものは、全体としてできるならば成るべく廃止したいという考え方を持つております。併しどうしても残さなければならないものは最小限に仕事をやらせる。そうしてそれをやつて頂くのに必要な程度独立性を持たせる。こういう考え方をしているのであります。そうでありませんと、この内閣が責任を以て行政を預かるという基本の考え方と混淆ができて来て、どうもうまく行かないのであります。そこで人事院につきましても同じような考え方で、一体人事院が人事委員会としてどの程度独立性を持ち、どの程度の仕事をやつてもらわなければならないかということを頭に置きながら今度の改革を考えたわけでありまして従つて私どもは今度の改革で機能が落ちるとは考えておりません。ただ、今までの人事院の勧告をめぐつて、御承知のように政府の総体の予算の枠との関係で非常な混乱がしばしば起きております。これは要するにこの人事院の過度の独立性というものが禍いをしておつたのではないか。そうしてその結果は、人事院が今までのようにあつても必ずしも人事院の考え方通りには給与の改訂というものができないという結果になつている。こういうような混乱が起きること自体が機構の面から来るのではないかということを考えたので、今度の考え方の一つの狙いは内閣との調和調整が十分とれて行く。どちらにいたしましても、政府は公務員の給与については責任を負わなくてはならんのであります。その点の責任が十分果せるかということを頭に置きながら私どもは考えたわけであります。  それからして行政改革が挫折をしているという御意見であります。今度実現いたしました部分は取りあえず可能なものだけを取上げたのでありまして、挫折をしているわけではないのであります。恐らくなお、できておらないという御指摘の部分は、各省の局部、そういうものの改革であると考えるわけでありますが、そういうものは先般もここで申上げましたように、取上げてみる場合に、これは全体的に総合的に問題を取上げるのでないと、なかなか一省一局というようなものを取上げたのでは理論立ても困難であり、従つて、国会の御賛成と御納得を得ることも困難であると考えますので、これはもう少し総合的に根本的に考え直して、その上で御提案を申上げたいと、こうもう考え方をいたしているわけであります。  それからして、国家公務員法の改正と今度地方においての関連でありますが、国家公務員法の改正が行われれば、地方においても同じ趣旨で物を考えて参りたいと思つております。停年制につきましては、いろいろ問題点がありますので、これは国家公務員、地方公務員を通じて、今後国家公務員制度の調査会の結論を待つて考えたいと思つております。  共済組合につきましては、市町村職員共済組合法案を用意いたしておりますので、今国会に提案をいたして御審議を得たいと思つております。    〔国務大臣加藤鐐五郎君登壇拍手
  80. 加藤鐐五郎

    国務大臣(加藤鐐五郎君) 私に関しまする御質問は、国家公務員の身分に対し、又給与に対し、どんな考えを持つておるかという御質問であつたと思います。国家公務員は、往年の天皇の官吏ではありませんが、さればといつて、労務を提供し、その代りに賃金をもらうという民間の私企業の労働者とは大いに趣きを異にしていると思われるのであります。一定の資格で任用され、国家国民に対しまして誠実忠正に国民公共のために職務に従事奉仕するものであります。且つ又一面争議権或いは団体交渉権なども制約されておりまするが故に、政府としては、できるだけ公務員の優遇保護の途を講ぜなければならんと信じておることは申すまでもないのであります。従いまして、今後も人事院の勧告を尊重いたしまして、予算の許す範囲において微力を尽したいと存ずる次第でございます。  次に、人事委員会の勧告についてはどう考えるか、地域給についてはどうかというお尋ねのようであつたのでございますが、特に地域給につきましては、その複雑性をもう少し改善し、取扱を簡易にせなければならん。そうして合理化を図りたいと存じておるのでございます。而して、これも財政の許す範囲において人事委員会の勧告を尊重いたしたいと存じておるのでございまして、右率直にお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  81. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 国家人事委員会が行う給与改訂勧告につきましては、政府としては財政経済その他諸般の事情を考慮しましてそれを採用するか否かを検討することは何ら従前と変りはございません。ただ、これを採用しない場合には、政府として別段の措置を講ずる必要はないと考えますが、これを実施すべきものと決定した場合におきましては、別途所要の法律案なり、予算案なりを国会に提出して御審議をお願いすることとなると存じます。従いまして、政府としては、勧告を国会に報告する際、その予算的裏付けを必ず併せ報告する必要はないと、かように考えておる次第でございます。(拍手)    〔政府委員浅井清君登壇
  82. 浅井清

    政府委員(浅井清君) 私からお答え申上げますことは、人事院の独立性の問題だと思つておりまするが、松澤さんは私の著書をも御引用下さいましたが、私見ではございまするが、さように今以て考えておる次第でございまして要するに、今回の改正によつて国家公務員の保護ができないように独立性がなくなつておるものとは考えていないのでございまするが、この点はこれ以上申上げましても仕方がないことでございますから、委員会におきまして詳細に御説明申上げたいと存じます。  次に、今回の改正につきまして、内閣と、どのような交渉をしたかとのお尋ねでございまするが、これは政府部内のことでございまするから、この席上で申上げるのは如何かと考えておりまするが、我々の立場といたしましては、松澤さんの御趣旨に従い、人事院の独立性を保持することに努めた次第でございます。  次に、給与改訂をどうするかとのお尋ねでございまするが、これはまだ調査が完了いたしておりませんために、現行の給与ベースがどのようになるかは、ここで申上げることはできません。  次に、地域給につきましては、従来から準備を整えておりまするが、最近再検討の必要を生じましたことは、極めて多くの市が予想に反して多数にできたことでございまして、この点につきまして再検討の必要を生じておるのでございまするが、人事院といたしましては、成るべく速かに勧告をいたしたいと存じます。なお、給与の改訂にいたしましても、地域給の勧告にいたしましても、現行法上から見ましても、改正案から見ましても、既定予算の範囲内でしか、この勧告ができないものとは考えておりません。(拍手)     —————————————
  83. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 紅露みつ君。    〔紅露みつ君登壇拍手
  84. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 私は改進党を代表いたしまして、本改正案について以下御質問を申上げたいと存じます。  先ず、提案の真意はどこにあるかということを伺いたいのでございます。この点につきましては、只今松澤議員からもお尋ねがございまして、行管長官からの相当な御答弁がございましたが、この考え方というものは頗る重大だと思うのでございます。公務員にとりましては勿論でございますが、将来の日本のあり方につきましても重大な意味を持つものだと存じますので、改めてこれは重複をいたしますが、副総理の御答弁がはつきりしなかつたものでございますから、重ねてお尋ねを申上げます。  本案は国家公務員法の一部改正と謳われておりまするけれども、その性格につきましては根本的にこれは変革を来すものと思われますにもかかわらず、提案理由に申しておりまする行政事務の簡素化という点につきましては、これはどこにも見当らない。却つて今後の複雑化をさえ予想されるのであります。これに対して得るところの負担の軽減といたしましては、僅かに人員にして八十八名、予算上二百三十七万円減でしかありません。三人の人事官はそのまま横すべりをして人事委員となり、従来の人事院の機構をそのまま無理府に移すだけであります。従つて、本案は機構改革としましても、又人員の整理の面から見ましても、何ら自主的な意味が認められないのでありすす。政府は本案提出の真意をもつと明確に打ち出すべきであると存じます。  次に、疑問になつて参りまするのが、公務員制度そのものに対する政府の考え方であります。国家公務員法の意図するところのものは、人事行政、合理性、科学性を持たせるという技術的な問題もございまするけれども、周時に、従来の官僚中心の行政というのを根本的に改革して、国民に対し極めて民主的且つ能率的な行政を保障するという大前提の下に発足したはずであります。この目的があればこそ、人事院の独立的立場につきましては、若干の批判もあつたのでありますが、なお且つその存在が是認せられたのであります。然るにこの独立性を全面的に除こうとするのでありますから、公務員制度に対する政府の基本的な考え方が問題にならざるを得ないのであります。この点がもつと明確にされなければ、お手盛り方式を復活しようとする隠れた意図があると言われても、いたし方がたいと思います。若しそうだといたしまするならば、戦後八年間の公務員制度に関する一切の努力も、すべて水泡に帰し、戦前の特権的官僚制の復活に逆戻りをするのではなかろうかと思います。申上げましたように、この点につきましては副総理のお考えをもう少しはつきりとお聞かせを頂きたいと存じます。  次は、公務員の労働基本権の問題弔あります。今回の改正に当り考えられますことは、人事院の独立性が失われます以上、その擁護機関がなくなるしけでありますから、公務員の労働基本権についてこれに代る何らかの考慮が払われて然るべきだと思うのであります。少くとも第三者的な調停、仲裁等の機関に類する制度を設けて、労働関係に理論的な筋を通すことが必要であると思うのでございますが、その用意がおありになりますかどうか。このままで政府が一方的な措置をとることは、公務員の正しい合法的な運動をも抑圧してしまうという結果に陥りはしないかということを憂うるものでございます。これに対する政府の考えを伺つておきたい。  更に国家人事委員会の権限について伺います。現在公務員制度の傾向としては、その制定当初の目的からだんだん逸脱して参りまして、従来の通り複雑煩項な混乱を来しつつあるように思います。即ち公務員にして公務員法の適用を受けない教育公務員特例法、外務公務員法、又近く提出予定の現業官庁の官吏職員の給与の特例法、こういうふうに種々雑多でありまして、給与についての一貫した基準がないために、民間給与との比較も誠に困難である。従つて給与の勧告とか、仲裁裁定或いは年末手当要求の場合に、その是非、適否について、納税負担者である国民の判断を迷わせる場合が頗る多いということを痛感しております。このことは、国民に対して民主的、能率的行政を保障するという公務員法の精神から逸脱しているものと言わなければならないと思うのであります。そこでこの機構改革をして少しでも意義あらしめようとお考えになりますならば、国家人事委員会の権限を一般職に限らず、広く公務員全般に及ぼして、任用の基準、給与の基準を統一して、公務員に対する処遇について、国民の判断を容易にする途を開きますならば、せめてもの収獲と考えますが、その点は政府はどういう御見解を持つておられますか。  それから勧告の性格というものについて一つ伺いたいと思います。今回の改正によつて国家人事委員会は、内閣に対してのみ勧告を行うこととなつて、名称は同じ勧告でも、従来の国会及び内閣に対して同時に行う勧告とは実質的に格段の差異ができて来たのでありますが、一体内閣の外局としての国家人事委員会が、その内閣に勧告するということもちよつとおかしく感ずるのでありますが、それはおくといたしましても、法律上どのような意味と効果を、もたらすものでありましようか。そうして又それを内閣が国会に報告するということは、どのような形で、どのような意味でなされ、その責任者として誰がこれに当られるのでありますか。給与担当の加藤大臣がこれに当られるのでありますか、明確にしておきたい。  それから退職年金制度、給与準則の問題もありますが、これは或る程度の御答弁を伺つておりますので省略をいたしますが、ただここで一点伺つておきたいのは、退職年金制度は、これは新らしい恩給法でございますが、これと内閣の恩給局との関係をどうされるか。その点についてだけここでは伺います。  それから給与担当大臣に伺います。加藤国務大臣は、官制上は明らかでございませんようですが、今回給与担当の辞令をお受けになられたそうでございますが、今後国家人事委員会とどのような関係になられるか。その点をはつきりお聞かせ頂きたいと思います。国家人事委員会は総理大臣の所轄の下に置くという改正案の趣旨と、又別に給与担当大臣を設けるという考え方とは、そこに責任の所在についてと申しますか、釈然としないものがあるのでございます。巷間これを評して申しておりますことは、警察法の例に倣つて、やがて国家人事委員長を国務大臣とする伏線であろうと申しております。果して加藤大臣はそのような了解の下に給与担当をお引受けになられたのでありましようか。若しそうでないといたしまするならば、ここで国民に対してその点を明らかにしておかれたほうがよろしかろうと思います。  最後に、人事院総裁にお尋ねをいたします。先ず地域給でございますが、これも只今お話がございましたので、大部分省略いたしたいと存じますが、文書を以て地域給に対して善処するという御回答は、飽くまでも独立機関としての人事院の責任においてなされたものであります以上、独立の権限のある残る僅かな期間内にその勧告を提出されることを私どもは期待しております。総裁は国家人事委員長という肩書に変える前に、その処置について一応の解決を図るべきであると存じます。この際、これに対する御答弁をここで頂きたいと存じます。  いま一点、浅井総裁に伺いたいと存じますのは、これも松澤議員から御質問になりましたが、あなたが八年間手塩にかけて育て上げた人事院は、ここに実質的な終末を告げるわけでありまして、人事院を明け渡すに当りましては、定めし複雑な御心境であろうと存じますが、私どもとして見遁しがたいと申しますか、是非ここで確かめて置きたいと存じますることは、この時に当つてのあなたのお心構え如何ということでございます。私どもはこの点に重大な関心を寄せております。それは、人事院が総理府の外局として総理大臣の所轄の下に吸収されても、公務員に対する福祉と利益の擁護を守り抜けるという、又抜こうという自信がおありになるでありましようか。最後の浅井総裁の御所信を伺つて置きたいと存じます。  以上を以ちまして私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  85. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  今回の人事機構の改革は国家公務員法の根本的な変革を前提とするものではないかという御質問でありましが、政府ではそういう意図は持つておりません。今回の改正は、行政改革の一環として中央人事行政機構を我が国の行政組織の上から見まして、適切且つ簡素なものに改め、併せて人事行政上の手続を簡素化しようとするものにほかならないのでありまして、御指摘のように隠された意図はないのでございます。  国家公務員の制度につきましては、近く発足いたしまする公務員制度調査会で十分に検討いたしたいと存じておりまするが、その検討をいたしましても、憲法の第十五条に規定されておりまする国家公務員の立場、即ち全体の奉仕者であつて一部の奉仕者でないという立場は変らないのでありまして、  これが何か政府に官僚の復活というような意図があるかのようにお話がありましたが、そういう考えはございません。従いまして、只今お話のありました今度人事院の制度が変ると同時に、争議権を認むべきであるのではないかということに対しましては、政府としては反対の意見を持つております。即ち全体の奉仕者としての公務員といたしましては、やはり争議権その他団体行動権において、何がしかの制約を受けるのが当然であります。併しながら政府といたしましては、どこまでもその利益、福祉につきましては、万全の措置をとつて参りたいと、さように考えております。(拍手)    〔国務大臣塚田十一郎君登壇拍手
  86. 塚田十一郎

    国務大臣(塚田十一郎君) お答え申上げます。  特に私に対するお尋ねがあるかないかよくわからないのでありますが、提案の趣旨、真意がどこにあるかということについて、重ねてお答え申上げたいのであります。  今度のこの国家公務員法の改正は、人事院の改組と、それからして人事事務手続の若干の簡素化ということになつているのでありまして、全体的なこの人事制度、公務員制度というものをどうするかということは、繰返して申上げてあります通り、これは公務員制度調査会の結論を待つてやると、こういう考え方をしている。従つて今度の改革には、この官僚制度を復活するというような面は全然あり得ないのでありましてその点は御了承を願いたいと思うのであります。  それからして、そんならなぜこの改革、改組をしたのかということであります。まあ機構改革をいたします狙いというものは、ものによりましては、例えば各省の局部というようなものは、私は全体として非常に大きくなつているものを成るべく縮めて簡素化したいという考え方を頭に置いておるわけであります。併し人事院の改組の場合には、先ほども申上げましたようにこの機構が余りにも過度の独立性を持つておりまして、この行政の混淆を来すきらいが非常にあるというので、その点をできるだけ直したいというのが狙いであるわけであります。大体の感じといたしましては、従つて機構改革の場合には、それによつて非常に予算が減るとか人員が減されるとかいう面は、そんなに多くは私も出て来ないと考えておりますので、従つて今度の改革では御指摘のように予算の面、人員の面には大きな期待は持つておりませんけれども、別に狙いがあるという点を一つ了承願いたいと思います。  それから、ついでに一般職に限らず公務員全般に、もつと広く人事委員会の権限を持たしたらどうかという御意見でありました。この点は私どもも、そのように感じられまする面が確かにあるのでありまして、今度の公務員制度調査会の重要な一つの審議の議題になる。こういうように考えております。(拍手)    〔国務大臣加藤鐐五郎君登壇拍手
  87. 加藤鐐五郎

    国務大臣(加藤鐐五郎君) 今般私が、国家公務員等の給与事務を担当することになりましたことは、先刻来申した通りでございます。従つて、今後一般職及び特別職の国家公務員等の給与については、私が所管大臣として責任を負うことは、先刻これも申した通りでございます。ただ、人事委員会に将来担当の大臣を設けることについてどういう考えを持つているかというお尋ねのようでありましたが、これは事務連絡の上からも便利かと存じまして、或いはさような構想の下に進んで行くかも知れませんけれども、直ちに今どうということはきまつているわけではございません。即ちこれは国家公安委員会等に、担当大臣を設けてその結果がよろしいようになつている事実に徴しまして、一応考えつつありますが、只今置くということは、明確にきまつたわけではございません。(拍手)    〔政府委員浅井清君登壇拍手
  88. 浅井清

    政府委員(浅井清君) 近づいておりまする地域給の勧告は、改組の前後いずれにやるかというお尋ねでございまするが、私どもはこれについては、改組前、後というようなことは頭の中に置いておりません。何となれば、成るべく早くやりたいと、かように思つておるからでございます。  次に人事院の独立性が失われておるのではないかというお尋ねに対しましては、最前からしばしば繰返した通り、私どもの考えといたしましては、この独立性はなお保持されていると思つておるのでありまして、従つて将来国家公務員を保護する立場というものは決して失われるものでない。かように私どもとしては考えておるのでございます。  なおこの点は、委員会等において詳細に御検討下さることを切望いたします。(拍手
  89. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) これにて質疑通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  本日の議事日程は、これにで終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十八分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件、農産物購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件及び投資保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件(趣旨説明)(前会の続)  一、日程第二 国家公務員法の一部を改正する法律案趣旨説明