○千葉信君 私は
日本社会党を代表いたしまして、
只今議題となりました
政府機関
職員定員法の一部を
改正する
法律案に対し、首相並びに
関係閣僚に対して若干の
質問をするものであります。
自由党
内閣は、
昭和二十四年以来今日まで大小とりまぜて実に九回に及ぶ
定員法の制定、
改正を行な
つて来ておるのでありまするが、その目的とするいわゆる
行政整理は、曾
つてただの一度も成功したためしがないことは、あえて世評に待つまでもないところであります。
由来、
行政整理の目的とするところは、それによ
つて人員の
適正化を図り、
国民負担の
軽減を約束し、併せて
行政機能の
能率化を期待し得るものでなければなりません。この建前から言えば、毎年々々、馬鹿の
一つ覚えのように
行政整理を口にしながら、一体今日までの実績はどうでありましようか。例えば
昭和二十四年六月
定員法制定当時の
定員数は八十九万七百四十九人でありましたが、今日七十一万四千五百四十六人とな
つているのでありまして、而もこのうち電々公社設立によるところの公共企業体移行の分十五万三千二百五十四人を計算いたしますると、その差は二万二千九百四十九人に過ぎないのであります。この二万二千九百四十九人が、確実にそれでは
縮減されたかと言えば、これ以上の
人員が実は賃金要員としてその穴埋めが一方において行われているのであります。かくのごとき度重なる失敗の根拠は、
機構の根本的
検討と
事務の
簡素化を一切省略して、ただ単なる首切りに終始したからにほかならないのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)然るに
政府は、今回も又その愚を繰返えそうとしているのであります。即ち何故に
政府は、今折角
臨時行政改革本部を設けて
審議中だというのにその
結論を待とうとしなか
つたのか、又今その協議
内容はどの
程度に進んでいるか。副総理からその
内容についてお答えを願いたいのであります。
次にお尋ねしたい点は、
政府はこの
定員法によ
つて、所期の目的を達し得ると
考えているかどうかという点であります。
行政機構改革について厳密な
検討もなく、
事務再配分についての方針もないままに提出された本
法案は、当然の
結論として又しても天引
整理となりまして、その結果として起ることは賃金要員の増大か、さもなくば超過勤務手当の増額か、そのいずれかに逃避することは明らかであります。去年七月行われました
定員法の
改正では差引四千七百六十六人を
増員し、これに対する
提案理由の
説明によりますれば、即ち、
定員の増加と申しましても、現に在職する賃金要員の
定員法上の
措置によるもので、
職員の純増は、実際には殆んどないものということができるのであります、ということでありました。今回のやり方はこれとは逆に、
定員の
縮減とは申しましても、
定員法上の
措置に過ぎないのでありまして、その必要欠くべからざる
事務に対しては、賃金要員を以てこれに当てる所存であります、というのが本音ではないか承わりたいのであります。更に又いま
一つの問題は、在来とり来つた
政府の方針によれば、無計画な首切りをやる。それでも不足を生じたところは賃金要員を当てる。それでも足りない分については超過勤務を以て賄
つて来ているのであります。而もこの超過勤務手当については、年々増大し、今日においては
給与総額に対して一三%以上を別に計上しなければならないという
実情であります。この超過勤務手当については、むしろこれを
定員化すべしという意見さえあるのでありまするが、
定員化するとすれば、少くとも現在員に対して一割以上の
定員増加を行わなければならないのであります。この
状態は何を意味するかと言えば、
機構の改廃、
事務の
簡素化を行わない限り
行政機関内における仕事の総量は、
定員プラス賃金要員
プラス超過勤務手当となるのであります。而も賃金要員は、示された今回の
政府の資料によりましても、現在四十四万七千四百九十二人を数えております。仮にこのうち例えば最も多数を占める作物調査員、作物
報告員、顧問、或いは単純労務者、季節的なもの等を除いても、なお八万八千人
程度は
定員内
職員と区別することの困難な職種であり勤務条件のものであります。これでは
政府の言う
行政整理は、
行政整理そのものに目的があるのではなくて、他に意図するところがあ
つてのことであると言
つても過言ではありません。一体、
政府は、この
法律案制定によ
つて賃金要員の増大、或いは超過勤務手当増額の不可避な
状態にどう対処するのか、はつきりとその御方針を承わ
つておきたいのであります。
次に労働大臣にお尋ねをいたします。首切りをやる以上、その
対策をどう立てているかという点であります。耐乏
予算を強行する以上、それによる極端な犠牲に対しては、これを救済する
対策をとることが
政府の責任であると同時に、首切りを敢行する以上は、これを受入れる方策が立てられていなければなりません。特に耐乏
予算、金融の引締めによ
つて起る著しい特徴は雇用の
縮小、失業の増大であります。財政投融資五百四十億の減少が造船、建設に及ぼす影響を見ても、金融の引締めによる賃金不払、中小企業の倒産も、すでに現実の問題として現われ始めております。かてて公共
事業費で吸収できました分から、公共
事業費の減額によ
つて大よそ十四万人の労働人口が都市に影響の及ぼすことも明らかであります。そこへこの
定員法によ
つて職を追われる人々、公共企業体や地方を含めて約十五万人に及ぶ失業者が放り出されるとしたら、今でさえ
政府の発表によ
つても、完全失業者四十四万人、不完全失業者六百万人を超えているとき、労相は本年度失業者数をどの
程度と
考え、
政府は如何なる具体策を持
つているのか承わりたいのであります。
次に厚生大臣にお尋ねをいたします。今回の三党協定による
予算によ
つて、国立病院に対して一千台の結核病床分が計上されたのであります。これは全く
増床分でありまして、この
増床に伴う経営費はどうなるのか。食糧費、用品費、医療費及び人件費その他で、第四半期分だけといたしましても四千七百万円を必要とするし、
人員におきましても医師四十名、看護婦その他で四百名はこの修正によ
つて増員を必要とするはずであるが、厚生大臣は、この点について如何なる方針で対処されるおつもりであるか。この修正に応ぜられた厚生大臣として、
所信を承わりたいのであります。
次は大蔵大臣にお尋ねをいたします。今日、造船疑獄、第七次造船に見る不当支出の問題、或いは災害復旧補助費の不当なる支出については、
会計検査院による摘発は飽くまでも事後
措置であ
つて、
予算執行の不正防止に当る機関としては、会計法第四十六条に基いて財務部主計課及び財務局あるのみであります。然るに、大蔵大臣はこれらの
機構を整備して一層その強化を要すべき今日、これらの要員に対しては、他に比べて約二倍に当る八・八%の
整理率を以て五百七十五名の
整理を行わんとしていることは了解に苦しまざるを得ません。大蔵大臣は
予算執行の不正防止に対して、今日以上に強化の必要がないと
考えているのか承わりたいのであります。
次は建設大臣にお伺いいたします。非常勤者が一番問題になるのは建設省であります。建設省には、準
職員が五千八百八十四名、補助員が八千三百七十二名、いずれもいわゆる袴人夫と呼ばれる常勤的非常勤者であります。これらの人々の大多数が単に
定員法のわく外にあるだけで、その勤務態様も、実際勤続の状況も、他の
職員と区別がありません。而も工事費支弁とな
つておりまするが、実際には工事工程には
関係がない。工事費が純然たる工事
施行の費用であるという建前から言えば、本来
行政部費で賄うべきものであります。然るにこの問題を解決しようとせず、今回更に一万七百八十名に対して、七百七十九名の大量
整理を行わんとしているのは、更に工事費支弁を企らむものではないか。建設大臣の
所信を伺いたいのであります。
次に、農林大臣にお尋ねをいたします。昨年七月、
会計検査院より検第七十二号を以て改善意見が通達されておりまするが、これによ
つても明らかなように、災害復旧工事及び工事費の査定の杜撰或いは現場検査が行届かないため、粗漏工事が見逃がされている事実を挙げております。このことは農地局の
定員を見ても肯定できるのであります。例えば直轄
事業費は二十八年度は九十九億八千四百万円、二十五年度は十六億八千百万円で、約五・九倍にな
つておりまするが、
定員は逆に三分の二に減ぜられております。実際に現地査定に当る者は全国で僅かに四十数名に過ぎません。而も災害箇所は二十八年度七万カ所とありましては、不正工事が跡を絶たないのは当然でございます。農林大臣は、復旧工事の不正を防止するために如何なる具体策を持
つておられるか、承わりたいのであります。
なおこの際、副総理にお伺いしておきたいことは、
恩給法の問題であります。昨年十一月、
人事院から出されました勧告は、過去六年に
亘つて国家公務員法に基いて勧告され、而も慎重に
検討された成果でありまするが、
公務員諸君は、一日千秋の思いを以てその制定を待ち望んでいるのであります。この制定こそは、薄給に痛められた
公務員にと
つて、一方が在職中の生活を保障するものなら、これは退職後の生活のそれであり、
行政能率を高揚する二本の柱とも言うべきものであります。姑息な
待命制度等によ
つて、目前の首切りを策するよりも、
公務員をして安んじて職務に邁進、挺身して
国民に奉仕せしめるためにも、この勧告を一日も早く制定することこそ
政府に課せられた任務であると思うが、一体いつ提案するのか、なぜ遅れているのか明らかにせられたいのであります。
以上の
質問によ
つても明らかなように、
政府は
行政整理に関する限り、未だ成功したためしもなく、而も成功の確信もなくして再び提案をして参りました。そこには空前の大疑獄事件に当面しながら、而も将来に向
つてこれを防止する
機構は、却
つて不用意に減員し、政権維持のための三党修正にあ
つては、病床だけ一千台殖やして、これに対する経常費を忘れ、災害復旧工事に対する不正の防止又然りであります。かくのごとき
行政整理本来の目的を達するにほど遠い提案を以て、
国民大衆の眼を欺かなければならない
政府の苦衷は察するに余りあります。即ち
政府は、
国民にこれ以上の耐乏を強要する
予算案並びに一連の反動立法と共に、この
法律案も又
アメリカ防衛のための再軍備と、
アメリカ一辺倒の外交、
アメリカ本位の貿易政策から不可避に追い詰められた所産であるからであります。
本年一月七日、アイゼンハワー大統領は議会に提出した五五年度
予算案の中で、陸軍費四十億ドル、海軍費八億ドルを減額し、空軍費と原子爆弾に関する
予算を八億二千万ドル増額して、次のように
説明しております。即ち
アメリカは、今後地上兵力は
縮小して海外同盟国の増強に期待し、米国自身は空軍と原水爆の発達による遠距離からの報復的攻撃力の増強に主力を注ぐというのであります。そして一月十四日付ワシントン・ポスト紙は、この間の
事情について、
アメリカは過去において欧州の盟友国に対してデフレ政策を採用し、もつと再軍備を進めることを要求したが、欧州諸国は耳をかさず、手を焼いているので、
吉田内閣の新政策には非常に満足し、
アメリカ外交の主要なる勝利だと報じているのであります。又同じくクリスチヤン・サイエンス・モニター紙は、
日本政府が突如として耐乏
予算を編成することを決意したが、これは米国がアジアにおいて主要な外交上の勝利をしたことを意味し、同時に西太平洋における
アメリカ国防上の
利益に対する
一つの脅威が除去されたことを意味するものであると報じているのであります。いわゆるニユールックと称せられるこの転換した戦術上の要請に基くものが、同盟国たる
日本の地上兵力の増強であり、防衛庁法であり、自衛隊法であります。然るに
吉田内閣は、そのための緊縮
予算であるにかかわらず、
国民の目を蔽いながら、国際収支の悪化に籍口して耐乏生活を強要しているのであります。首相はその施策方針の演説におきまして、耐乏生活とは読んで字のごときものだと突つぱねて
国民の憤激を買い、戦勝国イギリスでさえ耐乏生活を
国民が行
なつたと、さながら当然のごとく無思慮な放言をあえてしております。日収二万一千円の者が総体のたつた一・七%しかない英
国民、食料の価格等も
日本の六割以下、而も税金は月収三万五千円までは無税という場合に、生活の切り詰めを行うことは英
国民ならずとも行い得るのであります。而もチヤーチル首相は、
国民に耐乏生活を要請するに当
つて、社会保障
制度費のごときものは、
国家財政の窮乏にもかかわらず、総額の三五%も計上して
国民の士気を鼓舞し、みずからも率先垂範の態度に出ているのであります。人としての生活どころか、やつとぎりぎりの食うだけの生活をしておる
国民に、みずからの誤まれる政策の尻ぬぐいを押付けながら、最低限度の社会保障に対する
考慮もなく、天引首切りによる失業者の増大に対して何らの具体策を持たず、一方では首相側近者が時価三億円もする首飾りをして、
国民の前にひけらかしたり、(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)或いは又、みずからは
国民の血税の中から、
国民の血の出るような中から交際費を五百万円も二十九年度
予算に増額して、恬として耐乏生活を説くがごときは良識ある為政者のとるべき態度かどうか。無駄はむしろそこにあります。真の
国費の
節約は、勤勉な
公務員を首切ることではなく、その無駄を省くことであります。今や民心を離れた首相の外遊も無駄の
一つであります。
以上、首相の反省を促して私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣緒方竹虎君
登壇、
拍手〕