○矢嶋三義君
終戦後十年に満たずして、恐るべき
法案が提出され、恐るべき発言がなされるに至りました。私は
日本社会党を代表いたしまして、二
法案に関し、吉田
総理大臣以下
関係各
大臣に若干の
質問を試みんとするものであります。
質問に先立ちまして、
国会に臨まれる
政府の心構えについて反省を促し、強く善処かた自力全野党派を代表いたしましていたすものであります。
本重要
法律案を本
会議に上程し、
質問することを予定いたしまして以来、
総理の出席がないために、すでに一週間を経過いたしました。本
法律案は極めて重要なものであると同時に、更に我々が吉田
総理の出席を要望した
ゆえんというものは、吉田
総理の現
内閣における専制的存在、この点にあるのでございます。私は信じませんが、世間の人は吉田
総理の下にはお茶坊主がいると言
つているのでございます。従
つてこれらの重要
法律案については、
総理みずからこの壇上から答えるべきであり、又その必要があるが故に我々は要望して参
つたのでございます。従来重要
法律案の審議の渋滞或いは
国会混乱の原因は、
総理の
国会に出席をしないということが常に原因とな
つておるのでございます。
独立前においては
総理は渉外事務に名をかり、
独立後においては、いわゆる所労を
理由として
国会を無視して参りました。先般の教育二重要
法案の審議に当りましても、病重く当分登院できないと申しながら、その翌日には
衆議院に登院いたしておるのでございます。勿論このたび診断書が提出されておりますし、それらの診断書を我々は否定するものではございませんが、併しながら
総理は大磯にこもり、外遊の打合せと準備おさおさ怠りないのでございます。従来の行為から
国会出席に関する積極的意思のない点につきましては、我々は容赦することはできません。
総理の我儘は天下周知の事実でありまして、かくのごときことを許容して参りました与党の
責任は極めて重大である。
国会においてもその
責任の一端があると
考えるのでございます。
違憲の疑点濃き、而も
国家、民族にとり極めて重大な本
法律案を審議するに当
つて総理の不出席のままこの審議を続けるということは、
国会の
権威上誠に遺憾極まりないことであ
つて国民の負託に応える
ゆえんでないと思うのでございます。吉田
総理以下
政府委員がその心構えを改めない限り、今後の
法案審議は重大支障を来たす虞れがあることを警告し、
政府を代表して
緒方副
総理の御
所見をお伺いしておきます。(
拍手)
さて、
質問に入りまして、
世界の
情勢が東に西に緊張緩和の方向にあるこの
世界情勢に逆行して、
日本を取巻くアジア諸国の警戒心を必要以上に刺激するがごとき再軍備への途を、
国民を目隠しにして
政府は引きず
つているのであります。
経済力を無視し、米国から押しつけられた耐乏再軍備
方針の推進のために、農民、中小企業者、市民等、勤労階級は犠牲を強要され、社会保障政策は、進展はおろか、実質的後退を来たし、教育の
機会均等も看板倒れとなり、春秋に富む学徒諸君は学費不如意の故に向学心を満たされず、又、荒廃のまま放置された山河に住む
国民は、常に自然の暴威の前にさらされ、生命財産を脅かされ、戦々兢々として生への営みを細々と続けているのが実情であるのであります。原子兵器を主体とし、陸上兵力を成るべく引揚げて、極東諸国にその負担を担わせるという
アメリカの新らしい極東戦略配備は、着々と実行に移されており、その
立場から割出された
日本再軍備の要求は極めて強いのでありまして、その要求に屈し、
MSA受入れによる
防衛力増強の具体的
措置として吉田
内閣がとられたのが、この二
法案でありまして、
日本農村青年を目標とした陸上
自衛隊に
重点を置くものであります。何が故に、かくも
国民を犠牲にし、米国の強要に屈して、
自主性なき米国の傭兵を創設され
ようとするのか。
国民には
納得できません。
日本人吉田
総理の見解を承わりたいのが
質問の第一点であります。
次に私は
防衛力の問題について、
政府並びに吉田
総理が
国民に対して本日までとり来たつた欺騰的且つ秘密主美的な
態度について、この際、
国民に陳謝し、真実を
国民に披瀝すべきであり、その政治的
責任を問わんとするのであります。顧みまするに、吉田
総理は、
昭和二十五年七月二十六日、宏院の本
会議で次のごとく発言しております。「朝鮮問題の進展は
我が国の
治安の上に大きな不安を与えているので、
警察力増強による
治安維持のために
警察予備隊を設けるが、再軍備するつもりは全くない」と述べて以来、六日までみずから口が酸つぱくなるというほど再軍備しないと公約して参
つたのであります。更に岡崎担当
国務大臣は、二十五年八月十四日、「世上やや、
アメリカの通信等によりまして、これが再軍備の始めになるんじやないかというふうに言われております
関係上、そういうことでは決してないのであるということを強くいたしたいと思
つております」との
国会における
答弁の下に、当時七万五千人の
警察予備隊が発足したのであります。続いて
昭和二十七年四月二十八日、平和
条約、日米中保
条約、日米
行政協定が発効したのでありますが、当時の第十三回
国会に保安庁法を
政府は提出して参りました。当時我々は、保安庁法は、日米安全但障
条約の前文にある、直接及び間接の侵略に対する自国の
防衛のために漸増的にみずから
責任を負うことを期待するとの条文に従
つて、
政府が
防衛力の
増強、更には再軍備の意図に基いて保安庁法を提案したものと断じ、追及したところ、
政府は、
独立後の機構改革の一環として取り上げたものであ
つて、
保安隊、警備隊は、
国家地方
警察及び自治体
警察の
警察力を補うことを
目的とする
警察予備隊の性格を何ら変えるものでないと強弁する一方、
法案審議の当初から、
政府はひそかにフリゲート艦等の貸与方を米国側と交渉していたのであります。その後、十五
国会で、我々の反対を押し切
つて船舶貸出協定を成立せしめ、再軍備しない、
保安隊は
増強しないと
答弁しながらも、隊員は約十六万四千名とならんとし、その間、
関係経費を含め約五千五百億円の国賓支出をいたしたのであります。更に昨年秋、
国会開会中に、
我が国会をつんぼ桟敷に置き、
総理は自分の個人特使池田勇人氏をして
日本の
国防の問題を他国の首都ワシントンで米国首脳者と協議させたもので、その結果が、
MSA協定、更に本日の二
法案と相成
つて参つたことは、明々白々たることでありまして、この
法案は、軍機秘密保護法制定、集団安全保障
義務に基く海外出動、再軍備徴兵
制度実施、太平洋軍事同盟締結等に通ずるレールの敷設の役割を果すものとなると申したからとて、良心と
責任を以てこれを否定し得る人が幾人ございまし
よう。
政府は依然として、
戦力でない、再軍備しない、
憲法違反でないと、詭弁を弄しておるのであります。事ここに至りましては、怒髪天を衝くとも足らざるものを感じます。本日までとり来つたその欺瞞的
態度を
国民に陳謝し、その公約したる政策の変更を来たしたる今日、潔くその政治的
責任を明確にすべきと
考えますが、吉田
総理、岡崎外相、
木村長官の
答弁を求めます。
次に、
質問の第三点として、
自衛隊の
軍隊的性格並びに外敵対抗と
憲法との
関係についてお伺いします。
木村長官は二十八年七月十八日、
衆議院外務委員会で、
MSAの
義務を受諾すれば
保安隊の性格は変り得ると述べておられるのでありますが、
我が国に対する
MSA援助は明らかに軍事援助であります。その受諾の必要
条件として生れた
自衛隊は、
政府が従来強弁して参りました
保安隊、警備隊の
警察的性格を、
軍隊としての性格へと質的変化を来たしたと断定するものであります。
警察予備隊令の第一条には、「
目的」として、「わが国の平和と秩序を維持し、公共の福祉を保障するのに必要な限度内で、
国家地方
警察及び自治体
警察の
警察力を補うため」云々と述べられ、保安庁法の四条「任務」の項には、「わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する」云々と謳われております。然るにこのたびの
自衛隊法第三条には「
自衛隊は、わが国の平和と
独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を
防衛することを主たる任務とし、」云々と述べられ、
国内治安維持から外敵対抗へと一大飛躍をいたしておるのであります。更に、新たに航空幕僚監部を設け、三軍均衡方式をとり、統合幕僚
会議を設けて統合調整を図ることとし、
自衛隊員の退職制限を設け、旧予備役
制度に匹敵する
予備自衛官制度を創設しているのであります。更に、自衛官の階級呼称は、陸海空それぞれ別個に、陸将、陸佐、陸尉、陸曹の形態をとり、
曾つての
軍隊のそれと何ら異なるところはありませんし、保安庁法における船舶、船隊の活字は、それぞれ艦、艦隊と置き替えられたのであります。更に、
防衛出動時の権限強化を図り、百三条には「
自衛隊の任務遂行上必要があると認めるときは、病院、診療所その他政令で定める施設を管理し、
土地、家屋若しくは物資を使用し、物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対して、その取扱う物資の保管を命じ、又は物資を収用することができる。」と
規定され、保安庁法による命令出動
違反の刑罰量三年以下の懲役又は禁固は、
自衛隊法による
防衛出動時には、これが七年以下の懲役又は禁固と、
罰則が極めて強化整備されたのでおります。更に委託学生
制度或いは少年
自衛隊制度とも申すべき中堅幹部養成
制度の創設等、全く
軍隊として組織化され、装備され、訓練され、行動することに相成
つたのが
自衛隊であります。かくのごとく、外敵対抗を
目的として組織され、その
目的のために訓練される勢力は、学説によ
つても、国際的通念によ
つても、
軍隊であり、その保持と、外敵に対する武力行使による行動は戦闘であり、明らかに
憲法第九条に
違反するものと断ぜざるを得ないのであります。
衆議院における最近の
政府答弁は、「直接侵略に対する武力行使は、国際紛争解決手段としての武力行使でないから、
違憲にあらず」としておりますが、然りとすれば、国際紛争でない直接侵略に対する自衛のためには
戦力が保持できると
憲法第九条第二項は解されることになるのでありますが、
政府の従来とり来たつた、自衛のためにも
戦力の保持はできないという解釈を変更されたのかどうか。以上の点について吉田、岡崎、木村、各
大臣の
答弁を求めるものであります。
質問の第四点は、従来の
政府答弁は、
自衛隊の
違憲性をみずから立証するものであることを
指摘し、厚顔無
責任にも、それらを無視して提案し来たつた
政府の
所見と
責任を、吉田
総理並びに
木村長官に質さんとするものであります。
吉田
総理は
昭和二十一年六月二十八日、
衆議院本
会議において野坂
議員の
質問に対し、「
戦争放棄に関する
憲法草案の条項におきまして、
国家正当
防衛権による
戦争は正当なりとせられる
ようであるが、私はかくのごときことを認むることが有害であると思うのであります。近年の
戦争は多くは
国家防衛権の名において行われたことは顕著なる事実であります。故に正当
防衛権を認めることが、たまたま
戦争を誘発する
ゆえんであると思うのであります」と
答弁し、更に同月二十六日、
衆議院本
会議で、原
議員の
質問には、「第九条第二項において一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての
戦争も、又交戦権も放棄したものであります。従来、近年の
戦争は多く
自衛隊の名において戦われたのであります。満州事変然り、大東亜
戦争又然り」云々と答えておられるのであります。自衛権の発動として、外敵に対し武力行使に出ることを主
目的とする
自衛隊は、以上の
総理の見解を以てしても明らかに
違憲ではありませんか。
更に当時の大橋担当
国務大臣は、同年六月六日、当院
内閣委員会で次のごとく述べております。「外敵対抗の意図を有する部隊、対外的な意図を以て設けられた部隊は、近代戦遂行能力に達しなくても
違憲である」と言明され、同日更に、「相手国が
日本の
憲法に
関係なしに、宣戦布告して、武力攻撃をして来た場合、
日本側が受けて立つことは
憲法上禁止されておりまするし、又そうしたことはなすべきでなく、米
駐留軍の行動に待つという
態度をとるべきと思うのであります」と、
答弁されております。
更に
木村国務大臣は、二十七年三月十日、「外敵と戦うという
段階に至るかどうかに私は判断の基礎を置いております。これを一たび外敵と戦い得る編成と装備を持つに至りますれば、無論、第九条第二項の
戦力として、あらかじめ
憲法改正の必要があると
考えるのであります」と、
答弁されているのであります。これらはいずれも
自衛隊は
違憲なりとの十分なる
説明ではありませんか。何事でありますか。
国民を欺瞞するにもほどがあります。先ほど副
総理は、
国会論議の
権威ということを申されましたが、如何でありますか。(
拍手)
国務大臣の
答弁は私の
答弁でありますと常々申される吉田
総理の下における
内閣が、みずからの
答弁で
違憲であることを立証される本
法案を上程されたことは、
国会における
答弁に対して一片の
責任感なく、
国会軽視も極まれりと申さなければなりません。私はその政治
責任を追及するものであります政治は二
法案を撤回するか、潔く引責総辞職するか、いずれかの途を選ぶべきであると
考えるのでありますが、良心に従
つての
答弁を求めます。(
拍手)
そもそも本
法案は、現行
憲法下で自衛のための
戦力保持ができるという見解に立つ改進党の意見が、二
法案の立案交渉の過程において
政府与党を圧して成案が得られたことは、天下周知のことであります。保安庁法審議の当時、本
会議場で
違憲立法なりと断じ、反対討論をなし、反対投票された改進党の
憲法解釈の便宜主義的豹変はともかくとして、
政府の従来の
答弁に照して著しく矛盾を来たす二
法案は、
憲法違反であり、又
政府の道義に欠けた政治
責任を断固として追求せざるを得ないのであります。若し
政府において撤回せざる場合においては、本院としては違
憲法案審議の疑義を、先ず徹底的に
解明せざるを得ないことに相成りまし
よう。
更に、大達文相にお伺いしますが、文部省発行にかかる「あたらしい
憲法のはなし」なる中学生用教科書には、
戦力不保持の解釈として「兵隊も軍艦も、飛行機も、およそ
戦争をするためのものは一切持たないということです」と書かれておるのであります。即ち攻撃
目的にせよ、自衛
目的にせよ、対外的な対抗の意図を持つた武力は、名目の如何にかかわらず、これを保持しないという解釈を教示しておるのであります。文部省発行の教科書の解釈から明らかに
違憲である本
法案に賛成された大達文相の
責任を明確にして頂きたいのであります。
質問の第六点は、海外派兵の問題であります。
日米安全保障条約において
防衛力漸増の
責任を期待され、更に日米相互
防衛援助協定で
防衛力の
増強、国際緊張の原因除去についての強力、更に自由
世界の
防衛力の発展及び維持への寄与等を
義務付けられたのであります。更に平和
条約第五条(a)項の(iii)には、「国際連合が憲章に従
つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、」と謳われており、日米間の
行政協定二十四条には、「
日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、
日本国
政府及び合衆国
政府は、
日本区域の
防衛のため必要な共同
措置を執り、且つ、安全保障
条約第一条の
目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」とあります。直接侵略に備える
自衛隊が、直接侵略の根源を絶つ自衛行動の名の下に
国外に
自衛隊が派せられ、米軍の隷属下に置かれる危険性は極めて大と申さねばなりません。米軍は歴戦に輝く筋金の入つた純精鋭
軍隊であります。共同作戦時の
指揮権さえ明確でないだけに、
事態発生の場合、
自衛隊が引きずり廻される不安は絶対否定できないのであります。武力行使を公然と認められた
防衛出動が、国際的な紛争に巻き込まれないと誰が保証できますか。私の
理解しがたい点は、日米相互
防衛援助協定では、それぞれの自国にと
つては当然過ぎるほど明確な
憲法上のことに関し、第九条にわざわざ「この協定は、各
政府がそれぞれ自国の
憲法上の
規定に従
つて実施するものとする。」と
規定しているのでありますが、海外派兵の禁止条項を設けて
国民の不安解消に何が故に応えなか
つたのか。これらの点に関し岡崎外相、
木村長官の
答弁を求めます。
質問の第七点として、吉田
総理、
木村長官、小笠原蔵相に
防衛計画の問題についてお尋ねいたします
吉田
総理は
曾つて中途半端な再軍備は共産党に乗ぜられるのみで、有害であると
国会で述べられております。
防衛計画は基礎的な軍事戦略と、経済財政の
防衛費負担能力に対する見通しの下に樹立されるでありまし
ようが、
国民大衆は
防衛創設費並びに維持費の増大化による生活への圧迫を極度に
懸念いたしております。
日本国民に語らずとも、
MSA交渉の
段階において、
我が国の長期
防衛計画について米国側と協議し、一応の目標を樹立したことは明白でありまし
よう、又保守三派の了解線というものを伝えております。これらと関連し、
総理は近く
憲法改正、再軍備の決意を持
つていると思うのでありますが、その時期、規模、更にその
日本経済への影響、
国民の負担、生活水準への影響等、如何
ように見通しを立て計画を持
つておられるのでありますか。あたかも役牛のごとく、耐乏を強いられながらも、ここまでおいでここまでおいでといつた
ような、その都度
増強政策では、
国民大衆は吉田
内閣の手で、どこまで連れて行かれるのか、又その背後にある米国は、どこまで連れて行かせ、何をさせ
ようと
考えているのかと、極めて大きな不安を持つのも当然かと
考えられるのであります。その場逃れの
答弁は絶対許されません。
国民に代
つて誠意ある真実の
答弁を強く要求いたします。
質問の第八点は、内容についてお尋ねいたしますが、文官優位並びに統帥権の問題についてであります。
政府は従来保安庁法第十六条の内局幹部の任用資格制限を以て、非民主的な部隊活動を抑制するためには、統制をとる中枢
機関は制服職員であ
つてはならないと
説明していたのでありますが、このたびの撤廃によ
つて、基本的
方針の策定について、長官を補佐する参事官は少くとも大部分制服職員で占められるに至ることは明白で、更に
防衛庁設置法案第十九条で、内部部局の職員として制服自衛官の勤務を許容しておりますので、文官優位の原則は破れ
武官優位となることは必至で、内部部局の
軍隊色を濃化するでありまし
よう。更に
国防会議に伝えられるがごとく、学識経験者として旧軍人が
構成員と
なつたあかつきには、政治の軍事に対する優先の原則が崩れ去ることは明白であります。統合幕僚
会議は
議長以下四人いずれも自衛官であり、更に官房長と五局長の大部分が自衛官と
なつた場合、それらに補佐される
防衛庁長官が政変ごとにかわる
国務大臣であ
つてみれば、最も軍国主義に徹した旧陸海空軍の佐官級を以て占めるこれら自衛官の集団の前にロボット化することは必至でありまし
よう。旧軍人を以て長官に充てたる場合においては、何をか言わんやであります。
民主主義の歴史の浅い
我が国においては、
総理、長官が度重なる政変によるその地位の不安定と併せ
考えるときに、技術的指揮は制服職員に任せるとしても、各幕僚監部並びに内局幹部に文官任命の
規定を設けない限り、
我が国は挙げて軍国主義化するでありまし
よう。一部旧軍人の
自衛力増強論者の中には、
憲法を
改正し、天皇を
国家元首として統帥権を所属させ
ようとの意見もあるやに聞くのでありますが、危険極まりないことと
考えるものであります。今後
首相は、与党の総裁であり、
総理大臣であり、更に
自衛隊の
最高指揮
監督者となり、
行政権、統帥権の一切を掌握するに至るのであります。一たびワンマン的
首相が実現せんか、これ又
国家国民にと
つては危険極まりないことと相成るのであります。その他裁専制を如何に抑制するか、
国防会議の
構成に関する構想並びに提案の時期とも併せ、これらの点について吉田松理、
木村長官の御
所見を承わりたいのであります。
次に、秘密保護条項について
質問いたします。日米相互
防衛援助協定第二条に基く秘密保護に関する
立法を、
MSA法による供与兵器の機密保持のみに限定しないで、
防衛関係事項全般も拡大する
考えあるやに聞くのであります。そもそも兵器の秘密保護は特定の兵器、その設計図、構造、
性能を秘密として保護するもので、その
範囲はできるだけ狭く局限すべきもので、無用の摩擦を
国民の間に起してはならないのであります。言論報道の自由は勿論、必要以上に
国民の自由を束縛する軍機の秘密保護法は、
軍隊、
戦力の存在を許さざる現
憲法下では
立法不能であることは明白であり、明らかに
違憲であります。又
政府の言うがごとき
戦力に達せざるものに秘密保護の必要はないではありませんか。本村長官、伴藤法制局長官の御
所見を承わります。
質問の第十点は、
MSA援助との
関係についてであります。
政府は
MSA援助期待額として、陸上、海上、航空等それぞれ計画を立てられ、更にそのほか極東諸国に対する貸与予定艦艇二十五隻中から十七、八隻の貸与を計算に入れておる
ようでありますが、米国側において、援助兵器施設等海空
関係は渋
つておると伝え聞くのでおりますが、その真否並びに
理由如何なるものと
考えられるか。若し然りとすれば、三軍均衡方式の
防衛計画の変更、延いては
予算の変更を必要とするものと予想されますが、これらの点に関し岡崎外相、
木村長官の
答弁を求めます。
最後に、沖縄、小笠原諸島返還の問題についてお尋ねいたします。
曾つて外電は、
日本の
防衛方針がはつきりするまで原子力利用兵器置場として沖縄、小笠原諸島は米国が保持するであろうと伝えましたが、誠に恐るべき危険事であります。
自衛隊創設の見返りとして島々が返還されるのではないかとも流布されておりますが、私は絶対かくのごときことは信ずることができません。返還の見通しと併せ岡崎外相の御
所見を伺います。
以上、
質問を展開して参りますと、
自衛隊は内国の基本法たる
憲法によりどころなき装備、訓練、行動等、
独立国日本の
自主性に欠けた
軍隊であり、
国民の
基本的人権に制約を加え、その多くの
国民の生活を圧迫し、外、近隣諸国に無用の刺激を与えることが痛感されるのであります。吉田
総理は、
昭和二十一年六月末
会議場においてみずからなした
日本国憲法の提案
理由を心静かに再読玩味し、その進退を明確にされるべきであることを
国民に代
つて要望すると同時に、我々は
国民に応える
意味において、我々の
国会の
権威と
良識の下に、この二
法案の本
国会の成立を絶対に阻止しなければならないという決意を有することを表明し、私の
質問を終る次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣緒方竹虎君
登壇、
拍手〕