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東隆君 去る十二日の朝刊は、一斉に、
九十九里浜禁止海域の
漁船に
米軍が
威嚇射撃をしたことを報じております。「
日米行政協定で立入りが制限されている
千葉県山武郡
豊海町にある
米軍豊海射場、これは元
片貝射場と
言つた所でありますが、この沖合の
禁止区域を侵す
漁船に対して、これまで基地及び
県当局から再三にわた
つて警告が発せられていたが、十一日午後二時、同
射場では
禁止区域に出漁中の
漁船に対して、ついに
威嚇射撃の
実力行使を行い、退去を求めた。」こう
千葉発として四段抜きで大きな活字で
見出しを書いてあるのであります。これは朝日
新聞の
説明文でありますが、この記事が出ておりましたので、私
どもは事の重大さを
考えまして昨十四日、
現地に参りまして
関係方面に質し、そして事のいよいよ容易ならざるのを痛感いたしましたので、この
事態を早急に
解決をいたしたいために、私は
緊急質問をするものであります。
今回の
実弾射撃、これは一部の
漁民に言わせますと、大抵の場合に、船が沖におりましても
射撃をや
つていると、こう申しているのであります。十一日の場合は、県庁の
言分によりますと、極めて少い
射撃であ
つた。こう申しておりますし、
新聞も、五、六発
程度威嚇射撃をしたのだと、こう報じておるのであります。併しいろいろな状況を勘案して見ますと、当日は決して五、六発くらいの弾を射
つたのではなくて、相当な弾を射
つておるのであります。而も私の聞いたことでありますが、沖に出て漁をいたしております船の二百メートル近くの所に
不発弾が落ちまして、約十メートル以上もの水柱が立
つたのを見たと、こういうふうに私にその
目撃者が言
つておるのであります。
こういう
事態がなぜ起きたかと、こう申しますと、これは非常に
漁業が困難でありますので、
漁民が非常に困
つておる。そこでここでは月曜日から木曜日までの四日間は、正午から午後の六時までの
間禁止時間にな
つておりますが、この間でも、
いわしが見つか
つたときには、どうしてもそれを追つかけて獲らなければ、
機会を逸しますので、それを続けるのであります。そういうような
状態が頻々としてあるので、この
機会に、これをどうしても一掃しなければならんと、こういうので、私は計画的に
威嚇射撃をや
つたと、こういうふうに大きく
見出しを書いて、
新聞その他に
表現をして、その後の工作をしようとしたのであると、こういうふうに見ておるのであります。で、当日の或る婦人から聞いた話でありますが、扉が何ぼ閉めてもあくので、今日はいつもよりもひどい
射撃をや
つておるなと、こういうようなことを言
つておるのを私は聞いたのであります。こういう
状態、これを私は
威嚇射撃と、こういうような
言葉で以て
表現をすべきものではなくて、その背後には、いつも
漁業をしておる。それを何とかして
撤去させるために計画的にや
つたことだと、こう
考えざるを得ないのであります。
従つてこの問題は、
威嚇のために
射撃をしたということよりも、もつとその奥には人道的に大きな問題が伏在をしておるのであります。即ち漁をしておる
我が国の
国民の
生命が危険に晒されておるという事実があるのであります。これを我が
政府は、この事実を知
つておるかどうか。私は単にこれは
威嚇のために
射撃をしたのではなくて、従来漁を続けてお
つたのを、それをこの
機会に徹底的になくしよう。そういうことをやるためにや
つておるのだと、こういうふうに見て参
つたのでありますが、このことについて、
政府はどういうふうにお
考えにな
つておるか。これを聞きたいのであります。而もこれを計画的に進めるためには、海上保安庁の
巡視船を派遣したり、いろいろなことをや
つておるのであります。このことについても、私は
お尋ねをしたいのであります。
沿岸の
漁民は、前に申しましたように非常に窮乏をいたしております。
禁止区域であ
つても、
魚群を見付けたときには危険を冒して漁をや
つておるし、今後もこのようなことはやらなければ食
つて行けないんだ。こう言
つております。
生命の危険を冒して漁をしておることは容易ならざることでありますが、これに対しては
政府は、このような
状態を今後続けさせる
考えであるかどうか。或る
外務省の
責任者は、この
禁止区域の
撤去を
陳情に行
つた或る
漁民の
代表に対しまして、問題が起きていないからそのままに放置しておくのだ。こう豪語しておるのであります。これが
外務大臣の部下である人の言う
言葉であります。その
漁民の
代表は、
関係漁民を動員して
外務省に押しかけることも我々としてはできないし、とんでもない非常識なことを言うものだと
切歯腕をいたしておりました。このことは
陳情者と、
陳情を受ける者との間に交わされた
言葉でありますが、これは重大な私は意味を持
つておると思うのであります。即ち
政府は、事なかれ主義で、問題を持出さなければ
解決に乗出さぬという消極的な
態度を示しておるのであります。
政府はあらゆる
機会に、
国民の
生命財産を保護する必要があると思いますが、このような場合にも、なお
媚態外交以外の何ものでもないようなやり方をやろうとするのか。私は断固として
撤去をするようにやるべきでないかと、こう思うのでありますが、これに対する積極的な
態度を伺いたいのであります。
その次に、私はこの
漁業の
中心地、即ち
九十九里浜は
いわしの三
大漁場の一つでありますが、この
地域の真中に
禁止区域ができておりますので、非常に困難をしておる。又安い価格の蛋白、脂肪に富んだものが供給されないので、
国民としては大きな
損失であります。こういうような所が、占領後非常に簡単に私は
射場として
決定を見たと、こう
考えますが、この間に当
つて漁民の反対の抵抗、或いは農林省がこれに対して
換地をどういうふうに斡旋をしようとしたか。又
外務省はこれをどういうふうにして取払おうとしたか。そういうような
努力を私はしたであろうと、こう推察をいたしますが、その辺のことをよくお聞きをして、そうして積極的にその方向に動いて頂きたい。こう思うのであります。その点について
お尋ねをするわけであります。
又個々の
補償については、昨年の四月から十二月までに二億三百万円の
補償をしておりますが、これは二戸に対一して一年間三千円から七千円くらいであります。このようなものでは食
つて行けるものではありません。
従つてどうしてもこれは微衷をするか、大きく
補償をしなければなりません。而も
大蔵省は、二十三年頃の漁獲を
中心にして、現在二十八年に八百万貫獲れておるから、
補償をしなくてもよいんだと、こういうようなことを言
つておるそうでありますが、併し制限をされておる時間でありますから、少くとも現在の倍額くらいは
漁業について
補償しなければならない。これについても、
大蔵省はどういう
補償の
基準でや
つておるか私は聞きたいのであります。又
漁業が困難になることによ
つて、陸上の者が非常に大きな
損失を受けておる。これに対する
補償はどうするか。又軍が所在をしておるために道路も悪くな
つておる。又爆撃のために
学校の教育もできないような
事態も起きておるし、それから瓦や壁が壊れてしま
つておる。こういうようないろいろな、これは間接ではないのです。直接の被害がたくさん現われておりますが、そういうようなものに対する
ところの
補償は一体どう
考えるか。これを総括して大きく
補償に対する
ところの
基準を
大蔵省はどういうふうに
考えておるか。これを私は
はつきりとお聞きをしたいのであります。
私はこういうような問題を通して第一のことは、これを
撤去することが、これが最善の
方法である、このためにどういうようなことが過去においてとられてお
つたか。これを私は聞きたい。
更にこの
撤去がどうしてもできないならば、大きく
補償をする
方法を
考えなければならんと思いますが、この
補償に対する
基準は極めて冷淡である。
従つてこの
機会に私は
補償の問題、それから過去における折衝の経過、そうしてこれに対する
ところの今後の
考え方、これを
はつきりと私はここから
関係の閣僚にお伺いをする次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣岡崎勝男君
登壇、
拍手〕