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1954-02-25 第19回国会 参議院 本会議 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十五日(木曜日)    午後二時四十八分開議     —————————————  議事日程 第十二号   昭和二十九年二月二十五日    午前十時開議  第一 義務教育学校における教育政治的中立確保に関する法律案及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案趣旨説明)(前会の続)  第二 しやし繊維品の課税に関する法律案趣旨説明)(前会の続)     —————————————
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。     —————————————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  この際、お諮りいたします。建設委員長から佐久間ダム建設工事に伴う諸問題に関する実地調査のため、静岡県、愛知県に三浦辰男君、小笠原二三男君、田中一君を明後二十七日より三日間の日程を以て派遣されたい旨の要求書が提出されております。委員長要求通り議員を派遣することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて委員長要求通り議員を派遣することに決しました。      —————・—————
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、義務教育学校における教育政治的中立確保に関する法律案及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案。(趣旨説明、前回の続)  昨日の大達文部大臣趣旨説明に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。吉田萬次君。    〔吉田萬次登壇拍手
  6. 吉田萬次

    吉田萬次君 私は自由党代表して、今回政府から提出されました教育政治的中立に関する法律案について、若干の疑義を質すと同時に、この際教育行政に関し、文部大臣及び公安調査庁長官にその所信を伺いたいと思うのであります。  我が国教育界の現状を考察するとき、慎重且つ確固たる決意を以て解決しなければならない幾つかの重要な課題に当面せざるを得ないのであります。その一つは、教育中立性確保と、その維持に関する問題であります。教育基本法は、政治教育は密接不可分であるとの見地に立ち、特に政治教育について一条を設け、良識ある政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。と規定してあります。教育において、国民政治的教養を高めるために万全の努力を払うことは、教育者の使命でありまするが、併しその際心得ておかなければならないことは、教育者が何らかの特定政党的立場に立つて児童生徒教育し、説得することは厳に戒めなければなりません。教育基本法においても、先ほどの政治的教養の尊重と共に、「法律に定める学校は、特定政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」と規定してあるのであります。このことは抽象的な理論としましては理解できるといたしましても、これを取扱う教師立場においては、その限界をどこにおくかということは極めてむずかしい問題であると思うのであります。政治的教育と申しましても、主体性を持つた大学生と、その途上にあつて教師の言は至上命題として盲従する児童生徒とでは、政治的教育内容においてもおのずから異なるものがあることは当然であります。この認識の上に立つて教育政治の具に供することなく、政治的教養の達成に努力すべきであり、ここに教育中立性と、又学校における政治的教育限界がなければならんと考えるのであります。現代の知識を代表ると目されている矢内原東京大学総長は、数年前ですが、全学連政治活動の逸脱を大学の自主性において解決し、法的措置を待たずして学生の政治活動を常道に復せしめたと言つておるのでありまするが、これは先ほどの大学生生徒児童との批判能力の差を考えられるならば、みずから明瞭であると思うのであります。これをたとえまするに、人間の病気についても、その病原と年齢、体質の強弱等により、投薬又は注射等で漸次回癒へ導く場合と、迫る経過を推測してメスを入れなければならぬ場合があると同じことであります。このたびの立法措置は、今申しましたメスであると同時に、予防的立法としての精神が生かされたときに初めて教育中立性確保されるというべきであろうと思うのであります。然らば、現在までに教育中立性が侵された事例がなかつたかと言えば、遺憾ながらその事実ありと言わざるを得ないのであります。  先ず第一に挙げられるべきは、すでに御承知の問題になつており、先日、この壇上で荒木議員が引例されたと同じ山口教組の編集にかかる小学生日記指導欄でありますが、その中の一節に「人民は働く者の国北鮮が良いと考えていたのですが、南鮮李承晩はこれに反対し、アメリカの助けをうけて何度も北鮮を攻めましたが、いつも打破られました。一九五〇年六月二十五日北鮮は攻めて来た南鮮深く攻め込みました。これが朝鮮戦争のはじまりです。これがもとになつてアメリカ中心とする国連軍は、南鮮をたすけ、中共北鮮をたすけて大がかりな戦争になつてしまいました。」この一節は、直接には南鮮侵略者であることを教え、延いては南鮮を助けるアメリカ侵略者だと断じているのであります。又「再軍備と戸締り」の一節では、ソ連泥棒に来ないが、アメリカは現に泥棒をしている。即ちソ連平和主義者であるが、アメリカ戦争挑発者であることを暗に生徒に意識させようとしている政治意図がはつきり窺えるのであります。更に「ソ連はどんな国か」の一節では、共産主義讃美の線を打出しております。この政治的に無垢であり、白紙である児童生徒に与える恐るべき影響は、次の児童作文集に端的に表現されています。その一例として、「原爆の子の映画を外国へどしどし送り、世界人々に、アメリカがどんなことをしたか見てもらいたい、ソ連人たちはもう戦争はいやだと言つているのに、アメリカ人たちは、まだ水素爆弾なんかを作つている。日本人の中には、何でもソ連が悪いと言う人があるけれども、アメリカのほうが悪いように思えます。」、これはほんの一例でありますが、その作文集を見ますと、男子二十六名中十四名、五四%、女子二十三名中十八名、七八%がソ連礼讃を率直に綴つているのであります。日頃、教師が何を教えているかがこの作文集を一読しても窺えるのであります。  義務教育は、国があらゆる家庭のかけがえのない大事な子供義務として学校に収容しているのであります。国が義務として預かつている学校で、このような教育が行われているのを私たちは到底看過することはできません。(「山口県に行つたことがあるか」と呼ぶ者あり)このような事例は、青森県、京都府、滋賀県、和歌山県、北海道等においてもはつきり指摘し得るのであります。これら一連の教育における政治的偏向は偶然の出来事ではないということであります。これは一貫した計画性指導性の上に築かれた日教組運動方針によつて打出されたものであります。以下具体的実例によつてその論拠を実証しましよう。(「質問をしろ」と呼ぶ者あり)  第一は、昭和二十八年八月七日、八日に亘つて行われた日教組第二十四回中央委員会決定事項であります。その「具体的闘争の展開」の中における「平和闘争」という所で、「平和教育は単に口先の説教的なものでなく、子供生活行動を通じた中に浸透させること」、更に「教科課程教育課程学校行事の中に、具体的な平和教材を組入れ、子供行動の中で消化され、子供生活を通じて宣伝され、浸透されて行くよう配慮する。」とあります。私は、ここで平和ということについて、真の平和を切に願う故に、日教組の言う平和闘争なるものを究明したいのであります。(「憲法に何と書いてあると呼ぶ者あり)平和運動と言えば、勿論平和を守ることが究極の目的であることは論を待たないところであります。ただ如何に平和を守るかということで人々意見は分れて来るのであります。従つて一つ方式による平和実現を飽くまで主張しようとすれば、それと反対平和方式を強力に排除しなければならないのであります。日教組平和運動がこれであり、平和四原則にいう平和が絶対で、それ以外の平和論はすべて誤れるものなりとする前提に立つているのであります。  次に、この平和論の骨格をなすものが親ソ反米平和論であることは、昭和二十八年六月宇治山田市における日教組第十回定期大会質疑応答に明らかであります。即ち徳島県代表平和勢力とは何か」日教組今村委員長平和勢力とは、アメリカ独占資本中心とした戦争勢力としての国際独占資本に対立的な立場にあるものをいう」大阪府代表モスクワ経済会議北京平和会議など、平和勢力の増大を意味すると考えるがどうか」。今村委員長「平和を求めるための会議であると考える」又その運動方針書一般情勢では、「アメリカ中心とする国際独占資本世界の至るところで戦争計画を仕組んで来た」と述べており、この運動方針書全体を通じて言えることは、アメリカ側に対する批判は厳しいが、ソ連中共に対する批判は殆んどなされていないどころか、むしろ礼讃的であるとさえ言えるのであります。一方的平和論と目されるゆえんのものは、実にこの方針書に明らかであります。  かかる事態を防止すべく今回政府がこの法律案を提出せられたのでありまするが、ときすでに遅き感があり、現在までの問題が等閑視せられておつたということは、むしろ難ずべきものであると思うのであります。それは日教組内に容共分子が増加し、今日共産党にくみし、或いはこれに同調するところの者が数百名、否その数倍を数えるやに聞き及んでいるからであります。その活動状態はどうなつておるか。これに対して公安調査庁長官のはつきりした御答弁要求いたします。アメリカは勿論のこと、イギリス、フランス、西ドイツ等においても、政治活動制限又は禁止規定が設けられております。仮にソ連において教員日本のように軍備反対ということを言つたら、日教組の諸君の言つておるように軍備反対ということを言つたならば、ソ連においては、恐らくシベリアへ流されるか、或いは銃殺せられるだろうと思うのであります。(「そんなことを言うと笑われるぞ」と呼ぶ者あり)  さて、かかる予防的立法は、予防せんとする事態を規制するに十分な内容を有し、且つそれ以上に出ないことが肝要でありまして、これによつて教育の自由な活動を阻害し、教育萎靡沈滞を来たす等、いわゆる角をためて牛を殺すの弊は厳に避くべきことと思うのであります。これについて、以下法案内容その他において、若干政府所信を質し、疑義の解明を求めたいと思います。  その一、政府がこの立法を決意するに至つた経過について承わりたいと思います。公立学校教員政治的活動の規制については、現在教育基本法地方公務員法公職選挙法等によつて規制されており、都道府県教育委員会地方教育委員会の強力な指導監督がなされるならば、教育基本法に示された教育中立性確保し得るのではないか。特にこのような立法が必要になつた理由は何か、その真意を承わりたい。  その二、法案内容についてでありまするが、教育公務員特例法の一部を改正する法律案は、地方公務員政治的活動制限について現行地方公務員法規定の適用を排除して、国家公務見の例によるものとしているのであります。この結果、現行法との最も大きな差異は、教員政治活動について地概的制限がなくなり、全国的範囲において規制されることになりまするが、現行地方公務員法は、地方公務員たる教員特殊性に着目し、当該地方公団体以外の地域においては、一般市民としての政治的活動を認めようとするものであるが、今回これを撤廃する理由は何かを承わりたい。  なお、この政治的活動制限規定違反者に対しては、刑罰を以て臨んでいるが、教員特殊性に鑑み、懲戒、解職等行政処分で所期の目的を達成することができないものかどうかを承わりたい。  その三、義務教育学校における教育政治的中立性確保に関する法律案について伺いたい。この法律案の内省は、言論、表現の自由という見地からすると、重大な問題であり、特にかかる立法を必要とする理由について具体的な例を挙げて説明されたい。又このような必要があるとすれば、教職員団体を通じてなした場合のみを取締るのは不徹底のそしりを免れないと思うが、これに関する所見を承わりたい。  その四、最後にこの法律案については、巷間種々論議が行われている。即ち再軍備の一環であるとか、(「その通りだよ」と呼ぶ者あり)教育中央集権化であるとか、或いは警察権学校に介入し、教育警察に支配されるとかの懸念がないか、これに対する所見を承わりたい。(「新聞を読め」と呼ぶ者あり)  併せて最近日教組がこの法案を阻止するがための政治闘争資金として、組合員より三百円ずつ徴収している事実がある。日教組五十万の組合員の三百円カンパ、(「羨しいか」と呼ぶ者あり)総額において実に一億五千万円の巨額となるのであります。かかる事実を文部当局はどう眺めているか、その所見を承わりたい。  質疑を終えるに際し、政府に望むことは、かかる予防法案が不必要となるべく、教育中立性を確立し、以て国民の要望に応えるよう特に希望いたしまして、私の質疑を終ります。(拍手)    〔国務大臣大達茂雄登壇拍手
  7. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 第一のお尋ねは、「この法律を立案するに至つた理由。」こういうことであります。これは先ほど御指摘になりましたように、今日非常に偏つた教育が各地方において行われておると認められるのであります。(拍手)かかる状態は到底これを放置すべきものではありません。而もこれが日教組の計画的な指導者によつて行われておると認められるのであります。でありますからして、今においてこの教育中立性を維持する法律を成立させるということは絶対に必要である、かように考えたからであります。  次には、「地方公務員たる教職員、これの政治的活動制限を一地域に限らず全国的に制限をする、即ち国家公務員並みにしたということはどういう理由に基くか。」こういうお尋ねであります。これは教育というものの性質上、一地域に限るべき筋合のものではないのでありまして、その公務たる教育の特殊の性格に鑑みまして、国家公務員並みにこれを規制することを適当と認めたからであります。  なお、今日地方教職員日教組指導の下に選挙活動その他活溌な政治運動をしておることは、これは周知の事実であります。かくのごとき教職員政治に没頭し、政争に狂奔するようなことは、延いて教育の面における中立性を破壊するところの慮れがある、かように考えたからであります。  第三番目は、この法律が、「教職員団体を通じて行われる。つまり教職員団体組織又は活動を利用する場合に限定せられておるのであるが、これでは不十分ではないか」というのであります。成るほど如何なる方法を以てしても学校に対して偏つた教育を扇動するということは好ましいことではありません。併しながら、今日の実情におきましては、先ほど御指摘になりましたように、この教職員団体たる日教組活動、若しくはその組織を通じて行われるところの教唆扇動というものが、事実上我が国教職員に非常な不当な影響力を与えつつあるというのが実情であります。でありますからして、この実情に鑑みまして、(「不当なのはあなたがただよ」と呼ぶ者あり)いやしくも行き過ぎに亘ることを避ける意味におきまして、必要の限度を超えざる配慮に基きまして、教職員団体活動又はその組織を通じて行われる教唆扇動のみにこれを限定したのであります。最後に、この立法が再軍備のための準備であるとか、或いは又親米化であるとか、或いは又警察による圧力を教育の上に加えるためであるとか、いろいろの宣伝があることはこれは御指摘通りであります。これは何らの合理的な根拠のない宣伝でありまして、こじつけにあらずんば言いがかりであります。(拍手)    〔政府委員藤井一郎登壇拍手
  8. 藤井五一郎

    政府委員藤井一郎君) 日本共産党としては、単に日教組のみにとどまらず、各大衆団体内に党員を配置し、(「当り前じやないか」と呼ぶ者あり)更に同調者をも糾合して統一委員会を結成し、そのいわゆるグループ活動によつて大衆団体内における党の勢力を発展さし、(「当り前じやないか」「自由党もそうでしよう」と呼ぶ者あり)順次党の指導によつてこれら大衆団体を動かす方針をとつているのであります。日教組内の共産党員は、昭和二十四年初め頃正式党員三百余名と称せられたのでありますが、同年の行政整理によつて一時殆んど一掃の観を呈しました。その後日共は、レツド・パージの党員残存分子を以て統一委員会組織し、活溌な活動を展開し、漸次組合内に勢力を回復して、いわゆるグループ活動を展開し、中央を初め各級機関グループ指導部を設置してその指導に当つている模様であります。現に日教組中央グループ指導機関紙として「教育戦線」を、(「資料を出しなさい」と呼ぶ者あり)グループ中心とする統一委員会向け機関紙として「教育労働者」を発行しているものと認められるのであります。その勢力は、昭和二十四年初めにほぼ匹敵するものと思われるのであります。日教組中央グループ指導部は昨年十二月「教育労働者当面の要求」と題する通達を下部に流し、我々は全国的に配置され、教師という国民大衆と密着する職業であるから、労農接着点として全力を挙げて国民の団結、なかんずく労農同盟を打ち立てなければならないとし、当面の要求十四項目を掲げ、共産党方針をその中に打ち出しているのでありますが、なかんずくその中で学校自主管理指導しており、これらの方針はすでにその前、一昨年下期以降しばしば同様の方針を打ち出しているのであつて、特にこの学校自主管理教師たるの地位を利用し、教壇の上から生徒児童に対して党の方針宣伝するものである。(「何を言つておるんだ」「その通り」と呼ぶ者あり)山口教組編纂小学生日記中学生日記等は、(「又持ち出すのか」と呼ぶ者あり)かかる党の方針影響一つであるとも考えられます。(「何を言つてるんだ」と呼ぶ者あり)かかる共産党指導方針は、かかる共産党方針社会民主主義政党方針と全く異なり常に物理的実力を以て裏付けられているものであります。(拍手)    〔小笠原二三男発言の許可を求む〕
  9. 河井彌八

    議長河井彌八君) 小笠原二三男君。
  10. 小笠原二三男

    小笠原二三男議事進行について。  只今の現在の時刻は何時何分でございましようか。次の質疑者の時間を我々推し計るのに根拠となる場内の時計はとまつております。従つて私はそもそも何を根拠にして時刻を計つてつたらいいかわからんので、議長のお取扱いをお伺いいたします。(「時計を持つておらんのか」と呼ぶ者あり)
  11. 河井彌八

    議長河井彌八君) 小笠原君にお答えいたします。只今この議場にあります時計がとまつたのであります。併しながら正確な時刻はここにはつきりしております。只今三時二十一分五十秒になります。従いまして、議事は進行いたします。     —————————————
  12. 河井彌八

    議長河井彌八君) 高橋道男君。    〔高橋道男登壇拍手
  13. 高橋道男

    高橋道男君 私は只今上程されておりまする教育関係法案につきまして、主として主管大臣から、要点につきましては緒方副総理から御答弁を願いたいと思います。文部大臣は今回提案前提として中央教育審議会諮問し、数次に亘る論議の結果、多数決による答申を得ておられるのであります。併し委員の中には、立法措置が明らかにされたのち、再審議するということを理由にして、賛成をされなかつたかたもあるかに伝えられるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)大臣は如何なる諮問を如何なる方法によつていたされたか、これを先ず伺いたいのであります。中央教育審議会答申が、閣議において文部司法両省意見が対立したため、急速な結論を得ることができずに、結局は両省意見が調整されて本栗に到達したと聞くのであります。ところが本法案中教審答申趣旨を著しく変更している点があるのではないかという問題があるのでございます。(拍手)最近の新聞の伝えるところによりますれば、最近開かれた中教審会議におきまして、本法案答申の線を逸脱しておるということから、文部省意見の申入れをいたしたいというようなことが伝えられておるのでありまするが、果してそういう事実があるのかどうか、これを伺いたいのでございます。大臣は成るほど中教審答申そのままに強い拘束を受けなくてよいかも知れませんが、若し中教審答申趣旨から非常に逸脱した法案作つたとするならば、教育行政大臣最高諮問機関である中教審をひどく軽視することになり、延いては中教審に対する不信行為となるのではないかということを虞れるのであります。次に、教育基本法初め、関係現行法が十分に使われておるならば、新立法の必要はないという議論が一部識者間に行われていることは御存じの通りであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)例えば教育基本法第八条第二項のように、政治的行為制限した法律があるのだから、殊に最近におきましては、教職員間でも追々自粛自省の態勢になつて来ているのであるから、今回のごとき提案の必要はないというような議論があるのでありまするが、この点大臣はどう思われるか。今回の提案を必要とされたことにつきましては、只今吉田議員に対してのお答えはございましたけれども、現行法だけで不十分とする理由を、なお具体例についてお答えを願いたいと思うのであります。  教育基本法はいわば倫理規定とも称すべきものであります。単なる法律ではございません。それだけにその趣旨を敷衍し、普及することが必要だと私は思うのでありまするが、政府はこれに関してどれだけのことを今までなされたか。而して現在、屋上屋だと批判されるがごとき法案を提出しなければならないというのは、今申した通り政府において教育基本法に基く啓蒙に努力が足りなかつた責任があるのではないかということを思うのであります。次に、今回の教育公務員特例法の一部改正法律案によりますれば、公立学校教育公務員は、国立学校教育公務員と同様の政治的行為制限に服することになり、教育公務員立場といたしましては、同じ立脚点を与えられることになると思われまするが、一方一般地方公務員には、なお地方公務員法第三十六条第二項但書によつて、区域的に政治的行為をする特例を認められておりまするのに、同じく地方公務員でありながら、この特例を認められない、いわば既得の権限を縮小するようになるということは、理論上矛盾いたし、又実際上不公平になるのではないかと思うのでございます。元来、今回の特例法改正による公立学校教育公務員政治的行為を、改めて制限する理由が、教育政治的中立性を維持するためのものであるとするならば、その点を明確にした制限規定だけを特例法の中に設ければよいのであつて、本法案のごとく、「国家公務員の例による」などという極めて漠然としたような感じの規定によつて、広汎な政治的行為制限に関する人事院規則の枠の中にはめ込み、ぬえ的な国家公務員として取扱う必要はないのではないか。こう思うのでございまするが、その点の御所見を伺いたい。次に、今回の改正法案は、学問の自由或いは研究の自由を妨げるという批評がございます。而して改正されたあとにおきましては、現在の公立学校教職員国立学校教職員の例によつて取扱われるのでございます。ところが従来国立学校教職員国家公務員として国家公務員法第百二条の規定が適用され、その政治的行為に相当の制限を受けて来ておつたのでございまするが、そのために学問の自由、研究の自由が制約されたという事実がありますかどうか、又これに対する不平不満文部省は聞いておられるかどうかということをお伺いいたしたいのであります。  又義務教育学校の中には国立のものが従来ございます。その教職員は当然国家公務員でございまするから、国家公務員としての制約を受け、従つて地方教育公務員である一般義務教育学校教職員に比べますれば、政治的行為においてより多くの制限をすでに受けておつたはずでございまするが、それなるが故に、教育上著しい障害があるというような抗議を文部省は受けたことがあるかどうかということを伺つておきます。(「質問の要点が外れておりはせんか」と呼ぶ者あり)  次に、義務教育学校における教育政治的中立確保に関する法律案につきましては、相当に関心が深いと思いまするので、若干細かくなりまするけれども、例を挙げてお尋ねいたしたいのでございます。その第三条におきましては、改めて申すまでもなく、或る人が特定政党又は政治団体を支持又は反対する目的を以て、教職員の構成する団体又はその団体の連合体を通じて、義務教育学校教職員が、児童生徒特定政党等を支持又は反対させる教育をするよう教唆扇動してはいけないと記してございます。然らば、この或る人が団体を通じないで、教職員直接に教育効果に影響を与えるような活動をした場合、これはこの法の問うところであるかどうかということを伺いたいのであります。次に、甲という学者が、一般の雑誌、例えば中央公論とか文芸春秋とかいう雑誌に、自分の所論又は学説研究を発表したといたします。そしてこの所論が甲という学者とは関係連絡なしに、或る教職員団体に利用され、その結果として義務教育学校教職員教育活動影響して、児童生徒に対し特定政党を支持するよう教育をした場合、たまたまその学者甲の所論が一政党の主張と類似しておつた場合、学者甲は本法に違反するものであると見なされる虞れはないかどうか。私は、戦争中又は戦争以前、この種のでつち上げ事件が行われたことをよく知つておるのでありまするが、その心配は改めてする必要はないか。これを心配するのであります。  次に、或る教職員団体の会合で特定政党を支持する決議をした場合、その決議の中に「特定政党を支持するよう教育すべし」、こう記されたならば、教唆扇動の事件に問われると思うのでありまするけれども、単に特定政党の支持だけにとどまるというような内容の場合なら問題は生じないと思うのでございまするが、如何でございましようか。次に、第三条第二項の「特定政党等を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育を含むものとする」とありまするのは、私にとつては極めて難渋の文章だと思うのであります。(「その通り」「何回読んでも難解だ」「誰にもわかりません」と呼ぶ者あり)私のような血のめぐりの悪い者には一回や二回読んでもわからない文章だと思うのであります。この「反対するに至らしめるに足りる」ということは、如何なる段階、如何なる理由でその判断をすることができるか。これこそ仮定のでつち上げによつて取締の対象とされる虞れはないか。政府は一体どんなことを対象としてお考えになつているのか。或いは山口県の小学生日記のような場合を脳中に描いていられるのではないかと察せられるのでありまするが、具体的な例示を以てお答えを願いたいと思うのでございます。  次に、違反行為容疑のある場合、警察官が直ちに問題に当らないことは法の建前として当然だと思います。即ち「国立義務教育学校にあつては、その学校の所属する大学の学長」が、又「公立の義務教育学校にあつては、その学校を設立しておる地方公共団体教育委員会」が、又「私立学校にあつてはその学校を所轄しておる都道府県知事」が請求をして、初めて問題にされるわけでございまするが、そのうち特に地方教育委員会が問題じやないかと思うのであります。地方教育委員会は、委員の数においては五人という、これは画一的なものでありまするけれども、その内容は極めて千差万別でございます。そういう委員会におきまして違反行為容疑が起つた場合に、全国的に同一の基準においてこれに対することができるかどうか。同じ案件につきまして、或る地方では全然問題はなかつた、別の地方ではそれが問題にされるというようなことがありはしまいか。こういうようなことが起りますると、却つて教育政治的中立が乱されてしまうようなことがあると思うのでありまするが、その点、大臣は如何にお考えになるのであるか。次に、高等学校をこの法案から何故に除外をなさつたか。成るほど義務教育学校児童生徒というものは勿論極めて未熟でありまするから、先生の言うなりに考えて行うと思うのであります。これに比べますれば、高等学校生徒は一応成長はしておりまするけれども、判断力も勿論大分できて棄ておりまするけれども、なお成人の途上にあるものでございまして、或る意味においては極めて感受性の強い年代でありまするが故に、却つて先生の影響を受け易いということも言えると思うのであります。従つて教員特定政党等を支持又は反対する教育を行う場合、却つてつた観念を植え付けられる虞れがあるのではないかと思うのでありまするが、高等学校を除外した理由をお示し願いたいと思います。  次に、最近、教育の自由という言葉が使われておるのを耳にするのでございますが、この使い方が果して妥当たるものかどうかということをお伺いいたしたい。新憲法が公布されてから以後、自由主義の思想が普及して参りましたことは結構でございます。併しながらいろいろな点で行き過ぎのあることも認めなければならんと思うのであります。憲法におきましては、思想の自由、学問の自由、信教の自由或いは言論出版の自由など、いろいろ記されております。併し教育につきましては、教育を受ける権利と記されておりまするけれども、教育を施す自由という言葉はどこにも現われておりません。言うまでもなく思想や学問は個人の精神内容をみずから形作るものでございますから、その点において個人の自由が認められなければならんことは当然であります。併しながら、教育は、これを受ける相手があり、その相手に強制することはこれは相手の自由を拘束することになるのでありますから、教育を勝手放題に行うということには相当遠慮すべき点があると思われるのであります。むろん学問や思想ということは、教育者の考え方或いは行い方をパツクしておる重要な要素であります。併しながら学問や思想というのはそのまま教育にはならんと思うのであります。勿論、最高学府である大学におきましては、大学の自治ということもございまするし、学問研究の自由という問題もありまして、その傷心におきましては、学問がそのまま教育となり、思想がそのまま教育に移されることは、これはあると思うのでありまするけれども、一般的な考え方として、学問イコール教育、思想イコール教育ということにはならんじやないと思うのであります。併し極めて内容的に近い関係を持つておりまするが、学問や思想が自由であるからと言つて教育も又自由であるという結論にはどうも達しないように考えるのでありまするが、ややともすると、そういう教育も自由だというような考え方があるような点も私どもは、感ずるのでありまするが、その点、大臣の御所見を伺つておきたいのであります。  次に、この際、教育基本法第八条に関連いたしまして、第九条の宗教教育について御所見を承わつておきたいのでございます。憲法第二十条におきまして、信教の自由が保障されていると同時に、国及びその機関が宗教教育を禁止する意味の条文がございまするが、これは教育基本法第九条によつて明らかな通り特定の宗教のための教育のみを禁止する趣旨でございます。而してこの第九条に宗教教育が謳われていることは、教育基本法の前文とも相待つて、人類文化の基本的一翼として宗教そのものが教育上大いに尊重されなければならんと示しておるのでございます。在日五十年、その間、教育に尽瘁して、最近勲章を贈与されたフランス人ジヤン・パチスト・ガシイ翁は、「すべての教育には基本精神が必要で、キリスト教でもよい、仏教でもよい、宗教的精神を基本とするのが一番よいと思う。そうすれば中立化だの何だのと騒がなくともすみますよ。」こう言つておるのであります。又中央教育審議会の亀山会長も或る雑誌に、国民道義を涵養するには教育の力では十分目的を達しない。宗教の力によるのでなければできないと、こう思つておりますということを記しておられるのでございます。然るに政府並びに一般教育界には、ややともすると憲法の条文が過度に誤解される傾向にあり、宗教を軽視するのみならず、宗教を教育から敬遠する風潮さえ作つておるのでございまして、誠に遺憾と申したいのでございます。政治教育には今日まで寛大であり過ぎたがために、政府をして今日憂慮すべき状態に至らしめ、半面宗教教育には無関心であり過ぎたがために、道義の高揚が薄れるような現状になつておるのじやないかと思うのであります。政府はこの際この第九条を死文化させることなく、曾つては衆議院において宗教情操教育をすべしというような決議さえあつたように伺うのでありますが、この宗教教育に関する方策というものを樹立し、それぞれの機関に勧告する意思はないかどうか、これを伺いたいのでございます。我々は現在並びに将来に向つて国民道義をしつかりと打立てなければならんときに立つておると思うのであります。この際あれも禁止、これも禁止、あれはいかん、これはいかんというようなことで国民の手足を押えるような印象を与えるやり方は極めてまずいと思います。その意味においても教育は誠に大切なものでございます。ここに私は宗教教育の問題を特に捉えたのでありまするが、宗教教育に限らず、教育の根本原則である教育基本法の各条章の趣旨を検討し、鮮明に敷衍し、これを積極的に生かして社会を啓蒙することが、やがては国民道義を明るく打立てることになり、先刻申した政府の責任を果すことにもなると思うのでありまするが、この点に関しましては、特に緒方副総理よりの政府の確固たる所信、若し御抱負があるならば、それも併せてお尋ねいたしたいと思うのでございます。  以上私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  14. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします前に、お断わりを申上げます。が、総理大臣が過日来病気で大磯に引籠つておりまして、一昨日東京に出て参つたのでありまするが、なお静養を要しまするので、私が内閣を代表して総理に代つて答弁を申上げます。  只今の御質問の中に、閣議において文部、法務両大臣意見が対立してその結果、中教審答申と非常に離れた法案になつたというような御意見がありましたが、そういう事実はございません。政府は現在の文部当局の考え方及びその考え方に基いて立案されました本法案に対しまして、全幅の支持をしておるものであることを念のために申上げておきます。  次に、特に私にお尋ねになりましたのは、「宗教教育教育の上に活用さるべきであると思う。どう思うか」という御質問でありましたが、国及び地方公共団体が設置する学校特定の宗教のための偏つた宗教教育はできないことになつておりまするが、一般に宗教に関する知識や情操が教育の上に必要なことは申すまでもないのでございます。そこで政府といたしましては、教育基本法の枠内で十分宗教より生ずる情操を尊重して参るつもりでございます。教育はどこまでも関連に行われなければなりませんが、同時に教育基本法に基きまして、その政治的中立性というものは維持して参りたい。これが政府の信念でございます。(拍手)    〔国務大臣大達茂雄登壇拍手
  15. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) お答えいたします。  初めのこの中教審に対する諮問のじとでありますが、これは中教審のできました当時からの仕来たりといたしまして、特別に諮問をいたしませんて、重要な問題と考えることにつきまして、中教審自身として問題を取上げて審議をして参つております。今日の場合でもやはりさようなことでありまして、特にこの問題に関して中教審のほうに諮問を発したという経過にはなつておりません。それから中教審のこの答申は、御存じの通り適当な措置をとつてもらいたい。とることを適当と認める。こういうことでありまして、従つて逸脱とかいうようなことはないのであります。逸脱したことについての中教審からの申入というようなことはありません。  それからその次に、「世間で教育基本法ということで八条の規定があるのであるから、これで足りるではないか、この法律を作るということは屋上屋を架するものであつて、むしろ自粛自戒ということに待つべきではないという論があるが、それに対してどう思うか」こういうことであります。基本法の規定は、御承知のように、これは教育の精神と言いますか、方針を書いたものでありまして、これが如何にしてこの方針が維持せられ、如何にしてその原則が活用せられるかということにつきましては、それぞれの各個の法令によつて規定せらるべきもので、基本法自身ではただ方針が示されておる。こういうふうになつておると思うのであります。従つてこの方針がありましても、これが現実に守られておらん、或いはその原則が破壊されておるということがあれば、どうしてもこれを維持するところの立法が必要になつて来ることは当然であります。今日自粛自戒に待つというようなことも、これは考えられましようが、併し今日の事態は、さような悠長なことをしてこれを待つておるというような事態ではないと私は考えておるのであります。  それからその次に、「国立学校職員はいわゆる国家公務員としての政治制限を受けておるのであるが、そのために学問の自由が侵害せられておるとか、或いは言論の自由が圧迫せられておるとか、こういう意味の訴えがあつたか、抗議があつたか、或いは又国立学校の附属学校の先生方から非常に困るという訴えがあつたか」ということでありますが、これは古いことは存じませんが、恐らくこの国家公務員法ができて以来、一度もさような訴えがしあつたとは思われません。  それから次に、単独立法の解釈についてでありますが、御指摘になりました団体を通じない場合、それから学者が雑誌等に寄稿をした論文が自然に学校教育に作用を起した場合、それから教育特定政党を支持するという決議をした場合、これはいずれもこの単独立法には抵触をしない場合であると存じます。  それからなおこの解釈について、「特定政党を支持し、又は反対するに至らしめるに足りる教育、」「この第二項の規定についてどう解釈すべきか」というお尋ねであります。私どもは、これは特定政党の意識というものを直ちに児童の頭に映すということでなくとも、特定政党を支持、又は支持させるように、自然の成り行きでそうならざるを得ないような必然的な結果を予想し得る教育、こういうものを含むということを考えておるのであります。  それから次に、高等学校を除外したのはどういうわけか。これは成るほどお説のような考え方も成り立つと思いますが、特に義務教育学校というものが、非常に教育の基本として重大であり、殊にまだいとけない児童等を対象としておるのでありますから、この法律が少しでも行き過ぎにならないために、特に重点として義務教育学校を対象としたわけであります。  その次には、教育の自由ということと関連して、学問、思想については自由ということが尊重せられなければならん、これは憲法にも規定してある、教育の自由についてはどうであるか。こういうお尋ねでありましたが、学問、思想の自由は勿論、これは尊重せらるべきことは当然であります。ただ教育については、これは相手があるのであります。ただ学問研究し、ただ自分がものを考えると、こういうことではないのであつて教育というものは相手があるのでありますから、その教育を自分勝手にほしいままに、何でもやつていいという、こういうことにはならないことは当然であります。勿論憲法にさような規定があるわけではありません。私は、現に教育基本法第八条第二項に、こういう教育をしてはならないということを規定してある。そういう法律の精神に基いて、その枠の中で、先生が自分の良心に訴え、責任を持つた教育を行う。こういう限度における教育の自由ということを考えておりますが、ここに今日言われますように、何でもかでも一切かまわん。こういう放恣な教育というものはあるべきものではないと考えております。    〔高橋道男発言の許可を求む〕
  16. 河井彌八

    議長河井彌八君) 高橋道男君。
  17. 高橋道男

    高橋道男君 私の質問中に……。(「登壇々々」と呼ぶ者あり)
  18. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御登壇願います。    〔高橋道男登壇
  19. 高橋道男

    高橋道男君 只今の私の質問中に、宗教教育と相並んで教育基本法の条章の趣旨を敷衍、徹底したらどうかと、そういうことによつて国民道義の高揚が期せられるのではないかということにつきまして、一応の御答弁は副総理からございましたが、主管大臣としての文部大臣お答えも十分伺いたいと思いますので、その点について再質問をいたします。    〔国務大臣大達茂雄登壇拍手
  20. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) お答えをいたします。  宗教教育と申しますか、宗教的情操が涵養されることが教育上極めて重大であることは、これは基本法にも規定があるのであります。現に世界の各国において、この宗教というものが、そのそれぞれの国の道義的精神の基調をなしているということは、殆んど例外なく考えられるのでありまして、その意味から申しましても、この宗教教育は非常に重大なものであると私は思います。ただ基本法に規定してありますことは、国立学校或いは公立学校においては特定の宗教に偏つて教えることはいけないと、こういうことになつております。これは非常に、まあそういうふうになつておりますから、国立学校公立学校においては特定宗教の教義等を教えることは、これはとめられているのであります。これらの点につきましては、私は私立学校の任務と申しますか、その教育上に持つている責務というものは非常に重大である。かように考えているのであります。     —————————————
  21. 河井彌八

    議長河井彌八君) 荒木正三郎君。    〔荒木正三郎君登壇拍手
  22. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 私は先に施政方針に対する一般質問の際にも述べたのでありますが、警察法の改正に関する問題と、今回提案されました教員政治活動制限する法案は、吉田内閣の反動性を最も露骨に表わしているものであつて、我々は民主主義に対する挑戦であると考えざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)  申すまでもなく政治活動の自由は、日本国憲法がすべての国民に保障するところでありまして、侵すことのできない、永久の権利として認められているのであります。このことは公務員に対しても、一般市民としての公民権は当然憲法の保障するところであると申さなければなりません。    〔議長退席、副議長着席〕 先に国家公務員法が制定せられ、国家公務員に対して団体交渉権を奪うと共に、政治活動については全面的に禁止するような措置をとり、而もこれに違反した者については三年以下の懲役或いは十万円以下の罰金に処するという苛酷な規定を設けたのであります。当時憲法学者は勿論、一般有識者は、憲法違反であると主張したのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)議会政治をとつている国において、政治的な所信に基く言動が体刑を以て処断されるということは、吾人の到底考え得られないところであります。(拍手)或いは占領治下にあつた日本としてはやむを得ないところであると言うかも知れないのでありますが、これこそ占領政策是正の第一に挙ぐべき問題であると信ずるのであります。(拍手)然るに吉田内閣は、逆にこの悪法の適用範囲を拡大して、地方公務員である教員に対してもこれを推し拡げようとしているのであります。民主主義に対する挑戦であると申すほかはないのであります。  私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、只今提案になつている法案について順次質疑をいたしたいと存ずるのであります。  先ず第一は、文教行政が曾つての内務官僚出身によつて牛耳られていることについて、首相の見解をお尋ねしたいと思うのであります。(拍手)大達文相を初め次官、局長、課長等の重要な地位は内務官僚の出身者、或いは特高系統によつて占められているのであります。私は個人を非難する考えはありませんが、日本の過去の教育が誤りを犯した一つの大きな原因は、官僚独善と中央集権的な教育統制がここに行われたからであります。然るに今日の文部行政がこの過ちを再び犯しつつあることは、我々のしばしば指摘したところであります。(拍手)昨年十二月二十三日付緒方局長名を以て教育長宛に出された通牒及び本年の二月一日付を以て全国地方教育委員会連絡協議会長風巻義雄名で流された文書等は、このことを如実に物語つているものでありすす。(拍手)又、大達文部大臣は、地教委を育成してこれによつて教員を監視せしめると言つているのであります。かくのごときは日本教育を誤るも甚だしいと言わなければなりません。(拍手)私は文部大臣の地位が政党人によつて占められることに反対するものではありませんが、内務官僚出身によつて独善的教育行政が行われることは黙視し得ないのであります。  第二は、この法案に対する世論の動向及び世界的な反響について、如何に首相は判断しておられるかということであります。この法案は立案過程において厳重な秘密主義がとられて外部とは完全に遮断されておつたのでありますが、政府の意図に対して世論は重大な関心を示し、政府の行き過ぎに警告を発しておつたことは否定することのできない事実であると思うのであります。又、諸外国における反響についてみましても外電は「最近の日本政治的動向のうちで教員政治活動制限法案警察改正法案ほど大きな関心を寄せられたものはない。」と報じているのであります。そして日本政府の行き過ぎに批判的な態度をとつているのであります。殊に国際自由労連及び世界教員組合連合からも吉田首相宛に強い抗議文が寄せられでいるのであります。(拍手)現に国際自由労連公務員組合書記長ボーレー氏はこの問題のためにわざわざ日本を訪れて、関係当局にこの法案の撤回を求めているのであります。これらは日本の民主主義が後退することを恐れると共に、延いては世界の民主主義に脅威を与えるものであるとの認識の下にこの法案反対をしておるのであります。(拍手)この法案の成立を強行することは世界における日本の地位に悪い影響を与えるものであると思うのでありまするが、首相の見解を伺いたいのであります。  なおこの際特にお尋ねをいたしたい点は、自由党の党報を学校を通じてPTAに配付した問題であります。私どもの調査によりますと、露骨なる反日教組宣伝に埋められた、例えば「危い!あなたの子供日教組の無差別爆撃計画」(笑声)こういうふうな見出しの下に、反日教組宣伝に埋められた自由党宣伝文書が(「気違い沙汰だ」と呼ぶ者あり)全国的に一学校に五十枚宛配付されておるのであります。送り先は学校長で宛名はPTAになつているのであります。これは明らかに学校の手を通じてPTAに自由党宣伝文書を配付せんとしたことは明らかであります。かかることは許さるべきことでないと考えるのであります。(「教育基本法違反だ」と呼ぶ者あり)若しかかることが許されるとすれば、今後あらゆる団体においてかかる手段がとられるであろうということを附言して、自由党総裁である首相の答弁を求めたいのであります。(拍手、「違反第一号」と呼ぶ者あり)  次に文部大臣お尋ねいたしますが、政府教育政治的中立性に名をかりで、地方公務員である教員国家公務員法の百二条を適用し、教員政治活動を全面的に制限しようとしているのでありますが、教育基本法第八条は法律に定める学校は、特定政党を支持したり、或いはこれに反対するための政治教育その他の政治活動をしてはならないと規定して、明らかに学校教育に限定しているのであります。申すまでもなく教育が時の政治勢力に支配されたり、一党一派に偏する教育が行われてはならないことは当然でありますが、併しその範囲を拡大して一般市民としての公民権をも制限することは、教育基本法の精神を逸脱するばかりでなく、基本的人権を侵害するものと言わなければなりません。(拍手)私は教育政治的中立性学校教育に限定さるべきものであつて、それ以上に出至ることはできないものであると考えるが、文相の見解を質したいのであります。  第二は、政府は又教育公務員の職務と責任の特殊性に鑑み、政治的行為制限を拡大するものであると申しておりますが、これは教育基本法第六条にいう、法律に定める学校教育は、全体の奉仕者であるということを指しているものと思われるのでありますが、全体の奉仕者とは直接国民に責任を負うことであつて、時の政府政府を作つている政党に奉仕するものでないということを示したものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)このことによつて市民としての公民権を制限する理由にはならないのであります。アメリカ教育使節団は曾つて我々に助言を与えて「教師は他の公民の持つている一切の特権と機会を与えられなければならない。そしてその任務を申分なく立派になしとげるには思想と言論と行動の自由を持たなければならない。」と言つているのであります。このことは今日世界の民主主義国家においては固く信じられているところであつて、市民としての公民権を国の法律を以て制限している国はないのであります。文部大臣教育公務員の職務と責任の特殊性を如何ように考えておられるのか説明を願いたいと思うのであります。  第三は、議会政治をとつている我が国において、選挙活動が犯罪になるという考えは明らかに憲法違反であります。政府国家公務員の例によつたものであると軽く逃げようとしているが、国家公務員法それ自身が憲法に違反しているのであります。国際自由労連の公務員組合の書記長ボーレー氏は、「今度の法案世界に類のない悪法である。わたしは国際的な視野に立つて言うのであるが、教育関係法規の中に懲役三年という体刑をきめたものは今のところ世界のどこを探してもない。殺人強盗というような犯罪ならともかく、単に政治的な所信に基く言動が体刑に値するというのは常識では判断できない。」と言つているのであります。(拍手)ボーレー氏の言を待つまでもなく憲法第十四条に、すべての国民は法の下に平等であると言い、第十八条に、何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反して苦役に服させられないと言うているのであります。一般市民が保障されている公民権の行使が、教員の場合は犯罪を構成するというのは、憲法の違反であると思うのでありまするが、これは法務大臣に説明を求めたいのであります。(「よく説明をなさい」と呼ぶ者あり、笑声)  次に義務教育学校における教育政治的中立確保に関する法律案につきまして質疑をしたいと思うのであります。  第一点は、政府はこの法案提案理由として、教育職員の自主性を擁護するためであると言つているが、あのみじめな戦争によつて教員の得たものはただ一つ教員の解放であつたのであります。教員は生きた社会と直接繋がりを持つようになり、戦前の無気力な姿から生き返つたのであります。行動自主性を回復した教員は、日本教職員組合を結成すると共に、今日偉大なる研究組織をも確立したのであります。更に世界教員組合とも連繋し、以て国際的な関連において教育問題の解決に当ろうとしておるのであります。僅僅数年の間にこれを為し遂げたことは、驚歎に値すると思うのであります。自由が如何に尊いものであるかを如実に示しておると思うのであります。然るに政府自主性を擁護すると言いながら、手かせ足かせをはめようとしておるのであります。あらゆる思想、言論に接する自由の機会を持つことによつてのみ、教員自主性は維持できると思うのでありますが、(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)文相の見解を伺いたいと思うのであります。  第二は、文相は赤い教育が行われておる事例として山口県日記を挙げ、もこれは日教組の計画に基くものであることは、日教組自身の文書で明らかであると言つています。山口県日記が赤い教育だと断定することは一方的な宣伝であり、これを編集した教師の意図を全然無視するものであります。この日記の取材においては、少年朝日年鑑及び文部省検定の教科書より取つておる面も少くないのであります。而も山口教育委員会は、この日記について検討の結果、必ずしも赤い教育だという結論に達したとは聞かないのであります。なお、山口県日記は、日教組とは何ら関係なく編集せられたもので、(「そうだ」と呼ぶ者あり)これを日教組の計画に基くものであるとは、事実を誣いるも甚しいと思うのであります。文相が言う日教組自身の文書なるものを提示して私は具体的に説明を要求するものであります。  次に、この法律によつて処罰の対象になるのは一般国民であります。従つてこの法律によつて国民が犯罪になる行為と、然らざる行為とを識別し得るものでなければならないのであります。第三条二項は、「前項の特定政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育には、良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えるに必要な限度をこえて、特定政党等を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育を含むものとする」と、極めて難解な文章になつておるのでありまするが、教育は真理と正義を愛する国民の育成を目的とするものでありまするから、政党政治上の主義又は政策を批判的な立場で教えなければならないということは当然であります。(「当然でしよう、それは」と呼ぶ者あり)この場合批判的な立場がこの法律に言う「必要な限度をこえて、特定政党等を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」になるかどうか。文部、法務両大臣に説明を求めたいのであります。  この法律による犯罪は、教育委員会或いは学長、知事の請求を待つて論ずることになつておるが、これらの監督機関の請求がなければ、学園の捜査を行うことができないのか、或いは差支えないのであるか。これは文部、法務両大臣お尋ねをしたいのであります。  最後に申上げたいことは、中央教育審議会答申にある、日本教職員組合政治的偏向を侵しておると判断しておることであります。又、日教組主催の教育研究大会についても、特定政治的意図の下に計画されておると考えられておることであります。今日五十万教職員のひとしく念願しておるのは、平和憲法を守つて行きたいということであります。民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようと決意した憲法を守つて行こうとしておるのであります。(拍手)「この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。」との教育基本法の冒頭の精神を、五十万教職員はみずからの使命と考えておるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)曾つては太平洋戦争において多くの教え子を戦場に送り、今又多くの戦争孤児を預かつておる全国の教員は、何としても平和を守らなければならないと深く決意をすると共に、これを教育の場において実践しようとしておるのであります。(拍手)これはソ連製の平和攻勢に同調するものでもなく、日本国憲法、教育基本法に基くものであります。この決意と行動を以て政治的偏向を侵しておると考えたり、或いは特定政治的意図の下に動いておるものと判断することは、我々の理解し得ないところであります。  私は日本教職員組合の性格を更に明らかにするために、次のことを申上げたいのであります。昭和二十四年十一月に日教組は栃木県塩原において第六回の臨時大会を開き、組合運営の根本方針を決定したのであります。この大会は日教組結成大会に次ぐ重要な大会でありまして、この大会において決定された基本方針は、今日もなお何ら変更されていないのであります。この大会において当時私は日教組委員長として次のことを述べたのであります。(拍手)「我々は日教組結成以来、政党の干渉を強力に排除し、勿論一党一派に偏することを厳に警戒して来たのでございます。今日我々は真に五十万教職員の団結の強化を図り、日教組組織をますます強固にするためには、左翼組合主義を完全に払拭し、建設的にして実質的な利益を守る健全な組合運動方針を確立しなければならないと信ずるものであります。」と述べておるのであります。(「誠にいいじやないか」と呼ぶ者あり)この方針は、日教組の基本方針として今日もなお堅持されておるのであります。(「そうなつておらんから心配しておるのだ」と呼ぶ者あり)私は日教組を介護するために言うのではない。日教組が左翼的偏向性を排除することと、一党一派に偏しないということは、一貫して堅持されておるということを申上げたいのであります。中央教育審議会答申は、一方的独断的であると思うのであります。これに対して私は文相の見解を伺いたいのであります。若し、文相が中央教育審議会と同じような判断を持つておられるとするならば、私はこれを具体的に指摘して頂きたいのであります。  最後に、私はこの法案が成立することは、日本の不幸であるという一言を申上げて質問を終りたいと思います。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  23. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。  文部行政に当る重要なる地位には教育上経験のある人を置くべきではないかという御意見でありますが、これは大体論といたしましてはまさにその通りであります。併し除外例も又時には差支えないと思います。特に文部大臣の場合においてはそうであると思います。例えば中橋徳五郎という、商船会社の社長から文部大臣になつた人がありまするが、この中橋氏は、過去の文部大臣のうちにおきまして、文教行政上最も大きな業績を残した一人であります。又現在の大運文部大臣も専門家出身でない。而もこの文教行政に最も適格である人の一人であると信じておるものであります。(「中橋と大達と比べて何を言つているのだ」「しつかりやれ」と呼ぶ者あり、笑声)  それから、この際本法案に対して国内よりも相当の反対があり、又海外からも相当の反響があるということであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)国内のいろいろな批判に対しては私どもも十分耳を傾けております。(「嘘をつけ」「傾けておらんじやないか」と呼ぶ者あり)勿論こういう重大な法案を立案し、又それを実施いたしますにつきましては、十分に当局といたしましては視野を広くして参らなければなりませんけれども、併しながら外国の批判は必ずしも金科玉条のものではないのでありまして、国内においてすらこの法案は相当歪曲されて今日まで伝えられて参つたところを見ますると、外国には相当誤まつて伝えられているのではないかと思います。私は逐次、外国においても正しい批判が発表されることを期待しております。  それから自由党がこの法案に対する宣伝文書を配付したということでありますが、これは私は政党として当然のことであると思います。児童政治的中立性を失うた教育を別に注ぎ込んでいないのであります。先ほど読み上げたところではそういう憂えはないと考えております。    〔国務大臣大達茂雄登壇拍手
  24. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 荒木君の御質問にお答えいたします。  荒木議員のおつしやるように、教育は全体に対する奉仕、国民の全都に責任を負つて行わるべきものであります。そうしてこれは国民の全体に責任を負うべきものでありまして、時の政治的権力云々は、この場合問題にはなりません。全部に対する奉仕であるが故に、この公務である教育というものは最も適正に行われなければならない。これは一般の公務員の場合も同様であります。公務は適正に行われなければならない。教育の場合について言うと、その公務たる教育が適正に、一方に偏らないように行われなければならない。これが公務員に対する政治的行為制限する根拠であると私は思います。荒木議員は、教室を離れて、教員の個人としての政治的行為制限することはいけないと、これは教員でありましても、他の公務員でありましても同じことでありまして、要は一方に非常に遍した立場をとることをやめて、そのことによつてその担当する公務が適正に行われることを法律は期待しておるものと私は解釈しておるのであります。従つてこれが憲法に違反するとか、そういうことは、これはあり得ないのでありまして、公務が適正に行われるということが、公共の福祉として最も重大であり、基本であるということを考えれば、それがための制限というものが憲法に違反するというようなことは私は考えません。殊に現行のこれは法律でありまして、今更憲法違反とか云々の問題が論ぜられるわけはないと思います。  その次には、山口県の教育日記というものが日教組方針に基いて出たものだ、それについてはつきりそういうことを言うか。こういうお話でありました。これは日教組自身の文書によつて、例えば中央委員会、大会等における経過報告等の文書によりまして、例えば世界教育大会ですね、そこに臨んだときの日教組代表の言われた言葉の中にもそれが出ております。又随所にそれが出ておるのでありまして、これは明瞭な事実であると私は思います。山口県の日記が偏つておるかおらないか、これは荒木議員と私は全然見解を異にするのであります。(「お前の眼鏡は色がついてる」と呼ぶ者あり)  それから今度の単独法の第三条第二項に、「特定政党を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育、」こういう字句についてのお説であります。これはそこにも書いてありますように、良識ある公民としての政治的教養を阻害して、つまり正常な判断ができないような、そういう良識をこわすような程度に子供に対して、特売の政党を直接すぐ子供が支持するとか、支持しないとかということにならなくても、政党を何党と何党と指さなくても、その政党の特徴、基本的性格というものを延々として教え込むことによつて政党意識というものがその子供に入つた場合、その子供がすぐその政党を支持し、又は反対するような教育、そういう教育というものであります。  それから次には、教育委員の請求を待つて……、(「何を言つておるのだ」「しつかりせよ」と呼ぶ者あり)よく聞いて下さい。教育委員会の「請求を待つて論ずる」ということになつて去る。「これによつて警察学校に来るいうことはないか」というお尋ねでありますが、これは通常これによつて常識上当然わかるように、そういう場合はなくなると思うのであります。  それから最後に、「日教組政治的偏向ということを中央教育審議会が言つておる。文部大臣はどういうふうに見ておるか。」今日日教組政治的に強く偏向しておるということは、これは常識であります。(「自由党の常識だ」と呼ぶ者あり)一般の衆目の見るところであります。而も日教組が非常に偏つた政治立場をとつて来たということは、これこそ日教組のすることなすこと、又その大会、その他において現われておる文書等によつて、これは極めて明瞭に指摘し得るのであります。(「そういう日教組作つた覚えはない」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  25. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答え申上げます。  最初の御質問は、教育の中立確保に関する法案の第三条第二項の問題で、ございまして特に「必要な限度」と書いてあるが、「これは不明確ではないか。」こういう御質問でございます。成るほど本法案の第三条第二項に、「必要な限度」と書いてございますが、これは結局社会通念に従つて、客観的に判断するのでありますが、その社会通念は、検事だけの社会通念とか、警察だけの社会通念でないのでありまして、教育委員の社会通念も加わるのであります。要するに実際の運用の場合は十分に気をつけて考えておる次第であります。  それから次の御質問は、「教唆扇動を摘発する場合、教育委員会の要請によるといつておるが、要請がなくても警察は捜査できるというのか、又要請がなければ捜査しないのか」と、こういう問題でございますが、勿論この事柄の性質上、教育委員会の要請を待つて、初めて捜査を開始いたします、又その要請は電話やなんかでなくて、きちんと正式に書類による要請を待つようにいたしておる次第であります。(拍手)    〔荒木正三郎君発言の許可を求む〕
  26. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 荒木正三郎君。
  27. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 再質問をいたします。(「やれやれ」と呼ぶ者あり)
  28. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 時間がございます。御登壇を願います。    〔荒木正三郎君登壇拍手
  29. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 自由党機関紙学校に送付して、教員の手を通じて父兄に渡されたのであります。これに対して緒方副総理は、「差支えがない」と、こういう答弁をされることは、私ども了解に苦しむところであります。(「そうだ」「それが中立性を冒涜しているのじやないか」と呼ぶ者あり)即ち、この自由党機関紙は、私の聞いているところでは、或る学校では、丁度PTAの会合があつて、そうして受持の教員がその場において、その党報を配つたという事実があります。こういうことが許されるというならば、私は各政党、各団体がこれはなすところになると思うのでありまして、(「そこだそこだ」と呼ぶ者あり)こういうことは、教育基本法の第八条に抵触するものであると(「その通り」と呼ぶ者あり)考えるものでありまするが、(「しつかり答えよ」と呼ぶ者あり)なお、御答弁を願いたいと思うのであります。それから法務大臣は、「教育委員会の要請がなければ、学園は警官によつて侵されない。捜査されない。」こういうふうに答弁をされましたが、併しあの法律を読むと、罪の論断は、成るほど教育委員会の要請がなければできないことになつていますが、併し学校を捜査しても差支えがない。こういうふうな案文になつておると思うのであります。従つて先ほどの答弁に間違いがないか。もう一度御説明を願いたいのであります。  なお、文部大臣お尋ねをいたします。文部大臣は、「日本教職員組合が最も強く政治的偏向を侵しておる。」こういうふうに言われておるのでありまするが、これは自由党という立場に立つておつしやつておるのか、何か客観的に、(一番政治的に偏向しているよ」と呼ぶ者あり)客観的な基準に従つておつしやつているのか、私は了解に苦しむのであります。文部大臣は今の教育実情を私は知つておられるのであるか、甚だ疑うものであります。(「何も知りやしないのだよ」と呼ぶ者あり)今日一つの教室に五十人、六十人或いは七十人というような大勢の子供を入れて、それでも間に合わないで、二部授業をやつているところが、全国において少くないのであります。又この子供たちに教える教具、教材というるのは殆んどないというのが現状であります。その中において教員諸君は日々苦労して、どうしたらよりよい教育ができるかという日々の苦労を続けておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)こういう中にあつて教員が一番考えることは、今の教育予算を少しでも殖やしてもらいたい。学校を建てる予算を取つてもらいたい。或いは教材、教具を買う予算が欲しい。このことを真剣に考えておるのであります。(「それが赤なのか」と呼ぶ者あり)而もこの教育予算というのは、結局において国の政治において教育が尊重されるような政治が行われなければ、この予算さえ取れないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)当然この教育を立派にして行くということは、国の政治関係して来るのであります。(「その通りその通り」と呼ぶ者あり、拍手)又今日全国の教員は、至るところにあるところの基地によつて、その基地から来る害毒によつて子供たちが痛めつけられておる。これを救いたい。こういうことで日夜苦心しているのです。当然これらは基地の問題に触れて来るのであります。教育をよくするということが結局政治に繋がるということは否定することのできない問題であります。この教育の問題を取上げることによつて、これが政治的偏向であるとおつしやるのであるかどうか。私どもは文相の答弁に了解でないものがありますので、なお、御説明を頂きたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  30. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  政党がその政党の名前を署して、文教上の主張を述べることは一向差支えない。先ほど御引用になりましたのは、今度の法案に対する説明をしているのでありまして、(「説明じやないよ」と呼ぶ者あり)先ほど伺つておりましても、教育政治的中立性を侵したのを生徒児童に注ぎ込もうとしているものじやない。その意味において一向差支えないと考えております。    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  31. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えを申上げます。御指摘の点は、先ほどの答弁で落しましたので、追加の意味でもお答え申上げたいと存じます。  なるほど、理論上はこの法案についての犯罪捜査は、教育委員会等の請求がなされる前でも行い得るのでございまするが、(「ほら見ろ」と呼ぶ者あり)併し他面におきまして、犯罪捜査というものは、いつもそうでございますが、公訴の提起のための目的のためになされるのでございますから、起訴条件が備わらない請求前において捜査を開始するということは、通常の場合極めて不適当なわけでございます。且つ、学園内の出来事は、よくよくの著しい場合を除いては、これは行政上の監督権に属する処分に任せたいというのが私どもの考えでございまして、何となれば、そこに立入つて行く、場合によつては、子供……生徒ですね、生徒を証人にするというようなことになりますと、(「とんでもない」と呼ぶ者あり)もともとこの本法案目的であります自分の判断が備わらない成育前の子供の、中立的な、朗らかな文教生活というものをそれだけ動揺させることになるのでありますから、(「朗らかじやないよ」と呼ぶ者あり)できるだけ学園内の処分というものは行政処分に待ちたいという考えでいる次第でございます。(「子供が朗らかになれるかい」「しつかりせい」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)    〔国務大臣大達茂雄登壇拍手
  32. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 日教組政治的偏向と私が申しましたのは、只今荒木君が言われたような教育予算を増してもらいたいとか、そういうことを言つておることを指して言つたのではないのであります。これは当り前のことであつて、誰もそんなことを日教組言つたからと言つて、或いは誰が今日言つたからと言つて、これを政治的偏向などということはありません。さような常識を欠いたものではありません。日教組政治的偏向をしておるということは他に幾らでも例証を挙げられるのであります。只今のものは何もこれには関係はない。これは荒木さん自身が、あなた自身がいわゆる日政連の多分会長をしていらつしやると思うのであります。(「それが何だ」と呼ぶ者あり)日政連は言うまでもなく日教組のこれは異名同体の政治団体であります。そうして日教組の掲げているところのいわゆる政治的主張、それを支持する者を選挙闘争の場合において、これを出して送つておるのであります。現に日教組の大会に報告せられる、日教組の……(「自由党機関紙はどうした」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)黙つて聞きなさい。日教組の……都合が悪ければ幾らでも騒ぎなさい。現に日教組の大会等における経過報告というものがあります。このうちには平和闘争或いは選挙闘争、そうして日教組が掲げるところの政治的主張というものは、これの主たるものは例の平和三原則であります。そうしていつも最後には反動内閣打倒、(「その通り」「当り前だ」と呼ぶ者あり)この政治的主張、それが政治的偏向というのであります。これを政治的偏向と言わずして……、そうして選挙のときには選挙闘争としてですよ、多額の金を以て選挙を争い、議員を国会に送つている、これが政治的偏向でなくて、どういうものが一体政治的偏向ですか。学校予算を増してくれとか、給食経費を増額してくれとか、そういうことを言うから、お前はこれを政治的偏向というのだろうということは、顧みて他を言うものであります。(「みずから顧みて恥を知れ」と呼ぶ者あり、拍手)     —————————————
  33. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 相馬助治君。    〔相馬助治君登壇拍手
  34. 相馬助治

    ○相馬助治君 我が国教育史上、特定政党特定政党の主義主張を宣伝し、而も特定団体を攻撃した文書を、選挙運動期間中でもない平常の場合において、学校組織を通じて流したという事例を我々は知らないのであります。同僚荒木君の質問は極めて重大である。(「そうだ」と呼ぶ者あり)これに関して緒方副総理並びに文相は、事もなげにそれは当然のことであるとしている。明らかに現在の吉田内閣が政治的中立を侵している事例がそこに現われている。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり、拍手)この内閣が今日教育中立性維持の名の下に教育公務員特例法の一部改正教員の手足を縛り、教育中立性維持の法案というものを以て教員の目や耳を塞ごうとしている。不幸にしてこの法律案が成立するならば、これによつて最大の犠牲者となるものは誰であるか。最大の被害者は誰であるか。教員組合でもない。教員でもない。実に次の日本を背負うところの児童生徒であるということを私は諸君に訴えなければならない。(拍手)即ち自主と自由と進歩とを奪われた教育に残るものは無気力と消極性であり、政治権力への追随となるのみであつて、それは不幸な戦争を閲したところの我々が教訓としてしみじみ知つていなければならない事項である。(「その通り」と呼ぶ者あり)にもかかわらず、ここに更に教唆扇動の処罰規定を加えたというような法律案を提出するに至つたのでありまするが、これは先に破防法制定のときにも大きな問題を起しましたように、時の政治権力の下に、時の政府に敵対するものに向つて網をかけようとするならば幾らでも拡大解釈が自由で品あつて、(「その通り」と呼ぶ者あり)政治家、学者、評論家、これらの言動は挙げてきびしい取締りの対象となつて、結局するところ、思想、言論の弾圧を目的とするところの強権発動を意味することは過去の事実がこれを証明しております。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)教育は断じて我々のものでなければならない。このような観点に立つて私は先ず内閣総理大臣にお伺いしたい。  第一点は、教育の中正を守らんとする国民の念願は至当であります。然らばその教育の中正を維持するためには、教員を対象として威嚇法案を出すことでもなければ、取締法案を出すことでもない。(「その通り」と呼ぶ者あり)先ず現在の日本政治そのものが立派になされているということが第一でなければならない。(「その通り」「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)首相が幾たびか発言を求めて道義国家の建設であるとか、綱紀粛正であるとか、(笑声)教育の中立であるとか、近くは耐乏生活要求という掛声にもかかわらず、現在の政治はどのように展開されているか。(「汚職だよ」と呼ぶ者あり)先ずかかる法律案を出す自由党はみずからの手と口を清めなければならない。(「そうだ」と呼ぶ者あり)吉田自由党の国会議員にして逮捕される者がある。閣僚に疑惑の疑いが今日かけられておる。国会は汚職問答、一方には一部高級官僚の腐敗、これ又その極に達したかのごとき感があります。(拍手)新時代の教育というものは、その時代の傾向と政治経済の現実を離れては存在しない。従いまして教育の中正を守るためには、先ず自由党自身がこの各種疑獄を、吉田内閣自身がこの官界の腐敗を如何に見るか。具体的に言うならば、総辞職をするとか、或いは解散をして再び信を国民に問う段階が来たと思うのであるが、(「その通り」と呼ぶ者あり)吉田内閣総理大臣の見解を質したいのであるが、不幸にして病気のため出ないという。(「病気じやないぞ」と呼ぶ者あり、笑声)先日来たびたび首相官邸に伺候して打合せをしておるので、この答弁は吉田内閣総理大臣に代つて緒方副総理ができるはずであるが故に、本議会を通じて国民にこれらの点を明快にされたいのであります。  次に、本法案は明らかに違憲立法である。内容については他の諸君が指摘したので重複を避けまするけれども、本法は憲法の精神に叛逆するものであり、進んでは愚かにも憲法に挑戦する立法である。如何なる角度から見ましても、憲法自体が義務として課している事項を熱心に実行することが、場合によつては刑法上の加罰行為であるというようなばかくさい法律が一体日本に存在してよろしいでありましようか。(「その通り」と呼ぶ者あり)首相は如何なる憲法上の条文に照応して本法を提案せんとしたものであるか。而も又かかる悪法を出すに至つた根本の理由は何であるか。文相がとやかく言つておりますけれども、内閣の責任者としてこの際緒方副総理より明確に私は承わりたい。(拍手)第三に質したいことは、先般ニクソン副大統領が来朝した折の声明に、「日本の現憲法に対する一九四六年にとつたアメリカ措置は誤まりであつた」と述べておる。当時政府筋においては率直な声明であるとこれを歓迎した。これだから低められるのである。こういう立場に立つならば、一体日本憲法が精神とする平和文化国家の建設、平和教育の主張というのは誤りであると内閣は考えているかどうか。結論的にはたびたび憲法改正の意思はないと強弁しておるが、憲法改正の意思ありや否や、改めてお尋ねしておきたいと思うのであります。  第四点、最近政府警察法を改正しそれを縦糸とし、今般教育法案を出してこれを横糸とし、反動日本を再建せんとしておるのでありまするが、これは誠に反動立法と言わざるを得ない。教員よりも警官を信用するこれは法律である。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)今ここに一人の教員がいて誤まつて不用意にも一政党宣伝をして子供に悪影響を与えたと仮定します。本法の成立によつてその教員ががんぜない子供の前で縄付きとなつて刑務所に引張られたと仮定します。いずれが一体子供にとつて影響を与えるのでありましようか。(拍手)私はこれについては論を待たんところであろうと思うのであります。本法に対して天下の世論いよいよきびしき折柄、これを撤回する用意ありや否や。たそがれ内閣ではありまするが(笑声、拍手)吉田内閣に対してこの点をお尋ねしたいのであります。  次に文相に対して伺いたい。先ほど同僚高橋議員との質疑におきまして、中央教育審議会委員答申問題が問題にされました。あの中に適当なる措置をとれと書いてあります。聞くところによりますと、当初文部省は第二小委員会の原案において、立法的措置をとれ、このことは何事にも優先することであるというような答申を期待したのであるそうだが、これが修正によつてあのようになつたと我々は聞いておる。而も私は中央教育審議会委員にこの耳でこのことを聞いておる。そこで一体文相はあの答申書を如何ように考えたのであるか。我々の見解を以てするならば、積極的に、日教組が悪かつたならこれを善導するように、教員が心配なく授業がやれるように、そうして立派に教育中立性が保たれるようにということを期待していたと思うのであるが、今日威嚇法案を出すに至つた原因は何であるか。これらについて私は先ず一点承わりたいと思うのであります。  次に、私はこの二法案について具体的な条項について承わりたい。中立維持の法案についてでありまするが、六点に亘つて私は文相、法相に質したいのであります。第三条の規定において「何人も」と、かように纏つておりまするが、これは先に制定された破防法と比較してみまするというと、破防法でも、内乱、外患誘致、外患援助というような刑法所定の犯罪の中でも、殊に重大な犯罪の実行については教唆扇動を以て罰しております。然るに皆さん、本法においては特定政党を支持又は反対させる教育の実行というように、一般国民であれば政治的自由としてむしろ活溌に行われることが望ましいようなものを対象として、これを刑法上の独立の犯罪として規定しておるのであつて、破防法に比べて遥かにこれは悪法である。極端な威嚇的立法と言わなければならない。(拍手)一体こういうものを文相はどういうふうに考えておるのか。又法相はかかる法律が仮に立法された場合に運営の自信ありや否や承わつておきたいのであります。  第二として、この教唆扇動の対象であるところの特定政党を支持させる云々ということが、私立学校においては刑罰の対象となつていない。而も又公立学校の場合においても人事院規則をどのように読むかというのでしかく明確でない。そういうものを犯罪とするということは甚だしく刑罰の本質を無視したものであると思うのであるが、如何なる理由と如何なる根拠によつてかような無理な立法となつたのであるか。そうして又これに対する見解は如何か。文部大臣、法務大臣に承わつておきたいと思うのであります。  第三番目、本法三条において「特定政党」云々という場合において、仮に今実例を以てするならば山口県の日記事件が問題であると言うが、この山口日記というものを私は隅から隅まで読んでみた。成るほどそのうちの一部分を抽出して発表するというと、これは誤解を受ける内容がないでもない。併し問題はどこにも何政党宣伝もなされていない。たまたま或る特定政党の重要な主義政策とこれが合致していたのである。これは文相も認める通りである。こういう場合には、一体今度の法律で罰せられるのか罰せられないのか。罰せられるとすれば誰がされるのであるか。又さようなものは罰しないというのであるならば、私は再質問に立つて、それではこの法律はいらないというのであるからして、多分これは罰するのであろうからして、これらを明確に承わつておきたい。(拍手)高橋議員が質問して明快な答えを得ていないのでありまするけれども、一体特定政党等を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」というような、日本語の語彙を知らざる(「文部大臣の資格なし」と呼ぶ者あり)こういう難渋なこの規定というもりは極めてあいまいであるが、解釈規定限界を特に法務大臣に承わつておきたい。(「教育理論もわからんのだ」と呼ぶ者あり)  又第四には、「学校教育法に規定する学校の職員を主たる構成員とする団体組織又は活動を利用し、」と規定しているが、本当はこれを日教組と書きたいところなのであろうが、さようにも参らないので、かようになつたかもわからないが、PTAの中でPが極めて少くTが指導力を持つておるPTAなんかもこれに入る、という解釈も成り立たないではないのであるが如何ように考えておるか。これは文部大臣だけで答弁はよろしい。(笑声)第五番目に、本法第五条において、別条の罪は国立大学の学長、教育委員会、都道府県知事の請求を待つて論ずるとある。ところが学長はしばらくおいて教育委員や知事は、政党所属者がかなり多い。このこと自体がすでに教育に対する外部権力の干渉の危険性を露呈しておる。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)このような規定で本法が問題なく施行されると思うかどうか。文相、法相の見解を承わつておきたい。  第六。不幸にして今日地方教育委員会というものは弱体である。この結果委員会と警察が結んで、教員及びその団体或いは第三者を罪人にする危険をこの法律案は持つておる。こういうことを考えるというと、最後に述べておる「請求の手続は、政令で定める」とあるが、これは何であるか、具体的に述べて頂きたい。「その政令は、今から考える」というような答弁を私は絶対に許さない。要しまするに、この法律は第三条が極めて問題であるが故に具体的に答弁を願いたい。  次に教育公務員法の一部を改正する法律案であるが、文部大臣、法務大臣地方自治庁長官に承わりたいが、現行国家公務員法では、政治活動制限違反に対して処罰を加えており、後にできた地方公務員法では、行政上の処罰だけで刑法上の処罰を削除しておる。これは国会が進駐軍に頭を抑えられていた時代と違つて国家公務員法そのものが行き過ぎであつたという反省に立つて、あのような地方公務員法ができた経緯は皆さんが御存じの通りである。ところが今度は又ひつくり返つてその国家公務員法を読み替え規定とするところの悪法を提出するに至つておるが、これはどういうわけなんであるか。むしろ法務大臣は進んで国家公務員の法の一部を改正して、その政治的活動の自由を許すか、自由党にかようなことを望むことが無理であるとするならば、せめては罰則規定くらいは削除する意思があるかどうか。私はこれを承わつておきたいと思います。  第二点は、地方公務員である教員の地位は、他の地方公務員と何ら変らない。ところが教員立場にだけ今般これを当てはめようとしておりますることは、明らかに憲法第十四条の平等の原則を無視するものである。このことは立法論的に極めて問題であると思う。地方公務員を守る立場に立つ塚田自治庁長官としては、この点に関して閣議で黙つていたわけはあるまい。何か言つたでありましよう(拍手)具体的にどのように考えているか。かかる立法が又地方行政と中央行政の混淆を意味するものであると思うが、それらに対する見解を承わつておきたい。  再質問の時間を保留して私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  35. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  「教育中立性確保するためには明るい政治前提とならなければいけない、政府は今日のごとき状態の下に、かくのごとき重大なる法案を出すのはどういうわけか」という御質問のように承わつたのでありまするが、現在いろんな疑獄があります。それは司直の手で目下取調べ中でありまして、その実相の判明を待ちまして、政府は善処するつもりでございます。政府といたしましては、この時局の重大なることを思い、現在御審議を願つておりまする法案、又予算案、その他重要法案を一日も早く成立せしめるために全力を挙げるつもりであります。従いまして、お説のように総辞職又は解散というふうなものは少しも考えておりません。  この法案は違憲立法の疑いがあるという御質問でありまするが、政府は、国の将来のために学校教育政治的中立性確保することがこの際最も緊要であると考えまして、この法案を提出いたしたものであります。この法案教育基本法の精神とするところを実施するための措置でありまして、何ら憲法に違反するものとは考えておりません。  次に、「政府は憲法改正の意思があるかどうか」という御質問でありましたが、これは相馬君のお話の中にもありましたように、政府はたびたび本議場において申しておりまする通り、現在、憲法改正の意思は少しも持つておりません。  それから「この法案を撤回する意思はないか、」政府は撤回する意思はございません。(拍手)    〔国務大臣大達茂雄登壇拍手
  36. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) お答えを申上げます。  初めは、この中教審答申に「適当の措置。適当な立法措置とはない。であるからして中教審答申によれば、むしろ自粛自戒を待つとか、その他の手段によるのであつて立法手段によるものではない。こう解釈すべきことを誰かからはつきり聞いた。」こういうことでありました。それは私どもの考えとは全く違つております。現に中教審において、この案に強く反対した人が一人だけでありますが、一人ありました。この人は、さような意味において立法措置をとるということに対して反対をされたのであります。他の人は大体ことごとくこの適当なる立法措置という意味において賛成をされたと思います。  それから次には、「この教唆扇動を独立罪としたことはどういうわけか。」私は教唆扇動する学校の先生に不当な影響力を与えて、そうしてその先生をして偏つた教育をさせるように働きかけるこの教唆扇動というものが、現在最も我が国教育政治的中立性を侵しておる一番大きな要素であると考えるのであります。従つてこれを独立罪として規定したわけであります  次には、「かくのごときことは一般には極めて望ましいことであると思う、教育の発達のためにも望ましい、この望ましいことを一体犯罪にする、取締るということはどうか」私は只今申上げまするように、これは最も望ましからざることであると思います。それから「山口県の日記のような場合に、これを罰するのか罰しないのか。」こういうお尋ねであります。山口県の日記が、あのままで教育基本法の第八条第二項のいわゆる支持し又は反対するための教育ということに入ることは、私は疑いを入れんと思つておるのであります。併しながら、このたびこの提案になりました法律におきましては、必ずしも基本法第八条の二項に掲げてあるその教育の全部を捕捉して、これを取締の対象とし、又罰則の対象としたわけでもありません。これはいやしくもこれらの教育を扇動教唆するということに罰則を以て臨む以上は、これは罰則の解釈でありますから、できるだけその解釈の面においては厳密に拡張解釈が禁じられなければならないと同時に、その客体になる行為の内容についても、できるだけ明確にする必要があると、かように考えたからであります。従つて山口県の小学生日記をただ黙つて子供に渡してあと何にも言わなければ、これが八条の二項の偏つた教育になるかも知れんが、(「かも知れんじやない」と呼ぶ者あり)この提案による法律に抵触するものとは言えないかと思います。ただ併しながら、実際の場合においては、ただあれを子供に黙つて渡して、それでおしまいというここはないのであります。あれに基いていろいろの説明をしたり、質問に答えたり、いろいろなことが行われるであろうと思う。でありますから、それらのことにつきましては、それぞれ各個の場合について実情に基いて判断せらるべきものである。かように考えておるのであります。それから次には「団体の中にPTAか入るかどうか。」これは主たる構成員とする団体でありますから、先生が過半数、一口に申しますというと、教職員団体員の過半数を占めるような団体、これを主たる構成員とする団体。かように考えております。従つてPTAは、殆んどすべての場合においてこり団体の中には入らないと思います。(「そこがつけ目だろう」と呼ぶ者あり)それから次には、「この請求、司直り発動に対する請求を私立学校に委せる。然るに私立学校の場合においてはそれは校長さんが政党に入つておるような場合もある。従つてこれがその偏つた見地、つまり党派的の見地からこり請求が濫用されることがありはしないか。」こういうお尋ねであります。これは公立学校におきましても御承知のように、その校長なり職員が特定政党に入党することは、政治活動制限として何ら禁止せられておらんのであります。国民の非常に多くの人々政党に入党しており、又或る党の立場を支持しておる。こういうことはこれは普通に多い例であります。これはそういう立場からこれに影響が来るはずがないと私は思うのであります。教育委員会としての処分が公正に行われる限り、教育委員の中には勿論政党員もたくさんおります。教育委員になるためには党派に所属してはいけないという規則はないのであります。これは私立学校の場合に限つた問題ではないのであります。これは勿論請求でありますから、これによつて罪が決定するわけではありません。これは申上げるまでもないわけであります。(拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  37. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えを申上げます。  最初の御質問は、「教唆扇動の構成要件が非常に不明確で悪法ではないか。運営上自信があるかどうか」という問題でございます。御承知のようにこの法案は、教育基本法規定に従いまして、教育政治的中立を害する程度が非常に著しい場合を処罰しようとするのでありまして、この処罰の構成要件はできるだけ厳格にしぼる努力をしたことは御承知と思います。且つ、先ほど申上げましたように、教育委員会の請求を待つて初めてやるのでありまして、その前にはいたさないということは、先刻御回答申上げた通りでございます。どつちにしろ本法案が成立しましたときには、全国の係官会議としまして、詳細に、この旨を責任を以て伝えたいと思つております。  それから教育委員会のことでございますが、先ほど御指摘がありましたが、「この政党員などが入つているので、政党本位になるのではないか。」こういう問題はほかの場合にもしばしば体験しておりますが、仮にそういうふうに政党本位の請求がなされたという場合には、ほかの事案においても、これは政党の事情でこういうことになつたのだと、我々は判断する経験がありまして、そういう場合には捜査を中止したり、不起訴にした場合は幾多ございます。今後もその点はそういうふうにやつて行きたいと思つております。(「現実はそうじやありませんよ、危険性がある」と呼ぶ者あり)  それから最後に、「山口日記というものは罰せられるか。」こういう問題でございます。これは個々の場合に調べなければならない、研究しなければならないと思いますが、大体原則として、日教組組合員が、又は外部の人が日教組を通じて教員に働きかける場合であつて、而も政党を支持せしむるに足ることがはつきりしている場合には罰せられますが、抽象的な議論、つまり現内閣の支持している政策を抽象的にいいとか悪いとか書くということは問題にならないと思います。(拍手)    〔国務大臣塚田十一郎登壇拍手
  38. 塚田十一郎

    国務大臣(塚田十一郎君) 教育公務員特例法の一部を改正する法律案は、立法論として殊に平等という観点からおかしいじやないかというお尋ねでありますが、私はかようには考えません。なぜかと申上げますと、地方公務員としての身分においては同じでありますが、その上に教育職員という身分がついておる人だちがこの法律の対象になつておるのであります。このようにはつきりした特殊の身分がある場合には、差別されて一向差支えないものであると、こういうように考えるわけであります。現に現在の地方公務員法におきましても、第五十七条に、はつきりとそういう趣旨規定があるのでありまして、決して差支えないと考えております。    〔相馬助治君発言の許可を求む〕
  39. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 相馬君、御登壇下さい。    〔相馬助治君登壇拍手
  40. 相馬助治

    ○相馬助治君 緒方副総理は現内閣の中では一つの良識で、あると聞かされていたが、只今答弁は、私を失望させました。併し、これは本日の議運の諸君の努力によつて文部委員会に吉田さんが出るそうでありますから、改めて徹底的にお伺いいたします。  次に、文部大臣、法務大臣、自治庁長官おのおの意識的か無意識的か、筋をそらして答弁しておる向きがあります。(「その通り」と呼ぶ者あり)文部大臣お尋ねしたいと思いますが、一月九日の朝日新聞の夕刊を御覧になつたですか。これには適当な立法的措置をしなければならない、これは何事にも優先してしなければならない。こういうふうに出ておる。即ちこの楽屋裏は最終的な答申案がきまる前に、朝日新聞によつてこの種がつかまれて、そしてかようなる報告になつたのであります。ところが意に反して、答申案がそういうふうにならなかつた。このことを私は言うておるのであつて、それでは私は重ねて聞きますが、あなたの最高の諮問機関である中教審に、今からこの法律の妥当性についで相談する用意があるかどうか。この点を承わつておきます。それから第二点は、この第三条の解釈でありまするが、私は一般国民である場合には、政治的自由として政党支持は自由だと、こういうふうに前段で言うたのです。更に教員の場合には、或いは行政上の加罰対象にするかしないかは、これは政党間によつて私は問題があろうと思います。併し刑法上の加罰行為として認定することは行き過ぎだ。破防法よりもつとひどい。これはどうなんだと聞いておるので、その点、お答え願いたい。  それからこの第三条にからんで、私は山口日記の場合には加罰対象になるかならんかということを法務大臣に伺つたのです。ですからこういう場合にばなるが、こういう場合にはならんということでは、極めて抽象的である。具体的に、山口日記、山口日記と政府は言うのであるから、よく知つておるはずである。この場合には罰則の適用をして加罰するのかしないのか。こう聞いておる。  それから請求の手続について、私立学校の校長が政党云々なぞとは私は言うていない。問題は教育委員会であるとか、都道府県知事というものは政党員である場合が多い。だから悪いというのではなくて、こういう人たちを経由して、いわゆる刑法上の処罰請求をするというようなこと自体が、この法律の建前自体が、教育に対して外部権力の干渉の危険性を持つておるのじやないか、これを承わつておるのです。見解を述べて欲しいのであります。  私は最後に附加えておきたいことは、由来こういう教唆扇動の罪というようなものは、立法するときには、立法者の意思というものは問題になるけれどもう現実に出てしまうというと、恐るべき魔力を発揮する。治安維持法が帝国議会で審議されたときに、若槻内務大臣はこういうふうに答えておる。某議員の質問に対して「政府は学者或いは新聞或いは労働組合運動を本法によつて取締ろうとするのではないかという質問であるけれども、政府はさような意図は全然持つておりません」と、こういうことを言うておる。そしてこの法律ができるや、三カ月にして学者にして逮捕される者あり、労働運動の指導者にして拘禁される者あり、新聞にして又言論弾圧を受けた歴史的事実がある。それ故にこそ私はかく具体的に挙げてお尋ねしておるのでありますからして、どうか一つかような意味において具体的に明確な答弁をして頂きたい。的をそらすことなく明確にお願いしたいということを繰返し繰返し要求いたしまして、私の再質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣大達茂雄登壇拍手
  41. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) お答えいたします。  中教審の審議につきましては、くどくお尋ねになりますが、当時の実情を申上げます。中教審の審議に当りまして立法措置を講ずる。こういうことは初めから前提とされておつたようであります。そこで一部の委員の方から、そうであるからして具体的な法律案を作つて審議に付してもらいたい。そういう話が出たのであります。これに対しまして当時余り時間的の余裕がありませんので、その案は少数で否決されまして、そうして具体的なものだけでなくても適当に立案してもらいたい。こういうことに落ちついたのであります。ただ、そのときに立案が済んだらば、当審議会に内容を説明をして欲しい。こういう附帯的な希望がありました。そこでこの法律案がいよいよ確定をいたしましたときに、中教審のほうには、それを説明をして了承を求めたのでありまして、今相馬君の言われたようなことはないのであります。  それから山口県日記については、先ほど具体的に各場合についてはつきりと申上げたつもりであります。  次に、請求を待つて罪を論ずるということが、「外部の権力を誘致することになりはしないか。」こういうことでありますが、私はさようには考えません。(拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  42. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答え申上げます。  再質問で御趣旨がよくわかりました。教育委員会には、政党員が混じるから、「そういうふうに政党色が混じり得るような教育委員会の請求に待つという、そういう考え方が危いのじやないか。」こういう御質問だと思います。そこでこれは御承知と思いますが、警察法の場合の公安委員と同じでございまして、公安委員はいろいろな政党の方が混つておりますが、むしろ今度の警察改正では、そういう政党員の混つておる公安委員を尊重する、尊敬の念が薄いのではないかというお叱りをときどき野党から受けたわけでありまして、従つて党員が混つているから、委員会制度、そのような種類の委員会制度にいろいろの判断を任せるのは危険だという御議論は、少々承服いたしかねる次第でございます。  もう一つ山口日記、これは山口日記一冊全部がいいとか、悪いとか申すのはむしろ軽率だと思います。山口日記の中を調べまして、先ほど申上げましたような、ああいうことが明らかになれば違法であり、ただ単に政府の政策或いは政府反対の政策が漠然と批判されておれば、それ自体は違法にならない。要するに個々の場合、正当に慎重に分析いたしたいと申上げた次第でございます(拍手)     —————————————
  43. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 笹森順造君。    〔笹森順造君登壇拍手
  44. 笹森順造

    ○笹森順造君 只今議題となつておりまする内閣提案教育関係法案に対しまして、改進党を代表して若干の質問をいたし、総理並びに関係大臣お答えを得たいと思います。すでに、与野党議員の諸君からの質問に対する政府答弁もあつたのでありまするから、できるだけ私は重複になる点を省いてお尋ねをいたします。併し問題はやはり今まで論議せられました点にも触れると思いまするが、まだ明快にされておらない点についてのみ、重複にならずにお答えを願いたいと思います。  第一に、この立法の性格に対してでありまするが、私どもは今後これを審議し、或いは又賛否を決する上に大事でありまするから、お尋ねしておかなければならない。先ほど来言われておりまするように、本法案は憲法に違反するものではないかという質問もありましたが、私はこれは憲法の精神に背馳する反動立法ではないかという角度からお尋ねしたいのであります。(拍手)それは申上げるまでもなく、すべての国民は社会的の地位にかかわらず、政治活動については何ら差別せられない、或いは又すべての人が思想及び良心の自由についてはこれを侵してならない。又言論の自由は、これは保障するというのが、憲法の規定であることは御承知の通り、ところが今までの論議においても重要な点が見落されておるのであります。私どもが憲法の規定において刑罰を受けない、但し法によるならば刑罰を受けるとされておる。つまり法律ができなければ、私どもは当然持ち得るところの自由の権利がある。法ができたためにこれが束縛されるということになる。而もこの教員立法がこういう意味で刑罰を付する法律として枠を作ることになるのであります。この意味で今立法者が目当てとしておりまする少数の人以外に、大多数の教育に携りまする者の、その政治活動が無用に制限せられて行くという結果を来たすのではなかろうか。(「その通り」と呼ぶ者あり)これが即ち反動立法であり、而も又最近この与党が、或いは又この政府が企てます多くのその立法が、こういう工合に次から次へと自由の枠を狭めて行くということに対してのこの疑点、これがまだ明確にされていないのでありますから、この点についてどういう意味でこれがなされておるのか。ここをはつきりするのでなければ、民主主義を守ろうとする私ども国民の意思に反することになるのでありますから、明確にしておきたいのであります。(拍手)  第二の点は、教育基本法に対するところの現政府の態度であります。この基本法に再検討を加えて根本的にこれを改める意思があるかどうか。この教育基本法は御承知のごとくに昭和二十二年の三月三十一日に公布せられましたところの立法であり、これは日本の国がまだ戦争後間もなく、占領下にありました当時の立法である。現在の政府は、いろいろな法律日本の国情に即しないために、これを根本的に改廃して行かなければならぬということを言つている。この点について一体基本法をどう考えているのか、この基本法をいろいろ改める考えがあるのかないのか、これはもう一度聞きただしておかなければならない。先ほどの御答弁では、この基本法の通りに行うために、今の罰則の規定が要るのだというような意味のお答えがあつたようでありますが、これはとんでもない話だと思う。この点についてどうもこの立法の性格を私どもは疑わなければならない。従つて、飽くまでもこの教育基本法の精神を堅持しようとするつもりであるのかどうかこれは後の質問に関係いたしますが、なお政府方針を明確にして頂きたいと思います。  第三には、一般教育者に対する政府の認識と態度についてであります。我が国教育の振興であるとか、或いは又健全なる発達であるとかというものは、これはすべての日本教育家を信頼して、その協力に待つてこそ、初めてでき上るべきものであります。(拍手)ところがこの立法は、それらの先生に大きなる疑いをかけ、又これを相手として反対的な態度をとつて、罰則まで設けてやろうというその態度について私ども了解ができない。従つて政府は公務員或いは地方公務員立場にありまする公共団体のそういう地方における先生方、つまり今日の小学校、中学校の先生方の大多数がそういうような人であるという認識であるのかどうなのか。私どもは今日まで日本教育が振興して来て、そうして或いは日本の民主化であるとか、或いは世界の平和に対する寄与であるとか、或いは又そういうことのために先生方が一生懸命やつて、そうして今日まで良識ある公民を教育するために努力して来たこの努力を私どもは認めなければならない。(拍手)現政府はこれを否認しておるのであるかどうか。このことについても、大体文部大臣お答え或いは又政府教育者に対する態度を、先ず明確にしておいて頂きたいと思うのであります。第四には、本二提案の狙いは一体何であるか、どうもこの狙いがはずれておるように私には思われてならない。これが破壊活動を是認する政党であるとか、そういうものの活動を禁止しようというのであれば、すでにこれは破壊活動防止法というものがある。或いにそれでもなお足りないというのであるならば、この学校教育法の第九条の第四項というものがある。それでもなお足らないのであるならば、徹底的にそういうものを取締ろうというようなお考えであるならば、どうすればよろしいか。それには非日活動防止法のようなものでも考えられなければならないが、一体そういうことを法務大臣、ほかの人が考えたことがあるかどうか。併しそれをやらないのが日本の現在の立場である。だからいろいろ苦心した結果、この教育世界までこういう反動立法と批評せられるものを持つて来て、そうして先生がたに対して非常な苦痛を与えるということが、これがとんでもないものの考え方で、こういう教育世界に、こういうことをしわ寄せをするということは、これは間違いではないか。特に文教の府に責任を持つところの文部大臣に、はつきりとその認識を聞かしてもらわなければならない。(拍手)そこでこの二つの立法がありましても、果して今意図しておるところのもの、ことごとく遂げることができるかどうかということが非常に問題になる。先ほど来、いろいろ法務大臣からも、言葉の上で非常な不明確なところがたくさんあつて、そこでそれをどこに線を引くかということをお尋ねがあつても、また明確な御答弁が出ておらんのです。ですから従つて、これは全く魂の抜けた案山子立法であるとさえ言われておる。(拍手)さようなものをやつて、或いは又むしろ逆にこれが政府の考えておらないような紛争を来たすようなものとなる憂えさえあるということに気がついておられないのか。果してこの法律でお考えになつている通りのことが全部遂げられると信じておられるのかどうなのか。この点をお聞きしたい。  第五に、本二法案は選挙対策法案であるという非難がある。先ほど来、日教組日教組ということをいろいろと言われております。私はこれは日教組こそ迷惑であると思う。本当の点はこれは現政府を支持しておるところの与党の選挙対策として、或る他の政党を目当でやつておるものではなかろうか。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)それがために大多数の学校の先生方は非常な迷惑を受けるということになりはしないかという点なのであります。この点をはつきりしておいて頂かなければ、我々が今後の審議において非常に困るのでありますから、そういうことをお隠しなさらずに、本当の世はこうなんだよと言つて教えて下されば、私はそれに対する対策が又できるのであります。併し私どもは今後のこれは審議の過程に待つべきだと思います。  そこでその次にお薄れしたいことは、先ほど来、だんだんお話のありました非常なむずかしい点であります。政治的教養はこれは尊重しなければならない。政治教育もしなければならない。併し政治の教養、政治教育というものは或る政党の政策を課題にすることを回避しては行われ得ないのであります。従いまして政党の政策というものそれ自身が良識ある政治的教養の実体をなすものだということだから非常にむずかしくなる。ですから法務大臣に、はつきりとこの点を、常識で以て行くというようなことでは駄目です。はつきりこれはやはり条文の上で、法文の上でこれを明示しなければ、これはどうしてもで音ないことでありますから、この点についてやはり明確なことを、先ほどのような常識的なことでなく、どういう立法をするのであるか。そのことを明らかにしておいて頂きたい。  第七には、これは何故にこの対象を義務教育学校だけにしたか。これは政治中立確保法でありますが、これはどうしてそうし先か、この点。これは実際に政治活動をできる選挙権を持つておるところの学校の学生に対する、その影響は、全くこれは考えておらない。このことが、それでこの立法の精神に、本当の狙いに一体これは合うつもりなのかどうなのか。こういうようなことなども、この機会にもう少し明らかにしておいて頂きたい。  その次の点は、これは特に地方自治庁長官にもお尋ねしたいのでありますが、今までの地方公務員に属するところの地方の先生方、それらの方々に国立学校と同様に、公立学校の先生方も政治活動制限をすることは、その特質に鑑みてこれは当然だと、何も間違いないということをおつしやる。これは自然庁長官として、地方公務員に対して非常に不親切なものの言い方だと私は考えざるを得ない。(拍手)なぜかと申しますと、これはやはり責任と義務、権利と義務が、条件が併行せられなければならんのであります。つまりこの問題は今までたびたび論議されましたけれども、この教育公務員の国家性を持つているということは、それはわかるが、併しながらその感化を与える地域は、これは違うので、そこに国家公務員地方公務員との権利の或いは又義務の違いのあるところが、そこが明確なんです。その境界を侵して、これを一般にするというところに、やはりこれは地方自治庁長官としては、地方公務員に対するはつきりとした保護の考えを持つべきものを、反対にこれは義務だけ与えて、而して特権を与えないというところに、非常に私は片手落ちになりはしないかという点を、お尋ねするのであります。  その次に、この法案学校教育内容の干渉になりはしないかという点であります。これは干渉にならないということをしばしば申しております。併しこれは非常に私は憂える、つまり何か事犯として容疑が起りました場合に、先ほどからだんだんお話がありますが、その主体となります問題についての委員会の意見が、各政党を異にしているごとくにいろいろ変つた意見が出て来る。従いまして、そこに学校の中にいろいろな政争の紛議を導入するという心配は全然ないかというと、私はないとは言われないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)今までいろいろ論議せられましたところのいろいろなもの、例えば自由党の党報が学校に渡されたとか、或いは又山口県の日記がどうだとかいうことに対します判定は皆違う。そうすると、そこでいろいろな紛争が学校の中に来るということになつて来ることが、非常に懸念されることになりますから、この懸念をどうして払拭するかということを言つて頂きたい。更に又被疑者が出た場合に、それは本当に裁判を受けて、それは囹圄の身となる人もありましようし、或いは又嫌疑が晴れるということもありましよう。こうした場合に、こうした法律が出たために、学校生徒や或いは学校の先生方が迷惑をすることを、この法律で以て、改めて日本教育の中に導入するということは、余ほど考えなければならないことだと思うのであります。(拍手)この点についてお伺いしたい。  最後に一点伺います。それは大達文部大臣は、教育基本法に罰則の規定がないということは御承知の通りですが、ところがこれは不満足らしい。然るに最も進歩した法治国においては、国民に進むべき道を明らかにして、それを国民の良識に任せて、その自立、自主的な考え方によつてその行動をするということで、罰則を設けないということが理想的なものであります。(拍手)それはあえて国民の自由を束縛するような、こういう法律を作ることを得々としておるがごとき言動は、誠に慎しまなければならないと私は考えるのであります。(拍手)これは日本民主化の動向に対して、現政府が三思猛省しなければならない点でなかろうかと思います。それよりももつと明朗潤達な、そうして先生方と共に、日本の堅実な教育をして頂きまするように、もつとい立法をするということの御用意がないのかどうか。これをお尋ねいたしまして、私の質問を終ります。(「改進党最後まで態度を変えるなよ」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  45. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  本法案は「憲法違反の疑いのある反動立法ではないか」という御質問でありましたが、今回のこの二つの法案は、決して憲法の保障する基本的人権を侵すものではないと政府では解釈いたしております。教育者ばかりでなく、すべての人が、いわゆる心の欲するところに従つて則をこえないという域にまで達しますれば、法律も必要でなく、勿論、今強い御議論のありました罰則等は必要でないのでありまするが、現在の教育界の現状がこの立法を必要としておるのであります。併しながら、中立性を損わない、偏向を持たない教育者は、何らこれによつてその行動につきまして制約を受けるものではないのでありまするから、その点につきましては、今お述べになりましたような御心配はなくて済むと考えております。それから「教育基本法に対する政府方針はどうか、これを改正する意思はないか」という御質問でありましたが、教育基本法は、現行憲法の精神に則り制定されたものでありまして、現在これを改正する必要はないと考えております。  それから「一般教育者に対する政府の認識は一体どんなものか」という御質問でありますが、全国五十万の教育者の大多数は、穏健中正な考えを持つて教育従つておるのでありまして、政府としては、できるだけこれらの教育者の協力を得て、教育の振興を期して参りたい考えであります。今回の法案は、これらの教育者を処罰の対象としておるというようなことは全然ございまけん。  以上お答え申上げます。(拍手)    〔国務大臣大達茂雄登壇拍手
  46. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) お答えをいたします。  「この法律が出る結果として、非学に教員を困らせるようなことになるのではないか。」こういうお尋ねでありすすが、これは決して教員を困らせるとか、或いは教育を悪化させるとかいう意味は無論あり得ないのであります。この法律によりまして、教員を守り、そうして教育を守りたい。かような考え方から、この法律案を提出した次第であります。それから「この法律案は、一種の自由党の選挙対策ではないか」という(「その通りだ」と呼ぶ者あり)御疑念でありますが、これも只今申上げますように、これは必ずしも自由党とか或いは改進党とか、共産党とか、そういうことに限定をしておるのではないことは御承知の通りでありまして、自由党を支持し、又は反対するような教育をすべしと、こういう扇動をした場合も、この法律に抵触するのであります。現状を申上げますというと、いわゆる左翼の教育というものが行われておるということは事実であります。併し法律としては、決してどつちだからどうと、こういうことではないのであります。いわんやこれが自由党の選挙対策というようなことであり得ないことは申上げるまでもないのであります。  その次に、「この法律の対象を義務教育だけに限るのはどういう理由であるか。」こういうことでありますが、これはできるだけこの法律が、仮に濫用されるというようなことがあるとすれば、(「濫用されるよ」と呼ぶ者あり)これは非常に教育の上に暗影を投ずる面がありますから、従つてできるだけこれを必要の限度に抑えたい。こういう考え方をしたわけであります。そうしてこの場合、義務教育が最も教育の基本であり、且つ又、まだいわば全然政治的な判断力のない純白なる児童生徒に対して行われるものでありますから、この義務教育だけを対象として、それに対して側から不当な助言をして妙な教育をけしかける。そういう反社会的な行為を取締りたい。こういう考え方であります。  それからその次に、「この法律の結果として教育の面に、警察その他の権力の導入となり、或いはその干渉を誘致するということになりはしないか。」これは私どもとしてはあり得ないように考えておるのであります。ただ勿論これは罰則を以て取締ることでありますから、教育委員会において請求があれば、そこで検察官、警察が動き出す。これは当然でありますが、併しこれは学校内の先生を科罰の対象としておるものでないことは前々から申上げておる通りであります。何人といえども、こういうことでありまして、学校外から学校に向つて不当な影響力を持つた、妙な教育を扇動しようとするのを取締るのであります。この取締は場合によつて学校で調べる場合がありましよう。ありましようけれども、併しこれはすべての犯罪について言われることでありまして、この場合だけ特にこれが行き過ぎである。一旦犯罪として容疑が成立した以上は、これはどの場合でもこの犯罪の捜査ということが行われる。これは学校であるから、如何なる場合においても、警察官が正当な理由があるにもかかわらず、一歩も入つてはならん。かようなことは無理であります。ただそういう場合が、この法律の結果として当然に頻々として誘致されるかということであれば、それは絶対にないものど私どもは存じております。  最後に、罰則のことでありますが、これは緒方副総理からお答えになりましたので、私から改めて申上げるまでもないと思います。(拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  47. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えを申上げます。  御質問の、「本法案規定されております罰則によりまして捜査が行われる場合、お前の常識でいい加減にやられては困る。」こういうお叱りでございます。本法案の場合、著しく教育中立性維持が害された場合でも、教育委員会の請求を待つて発動するのでありましで、而も教育委員会が、これは違法性を帯びていると言つても、自動的に法務省、検察庁がそれを受けるのではないのでありまして、詳しく申上げれば、それぞれの地方検察庁で違法性の有無を調べまして、最後の判断は、独断でいたしません。その地方々々の高等検察庁に行き、最後に最高検察庁に来て、スクリーンを何度もかけて、共同協議をいたすのでございますから、私一人の常識とか知性とかいう問題ではないのでございまして、大体お察しのように、こういう問題は非常に慎重にやつております。この間の国鉄ストでも、一々の場合のケースを検討いたしまして、多くの場合、内部の行政処分に任すような決定をいたしたのでありまして、法の発動による罰というものは慎重にやつているものと御承知を願いたいと思います。  それから文部大臣からもお答えいたしましたが、「選挙の場合等、一党一派のこれは政策に使われはしないか」ということでございますが、今文部大臣お答えになりましたように、例えば自由党でなければいけないとか、自由党とすぐわかるようなことをしても、忽ち違法性に引掛かるのでございますから、自由党も、仮に自由党を引合いに出しますれば、自由党も、それだけ制約を受けるのでございまして、一党一派がこれによつて大いに権威を振うという余地は、法の性質上むずかしいと思います。(拍手)    〔国務大臣塚田十一郎登壇
  48. 塚田十一郎

    国務大臣(塚田十一郎君) 国立学校教職員公立学校教職員と、「感化を与える地域の範囲は違うのではないか」というような御意見でありますが、一応御尤もだと思います。併しそういう御議論でありますれば、例えば国立学校である小学校と、公立学校である小学校地域の差が、今のような扱いの差で妥当であるかどうかという問題もあると思うのです。併しそういう問題は一応別にいたしましても、今までの法律は一応御指摘のような考え方で規定されておつたことは事実であります。ただ残念ながらその法律の下で現実に施行されて来た教育実情というものが、それでは不適当であるという認識に立つて、今度こういうような法律を作らざるを得ないということになりましたので、これは残念ながらその点は認識の相違でございますと申上げる以外に方法はないと思います。     —————————————
  49. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 須藤五郎君。    〔須藤正郎君登壇拍手
  50. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 吉田総理は、汚職問題のために国民の前に顔を出すことができないのか。この重大法案が提出されておるときに議場に出席しないことはけしからんと思う。国会軽視も甚だしいと思う。これば我が無所属クラブ一同の大いに不満とするところであります。  以下私は日本共産党代表して、昨日提出された二つの教育破壊法に対して数点の質問をすることにします。過日の文部委員会において、文相は情勢の変化によつてこの法案を出さざるを得なくなつたと答えておる。私は先ず第一にこの情勢の変化という点に関連して、総理大臣並びに文部大臣に質問する。  昨年十月MSA軍事協定の下準備としていわゆる池田・ロバートソン会談が行われた。この秘密会談の途中十月二十五日の外電が報道したところの会談に関する日本議事録草案こそ、何故に吉田政府がこの教育法案を提出したかということをはつきりと示しておると思う。それによれば、日本側は、「占領八年に亘つて日本人は如何なることが起つても武器をとるべきでないとの教育を最も強く受けたのは防衛の任に先ずつかねばならない青少年であつた」と、再軍備の困難を力説しておきながら、而も結論として、「会談当事者は日本国民の防衛に対する背任感を増大させることが最も重要であることに同意した。日本政府教育及び広報によつて日本に愛国心と自衛のための自発的精神を助長することに第一の責任を持つ」と、城下の盟を立てておる。これは再軍備の困難を主張することで、日本の青少年を如何に高く売りつけるかという魂胆にほかならないのである。これはMSA軍事協定がアメリカの軍事目的のため日本の人的資源、物的資源その他すべてを捧げる義務日本に強要するものであるという性格から来る当然の恥ずべき帰結である。こうして国民にも国会にも諮らず、日本の青少年数十万がごつそりアメリカの肉弾として売渡されておる。これは古来未だ曾つてどこの国が他国から自国の愛国心を強要されたという歴史を持つておるか。一体外国に対して約束する愛国心とはどんなものであるか。これに対する総理並びに文相の明確なる答弁を求める。(拍手)  現在吉田政府は、MSA再軍備を受入れるために国内態勢をフアツシヨ化し、軍国主義化しようとしている。本法案こそはMSA再軍備態勢の重要な一環であり、そしてこの強引な実施こそは吉田の背後にいるアメリカ戦争勢力の要請なのである。吉田政府が本法案警察改正、保安庁法改正、軍機保護法などと一緒に強引に通過させようとしているゆえんはここにあるのである。子供を心から愛している先生、父兄、母親等、すべての平和を愛する国民によつて、最大の打撃を受けているのは誰であるか。それは日本を再軍備し、日本の青少年の犠牲によつてアジアを侵略しようとしているアメリカである。日本平和教育が行われている限り、アメリカの望む日本軍備の野望を果すことは絶対にできないのである。それ故にこそ、池田・ロバートソン会談において教育が特に重要問題として取上げられ、日本国民の愛国心の喚起に名をかりて、日本平和教育を抹殺しようと企図しているのである。総理並びに文部大臣日本国民の前に、日本の総理、日本文部大臣としてごまかしのない真実を発表すべきである。  第二に、政府教育中立性という尤もらしい言葉を使つてこの二法案を成立させようとしている。併し如何なる時代にも、教育の中立などということはない。それは政府の露骨な意図を国民の前にごまかそうとする煙幕にほかならない。教育基本法には教育中立性という規定はない。時の政府の権力や意向によつて教育方針が左右されないことを認つている。時の権力によつて教育がゆがめられることなく、教育本来の目的を達成すべきことを特に強調している。太平洋戦争を招来させたのは、曾つて日本教育日本帝国主義者によつてゆがめられ、軍国主義教育が施された結果ではないか。かかる過ちを繰返さないためにこそ教育基本法が作られたのではないのか。文部大臣は如何に考えられるか、所見を質したい。  更に私は、政府中立性の名をかりて現在如何なる教育行政を行なつているかを具体的な例を挙げて解明しよう。政府山口の日記帳事件を取上げているが、私が国会から派遣されて現地調査を行なつた結果は全然逆である。岩国市に行つて先ず驚かされたことは、市長がパンパン組合の顧問であり、市教育委員長が基地設営の土建組合の顧問弁護士であることであつた。あの山口小学生日記帳が国際的友好を傷つけるという名目でこの二人によつて取上げられたことは、いわれのないことではない。市長たちが国際友好を讃美し、運動会の賞品やピアノの寄贈に感謝しておるときに、一方においては軍事基地のために特飲街が町の中央に作られ、パンパンが町を横行し、その影響は古き都としての岩国市の風紀を根抵より破壊し、岩国市小学校児童に与えた影響は、少くとも国を愛し教育を愛する者ならば、黙つておられない状態である。ここに私は日本全国の基地をめぐる子供の問題に関する資料を持つている。岩国の基地周辺の中、小学校における性に関する調査資料もここに含まれておるが、私が到底ここで口にすることのできないほどのものであります。かかる状態に対し、山口教組は軍事基地反対の闘争を開始したのであるが、その報復手段として、パンパン組合の顧問市長、基地設営の顧問教育委員長が、この教師活動を一党一派に偏した活動であるとして問題にし、文部当局又これを支持し激励すると共に、全国的な平和教育の弾圧にこれを利用し、今回の法案提出の直接理由としておるのである。大達文相の精神は、この市長らの精神と相通ずるものではないか。  もう一つ、いわゆる「赤い教育」で問題となつた群馬県の伊勢崎高校の生徒盟休事件についても一言述べなければならない。この大げさに新聞紙上を賑わした事件の火付役は同校の一教諭であり、その人物は右翼フアツシヨ団体である殉国青年隊と密接な連絡をとると共に、彼の私兵のような一部生徒指導して、千百人もおる生徒中の一クラス四十八名の生徒を、わけもわからず半ばおどかしてやらせた事件である。一方制服を着た殉国青年隊員たちは、前橋及び伊勢崎市内を自動車に乗つて駈けめぐつて宣伝し、ビラを撒き、更に授業中の当学校の正門から侵入し、アジ放送をするなどの活動を続けたのである。併しながら、県教育委員会は教育長の談として「赤い教育が行われたとは認められない」と声明し、この策動は失敗に帰したのである。この殉国青年隊は、現在東京都下初め全国的に「日教組を葬れ」のポスターを貼りめぐらし、又今問題になつている保全経済会から表向きにも資金の援助を受けているようであるが、この背後関係並びに資金網について政府は如何なる事実をつかんでいるか。又これは右翼に連なる自由党の別働隊ではないか。更に、目下アメリカの国際的戦争謀略者アレン・ダレスが来朝しているそうだが、アメリカ諜報機関と殉国青年隊の関係はどうなつているか。これらの諸点について法務大臣の明確な答弁要求するものであります。これらは共に本法案を通過させるために仕組まれたところの陰謀であり、本法案通過の地均らしのために行われたものであることは明白である。このように教育中立性違反の美名の下に平和教育を弾圧している政府は、軍国主義教育の復活、君が代教育の復活を公然と進めている。この場合には教育中立性などは問題にもされていないのである。過日文部委員会において、同僚高田なほ子君が秋田市の某中学校における八紘一宇の教育について質問しているが、八紘一宇の教育とは侵略戦争鼓吹の教育であることは明らかである。而もこのような再軍備目当ての教育破壊政策の根源地は、文部省にあることも今や明白である。曾つて警察官僚大達文相の下にある初等中等教育局長緒方信一君は、戦時中もつばら特高警察畑を歩き、大達文相が陸軍司政長官としてシンガポール市長時代の部下であつた。現同局地方課長斎藤正君は同じく同市軍政部文教課で働き、侵略教育の片棒を担いだ男である。又大達文相により文部次官に抜擢された田中義男君は旧内務省特高警察課長をやり、又同思想局思想課長などを歴任したことは天下周知の事実である。  第三に、法案の性格について質問する。この二法案は簡単であるが、如何ようにでも拡大解釈できるように作られてある。これは治安維持法や戦後の悪法である破防法と全く揆を一にするところであり、フアツシヨ法の本質である。  さて、学校の先生は昭和二十六年地方公務員法施行以後、学校に勤める本件として次のような宣誓書に署名し、これを教育委員会に提出しておる。「私はここに主権が国民に存することを認める日本国憲法を尊重し、且つ擁護することを固く誓います。」ところがこの法案では、憲法改正を主張する政党が一方に存在するために、学校教師がこの宣誓の通り平和憲法を守り戦争反対する立場から、又主権在民の立場から教育をすれば、教育中立に反するとして(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)犯罪の対象にされてしまうようにできている。これは明らかに憲法違反ではないか。法相並びに文相の見解を質したい。平和は勿論のこと、人権の擁護も、汚職の批判も、特定政党反対するに至らしめるに足りると一方的にみなされ、犯罪的な教育となり、教師をこのように教唆扇動したとしては、講演をして教師に感銘を与えた本学教授は犯罪者にされる慮れが十分にあるということになるのである。又現在子供教育を守るため、先生たちが父兄と共に行なつている「給食費を国庫負担にせよ」という運動も、「PTA会費を安くせよ」という運動も、「一年生の教科書の無償配付を中止するな」という運動も、子供教育を守るための運動は、すべてこの法律の名において禁止され、これを行う教師は犯罪者となるのである。(「そんな馬鹿なことがあるか」と呼ぶ者あり)そもそも教師は何も好きこのんで政治活動をやつておるのではない、好きこのんで政治活動をやつておるのではない。吉田内閣多年の悪政によつて教育予算は削られ、教育環境は破壊されておる。良心的な教育者である限り、今日父兄大衆の生活を守り、環境を守り、延いては愛する青少年をアメリカの肉弾にしないために闘わざるを得ないのである。然るに政府教育者を骨抜きにし、権力の前にひざまずかせ、思うままに反動教育を行おうとしておる。これこそアメリカに対する忠勤法案であり、MSAの教育版ではないか。文相に尋ねるが、世界のどこにこのような破廉恥極まる悪法があるか示してもらいたい。曾つての東条軍閥時代といえども、かかる悪法は作られなかつたのである。諸君はかかる悪法を作ることによつて教育を自分達の思うままに歪め、そうして日本の青少年を軍国主義と戦争に駆り立てようとしているが、この企らみは成功するものであろうか。これは成功しない。必ずや平和を愛する日本国民の反撃によつて潰され去らざるを得ないのである。  吉田総理は二言目には道義の高揚を口にしておるが、今日の底知れぬ汚職をどう考えるか。かかる汚職政府の汚れた手によつてかかる悪法が作られるなら、日本の将来はどうなるか。吉田汚職内閣は、日本教育を口にし、道義の高揚を云々する資格は全然ない。むしろこうした下からの反撃を恐れ、これに触れさせないように企らんでいるのがこの法案であると思います。
  51. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 須藤君時間が……。
  52. 須藤五郎

    ○須藤五郎君(続) たとえ国敗れ、植民地にされようとも、青少年の教育が真に正しいものであるならば、やがて日本は国の独立と自由を回復し得るものと我々は確信しておる。日本の将来はかかつて……。
  53. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 須藤君、時間が参りました。
  54. 須藤五郎

    ○須藤五郎君(続) かかつて青少年の教育にある。さればこそ、青少年に対し汚職によごれた政府の奴隷根性を押しつけんとするこの悪法に対し、(「時間時間」と呼ぶ者あり)今や全国民反対して立ち上つておるのであります。(拍手、「共産党反省しろ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  55. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 本法案と池田・ロバートソン会談との間に関係があるのではないかという御質問でありますが、池田・ロバートソン会談は、私的会談でありまして、私十分に内容を知りませんが、この法案とは全然関係はございません。  それから政府アメリカから愛国心を強要されておるのじやないかという御質問であります。国際共産主義者の言われる愛国心というものがどういうものであるかを私は存じませんが、私どもの愛国心は、自分の住んでおる国が守るに値いするその自覚の上に盛り上つて来るものでありまして、決して外国から強要されてできるものではございません。その点においては、はつきりと違つた思想に立つております。(拍手)    〔国務大臣大達茂雄登壇拍手
  56. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 教育には中立性というものはないのだというお話でありまして、そうしてそれを前提にしていろいろ教育について討論をされましたが、御所論に対しましては、私は全部反対であります。それから又御調査になつた各地の教育実情に関する御所見も承わりましたが、これもその結論に対しては、私の所見は全然逆であります。それから文部官僚についていろいろ言われましたが、これも大部分は嘘の皮であります。(拍手)  それからなお、後半においていろいろのことを言うて、この法律を悪法なりというお話でありましたが、若しこの法律がそういう内容のものであれば、確かに悪法であります。併しながらそれをこの法律にこじつけて、これを教育破壊法と言われるということにつきましては、何ら答弁を申上げる必要もないことであります。(拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手〕、
  57. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答え申上げます。  今の憲法には軍備は設けていけないという、そういう精神に基いて、軍備は設けてならんといつた場合、罰則に触れるかどうかという大よその御質問であつたと思います。憲法の精神に副う教育というものは、本法案に触れないことは勿論でありまして、御承知と思いますが、第三条第二項にもその趣旨が書いてございます。従つて軍備の是非について、それだけを御論じになつても罰にはなりません。ただ再軍備をするどこの政党がいけないとか、或いはそのどこの政党と明らかにわかるように上手に言つて軍備の是非と結び付けると、この法案の罰則に触れる次第でございます。(拍手
  58. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      —————・—————
  59. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 日程第二、しやし繊維品の課税に関する法律案。(趣旨説明、前回の続き)  昨日の小笠原大蔵大臣の説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。青柳秀夫君    〔青柳秀夫君登壇拍手
  60. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 私は自由党代表いたしまして、今回提出せられましたしやし繊維品の課税に関する法律案について政府所信を伺いたいと存ずるのであります。  先ず最初に本法律案に関連して、租税に対する基本方針についてお伺いをいたします。政府は、先に昭和二十九年度予算の編成に当りまして、緊縮財政方針を堅持する建前を表明し総予算額を一兆円以内にとどめたのでありますが、これに伴い租税制度につきましても、相当大幅の改訂を行い、所得税、法人税等の直接税の軽減調整を図る一方、今回提案せられました奢侈繊維税のほか各種の間接税を新設或いは増徴することにいたしておるのであります。かように政府が所得税等について負担の軽減を期せられました点については、誠に適切なる措置として敬意を表するのでありますが、これが補填を間接税のみに求めんとすることにつきましてはいささか疑義を有するのであります。申すまでもなく課税の根幹は納税者の担税能力に即応しなければならないのでありますが、直接税においては各人それぞれの資力に適応せる課税をなし、負担の均衡を期し得られるのに反しまして、間接税においては納税者個々の担税力の大小如何にかかわらず一律に課税せられるために、いわゆる大衆課税となり負担の公平を失する場合が多いのでございます。現在でも我が国の間接税の比率は相当高くなつておりまして、今参考のために各国における間接税の比率を見まするのに、昨年度における大蔵省の資料に上れば、アメリカは一一・四%、フランスは一一・三%、ドイツは二一・六%、イギリスは四〇・八%に対し、我が国は四四・七%となつておるのでありまして最も比率が高いのであります。然るに政府は直接税の軽減のめに更に間接税の増徴品を行わんとしておりますが、これは租税体系よりいたしまして間接税の行き過ぎとなり不合理の結果を生ずるものと思料せられまするが、大蔵大臣は如何なる御所見であるかお伺いをいたしたやのであります。  次に、本税を設定する理由につきましては先に一応の御説明を承わつたのでありますが、何故に新たに本税を評定する必要があるかの点を明確に伺いたいのであります。元来、税制におきましては「旧税は良税なり」との言葉のように、多年の慣行によつて課税せられて参りました税は、たとえ理論的には不合理でありましても自然に人心に馴れて比較的スムーズに納税せられるに反し、新たに税を設定する場合におきましては、相当の合理的の根拠に基いて課税せられました場合においても、これが実施はなかなか困難であるのが通例であります。それ故に新税を起して国民に新たに負担を負わしめることについては、租税制度全般に亘つて十分なる検討を加え、これが国民生活に及ぼす影響、或いは国家の産業経済に及ぼす影響等を慎重に考慮し、如何なる角度より眺めても妥当であり、他に方法のない場合においてのみ新税の設定は是認せられるものと言わなければなりません。かような見地よりいたしまして、今回の奢侈繊維税の新設につき政府はこれらの点に関してどのような検討を加えられたのでありますか。なお本税の収入見込額は八十五億円ということになつておりますが、この程度の歳入はかかる新税を創設しなくても一般の税収入の自然増収等によつて購い得るのではないかと思料せられるのでありますが、強いて本税を新設せんとする理由についての御所信を承わりたいのであります。  次に本税の課税物件についてお伺いをいたしたいと思います。これはその名の示すように奢侈繊維品ということになつておりますが、社会通念において真に奢侈品、贅沢品と認められる高級品に限つて課税せられるとすれば、社会政策的の見地からいたしましても又他の物品税との関係よりいたしましても妥当であり、経済自立のために国民の耐乏生活が強調せらるる現在においてはその必要を是認せられるものと思います。併しながら一口に奢侈品といいましても、見方によつては相当の幅があるのでありまして、若し歳入を確保することのみを目的としてその認定を誤りましたならば、大衆課税となり一般国民生活に及ぼす影響も大であり、又一面、国の産業経済の発展或いは文化の向上にも支障を来たす等憂うべき結果となるのでありますが、政府は法第一条に、その価格の水準を規定せられておりますが、これは如何なる根拠の下に、何を基本として設定せられたのでありますか、御説明を願いたいのであります。  次にお伺いいたしたいのは、納税義務者の点でありまする即ち如何なる段階において本税を課税するかの点でございまするが、本税の経過におきましては、或いは当初の段階即ち原糸に課税せんとする案、或いは最終の段階即ち小売業者に課税せんとする案もありましたが、いずれも極めて不合理の点が多く、これが決定を見るに至らなかつたとのことであります。今回の提案によれば納税義務者は、第一次製品の販売業者又はその製造業者となつておるのであります。これは極めて重要な点でありまして、最も慎重に考慮を払わなければならんと存ずるのでありますが、本法において課税せんとするいわゆる問屋段階の課税は誠に不明確でありまして、徴税技術上より見ましても、或いは脱税等幾多の困難、又不合理を伴うものと予想せられるのでありますが、政府は果して確信を持つてこれを決定せられたのでありますか。率直なる御意見を承わりたいのであります。  又納税義務者の側からいたしますれば、たとえ本税の最終の負担者は当該繊維品を購入する消費者でありまするけれども、直接の納税義務者は第四条に規定せらるる業者自体でありまして、果して課税の転嫁が法の予期する通り合理的に行えるか否かについては非常に不安を感ずるのであります。それ故に法の建前は、税の負担者は消費者となつておりましても、転嫁はむしろ現実の経済事情によつて支配せられ、実際は逆転して、これら納税義務者たる業者自身が負担者となることも明らかに予想せられるのであります。従いましてこれらの業者が、本税の新設によつて極めて苦しい立場に追込まれますることは否定し得ない事実でありまして、私はこの点を深く憂うるのでありますが、政府は如何なる信念の下に本段階における課税を決定せられたのでありまするか。又この方法が本税目的達成上最良の方法であるとせられるのでありますか。明確なる御答弁を伺いたいのであります。  次に、本税と繊維工業との関係につきまして通商産業大臣に御所見をお伺いいたしたいのであります。由来繊維工業は、我が国産業の根幹でありまして、我が国経済の発展は、繊維工業の振興に待つところが極めて大でありましたことは申上げるまでもございません。戦前あれほどの経済的飛躍をなした繊維工業の重要性は、戦後の現在におきましても、少しも失われておらないのみならず、一段と重要性を加えたものと言わなければなりません。特に輸出貿易の振興が極めて緊要なる現在の我が国といたしましては、あらゆる方途を講じても繊維工業の発展振興を期さなければならないと信じます。然るに今回の繊維品に対する課税は、如何なる体系においてこれが行われるにいたしましても、又輸出貿易そのものに対して一定の考慮が払われておるといたしましても、広く繊維業界に与える経済的の打撃、又心理的な不安は少くないのでありまして、本税が直接間接、我が国の繊維工業に与える影響は、決してこれを軽視し得ないのであります。かかる事態に関し、私は経済国策の大局より誠に憂慮に堪えないものを感ずるのでございまするが、通産大臣はこの点に関し如何なるお考えでおられるか承わりたいのであります。  更にお伺い申上げたいことは、本税の納税義務者は、卸売業者又は製造業者でありまして、いわゆる中小企業者でありますが、これらの業者は現在経済界の不況のために非常な苦痛を低めておるのであります。特に金融の引締等によつて、ますますその深刻の度を深めておるのでありますが、かような際に本税の実施に伴いまして課税の重圧を加えまするとき、業者を破局に導く慮れなしとしないのであります。政府はこれらの点について如何にお考えになり、又如何なる対策を用意しておられるのでありますか。特に金融対策につきましては、特別の措置を事前に講じ、不安を一掃する必要が痛感せられるのでありますが、この際業界安定のために政府の御所見を伺いたいのであります。  最後に、本案は附則において二カ年の期限を附して施行せられることになつておりますが、これは如何なる事由によるのでありますか。いやしくも新税を創設し、国民に新たなる負担を課しますることについては、十分慎重にこれを行い、誤まりなきを期すべきは申すまでもありません。併しながら一たび新税が確定せられました以上は、災害立法等特別の場合は別といたしまして、軽々にこれを廃止するがごときことは、徒らに租税をもてあそぶことともなり、厳に慎しまねばならないと存じます。然るに本法案においては、当初より二カ年に限つて施行するとのことでありますが、これは却つて本税に対し、政府に確信なきことを裏書するがごとき誤解を招く虞れがあると思われるのでありますが、この点に対するお考えを伺いたいのであります。  以上、各般について御質問を申上げましたが、繊維課税の問題は誠に重大でございます。本問題の発生以来、国民の関心はこの上に注がれ、なかんずく全国十数万の関係業者は、多大の不安の下にこれが成行きを注視しておるのであります。本法案の及ぼす影響は極めて甚大なものがあるのでありまして、十分なる審議を尽さなければならないと存じまするが、政府におかれましても、輿論の趨勢に鑑み、最善の努力を払われ、万遺憾なきを期せられんことを要望いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  61. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) お答え申上げます。この租税に関する基本方針について、青柳議員がお述べになりました直接税を主として成るべく間接税によるものでないという御趣旨については全く同感であり、特に大衆課税によるべからず、この御意見は全然私も感を同じうするものでありますが、今回の税は、これは青柳議員も御承知のごとくに、少額所得者に対する税の軽減を図り、又資本の蓄積上から税の軽減を図る等の目的から、三百数十億の減税をいたしました結果、多少従来の物品税その他が増徴いたしますけれども、それだけでは少し足らないところは、これを補足する意味もありますが、同時に今の日本実情から見て、奢侈を戒めて、そうして国内消費のできるだけ抑制を図つて国際貸借の改善を図りたい。こういう点に重きが置かれておるのでありまして、従つて、例えば洋服について言えば、出来上りならば二万六千円くらいのもの、毛布でみれば一枚一万円くらいのもの、こういうふうに、どなたが御覧になつても奢侈と見るべきものに課税しておるのでありまして、何らこれが大衆課税にならんことはよく御了承を願えることと思うのであります。なお、物品税につきましても、今回奢侈を戒しめて、国内消費を抑制する意味で相当大幅の課税をいたした分もございますが、これらも同様な趣旨から出ている次第であるのであります。  その次に、どうも八十五億円くらいなら自然増収で、それから賄い得るのではないかという御趣旨がございましたが、その点につきましては、私が予算提出のときに御説明申上げました通り、今の緊縮予算を実行して参りますると、相当これ又物価の五分乃至一割の下落を見込んでおりますので、従つて在来のごとくに自然増収等を見込むということは見込み得ないのが普通であろうと思われまするし、又国の予算を立てる場合に、どうかわからんといつたような自然増収を見込んで立てることは堅実を欠くゆえんでもございますので、均衡予算堅持の見地から、これをやめた次第でございまして、この点も御了解願えると思うのであります。なお、「納税義務者をなぜ卸売業者に置いたか」というようなお尋ねがございましたが、これは御承知のごとく、こういうものにつきましては、元の製造するところでかけるか、或いは先の小売のところでかけるか、こういうようなことが考えられて、一体奢侈の抑制という意味から申しますれば、消費者に転嫁し、消費者が、希望を立てやすい段階の小売業者に行くのが一番いいように考えるのでありますが、同時にそれは徴税上の問題もございまして、調べましたところが、小売商は実は十六万人からに上つておるのであります。十六万人からのことを、一々納税者の対象としてやりますことは、税法の上から見まして容易でございませんし、又徴収費等も相当多く要しまするので、それでは遡つて原糸或いは製造業のところに持つて参るということになると、この本税の趣旨から多少離れて来ることになるのであります。従つて大体において二方くらいと数が想定される卸売業におけるところの、税の捕捉の上から言つても、又これを消費者に転嫁するという物品税と同じような建前の筋から見ても、これがいいのではないか。こういう考え方で卸売に置いた次第であります。なお、「脱税はないか」という等のことがございましたが、これは相当な規模のものでありまするし、帳簿その他も相当整つておりますので、私どもは悪意で脱税する、これはどうも免れませんけれども、そういうような脱税は、先ずないものと実は考えておる次第でございます。  更に、「二カ年間にしたのはどういうわけがあるのか。」こういうことでございましたが、これは二カ年にいたしましたのは、私どもといたしましては、こういう線を、いわゆる日本の奢侈を戒しめて、国内消費を抑制して国際貸借の改善に資する。こういう見地から見まするならば、この緊縮予算なり、又それに伴う一連の政策が、金融の引締とか、為替に対する措置とか、外貨に関する措置とか、各種一連の措置が行われて参りますれば、これは国民の自粛によつて、だんだんとこういう贅沢な物は戒めて、むしろ国外に向けることに相成つて来るであろう。従つて先ず二カ年。こう私は申した。本緊縮財政も、今年で終らないで、やはり三十年にはもう一年続けねばいけまい。或いは都合によつては三十一年までやらなければならんと思うと申しましたが、そういつたような考え方から、実は本税創設の趣旨に鑑みて、一応二年間とした次第でありまするので、さよう御了承をお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  62. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。  繊維産業が、重要産業でありまして、而も輸出に占める比重が極めて多大であるということにつきましては御指摘通りと考えます。ところで今回の法案におきましては、生産品の数量からいえば七彩程度の、いわゆる一部の高級品のみを対象といたしておるものでありまして、これによりまして繊維産業全体に負担をかけるということは殆んどないと考えるのでありますが、特に輸出につきましては、免税措置をとることにいたしておりまするし、又高級品の消費が抑制されまして、むしろその面からも輸出の伸張になるかと考える次第でございます。  次に、「課税の場所が殆んど中小企業になつておる関係で、金融その他の面で中小企業者の圧迫になりはしないか」というお尋ねでございますが、御承知の通り、本法案によりまする本税の納期の日にちは、課税される繊維品を販売いたしました日の属する月の翌翌月の末日となつておりまするし、更に担保を提供いたしました場合には、更に一カ月以内その納期を延期することになつておりますので、結局本税は、販売いたしました日から最も短かい場合で九十日、最も長い場合は百二十日後に納付することになるのでございまするし、又担保等につきましても、実情に副いまして、できるだけ納税者の便宜を図るようにいたしたいと思いますので、この面から特に金融上の圧迫になるというようなことはないと思いまするし、又さようにいたしたいと考える次第でございます。(拍手)     —————————————
  63. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 小林政夫君。    〔小林政夫君登壇拍手
  64. 小林政夫

    ○小林政夫君 私は第一に、この本法提案に至る経緯について甚だ納得いたしかねるのであります。政府は当初は原糸課税というようなことを考え、又小売課税に移し、原糸課税の際には、原糸メーカーの非常な反対を受け、遂にその案を撤回した。小売課税ということになると、全国小売業者の非常な反対に会つて遂にそれをやめて、そうして今度はいわゆる卸売課税というようなところに持つてつたのであります。吉田首相は、陳情政治を戒めるということを言つておられるにもかかわらず、その舌の根も乾かぬのに、このような全く陳情によつて左右されたる税制を編み出すということは甚だ不可解であります。このように陳情さえすれば、強力なる運動さえすれば課税義務を免れるのだということであれば、政治に対する信頼を失うことになるでありましまうし、特に税制に対する国民の不信を誘致するのであります。この点について総理は如何ようにお考えになつておるか。次に、奢侈品課税ということは、或る意味においては国民の奢侈を戒め、質実剛健の気風を作興し、今の緊縮財政に合わした、国民の精神を引締める意味においてもいいし、又さような物の輸出を振興するというようなことで意味もあります。併しなぜそれならば、奢侈品税というものを考えないのか。物品税等もおおむね奢侈品にかかつておる状態ではあるけれども、物品税は、全部が全部課税客体は奢侈品ではございません。その見地から言うならば整理をしなければならん。奢侈品と銘を打つて、なぜ繊維だけを取上げなければならんのか。そもそもこの繊維課税というものを考え出された、当初繊維課税をやろうという意思は、こういうようなところにあつたのではなくて、国際価格と国内価格との二重価格、特に繊維の分野においてその点が甚だしい物について、国内消費を抑制して輸出をやらせよう。これは賛沢品であろうと、そうでなかろうと、要するに国内消費を抑えて輸出を振興する。こういう建前で、輸出商品としては花形であるところの繊維について目を着けられたものであると思うにもかかわらず、当初繊維課税を考えた意図とは変つて、いろいろの陳情その他の運動を受けて、ぐらりぐらり変つて、遂に何とか面子を立てるためにしやし繊維品と名を付けて、このような歪曲された提案になつたものと思うのでありますが、なぜ奢侈品の中の繊維だけを取上げなければならんのか。  次に、只今愛知通産大臣からも話があり、提案理由の説明の中にも、この本税の課税対象となるものは、小幅、広幅織物のそれぞれの生産数量の七%くらいであると言われたが、その推算の基礎を明らかにしてもらいたいのであります。  次に、先ほど青柳議員も触れられましたけれども、この金融引締のあおりを受けて、この課税責任を負わされるところの卸売業者である販売業者、これは大蔵大臣只今二万人とおつしやつた。大体二万人と推定されるのでありますが、その九〇%は中小企業者であります。甚だ信用力が薄いと言われておる小中企業者であります。而も今の緊縮財政及び金融引締のあおりを受けて、すでに或る程度の今倒産者が出ておる状態であり、今後ますますそういうことは懸念されるのであります。このような不安な状態にあるところの販売業者が、本法の第三条で期待をしておるところの、税負担は消費者に転嫁さすべきものである。消費者が負担すべきものである。こういうことを言つておるけれども、果して消費者に転嫁が可能であるとお考えになつておるかどうか。可能であるとお考えになるならば、どういうような事情によつてそれが可能であるとお考えか、お伺いしたいのであります。  次に、第十条によつて、販売価格等の申告をするように納税義務者に義務付けております。又第二十条によつて、こういう販売業を開業する場合には申告をする義務を負わされておるのであります。これらを見ても、この本法の施行に当つては納税義務者の積極的な協力を得なければ円滑なる徴税はできないはずである。逆に政府のほうから言うならば、納税者を信頼しなければ、このような税の円滑な徴収は期しがたいと思う。納税者を全幅的に信頼し、そうして積極的なる協力を期待するという建前の上において、本法は成り立つと考える。ところが最初に申上げたような経緯をとつて、一番今まで黙つてつたと思われる卸売業者、販売業者に納税義務を持つてつた。このようなことであれば、すでにそろそろと声が挙つておりますけれども、それらの人たちは、無言の反抗、憤りを恐らく持つておるに違いない。そのような人から、政府の期待するような満足な協力が果して期待できるでありましようか。  又第九条では、今まで見たことのない条文が出ておる。物品税等についても免税点の規定はあるわけでありますが、未だ曾つてみない、又間接税理論からいうならば甚だ不可思議なる規定が置いてある。即ち限界価額よりも高く売つたが、その限界価額に一五%の税金を加えたものよりも安く売つたものについては、限界価額を超えただけのものを税金としてとる。こんなことは間接税の理論からいうならおかしいのでありまして、そういうようなケースに当るものは、初めから限界価額以下でありますから、課税対象とならないのが当り前なんだ。こういうようなことは甚だおかしい規定でありますが、又別の観点からするならば、正直者が馬鹿をみて、ずるい者が得をすると、こういうようなことにも憂えられるのでありまして、一体こういう特別な特例としての規定を置いたのは、どういう趣旨なんでありますか。  以上のような事情を考えますと、一体政府はこの税の徴税に果して十分なる自信を持つておられるのかどうか、甚だ疑わしいのでありますが、その確信のほども聞きたいのでありますが、ここに八十五億と、こういう税収を予定しておられる。ところが予算が国会に提出されると同時に、配付された租税及び印紙収入予算の説明書の二十五頁には、繊維消費税というものは八十五億となつておりますが、その内訳はどうやつてとるのかというと、小売業者から一〇%でとつて八十五億という説明が書いてある。それが今度は卸売課税になつて税率は一五%だ。税収は変わらない八十五億だ。このように内容が変つたのならば、予算を組替えるべきである。たまたま八十五億という税収に変りがないから、そのままで頬かむりで行こう。尤も先ほどの租税及び印紙収入の予算の説明書には、用心深くも未定稿とありますから、あれは稿が定まつておらないからいいのだと言い遁れはありましよう。併しそうは行かん。そこで結局は八十五億という税収から逆算をして今のような課税が考えられておる。そうなると、果して真の税収があるような場合でなくても、昔いろいろと問題を起したような割当課税ということが行われる慮れがあるのであります。八十五億は何でも取らなきやならん。どこどこの税務署では幾ら必ず取つて来い。又納税者と税務署との間においていろいろのトラブルが発生する。真にその取引数量等も十分見きわめずして、お前のところは十万円納めろ、お前のところは五万円納めろ、このようないい加減な徴税が行われる虞れがあるのであります。今回の税制全般の改正の際に問題になつたような遊興飲食税というようなものの取り方は、甚だ現政府としては、特に大蔵当局としては満足すべきものではない。このようなことは甚だ今のような割当課税的になつておるということが問題なんだ。そういう意味においては、今度のこの繊維税も割当課税になる慮れがあります。そうなると、税務署に顔が利いたり或いはいろいろの勢力で、真に課税の公平が失われる虞れがあるのではないか。更に第十一条を見ますと、納税義務者が申告をした販売価格、これについて若し税務当局においてその販売価格が納得しがたい。こういうような場合には、一方的に税務署長が決定通知をすることになつておる。又税関から引取つた繊維製品の引取価格について、税関長がどうも納得できない。その業者が申告をした価格よりも高いだろう。こういうように納得できがたいときには、一方的に税関長が価格を決定して通知をすることになつておる。一体その場合に、その決定通知を受けた価格について、納税義務者が異議があるというような場合においては、どうそれを処理するおつもりであるか。納税者のこの点についての苦情処理をどういうふうにやられるおつもりであるか。決定したら決定し放しなのか。どうも法文を見ると、そのように読める。申告を主体に置いた納税者の協力なくしては、この税法は成立たないというか、徴税できないのではないかということを先ほど申述べましたが、現在酒類販売業、酒の販売業者、これは徴税確保という名前の下に免許業になつております。自由主義を建前とする自由党内閣が、未だに酒類販売業を免許業にするというのはおかしいじやないか。こういうような議論が、我々象議院の大蔵委員会においては活溌に曾つて闘わされたことがありますが、そのときに政府は、税収入を確保するためだ。こういうことを要約すれば答弁にいたしております。この繊維消費税をやつてつて、今のところは納税者の自主的な申告を主体におく建前になつておるけれども、今のような大蔵当局の納税者に対する考え、気持等から推して行くと、行く行くはこの税をぜひ続けて行こうというようなことであれば、酒類販売業と同様に、繊維卸売業は免許制度に切り換えようという考えを起されないでもないと思うのだけれども、その点は如何ですか。  それから第六条において、兼業の場合の業態判定、第七条において、第一次製品の販売又は引取とみなす場合、このような規定が設けてあります。これによると、規定を読めば、なるほどいろいろ割り切つておるのでありますけれども、実際の繊維販売業の業態というものは、しかく法文通り割り切れるものではない。甚だ複雑な業態である。第一次メーカーから製品を買つて来て売るという場合においても、行商まがいの人もあるし、卸しをやり小売をやる。その一体どちらが主たる業務かというようなことについては、なかなか実際問題としては判定がつき難い業界の実情であります。そういうような実情である。この業界に対して法文で割り切つてみたところで、実際の徴税の場合においては、非常なトラブルが予想されるのであります。従つてその結果としては、経済流通の円滑を阻害し、この繊維業界における商業組織力混乱に陥れる慮れが多分にあると思うのでありますが、その点について大蔵大臣は如何お考えでありますか。  附則第二項の時限立法にしたことについて、私も伺いたかつたのでありますが、すでに青柳委員が御質問なさいました。私も青柳委員と同様の感じを持つて質問したいと思いましたが、これには答弁がありましたから、私も青柳委員と同様の気持を持つておるということだけを附言して質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  65. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  この法案を提出するまでに、「陳情等に動かされて課税の対象が非常に変つたのじやないか」という御質問であります。国会をめぐりましていろいろな陳情団が来ることにつきましては、御同様非常に迷惑を感じておりまするが、この提案をするまでに外部の陳情に動かされて提案を変えた事実はございません。原糸課税は、初めいろいろの課税方式につきまして、その是非長短を慎重に検討しましたために、思わぬ時間をかけまして決定が遅れたということはございまするが、外部の陳情等に動かされてふらふらいたした事実はないので、その点御了承をお願いいたしたいと存じます。  爾余は、大蔵大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  66. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) なぜこの繊維の奢侈品についての課税を、別に奢侈品課税として一般的に取上げたかつたかということが最初お尋ねにございましたが、これは物品税のうち、小林さん御承知のごとく相当奢侈的なものがあつて、これに対しては、それぞれ相当増徴しておるのでありますが、これを一括して奢侈品と言つて上げるがいいかどうかということについては、いろいろ検討いたしましたが、先ず繊維品のうち奢侈的なものを取上げる、これはいろいろな私ども視点から、これを穏当だと実は認めた次第で、同様な趣旨から、物品税につきましては、ここに奢侈的なものの相当大幅な増徴をいたしておるのであります。  それから、「卸売業者に課税するのは、結局中小企業を苦しめるものではないか。」こういう御意見でございますが、これはまあ見方によりまするけれども、私どもは中小企業の育成には相当努力いたしておる考えであつて、金融その他各般の措置をとつておるのであります。従いまして今度の一割五分の課税が直ちに卸売業者にしわ寄せするものとも思われませんし、この税の建前が、消費者に行くべき建前でございますので、これに私はしわ寄せするとは考えておりません。若し又、御指摘になつたような倒産その他の問題がありますれば、これは何かほかの原因で来ているのではあるまいか。この課税の点から来ているのではないと私は考えておるのであります。  それから「消費者に転嫁されるのは、どういうふうに転嫁されるか。」これはまあ、御承知のごとく、すべての商品は最終消費者に転嫁されなければ、誰も商品を扱う者はなくなるのでありまして、従つてすべて最終消費者に転嫁されて参ることは申すまでもございませんし、それから更に今のような税の方面から見ましても、さつき通産大臣の御答弁申上げたような事情で、相当この納税者の立場も考慮してありまするので、それこれ御懸念のようなことはないと私は考えております。  それからお話のごとくに、「こういつた消費税については、納税者全体の協力を要する。」これはお話の通りに私も考えます。併しまあ今回は特に奢侈的消費抑制の見地からやつたのでございまして、業者の数も大体二万くらいでございますから、よく趣意を徹底して協力を求めたい。今の日本が置かれておる経済事情等をよく話をして協力を求めたい。かように考えておる次第でございます。  それから第九条の税額算定の特例について、「正直者が損をするのではないか。」これはちよつと妙な工合に御覧になつたかも知れませんが、実は、例えば免税点を一ヤード四千五百円におきました場合、一割五分かかりますから四千七百三十円になるのでありますが、仮に四千七百円のものがあつた場合にはどうかと言いますと、その四千五百円との差二百円だけに課税するというのでありまして、むしろこのほうが正直者に損をさせない法案であろうと、私ども考えておるのであります。  それからその次に、「今の八十五億予算がきまつておる以上は、どうしても割当課税をするのではないか。こういうことは非常に不都合だ。」一体すべての税は私ども割当課税をすることは本旨でなく、とめてあるのであります。又本税につきましても、勿論私どもが八十五億で出しましたのは、各種の数字、統計等によつたものでございまして、丁度これで繊維品の七%、金額において大体一六、七%くらいに相当すると思うのでございまして、これだけの税収は上がるものと考えておる次第でございます。なお小林さん御懸念の割当課税をするようなことは絶対にいたしません。このことははつきり申上げておきます。  それから「申告を信用しない場合は、決定通り通知をするか、そうしてその場合異議の申立があつたらどうするか。」こういうことでございまするが、これはほかの間接国税の場合と同様に国税徴収法の規定に基きまして、再調査、審査及び訴訟によつて救済を受けることができることに相成つております。即ちこの奢侈繊維品の消費税の賦課徴収に関する処分に対して、お話の不服があつた場合には、当該処分に係る通知を受けた日から一カ月以内に当該処分をした税務署長に対して再調査の請求ができます。徴収法三十一条の二です。それでもなお異議がございます場合には、同法三十一条の三によりまして、一カ月以内に国税局長等に審査の請求をすることができます。更に又三十一条の四によりまして、訴訟を提起することもできることになつて、救済の途は講ぜられておる次第でございます。  それから「六条、七条等が法文の上では可能かも知れんが、実際上相当困難ではないか。」こういうお話でございます。これは私どもが関係業者の取引の実情から見まして、又今日は相当信用取引が行われておる等の関係もございますので、大体相手方が卸売であるか、小売であるかということは、税務当局の目から見れば判明すると思うのでございまするが、なお御懸念のような点なきよう、十分措置することにいたしたいと考えております。(拍手)     —————————————
  67. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 成瀬幡治君。    〔成瀬幡治君登壇拍手
  68. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は日本社会党を代表して、只今上程されましたしやし繊維品の課税に関する法律案について、以下数点を関係大臣お尋ねいたします。  本法律案は、昨年十一月十二日に提出された税制調査会のうちの、「資本蓄積のために直接税を削り間接税を増徴せよ。その方法は、繊維消費税を新らしく設けて二百億を目途として、毛糸、絹糸、麻糸を原料とする織物に課税せよ。」とあるのに基いて、一月十六日、大蔵省は、「間接税の増徴として繊維税を新設し、生糸、羊毛、八十番手以上の綿糸、即ち原糸に課税する。税率は製造所からの移出価格の一〇%とする。但し輸出向は免税とする。」との態度を決定したのであるが、併しその後自由党政調会、総務会は、「生糸課税は取りやめて他の原糸だけに課税することとする。若しこれができなければ、生糸に対して表面上の課税を避けるために公社を作り、公社から納付金の形で課税相当額を徴収する。」の態度であつたが、大蔵省は、原糸課税はもともと生糸の国内消費抑制と輸出振興のためのものであり、他の原糸課税はどちらかと言えば、生糸との均衡上課税する方針をとつたもので、肝心の生糸を非課税として他の原糸に課税する理由はない。又公社を作り、納付金で課税することは、生糸以外の原糸課税ができても、公社設置法が国会で潰れてしまえば、結局生糸課税はできなくなり、税制改正案全般を改めなくてはならないと主張し、意見が対立したが、遂に一月二十一日に、大蔵省は自由党の希望を入れて、原糸課税をやめて絹、羊毛、麻、綿糸、共に小売段階での製品に課税し、八十番手以上の綿糸を使つた綿織物、混紡率六割以上の毛織物、六十番手以上の麻糸を使つた麻織物、高級絹織物に小売段階で課税し、その税率は六乃至八%とし、徴税総額を百億と決定したのであるが、その後各種各様の反対に会い、繊維税よどこへ行くかの観を呈し、一時はその成案を危ぶまれていたのでありますが、二月十二日の院内での緒方副総理、小笠原蔵相、福永官房長官、植木大蔵次官及び自由党の佐藤幹事長、益谷総務会長、池田政調会長、小澤国会対策委員長の八者会談で、しやし繊維税の名前を付け、反対の多い小売課税はやめると決定し、更に十六日の閣議で、課税段階を全部生地屋、元売商にし、免税点を若干引上げると共に税率も一五%に引上げ、徴税目標額を二百億から八十五億に圧縮し、二年間の限時法にするなどを決定して、漸く陽の目を見たいわく付きの法律案である。原糸課税から小売課税となり、再度三転して切売課税となつたのであるが、(「繊維疑獄が起るかも知れんぞ」と呼ぶ者あり)この間に紡績業者、毛織業者を初め、百貨店、洋服屋さんと、風向きの変わるたびに猛烈な関係者からの陳情運動のあつたことは又当然であります。いやだいやだと断り続けたふられ盃を、最後に押付けられたのは、一番陳情運動の弱かつたと思われる卸売業者であります。全国約二万名と推定されるこれらの業者は、何故に一夜で変つたのか。ああ、あれかと胸に手を置き、天を仰いで政治の不信をなじつておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  吉田総理は今国会における施政方針演説で、例年の例を破つて、綱紀粛正を除外した。昭電疑獄のあとを受けた吉田内閣が綱紀粛正を一枚看板にしたのは当然であり、綱紀粛正は万人共に異議のないところであり、(「看板に偽りなし」と呼ぶ者あり)看板に偽りなきを期待しておつたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)ところがその看板を、造船利子補給の立法をめぐつて噂が飛んでおるとき、又造船割当で種種噂の飛んでいるさ中で、綱紀粛正を忘れたのであります。これは故意か。故意とすれば、身内に危険ありと察知して看板を外したことになり、もはや政局担当の資格なしであります。又その必要がないと判断して削除したとすれば、汚職、疑獄の報道のない日がないのが今日の現状であります。上乱るれば末倣うで、巡査部長までが九百万円持ち逃げしてしまつておるのであります。特に去る二十三日には有田代議士の逮捕許諾の院議がなされております。又本院でも西郷議員の取調が行われたと聞いておるのであります。而してこれらは起るべきものが起つたのであり、これからも又発展するやに聞いておるのであります。政治的洞察力を欠いたことになり、これ又政局担当者の資格なしと言うべきであります。吉田首相は、曾つて公務員の首切りは煤掃きのようなもので毎年やらなければならないと豪語されました。国民は今や疑惑に満ちた自由党吉田内閣の煤掃きを怒りと憎しみを以てやらなければならないと考えているのであります。(拍手)汚職、疑獄の刑事的責任は別として、政治的、道義的に責任をとり、今からでも遅くはない。総辞職か解散によつて時局の転換を図るべきだと考えるが、刑事上、法に触れ罪にならないことなら、何をやつてもよいと考え、政治的、道義的の責任をとる必要はないと考えておるのか。この法案審議に際しての肚構えとして、汚職、疑獄に関連しての政局担当の所信を先ずお伺いいたします。  第二点は、本法律案立法過程を辿つてみると、原糸から小売へ、又卸売へと納税義務者が盥廻しにされております。八十五億の税金の立替え払いを強制される者は、資力の弱い元売商である。即ち犠牲になつたのは、陳情運動に資力不足で事を欠いたと思われる中小企業者という結果になつた。曾つて中小企業の五人や十人は首をくくつて死んでもよい、貧乏人は麦を食えと言つた池田前大蔵大臣の言葉を裏書きし、実行するような結果になつたのであります。「至誠人を動かす」という諺がございますが、「金人を動かす」というのが今の現状であります。(「金政治を動かす」と呼ぶ者あり)繊維税に関連して政治資金の献金とか、いかがわしい陳情とか、待合取引などが行われていないと、吉田総理は自信を持つて断言することができるか。明快な御答弁をお願いいたします。  第三点は、首相は耐乏生活を強調され、静岡では、耐乏生活に協力せんのは国民が悪いとまで言われましたが、耐乏生活の具体策は、必然に消費税の問題に発展するものでありますが、本法案以外の電気冷蔵庫、テレビ、外車などの若干の物品税引上げ並びに酒税、砂糖の消費税の引上げ、ピースの値上げのみでは耐乏生活は生まれて来ないのであります。イギリスの耐乏生活は、労働党内閣の手によつて昭和二十一年に初めて始められ、保守党内閣に引継がれまして、およそ七年間、時によつて強弱の差はありますが、耐乏生活は実行されました。それは消費税の引上げ、石炭、鉄道運賃などの国営事業の値上げ、生活物資の割当制、輸入制限などであるが、要は計画に基く不足のない耐乏であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)高級贅沢品の製造制限とか輸入制限又は高級料理屋の閉鎖など、消費面、生産面での計画経済を行わなくては、不足の上の耐乏になつてしまつて、真の目的は達成することができない。徳川幕府の奢禁令を見ても、言うは易く行うは難しである。吉田首相の言う耐乏生活は、その具体策は本法案を初めとする若干の消費物資の税引上のみか。耐乏生活に対する青写真、即ちその大綱を明示すべきであります。首相並びに大蔵大臣所信のほどを伺いたいと思います。  次に、大蔵大臣お尋ねいたしますが、第一点は、租税及び印紙の収納額は例年より見て予定額よりも遥かに上廻らないか。本年度の収納超過額は幾らくらいに予定しているかという点であります。試みに昭和二十六年度の一般会計の歳入について見ますと、租税及び収入印紙の予算額は五千六百八億円で、収納済歳入額は六千四百億で、実に四百三十二億円の増収となつているのであります。又昭和二十七年度予算額は六千八百五十三億円で、収納済歳入領は七千八十四億円となり、二百三十一億円も上廻つております。二十八年度はまだ決算書が提出されておりませんが、追加、補正を加えて歳入予定額を七千五百六十六億円としておりますが、本年一月末までの収納済額は七千八十七億円で、この調子で参りますならば、これ又上廻ることは必然であります。余剰金の出ることは当り前であつて、毎年繰越しをしておるからと言われるかも知れませんが、本年度は一兆億予算、緊縮予算と宣伝し、絶対に追加予算を組まないと明言しておる以上、余分の、若干はよろしうございます、余分の余剰金は必要がないではないか。又国民一人平均の税負担は戦前の九年——十一年の国税十八円、地方税九円の計二十七円が、昭和二十九年度は国税が一万百九十一円、地方税三千八百八十二円で合計一万四千七十三円となつています。これは九年——十一年の五二一・二倍で、国民所得の四二一・三倍を遙かに上廻つております。国民が税金はえらいと言うのは当り前であり、重税にあえぐとはまさにこのことであります。又予算執行面を見れば、公共事業費その他会計検査院の指摘するごとく、血税は濫費されております。或いは造船疑獄が示しておるように、待合政治の取引にされておるのであります。歴史は夜作られると言うが、まさに百鬼夜行であります。蔵相は一体昼寝をしておつたのでありますか。古語に、「天下を治めるとは、民を養うにある」とありますが、これではまるで反対でありまして、政界のボスが国民の血税を食いものにしておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)蔵相はかかる面を厳に押えさえすれば、八十五億くらいの節約は簡単にできると思います。又収納額から見ても、余剰金があつて徴収する必要はないではないか。名前に奢侈がついているが、税を転嫁されるのは結局大衆であつて、大衆課税に間違いはありません。税で国民を苦しめるのみが芸ではありません。予算の完璧な執行こそが大蔵大臣の責任であります。又蔵相は繊維税反対の陳情の代表者に、これは米国からの要請が強いから我慢をしてもらいたいと述べたと伝えられておりますが、(「本音を吐いた」と呼ぶ者あり)自衛力増強とMSA受入とに関連してかかる要請を受けておるのか。指示を仰いでおるのか。立案過程から見て疑惑があり、不明朗な本法律案は、而も二年間の限時法でありますが、予定徴税の八十五億の捕捉も危ぶまれております。かかる法律案は潔く撤回して、予算執行面を厳にすべきであると思いますが、(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)併せて御答弁を承わりたいのであります。  第二点は、青柳議員や小林議員も指摘されたのでございますが、何故の限時法であるかという点であります。提案理由の説明によりますと、「繊維品消費税は、その創設の趣旨等に顧みで、その実施期間を昭和三十一年三月三十一日までとした」とあるが、一体この法律案立法趣旨は何であるかということであります。提案理由によると、最近の繊維品の消費状況から判断し、奢侈物資の抑制を図るとあるが、その説明のごとく、又その名前の示すごとく、奢侈的消費税であるのか。奢侈的繊維は二年間買つてはいけません。あとは幾らでも税金なしで売りますから暫く待つてもらいたい。こういうための二年間の限時法にしたのか。又奢侈を抑制すると言うなら、何故に繊維のみに限定したのか。造船汚職で名前をとみに挙げたところの待合などを初めとする高級料理店は現状のままでよいというのか、お伺いいたします。  なお、これに関連して伺いたい点は、税制調査会は入場税、遊興飲食税の国税移管を答申し、政府は初め両者とも国税移管の方針であつたのでありますが、一夜にして入場税のみ国税移管となり、遊興飲食税は地方税に残つたのであります。地方財政の緊迫しておる折に、地方税に残つたのは可とするのでありますが、文字通り一夜に変つたというところに誠に意味深長なものがあるのであります。(「そうだ」「怪しいぞ」と呼ぶ者あり)この辺の経緯について、本法案立法措置と共に、併せて御答弁を承わりたいのであります。第三点といたしまして、徴税捕捉が完全にできるかという点であります。収納予定税額を八十五億円と最初に予定し、課税対象は原糸から小売へ、小売から元売商へと移り、税率も一〇%、六%、八%、一五%と変つておるのでありますが、八十五億円は動いておりません。妙な話といえば妙な話であります。この税金八十五億円を支払うのは消費者一般でありますが、納税義務者はこの法案の第四条、六条、七条で大体元売商と規定されておりますが、地方では卸売商が小売販売も行い、又縫製業も兼業しておる場合が非常に多くて、混乱が生ずることは今かげ予想されておるのであります。税務署の証明書、即ち法案第十九条の規定の証明書で大蔵大臣は効果が挙つて、納税義務者を完全に捕捉することができると考えておるのかどうか。納税義務者と規定している第一次製品の販売業者は元売商のみでなく、例えば既製服業者への生地の販売者は、紡績業者、毛織業者の場合もあります。百貨店ではメーカーからの直接委託販売をする場合もあります。鐘紡のサービス・ステーシヨンのごとく、紡績業者の一貫作業による小売販売もあるのであります。又西陣織の家内工業をやつておる人に例をとれば、製造業者であると共に版売業者になるのであります。特に絹織物に例をとれば、製造から直接に小売業者へ売渡しておるのであります。かく考えて参りますと、蔵相は中間業者と言うが、納税義務者は各種各様であつて、捕捉は技術的に困難ではないのか。元来消費税は、消費者が均等に負担し、消費者全部から税を徴収するのでなければならないのであります。原糸課税にすれば公平に徴収されるのであります。これが紡績業者に押されて、中間、小売と盥廻しをやつたというのが実情ではないでしようか。又記帳義務については法案第二十一条に規定しておりますが、全体、中間業者のみの帳簿で完全に捕捉されることができるのか。又記帳は家内工業のような零細業者にとつては過大な負担と圧迫になるのではないか。大蔵大臣は二十三条で税務職員の権限を規定し、更に罰則もあるので、公平に捕捉できると言うかも知れないが、本税のために一体税務署関係の人員をどれだけ増しておるのか。又経費はどれだけ予定しておるのか。富裕税のごとき捕捉あいまいなものを更に設けることは、政府に対しての不信の上塗りであつて、賢明な施策とは言えないのであります。税務吏員の勘による査定、即ち人によつて伸び縮みする税金になりはしないか。闇に流れることなく、公平に徴税か予定の八十五億が取れると考えておるのか。又徴税方法は最も当を得たものと考えておるのか、御所見が伺いたいのであります。次に、間接税の今後の見通しでありますが、今回の税制改革で消費税、即ち間接税を増徴しておるのでありますが、砂糖は四十三億、ガソリン五十億、物品税一億、繊維八十五億と、差引三百四十三億の間接税を増したのでありますが、半面法人税の百八億を最高とする直接税を計二百十八億減じております。主税局の統計の直接税、間接税及びその他の比率を見ますと、昭和二十八年度の間接税は、米国が一一・四%、イギリスは四〇・八%、フランスは一一・三%、ドイツは二一・六%、イタリアは四一・七%で、日本は四四七%で世界最高であります。更にこれが二十九年度になれば、なお数字は高くなつてくるのでありますが、間接税の多いということは、結局世界各国に比して日本の大衆課税が最高であるということを示しておるのであります。資本家を優遇することを雄弁にこれは物語つておると思うのであります。(拍手)自衛力漸増を増強に切り換えて、MSA受入を国民一般大衆の犠牲でやろうとする政府の今後の徴税方針は、間接税を今後も増そうとするのかどうか。お伺いしたいのであります。次に愛知通産大臣に伺いますが、昭和二十七年の経済安定本部の統計によりますと、昭和九年—十一年に比して主食は九七、副食物は九四、光熱は一〇五、住居九四、雑費九二、被服は七三となつておるのであります。被服が一番悪いのであります。被服の悪い理由は、結局値段が高いからであると思うのであります。今回の課税は一応奢侈的な高級品への課税になつておるが、衣料全体への課税負担に押し拡げられることは、業者の操作によつて可能であります。業者は課税対象、即ち高級品の値段を若干歩引きしまして、他へこれを転嫁することは当然であります。今回の課税が衣の生活を圧迫するとは考えていないのですか。洋服和服の二重生活の現状から、国民の衣料生活全体について、大臣は如何なる施策を今後とろうとするのか。御答弁が伺いたいのでございます。  なお、時間が参りましたから、通産大臣に簡単にお答え願いたいのでございますが、本法案は結局中小企業者に対して税金の割当をすることになると思います。緊縮財政のしわ寄せ全部が中小企業に行つておるのでございますが、本法案に関連して、何か中小企業に対しまして特別の立法措置、保護措置をとろうとするお考えがあるかどうか伺いまして私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  69. 緒方竹一

    国務大臣(緒方竹一君) お答えいたします。  本法案が決定いたしますまでの経緯につきまして、先ほど小林議員から同様の御質問がございましてお答えをいたしましたから、重ねてお答えすることは省略させて頂きます。  耐乏生活を唱える吉田内閣が、「繊維のみに奢侈税を課するのは不当ではないか」という御質問でございまするが、現行法の下においても、例えば酒税、物品税のごときは、相当高率の課税をしておるのでありまするが、今次の税制改正におきましては、更に高級酒類に対する酒税の増徴を行い、又高級大型乗用車等に対する物品税の税率を引上げることとすると共に、テレビジヨン受像機に対して新規に物品税を課し、更に高級たばこの引上げを行うこととする等、奢侈的消費の抑制等の見地から、奢侈品、高級品乃至嗜好品に対する間接税の増徴を行おうとしておるのでありまして、むしろこれとの均衡上奢侈的と認められる高価な繊維品に対して、新たにしやし繊維品消費税を課することが適当と認めて、これを創設したような次第でございまして、この事情を御了承をお願いいたします。    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  70. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) 成瀬議員にお答えいたします。  この件について「いかがわしい運動とか陳情に動かされたのではないか」ということでありますが、さようなことは私は耳にしたこともなく、さようなことはあるはずはないと確信しております。なお、よく大衆課税、大衆課税ということを繰返しておつしやいますが、この課税が大衆課税ならざることは、すでに繰返し申上げた通りであつて而も繊維品の僅に七%で、高級な賛沢品に限るのでありますから、何ら大衆課税ではございません。  それからその次に、イギリスの例を引いて耐乏生活等のお話がございましたが、この点につきましては、今日、日本の賛沢な消費生活というものは、多少私どもは、多少でなく大いに注意を要すると思うのでありまして、従つて財政においても、金融においても、引締めを行いますほか、外貨の割当その他の事柄について、十分な措置を取ることに相成つております。  それから自然増収の問題についてお話がありましたが、二十八年度のことはまだ年度途上ではつきりいたしませんが、二十九年度は、この緊縮予算を編成することでございまするので、金融引締その他のことと相待ちまして、私どもは物価の下落もございますので、自然増収を見込まないという建前を取つておるので、八十五億はこの自然増収から弁じ得るものとは考えておりません。  なお、予算の完全なる執行についてお話がございましたが、この点は全く御意見通りで、ございまして、私どもも地方の財務局初め、全力を尽して予算の完全なる執行に当り、先頃も九千数百件の災害予算について、実施調査を遂げた結果、その結果を新聞等にも発表しましたから、御了承願つておると思うのであります。  なお、「余剰金が出るのに、税を取るのは不都合じやないか」というお話がありましたが、私どもは余剰金が出るもりとは考えておりませんが、若し余剰霊が出る等の場合におきましては、勿論財政法に基いて、これを処置するここは申すまでもございません。  更に、「何かアメリカから要請があつたか」というお話、何かのお間違いでありますか。さようなことは絶対にございません。さようなことを若し言い触らす者があれば、流言蜚語と申すものであります。不都合極まります。  更に、繊維品消費税の目的についてのお話でございましたが、これは提案理由等にはつきり書いてある通りでございまして、狙うところは、直接税におきましてこれを減じましたから、従つてこれについての補填の意味もありますが、主としてやはりこの奢侈を抑制下ることによつて国内消費の制限を図つて、それによつて国際貸借の改善等を図らんとする意味であるのであります。  なお、なぜ二年間にしたかということは、先ほど御答弁申上げましたから省いておきます。  入場税と共に遊興飲食税をなぜ今度国税に移管しなかつたかとのお話でございましたが、実は両者とも移管したいとも考えて研究をいたしたのでございますが、地方行政の刷新の点から見て、特に今度の警察法等の改正その他の問題もあり、財源等の点から、いろいろ考えましたが、そのうち特に何と申しまするか、偏在の甚しい入場税のみを今度行うことにいたした次第でございます。  なお納税義務者の問題でありまするが、これについては先ほども申上げました。いろいろ考えた結果、実は納税義務者について申しますると、仮に製造者で見ますれば約四万四千人ございます。小売業者について見ますれば約十六万人おります。卸売業者について見ますると約三万人ありますが、併し今度免税点等の問題もありまするので、大体半分に減るだろうと思われます。従いまして仰せのごとくに、業態はいろいろございましよう。いろいろございましようが、やはり玄人の税務当局から見れば、これは、これを捕捉することはそうむずかしいことではございませんし、今申上げた通り一万人くらいに大体なるのでありまして、さまで捕捉に困難な点はないと考えております。  なお、帳簿書式を簡素にすべしという御意見については、全くその通りで、簡素にいたしたいと考えております。  なお「間接税が直接税に比して多いじやないか」というお話がございまして、税本来の趣旨から見て、直接税に重きを置くべきは勿論でありますが、お挙げになりました数字は、実は私の手許の資料とちよつと違います。私が持つておるのでは、日本では昭和二十八年には、直接税が五二・八%、それから間接税その他で四七・二%でありますが、フランスでありますと、直接税は三五・八%、間接税その他で六八%二となつておるのでありまして、さつきお示しになつた数字とは違うのであります。  なお「衣料全体に今度は課税せんとする前提ではないか」という意味でのお話がございましたが、私どもはさような考えは持つておりませんし、又、それではこれに課税した税をば、ほかの安い物と抱合せでやつて行くようなことは免れんじやないかというお話でございましたが、さようなずるい業者があるとするれば、これは自然に社会的制裁を受けることと存じます。(拍手)    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  71. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 最近の衣料用の繊維の消費量は、急速に増大して参つております。ほぼ戦前の消費水準まで回復いたしておるのでありまして、数字的に申しますと、昭和十二年が一人当りの消費数量が十二ポンド六七となつておるのでありますが、昭和二十八年におきましては一二・四九、かくのごとく殆んど戦前の水準まで近寄つてつておるわけであります。  それから「今後における衣料対策として根本的にどういうことを考えておるか」というお尋ねでございますが、今後におきましては、経済自立の達成のために、国産の繊維による自給度を更に一層向上せしめる必要があると考えます。従つて消費者の方々から申しますならば、綿織物とか毛織物というような物への全面的な執着を離れて、衣生活の合理化ということを考えて頂きたい。又政府といたしましては、特に化学合成繊維の質的向上の方面に努力をいたしまして、混紡、交織及び染色技術の改善というような点におきまして、できるだけの助成措置を講じて参りたいと考えております。  それから次に、中小企業に対するしわ寄せ云々のお尋ねでありますが、この点は、先ほど青柳議員の御質疑に対してお答えいたしました通りでございまして、根本的には課税の対象の品目が、私どもから見れば極めて一部の少数のものであるということと、それから課税の技術上も相当の考慮を払つておるということと、更に積極的な面におきましては、中小企業全体に対しましての金融、税制、その他の総合的の措置を講じて参りたい。かように考えておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  72. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 松永義雄君。    〔松永義雄君登壇拍手
  73. 松永義雄

    ○松永義雄君 只今議題となりましたしやし繊維品の課税に関する法律案に対して、社会党第二控室を代表して数点の質問をいたしたいと思うのであります。  第一に質問いたしたいことは、繊維品課税が消費税でありますから、物価の値上げを来たすということであります。本法案に明らかに繊維品課税は消費者の負担にするのであるということを規定せられておりますように、消費税の新設乃至増税は、その税額だけは少くとも価格の値上りを来たし、延いては他物価の値上りの要因となるのが普通であります。昨年は著しく一般物価の騰貴を見、国民生活に大きな脅威を及ぼしたのでありますが、その要因は、闇米、木材及び繊維品の価格暴騰が導力となつたことにあることは言うまでもないのであります。然るに政府が一兆億円を割る予算を編成して、物価の割高を訂正して、国際収支の改善を図らんと念じながら、このように物価の騰貴を誘導する繊維の価格の引上げ、たばこ及び砂糖の増税、やがては来る電気料の引上げ等、一般物価の騰貴を来たす一連の値上げを行うことは、明らかに緊縮予算の精神に矛盾撞着するものであるのであります。政府の考えはどうであるかをお伺いいたしたいのでございます。  フランスにおいては間接税を主として直接税を従として、予算上の歳入は消費税に重きを置いているのでありますが、そのために常に予算の編成難に陥つて、赤子予算に終始して、物価の騰貴を招き、国内物価は対外物価に比較して著しく割高となり、国際収支は甚だしく逆調を呈して、しばしばフランの危機を伝えているということは人のよく知る通りであります。このことは、勿論過去八年同に亘るインドシナ戦線における戦費か年々予算額の四分の一にも達する、国力に比して過重なることによることは言うまでもないのでありますが、その財政経済のやり方がよろしきを得ないということも、これは又世界指摘するところであるのであります。同じく、我が国の二十九年度予算を見ますと、防衛関係費は百四十億円の増大を来たし、保安隊を自衛隊に改め、陸上、海上の増員、航空隊の新設を図つて、漸次その拡大を図らんとするがごときであります。そのために、一面緊縮予算によつて低物価政策をとりながら、平和産業を圧縮して、消費財の生産を抑制し、消耗生産である兵器産業を重視して、防衛関係費の財源として消費税の増額及びその新設を考えているのは、明らかにインフレを刺激するものであるが、政府の考えはどうであるか。(拍手)  その次に、繊維課税が間接税の一つであつて、間接税の増額及び新設には、直接税との見合い、負担公平の観点から総合的に判断しなければならないものであるにかかわらず、これを軽視していることでありますが、昭和二十九年度予算案に現われた直接税と間接税との比率を見ますと、政府の予算説明によれば直接税五二%六、間接税は四四%五となつていますが、その比率が間接税において、昭和二十四年度の三〇%三以来逐年増加して、著しく大衆課税の様相を呈して来たのでありますが、これは消費税及びこの繊維課税が将来拡大を見るに至りはしないかと憂えられておる重大な理由になつておるのであります。併し昭和二十九年度予算におきまして、直接税たる所得税額二千八百億円中、勤労所得税は約二千億円にも達し、勤労者負担と資本家負担とに直接税及び間接税とを大別配分をいたしますと、約、勤労者負担は二、資本家負担は一となるような数字になつておるのであります。で、なお繊維課税を贅沢品課税と言いながら、勤労者の職業用の衣料等は勤労者の負担となり、更に取引高税の例もあつたようでありますが、免税点を引上げるというと、免税点以下の品物もそれにつれて値上りを来たすというのでありまして、それを思えばこの勤労者負担も決して少くないということは、これは軽々に見逃してはならないと思うのであります。贅沢品税と銘打つて課税しておるにいたしましても、一たび直接税と総合して、その負担のいずれに重くかかつているかを知るならば、いやしくも勤労者の負担を増すがごとき租税の体系は取りやめるべきで、たばこ、砂糖等の増徴と思い合せて、この際繊維課税の新設は断じて不可なりと言わなければならないのであります。現在の税制は勤労者に取り余りにも偏重であるのでありますから、根本的に改正の要ありと思うが、政府はどういう考えを持つておられるか。  次に、政府はこのたびの繊維課税を立案するに当つて、最初には原糸課税を目途とした。ところが大製糸家の反撃に会つて、繭の値の低下による農民の利害に籍口してこれを撤回したのであります。そうして一転して小売商人に織物販売税を課さんとして、これ又反対に会いまして、これを取消し、三転して本法案のごとき卸問屋を課税の対象として生地の課税を行わんとするのも、如何に政府及び与党の無定見であるかということを暴露しているものであると思うのであります。(拍手)これは要するに政府、与党が直接税及び消費税の課税額比率を考えて、資本家団体の主張する、直接税より消費税への転換の意図に迎合したものでありまして、むやみに勤労階級の負担を増大し、資本家の負担を軽減せんとする魂胆であることは火を見るよりも明らかであるのであります。従つて当初の立案が著しく勤労階級の負担を増大する内容を持つて、世論の反対に抗しかねて、賛沢品税という名目に改めるに至つたことに徴しても知られるところであります。故にこのたびの税制改悪法案が、改正の上にも、又運用の点においても、勤労階級の負担を増加するところの途を開かんとするその一角を露出したのに過ぎません。かくのごとき危険なる法案は断じて我々の反対するところでありますが、政府の意図はどういうことであるのでありますか。お伺いいたしたいのであります。  更に、直接税主義は米英諸国のとるところでありまして、間接税主義をとるのは仏、伊の税制であります。劣弱国は大体間接税を主とし、富裕国は直接税を主とする状態から、我が国のような経済上の劣弱国は間接税の範囲に属すべきものであるという者があるのでありますが、間接税を重んずる主義というものは、国民の国に報ずる観念の薄いことから来るということも認識しなければならないのであります。我が国の資本家が、国策本位の立場から、国民の血税の結晶である財政投融資を造船その他に行わしめ、国家による利子補給まで行わせておりながら、政府資金を濫用し、疑獄まで引き起して内外に恥をさらし、国民の念願たる自立経済の確立を破壊しておるのは、天人共に許しがたい不祥事であるのであげます。由来財政投融資は、資本家団体の利益のため、日本再建の大義名分の名の下に勤労階級の犠牲において行われておるのであります。これを例えば、社会保障費のごときは常に此較的低額に抑えられて、予算上勤労階級の負担を著しく重くし、その受くる利益は極めて軽微となつておるのであります。成るほど政府は基礎控除の引上げ等、勤労階級の減税を図つておると言うかも知れませんが、その中には多額の所得層といえども、基礎控除引上げの恩典に浴しておるということを見逃してはならないのであります。このような富裕階級の減税は、資本蓄積の源泉となると言われるかも知れませんが、それはそれらの人々の富を増すと共に、却つて減税は消費を刺激してインフレの要因となる半面があるということを忘れておるものであります。高級自動車の輸入を著しく増加し、奢侈の風潮を促しておるのは、実に労働者でなくて資本家であるのであります。繊維課税を贅沢品税と公言しても、資本家にとつてはカナリヤのさえずりほどにしか響かないのでありまして、贅沢課税の精神を真に徹底するならば、根本的の税革を考え、所得の根源にメスを入れなければならないと思いますが、政府はどういうふうに考えられておるか。  例えば、十大紡績を見ますと、二十八年の下半期の営業成績は極めて好調を呈して、その利益は五、六十億円の巨額に達しておりまして、一年を通じて恐らく百億円を突破しておるのであります。そうしてその殆んどがその資本は大体自己資本の上に立つて、借入金によるものは極あて少いのであります。従つて産業合理化も順調に進んではおるようでありますが、同時に二重投資の弊に陥つていうことも見逃しがたいのであります。そうしてこれらの紡績会社の利益、産業合理化というものは、紡績会社のこの従業員の人員整理或いは労働強化によつて行われているのであります。精紡機におきましては、婦人労働者一人の受持二台半が四台となり、織布では一人十六台が四十台に、僅かこの一年の間に増加しまして、かよわい女子労働者は一日五里の行程を往復しなければならないほど労働強化に追われているのであります。更に極度の疲労に喘ぎ女子の深夜業も公々然として行われて、午前零時乃至四時頃まで、丑満の頃に労働基準監督局の監督の目を逃がれて平然と行われているのでありますが、その例は枚挙にいとまがないのであります。それは基準局が深夜の監督に要する予算がないからであると言うが、これに対して如何なる処置をとらんとするのか、お伺いいたしたいのであります。而うして、紡績業は戦前において製品と原料の輸出入において紡績の国際収支は黒字であつたのでありますが、今は鉄鋼業に、一時ではありますが、先を越されて、現在の紡績の国際収支は依然として赤字であるのであります。国民の依料政策に対しては、いろいろの対策が考えられておりますが、ともかく綿花の輸入が輸入品目の右翼に位して、砂糖と並んで思惑輸入の錚々たるものであることは周知の事実であります。砂糖と並んで物価高騰のさきがけとなり、綿花は為替政策の垣根を越えて奔流のごとく流入し、国際収支の赤字に拍車をかけているのであります。我が国の産業構造は終戦後一般にぺちやんこになつてしまつた。併し起き上りと伸びの早かつたのは紡績産業であります。日本の産業構造にでこぼこが発生し、今は基幹産業の発展に重点がおかれているのは言うまでもないのであります。同じ法人であつても楽なものと苦しいものとに分れて、その差異が非常に大きくなつたのであります。米国と西ドイツは、いずれも法人税は比例税のようでありますが、併し西ドイツでは、この間まで六分の配当制限を行なつて、国際収支の均衡を得て漸くその制限を外した次第であります。ところが我が国の産業は、その経理の非常な困難なる実情にあるにかかわらず、配当を野方図に行なつて資本蓄積を怠り、資産再評価を渋つて真の立て直しに躊躇し、重役報酬と交際費の増額に熱中して、経営者は自立経済の気迫を欠いているのであります。而うして、フランスはそのインフレに堪えかね、漸くインフレ抑制のために所得の累進課税を採用するに至つたのでありますが、我が国の法人税も同様、そのように非常に骨かなものには高い税金をかけることに改めなければならないと思うのであります。耐乏も個人のみに強いるのは極めて能がないと思います。富める法人にもその筋を通して行かなければならないと思います。法人税は税率僅かに四二%でありますが、これでも高しとしてその減率を企てているのであります。実際においては十指を以て数えるところの準備金等、その他の項目の下に税法上の減税を行なつて、実質上三五%の低税率になつているのであります。然るにこれに反して、中小企業に対する法人税が極めて苛酷なりとの怨嗟の声が街に満ちているということは申すまでもないのでありまして、法人税に対して、公平の観点から累進的にこれを改正する意思はないかということをお伺いいたしたいのであります。(拍手)  更に、政府は物価引下げのために緊縮予算を提出いたしました。併しこれは二十八年度予算において、減税国債と政府手持ちの蓄積資本の食い潰しによつて不当なる多額の財政投融資を行い、その結果インフレを刺戟したためであります。今やその是正に汲々として、而もなお物価の値上りを来たす消費税を増徴するの矛盾をあえてせんとしているのであります。誠に愚も甚だしいと言わなければならないのであります。配当課税を減率し、再評価税の延納等、国民生活苦に比すれば法人は誠に極楽浄土であります。而も財政投融資、利子補給等、政府国民の税金に迷惑をかげながら、贅沢奢侈の限りを尽し、あまつさえ民間の資本蓄積のために減税をしてくれなどと言うに至つては、どうしてそういう音が出るかということであります。併しそれでも今は残念ながら資金の操作上、政府資金による産業復興が必要であるときと思います。而して本年度の国際収支の窮境に鑑み、来年度の外貨予算の編成に当つて、財政緊縮及び金融引締め等の方法によつておられるのでありますが、そのほかのものに対する何らかの規制を必要とするような状態に至つたと思うのであります。自立経済達成のための産業構造をどうしてやつて行かれるか、兵器産業の伸長に伴なつて、平和産業に対するところの対策如何をお伺いしたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  74. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) 松永議員にお答えいたします。  今度の課税は消費税であるから物価騰貴を招くではないか。こういうようなお話でございましたが、本税はほかの間接税の増徴と同様に、奢侈的性格の強い物品の消費の抑制を一つ目的としているのでありまして、課税対象となる繊維品も一部の高価なものに限られておることは御了承の通りであります。且つ、結局値が上ること、これは消費の減退をもたらすことにもなるので、これが物価高を招来するものとは考えておりません。  繊維税の新設は、「何か防衛関係の予算増額の穴埋めとするのではないか」という意味のお話でございましたが、さような考えなきことは、本税を提出する理由で以て明らかにされておるのでありまして、私どもはこれで奢侈的消費の抑制を図つて国際収支の改善に資する、こういうことを目的としているのであつて、何ら防衛関係費予算の穴埋めとしようとするような考え方ではございません。又「そういう防衛関係費が百四十億でも殖えることはインフレを招来するのではないか」というお話がございましたが、私どもはそれがインフレを招来するものとは毛頭考えておりません。  なお、繊維税の新設は、「煙草の値上げ等、間接税を直接税と見合わせるためにやるべきものであつて、勤労階級の負担を増大せしめるのではないか。」こういうような意味のお尋ねがございましたが、今度の課税が、私どもはたびたび申上げておる通り、何ら大衆課税でなく、又勤労者課税でないことは、よく御了承の通りでありまして、現行の今行われている所得税が、むしろ勤労階級層を中心として、かなり低いところに課税されているので、これを軽減する目的から、奢侈的性格の強い物品に対して増徴乃至課税しようとするものでありまして、これらが何も大衆課税でないことはよくおわかりのことと思うのであります。従いまして、こういう奢侈品に対する課税が勤労者階級の負担を増大せしむるとは毛頭考えておりません。なお、奢侈繊維品の課税に対する法律案提出までのいきさつについて、いろいろお話がございましたが、これはすでに緒方副総理より答弁済でありますから省くことにいたします。  それから、間接税が昭和二十四年以降直接税との比率を増大せしめていることは、延いてだんだん間接税主義に行くのじやないかというお話がございました。併しこれは税制のことは先ほども申しました通り、できるだけ直接税主義で所得を中心として行くのがいいのでございまするけれども、併し或る程度の間接税の収入を得ることは、却つて課税上の摩擦を少くするゆえんでもありますので、その選択についてさえ十分の注意をいたせばよいと私どもは考えているのであります。今度の間接税の重点を奢侈品においている。こういう点ではむしろ負担の公平が期せられるのではないか。かように考えているので、繰返して申しますが、全繊維品に対するものではなく、繊維品のうち僅か七%に対するものであるということを御了承願いたいと思うのであります。  それから十大紡績等、大いに儲けているから、こういうものにうんと取つたらいいという意味のお話がございましたが、成るほど昨今綿布関係の値上りで紡績業者が相当利益を上げていることは事実のようでございますが、併し繊維業者のみに対する増税は考えられないのであります。一方超過所得という考え方もできんではございませんが、超過所得というのは、大体小法人にどちらかというと重くなる傾きがございまするし、又現在御承知のごとくに資産の再評価がまだ完全に行われておりません。十分に行われておりません。そういうような現状から見て、超過利益の算定等はなかなか困難であるので、私どもは今のところ、さような立法を考えておりません。なお、法人税についても「何か比例課税を改めて、累進課税にしたらいいじやないか」という意味のお話がございましたが、これは実は法人税の所得というのは御承知のごとくに、要するに株主に対するものでありまして、法人の資本の高によつて差等を付けることは適当でございません。又大法人の株主が、必ずしも本所得者でないことは、これは松永さんもよく御存じの通りでありまして、こういうものに累進課税をするということは却つて負担の公平を害すると私は考えておるのでありまして、法人の所得に対する累進税本ということは只今のところは考えておりません。  なお、二十九年度予算の性格についてお話がございましたが、これは過日来たびたび申上げましたから、それを以て御了承願います。(拍手)    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  75. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私に対しまするお尋ねの第一点は、繊維産業の国際収支の改善の見通しの点でございます。御指摘通りでございまして、例えば昭和二十八年で見ますると、繊維関係だけの国際収支を抽出してみますると、約二億七千万ドルの赤字を示しておる現状でございます。これは自立経済の観点から極めて重大な問題でございますので、繊維産業につきましては、今後輸出の重点主義ということを更に徹底する必要があると思いまするが、同時に化学繊維、合成繊維の育成増産によりまする自給度の向上を図りたい。これを新らしい国策として推進して参りたいと考えております。  それからお尋ねの第二点は、「紡績産業と基幹産業との間にでこぼこがあるが、その産業構造をどう持つて行くつもりであるか」ということでございましたが、これは最近におきまする東南アジア等、我が国から言えば非常に重要な紡績市場になりまする国々が、顕著に工業化されている。特に軽工業の建設が著しく進捗しているというような現状からいたしましても、我が国の産業の構造につきましては、重化学工業化によつて貿易収支の改善均衡をやるということを一つ中心課題にしなければならないと考えるわけであります。勿論紡績工業におきましても、依然として我が国の繊維工業としては多年の伝統と強固な実力を有しておりますし、又現在もなお且輸出品のうちに第一位を占めておりますので、これとの関連は十分に考慮して参らなければならないと思いますが、これを要するに、重化学工業の育成発達ということを今後の基本国策にいたしたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎君登壇拍手
  76. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) お答えをいたします。  最初に企業合理化と女子工員の労働強化についてお尋ねがございましたが、紡績又は織物産業におきまして、労働者一人当りの受持ち台数が何台が妥当であるかどうかということにつきましては、各企業の実情によつて異なり、一概にこれこれということは困難と思いますが、国際競争力を強化して輸出の振興を図りまするために、これらの企業がみずから合理化を行い、労働の生産性を高める努力を払うことは望ましいと考えております。なお最近におきましては、人手を余り要しない高能率機械が多く採用されておりますから、一人当りの割当台数が増加したということから、直ちに労働強化がなされているという断定は困難であろうかと考えております。なお、女子深夜業につきましてお尋ねがございましたが、来年度の基準監督行政につきましては、予算におきまして監督旅費については、今年度に比べて削減を見ておらない。むしろ若干の増加を見ておる状態でありまして、その予算の効率的な使用によつて、監督行政の実を挙げたいと考えておりまするが、なお女子労働者の保護に関しましては、特にその重点をおいておるのでありまして、繊維産業におきまする女子深夜業の監督に当りましては、定期監督のほか、随時早朝或いは深夜の監督を励行いたしまして、その実効を挙げることに努めたい。特に悪質と認められるものにつきましては、司法処分に付する等、女労働者の保護について追懐なきを期したい。かように考えておる次第であります。(拍手)     —————————————
  77. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 最上英子君。    〔最上英子君登壇拍手
  78. 最上英子

    ○最上英子君 私は改進党を代表して、今回提出になりましたしやし繊維品の課税に関する法律案について質疑をいたしたいと存じます。政府は二十八年度予算編成においてインフレ予算を組み、その上昨年末の補正予算においては米価を引上げるなどインフレを助長しておきながら、二十九年度予算を組むに当つては、その反対に物価を引下げ、緊縮予算に切換えたことは経済界に著しく不安を起しております。特に最近の中小企業の現状は、政府の急激なデフレ政策と日銀の金融引締めによつて、工場の閉鎖とか問屋筋の倒産が続出しておる状態です。更に機業地においては、本案の消費税がかけられる場合は、業者の経営はますます困難となり、一般消費者にも多大の負担を負わし、社会に及ぼす影響は甚だしいものがあります。以下二、三についてお尋ねいたします。  第一は、中小企業の金融政策についてであります。中小企業金融公庫の資金は、二十八年度は月二十億であつたものが、二十九年度は月十四億程度となり、実質的に減額となつておりますが、これはどういう理由でありますか。又国民金融公庫の貸付金、各種金融機関に対する政府預託金、商工組合中央金庫の債券発行額等について、如何なる方策をとられていますか。  第二は、奢侈繊維品消費税の狙いはどこにありましようか。八十五億の税収を目的とするのですか。それとも国内奢侈的消費を抑えることが目的なんでしようか。若し税収が目的であるならば、繊維品の動きが明らかにつかめる原糸の段階で取るか、或いは手数の煩わしさと業者の迷惑を顧みないのならば、小売の段階で取ることができると思われますが、生産と小売の中間の、最もとらえがたい卸売の段階最るのはどういう理由でありますか。大蔵大臣から御答弁を伺いたいと存じます。  第三は卸売段階で課税いたします結果は、一は元売、製造卸、地方卸、現物問屋、集散地卸等の対象がばらばらとなつて脱税が多く、又もぐりの取引が行われ、実際には徴税は頗る困難となるでありましよう。二は、免税点以上の高級繊維品の多くは職業用衣装であつて、加工度の高い注文生産が大部分でありますから、卸売課税となれば、生産者と消費者の直接取引が行われ、卸商の取扱は激減するでしよう。三は、こうした嗜好性の強い商品の常として、値段の高いほど見切りの率が多くなり、課税の対象品が忽ち非課税品となつて税務署と納税者との争いが頻繁に起つて、税務行政に暗い影を与えます。四は、現在九十日か百二十日の手形取引を行なつている関係から、卸売商の貸倒れ、返品など徴税面にいろいろの問題が起ると思います。又卸売商に対する税務署の点検が激しくなれば、戦後折角復興しかけた問屋制度も再び元に戻る慮れがあります。五は、卸売課税に対する負担は、機業者と染色業者などにしわ寄せせられる結果となり、金融難に喘ぐ零細企業者を一層苦境に追い込むことになります。六は、高級品に対する課税の過去の取引高税を見ても、本案実施の場合は、免税点以下の品物が値上りして大衆生活を脅かす結果となり、政府の物価引下げ方針と矛盾することになります。  以上のような理由から、政府が先に決定した免税点を引上げ、税率を一割から一割五分に引上げたとしても、到底予期の税収は挙げられない。恐らく予定八十五億の半額ぐらいしかないと考えられます。政府の御所見は如何ですか。  最後に、この繊維課税は、初めは原糸に課税するつもりであつたが、業者の反対に会つて小売課税に変り、今度は小売業者の反対に会つて、あいまいな卸課税に変つて来た経過もあり、又実施期間を昭和三十一年三月末と限られるなど、誠に自信のない税制案と思います。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手政府は更に研究の上、合理的な法案を提出するお考えはありませんか。  以上の諸点について大蔵、通産両大臣から御答弁をお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  79. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) 最上議員にお答えいたします。  中小企業に対する金融政策につきましては、すでに御承知のごとくに、中小企業金融公庫には、新たに二十五億円出資いたしまして、運用部からの借入金等も合せまして丁度百九十億円の資金源を持つことになるので、昨年に比して六十億円の増加と相成つておるのであります。更に又国民金融公庫には、新たに出資二十億円を加えまして、各種の資金で合計三百二十三億円の資金源を持つて、これが仕事をし得ることになり、そのほか商工中金、相互銀行、信用金庫等の指定預金の操作とか、或いは又御承知の中小企業信用保険制度を今度拡充いたしましたので、普通銀行等に対する融資その他が相当受けやすくなると考えておる次第であり、政府は如何なる場合でも中小企業が国民の中堅であるということを決して忘れておりませんので、十分な措置をいたすことにいたしております。  それから繊維消費税の目的が税収であるのか、それともほかの目的かと仰せになりましたが、丁度、繊維消費税の目的は先ほども申上げましたように、低額な少額所得者の所得税を軽減する。又資本蓄積のために法人等に対して若干の減税をする等の問題等から、多少、税収の点も、仰せのごとくに八十億円、これで税収の目的も達するように含めておりまするが、主として狙つておるところは、今日の日本の事情の下においては、奢侈を抑制して国内消費をでき得るだけ国外のほうに向けさせたい。こういういわば国際収支の観点からも大きくこれを見ておる次第でございます。  それから更に、卸売段階が一番徴税上困難ではないか、又いろいろいきさつをお述べになりましてのお話がございました……いきさつは最後にお述べになりましたが、これは先ほども申した通り、私ども実は製造業者でありますと四万四千ぐらいの対象になります。それから小売業者になりますと、十六万くらいを対象としなければなりません。それが卸売業者でありますと、大体二万しか……免税点及び取扱商品等の関係がありまして、約一万くらいで済むと思われますので、課税対象として税の捕捉の上からは一番よいのではないか。尤も、段階においていろいろ小売を扱つておる者もありましよう。そういう点困難な点もございまするけれども、これはまあくろうとが見れば、割合にわかりやすいことでもありまするし、さつきお話の点にも信用取引が云々というお話がございましたが、相当今信用取引が行われておる。そういう点からも捕捉できるのではないかと考えており、まだこれくらいの税収は、前後いたしまするが、確保で亘ると私どもは考えております。これはいろいろな点から統計を出しておるのでありまするが、平年度でありますると、もう少しできると思いますが、又初年度においても八十五億円はできると考えております。  それから、本案提出についてのこれまでの経過につきましては、先ほどもすでに答弁が済んでおりまするから繰返しませんが、何故に二カ年としたかということにつきましても、先ほど申しました通り日本の今置かれておる事情から、奢侈を抑制し、そうして国際収支の改善に向つて努力するようになるということが一番主なる目的になつておるので、そういう財政の緊縮、金融の引締め、財政、金融、為替、外貨等に対する一般諸政策が浸透して参れば、そのときに又考え直してもいいという考えで、取りあえず二カ年といたしたような次第でございます。それから、高級品に対する課税について、「免税点以下の物品の値上りをするではないか」というお話がございました。これは一つの有益な御意見と伺つたのでございますが、併し私ども考えてみますると、御承知のごとく繊維品は、相当もうたくさんございます。昭和九—十一年に比較いたしますると、大体二割くらい、もうたくさんになつております。日本で最も繊維品の多くなつておるときでございまするので、かたがた私ども、そう値上がりするものではあるまいと、こういうふうに考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  80. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 只今大蔵大臣から御答弁がありましたところに別に付け足すことはないのでありまするが、ただ私の一つだけ申上げておきたいと思いまするのは、通商産業省の立場、特に中小企業の立場を考えなければならない私どもの立場といたしましても、この税金を取るといたしますれば、いろいろ考えなければならないことがあつたわけであります。  例えば原糸の段階で取れば、それは一つの行き方でございましようが、輸出の振興、輸出に対する免税というような点から言いまして、これには反対が相当多いわけでございます。又消費者のいわゆる消費段階から遠くなりますと、いわゆる奢侈品であつても買える消費者にこの税は負担してもらいたいというこの原則を全うすることができなかつたわけでございます。さりとて小売課税にいたしますると、これは一番弱い中小企業にしわ寄せがされることになります。彼此勘考いたしまして、免税点をできるだけ引上げる。又消費者の段階には近いところではありまするが、納税義務者をできるだけ数を少くするというような点をいろいろ考え合せまして、かような成案が、私どもの立場から申しましても、これならば何とかやつて行ける。こういう結論になつたわけでございますので、御了承願いたいと思います。(拍手
  81. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知をいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後八時二十一分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、議員派遣の件  一、日程第一 義務教育学校における教育政治的中立確保に関する法律案及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案趣旨説明)  一、日程第二 しやし繊維品の課税に関する法律案趣旨説明