○成瀬幡治君 私は
日本社会党を
代表して、
只今上程されましたしやし
繊維品の課税に関する
法律案について、以下数点を
関係大臣に
お尋ねいたします。
本
法律案は、昨年十一月十二日に提出された税制調査会のうちの、「資本蓄積のために直接税を削り間接税を増徴せよ。その
方法は、繊維消費税を新らしく設けて二百億を目途として、毛糸、絹糸、麻糸を原料とする織物に課税せよ。」とあるのに基いて、一月十六日、大蔵省は、「間接税の増徴として繊維税を新設し、生糸、羊毛、八十番手以上の綿糸、即ち原糸に課税する。税率は製造所からの移出価格の一〇%とする。但し輸出向は免税とする。」との態度を決定したのであるが、併しその後
自由党政調会、総務会は、「生糸課税は取りやめて他の原糸だけに課税することとする。若しこれができなければ、生糸に対して表面上の課税を避けるために公社を作り、公社から納付金の形で課税相当額を徴収する。」の態度であ
つたが、大蔵省は、原糸課税はもともと生糸の国内消費抑制と輸出振興のためのものであり、他の原糸課税はどちらかと言えば、生糸との均衡上課税する
方針をと
つたもので、肝心の生糸を非課税として他の原糸に課税する
理由はない。又公社を作り、納付金で課税することは、生糸以外の原糸課税ができても、公社設置法が国会で潰れてしまえば、結局生糸課税はできなくなり、税制
改正案全般を改めなくてはならないと主張し、
意見が対立したが、遂に一月二十一日に、大蔵省は
自由党の希望を入れて、原糸課税をやめて絹、羊毛、麻、綿糸、共に小売段階での製品に課税し、八十番手以上の綿糸を使
つた綿織物、混紡率六割以上の毛織物、六十番手以上の麻糸を使
つた麻織物、高級絹織物に小売段階で課税し、その税率は六乃至八%とし、徴税総額を百億と決定したのであるが、その後各種各様の
反対に会い、繊維税よどこへ行くかの観を呈し、一時はその成案を危ぶまれていたのでありますが、二月十二日の院内での緒方副総理、
小笠原蔵相、福永官房長官、植木大蔵次官及び
自由党の佐藤幹事長、益谷総務会長、池田政調会長、小澤国会対策
委員長の八者会談で、しやし繊維税の名前を付け、
反対の多い小売課税はやめると決定し、更に十六日の閣議で、課税段階を全部生地屋、元売商にし、免税点を若干引上げると共に税率も一五%に引上げ、徴税目標額を二百億から八十五億に圧縮し、二年間の限時法にするなどを決定して、漸く陽の目を見たいわく付きの
法律案である。原糸課税から小売課税となり、再度三転して切売課税とな
つたのであるが、(「繊維疑獄が起るかも知れんぞ」と呼ぶ者あり)この間に紡績業者、毛織業者を初め、百貨店、洋服屋さんと、風向きの変わるたびに猛烈な
関係者からの陳情運動のあ
つたことは又当然であります。いやだいやだと断り続けたふられ盃を、
最後に押付けられたのは、一番陳情運動の弱か
つたと思われる卸売業者であります。全国約二万名と推定されるこれらの業者は、何故に一夜で変
つたのか。ああ、あれかと胸に手を置き、天を仰いで
政治の不信をなじ
つておるのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)
吉田総理は今国会における施政
方針演説で、例年の例を破
つて、綱紀粛正を除外した。昭電疑獄のあとを受けた吉田内閣が綱紀粛正を一枚看板にしたのは当然であり、綱紀粛正は万人共に
異議のないところであり、(「看板に偽りなし」と呼ぶ者あり)看板に偽りなきを期待してお
つたのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)ところがその看板を、造船利子補給の
立法をめぐ
つて噂が飛んでおるとき、又造船割当で種種噂の飛んでいるさ中で、綱紀粛正を忘れたのであります。これは故意か。故意とすれば、身内に危険ありと察知して看板を外したことになり、もはや政局担当の資格なしであります。又その必要がないと判断して削除したとすれば、汚職、疑獄の報道のない日がないのが今日の現状であります。上乱るれば末倣うで、巡査部長までが九百万円持ち逃げしてしま
つておるのであります。特に去る二十三日には有田代議士の逮捕許諾の院議がなされております。又本院でも西郷議員の取調が行われたと聞いておるのであります。而してこれらは起るべきものが起
つたのであり、これからも又発展するやに聞いておるのであります。
政治的洞察力を欠いたことになり、これ又政局担当者の資格なしと言うべきであります。吉田首相は、曾
つて公務員の首切りは煤掃きのようなもので毎年やらなければならないと豪語されました。
国民は今や疑惑に満ちた
自由党吉田内閣の煤掃きを怒りと憎しみを以てやらなければならないと考えているのであります。(
拍手)汚職、疑獄の刑事的責任は別として、
政治的、道義的に責任をとり、今からでも遅くはない。総辞職か解散によ
つて時局の転換を図るべきだと考えるが、刑事上、法に触れ罪にならないことなら、何をや
つてもよいと考え、
政治的、道義的の責任をとる必要はないと考えておるのか。この
法案審議に際しての肚構えとして、汚職、疑獄に関連しての政局担当の
所信を先ずお伺いいたします。
第二点は、本
法律案の
立法過程を辿
つてみると、原糸から小売へ、又卸売へと納税
義務者が盥廻しにされております。八十五億の税金の立替え払いを強制される者は、資力の弱い元売商である。即ち犠牲にな
つたのは、陳情運動に資力不足で事を欠いたと思われる中小企業者という結果にな
つた。曾
つて中小企業の五人や十人は首をくく
つて死んでもよい、貧乏人は麦を食えと
言つた池田前大蔵
大臣の言葉を裏書きし、実行するような結果にな
つたのであります。「至誠人を動かす」という諺がございますが、「金人を動かす」というのが今の現状であります。(「金
政治を動かす」と呼ぶ者あり)繊維税に関連して
政治資金の献金とか、いかがわしい陳情とか、待合取引などが行われていないと、吉田総理は自信を持
つて断言することができるか。明快な御
答弁をお願いいたします。
第三点は、首相は耐乏
生活を強調され、静岡では、耐乏
生活に協力せんのは
国民が悪いとまで言われましたが、耐乏
生活の具体策は、必然に消費税の問題に発展するものでありますが、本
法案以外の電気冷蔵庫、テレビ、外車などの若干の物品税引上げ並びに酒税、砂糖の消費税の引上げ、ピースの値上げのみでは耐乏
生活は生まれて来ないのであります。イギリスの耐乏
生活は、労働党内閣の手によ
つて昭和二十一年に初めて始められ、保守党内閣に引継がれまして、およそ七年間、時によ
つて強弱の差はありますが、耐乏
生活は実行されました。それは消費税の引上げ、石炭、鉄道運賃などの国営事業の値上げ、
生活物資の割当制、輸入
制限などであるが、要は計画に基く不足のない耐乏であります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)高級贅沢品の製造
制限とか輸入
制限又は高級料理屋の閉鎖など、消費面、生産面での計画経済を行わなくては、不足の上の耐乏にな
つてしま
つて、真の
目的は達成することができない。徳川幕府の奢禁令を見ても、言うは易く行うは難しである。吉田首相の言う耐乏
生活は、その具体策は本
法案を初めとする若干の消費物資の税引上のみか。耐乏
生活に対する青写真、即ちその大綱を明示すべきであります。首相並びに大蔵
大臣の
所信のほどを伺いたいと思います。
次に、大蔵
大臣に
お尋ねいたしますが、第一点は、租税及び印紙の収納額は例年より見て予定額よりも遥かに上廻らないか。本年度の収納超過額は幾らくらいに予定しているかという点であります。試みに
昭和二十六年度の
一般会計の歳入について見ますと、租税及び収入印紙の予算額は五千六百八億円で、収納済歳入額は六千四百億で、実に四百三十二億円の増収とな
つているのであります。又
昭和二十七年度予算額は六千八百五十三億円で、収納済歳入領は七千八十四億円となり、二百三十一億円も上廻
つております。二十八年度はまだ決算書が提出されておりませんが、追加、補正を加えて歳入予定額を七千五百六十六億円としておりますが、本年一月末までの収納済額は七千八十七億円で、この調子で参りますならば、これ又上廻ることは必然であります。余剰金の出ることは当り前であ
つて、毎年繰越しをしておるからと言われるかも知れませんが、本年度は一兆億予算、緊縮予算と
宣伝し、絶対に追加予算を組まないと明言しておる以上、余分の、若干はよろしうございます、余分の余剰金は必要がないではないか。又
国民一人平均の税負担は戦前の九年——十一年の国税十八円、
地方税九円の計二十七円が、
昭和二十九年度は国税が一万百九十一円、
地方税三千八百八十二円で合計一万四千七十三円とな
つています。これは九年——十一年の五二一・二倍で、
国民所得の四二一・三倍を遙かに上廻
つております。
国民が税金はえらいと言うのは当り前であり、重税にあえぐとはまさにこのことであります。又予算執行面を見れば、公共事業費その他会計検査院の
指摘するごとく、血税は濫費されております。或いは造船疑獄が示しておるように、待合
政治の取引にされておるのであります。歴史は夜作られると言うが、まさに百鬼夜行であります。蔵相は一体昼寝をしてお
つたのでありますか。古語に、「天下を治めるとは、民を養うにある」とありますが、これではまるで
反対でありまして、政界のボスが
国民の血税を食いものにしておるのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)蔵相はかかる面を厳に押えさえすれば、八十五億くらいの節約は簡単にできると思います。又収納額から見ても、余剰金があ
つて徴収する必要はないではないか。名前に奢侈がついているが、税を転嫁されるのは結局大衆であ
つて、大衆課税に間違いはありません。税で
国民を苦しめるのみが芸ではありません。予算の完璧な執行こそが大蔵
大臣の責任であります。又蔵相は繊維税
反対の陳情の
代表者に、これは米国からの要請が強いから我慢をしてもらいたいと述べたと伝えられておりますが、(「本音を吐いた」と呼ぶ者あり)自衛力増強とMSA受入とに関連してかかる要請を受けておるのか。指示を仰いでおるのか。立案過程から見て疑惑があり、不明朗な本
法律案は、而も二年間の限時法でありますが、予定徴税の八十五億の捕捉も危ぶまれております。かかる
法律案は潔く撤回して、予算執行面を厳にすべきであると思いますが、(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)併せて御
答弁を承わりたいのであります。
第二点は、青柳議員や小林議員も
指摘されたのでございますが、何故の限時法であるかという点であります。
提案理由の説明によりますと、「
繊維品消費税は、その創設の
趣旨等に顧みで、その実施期間を
昭和三十一年三月三十一日までとした」とあるが、一体この
法律案の
立法趣旨は何であるかということであります。
提案理由によると、最近の
繊維品の消費状況から判断し、奢侈物資の抑制を図るとあるが、その説明のごとく、又その名前の示すごとく、奢侈的消費税であるのか。奢侈的繊維は二年間買
つてはいけません。あとは幾らでも税金なしで売りますから暫く待
つてもらいたい。こういうための二年間の限時法にしたのか。又奢侈を抑制すると言うなら、何故に繊維のみに限定したのか。造船汚職で名前をとみに挙げたところの待合などを初めとする高級料理店は現状のままでよいというのか、お伺いいたします。
なお、これに関連して伺いたい点は、税制調査会は入場税、遊興飲食税の国税移管を
答申し、
政府は初め両者とも国税移管の
方針であ
つたのでありますが、一夜にして入場税のみ国税移管となり、遊興飲食税は
地方税に残
つたのであります。
地方財政の緊迫しておる折に、
地方税に残
つたのは可とするのでありますが、文字
通り一夜に変
つたというところに誠に意味深長なものがあるのであります。(「そうだ」「怪しいぞ」と呼ぶ者あり)この辺の経緯について、本
法案の
立法措置と共に、併せて御
答弁を承わりたいのであります。第三点といたしまして、徴税捕捉が完全にできるかという点であります。収納予定税額を八十五億円と最初に予定し、課税対象は原糸から小売へ、小売から元売商へと移り、税率も一〇%、六%、八%、一五%と変
つておるのでありますが、八十五億円は動いておりません。妙な話といえば妙な話であります。この税金八十五億円を支払うのは消費者
一般でありますが、納税
義務者はこの
法案の第四条、六条、七条で大体元売商と
規定されておりますが、
地方では卸売商が小売販売も行い、又縫製業も兼業しておる場合が非常に多くて、混乱が生ずることは今かげ予想されておるのであります。税務署の証明書、即ち
法案第十九条の
規定の証明書で大蔵
大臣は効果が挙
つて、納税
義務者を完全に捕捉することができると考えておるのかどうか。納税
義務者と
規定している第一次製品の販売業者は元売商のみでなく、例えば既製服業者への生地の販売者は、紡績業者、毛織業者の場合もあります。百貨店ではメーカーからの直接委託販売をする場合もあります。鐘紡のサービス・ステーシヨンのごとく、紡績業者の一貫作業による小売販売もあるのであります。又西陣織の家内工業をや
つておる人に例をとれば、製造業者であると共に版売業者になるのであります。特に絹織物に例をとれば、製造から直接に小売業者へ売渡しておるのであります。かく考えて参りますと、蔵相は中間業者と言うが、納税
義務者は各種各様であ
つて、捕捉は技術的に困難ではないのか。元来消費税は、消費者が均等に負担し、消費者全部から税を徴収するのでなければならないのであります。原糸課税にすれば公平に徴収されるのであります。これが紡績業者に押されて、中間、小売と盥廻しをや
つたというのが
実情ではないでしようか。又記帳
義務については
法案第二十一条に
規定しておりますが、全体、中間業者のみの帳簿で完全に捕捉されることができるのか。又記帳は家内工業のような零細業者にと
つては過大な負担と圧迫になるのではないか。大蔵
大臣は二十三条で税務職員の権限を
規定し、更に罰則もあるので、公平に捕捉できると言うかも知れないが、本税のために一体税務署
関係の人員をどれだけ増しておるのか。又経費はどれだけ予定しておるのか。富裕税のごとき捕捉あいまいなものを更に設けることは、
政府に対しての不信の上塗りであ
つて、賢明な施策とは言えないのであります。税務吏員の勘による査定、即ち人によ
つて伸び縮みする税金になりはしないか。闇に流れることなく、公平に徴税か予定の八十五億が取れると考えておるのか。又徴税
方法は最も当を得たものと考えておるのか、御
所見が伺いたいのであります。次に、間接税の今後の見通しでありますが、今回の税制改革で消費税、即ち間接税を増徴しておるのでありますが、砂糖は四十三億、ガソリン五十億、物品税一億、繊維八十五億と、差引三百四十三億の間接税を増したのでありますが、半面法人税の百八億を最高とする直接税を計二百十八億減じております。主税局の統計の直接税、間接税及びその他の比率を見ますと、
昭和二十八年度の間接税は、米国が一一・四%、イギリスは四〇・八%、フランスは一一・三%、ドイツは二一・六%、イタリアは四一・七%で、
日本は四四七%で
世界最高であります。更にこれが二十九年度になれば、なお数字は高くな
つてくるのでありますが、間接税の多いということは、結局
世界各国に比して
日本の大衆課税が最高であるということを示しておるのであります。資本家を優遇することを雄弁にこれは物語
つておると思うのであります。(
拍手)自衛力漸増を増強に切り換えて、MSA受入を
国民一般大衆の犠牲でやろうとする
政府の今後の徴税
方針は、間接税を今後も増そうとするのかどうか。お伺いしたいのであります。次に愛知通産
大臣に伺いますが、
昭和二十七年の経済安定本部の統計によりますと、
昭和九年—十一年に比して主食は九七、副食物は九四、光熱は一〇五、住居九四、雑費九二、被服は七三とな
つておるのであります。被服が一番悪いのであります。被服の悪い
理由は、結局値段が高いからであると思うのであります。今回の課税は一応奢侈的な高級品への課税にな
つておるが、衣料全体への課税負担に押し拡げられることは、業者の操作によ
つて可能であります。業者は課税対象、即ち高級品の値段を若干歩引きしまして、他へこれを転嫁することは当然であります。今回の課税が衣の
生活を圧迫するとは考えていないのですか。洋服和服の二重
生活の現状から、
国民の衣料
生活全体について、
大臣は如何なる施策を今後とろうとするのか。御
答弁が伺いたいのでございます。
なお、時間が参りましたから、通産
大臣に簡単に
お答え願いたいのでございますが、本
法案は結局中小企業者に対して税金の割当をすることになると思います。緊縮財政のしわ寄せ全部が中小企業に行
つておるのでございますが、本
法案に関連して、何か中小企業に対しまして特別の
立法措置、保護
措置をとろうとするお考えがあるかどうか伺いまして私の質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣緒方竹虎君
登壇、
拍手〕